説明

ヒトパピローマウイルス(HPV)およびHPV関連癌の初期段階および後期段階の検出、スクリーニング、および診断のための高度または≧CIN2の同定

ヒト対象におけるパピローマウイルス感染の病期を決定するための方法およびキットが開示される。該方法は、タンパク質を含む組織サンプルまたはタンパク質を含む細胞サンプルからなるサンプルを上記ヒト対象から得る工程と;上記サンプルを、1種以上の組み換えHPVタンパク質と特異的に結合する1種以上の抗体と接触させる工程と;上記抗体に特異的に結合する、上記サンプル中の少なくとも1種のタンパク質の存在、非存在または量を決定する工程と;上記ヒト対象における上記パピローマウイルス感染の病期を、上記1種以上のタンパク質の上記決定された存在、非存在または量を基準として決定する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)およびHPV関連癌の初期段階および後期段階の検出、スクリーニング、および診断に有用な新規の抗体およびアッセイ」のタイトルで、2009年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/215,589号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、「ヒトパピローマウイルス(HPV)の検出方法および子宮頸癌におけるその適用」のタイトルで、2006年11月13日に出願された米国特許出願第11/559,366号、「HPV検出のためのタンパク質チップ」のタイトルで、2008年4月14日に出願された米国特許出願第12/082,740号、「HPV検出のための抗体およびアッセイ」のタイトルで、2008年6月13日に出願された米国出願第61/131,991号、「HPV関連子宮頸癌の初期段階状態および後期段階の検出、スクリーニング、および診断に有用な、HPVタンパク質に対する新規モノクローナル抗体」のタイトルで、2008年2月22日に出願された米国出願第61/192,912号、「HPVタンパク質に対する新規モノクローナル抗体」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,053号、「初期段階および後期段階のHPV感染のインサイチュでの検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,054号、「初期段階および後期段階のHPV感染のインサイチュでの検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,055号、「初期段階および後期段階のHPV感染の検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,076号、「HPV関連癌の検出、スクリーニングおよび診断」のタイトルで、2008年11月12日に出願された米国出願第61/199,013号、および「HPV関連癌の検出、スクリーニングおよび診断」のタイトルで、2009年11月12日に出願された米国出願第米国出願第12/590,747号と相互に関連する。上記相互関連出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
子宮頸癌は、毎年約50万の新たな事例および約25万の死亡を伴う、全世界の女性の癌死亡の第2の最も一般的な原因である。米国では、子宮頸癌の死亡率は、前癌状態が癌に発展する前に前癌状態を検出してその治療介入および処置に至る子宮頸癌スクリーニングプログラムの成功により、実質的に減少している。子宮頸癌スクリーニングのための現在のパラダイムは、Pap試験に基づいており、Pap試験とは、細胞を子宮頸部から擦り取り、ヒトまたは機械のいずれかによって微視的に検査して、異形成細胞の成長を示す変化を検出するという細胞学に基づく試験である。該試験は、かなりの観察者間変動を伴う主観的なものであり、低い感度および高い偽陽性結果によって制限される。子宮頸部細胞診における偽陰性率の報告は、低くて1.6%から大体28%まで広範に変動している。約400万の異常なPap試験が、各年、米国において、意義不明の異型扁平細胞(ASC−US)と診断されており、異型扁平細胞は、高度扁平上皮内病変(ASC−H)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、または異型腺細胞(AGC)を除外できない。
【0004】
現在の診療ガイドラインでは、これらの事例は、膣鏡診に持ち込まれて、子宮頸部生検において臨床的に有意な高度病変(CIN2/3)または子宮頸部新生物を有するであろう患者の小集団をさらに同定する。ASC−USの細胞学的診断を有する患者(米国では毎年200万事例を超える)は、子宮頸部生検において、潜在するCIN2/3の確率を5%〜17%しか有さず、LSIL(米国では毎年約160万事例)においては、CIN2/3が最大で25%において見られたことが報告された。これらのデータは、ASC−USまたはLSILを有する約300万の事例について、膣鏡診が必要でないことを示唆している。膣鏡による生検は、診断基準であると歴史的に考えられてきたが、最近の報告では、子宮頸部生検は、サンプリングまたは診断誤差のために33%〜50%の高度疾患を見落とし得ることが示されている。結果として、偽陽性の子宮頸部細胞診結果と偽陰性の生検結果とを区別することが困難である場合がある。したがって、治療介入からの利益を最も享受することができる患者をトリアージする、高度異形成を同定するための試験が強く必要とされている。
【0005】
最も軽度の子宮頸部異形成は、子宮頸癌に至ることなく自発的に退行するが、異形成は、さらなる用心が必要とされることを示すものとして機能し得る。CIN1は、最も一般的で最も良性の形態の子宮頸部上皮内新生物であり、通常は2年以内に自発的に消散する。このため、LSILの結果は、単なる「経過を観察する」考え方で管理され得る。しかし、12〜16%の確率で、より重篤な異形成に進行するため、医師は、生検と共に膣鏡診を実施することによって、より積極的に結果を追求しようとする場合がある。異形成が進行すると、処置が必要である場合がある。したがって、必要とされるのは、HPV癌タンパク質をインサイチュで検出する方法である。ASC−USもしくはLSIL、またはCIN1の患者において、あるいは迅速な治療介入の利益を享受し、「様子を見る」ことに関する不安を回避することができる患者において、高度異形成細胞を検出して、これらの潜在するCIN2を同定することが、特に有益であろう。
【0006】
上皮の増殖を誘発する、特定の上皮細胞でのヒトパピローマウイルス(HPV)による感染は、子宮頸部の発癌に重要な役割をする。確認されている子宮頸癌事例の約99%が、生検で確認された扁平上皮内病変(SIL)または子宮頸部上皮内新生物(CIN)を伴うHPV感染と関連することが見出されている。性的接触を通じて主に伝染されるHPV感染の発生は、若い女性の間で最も多く、約2000万の性的に活発な男性および女性が現在感染している。人口の約1%が生殖器疣を有し、女性の4%が、軽度扁平上皮内病変(LSIL)もしくは高度扁平上皮内病変(HSIL)または意義不明の異型扁平細胞(ASC−US)などの子宮頸部前癌状態の病変を有する。
【0007】
年齢が35〜40歳である女性に優先的に観察されるこれらの病変の存在は、侵襲性子宮頸癌へと進行する高いリスクがある。ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続的な感染は、前癌状態の上皮内病変を発展させるのに必須であると一般に考えられている。LSILを有する女性の高リスク型HPVの感染は、HSILに進行する場合も、進行しない場合もある。実際、いくらかはHSILに進行するが、LSILのヒト対象の大部分において、寛解が起こる。子宮頸癌の99.7%がHPV陽性であるが、HSILまたは癌に発展するのに必要な遺伝子の発現を容易にするためには、ウイルスゲノムの宿主ゲノム内への組み込みが必要とされる。実際、持続的なHPV感染を有する女性10人につき1人だけが、より高度のCIN病変、例えば、子宮頸部上皮内新生物(CIN)グレード2およびグレード3(それぞれCIN2およびCIN3)に発展する場合があり、これらの上皮内病変事例の一部が、最終的に子宮頸癌に進行する場合がある。
【0008】
HPV感染によって引き起こされる病期として、初期段階HPV感染、後期段階HPV感染、意義不明の異型扁平細胞(ASC−US)が挙げられ、異型扁平細胞は、HSIL(ASC−H)、異型腺細胞(AGC)、軽度扁平上皮内病変(LSIL)、高度扁平上皮内病変(HSIL)、軽度、中程度もしくは重篤な細胞異形成をそれぞれ表す子宮頸部内新生物CIN1、CIN2、CIN3、侵襲性子宮頸癌、腺癌腫、または扁平細胞癌腫(SCC)を除外できない。
【0009】
これまで、子宮頸癌のスクリーニングは、パパニコロウ(Pap)塗沫による従来の細胞診に基づいており、疑わしい塗沫は、膣鏡診および/または組織学的生検によって追跡調査されている。細胞学的スクリーニングの使用は、子宮頸癌の死亡率の著しい低下をもたらす。しかし、主観的な試験基準に起因して、Pap塗沫試験の欠点として、サンプルを得ることの困難さ、観察者間および内での低い一致、高い偽陰性(最大で20%)及び偽陽性率、高度に訓練された人材が配置されている専門研究所の要求、および大部分のHPV感染者を同定できないことが挙げられる。現在のスクリーニングを改善して、罹患した女性への不必要な医療的治療介入および精神的苦痛を回避するために、より再現可能なアッセイが必要とされている。現在の子宮頸部細胞診スクリーニングは、30%〜87%の範囲の感度および86%〜100%の範囲の特異性を有する。
【0010】
核酸法によるHPV感染の検出が開発されているが、その高いコストや、アッセイ操作手順、設備、機器および高度に訓練された人材に対する要求だけでなく、CINに対する非常に低い陽性予測値に起因して、理想的でない。さらに、DNA試験は、LSILとHSILとの診断も、CIN病変と形質転換しない潜在的なまたは寛解されたウイルス感染との診断も区別できない。E6/E7 mRNAの検出のためのアッセイは、より高い陽性予測値を有するHPV DNA試験と同等の感度を示唆した。しかし、E6/E7癌タンパク質のインサイチュでの直接検出を示す報告は限られている。必要とされるのは、臨床検査室または医院の日常的な診療において実施することができ、初期段階の上皮病変を検出することが可能である、またはLSILとHSILとを見分けることができる、または子宮頸癌に進行するリスクを予測することができる、低コストの、簡単な、感度の高い特異的なアッセイである。
【0011】
HPVに対するモノクローナル抗体の産生のための公知のプロトコルは、抗HPVモノクローナル抗体の産生に一般に好適でなく、一般のヒト集団のスクリーニングのための免疫細胞化学的診断試験において用いられ得ない。その理由は、これらのプロトコルによって産生される抗体が、感染したヒト細胞において天然HPVタンパク質と必ずしも反応し得ないからである。さらに、先の抗体によって認識された抗原決定基は、臨床試料のサンプリング、固定および保存に関与する標準的な手順に耐性がある抗原決定基では必ずしもあり得ない。ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によってヒト対象においてHPV関連抗体またはウイルスタンパク質の存在を検出する他の試みは、極めて低いアッセイ感度を一般にもたらし、そのため、商業的に好適な診断試験を開発することができない。これらのELISAアッセイの大部分は、ヒト対象からの抗体と良好に相互作用することまたはこれに強く特異的に結合することができない単一のウイルスタンパク質または短いペプチド断片を標的としている。アッセイの特異性および感度がかなり低いため、HPV関連の侵襲性子宮頸癌を有することが確認されている患者からのサンプルを用いても、患者のサンプルの55%しかHPV感染に陽性であることが見出されなかった。試験集団が一般のスクリーニングからのものであるとすると、軽度もしくは前癌状態であってもまたはそうでなくても、アッセイの感度は臨床診療に適用するには低すぎるであろう。したがって、臨床サンプル用の診断ツールとして利用可能な成功裏のELISAアッセイは存在していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
100を超えるHPV感染型のうちの約15型のみが、CINまたは子宮頸癌に高いリスクで発展すると考えられている。また、子宮頸癌事例の70%程度ならびにCIN2およびCIN3の事例の50%が、高リスクHPV型−16およびHPV型−18感染によるものである。しかし、いくらかのHPV型の感染は子宮頸癌に決して進行し得ないが、いくらかの進行性子宮頸癌の事例は、低リスクHPV型による感染と関係する。高リスク型のHPV感染を正しく同定するよりもむしろ、特定の発癌タンパク質の発現を伴うHPV感染を同定することが重要となっている。したがって、HPV癌タンパク質を子宮頸癌バイオマーカーとして検出して、HSIL、前癌状態、または子宮頸癌を発生するリスクをより良好に同定することが必要とされている。
【0013】
適切なアッセイ、例えばHPVイムノアッセイを開発することが、かかるHPV癌タンパク質の検出または子宮頸癌のバイオマーカーに必要とされている。CIN2およびCIN3病変におけるE6/E7癌タンパク質の存在は、進行するリスクが高いことを示すことが明らかであった。しかし、インサイチュでのE6/E7癌タンパク質の検出に利用可能な抗体は限られている。したがって、侵襲性子宮頸癌および/または子宮頸癌ならびに他のHPV関連癌への悪性転換のリスクをスクリーニングするために、癌タンパク質を子宮頸癌バイオマーカーとして検出し、HSILもしくは≧CIN2(CIN2およびこれより高度)または前癌状態を同定するための抗体および免疫学的アッセイを開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
種々の実施形態は、組み換えHPVタンパク質に対する種々のモノクローナル抗体および細胞内タンパク質に対する抗体を用いた、HPVタンパク質および細胞内タンパク質のインサイチュでの検出のための種々のイムノアッセイを提供する。種々の実施形態はまた、子宮頸部細胞または子宮頸部組織におけるHPVタンパク質およびHPV感染に罹患した細胞内タンパク質の存在、ならびに限定されないが、膀胱癌、頭頸部癌、肺癌などを含めた他のHPV関連癌を検出するための、HPV免疫細胞化学(ICC)アッセイ、HPV免疫組織化学(IHC)アッセイも提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、高度異形成細胞を有するヒト対象をスクリーニングする方法は、限定されないが子宮頸癌、膀胱癌、肺癌、頭頸部癌などを含めた組織を含有するスライド上の生体サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型から1種以上のパピローマウイルスタンパク質をインサイチュで検出し、また、該サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型からHPV感染に罹患した1種以上の細胞内タンパク質をインサイチュで検出する、1種以上の免疫組織学的アッセイによって行われる。
【0016】
いくつかの実施形態において、高度異形成細胞を有するヒト対象をスクリーニングする方法は、1種以上の抗体を用いて、薄層のヒト細胞を含有するスライド上の生体サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型から1種以上のパピローマウイルスタンパク質をインサイチュで検出し、また、該サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型からHPV感染に罹患した1種以上の細胞内タンパク質をインサイチュで検出する免疫細胞学的アッセイによって行われる。
【0017】
いくつかの実施形態において、HPV E6 E7 ICCアッセイが提供される。
【0018】
いくつかの実施形態において、ICCアッセイは、Pap塗沫試験と共に用いられる。
【0019】
いくつかの実施形態において、1種以上の抗体は、1種以上の精製された組み換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成され、ここで、少なくとも1種の抗体は、パピローマウイルス癌タンパク質を認識することが可能である。いくつかの実施形態において、1種以上の抗体は、作用物質によって標識され、ヒト対象の生体サンプルからの1種以上のヒト細胞は、液体系溶液中に調製されて、1種以上の抗体と、生体サンプルの1種以上のヒト細胞に存在する1種以上のパピローマウイルス型からの1種以上のパピローマウイルスタンパク質との結合が、標識された1種以上の抗体と反応する作用物質の存在によって検出され得るようになる。いくつかの実施形態において、作用物質は、比色分析剤、蛍光色素原、ならびに1種以上のフローサイトメトリーアッセイにおける1種以上のヒト細胞のその後の分離および同定のための他の作用物質を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、免疫組織化学アッセイを実施するためのキットが提供される。キットは、前抗体ブロッキング溶液、後抗体ブロッキング溶液、一次抗体としての抗HPV抗体、HRPもしくはビオチンとコンジュゲートした抗マウスもしくは抗ウサギ免疫グロブリン、または二次抗体としての他の作用物質、検出される二次抗体の基質として用いられる適切な作用物質を含有する溶液を含んでいてよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、免疫細胞化学アッセイを実施するためのキットが提供される。キットは、前抗体ブロッキング溶液、後抗体ブロッキング溶液、一次抗体としての抗HPV抗体、HRPもしくはビオチンとコンジュゲートした抗マウスもしくは抗ウサギ免疫グロブリン、または二次抗体としての他の作用物質、検出される二次抗体の基質として用いられる適切な作用物質を含有する溶液を含んでいてよい。
【0022】
一実施形態は、ヒト対象におけるパピローマウイルス感染の病期を決定するための方法であって:タンパク質を含む組織サンプルまたはタンパク質を含む細胞サンプルからなるサンプルを上記ヒト対象から得る工程と;上記サンプルを、1種以上の組み換えHPVタンパク質と特異的に結合する第1の1種以上の抗体と接触させる工程において、上記複数の組み換えHPVタンパク質が、組み換えパピローマウイルスE6遺伝子産物、組み換えパピローマウイルスE7遺伝子産物、組み換えパピローマウイルスL1遺伝子産物、組み換えパピローマウイルス切断L1遺伝子産物、および組み換えパピローマウイルスL2遺伝子産物からなる群から選択され、ここで、上記接触が、上記複数の抗体の特異的結合を促進する条件下に起こる、工程と;上記第1の1種以上の抗体のうちの1種以上に特異的に結合する、上記サンプル中の第1の1種以上のタンパク質の存在、非存在または量を、上記接触されたサンプルに対する上記第1の1種以上の抗体のうちの1種以上の特異的結合の尺度を少なくとも部分的に基準として決定する工程と;上記ヒト対象における上記パピローマウイルス感染の病期を、上記サンプル中の上記1種以上のタンパク質の上記決定された存在、非存在または量を基準として決定する工程とを含む方法を提供する。
【0023】
一実施形態において、第1の1種以上のタンパク質は、パピローマウイルスE6遺伝子産物、パピローマウイルスE7遺伝子産物、パピローマウイルスL1遺伝子産物、パピローマウイルス切断L1遺伝子産物、およびパピローマウイルスL2遺伝子産物からなる群から選択される1種以上のタンパク質を含む。
【0024】
一実施形態において、第1の1種以上のタンパク質は、パピローマウイルスE6遺伝子産物およびパピローマウイルスE7遺伝子産物からなる群から選択される1種以上のタンパク質を含む。
【0025】
一実施形態において、該方法は、上記サンプルを第2の1種以上の抗体と接触させる工程と;上記サンプル中の、p16INK4a、pRB、p53、E2F、E2F活性化細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ、CDK4、CDK6、Ki−67(MIB−I)、MYCタンパク質、サイクリン−A、サイクリン−B、サイクリン−E、テロメラーゼ−TERC、MCM2、TOP2A、熱ショックタンパク質40(HSP40)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、CA9/MN、Iaminin5、brn−3a、CDK N2、トポイソメラーゼ2A、ミクロソームメンテナンスタンパク質−2、ミクロソームメンテナンスタンパク質−4、ミクロソームメンテナンスタンパク質−5、スルビビン、VEGF、p27(kip1)、およびp21(waf)からなる群から選択される第2の1種以上のタンパク質の存在、非存在または量を、上記接触されたサンプルに対する上記第2の複数の抗体のうちの1種以上の特異的結合の尺度を基準にして決定する工程と;上記ヒト対象を、パピローマウイルス感染に関して、上記第2の1種以上のタンパク質の上記決定された存在、非存在または量をさらに基準にしてスクリーニングする工程とをさらに含む。
【0026】
一実施形態において、1種以上のタンパク質は、p16INK4aを含む。
【0027】
一実施形態において、サンプルは、インサイチュにある。
【0028】
一実施形態において、サンプルは、組織サンプルを含み、上記決定工程は、免疫組織化学アッセイを含む。
【0029】
一実施形態において、サンプルは、細胞サンプルを含み、上記決定工程は、免疫細胞化学アッセイを含む。
【0030】
一実施形態において、上記病期を決定する工程は、HSILの存在または非存在を決定する工程を含む。
【0031】
一実施形態において、上記病期を決定する工程は、後期段階HPV感染HSILの存在または非存在を決定する工程を含む。
【0032】
一実施形態において、上記病期を決定する工程は、高度異形成の存在または非存在を決定する工程を含む。
【0033】
一実施形態において、病期は、≧CIN2または<CIN2である。
【0034】
一実施形態において、病期は、≧CIN2は、CIN2/3である。
【0035】
一実施形態において、病期は、HSILである。
【0036】
一実施形態において、病期は、後期段階HPV感染である。
【0037】
一実施形態において、病期は、高度異形成である。
【0038】
一実施形態において、組み換えHPVタンパク質は、以下のプロセス:上記パピローマウイルス遺伝子産物ならびにHIS標識、GST標識、およびMBP標識からなる群から選択される親和性標識を含む融合タンパク質をコードする組み換え構築物を与える工程と;上記組み換え構築物を宿主細胞において発現させる工程と;上記宿主細胞から調製された抽出物を、親和性樹脂によって、上記親和性樹脂が上記親和性標識と特異的に結合する条件下にインキュベートする工程と;上記組み換えHPVタンパク質を上記親和性樹脂から溶離する工程とを含むプロセスであって、上記組み換え構築物を上記宿主細胞において発現させる上記工程は、上記溶離工程が上記組み換えHPVタンパク質を1mg/L〜10mg/Lの濃度で含む組成物を生成するようなタンパク質発現レベルを結果として生じ、上記組み換えHPVタンパク質は、SDS PAGEによって決定されるように少なくとも90%の純度で上記組成物中に存在し、上記組み換えHPVタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによって決定されるように、実質的に可溶性の単量体形で上記組成物中に存在する、プロセスによって作製される。
【0039】
一実施形態において、パピローマウイルスは、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−53、HPV−54、HPV−55、HPV−56、HPV−58、HPV−59、およびHPV−66からなる群から選択される1種以上のウイルスを含む。
【0040】
一実施形態において、パピローマウイルスは、HPV−16およびHPV−18からなる群から選択される1種以上のウイルスを含む。
【0041】
一実施形態において、組み換えパピローマウイルスE6遺伝子産物は、組み換えHPV−16E6遺伝子産物または組み換えHPB−18E6遺伝子産物である。
【0042】
一実施形態において、組み換えパピローマウイルスE7遺伝子産物は、組み換えHPV−16E7遺伝子産物または組み換えHPV−18E7遺伝子産物である。
【0043】
一実施形態において、細胞サンプルは、正常細胞、ASC−US細胞、ASC−H細胞、LSIL細胞、HSIL細胞、ADC細胞、またはSCC細胞を含む。
【0044】
一実施形態において、組織サンプルは、良性、CIN1、CIN2、CIN3、SCC、またはADCである。
【0045】
一実施形態において、該方法は、細胞サンプルを含む第2サンプルを上記ヒト対象から得る工程と、上記サンプルにおいて細胞学的パパニコロウ塗沫アッセイを実施する工程とをさらに含む。
【0046】
一実施形態において、該方法は、核酸を含む第2サンプルを上記ヒト対象から得る工程と、上記サンプルにおいてヒトパピローマウイルスについてDNA試験を実施する工程とをさらに含む。
【0047】
本発明の先に列挙した特徴が詳細に理解され得るように、本発明のより具体的な記載が、先に簡単にまとめられてはいるが、実施形態を参照してなされてよく、そのいくつかは添付の図面において説明される。しかし、添付の図面は、いくつかの実施形態の典型的な実施形態を説明しているのみであり、したがって、実施形態の範囲を限定するとみなされてはならず、本発明は他の等価な効果的な実施形態を認め得ることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】図1Aは、抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いた液体系溶液において、CIN2と診断された臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図1B】図1Bは、抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた液体系溶液において、CIN2と診断された別の臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図2】図2は、抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた液体系溶液において、CIN3と診断された臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図3】図3A〜3Dは、図2に示したものと同じ抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた別の液体系溶液において、CIN3と診断された別の臨床サンプルのICC染色の結果からの代表画像を示す。
【図4A】図4Aは、抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いた、図3A〜3Dに示したものと同じCIN3サンプルからのICC染色の結果を示す。
【図4B】図4Bは、同じ抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いた、図4Aに示したものと同じICC染色結果の別の画像を示す。
【図5】図5は、抗p16マウスモノクローナル抗体を用いた、図3A〜3Dに示したものと同じCIN3サンプルからのICC染色の結果を示す。
【図6A】図6Aは、抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた液体系溶液において、扁平細胞癌腫(SCC)と診断された臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図6B】図6Bは、抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いた、図6Aに示したものと同じSCCサンプルのICC染色の結果を示す。
【図6C】図6Cは、抗p16マウスモノクローナル抗体を用いた、図6Aに示したものと同じSCCサンプルのICC染色の結果を示す。
【図7A】図7Aは、抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた液体系溶液において、正常と診断された臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図7B】図7Bは、抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いた、図7Aに示したものと同じ臨床サンプルのICC染色の結果を示す。
【図8A−B】図8A〜8B:子宮頸癌組織およびその隣接する正常組織における抗E6抗体を用いたIHCの画像。
【図8C−D】図8C〜8D:子宮頸癌およびその隣接する正常組織における抗E7抗体を用いたIHCの画像。
【図9A−C】図9A〜9C:子宮頸癌サンプル:陽性10×(左)、陽性20×(中央)、陰性20×(右)における抗E6抗体によるIHCの画像。
【図9D−F】図9D〜9F:子宮頸癌サンプル:陽性10×(左)、陽性20×(中央)、陽性40×(右)における抗E7抗体によるIHCの画像。
【図9G−I】図9G〜9I:子宮頸癌サンプル:陽性10×(左)、陽性20×(中央)、陰性20×(右)におけるp16INK4a抗体によるIHCの画像。
【発明を実施するための形態】
【0049】
種々の実施形態は、高リスクおよび低リスクHPV型に感染した高度異形成細胞が1種以上の抗体によって検出され得るようなバイオマーカーとしてのHPV癌タンパク質に対する種々のイムノアッセイおよびモノクローナル抗体を提供する。種々の実施形態は、HPV癌タンパク質の存在を検出して、組織または子宮頸部細胞において高度または前癌状態の病変からの高度異形成細胞をインサイチュで同定するHPV免疫組織化学(IHC)アッセイおよびHPV免疫細胞化学(ICC)アッセイを提供する。種々の実施形態はまた、高度異形成細胞のインサイチュでの検出に関して、組み合わされたHPVウイルスマーカーおよび細胞マーカーをIHCまたはICCアッセイに用いることで、単一のHPVウイルスマーカーまたは単一の細胞マーカーをIHCまたはICCアッセイに用いる方法と比較して、より高い感度を得る方法も提供する。
【0050】
いくつかの実施形態において、パピローマウイルス感染に関してヒト対象をスクリーニングする方法は、薄層のヒト細胞を含有するスライド上での免疫細胞学的アッセイであって、スライド上の生体サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルスタンパク質をインサイチュで検出するアッセイによって行われる。薄層は、子宮頸部細胞の単層である。
【0051】
1種以上の精製された組み換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成された、またはHPV感染に罹患した1種以上の細胞内タンパク質に対して生成された1種以上の抗体を用いて薄層のヒト細胞を染色するために、少なくとも1種の抗体が、パピローマウイルス癌タンパク質を認識することが可能である。パピローマウイルス癌タンパク質として、限定されないが、HPV−16E6タンパク質、HPV−16E7タンパク質、HPV−18E6タンパク質、HPV−18E7タンパク質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。細胞マーカーとして、限定されないが、p16INK4a、pRB、p53、E2F、E2F活性化細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ、CDK4、CDK6、Ki−67(MIB−I)、MYCタンパク質、サイクリン−A、サイクリン−B、サイクリン−E、テロメラーゼ−TERC、MCM2、TOP2A、熱ショックタンパク質40(HSP40)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、CA9/MN、Iaminin5、brn−3a、CDK N2、トポイソメラーゼ2A、ミクロソームメンテナンスタンパク質−2、ミクロソームメンテナンスタンパク質−4、ミクロソームメンテナンスタンパク質−5、スルビビン、VEGF、p27(kip1)、およびp21(waf)が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、薄片の臨床組織サンプルを含有するスライドにおける1種以上の免疫組織化学アッセイを行って、1種以上の精製された組み換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成された、またはHPV感染に罹患した1種以上の細胞内タンパク質に対して生成された1種以上の抗体を用いてヒト細胞を染色させた。少なくとも1種の抗体が、パピローマウイルス癌タンパク質を認識して、スライド上の薄片の臨床組織サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型から1種以上のタンパク質をインサイチュで検出することが可能である。パピローマウイルス癌タンパク質として、限定されないが、HPV−16E6タンパク質、HPV−16E7タンパク質、HPV−18E6タンパク質、HPV−18E7タンパク質、およびこれらの組み合わせが挙げられる。細胞マーカーとして、限定されないが、p16INK4a、pRB、p53、E2F、E2F活性化細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ、CDK4、CDK6、Ki−67(MIB−I)、MYCタンパク質、サイクリン−A、サイクリン−B、サイクリン−E、テロメラーゼ−TERC、MCM2、TOP2A、熱ショックタンパク質40(HSP40)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、CA9/MN、Iaminin5、brn−3a、CDK N2、トポイソメラーゼ2A、ミクロソームメンテナンスタンパク質−2、ミクロソームメンテナンスタンパク質−4、ミクロソームメンテナンスタンパク質−5、スルビビン、VEGF、p27(kip1)、およびp21(waf)が挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態において、細胞学的パパニコロウ塗沫試験の結果と1種以上の免疫組織学的アッセイの結果とを比較するために、臨床サンプルにおける細胞学的パパニコロウ塗沫アッセイも実施された。ヒト対象から臨床サンプルにおけるパピローマウイルスゲノムの存在を検出するために、臨床サンプルにおける核酸ハイブリダイゼーションアッセイも実施された。
【0054】
種々の実施形態は、種々の方法、検出アッセイ、キット、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ポリペプチド、組み換えタンパク質、ならびにHPV感染(例えば、一般のHPV感染、ならびに種々のHPV遺伝子型、高リスクHPVおよび低リスクHPVによる感染を含む)を検出するのに有用な核酸に一般に関する。バイオマーカーとして有用である、HPVタンパク質に対する種々の新規のモノクローナル抗体、および、HPVウイルスタンパク質、HPV癌タンパク質を検出し、子宮頸癌を早期にスクリーニングし、≧CIN2の病期を診断するための有用なツールが提供される。本明細書に記載されているツールはまた、HPV感染の早期の臨床スクリーニングならびに子宮頸癌および他のHPV関連癌の一般の診断にも用いられ得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、1種以上の精製された組み換えパピローマウイルスタンパク質として、パピローマウイルスE6タンパク質、パピローマウイルスE7タンパク質、パピローマウイルスL1タンパク質およびこれらの組み合わせが挙げられる。組み換えパピローマウイルスタンパク質として、限定されないが、組み換えHPV−16E6タンパク質、組み換えHPV−16E7タンパク質、組み換えHPV−18E6タンパク質、組み換えHPV−18E7タンパク質、およびHPV−16L1タンパク質、組み換えHPV−18L1タンパク質、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態は、高リスクおよび低リスクHPV型による感染が単一のモノクローナル抗体によって検出され得るような、HPVウイルスタンパク質に対する種々のモノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態はまた、1種以上のHPV型を検出するための非HPV型の特異的なモノクローナル抗体を提供する。1種以上のパピローマウイルス型として、高リスクHPV型、低リスクHPV型、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−56、HPV−58、HPV−59、およびHPV−68、HPV−6、HPV−11、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−53、HPV−54、HPV−55、およびHPV−56、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態において用いられる種々の用語の定義:
【0058】
NILM:悪性の上皮内病変に対して陰性。NILMは、新生物の細胞痕跡が存在しないときに用いられる;これは、有機体および/または他の非新生物性所見、例えば反応性/修復性変化を含み得る。
【0059】
ASC−US:意義不明の異型扁平細胞。細胞は、他に特定されない限り、通常、中間体または表面扁平細胞のサイズであり、示唆されているがLSILまたはSILの診断ではない核変化を有する。
【0060】
ASC−H:異型扁平細胞は、HSILを除外できない。細胞は、通常、化生細胞のサイズであり、単一でもクラスターでも見られ得る;これらは、示唆されているが、HSILの診断ではない。
【0061】
LSIL:HPV細胞変性効果/軽度異形成/CIN1を包含する軽度扁平上皮内病変。
【0062】
HSIL:中程度異形成/CIN2および重篤な異形成/CIS/CIN3ならびに浸潤が疑われる特徴を有するHSILを包含する高度扁平上皮内病変。
【0063】
扁平細胞癌腫(SCC):近隣の組織、血管、リンパ管およびリンパ節に局所的に侵襲性である、子宮頸部の癌。その進行した段階において、処置することは困難であり得、致命的な結果であることが判明する場合がある。浸潤の段階または程度に応じて、子宮頸部の侵襲性癌は、局所切除、子宮摘出、広範子宮摘出、放射線、および化学療法によって処置され得る。
【0064】
腺癌腫:大部分の子宮頸部癌は、外面皮膚を作り上げる扁平細胞からのものであるが、子宮内に至る子宮頸部管の内側を覆う粘液産生細胞から生ずる偶発癌が存在する。この腺型は、「扁平細胞癌腫」と対照的に「腺癌腫」と呼ばれる。腺癌腫は、検出するのが困難であり得る。扁平細胞癌とは異なり:腺癌腫前駆体は、存在する場合、Pap塗沫において同定することが困難であり得る。扁平細胞異形成から子宮頸部の扁平細胞癌への遅い進行は、腺癌腫におけるほど均一なものではない。
【0065】
米国では、大部分のPap結果は正常であるが、約400〜500万の異常なPap試験結果が毎年見出されている。最も異常な結果は、軽度の異常(ASC−US、典型的には、Pap結果の2〜5%)またはLSIL(結果の約2%)であり、HPV感染を示している。大部分の軽度子宮頸部異形成が、子宮頸癌に至ることなく自発的に退行するが、異形成は、さらなる用心が必要とされることを示すものとして機能し得る。CIN1は、最も一般的で最も良性の形態の子宮頸部上皮内新生物であり、通常は2年以内に自発的に消散する。このため、LSILの結果は、単なる「経過を観察する」考え方で管理され得る。しかし、12〜16%の確率で、より重篤な異形成に進行するため、医師は、生検と共に膣鏡診を実施することによって、より積極的に結果を追求しようとする場合がある。異形成が進行すると、処置が必要である場合がある。したがって、HPV癌タンパク質をインサイチュで検出するPap塗沫試験と共にHPV E6 E7 ICCアッセイを提供することが有用であり、ASC−USもしくはLSIL、またはCIN1の患者において、あるいは迅速な治療介入の利益を享受し、「様子を見る」ことに関する不安を回避することができる患者において、高度異形成細胞を検出して、これらの潜在するCIN2を同定することが、特に有益である。
【0066】
高度扁平上皮内病変またはHSILもしくはHGSILは、インサイチュでの中程度または重篤な子宮頸部上皮内新生物または癌腫を示している。これは、Pap試験にしたがって通常診断される。これらの病変が侵襲性子宮頸部癌に至る可能性があるいくつかの事例において、適切に追求されない場合。HGSILは、癌が存在しないことを意味する。HGSILの結果を有する全ての女性のうち、2%以下が、この時点で侵襲性子宮頸癌を有するが、約20%は、処置されることなく進行して侵襲性子宮頸癌を有するようになる場合がある。この進行に対処するために、HGSILは、通常、生検と共に迅速な膣検診を受けて、異形成組織をサンプリングまたは除去する。この組織は、病理学試験に送られて、Pap塗沫結果よりも確実である組織学的分類に割り当てられる。HGSILは、CIN2またはCIN3の組織学的分類に一般に相当する。したがって、HE(ヘマトキシリンおよびエオシン染色)を伴うHPV E6 E7 IHCアッセイまたはHPV E6 E7癌タンパク質をインサイチュで検出するためのPap試験を伴うHPV E6 E7 ICCアッセイを提供することが有益であり、CIN2/CIN3患者を同定するのに特に有益である。
【0067】
いくつかの実施形態において、1種以上の抗体と、生体サンプル中に存在する1種以上のパピローマウイルス型からの1種以上のタンパク質との結合は、顕微鏡下で検査され、標識された1種以上の抗体と反応する作用物質の存在を検出し、ここで、該作用物質として、比色分析剤、蛍光色素原、およびこれらの組み合わせが挙げられる。生体サンプルとして、子宮頸部細胞、子宮頸部組織、子宮頸部スワブ、体液、血清、血液、腫瘍、細胞培養、生検を含むもの、およびこれらの組み合わせが挙げられる。生体サンプルは、異常なPap試験結果に起因する照会としての人々の群、または子宮頸癌の日常的なスクリーニングのための一般の集団から得られ得る。
【0068】
説明例1
【0069】
いくつかの実施形態は、剥脱した子宮頸部細胞におけるHPVタンパク質および細胞内タンパク質の検出を含むイムノアッセイに向けられる。例として、ICCアッセイの結果は、HPV E6およびHPV E7タンパク質が、抗HPV E6または抗HPV E7抗体を用いて、スライド上に固定された単一細胞についてインサイチュで検出され得ることを実証する。HPV E6またはHPV E7癌タンパク質のインサイチュでの存在は、種々の液体系溶液中の種々の段階の子宮頸部擦過物サンプルから検出され得る。同じ子宮頸部擦過物サンプルもまた、標準のパパニコロウ染色によって処理して、ICC染色結果とPap塗沫結果とを比較した。
【0070】
例えば、HPV E6タンパク質は、それぞれ、陽性率が増加する、子宮頸部擦過物の正常な、ASC−US、ASC−H、CIN1、CIN2/3サンプルにおいて検出される。Pap塗沫HSIL(CIN2/3)によって診断されたサンプルについては約92%の陽性率であるが、Pap塗沫によって正常であると診断されたサンプルの15%のみが、同じ抗HPVE6抗体を用いたICCによって陽性に染色した。ASC−USまたはASC−Hサンプルについて、これらのサンプルの約33%〜38%が、LSIL、HSILサンプルに用いられているのと同じ抗HPV E6抗体によって陽性に染色され、これらのASC−USまたはASC−Hサンプル対象における発癌タンパク質の発現が、潜在する≧CIN2(CIN2およびこれより高度)であり得ること、およびさらなる癌の進行について追跡調査される必要があることを示している。ASC−USと診断されたPap粉末、および(抗HPV E6抗体によって)陰性であるとされたICC染色を有するサンプルについて、進行性の病変に発展するリスクをほとんど有さない場合がある。データが示しているように、いくつかの実施形態に記載されている抗HPV E6抗体を用いたICC染色法は、74%の特異性を有して≧CIN2について93%のアッセイ感度を提供する。同様のICC結果がまた、抗HPV E7抗体を用いた、同じサンプルにおいても見られる。これらのデータは、いくつかの実施形態に記載されているE6またはE7抗体およびE6 E7 ICC試験が、1)補助試験としてPap異常な患者をトリアージするために、および2)日常的なPap試験を伴う、一般の集団からの子宮頸癌のスクリーニングのための共試験に、HPV癌タンパク質を検出するバイオマーカーとして有用であり得ることを示唆する。
【0071】
いくつかの実施形態において、免疫細胞学的アッセイを実施するためのキットが提供される。キットは、前抗体ブロッキング溶液、後抗体ブロッキング溶液、一次抗体としての抗HPV抗体、HRもしくはビオチンとコンジュゲートされた抗マウスもしくは抗ウサギ免疫グロブリン、または二次抗体としての他の作用物質、検出される二次抗体の基質として用いられる適切な作用物質を含有する溶液を含んでいてよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、臨床サンプルにおける核酸ハイブリダイゼーションアッセイは、ヒト対象からの臨床サンプルにおけるパピローマウイルスゲノムの存在を検出する。核酸ハイブリダイゼーションアッセイとして、ポリメラーゼ鎖反応、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、DNAチップアッセイ、放射性核酸ハイブリダイゼーションおよび検出アッセイ、ならびに非放射性核酸ハイブリダイゼーションおよび検出アッセイが挙げられる。
【0073】
加えて、Pap正常なサンプルを、HPV E6またはE7 ICCによっても試験すると、抗HPV抗体を用いた陰性の染色(44のうち44)が見られた。これらのデータは、いくつかの実施形態に記載されているICC染色アッセイが非常に特異的であることを示している。同じサンプルにおけるHPV DNA試験結果と比較して、Pap塗沫の正常なサンプルの16%(37のうち7)は、HPV DNA試験において陽性を示す。この研究において用いられる高度HPV DNA試験は、FDAに認可されたHPV DNA試験、HC2であった。これらのHPV DNAは陽性であるがPapは正常でHPV ICCは陰性のサンプルについて、これらは、HPV DNAアッセイについて偽陽性であること、またはHPV発癌タンパク質の検出可能な発現を有さずにHPV DNAについて陽性であることが可能である。したがって、本明細書に記載されているHPV ICCアッセイは、HPV DNA試験と比較して子宮頸癌のスクリーニングについてより良好な臨床的関連を提供する。
【0074】
説明例2
【0075】
いくつかの実施形態は、子宮頸癌におけるHPV癌タンパク質および細胞内タンパク質の検出を含むイムノアッセイに向けられる。子宮頸癌の腫瘍細胞において発現されるHPV E6およびE7発癌タンパク質は、特異的な抗E6および抗E7抗体を用いたIHCアッセイによって試験される大部分のサンプルにおいて検出され得る。これらの結果が病因を強化し、HPV癌タンパク質の分子メカニズムが大部分の子宮頸癌事例において機能する。研究結果は、それぞれ、無調節なウイルスE6およびE7癌タンパク質の発現によるp53およびpRBタンパク質の機能的不活性化をさらに実証し、p16INK4aの過剰発現を結果としてもたらす。
【0076】
実証されたデータのように、抗E6抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度は、100%の特異性(3個の正常な子宮頸部組織のうち0個)を有して、約92.1%(203個の子宮頸癌組織のうちの187個)である。16個のIHC E6陰性サンプルの中で、15個が、抗p16抗体を用いたIHCにおいて陽性を示す。組み合わされたE6およびp16 IHCアッセイは、99.5%のアッセイ感度(203個のサンプルのうち202個がE6またはp16 IHC陽性である)を提供する。
【0077】
抗p16抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度は、約91.3%(208のうち190)である。18個のIHC p16陰性サンプルの中で、17個のサンプルが、抗E6抗体を用いたIHCにおいて陽性を示す。組み合わされたp16およびE6 IHCアッセイは、99.5%のアッセイ感度(203個のサンプルのうち202個がp16またはE6 IHC陽性である)を提供する。
【0078】
抗E7抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度は、約76.2%(202のうち154)である。48個のIHC E7陰性サンプルの中で、28個のサンプルが、E6およびp16の両方において陽性を示し、5個のサンプルが、E6陽性およびp16陰性を示し、14個のサンプルが、E6陰性およびp16陽性を示し、唯1個のサンプルが、E6、E7、およびp16において全て陰性である。組み合わされたE6、E7およびp16 IHCアッセイは、99.5%のアッセイ感度(202個のサンプルのうち201個がE6、E7またはp16 IHC陽性である)を提供する。
【0079】
子宮頸癌におけるHPV E6/E7癌タンパク質およびp16細胞内タンパク質の相違発現を示すサンプルについて、種々の経路が、これらの個々の事例に関する癌の発生に関与する可能性がある。データは、複数のバイオマーカー(すなわち、組み合わされたE6およびp16 IHCアッセイ)が、99.5%(100%に近い)の子宮頸癌を検出することが要求されることを示唆している。
【0080】
HPV癌タンパク質および細胞内タンパク質は、両方が、発癌において重要な役割をし、HPV関連癌の診断のためのバイオマーカーとして機能する。種々のHPV関連癌において研究されているさらなるバイオマーカーは、オーダーメイド医療を提供することを助けるであろう。
【0081】
したがって、いくつかの実施形態は、抗体産生ハイブリドーマ細胞を精製されたHPV16E6組み換えタンパク質および精製されたHPV18E6組み換えタンパク質によってスクリーニングすることによって、2種の異なるHPV型、HPV16およびHPV18の両方からのE6タンパク質における共通抗原決定基を認識することが可能なモノクローナル抗体を提供する。いくつかの実施形態は、HPV16E7およびHPV18E7タンパク質における共通抗原決定基を認識するモノクローナル抗体を提供する。例として、モノクローナル抗体は、種々の生体サンプル、細胞株、さらに/または種々の段階の上皮内病変(CIN2、CIN3、LSIL、HSIL、ASC−US)ならびに種々の子宮頸癌、扁平細胞癌腫(SCC、一般的な癌の型)および腺癌腫(ADC、腺癌の型)の臨床サンプルにおいて試験するのに用いられた。
【0082】
いくつかの実施形態において、ヒト対象のパピローマウイルス感染をスクリーニングする方法は、ヒト対象から臨床サンプルを得る工程と、種々のHPV組み換えタンパク質および癌タンパク質に特異的な研究室で生成した抗体を用いて、ヒト対象からの臨床サンプルにおいて1種以上の免疫学的アッセイを実施する工程とを含み、ヒト対象におけるHPVタンパク質およびHPV抗体の存在からHPV感染の存在を検出し、これをスクリーニングする。いくつかの実施形態において、ヒト対象におけるHPVタンパク質は、限定されないが、種々のHPV早期および後期タンパク質に対する種々のポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含めた、HPV組み換えタンパク質に対する抗体を用いて検出される。
【0083】
例示的な発癌性E6またはE7初期段階遺伝子のクローニングが本明細書に記載されている。HPV−16E6、E7またはL1遺伝子のアミノ酸コード領域を含有するDNA断片は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)増幅によって得られた。DNA断片は、ヒスチジン標識発現ベクター内にサブクローニングされて、E6またはE7組み換えタンパク質の発現のためのプラスミドDNAを生成した。中でも、ヒスチジン標識(例えば、His、Hisなど)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合、マルトース結合タンパク質(MBP)を有する他の型の発現ベクターも用いた。加えて、DNA断片は、他の発現系、すなわち、e.bacilobirus、酵母菌などにサブクローニングされて、種々のHPV型および菌株からE6またはE7組み換えタンパク質を発現することができる。例えば、バキュロウイルスにおいて発現されたHPV16からのL1組み換えタンパク質が得られ、HPV−16−L1−バキュロとして設計された。
【0084】
E6またはE7組み換えタンパク質は、IPTG駆動の誘導を用いて大腸菌BL21(DE3)において発現された。37℃において2時間タンパク質発現を誘導した後に、供給者(それぞれAmershamおよびNew England Biolabs)によって推奨されている標準のプロトコルを用いてE6またはE7組み換えタンパク質を得、約1mg/Lの最終濃度に精製した。タンパク質精製カラムにおけるより長い誘導時間およびリフローは、より高いタンパク質収量を生成し、かなり濃縮され精製された組み換えタンパク質を約2〜10mg/Lの収量で生じることが見出された。組み換えGST−E6またはHisE6タンパク質の純度は、PAGE分析に基づいて90%を超えることが推定された。組み換えE6またはE7融合タンパク質は、臨床サンプルにおいてE6またはE7抗体の存在を検出するのに用いられ、また、ポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体の産生のための免疫原としても用いられた。
【0085】
クローニング、および免疫学的アッセイを行うための基本的な技術は、「Antibodies:A Laboratory Manual」、HarlowおよびLane、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.1989;「Molecular Cloning」、A Laboratory Manual、Sambrook、FritschおよびManiatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、ならびに当該分野において知られている他の本およびマニュアルに見出すことができる。関連する免疫学的アッセイ、組織および/もしくは子宮頸部細胞のための免疫組織化学、ならびに/または免疫細胞学的アッセイ後のフローサイトメトリは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)の検出方法および子宮頸癌におけるその適用」のタイトルで、2006年11月13日に出願された米国特許出願第11/559,366号、「HPV検出のためのタンパク質チップ」のタイトルで、2008年4月14日に出願された米国特許出願第12/082,740号、「HPV検出のための抗体およびアッセイ」のタイトルで、2008年6月13日に出願された米国出願第61/131,991号、および「HPV関連子宮頸癌の初期段階状態および後期段階の検出、スクリーニングおよび診断に有用な、HPVタンパク質に対する新規モノクローナル抗体」のタイトルで、2008年2月22日に出願された米国出願第61/192,912号、「HPVタンパク質に対する新規モノクローナル抗体」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,053号、「初期段階および後期段階のHPV感染のインサイチュでの検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,054号、「初期段階および後期段階のHPV感染のインサイチュでの検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,055号、「初期段階および後期段階のHPV感染の検出」のタイトルで、2009年6月10日に出願された米国出願第12/456,076号、「HPV関連癌の検出、スクリーニングおよび診断」のタイトルで、2008年11月12日に出願された米国出願第61/199,013号、および「HPV関連癌の検出、スクリーニングおよび診断」のタイトルで、2009年11月12日に出願された米国出願第米国出願第12/590,747号と相互に関連する。上記相互関連出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
種々の実施形態はまた、一般のHPV感染ならびに種々のHPV遺伝子型、高リスクHPVおよび低リスクHPVによる感染を検出するのに有用な、種々の方法、検出アッセイ、キット、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ポリペプチド、組み換えタンパク質、ならびに核酸も提供する。加えて、HPVタンパク質の存在を検出する際のアッセイまたはサンプルフォーマットは、限定されず、子宮頸部組織、子宮頸部細胞、子宮頸部擦過物、血清、体液などに用いられ得る。有用なスクリーニングまたは診断アッセイは、IHC、ICC、フローサイトメトリ、ビーズにカップリングした抗体、迅速な試験、タンパク質チップ、ドットブロット、スロット、ならびに従来のELISAアッセイであり得る。HPVタンパク質は、病理学者によるスコアリングの後、IHC染色によって証明されるように上皮組織に存在することが、いくつかの実施形態に記載されている抗体によって検出され得る。
【0087】
種々のHPV遺伝子型からのHPV DNA、ゲノム、早期ウイルスタンパク質、後期段階ウイルスタンパク質、癌タンパク質、および/またはカプシドタンパク質の検出は、「Antibodies:A Laboratory Manual」、HarlowおよびLane、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.1989;「Molecular Cloning」、A Laboratory Manual、Sambrook、FritschおよびManiatis著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989、ならびに当該分野において知られている他の本およびマニュアルにしたがった種々のインビトロおよびインビボ方法ならびに検出アッセイによって実施され得、HPV感染の一般の臨床スクリーニングにおいて非常に有用であり得る。
【0088】
免疫学的アッセイによるHPV抗体および/または癌タンパク質の検出は、HPV感染の早期臨床スクリーニングおよび子宮頸癌の一般の診断において用いられ得る。変更されたレベルのHPVタンパク質および宿主タンパク質の匹敵する検出は、同じまたは異なるアッセイにおいて実施され得る。これは、子宮頸部のHPV関連癌腫、ならびにHPV感染によって誘導される上皮細胞の異常に関連するこれらの事例、前悪性および悪性HPV関連上皮細胞病変、ならびにHPV−関連子宮頸部癌腫および腺癌腫を発生するリスクのあるこれらのものの診断においても用いられ得る。本明細書において記載されている方法は、独立して用いられても、従来の細胞学的パパニコロウ塗沫試験または組織学的試験に対する補助スクリーニングツールとして用いられてもよく、これらの結果は、患者の経過観測の管理と比較され得る。
【0089】
より詳細な例
【0090】
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は、子宮頸部異形成および癌において重要な病因的役割をすることが認知されている。ウイルスゲノムの翻訳または転写などの下位の事象を検出しない、2種のFDA承認されたHPV DNA試験が存在する。これらの試験は、HPV DNAの存在を検出することができるが、真の前癌状態と自己限定性のHPV感染とを区別することができない。したがって、自己限定性の感染を有するこれらのHPV感染個体と臨床的に有意な疾患との間で区別するための臨床的必要性が存在する。さらに、分子診断補助剤を同定して、高度異形成および癌腫の検出のための子宮頸部細胞診試験の特異性を改善し、偽陰性の子宮頸部細胞診試験結果のリスクを低減する重大な臨床的必要性も存在する。癌の発生に寄与するメカニズムは、HPV E6およびE7癌遺伝子の作用に大部分が起因する。これらの癌タンパク質は、主要な細胞周期チェックポイントで作動する腫瘍抑制遺伝子を不活性化する。HPV E6およびE7は、転写因子E2Fを放出してアポトーシスを誘導する腫瘍抑制因子であるp53および網膜芽腫(RB)それぞれと相互作用してこれらを劣化させる。複数の目的で役に立つE7はまた、細胞周期遺伝子も刺激し、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤の機能もブロックし、腫瘍形成に寄与する異数性も誘導する。前癌状態の病変において、E6およびE7タンパク質は、良性組織において見られるよりもかなり高いレベルで発現され、この増加したHPV E6およびE7癌タンパク質発現は、前癌状態へのHPV感染の進行を示す。治療剤は、E7の機能をブロックすることが効果的に見出された。したがって、E7癌タンパク質を高度CIN2/3に特異的なバイオマーカーとして検出する能力は、専門家が、1)HPV感染を真の前癌状態の病変と区別すること、2)子宮頸部組織における高度異形成細胞および腫瘍細胞を同定すること、3)良性のHPV感染を有する女性における不必要な膣鏡および生検を防止することを可能にし得る重大な前進である。E6およびE7癌タンパク質は、単離するのが歴史的に困難であった。本発明者らは、HPV E6またはE7癌タンパク質に対してかなり特異的な独自抗体を開発した。子宮頸癌に加えて、HPV DNAの存在は、下方の肛門性器路(肛門、外陰、膣および陰茎、ならびにいくつかの口腔、頭頸部、および皮膚癌からの腫瘍組織において検出された。本発明者らが開発したE6 E7バイオマーカーは、複数の集団および器官部位においてHPV感染に関連する癌/前癌状態を検出するのに有用であることが予想される。技術的課題は、子宮頸部細胞学的サンプルにおいて、HPV関連癌タンパク質が一般に、形態学的に正常な細胞と形態学的に異常である少量分との混合物に起因して低いレベルで存在することである。
【0091】
子宮頸癌の発病における主要な因子であるHPV E6 E7癌遺伝子は、異形成および悪性細胞において過剰発現される。E6およびE7遺伝子の両方が、増殖刺激活性を有する。これらの遺伝子およびこれらのそれぞれのタンパク質は、悪性転換について有意な役割をする。これらの接合機能は、形質転換活性の増加を結果としてもたらすが、それぞれが自身の発癌経路を持ち、それぞれがヒト細胞を独立して不死化することができる。そのため、E6およびE7癌タンパク質の各々は、子宮頸癌の主要なマーカーとして処理されなければならない。E6またはE7癌タンパク質は、多機能性タンパク質として作用して、発癌に必要な複数の重大な細胞経路を無秩序にする。発癌性HPV型のE6およびE7癌タンパク質の過剰発現は、子宮頸癌に非常に特異的なマーカーであることが示唆された。したがって、組織におけるE6およびE7癌タンパク質の検出は、高リスクHPVの検出または他の内因性細胞周期マーカーよりも、真の前癌状態を同定するためのより直接的かつ特異的な試験であることを約束する。しかし、臨床診断に好適なバイオマーカーとしての抗E6抗E7抗体を開発することに誰もが未だ成功していない。
【0092】
現在のHPV DNA試験は、高リスクHPV型による感染を検出するが、良性HPV感染と高度の前癌状態の病変とを区別することができない。他の発展途上のバイオマーカーアッセイ、例えばp16およびproExCは、HPV感染に特異的でない内因性細胞マーカーを検出する。癌遺伝子転写産物を検出するHPV E6 E7 mRNA試験は、PapおよびHC2試験に対して改善された特異性を実証するが、試験手順は、高価で高機能の器具類を必要とする。加えて、mRNA試験は、極めて低い存在度および特有のRNA分解傾向に起因して日常的な臨床診断に良好であることはない。インサイチュでのハイブリダイゼーション(ISH)は、組織におけるHPV DNAまたはE7 mRNAを検出するが、臨床検査室において広範に採用されてはいない。HPV E6 E7癌タンパク質は、E6 E7 mRNAの試験よりも良好なバイオマーカーとして機能する。なぜなら、IHCが、ISHよりもロバストであり、癌タンパク質が、アポトーシスおよび異常な細胞成長に関与するRB腫瘍抑制因子タンパク質と直接相互作用してこれをブロックする癌遺伝子の実際の最終産物であるからである。しかし、HPV E6 E7のためのIHCは、インビトロ診断に未だ利用可能でない。これまでは、限定された抗HPV E6またはE7抗体のみが利用可能である。本発明者らの抗HPV E6またはE7抗体は、非変性HPV E6またはE7組み換えタンパク質に対して産生されている。本発明者らが開発した特異的な抗E7抗体を用いて、本発明者らは、HPV E6またはE7タンパク質を主要な因子として直接検出して、高度のCIN2/3を同定する診断試験のためのロバストなIHCプラットホームを開発することを目的とする。本発明者らは、このプラットホームが、細胞学的サンプルにおいて前癌状態の病変を良性のHPV感染と区別することができるロバストなHPV E7イムノアッセイに拡大され、これにより、スクリーニング設定における医療的治療介入の利益を享受し得るものを同定することができると構想する。
【0093】
詳細例1
【0094】
いくつかの実施形態は、HPVタンパク質に対するモノクローナル抗体に向けられる。多量の精製された組み換えHPVタンパク質を免疫原としてネイティブコンホメーションで得ることは、臨床サンプルにおいてHPVタンパク質を検出するのに特異的な抗体を生成する際の第1の重大なステップとなる。E6およびE7は、タンパク質精製の間の望ましくない凝集、タンパク質の不安定性、低レベルの発現、および精製されたタンパク質の低い免疫原性応答に起因して、単離および精製することが非常に困難であることが知られている。本発明者らは、HPV E6およびE7組み換えタンパク質を変性されていない可溶性形態で産生するための技術的障壁を克服した。本発明者らが開発した精製方法が、抗HPV抗体に結合するネイティブ形態に密接に近いコンホメーションを結果として生じることを実証するために、本発明者らは、精製された組み換えHPVタンパク質を試験するためのヒトHPV抗体を含有するHPV感染した子宮頸部サンプル(PCRによって高リスクHPV陽性)を用いた。HPV感染を検出するためのかかる精製されたE6およびE7組み換えタンパク質を用いた研究により、これらのタンパク質が、HPV感染に対するヒト免疫応答によって産生される抗HPV抗体に結合することが確認された。これらの結果は、かかる精製された組み換えHPVタンパク質が、抗血清を生じる、および天然HPVウイルスタンパク質をインビボで認識することができる抗体を生成するための免疫原としての使用に好適であることを示唆している。本発明者らは、変性されていない可溶性のE6およびE7組み換えタンパク質を抗原刺激に用い、これにより、HPV E6およびE7癌タンパク質に対してかなり特異的な独自抗体を開発した。
【0095】
最初の研究は、種々の用途:子宮頸癌組織におけるELISA、Westernブロット、および免疫組織化学(IHC)を介した、本発明者らの新規の抗E6および抗E7抗体の使用を支持した。臨床サンプルからの検証結果は、本発明者らの抗E7モノクローナル抗体が、子宮頸部組織における高度異形成の同定のためのバイオマーカーとして用いられ得ること、および臨床診断のために潜在的にさらに発展され得ることを示唆している。
【0096】
HPV組み換えタンパク質は、いずれの種類のHPVウイルスタンパク質、限定されないが、E2、E6、E7、L1、L2を含めた早期遺伝子および/または後期遺伝子のHPVタンパク質であってもよく、種々のHPV型からであってもよい。いくつかの実施形態は、組み換えタンパク質、例えば、部分配列または全長配列のHPV発癌タンパク質を含有する組み換えハイブリッドタンパク質を提供する。例えば、全長E6、E7、および/またはL1ポリペプチド配列は、タンパク質精製の間の望ましくない凝集、タンパク質の不安定性、低レベルの発現、および精製されたタンパク質の低い免疫原性応答に起因して、得ることおよび精製することが非常に困難であることが見出されている。例えば、多くの早期E6癌タンパク質は、多くのシステインアミノ酸を含有するため、E6癌タンパク質の正確なトポロジーは、多くのジスルフィド結合の適正な形成を必要とする。加えて、早期E6およびE7タンパク質の小さなペプチドを用いたある一定の免疫学的アッセイが、極めて低いアッセイ特異性および感度を結果としてもたらすことが知られており、そのため商業化された診断ツールとして好適でなかった。
【0097】
HPV組み換えタンパク質は、抗血清を生成するための、およびハイブリドーマ細胞株からのモノクローナル抗体のスクリーニングのための免疫原として用いるのに生成された:種々の組み換えタンパク質のクローニングおよび産生は、HPV16E6およびHPV18E6遺伝子、HPV16E7およびHPV18E7遺伝子、HPV16L1およびHPV18L1遺伝子によってコードされる遺伝子を含む。かなり望ましいコンホメーションを有するネイティブ形態に(またはこれに近接して)大部分がある組み換えタンパク質を提供するために、大腸菌において発現される組み換えHPV E6、E7またはL1タンパク質を、可溶分から精製し、次いで濃縮し、PBSによって透析して免疫原として用いた。マウスの免疫付与および融合を標準的な手順によって行い、ELISAにおいて、本発明者らのスクリーニング基準を満たしたクローンを選択した。各ハイブリドーマ細胞株を組織培養において成長させ、腹水生成のためにマウスに注入した。腹水を収集し、アイソタイプ化し、HPVイムノアッセイでの使用のためのタンパク質Gカラムによって精製した。
【0098】
子宮頸癌から高リスク型として同定されている15型による性器感染において同定されている40を超えるHPV型が存在し、中でも、HPV16型が子宮頸癌事例の約50%を占め、18型がさらに20〜25%を占める。しかし、HPV16およびHPV18感染を含めた多くのHPV感染が自己限定性であるため、組織におけるHPV E6およびE7癌タンパク質の検出は、HPV型に関わらず、高度異形成細胞を同定する最も直接的かつロバストな試験であり得る。本発明者らの目標は、癌の発生に関連する最も高リスクのHPV型と反応することが可能であるHPV E7特異的モノクローナル抗体を得ることであった。本発明者らは、HPV16型および18型(子宮頸癌事例の約75%を占める)からのHPV組み換えタンパク質を有するハイブリドーマクローンをスクリーニングし、大部分または全ての高リスクHPV型から関連するタンパク質を検出することが可能であるクローンを同定した。加えて、本発明者らは、関連しないHPVタンパク質を有するハイブリドーマクローンをスクリーニングし、HPV構造タンパク質との非特異的結合を有するものを排除した。ハイブリドーマスクリーニングにおいて用いられる精製された組み換えヒトパピローマウイルスタンパク質として、限定されないが、HPV16E6タンパク質、HPV16E7タンパク質、HPV16L1タンパク質、HPV18E6タンパク質、およびHPV18E7タンパク質が挙げられる。本発明者らのIHC結果を、試験した組織からのHPV遺伝子型決定データと比較すると、本発明者らの抗E7抗体は、HPV16およびHPV18だけでなく、16型と密接に関係する追加の高リスク型(すなわち、31、33、35、52、58型)および18型と密接に関係する追加の高リスク型(すなわち、45型)も含めた一般的な高リスク型の大部分を同定する。
【0099】
いくつかの実施形態は、CIN2/3のためのE7抗体を開発することにある3つの課題を解決することに向けられる。第1に、HPVタンパク質は、単離するのが困難であるような少量で臨床サンプル中に存在する。第2に、それぞれ、区別できるE7コード配列を有する、多くのHPV型が存在する。第3に、HPVタンパク質は、抗体産生のための免疫原として用いられる、HPV感染した培養された細胞株から大量産生かつ精製されることに成功していない。小さな合成ペプチドまたは変性組み換えタンパク質のいずれかに対して産生される公知の抗HPV抗体は、臨床診断における使用に一般に好適でない。なぜなら、感染したヒト細胞における天然のHPVウイルスタンパク質と必ずしも反応しないからである。別の技術的課題は、ホルマリン固定およびパラフィン埋込の際に、天然で感染したヒト組織において起こるコンポメーション変化であり、タンパク質を、臨床的に関係するサンプルにおいて検出することを困難にする。これらの因子は、変性組み換えタンパク質または合成ペプチドから産生される利用可能な抗体がIHCのために働かないという事実に関する説明を提供する。加えて、E7タンパク質の小さなペプチドを用いたある一定の免疫学的アッセイが、極めて低いアッセイ特異性および感度を結果としてもたらすことも知られていた。したがって、インビトロ診断のための臨床サンプルに存在するウイルスタンパク質を検出することが可能である抗HPV抗体を生成するための免疫原として精製されたネイティブ形態で利用可能なE6またはE7タンパク質は存在しない。
【0100】
詳細例2−免疫細胞化学アッセイ(ICC)
【0101】
いくつかの実施形態は、剥離された子宮頸部細胞におけるHPVタンパク質および細胞内タンパク質の検出を含むイムノアッセイに向けられる。サンプル調製:液体系溶液から収集した子宮頸部擦過物細胞を、2部(1部は細胞学的パパニコロウ染色用、別の1部は、いくつかの実施形態に記載されているHPV抗体を用いた免疫細胞化学的な染色用)に分割した。Pap塗沫結果において、パパニコロウ染色サンプルを、0〜17にスコアリングした。スコア1(1)〜3(3)は、正常であると考えられ、スコア4(4)以上は異常であると考えられる。Pap塗沫報告の解釈は、時折、意義を唱えられ得る。Bethesda2001システムに基づくと、陰性のPap塗沫は、陰性上皮内病変または悪性を含む場合があり、異常なPap塗沫は、異形成または病変の発生における種々の段階の扁平細胞を含む場合がある。例えば、LSIL:軽度の扁平上皮内病変、HSIL:高度の扁平上皮内病変、CIN1:子宮頸部上皮内新生物;軽度の細胞異常性、CIN2:より侵攻性であると見られる病変を有する子宮頸部上皮内新生物、CIN3:侵攻性形態の異形成を有する子宮頸部上皮内新生物。侵襲性癌は、扁平細胞癌腫(SCC)、腺癌腫(ADC)などを含み得る。意義不明の異常な細胞として、ASC−US、意義不明の異型扁平細胞、重要でない場合がありその意義が不明であるPap塗沫における普通でないまたは異型の細胞、およびAGUS(意義不明の異型腺)が挙げられる。同定された異常な細胞について、HPV ICC染色は、HPV感染の状況および/またはHPV癌タンパク質の発現について追加の情報を提供し得る。したがって、HPV ICC染色アッセイは、パパニコロウ染色と比較して、PapLSILもしくはHSILサンプルからの高度異形成細胞、および/またはASC−USもしくはAGUSのような意義不明の異常な細胞を同定するのに非常に有用である。
【0102】
ICC法を用いたイムノアッセイの例として、子宮頸部擦過物からの細胞を収集し、遠心分離し、洗浄し、免疫染色した後に、本明細書に記載されているICC手順に付す。液体系溶液によって収集された子宮頸部擦過物を、製造指示にしたがって処理した。次いで、子宮頸部細胞を、サイトスピンまたはthin prep技術によって単層中に処理した。次いで、スライド上の単層の細胞を固定し、抗HPV抗体によって染色し、続いてHPV ICCプロトコルに付す。染色された細胞を顕微鏡下で可視化する。
【0103】
いくつかの実施形態においてICCアッセイを実施するためのキットが提供される。キットは、前抗体ブロッキング溶液、後抗体ブロッキング溶液、一次抗体としての抗HPV抗体、HRPもしくはビオチンとコンジュゲートした抗マウスもしくは抗ウサギ免疫グロブリン、または二次抗体としての他の作用物質、検出される二次抗体の基質として用いられる適切な作用物質を含有する溶液を含んでいてよい。
【0104】
抗HPV抗体はまた、HRPもしくはビオチン、または適切な作用物質を基質として用いて検出される他の作用物質によって直接標識されていてもよい。前抗体ブロッキング溶液は、ある一定のタンパク質、BSA、血清または他の作用物質を含有して、一次抗体の非特異的結合から細胞をブロックすることができる。後抗体ブロッキング溶液は、一次抗体のインキュベーションと共に用いられる極少量のブロッキングタンパク質または血清を有する前抗体ブロッキング溶液と同様の溶液を含有し得る。HPV抗体を含有する溶液は、試薬を用いる準備ができている、濃縮形態であっても希釈形態であってもよい。二次抗体を含有する溶液は、試薬を用いる準備ができている、濃縮形態であっても希釈形態であってもよい。基質として用いられる適切な作用物質を含有する溶液は、一成分または二成分としてDAB(3.3’−ジアミノベンジジン)を含んでいても、一成分としてもしくは二成分としてまたは他の基質としてAEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)を含んでいてもよい。
【0105】
子宮頸部擦過物からのヒト細胞が処理されてスライド上の単層または薄層の細胞内に固定されたら、免疫細胞化学(ICC)アッセイを、前抗体ブロッキング溶液によって一定期間ブロックすること、続いてHPV抗体によってインキュベートすることによって実施する。次いでスライドをPBSもしくはHO、または他の任意の結合されていないHPV抗体を取り除くための他の溶液によって3〜5回洗浄する。次いでスライドを二次抗体、例えば抗マウスIgG HRPによってインキュベートし、その後、洗浄、および検出に適切な基質の結合が続く。基質の例として、DABは、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素の存在下に酸化され、褐色のアルコール不溶性沈澱物の析出を酸素活性の部位にてもたらす。沈殿物は、存在する酵素の量に応じて淡琥珀色から濃琥珀色までの範囲の色であり得る。顕微鏡下で見られた琥珀色の沈澱物は、HPV抗体と細胞に存在するHPVタンパク質との特異的結合を示す。アッセイは、室温以上で実施されて、結合反応を加速することができる。このHPV ICCアッセイは、手動で実施されてもICCの自動化によって操作されてもよく、これにより、HPV感染についてスクリーニングし、子宮頸部擦過物からの上皮細胞に局在化したHPV癌タンパク質をインサイチュで検出する有力なツールを提供する。
【0106】
HPV ICCアッセイが、種々の病期からの異形成細胞を同定することができることを実証するために、軽度、中程度、重篤な、または侵襲性の新生物からの全てのサンプルを試験した。これらのサンプルとして、限定されないが、例えば、CIN1、CIN2、CIN3、LSIL、HSILまたはASC−USが挙げられる。本明細書に記載されているICCアッセイが、種々の液体系溶液中の種々の段階からの種々のサンプル源について染色するのに用いられ得ることを実証するために、種々の液体系溶液中の種々の段階のサンプルも調製して、いくつかの実施形態において、ICCアッセイを実施した。
【0107】
中程度異形成は、子宮頸部の表面が成長するはずである場合よりも早く中程度に成長して、軽度の段階を超えて進行したことを意味する。子宮頸部の生検は、有意に成熟せずに、皮膚の表面を通って途中まで成長している未成熟の基底細胞を示す。中程度異形成は重要である。なぜなら、これらの変化が進んで、処置しないと侵襲性子宮頸癌に進行し得るかなり高いリスクがあるからである。この理由のために、中程度異形成は、「高度」病変、またはHGSILとして知られている。この状態の別の同義語は、「CIN2」(子宮頸部上皮内新生物、異型度II)である。Pap塗沫における中程度異形成は、膣鏡診による子宮頸部のさらなる研究が必要とされることを通常示す。中程度異形成が確認されると、ひいては、通常は処置される。処置は、結手術、LEEP、またはレーザを含んでいてよい。処置の後、再発(約10%の確率)するときには、再発が直ちに診断されてさらなる処置が実施されることを確実にするような追跡調査として常習的なPap塗沫が通常得られる。
【0108】
HPV ICCアッセイがHSIL細胞を検出することができることを実証するために、図1Aは、パパニコロウ染色によってCIN2と診断され、別の液体基溶液中で調製された子宮頸部擦過物細胞が、抗E7モノクローナル抗体を用いて陽性にICC染色され得ることを示す。図1Aに示すように、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にある、CIN2のHSILの異常な細胞は、核および細胞質に陽性に染色される。これらの結果は、ICCアッセイにおいて、マウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いることによって、存在するHPV E7タンパク質が、種々の液体系溶液源中の中間段階の新生物からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。
【0109】
図1Bは、別の液体基溶液中で調製された子宮頸部擦過物細胞の別のCIN2サンプルが、抗E6モノクローナル抗体を用いて陽性にICC染色され得ることを示す。図1Bに示すように、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にある、CIN2のHSILの異常な細胞は、核および細胞質に陽性に染色された。これらの結果は、ICCアッセイにおいて、存在するHPV E6タンパク質が、本明細書に記載されているマウスモノクローナル抗HPV E6抗体を用いて、種々の液体系溶液源中の中間段階の新生物からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。
【0110】
異常な細胞は、下層の組織に基底膜を経て侵入するとき、癌であると考えられる。重篤な異形成については、癌であるとは考えられないが異形成にある異常な細胞が基底膜を通って侵入していない前癌状態の問題である。したがって、定義により、これらは癌でない。インサイチュの癌腫は、皮膚の全厚に延在する異常な細胞が存在することを意味する。これらの細胞は、個々に癌細胞のように見える。インサイチュの癌腫は、重篤な異形成、またはCIN3と臨床的に等価であると多くの著者によって考えられており、直ちに注意深く評価されるべきである。処置は、異常な細胞を凍結させ(凍結手術)、異常な細胞を蒸発させ(レーザ)、または電気外科的ワイヤループ(LEEP)によって異常な細胞を削り落とすことによって異常な細胞を排除することを含んでいてよい。いくつかの状況において、問題を排除するには子宮頸部円錐切除の形態のより高価な手術が必要とされる。
【0111】
本明細書に記載されているICCアッセイが液体系溶液中の重篤な子宮頸部内新生物細胞に用いられ得ることを実証するために、種々の液体系溶液中のCIN3の子宮頸部擦過物サンプルも、いくつかの実施形態に記載されているICCアッセイを実施するために調製した。図2は、(パパニコロウ染色によってCIN3と診断された)子宮頸部擦過物細胞が抗E6モノクローナル抗体を用いて陽性にICC染色され得ることを示す。図3A〜3Dは、同じ抗HPV E6マウスモノクローナル抗体を用いた、別のCIN3サンプルのICC染色結果を示す。図3A〜3Dに示すように、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にある、CIN3のHSILの異常な細胞は、核および細胞質に陽性に染色された。これらの結果は、ICCアッセイにおいて、HPV E6タンパク質の存在が、本明細書に記載されているマウスモノクローナル抗HPV E6抗体を用いて、種々の液体系溶液源中の中間段階の新生物からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。これらの結果はまた、ICCアッセイにおいて、HPV E6タンパク質の存在が、マウスモノクローナル抗HPV E6抗体を用いて、液体系溶液のCIN3からの異常な細胞において検出され得ることも実証する。
【0112】
図4Aおよび4Bは、図3A〜3Dに示すのと同じCIN3サンプルからの抗HPV E7 マウスモノクローナル抗体を用いた、ICC染色の2つの代表的な画像を示す。該画像は、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にある、CIN3のHSILの異常な細胞が、核および細胞質に陽性に染色されたことを実証する。これらの結果は、ICCアッセイにおいて、HPV E7タンパク質の存在が、マウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いて、種々の液体系溶液源中の中間段階の新生物からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。これらの結果は、ICCアッセイにおいて、存在するHPV E7タンパク質が、本明細書に記載されているマウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いて、液体系溶液のCIN3からの異常な細胞において検出され得ることも実証する。
【0113】
p16が後期段階の新生物において過剰発現されることを確認するために、ICC染色を、図3および4に示すのと同じCIN3サンプルにおいて、抗p16マウスモノクローナル抗体を用いて実施した。図5は、抗p16マウスモノクローナル抗体を用いた、同じCIN3サンプルからのICC染色の結果を示す。図に示すように、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にある、CIN3のHSILの異常な細胞は、核および細胞質に陽性に染色された。これらの結果は、p16タンパク質の存在が、中間から後期段階の新生物からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。図2〜5に提示されているこれらの全ての結果は、HPV E6、HPV E7、およびp16タンパク質の存在が、ICCアッセイにおいて、本明細書に記載されているマウスモノクローナル抗体を用いて、液体系溶液の、CIN3からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることも実証する。
【0114】
子宮頸部の癌は、生殖器に影響する最も一般的な形態の癌の中にある。該癌は、近隣の組織、血管、リンパ管およびリンパ節に局所的に侵襲性である。該癌は、その進んだ段階において、処置するのが困難であり得、致命的な結果であることが判明する場合がある。子宮頸部の癌を発生する前に、異形成として知られる可逆性である前癌状態の変化の期間が通常存在する。大部分の子宮頸部癌は外面皮膚を作り上げる扁平細胞からのものであるが、子宮内に至る子宮頸部管の内側を覆う粘液産生細胞から生ずる偶発癌が存在する。この腺型は、「扁平細胞癌腫(SCC)」と対照的に「腺癌腫(ADC)」と呼ばれる。扁平細胞癌とは異なり、腺癌腫前駆体は、存在する場合、Pap塗沫において同定することが困難であり得、これにより腺癌腫を検出することを困難にする。扁平細胞異形成から子宮頸部の扁平細胞癌への遅い進行は、腺癌腫におけるほど均一なものではない。その結果、子宮頸部の腺癌腫は、扁平細胞癌腫よりも進んだ段階において頻繁に検出される。処置は、より一般的な扁平細胞癌の処置と同様である。しかし、腺癌腫は、より多くの場合においてより進んだ段階で見出されるため、より侵攻性の処置が必要とされることが多い。したがって、いくつかの実施形態に記載されているHPV ICCアッセイを用いて、液体基溶液中の腺癌腫細胞の早期スクリーニングからHPVタンパク質の存在を検出することが重要になる。
【0115】
本明細書に記載されているICCアッセイを適用して液体系溶液中の子宮頸癌細胞を検出することができることを実証するための例として、種々の液体系溶液中の種々の癌腫の子宮頸部擦過物サンプルも調製し、いくつかの実施形態に記載されているICCアッセイを実施した。例として、図6Aは、最も一般的な子宮頸癌型の1種である、(パパニコロウ染色によって扁平細胞癌腫と診断された)SCCが、抗E6モノクローナル抗体を用いて陽性にICC染色され得ることを示す。図6Bは、図6Aと同じSCCサンプルにおける、抗HPV E7マウスモノクローナル抗体を用いたICC染色の結果を示す。p16も後期段階の新生物において過剰発現されることを確認するために、抗p16マウスモノクローナル抗体を用いたICC染色を、図6Aおよび6Bにおいて用いられたのと同じSCCサンプルにおいて実施した。図6Cは、図6Aおよび6Bにおいて用いたのと同じSCCサンプルにおいて抗p16マウスモノクローナル抗体を用いたICC染色の結果を示す。図6A〜Cに示すように、HSIL SCC細胞は、高いN/C(核/細胞質)比(黒矢印として示される)を有して互いに接続形態にあり、核および細胞質に陽性に染色された。これらの結果は、HPV E6、HPV E7、およびp16タンパク質の存在が、ICCアッセイにおいて、本明細書に記載されているマウスモノクローナル抗体を用いて、液体系溶液の種々の型の子宮頸癌からの異常な細胞において、インサイチュで検出され得ることを実証する。
【0116】
本明細書に記載されているICC染色が、HPV抗体と、子宮頸部擦過物細胞のインサイチュで存在するHPVタンパク質との特異的結合から得られることを実証するために、ICCアッセイにおいて試験するための液体系溶液からの正常な子宮頸部細胞も得た。図7Aは、抗E6モノクローナル抗体を用いたICCによって陰性に染色された、液体基溶液中で調製された、パパニコロウ染色によって診断された正常な子宮頸部擦過物細胞を示す。ICC染色もまた、図7Bに示すのと同じ抗HPV E7モノクローナル抗体を用いて、同じサンプルにおいて実施した。ICCアッセイは、マウスモノクローナル抗HPV E6またはマウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いた陰性染色結果を示し、これにより、HPV E6タンパク質もHPV E7タンパク質も、正常な子宮頸部擦過物細胞においてインサイチュで存在しないことを実証している。したがって、これらの結果は、いくつかの実施形態に記載されているICCアッセイが、本明細書に記載されているHPV特異的抗体を用いたHPVタンパク質の検出に特異的な染色方法であることを示す。
【0117】
免疫系障害を含めた多くの因子が軽度異形成の発生に寄与するが、HPVによる感染は、恐らく最も重要な因子である。軽度異形成は、生ずる場合、持続的な特徴ではない。軽度異形成は退行するまたは進行するいずれかの可能性があり、女性の子宮頸部(およびPap塗沫)に一時期存在するが、持続しない。これは、これらの変化の必要条件であるHPVウイルスが子宮頸部皮膚細胞内に潜伏している可能性があるという事実に由来する。HPVは、女性の免疫系によるチェックによって正常に保たれ、免疫系撹乱の度に、より迅速な成長をもたらす細胞メカニズムを再活性化することができる。軽度異形成を示す単一のPap塗沫を生ずる女性には、一般的に以下の基本的に3種のアプローチが存在する:1)6ヶ月、Papが繰り返される。これらのPapの異常の大部分は、特に若い女性の間で、自己限定性HPV感染となる。他に処置することなく繰り返されたPap塗沫により、これらの多くの子宮が治癒することが考慮され、他のより高価な治療介入を回避する。他方で、繰り返されるPapアプローチの主な不利点は、膣検診をいずれにせよ最終的に必要とする大部分の女性にとって、分かってはいるが解決されない健康問題に対する種々の程度の不安に付されているということである。2)迅速な膣鏡診。多くの女性は、直ぐ調査されることなく異常が簡単に観察されることに対して不安を感じるであろう。このアプローチに対する主な不利点は、偽陽性のPap塗沫を有する女性さえも中程度に費用の掛かる評価を受けるであろうことである。3)診察および処置。膣鏡による評価および対象とされる生検、続いての数日または数週間後の処置の形態の代わりに、一部の医師は、膣鏡診によって子宮頸部を評価すると同時にLEEPが適切である女性にLEEP手順を直ちに実施することを好む。しかし、とりわけ、大部分の患者にとって、過剰処置である。
【0118】
ASC(異型扁平細胞)の報告は、細胞学者が、完全に正常でないPap塗沫を説明するのに用いる方法である。しかし、彼らは、どの種の異常であるか、またはどのように有意であるかを確実に言うことはできない。ASC Papは、2つの型に再分割される:ASC−US(意義不明)、ASC−H(高度SILを除外できない)。ASCと診断された女性の中で、子宮頸部の高度病変を有する少数の女性が存在する。ASC−USを有する女性の5%〜17%が、存在する高度SILを有し得る(CIN2またはCIN3)。ASC−Hを有する女性の24%〜94%が、高度SILを有し得る。したがって、HSILに進行するASC Papの可能性が無視できない。子宮頸部の侵襲性癌のリスクは、あらゆるASC Papを有する女性の中の約0.1%〜0.2%である。
【0119】
HPV E6またはE7免疫細胞化学的(ICC)アッセイは、HPV感染を検出するだけでなく、HPV発癌タンパク質をインサイチュで検出する。したがって、種々の特異的かつ一般的な抗HPV抗体と組み合わせたICCアッセイは、標準的なHPV DNA試験またはPap塗沫アッセイと比較して、インサイチュのHPV検出に有力なツールであり得る。
【0120】
表1は、液体系溶液中の種々の子宮頸部擦過物サンプルにおいてマウス抗HPV E6モノクローナル抗体を用いたHPV E6ICCアッセイの結果を示す。紹介外来から得た合計で85個のサンプルをThinPrepで収集した。表1における結果は、HPV E6タンパク質が、マウスモノクローナル抗HPV E6抗体を用いた免疫細胞化学的(ICC)アッセイによって、スライドに固定された単一細胞においてインサイチュで検出され得ることを実証する。HPV E6タンパク質のインサイチュでの存在は、種々の液体系溶液中の種々の段階の子宮頸部擦過物サンプルから検出され得る。同じ子宮頸部擦過物サンプルもまた、標準のパパニコロウ染色によって処理し、ICC染色結果とPap塗沫結果とを比較した。表1に示すように、HPV E6タンパク質は、それぞれ、陽性率を増加させながら、正常、ASC−US、ASC−H、LSIL、HSILの子宮頸部擦過物サンプルに存在する。
【0121】
Pap HSILまたはCIN2/3を有するサンプルについては約100%の陽性率であるが、正常なPapを有すると診断されたサンプルは14%のみが、同じ抗HPV E6抗体を用いたICCによって陽性染色した。ASCサンプルについては、約33%のASC−USおよび約50%のASC−Hが、表1に示すLSIL、HSILサンプルに用いたのと同じ抗HPV E6抗体によって陽性染色し、これらのASC−USまたはASC−Hサンプル対象における発癌タンパク質の発現が、さらなる疾患の進行について追跡調査されることを示している。Pap ASC−USおよびHPV E6 ICC染色が陰性であるサンプルについては、進行性病変を発生するリスクが少ない場合がある。これらの結果は、本明細書に記載されているHPV E6 ICCアッセイが、疾患の管理の決定をするためにHPV感染のさらなる情報を提供するのに非常に有用であることを示唆する。
【0122】
表1.液体系溶液中の種々の子宮頸部擦過物サンプルにおけるマウス抗HPV E6モノクローナル抗体を用いたICC染色
【表1】

【0123】
表2は、表1からのICC染色結果のまとめを示す。データが示すように、いくつかの実施形態に記載されている抗HPV E6抗体を用いたICC染色法は、≧CIN2について66%%の特異性で95%のICCアッセイ感度を提供する。これらのデータは、このアッセイが、50%のPPV(陽性予測値)および98%のNPV(陰性予測値)を有してHPVタンパク質を検出して、日常的なPap染色と共に、異常なPapを有する患者をトリアージする、または一般の集団からの子宮頸癌をスクリーニングするのに有用であり得ることを示唆する。
【0124】
表2.液体系溶液中のCIN2の子宮頸部擦過物サンプルにおけるマウスモノクローナル抗HPV E6抗体を用いたICC染色結果のまとめ
【表2】

【0125】
HPV ICCアッセイの別の例として、表3および表4は、抗HPV E7抗体を用いたICC染色の結果を示す。データが示すように、HPV抗E7は、示されるHPV抗E6に匹敵するICC結果を与える。表3は、HPV E7タンパク質が、それぞれ、陽性率を増加させながら、子宮頸部擦過物の正常な、ASC−US、ASC−H、LSIL、HSILサンプルにおける子宮頸部擦過物に存在することを示す。Pap HSIL塗沫によって診断されたサンプルについては約94%の陽性率であるが、Pap塗沫によって正常であると診断されたサンプルの11%のみが、同じ抗HPVE7抗体を用いたICCによって陽性に染色した。ASC−USまたはASC−Hサンプルについて、これらのサンプルの約40%が、表3に示されるCIN1、CIN2/3サンプルについて用いたのと同じ抗HPV E7抗体によって陽性に染色され、これらのASC−USまたはASC−Hサンプル対象における発癌タンパク質の発現がさらなる癌の進行について追跡調査されることを示している。ASC−USおよびICC染色(抗HPV E7)陰性と診断されたPap塗沫を有するサンプルについては、進行性病変を発生するリスクが少ない場合がある。
【0126】
表3.液体系溶液中の種々の子宮頸部擦過物サンプルにおけるマウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いたICC染色結果
【表3】

【0127】
表4は、表3からのICC染色結果のまとめを示す。データが示すように、いくつかの実施形態に記載されている抗HPV E7抗体を用いたICC染色法は、HSIL+について67%の特異性で91%のICCアッセイ感度を提供する。これらのデータは、このアッセイが、51%のPPVおよび95%のNPVを有してHPVタンパク質を検出して、日常的なPap染色と共に、異常なPapを有する患者をトリアージする、または一般の集団からの子宮頸癌をスクリーニングするのに有用であり得ることを示唆する。
【0128】
表4.液体系溶液中の≧CIN2の子宮頸部擦過物サンプルにおけるマウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いたICC染色結果のまとめ
【表4】

【0129】
別の例として、紹介外来から得た合計で200+のPap細胞診サンプルの事例をThinPrepで収集した。関連する組織学的結果と、Pap試験、HPV DNA試験との組み合わせは、HPV E6 E7癌タンパク質および細胞内タンパク質の発現の分析と相関した。液体基溶液中の種々の段階の子宮頸部擦過物サンプルについての抗E6、抗E7および抗p16抗体を用いたICC結果を有する合計で117の事例を、Pap試験、HPV DNA試験、および組織学の結果によって分析した。例として、表5は、E6、E7、またはp16抗体を用いたPap、HPV DNA試験、およびICC試験からの結果の相関を示す。
【0130】
表5.抗HPV抗体、抗p16抗体を用いたHPV DNA試験およびICC試験と比較して種々の段階の異常を有する48事例のPap塗沫サンプルを示すICC染色結果のまとめ
【表5】

【0131】
表5のデータは、抗HPV抗体を用いたICC染色が、抗p16のみを用いたICCと比較して、陽性率に関してHPV DNA試験とより良好な相関を有することを実証する。結果は、HPVタンパク質のインサイチュでの早期検出に使用され得ることを示唆する。偽陽性サンプル、例えば、Pap正常の、HPV陽性サンプルについて、ICCは、HPV発癌タンパク質発現の発現を確認することができる。偽陰性サンプル、例えば、Pap正常の、HPV陰性サンプルであるが、ICC陽性サンプルについては、ICCは、存在する場合には病変の進行を確認するための追跡調査を必要とする。しかし、HPV DNA陽性サンプルによるASC−USまたはCINの大部分の事例は、抗E6抗体を用いたHPV ICCによって陽性を示す。p16 ICCと比較して、HPV ICCは、Pap塗沫の異常性と、より良好な相関を有する。
【0132】
表6.診断基準としてPap試験を用いた、HPV DNA 試験とE7 ICC試験との比較
【表6】

【0133】
HPV DNAとHPV E6 E7癌タンパク質の発現との相関を分析するために、例として、表6は、表5に示す48事例から、異なるカテゴリーのPap試験結果の中のHPV DNAと比較したHPV E7 ICCの陽性率をさらに実証する。表6に示されたデータのように、Pap NML、ASC−US、LSIL、およびHSILのそれぞれについて、21%、51%、25%および84%の陽性率を示すE7 ICC試験と比較して、HPV DNA試験は、57%、83%、100%および83%の陽性率を示す。これらのデータは、照会外来からの患者に関するHPV DNA試験の高い陽性率を実証し、Pap異常な患者をトリアージするのに有用でないことを示している。データが示すように、ASC−USの83%がHPV DNA陽性であるため、ASC−US/HPV陰性患者の17%しか不必要な膣検診から救われ得ない。しかし、LSILの100%がHPV DNA陽性であり、HPV DNA試験は、LSIL患者をトリアージするのに推奨されないことを示している。しかし、ASC−USの50%およびLSILの25%のみがE7陽性である。これは、E7 ICC試験が、Pap異常なASC−USおよびLSIL患者をトリアージするのにより良好な試験として機能して、不必要な膣鏡診または過剰な試験を有意に回避することを示唆する。HSIL群については、HPV DNA試験およびE7 ICC試験の両方が83%の陽性率を示す。HSIL/HPV DNA陰性については、HPV DNA試験では偽陽性であり得る。なぜなら、E7 ICC試験において陽性を示すからである。HSIL/HPV DNA陽性については、E7 ICC陰性であるが、CIN2を超えた、組織学による真のHSILであるときに、さらなる確認を必要とする。
【0134】
表6からのHPV DNA試験およびE7 ICC試験の感度および特異性をさらに分析するために、表7および表8は、切除したPap HSILを用いたそれぞれE7 ICC試験およびHPV DNA試験の結果を示す。
【0135】
表7.診断基準としてPap試験を用いた、E7 ICCとHPV DNA試験との比較(表6から合計で48事例)
【表7】

【0136】
表8.切除したHSILを用いたPap試験と比較したHPV DNA試験結果のまとめ(表6から合計で48事例)
【表8】

【0137】
表8に示すデータのように、HPV DNA法は、15%のPPVおよび93%のNPVを有して31%の特異性を有する≧CIN2について83%の感度を提供する。抗HPV E7モノクローナル抗体によるICC染色を用いた同じ研究からの同じ患者についての表7と比較して、これら2つの方法は、同じアッセイ感度(83%)を有する。しかし、抗E7抗体を用いたICC染色アッセイは、より高い特異性(74%対31%)、より良好なPPV(31%対15%)、およびより良好なNPV(97%対93%)を実証する。したがって、これらの結果は、HPV DNA法と比較して、HPV E7 ICCアッセイが、日常的なPap塗沫染色と共に、一般の集団から、子宮頸癌のスクリーニングのためのHPVタンパク質を検出するより良好な方法であり得ることを示す。したがって、HPV E6 E7は、高度異形成を同定するためのより良好なバイオマーカーとして機能し、医療的治療介入からの利益を享受し得る患者に効果的な疾患管理を提供する。
【0138】
HPV E7 ICCデータを組織学結果によってさらに分析するために、別の例として、表9および表10は、診断基準として組織学を用いたHPV E7 ICC染色の結果を示す。表9は、HPV E7タンパク質が、それぞれ、陽性率を増加させながら、正常、CIN1、CIN2/3の子宮頸部擦過物サンプルに存在することを示す。Pap塗沫がCIN2/3であると診断されたサンプルに関して約94%の陽性率であるが、組織学的結果NIL(正常)と診断されたサンプルの23%は、同じ抗HPV E7抗体を用いたICCによって陽性に染色した。CIN1サンプルについては、これらのサンプルの約40%が、同じ抗HPV E7によって陽性に染色され、これらのCIN1サンプル対象における発癌タンパク質の発現が、さらなる癌の進行について追跡調査されることを示している。組織学によってNIL/CIN1およびICC陰性染色(抗HPV E7)であるとされたサンプルについては、進行性病変を発生させるリスクが低い場合がある。
【0139】
表9.組織学と比較した、マウス抗HPV E7モノクローナル抗体を用いたICC染色の結果。LiquidPrepにおいて収集されたサンプルによる、照会外来から得られた合計で105の事例
【表9】

【0140】
表10は、表9からのICC染色結果のまとめを提示する。示されているデータのように、いくつかの実施形態に記載されている抗HPV E7抗体を用いたICC染色法は、74%の特異性を有して≧CIN2に関して93%のICCアッセイ感度を提供する。これらのデータは、このアッセイが、57%のPPVおよび97%のNPVを有して、日常的なPap塗沫染色と共に、一般の集団からの子宮頸癌のスクリーニングのためのHPVタンパク質を検出するのに有用であり得ることを示唆する。
【0141】
表10.液体系溶液中の子宮頸部擦過物サンプルにおける、マウスモノクローナル抗HPV E7抗体を用いたICC染色結果のまとめ
【表10】

【0142】
いくつかの実施形態に記載されているHPV ICCアッセイが、初期段階の子宮頸癌のスクリーニングに好適であるかを試験するために、Pap正常サンプルをHPV ICCアッセイとHPV DNA試験とを比較するために用いた。表11に示されているデータのように、試験された全てのPap塗沫正常のサンプル(44のうち44)が、抗HPV抗体を用いて陰性に染色する。これらのデータは、いくつかの実施形態に記載されているICC染色アッセイが非常に特異的であることを示す。同じサンプルにおけるHPV DNA試験結果と比較して、Pap塗沫正常のサンプルの16%(44のうち7)が、HPV DNA試験において陽性に示す。この研究に用いた高度のHPV DNA試験は、唯一のFDAに認可されたHPV DNA試験、HC2であった。HPV DNAが陽性であるがPapは正常でありHPV ICC陰性であるこれらの7個のサンプルについて、これらは、HPV DNAアッセイにおいて偽陽性であり得るか、またはDNAがHPV感染について検出され得るがHPV発癌タンパク質を発現しないという事実に起因するかのいずれかである。これらのデータは、本明細書に記載されているHPV ICCアッセイがHPV DNA試験と比較してより良好な陽性予測値を提供することを示す。したがって、HPV ICCアッセイは、子宮頸癌のスクリーニングに、より良好な臨床的関連を提供する。
【0143】
表11.診断基準としてPap試験を用いた、異なる抗HPV抗体による、Pap正常サンプルにおけるICC染色とHPV DNA試験(HC2)との比較。一般のスクリーニング集団からの合計で44事例の正常なPap塗沫。サンプルをLiquidPrep溶液において収集した。
【表11】

【0144】
詳細例3−免疫組織化学アッセイ(IHC)
【0145】
いくつかの実施形態は、ヒト対象のパピローマウイルス感染をスクリーニングする方法であって、ヒト対象の臨床組織サンプルから1種以上の組織細胞を含有する薄片を準備する工程と、薄片をスライド上に適用する工程と、臨床組織サンプルの薄片を含有するスライド上で1種以上の免疫組織化学アッセイを行う工程と、1種以上の精製された組み換えパピローマウイルスタンパク質に対して生成された1種以上の抗体を用いて薄層のヒト細胞を染色する工程とを含み、少なくとも1種の抗体は、パピローマウイルスの早期タンパク質を認識すること、およびスライド上の薄片の臨床組織サンプルに存在する1種以上のパピローマウイルス型から1種以上のタンパク質をインサイチュで検出することが可能である方法に向けられる。
【0146】
サンプル調製:4ミクロンに薄片化されたパラフィン組織ブロックをスライド上に置き、60℃で一晩中ベークした。脱パラフィン/水和物部を脱マスキングし、続いて標準のIHC染色手順に付した。HPVタンパク質に対する、精製されたモノクローナル抗体を希釈して、一次抗体として用いた。染色手順の後、二次抗体溶液、洗浄が続き、続いて各片への適切な基質試薬であった。片が生成するとすぐに、スライドをdHOに浸し、片をヘマトキシリンによって対比染色し、カバースリップを脱水して搭載した。例えば、LSIL:軽度の扁平上皮内病変を含有する子宮頸部組織。HSIL:高度の扁平上皮内病変。CIN1:子宮頸部上皮内新生物、軽度の細胞異常。CIN2:より侵攻性とみられる病変を有する子宮頸部上皮内新生物。CIN3:侵攻性形態の異形成を有する子宮頸部上皮内新生物。扁平細胞癌腫(SCC)および腺癌(ADC)のような侵襲性癌。同定された異形成細胞に関して、HPV IHC染色は、HPV感染の状態および/またはHPV癌タンパク質の発現に関するさらなる情報を提供することができる。したがって、HPV IHC染色アッセイは、確認試験として非常に有用である。さらに、子宮頸部異形成の種々の段階におけるHPV E6およびE7癌タンパク質の過剰発現は、CINの進行および/または子宮頸癌の発生を示し得る。
【0147】
一旦組織を処理して固定したら、免疫組織化学(IHC)アッセイを、抗原回復緩衝液によって長時間、スライド上の組織をボイルすることによって実施する。次いで、スライドを室温まで冷却して、前抗体ブロッキング溶液によって長時間ブロッキングし、次いでHPV抗体によってインキュベートした。次いでスライドをPBSもしくはHO、またはいずれの未結合のHPV抗体も取り除く他の溶液によって3〜5回洗浄した。次いでスライドを二次抗体、例えば、抗マウスIgG HRP、続いて検出に適切な基質によってインキュベートした。例として、DABをペルオキシダーゼおよび過酸化水素の存在下に酸化すると、褐色の析出、アルコール不溶性沈澱を酵素活性部位において生ずる。沈澱は、存在する酵素の量に応じて淡琥珀色から濃琥珀色の色範囲であり得る。顕微鏡下で見られた琥珀色沈澱は、HPV抗体と細胞中に存在するHPVタンパク質との特異的結合を示す。アッセイを室温以上で実施して結合反応を加速することができる。このIHCアッセイは、手動で実施されてもICCの自動化によって操作されてもよく、これにより、子宮頸部組織からの上皮細胞におけるHPV感染およびHPV癌タンパク質の局在化をインサイチュで検出する有力なツールを提供する。
【0148】
いくつかの実施形態は、子宮頸癌組織におけるHPV E6、E7およびp16タンパク質の検出を含むIHCアッセイに向けられる。免疫組織化学(IHC)染色アッセイを実証する手順の例は:A)組織アレイの調製:組織スライドをパラフィン埋込組織ブロックから薄片化した。各組織マイクロアレイは、22の子宮頸部扁平細胞癌腫または腺癌腫および陰性対照としての3の正常な上皮を含有する。87コアのパラフィン埋込ブロックをグループ化し、薄片化して4つのマイクロメータ単位の組織スライドとした。各組織マイクロアレイは、合計して26の子宮頸部扁平細胞癌腫または腺癌腫のうちの3の複製コアおよび陰性対照として合計して3の正常なサンプルのうちの3の複製コアを含有する。合計で220の事例を合計で9個のスライド上に配列させた。B)免疫組織化学法:合計で220の事例の子宮頸癌組織を有する9個の組織マイクロアレイをE6、E7およびp16 IHCについて試験した。全長HPV型16E6、E7およびHPV型18E6、E7の組み換えタンパク質を産生し、精製して、ポリクローナル抗体の産生のためにおよびいくつかの実施形態に記載されているモノクローナル抗体のためにウサギおよびマウスに免疫を与えた。かかる抗体、およびクローンE6H4からp16INK4aのヒトタンパク質を用いて、IHCプロトコルを開発して組織マイクロアレイを染色した。研究は、各腫瘍対象からの3個のサンプルを含んだ。結果を解明するために、E6およびE7タンパク質について、所与のサンプルについて少なくとも10%の腫瘍細胞が染色されて強度がスコア1、2または3であるとき;サンプルが陽性のE6/E7発現を有するとされる。p16INK4aについて、「陽性」の評定は、試料が細胞の連続的な染色を示すとき(すなわち、拡散染色パターン)とされ、「陰性」の評定は、試料が陰性染色反応または単離された細胞もしくは小さな細胞クラスターの染色(すなわち、焦点染色パターン)のいずれかを示すときとされる。C)DNAタイプ:HPV DNAタイピングの各事例をPCR SPFlO−LiPA25(バージョン1:Labo Biomedical Pdts.、(ライスワイク(オランダ))製)(25の高および低リスクHPV型を検出する逆ハイブリダイゼーション技術)によって同定した。アッセイをHPV Laboratory(Catalan Institute of Oncology、バルセロナ(スペイン))において実施した。
【0149】
例として、図8A〜8Bは、子宮頸癌組織およびその近隣の正常な組織における、抗E6抗体を用いたIHCの画像を示す。図8C〜8Dは、子宮頸癌組織およびその近隣の正常な組織における、抗E7抗体を用いたIHCの画像を示す。結果は、子宮頸癌サンプルにおける陽性染色、および近隣の正常な組織における陰性染色を示す。別の例として、図9は、異なる倍率による子宮頸癌サンプルにおけるIHCの画像を示す。図9A〜C、抗E6抗体によるIHC:陽性10×(A)、陽性20×(B)、陰性20×(C)。図9D〜F、抗E7抗体によるIHC:陽性10×(D)、陽性20×(E)、陽性40×(F)。図9G〜I、p16INK4a抗体によるIHC:陽性10×(G)、陽性20×(H)、陰性20×(I)。
【0150】
IHC染色の結果を、認定された病理学者によってスコアリングし、スコア0〜3の強度、および染色された腫瘍細胞の百分率を与えた。結果を解明するために、陽性結果を、染色された少なくとも10%の腫瘍細胞および1、2または3のスコア強度を有するサンプルにおいてE6/E7とした。p16INK4aについて、「陽性」の評定は、試料が細胞の連続的な染色を示すとき(すなわち、拡散染色パターン)とされ、「陰性」の評定は、試料が陰性染色反応または単離された細胞もしくは小さな細胞クラスターの染色(すなわち、焦点染色パターン)のいずれかを示すときとされる。データを分析して、p16によるPCRおよびIHC染色と比較したアッセイ感度および特異性を得た。統計的有意性も分析した。
【0151】
表12は、抗E6、E7、およびp16抗体を用いたIHCのアッセイ感度を示す。結果は、抗E6抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度が約92.1%(203のうち187)であることを実証する。抗E7抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度は、約76.2%(202のうち154)である。抗p16抗体を用いたHPV IHCのアッセイ感度は、約91.3%(208のうち190)である。
【0152】
表12.単一マーカーを用いたIHCアッセイの結果のまとめ
【表12】

【0153】
E6、E7およびp16タンパク質の発現の相関を表13〜15に示す。表13において、合計203個のサンプルをE6またはp16のいずれかを用いたIHCアッセイにおいて分析した。187個のIHC E6陽性サンプルの中で、170個のサンプルが、p16 IHCにおいて陽性を示す。16個のIHC E6陰性サンプルの中で、15個のサンプルが、p16 IHCにおいて陽性を示す。185個のIHC p16陽性のサンプルの中で、170個のサンプルが、E6 IHCにおいて陽性を示す。18個のIHC p16陰性サンプルの中で、17個のサンプルが、E6 IHCにおいて陽性を示す。E6 IHCおよびp16 IHCの両方において陰性である唯1個のサンプルが存在する。したがって、組み合わされたE6およびp16 IHCアッセイは、99.5%のアッセイ感度(203個のサンプルのうち202個がE6またはp16 IHC陽性である、表5)を提供する。
【0154】
表13.IHCアッセイにおけるE6およびp16タンパク質の発現の結果の相関
【表13】

【0155】
表14において、合計202個のサンプルをE6またはE7のいずれかを用いたIHCアッセイにおいて分析した。186個のIHC E6陽性サンプルの中で、153個のサンプルが、E7 IHCにおいて陽性を示す。16個のIHC E6陰性サンプルの中で、1個のサンプルがE7 IHCにおいて陽性を示す。154個のIHC E7陽性サンプルの中で、153個のサンプルが、E6 IHCにおいて陽性を示す。48個のIHC E7陰性サンプルの中で、33個のサンプルが、E6 IHCにおいて陽性を示す。E6 IHCおよびE7 IHCの両方において陰性である15個のサンプルが存在する。したがって、組み合わされたE6およびE7 IHCアッセイは、92.5%のアッセイ感度(202個のサンプルのうち187個がpl6またはE6 IHC陽性である、表5)を提供する。
【0156】
表14.IHCアッセイにおけるE6およびE7タンパク質の発現の結果の相関
【表14】

【0157】
表15において、合計202個のサンプルをE7またはp16のいずれかを用いたIHCアッセイにおいて分析した。154個のIHC E7陽性サンプルの中で、142個のサンプルが、p16 IHCにおいて陽性を示す。48個のIHC E7陰性サンプルの中で、42個のサンプルが、p16 IHCにおいて陽性を示す。184個のIHC pl6陽性サンプルの中で、142個のサンプルがE7 IHCにおいて陽性を示す。18個のIHC pl6陰性サンプルの中で、12個のサンプルが、E7 IHCにおいて陽性を示す。E7 IHCおよびp16 IHCの両方において陰性である6個のサンプルが存在する。組み合わされたE7およびp16 IHCアッセイは、97.0%のアッセイ感度(202個のサンプルのうち196個が、p16またはE7 IHC陽性である、表5)を提供する。
【0158】
表15.IHCアッセイにおけるE7およびp16タンパク質の発現の結果の相関
【表15】

【0159】
子宮頸癌の腫瘍細胞において発現されるHPV E6およびE7発癌タンパク質は、特異的な抗E6および抗E7抗体を用いたIHCアッセイによって試験される大部分のサンプルにおいて検出され得る。これらの結果が病因を強化し、HPV癌タンパク質の分子メカニズムが大部分の子宮頸癌事例において機能する。研究結果は、それぞれ無調節なウイルスE6およびE7癌タンパク質の発現によるp53およびpRbタンパク質の機能的不活化を実証し、p16INK4aの過剰発現をもたらす。この研究において、表12に示すように、E6抗体の感度(92%)は、p16INK4a抗体の感度(91%)に匹敵する。E7抗体の感度は比較的低い(76%)が、アッセイは、さらに最適化され得る。子宮頸癌におけるHPV E6/E7癌タンパク質およびp16細胞内タンパク質の発現の相違が示されているIHC結果を有するサンプルについては、これらの個々の事例において種々の経路が癌の発生に関与する可能性がある。したがって、HPV癌タンパク質および細胞内タンパク質の両方が、発癌において重要な役割を果たして、HPV関連癌の診断のバイオマーカーとして機能する。種々のHPV関連癌においてさらなるバイオマーカーを用いた研究は、オーダーメイド医療を提供するのを助け得る。
【0160】
p16は、現在の診療において許容されているマーカーであるが、試験される全ての事例に完全であるというわけではない。表13は、18個のp16 IHC陰性サンプルの中で、17個のサンプルが、抗E6抗体を用いたIHCにおいて陽性を示すことを示す。表15は、18個のp16 IHC陰性サンプルの中で、12個のサンプルが、抗E7抗体を用いたIHCにおいて陽性を示すことを示す。したがって、表16に示すように、組み合わされたマーカーp16+E6を用いたIHCアッセイは、p16のみを用いたときの91.3%と比較して99.5%のアッセイ感度を提供する。組み合わされたマーカーp16+E7を用いたIHCアッセイは、p16のみを用いたときの91.3%と比較して97.0%のアッセイ感度を提供する。いずれの事例においても、マーカーとp16などの細胞内タンパク質およびE6またはE7などの癌タンパク質との組み合わせを用いたIHCアッセイは、子宮頸癌の検出する際に増加したアッセイ感度を提供する。
【0161】
表16.単一または組み合わされたマーカーを用いたIHCアッセイの感度のまとめ
【表16】

【0162】
単一マーカーE7を用いたIHCアッセイは、表5に示すように、E6またはp16を用いたIHCアッセイと比較して、76.2%と比較的低い感度を与える。組み合わされたマーカーを用いたアッセイは、感度を増加させ得る。表15および表16からの結果を組み合わせると、48事例のE7 IHC陰性サンプルの中で、33個のサンプルがE6 IHC陽性であり(表15)、48事例のE7 IHC陰性サンプルの中で、42個のサンプルが、p16 IHC陽性である(表16)ことが示される。加えて、これらのサンプルのうち28個が、E6およびp16の両方において陽性である(データ示さず)。これにより、E6 IHC陽性またはp16 IHC陽性のいずれかである47のE7 IHC陰性の事例、およびE6、E7、またはp16 IHCにおいて陰性である唯1個のサンプルが残される。したがって、表16に示すように、E7 IHCについての感度は76.2%と比較的低いが、この感度は、組み合わされたマーカーE6+E7を用いると92.5まで増加され得、組み合わされたマーカーE7+p16を用いると97.0%まで増加され得る。さらに、3種全てのマーカーが用いられるとき、IHCアッセイの感度は、99.5%までさらに増加され得る。いずれの事例においても、マーカーとp16などの細胞内タンパク質、またはE6もしくはE7などのいくらかの他の癌タンパク質との組み合わせを用いたIHCアッセイは、増加したアッセイ感度を提供する。
【0163】
単一マーカーE6を用いたIHCアッセイは、表16に示すように、92.1%の感度を提供する。組み合わされたマーカーを用いたアッセイは、感度を増加させたことが示されている。表13は、16個のE6 IHC陰性サンプルの中で、15個のサンプルが、抗p16抗体を用いたIHCにおいて陽性を示すことを示す。表3は、16個のE6 IHC陰性サンプルの中で、1個のサンプルが、抗E7抗体を用いたIHCにおいて陽性を示すことを示す。したがって、表16に示すように、組み合わされたマーカーE6+p16を用いたIHCアッセイは、E6のみを用いたときの92.1%と比較して99.5%のアッセイ感度を提供する。組み合わされたマーカーE6+E7用いたIHCアッセイは、E6のみを用いたときの92.1%と比較して92.5%のアッセイ感度を提供する。いずれの事例においても、マーカーと、p16などの細胞内タンパク質またはE6もしくはE7などのいくらかの他の癌タンパク質との組み合わせを用いたIHCアッセイは、増加したアッセイ感度を提供する。
【0164】
これらのデータは、99.5%(100%に近い)の子宮頸癌を検出するには1を超えるバイオマーカーが必要とされることを示唆する。
【0165】
表17は、HPV DNAタイピング法およびE6 IHC法からの結果の比較を示す。合計202個のサンプルを試験した。これらの163個のサンプルの中で、162個の陽性および1個の陰性は、E6 IHC法およびHPV DNA法の間でのアッセイの一致(81%、163/202)を示す。92%(162/177)のHPV DNA陽性は、E6 IHC陽性である。87%(162/186)のE6 IHC陽性は、HPV DNA陽性である。186事例がE6 IHC陽性であり、177事例のみがHPV DNAタイピングの陽性である。E6 IHC法は、子宮頸部生検組織において、HPV DNAタイピング法のアッセイ感度(87.6%、202のうち177)と比較してより良好なアッセイ感度(92%、202のうち186)を提供する。E6 IHC陰性である16個のサンプルについて、15個のサンプルがHPV DNAタイピング陽性である。HPV DANタイピング陰性である25個のサンプルについて、24個のサンプルがE6 IHC陽性である。これにより、試験された202個のサンプルのうち、E6 IHCおよびHPV DNAの両方のタイピングで陰性である唯1個のサンプルが残される。したがって、E6 IHC法およびHPV DNA法の両方を一緒に組み合わせると、アッセイ感度が99.5%(201/202)まで増加する。これらの結果は、E6 IHCが優れていることを示し、ある単一マーカーよりも簡素で、ロバストで、より良好な感度を提供する(E6 IHCについて92%であるのに対してHPV DNAタイピングについては87.6%)。組み合わされた方法は、アッセイ感度を99.5%までさらに増加させる。
【0166】
表17.HPV DNAタイピング法およびE6 IHC法の比較
【表17】

【0167】
この研究において試験された全ての事例は、組織学によって確認された子宮頸癌である。表18は、177のHPV DNA子宮頸癌事例の中での癌型分布を示す。84%(149/177)の事例が扁平細胞癌腫であり、11%(20/177)が腺癌腫であり、3.4%(6/177)が腺扁平であり、1.1%(2/177)が他の癌型である。E6過剰発現(E6+)を有するサンプルについて、扁平細胞癌腫の92.6%(138/149)、腺癌腫の80%(16/20)、および腺扁平の100%(6/6)が、E6 IHC陽性である。
【0168】
表18.E6 IHCおよびHPV DNA試験されたサンプルにおける癌の特性決定(組織学診断)
【表18】

【0169】
子宮頸癌の腫瘍細胞において発現されるHPV E6およびE7発癌タンパク質が、特異的な抗E6および抗E7抗体を用いたIHCアッセイによって試験された大部分のサンプルにおいて検出され得ることをまとめるために。これらの結果が病因を強化し、HPV癌タンパク質の分子メカニズムが大部分の子宮頸癌事例において機能する。研究結果は、それぞれ無調節なウイルスE6およびE7癌タンパク質の発現によるp53およびpRbタンパク質の機能的不活化を実証し、p16INK4aの過剰発現をもたらす。この研究において、E6抗体の感度(92%)は、p16INK4a抗体の感度(91%)と同等である。しかし、組み合わされたE6およびp16 IHCは、感度をさらに増加させて99.5%とする。
【0170】
子宮頸癌組織のためのHPV DNAタイピング法と比較して、E6 IHCは優れており、簡素かつロバストなアッセイと共により高い感度を提供する。組み合わされたIHCおよびHPV DNAタイピング法は、アッセイ感度を99.5%までさらに増加させる。子宮頸癌におけるHPV E6/E7癌タンパク質およびp16細胞内タンパク質の発現の相違が示されているIHC結果を有するサンプルについては、これらの個々の事例において種々の経路が癌の発生に関与する可能性がある。データは、複数のバイオマーカー(すなわち、組み合わされたE6およびp16 IHCアッセイ)が、単一バイオマーカー、E6のみまたはp16のみのいずれかを用いるのと比較して、子宮頸癌のより高い感度を得るのを助けることを示唆する。
【0171】
高度CIN病変において、E6およびE7は、宿主基底上皮細胞において強く発現され、これらの複製競合宿主細胞の細胞周期制御を実質的に妨げる。HPV癌タンパク質の発現は、宿主細胞におけるG1−S期調節を妨げる。HPV E6およびE7タンパク質は、E7によるpRBの不活性化およびE6によるp53の分解などの過剰の細胞相互作用を標的とする。高レベルのHPV E7タンパク質は、pRBを不活性化し、E2F−Rb結合の破壊をもたらす。通常、pRBのE2Fへの結合は、E2F駆動の細胞周期活性化をブロックする。細胞を複製する際、E2Fは、RBのリン酸化反応によって調節される。RBリン酸化反応は、数種のキナーゼ阻害剤(INK)によって制御されるサイクリン依存性キナーゼ(CDK4、CDK6)によって普通は媒介される。
【0172】
Rb/E2F抑制の損失および遊離E2Fによる強い活性化の結果として、宿主細胞タンパク質、p16INK4aの発現が強く過剰発現される。さらに、S期遺伝子は、連続的に活性化される。なぜなら、Cdk4/6のp16INK4a媒介抑制がpRb宿主細胞タンパク質において下流効果を有さないからである。E7依存性E2F放出は、pRbのリン酸化反応によって媒介されないため、拮抗的調節によるp16INK4a発現は、活性化された細胞周期において効果を有さない。生理学的条件下で、p16INK4aは、細胞が、老化組織におけるテロマーの実質的短縮などのゲノムストレス状態を経るとき発現される。また、アポトーシスは、p53のHPV E6媒介分解によって無効にされる。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤である、p16INK4aの過剰発現は、調節されていないHPV癌遺伝子発現の直接の結果である。
【0173】
さらに、増殖および宿主細胞ゲノム複製にとって重要である宿主細胞タンパク質は、HPV感染の結果として過剰発現され得る。これらの宿主細胞タンパク質として、限定されないが、ki67(MIB−I)、MYC細胞癌遺伝子、サイクリンタンパク質(例えば、サイクリンA、B、Eなど)、CDKN2A/p16INK4a、テロメラーゼ(例えば、TERC)、複製複合体タンパク質(例えば、MCM5、CDC6、トポイソメラーゼIIα(TOP2A)、MCM2、ミニ染色体維持タンパク質2、4、および5など)が挙げられる。
【0174】
結果として、例えばE6、E7、L1などのHPVタンパク質またはこれらのHPV感染による免疫反応の検出のための免疫学的アッセイは、ELISAスクリーニングアッセイ、迅速な免疫学的スクリーニングアッセイ、およびさらなる多重化タンパク質チップアッセイなど、ならびにこれらの組み合わせにおいて実施され得る。本発明の実施形態は、早期遺伝子(例えば、E6およびE7)および後期遺伝子(例えば、L1)によってコードされるHPVウイルスタンパク質を検出するために開発された抗体、抗原または免疫複合体アッセイを含めた、1種以上のアッセイにおいて用いられるHPVタンパク質の種々のポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。加えて、一形式、例えばマイクロプレート形式における、E6、E7、L1、タンパク質またはこれらの抗体のための開発された抗体、抗原、または免疫複合体アッセイは、HPV感染によって誘導されるE6、E7、L1タンパク質または抗体の直接測定のための一段階の免疫クロマトグラフィアッセイ内に採用され得る。本明細書に提供されている1種以上の免疫学的アッセイは、簡素な機器によるまたはさらなる機器によらない使い易い手順を使用して、短時間で実施することを目的とする。種々の免疫学的アッセイ、核酸ハイブリダイゼーションアッセイの結果と、ヒト対象に関する細胞学的および組織学的データならびに人口学的情報との比較は、HPV感染および/または子宮頸癌を診断する際に相関および精度を立証する機能を果たす。
【0175】
異形成細胞の早期診断は、子宮頸癌の成功裏の予防および処置に重要である。子宮頸癌を予防するためのストラテジーは、広範の世界的集団の対象を過去のもしくは存在するHPV感染および/または前癌状態の病変について密接に追跡調査することに加えた、該集団をカバーする改善されたHPV試験/スクリーニングを必要とする。重要なことに、12〜15歳の女性におけるHPVによる感染が、侵襲性癌の前に発生する必要があることが知られている。したがって、本明細書に記載されているような、高度異形成または前癌状態の細胞用のHPV関連バイオマーカーをアッセイして、初期段階にある女性を前スクリーニングし、後期段階において診断されるとき癌の悪性腫瘍を処置する化学療法または放射線に頼らなければならないというよりはむしろ医療的治療介入の利益を享受して子宮頸癌の発生を予防できる、これらの潜在する高度CINを同定することができることが重要である。
【図1A−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるパピローマウイルス感染の病期を決定するための方法であって:
タンパク質を含む組織サンプルまたはタンパク質を含む細胞サンプルからなるサンプルを前記ヒト対象から得る工程と;
前記サンプルを、1種以上の組み換えHPVタンパク質と特異的に結合する第1の1種以上の抗体と接触させる工程において、前記複数の組み換えHPVタンパク質が、組み換えパピローマウイルスE6遺伝子産物、組み換えパピローマウイルスE7遺伝子産物、組み換えパピローマウイルスL1遺伝子産物、組み換えパピローマウイルス切断L1遺伝子産物、および組み換えパピローマウイルスL2遺伝子産物からなる群から選択され、ここで、前記接触が、前記複数の抗体の特異的結合を促進する条件下に起こる、工程と;
前記第1の1種以上の抗体のうちの1種以上に特異的に結合する、前記サンプル中の第1の1種以上のタンパク質の存在、非存在または量を、前記接触されたサンプルに対する前記第1の1種以上の抗体のうちの1種以上の特異的結合の尺度を少なくとも部分的に基準として決定する工程と;
前記ヒト対象における前記パピローマウイルス感染の病期を、前記サンプル中の前記1種以上のタンパク質の前記決定された存在、非存在または量を基準として決定する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の1種以上のタンパク質が、パピローマウイルスE6遺伝子産物、パピローマウイルスE7遺伝子産物、パピローマウイルスL1遺伝子産物、パピローマウイルス切断L1遺伝子産物、およびパピローマウイルスL2遺伝子産物からなる群から選択される1種以上のタンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の1種以上のタンパク質が、パピローマウイルスE6遺伝子産物およびパピローマウイルスE7遺伝子産物からなる群から選択される1種以上のタンパク質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルを第2の1種以上の抗体と接触させる工程と;
前記サンプル中の、p16INK4a、pRB、p53、E2F、E2F活性化細胞周期タンパク質、サイクリン依存性キナーゼ、CDK4、CDK6、Ki−67(MIB−I)、MYCタンパク質、サイクリン−A、サイクリン−B、サイクリン−E、テロメラーゼ−TERC、MCM2、TOP2A、熱ショックタンパク質40(HSP40)、熱ショックタンパク質60(HSP60)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、CA9/MN、Iaminin5、brn−3a、CDK N2、トポイソメラーゼ2A、ミクロソームメンテナンスタンパク質−2、ミクロソームメンテナンスタンパク質−4、ミクロソームメンテナンスタンパク質−5、スルビビン、VEGF、p27(kip1)、およびp21(waf)からなる群から選択される第2の1種以上のタンパク質の存在、非存在または量を、前記接触されたサンプルに対する前記第2の複数の抗体のうちの1種以上の特異的結合の尺度を基準にして決定する工程と
をさらに含み、前記ヒト対象を、パピローマウイルス感染に関してスクリーニングする前記工程が、前記第2の1種以上のタンパク質の前記決定された存在、非存在または量をさらに基準とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上のタンパク質が、p16INK4aを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルがインサイチュにある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルが、組織サンプルを含み、前記決定工程が、免疫組織化学アッセイを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、細胞サンプルを含み、前記決定工程が、免疫細胞化学アッセイを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記病期を決定する工程が、HSILの存在または非存在を決定する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記病期を決定する工程が、後期段階HPV感染の存在または非存在を決定する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記病期を決定する工程が、高度異形成の存在または非存在を決定する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記病期を決定する工程が、≧CIN2の病期の存在または非存在を決定する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記病期が、≧CIN2または<CIN2である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記≧CIN2が、CIN2/3である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記病期がHSILである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記病期が、後期段階HPV感染である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記病期が、高度異形成である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記組み換えHPVタンパク質は、以下のプロセス:
前記パピローマウイルス遺伝子産物ならびにHIS標識、GST標識、およびMBP標識からなる群から選択される親和性標識を含む融合タンパク質をコードする組み換え構築物を与える工程と;
前記組み換え構築物を宿主細胞において発現させる工程と;
前記宿主細胞から調製された抽出物を、親和性樹脂によって、前記親和性樹脂が前記親和性標識と特異的に結合する条件下にインキュベートする工程と;
前記組み換えHPVタンパク質を前記親和性樹脂から溶離する工程と
を含むプロセスであって、前記組み換え構築物を前記宿主細胞において発現させる前記工程は、前記溶離工程が、前記組み換えHPVタンパク質を1mg/L〜10mg/Lの濃度で含む組成物を生成するようなタンパク質発現レベルを結果として生じ、前記組み換えHPVタンパク質は、SDS PAGEによって決定されるように少なくとも90%の純度で前記組成物中に存在し、前記組み換えHPVタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィによって決定されるように、実質的に可溶性の単量体形で前記組成物中に存在する、プロセス;
によって作製される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記パピローマウイルスが、HPV−6、HPV−11、HPV−16、HPV−18、HPV−31、HPV−33、HPV−35、HPV−39、HPV−42、HPV−43、HPV−44、HPV−45、HPV−51、HPV−52、HPV−53、HPV−54、HPV−55、HPV−56、HPV−58、HPV−59、およびHPV−66からなる群から選択される1種以上のウイルスを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記パピローマウイルスが、HPV−16およびHPV−18からなる群から選択される1種以上のウイルスを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記組み換えパピローマウイルスE6遺伝子産物が、組み換えHPV−16E6遺伝子産物または組み換えHPB−18E6遺伝子産物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記組み換えパピローマウイルスE7遺伝子産物が、組み換えHPV−16E7遺伝子産物または組み換えHPV−18E7遺伝子産物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞サンプルが、正常細胞、ASC−US細胞、ASC−H細胞、LSIL細胞、HSIL細胞、ADC細胞、AGC細胞またはSCC細胞を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記組織サンプルが、良性、CIN1、CIN2、CIN3、SCC、AGCまたはADCである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
細胞サンプルを含む第2サンプルを前記ヒト対象から得る工程と;
前記サンプルにおいて細胞学的パパニコロウ塗沫アッセイを実施する工程と
をさらに含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
核酸を含む第2サンプルを前記ヒト対象から得る工程と;
前記サンプルにおいてヒトパピローマウイルスについて核酸ハイブリダイゼーションアッセイを実施する工程と
をさらに含む、上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法を実施する試薬と;
該方法を実施するための指示書と
を含むキット。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【公表番号】特表2012−526286(P2012−526286A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509989(P2012−509989)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/033944
【国際公開番号】WO2010/129821
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511268096)オンコヘルス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】