説明

ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物の乳中における組換えロタウイルスタンパク質の調製

本発明は、そのゲノムが、i)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、第1の導入遺伝子、ならびにii)別の前記ロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、少なくとも第2の導入遺伝子を含む、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物に関するものであり、ここで、前記ロタウイルスタンパク質は、乳中に別々に分泌され、そこでロタウイルス様粒子(VLP)または前記ロタウイルスタンパク質の凝集体に自己集合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物に関するものであり、そのゲノムは、i)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、第1の導入遺伝子、ならびに、ii)別の上記ロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、少なくとも第2の導入遺伝子を含み、そして前記ロタウイルスタンパク質は、乳中に別々に分泌され、そこでロタウイルス様粒子(VLP)または前記ロタウイルスタンパク質の凝集体に自己集合する。
【背景技術】
【0002】
ロタウイルスは、伝染性が高いために一般的であると見なされている、広く蔓延しているウイルスである。ロタウイルスは、小児および成人に、健康であろうとなかろうと、等しい効率で感染する。ロタウイルスの感染によって、1日あたり2000人の小児、および年間あたり830000人が死亡しており、これらの大部分は発展途上国におけるものである。感染した人の総数ははるかに多く、一時的ではあるが重要な問題が生じている。
【0003】
多くの研究が、ロタウイルスのいくつかのタンパク質は、注射によって、または場合によっては経口的に投与した場合に、ワクチンとして使用することができることを実証してきた。弱毒生ワクチンを使用する試みは成功したが、深刻な副作用が同時に生じた。処理した人のうち一部が、腸重積症(腸管の一部の陥入)を患った。従って、このワクチンの使用は中止された。この副作用の制御は困難であると思われ、ワクチンとして組換えロタウイルスタンパク質を用いることがより安全であるように思われる(Beale 2002)。
【0004】
より一般的には、組換えワクチンの使用は、国連によって、発展途上国において健康を改善するための上位10件の技術のうちの2番目のものと認められている(Acharyaら、2003)。天然または組換えのロタウイルスタンパク質の大部分は少量で生産されており、実験動物を感染から防御するそれらの能力は実証されてきた(Bertolotti−Ciarletら(2003)、Schwartz−Cornilら(2002)、Kimら(2002)、Kiangら(1999)、Ciarletら(1998)、O’Nealら(1997))。これらのタンパク質が効果的なワクチンとなる可能性は同様ではない。理想的には、ワクチンは、すべての主要なウイルスのサブタイプに対して等価な効率を有するべきである。さらに、組換えワクチンは、注射または経口的経路によって投与するために、低コストで比較的大量に産生されるべきである。
【0005】
ワクチンとして使用するためのロタウイルスタンパク質の中で、VP2およびVP6は最良の候補に含まれる。VP6は、A群ロタウイルスにおいて90%より高い相同性で高度に保存された構造を有する、キャプシドタンパク質である。それゆえに、これは、すべてのA群ロタウイルスに対するワクチンとなる可能性がある。A群ロタウイルスは、主としてヒトに感染するものである。それゆえに、VP6の使用により、血清型に関係なく、A群のすべてのメンバーに対するワクチン接種ができる可能性がある。
【0006】
VP2およびVP6は、経口的に投与されたときであっても、プロテアーゼ耐性のウイルス様粒子(VLP)を自発的に形成し、ウイルスに対する免疫学的防御を誘導することができる。これらの実験は、VLPがロタウイルスの感染に対するワクチン接種を完全に可能にするという考えを証明する。ロタウイルスのVLPの使用を主に制限するものは、それらの供給力である。また、興味深いことには、VP2またはVP6に融合した外来のペプチドまたはタンパク質は、VLPに組み込まれ、非常に重要な抗原特性を有する(Charpilienneら、2001、および国際公開第01/66566号パンフレット)。
【0007】
組換えVLPは、VP2およびVP6遺伝子を有するバキュロウイルスに感染させたSf9細胞から調製することができる。細胞溶解物から抽出することができるVLPは、新生VLPと同様の構造的および免疫学的特性を有する。しかし、この系は、組換えタンパク質を産生する能力に限界がある。タンパク質VP6はトランスジェニックジャガイモ中で調製されており、ウイルスタンパク質を含む塊茎組織は、経口投与した後(YuおよびLangridge、2003)またはアジュバントと注射した後に(Matsumuraら、2002)、マウスにおいて免疫を誘導することが可能であった。同様に、ジャガイモ中で産生したロタウイルスタンパク質VP7は、マウスにおいて、高力価の粘膜の中和IgAを誘導した(Wuら、2003)。しかし、ジャガイモにおいて産生したロタウイルスタンパク質の量は、すべての場合において非常に少なかった。さらに、組換えタンパク質の精製は、これらの条件において困難であることが予測される。
【0008】
最近、当分野において、トランスジェニック植物を使用することが提案されてきているが(Maら、2003)、この系は能力に限界があり、植物のVPタンパク質が、VLPに集合するのに適した形態であろうことは示されていない。加えて、医薬用タンパク質を含むトランスジェニック植物が播種することの問題は解決されていない(Maら、2003)。
【0009】
トランスジェニック動物の乳は、大量の医薬用組換えタンパク質を産生するための最も成熟した系である(Houdebine(2000)、Houdebine(2003))。100を超える組換えタンパク質が、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタおよびウシの乳中で実験的に調製されてきた。乳から抽出された最初の医薬用タンパク質であるヒトアンチトロンビンIIIは、2004年に市販されると予想されている。このことは、主要な問題である、発現レベル、乳からの精製およびバイオセイフティーが解決されたことを意味する。
【特許文献1】国際公開第01/66566号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、当分野における自らの専門知識を用いて様々なベクターを設計し、そして、シグナルペプチドを付加するとロタウイルスタンパク質が乳中で高い割合で産生および分泌され得るということを初めて実証する。本発明者は、幸運にも、タンパク質VP2およびVP6がカゼインミセルに凝集しないことを観察した。従って、VPタンパク質は、低コストの抽出および精製工程の後に、乳清から回収することができる。
【0011】
本発明者はまた、組換えVP2およびVP6が、乳中において、さらに精製を可能にする高分子量のVLPまたはVPタンパク質の凝集体を自発的に形成することを発見した。本発明者はまた、VPタンパク質をコードするcDNAを修飾し、産生を驚くべきほどに増強させた。
【0012】
最後に、本明細書の以下に詳細に記載される本発明に従って産生されるVLPは、ロタウイルス感染に対してマウスを100%防御することを示しており、このことは、本発明者らが、医薬的要求に見合うVLPの産生速度のみならず、乳中に産生された、免疫防御を付与するのに適切な集合体および立体構造になっているVLPもまた初めて提供するということも意味している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえに、第1の態様において、本発明は、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物を目的とし、そのゲノムは、
i)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、第1の導入遺伝子、
ii)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択される別のロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、少なくとも第2の導入遺伝子、
を含み、
ここで、cDNA配列は野生型であるか、または修飾されており、
前記修飾は、Asp→Glnの置換によるグリコシル化部位の除去、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化およびコドンの最適化、コドンの最適化、早期のポリアデニル化部位の除去、ならびに点突然変異、ならびにこれらの組み合わせから選択され、
前記ロタウイルスタンパク質は、乳中に別々に分泌され、そこでロタウイルス様粒子(VLP)または前記ロタウイルスタンパク質の凝集体に自己集合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
特定の実施形態において、第1の導入遺伝子は、VP2ロタウイルスタンパク質をコードする野生型または修飾されたcDNAを含み、第2の導入遺伝子はVP6ロタウイルスタンパク質をコードする野生型または修飾されたcDNAを含み、そしてこのゲノムは任意に、VP4およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAを含む第3または第4の導入遺伝子をさらに含む。VP2、VP6、VP4およびVP7の任意の組み合わせが含まれる。例えば、VP2−VP6、VP2−VP4、VP2−VP7、VP2−VP6−VP4、VP2−VP6−VP7である。
【0015】
VP4によって、本発明が、VP5およびVP8などの、VP4の天然の切断産物を含むことを理解されたい。
【0016】
本発明のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物は、Asp→Glnの置換によるグリコシル化部位の除去、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化およびコドンの最適化、コドンの最適化、早期のポリアデニル化部位の除去、ならびに点突然変異から選択される少なくとも一つの修飾を含む、VP2、VP4、VP6およびVP7をコードする少なくとも一つのcDNAを含むことができる。これらの修飾の例は、SEQ ID No.2〜6および11〜16に示す。
【0017】
これらの修飾は、乳腺における前記タンパク質のmRNAの翻訳を増強する。さらに、VP6におけるグリコシル化部位の除去は、免疫原性を損失するリスクと同様に、それが集合しないリスクも減少させる。配列の修飾のうち、コドンの突然変異ならびに5’および3’UTRの欠失は、転写、mRNAの安定性および翻訳を減少させることが可能なシグナルを除去することができる。
【0018】
例えば、VP2をコードするcDNAはSEQ ID No.1〜6から選択され、VP4をコードするcDNAはSEQ ID No.7〜9から選択され、VP6をコードするcDNAはSEQ ID No.10〜16から選択され、そしてVP7をコードするcDNAはSEQ ID No.17〜21から選択される。例えば、第1のcDNAはSEQ ID No.6であり、第2のcDNAはSEQ ID No.16またはSEQ ID No.10である。VP2に関しては、SEQ ID No.6に示したような、SEQ ID No.1に1、2、3、5、10または20またはそれ以上の修飾を施した、任意の修飾配列が本発明に含まれることを理解されたい。VP6については、本発明はまた、SEQ ID No.16に示したような、SEQ ID No.10に1、2、3、5、10または20またはそれ以上の修飾を施した任意の修飾配列に関する。
【0019】
VPタンパク質のcDNA修飾によって得られる利点を、以下にさらに詳述する。
【0020】
有利には、第1の導入遺伝子は、上記に規定したようなVP2をコードする修飾されたcDNAである。ここで、第2の導入遺伝子は、VP4、VP6またはVP7、好ましくはVP6をコードする天然のまたは修飾されたcDNAであってよい。
【0021】
一つの特定の実施形態において、本発明は、上記に規定したようなヒト以外のトランスジェニック哺乳動物に関するものであり、ここで、前記VP2およびVP6は、少なくとも5000KDaのVLPまたは凝集体に集合する。従って、別の好ましい実施形態において、本発明は、ヒト以外の雌のトランスジェニック哺乳動物に関するものであり、その乳は、VP2、VP6の単量体および多量体(例えばVP6三量体)、VP2−VP6を基にした少なくとも5000KDaのVLPまたはVP2−VP6凝集体を含む。
【0022】
前記雌の動物において、乳は、VP2とVP6の両方を少なくとも10μg/ml、好ましくは少なくとも100μg/ml含み、ロタウイルスに感染させたマウスで100%の防御を示す。
【0023】
「ゲノム」という用語は、本明細書では、核または染色体外のDNAを含む、哺乳動物の全ての内因性DNAを含むものとする。
【0024】
「導入遺伝子」という表現が、前記のヒト以外の哺乳動物のゲノム中に挿入され、その挿入が時間を経ても安定している外来の配列を含む核酸分子を意味するものであるということは、当業者に理解されるであろう。導入遺伝子は、マイクロインジェクションによって細胞に導入され、相同組換えまたはリコンビナーゼに従った部位特異的組換え(Cre/Lox、FLP/FRT)を介してゲノムに組み込まれる。導入遺伝子はまた、組換えウイルスであるベクターの形態とすることができる。従って、「ベクター」または「導入遺伝子」という表現は本明細書で交換可能に用いられる。この分子は、染色体中に組み込まれてもよく、または染色体外で複製するDNAであってもよい。古典的な異種交配、またはインビトロ受精、または導入遺伝子の直接的導入は、ヒト以外のホモ接合体のトランスジェニック哺乳動物の産生を可能にする。本発明の「ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物」は、好ましくは、前記ヒト以外の哺乳動物の生殖系列に、上記に規定した一つまたは複数の「導入遺伝子」を導入することによって産生される。
【0025】
乳腺特異的転写制御領域は、乳清タンパク質またはカゼインタンパク質をコードする遺伝子から選択することができる。いくつかの乳の遺伝子プロモーターが、乳中で組換えタンパク質を調製するために用いられる(欧州特許第264166号明細書(乳中に所望のタンパク質を分泌するトランスジェニック動物)および欧州特許第527063号明細書(トランスジェニック哺乳動物の乳中における目的のタンパク質の産生)を参照のこと)。
【0026】
より詳細には、乳腺特異的転写制御領域は、WAP(ホエイ酸性タンパク質)プロモーター、例えば、マウスまたはウサギの長いWAPプロモーターなどである。
【0027】
適したWAPプロモーターの例は、ウサギのWAPプロモーターの翻訳開始点から少なくとも3kb、3kb〜6.3kb、または少なくとも6.3kbの領域である。特に有利なウサギの長いWAPプロモーター配列は、参照により本明細書で援用した欧州特許第0527063号明細書(Houdebineら)の図1および5に記載されている。ウサギWAP遺伝子の長いプロモーター(6.3kb)(Houdebineら、1991)を、VP2およびVP6のcDNAを発現させるために、以下に記載した実験において使用した。本明細書に記載した導入遺伝子は、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ラットまたはマウスの、WAP遺伝子を取り囲むゲノム配列、好ましくは、WAP遺伝子の少なくとも140Kb上流および少なくとも10Kb下流をさらに含んでもよい。
【0028】
数年前に行われた実験では、ニワトリのβ−グロビン遺伝子クラスターの5’HS4領域により、より高い発現レベルで導入遺伝子を発現する動物の割合が劇的に増えることが示された(Taboit−Dameronら(1999)、Rival−Gervierら(2003))。従って、導入遺伝子は、ニワトリのβ−グロビン遺伝子クラスターの5’HS4領域をさらに含んでもよい。以下の実験において、5’HS4を、VP2およびVP6のcDNAを発現するベクターに加えた。
【0029】
イントロンもまた、ベクターに加えた。様々なものに由来するいくつかのイントロン、つまりSV40初期遺伝子、SV40後期遺伝子、β−グロビン遺伝子、EF1α遺伝子、αs1−カゼイン遺伝子、ウサギWAP遺伝子、ウシおよびヒトの成長ホルモン遺伝子のイントロンを試験した。
【0030】
従って、本発明は、導入遺伝子が、上記に引用したイントロンのような、しかしこれらに限定されない、一つまたは複数のイントロンをさらに含むことを特徴とする、上記のヒト以外の哺乳動物を包含する。
【0031】
エンハンサー、つまりαs1−カゼイン遺伝子(単量体または多量体)、HTLV1ゲノムのLTR、免疫グロブリン遺伝子、MMTVゲノムのLTR、WAP遺伝子の上流の末端領域(140kbまで)および下流の末端領域(少なくとも10Kb)(Rival−Gervierら(2002)、Rivalら、欧州特許出願公開第1217071号明細書、国際公開第02/052023号パンフレット)、β−グロビン遺伝子のエンハンサーもまた、WAP遺伝子プロモーターおよびベクターの転写された領域に加えた。従って、本発明は、導入遺伝子が、上記に引用したエンハンサーのような、しかしこれらに限定されない、プロモーター領域および/または転写された領域に位置する一つまたは複数のエンハンサーをさらに含む、上記のヒト以外の哺乳動物を包含する。
【0032】
いくつかの転写ターミネーター、つまり、SV40の初期遺伝子および後期遺伝子、β−グロビン遺伝子、WAP遺伝子、ウシおよびヒトの成長ホルモンのターミネーターを使用した。結果として、本発明は、導入遺伝子が、上記に引用したターミネーターのような、しかしこれらに限定されない、一つまたは複数の転写ターミネーターをさらに含む、上記のヒト以外の哺乳動物に関する。
【0033】
上記のエレメントを含むベクターの共通する構造の例を、図1に示す。
【0034】
さらに別の実施形態において、本発明は、VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードする少なくとも二つのcDNAが一つの単一の前記導入遺伝子中にある、上記のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物を対象とする。
【0035】
cDNAは、乳房組織中での産生および乳への分泌のために最適化してもよい。その際、VP2およびVP6のcDNA中に存在する潜在性のスプライス部位を不活性化することができ、そして、転写、翻訳を変化させること、またはmRNAの安定性を減少させることができる可能性があるいくつかの配列を、グリコシル化部位と同様に突然変異させることができる。いくつかのコドンの最適化もまた、哺乳動物細胞におけるcDNAの発現をさらに増やすために行うことができる。
【0036】
本発明の趣旨において、導入遺伝子は、外因性または内因性のペプチドまたはタンパク質またはそのエピトープのコード配列をさらに含んでもよい。このことにより、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物が、エピトープを有する組換えVLPを乳中に産生するようになる。例えば、前記エピトープは、HIVエピトープ、特にRTPKIQV(SEQ ID No.20、Chermannら、欧州特許第0835309号明細書および米国特許第6113902号明細書)またはELDKWA(SEQ ID No.21,Matoba,N., A.Magerus, B.C.Geyer, Y.Zhang, M.Muralidharan, A.Alfsen, C.J.Arntzen, M.Bomsel, and T.S.Mor. 2004. A mucosally targeted subunit vaccine candidate eliciting HIV−1 transcytosis−blocking Abs. Proc Natl Acad Sci USA 101:13584−9)、またはその両方である。
【0037】
「哺乳動物」という表現は、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ラットまたはマウスを含むものとする。
【0038】
第2の態様において、本発明は、
(a)上記に規定した導入遺伝子を、ヒト以外の哺乳動物の胚または受精卵に挿入する工程、
(b)前記胚または受精卵を、成体の哺乳動物に成長させる工程、
(c)前記導入遺伝子が乳房組織のゲノム中に存在する、前記ヒト以外の哺乳動物または前記ヒト以外の哺乳動物の雌の子孫において、泌乳を誘導する工程、
(d)前記泌乳するヒト以外の哺乳動物の乳を回収する工程、および
(e)前記回収した乳から前記VLPまたはVLPのタンパク質部分を単離する工程、
を包含する、組換えロタウイルスVLPまたはVLPのタンパク質部分を産生するための方法に関するものである。
【0039】
換言すれば、本発明は、
(a)上記に規定したヒト以外のトランスジェニック哺乳動物または前記ヒト以外の哺乳動物の雌の子孫において、泌乳を誘導する工程、
(b)前記泌乳するヒト以外の哺乳動物の乳を回収する工程、および
(c)前記回収した乳から前記VLPまたはVLPのタンパク質部分を単離する工程、
を包含する、組換えロタウイルスVLPまたはVLPのタンパク質部分を産生するための方法に関するものである。
【0040】
「VLPのタンパク質部分」という表現は、VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるタンパク質の単量体、二量体、三量体、またはその他のホモもしくはヘテロの多量体をいう。これはまた、VP2およびVP6のタンパク質凝集体も包含する。
【0041】
好ましい実施形態において、乳中に存在するVP2およびVP6は分解されておらず、切断されておらず、かつグリコシル化されていない。
【0042】
上記の方法において、前記VLPのタンパク質部分を精製することができ、最終的には分離し、そして組換えVLPに再集合するための条件下に置く。この精製工程は、乳清を調製することからなる第1の工程を包含してもよい。
【0043】
第3の態様において、本発明は、寄生生物、細菌、または、HIV、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、A型、B型もしくはC型肝炎ウイルス、RSV、コロナウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病ウイルス、マレック病ウイルスを含むがこれらに限定されないウイルスによる感染を治療または予防するためのワクチンなどの免疫学的組成物を製造するための、上記に規定したヒト以外のトランスジェニック動物または方法から得られた、エピトープを有する組換えVLPを使用することを目的とする。
【0044】
本発明はまた、癌、自己免疫疾患および代謝障害を治療または予防するためのワクチンなどの免疫学的組成物を製造するための、上記に規定したヒト以外のトランスジェニック動物または方法から得られた、エピトープを有する組換えVLPの使用に関する。
【0045】
本発明において用いられる医薬組成物は、経口(図13)、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、経鼻、腸内、または直腸の手段を含むがこれらに限定されない任意の数の経路によって投与されてもよい。
【0046】
直腸投与の様式もまたマウスにおいて非常に良好な防御を示したので、上記薬剤は直腸投与のためのものであってもよい。従って、本発明は、注射可能な溶液または坐剤である、直腸投与に適した、上記に規定したヒト以外のトランスジェニック動物または上記に規定した方法から得られるエピトープを有する組換えVLPを含む医薬組成物を包含する。
【0047】
本発明は、以下の実施例および図面においてさらに具体化される。
【0048】
図面の説明
【0049】
図1は、乳中でロタウイルスの組換えタンパク質を産生するために用いるベクターの構造である。ベクターの様々なエレメントは本明細書の本文中に示す。
【0050】
図2は、トランスフェクトしたCHO細胞のVP2およびVP6の分泌を示している。(A)CHO細胞を、シグナルペプチドと融合させた野生型VP2またはVP6のcDNAを含む発現ベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を48時間増殖させ、次いで培養培地を回収し、Vivaspin濃縮カラム(Vivascience)上で濃縮し、そして抗ロタウイルスポリクローナル抗体(8148)を用いたウェスタンブロット分析に供し、続いて化学発光分析(ECL、Amersham Bioscience)を行った。VP2またはVP6を含むプラスミドでトランスフェクトした細胞の培養培地を、それぞれVP2およびVP6と表示する。コントロールは、トランスフェクトしていない細胞である。各タンパク質の位置を矢印で示す。(B)ウシロタウイルス株RFを用いて行った電気泳動を示している。
【0051】
図3は、野生型VP6と突然変異型VP6との電気泳動の泳動度の比較を示している。(A)実験は、シグナルペプチドと融合した野生型および突然変異型のVP6のcDNAを含むベクターを用いて、図2の説明で記載したように行った(それぞれVP6およびVP6m)。(B)野生型ウイルス(RF)のVP6タンパク質の位置を示しており、矢印によって示されている。
【0052】
図4は、トランスジェニックマウスの乳中でのVP2およびVP6の存在を示している。非トランスジェニック動物から得た(コントロール乳)、またはトランスジェニック系統10、24、26、29および45から得た、いずれかの脱脂乳または乳清の画分を、各レーンに加えて、ウェスタンブロット分析を行った。最初の二つの数字は系統の番号を示す。乳清は、脱脂乳にCaCl2を加えることによってカゼインを沈殿させた後の上清である。サンプルは、Laemmliバッファーで希釈し、5分間煮沸し、そして12%ポリアクリルアミドゲル上にロードしてSDS−PAGEを行った。次いで、タンパク質を、PVDF膜上に転写し、(A)抗VP2モノクローナル抗体(E22)または(B)抗ロタウイルスポリクローナル抗体(8148)でブロットし、そして化学発光(ECL、Amersham Bioscience)によって検出した。マウス1014はマウス1011よりも少ない導入遺伝子のコピーを有しており、これは、導入遺伝子が分離してゲノムのいくつかの独立した部位に組み込まれたことに起因する。この抗体は、VP2よりもVP6をはるかに良好に認識する。
【0053】
図5は、トランスジェニックウサギの乳清中でのVP2およびVP6の存在を示す。トランスジェニックウサギ系統01、02、08、11、12、13の乳清中の(A)VP2および(B)VP6を、(A)抗VP2モノクローナル抗体(E22)または(B)抗ロタウイルスポリクローナル抗体(8148)を用いたウェスタンブロットによって可視化した。
【0054】
図6は、トランスジェニックF0マウスの乳中でのVP6の三量化を示している。非トランスジェニック動物(コントロール)またはトランスジェニックマウス系統24および26のいずれかから得た脱脂乳の画分を各レーンにロードした。サンプルは、Laemmliバッファーで希釈し5分間煮沸するか、または直接(煮沸なし)のいずれかで、12%ポリアクリルアミドゲル上にロードし、SDS−PAGEを行った。次いで、タンパク質をPVDF膜上に転写し、抗ロタウイルスポリクローナル抗体でブロットし、そして化学発光(ECL、Amersham Bioscience)によって検出した。マウス1014はマウス1011よりも少ない導入遺伝子のコピーを有しており、これは、導入遺伝子が分離してゲノムのいくつかの独立した部位に組み込まれたことに起因する。
【0055】
図7は、トランスジェニック乳を用いた皮下での免疫付与後の、血清中の抗VP2−VP6IgG抗体を示す。抗VLP2/6IgG抗体を、二回皮下接種した後のマウスで測定した。血清を、接種の14日後に採取した。1.5μgのVP2およびVP6に対応する量の乳をマウスに注射した(Tg)。コントロールの免疫付与は、コントロール乳(コントロール)、バキュロウイルスによって合成された1μgの純粋なVLP2/6(VLP)、およびコントロール乳に1μgのVLP2/6を加えたもの(コントロール+VLP)を使用して行った。抗体は、ELISAによって個々のマウスで検出した。データは、1/900の血清希釈におけるIgGレベルの平均±SEMである。
【0056】
図8は、トランスジェニック乳を用いた経口での免疫付与後の、血清中の抗VP2−VP6IgG抗体および糞便中の抗VP2−VP6IgA抗体を示す。(A)抗VLP2/6IgG抗体を、トランスジェニックウサギまたはコントロールのウサギの乳を三回経口投与した後のマウスで測定した。血清を、最後の強制摂取の14日後に採取した。タンパク質VP2およびVP6それぞれの約35μgに対応する量の乳を、各マウスに投与した。コントロールの免疫付与を、同量の非トランスジェニック動物の乳を用いて行った。抗体を、ELISAによって個々のマウスにおいて検出した。データは、1/900の血清希釈におけるIgGレベルに対応する。(B)同じ動物において測定した糞便サンプルのIgAレベルである(1/5希釈)。
【0057】
図9は、分泌された野生型VP6がグリコシル化されていることを示す。乳中に分泌された野生型VP6は、天然のウイルスタンパク質と比較して、より大きな分子量を有する。この違いは、インビトロでタンパク質を脱グリコシル化するとなくなる。分泌された野生型VP6を、N結合型オリゴ糖の切断のためのPNGaseの存在下(+)または非存在下(−)でインキュベートした。VP6のグリコシル化型および非グリコシル化型の位置を示す(それぞれVP6glycおよびVP6)。分子量は、kDaで、ブロットの左側に示す。
【0058】
図10は、修飾型のVP6がグリコシル化されていないことを示す。グリコシル化部位が突然変異している修飾したcDNAから産生されたVP6は、天然のVP6と同一の分子量を示す。それゆえに、修飾した組換えVP6はここではグリコシル化されておらず、グリコシル化がタンパク質の免疫原性を低下させるリスクを減少させる。eF1アルファ遺伝子のプロモーターに依存するシグナルペプチドと融合した、野生型または修飾したVP6のcDNAを含むプラスミドを、CHO細胞で一過性発現させた。培地を回収し、濃縮し、そしてウェスタンブロット分析に供した。分泌された野生型(wt)および修飾した(mod)タンパク質を、VP6に対する抗ロタウイルスポリクローナル抗体を用いて検出した。Cはトランスフェクトしていない細胞からのコントロール、RFはロタウイルス株RFを用いて行った電気泳動である。分子量は、kDaで、ブロットの左側に示す。
【0059】
図11は、修飾後のVP2の発現の増強を示す。VP2のcDNAを修飾し、試験した。本発明者は、これが、野生型cDNAと比較してタンパク質の生合成を増強することを発見した。eF1アルファ遺伝子プロモーターに依存するシグナルペプチドと融合した、野生型または修飾したVP2のcDNAを含むプラスミドを、CHO細胞で一過性発現させた。培地を回収し、濃縮し、そしてウェスタンブロット分析に供した。分泌された野生型(wt)および修飾した(mod)タンパク質を、抗VP2モノクローナル抗体E22を用いて検出した。Cはトランスフェクトしていない細胞からのコントロール、RFはロタウイルス株RFを用いて行った電気泳動である。分子量は、kDaで、ブロットの左側に示す。
【0060】
図12は、ウイルス抗原の排泄の割合の減少を示す。本発明に従った乳中で産生されるVP粒子は、100%の防御を付与することが可能である。マウスを、10μgのVLP2/6/7/4(「VLP」)、VP2およびVP6を含むトランスジェニックウサギの乳から得た3μgの半精製物質(「Tg乳」)、またはコントロールとして使用するRPMI培地(「RPMI」)のいずれかで、直腸経由で二回免疫付与した。毒性のマウスロタウイルスECwによるチャレンジの後、感染からの防御のレベルを各々のマウスについて計算し、他所に記載されているように、7日間の糞便中に排泄されるウイルス抗原の減少として表した(Schwartz−Cornil I, Benureau Y, Greenberg H, Hendrickson BA, Cohen J (2002) Heterologous protection induced by the inner capsid proteins of rotavirus requires transcytosis of mucosal immunoglobulins. J Virol 16:8110−8117)。各群におけるマウスの数を示す(n)。
【0061】
図13は、トランスジェニックウサギの乳の免疫原性およびチャレンジに対するマウスの防御を示す。5〜8頭のBalb/cマウス群を、5μgのコレラ毒素と混合した500μlの正常なウサギまたはトランスジェニックウサギの乳(それぞれ、乳およびTg乳)を用いて、4回(各強制摂取の間に10日間の間隔をあけて)経口的に免疫付与した。血清中のIgG、IgA(A)および(B)、または糞便中のIgA(C)の抗体力価を、ELISAによって測定した。各群の抗体力価の平均を示し(黒棒)、またSEMを示す(細い線)。*は、すべての力価が<100であることを示し、#は、乳群とTg乳群との間に有意な差があることを示す(Mann−WhitneyのU検定)。(D)毒性のマウスロタウイルスの103 SD50を用いたチャレンジの後の防御レベルを、各々のマウスについて計算した。結果を、コントロール群と比較した、ワクチン群の7日間の糞便中に排泄されたウイルス抗原の割合の減少として表す。水平方向の棒は平均値を表す。#は、乳群とTg乳群との間に有意な差があることを示す(Mann−WhitneyのU検定)。
【実施例1】
【0062】
VP2およびVP6のcDNAの修飾
【0063】
ロタウイルスゲノムは、感染した細胞の細胞質中で複製し発現するいくつかのRNA断片によって形成される。それゆえに、これらの配列はイントロンを有していないが、潜在性のスプライシングシグナルを含む可能性がある。ロタウイルスのRNAは、核から細胞質への移行のためのシグナルを含まない。一方、ウイルスタンパク質は、合成され、細胞質基質中で集合し、小胞体およびゴルジ装置を通過した後のエキソサイトーシスによっては分泌されない。
【0064】
アミノ酸配列を僅かに変化させるだけの多くのヌクレオチド配列修飾が、二つのcDNAにおいて行われてきた。様々な哺乳動物のタンパク質(ウシまたはヒトの成長ホルモンファミリー、乳タンパク質等)のシグナルペプチドを天然には分泌されないタンパク質に加えることで、これらのタンパク質の効率的な分泌が可能になる。これらのシグナルペプチドのいくつかを、さらなる最適化を可能にするために比較した。
【0065】
VP2およびVP6のcDNAに存在する潜在性のスプライス部位のいくつかを不活性化した。転写、翻訳を変化させること、またはmRNAの安定性を減少させることができる可能性があるいくつかの配列を突然変異させた。いくつかのコドンの最適化もまた、哺乳動物細胞におけるcDNAの発現を増やすために行った。
【0066】
野生型および最適化したcDNAの発現を、いくつかのベクター(pcDNA3(Invitrogen、VT90−20)、pEF0(Taboit−Dameronら、1999))を用いてトランスフェクトしたCHO細胞において比較した。培養培地中のタンパク質VP2およびVP6の存在を、ウェスタンブロット分析を用いて明らかにした。
【0067】
図2に示したデータは、VP2とVP6の両方が、トランスフェクトしたCHOから分泌されたことを示す。これは、ロタウイルスタンパク質が、シグナルペプチドを加えた後の動物細胞から高レベルで分泌され得ることを初めて実証する。これは、ある細胞質基質の区画にタンパク質を方向付けるシグナルがVP2およびVP6にもし存在するならば、それらにシグナルペプチドが加えられるとそれらの効果の重要性が限られたものとなることを示す。野生型のVP6は、ウイルスタンパク質よりもより大きな分子量を有するタンパク質として発現した。このことは、ウイルスタンパク質においては生じないがタンパク質が小胞体およびゴルジ装置を通って移動するときには生じる可能性があるVP6のグリコシル化に起因する可能性がある。そのグリコシル化部位の大部分を欠いている突然変異型VP6は、ウイルスタンパク質と同じレベルで泳動した(図3)。VP6における糖質の存在は、VLPの構造を変化させ、すなわちその免疫学的特性を減少させる可能性がある。
【実施例2】
【0068】
乳中での特異的分泌のためのベクター
【0069】
上記の実施例で得られたエレメントを組み合わせて、広範なベクターファミリーを形成し、これを、ウサギ初代乳房細胞と同様に、CHO細胞またはマウスHC11乳房細胞において試験した。トランスジェニック動物における発現レベルを十分に予測するものではなかったが、細胞試験は、最も低い効力を示す組み合わせを除外することを可能にした。最適化した/突然変異したベクターを含む様々なベクターは、野生型VP2およびVP6のcDNAと比較して、10,000倍の発現の増加を可能にした。最終的には、ベクターの最適化についての本発明者の研究により、乳中に両方のタンパク質を100μg/ml産生するヒト以外のトランスジェニック哺乳動物が得られた。
【実施例3】
【0070】
乳から得たタンパク質VP2およびVP6の解析
【0071】
ウェスタンブロット分析は、トランスジェニック動物の系統に従って、乳中のVP2およびVP6の最適な濃度が100μg/mlまたはそれ以上であったことを示した(図4および5、ならびに表1)。
【0072】
【表1】

【0073】
組換えタンパク質の濃度は、標準としてウイルスタンパク質を使用して、ウェスタンブロットアッセイによって測定した。VP2TgはVP2がトランスジェニックであることを示しており、VP6TgはVP6がトランスジェニックであることを示している。
【0074】
【表2】

【0075】
組換えタンパク質の濃度は、標準としてウイルスタンパク質を使用して、ウェスタンブロットアッセイによって測定した。VP2TgはVP2がトランスジェニックであることを示しており、VP6TgはVP6がトランスジェニックであることを示している。
【0076】
二つのタンパク質は、ウェスタンブロットアッセイにおける完全な変性の後に予測される分子量であった(図4および図5)。このことは、タンパク質が切断、分解、またはグリコシル化されなかったことを示す。興味深いことに、VP6は、変性が加熱の工程を含まなかったときは三量体の形態であった(図5)。VP6のこの特性は、新生タンパク質およびVP6のcDNAを有するバキュロウイルスに感染したSf9細胞から抽出された組換えタンパク質で見られた。
【0077】
ウェスタンブロットアッセイにより、乳清(過剰のカルシウムを加えることによるカゼインの特有の沈殿後に得られる)中のVP2およびVP6を同定した(図4および5)。これは、タンパク質VP2およびVP6がカゼインミセルに凝集しなかったこと、そして、乳清の調製がウイルスタンパク質の精製のための効率的な最初の工程と思われることを示す。
【0078】
乳清の超遠心分離により、VP2とVP6の両方をペレット化した。コア様凝集体を形成することが知られているVP2は単独でペレット化したが、VP6は単独でペレット化せず、VP2の存在下でのみペレット化した。このことは、組換えVP2およびVP6が、Sf9−バキュロウイルスなどの他の系におけるのと同様に、乳中で自発的にVLPを形成することを強く示唆する。
【0079】
CsCl密度勾配遠心分離がロタウイルス、新生VLPおよびバキュロウイルス−Sf9細胞系によって調製された組換えVLPを濃縮できることは知られている。CsCl密度勾配中の浮遊物質を電子顕微鏡で観察したところ、ロタウイルスの形態学的特徴を有するキャプシドを含む。
【0080】
トランスジェニック動物の乳清を、Superose12で分画した。VP2およびVP6を共溶出したところ、ほとんどがボイドボリューム中に存在した。このことは、これらの二つのタンパク質が少なくとも300,000KDaの凝集体を共同で形成していることを示す。ボイドボリューム中に見られる物質を、CsCl密度勾配超遠心分離に供した。VP2およびVP6タンパク質は、勾配中の天然のVLPに対応する密度のところで見られた。
【0081】
乳中で見られるVP2−VP6凝集体の厳密な構造は、不完全なキャプシドを形成する可能性がある。実際、VP2およびVP6は乳中では同様の濃度で存在するのに対して、ウイルス中ではVP6はVP2よりも約6倍豊富である。それでもなお、VLPは、インビトロでの再集合のために比率を調整して、乳から抽出および精製したVP2/VP6タンパク質から調製することができる。また、乳中での産生の比率が、VP2およびVP6を発現する、異なる組み合わせまたは数のベクターを用いて調節され得ることも理解されたい。
【実施例4】
【0082】
VP2およびVP4を含む乳を用いたマウスの免疫付与
【0083】
脱脂したウサギの乳(30μl)を、不完全フロイントアジュバントの存在下で皮下注射によってマウスに投与した。二週間後、処理を繰り返した。代わりに、コレラ毒素(5μg)と混合した脱脂乳(500μl)をマウスに経口投与した(強制摂取間で1週間の間隔をあけて3回)。最後の注射または強制摂取の一週間後に、血液および糞便のサンプルを動物から採取し、抗VP2抗体および抗VP6抗体の存在を調べた。
【0084】
大量の抗VP6IgG抗体が、7頭の免疫付与したマウスの血清中に見られた。VP6に結合している天然の抗体のバックグラウンドのみが、非トランスジェニック動物から得た乳を与えたコントロールマウスの血清で見られた(図7)。非常に多くの量の抗VP6IgG抗体もまた、02系統のトランスジェニックウサギから得た500μlの乳を経口的に与えた5頭のマウスのうち3頭の血清で見られた。この量の乳は、約35μgのタンパク質VP2およびVP6をそれぞれ含んでいた。非トランスジェニックウサギから得た同じ量の乳を与えたコントロールマウスは、VP6結合タンパク質のバックグラウンドのみを有した(図8A)。
【0085】
興味深いことに、抗VP6IgAは、強制摂取によって免疫付与したマウスの3頭の糞便サンプルにおいて見られた(図8B)。2頭のマウスでは抗原に対する応答が非常に低かった。このことは、比較的少量のウイルスタンパク質が経口的に投与されたという事実に起因する可能性がある。
【0086】
これらのデータは、ロタウイルスのタンパク質VP2およびVP6が、培養細胞において、またインビボで乳中に分泌および共分泌され得ることを初めて報告するものである。分泌されたタンパク質の量は、他の系で得られたそれよりもはるかに多い。これは、新規な低コストで安全なワクチンを産生する可能性を提供する。ここで、いかなるアジュバントも伴わない比較的大量のタンパク質の投与を含む手順は、はるかにより容易に行うことができる可能性がある。
【0087】
タンパク質VP2およびVP6は、注射によってまたは経口的に投与するワクチンとして使用することができるVLPを形成する。
【0088】
本明細書に記載した産生系は、単独でまたはVP2およびVP6と共同で同様にワクチンとして使用される可能性のある、VP4およびVP7などの他のロタウイルスタンパク質を発現するのに適切である。
【0089】
VP2およびVP6への外来のペプチドおよびタンパク質の付加は、VLPの形成を妨害せず、外来のエピトープに対する抗体の生成を可能にする。本明細書に記載した方法は、HIV、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、A型、B型もしくはC型肝炎ウイルス、RSV、コロナウイルス、口蹄疫ウイルス、オーエスキー病ウイルス、マレック病ウイルスなどの、他のヒトもしくは動物のウイルスから、または病原性細菌および寄生生物から、エピトープを有する組換えVLPを調製することを可能にする。経口経路を介してのこのワクチン接種のアプローチは、病原体を根絶するためにIgAの産生が必要なときに特に重要であるかもしれない。
【0090】
別の治療的適用は、内因性遺伝子のエピトープのキャリアとして組換えロタウイルスのVLPを用いること、免疫応答を誘導すること、および癌、自己免疫疾患、代謝障害に関与するものといった分子の作用を減少させることである。
【0091】
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【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】乳中でロタウイルスの組換えタンパク質を産生するために用いるベクターの構造を示した図。
【図2】トランスフェクトしたCHO細胞のVP2およびVP6の分泌を示した図。
【図3】野生型VP6と突然変異型VP6との電気泳動の泳動度の比較を示した図。
【図4】トランスジェニックマウスの乳中でのVP2およびVP6の存在を示した図。
【図5】トランスジェニックウサギの乳清中でのVP2およびVP6の存在を示した図。
【図6】トランスジェニックF0マウスの乳中でのVP6の三量化を示した図。
【図7】トランスジェニック乳を用いた皮下での免疫付与後の、血清中の抗VP2−VP6IgG抗体を示したグラフ。
【図8】トランスジェニック乳を用いた経口での免疫付与後の、血清中の抗VP2−VP6IgG抗体および糞便中の抗VP2−VP6IgA抗体を示したグラフ。
【図9】分泌された野生型VP6がグリコシル化されていることを示した図。
【図10】修飾型のVP6がグリコシル化されていないことを示した図。
【図11】修飾後のVP2の発現の増強を示した図。
【図12】ウイルス抗原の排泄の割合の減少を示したグラフ。
【図13】トランスジェニックウサギの乳の免疫原性およびチャレンジに対するマウスの防御を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物であって、そのゲノムが、
i)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、第1の導入遺伝子、ならびに
ii)VP2、VP4、VP6およびVP7から選択される別のロタウイルスタンパク質をコードするcDNAであって分泌シグナル配列を含むcDNAに機能的に連結した乳腺特異的転写制御領域を含む、少なくとも第2の導入遺伝子
を含み、
ここで、cDNA配列は野生型であるか、または修飾されており、
前記修飾は、Asp→Glnの置換によるグリコシル化部位の除去、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化およびコドンの最適化、コドンの最適化、早期のポリアデニル化部位の除去、ならびに点突然変異、ならびにこれらの組み合わせから選択され、
前記ロタウイルスタンパク質が、乳中に別々に分泌され、そこでロタウイルス様粒子(VLP)または前記ロタウイルスタンパク質の凝集体に自己集合する、哺乳動物。
【請求項2】
第1の導入遺伝子が、VP2ロタウイルスタンパク質をコードする野生型または修飾されたcDNAを含み、かつ第2の導入遺伝子が、VP6ロタウイルスタンパク質をコードする野生型または修飾されたcDNAを含む、請求項1に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項3】
VP4およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードするcDNAを含む第3または第4の導入遺伝子をさらに含む、請求項2に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項4】
VP2、VP4、VP6およびVP7をコードするcDNAの少なくとも一つが、Asp→Glnの置換によるグリコシル化部位の除去、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化、Asp→Glnの置換とスプライス部位の突然変異とを組み合わせてのグリコシル化およびコドンの最適化、コドンの最適化、早期のポリアデニル化部位の除去、ならびに点突然変異から選択される少なくとも一つの修飾を含み、この修飾により、乳腺における前記タンパク質のmRNAの翻訳が増強する、請求項1〜3のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項5】
VP2をコードするcDNAがSEQ ID No.1〜6から選択される、請求項1または4に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項6】
VP6をコードするcDNAがSEQ ID No.10〜16から選択される、請求項1または4に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項7】
第1の導入遺伝子が、VP2をコードする修飾されたcDNAである、請求項1または4に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項8】
第2の導入遺伝子が、VP4、VP6またはVP7、好ましくはVP6をコードする、天然のまたは修飾されたcDNAである、請求項9に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項9】
VP4をコードするcDNAがSEQ ID No.7〜9から選択される、請求項1または4に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項10】
VP7をコードするcDNAがSEQ ID No.17〜21から選択される、請求項1または4に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項11】
前記VP2およびVP6が、少なくとも5000KDaのVLPまたは凝集体に集合する、請求項1〜8のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項12】
乳が、VP2とVP6の両方を少なくとも10μg/ml、好ましくは少なくとも100μg/ml含む、請求項1〜8のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項13】
前記乳腺特異的転写制御領域が、乳清タンパク質またはカゼインタンパク質、特に、マウスまたはウサギの長いWAPプロモーターなどのWAPプロモーターから選択される、請求項1〜12のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項14】
前記乳腺特異的転写制御領域が、ウサギのWAPプロモーターの翻訳開始点から少なくとも3kb、3kb〜6.3kbまたは少なくとも6.3kbの領域などの、ウサギの長いWAPプロモーターである、請求項13に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項15】
導入遺伝子が、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ラットまたはマウスの、WAP遺伝子を取り囲むゲノム配列、好ましくは、WAP遺伝子の少なくとも140Kb上流および少なくとも10Kb下流をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項16】
導入遺伝子が、ニワトリのβ−グロビン遺伝子クラスターの5’HS4領域をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項17】
導入遺伝子が、SV40初期遺伝子、SV40後期遺伝子、β−グロビン遺伝子、EF1α遺伝子、αs1−カゼイン遺伝子、ウサギWAP遺伝子、ウシおよびヒトの成長ホルモン遺伝子のイントロンなどの、一つまたは複数のイントロンをさらに含む、請求項1〜16のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項18】
導入遺伝子が、αs1−カゼイン遺伝子(単量体または多量体)、HTLV1ゲノムのLTR、免疫グロブリン遺伝子、MMTVゲノムのLTR、WAP遺伝子の上流の末端領域(140kbまで)およびβ−グロビン遺伝子のエンハンサーなどの、プロモーター領域および/または転写された領域に位置する一つまたは複数のエンハンサーをさらに含む、請求項1〜17のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項19】
導入遺伝子が、SV40初期遺伝子および後期遺伝子、β−グロビン遺伝子、WAP遺伝子、ならびにウシおよびヒトの成長ホルモンのターミネーターなどの、一つまたは複数の転写ターミネーターをさらに含む、請求項1〜18のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項20】
VP2、VP4、VP6およびVP7から選択されるロタウイルスタンパク質をコードする少なくとも二つのcDNAが、一つの単一の前記導入遺伝子中にある、請求項1〜19のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項21】
導入遺伝子が、外因性または内因性のペプチドまたはタンパク質またはそのエピトープのコード配列をさらに含む、ヒト以外のトランスジェニック哺乳動物であって、エピトープを有する組換えVLPを乳中に産生する、請求項1〜20のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項22】
前記エピトープがHIVエピトープ、特にRTPKIQV(SEQ ID No.22)またはELDKWA(SEQ ID No.23)またはその両方である、請求項21に記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ラットまたはマウスである、請求項1〜22のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物。
【請求項24】
組換えロタウイルスVLPまたはVLPのタンパク質部分を産生するための方法であって、
(a)請求項1〜10および15〜22のいずれか一つに記載される導入遺伝子を、ヒト以外の哺乳動物の胚または受精卵に挿入する工程、
(b)前記胚または受精卵を、成体の哺乳動物に成長させる工程、
(c)前記導入遺伝子が乳房組織のゲノム中に存在する、前記ヒト以外の哺乳動物または前記ヒト以外の哺乳動物の雌の子孫において、泌乳を誘導する工程、
(d)前記泌乳するヒト以外の哺乳動物の乳を回収する工程、および
(e)前記回収した乳から前記VLPまたはVLPのタンパク質部分を単離する工程を包含する方法。
【請求項25】
組換えロタウイルスVLPまたはVLPのタンパク質部分を産生するための方法であって、
(a)請求項1〜23のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック哺乳動物、または前記ヒト以外の哺乳動物の雌の子孫において、泌乳を誘導する工程、
(b)前記泌乳するヒト以外の哺乳動物の乳を回収する工程、および
(c)前記回収した乳から前記VLPまたはVLPのタンパク質部分を単離する工程を包含する方法。
【請求項26】
VLPのタンパク質部分がVP6の三量体を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
乳中に存在するVP2およびVP6が、分解されておらず、切断されておらず、かつグリコシル化されていない、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記VLPのタンパク質部分が、精製され、最終的に分離され、そして組換えVLPに再集合するための条件下に置かれる、請求項25〜27のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
精製が、乳清を調製することからなる第1の工程を包含する、請求項25〜28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
寄生生物、細菌、または、HIV、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、A型、B型もしくはC型肝炎ウイルス、RSV、コロナウイルス、口蹄疫ウイルス、ロタウイルス、オーエスキー病ウイルス、マレック病ウイルスを含むウイルスによる感染を治療または予防するためのワクチンなどの免疫学的組成物を製造するための、請求項1〜24のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック動物または請求項25〜29のいずれか一つに記載の方法から得られた、エピトープを有する組換えVLPの使用方法。
【請求項31】
癌、自己免疫疾患および代謝障害を治療または予防するためのワクチンなどの免疫学的組成物を製造するための、請求項1〜24のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック動物または請求項25〜29のいずれか一つに記載の方法から得られた、エピトープを有する組換えVLPの使用方法。
【請求項32】
前記免疫学的組成物が、経口もしくは直腸投与、または静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射に適合している、請求項30または31に記載の使用方法。
【請求項33】
注射可能な溶液または坐剤である、直腸投与に適した、請求項1〜24のいずれか一つに記載のヒト以外のトランスジェニック動物または請求項25〜29のいずれか一つに記載の方法から得られた、エピトープを有する組換えVLPを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【公表番号】特表2007−525991(P2007−525991A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501382(P2007−501382)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2005/000896
【国際公開番号】WO2005/084427
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506299135)ビオプロテアン テクノロジー (1)
【氏名又は名称原語表記】BIOPROTEIN TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】