説明

ヒト化抗体を発現する非ヒトトランスジェニック動物及びその使用

内因性λ軽鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座を含み、その各々は、抗原投与後にB細胞において発現されるように免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子が形成され再構成することができるが、前記遺伝子座は、前記突然変異した遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する能力が実質的に低減又は排除されるように変異している、非ヒト哺乳動物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を使用した、抗原投与に応答する重鎖及び軽鎖を含む機能性親和性成熟四量体免疫グロブリンの、様々なレパートリーの誘導及び選択のための改善された方法並びにその使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、内因性マウスκ及び/若しくはλ軽鎖免疫グロブリンを生成するその能力が実質的に低減されるように、又は重鎖と複合体化する軽鎖の能力が低減、排除若しくはブロックされるように遺伝子操作された、非ヒト哺乳動物、好ましくはマウスに関する。本発明の非ヒト哺乳動物はまた、機能性の内因性マウス重鎖を生成する能力が低い。従って、前記突然変異遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する非ヒト哺乳動物の能力は、実質的に低減又は排除されている。そのような哺乳動物を作製する方法、並びに、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子を使用してヒト四量体抗体及びハイブリッド四量体抗体を作製するためにそのような哺乳動物を用いる方法も説明する。
【0003】
以下の説明において、すべてのアミノ酸残基位置番号は、Kabat et al.(1991)米国公衆衛生局(US Public Health Services)公報番号91−3242によって案出されたナンバリングシステムに従って与えられる。
【背景技術】
【0004】
<抗体>
抗体の構造は当技術分野において周知である。大部分の自然抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む四量体である。重鎖は、各重鎖に沿ってほぼ中間に位置するヒンジドメイン間のジスルフィド結合を介して相互に連結されている。軽鎖は、ヒンジドメインのN末端側で各々の重鎖と会合している。各々の軽鎖は、通常、ヒンジドメインに近いジスルフィド結合によってそのそれぞれの重鎖と結合している。
【0005】
抗体分子が正常に折りたたまれた場合、各々の鎖は、より直鎖状のポリペプチド配列によって連結された多数の別個の球状のドメインに折りたたまれる。例えば、軽鎖は可変(V)及び定常(C)ドメインに折りたたまれる。重鎖は、1個の可変ドメインV、第一定常ドメイン(C1)、ヒンジドメイン及び2又は3個のさらなる定常ドメインを有する。重鎖定常ドメイン及びヒンジドメインは一体となって、抗体重鎖の定常領域として一般に公知の構造を形成する。重(V)鎖及び軽(V)鎖可変ドメインの相互作用は、抗原結合領域(Fv)の形成をもたらす。重鎖と軽鎖の相互作用は、重鎖のC1ドメイン及び軽鎖のCκ又はCλドメインによって促進される。一般に、VとVの両方が抗原結合のために必要であるが、重鎖二量体及びアミノ末端フラグメントは軽鎖の不在下で活性を保持することが示されている(Jaton et al.(1968)Biochemistry,7,4185−4195)。一般に、循環λ軽鎖の割合は低く、おそらく血漿中の四量体免疫グロブリンとして複合体化した全軽鎖の2〜5%を占める(Goldsby et al.(2003)Immunology,5th edition,W.H.Freeman & Co NY)。
【0006】
新規抗体を構築するための重鎖免疫グロブリン遺伝子のインビトロ操作は、1980年代に最初に記述された。初期の抗体エンジニアリング研究の多くは、広く特徴づけられた抗原に対して惹起された、再構成されたマウス免疫グロブリンμ遺伝子(IgM)を使用した。この抗体の特徴は、無関係な軽鎖による構築と分泌が抗原結合の保持を示すので、抗原結合特異性がVドメインに存することが公知であるということであった(Neuberger and Williams(1986)Phil.Trans.R.Soc.Lond.,A317,425−432)。この系を使用して、マウス抗原特異的V結合ドメインが、マウス抗原特異的Vドメインに融合したヒトε定常エフェクター領域を含む新規抗体を誘導するために使用できることが示された。生じたハイブリッドIgEは抗原特異性を保持し、IgEの予想されるエフェクター活性を示した(Neuberger et al.(1985)Nature,314,268−270)。重鎖操作の他の文献例は以下を含む:抗ホスホコリン活性を保持するマウスVヒト/IgA又はIgG抗体融合物をコードするハイブリッドマウス−ヒト抗体遺伝子(Morrison et al.(1984)PNAS,81,6851−6855);マウスVとヒトIgG(γ3)定常領域を含む抗癌関連抗原17−1A抗体(Sun et al.(1987)PNAS,84,214−218);及びヒトIgG(γ1)定常領域とマウスVドメインを含む抗ヒトT細胞抗体(抗CD7)(Heinrich et al.(1989)J.Immunol.,143,3589−97参照)。
【0007】
正常ヒトB細胞は、14番染色体上に単一の免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、そこから重鎖をコードする遺伝子が再構成によって生成される。マウスでは、重鎖遺伝子座は12番染色体上に位置する。正常な重鎖遺伝子座は、複数のV遺伝子セグメント、多くのD遺伝子セグメント及び多くのJ遺伝子セグメントを含む。Vドメインの大部分はV遺伝子セグメントによってコードされるが、各VドメインのC末端はD遺伝子セグメント及びJ遺伝子セグメントによってコードされる。B細胞におけるVDJ再構成とそれに続く親和性成熟は、その抗原結合特異性を有する各々のVドメインを生じる。単一Vセグメントを含む重鎖免疫グロブリンに由来する正常なH四量体の配列分析は、抗原投与に対する応答の多様性が主としてVDJ再構成と体細胞超変異の組合せから生じることを明らかにする(Xu and Davies(2000)Immunity,13,37−45)。ヒトゲノム中には50個以上のヒトV遺伝子セグメントが存在し、そのうちの39個だけが機能性である。正常な二倍体抗体産生B細胞では、各々の細胞は、単一のセットの重鎖及び軽鎖抗体遺伝子座から抗体四量体(H)を産生する。その他のセットの遺伝子座は、対立遺伝子排除と呼ばれるプロセスの結果として生産的には使用されない(Singh et al.(2003)J.Exp.Med.,197,743−750及びその中の参考文献)。
【0008】
完全ヒト抗体(H)は、現在、抗原投与に応答するトランスジェニックマウスから誘導することができる。そのようなトランスジェニックマウスは、一般に単一ヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子座及び別のヒト軽鎖免疫グロブリン遺伝子座を含む。対応する内因性マウス重鎖、κ軽鎖及び、場合によりλ軽鎖遺伝子座コード配列は、欠失又は部分的に欠失している。従って、κ軽鎖を含むヒト抗体だけが、ヒト重鎖とマウスλ軽鎖を含むマウス/ヒト抗体の低いバックグラウンドで産生される(国際公開第WO90/04036号;同第WO93/12227号;同第WO98/24893号;米国特許第5877397号、同第5814318号及び同第6162963号)。内因性重鎖及び軽鎖遺伝子発現を排除するためのすべての内因性マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子のセグメントの欠失は、完全に実現されてはいるが、特にすべてのλ軽鎖コード配列の除去が必要と考えられる場合、まだ依然として技術的に困難である。マウスλ軽鎖コード配列の除去は、λ遺伝子座のすべての機能性V及びJ遺伝子セグメント並びにC1、C2及びC3定常領域の完全な欠失を介して達成され、サイレンシングされたλ軽鎖遺伝子座を有するマウスを生じる(欧州特許第EP1399559号参照)。
【0009】
異なるアプローチは、マウス重鎖遺伝子をコードする遺伝子の膜エクソンの破壊によってマウスB細胞の発生及び免疫グロブリン分泌を制限することである。従って、内因性マウス重鎖遺伝子は、抗原投与に応答して転写され、VDJ再構成を受けるという点で機能性であるが、IgMはプレB細胞の表面上で絶対に発現されないので、内因性マウスκ及びλ軽鎖遺伝子が構造的に無傷であり、機能性のままであっても(Tuaillon(2000)Molecular Immunology,37,221−231)、さらなる発生は停止し、抗原投与に対して産生応答を生じない(Kitamura et al.(1991)Nature,350,423−426)。
【0010】
内因性マウス重鎖及び軽鎖遺伝子座が機能性のままである場合、任意の付加的に導入された免疫グロブリン重鎖導入遺伝子も対立遺伝子排除によって調節され、そのため一部のB細胞は、マウス重鎖及び軽鎖遺伝子座だけを機能性に発現し、また別のB細胞は、ヒト重鎖遺伝子座だけとマウス軽鎖遺伝子座を機能性に発現する(Nussenzweig et al.(1987)Science,236,816−819)。任意の単一非ヒトトランスジェニック動物において、異種抗原投与に応答して潜在的にすべての免疫グロブリン遺伝子座に由来する抗体を発現するB細胞の高度に多様な集団が存在する。HAT選択(Davis et al.(1982)J.Immunol.Methods,50,161−171)を用いる確立されたハイブリドーマ技術を使用したその後の抗原特異的抗体の選択は、ある重鎖免疫グロブリン遺伝子座を発現するハイブリドーマと別の重鎖免疫グロブリン遺伝子座を発現するハイブリドーマを区別しない。
【0011】
免疫グロブリン重鎖導入遺伝子上に存在する調節エレメントは、コピー数に依存したやり方でB細胞特異的発現を確実にするために必須の組織特異的エンハンサーエレメントを含む。5’イントロンエンハンサー及び3’LCRの存在は、導入遺伝子がB細胞成熟のすべての段階で活性であることを確実にする(Guglielmi et al.(2003)Biochim.Biophys.Acta,1642,181−190)。導入遺伝子座内に重鎖及び軽鎖特異的LCRを含むことは、発現がB細胞特異的であることのみならず、ゲノム内への組込み部位にかかわらず発現が起こることも保証する(国際公開第WO90/10077号、Mills et al.(1997)J.Exp.Med.,186,845−858及びPettersson et al.(1997)Immunobiol.,198,236−248))。従って、LCRが存在することを条件として、あらゆる導入遺伝子が、ゲノム内でのその位置に関わりなく機能性である。導入遺伝子上に存在するLCRが部分的に欠失している場合、導入遺伝子の周囲のクロマチンはいずれかの時点で転写のために部分的にだけ開き、位置効果によるモザイク発現を導き、そのため標的組織全体にわたる導入遺伝子の発現の限られたレベルを生じさせる(Festenstein et al.(1996)Science,23,271(5252):1123−5;Milot et al.(1996)Cell,87(1),105−14)。
【0012】
マウスバックグラウンドでのヒト免疫グロブリンの作製のための代替的アプローチは、マウス免疫グロブリン遺伝子セグメントをヒトからの相同な遺伝子セグメントで置き換えることである。従って、マウスのV、D及びJ遺伝子セグメントだけをヒト相同体で置換した場合、ヒトV及びVドメインとマウス定常(エフェクター)領域を含む機能性マウス/ヒトハイブリッド抗体が抗原投与後に生じる(国際公開第WO94/04667号)。すべてのマウス遺伝子セグメントをヒト相同体で置換した場合は、完全なヒト免疫グロブリンが抗原投与後に生じる(米国特許第6596541号)。このアプローチの1つの考えられる利点は、コード領域だけを交換することを条件として、生じる導入遺伝子はすべてのマウス調節エレメントを保持し、そのため抗原投与に対する最大応答を保証することである。このアプローチは、導入遺伝子の最終的な立体配置に依存して、高親和性ヒト抗体又はマウス/ヒトハイブリッド抗体の高い血清力価を提供する。実際には、しかしながら、マウスゲノム中の個々のV、D及びJセグメント全部を相同組換えによって置換することは長くて骨の折れる作業である。同様に、39個の機能性ヒトV、D及びJセグメント全部と定常(エフェクター)領域を含む重鎖導入遺伝子の構築は、非常に高度な技術が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのため、(i)抗原投与に応答してB細胞特異的に内因性重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子を発現する実質的に低い能力を有する、又は抗原投与後にB細胞において内因性免疫グロブリン重鎖及び/又は軽鎖遺伝子を発現するが、機能性免疫グロブリン四量体として集合する能力を欠く免疫グロブリン重鎖及び軽鎖タンパク質をコードするマウスの簡易な作製;(ii)39個のヒトV遺伝子セグメント全部を集合的に含み得るが、各々すべてのD及びJ遺伝子セグメント並びに一部又は全部の定常(エフェクター)領域と組み合わせて、好ましいより小さな群のV遺伝子セグメントを個別に含み、その機能性発現が抗原依存性であり、最終的に対立遺伝子排除によって決定される、複数の重鎖導入遺伝子座の構築及びB細胞特異的発現のための簡易で再現可能な方法;(iii)残りの内因性マウス免疫グロブリンを発現するハイブリドーマを選択し、重鎖導入遺伝子座上に存在する完全なVセグメントレパートリーを含む集合した免疫グロブリン四量体を発現し、分泌するハイブリドーマを選択する、あるいはある重鎖導入遺伝子座上に存在するV遺伝子セグメントのサブセットを発現し、別の重鎖導入遺伝子座上のものは発現しないハイブリドーマを選択する能力、を可能にする、ゲノムDNAの大きなセグメントの欠失又は多数の欠失に依存しない方法が当技術分野においてなおも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の態様によれば、内因性λ軽鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座を含み、その各々は、抗原投与後にB細胞において、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子が形成されて発現されるように再構成することができるが、前記遺伝子座は、前記突然変異遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する能力が実質的に低減又は排除されるように変異している、非ヒト哺乳動物が提供される。
【0015】
非ヒト哺乳動物では、内因性λ軽鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つが、前記の内因性遺伝子座又は各々の内因性遺伝子座へのフレームシフト突然変異、ポリペプチドコード配列及び/又は1若しくはそれ以上の終止コドンの導入によって突然変異していてもよい。
【0016】
突然変異は、好ましくは50個未満のヌクレオチドの挿入である。
【0017】
非ヒト哺乳動物では、内因性λ軽鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つの発現が、遺伝子座又は各々の遺伝子座におけるLCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下していてもよい。
【0018】
好ましくは、導入は内因性κ軽鎖遺伝子座においてである。
【0019】
あるいは、導入は内因性λ軽鎖遺伝子座においてである。
【0020】
もう1つの選択的態様では、導入は、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性λ軽鎖遺伝子座においてである。
【0021】
導入はまた、内因性重鎖遺伝子座においてであってもよい。
【0022】
導入は、さらなる選択的態様では、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座においてであってもよい。
【0023】
導入は、尚さらなる選択的態様では、内因性λ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座においてであってもよい。
【0024】
導入は、さらなる選択的態様では、内因性λ軽鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座及び内因性重鎖遺伝子座においてであってもよい。
【0025】
好ましくは、内因性κ軽鎖遺伝子座内に上記で定義される導入が存在し、内因性λ遺伝子座内に上記で定義される部分的又は完全なLCR欠失が存在する。
【0026】
所望する場合、内因性重鎖遺伝子座は、重鎖遺伝子再構成、mRNA転写及びタンパク質合成は起こるが、B細胞活性化はブロックされるように突然変異していてもよい。
【0027】
好ましくは、上記で定義される非ヒト哺乳動物は、1又はそれ以上の異種κ軽鎖遺伝子座及び関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子を含む。
【0028】
非ヒト哺乳動物は、1又はそれ以上の異種λ軽鎖遺伝子座及び関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子をさらに含んでもよい。
【0029】
上記で定義される非ヒト哺乳動物において、異種軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子は、優性選択マーカー遺伝子を含んでもよい。
【0030】
上記で定義される非ヒト哺乳動物はまた、1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座及び関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子を含んでもよい。
【0031】
所望する場合、非ヒト哺乳動物は、2又はそれ以上の異なる異種重鎖遺伝子座及び関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する2又はそれ以上の導入遺伝子を含んでもよい。
【0032】
非ヒト哺乳動物において、異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子又は各々の導入遺伝子は、優性選択マーカー遺伝子を含んでもよい。
【0033】
非ヒト哺乳動物において、各々の異種重鎖遺伝子座はCTCF結合部位を含んでもよい。
【0034】
好ましくは、非ヒト哺乳動物は、異種κ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子及び1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子を含む。
【0035】
あるいは、非ヒト哺乳動物は、異種λ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子及び1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子を含んでもよい。
【0036】
さらなる選択的態様では、非ヒト哺乳動物は、異種κ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子、λ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子及び1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子を含んでもよい。
【0037】
好ましくは、各々の異種遺伝子座は同族の(cognate)LCRを組み込んでいる。
【0038】
各々の異種遺伝子座は、好ましくはヒト遺伝子座である。
【0039】
しかし、各々の異種遺伝子座は、ヒト可変領域とラット又はマウス定常領域を含むハイブリッド遺伝子座のような、2以上の種に由来する可変領域と定常領域を含むハイブリッド遺伝子座であってもよい。
【0040】
非ヒト哺乳動物は、異なる異種重鎖遺伝子座の異なる群を含有する導入遺伝子の群を含んでもよく、導入遺伝子の各々の群は異なる優性選択マーカー遺伝子を含む。
【0041】
あるいは、非ヒト哺乳動物は、異種軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子及び異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子を含んでもよく、異種軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子は、各々異なる優性選択マーカー遺伝子を含む。
【0042】
非ヒト哺乳動物は、好ましくはマウスなどのげっ歯動物である。
【0043】
第二の態様によれば、本発明は、抗原特異的異種モノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)前記請求項のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物を抗原で免疫するステップと、
(b)各々が免疫トランスジェニック哺乳動物のB細胞からのモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ又は不死化B細胞株を調製するステップと、
(c)場合により、異種免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子内に存在する優性選択マーカー遺伝子を使用して、異種抗体を発現する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと、
(d)抗原に特異的に結合する抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと
を含む方法を提供する。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、ハイブリッド抗体から哺乳動物抗体、好ましくはヒト抗体を誘導する方法であって、
(a)上述した方法を実施するステップと、
(b)抗原に特異的に結合し、且つ、選択した種のV及びV結合ドメインを含む抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと、
(c)V及びVドメインをクローニングし、配列決定するステップと、
(d)V及びV結合ドメインコード配列を、同じ種からの選択した定常エフェクタードメインと共に含む選択配列を再びクローニングするステップと、
(e)選択した細胞型において発現ベクターを使用して所望する種の重鎖及び軽鎖ポリペプチドをコードする再クローニング配列を同時発現させるステップと
を含む方法が提供される。
【0045】
本発明のなおさらなる態様によれば、哺乳動物前駆細胞において内因性重鎖遺伝子座、内因性κ軽鎖遺伝子座、及び場合により内因性λ軽鎖遺伝子座を突然変異させ、前駆細胞から哺乳動物を作製するステップを含み、ここで、前記突然変異は、哺乳動物において、各々の遺伝子座が、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子が形成され、抗原投与後にB細胞において発現されるように再構成することができるが、突然変異遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する能力が実質的に低減又は排除されている、上記で定義される非ヒト哺乳動物の作製のための方法が提供される。
【0046】
好ましくは、前駆細胞は非ヒト胚性幹細胞である。
【0047】
非ヒト哺乳動物は、好ましくはマウスなどのげっ歯動物である。
【0048】
本発明はまた、非ヒト哺乳動物又は上記で定義される方法を使用して誘導される、好ましくはヒトの、抗原特異的異種機能性免疫グロブリン四量体の薬剤、診断薬又は試薬としての使用を提供する。
【0049】
本発明者は、驚くべきことに非ヒト哺乳動物、特にマウスの生産のための簡易な方法の開発によって先行技術の制限を克服し、その内因性κ及び/又はλ軽鎖遺伝子の機能的発現は、フレームシフト又はmRNAの早期の翻訳終結を導く、好ましくはκ定常領域及び/若しくはλ定常領域内の小さな挿入事象の結果として定常領域を非機能性とすること、又は、同族の内因性LCRの一部若しくは全部を除去することのいずれかによって、実質的に低減された。これは、一部又は全部の軽鎖遺伝子コード配列の完全な又は部分的欠失による内因性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の機能的サイレンシングを必要とする選択的方法と対照をなす。
【0050】
本明細書で述べる方法は、免疫グロブリン重鎖遺伝子座にも等しく良好に適用できる。従って、例えば、LCRの完全な又は部分的欠失は重鎖遺伝子発現の実質的な低下を生じさせる。好ましくはμC領域のC1ドメインへの、しかし選択的にはすべての免疫グロブリンアイソタイプ定常領域のC1領域への、フレームシフト又はmRNAの早期の翻訳終結を導く配列の導入は、軽鎖との免疫グロブリン四量体の形成を実質的に低減、排除又はブロックする。同様に、先に述べたように、プレB細胞の表面でのIgM発現がmRNAの早期の翻訳終結によってインビボでブロックされる場合、さらなる発生は停止し、抗原投与に対する産生応答を生じさせない(Kitamura et al.(1991)Nature,350,423−426)。重鎖免疫グロブリン導入遺伝子の導入はB細胞増殖を救済し、導入遺伝子がコードする重鎖及び内因性マウス軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体が血清中を循環する。
【0051】
従って、相互作用して機能性免疫グロブリン四量体を形成する重鎖及び軽鎖を生じる内因性軽鎖遺伝子座及び/又は重鎖遺伝子座の能力は、フレームシフト突然変異の導入後に排除又は実質的に低減され得、一般にフレーム外の終止コドンの存在によるタンパク質合成の早期の終結を伴う、無関係なタンパク質配列の合成を導く。
【0052】
これは、機能性免疫グロブリン四量体の形成の役割を担う重鎖又は軽鎖ポリペプチド配列内又はその上流への外来性DNAの挿入又はDNAの小さな欠失によって実現することができる。好ましいアプローチは新しい配列を挿入することである。アミノ酸コード配列内にフレームシフトを生じさせ、コードされるmRNAの翻訳の早期終結をもたらすように設計された有効な挿入事象は、1個のヌクレオチドの導入に限定することができる。従って、コード領域内の1又はそれ以上のヌクレオチドの挿入はフレームシフトを導き得る。あるいは、終止コドンを含む付加的なペプチド配列をコードするインフレーム配列の挿入も、トランケート型のタンパク質の合成を生じさせる(米国特許第5591669号)。標的化挿入事象はまた、すべての内因性配列が保持され、生じる融合タンパク質が免疫グロブリン四量体の形成を破壊する、又は1若しくはそれ以上のインフレーム終止コドンの存在がmRNAの翻訳の早期終結を導き、機能性免疫グロブリン四量体を形成することができないトランケート型タンパク質の合成をもたらすことを条件として、選択マーカー遺伝子及び他の機能性の導入を含み得る。
【0053】
好ましくは、挿入事象は、免疫グロブリンκ軽鎖定常領域においてである。場合により、挿入事象は、免疫グロブリンκ及び/又はλ軽鎖定常領域においてである。実際には、挿入は、lox部位などの任意の組換え酵素認識部位を含み得る。これは単独でフレームシフトを導き得る。フレームシフトを確実にする付加的なヌクレオチド、又は、1若しくはそれ以上の終止コドンのためのコドンを含むことはまた、重鎖C1ドメインと軽鎖κ及び/又はλ定常領域の相互作用を介して重鎖と軽鎖の二量体化の破壊における挿入配列の有効性を増大させ得る。挿入は1個のヌクレオチドを含むことができ、好ましくは50個未満のヌクレオチドである。挿入は、フレームシフトだけを生じさせてもよいが、好ましくは、1又はそれ以上の終止コドンがmRNAの早期終結をもたらすように設計される。挿入は、挿入部位に隣接する腕を利用した相同組換えを用いて実施される。好ましくは、操作過程の間に選択マーカーを含め、その後切り出して、認識部位単独に加えてゲノム内にインサイチューで任意の付加的な挿入配列、例えばlox部位を残す。
【0054】
フレームシフト及びトランケートされたタンパク質の合成はまた、コード配列内の1又はそれ以上のヌクレオチドの欠失及び終止コドンを含む最小付加配列の含有によっても達成できることは当業者に明らかである。好ましくは、挿入又は欠失事象は重鎖及び軽鎖遺伝子の定常領域内で起こり、内因性遺伝子座の多数のV、D及びJ領域内では起こらない。好ましい選択はκ軽鎖定常領域である。
【0055】
従って、内因性免疫グロブリン遺伝子の再構成又はmRNA転写の排除は、大規模な遺伝子欠失方法には依存しない。同じ挿入方法が、重鎖アイソタイプのC1領域内での標的化挿入事象を介して軽鎖と共に機能性四量体複合体を形成する内因性重鎖免疫グロブリンの能力を阻害するために使用できる。好ましくは、内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子の発現は、Kitamura et al.(1991)Nature,350,423−426によって記述されたのと同様の方法を用いて、内因性重鎖がB細胞の表面で発現されず、B細胞増殖から生じる生産的発現がブロックされるようにプレB細胞段階でブロックされ、一方、内因性IgMの機能性C1と軽鎖の結合は、免疫グロブリン重鎖と機能的に相互作用することができない軽鎖定常領域をコードするκ及び/又はλ軽鎖mRNAの翻訳を導く挿入事象によって阻害され、機能性の内因性免疫グロブリン四量体の形成を妨げる。
【0056】
内因性免疫グロブリン四量体の機能的集合が機能的に損なわれることを条件として、関連するVドメインの親和性成熟を伴うB細胞発現は制限され、外因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子の存在と発現に依存する。免疫グロブリン導入遺伝子は、選択した非ヒト哺乳動物宿主の対立遺伝子排除プロセスにB細胞特異的に関与し、抗原投与に対する産生応答、B細胞の増殖、及び循環性の、導入遺伝子がコードする抗原特異的免疫グロブリン四量体を生じさせる。
【0057】
また、内因性λ軽鎖遺伝子発現がλ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下し、内因性κ軽鎖遺伝子発現がκ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下している非ヒト哺乳動物が提供される。本発明の1つの実施形態では、内因性κ軽鎖の発現だけ又はλ軽鎖の発現だけが、関連するLCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下する。
【0058】
内因性軽鎖遺伝子座は、再構成することができ、機能性mRNAに転写され得るという点で機能性を保持し得るが、転写のレベルは、内因性LCRの機能性の一部又は全部の除去を介して実質的に低下する(国際公開第WO90/10077号)。LCRの機能性は、マウスES細胞中のヌクレアーゼ高感受性部位を遺伝子ターゲティングすることによって、又は、ES細胞が存在しない場合は、他の哺乳動物種に由来する核移植(Soulter(1998)Nature,394,315−316)又はiPS細胞(Gottweiss.and Minger(2008)Nature Biotechnology,26,271−272参照)のいずれかを使用したクローニングによって除去される。あるいは、重鎖又は軽鎖の破壊は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術及びDNA修復などの標的突然変異誘発を介して達成できる(例えばhttp://www.sigmaaldrich.com/life−science/functional−genomics−and−rnai/zinc−finger−nuclease−technology)。
【0059】
内因性κ軽鎖遺伝子発現は、κ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低減され得、λ軽鎖遺伝子は、欠失又は挿入事象後に機能的にサイレンシングされ得る。
【0060】
内因性λ軽鎖遺伝子発現は、λ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低減され得、κ軽鎖遺伝子は、欠失又は挿入事象後に機能的にサイレンシングされ得る。
【0061】
内因性κ軽鎖遺伝子は、LCRの除去又は挿入事象後に機能的にサイレンシングされ得る。
【0062】
本発明はまた、内因性κ軽鎖遺伝子発現及び内因性λ軽鎖遺伝子発現のいずれか又は両方が、κ軽鎖LCRの一部又は全部の除去及び/又はλ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下している非ヒト哺乳動物を提供する。内因性κ遺伝子は機能的にサイレンシングされ得、λ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって内因性λ遺伝子活性は実質的に低減され得る。
【0063】
κ軽鎖遺伝子発現は、κ軽鎖LCRの一部又は全部の除去によって実質的に低減され得、λ遺伝子発現は機能的にサイレンシングされ得る。
【0064】
内因性κ軽鎖遺伝子発現だけが、κ軽鎖LCRの除去によって実質的に低減され得るか、又は欠失若しくは挿入事象によって機能的にサイレンシングされ得る。
【0065】
上述したような機能的にサイレンシングされた内因性κ及び/若しくはλ軽鎖遺伝子発現又は実質的に低下した内因性κ及び/若しくはλ軽鎖遺伝子発現を有する非ヒト哺乳動物はまた、低い又は機能的にサイレンシングされた内因性重鎖遺伝子発現を有し得る。1つの実施形態によれば、本発明の非ヒト哺乳動物において、内因性重鎖遺伝子発現は、LCRを含む一部又は全部の高感受性部位の欠失後に低下するか、又は欠失若しくは挿入事象後に機能的にサイレンシングされる。好ましくは、内因性重鎖遺伝子の発現は、Kitamura et al.(1991)Nature,350,423−426によって記述されたのと同様の方法を用いて、内因性重鎖がB細胞の表面で発現されず、B細胞増殖から生じる生産的発現がブロックされるようにプレB細胞段階でブロックされる。
【0066】
上述した非ヒト哺乳動物は、異種重鎖及び軽鎖遺伝子座並びに、好ましくは同族のLCRを含む、関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する1又はそれ以上の導入遺伝子をさらに含み得る。
【0067】
本発明に関して、「異種」という用語は、それが位置される哺乳動物にとって内因性ではない、本明細書で述べるヌクレオチド配列又は遺伝子座を意味する。
【0068】
非ヒト哺乳動物は、従って、異種κ軽鎖遺伝子座及び、好ましくはLCRを含む、関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子、並びに/又は異種λ軽鎖遺伝子座及び、好ましくはLCRを含む、関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子を含み得る。
【0069】
同族のLCRの存在はB細胞特異的発現のために必須ではない。遺伝子座内にそれらを含むことは、高レベルの導入遺伝子発現があらゆる組込み部位で起こり、そのうちの一部だけがB細胞において活発に転写されるクロマチン領域内で偶発的に起こる、ランダムな組込み事象には依存しないことを確実にする。同族のLCRの使用は、抗体発現のためにスクリーニングする必要があるトランスジェニック動物の数を有意に低減し、2以上の遺伝子座の挿入を可能にして、挿入されるすべての遺伝子座が基本的に正常なレベルでB細胞特異的に発現されることを確実にする。従って、LCR技術の使用は、対立遺伝子排除機構が内因性免疫グロブリン遺伝子と多数の競合する導入遺伝子を識別するという驚くべき所見と合わせて、各々の遺伝子座が、内因性遺伝子に比べてV遺伝子の複雑性が低く、内因性遺伝子座(1〜2Mb)に比べてインビトロで構築するのに比較的扱い易いDNAの断片(<300Kb)を含む、1又はそれ以上の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖遺伝子座を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物の構築への道を開く。例えば、39個の機能性ヒト免疫グロブリン重鎖V遺伝子セグメントを2又はそれ以上の免疫グロブリン重鎖遺伝子座にクローニングし得る。各々は異なるV遺伝子セグメントを含むが、共通のD及びJ遺伝子セグメント並びに定常(エフェクター)領域を有する。LCRを含むことは、各々がゲノム内の組込み部位にかかわらず同じように発現されることを確実にする。従って、このようにして2又はそれ以上の小さな遺伝子座を含むことは、技術的に操作が難しい単一の大きな遺伝子セグメント中に存在する1個のより複雑な遺伝子の同じV遺伝子の複雑性を提供する。
【0070】
各々の異種軽鎖遺伝子座は、V遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント及び軽鎖定常領域セグメントを含み得る。好ましくは、V及びJ遺伝子セグメント並びに軽鎖定常領域セグメントは同じ哺乳動物ソース、例えばげっ歯動物、ブタ、ウシ、ヤギ又はヒツジに由来する。好ましくは、それらはヒト起源である。
【0071】
あるいは、異種軽鎖遺伝子座は、哺乳動物起源、好ましくはヒト起源の可変ドメインと、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ヤギ及びウシなどの、しかしこれらに限定されない異なる哺乳動物に由来する定常(エフェクター)領域を含むハイブリッド遺伝子座であってもよい。宿主哺乳動物がマウスである場合、好ましくは、定常領域はげっ歯動物起源、より好ましくはマウス又はラットである。そのような異種軽鎖遺伝子座は、好ましくは1つの種だけに由来するV及びJセグメント並びにもう1つ別の種に由来する軽鎖定常領域を含む。
【0072】
ハイブリッドκ軽鎖導入遺伝子を企図する場合、V及びJ遺伝子セグメントは、好ましくは同じ種に由来し、重鎖V、D及びJ遺伝子セグメントを与え、好ましくはヒト起源である。κ軽鎖定常領域及び重鎖定常領域も、好ましくは同じ種に由来するが、可変ドメインを与えるものとは異なる種であり、好ましくはげっ歯動物起源、好ましくはラット又はマウスに由来する。
【0073】
企図されるすべての軽鎖導入遺伝子の特徴は、抗原投与後、軽鎖がB細胞特異的に再構成されること、並びに、転写及び翻訳後、生じる軽鎖が同じB細胞において産生される導入遺伝子由来の重鎖免疫グロブリンと複合体化できることである。免疫グロブリン四量体の生産的発現はB細胞の増殖を生じさせ、導入遺伝子がコードする抗原特異的な四価免疫グロブリン複合体が、有意のレベルの内因性免疫グロブリン四量体の不在下で血清中に蓄積する。
【0074】
内因性λ軽鎖発現が機能的に抑制されなかった場合、内因性λ軽鎖を含む低いレベルの宿主抗体又はハイブリッド抗体が検出され得る。これらは、ハイブリドーマ上清のスクリーニング後に廃棄し得る。
【0075】
ヒトでは、36個の機能性κV遺伝子セグメント、5個のJ遺伝子セグメント及び1個のκ軽鎖定常領域(http://imgt.cines.fr)が存在する。好ましくは、本発明の非ヒト哺乳動物において導入遺伝子中に存在する異種κ軽鎖遺伝子座は、1又はそれ以上のヒトV遺伝子セグメント、すべてのヒトJ遺伝子セグメント及び1つのヒトκ軽鎖定常領域を含む。場合により、ヒトκ軽鎖定常領域は代替的な哺乳動物κ軽鎖定常領域、好ましくはラット又はマウス起源のκ軽鎖定常領域によって置換されていてもよい。
【0076】
本発明の非ヒト哺乳動物において導入遺伝子中に存在する異種λ軽鎖遺伝子座は、好ましくはマウスλLCR、並びにヒトλ軽鎖V1及びV2遺伝子セグメント、ヒトλJ1、J2、J3及びJ4遺伝子セグメント、並びにヒトλ軽鎖C1、C2、C3及びC4定常領域セグメントを含む(国際公開第WO90/10077号及び同第WO2003/000737号)。場合により、ヒトλ軽鎖C1、C2、C3及びC4定常領域セグメントは、代替的なλ軽鎖定常領域、好ましくはラット又はマウス起源のλ軽鎖定常領域によって置換されていてもよい。
【0077】
本発明の非ヒト哺乳動物において導入遺伝子中に存在する異種重鎖遺伝子座は、好ましくは重鎖免疫グロブリンLCR、好ましくはマウス起源の重鎖免疫グロブリンLCR、1又はそれ以上のヒトV遺伝子セグメント、1又はそれ以上のJ遺伝子セグメント、及び1又はそれ以上のD遺伝子セグメントを含む。好ましくは、10又はそれ以上のヒトの異なるV遺伝子セグメント並びにすべてのヒトJ及びD遺伝子セグメントが存在する。
【0078】
遺伝子座はまた、1又はそれ以上のヒト定常(エフェクター)領域、好ましくはμ及びγ定常領域を含み得る。場合により、ヒト定常エフェクター領域は、他の非ヒト哺乳動物由来のエフェクター領域によって置換されていてもよい。非ヒト哺乳動物宿主がマウス又はラットである場合、好ましくは、定常(エフェクター)領域はラット又はマウスに由来する。ヒトと異なり、マウス及びラットのB細胞受容体複合体(BCR)の膜貫通ドメインは100%保存されている。従って、ラット定常(エフェクター)領域遺伝子を含む抗体遺伝子座に関してトランスジェニックであるマウスは、抗原投与後にマウス定常(エフェクター)領域遺伝子を含むものと同様に機能するはずであり、ヒト定常(エフェクター)領域遺伝子を含むものを上回り得る(De Franco et al.(1995)Ann.NY Acad.Sci.,766,195−201)。導入遺伝子は、好ましくはマウス又はヒト起源の、重鎖、κ及びλ軽鎖LCRを含み得る。すべての哺乳動物種全体にわたって機能するLCRは公知であり、導入遺伝子中のヒト又はマウスLCRを置換し得る(Li et al.(1999)Trends Genet.,10,403−8)。
【0079】
完全ヒト抗体の作製を企図する場合、ハイブリドーマによって発現されたハイブリッド抗体に由来するクローニングされたヒト抗原特異的V及びV結合ドメインをヒト重鎖及び軽鎖定常領域に融合することができ、そのようにして任意のクラスの完全ヒト四量体抗体を誘導することができる。
【0080】
さらなる改良として、各々の免疫グロブリンκ及び/又はλ軽鎖遺伝子座はまた、優性選択マーカー遺伝子を含み得る。
【0081】
遺伝子座に組み込まれた優性選択マーカー遺伝子は、同じか又は異なる作用機構を有し得る。本発明のために、遺伝子の発現が選択的又は毒性攻撃誘発の存在下で非ヒトトランスジェニック哺乳動物に由来するハイブリドーマ又は形質転換B細胞に選択上の利益を付与することを条件として、任意の優性選択マーカー遺伝子が使用できる。典型的には、優性選択マーカー遺伝子は原核生物起源であり、ピューロマイシン(Vara et al.(1986)NAR,14,4617−4624)、ハイグロマイシン(Santerre et al.(1984)Gene,30,147−156)及びG418(Colbere−Garapin et al.(1981)150,1−14)などの毒性薬剤に対する耐性を付与する群から選択されるか、又はそれらの発現が毒性物質を必須アミノ酸に変換するように、例えばインドールのトリプトファンへの変換又はヒスチジノールのヒスチジンへの変換(Hartmann and Mulligan,(1988)PNAS,85,8047−8051)のように特定の栄養必要条件を不要にする遺伝子を含む。
【0082】
本発明のこの態様の必要要件は、優性選択マーカー遺伝子が免疫グロブリン軽鎖トランスジェニック遺伝子座内に組み込まれ、所望の免疫グロブリン軽鎖対立遺伝子と同時発現されて、それによりB細胞特異的発現を確実にすることである。あるいは、薬剤耐性遺伝子を、ES細胞又は核移植アプローチと組み合わせた相同組換えを使用して内因性又は外因性(トランスジェニック)免疫グロブリン遺伝子座に挿入してもよい(te Riele et al.(1992),PNAS,89,11,5128−5132)。
【0083】
非ヒト哺乳動物はまた、異種重鎖遺伝子座並びに関連するB細胞特異的LCR及び調節エレメントを含有する1又は複数の導入遺伝子を含み得る。各々がLCRと調節エレメントを含有する2以上の異なるトランスジェニック重鎖遺伝子座が存在してもよい。
【0084】
各々が1又はそれ以上のV遺伝子セグメント、1又はそれ以上のD遺伝子セグメント、1又はそれ以上のJ遺伝子セグメント、及び1又はそれ以上の定常(エフェクター)領域を含む重鎖遺伝子座を、各々の遺伝子座が同族のLCRを含む導入遺伝子として導入する。
【0085】
各々の遺伝子座は、B細胞特異的発現を推進するために必要な5’及び3’調節エレメントを含む。各々の重鎖又は軽鎖遺伝子座は、抗原投与に応答して内因性遺伝子座と基本的に同様に発現され、導入遺伝子がコードする抗原特異的親和性成熟四量体免疫グロブリンのマウス血清中での循環を導く。
【0086】
好ましくは、各々の重鎖遺伝子座は、1又は複数のV遺伝子セグメント、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、60又はそれ以上のV遺伝子セグメントを含み、それらは任意の脊椎動物種、好ましくは非ヒト哺乳動物に由来し得る。好ましくは20以下のV遺伝子セグメントが任意の単一重鎖遺伝子座上に存在する。
【0087】
1つの実施形態では、各遺伝子座は、1つだけのV遺伝子セグメントを含み得る。この実施形態の1つの選択的形態では、多くのV遺伝子セグメントが存在し、各々のV遺伝子セグメントはすべての他のV遺伝子セグメントと異なる。この実施形態では、任意の1つの遺伝子座のV遺伝子セグメントはすべて同じ種の生物に由来してよく、例えばすべてのV遺伝子セグメントがヒト起源であってよい。あるいは、任意の1つの遺伝子座のV遺伝子セグメントは異なる種の生物に由来してよく、例えば一部のV遺伝子セグメントはヒトに由来し、その他はヒツジ、ウシ、ウサギ、ラクダ科の動物、さらにはサメに由来してもよい。第二の選択的実施形態では、各々のV遺伝子セグメントはその他のすべてのV遺伝子セグメントと同一である。存在するV遺伝子セグメントの数及び性質にかかわらず、各遺伝子座中の残りのD及びJ遺伝子セグメントは同じであってもよく、又はその他のすべての遺伝子座におけるものと異なってもよい。
【0088】
従って、非ヒト哺乳動物は、1つの重鎖遺伝子座の複数のコピーを含有し得ることが想定される。これは、B細胞において生産的再構成が起こる可能性を最適化し、従って抗原認識のための免疫グロブリン重鎖の最適な産生を可能にするという利点を有する。
【0089】
もう1つの実施形態では、各々の遺伝子座は複数のV遺伝子セグメントを含む。
【0090】
好ましくは、V遺伝子セグメントはヒト起源である。
【0091】
「V遺伝子セグメント」という用語は、サメ、げっ歯動物、ラクダ科の動物及びヒトを含むがこれらに限定されない、脊椎動物に由来する任意の天然に生じるV遺伝子セグメントを包含する。V遺伝子セグメントは、再構成された核酸がB細胞において発現されたときκ又はλ免疫グロブリン軽鎖と複合体化することができる免疫グロブリン重鎖抗体を生成するために、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント及び重鎖定常(エフェクター)領域をコードする遺伝子セグメントと組み換えることができなければならない。
【0092】
V遺伝子セグメントはまた、再構成された核酸がB細胞において発現されたときκ又はλ免疫グロブリン軽鎖と複合体化することができる免疫グロブリン重鎖抗体を生成するために、D遺伝子セグメント、J遺伝子セグメント及び重鎖定常領域をコードする遺伝子セグメントと組み換えることができる、天然又は操作された、ホモログ、誘導体、又はタンパク質のフラグメントをコードする任意の遺伝子配列をその範囲内に含む。V遺伝子セグメントは、例えばT細胞受容体遺伝子座に由来し得る。
【0093】
好ましくは、本発明の複数の重鎖遺伝子座は、39個の機能性ヒトV遺伝子セグメント及びその操作された変異体の任意の数又は組合せを含む。これらは、任意の数の遺伝子座、例えば8個のV遺伝子セグメントを含む4つの遺伝子座に加えて7個のV遺伝子セグメントを含む1つの遺伝子座;4個のV遺伝子セグメントを含む7つの遺伝子座に加えて3個のV遺伝子セグメントを含む1つの遺伝子座;又は各々1個のV遺伝子セグメントを含む39の遺伝子座上に存在し得る。
【0094】
ヒトV遺伝子は、V1〜V7の7つのファミリーに分類され、各ファミリー内の個々の遺伝子に番号が付されている。各遺伝子が使用される頻度は、特定の免疫応答の様々な必要条件に依存する。例えば、V3ファミリーの遺伝子は、細菌抗原に対して応答する場合、V5ファミリーのものと比較して選択的に使用され得る。そのため、本発明のさらなる好ましい実施形態では、特異的抗原に対する抗体応答を生じさせるために有用であることが示されたV遺伝子セグメントの群は、各々が異なる優性選択マーカー遺伝子を含む別々の遺伝子座に分類される。V遺伝子セグメントは、ファミリーによって分類され得るか、又は個々の機能によって分類され得る。例えば、V3ファミリーのV遺伝子が細菌抗原に対する免疫応答を生じさせるために有用であることが示された場合、これらは、細菌抗原に対する重鎖のみ抗体を生成するために特に有用な遺伝子座を作製するのに使用され得る。あるいは、V3及びV5ファミリーからのいくつかの個別遺伝子が細菌抗原に対する免疫応答を生じさせるために有用であることが示された場合、これらは一緒に分類され、細菌抗原に対する抗体を生成するために特に有用な遺伝子座を作製するのに使用され得る。
【0095】
本発明に関連して「免疫グロブリン重鎖遺伝子座」は、重鎖定常(エフェクター)領域をコードする1又はそれ以上の遺伝子セグメントに操作的に連結された、1又はそれ以上のV遺伝子セグメント、1又はそれ以上のD遺伝子セグメント及び1又はそれ以上のJ遺伝子セグメントを含むVドメインをコードする最小マイクロ遺伝子座に関する。好ましくは、抗体レパートリーの可変性の主要な原因は、V、D及びJ遺伝子セグメントの選択とV−D及びD−J結合とによって形成されるCDR3領域である。
【0096】
本発明の利点は、再構成されたV、D及びJ遺伝子セグメントにおいて得られる抗体レパートリー及び多様性を、対立遺伝子排除を利用することにより、同じトランスジェニック非ヒト哺乳動物における複数の免疫グロブリン重鎖遺伝子座の使用を介して最大化できることである。遺伝子座の1つを無作為に選択して組換えを開始させ、続いて、最初の組換えが非生産的等であった場合は、生産的な組換えが遺伝子座の1つから生成されるまで次の遺伝子座を選択する、対立遺伝子排除のプロセスは、実際上組み合わせた遺伝子座内に存在するすべてのV遺伝子セグメントが全体的な組換えプロセスの一部となることを確実にする。
【0097】
VDJ再構成に生産的に関与する任意の所与の免疫グロブリン重鎖遺伝子座におけるすべてのV遺伝子セグメントの確率を高めるために、CTCF部位をV遺伝子セグメントの群の間に分散させてもよい。
【0098】
その正常な立体配置の免疫グロブリン遺伝子座は、B細胞において行われた、V領域の方向に及びV領域を通して測定した距離測定に基づき、三次元折りたたみ構造を有すると思われる(Jhunjhunwala et al.(2008)Cell,133,265−279)。異なるV領域が、それらが免疫グロブリン重鎖遺伝子座のD、J及び定常領域から極めて異なる距離に配置されている場合でも等しく効率的に使用され得る理由が、そのような折りたたみ又はループ構造により説明される。
【0099】
また、多くの遺伝子座におけるループ化によって形成される折りたたみ構造は、CTCFと呼ばれる特定のクロマチン結合タンパク質を介して媒介されることが最近明らかになった。CTCFは、突然変異誘発実験によって明らかにされたように(Splinter et al.(2006)Genes Dev.,20,2349−2354)クロマチンループの形成に直接関与すると思われる。ごく最近、姉妹染色分体を結びつけるタンパク質複合体、コヒーシンがCTCF結合部位に存在することが示された(Wendt et al.(2008)Nature,451,796−801)。免疫グロブリンV領域からの多くのCTCF部位を含むことは(Kim et al.(2007)Cell,128,1231−1245;Denger,Wong,Jankevicius and Feeney(2009)J.Immunol.,182,44−48)、トランスジェニック免疫グロブリン重鎖遺伝子座のV領域が正しく折りたたまれ、その遺伝子座に存在するすべての異なるV遺伝子セグメントの効率的な利用を可能にし得る確率を高める。
【0100】
異種重鎖遺伝子座を含む各々の導入遺伝子は、優性選択マーカーをさらに含み得る。好ましくは、優性選択マーカーは、κ又はλ軽鎖遺伝子座内に導入される優性選択マーカーとは異なる。
【0101】
本発明のために、遺伝子の発現が選択的又は毒性攻撃誘発の存在下で非ヒトトランスジェニック哺乳動物に由来するハイブリドーマ又は形質転換B細胞に選択上の利益を付与することを条件として、任意の優性選択マーカー遺伝子が使用できる。典型的には、優性選択マーカー遺伝子は原核生物起源であり、ピューロマイシン(Vara et al.(1986)NAR,14,4617−4624)、ハイグロマイシン(Santerre et al.(1984)Gene,30,147−156)及びG418(Colbere−Garapin et al.(1981)150,1−14)などの毒性薬剤に対する耐性を付与する群から選択されるか、又はそれらの発現が毒性物質を必須アミノ酸に変換するように、例えばインドールのトリプトファンへの変換又はヒスチジノールのヒスチジンへの変換(Hartmann and Mulligan(1988)PNAS,85,8047−8051参照)のように特定の栄養必要条件を不要にする遺伝子を含む。
【0102】
本発明の必要要件は、優性選択マーカー遺伝子が、使用される場合、免疫グロブリン重鎖トランスジェニック遺伝子座内に存在し、それによりB細胞特異的同時発現を確実にすることである。あるいは、薬剤耐性遺伝子を、ES細胞又は核移植アプローチと組み合わせた相同組換えを使用して内因性又は外因性(トランスジェニック)免疫グロブリン遺伝子座に挿入してもよい(例えばte Riele,Robanus Maandag and Berns(1992),PNAS,89,11,5128−5132)。
【0103】
同じ優性選択マーカー遺伝子をすべての重鎖遺伝子座内に組み込んでもよい。あるいは、異なる重鎖遺伝子座又は重鎖遺伝子座の群は、異なる優性選択マーカー遺伝子を含んでもよい。
【0104】
四量体抗体を発現する本発明のトランスジェニックマウスに由来する、ハイブリドーマ又は形質転換B細胞、好ましくは形質転換長命形質細胞(Slifka et al(1998)Immunity,8,363−372)を、トランスジェニック軽鎖遺伝子座内の機能的優性選択マーカー遺伝子の同時発現により、内因性免疫グロブリンを発現する細胞を含まないように選択し得る。さらに、トランスジェニック重鎖遺伝子座に存在するVセグメントの特定の群に由来する抗体を発現するハイブリドーマ又は形質転換B細胞株も、軽鎖遺伝子座内に組み込まれた優性選択マーカーと比較して、重鎖遺伝子座内の異なる優性選択マーカーの存在と同時発現により、選択し得る。例えば、κ軽鎖トランスジェニック遺伝子座以内にピューロマイシン耐性遺伝子を含むことは、κ軽鎖導入遺伝子を発現するすべての細胞の選択を可能にする。あるいは、好ましいV遺伝子セグメントを含む重鎖トランスジェニック遺伝子座内にG418耐性遺伝子を含むことは、好ましいV遺伝子セグメントを発現するすべての細胞の選択を可能にする。
【0105】
特に、本発明は、抗原特異的異種モノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)上述した非ヒトトランスジェニック哺乳動物を抗原で免疫するステップと、
(b)免疫したトランスジェニック哺乳動物のB細胞由来のモノクローナル抗体を産生する、ハイブリドーマ又は不死化B細胞株を調製するステップと、
(c)異種免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子内に存在する優性選択マーカー遺伝子を使用して、異種抗体を発現する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと、
(d)抗原に特異的に結合する抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと
を含む方法を提供する。
【0106】
ここで、単に例示として、以下の詳細な説明において以下の図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1A:マウスIgH遺伝子座の3’末端。 マップはIMGTデータベース(http://imgt.cines.f)からコピーしたものである。尺度はキロベース(kb)である。緑色の四角は機能性Vセグメント;赤色及び黄色の四角は非機能性Vセグメント;橙色の四角はJセグメント;青色の四角は定常領域である。イントロンIgHエンハンサー及び遺伝子座の3’末端のLCRは示していない。 図1B:IgHを無効にする方法 上の列は、膜形態のIgMをコードする2つのエクソンを含む種々のエクソンを有するマウスのCμ領域を示す。左側は遺伝子座のJ、D及びV領域、右側はCδから始まるその他の定常領域である。下の列は、組換え後の正常なM1エクソンのアミノ酸配列の一部を示す。DNA配列は組込み配列を示す。終止コドンは赤色、SpeI部位は赤色と青色である。 図1C:Cμを無効にするためのES細胞における組換え この図は、組換え挿入物の3’側をカバーするPCR分析によるES細胞の組換え陽性クローンのうちの2つを示す。大きい方のフラグメントは、図5Bで指示する位置でのM1エクソンへのneo選択マーカーの挿入に対応する。 図1D:CμノックアウトマウスのFACS分析 M1エクソンを終止コドンとneo遺伝子によって中断した後、ES細胞を胚盤胞に導入してキメラを得る。これらを同型接合に育種し、血液をB細胞の存在に関して分析する。上の2つのパネルは、B細胞マーカーB220及びCD19を使用した正常野生型マウスと異型接合の中断されたM1エクソンマウスのFACS分析を示す。下の2つのパネルは2匹の同型接合マウスを示し、B220、CD19細胞、すなわち機能性B細胞は存在しない。 図1E:組換えマウスへの育種後のneoの欠失 図5Dのマウスを組換え酵素発現マウスと交配して、neo遺伝子を欠失させる。右側の2つのレーンは、親動物におけるneo遺伝子にわたるロングレンジPCR産物を示し、左側の次の2つのレーンは、neoの欠失と野生型対立遺伝子を有する2匹の異型接合マウスを示す。左側の次の4つのレーンは野生型マウスであるが、最も左側のレーンは、neo遺伝子の同型接合欠失と不活性化M1エクソンを有するマウスを示す。
【図2】図2:マウスIgκ遺伝子座のマップ マップはIMGTデータベース(http://imgt.cines.f)からコピーしたものである。尺度はキロベース(kb)である。緑色の四角はVκセグメント;橙色の四角はJκセグメント;青色の四角は定常領域;黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列である。
【図3】図3:マウスVκノックダウン LCRの欠失によってマウスIgκ遺伝子を機能的に不活性化するためのスキーム。 loxネオマイシン耐性遺伝子カセットを、3’κ−LCR(下の列)を置換するES細胞における相同組換えによって挿入する。cre組換え酵素による処理(+cre)はlox部位の間のすべての配列を除去し、κ遺伝子座内に単一lox部位を残す(上の列)。
【図4】図4:κ遺伝子座を不活性化するためのマウスCκの挿入 遺伝子座(上の列)は図3と同じである。下の列は、Cκエクソン(上の列中の青色)の5’末端の配列を示し、塩基の上部にアミノ酸コードを記載している。起始部のGG塩基対は、スプライシング後のアミノ酸Rをコードするスプライス受容部位に直接隣接している。中央の列は34塩基対のlox部位挿入物(青色及び赤色の逆方向反復配列)の挿入を示し、これは、定常領域のコドン使用頻度をフレーム外に置き、下流に終止コドンを作製する(例えば太字の(fat print)下線を付したTGA)。黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列である。
【図5】図5:マウスCκの挿入 遺伝子座(上の列)は図3と同じである。下の列はCκエクソン(上の列中の青色)の5’末端の配列を示し、塩基の上部にアミノ酸コードを記載している。起始部のGG塩基対は、スプライシング後のアミノ酸Rをコードするスプライス受容部位に直接隣接している。中央の列は、lox配列(青色及び赤色の逆方向反復配列)及び4つの終止コドンを含む46塩基対の挿入物の挿入を示し、これもやはり、定常領域のコドン使用頻度をフレーム外に置き、下流に終止コドンを作製する(例えば太字の下線を付したTGA)。黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列である。
【図6】図6A:マウスCκ定常領域終止コドン及びフレームシフトの挿入 遺伝子座(上の列)は図3と同じである。下の列はCκエクソン(黒色)の配列の一部を示し、塩基の上部にアミノ酸コードを記載している。中央の列はCκコード領域の配列の一部を示す。その上の列は、lox配列(青色及び赤色の逆方向反復配列)、3つの終止コドンを含む44塩基対の挿入物の挿入を示し、これもやはり、定常領域のコドン使用頻度をフレーム外に置き、下流に終止コドン(TAA)を作製する。黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列であり、挿入のために使用したHpaI部位を赤色で示す。 図6B:Cκを無効にするためのES細胞における組換え ゲルは、図13Aに例示する、ES細胞におけるCκ組換えの多くのクローンの挿入部位にわたるPCR増幅の結果を示す。クローン351及び623は陽性であり、これらを胚盤胞に注入してIgκ陰性マウスを作製する。
【図7】図7:ヒトIgκ遺伝子座 マップはIMGTデータベース(http://imgt.cines.f)からコピーしたものである。尺度はキロベース(kb)である。緑色の四角は機能性Vκセグメント;赤色及び黄色の四角は非機能性Vκセグメント;橙色の四角はJκセグメント;青色の四角は定常領域;黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列である。
【図8】遺伝子導入のためのハイブリッドヒト/ラットIgκ遺伝子座の作製 遺伝子座の3’末端を、マウスκ3’エンハンサー(黄色)を含むマウス(黄色)から得る。マウス定常領域コード配列を、ラットゲノムDNAからロングレンジPCRによって得たその5’エンハンサーを含むラットの定常領域コード配列(赤色)で置換する。V領域とJ領域の間の適切な間隔を維持するために、Vκ4−1からヒトJκ配列までの下流ヒトセグメントをマウス(黄色)から得る。ヒトJκセグメントを、ヒト遺伝子座のこの部分をカバーするPAC(緑色)から得る。緑色の四角は、個別に又はブロックとして(本文参照)付加したVκセグメントである。PACベクター中に存在するピューロマイシン耐性遺伝子を赤色で示し、黒い円はκ−エンハンサー及び赤い円はκ−LCR配列を示す。
【図9】図9:V4重鎖遺伝子座のマップ 5’末端にネオマイシン選択マーカーを含むこの遺伝子座をヒト/マウスハイブリッド遺伝子座の構築のための出発物質として使用する。この遺伝子座は、国際公開第WO2008/035216号に記載されているように構築する。尺度はキロベースである。この遺伝子座は、4つのV領域(1−46、3−53、3−23、3−11)、ヒトDセグメントの全部、ヒトJセグメントの全部及びIgG定常領域と3’ヒトIgH LCRを含む。
【図10】図10:4つのVヒト/ラット定常領域IgH遺伝子座の作製 V4ヒト遺伝子座中に存在するCeuI部位(図6)を使用して、ラットゲノムDNAからPCRによって増幅したラット定常コード領域及びスイッチ領域を付加することによってヒト/ラット遺伝子座を作製する。同様にマウスLCR領域をマウスゲノムDNAからいくつかのフラグメントとして増幅し、最初にそれらを一緒にクローニングして完全なマウスIgH LCRを作製する。4つのVセグメント、ヒトDセグメントの全部及びヒトJセグメントの全部を含むヒトV4遺伝子座の5’末端(図6)。すべてのヒト配列は青色であり、すべてのマウス配列は明緑色、ラット配列は赤色であり、ネオマイシン耐性遺伝子は紫色で示す。
【図11】図11:λLCRを含むIgλエンハンサーの欠失 λ遺伝子座エンハンサーを、エンハンサー2−4に隣接する領域に相同な配列によって隣接されたハイグロマイシン耐性遺伝子及び4−10エンハンサーに隣接する領域に相同なセグメントによって隣接されたブラスチシンS耐性遺伝子を使用して、標準的な置換ベクターを用いた相同組換えによって除去する。置換は、エンハンサーを喪失したλ遺伝子座を生じさせ、発現低下を示す。ハイグロマイシン耐性遺伝子を赤色で示し、ブラスチシンS耐性遺伝子を橙色で示す。マウスVλセグメントは緑色であり、Jセグメントは黄色、定常領域は青色である。マップはIMGTデータベースからコピーしたものである。
【図12】図12:遺伝子導入のためのヒト/ラットVκ遺伝子座 遺伝子座は図8と同じであるが、付加的なヒトVκセグメントを遺伝子座に加えた。生じた遺伝子座は、頻繁に及び中等度の頻度で使用されるヒトVκセグメントの全部を含む。緑色の円及び緑色の線はマウスκ−エンハンサー及びイントロン;赤色の四角及び円はラットκ−定常領域及びエンハンサー:青色の四角はヒトVセグメント;暗青色はピューロマイシン選択マーカーである。
【図13】図13A:ヒト/ラットハイブリッド遺伝子座の作製 V領域を一緒に連結して、SceI部位の間にクローニングした17個の連続するヒトV領域のコンカテマーにすることによって遺伝子座を作製する。DセグメントとJセグメントの間に適切な距離を保持するために、ヒトD及びJセグメント全部を含むヒト40kbフラグメントにマウススペーサー領域を付加する。これに続いてSceI部位を含むV6−1セグメントを付加する。次にコンカテマーをV6−1に付加する。最後に、様々なラット定常領域とマウスLCRを3’側に付加する。生じる遺伝子座は、頻繁に及び中等度の頻度で使用されるヒトVセグメントの全部を含む。 図13B:ヒト/ラットIgH遺伝子座の出発構築物 ゲルは、V6−1の付加後のヒト/ラットIgH遺伝子座構築の第一段階の結果を示す。右側のレーンは、クローニングしたプラスミドの2つのNotI消化物を示す。レーン(NotI×MluI)は、ベクター中で正しい方向を有するレーン1のプラスミドを示し、レーン2のプラスミドは誤った方向を有する。レーン1のプラスミドを遺伝子座の作製における次の段階に使用する。 図13C:Vセグメントのコンカテマー ゲルは、17の異なるV領域のコンカテマーのXhoI/SalI消化物を示す。マーカーレーンは、BstEIIで消化したλファージDNAを含む。
【図14】図14:トランスジェニックヒト/ラット重鎖免疫グロブリン遺伝子座 同じ動物に導入した2つの重鎖遺伝子座の一例。ある重鎖遺伝子座の別の重鎖遺伝子座に対する選択は対立遺伝子排除を介する。付加的なVセグメントを遺伝子座の各々に加えることができる。あるいは、さらなる重鎖遺伝子座を使用して付加的なVセグメントを導入することができる。明らかに、κ又はλ軽鎖遺伝子座に関する多様性を高めるために同じ方法が使用できる。
【図15】図15:ヒト/ラットλトランスジェニック軽鎖遺伝子座 ヒト/ラット遺伝子座の一例を示す。その3’末端を、マウスλ3’LCR(黄色)を含むマウス(黄色)から得る。マウス定常領域コード配列を、ラットゲノムDNAからのロングレンジPCRによるラットの定常領域コード配列(赤色)で置換する。V領域とJ領域の間に適切な間隔を維持するために、Vλ2−14からヒトJκ配列までの下流ヒトセグメントをマウス(黄色)から得る。ヒトJλセグメントを、ヒト遺伝子座のこの部分をカバーするヒトPAC(青色)のロングレンジPCRによって得る。青色の四角は、個別に又はブロックとして付加したVλセグメントである。PACベクター中に存在するハイグロマイシン耐性遺伝子は紫色である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
<実施例>
以下の実施例では、ハイブリッドヒト/ラット重鎖及び軽鎖遺伝子座を、常套的な遺伝子導入手順である受精卵への微量注入によって導入された導入遺伝子として発現するトランスジェニックマウスを作製する。卵供与マウスを、内因性マウス重鎖遺伝子及びマウス軽鎖遺伝子を発現しない又は前記遺伝子の非常に低い発現を有するように改変する。マウスには、κ及びλ鎖について2つの軽鎖遺伝子座があり、そのうちλはマウスH2L2抗体の約2%においてのみ使用される。実施例は、従って、IgH遺伝子座と不活性化された内因性κ遺伝子座だけを有するマウス又はIgHと不活性化されたκ遺伝子座を有し、λ遺伝子座の発現をさらに一層低下させるためにλ遺伝子座の調節配列が除去されたマウスのいずれかにおけるものである。
【0109】
重鎖及び軽鎖遺伝子座の構築、抗原投与後のトランスジェニックマウスの作製とスクリーニングのために使用される方法は、C1ドメインがすべての重鎖遺伝子座で保持されることを除き、基本的に以前に記述されているとおりである(Janssens et al.(2006)PNAS,10,103(41),15130−5、国際公開第WO2006/008548号、同第WO2007/096779号、英国特許第GB0805281.3号及び英国特許第GB0805281.3号の優先権を主張して2008年6月11日に出願されたPCT出願)。機能性異種免疫グロブリン遺伝子座を発現する及び/又は操作された内因性遺伝子座を有する、マウス以外の哺乳動物を含む脊椎動物を誘導するための一般的な方法は、国際公開第WO2006/047367号に記載されている。以下の実施例では、ES細胞における組換えを使用し、改変されたES細胞を使用して所望特性を有するマウスを作製する。しかし、同じ手順を誘導多能性幹細胞(iPS細胞)において実施することができ、次にそれらを使用してマウスを作製する(例えばBoland,Hazen,Nazor,Rodriguez,Gifford,Martin,Kupriyanov and Baldwin(2009),461,7260,91−4及びその中の参考文献)。あるいは、体細胞又は体性幹細胞において改変を実施し、その後それらをiPS細胞に再プログラムして改変マウスを作製する。また、改変造血幹細胞を、B細胞を欠くレシピエントマウスに移植して、ヒト又はヒトハイブリッド抗体を作製することができる。
【実施例1】
【0110】
この実施例では、KitamuraとRajewskyによって公表されたのと同様の方法でIgH遺伝子座(図1A)を不活性化するが、Kitamura et al.(1991)Nature,350,423−426が述べたものよりも1アミノ酸前の位置でCμ領域に終止コドンを導入する点が異なる。ES(又はiPS)細胞を、マウスIgM遺伝子の第一膜エクソンの2番目のコドンを終止コドンに変更した構築物でトランスフェクトした。これは、トランスフェクションのためのneo選択を含む常套的な手順を含む。組換えの成功を観測できるようにSpeI部位を組換え配列に含めた(図1B)。その後ES細胞をサザンブロット法によってスクリーニングし、成功した組換えクローンを確認する。これは、10の正しい組換え体を生じた(例えば図1C)。これらのうちで、3つをマウス胚盤胞に注入してキメラを得、その後それらを育種して、IgH突然変異に関して同型接合のマウスを得た。そのようなマウスのB細胞のFACS分析(B220対CD19)は、末梢血中にB細胞が存在しないことを示す(図1D)。その後マウスを組換え酵素発現マウスと交配し、neo遺伝子を除去した(図1E)。同様に、マウスIgκ遺伝子座(図2)をES細胞における組換えによって不活性化又は低減させる(図2、3、4〜6)。生じたκ不活性化マウスを重鎖KOマウスと交配する。3’κ遺伝子LCRを、lox部位によって隣接されたneo耐性マーカーで置換することによって活性のノックダウンを達成する(図3)。neo遺伝子は、場合により組換え酵素での処理によって除去する。
【0111】
あるいは、κ対立遺伝子をIgHのKO細胞において直接ノックアウトすることができる。いくつかの異なる方法がκ不活性化を達成するために使用できる。κ遺伝子の活性のブロッキングは、lox部位によって隣接されたneo遺伝子をCκエクソンの5’末端に挿入するES細胞又はiPS細胞における相同組換えを使用するによって(図4)、又はlox部位によって隣接されたneo遺伝子と終止コドンをコードする付加的な配列を挿入することによって(図5及び6A)達成できる。組み換えたES細胞をcreで処理することにより、フレーム外の配列が残るか(図4)又は新しい終止コドンが付加的に含まれる(図5〜6A)。図6Bは、図6Aに示す構築物のトランスフェクション後のES細胞における組換え結果を示し、不活性化された1個のCκ対立遺伝子を有する2つのES細胞クローンを生じる(合計で5つのそのようなクローンを得た)。2つのlox部位の間の領域を除去するためにアクチン駆動組換え酵素プラスミドでの標準的な一過性トランスフェクションによって細胞を組換え酵素で処理する。その後前記細胞を使用して常套的な方法によってマウスを作製し、その子孫を育種して同型接合マウスを得る。そのようなマウスは、κ軽鎖を含む免疫グロブリン四量体の構築が実質的に損なわれた又は完全にブロックされたB細胞を含む。
【0112】
次に、ヒトIgκ遺伝子座の最も頻繁に使用されるVκ遺伝子(Igデータベース:http://imgt.cines.fr/を使用して評価した;図7、8参照)を標準的なPCRによって増幅し、ヒトVセグメントに関して先に述べたように、XhoI/SalI部位の間にサブクローニングする。これは、Vκ領域の多量体化を可能にし、多量体をXhoIとSalI部位の間に保持する。
【0113】
また、3’κエンハンサー、及びラット定常(Cκ)領域に加えてラット5’エンハンサーを含むマウスκ遺伝子座の3’末端を一緒にクローニングする(図8)。次に、Vκ領域とJκ領域の間の正常な間隔を維持するためにヒトJκ領域及びマウスVκとJκの間からの領域(17kb)(図2)をクローニングする。最後に、常套的な手順によって(例えばJanssens et al.(2006)、前出)ピューロマイシン選択マーカーを含むPAC(図8)にヒトVκを挿入する。
【0114】
示した実施例では、最も頻繁に使用されるVκセグメント(4−1、3−11、3−15、3−20及び1−39)を多量体化し、ヒトJ領域及びマウスエンハンサー及びラットCκ領域を含むPACベクターに連結する。これは、puro耐性マーカー遺伝子、ヒトVκセグメント及びラット定常(Cκ)領域から成るヒト−ラットハイブリッド遺伝子座を生じる(図8)。
【0115】
並行して、ハイブリッドヒト/ラットIgH遺伝子座を構築する。やはり、出発物質に関しては多くの可能性が存在する。この実施例では、出発物質は、4つのヒトV領域、ヒトD及びJセグメントの全部並びに2つのヒト定常領域とヒトLCRを含むヒトPACである(図9及び英国特許出願第0905023.8号)。
【0116】
後者のPACは、J領域と定常領域の間に唯一のCeuIメガヌクレアーゼ部位を有する。ハイブリッド遺伝子座の構築を容易にするために、このCeuI部位を使用してヒト3’末端配列を除去し、これらをラット定常領域及びスイッチ領域(Cμ、Cγ3、Cγ1及びCγ2)で置換する。これらを、ラットゲノムDNAから標準的なロングレンジPCRによって増幅した。最後に、マウス重鎖LCRを付加する。この調節配列を、3つの部分に分けてマウスゲノムDNAから増幅し、一緒にサブクローニングして、完全なLCRを復元し、ラット定常領域の3’側に付加する(図10)。生じたハイブリッドIgH遺伝子座は、従って、neo選択マーカー、ヒトV、D及びJ領域並びにマウス調節配列を伴うラット定常領域を含む。
【0117】
ハイブリッド遺伝子座挿入物を、その後、大きなDNAフラグメントとしてPACから単離し、IgH/Igκ異型接合又は同型接合ヌルマウスに由来するマウス受精卵に注入して、ヒト/ラットハイブリッドIgH及びIgκ遺伝子座に関してトランスジェニックであるマウスを作製する。これはすべて常套的な方法によって実施する(例えばJanssens et al.(2006)、前出)。
【0118】
その後、ハイブリッドIgH及びハイブリッドIgκトランスジェニックマウスを育種して、内因性マウスIgH及びIgκ発現に関して同型接合ヌルであり、ヒト/ラットハイブリッドIgH及びIgκ発現に関して陽性であるマウスを得る。その後これらのマウスを免疫して、常套的な手順によって抗原特異的ハイブリッドヒト/ラットH抗体を作製する。ハイブリドーマを介してモノクローナルヒト/ラットIgを作製する場合、ピューロマイシンとネオマイシンの二重選択は、IgHとIgκ遺伝子座の両方を含む骨髄腫融合物だけを選択することを確実にする。
【0119】
当業者は、マウス遺伝子を不活性化するための異なるベクター、異なる選択マーカー、異なる組換え位置の使用又はハイブリッド遺伝子座の実際の(常套的な)クローニング方法の変形などの、この手順に対する変形を行ってハイブリッドトランスジェニックマウスを作製し得ることを認識する。同じ手順が、任意の単一哺乳動物種に由来する免疫グロブリンDNAを使用して任意の正常若しくはハイブリッド遺伝子座を作製するために、又は2若しくはそれ以上の種に由来するDNAを使用して誘導されるハイブリッド遺伝子座を作製するために使用できる。
【実施例2】
【0120】
この実施例は、IgH/Igκ抗体を得る高頻度が、内因性マウスIgλ遺伝子座の発現の頻度を低下させることによってさらに一層高められることを除き、原則として実施例1と同じである。これは、両方のIgλの調節領域を選択マーカーで(図11)、この場合はハイグロマイシン耐性遺伝子とTK−BSD遺伝子で置換することによって達成できる。
【0121】
後者は、陽性選択、ブラスチシジンSに対する耐性選択を可能にする(Karreman,(1998)NAR,26,(10),2508−2510)。マーカーのこの組合せは、調節領域を置換した場合の2つのES細胞組換えにおける陽性選択を可能にする。組換えは、実施例1で作製したES細胞において、あるいは並行して正常ES細胞において実施し、実施例1で上述したマウスに育種する。
【0122】
生じるトランスジェニックマウスは、ハイブリッドヒト/ラットIgH及びIgκ遺伝子座を含み、内因性マウスIgH及びIgκに関して陰性であり(又は非常に低いレベルでCκを発現する)、非常に低いレベルでIgλを発現する。常套的な方法による免疫とハイブリドーマの作製後、ヒト/ラットハイブリッドH抗体だけを発現するハイブリドーマを、neo(図10)及びpuro(図8)選択によってトランスジェニックハイブリッド遺伝子座の発現のために選択する。
【実施例3】
【0123】
実施例3は、上述した実施例に類似するが、ハイブリッドIgκ遺伝子座を、より低い頻度で使用されるVκセグメントの付加によって延長する(図12;Vκ1−9、1−33、2−30、2−28、1−27、1−5)。あるいは、突然変異/改変Vκセグメント又はVλセグメントをさらに付加することができる。さらなるセグメントの付加は、上述したのと同じXhoI/SalIクローニング法を使用することによって実施する。この実施例で作製されるマウスの免疫は、抗原による免疫に応答してより大きな複雑性を可能にする。V領域の数は、他のVκセグメントを付加することによって又は上記Vセグメントのすべての組合せを使用することによってさらに変化させ得る。
【実施例4】
【0124】
実施例4は、上述した実施例で述べたものに類似するが、ここでは18のVセグメント及び5つのラット定常領域を使用することによってハイブリッドヒト/ラットIgH遺伝子座を作製した(図13A;ヒトV6−1、1−2、4−4、2−5、3−07、1−8、4−39、3−15、1−18、3−23、3−30、3−33、3−48、4−34、3−49、3−53、4−59、1−69)。最初に、VセグメントとD領域の間の適切な距離を維持するためにヒト遺伝子座の中央の70kbのDJ領域を、マウスIgHイントロンからの8kbを用いて5’末端で延長する。次に人為的SceIメガヌクレアーゼ部位を有する10kbの第一V領域(6−1)をマウスイントロン配列の5’末端でクローニングする(図10B)。別のプラスミドにおいて、残りのV領域全部を、上述したようにXhoI/SalI Vセグメントに組み入れることによって一緒にクローニングする(図10C)。また、これらの遺伝子座により多くのVセグメント又は改変/突然変異したVセグメントを付加することもできる。また、CTCF部位を含めることもできる。示した実施例では、3つのそのような部位を使用した。それらは、上流のCTCF部位を含むV領域のロングレンジPCRによって得られる。さらに、図10における遺伝子座と比較した場合、ラットCαを付加した。この実施例では、特に実施例3と組み合わせて、抗原による免疫に応答してさらに一層大きな複雑性を可能にする。V多量体をVH6−1DJプラスミドにクローニングし、その後ラット定常領域を付加して遺伝子座を完成させる。
【0125】
これらの実施例すべてにおいて、同じマウス中に存在する付加的な重鎖又は軽鎖トランスジェニック遺伝子座の一部としてVセグメントを付加することにより、応答の複雑性がさらに一層増大される。すべての遺伝子座が対立遺伝子排除の対象であるので(国際公開第WO2007/096779号参照)、抗原投与後に好ましい再構成だけをインビボで選択し、B細胞の増殖及び血清中の抗体の蓄積を生じさせる。図14は、同じ動物に導入することができる2つの重鎖遺伝子座の一例を示し、各々が対立遺伝子排除を介して使用される。明らかに、トランスジェニック免疫レパートリーの複雑性を高めるためにより多くのVセグメントを付加することができるか(改変されたVセグメントを含む)又はより多くの遺伝子座を導入することができる。その方法はまた、他の種にも、それらの種に特異的なVセグメントを使用して適用できる。
【実施例5】
【0126】
この実施例では、上記実施例で述べたヒト/ラットIgH及び/又はIgκ遺伝子座を保持するマウスに育種することを介してヒト/ラットIgλ遺伝子座を付加することにより、ヒト/ラットハイブリッド抗体の多様性をさらに一層高める。ヒト/ラットハイブリッドλ遺伝子座は、先の実施例で述べたヒト/ラットIgκ遺伝子座に関して説明したのと全く同様にして作製される。相違は、JλとCλの領域が対で生じ、従って2つのラットCλ領域が2つのヒトJλ領域にクローニングされるという事実によって引き起こされる(図15)。VλセグメントとJλセグメントの間の間隔は、その位置で生じる正常マウス配列をクローニングすることによって維持される(図11参照)。この実施例では、2つのヒトJλ及びラットCλのセグメントを4つのヒトVλセグメントと一緒に使用する。合わせると、これらはヒトIgλ応答の80%以上をカバーする。調節配列(LCR、図15)は、最適発現を確実にするためにマウスに由来し、選択マーカーを遺伝子座の5’末端に付加する。上述したように、遺伝子座を制限フラグメントとして単離し、受精卵に注入して、トランスジェニックλ遺伝子座を有するマウスを作製する。
【0127】
これらの実施例のすべてにおいて、異なる種に由来するV、V、D、J及び定常領域を使用して、他の単一種抗体又はハイブリッド種抗体を作製することができる。また、ひとたび抗原特異的抗体が同定されれば、完全に常套的な方法によってVDJ及びVJ領域を同じ種又は異なる種に由来する選択的定常領域にクローニングできることも、当業者には明白である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性λ軽鎖遺伝子座と、内因性κ軽鎖遺伝子座と、内因性重鎖遺伝子座とを含む非ヒト哺乳動物であって、その各々は、抗原投与後にB細胞において、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子が形成されて発現されるように再構成することができるが、前記遺伝子座は、前記突然変異した遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する能力が実質的に低減又は排除されるように突然変異している、非ヒト哺乳動物。
【請求項2】
前記内因性λ軽鎖遺伝子座、前記内因性κ軽鎖遺伝子座及び前記内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つが、前記内因性遺伝子座又は各々の内因性遺伝子座へのフレームシフト突然変異、ポリペプチドコード配列、及び/又は1若しくはそれ以上の終止コドンの導入によって突然変異している、請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項3】
前記突然変異が50個未満のヌクレオチドの挿入である、請求項2に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項4】
前記内因性λ軽鎖遺伝子座、前記内因性κ軽鎖遺伝子座、及び前記内因性重鎖遺伝子座の少なくとも1つの発現が、前記遺伝子座又は各々の遺伝子座におけるLCRの一部又は全部の除去によって実質的に低下している、請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項5】
前記導入が、前記内因性κ軽鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項6】
前記導入が、前記内因性λ軽鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項7】
前記導入が、前記内因性κ軽鎖遺伝子座及び前記内因性λ軽鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項8】
前記導入が、前記内因性重鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項9】
前記導入が、前記内因性κ軽鎖遺伝子座及び前記内因性重鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項10】
前記導入が、前記内因性λ軽鎖遺伝子座及び前記内因性重鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項11】
前記導入が、前記内因性λ軽鎖遺伝子座、前記内因性κ軽鎖遺伝子座及び前記内因性重鎖遺伝子座においてである、請求項2又は請求項3に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項12】
前記内因性κ軽鎖遺伝子座内に請求項2又は請求項3で定義される導入が存在し、前記内因性λ遺伝子座内に請求項4で定義される部分的又は完全なLCR欠失が存在する、請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項13】
前記内因性重鎖遺伝子座が、重鎖遺伝子再構成、mRNA転写及びタンパク質合成は起こる一方で、B細胞活性化はブロックされるように突然変異されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項14】
1又はそれ以上の異種κ軽鎖遺伝子座と、関連するB細胞特異的調節エレメントを含有する導入遺伝子とを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項15】
1又はそれ以上の異種λ軽鎖遺伝子座と、関連するB細胞特異的調節エレメントとを含有する導入遺伝子を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項16】
異種軽鎖遺伝子座を含有する前記導入遺伝子が優性選択マーカー遺伝子を含む、請求項14又は請求項15に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項17】
1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座と、関連するB細胞特異的調節エレメントとを含有する導入遺伝子を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項18】
2又はそれ以上の異なる異種重鎖遺伝子座と、関連するB細胞特異的調節エレメントとを含有する2又はそれ以上の導入遺伝子を含む、請求項17に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項19】
異種重鎖遺伝子座を含有する前記導入遺伝子又は各々の導入遺伝子が優性選択マーカー遺伝子を含む、請求項17又は請求項18に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項20】
各々の異種重鎖遺伝子座がCTCF結合部位を含む、請求項17〜19のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項21】
異種κ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と、1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座とを含有する導入遺伝子を含む、請求項14及び16〜19のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項22】
異種λ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と、1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座とを含有する導入遺伝子を含む、請求項15〜20のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項23】
異種κ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と、異種λ軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と、1又はそれ以上の異種重鎖遺伝子座とを含有する導入遺伝子を含む、請求項14〜22のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項24】
各々の異種遺伝子座が同族のLCRを組み込んでいる、請求項14〜23のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項25】
各々の異種遺伝子座がヒト遺伝子座である、請求項14〜24のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項26】
各々の異種遺伝子座が、2以上の種に由来する可変領域と定常領域を含むハイブリッド遺伝子座である、請求項14〜25のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項27】
各々の異種遺伝子座が、ヒト可変領域とラット又はマウス定常領域を含むハイブリッド遺伝子座である、請求項26に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項28】
異なる異種重鎖遺伝子座の異なる群を含有する導入遺伝子の群を含み、導入遺伝子の各々の群が異なる優性選択マーカー遺伝子を含む、請求項14〜27のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項29】
異種軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と、異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子とを含み、異種軽鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子と異種重鎖遺伝子座を含有する導入遺伝子が各々異なる優性選択マーカー遺伝子を含む、請求項14〜27のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項30】
げっ歯動物である、請求項1〜29のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項31】
マウスである、請求項30に記載の非ヒト哺乳動物。
【請求項32】
抗原特異的異種モノクローナル抗体を作製する方法であって、
(a)請求項1〜31のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック哺乳動物を前記抗原で免疫するステップと、
(b)前記免疫トランスジェニック哺乳動物のB細胞由来のモノクローナル抗体を産生する、ハイブリドーマ又は不死化B細胞株を調製するステップと、
(c)場合により、前記異種免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子座を含有する前記導入遺伝子内に存在する前記優性選択マーカー遺伝子を使用して、前記異種抗体を発現する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと、
(d)前記抗原に特異的に結合する抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと
を含む方法。
【請求項33】
ハイブリッド抗体から哺乳動物抗体、好ましくはヒト抗体を誘導する方法であって、
(a)請求項32に記載の方法を実施するステップと、
(b)前記抗原に特異的に結合し、且つ、選択した種のV及びV結合ドメインを含む抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマ又は不死化B細胞株を選択するステップと、
(c)前記V及びVドメインをクローニングし、配列決定するステップと、
(d)前記V及びV結合ドメインをコードする配列を、同じ種からの選択した定常エフェクタードメインと共に含む選択された配列を、再びクローニングするステップと、
(e)選択した細胞型において発現ベクターを使用して所望する種の重鎖及び軽鎖ポリペプチドをコードする前記再クローニング配列を同時発現させるステップと
を含む方法。
【請求項34】
哺乳動物前駆細胞において前記内因性重鎖遺伝子座、前記内因性κ軽鎖遺伝子座及び場合により前記内因性λ軽鎖遺伝子座を突然変異させ、前記前駆細胞から哺乳動物を作製することを含み、前記突然変異が、前記哺乳動物において、各々の遺伝子座は、抗原投与後にB細胞において、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子が形成されて発現されるように再構成することができるが、前記突然変異遺伝子座から生成される再構成された重鎖及び軽鎖を含む機能性免疫グロブリン四量体を形成する能力が実質的に低減又は排除されている、請求項1〜31のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物の作製のための方法。
【請求項35】
前記前駆細胞が非ヒト胚性幹細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記非ヒト哺乳動物がげっ歯動物である、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項14〜31のいずれか一項に記載の非ヒト哺乳動物又は請求項32若しくは請求項33に記載の方法を使用して誘導される、好ましくはヒトの、抗原特異的異種機能性免疫グロブリン四量体の薬剤、診断薬、又は試薬としての使用。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図13C】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2012−512647(P2012−512647A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541578(P2011−541578)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002781
【国際公開番号】WO2010/070263
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(507021735)エラスムス・ユニヴァーシティ・メディカル・センター・ロッテルダム (6)
【出願人】(507021997)
【Fターム(参考)】