説明

ヒト成長ホルモン剤およびその調整方法と使用方法

【課題】 本発明の目的は、長期の貯蔵において安定であり、水性のhGH剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 安定性があり、薬学的に許容される水性剤であって、ヒト成長ホルモン、ポリエチレングリコール、糖アルコールなどの強壮剤、追加的にキレート剤を含む水性剤を提供するものであり、ヒト成長ホルモンの水性剤調整において、1mg/mlから20mg/mlのヒト成長ホルモンと、pH5.5からpH7バッファと、5mg/mlから50mg/mlのポリエチレングリコールと、強壮剤と、を含める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト成長ホルモン(hGH)を含む薬剤あるいは化合物、およびそのような薬剤の調整および使用方法に関する。より詳しくは、水性剤状態での長期貯蔵の安定性を強化した薬剤に関係する。
【背景技術】
【0002】
ヒト成長ホルモンは、やけどや、傷治療、ジストロフィー、骨の接合、拡散した胃出血および偽関節症、そのほかの症状に有効であるとされてきた。そして、下垂体機能低下の小人症の治療に使用されているホルモンである(例えば特許文献1)。hGHの主な生物学的効果は成長を促進することである。
【0003】
作用する器官は骨格、結合組織、筋肉、肝臓、腸および腎臓のような内臓である。成長ホルモンは細胞膜の特定受容器の相互作用によってその作用を及ぼす。組み換えDNA技術の進歩により、ヒト成長ホルモンをバクテリアなどの供給源より生産することができるようになった。
【0004】
組み換えタンパク質は、優先的にタンパク質の分解を防ぐ構造に組み合わせられる。タンパク質破壊には、化学的、物理学的な、2つの基本的な原因がある。化学的の破壊は、タンパク質への修飾に関係し、アミド分解、酸化あるいは二硫化物交換のような反応が含まれる。物理的な破壊は、タンパク質の全面的な構造の変化に関係し、変性(すなわち、三次構造のアンフォールディング)などである。
【0005】
タンパク質は水中で破壊されやすく、ヒト成長ホルモン剤は崩壊率を遅くするために開発されてきた(例えば、特許文献2の背景技術)。しかしながら、それらは再合成における失敗に影響を受け、投薬の精度が下がり、臨床的な使用が難しく、これにより、患者の承諾が少なくいものである。
【0006】
液体のhGH剤は、上記の制限を解決するとされている。しかしながら、液剤状態でのhGHの長期貯蔵は、hGHの界面部の相互作用による物理的な崩壊を起こしやすい。この境界部は、空気/水やガラス/水のようなものであり、hGHタンパク質の変性を起こしやすいものである。変性において、疎水性の表面は露出され、相互作用および新たなタンパク質のアンフォールディングを促進する可能性がある。これは、タンパク質集合体の生成原因になるものであり、集合体は表面から脱着されて、沈殿をするだろう。これらの相互作用が、hGH剤の長期的な貯蔵中に、凝集や、ゆっくりした取り扱いの間に起こりうる。
【0007】
特許文献2に記述されるように、非イオン界面活性剤はタンパク質の凝集損失を防ぐためにhGH剤に加えることができ、長期的な貯蔵の間に安定した液体の薬剤を得るものである。一般的に、非イオンの界面活性剤で、凝集を防ぎ、液体蛋白剤を安定化させるメカニズムが2つある。それは、界面活性剤のたんぱく質への吸着と、界面活性剤のタンパク質に匹敵する界面への吸着である。第1のメカニズムによってタンパク質を安定させる非イオンの界面活性剤の1例は、トゥイーンであり、これは自然のhGH分子の表面あるいはhGHのフォールディング中間体に結合できるものである。いずれの場合も、界面活性剤の結合はタンパク質化学量論に対する特定界面活性剤により、薬剤に要求される界面活性剤の濃度はタンパク質濃度による。第2のメカニズムによってタンパク質を安定させる非イオンの界面活性剤は、タンパク質界面活性剤化学量論に依存しない。しかし、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)より上の濃度で凝集を防ぐものである。このような非イオンの界面活性剤は、空気/液体の界面へ吸着し、タンパク質と界面への吸着を競うものである。これが、タンパク質吸着によるタンパク質の変性を防ぐ。
【0008】
PEGは、特許文献2で定義されている非イオンの界面活性剤ではない。「ポリソルベート20、80などのポリソルベート、およびポリオキシマー184、188、プルロニック(登録商標)や、多価アルコールやその他のポリマーなどのポリオキシマーを含んでいる。安定した水性剤を提供するのに有効な量が使用される。」
特許文献2の記述する界面活性剤は、水可溶性の前部と疎水性の後部を備えた両親媒性の分子、あるいは疎水性・親水性のサブユニットから構成された重合体である。このモデルに適合する界面活性剤の典型的な例はトゥイーンであり、これにおいて、PEGは親水性の前部を成形し、C11、C17のアルキル基の鎖は疎水性の後部を形成している。PEGは、水可溶の前部および疎水性の後部を持たないという点で両親媒性の分子ではない。
PEGはポロクサマーではなく、その両方の端末の水酸基にポリオキシエチル化されるPPG(ポリプロピレングリコール)のコアから成り、対称的なブロック共重合体を示す。一般的には、(PEG)x−(PPG)y―(PEG)xに一致するものである。
【0009】
PEGはエチレンオキシド単量体のホモポリマーであり、したがってPEGは疎水性・親水性のサブユニットから構成された重合体ではない。さらに、PEGは、多価アルコール(非還元砂糖、糖アルコール、砂糖酸、ラクトース、ペンタエリトリトール、水溶性のdextransおよびFicollとして典型的に定義されるもの)ではない。したがって、PEGは、非イオンの界面活性剤として前述の特許において、記述もしくは、考慮されたものではない。
【0010】
[PEGは非イオンの界面活性剤として機能しない]
従来の研究は、界面活性剤トゥイーンNB等と同じモル比率で使用された時、PEGが攪拌による凝集の防止をしないことを実証した(非特許文献1など)。すなわち、非イオンの界面活性剤トゥイーンがタンパク質を保護するのと同じ方法において、PEGはタンパク質と結合することにより、凝集からPEGがタンパク質を保護していない。
【0011】
PEGは水の表面張力を低下させると知られているが、特許に定義されたほどの界面活性剤と考えられていない。タンパク質のような多くの剤が、水の表面張力を低下させるが、界面活性剤と考えられていない。PEGは、可溶化剤(すなわち、可溶特性の低い物質の可溶性を増加させる剤)に分類されている。また、薬学の補型剤のハンドブックは、PEGの機能的なカテゴリーは軟膏ベースであり、可塑剤、溶剤、坐薬基剤およびタブレットおよびカプセル潤滑剤としている(非特許文献2)。
【0012】
優先的排除は、タンパク質溶液および共同溶剤(すなわち、溶液の重要な部分を含むすべての成分)が進んで相互作用しない現象であり、共同溶剤がタンパク質の表面から優先的に除外される。結果、タンパク質のまわりに水和による球体ができる。PEGは優先的な排除の共同溶剤として知られているが、PEGとタンパク質の相互作用は、タンパク質表面の化学の性質に依存する。したがって、所定のタンパク質に対するPEGの影響を予言するのは難しい。いくつかのタンパク質について、PEGはタンパク質と相互に作用し、溶解温度を低下させる(非特許文献3)。タンパク質のTmを低下させることは「不安定化」効果であると思われる。例えば、4℃の1%のPEG−8000水溶液での貯蔵では、LDHの活性の減少は、8日で10%であった(非特許文献4)。PEGなしで、LDHの活性は、それ期間の間30%減少した。予想としては、PEGは長期的な貯蔵の間にLDHに単に最小の保護を与える。比べて、特許文献2は、非イオンの界面活性剤の存在が18か月の貯蔵の後にhGHの凝集が1%より少ないことを示している。
【0013】
主に、優先的排除メカニズムにより、PEGはタンパク質の有力な沈降反応剤として有名であり、その強く急速な特性のために放射線結晶学の分野の中で広範囲に使用されている。タンパク質の溶解度は95%まで減少することができ、5から35%の濃度のPEG4000の存在により、さらに減少する(非特許文献5)。従って、タンパク質溶液において共同溶解力のある優先の排除としてのPEGの使用は、典型的にタンパク質沈降反応に関係している。
【0014】
ポリエチレングリコール(PEG)を含む成長ホルモン(GH)剤は従来知られている。しかし、PEGを含むGH剤は、すべて、射出の後にゲルを成形し、GHのゆっくりした放出となるような高濃度のPEGを示している。例えば、特許文献3は、皮下あるいは筋肉注射に適した、成分放出を抑制し、長く作用するGHを含み、その約80%がポリエチレングリコール400(その濃度において、hGHは沈殿している)であるGH剤を示している。
【0015】
特許文献4は、放出持続性のGH剤を示しており、それは、グリセリル基のトリアセテートあるいはトリアセチンに溶かされたPEG300からPEG600のような非水性のポリエチレングリコール成分を含んだものである。
【0016】
そのような持続性の放出剤は典型的に粘着性であり、注射用の大きな径の針を必要とする。人間用のhGH剤は、患者への不快を最小限にするために、理想的には小さな針で行われるべきである。牛や豚の成長率を増加させるための持続性の放出剤は、典型的に、獣医用もしくは農業用として使用されが、人間での使用はより調整管理が必要となる。
【0017】
特許文献5において、PEGは、またGHの腸管外の持続した放出用ペレットかタブレット剤のための結合剤として使用される。ここにおいて、PEGがGHを安定させることは示されていない。実際に、特許文献5は、安定剤が、砂糖、アミノ酸、アミノ酸の重合体およびコリン塩類のような、とても極性大きい分子であると示している。
【特許文献1】米国特許第4,342,832号明細書
【特許文献2】米国特許第5,763,394号明細書
【特許文献3】米国特許第4,041,155号明細書
【特許文献4】米国特許第6,011,011号明細書
【特許文献5】米国特許第4,917,685号明細書
【非特許文献1】J Pharm Sci. 1998 Dec; 87 (12): 1554−9
【非特許文献2】Pharmaceutical Press Edition, 1994, p. 355
【非特許文献3】Lee, LL−Y and Lee, JC, Biochemistry, 1987 (26): 7813−9
【非特許文献4】Mi, Y, et al, PDA J Pharm 2002 May−Jun ; 56 (3): 115−23
【非特許文献5】Atha D. H. and Ingham K. C. , J Biol Chem. 1981 Dec 10 ; 256 (23) : 12108−17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
物理的・化学的劣化程度において、トゥイーンまたはPoleaxesで安定した水性のhGH剤に相当するものであるPEGによって、安定した水性のhGH薬剤を提供することが本発明の目的である。
【0019】
本発明の目的は、長期の貯蔵において安定であり、特許文献2に示された非イオン界面活性剤を含まない、水性のhGH剤を提供するものである。そして、液体のhGH剤を提供することが本発明のさらなる目的であり、hGHは共同溶剤の優先的排除によって安定化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の1つの様相は水性ヒト成長ホルモン剤であり、これは、ヒト成長ホルモン、バッファ、強壮剤、また有効な量のポリエチレングリコール、さらに、追加的に殺菌された液体で用いることができる抗菌性剤を含む。
【0021】
発明の更なるの様相は、ヒト成長ホルモンとポリエチレングリコールを5mg/mLから50mg/mLの範囲の中で混合して含む水性剤で、貯蔵中におけるヒト成長ホルモンの物理的・化学的の劣化を抑制する方法である。
【0022】
発明の第一の局面によれば、
a)1〜20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
b)pH5.5からpH7とするバッファ系と、
c)強壮剤と、
d)有効な量のポリエチレングリコールと、
を無菌の薬学的に許容される液体の中に有するヒト成長ホルモン剤を提供するものである。
【0023】
発明の第二の局面によれば、ヒト成長ホルモンの使用方法であって、
A)ヒト成長ホルモンを水性剤に調整するステップであって、
a)該水性剤が1から20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
b)pH5.5から7とするバッファ系と、
c)5mg/mlから50mg/mlのポリエチレングリコールと、
d)強壮剤と、
を薬学的に許容され、注射可能な無菌の水性のビークル内に、含むものと、
B)前述の製剤を水性液として6から18ヶ月貯蔵して、水性の液体として貯蔵された薬剤を構成するステップと、
C)ヒト成長ホルモン治療を必要とする患者に前述の貯蔵された製剤を直接注入するステップと、を有するヒト成長ホルモンの使用方法を提供するものである。
【0024】
発明の第三の局面によれば、ヒト成長ホルモンの使用方法であって、
A)ヒト成長ホルモンを水性剤に調整するステップであって、
該水性剤が
a)1から20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
b)pH5.5から7とするバッファー・システムと、
c)5から50mg/mlのポリエチレングリコールと、
d)20から100mg/mlの強壮剤と、
e)抗菌剤と、
を薬学的に許容され、注射可能な殺菌した水性のビークル内に、含むものと、
B)前述の製剤を水性液として、2℃から8℃において6から18ヶ月間貯蔵して、
水性液体として貯蔵された薬剤を構成するステップと、
C)ヒト成長ホルモン治療を必要とする患者に前述の貯蔵された剤を直接注入するステップと、を有するヒト成長ホルモンの使用方法を提供する。
【0025】
本発明の第四の局面によれば、ヒト成長ホルモンの貯蔵安定性のある水性剤を作る方法であって、
薬学的に許容されたビークルが、
a)1から20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
b)pH5.5から7に調整するバッファと、
c)5から50mg/mlのポリエチレングリコールと、
d)20から100mg/mlの強壮剤と、
を含み、前記水性で薬学的に許容されるビークルが、2℃から8℃で、6から18ヶ月貯蔵可能であることを特徴とする作成方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
PEGによって、安定した水性のhGH薬剤を提供でき、長期の貯蔵において安定であり、水性のhGH剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
もし他の方法で定義されなかったならば、ここに使用される技術的・科学的な用語はすべて、発明が属する技術における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を持っている。本発明の実施または試験で記述されたものに類似もしくは同様のいかなる方法および材料も使用することができ、好ましい方法および材料は以下に記述される。この下に言及された発表はすべて、参照として組込まれる。
【0028】
A. 定義
用語「ヒト成長ホルモン」あるいは「hGH」は、自然ソース抽出と精製を含む方法によって、および組み換えの細胞培養システムによって生産されたヒト成長ホルモンを示す。そのシーケンスと特性は、例えば、PearlmanおよびBewly(遺伝子操作による生物製造Biotechnol。1993; 5: 1−58)によって、述べられている。用語は同様に生物学上活発なヒト成長ホルモン等価物をカバーし、たとえば、全体のシーケンスにおいて、1以上のアミノ酸が異なるものである。更に、この適用において使用される用語は、hGH、あるいはpost−translationalな置き換え、削除および挿入アミノ酸変形をカバーするように意図されている。注釈の2種は、191のアミノ酸自生種(somatropin)、およびN−端末のメチオニン(met)種(somatrem)が一般に組み換えで得られた192のアミノ酸である。
【0029】
用語「長期安定」は、液体hGH剤に関連して、液体hGH剤が2℃から8℃で格納される場合、凝集が3から4%であり、hGHのアミド分解が15%未満である剤のことである。1つの実施例では、液体hGH剤は少なくとも24か月の間、長期安定であり、また、別の具体例では、液体hGH剤は6〜18月の間、長期安定である。また、別の具体例では、そのような剤は少なくとも12か月安定である。技術に熟練しているものにとって明白であるように、hGHの長期安定性は、上記の示された時間の間、薬剤を保温することにより、直接的に決定され、あるいは、長期安定はここに記述された方法によって予見されるものかもしれない。
【0030】
用語「PEG」あるいは「ポリエチレングリコール」は線状重合体であるH(OCHCHOHの通式を備えた賦形剤を示すために使用される。添字「n」は、エチレンオキシド・ユニットの数を定義し、それはその分子量(MW)を決め、この実例の中に一定範囲のMWでありうる。ポリエチレングリコールは「分岐したポリエチレングリコール」例えば、3−分岐、4−分岐なども可能である。PEGは、前述された合成手段によって生産することができる
(Zalipsky and Harris, in Poly [ethlyene glycol] Chemistry and Biological Applications, 1997, p. 8−9, new PEG architectures)。
【0031】
用語hGHの「薬学的に有効な量」は、投与摂生法における治療効力を提供する量に関係する。成分は、少なくとも0.1、上は約20mg/mlのhGHの量を含んで調製され、好ましくは、約1から10mg/ml、より好ましくは約1から約5mg/mlまでである。下垂体機能低下の小人症に苦しむ患者への投与でのこれらの成分の使用では、例えば、これらの構成物は、約1mg/mlから約10mg/mlまでhGHを含んでおり、予定された治療の現在考えられている投薬摂生法に対応する。1つの実施例の中で、5つのhGH濃縮が選択されており、それらの濃度は、0.03〜0.10mgのhGH/kg体重(BW)/日の投薬および45kgのBWに基づいた、0.27mLから0.90mLの注射量が可能なものである。技術に熟練している人々にとって明白であるように、患者に与えられたhGHの用量は、その条件と投薬摂生法の医学的に容認された投薬量によって決定される。
【0032】
一般的な方法
米国特許第5,096,885号明細書に記述されるようなhGH剤と異なり、本発明は、グリシンあるいは、典型的にlyoprotectantか凍結防止剤に使用される他のアミノ酸を必要としない。
【0033】
本発明は、トゥイーンあるいは他の非イオン界面活性剤(すなわち、親水性の前部と疎水性の後部で構成されるもの)用の必要物がない。さらに、本発明は、ポロクサマー188あるいは他のエチレン/プロピレンブロック共同重合体のための必要物がない。
【0034】
1つの具体例において長期安定したhGH剤にふさわしいpH範囲は、5.5〜7であり、最も好ましくはpH6.0である。pH7以上の液体hGH剤は、アミド分解により増加したタンパク質劣化する。組み換えhGHの等電点がpH5.1に近いので、pH5.1の、あるいはその付近の液体のhGH剤は凝集によりhGHの損失を起こす。等電点よりかなり少ないpHでは、液体のhGH剤は凝集の傾向が無い。別の具体例では、hGH剤は4.5未満のpHであると思われ、より好ましくは、hGH剤が4から4.5のpH範囲であると思われる。
【0035】
本発明の剤にふさわしいバッファは、薬学的に許容され、適切なpH範囲において個々で定義される適切なpH範囲において、バッファされたpHを提供するものである。
pH5.5〜7を得るために、適切なバッファが含められるが、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、琥珀酸塩、グリシン塩、トリスあるいはヒスチジン・バッファーに制限されるものではない。濃度は、2〜50mMである。
【0036】
有効な量のPEGは、長期安定した液体hGH剤とし、これにより、シヤーリングと表面張力がタンパク質の深刻な変性なしに明らかになる。好ましい実施例では、加えられるPEG分子のサイズは、1450−10000MWから400−20000MWであり、より好ましくは3350−8000MWからである。PEGの濃度は、5mg/mLから100まで、好ましくは5mg/mLから20mg/mLまで、さらにより好ましくは10mg/mLから20mg/mLになる。
有効な量に必要なPEGの濃度は、PEGの分子量サイズに反比例する。特に、より大きな分子量のPEG分子はより低い濃度となる。
【0037】
抗菌性剤は従来の製剤に含まれるものでよい。抗菌性剤は、含まれると、微生物の成長を妨害し、製剤が複数回使用できる製品となる。許容される抗菌性剤は0.2−0.6%(W/V)のフェノール、0.7−1%(W/V)のベンゾイルアルコール、m−クレゾール、メチル−、プロピル−、ブチルパラベン、パラベンゼンの組合せである。
【0038】
強壮剤は薬剤に加えられるものであり、糖アルコールか砂糖を含んでいる。これらは、限定されるものではないが、例えば、ブドウ糖、マンニトール、グリセリン、ソルビトールかキシリトール、ガラクトース、アラビノースあるいはラクトースである。そして、ほぼ等浸透圧になるのに必要な濃度で加えられ、それは、約10〜100mg/mlである。本発明は、等浸透圧を得るために、NaClまたはKClのような塩類を使用しない。
【0039】
本発明の別の実施例は水性のヒト成長ホルモン剤であり、ヒト成長ホルモン、バッファ、強壮剤、有効量のポリエチレングリコール、キレート剤、および追加的に殺菌のための抗菌性剤をふくむものです。キレート化剤はさらにヒト成長ホルモンの潜在的な劣化を抑制するために加えられる。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)のようなキレート化剤は0.01−0.1%の濃度である。下に示されるように、従来技術で既知の他のキレート化剤も使用できる。
【0040】
追加の剤は、薬剤に加えられる。そして、それらは、例えばキレート化剤を含んでもよく、好ましくは、ナトリウムEDTA、カルシウム二ナトリウムEDTA、二ナトリウムEDTA、アスパラギン酸か、クエン酸、およびシステイン、メチオニンおよびその他同種のもののようなアンチ酸化体である。
【0041】
実験例
A. 検定方法
280濃度:
処理におけるhGHの濃度は、薬剤製造、あるいは薬剤となっていないサンプルのhGH濃度は、1cmのセルで、遠心分離された試料の280nmを読み0.76cm(E1cm 1mg/ml,280nm=0.76)の消滅係数を使用することにより決定された。典型的なブランクの溶液は10mMリン酸ナトリウム塩、pH7.4であった。
【0042】
SECの濃度:
薬剤となった試料においてhGHの濃度は、1−2mg/mLの範囲においてピーク面積対濃度のランニング標準プロットによって決定した。ピーク面積は、室温で、0.9mL/分の流れでSuperdex75 HR10/30カラムでのhGH基準をランニングすることにより決定され、280nmでモニターすることにより溶出を見た。溶出する溶剤は50mMリン酸ナトリウム、100mM硫酸ナトリウム、であり、pH7.3であった。サンプルロードは全量200μgで、容量200μlのタンパク質であった。
【0043】
SECの純度:
薬剤となった試料において、二量体または集合体の割合は、SECの濃度で記述されたようなクロマトグラフィーを行なうことにより決定された。二量体または集合体の割合は、ピーク面積の合計で、それぞれのピーク面積を割ることにより決定された。
【0044】
AEX: 薬剤においてアミド分解されたhGHの割合は全量200μg(容量100μl)のタンパク質のロードランニングにより決定され、Mono−Q HR5/5陰イオン交換カラムで、流速は1.5mL/分であり、室温で行われた。溶出する溶剤は次のとおりであった:バッファA=20 mMトリス、pH 8.0およびバッファB=20mMトリス、300NaCl pH8.0。アミド分解されたものは、15mM NaCl/minute勾配の使用により、本来のhGHから分けられた、すなわち、0から60%のBで12分間である。280nmで溶離剤が認識された。賦形剤に含まれる薬剤のために、例えば、280で吸収があるフェノールのために、カラムは20mMトリスで洗浄され、pH 8.0/30%メタノールで洗浄し、賦形剤を除いた。
【0045】
RpHPLC: hGHの割合は混入物に関係する。
薬剤の中のアミド分解、酸化は、40μgのタンパク質(体積20μl)のランニングにより決定された。ランニングは、ジュピターC4ハイpH RPカラム(5μ 300Å、4.6x250mm)で、温度45℃流速0.5 mL/分で行った。溶離剤Aは、50mMトリス、pH8.5であり、溶離剤Bは50%1−プロパーノール/50mMトリス、pH8.5、そして、試料はイソクラクティック方法で溶出され、ここで溶出する混合物は溶離剤Aにおける54%の溶離剤Bである。溶出は220nmで見られている。
混入物の割合は次の方程式から決定される:
%混入物=(トータルピーク面積−本来のピーク面積)/トータルピーク面積×100)
【0046】
LC/MS: トランケーションの割合を評価した。全てのタンパク質をMichrom PLRP−Sカラムで、100−200pmolロードした。流速は0.2mL/minで、温度は35℃であった。
カラム溶離剤はエレクトロスプレーイオン化プローブに向けられ、マススペクトルから、分子の種類と分子の質量が決定される。割合トランケーションは次の方程式から決定される:
%トランケーション=(トランケーション)/トータルのhGH種のピーク面積×100
【0047】
抗菌性試験:
発表されたガイドラインに沿って、簡略にした抗菌性試験を行った。アメリカ薬局USPで、長期的な安定性実験が行われた。試験された有機体は大腸菌のみであった。
【0048】
製剤処理
hGHの物理的な安定性に関係する研究のために、溶液はhGHあるいはバルク液体hGHのいずれかから調製された。hGHは再構成され、バッファが1mM リン酸ナトリウム、pH6.0に交換されたものであり、バルク液体hGHは薬剤処理に必要な適当な濃度に調整されたものである。この溶液の濃度はA280で読み取ることにより決定された。
【0049】
hGHの長期安定性(物理的・化学的安定性が調査された)に関係する研究のために、薬剤は、ポロクサマー188あるいはPEGのいずれかの存在下で、pH6.0のバルクhGH溶液を濃縮され、示されたように賦形剤を加えて、調整された。処理された保存溶液は殺菌ろ過され、1 mLがグラス・バイアルに分配され、密封された。
【0050】
一般に、
主題発明の薬剤は、安定種が処理により減少しない程度で、そして有効で安全な薬学的管理にふさわしい量において、他の成分を含んでもよい。例えば、技術に熟練している人々によく知られている他の薬学的に許容される賦形剤が、主成分の一部を構成してもよい。これらとしては、例えば、様々な充填剤、追加バッファ剤、キレート化剤、酸化防止剤、共同溶剤およびその他同種のものを含むものである。
【実施例1】
【0051】
物理的な安定性
撹拌による凝集からタンパク質を保護する賦形剤は、一般的に、そのようなタンパク質剤の長期貯蔵による凝集を防ぐこと、水性タンパク質薬を開発する技術で一般に知られている。hGHの撹拌による凝集に対するPEGの影響の測定するために、hGHは再構成され、バッファは1mMリン酸ナトリウム、pH6.0に交換された。最終的な濃度が2.0、5.0、10.0および20mg/mLとなるように、最終のhGH濃度が全量1.5mlにおいて0.5mg/mLとなるように、PEG−3400を加えて、溶液が用意された。ネガティブ対照溶液(PEGまたはポロクサマー188を含んでいないもの)および、ポジティブ対照液(1mg/mLのポロクサマー188を含んでいるもの)は、参照として試料セットに含めたものである。各溶液の三つの試料は、5分間グラス試験管の中で活発に渦動され、そして、その後、30分間室温で保温された。試料からhGHの集合体を取り除くために、遠心分離された。次に、遠心分離の後、三つの試料のhGH減量のパーセントをA280で吸光度を読むことにより測定した。
【0052】
表1は、渦動調査 PEG−3400の1mMリン酸ナトリウム、pH6.0、および様々な濃度の中で0.5mg/mLのhGHを使用したものである。
【表1】

試料
280(3のavg)による%hGH減量
ネガティブ参照液(ポロクサマー188あるいはPEG)
ポジティブ参照液(1mg/mLのポロクサマー188)
【0053】
表1に要約された結果は、ポロクサマー188あるいはPEGのない水性hGH試料は、hGHの36%の損失であったことを示す。対照的に、ポロクサマー188がある状態では、hGHの3%の損失だけだった。したがって、ポロクサマー188は、hGHの凝集を12倍減少させる。
PEGを含む溶液の攪拌は、hGHの損失において、0〜2倍の減少となった。すなわち、34%から16%となった。上記の結果から、PEGが撹拌による凝集に対するhGHに最小限の保護(ポロクサマー188の6倍はより少ない保護)を示すと思われる。PEGは、hGHの液体製剤に長期的な安定性をもたらさない。従来技術において記載したように、従来の研究は、PEGがあるタンパク質を不安定にすることを明示していた。上記の結果から、PEGがポロクサマーと比較して、hGHに、より少ない安定化を与えるように見える。
【0054】
さらなる撹拌による凝集実験は、様々な分子量(MW)サイズのPEG分子で行なわれた。凍結乾燥されたhGHは、1mMリン酸ナトリウム、pH6.0か、10.0あるいは20mg/mLと異なるMWのPEGのバッファに交換された。MWは、400,600、1000、1450、3400、6000、8000、12000あるいは20000であり、hGHの最終濃度は0.5mg/mL、全量1.25mlであった。ネガティブ対照液およびポジティブ対照液は参照として試料セットに含まれるものである。ここで、負の対照液はPEGまたはポロクサマー188を含まないものであり、ポジティブ対照液は2mg/mLのポロクサマー188を含んだものである。前述したように、溶液は、5分間グラス試験管の中で活発に渦動され、次に、30分間室温で保温された。そして、試料のhGH損失のパーセントは、遠心分離とA280により、測定された。
【0055】
【表2】

【0056】
表2の渦動調査は0.5mg/mLのhGHを使用しており、1mMリン酸ナトリウム、pH6.0、と、MWの異なる10、20mg/mLのPEGである。
【0057】
テーブル2の中で、示された結果は、ポロクサマー188あるいはPEGのない試料において、hGHの58%が失われることを示した。ポロクサマー188の存在はhGHの損失を7%にとどめている。低分子量PEG(PEG−400あるいはPEG−600)の添加は、hGHの損失が34%となった。PEGの保護効果は、PEG−3400より大きい分子において、損失が約16%と安定状態であるように思われる。10mg/mLあるいは20mg/mLのPEG濃度用においても、保護効果に違いが見られない。しかしながら、テーブル1の中で示された前述の結果が示されたように、PEGは、撹拌による凝集に対してポロクサマーとおなじレベルの保護を示さない。ポロクサマー 188は凝集において、8倍効果を示し、PEGは3倍の効果を示すだけである。
【0058】
撹拌による凝集実験の結果は、PEGは長期安定性にhGHに最小限の保護を与えると
要約できる。特に、PEGは、ポロクサマー188と比較して、3〜6倍少ない凝集に対する保護を与えることを示している。
【0059】
前の実験の結果にもかかわらず、薬剤は、5mg/mLのhGH、3.2mg/mLのフェノール、7.5mg/mLのNaCL、10mg/mLのPEG3400および10mMのリン酸ナトリウムであって、pH6に調製されている。しかしながら、PEGが共存するそのような製剤においても、沈殿は生じる(データは示していない)。
【0060】
しかしながら、驚くべき、予期しない結果が発見された。それは、1mg/ml以上の濃度でhGHを含んでいる薬剤において、そして、バッファおよび砂糖または糖アルコールの強壮剤がある状態において、PEG剤は撹拌による凝集より、hGHを保護し、幾つかのケースにおいては、ポロクサマー188薬剤よりも良かった。典型的な例を下に示す。薬剤は、3つの調整され、それらは、1mLの最終ボリュームにおいて、5mg/mLのhGH、10mMリン酸ナトリウム、pH6.0、ブドウ糖(強壮剤)、および3.2mg/mlのフェノール(撹拌からの保護のために必要とされるものではなく抗生物質である)を含むものである。以上にしめした薬剤は、5分間グラス試験管の中で活発に渦動され、次に、30分間室温で保温された。その後、遠心分離に続いき、試料におけるhGH損失パーセントをSEC濃度検定によって測定した。二量体および集合の構造の割合の増加もSEC純度検定で測定した。
【0061】
【表3】

【0062】
表3は、渦動調査であり、10mMリン酸ナトリウム、pH6.0、10mg/mL PEG−3400あるいはPEG−8000(あるいは2mg/mlのポロクサマー188)、43mg/mlのブドウ糖および3.2mg/mlのフェノールの中で5mg/mlのhGHを使用した。
【0063】
ポロクサマー188あるいはPEGのないネガティブ参照剤は、7.3%のhGH、二量体および集合体の著しい増加を示した。すなわち、それぞれ30%および16%である。ポロクサマー188を含む薬剤は、ネガティブ参照剤とくらべ、1.3%のhGH、二量体および集合体の損失となった。驚いたことに、PEGを含んでいる薬剤については、hGHに損失は本質的になかった。PEG−3400製剤は、ポロクサマー188製剤で観察されたのよりも少ない二量体および集合体となった。さらに驚くことには、PEG−8000製剤には、二量体の構造見られず、集合体量が明らかに減少した。集合体の明らかな減少は、開始溶液中のhGH集合体の溶解によると思われる。これらの結果は、バッファと強壮剤の存在において、1mg/ml以上の濃度のPEGを加えたhGH剤は安定であり、また恐らくポロクサマー188薬剤より撹拌による凝集に対して安定であることを実証するものである。
【実施例2】
【0064】
長期安定性(化学的・物理的な安定性の検査を含む)
hGHの長期安定性をPEGまたはポロクサマー188を含んでいる薬剤と比較した。PEG製剤は次のものを含んでいた:5mg/mLのhGH、10のmMリン酸ナトリウム、pH6.0、47mg/mlのマンニトール、10mg/mLのPEG−3400および3.2mg/mLのフェノール。対照剤(ポロクサマー188製剤)は次のものを含んでいた:5mg/mLのhGH、10のmMリン酸ナトリウム、pH6.0、7.5mg/mLのNaCL、2mg/mLのポロクサマー188と3.2mg/mLフェノール。薬剤は、8℃か2℃の推奨される一方の貯蔵温度で、あるいは25℃の高い貯蔵温度で、保温された。試料は様々な時間ポイントで移され、hGHは上記のような物理的・化学的の安定性が分析された。SECによって、同様に、RP−HPLCとAEX(化学の劣化を見るため)を用い、hGHの損失、二量体と集合体の増加割合を求めた。
【0065】
【表4】

【0066】
表4は、ポロクサマー188対PEG製剤に関する安定性調査に関する。
PEG製剤:5mg/mLのhGH、3.2mg/mlのフェノール、47mg/mLのマンニトール、1.0mg/mlのPEG−3400、10mMリン酸ナトリウムpH6.0。
ポロクサマー188製剤:5mg/mLのhGH、3.2mg/mLのフェノール、7.5mg/mLのNACl、2mg/mLのポロクサマー188、10mMリン酸ナトリウムpH 6.0
インキュベーション:2−8℃
【0067】
上記のテーブルにおいて得られた結果から、我々は、長期貯蔵によるhGH凝集の率がPEGとポロクサマー188とがhGH剤において匹敵するであろうと予想した。驚くことに、貯蔵安定性試験は、ポロクサマー188製剤と比較して、PEG製剤においてhGH剤の化学劣化率の減少を示した。予想通りに、8℃に2で格納された試料で1か月の間に観察された変化は小さかった。変化が小さいので、検出のより低いレベルでは検定が不正確になる。予想通りに、物理的・化学的劣化は、25℃で格納された試料において、加速された。hGHの物理的な劣化に関して、貯蔵の1か月後に、ポロクサマー188製剤と比較して、33%少ないhGH二量体および集合体がPEG製剤で検知された。同様に、ポロクサマー188薬剤と比較して、33%低いレベルの化学的に劣化したhGH(アミド分解されたhGHおよびRP混入物)は、PEG製剤で検知された。上記の結果は、製剤に、PEG、バッファ、強壮剤および1mg/ml以上のhGH濃度を有することにより、長期的な貯蔵における物理的・化学的な劣化からhGHを保護することを実証することとなった。推奨された貯蔵条件で安定性を示すことから、12−24か月の間2〜8℃でインキュベーションが必要となる。このように、高温で行われた、加速された安定性調査は、通常の貯蔵条件の製品の安定性を示すのに用いることができる(Chang B. S. and Hershenson S, Pharm Biotechnol. 2002; 13: 1−25)。
【0068】
1か月のデータからの液体製剤の長期安定性の予見
hGH分子の化学・物理的な劣化に関して、PEG製剤によるhGH剤の長期安定性は、25℃で加速された安定性調査から予見された。予測の正確さを増加させるために、ポロクサマー188入りのhGH剤に関する24か月の安定性調査からのデータは、参照として使用した(「24か月の調査」)。そのような24か月の安定性調査は次の製剤に基づく:5.0mg/mLのhGH、10のmMリン酸ナトリウム、pH6.0、2.0mg/mLのポロクサマー188と2.5mg/mLフェノール、安定性データは5℃と25℃で集められた。この安定性調査から得られた情報は活性化エネルギー(Ea)を計算するために使用された。
【0069】
アミド分解のレベルに関しての、上記のPEG製剤入りのhGH剤と、ポロクサマー188製剤入りとを、比較するために、速度定数は、アレニウス式を使用して、5℃に続いて、25℃で速度定数が各剤について測定された。続いて、その後、5℃の速度定数のデータは、6、12、18および24か月について、hGHのアミド分解形態の割合を測定するために使用された。次の表は、得られた情報を要約したものである。
【0070】
【表5】

【0071】
表5は、hGHのアミド分解形態の予見された割合に関する。
(1)24か月のデータから決定されたもの。
(2)24か月の実際のアミド分解のパーセント。
(3)アレニウス式を使用して計算されたもの。
(4)1か月のデータから計算したもの。
(5)アレニウス式から予見したもの。
(6)推定
【0072】
1か月のデータから測定された25℃のPEGおよびポロクサマー188の各々の速度定数と、
24か月の25°Cにおける調査データはおなじオーダー上にある、これは、24か月の5℃での調査で測定された速度定数は、PEGおよびポロクサマー188薬剤における6、12、18および24か月の時間ポイントでのアミド分解の割合に妥当は予測を与えることを示唆する。表から、PEG製剤は、ポロクサマー188製剤よりも、アミド分解からのよりよく保護することが、見出せる。
【0073】
PEG製剤を、凝集のレベルに関しての参照ポロクサマー188製剤と比較すると、速度定数は、アレニウス式を使用して、5℃での速度定数に続いて25℃で各製剤について測定され(Kendrick et al、1998 の中で述べられた原理に基づいた)。続いて、5℃の率データは24か月後のhGHの凝集の割合を決定するために使用された。次のテーブルは、得られた情報を要約したものである。
【0074】
【表6】

【0075】
表6は、24か月のhGHの凝集の予見された割合に関する。
(1)24か月のデータから決定されたもの。
(2)24か月の実際のアミド分解のパーセント。
(3)アレニウス式を使用して計算されたもの。
(4)1か月のデータから計算したもの。
(5)アレニウス式から予見したもの。
(6)推定
【0076】
25℃のPEGおよびポロクサマー188薬剤の各々の速度定数は、1か月測定されたデータは補助的なポロクサマー188の25℃のデータと同じオーダー上にあり、このことは、5℃で測定された速度定数は、PEGおよびポロクサマー188薬剤の24か月の時間でのアミド分解割合の妥当な予見を与えるということが考えられる。PEG製剤は、ポロクサマー188製剤と同じオーダーで、hGHの凝集を防ぎ、ポロクサマー製剤に匹敵する。
【0077】
保温された試料において見られた物理的・化学的な劣化率に基づいて、少なくとも6ヶ月から18ヶ月におけるPEG製剤入りのhGH剤の長期貯蔵安定性を示すために、推定がなされた。凝集率およびアミド分解率の推定は、PEG製剤入りのhGHは3−4%未満の凝集を示し、15%未満アミド分解を示す。このような割合は妥当であり、必要に応じて人間の患者に投与されるhGH薬剤を得ることができる。
【実施例3】
【0078】
保存効果
ポロクサマー188配合物のPEGの抗菌効果を試験するために、USPの短縮手法を用いた。すなわち、試験は大腸菌のみで行った。簡潔に、無菌条件で各配合物の6つのバイアルを組み合わせ、1つの6mLの部分標本とした。それから細菌の検定された接種剤を、最終濃度を1×10から1×10cfu/mLとして製剤に加え、7日、14日および1ヶ月の期間にわたって37℃に保温した。それぞれの期間の後で、試料を採取しcfu数を決定する。カテゴリー1Aの製品に要求される殺菌は7日で1log以上の減少、14日で3log以上の減少、14日から28日では増加が見られないことである。そのため、配合物の抗微生物効果が達成され、PEG製剤の大腸菌殺菌はポロクサマー製剤と同等となる。
【0079】
【表7】

【0080】
表7はPEGとポロクサマー188配合物の抗菌効果に関する。
【実施例4】
【0081】
キレート剤
発明者は、水性ヒト生長ホルモン剤へのキレート剤の添加が、ヒト生長ホルモンの劣化をさらに抑制するということをも発見した。前記の濃度でhGH、マンニトール、PEG−3400、リン酸ナトリウムおよびフェノールを含有する配合物を様々な濃度のEDTAと混合した。安定性促進の研究において、製剤を37℃で保温した。2週間、1ヶ月および2ヶ月の時点で、逆相HPLC(RP)を含む様々な方法で試料を分析し、劣化/欠損hGH剤のパーセント増加を計量した。表8に詳述されるように、分析を行った全ての時点において、EDTA濃度の増加によってhGH劣化の割合が低下している。
【0082】
【表8】

【0083】
表8は、hGH安定性表示指標におけるEDTAの効果に関する。
【0084】
上記の表5および6に要約される25℃で加速された安定性の研究とは異なり、この実施例6で述べる37℃での保温は、2から8℃での保管の安定性に関係が少ない。37℃での保温は25℃での保温よりもはるかに苛酷であり、単にキレート剤がhGHの劣化を抑制するかの試験に過ぎない。
【0085】
本発明の別実施例におけるEDTAによるhGH剤の調製において、凝集を避けるために薬剤の最終pHへの注意が必要となる。EDTAの添加によって薬剤のpHは低下する。本発明のEDTAによるhGH剤では、pH6.0以下のpHレベルにおいて凝集される。このような凝集を抑制するために、hGHの配合に用いるリン酸NaのpHを6.7まで上昇させ、これによって最終hGH剤をpH約6.4とする。本発明の実施例の一例は、
1mg/mLから20mg/mLのhGH、
強壮剤、
5mg/mLから20mg/mLのPEG、
pHを約6.4とするバッファン系、
0.1mg/mLから1mg/mlのキレート剤、および
随意の抗微生物剤、
からなるpH約6.4の水性hGH配合物である。
【0086】
より具体的には、
5mg/mLのhGH、
約50mg/mLのマンニトール、
15mg/mLのPEG−3400、
10mMのリン酸Na、
1.9mMのEDTA、および
随意の2mg/mlから6mg/mLのフェノール、
からなるpH約6.4の水性hGH配合物である。
【0087】
本発明の好ましい実施例を上に述べたが、これは様々な改良が可能であり、付録した請求項は本発明の精神及び範囲内に含まれる全ての改良の包含を意図するものであることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
pH5.5からpH7とするバッファ系と、
強壮剤と、
有効な量のポリエチレングリコールと、
を無菌の薬学的に許容される液体の中に有することを特徴とするヒト成長ホルモン剤。
【請求項2】
ポリエチレングリコールがPEG1450から20000であることを特徴とする請求項1に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項3】
ポリエチレングリコールが5mg/mLから50mg/mLであることを特徴とする請求項2に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項4】
長期冷蔵安定性が6〜18ヶ月であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項5】
抗菌性剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項6】
ポリエチレングリコールがPEG1450から20000であることを特徴とする請求項5に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが5〜50mg/mlであることを特徴とする請求項6に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項8】
バッファ系がpH6を提供することを特徴とする請求項4に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項9】
強壮剤がマンニトールであることを特徴とする請求項8に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項10】
キレート剤を含むことを特徴とする請求項4に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項11】
バッファ系がpH6.4を提供することを特徴とする請求項10に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項12】
抗菌性剤を有することを特徴とする請求項11に記載のヒト成長ホルモン剤。
【請求項13】
ヒト成長ホルモンの使用方法であって、
A)ヒト成長ホルモンを水性剤に調整するステップであって、
該水性剤が1から20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
pH5.5から7とするバッファー・システムと、
5mg/mlから50mg/mlのポリエチレングリコールと、
強壮剤と、を
薬剤として許容され、注射可能な無菌の水性のビークル内に、
含むものと、
B)前述の製剤を水性液として6から18ヶ月貯蔵して、
水性液として貯蔵された薬剤を構成するステップと、
C)ヒト成長ホルモン治療を必要とする患者に前述の貯蔵された製剤を直接注入するステップと、
を有することを特徴とするヒト成長ホルモンの使用方法
【請求項14】
ヒト成長ホルモンの使用方法であって、
A)ヒト成長ホルモンを水性剤に調整するステップであって、
該水性剤が1mg/mlから20mg/mlのヒト成長ホルモンと、
pH5.5から7とするバッファ系と、
5mg/mlから50mg/mlのポリエチレングリコールと、
20mg/mlから100mg/mlの強壮剤と、
抗菌剤と、
を薬剤として許容され、注射可能な水性のビークル内に、
含むものと、
B)前述の製剤を水性液として6から18ヶ月貯蔵して、
水性液として貯蔵された薬剤を構成するステップと、
C)ヒト成長ホルモン治療を必要とする患者に前述の貯蔵された製剤を直接注入するステップと、
を有することを特徴とするヒト成長ホルモンの使用方法
【請求項15】
貯蔵安定性のある水性のヒト成長ホルモン剤の調整方法であって、
ヒト成長ホルモンの、水性で薬剤として許容されるビークルへの混合を有し、
該水性で薬剤として許容されるビークルが、
1から20のヒト成長ホルモンと、
pH5.5からpH7とするバッファと、
5mg/mlから50mg/mlのポリエチレングリコールと、
20から100mg/mlの強壮剤と、
を含み、
2℃から8℃で、6から18ヶ月貯蔵可能であること
を特徴とする作成方法。


【公表番号】特表2007−506683(P2007−506683A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527240(P2006−527240)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001698
【国際公開番号】WO2005/027960
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506100288)カンジェーン コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】