説明

ヒト第VII凝固因子変異型

【課題】血液凝固剤活性を有する新規ヒト第VIIa凝固因子変異型、並びに上述の変異型をコードする核酸構築物、上記核酸を含み、かつ、発現するベクター及び宿主細胞、医薬組成物、使用、そして治療方法を提供する。
【解決手段】特定の配列の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は凝固剤活性を持つ新しいヒト凝固因子VIIa変異型、並びに上記変異型をコードする核酸構造、上記核酸を含み、かつ、発現するベクター、及び宿主細胞、医薬組成物、使用、そして治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、最終的にはフィブリン塊の産生をもたらすさまざまな血液成分(又は因子)の複雑な相互作用から成る過程である。一般的に、凝固「カスケード」と称されているものに加わる血液成分は、(それ自身が活性化された凝固因子である)アクチベーターの活性化によりタンパク質分解酵素に変換される酵素的に不活性タンパク質(酵素前駆体又は酵素原)である。上述の変換を受けた凝固因子は一般に「活性因子」と称され、そしてその凝固因子の名称に文字「a」を付け加えることにより区別される(例えば第VIIa因子)。
【0003】
止血過程の開始は、血管壁への傷害の結果として露呈する組織因子と第VIIa因子の間での複合体の形成により伝達される。次に、この複合体は第IX因子及び第X因子をそれらの活性型へと変換する。第Xa因子は組織因子を持つ細胞上で決まった量のプロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは血小板、並びに第V因子及び第VIII因子を第Va因子及び第VIIIa因子に活性化するが、この両補助因子はさらに先の過程において完全なトロンビン破壊を導く。この過程は(第VIIIa因子との複合体での)第IXa因子による第Xa因子の産生を含み、そして活性化された血小板の表面で生じる。最終的にトロンビンが、フィブリノーゲンをフィブリン塊の形成をもたらすフィブリンに変換する。近年、第VII因子と組織因子が血液凝固の主なイニシエーターであることが発見された。
【0004】
第VII因子は微量な血漿糖タンパク質であり、1本鎖酵素原として血中を循環している。この酵素原は触媒として不活性である。1本鎖第VII因子はインビトロにおいて第Xa、XIIa、IXa、VIIa因子又はトロンビンにより2本鎖第VIIa因子に変換される。第Xa因子が第VII因子の主要な生理学的アクチベーターであると考えられている。止血に関与するいくつかの他の血漿タンパク質と同様に、第VII因子はその活性化に関してビタミンKに依存し、これは、このタンパク質のアミノ末端に密に集合した複数のグルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化に必要とされる。これらのガンマ−カルボキシル化グルタミン酸はリン脂質と第VII因子の金属イオン誘発性相互作用のために必要とされる。酵素原第VII因子の活性化された2本鎖分子への変換は内部のArg152−Ile153ペプチド結合の開裂により起こる。組織因子、リン脂質、及びカルシウム・イオンの存在下、2本鎖第VIIa因子は制限されたタンパク質分解により素速く第X因子又は第IX因子を活性化する。
【0005】
対象における凝固カスケードを刺激又は向上させることが多くの場合望まれる。第VIIa因子は、いくつかの原因、例えば凝固因子欠損(例えばA型及びB型血友病又は第XI若しくはVII凝固因子の欠損)又は凝固因子阻害を有する出血障害の制御に使用されてきた。第VIIa因子は、正常に機能する血液凝固カスケードを持つ(凝固因子欠損又はいずれかの凝固因子に対する阻害因子がない)対象において起きた過剰な出血の制御に使用されもする。このような出血は、例えば血小板機能の欠陥、血小板減少症又はフォン・ウィルブランド病により引き起こされる。出血は手術及び他の形態の組織損傷においても重大な問題でもある。
【0006】
特許文献1(欧州特許第200,421号:Zymo Genetics)はヒト第VII因子をコードするヌクレオチド配列及び哺乳動物細胞における第VII因子の組み換え発現に関する。
【0007】
非特許文献1(Dickinson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93, 14379-14384 )はLeu305をAlaにより置き換えた第VII因子変異型に関する(FVII(Ala305))。
非特許文献2(Iwanaga et al., Thromb. Haemost. (supplement August 1999), 466, abstract 1474 )は残基316〜320を欠失させたか又は残基311〜322をトリプシンからの対応の残基により置換した第VIIa因子変異型に関する。
【0008】
【特許文献1】欧州特許第200,421号
【非特許文献1】Dickinson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93, 14379-14384
【非特許文献2】Iwanaga et al., Thromb. Haemost. (supplement August 1999), 466, abstract 1474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、凝固剤活性を有する第VIIa因子の変異型、比較的低い用量で投与しうる高い活性を持つ変異型、及び従来の療法に関連した望まれない副作用、例えば凝固系及び出血の全身的な活性化を生じない変異型に対する要望がなおも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は凝固剤活性を持つ第VIIa凝固因子変異型を提供する。第1の側面において、本発明は、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が核酸構築物によりコードされうる他のアミノ酸残基により置き換えられた、さらに任意にそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置の少なくとも1の他のアミノ酸残基を核酸構築物によりコードされうるその他のアミノ酸残基により置き換えたヒト第VII凝固因子変異型を提供する;ただし上記変異型はFVII(Ala305)ではない。
【0011】
1の態様において、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基、さらにプロテアーゼ・ドメイン(153〜406位)内の残った位置の最大20のアミノ酸残基で置き換えられる。1の態様において最大15のさらなるアミノ酸残基で置き換えられる;他の態様において、最大10のアミノ酸残基で置き換えられる;他の態様において、最大5のアミノ酸残基で置き換えられる。
【0012】
本発明の他の態様において、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基、さらに274位及び/又は300〜304位及び/又は306〜312位中の少なくとも1の残基で置き換えられる。
【0013】
他の態様において、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基、さらに274位の少なくとも1の残基で置き換えられる。
【0014】
他の態様において、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基、さらに300〜304位の少なくとも1の残基で置き換えられる。
【0015】
他の態様において、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残留、さらに306〜312位の少なくとも1の残基で置き換えられる。
【0016】
他の態様において、274位のAla残基をMet、Leu、Lys又はArgにより置き換え;及び/又は304位のArg残基をTyr、Phe、Leu又はMetにより置き換え;及び/又は306位のMet残基をAsp又はAsnにより置き換え;及び/又は309位のAsp残基をSer又はThrにより置き換える。
【0017】
他の態様において、305位のLeu残基又は374位のPhe残基が置き換えられる唯一のアミノ酸残基である。
【0018】
1の態様において、305位のLeu残基を置き換える。他の態様において、374位のPhe残基を置き換える。
【0019】
1の態様において、374位のPhe残基が置き換えられる唯一のアミノ酸残基である。
【0020】
他の態様において、305位のLeu残基が置き換えられる唯一のアミノ酸残基である。
【0021】
特定の態様において、305位のLeu残基をValにより置き換える。
【0022】
他の態様において、305位のLeu残基をVal、Tyr及びIleから成る群から選ばれるアミノ酸残基により置きかえるか、又は374位のPhe残基をProにより置き換える。
【0023】
本発明の1の態様において、配列番号1の残基300〜322、305〜322、300〜312又は305〜312を、チロシン(それぞれ配列番号3、7、11、15)、トロンビン(それぞれ配列番号4、8、12、16)、第Xa因子(それぞれ配列番号5、9、13、17)又は他の恒常的に活性なセリン・プロテアーゼからの対応の配列により置き換える。さらに他の態様において、配列番号1の残基312〜322の1以上を欠失させる。
【0024】
1の側面において、305位でアミノ酸残基をAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換えるか、又は374位でアミノ酸残基をAla、Val、Leu、Ile、Met、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp若しくはGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換えるが、ただし、上記変異型はFVII(Ala305)ではない。
【0025】
他の側面において、305位でアミノ酸残基をAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp、及びGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換えるか、又は374位でアミノ酸残基をAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp若しくはGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換える。
【0026】
他の側面において、305位でアミノ酸残基を核酸によりコードされうるアミノ酸残基、例えばAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnにより置き換え、さらに374位でアミノ酸残基を核酸によりコードされうるアミノ酸残基、例えばAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnにより置き換える。
【0027】
1態様において、305位でアミノ酸残基をAla、Val、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換え、さらに374位でアミノ酸残基をAla、Val、Leu、Ile、Met、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp若しくはGlnの一覧から選ばれるアミノ酸残基により置き換える。
【0028】
本発明はヒト第VII凝固因子変異型をも提供し、ここで本明細書中に定めた「インビトロ加水分解アッセイ」により試験した時に、上記変異型の活性と配列番号1に示す天然第VII因子ポリペプチドの活性の間の比は少なくとも約1.25である。1の態様において、上記の比は少なくとも約2.0である;さらなる他の態様において少なくとも約4.0である。
【0029】
他の側面において、本発明は、天然のヒト第VIIa凝固因子に比べ向上した組織因子依存性活性を持つヒト第VIIa凝固因子変異型を提供する。他の側面において、前記向上した活性は基質特異性の変化を伴わない。本発明の他の側面において、前記変異型の組織因子への結合は損なわれてはならず、かつこの変異型は組織因子に結合した時に少なくとも野生型第VIIa因子の活性を持たなくてはならない。
【0030】
本発明の他の側面は、本発明による第VII因子変異型をコードするヌクレオチド配列を含む配列構築物、好ましくはDNA構築物に関する。
【0031】
他の側面において、本発明は前記核酸構築物を含む組み換えベクターを提供する。
【0032】
本発明の他の態様は、前記核酸構築物又は前記組み換えベクターを含む組み換え宿主細胞、好ましくは哺乳動物起源のものに関する。
【0033】
1の態様において、前記組み換え宿主細胞はCHO又はBHK細胞である。
【0034】
本発明の他の態様は、前記核酸構築物を含み、そして発現するトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物に関する。
【0035】
本発明の他の側面は、ヒト第VII凝固因子変異型を含む医薬組成物、ここで配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基を核酸構築物によりコードされうる他のアミノ酸残基により置き換え、かつ、任意にその中のプロテアーゼ・ドメイン内の残りの残基中の少なくとも1のその他のアミノ酸残基を核酸構築物によりコードされうる他のアミノ酸残基により置き換え、任意に医薬として許容される担体と組み合わせる;薬剤として使用するためのヒト第VII凝固因子変異型;出血症状の治療又は予防のための又は正常な止血系の強化のための組成物の製造のためのヒト第VII凝固因子の使用;対象の出血症状の治療又は予防のための又は正常な止血系の強化のための方法;そして本発明による第VII因子変異型の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
アミノ酸残基Leu305又はPhe374(及び任意に1以上のさらなる残基)の少なくとも1を他のアミノ酸残基により置き換える第VII因子変異型が凝固活性を持つことをここで発見した。
【0037】
前記残基Leu305及びPhe374は残基307で始まるα−ヘリックスの両端に位置する。このα−ヘリックスは第VIIa因子の組織因子複合形態に見られる。遊離第VIIa因子(組織因子に結合していない第VIIa因子)において、前記ヘリックスは変形し、そのためにおそらく不安定であろう。このヘリックスは活性に重要であると考えられる。本発明による変異型は通常組織因子により誘発する必要がある活性構造を獲得する。
【0038】
前記活性は、残基307から始まるα−ヘリックスの安定化、このヘリックスの再配向、又は構造内のいくつか他の変更による。前記ヘリックスの両端に位置する残基Leu305又はPhe374の一方の置き換えはこのヘリックスの再配向及び/又は安定化を促す。
【0039】
天然の第VIIa因子に比べ前記第VIIa因子変異型の高い先天的な活性により、低用量が作用部位での機能的に十分な濃度を得るために適当であり、それ故に出血症状を有するか又は正常な止血系の強化を必要とする対象への低用量の投与が可能である。
【0040】
先に簡単に論じたとおり、305位のLeu残基又は374位のPhe残基のいずれかを他のアミノ酸により置き換えることにより、第VIIa因子は、通常組織因子により誘発されるより活性な構造を自然発生的に得ることを本発明により発見した。305位のLeuを置き換える好ましいアミノ酸残基の例はVal、Tyr及びIleを含む。
【0041】
よって、症状に医薬として有用な先天的な活性を示す上述の第VIIa因子変異型が本発明により意図され、ここで例えばNovo Seven(商標)の高用量を投与した場合に、凝血原活性は組織因子と無関係である(第Xa因子を血小板表面上で産生)。
【0042】
前述のとおり、前記配列内の他のアミノ酸残基の置き換えは、Leu305又はPhe374残基の置き換えにより得られる効果に加え、この分子の活性構造の形成をさらに促進する。原則的に、これらの残った位置はそのプロテアーゼ・ドメイン内のどこか(もちろん305又は374位を除く)である。しかしながら、最も顕著な効果は、前述変異を残基305(又は374)の付近(配列的又は三次元的)で実施する時に見られると考えられる。
【0043】
第VII因子のN末端Glaドメイン(残基1〜37)内のいくつかのアミノ酸残基の置き換えが膜リン脂質、例えば組織因子担持細胞又は血小板の膜リン脂質に対してかなり高い親和性を有するタンパク質を提供することができ、それにより、向上した凝血原効果を持つ第VII因子誘導体を生じることは十分に立証されている。
【0044】
よって、前述の第VII因子変異型は、すでに行われた305又は374位のアミノ酸置き換え、並びに任意の274、300〜304、及び306〜310位、又はプロテアーゼ・ドメインの他の所でのアミノ酸置き換えに加え、N末端Glaドメインにおいて置き換えられたいくつかのアミノ酸残基をも有し、それにより天然第VII因子に比べ、向上した活性、並びに膜リン脂質に対する向上した親和性を持つタンパク質を得る。
【0045】
好ましくは、第VII因子の10及び32位(配列番号1を参照)のアミノ酸残基を核酸構築物によりコードされうる他のアミノ酸残基により置き換える。
【0046】
前述の位置に組み込まれるべき好ましいアミノ酸残基の例は以下のとおりである:10位のアミノ酸残基ProをGln、Arg、His、Gln、Asn又はLysにより置き換え;及び/又は32位のアミノ酸残基LysをGlu、Gln又はAsnにより置き換える。
【0047】
リン脂質親和性の違い及びビタミンK依存性血漿タンパク質の配列に基づいて、Glaドメイン内の他の残基が置換のために検討されもした。
【0048】
本明細書中において、アミノ酸の3文字又は1文字表記を表1に示したそれらの慣習的な意味で使用する。はっきりと示されない限り、本明細書中で触れられるアミノ酸はL−アミノ酸である。さらに、ペプチドのアミノ酸配列の左及び右の末端は別段の指示がない限り、それぞれN−及びC−末端である。
【0049】
【表1】

【0050】
用語「N末端GLAドメイン」は第VII因子のアミノ酸配列1〜37を意味する。
【0051】
用語「プロテアーゼ・ドメイン」は第VII因子のアミノ酸配列153〜406(第VIIa因子の重鎖)を意味する。
【0052】
3文字表記「GLA」は4−カルボキシグルタミン酸(γ−カルボキシグルタメート)を意味する。
【0053】
表記「FVII(Ala305)」は305位のLeu残基をAlaにより置き換えた配列番号1に示される第VII因子を意味する。
【0054】
本明細書中で使用される用語「第VII因子」又は「FVII」は不活性1本鎖酵素原第VII因子分子、並びに活性化された2本鎖第VII因子を含むことが意図され、そして必要に応じて、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「プロテアーゼ」及び「酵素」と互換性を持って使用される。
【0055】
本明細書中で使用される用語「核酸構築物」は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA又はRNA起源のあらゆる核酸分子を意味することを意図する。用語「構築物」は1本又は2本鎖であり、かつ、着目のポリペプチドをコードする完全に又は部分的に天然のヌクレオチド配列に基づく核酸セグメントを示すことを意図する。前記構築物は他の核酸セグメントを任意に含む。同様に、用語「核酸構築物によりコードされうるアミノ酸残基」は先に定めた核酸構築物によりコードされうるアミノ酸残基、つまりアミノ酸、例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnの範囲にわたる。
【0056】
本文脈中において、用語「治療」は、出血の抑制又は最小限化の目的を持つ、例えば手術における過剰な出血の予防、及び例えば外傷によりすでに起きている出血の調節の両者を含むことを意図する。よって、本発明による第VIIa因子変異型の予防的投与は用語「治療」に含まれる。
【0057】
用語「活性」はトロンビンを産生する能力を意味し、用語「先天的な活性」は組織因子不在下における活性化された血小板の表面上でトロンビンを産生する能力をも含む。
【0058】
用語「正常な止血系の強化」はトロンビン産生能力の強化を意味する。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「出血障害」は、出血により明らかにされる細胞又は分子起源の、先天的な、後天的な又は誘発されたあらゆる異常を示す。例は、凝固因子欠損症(例えばA型及びB型血友病又は第XI若しくはVII凝固因子の欠損)、凝固因子阻害剤、不完全な血小板機能、血小板減少症又はフォン・ウィルブランド症である。
【0060】
用語「出血症状」は、手術及び他の形態の組織損傷の両者に関する重要な問題である制御不能な、かつ過剰な出血を含むことを意味する。制御不能な、かつ、過剰な出血は正常な凝固系を有する対象において、及び凝固又は出血障害を有する対象において起こる。凝固因子の欠損(A型及びB型血友病、第XI又はXII凝固因子の欠損)、あるいは凝固因子阻害剤は出血障害の原因となる。過剰出血は正常な血液凝固カスケード機能を有する(凝固因子欠損又はあらゆる凝固因子に対する阻害剤を持たない)対象においても起こり、不完全な血小板機能、血小板減少症又はフォン・ウィルブランド症により引き起こされる。前述の場合、出血はいわば血友病を原因とする出血のようなものである、なぜならその止血系は、血友病の場合のように、多量の出血の原因となる必須凝固「化合物」(例えば血小板又はフォン・ウィルブランド・タンパク質)を欠くか又はそこに異常を有する。手術又は重度の外傷に関係して大きな組織損傷を経験した対象において、正常な止血機構は迅速な止血の要求によって圧倒され、そしてそれらは正常な止血機構であるにもかかわらず出血を生み出す。十分な止血の達成は、出血が臓器、例えば外科的な止血についての可能性が制限される脳、内耳領域及び眼において起きた場合に問題となりもする。これと同様の問題がさまざまな臓器(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検採取の過程、並びに腹腔鏡手術において生じる。これらの状況の全てについての共通点は、出血が広げるケース(出血性胃炎及び大量の子宮出血)でもある外科的な技術(縫合、クリップ等)による止血の提供の困難さである。急激な、そして大量の出血は、受けたその療法により不完全な止血が誘発される抗凝固療法中の対象において起こりもする。このような対象は外科的処置を必要とし、万一に備えて抗凝固剤効果をすぐに中和すべきである。根治的な恥骨後の前立腺切除術は局所的な前立腺癌を患う患者に対して一般的に行われる処置である。この手術は著しい、そして時々の重大な失血によりしばしば困難になっている。考えられうる前立腺切除術中の出血は、外科的な止血のためには容易に近づけないさまざまに入り込んだ血管が通る部位を伴う困難な解剖学的状況に主に関係し、そしてそれが広範囲からの大量出血をもたらす。
【0061】
不十分な止血についての問題を引き起こす他の状況は、正常な止血機構を持つ対象が血栓塞栓性疾患を防ぐために抗凝固療法を受けている場合である。これらの療法は、ヘパリン、プロテオグリカンの他の形態、ワーファリン又はビタミンKアンタゴニストの他の形態、並びにアスピリン及び他の血小板凝集阻害剤を含む。
【0062】
本発明の1の態様において、前記出血は血友病に関係する。他の態様において、前記出血は後天的な阻害剤を伴う血友病に関係する。他の態様において、前記出血は血小板減少症に関係する。他の態様において、前記出血はフォン・ウィルブランド症に関係する。他の態様において、前記出血は重度の組織損傷に関係する。他の態様において、前記出血は重度の外傷に関係する。他の態様において、前記出血は手術に関係する。他の態様において、前記出血は腹腔内鏡手術に関係する。他の態様において、前記出血は出血性胃炎に関係する。他の態様において、前記出血は大量の子宮出血に関係する。他の態様において、前記出血は物理的な止血についての可能性が制限される臓器において起こる。他の態様において、前記出血は脳、内耳領域又は眼において起こる。他の態様において、前記出血は生検採取の過程に関係する。他の態様において、前記出血は抗凝固剤療法に関係する。
【0063】
本明細書中で使用される時、用語「対象」はあらゆる動物、特に哺乳動物、例えばヒトを意味することが意図され、そして必要に応じて用語「患者」と互換性を持って使用される。
【0064】
本明細書中で使用される時、用語「適当な育成培地」は養分及び細胞の成長及び本発明の第VII因子変異型をコードする核酸配列の発現のために必要とされる成分を含む培地を意味する。
【0065】
第VII因子変異型の製造
本明細書中に記載の第VII因子変異型を組み換え核酸技術の手段により製造する。一般的に、クローンした野生型第VII因子核酸配列を修飾し所望のタンパク質をコードさせる。次に、この修飾配列を発現ベクター内に挿入し、次にこの発現ベクターを宿主細胞内に形質転換又はトランスフェクトする。高度な真核細胞、特に培養哺乳動物細胞が宿主細胞として好ましい。ヒト第VII因子についての完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列が知られている(V.S.4,784,950を参照のこと、ここに組み換えヒト第VII因子のクローニング及び発現が記載されている)。ウシ第VII因子配列が Takeya et al. J. Biol. Chem. 263 : 14868-14872 (1988)に記載されている。
【0066】
アミノ酸配列の変更がさまざまな技術により成される。核酸配列の修飾は部位特異的突然変異誘発による。部位特異的突然変異誘発に関する技術は本技術分野で周知であり、そしてそれらは、例えば Zoller and Smith (DNA 3 : 479-488, 1984)又は「Splicing by extention overlap」Horton et al., Gene 77, 1989, pp. 61-68に記載されている。よって、第VII因子のヌクレオチド及びアミノ酸配列を使用することにより、当業者は最適な変更を導入する。同様に、特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を用いるDNA構築物の調製手順が当業者に周知である(PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USA)。
【0067】
本発明の第VII因子変異型をコードする核酸構築物は、好適には例えば標準的な技術により(Sambrook et al., Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)ゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、そして合成オリゴヌクレオチド・プローブを用いたハイブリダイゼーションにより全ての又は一部の上記 ポリペプチドをコードするDNA配列についてスクリーニングすることにより得られるゲノム又はcDNA起源のものである。
【0068】
第VII因子変異型をコードする核酸構築物は確立された標準法、例えばBeaucage and Caruthers, Tetrahedron Letter 22 (1981) に記載された亜リン酸アミダイト法又はMatthes et al., EMBO Journal 3 (1984), 801-805に記載された方法により合成的に製造されもする。前記亜リン酸アミダイト法により、オリゴヌクレオチド、例えば自動DNA合成装置により合成し、精製し、アニールし、連結し、そして好適なベクター内にクローンする。
【0069】
さらに、前記核酸構築物は、合成起源とゲノム起源、合成起源とcDNA起源又はゲノム起源とcDNA起源を混合したものであり、標準的な技術による完全な核酸構築物のさまざまな部分に対応する、合成、ゲノム又はcDNA起源(必要に応じて)の断片の連結により製造される。
【0070】
前記核酸構築物は好ましくはDNA構築物である。
【0071】
本発明による第VII因子変異型の製造に使用するためのDNA配列は第VII因子のアミノ末端におけるプレ−プロ・ポリペプチドを典型的にはコードし、適当な転写後プロセッシング(例えばグルタミン酸残基のガンマ−カルボキシル化)及び宿主細胞からの分泌を得る。前記プレ−プロ・ポリペプチドは第VII因子又は他のビタミンK依存性血漿タンパク質、例えば第IX因子、第X因子、プロトロンビン、プロテインC又はプロテインSである。当業者に理解されるように、さらなる修飾を前記第VII因子変異型のアミノ酸配列内にもたらすことができ、それらの修飾は凝固剤として作用するための上記タンパク質の能力を有意に弱めない。例えば、前記第VII因子変異型を、V.S.5,288,629中で一般に記載のとおり酵素原第VII因子のその活性化された2本鎖形態への変換を阻害するために活性化開裂部位において修飾することもできる。
【0072】
第VII因子変異型の発現に使用するための発現ベクターはクローンされた遺伝子又はcDNAの転写を導きうるプロモーターを含む。培養哺乳動物細胞において使用するための好ましいプロモーターはウイルス・プロモーター及び細胞プロモーターを含む。ウイルス・プロモーターは、SV40プロモーター(Subramani et al., Mol. Cell. Biol. 1 : 854-864, 1981)及びCMVプロモーター(Boshart et al., Cell 41 : 521-530, 1985)を含む。特に好ましいウイルス・プロモーターはアデノウイルス2からの主要な後期プロモーター(Kaufman and Sharp, Mol. Cell. Biol. 2 : 1304-1319, 1982)である。細胞プロモーターは、マウス・カッパー遺伝子プロモーター(Bergman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 : 7041-7045, 1983)及びマウスVH プロモーター(Loh et al., Cell 33 : 85-93, 1983)を含む。特に好ましい細胞プロモーターはマウス・メタロチオネイン−Iプロモーター(Palmiter et al., Science 222 : 809-814, 1983)である。発現ベクターは、前記プロモーターの下流にそして前記第VII因子配列自身の挿入部位の上流に位置するRNAスプライス部位のセットを含みもする。好ましいRNAスプライス部位は、アデノウイルス及び/又は免疫グロブリン遺伝子から得られる。前記挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルを前記発現ベクター内に含みもする。特に好ましいポリアデニル化シグナルは、SV40からの初期又は後期ポリアデニル化シグナル(Kaufman and Sharp, ibid.)、アデノウイルス5E1b領域からのポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto et al., Nucl. Acids Res. 9 : 3719-3730, 1981 )又はヒト第VII因子遺伝子又はウシ第VII因子遺伝子からのポリアデニル化シグナルを含む。前記発現ベクターは非翻訳ウイルス・リーダー配列、例えば前記プロモーターとRNAスプライス部位の間に 位置するアデノウイルス2からの3分節リーダー;及びエンハンサー配列、例えばSV40エンハンサーを含みもする。
【0073】
クローンしたDNA配列を、例えばリン酸カルシウム仲介トランスフェクション(Wigle et al., Cell 14 : 725-732, 1978 ; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7 : 603-616, 1981 ; Graham and Van der Ed, Virology 52d : 456-467, 1973)又はエレクトロポレーション(Neumann et al., EMBO J. 1 : 841-845, 1982)により培養哺乳動物細胞内に導入する。外来DNAを発現する細胞を同定及び選択するために、選択可能な表現型(選択可能なマーカー)を与える遺伝子を着目の遺伝子又はcDNAと一緒に一般的には導入する。好ましい選択マーカーは薬剤、例えばネオマイシン、ヒグロマイシン、及びメトトレキサートに 耐性を与える遺伝子を含む。前記選択マーカーは増幅しうる選択マーカーである。好ましい増幅しうる選択マーカーはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)配列である。選択マーカーは、Thilly(Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, MA、本明細書中に援用)により概説されている。当業者は好適な選択マーカーを容易に選択できる。
【0074】
選択マーカーは、着目の遺伝子と同時に別個のプラスミドを用いて細胞内に導入されるか、又はそれらは同じプラスミド上に導入される。同じプラスミド上で、選択マーカー及び着目の遺伝子が異なるプロモーター又は同じプロモーターの制御下にある場合、後者の配列はジストロン性メッセージを生じる。この形の構築物は本技術分野で知られている(例えばLerinson及びSimonsen, V.S. 4,713,339)。細胞内に導入された混合物に「キャリアーDNA」として知られるさらなるDNAを加えることは有益でもある。
【0075】
細胞が前記DNAを取り込んだ後、それらを適当な育成培地中で着目の遺伝子を発現し始めるまで、典型的には1〜2日間育成する。前記細胞の培養に使用した培地は前記宿主細胞の育成に好適なあらゆる慣習的な培地、例えば適当なサプリ メントを含む最小又は天然培地である。好適な培地は市販品から入手できるか、又は公開されている製法(例えばATCCのカタログ中)に従い調製される。前記培地を本技術分野で知られる手順を用いて調製する(例えば細菌及び酵母に関する参考文献;Bennett, J.W. and LaSure, L., editors, More Gene Manipulations in Fungi, Academic Press, CA, 1991 を参照のこと)。育成培地は一般的に炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須糖類、ビタミン塩、リン脂質、タンパク質及び増殖因子を含む。ガンマ−カルボキシル化第VII因子変異型の製造のために、その培地はビタミンKを、好ましくは約0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で含む。次に薬剤選別を適用し、安定な様式で選択マーカーを発現している細胞の増殖を選択する。増幅しうる選択マーカーにより形質移入した細胞について、クローン配列の向上したコピー数に関して選択するために薬剤濃度を増やし、それにより発現レベルが向上する。次に安定に形質移入された細胞のクローンを所望の第VII因子変異型の発現について選別する。
【0076】
好ましい哺乳動物細胞株は、CHO(ATCC CCL 61)、COS−1(ATCC CRL 1650)、仔ハムスター腎臓(BHK)、及び293(ATCC CRL 1573;Graham et al., J Gen. Virol. 36 : 59-72, 1977 )細胞株を含む。好ましいBHK細胞株は、本明細書中で以下BHK 570細胞と呼ばれるtk- ts 13 BHK細胞株である(Waechter and Baserga, Proc. Natl. Sci. USA 79 : 1106-1110, 1982 )。前記BHK 570細胞はATCC寄託番号CRL10314でATCC、12031 Parklawn Dr.Rockville,MD 20852から入手できる。tk- ts 13 BHK細胞株は寄託番号CRL 1632でATCCから入手できる。加えて、ラットHepI(ラット肝癌;ATCC CRL 1600)、ラットHepII(ラット肝癌;ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469(ATCC CCL 9.1)、及びDUKX細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 : 4216-4220, 1980)を含む多数の他の細胞株を使用しうる。
【0077】
トランスジェニック動物技術が本発明の第VII因子変異型を製造するために使用される。宿主の雌哺乳動物の乳腺中に前記タンパク質が産生されることが好ましい。乳腺中での発現及びそれに続く乳中への着 目のタンパク質の分泌は、他の源からのタンパク質の単離で直面する多くの困難を克服する。乳は容易に回収され、大量に入手でき、そして生化学的に十分に特徴づけられている。さらに主要な乳タンパク質は高濃度(具体的には約1〜15g/l)で乳中に存在する。
【0078】
産業の観点から、大量の乳生産量を有する種を宿主として使用することは明らかに好ましい。小動物、例えばマウス及びラットを使用することができる(そしてそれらは原理の証明の段階で好ましい)が、制限されることなく、ブタ、ヤギ、ヒツジ及びウシを含む家畜動物の使用が好ましい。ヒツジは、この種における遺伝子導入のこれまでの歴史、乳生産量、費用、及びヒツジ乳の回収のための装置の入手しやすさの点により特に好ましい(例えば宿主動物種の選択に影響する要 因の比較についてWO88/00239を参照のこと)。酪農での使用のために育てられている宿主動物の品種、例えばEast Friesland sheepの選択か、あるいは後日のトランスジェニック系の育生による搾乳用家畜の導入が一般的に望ましい。いずれにせよ、良好な健康状態が分かっている 動物を使用すべきである。
【0079】
乳腺中の発現を得るために、乳タンパク質遺伝子からの転写プロモーターを使用する。乳タンパク質遺伝子はカゼイン(U.S.5,304,489を参照のこと)、ベータ−ラクトグロブリン、a−ラクトアルブミン、及びホエー酸性タンパク質をコードする遺伝子を含む。前記ベータ−ラクトグロブリン(BLG)プロモーターが好ましい。ヒツジ・ベータ−ラクトグロブリン遺伝子の場合、上記遺伝子の5′フランキング領域の少なくとも近位の406bpを一般的に使用するが、最大約5kbpの5′フランキング配列の大部分、例えば5′フランキング・プロモーター及びベータ−ラクトグロブリン遺伝子の非翻訳部分を組み込む〜4.25kbpのDNAセグメント(Whitelaw et al., Biochem. J. 286 : 31-39 (1992) を参照のこと)が好ましい。他の種からのプロモーターDNAの同様の断片が好適でもある。
【0080】
前記ベータ−ラクトアルブミン遺伝子の他の部分が発現されるべき遺伝子のゲノム領域として構築物内に組み込まれもする。イントロンを欠く構築物、例えば上述のDNA配列を含むものに比べて不十分しか発現しないものが本技術分野では広く許容される(Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 : 836-840 (1988) ; Palmiter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 : 478-482 (1991) ; Whitelaw et al., Transgenic Res. 1 : 3-13 (1991);WO 89/01343;及びWO 91/02318を参照のこと、これらのそれぞれを本明細書中に援用する)。この点で、可能であれば、着目のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝 子の全ての又はいくつかの天然イントロンを含むゲノム配列の使用は一般的に好ましく、よって、例えば前記ベータ−ラクトグロブリン遺伝子からの少なくともいくつかのイントロンのさらなる含有が好ましい。1の上述の領域は、ヒツジ・ベータ−ラクトグロブリン遺伝子の3′非コード領域からのイントロン・スプライシング及びRNAポリアデニル化を提供するDNAセグメントである。遺伝子の天然3′非コード配列が置換された場合、このヒツジ・ベータ−ラクトグロブ リン・セグメントは着目のタンパク質又はポリペプチドの発現レベルを高め、そして安定化させうる。他の態様においても、前記第VII因子変異型配列のイニシエーションATGを囲む領域を乳特異的タンパク質遺伝子からの対応の配列により置き換える。上述の置き換えは発現を増強する推定上の組織特異的イニシエーション環境を提供する。前記完全な第VII因子変異型のプレ−プロ及び5′非コード配列の、例えばBLG遺伝子による置き換えに便利であるが、より小さな領域が置き換えられる。
【0081】
トランスジェニック動物における第VII因子変異型の発現のために、第VII因子変異型をコードするDNAセグメントをその発現のために必要とされるさらなるDNAセグメントに使用できるように連結し、発現ユニットを製造した。上述のさらなるセグメントは、上述のプロモーター、並びにmRNAの転写及びポリア デニル化の終結を提供する配列を含む。前記発現ユニットは、修飾第VII因子をコードするセグメントに使用できるように連結した分泌シグナル配列をコードするDNAセグメントをさらに含む。前記分泌シグナル配列は本来の第VII因子分泌シグナル配列又は他のタンパク質、例えば乳タンパク質のそれである(例えばvon Heijne, Nucl. Acids Res. 14 : 4683-4690 (1986);及び Meade et al., U.S. 4,873,316を参照のこと、これらを本明細書中に援用する)。
【0082】
トランスジェニック動物において使用するための発現ユニットの構築は、さらなるDNAセグメントを含むプラスミド又はファージ内への第VII因子変異型配列の挿入により都合よく行われるが、上記発現ユニットは原則的にいくつかの配列の連結により構築される。乳タンパク質をコードするDNAセグ メントを含むベクターを準備し、そして上記乳タンパク質に関するコード配列を第VII因子変異型ポリペプチドのそれと置き換えることが特に都合よく;それにより上記乳タンパク質の発現制御配列を含む遺伝子融合を作り出す。どの事象においても、プラスミド又は他のベクター内への前記発現ユニットのクローニングは第VII因子変異型の増幅を促進する。増幅は細菌(例えばE.コリE.coli))宿主細胞内で都合よく行われ、故に、上記ベクターは複製開始点及び細菌宿主細胞において機能する選択マーカーを典型的に含む。次に前記発現ユニットを選択 された宿主種の受精卵(初期胚を含む)内に導入する。異種DNAの導入はマイクロインジェクション(例えば米国特許第4,873,191号)、レトロウイルス感染(Jaenisch, Science 240 : 1468-1474 (1988))又は胚幹(ES)細胞を用いた特定部位の組み込み(Bradley et al., Bio/Technology 10 : 534-539 (1992)により概説される)を含むいくつかの経路の1つにより成されうる。次に、前記の卵を偽妊娠した雌の卵管又は子宮に移植し、そして出産まで育て る。生殖細胞系に導入DNAを担持する子は普通のメンデルの法則で彼らの子孫へ前記DNAを渡すことができ、トランスジェニック群の開発を可能にする。ト ランスジェニック動物製造のための一般的な手順が本技術分野で知られている(例えばHogan et al., Manipulating the Mouse Embryo : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1986 ; Simons et al., Bio/Technology 6 : 179-183 (1988) ; Wall et al., Biol. Reprod. 32 : 645-651 (1985) ; Buhler et al., Bio/Technology 8 : 140-143 (1990) ; Ebert et al., Bio/Technology 9 : 835-838 (1991) ; Krimpenfort et al., Bio/Technology 9 : 844-847 (1991) ; Wall et al., J. Cell. Biochem. 49 : 113-120 (1992) ; U.S. 4,873,191 ; U.S. 4,873,316 ; WO 88/00239, WO 90/05188, WO 92/11757 ; 及びGB 87/00458を参照のこと)。外来DNA配列を哺乳動物及びそれらの生殖細胞に導入するための技術はそもそもはマウスにおいて開発された(例えば Gordon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 : 7380-7384 (1980) ; Gordon and Ruddle, Science 214 : 1244-1246 (1981) ; Palmiter and Brinster, Cell 41 : 343-345 (1985) ; Brinster et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 : 4438-4442 (1985) ; 及び Hogan et al. (ibid.)を参照のこと)。次に、これらの技術を家畜動物種を含む大型動物への使用に適合させた(例えばWO88/00239、WO90/05188、及びWO92/11757;並びに Simons et al., Bio/Technology 6 : 179-183 (1988) を参照のこと)。要約すると、トランスジェニック・マウス又は家畜の製造に今日使用されている有効な経路のほとんどで、数百の長さの分子の着目のDNAが確立された技術により受精卵の前核の1つの中に注入される。接合体の細胞質へのDNAの注入を利用することもできる。
【0083】
トランスジェニック植物における製造が利用されもする。発現は全体又は特定の器官、例えば塊茎に方向づけられる(Hiatt, Nature 344 : 469-479 (1990) ; Edelbaum et al., J. Interferon Res. 12 : 449-453 (1992) ; Sijmons et al., Bio/Technology 8 : 217-221 (1990) ; 及び EP 0 255 378)。
【0084】
本発明の第VII因子変異型は細胞培養培地又は乳から回収される。本発明の第VII因子変異型は、制限されることなく、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、クロマトフォーカシング、及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば、調製用等電点電気泳動(IEF))、溶解度の差(例えば硫 酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えばProtein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989)含む本技術分野で知られるさまざまな方法により精製される。好ましくは、それらは抗第VII因子抗体カラムを用いたアフィニティー・クロマトグラフィーにより精製される。Wakabayashi et al., J. Biol. Chem 261 : 11097-11108, (1986) 及び Thim et al., Biochemistry 27 : 7789-7793, (1988) により記載されるとおりのカルシウム依存性モノクローナル抗体の使用が特に好ましい。さらなる精製が従来の化学的精製方法、例えば高速液体クロマトグラ フィーにより実現される。クエン酸バリウム沈殿を含む他の精製方法が本技術分野で知られ、本明細書中に記載の新規第VII因子変異型の精製に利用される(例えばScopes, R., Protein Purification, Spring-Verlag, N.Y., 1982)。
【0085】
治療目的のために、本発明の第VII因子変異型が実質的に純粋であることが好ましい。よって、本発明の好ましい態様において、本発明の第VII因子変異型を少なくとも約90〜95%の均一性まで、好ましくは少なくとも約98%の均一性まで精製する。純度は、例えばゲル電気泳動及びアミノ末端アミ ノ酸配列決定によりアッセイされる。
【0086】
前記第VII因子変異型は、その2本鎖形態への変換のために活性化部位で開裂される。活性化は本技術分野で知られる方法、例えばOsterud, et al., Biochemistry 11 : 2853-2857 (1972) ; Thomas, U.S. Patent No. 4,456,591 ; Hedner and Kisiel, J. Cllin. Invest. 71 : 1836-1841 (1983) ; 又はKisiel and Fujikawa, Behring Inst. Mitt. 73 : 29-42 (1983) により開示された方法により行われる。あるいは、Bjoern et al. (Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565 )により記載されたとおり、第VII因子は、イオン交換クロマトグラフィー・カラム、例えばMono Q(商標)(Pharmacia fine Chemicals)などを通過させることにより活性化される。次に、得られた活性化第VII因子変異型を下記のとおり配合及び投与する。
【0087】
アッセイ
本発明は、本発明による好ましい第VII因子変異型を選択するための安定性アッセイをも提供する。これらのアッセイは簡単なインビトロ予備試験として実施されうる。
【0088】
よって、実施例6は、本発明の第VII因子変異型の活性についての簡単な試験(「インビトロ加水分解アッセイ」と呼ぶ)をここに開示する。その結果に基づき、特に着目の第VIIa因子は、図1−1及び図1−2に示された上記変異型の活性と本来の第VII因子の活性の間の比が本明細書中に定めた「インビトロ加水分解アッセイ」により試験した場合に、1.0超、例えば少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、例えば少なくとも約3.0、又はさらにより好ましくは少なくとも約4.0であるような変異型である。
【0089】
前記変異型の活性を、生理学的基質、例えば第X因子(実施例7を参照のこと)を、好適には100〜1000nMの濃度で用いて計測することもでき、ここで上記第Xa因子の産生を好適な酵素前駆体(例えば、S−2765)の添加により計測する。加えて、活性アッセイは生理的温度で行われる。
【0090】
トロンビンを産生する前記第VII因子変異型の能力は、生理的濃度で全ての関連凝固因子及び阻害剤(A型血友病症状を模倣する場合、第VIII因子を引いた)、並びに活性化した血小板を含むアッセイを用いて計測することもできる(Monroe et al. (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547のp543に記載のとおり、この文献を本明細書中に援用)。
【0091】
投与及び医薬組成物
本発明による第VII因子変異型は、いくつかの原因、例えば凝固因子欠損(例えばA型若しくはB型血友病又は第XI若しくはVII 凝固因子の欠損)又は凝固因子阻害剤を有する出血障害の制御に使用されるか、あるいはそれらは正常に機能する血液凝固カスケード(凝固因子欠損又は凝固因子のいずれかに対する阻害剤がない)を有する対象に起こる過剰な出血の制御のために使用される。前記出血は不完全な血小板機能、血小板減少症又はフォン・ウィルブランド症により引き起こされる。それらは、高められた線溶活性がさまざまな刺激により誘発された対象において見られる。
【0092】
手術又は大きな外傷に関係する重度の組織傷害を経験した対象において、正常な止血機構は迅速な止血の要求によって圧倒され、そしてそれらは正常な止血機構であるにもかかわらず出血を生み出す。十分な止血の達成は、出血が臓器、例えば脳、内耳領域、及び眼において起きた場合に問題ともなり、そして起源の特定が困難な時、広範な出血(出血性胃炎及び大量の子宮出血)のケースで問題となりもする。これと同様の問題がさまざまな臓器(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検採取の過程、並びに腹腔鏡手術において生じうる。これらの状況は外科的な技術(縫合、クリップ等)による止血の提供の困難さを共有している。急 激な、そして大量の出血は、受けたその療法により不完全な止血が誘発される抗凝固療法中の対象においても起こりうる。このような対象は外科的処置を必要と し、万一に備えて抗凝固剤効果をすぐに中和すべきである。不十分な止血に関する問題を引き起こす他の状況は、正常な止血機構を持つ対象が血栓塞栓性疾患を防ぐために抗凝固療法を受けている場合である。これらの療法はヘパリン、プロテオグリカンの他の形態、ワーファリン又はビタミンKアンタゴニストの他の形態、並びにアスピリン及び他の血小板凝集阻害剤を含む。
【0093】
凝固カスケードの全身的な活性化は播種性血管内凝固症候群(DIC)をもたらす。しかしながら、このような合併症は高用量の組み換え第VIIa因子により処置した対象において見られない、なぜなら第VIIa因子と血管壁損傷部位で露呈したTFの間の複合体形成による止血過程の緩やかな誘発が局在化しているからである。よって、本発明による第VII因子変異型が正常な止血機構に関係する上述の過剰出血を制御するためにその活性化形態で使用されうる。
【0094】
計画的な処置を伴う治療のために、本発明の第VII因子変異型は、上記処置に先立ち約24時間以内、及び7日間又はさらにその後も典型的には投与される。凝固剤としての投与は本明細書中に記載されるようなさまざまな経路により行われうる。
【0095】
前記第VII因子変異型の用量は初回負荷及び維持用量として、対象の体重及び症状の重さに依存して、70kgの対象に対して、約0.05mg〜500mg/日、好ましくは約1mg〜200mg/日、そしてより好ましくは約10mg〜約175mg/日の範囲を持つ。
【0096】
前記医薬組成物は予防的及び/又は治療的処置のための非経口投与を第1に意図する。好ましくは、前記医薬組成物は非経口的に、つまり、静中、皮下又は筋中 に投与されるか、あるいは、連続的な又は拍動性の注入により投与される。非経口投与のための組成物は、本発明の第VII因子変異型を、医薬として許容される担体、好ましくは水性担体と一緒に、好ましくはその中に溶解して含む。さまざまな水性担体、例えば水、緩衝化した水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどを使用する。本発明の第VII因子変異型をデリバリー又は損傷部位の標的化のためにリポソーム製剤中に配合することもできる。リポソーム製剤は、例えばU.S.4,837,028、 U.S.4,501,728、及びU.S.4,975,282中におおむね記載されている。前記組成物は慣習的な、周知の滅菌技術により滅菌される。得られた水性溶液は使用のために包装されるか又は無菌的な状況下でろ過され、そして凍結乾燥させる、この凍結乾燥製剤を投与前に滅菌水性溶液と組み合わせる。前記組成物は生理的状態に近づける必要がある時に医薬として許容される補助物質、例えばpH調整及び緩衝剤、張性調整剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸 ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を含む。
【0097】
これらの組成物中の第VII因子変異型の濃度は幅広く変えることができ、すなわち、約0.5重量%未満、通常少なくとも約1重量%程度〜ほぼ15又は20重量%、そして選択された投与の特定の様式により液量、粘度等により本質的に選ばれる。
【0098】
よって、非経口注入のための典型的な医薬組成物は250mlの滅菌リンゲル溶液と10mgの第VII因子変異型を含むことで作製されうる。医薬として投与しうる組成物を製造するための実際の方法は当業者に知られるか又は明らかであり、そして、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1990) 中により詳細に記載されている。
【0099】
本発明の第VII因子変異型を含む組成物は予防的及び/又は治療的処置のために投与されうる。治療的適用において、組成物は、疾患及びその合併症を治療、緩和又は部分的に 抑えるのに十分な量で、前記のとおりすでに疾患を患った対象に投与される。これを果たすために十分な量を「治療としての有効量」と定める。当業者により理解されるとおり、この目的のために有効な量は、疾患又は損傷の重さ、並びに対象の体重及び全身状態に依存する。しかしながら、一般に、前記有効量は70kgの対象に対して1日当たり約0.05mg〜約500mg第VII因子変異型の範囲にわたり、1日当たり約1.0mg〜約200mg第VII因子変異型の用量がより一般的に使用される。
【0100】
本発明の物質は一般的に命を脅かすか又は命を脅かす可能性のある状況にある深刻な疾患又は傷害状態に使用されることに留意しなくてはならない。このような場合、外来物質の最小限化及びヒトにおけるヒト第VII因子変異型の免疫原性の全体的な欠如の観点から、十分に過剰なこれらの第VII因子変異型組成物の投与が可能であり、そして治療に当たる医師により望ましいと感じられる。
【0101】
予防的な適用において、本発明の第VII因子変異型を含む組成物は患者自身の血液凝固能力を高めるために疾患状態又は傷害に感受性があるか又はその他の点でその危険にさらされている患者に投与さ れる。このような量を「予防としての有効量」と定める。予防的適用において、適確な量は同様に患者の健康状態及び体重に依存するが、しかしその用量は通常 70kgの患者に対して1日当たり約0.05mg〜約500mg、より一般的には70kgの患者に対して1日当たり約1.0mg〜約200mgの範囲をとる。
【0102】
前記組成物の単回又は複数回投与は治療に当たる医師により選ばれた服用レベル及びパターンを用いて行われうる。日ごとに維持レベルが求められる外来患者のために、第VII因子変異型は、例えば携帯ポンプ・システムを用いた連続注入により投与される。
【0103】
本発明の第VII因子変異型の局所デリバリー、例えば局所適用が、例えばスプレー、灌流、ダブル・バルーン・カテーテル、ステント、代用血管又はステントに組み込まれる。 バルーン・カテーテルのコートに使用されるハイドロゲル又は他の十分に確立された方法を用いることにより実行される。あらゆる事象において、前記医薬組成物は患者の効果的な治療に十分な第VII因子変異型の量を提供すべきである。
【0104】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、しかしながらこの実施例は保護範囲を制限するものではない。先の記載及び以下の実施例において開示された特 徴は、別個に、そしてそれらのあらゆる組み合わせにおいて、その多種多様な形態で本発明を実現するための構成要素である。
【実施例】
【0105】
以下の実施例で用いた、アミノ酸置換に関する用語法は次のとおりである。1番目の文字は配列番号1の位置での本来存在するアミノ酸を示す。次の数字は配列番号1における位置を示す。2番目の文字は本来のアミノ酸を置換する異なるアミノ酸を示す。〔L305V〕−FVIIを例とすると、配列番号1の305位でロイシンをバリンで置換する。他の例〔L305V/M306D/D309S〕−FVIIにおいて、配列番号1の305位でロイシンをバリンで置換し、及び配列番号1の306位でメチオニンをアスパラギン酸で置換し、及び配列番号1の309位でアスパラギン酸をセリンで置換し、全ての変異が同じ第VII因子ポリペプチド中に存在する。
【0106】
実施例1 〔L305V/M306D/D309S〕−FVII 、〔L305V〕−FVII 、〔L305I〕−FVII 、〔L305T〕−FVII 、及び〔F374P〕−FVII をコードするDNA
〔L305V/M306D/D309S〕−FVII、〔L305V〕−FVII、〔L305I〕−FVII、〔L305T〕−FVII、及び〔F374P〕−FVIIをコードするDNA構築物を、着目の挿入物を伴う高次コイルの2本鎖DNAベクター及び所望の変異を含む2の合成プライマーを用いた特定部位突然変異誘発により製造した。以下のプライマーを用いた。
【0107】
【化1】

【0108】
【化2】

【0109】
それぞれ前記ベクターの反対側の鎖に相補的なオリゴヌクレオチド・プライマーをPfu DNAポリメラーゼを用いて温度サイクリングの間に伸長した。前記プライマーの組み込みにより、スタッガー・ニックを含む突然変異プラスミドを生じた。温度サイクルに続いて、前記産物をメチル化及びヘミメチル化DNA特異的なDpnIにより処理して親DNA鋳型を消化し、そして突然変異を含む合成DNAを 選別した。
【0110】
特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応を用いたDNA構築物の製造法は当業者に周知である(PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USA を参照のこと)。
【0111】
実施例2 〔L305V/M306D/D309S〕−FVIIの製造
原則的に以前に記載されたとおり(Thim et. al. (1988) Biochemistry 27, 7785-7793 ; Persson and Nielson (1996) FEBS Lett. 385, 241-243 )、BHK細胞を形質移入して前記変異型〔L305V/M306D/D309S〕−FVIIの発現を得た。前記第VII因子変異型を以下のとおり精製した: 5mM EDTA、0.1% Triton X−100、及び10mM Trisの添加、8.0へのpH調整、並びに水の添加による10〜11mS/cmへの導電率 の調整の後、培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech)の25mlカラムに添加した。タンパク質の溶出を10mM Tris、50mM NaCl、0.1% Triton X−100、pH8.0から10mM Tris、1M NaCl、5mM CaCl2 、0.1% Triton X−100、pH7.5への勾配により果した。〔L305V/M306D/D309S〕−FVIIを含む画分をプールし、10mM CaCl2 を添加し、そしてCNBr活性化Sepharose 4B(Pharmacia Biotech)に結合したモノクローナル抗体F1A2(Novo Nordisk, Bagsvaerd, Denmark)を含む25mlカラムに適用した。前記カラムを10mM CaCl2 、100mM NaCl、及び0.02% Triton X−100含有 50mM Hepes、pH7.5により平衡化した。平衡化バッファー及び2M NaCl含有平衡化バッファーを用いて洗浄した後、結合物質をCaCl2 の代わりに10mM EDTAを含む平衡化バッファーを用いて溶出した。使用又は保存の前に、EDTAを上回る過剰なCaCl2 を添加するか、又は〔L305V/M306D/D309S〕−FVIIをCa2+含有バッファーに移した。各ステップの収量を第VII因子ELISA計測法により追跡し、そして前記精製タンパク質をSDS−PAGEにより分析した。
【0112】
実施例3 〔L305V〕−FVIIの製造
原則的に以前に記載されたとおり(Thim et. al. (1988) Biochemistry 27, 7785-7793 ; Persson and Nielson (1996) FEBS Lett. 385, 241-243 )、BHK細胞を形質移入して前記変異型〔L305V〕−FVIIの発現を得た。前記第VII因子変異型を以下のとおり精製した: 5mM EDTA、0.1% Triton X−100、及び10mM Trisの添加、8.0へのpH調整、並びに水の添加による10〜11mS/cmへの導電率の調整の後、培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech )の25mlカラムに添加した。タンパク質の溶出を10mM Tris、50mM NaCl、0.1% Triton X−100、pH8.0から10mM Tris、1M NaCl、5mM CaCl2 、0.1% Triton X−100、pH7.5への勾配により果した。〔L305V〕−FVIIを含む画分をプールし、10mM CaCl2 を添加し、そしてCNBr活性化Sepharose 4B(Pharmacia Biotech )に結合したモノクローナル抗体F1A2(Novo Nordisk, Bagsvaerd, Denmark)を含む25mlカラムに適用した。前記カラムを10mM CaCl2 、100mM NaCl、及び0.02% Triton X−100含有 50mM Hepes、pH7.5により平衡化した。平衡化バッファー及び2M NaCl含有平衡化バッファーを用いて洗浄した後、結合物質をCaCl2 の代わりに10mM EDTAを含む平衡化バッファーを用いて溶出した。使用又は保存の前に、EDTAを上回る過剰なCaCl2 を添加するか、又は〔L305V〕−FVIIをCa2+含有バッファーに移した。各ステップの収量を第VII因子ELISA計測法により追跡し、そして前記精製タンパク質をSDS−PAGEにより分析した。
【0113】
実施例4 〔F374P〕−FVIIの製造
原則的に以前に記載されたとおり(Thim et. al. (1988) Biochemistry 27, 7785-7793 ; Persson and Nielson (1996) FEBS Lett. 385, 241-243 )、BHK細胞を形質移入して前記変異型〔F374P〕−FVIIの発現を得た。前記第VII因子変異型を以下のとおり精製した: 5mM EDTA、0.1% Triton X−100、及び10mM Trisの添加、8.0へのpH調整、並びに水の添加による10〜11mS/cmへの導電率の調整の後、培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech )の25mlカラムに添加した。タンパク質の溶出を10mM Tris、50mM NaCl、0.1% Triton X−100、pH8.0から10mM Tris、1M NaCl、5mM CaCl2 、0.1% Triton X−100、pH7.5への勾配により果した。〔F374P〕−FVIIを含む画分をプールし、10mM CaCl2 を添加し、そしてCNBr活性化Sepharose 4B(Pharmacia Biotech )に結合したモノクローナル抗体F1A2(Novo Nordisk, Bagsvaerd, Denmark)を含む25mlカラムに適用した。前記カラムを10mM CaCl2 、100mM NaCl、及び0.02% Triton X−100含有 50mM Hepes、pH7.5により平衡化した。平衡化バッファー及び2M NaCl含有平衡化バッファーを用いて洗浄した後、結合物質をCaCl2 の代わりに10mM EDTAを含む平衡化バッファーを用いて溶出した。使用又は保存の前に、EDTAを上回る過剰なCaCl2 を添加するか、又は〔F374P〕−FVIIをCa2+含有バッファーに移した。各ステップの収量を第VII因子ELISA計測法により追跡し、そして前記精製タンパク質をSDS−PAGEにより分析した。
【0114】
実施例5 〔L305I〕−FVII及び〔L305T〕−FVIIの製造
原則的に以前に記載されたとおり(Thim et. al. (1988) Biochemistry 27, 7785-7793 ; Persson and Nielson (1996) FEBS Lett. 385, 241-243 )、BHK細胞を形質移入して前記変異型〔L305I〕−FVII又は〔L305T〕−FVIIの発現を得た。前記第VII因子変異型を以下のとおり精製した: 5mM EDTA、0.1% Triton X−100、及び10mM Trisの添加、8.0へのpH調整、並びに水の添加による10〜11mS/cmへの導電率の調整の後、培養上清をQ Sepharose Fast Flow(Pharmacia Biotech )の25mlカラムに添加した。タンパク質の溶出を10mM Tris、50mM NaCl、0.1% Triton X−100、pH8.0から10mM Tris、1M NaCl、5mM CaCl2 、0.1% Triton X−100、pH7.5への勾配により果した。〔L305I〕−FVII又は〔L305T〕−FVIIを含む画分をプールし、10mM CaCl2 を添加し、そしてCNBr活性化Sepharose 4B(Pharmacia Biotech )に結合したモノクローナル抗体F1A2(Novo Nordisk, Bagsvaerd, Denmark)を含む25mlカラムに適用した。前記カラムを10mM CaCl2 、100mM NaCl、及び0.02% Triton X−100含有 50mM Hepes、pH7.5により平衡化した。平衡化バッファー及び2M NaCl含有平衡化バッファーを用いて洗浄した後、結合物質をCaCl2 の代わりに10mM EDTAを含む平衡化バッファーを用いて溶出した。使用又は保存の前に、EDTAを上回る過剰なCaCl2 を添加するか、又は〔L305I〕−FVII又は〔L305T〕−FVIIをCa2+含有バッファーに移した。各ステップの収量を第VII因子ELISA計測法により追跡し、そして前記精製タンパク質をSDS−PAGEにより分析した。
【0115】
実施例6 インビトロ加水分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子と第VII因子変異型(共に以下「第VIIa因子」と呼ぶ)をそれらの特異的活性を直接比較するために同時にアッセイした。前記アッセイをマイクロタイター・プレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark )中で行った。終濃度1mMの色素原性基質D−Ile−Pro−Arg−p−ニトロアニリド(S-2288, Chromogenix, Sweden )を、0.1M NaCl、5mM CaCl2 、及び1mg/mlウシ血清アルブミン含有50mM Hepes、pH7.4中の第VIIa因子(終濃度100nM)に添加した。405nmでの吸光度をSpectra Max(商標)340プレート・リーダー(Molecular Devices, USA)により連続的に計測した。酵素を含まないブランク・ウェルにおける吸光度を差し引いた後、20分間インキュベーションの間に発生した吸光度を第 VIIa 因子の変異型と野生型の活性の間の比を計算するために使用した: 比=(A405nm 第VIIa因子変異型)/(A405nm 第VIIa因子野生型)。
【0116】
実施例7 インビトロ・タンパク質分解アッセイ
天然(野生型)第VIIa因子と第VII因子変異型(共に以下「第VIIa因子」と呼ぶ)をそれらの特異的活性を直接比較するために同時にアッセイした。前記アッセイをマイクロタイター・プレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark )中で行った。0.1M NaCl、5mM CaCl2 、及び1mg/mlウシ血清アルブミン含有50mM Hepes、pH7.4 100μL中、第VIIa因子(10nM)と第 X因子(0.8μM)を15分間インキュベートした。次に第X因子の開裂を0.1M NaCl、20mM EDTA、及び1mg/mlウシ血清アルブミン含有50mM Hepes、pH7.4 50μLの添加により停止させた。産生された第Xa因子の量を、終濃度0.5mMの色素原性基質Z−D−Arg−Gly−Arg−p−ニトロアニリド(S -2765, Chromogenix, Sweden )の添加により計測した。405nmでの吸光度をSpectra Max(商標)340プレート・リーダー(Molecular Devices, USA)により連続的に計測した。FVIIa を含まないブランク・ウェルにおける吸光度を差し引いた後、10分間に発生した吸光度を第VIIa因子の変異型と野生型の活性の間の比を計算するために使用した: 比=(A405nm 第VIIa因子変異型)/(A405nm 第VIIa因子野生型)。
【0117】
実施例8 実施例6及び7に記載のアッセイを用いて計測した第VIIa因子変異型の相対活性
【0118】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1−1】天然のヒト第VII凝固因子の全アミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図1−2】天然のヒト第VII凝固因子の全アミノ酸配列(配列番号1)の続きを示す。
【図2】ヒト第VII凝固因子の300〜322領域及び類似のセリン・プロテアーゼの対応領域を示す:第VII因子の300〜322領域(配列番号2)トリプシンの対応領域(配列番号3)トロンビンの対応領域(配列番号4)第Xa因子の対応領域(配列番号5)第VII因子の305〜322領地 (配列番号6)トリプシンの対応領域(配列番号7)トロンビンの対応領域(配列番号8)第Xa因子の対応領域(配列番号9)第VII因子の300〜312領域(配列番号10)トリプシンの対応領域(配列番号11)トロンビンの対応領域(配列番号12)第Xa因子の対応領域(配列番号13)第VII因子の305〜312領域(配列番号14)トリプシンの対応領域(配列番号15)トロンビンの対応領域(配列番号16)第Xa因子の対応領域(配列番号17)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1の他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられているヒト第VII凝固因子変異型。ただし、前記変異型はFVII(Ala305)ではない。
【請求項2】
前記のプロテアーゼ・ドメイン(153〜406位)内の残りの位置で最大20のアミノ酸残基が、置き換えられている、請求項1に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項3】
274位及び/又は300〜304位及び/又は306〜312位の中の少なくとも1の残基が置き換えられている、請求項1又は2に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項4】
少なくとも274位の残基が置き換えられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項5】
300〜304位の中の少なくとも1の残基が置き換えられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項6】
306〜312位の中の少なくとも1の残基が置き換えられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項7】
274位のAla残基が、Met、Leu、Lys若しくはArgにより置き換えられ;そして/又は304位のArg残基が、Tyr、Phe、Leu若しくはMetにより置き換えられ;そして/又は306位のMet残基が、Asp若しくはAsnにより置き換えられ;そして/又は309位のAsp残基が、Ser若しくはThrにより置き換えられている、請求項3に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項8】
305位のLeu残基が、Val、Tyr及びIleから成る群から選ばれるアミノ酸残基により置き換えられているか、又は374位のPhe残基が、Proにより置き換えられている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項9】
305位のLeu残基が、置き換えられている唯一のアミノ酸残基である、請求項1に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項10】
374位のPhe残基が、置き換えられている唯一のアミノ酸残基である、請求項1に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項11】
305位のLeu残基が、Valにより置き換えられている、請求項9に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項12】
前記変異型の活性と配列番号1に示す天然第VII因子ポリペプチドの活性の比が、本明細書中で定めた「インビトロ加水分解アッセイ」により試験した場合に少なくとも約1.25である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項13】
前記比が少なくとも約2.0、好ましくは少なくとも約4.0である、請求項12に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の第VII因子変異型をコードするヌクレオチド配列を含む核酸構築物。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸構築物を含む組み換えベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸構築物又は請求項15に記載のベクターを含む組み換え宿主細胞。
【請求項17】
哺乳動物起源である、請求項16に記載の組み換え宿主細胞。
【請求項18】
前記細胞がCHO細胞BHK細胞から成る群から選ばれる、請求項17に記載の組み換え宿主細胞。
【請求項19】
請求項14に記載の核酸構築物を含み、かつ、発現するトランスジェニック動物。
【請求項20】
請求項14に記載の核酸構築物を含み、かつ、発現するトランスジェニック植物。
【請求項21】
前記核酸構築物の発現及び得られたポリペプチドの培地からの回収が可能な条件下、適当な育成培地中で請求項16〜18のいずれか1項に記載の細胞を培養することを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型の製造方法。
【請求項22】
請求項19に記載のトランスジェニック動物により産生された乳から前記変異型を回収することを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型の製造方法。
【請求項23】
請求項20に記載のトランスジェニック植物の細胞を培養し、そして得られた植物からその変異体を回収することを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型の製造方法。
【請求項24】
配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1のその他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられているヒト第VII凝固因子変異型;及び場合により医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項25】
前記プロテアーゼ・ドメイン(153〜406位)内の残りの位置で最大20のアミノ酸残基が、置き換えられている、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
274位及び/又は300〜304位及び/又は306〜312位の中の少なくとも1の残基が、置き換えられている、請求項24又は25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
274位のAla残基が、Met、Leu、Lys若しくはArgにより置き換えられ;そして/又は304位のArg残基が、Tyr、Phe、Leu若しくはMetにより置き換えられ;そして/又は306位のMet残基が、Asp若しくはAsnにより置き換えられ;そして/又は309位のAsp残基が、Ser若しくはThrにより置き換えられている、請求項24〜26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
305位のLeu残基が、Val、Tyr及びIleから成る群から選ばれるアミノ酸残基により置き換えられているか、又は374位のPhe残基が、Proにより置き換えられている、請求項24〜27のいずれ1項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
305位のLeu残基が、置き換えられている唯一のアミノ酸残基である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項30】
374位Phe残基が、置き換えられている唯一のアミノ酸残基である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項31】
305位のLeu残基が、Valにより置き換えられている、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記変異型の活性と配列番号1に示す天然第VII因子ポリペプチドの活性の比が、本明細書中で定めた「インビトロ加水分解アッセイ」により試験した場合に少なくとも約1.25である、請求項24〜31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型、及び場合により医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項34】
薬物として使用するための、配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1のその他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられているヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項35】
薬物として使用するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型。
【請求項36】
出血症状の治療又は正常な止血系の増強のための薬物の製造のための;配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1のその他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうるアミノ酸残基により置き換えられているヒト第VII凝固因子変異型の使用。
【請求項37】
出血症状の治療又は正常な止血系の増強のための薬物の製造のための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型の使用。
【請求項38】
それを必要とする患者に対する治療的に又は予防的に有効量のヒト第VII凝固因子変異型の投与を含む患者における出血症状の治療又は正常な止血系の増強方法であり、ここで上記ヒト第VII凝固因子変異型が配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1のその他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられているものである上記方法。
【請求項39】
それを必要とする患者に対する治療的又は予防的有効量の、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型の投与を含む患者における出血症状の治療又は正常な止血系の増強方法。
【請求項40】
それを必要とする患者に対する治療的又は予防的有効量のヒト第VII凝固因子変異型の投与を含む患者における出血症状の治療又は予防、あるいは正常な止血系の増強方法であり、ここで上記ヒト第VII凝固因子変異型が配列番号1の305位のLeu残基又は374位のPhe残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられ、かつ、場合によりそのプロテアーゼ・ドメイン内の残りの位置で少なくとも1のその他のアミノ酸残基が、核酸構築物によりコードしうる他のアミノ酸残基により置き換えられているものである上記方法。
【請求項41】
それを必要とする患者に対する治療的又は予防的有効量の、請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト第VII凝固因子変異型を投与することを含む、患者における出血症状の治療又は予防あるいは正常な止血系の増強方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−60902(P2009−60902A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232683(P2008−232683)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【分割の表示】特願2001−580333(P2001−580333)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】