説明

ヒト腫瘍壊死因子−αに対するモノクローナル抗体の可変領域およびこれをコードする遺伝子

本発明の目的は、ヒト腫瘍壊死因子−αに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域を提供ことである。ヒト腫瘍壊死因子−αに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域は、特定の相補性決定領域を有する重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域の少なくとも一つを含む。前記抗体可変領域をコードする核酸分子、前記核酸分子を含む組換えベクターおよび前記組換えベクターにより形質転換された細胞がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト腫瘍壊死因子−α(human tumor necrosis factor−α,hTNFα)に特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域、これをコードする遺伝子、前記遺伝子を含む組換えベクター、および前記組換えベクターにより形質転換された細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト腫瘍壊死因子−α(以下、「hTNFα」と略称する)は、3つの17kDaサブユニットタンパク質からなる三量体(Trimer)である(Eck MJ et al., JBC 267:2119−2112,1992;Smith RA et al., JBC 262:6951−6954, 1987)。hTNFαは、マクロファージと単核細胞とから分泌される炎症性サイトカイン(cytokine)であって、細胞壊死やアポトーシスのような多様な細胞性反応において信号伝達者として作用する(Beyaert R et al., FEBS Lett. 340, 9−16, 1994)。
hTNFαは、軟骨および骨の分解(Saklatvala, Nature 322: 547−549, 1986)や好中球およびリンパ球の接着増加(Pober et al., K.Immunol. 138: 3319, 1987)のように組織の破壊を誘発する前−炎症性反応をもたらす。また、hTNFαは、感染性疾患と腫瘍に対する防衛機構においても重要な役割を果たすと知られている(Fiers W, FEBS Lett.285,199−212,1991)。
【0003】
hTNFαは、炎症性疾患、自己免疫疾患、細菌感染、癌および退行性疾患に関与する。このような疾患の中で、hTNFαは、関節リウマチおよびクローン病(Crohn's disease)の特定の生理学的な治療のための有用な標的タンパク質と見なされている。
【0004】
一方、関節リウマチを治療するための目的で、hTNFα抑制剤を用いるのが提示されている。初期段階の関節リウマチから得た滑膜細胞内でhTNFαが過剰発現され(Buchan G et al., Clin. Exp. Immunol. 73, 449−455, 1988)、前記滑膜細胞を抗−hTNFαモノクローナル抗体で処理すると、関節リウマチの病変に関連するサイトカインが減少したことが報告されている(Butler DM et al., Eur. Cytokine Netw. 6, 225−230, 1995)。
【0005】
また、コラーゲン誘導マウス関節炎モデルにおいて、抗−hTNFα抗体または組換え水溶性hTNFα受容体が炎症および関節破壊を抑制することが発見された(Wpiquet PF et al., Immunology 77, 510−514, 1992; Wooley PH et al., J.Immunol.151, 6602−6607, 1993;Williams RO et al.,Immunology 84,433−439,1995)。さらに、hTNFαを過剰発現する形質転換マウスで炎症性関節炎が誘導されるのが観察された(Keffer J et al., EMBO J .10, 4025−4031,1991)。
【0006】
このような結果は、hTNFαが関節リウマチにおいて炎症性サイトカインを調節する直接的あるいは間接的な調節者として重要な役割を果たしていることを示している。従って、関節リウマチの治療のために、hTNFαに対して高い選択性および反応性を有するモノクローナル抗体の開発が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域(variable region)を提供することである。
本発明の他の目的は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域をコードする遺伝子;前記遺伝子を含む組換えベクター;および前記組換えベクターにより形質転換された細胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域;および配列番号12、13および14のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域の少なくとも一つを含む、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域を提供する。
【0009】
また、本発明は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖の可変領域をコードし、前記重鎖の可変領域が配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む核酸分子を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の軽鎖の可変領域をコードし、前記軽鎖の可変領域が配列番号12、13および14のアミノ酸配列を含む核酸分子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるhTNFαに対するモノクローナル抗体の抗体可変領域をコードする遺伝子は高い結合力でhTNFαを特異的に認識できるキメラまたはヒト化抗体を製造するのに有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域およびこれをコードする遺伝子を含む。
【0013】
hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体を製造するために、マウスを組換えhTNFα(Biosource PHC3011、ベルギー)で免疫させた。前記免疫化されたマウスから分離した脾臓細胞を骨髄腫細胞(Sp2/0−Ag14,ATCC CRL1581)と融合(fusion)させてハイブリドーマ細胞(hybridoma cells)のプール(pool)を製造した。このようなハイブリドーマ細胞を連続的にクローニングと選別過程に適用させて多数のモノクローナル抗体を得た。こうして得られたモノクローナル抗体のうちhTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体を以後の分析のために選別した。その結果、hTNFαに特異的に結合し、hTNFαに対して高い結合親和力を示すモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞株(TSK11)を得た。
【0014】
モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖のcDNA分子を合成するために、前記ハイブリドーマ細胞株TSK11から抽出した全RNAを用いて、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行った。鋳型として前記合成したcDNA分子を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、配列番号:5の塩基配列を含み、重鎖の可変領域をコードする約470bpのcDNA分子および配列番号6の塩基配列を含む軽鎖の可変領域をコードする約450bpのcDNA分子を得た。
【0015】
前記重鎖および軽鎖の可変領域の相補性決定領域(complementarity determining regions,CDRs)を分析した結果、重鎖の可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列における31−35(配列番号:9)、50−66(配列番号:10)、および99−106(配列番号11)のアミノ酸位置で3つのCDRsを有することが確認された。同様に、軽鎖の可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列における24−35(配列番号12)、51−57(配列番号:13)、および90−98(配列番号14)のアミノ酸位置で3つのCDRsを有することが観察された。
【0016】
従って、本発明の一つ実施様態によるcDNA分子は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖の配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む可変領域をコードする。好ましくは、本発明は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域をコードするcDNA分子、より好ましくは、配列番号5の塩基配列を有するcDNA遺伝子を提供する。
【0017】
また、本発明のまた一つの実施様態によるcDNA分子は、hTNFαに特異的に結合するモノクローナル抗体の軽鎖の配列番号:12、13および14のアミノ酸配列を含む可変領域をコードする。本発明は、好ましくは、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域をコードするcDNA分子、より好ましくは、配列番号6の塩基配列を有するcDNA遺伝子を提供する。
【0018】
前記の軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域をコードする上述したcDNA分子はそれぞれ組換えベクターを製造するために通常用いられるベクターに挿入し得る。発明の好ましい一つの実施様態においては、重鎖の可変領域を含む組換えベクターpTSK11−Hvまたは軽鎖の可変領域を含む組換えベクターpTSK11−Lvを製造するために配列番号5または6の塩基配列を含むcDNA分子をpCR2.1−TOPO(インビトロジェン社、アメリカ)に挿入する。
さらに、このような組換えベクターは、適当な宿主、例えば、大腸菌TOP10Fのような微生物内に導入できる。例えば、大腸菌TOP10FをpTSK11−HvまたはpTSK11−Lvで形質転換させて、大腸菌TOP10F/pTSK11−Hvまたは大腸菌TOP10F/ pTSK11−Lvと命名された大腸菌形質転換体を取得し、これらを特許手続き上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って、寄託番号KCTC10514BPおよびKCTC10515BPとして韓国遺伝子銀行(KCTC)(住所:韓国大田廣域市儒城区魚隱洞52、〒305−333)に2003年8月26日付で寄託した。
【0019】
前記組換えベクターは従来の方法(J. Sambrook et al., molecular cloning, Vol. 1,1.25−1.28)を用いて前記形質転換体から回収できる。例えば、前記形質転換体を溶液1(50mMグルコース、25mM Tris−HCl、および10mM EDTA)で処理して細胞膜を弱化させた後、溶液2(0.2N NaOHおよび1%SDS)で処理して細胞膜を完全に破壊し、露出されたタンパク質および染色体を変性させる。その後、前記組換えベクターを除いた細胞成分を溶液3(5M酢酸カリウムおよび酢酸)で処理して凝集させ、これから得た溶液を遠心分離して組換えベクターを含む上澄液を分離し、前記組換えベクターはエタノール沈殿によって前記上澄液から回収できる。
【0020】
本発明の抗体可変領域は、配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域;および配列番号12、13および14のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域の少なくとも一つを含み得る。好ましくは、前記抗体可変領域は、配列番号:7のアミノ酸配列を有する重鎖の可変領域および配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖の可変領域の少なくとも一つを含む。
【0021】
hTNFαに対するヒト化モノクローナル抗体は、ヒト抗体遺伝子を配列番号9〜11のCDRsを含む重鎖の可変領域をコードするcDNA分子または配列番号12〜14のCDRsを含む軽鎖の可変領域をコードするcDNA分子と融合させることによって製造できる。
【0022】
上述したように、本発明の抗体可変領域は、hTNFαに特異的に結合するため、hTNFαを中和・不活性化させるのに効果的に利用できる。
【0023】
下記実施例は本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0024】
実施例1:hTNFαを利用したマウスの免疫化
リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline, PBS)150μlに溶解された組換えhTNFα(Biosource PHC3011、ベルギー)30μgを150μlの完全フロインドアジュバント(complete Freund’s adjuvant、Sigma F5881、アメリカ)と混合して乳化させた後、この混合液300μlを6週齢の雄性Balb/cマウスの腹腔内(i.p.)に注射した。2週間後、30μgのhTNFαと150μlの不完全フロインドアジュバント(incomplete Freund’s adjuvant、Sigma F5506、アメリカ)とを含む乳化混合液300μlを前記マウスの腹腔内に注射した。第2回目の注射から2週間後、150μlのPBSに溶解された30μgの組換えhTNFαを前記マウスの静脈内(i.v.)に注射した。第3回目の注射から10日後、PBSに溶解させた30μgの組換えhTNFαを前記マウスの静脈内に注射した。
【0025】
実施例2:抗−hTNFα抗体を生産するマウスの脾臓細胞の融合
実施例1で免疫化されたマウスを炭酸カリウムで窒息させた後、脾臓を摘出した。摘出したマウスの脾臓から脾臓細胞を得た後、非分泌性の骨髄腫細胞であるSp2/0(ATCC CRL1581)と10:1の比率で混合した。細胞融合のために、予め37℃に加温した50%ポリエチレングリコール(Polyethylene glycol 1500, Roche 783641)1mlを前記細胞混合物に添加した。20%ウシ胎仔血清(FBS, JRH, 12−10678P)、50μg/mlのゲンタマイシン(Gentamicin, Gibco−BRL, 15750−060)、1×DMEM(JRH,56499−10L)および1×HAT補充剤(supplement)(0.1mMソジウムヒポキサンチン[Sodium hypoxanthine]、0.4μMアミノプテリン[Aminopterin]、16μMチミジン[thymidin];Gibco−BRL、31062−037)を含む成長培地で融合細胞を希釈した後、1.1×10細胞/ウェルの濃度で96−ウェルプレート(Nunc、469949、デンマーク)に分株した。前記融合細胞を5%二酸化炭素が供給される37℃培養器(humid ified CO2 incubator)で2−3週間培養した。
【0026】
実施例3:抗−hTNFα抗体を生産する細胞株の検索およびクローニング
一旦融合細胞がコロニーを形成すると、その上澄液を取って抗体生産を確認するためにELISAで分析した。ELISA分析のために、ウェルに1μg/mlのhTNFαを添加し、4℃で一晩中反応させてコーティングした後、0.5%カゼイン−PBS溶液200μlを各ウェルに添加して37℃で1時間反応させた。その後、細胞上澄液100μlを各ウェルに添加して37℃で2時間反応させた。その後、1:1000の比率で希釈した100μlの西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が標識されたヤギ抗マウスIgG(Goat anti−mouses IgG−HRP、Bio−rad、170−6516)を各ウェルに添加し、37℃で1.5時間反応させた。最後に、各ウェルに西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ基質溶液(Horseradish peroxidase substrate solution,Bio−rad, 172−1064)を100μlずつ添加して37℃で3分間放置し、発色反応を誘導した。410nmの波長で各ウェルの吸光度をELISA読取機(ダイナテック社、アメリカ)で測定した。
【0027】
実施例4:抗−hTNFα抗体を生産する細胞株の選別
実施例3でクローニングされた細胞株のうち、hTNFα免疫化マウスから得た陽性対照群血清よりも高い吸光度を示した9つのIgG−生産細胞株を得た。これらの細胞株のうち、最高の吸光度を示したTSK11を以後の分析のための細胞株として最終選抜した。
【0028】
実施例5:ハイブリドーマ細胞株TSK11から得たモノクローナル抗体のアイソタイプ
ハイブリドーマ細胞株TSK11から生産されたモノクローナル抗体のアイソタイプ(Isotype)は、下記のようにELISA分析で決定した。マウスモノ抗体アイディーキットHRP溶液(Mouse MonoAb ID kit HRP solution, Zymed, 90−6550)100μlを100μg/mlのTSK11抗体で予めコーティングされたウェルに添加した後、前記ウェルプレートを37℃で3分間維持して発色反応を誘導した。各ウェルの吸光度をELISA読取機(ダイナテックサ社、アメリカ)を用いて410nm波長で測定した。その結果、TSK11抗体がIgG1−タイプ重鎖とカッパタイプ軽鎖とを含むことを確認した。
【0029】
実施例6:ハイブリドーマ細胞株TSK11由来モノクローナル抗体の生体内の結合親和力
hTNFαに対するTSK11抗体の生体内の結合親和力はELISA分析によって次のように測定した。まず、各ウェルを4μg/mlの濃度で100μl組換えhTNFαでコーティングした。次いで、マイクロチューブ(AXYGEN社、アメリカ)内で組換えhTNFαを5×10−9M〜1×10−10Mの範囲の濃度になるよう、0.02%ウシ血清アルブミンが添加されたPBS溶液で希釈した。このようにして得られた多様な濃度のhTNFα希釈液をTSK11抗体30ngと混合して37℃で2時間反応させた。前記混合液を組換えhTNFαでコーティングされた各ウェルに分散し、37℃で2時間反応させた。その後、各ウェルに西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ基質溶液(Bio−rad,172−1064)を100μlずつ添加し、37℃で3分間発色反応を誘導した。各ウェルの吸光度をELISA読取機(ダイナテック社、アメリカ)を用いて410nm波長で測定した。
見かけ上の親和力は、競争的ELISAのスキャッチャード・プロット分析(Scatchard plot analysis)に従って最大結合の50%を抑制するのに要求される抗原濃度の逆数(reciprocal)を計算することで決めた(Friguet B. et al., J. of Immunological Method77, 305−319, 1985)。その結果、hTNFαに対するTSK11抗体の親和力は1.95×10−9M(Kd)であった。
【0030】
実施例7:ハイブリドーマ細胞株TSK11からRNAの分離およびcDNA合成
1×10個のハイブリドーマ細胞株TSK11の細胞からRNeasyキット(QIAGEN、アメリカ)を用いて全RNAを抽出し、これをThermotranscript Kit(GibcoBRL、アメリカ)を利用したcDNA合成に用いた。鋳型としてのRNA5μgと0.5ngのオリゴd(T)とを滅菌蒸留水で希釈して最終体積を10μlに合わせた。前記混合物を65℃で5分間放置してRNAを変性(denaturation)させ、常温に冷却してプライマーアニーリング(primer annealing)を誘導した。cDNA合成のためのRT−PCR反応溶液は、逆転写酵素(reverse transcriptase、1unit/μl)1μl、0.1M DTT2.5μl、10mM dNTP2.5μlとRNA分解酵素抑制剤(RNase inhibitor,1unit/μl)1μlを混合し、滅菌蒸留水で最終体積を25μlで合わせて製造した。RT−PCR反応を50℃で1時間行い、95℃で5分間加熱して反応を中止させた。
【0031】
鋳型として合成されたcDNA2μgと重鎖の増幅のためのプライマー対(配列番号1および2)または軽鎖の増幅のための他のプライマー対(配列番号3および4)を用いてPCRを行った。PCR反応溶液はAmpliTaq Gold polymerase (パーキンエルマー社、アメリカ、5unit/μl)0.5μl、10mM dNTP1μlおよび25mM MgCl5μlを混合し、滅菌蒸留水で最終体積を50μlに合わせた。PCRは次の条件下で行った:95℃で5分間の初期変性後、94℃で1分、55℃で1分、72℃で2分の反応を30回行い、72℃で10分の最終延長。
【0032】
増幅されたDNAを1.5%アガロースゲル電気泳動させ、このゲルを0.5μg/mlのエチジウムブロマイド(ethidium bromide)溶液100mlで20分間染色した。その結果、100bp標準DNA梯子(ライフテクノロジー、アメリカ)を基準に、重鎖の場合は約470bpに該当する位置から、軽鎖の場合は約450BPに該当する位置で、2つの増幅されたDNA産物が検出された。
【0033】
実施例8:cDNAクローニング
実施例7で増幅された470bpの重鎖のDNA断片をアガロースゲルから回収した後、QIAquick ゲル抽出キット(QIAGEN、アメリカ)を用いて精製した。精製したDNA断片をベクターpCR2.1−TOPO(インビトロジェン社、アメリカ)にサブクローニングした後、得られたベクターを用いてこれを大腸菌TOP10F(インビトロゼン、アメリカ)を形質転換させて形質転換体を得た (Cohen, S. N. et al, Proc.Nat. Acad. Sci.69, 2110, 1972)。このように製造された大腸菌形質転換体を、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地で一晩中培養した。プラスミドDNAを培養された形質転換体から抽出した後、制限酵素EcoRI(バイオラブ社、アメリカ)で切断して470bpの重鎖DNA断片を含むクローンTSK11−Hvを得た。
【0034】
実施例7で増幅された450bpの軽鎖のDNA断片に対しても、上記と同一操作過程を行って、大腸菌TOP10F形質転換体を得た。前記大腸菌質転換体を100μg/mlのアンピシリンが含有されたLB培地で一晩中培養した。プラスミドDNAを培養された形質転換体から抽出した後、制限酵素EcoRI(バイオラブ社、アメリカ)で切断して450bpの軽鎖のDNA断片を含むクローンTSK11−Lvを得た。
【0035】
実施例9:cDNA塩基配列の分析
実施例8で得たクローンTSK11−HvおよびTSK11−LvをWizard plus SV Minipreps DNA Purification System (プロメガ、アメリカ)を用いて精製し、それらの塩基配列の分析を行った。
その結果、前記重鎖のDNA断片が配列番号:5の塩基配列と配列番号:7のアミノ酸配列とを含むことを確認した。クローンTSK11−Hvに属する3つの特異的クローン(TSK11Hv1、TSK11Hv2およびTSK11Hv3)を調査した結果、これらの塩基配列がすべて同一であった。クローンTSK11Hvから得たプラスミドベクターをpTSK11−Hvと命名した。また、前記プラスミドベクターpTSK11−Hvで形質転換された大腸菌を大腸菌TOP10F/pTSK11−Hvと命名し、特許手続き上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って、寄託番号KCTC10514BPとして韓国遺伝子銀行(KCTC)(住所:韓国大田廣域市儒城区魚隱洞52、〒305−333)に2003年8月26日付で寄託した。
【0036】
また、前記軽鎖DNA断片は、配列番号6の塩基配列と配列番号8のアミノ酸配列とを含むことを確認した。クローンTSK11−Lvに属する2つの特異的クローン(TSK11Lv1およびTSK11Lv2)を調査した結果、これらの塩基配列がすべて同一であった。クローンTSK11Lvから得たプラスミドベクターをpTSK11−Lvと命名した。また、前記プラスミドベクターpTSK11−Lvで形質転換された大腸菌を大腸菌TOP10F/pTSK11−Lvと命名し、特許手続き上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って、寄託番号KCTC10515BPとして韓国遺伝子銀行(KCTC)(住所:韓国大田廣域市儒城区魚隱洞52、〒305−333)に2003年8月26日付で寄託した。
【0037】
ハイブリドーマ細胞株TSK11から得たモノクローナル抗体の可変領域に対するアミノ酸配列分析(Harris. L. et al., Protein Sci. 4, 306−310, 1995. ; Kabat. E.A.et al., Sequence of proteins of immunological interest. 5th Ed., 1991. ; Williams A.F.et al., Annu.Rev.Immunol. 6,381−406,1988)を行った結果、重鎖はKabatが定義した11つのグループ以外の他グループ(miscellaneous group)に属し、軽鎖はカッパ6−タイプサブグループに属することが判明した。
重鎖の抗原を認識するCDRsは31−35(配列番号9)、50−66(配列番号10)および99−106(配列番号11)のアミノ酸の位置で発見され、軽鎖の抗原を認識するCDRsは24−35(配列番号12)、51−57(配列番号13)および90−98(配列番号14)のアミノ酸の位置で発見された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域;および配列番号2、13および14のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域の少なくとも一つを含むヒト腫瘍壊死因子−αに特異的に結合するモノクローナル抗体の抗体可変領域。
【請求項2】
前記重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体可変領域。
【請求項3】
前記軽鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗体可変領域。
【請求項4】
前記重鎖の可変領域が配列番号5の塩基配列を含むcDNA分子によってコードされることを特徴とする請求項1に記載の抗体可変領域。
【請求項5】
前記軽鎖の可変領域が配列番号6の塩基配列を含むcDNA分子によってコードされることを特徴とする請求項1に記載の抗体可変領域。
【請求項6】
ヒト腫瘍壊死因子−αに特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖の可変領域をコードし、前記重鎖の可変領域が配列番号9、10および11のアミノ酸配列を含む核酸分子。
【請求項7】
前記重鎖の可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
配列番号:5の塩基配列を含むことを特徴とする請求項6に記載の核酸分子。
【請求項9】
ヒト腫瘍壊死因子−αに特異的に結合するモノクローナル抗体の軽鎖の可変領域をコードし、前記軽鎖の可変領域が配列番号12、13および14のアミノ酸配列を含む核酸分子。
【請求項10】
前記軽鎖の可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
配列番号6の塩基配列を含むことを特徴とする請求項9に記載の核酸分子。
【請求項12】
請求項6に記載の核酸分子を含む組換えベクターpTSK11−Hv。
【請求項13】
請求項9に記載の核酸分子を含む組換えベクターpTSK11−Lv。
【請求項14】
請求項12に記載の組換えベクターpTSK11−Hvで形質転換され、寄託番号KCTC10514BPを有する、形質転換体大腸菌TOP10F/pTSK11−Hv。
【請求項15】
請求項13に記載の組換えベクターpTSK11−Lvで形質転換され、寄託番号KCTC10515BPを有する、形質転換体大腸菌TOP10F/pTSK11−Lv。

【公表番号】特表2007−530012(P2007−530012A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539402(P2006−539402)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2004/002964
【国際公開番号】WO2005/047329
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(500309919)ユーハン・コーポレイション (16)
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
【Fターム(参考)】