説明

ヒトIL−1βに対する特異性を有する抗体分子

【課題】IL−1βの抗原決定基に対する特異性を有する抗体分子、抗体分子の療法的使用、及び前記抗体分子を生成するための方法の提供。
【解決手段】重鎖を含むヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、前記重鎖の可変ドメインが、CDR−H1、H2、H3としてそれぞれ特定のアミノ酸配列を有するCDRの少なくとも1つを含む中和抗体と、その製造方法、および該抗体を含む薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−1βの抗原決定基に対する特異性を有する抗体分子に関する。本発明は、抗体分子の療法的使用、及び抗体分子を生成するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
前炎症性サイトカイン、インターロイキン−1β(IL−1β)は、IL−1遺伝子のファミリーのメンバーであり、IL−1α及びIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1RA)も含む(Dinarello、1996、Blood、87、6、2095〜2147によって総説された)。IL−1βは炎症と主に関係があり、内皮細胞及びマクロファージ、並びにT細胞とB細胞の両方に対して直接的な影響がある。IL−1βは骨髄ストロマ細胞を刺激して、IL−6及び幾つかのコロニー刺激因子を生成し、TNFαの生成も誘導する。
【0003】
IL−1βは、炎症と関係がある多くの病的状態と関連がある。これらは、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、内毒素性ショック、関節炎、慢性関節リウマチ、骨盤内炎症性疾患、多発性硬化症、喘息、骨関節症、乾癬、アルツハイマー病、クローン病、ペーロニー病、心臓病(アテローム性動脈硬化症など)、結腸癌、セリアック病、胆嚢病、毛巣病、腹膜炎、髄膜脳炎、他の自己免疫障害、膵炎、外傷(外科手術)、移植片対宿主疾患及び移植拒絶を含む。
【0004】
IL−1βは、癌、骨粗しょう症及び痛みのシグナルとも関連がある。
【0005】
炎症、痛み及び他の病的状態におけるIL−1βの関与は、IL−1βが、これらの状態の予防及び/又は治療用の薬剤及び他の分子の、よい標的であることを示唆する。
【0006】
成熟17kDa形のIL−1βは、IL−1受容体IL−1Rと結合することによって、その生物学的効果を発揮する。2つのタイプのIL−1R:タイプI受容体IL−1RI及びタイプII受容体IL−1RIIが存在する。IL−1βとIL−1RIの結合によって、受容体補助タンパク質及びシグナルの漸増がもたらされる。一方IL−1RIIは、IL−1βの結合はシグナルを変換しないので、「おとり」受容体と呼ばれてきている。IL−1βと結合する少なくとも3タイプの抗体が存在すると、予想することができる:
(i)IL−1βと結合するが、IL−1RIの生物活性は中和しない抗体(非中和抗体);
(ii)IL−1βと結合し、IL−1RIとの結合を阻止することによってIL−1RIの生物活性を中和する抗体;及び
(iii)IL−1βと結合し、IL−1RIの生物活性を中和するが、IL−1RIとの結合は阻止しない抗体であって、US2003/0026806中に記載のものなどの抗体。
【0007】
抗IL−1β抗体が同定され、IL−1β仲介の疾患及び障害の治療における使用に提案されてきている;例えばWO95/01997を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々は現在、in vivo、例えば本明細書に記載するin vivoの炎症モデルにおいて特に有効な、改良型IL−1β抗体を同定している。この抗体は、前の選択肢(ii)で定義した中和抗体である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様では、本発明は、重鎖を含むヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、重鎖の可変ドメインが、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列を有するCDR(相補性決定領域)、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列を有するCDR、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、中和抗体を提供する。
【0010】
抗体の可変ドメイン中の残基は、Kabat他によって考案されたシステムに従って、従来付番されている。このシステムは、Kabat他、1987、「免疫学的対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」中、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以後は「Kabat他」(上記))中に述べられている。他に示す場合を除き、この付番システムを本明細書では使用する。
【0011】
Kabat残基の表示は、アミノ酸残基の直鎖状付番と常に直接対応するわけではない。実際の直鎖状アミノ酸配列は、基本的可変ドメイン構造の枠組みであろうとCDRであろうと、構造要素の短縮、又は構造要素への挿入に対応して、厳密なKabatの付番より少ない又は余分のアミノ酸を含むことができる。残基の正確なKabat付番は、「標準的な」Kabat付番配列を有する抗体の配列中の相同残基のアラインメントによって、所与の抗体に関して決定することができる。
【0012】
重鎖の可変ドメインのCDRは、Kabatの付番システムによれば、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。しかしながら、Chothia(Chothia、C.及びLesk、A.M.J.Mol.Biol.、196、901〜917(1987))によれば、CDR−H1と同等なループが、残基26から残基32まで広がる。したがって、本明細書で使用する「CDR−H1」は、Kabatの付番システムとChothiaの幾何学的ループの定義の組合せによって記載されたのと同様に、残基26〜35を含む。
【0013】
軽鎖の可変ドメインのCDRは、Kabatの付番システムによれば、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。本明細書で使用する、用語「中和抗体」は、IL−1βの生物学的シグナル活性を、特にIL−1βとIL−1RIの結合を阻止することによって、中和することができる抗体を記載する。
【0014】
好ましくは、本発明の第一の態様の抗体は重鎖を含み、重鎖の可変ドメインのCDR−H1、CDR−H2及びCDR−H3の少なくとも2つは、以下の:CDR−H1として配列番号5に与えられる配列、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列から選択される。例えば抗体は、CDR−H1が配列番号5に与えられる配列を有し、CDR−H2が配列番号6に与えられる配列を有する、重鎖を含むことができる。或いは抗体は、CDR−H1が配列番号5に与えられる配列を有し、CDR−H3が配列番号7に与えられる配列を有する、重鎖を含むことができ、或いは抗体は、CDR−H2が配列番号6に与えられる配列を有し、CDR−H3が配列番号7に与えられる配列を有する、重鎖を含むことができる。誤解を避けるために、すべての順列が含まれることは理解される。
【0015】
より好ましくは、本発明の第一の態様の抗体は重鎖を含み、その可変ドメインは、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を含む。
【0016】
さらにより好ましくは、本発明の第一の態様の抗体は、重鎖の可変ドメインが配列番号3に与えられる配列を含む、重鎖を含む。
【0017】
或いは、本発明の第一の態様の抗体は重鎖を含み、その重鎖の可変ドメインは、配列番号3に与えられる配列と、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0018】
本明細書で使用する「同一性」は、アラインメントをとる配列中の任意の特定の位置において、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用する「類似性」は、アラインメントをとる配列中の任意の特定の位置において、配列間でアミノ酸残基が類似の型であることを示す。例えばロイシンは、イソロイシン又はバリンと置換することができる。1つの他のアミノ酸としばしば置換することができる他のアミノ酸には:
−フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
−リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);及び
−システイン及びメチオニン(イオウ含有側鎖を有するアミノ酸)があるが、これらだけには限られない。同一性及び類似性の程度は、容易に計算することができる(「コンピュータによる分子生物学(Computational Molecular Biology)」、Lesk、A.M.、ed.、Oxford University Press、ニューヨーク、1988;「バイオコンピュータ情報科学及びゲノムプロジェクト(Biocomputing.Informatics and Genome Projects)」、Smith、D.W.、ed.、Academic Press、ニューヨーク、1993;「配列データのコンピュータ分析、パート1(Computer Analysis of Sequence Data、Part 1)」、Griffin、A.M.及びGriffin H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」、von Heinje、G.、Academic Press、1987;及び「配列分析プライマー(Sequence Analysis Primer)」、Gribskov、M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、ニューヨーク、1991)。好ましくは、本発明の第一の態様の抗体は重鎖を含み、その重鎖の可変ドメインは、配列番号3に与えられる配列と、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】マウスモノクローナル抗体IC8の重鎖の可変ドメインの、ヌクレオチド及びアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び3)を示す図である。
【図1b】マウスモノクローナル抗体IC8の軽鎖の可変ドメインの、ヌクレオチド及びアミノ酸配列(それぞれ配列番号2及び4)を示す図である。
【図2】ベクターMRR14及びpMRR10を示す図である。
【図3】IC8重鎖(図3a;配列番号:11〜15)及び軽鎖(図3b;配列番号:16〜20)配列に関する、移植設計を示す図である。記号(|)は、ドナー:アクセプター:移植枠組み配列の間の違いを強調する。CDRは、IC8配列に関しては一本下線である。Kabatの定義とChothiaの定義の両方を含むCDR−H1以外、これらはKabatによって定義されたものと同様である。二本下線の配列は、移植片中に保持されるドナー残基である。星印(*)の残基は、ヒト亜群VH3生殖細胞系配列に共通であるが、この特定の生殖細胞系中には存在せず、これらの残基が元のドナー配列中に存在するとしても、これらがマウスの残基であるとは考えられない。
【図4a】設計した遺伝子gH1のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す図である。
【図4b】設計した遺伝子gL1のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す図である。
【図5】遺伝子の構築用に使用した、オリゴヌクレオチドを示す図である。
【図6】他の移植用に使用した、オリゴヌクレオチドカセットを示す図である。示すのは、IC8gL2センス鎖配列(配列番号59)、逆鎖配列(配列番号72)及び対応するアミノ酸配列(配列番号60);IC8gL3センス鎖配列(配列番号61)、逆鎖配列(配列番号73)及び対応するアミノ酸配列(配列番号62);IC8gH2センス鎖配列(配列番号63)、逆鎖配列(配列番号64)及び対応するアミノ酸配列(配列番号65)、及びIC8gH3センス鎖配列(配列番号66)、逆鎖配列(配列番号67)及び対応するアミノ酸配列(配列番号68)である。下線の残基は、変化したアミノ酸を示す。
【図7】IC8移植片を用いたIL−1β中和アッセイからの結果を示す図である。
【図8】ベクターpTTOD(Fab’)の地図を示す図である。
【図9】IC8 V領域遺伝子の中間ベクターpTTOD(Fab’)へのクローニングの、ステップ1〜4を示す図である。
【図10】ベクターpTTOD(gH3gL3Fab’IGS−2)の地図を示す図である。
【図11】pTTOD(gH3gL3Fab’IGS−2);配列番号69のコード配列及び隣接配列を示す図である。
【図12】nが約420であり、リシル残基上のそれぞれのアミノ基が、メトキシPEG残基と共有結合しており、リシル−マレイミド連結基とシステイン残基を介して共有結合したIL−1βに対する抗体由来の、修飾Fab断片の構造を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第二の態様では、本発明は、軽鎖を含むヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列を有するCDR(相補性決定領域)、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列を有するCDR、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、中和抗体を提供する。
【0021】
好ましくは、本発明の第二の態様の抗体は軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインのCDR−L1、CDR−L2及びCDR−L3の少なくとも2つは、以下の:CDR−L1として配列番号8に与えられる配列、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列から選択される。例えば抗体は、CDR−L1が配列番号8に与えられる配列を有し、CDR−L2が配列番号9に与えられる配列を有する、軽鎖を含むことができる。或いは抗体は、CDR−L1が配列番号8に与えられる配列を有し、CDR−L3が配列番号10に与えられる配列を有する、軽鎖を含むことができ、或いは抗体は、CDR−L2が配列番号9に与えられる配列を有し、CDR−L3が配列番号10に与えられる配列を有する、軽鎖を含むことができる。誤解を避けるために、すべての順列が含まれることは理解される。
【0022】
より好ましくは、本発明の第二の態様の抗体は軽鎖を含み、その可変ドメインは、CDR−L1の配列番号8に与えられる配列、CDR−L2の配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3の配列番号10に与えられる配列を含む。
【0023】
さらにより好ましくは、本発明の第二の態様の抗体は、軽鎖の可変ドメインが配列番号4に与えられる配列を含む、軽鎖を含む。
【0024】
或いは、本発明の第二の態様の抗体は軽鎖を含み、その軽鎖の可変ドメインは、配列番号4に与えられる配列と、少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。好ましくは、本発明の第二の態様の抗体は軽鎖を含み、その軽鎖の可変ドメインは、配列番号4に与えられる配列と、少なくとも90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0025】
本発明の第一及び第二の態様の抗体分子は、相補的軽鎖又は相補的重鎖をそれぞれ含むことが好ましい。
【0026】
好ましくは、本発明の第一及び第二の態様のいずれかの抗体は、重鎖の可変ドメインが、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を含む重鎖、及び軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0027】
本発明の第一及び第二の態様の最も好ましい実施形態では、抗体は、重鎖の可変ドメインが配列番号3に与えられる配列を含む重鎖、及び軽鎖の可変ドメインが配列番号4に与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0028】
本発明の第三の態様では、本発明の第一及び第二の態様のいずれかの抗体を提供し、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0029】
本発明の第三の態様の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、重鎖の可変ドメインが配列番号3に与えられる配列を含む重鎖、及び軽鎖の可変ドメインが配列番号4に与えられる配列を含む軽鎖を含む。
【0030】
本発明の第三の態様の他の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体は、マウスモノクローナル抗体であり、このモノクローナル抗体は重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは配列番号3に与えられる配列を含み、軽鎖の可変ドメインが配列番号4に与えられる配列を含む。このマウスモノクローナル抗体は、本明細書では「IC8」又は「ドナー」抗体又は「マウスモノクローナル抗体」と呼ぶ。マウスモノクローナル抗体IC8の重鎖及び軽鎖の可変ドメインの、完全ヌクレオチド及びアミノ酸配列は図1に示し、配列番号1〜4に与える。配列番号5〜10に与えるCDRは、マウスモノクローナル抗体IC8に由来する。
【0031】
本発明の第四の態様では、1つ又は複数のCDRをマウスモノクローナル抗体IC8から得た、CDR移植抗体分子を提供する。本明細書で使用する、用語「CDR移植抗体分子」は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域枠組みに移植された、ドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)由来の、1つ又は複数のCDR(望むならば、1つ又は複数の修飾型CDRを含む)を含む、抗体分子を指す。総説に関しては、Vaughan他、「ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、16、535〜539、1998を参照のこと。
【0032】
CDRを移植するとき、CDRが由来するドナー抗体のクラス/型と関係がある、マウス、霊長類及びヒト枠組み領域を含めた、任意の適切なアクセプター可変領域の枠組み配列を使用することができる。好ましくは、本発明の第四の態様のCDR移植抗体は、ヒトアクセプター枠組み領域、及び前述のドナー抗体由来の1つ又は複数のCDRを含む可変ドメインを有する。したがって、その可変ドメインがヒトアクセプター枠組み領域及び非ヒトドナーCDRを含む、中和CDR移植抗体を提供する。
【0033】
本発明において使用することができるヒト枠組みの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabat他、上記)である。例えば、KOL及びNEWMは重鎖用に使用することができ、REIは軽鎖用に使用することができ、EU、LAY及びPOMは、重鎖及び軽鎖用に使用することができる。或いは、ヒト生殖細胞系配列を使用することができる。
【0034】
本発明のCDR移植抗体中では、アクセプター重鎖及び軽鎖は、必ずしも同じ抗体に由来する必要はなく、望むならば、異なる鎖に由来する枠組み領域を有する複合鎖を含むことができる。
【0035】
本発明のCDR移植抗体の重鎖の好ましい枠組み領域は、図3中に示すヒト亜群VH3配列3−11(DP−35)(配列番号12)及びJH4に由来する。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDR移植抗体であって、重鎖の枠組み領域がヒト亜群VH3配列3−11(DP−35)(配列番号12)及びJH4に由来する抗体を提供する。ヒトJH4の配列は以下の通りである:
.(YFDY)WGQGTLVTVSS(配列番号74)。YFDYモチーフはCDR−H3の一部であり、枠組み4の一部ではない(Ravetch、JV他、1981、Cell、27、583〜591)。ドナー配列は、図3a中に示すIC8 VH配列(配列番号11)である。
【0036】
本発明のCDR移植抗体の軽鎖の好ましい枠組み領域は、図3中に示すヒト生殖細胞系亜群VK1配列O12(DPK9)(配列番号17)及びJK1に由来する。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDR移植抗体であって、軽鎖の枠組み領域がヒト亜群配列O12(DPK9)及びJK1に由来する抗体を提供する。JK1の配列は以下の通りである:(WT)FGQGTKVEIK(配列番号75)。WTモチーフはCDR−L3の一部であり、枠組み4の一部ではない(Hieter、PA.、他、1982、J.Biol.Chem.、257、1516〜1522)。ドナー配列は、図3b中に示すIC8 VL配列(配列番号16)である。
【0037】
さらに、本発明のCDR移植抗体中では、枠組み領域は、アクセプター抗体の配列と全く同じ配列を有する必要はない。例えば、異常な残基は、そのアクセプター鎖のクラス又はタイプに関して、より頻繁に存在する残基に変えることができる。或いは、アクセプター枠組み領域中の選択した残基は、それらの残基が、ドナー抗体中の同じ位置で見られる残基に対応するように変えることができる(Reichmann他、「ネイチャー(Nature)」、332、323〜324、1988を参照のこと)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するのに、必要最小限に留めなければならない。変えることが必要である可能性があるアクセプター枠組み領域中の残基を、選択するためのプロトコルは、WO91/09967中に述べられている。
【0038】
好ましくは、本発明のCDR移植抗体分子中では、アクセプター重鎖がヒトDP−35+JH4配列を有する場合、したがって重鎖のアクセプター枠組み領域は、1つ又は複数のドナーCDR以外に、位置44にドナー残基を含む(Kabat他(上記)による)。残基44をドナー残基に変えた、親和性に対する驚くべき影響は、予想されなかった。したがって、任意の抗体ヒト化プロセスにおいて、ドナー又はアクセプター残基として残基44を有する影響は、さらに調べる価値があろう。したがって、少なくとも重鎖の可変ドメインの位置44における残基がドナー残基である、CDR移植抗体を提供する。
【0039】
代替的或いは追加的に、アクセプター重鎖がヒトDP−35+JH4配列を有する場合、したがって重鎖のアクセプター枠組み領域は、1つ又は複数のドナーCDR以外に、位置89にドナー残基を含むことが好ましい(Kabat他(上記)による)。したがって、少なくとも重鎖の可変ドメインの位置44及び/又は位置89における残基がドナー残基である、CDR移植抗体を提供する。
【0040】
好ましくは、本発明のCDR移植抗体分子中では、アクセプター軽鎖がヒト亜群DPK9+JK1配列を有する場合、したがって軽鎖のアクセプター枠組み領域は、位置45、70及び85にドナー残基を含み、位置40及び48にドナー残基をさらに含むことができる(Kabat他(上記)による)。したがって、少なくとも位置40、45、48、70及び/又は85における残基がドナー残基である、CDR移植抗体を提供する。位置45、70及び85における残基がドナー残基である、CDR移植抗体も提供する。
【0041】
ドナー残基は、ドナー抗体、即ちCDRが本来由来した抗体由来の残基であり、それは本発明の場合、マウスモノクローナル抗体IC8である。
【0042】
本発明の第一又は第四の態様の他の実施形態では、重鎖は、gH1(配列番号13)、gH2(配列番号14)又はgH3(配列番号15)の配列を含むことが好ましい。これらの移植重鎖の可変ドメインの配列は、図3a中に示す。
【0043】
本発明の第二又は第四の態様の他の実施形態では、軽鎖は、gL1(配列番号18)、gL2(配列番号19)又はgL3(配列番号20)の配列を含むことが好ましい。これらの移植軽鎖の可変ドメインの配列は、図3b中に示す。
【0044】
より好ましくは、本発明の第二又は第四の態様の他の実施形態の抗体分子は、gH1(配列番号13)、gH2(配列番号14)又はgH3(配列番号15)の配列を含む重鎖、及びgL1(配列番号18)、gL2(配列番号19)又はgL3(配列番号20)の配列を含む軽鎖を含む。
【0045】
さらにより好ましくは、本発明の第二又は第四の態様の他の実施形態の抗体分子の重鎖は、可変ドメインgH3(配列番号15)を含み、本発明の抗体分子の軽鎖は、可変ドメインgL3(配列番号20)を含む。
【0046】
本発明の第五の態様では、本発明の第一から第四までの態様のいずれか1つの抗体を提供し、この抗体はIC8と同じエピトープと結合する。或いは、ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、その重鎖が配列gH3(配列番号15)を含み、その軽鎖が配列gL3(配列番号20)を含む抗体と、同じエピトープと結合する、中和抗体を提供する。
【0047】
本発明の抗体分子は、完全長重鎖及び軽鎖、又はFab、修飾Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又はscFv断片などのそれらの断片を有する完全抗体分子を含むことができる。或いは、本発明の抗体分子は、軽鎖若しくは重鎖モノマー若しくはダイマー、又は単鎖抗体、例えば重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインがペプチド連結基によって接合している、単鎖Fvを含むことができる。同様に、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を、適切に他の抗体ドメインと組み合わせることができる。
【0048】
本発明の抗体分子は、それと結合したエフェクター又はレポーター分子を有することができる。例えば、本発明の抗体分子は、共有架橋構造によってそれと結合した、重金属原子、又はリシンなどの毒素をキレート化するための、マクロ環を有することができる。
【0049】
本発明の抗体分子を修飾して、エフェクター又はレポーター分子を、それに結合させることができることが好ましい。本発明の抗体分子は、以下に記載する修飾Fab断片であることが、最も好ましい。
【0050】
或いは、組換えDNA技術の手順を使用して、Fc断片(CH2、CH3及びヒンジドメイン)、完全免疫グロブリン分子の、CH2ドメイン及びCH3ドメイン、又はCH3ドメインが、ペプチド連結基、機能的非免疫グロブリンタンパク質、酵素又は毒素分子などによって置換されているか、或いはそれらが結合している、抗体分子を生成することができる。或いは、本発明の抗体分子は修飾Fab断片であり、その修飾は、エフェクター又はレポーター分子の結合を可能にするための、1つ又は複数のアミノ酸のその重鎖のC末端への付加であることが好ましい。他のアミノ酸は、エフェクター又はレポーター分子を結合させることができる、1つ又は2つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成することが好ましい。
【0051】
結合したエフェクター又はレポーター分子を有する、本発明の中和抗体分子も提供する。エフェクター又はレポーター分子には、細胞毒性物質、放射性核種又は薬剤成分などの分子がある。結合させることができる他の分子には、毒素、例えばアブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、又はジフテリア毒素など、タンパク質、例えば、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノゲン活性化物質など、抗血栓剤又は抗血管新生剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン、生物学的応答調節剤、例えばリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)又は他の成長因子などがある。
【0052】
好ましいエフェクター基はポリマー分子であり、これを修飾Fab断片と結合させて、in vivoでのその半減期を増大させることができる。
【0053】
ポリマー分子は、一般に、合成又は天然ポリマー、例えば場合によっては置換された直鎖又は分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー、又は分岐鎖若しくは非分岐鎖多糖、例えばホモ又はヘテロ多糖であってよい。
【0054】
前述の合成ポリマー上に存在することができる、特定の任意選択の置換基には、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基がある。
【0055】
合成ポリマーの特定の例には、場合によっては置換された直鎖又は分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はこれらの誘導体、特に場合によっては置換されたポリ(エチレングリコール)、メトキシポリ(エチレングリコール)など、又はこれらの誘導体がある。
【0056】
特定の天然ポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はこれらの誘導体がある。
【0057】
本明細書で使用する「誘導体」は、反応性誘導体、例えばチオール選択的反応基、例えばマレイミドなどを含むものとする。反応基はポリマーと直接、或いは連結部分を介して、連結することができる。このような基の残基は、幾つかの場合、抗体断片とポリマーの間の連結基として、生成物の一部分を形成することは理解されよう。
【0058】
ポリマーの大きさは望むならば変えることができるが、一般には500Da〜50000Da、好ましくは5000〜40000Da、及びより好ましくは25000〜40000Daの平均分子量の範囲内であろう。ポリマーの大きさは特に、生成物の目的とする用途に基づいて選択することができる。したがって、例えば、生成物を循環させ組織に浸透させることが目的である場合、例えば腫瘍の治療において使用するためには、例えば約5000Daの分子量を有する小分子量ポリマーを使用することが、有利である可能性がある。生成物が循環中の状態である適用例では、例えば25000Da〜40000Daの範囲の分子量を有する高分子量ポリマーを使用することが、有利である可能性がある。
【0059】
特に好ましいポリマーには、ポリアルキレンポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)又は、特にメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体、及び特に約25000Da〜約40000Daの範囲の分子量を有するポリマーなどがある。
【0060】
修飾抗体断片と結合したそれぞれのポリマー分子は、断片中に位置するシステイン残基のイオウ原子と共有結合することができる。共有結合は一般に、ジスルフィド結合、又は特に、イオウ−炭素結合であろう。
【0061】
望ましい場合、抗体断片は、それに結合した1つ又は複数のエフェクター又はレポーター分子を有することができる。エフェクター又はレポーター分子は、断片中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して、抗体断片と結合することができる。
【0062】
活性化ポリマーは、前に記載したポリマー修飾型抗体断片の調製において、出発物質として使用することができる。活性化ポリマーは、チオール反応基を含む任意のポリマー、α−ハロカルボン酸又はエステルなど、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドであってよい。このような出発物質は、商業的に得ることができ(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USAから)、或いは従来の化学的手順を使用して、市販の出発物質から調製することができる。特定のPEG分子には、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwater;Rapp Polymere;及びSunBioから入手可能)及びM−PEG−SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)がある。
【0063】
結合ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に関しては、「ポリ(エチレングリコール)の化学、生物学的技術及び生物医学的適用例(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992、J.Milton Harris(編)、Plenum Press、ニューヨーク;「ポリ(エチレングリコール)の化学、生物学的適用例(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)」、1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC、及び「生物医学科学用の生物学的結合体タンパク質の結合技法(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam及びA.Dent、Grove Publishers、ニューヨークに言及されている。
【0064】
エフェクター又はレポーター分子と連結した抗体断片を得ることが望ましい場合、活性化ポリマーとの反応前又は後に適切に、エフェクター又はレポーター分子と直接、或いはカップリング剤を介して抗体断片を連結させる、標準的な化学的手順又は組換えDNA手順によって、抗体断片を調製することができる。特定の化学的手順には、例えばWO93/06231、WO92/22583、WO89/00195及びWO89/01476中に記載された手順がある。或いは、エフェクター又はレポーター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、例えばWO86/01533及びEP0392745中に記載されたのと同様の組換えDNA手順を使用して、連結を得ることができる。
【0065】
本発明の修飾Fab断片は、EP−A−0948544中に開示された方法に従い、PEG化されている(即ち、PEG(ポリ(エチレングリコール)がそこに共有結合している))ことが好ましい。本発明の抗体分子は、図12中に示すPEG化修飾Fab断片であることが好ましい。修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域中の1つのチオール基と共有結合した、マレイミド基を有することが好ましい。リジン残基は、マレイミド基と共有結合することが好ましい。リジン残基上のアミン基のそれぞれに、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが結合することが好ましい。エフェクター分子全体の合計分子量は、それ故約40,000Daである。したがって、中和抗体であって、重鎖のC末端におけるシステイン残基の1つに、リシル−マレイミド基又はリシルビス−マレイミド基が結合しており、リシル残基のそれぞれのアミノ基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している、中和抗体を提供する。例えば、分子量は15,000〜25,000Da、或いは好ましくは18,000〜22,000Da、及びさらにより好ましくは19,000〜21,000Daであってよい。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明は、ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号15に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター又はレポーター分子が結合することができる1つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を有する修飾Fab断片である、中和抗体分子を提供する。
【0067】
他の好ましい実施形態では、ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号15に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター又はレポーター分子が結合する1つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を有する修飾Fab断片である、中和抗体分子を提供する。
【0068】
より好ましくは、ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号15に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を有し、重鎖のC末端におけるシステイン残基に、リシル−マレイミド基が結合しており、リシル残基のそれぞれのアミノ基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している、中和抗体分子を提供する。
【0069】
さらにより好ましくは、その重鎖が配列番号71に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜251を含むか或いはそれらからなり、その軽鎖が配列番号70に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜235を含むか或いはそれらからなる、中和抗体分子を提供する。配列番号70及び71に与えられる、アミノ酸残基番号1〜21は、大腸菌リーダー配列を表し、これが切断されて本発明の中和抗体分子を与えることが最も好ましい。
【0070】
最も好ましくは、その重鎖が配列番号71に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜251を含むか或いはそれらからなり、その軽鎖が配列番号70に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜235を含むか或いはそれらからなる中和抗体分子であって、重鎖のC末端におけるシステイン残基に、リシル−マレイミド基が結合しており、リシル残基のそれぞれのアミノ基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している、中和抗体分子を提供する。
【0071】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を含む中和抗体と同じエピトープに結合する、中和抗体分子も提供する。
【0072】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の示される機能、特に必要とされる可能性があるエフェクター機能に関して選択することができる。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってよい。特に、ヒトIgG定常領域ドメイン、抗体分子が治療用途を意図するものであり、抗体のエフェクター機能が必要とされるときは、特にIgG1及びIgG3イソ型を使用することができる。或いは、抗体分子が治療目的を意図するものであり、抗体のエフェクター機能が必要とされないとき、例えばIL−1β活性を単に阻止するために、IgG2及びIgG4イソ型を使用することができる。
【0073】
本発明の抗体分子は、少なくとも4.4×10−10Mの結合親和性を有することが好ましく、少なくとも3.2×10−10Mを有することがより好ましい。
【0074】
本発明は、IL−1βに関して改善された親和性を有する、本発明の抗体分子の変異体にも関する。CDRの突然変異(Yang他、J.Mol.Biol.、254、392〜403、1995)、鎖シャッフリング(Marks他、「バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)」、10、779〜783、1992)、大腸菌の突然変異菌株の使用(Low他、J.Mol.Biol.、250、359〜368、1996)、DNAシャッフリング(Patten他、Curr.Opin.Biotechnol.、8、724〜733、1997)、ファージディスプレー(Thompson他、J.Mol.Biol.、256、77〜88、1996)及びセクシャルPCR(Crameri他、「ネイチャー(Nature)」、391、288〜291、1998)を含めた、多数の親和性増強プロトコルによって、このような変異体を得ることができる。Vaughan他(上記)は、親和性増強のこれらの方法を論じている。
【0075】
本発明は、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖をコードする、単離DNA配列も提供する。DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードすることが好ましい。本発明のDNA配列は、例えば化学的処理によって生成した合成DNA、cDNA、ゲノムDNA、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。
【0076】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者によく知られている方法によって得ることができる。例えば、抗体重鎖及び軽鎖の一部分又は全体をコードするDNA配列は、決定したDNA配列から、或いは対応するアミノ酸配列に基づいて、望むように合成することができる。
【0077】
アクセプター枠組み配列をコードするDNAは、当業者には広く利用可能であり、それらの知られているアミノ酸配列に基づいて、容易に合成することができる。
【0078】
分子生物学の標準的な技法を使用して、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を作製することができる。望ましいDNA配列を、オリゴヌクレオチド合成技法を使用して、完全或いは部分的に合成することができる。部位特定突然変異導入法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を、適切に使用することができる。
【0079】
本発明は、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターにも関する。したがって、本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターを提供する。クローニング又は発現ベクターは、本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖をそれぞれコードする、2つのDNA配列を含むことが好ましい。本発明のベクターは、配列番号69に与えられる配列を含むことが好ましい。
【0080】
それによってベクターを構築することができる一般的方法、トランスフェクション法及び培養法は、当業者によく知られている。この点においては、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience、ニューヨーク、及びCold Spring Harbor Publishingによって作製された「マニアティスのマニュアル(Maniatis Manual)」に言及されている。
【0081】
本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む、1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む、宿主細胞も提供する。任意の適切な宿主細胞/ベクター系を、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を発現させるために、使用することができる。細菌、例えば大腸菌、及び他の微生物系を使用することができ、或いは真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系も使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO、ミエローマ又はハイブリドーマ細胞がある。
【0082】
本発明は、本発明の抗体分子を生成するための方法であって、本発明の抗体分子をコードするDNA由来のタンパク質の発現をもたらすのに適した条件下において、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養すること、及び抗体分子を単離することを含む、方法も提供する。
【0083】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含むことができ、その場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみをコードする配列を、宿主細胞をトランスフェクトするために使用する必要がある。重鎖と軽鎖の両方を含む生成物を生成するために、2つのベクター、軽鎖ポリペプチドをコードする第一のベクター、及び重鎖ポリペプチドをコードする第二のベクターで、細胞系をトランスフェクトすることができる。或いは、1つのベクター、軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含むベクターを使用することができる。
【0084】
本発明の抗体は、病的状態の治療及び/又は予防において有用であるので、本発明は、1つ又は複数の薬剤として許容可能な媒体、希釈剤又は担体と組み合わせて、本発明の抗体分子を含む、薬剤又は診断用組成物も提供する。したがって、医薬品を製造するための、本発明の抗体の使用を提供する。本発明の組成物は通常、滅菌された、薬剤組成物の一部として供給され、薬剤として許容可能な担体を通常含む。本発明の薬剤組成物は、薬剤として許容可能なアジュバントをさらに含むことができる。
【0085】
本発明は、薬剤又は診断用組成物を調製するための方法であって、本発明の抗体分子、及び1つ又は複数の薬剤として許容可能な媒体、希釈剤又は担体を加え混合することを含む方法も提供する。
【0086】
抗体分子は薬剤又は診断用組成物中の唯一の活性成分であってよく、或いは他の抗体成分、例えば抗T細胞、抗IFNγ又は抗LPS抗体、又はキサンチンなどの非抗体成分を含めた、他の活性成分を伴ってよい。
【0087】
薬剤組成物は、治療上有効量の本発明の抗体を含むことが好ましい。本明細書で使用する、用語「治療上有効量」は、標的とする疾患又は状態を治療、改善又は予防するため、或いは検出可能な治療又は予防効果を示すために必要とされる、治療剤の量を指す。任意の抗体に関して、細胞培養アッセイで、或いは動物モデルにおいて、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類において、治療上有効量を最初に推定することができる。動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与の経路を決定することもできる。したがって、このような情報を使用して、ヒト中の有用な用量及び投与の経路を決定することができる。
【0088】
ヒト被験体に関する正確な治療上の有効量は、被験体の疾患状態の重度、一般的健康状態、被験体の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組合せ、療法に対する反応感受性及び耐性/応答性に依存するであろう。この量は通常の実験によって決定することができ、臨床医の判断内である。一般に、治療上の有効量は0.01mg/kg〜50mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜20mg/kgであろう。薬剤組成物は、用量当たり所定量の本発明の活性物質を含む単位剤形で、好都合に表すことができる。
【0089】
組成物は患者に個別に投与することができ、或いは他の物質、薬剤又はホルモンと組み合わせて(例えば同時に、逐次的或いは別々に)投与することができる。
【0090】
本発明の抗体分子を投与する用量は、治療する状態の性質、存在する炎症の程度、抗体分子が予防的に、或いは既存の状態を治療するために使用されるかどうかに依存する。
【0091】
投与の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続に依存するであろう。抗体分子が短い半減期(例えば2〜10時間)を有する場合、1日当たり1回又は複数回の投与を与えることが必要である可能性がある。或いは、抗体分子が長い半減期(例えば2〜15日間)を有する場合、1日当たり1回、1週間当たり1回、或いはさらに1ヶ月又は2ヶ月毎に1回投与を与えることのみが、必要である可能性がある。
【0092】
薬剤として許容可能な担体は、組成物を与える個体に有害な抗体の生成を自ら誘導してはならず、毒性であってはならない。適切な担体は、大きな、ゆっくりと代謝されるマクロ分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子などであってよい。
【0093】
薬剤として許容可能な塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸の塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩を使用することができる。
【0094】
治療組成物中の薬剤として許容可能な担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体をさらに含むことができる。さらに、湿潤剤又は乳濁剤又はpH緩衝物質などの補助物質が、このような組成物中に存在してよい。このような担体によって、患者によって摂取されるための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液として、薬剤組成物を配合するのが可能となる。
【0095】
投与に関する好ましい形には、例えば注射又は注入による、例えば大量注射又は連続注入による、非経口投与に適した形がある。生成物が注射又は注入用である場合、それは油性又は水性媒体の懸濁液、溶液又は乳濁液の形をとることができ、懸濁剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤などの配合剤を含むことができる。或いは抗体分子は、適切な滅菌液との使用前に還元するための、乾燥形であってよい。
【0096】
ひとたび配合した後、本発明の組成物は、被験体に直接投与することができる。治療される被験体は、動物であってよい。しかしながら、ヒト被験体への投与用に、組成物を適合させることが好ましい。
【0097】
本発明の薬剤組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下、心室内、経皮、経皮的(例えばWO98/20734を参照)、皮下、腹膜内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内又は直腸経路だけには限られないが、これらを含めた任意の数の経路によって投与することができる。ハイポスプレーを使用して、本発明の薬剤組成物を投与することもできる。典型的には、治療用組成物は、注射剤として、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、調製することができる。注射前の液媒体中の溶液又は懸濁液に適した固形も、調製することができる。
【0098】
組成物の直接的な送達は一般に、注射によって、皮下、腹膜内、静脈内又は筋肉内に行われ、或いは組織の間質腔に送達される。組成物は病巣に投与することもできる。投与治療は、1回の投与スケジュール又は多数回の投与スケジュールであってよい。
【0099】
組成物中の活性成分が、抗体分子であろうことは理解されよう。このように、それは胃腸管中で分解を受けやすいであろう。したがって、胃腸管を使用する経路によって組成物が投与される場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、ひとたび胃腸管から吸収されると抗体を放出する物質を、含むことが必要であろう。
【0100】
薬剤として許容可能な担体の完全な考察は、RemingtonのPharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、NJ.1991)において入手可能である。
【0101】
本発明の抗体が、遺伝子療法を使用することによって、投与されることも想定される。これを実施するために、適切なDNA要素の調節下において、抗体分子の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を、抗体鎖がそのDNA配列から発現され、in situで構築されるように、患者に導入する。
【0102】
本発明は、炎症の調節において使用するための抗体分子も提供する。抗体分子を使用して、炎症過程を減少させる、或いは炎症過程を予防することができることが好ましい。
【0103】
本発明は、IL−1βによって仲介されるか、或いは高レベルのIL−1βと関係がある、病的障害の治療又は予防において使用するための、本発明の抗体分子も提供する。病的状態は、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染と関係がある内毒素性ショック、関節炎、慢性関節リウマチ、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、クローン病、ペーロニー病、セリアック病、胆嚢病、毛巣病、腹膜炎、髄膜脳炎、他の自己免疫障害、膵炎、外傷(外科手術)、移植片対宿主疾患、移植拒絶、癌(メラノーマ、肝芽腫、肉腫、扁平上皮細胞癌、移行細胞癌、卵巣癌などの固形腫瘍、及び血液悪性腫瘍、及び特に急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、胃癌及び結腸癌)、心筋梗塞などの虚血性心疾患を含めた心臓病、並びにアテローム性動脈硬化症、血管内凝固、骨の再突然変異、骨粗しょう症、歯周炎及び低塩酸症からなる群から選択されることが好ましい。
【0104】
本発明は、痛みの治療又は予防において使用するための、本発明の抗体分子も提供する。
【0105】
本発明は、IL−1βによって仲介されるか、或いは高レベルのIL−1βと関係がある病的障害を、治療又は予防するための医薬品の製造における、本発明の抗体分子の使用をさらに提供する。
【0106】
本発明は、痛みを治療又は予防するための医薬品の製造における、本発明の抗体分子の使用をさらに提供する。
【0107】
本発明の抗体分子は、ヒト又は動物身体中のIL−1βの影響を低下させることが望ましい、任意の療法において使用することができる。IL−1βは身体中を循環している可能性があり、身体中の特定部位、例えば炎症部位に局在する、望ましくない高レベルで存在する可能性がある。
【0108】
本発明の抗体分子は、炎症を調節するために使用することが好ましい。
【0109】
本発明は、IL−1βによって仲介される疾患に罹患しているか、或いはその危険がある、ヒト又は動物被験体を治療する方法も提供し、この方法は、本発明の抗体分子を有効量、被験体に投与することを含む。
【0110】
本発明の抗体分子は診断、例えばIL−1βと関係がある病状のin vivo診断及び画像化においても使用することができる。
【0111】
本発明を、以下の実施例中に例示によってのみさらに記載し、以下の添付の図面中に言及する。
【0112】
DNA操作及び一般的方法
大腸菌菌株INVαF’(Invitrogen)は、形質転換及び通常の培養増殖用に使用した。DNA制限酵素及び修飾酵素は、Roche Diagnostics Ltd.及びNew England Biolabsから得た。プラスミド調製は、Maxiプラスミド精製キット(QIAGEN、カタログ番号12165)を使用して行った。DNAシークエンシング反応は、ABI Prism Big Dyeターミネーターシークエンシングキット(カタログ番号4304149)を使用して行い、ABI3100自動シークエンサー(Applied Biosystems)上で実施した。データは、プログラムAutoAssembler(Applied Biosystems)を使用して分析した。オリゴヌクレオチドは、OSWELから得た。Fab’の濃度は、Fab’アセンブリELISAを使用して測定した。
【実施例】
【0113】
(例1:マウスモノクローナル抗体IC8由来の可変領域の、遺伝子クローニング及び発現)
全RNAの調製
IC8を発現するハイブリドーマを、ヒトIL−1βタンパク質を用いたマウスの免疫処置の後に、従来のハイブリドーマ技術を使用して、Cistronによって作製した。次いでハイブリドーマを、Celltech R&D Limitedによって得た。QIAGEN RNeasyキット(QIAGEN Ltd、カタログ番号74104)を使用して、IC8ハイブリドーマ細胞から、全RNAを調製した。得られたRNAは、PCRキット(カタログ番号K1402)用のClontech cDNA Advantage RTを使用してcDNAに逆転写した。
【0114】
IC8 VH及びVL領域のPCRクローニング
ハイブリドーマ細胞から調製したcDNAを、V領域配列を増幅させるために設計した一連の反応において、PCR用の鋳型として使用した。これらの反応は、保存されたシグナル配列内のDNAとアニーリングさせるために設計した一組の「正方向」縮重プライマー、及び枠組み4/定常領域接合部をコードするDNAとアニーリングした逆方向プライマーを使用した。PCRは、Taq Plus Precision(Stratagene、カタログ番号600211)、及び0.25mMの濃度のdNTPを使用して行った。生成したPCR産物を、シークエンシングベクター(シークエンシング用のInVitrogen Zero Blunt TOPO PCRクローニングキット、カタログ番号K2875)にクローニングし、DNA配列を決定した。精製IC8抗体(ハイブリドーマ由来)のN末端タンパク質のシークエンシングを使用して、翻訳された配列が観察されたタンパク質配列と対応したことを確認した。V領域配列は、図1中及び配列番号1〜4中に示す。
【0115】
次いでマウスV領域遺伝子を、発現ベクターpMRR10及びpMRR14にサブクローニングした(図2)。これらは、それぞれ軽鎖及び重鎖の発現用の別のベクターであり、それぞれヒトκ軽鎖及びγ−4重鎖の定常領域遺伝子をコードするゲノムDNAを含む。
【0116】
二重キメラIC8抗体分子cHcLを、前に記載した重鎖及び軽鎖発現ベクター(IC8 VL及びVHをそれぞれ含むpMRR10及びpIVSRR14)の、CHO−L761細胞への一時的な同時トランスフェクションによって発現させた。トランスフェクションは、製造者の教示書(InVitrogen、カタログ番号18324)に従い、リポフェクタミン手順を使用して行った。
【0117】
(例2:IC8のCDR移植)
IC8由来のCDRをヒト枠組みにCDR移植して、潜在的な免疫原性を低下させ、大腸菌の発現を容易にした。ヒト生殖細胞系アクセプター枠組みは、亜群VH3及びVK1から選択した。図3は、ドナーマウス配列とアクセプターヒト枠組みの間の、アラインメントを示す。重鎖アクセプター枠組みは、ヒトJH領域生殖細胞系JH4のこの部分に由来する枠組み4を有する、ヒト生殖細胞系配列VH3−11(DP−35)である。軽鎖アクセプター枠組みは、ヒトJK領域生殖細胞系JK1のこの部分に由来する枠組み4を有する、ヒト生殖細胞系配列O12(DPK9)である。
【0118】
図3中のアラインメントは、(CDRを除いた)ドナー重鎖とアクセプター重鎖の間に、13の枠組みの違いが存在することを示す。これらの位置のそれぞれにおいて、抗原との直接的な接触によって、CDRパッキングの役割によって、或いはVL/VH界面における関与によって、抗原結合に貢献するその残基の可能性の分析を行い、重要であると考えられる場合、マウスのドナー残基を保持した。軽鎖のアラインメントは、(CDRを除いた)ドナー配列とアクセプター配列の間に、15の枠組みの違いが存在することを示す。抗原結合に貢献するマウスの残基の可能性を、再度分析した。このようにして、3つのVH移植片及び3つのVL移植片を設計した。これらは図3にも示し、配列番号13(gH1)、配列番号14(gH2)、配列番号15(gH3)、配列番号18(gL1)、配列番号19(gL2)及び配列番号20(gL3)に対応する。
【0119】
(例3:移植配列用の遺伝子の設計及び構築)
大腸菌において高頻度で使用されるコドンを使用し、「希な」大腸菌コドン(Wada他、(1991)、Nucl.Acids Res.、19、1981〜86)を避け、移植配列をコードするように遺伝子を設計した。制限部位をDNA配列中に一定間隔で導入して、さらなる遺伝的操作を容易にした。図4は、gH1及びgL1の遺伝子の設計を示し、それらの配列は配列番号21及び22に与える。対応するアミノ酸配列は、それぞれ配列番号23及び24中に与える。
【0120】
完全に重複しているオリゴヌクレオチドを使用して、gH1及びgL1をコードする遺伝子を構築した(図5;配列番号27〜58)。設計した遺伝子をコードするオリゴヌクレオチドを、バッファー(12.5mMのTrisHCl、pH7.5、2.5mMのMgCl、25mMのNaCl、0.25mMのジチオエリスリトール)中において、100pmole/μlの濃度で混合し、10秒毎に−0.01℃の割合で30℃に冷却するようにプログラムしたPCRブロックにおいて、3分間で95℃に加熱することによって、一緒にアニーリングさせた。T4 DNAリガーゼ(5U)及びその適切な反応バッファーを加え、25℃で1時間のインキュベーションによって、オリゴヌクレオチドを1つに連結させた。次いで連結した重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を、10倍過剰な「末端」プライマーT1(配列番号25)及びB1(配列番号26)を加えた後に、PCRによって増幅させた。プルーフリーディングDNAポリメラーゼを、この増幅用に使用した(Taq Plus Precision、Stratagene)。増幅産物は1.5%アガロースゲル上に施した。400〜450のバンドを単離し、ゲルを精製し、次いで製造者の教示書(InVitrogen)に従い、中間ベクターpCR4平滑TOPOにクローニングした。これによって、中間プラスミドpCR4(IC8gL1)及びpCR4(IC8gH1)を作製した。次いでこれらのプラスミドを鋳型として使用して、他の移植形gL2、gL3、gH2及びgH3を作製した。
【0121】
オリゴヌクレオチドカセット交換法を使用して、ヒト化移植片gL2及びgL3を作製した。図6は、オリゴヌクレオチドカセットの設計を示す。それぞれの変異体を構築するために、ベクターpCR4(IC8gL1)を、制限酵素KpnI及びNheIで切断した。生成した大きなベクター断片は、アガロースから精製したゲルであり、オリゴヌクレオチドカセットと連結させて使用した。オリゴヌクレオチド対は、200μl体積のバッファー(12.5mMのTrisHCl、pH7.5、2.5mMのMgCl、25mMのNaCl、0.25mMのジチオエリスリトール)中において、0.5pmole/μlの濃度で混合し、水浴(体積500ml)中において3分間で95℃に加熱し、次いで室温にゆっくりと冷却することによって、一緒にアニーリングさせた。次いでアニーリングさせたオリゴヌクレオチドカセットを、適切に切断されたベクターに連結させる前に、水中で10倍に希釈した。DNAシークエンシングを使用して、正確な配列を確認し、プラスミドpCR4(IC8gL2)及びpCR4(IC8gL3)を作製した。
【0122】
変異体gH2は、PCR戦略を使用してpCR4(IC8gH1)から構築した。図6に示すカセット(配列番号64)の逆鎖を、ベクター特異的5’正方向プライマーを使用するPCRにおいて、逆方向プライマーとして使用して、部分的なgH2配列を表す産物を生成させた。これを制限酵素HindIII及びBspEIで消化し、次いでHindIII−BspEI制限型pCR4(IC8gH1)にクローニングして、pCR4(IC8gH2)を作製した。
【0123】
変異体gH3は、異なるPCR戦略を使用して構築した。図6に示す2つのgH3オリゴを、ベクター特異的3’逆方向プライマーを使用し、センス鎖(配列番号66)を正方向プライマーとして、ベクター特異的5’正方向プライマーを使用し、非センス鎖(配列番号67)を逆方向プライマーとして、別のPCR反応で使用した。いずれの場合も、鋳型はpCR4(IC8gH1)であった。2つの生成した増幅産物を単離及び精製し、次いで5’及び3’ベクター特異的プライマーと共に加え、他のPCR増幅に循環させて、完全長gH3生成物を作製した。これを制限酵素HindIII及びApaIで消化し、HindIII−ApaIで制限されたpCR4(IC8gH1)中に挿入して、pCR4(IC8gH3)を作製した。すべての変異体は、DNAシークエンシングによって確認した。
【0124】
次いでそれぞれの重鎖移植片を、HindIII−ApaI断片として、発現ベクターpMRR14にサブクローニングした。3つの軽鎖移植片のそれぞれは、SfuI−BsiWI断片として、軽鎖発現ベクターpMRR10にサブクローニングした。
【0125】
最適な移植変異体の選択
移植抗体を、前に記載した移植重鎖及び軽鎖発現ベクター(それぞれIC8 gL1、gL2及びgL3、並びにgH1、gH2及びgH3を含むpMRR10及びpMRR14)の、CHO−L761細胞への一時的な同時トランスフェクションによって発現させた。トランスフェクションは、製造者の教示書(InVitrogen、カタログ番号18324)に従い、リポフェクタミン手順を使用して行った。
【0126】
移植鎖とキメラ鎖の全ての組合せを発現させ、二重キメラ抗体cHcLに対して比較した。BIAcoreアッセイ及びIL−1β中和アッセイにおいて、結合を評価した。
【0127】
BIAcoreアッセイ
このアッセイ形式は、溶液相中での組換えヒトIL−1βの滴定で抗hFcによって捕捉した、抗IL−1β抗体を使用した。マウス抗ヒトIgG、Fc断片特異的(Celltech)を、アミン結合化学物質によって12757RUのレベルまで、CM5センサーチップのフローセル2上に固定した。阻止状態の参照表面を、フローセル2と同じ体積を使用して、EDC/NHSを用いた活性化及びエタノールアミンを用いた不活性化によって、フローセル1上に作製した。HBS−EPバッファー(10mMのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%の界面活性剤P20、BiacoreAB)を、ランニングバッファーとして使用し、アッセイは25℃で行った。抗IL−1β抗体はフローセル1及び2を通過させ、10μl/分の流速を使用して固定抗hFc表面上で捕捉した。400〜0nMのIL−1βを、3分間30μl/分の流速を使用して、阻止表面及び捕捉抗IL−1β抗体表面上に注射した。抗hFc表面は、40mMのHClの30μl注射によって再生した。BIA評価3.1ソフトウェアを使用して、動的パラメータを計算した。
【0128】
gIC8 Fab’用に、このアッセイ形式は、抗hF(ab’)(前式で「h」は、それがヒトF(ab’)であることを示す)によって捕捉し、次いでIL−1βを滴定した、抗IL−1β抗体を使用した。Affinipureヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)断片特異的(Jackson Immuno Research Code 109−005−097)を、アミン結合化学物質によって13025RUのレベルまで、CM5センサーチップのフローセル2上に固定した。阻止状態の参照表面を、フローセル2と同じ体積を使用して、EDC/NHSを用いた活性化及びエタノールアミンを用いた不活性化によって、フローセル1上に作製した。HBS−EPバッファー(10mMのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、0.005%の界面活性剤P20、BiacoreAB)を、ランニングバッファーとして使用し、アッセイは25℃で行った。抗IL−1β抗体はフローセル1及び2を通過させ、10μl/分の流速を使用して固定抗hF(ab’)表面上で捕捉した。400〜0nMのIL−1β(Strathmann)を、3分間30μl/分の流速を使用して、阻止表面及び捕捉抗IL−1β抗体表面上に注射した。抗hF(ab’)表面は、40mMのHClの30μl注射、次に5mMのNaOHの15μl注射によって再生した。BIA評価3.1ソフトウェアを使用して、動的パラメータを計算した。
【0129】
表1は、Biacoreの抗原親和性のデータの要約を示す。位置44及び89にドナー残基を有するgH1移植片が、位置89にのみドナー残基を有するgH2より、高い親和性を有することは明らかである。したがって、gH2移植片は拒絶された。驚くことに、位置44のみがドナー枠組み残基であるgH3移植片において、高い親和性を観察した。
【表1】

【0130】
In vitroの中和アッセイ
96ウエルプレート中において80%の集密状態まで、線維芽細胞を増殖させた。1μg/mlからの半対数希釈で抗体を滴定し、IL−1βを加えて、20pg/mlの最終濃度を与えた。室温で30分間、プレートをインキュベートした。培養基を線維芽細胞培養物から除去し、100μl抗体/IL−1β混合物を適切なウエルに加え、37℃で一晩培養した。IL−1βに応答して生成したIL−6の量を、R&D Systems Human IL−6 Duoset Kit DY206を使用して、次いで評価した。
【0131】
中和アッセイの結果は図7中に示し、その中では移植形の抗体(gH2は除く)を、親マウス抗体と比較する。Biacoreの親和性データと同様に、任意の残りの移植片の間に、ほとんど違いはない。それ故gL3gH3を、最適活性及び最小数のマウス枠組み残基を有する変異体として選択した。図3に示すように、gH3配列は1つのドナー枠組み残基を有し、一方gL3配列は3つのドナー枠組み残基を有する。
【0132】
In vivoの中和アッセイ
in vivoでのgH3gL3Fab’の中和効率を測定するために、gH3gL3Fab’を、2つのin vivo炎症モデルにおいて試験した。
【0133】
マウスの腹膜内gH3gL3Fab’−PEG(40K)/腹膜内hIL−1β
Balb/c雄性マウス(18〜25g)に、hIL−1β(150ng/kg)又は媒体(100μlのPBS)を腹膜内注射する前に5分間、gH3gL3Fab’−PEG(40K)(l00μl、PBS媒体中)又は対照Fab’−PEG(40K)(l00μl、PBS媒体中)を、腹膜内(i.p.)注射した。120分後、頚椎脱臼によってマウスを屠殺し、腹膜洗浄(3mlのHBSS(ハンクス平衡塩)+0.25%のBSA、12mMのHEPES)を行った。合計白血球の計数を、コールターカウンターを使用して行った。好中球を同定するために、50μlの腹膜洗浄液を、1:300希釈の抗−CD45−CyChrome mAb及び1:300希釈の抗フィコエリトリン標識GR−1 mAb(抗−Ly6G/Ly6C)で、20分間(4℃、暗所中)染色した。白血球はHESS(0.25%のBSA、12mMのHEPES)中で一度洗浄し、300μlのHBSS(0.25%のBSA、12mMのHEPES)に再懸濁させ、フローサイトメトリーによって分析した。好中球はCD45GR−1HIGHとして同定した。腹膜洗浄試料中の、マウス単球走化性タンパク質−1(mMCP−1)の濃度は、製造者の教示書(BD Biosciences OPT−EIA mMCP−1)に従い、サンドイッチELISAによって測定した。
【0134】
マウスの静脈内gH3gL3Fab’−PEG(40K)/静脈内hIL−1β
Balb/c雄性マウス(18〜25g)にハロタンで麻酔をかけ、hIL−1β(37.5又は50μg/kg)又は媒体(100μlのPBS)を静脈内注射する前に15分間、gH3gL3Fab’−PEG(40K)(l00μl、PBS媒体中)又は対照Fab’−PEG(l00μl、PBS媒体中)を静脈内(i.v.)注射した。90分後、血液試料を心臓穿刺によって採取し、ヘパリン処理し(20μl、100U/ml)、血漿は遠心分離によって調製した(14,000×g、2分間、室温)。血漿試料は−20℃で保存した。血漿試料は、製造者の教示書(BD Biosciences OPT−EIA mIL−6)に従い、サンドイッチELISAによって、マウスインターロイキン−6(mIL−6)に関してアッセイした。
【0135】
これらの結果によって、腹膜内用gH3gL3Fab’−PEG(40K)を用いたマウスの予備処置は、腹膜内のhIL−1β誘導型の好中球の蓄積(表2)及びmMCP−1の生成(表3)を低下させる際に、有効であったことが実証される。静脈内用gH3gL3Fab’−PEG(40K)を用いたマウスの予備処置も、静脈内のhIL−1β誘導型のmIL−6の生成を低下させる際に有効であった。3つの別個の実験からのデータを、表4に要約する。
【0136】
いずれかのモデルで使用したいずれの用量においても、悪影響は観察されなかった。したがって、抗体gH3gL3Fab’は、炎症及び他のIL−1β仲介型疾患の治療において、有用であると予想することができる。
【表2】


【表3】


【表4】

【0137】
(例4:Fab’断片のクローニング及び発現)
選択したV領域の大腸菌Fab’発現プラスミドpTTOD(Fab’)へのクローニング
pTTOD(Fab’)という名称の無関係なFab’を含む発現ベクターを、図8に示す。軽鎖と重鎖の両方をコードするDNAの前に、大腸菌OmpAシグナル配列をコードするDNAが存在する(Movva NR、Nakamura K及びInouye M.「ompAタンパク質、大腸菌の主要な外膜タンパク質のシグナルペプチドのアミノ酸配列(Amino acid sequence of the signal peptide of ompA protein,a major outer membrane protein of Escherichia coli.)」J Biol Chem.1980;255(1):27〜9)。IC8のV領域を、このシグナル配列が保たれ、両鎖の大腸菌周辺質への転座を指示するように、このベクターにクローニングした。シグナルペプチドは、それが生成物のFab’配列の一部分を形成しないように、転座によって切断される。(注;OmpAシグナルペプチドの配列は、配列番号70で与えられる配列のアミノ酸残基1〜21である。プラスミドpTTOD(Fab’)は制限酵素EcoRV及びBsiWI(BsiWIとSplIはアイソシゾマーである)で消化して、無関係なVL配列を除去し、pMRR10(IC8gL3)からそれを単離した後に、IC8gL3V領域を挿入した。)これによって、クローニング中間体pTTOD(IC8gL3)を作製した。pTTOD(IC8gL3)は、次いでBsiWI及びApaIで切断し、2つの断片を3様の連結で挿入した;c−κ/IGS−断片(IGS−2又はIGS−3のいずれか)及びIC8gH3断片(図9中の概略図を参照のこと)。このようにして、2つのベクター変異体、pTTOD(IC8gL3gH3 IGS−2)及びpTTOD(IC8gL3gH3 IGS−3)を構築した。これらは、軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子の間のヌクレオチド配列のみが異なり:IGS−2は2つの遺伝子間の非常に強い翻訳結合をもたらし、迅速な重鎖の翻訳速度を与え、IGS−3はゆっくりとした重鎖の翻訳速度をもたらす(英国特許出願No.0129105を参照のこと)。
【0138】
大腸菌中のFab’の発酵槽発現
プラスミドpTTOD(IC8gL3gH3IGS−2)及びpTTOD(IC8gL3gH3IGS−3)を、標準的なプロトコルを使用して、大腸菌菌株W3110に形質転換した。可溶性大腸菌周辺質Fab’を、50℃においてトリス−EDTAバッファーを使用して抽出した。抽出及び冷却後、抽出物のpHを調整し、遠心分離及び濾過によって細胞を除去した。浄化した供給流体を水で希釈して(約2倍)、伝導度を低下させた。カチオン交換クロマトグラフィー(SPセファロースFF樹脂)を使用してFab’を捕捉し、結合Fab’はNaClステップを使用して溶出させた。溶出した生成物流を濃縮し、限外濾過を使用してトリスバッファーに透析濾過し、アニオン交換クロマトグラフィー(SPセファロースFF樹脂)に施し、この場合Fab’は、非結合分画中に含まれていた。精製したFab’を濃縮し、(限外濾過によって)還元バッファーに透析濾過し、次にヒンジチオールを活性化するために2−メルカプトエチルアミンを使用して還元した。次いで還元剤を、限外濾過バッファーの交換によって除去する。N末端シークエンシングによって、OmpAリーダーの正確なアミノ酸配列及び切断を確認した。これら2つのプラスミドによるFab’の発現を比較した。
【0139】
表5は、IGS−2及びIGS−3変異体に関する発酵槽Fab’収率の比較を示す。IGS−2構築体は、Fab’の生産性に関してIGS−3より明らかに性能がよい。したがって、IGS−2変異体を選択した。プラスミドの地図は図10に示す。図11は、pTTOD(gH3gL3Fab’IGS−2)のFab’コード配列及び隣接配列を示す。
【表5】

【0140】
大腸菌生成Fab’の活性
精製した大腸菌生成Fab’の幾つかを、表1に示すBIAcoreアッセイにおける親和性に関して次いで分析した。見ることができるように、この物質は、このアッセイにおける完全な活性を有効に保持している。
【0141】
FabのPEG化
精製した修飾型Fabは、分岐PEG分子と部位特異的に結合する。これは、以前に記載されたのと同様に(A.P.Chapman他、「ネイチャーバイオテクノロジー(Nature Biotechnology)」、17、780〜783、1999)、修飾型Fabの切断ヒンジ領域中の1つのシステイン残基の活性化、次に(PEG)−リシルマレイミドとの反応によって行われる。本発明のPEG化分子は、図12に示す。使用したPEGは、20Kのメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)であった。生成したFab’−PEGは、直鎖状NaCl勾配の溶出を使用する、カチオン交換クロマトグラフィー(SPセファロースHP)によって精製した。精製したFab’−PEGは、50mMの酢酸ナトリウム+125mMのNaCl、pH5.5への限外濾過により濃縮及び調合して、本発明の治療用中和抗体を生成した。
【0142】
本発明を例によってのみ記載してきたが、それは決して制限を意味するものではなく、本明細書の以後の特許請求の範囲内で、詳細の変更を行うことができることは、当然ながら理解されよう。本発明のそれぞれの実施形態の好ましい特徴は、必要な変更を加えて、それぞれの他の実施形態と同様である。本明細書に引用した特許及び特許出願だけには限られないが、これらを含めたすべての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が、完全に述べられているように参照として本明細書に組み込まれることが、詳細且つ個別に示されるかの如く、参照として本明細書に組み込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖を含むヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、前記重鎖の可変ドメインが、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列を有するCDR、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列を有するCDR、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、中和抗体。
【請求項2】
前記重鎖の前記可変ドメインが、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を含む、請求項1に記載の中和抗体。
【請求項3】
軽鎖を含むヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列を有するCDR、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列を有するCDR、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、中和抗体。
【請求項4】
前記軽鎖の前記可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を含む、請求項3に記載の中和抗体。
【請求項5】
軽鎖をさらに含み、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列を有するCDR、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列を有するCDR、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の中和抗体。
【請求項6】
前記軽鎖の前記可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を含む、請求項5に記載の中和抗体。
【請求項7】
前記重鎖の前記可変ドメインが、CDR−H1として配列番号5に与えられる配列、CDR−H2として配列番号6に与えられる配列、及びCDR−H3として配列番号7に与えられる配列を含み、前記軽鎖の前記可変ドメインが、CDR−L1として配列番号8に与えられる配列、CDR−L2として配列番号9に与えられる配列、及びCDR−L3として配列番号10に与えられる配列を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の中和抗体。
【請求項8】
前記中和抗体がCDR移植抗体分子である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の中和抗体。
【請求項9】
前記可変ドメインが、ヒトアクセプター枠組み領域及び非ヒトドナーCDRを含む、請求項8に記載の抗体分子。
【請求項10】
前記重鎖の枠組み領域が、JH4と共にヒト亜群配列3−11(DP−35)に由来する、請求項9に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項11】
前記重鎖の前記可変ドメインの位置44及び89の少なくとも1つにおける残基がドナー残基である、請求項10に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項12】
前記重鎖の前記可変ドメインの少なくとも位置44における残基がドナー残基である、請求項10に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項13】
前記軽鎖の枠組み領域が、JK1と共にヒト亜群配列O12(DPK9)に由来する、請求項8から12までのいずれか一項に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項14】
位置40、45、48、70及び85の少なくとも1つにおける残基がドナー残基である、請求項13に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項15】
位置45、70及び85における残基がドナー残基である、請求項14に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項16】
前記重鎖が配列gH3(配列番号15)を含む、請求項8から15までのいずれか一項に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項17】
前記軽鎖が配列gL3(配列番号20)を含む、請求項8から15までのいずれか一項に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項18】
前記重鎖が配列gH3(配列番号15)を含み、前記軽鎖が配列gL3(配列番号20)を含む、請求項8から15までのいずれか一項に記載のCDR移植抗体分子。
【請求項19】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、配列番号3に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号4に与えられる配列を含む軽鎖を有する、中和抗体。
【請求項20】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体であって、請求項2、4、18又は19のいずれか一項に記載の抗体と少なくとも90%同一又は類似の可変ドメインを有する、中和抗体。
【請求項21】
前記抗体分子が、完全長重鎖及び軽鎖を有する完全抗体分子、又はFab、修飾Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv断片などのその断片からなる群から選択される、請求項1から20までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項22】
エフェクター又はレポーター分子が結合できるように修飾された、請求項21に記載の中和抗体分子。
【請求項23】
前記修飾が、エフェクター又はレポーター分子の結合を可能にするための、その重鎖のC末端への1つ又は複数のアミノ酸の付加である、請求項22に記載の中和抗体分子。
【請求項24】
前記追加のアミノ酸が、エフェクター又はレポーター分子が結合できる、1つ又は2つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成する、請求項23に記載の抗体分子。
【請求項25】
結合したエフェクター又はレポーター分子を有する、請求項22から24までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項26】
前記エフェクター分子が1つ又は複数のポリマーを含む、請求項25に記載の中和抗体分子。
【請求項27】
前記1つ又は複数のポリマーが、場合によっては置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー、或いは分岐又は非分岐多糖である、請求項26に記載の中和抗体分子。
【請求項28】
前記1つ又は複数のポリマーが、メトキシポリ(エチレングリコール)又はポリ(エチレングリコール)である、請求項26に記載の中和抗体分子。
【請求項29】
前記重鎖のC末端におけるシステイン残基の1つに、リシル−マレイミド又はリシルビス−マレイミド基が結合しており、前記リシル残基のそれぞれのアミノ基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している、請求項25に記載の中和抗体分子。
【請求項30】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号15に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター又はレポーター分子が結合できる1つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を有する、修飾Fab断片である中和抗体分子。
【請求項31】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、配列番号15に与えられる配列を含む重鎖、及び配列番号20に与えられる配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター又はレポーター分子が結合する1つのシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を有する、修飾Fab断片である中和抗体分子。
【請求項32】
その重鎖が配列番号71に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜251を含むか、又はそれらからなり、その軽鎖が、配列番号70に与えられる配列のアミノ酸残基番号22〜235を含むか、又はそれらからなる、請求項31に記載の中和抗体分子。
【請求項33】
前記重鎖のC末端におけるシステイン残基に、リシル−マレイミド基が結合しており、前記リシル残基のそれぞれのアミノ基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)残基が共有結合している、請求項31又は請求項32に記載の中和抗体分子。
【請求項34】
ヒトIL−1βに対する特異性を有する中和抗体分子であって、請求項18に記載の抗体と同じエピトープと結合する、中和抗体分子。
【請求項35】
請求項1から34までのいずれか一項に記載の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖をコードする、単離DNA配列。
【請求項36】
請求項35に記載の1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクター。
【請求項37】
配列番号69に与えられる配列を含む、請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
請求項36又は37に記載の1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項39】
請求項1から34までのいずれか一項に記載の抗体分子を生成するための方法であって、請求項38に記載の宿主細胞を培養すること、及び前記抗体分子を単離することを含む方法。
【請求項40】
薬剤として許容可能な媒体、希釈剤又は担体の1つ又は複数と組み合わせて、請求項1から34までのいずれか一項に記載の抗体分子を含む、薬剤組成物。
【請求項41】
他の活性成分をさらに含む、請求項40に記載の薬剤組成物。
【請求項42】
IL−1βによって仲介されるか、或いはIL−1βレベルの増加に付随する病的障害の治療又は予防に使用するための、請求項1から34までのいずれか一項に記載の抗体分子、又は請求項40若しくは請求項41に記載の薬剤組成物。

【図2】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図11−3】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−246553(P2010−246553A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128372(P2010−128372)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2006−502246(P2006−502246)の分割
【原出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】