ヒトIL−13に結合特異性を有する抗体分子
ヒトIL−13の抗原決定基に特異性を有する抗体分子、該抗体分子の治療的使用、及び該抗体分子を産生するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−13抗体及びその断片、例えばその結合断片、それを含む組成物に関し、具体的には、喘息、アレルギー、COPD、線維症、及び/又は癌を含む種々の疾患の予防及び/又は治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL−13は、IL−4と25%の配列同一性を共有する短鎖サイトカインである。IL−13は、約132個のアミノ酸を含み、残基10〜21(ヘリックスA)、残基43〜52(ヘリックスB)、残基61〜69(ヘリックスC)、及び残基92〜110(ヘリックスD)の4つのヘリックス、並びに残基33〜36及び残基87〜90の2つのβ鎖を有する二次構造を形成する。IL−13の溶液構造は判明され、IL−4で観察されてもいる、予期されたアップ−アップ−ダウン−ダウンの4つのヘリックス束の立体構造を示す(Eisenmesser 2001)。
【0003】
ヒトIL−13は、活性化T細胞からクローニングされた17kDaの糖タンパク質であり(Zurawski及びde Vries 1994 Immunol Today 15 19−26)、Th2系統の活性化T細胞によって産生されるが、Th0及びTh1 CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、並びに肥満細胞などのいくつかの非T細胞集団もまたIL−13を産生する(Zurawski及びde Vries 1994 Immunol Today 15 19−26)。
【0004】
IL−13の機能としては以下が挙げられる:
・ヒトB細胞におけるIgEへの免疫グロブリンアイソタイプスイッチング(Punnonen,Aversaら 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90 3730−4)、及び
・ヒトとマウスの両方における炎症性サイトカイン産生の抑制(de Waal Malefyt,Figdorら 1993 J Immunol 151 6370−81;Doherty,Kasteleinら 1993 J Immunol 151 7151−60)。
【0005】
IL−13は、その細胞表面受容体であるIL−13Rアルファ1及びIL−13Rアルファ2に結合する。IL−13Rアルファ1は、IL−13と低親和性(KD約10nM)で相互作用し、続いてIL−4Raを動員して、高親和性(KD約0.4nM)のシグナル伝達ヘテロ二量体受容体複合体を形成する(Aman,Tayebiら 1996 J Biol Chem 271 29265−70;Hilton,Zhangら 1996 Proc Natl Acad Sci USA 93 497−501)。
【0006】
IL−4R/IL−13Rアルファ1複合体は、B細胞、単球/マクロファージ、樹枝状細胞、好酸球、好塩基球、線維芽細胞、内皮細胞、気道上皮細胞、及び気道平滑筋細胞などの多数の細胞型上で発現される(Graber,Gretenerら 1998 Eur J Immunol 28 4286−98;Murata,Husainら 1998 Int Immunol 10 1103−10;Akaiwa,Yuら 2001 Cytokine 13 75−84)。
【0007】
IL−13Rアルファ1/IL−4R受容体複合体の連結は、シグナル伝達性転写活性化因子(STAT6)を含む様々なシグナル伝達経路、及びインスリン受容体基質−2(IRS−2)経路の活性化をもたらす(Wang,Michieliら 1995 Blood 864218−27;Takeda,Kamanakaら 1996 J Immunol 157 3220−2)。
【0008】
IL−13Rアルファ2鎖は単独でIL−13に対して高親和性(KD約0.25〜0.4nM)を有し、IL−13結合を負に制御するデコイ受容体(Donaldson,Whittersら 1998 J Immunol 161 2317−24)としても、マクロファージ及び場合によっては他の細胞型においてAP−I経路を介したTGF−β合成及び線維症を誘導するシグナル伝達受容体(Fichtner−Feigl,Stroberら 2006 Nat Med 12 99−106)としても機能する。
【0009】
喘息の前臨床動物モデルにおいて実施されたいくつかの研究によれば、IL−13は喘息において重要な役割を果たすことが示されている。これらのデータとしては、IL−13ノックアウトマウスにおける喘息に対する抵抗性、並びに種々のマウスモデルにおけるIL−13アンタゴニスト(可溶性IL−13受容体、抗IL−13 mAbなど)を用いた喘息表現型の阻害などが挙げられる(SeIa 1999 Harefuah 137 317−9;Wills−Karp及びChiaramonte 2003 Curr Opin Pulm Med 9 21−7;Wills−Karp 2004 Immunol Rev 202 175−90)。複数の研究によれば、マウス及びモルモットの肺に組換えIL−13を薬理学的に投与すると、気道粘液の分泌過多、好酸球増加症及びAHRが誘導されることが示されている(Grunig,Warnockら 1998 Science 282 2261−3;Wills−Karp,Luyimbaziら 1998 Science 282 2258−61;Kibe,Inoueら 2003 Am J Respir Crit Care Med 167 50−6;Vargaftig及びSinger 2003 Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 284 L260−9;Vargaftig及びSinger 2003 Am J Respir Cell Mol Biol 28 410−9)。
【0010】
IL−13のこれらの効果は、IL−13の恒常的又は誘導性発現のいずれかを有するトランスジェニックマウス系において再現される(Zhu,Homerら 1999 J Clin Invest 103 779−88;Zhu,Leeら 2001 Am J Respir Crit Care Med 164 S67−70;Lanone,Zhengら 2002 J Clin Invest 110463−74)。また、遺伝子導入によるIL−13の慢性的過剰発現は、上皮下の線維症及び気腫も誘導する。IL−13(及びIL−4)シグナル伝達分子のSTAT6を欠くマウスは、アレルゲン誘導のAHR及び粘液過剰産生を示さない(Kuperman,Huangら 2002 Nat Med 8 885−9)。可溶性IL−13受容体融合タンパク質(sDL−13Rアルファ2Fc)を用いた研究は、アレルゲン卵白アルブミン(OVA)誘導の実験的気道疾患におけるこのサイトカインの極めて重要な役割を示している(Grunig,Warnockら 1998 Science 282 2261−3;Wills−Karp,Luyimbaziら 1998 Science 282 2258−61;Taube,Duezら 2002 J Immunol 169 6482−9)。
【0011】
また、抗IL−13治療の有効性がマウス喘息の慢性モデルで示された。粘液の分泌過多及びAHRの特徴を示すことに加えて、この慢性喘息モデルは、より急性なモデルにおいては欠いている、ヒト疾患のいくつかの顕著な特徴を示す。これらには、上皮空間に位置する肺組織の好酸球増加症、及びコラーゲン沈着の増加によって測定される平滑筋線維症などが挙げられる。慢性喘息モデルは、OVAによって感作されたマウスにおいて、週1回、計4週間のOVAのエアロゾル接種を繰り返すことによって誘導される。(有効性の読み出しは試験の53日目に評価され、36日目から)OVA接種の最後の2週間に投与された抗IL−13抗体は、AHR、肺炎症、杯細胞過形成、粘液分泌過多、及び気道線維症を有意に阻害した(Yang,Liら 2005 J Pharmacol Exp Ther)。
【0012】
また、IL−13アンタゴニストの治療効果は、喘息の霊長類モデルにおいてAHRを阻害することも示された(American Thoracic Society,San Diego 2005)。
【0013】
疾患の重症度と相関する高レベルのIL−13のmRNA及びタンパク質が喘息患者の肺において検出され、IL−13はヒト喘息の病原に関係している(Huang,Xiaoら 1995 J Immunol 155 2688−94)。さらに、IL−13レベルの上昇をもたらすヒトIL−13遺伝的多型が確認され、喘息及びアトピーと関連し(Heinzmann,Maoら 2000 Hum Mol Genet 9 549−59;Hoerauf,Kruseら 2002 Microbes Infect 4 37−42;Vercelli 2002 Curr Opin Allergy Clin Immunol 2 389−93;Heinzmann,Jerkicら 2003 J Allergy Clin Immunol 112 735−9;Chen,Ericksenら 2004 J Allergy Clin Immunol 114 553−60;Vladich,Brazilleら 2005 J Clin Invest)、上昇したIL−13レベルは、喘息患者の肺において検出されている(Huang,Xiaoら 1995 J Immunol 155 2688−94;Arima,Umeshita−Suyamaら 2002 J Allergy Clin Immunol 109 980−7;Berry,Parkerら 2004 J Allergy Clin Immunol 114 1106−9)。また、より高い血漿IL−13レベルを生じるIL−13遺伝子の多形を有する個体は、アトピー及び喘息のリスクが高く、IL−13と喘息の遺伝的関連性も示されている(Wills−Karp 2000 Respir Res 1 19−23)。
【0014】
多様なヒト障害におけるヒトIL−13の役割に起因して、治療戦略はIL−13活性を阻害又は相殺するように設計される。特に、IL−13に結合して中和する抗体は、IL−13活性を阻害する手段として探し求められている。しかしながら、IL−13、特にヒトIL−13に結合できる適切な及び/又は改善された抗体が当該技術分野では必要とされる。特に、抗体はヒトIL−13を中和することができる。本発明は、ヒトIL−13に結合可能であり、高親和性で結合可能であり、ヒトIL−13に結合して中和可能である、結合タンパク質、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、及びそれらの断片の新規ファミリーを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、新規なIL−13特異的抗体及び断片、例えば、そのIL−13結合断片、特に中和抗体及び断片に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】重鎖(CDR H)のCDR1、2、3、及び軽鎖(CDR L)のCDR1、2、3の各々についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図2】シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのアミノ酸配列を示す。
【図3】シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのDNA配列、 ラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図4】シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図5】ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、及びシグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図6】シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図7】ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、及び ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、を示す。
【図8】ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、及び シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図9】ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、を示す。
【図10】ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、及び ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図11】ヒトVK 1 2−1−(1)02 JK4アクセプターフレームワーク及びVH2 3−1 2−26 JH4アクセプターフレームワークについてのアミノ酸配列及びDNA配列を示す。
【図12】ラットに関する軽鎖、アクセプターフレームワーク、並びにヒト化軽鎖及びさらに重鎖のアラインメントを示す。CDRは、ボールド体であり、下線が付されている。ドナー残基G49及びR71は、ボールド体であり、イタリック体であり、反転表示されている。
【図13】アレルゲン接種後の24時間で測定されたBALエオタキシン−3に対するAb652の効果。データは、平均±SEMで表され、1群あたりn=4〜8である。
【図14】アレルゲン接種後の24時間で測定されたBAL好酸球数に対するAb652の効果。データは、研究のスクリーニング段階で測定されたBAL好酸球数に対して標準化されている。平均±SEM、n=4〜8/群。
【図15】アレルゲン接種後の15分までに測定された最大気道抵抗に対するAb652の効果。データは、平均±SEMとして表される。n=4〜8/群。
【図16】アレルゲン接種後の24時間で測定された気道抵抗に対するAb652の効果。データは、アレルゲンに暴露される前に測定された気道抵抗に対して標準化されている。平均±SEM、n=4〜8/群。
【発明を実施するための形態】
【0017】
抗体可変ドメインにおける残基は、通常、Kabatらによって考案されたシステムに従って番号付けされる。このシステムは、Kabatら、1987、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA(以後、「Kabatら(前述)」)に記載されている。特に明記しない場合は、この番号付けシステムが本明細書において使用される。
【0018】
Kabat残基表記法は、アミノ酸残基の線形番号付けと必ずしも直接対応しない。実際の線形アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであっても相補性決定領域(CDR)であっても、構造成分の短縮又はそこへの挿入に対応して、厳密なKabat番号付けの場合よりも少ない又は多いアミノ酸を含んでもよい。残基の正しいKabat番号付けは、抗体の配列の相同性の残基を「標準的な」Kabat番号付け配列とアラインメントすることにより、所定の抗体について決定してもよい。
【0019】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置している。しかしながら、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M. J.Mol.Biol.,196,901−917(1987))によると、CDR−H1に同等なループは残基26から残基32に伸びる。このようにして、「CDR−H1」は、本明細書中で使用するとき、Kabat番号付けシステムとChothiaの位相的ループ定義の組み合わせによって記載すると、残基26〜35を含む。
【0020】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従うと、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)、及び残基89〜97(CDR−L3)に位置される。
【0021】
一実施形態では、抗体はアンタゴニスト抗体である。
【0022】
本明細書中で使用するとき、用語「アンタゴニスト抗体」とは、例えば、IL−13によるIL−13受容体への結合をブロックするか又は実質的にその結合を減少させ、したがって、この受容体の活性化を阻害することによって、IL−13の生物学的シグナル伝達活性を阻害及び/又は中和することができる抗体を表す。
【0023】
本発明に使用するための抗体は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて得られてもよい。IL−13を含有する融合ポリペプチドを含むIL−13ポリペプチド、又は該ポリペプチドを(組換え的に)発現している細胞は、IL−13を特異的に認識する抗体を産生するために用いることができる。IL−13ポリペプチドは、「成熟な」ポリペプチド又は生物学的に活性なその断片若しくは誘導体であってもよい。IL−13ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当該技術分野において周知な方法によって調製されてもよく、又は天然の生物学的供給源から回収されてもよい。本出願では、用語「ポリペプチド」には、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質が含まれる。これらは、他に明記されていなければ、相互交換して用いられる。IL−13ポリペプチドは、ある場合には、例えばアフィニティータグに融合された融合タンパク質などの巨大タンパク質の一部であってもよい。
【0024】
IL−13ポリペプチドに対して生じた抗体は、動物の免疫付与が必要な場合は、周知であり日常的なプロトコールを用いて動物に、好ましくは非ヒト動物に該ポリペプチドを投与することによって得ることができ、例えば、Handbook of Experimental Immunology,D.M.Weir(編),Vol 4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986を参照されたい。多数の温血動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタを免疫してもよい。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが、一般的には最も適切である。
【0025】
本発明に使用するための抗体は、全抗体及び機能的に活性なその断片又は誘導体を含み、限定されないが、モノクローナル、ヒト化された、完全なヒト又はキメラ抗体であってもよい。
【0026】
モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られているいずれかの方法によって調製されてもよく、例えば、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein,1975,Nature,256:495−497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,1983,Immunology Today,4:72)、及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,77−96頁,Alan R Liss,Inc.,1985)が挙げられる。
【0027】
また、本発明に使用するための抗体は、例えば、Babcook,J.ら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843−7848;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377によって報告されている方法によって、特異的抗体を産生するために選択される単一のリンパ球から生じさせた免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし、発現させることによる単一のリンパ球抗体法を用いて生じさせてもよい。
【0028】
抗体のスクリーニングは、IL−13への結合を測定するアッセイ、及び/又は1若しくは複数のIL−13の受容体へのIL−13の結合をブロックする能力を測定するアッセイを用いて行うことができる。結合アッセイの例としては、例えば、プレートに固相化されたIL−13の融合タンパク質を用い、IL−13に結合した抗IL−13抗体を検出するためのコンジュゲートされた二次抗体を使用するELISAが挙げられる。ブロッキングアッセイの例としては、IL−13Rに結合しているIL−13リガンドタンパク質のブロッキングを測定する、フローサイトメトリーに基づくアッセイが挙げられる。蛍光標識した二次抗体を用いて、IL−13Rに結合しているIL−13リガンドタンパク質の量を検出する。
【0029】
ヒト化抗体(CDRグラフト抗体を含む)は、非ヒト種由来の1又は複数の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する抗体分子である(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照されたい)。CDR全体ではなくCDRの特異性決定残基を移すことが単に必要なだけであり得ることは理解されよう(例えば、Kashmiriら,2005,Methods,36,25−34を参照されたい)。ヒト化抗体は、場合により、CDRに由来する非ヒト種由来の1又は複数のフレームワーク残基をさらに含んでもよい。
【0030】
キメラ抗体は、2つの異なる種に由来する成分から構成され、その結果、その成分は、それが由来する種の特徴を保持する。一般に、キメラ抗体は、1つの種、例えば、マウス、ラット、ウサギ又は類似物由来の可変領域、ヒトなどの別の種由来の定常領域を含む。
【0031】
また、本明細書に使用するための抗体は、当該技術分野において知られている様々なファージディスプレイ法によって生じさせることができ、Brinkmanら(J.Immunol.Methods,1995,182:41−50)、Amesら(J.Immunol.Methods,1995,184:177−186)、Kettleboroughら(Eur.J.Immunol.1994,24:952−958)、Persicら(Gene,1997 187 9−18)、Burtonら(Advances in Immunology,1994,57:191−280)、及びWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びにUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743及び5,969,108に開示された方法が挙げられる。
【0032】
完全なヒト抗体は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が、全てヒト起源であるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一であるが、必ずしも同抗体由来でなくてもよい抗体である。完全なヒト抗体の例には、例えば、上記されるファージディスプレイ法によって産生される抗体、マウス免疫グロブリン可変領域遺伝子及び任意の定常領域の遺伝子が、それらのヒト対応物によって置換された、マウスによって産生される抗体が挙げられ、例えば、一般論として、EP0546073、US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,661,016、US5,770,429、EP0438474、及びEP0463151に報告されている。
【0033】
一実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について図1の配列番号1に示される配列を有する少なくとも1つのCDR、CDR−H2について配列番号2に示される配列を有するCDR、及び/又はCDR−H3について配列番号3に示される配列を有するCDRを含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインのCDR−H1、CDR−H2、及びCDR−H3の少なくとも2つは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列から選択される、上記アンタゴニスト抗体を提供する。例えば、抗体は、CDR−H1が配列番号1に示される配列を有し、CDR−H2が配列番号2に示される配列を有する重鎖を含んでもよい。或いは、抗体は、CDR−H1が配列番号1に示される配列を有し、CDR−H3が配列番号3に示される配列を有する重鎖を含んでもよく、又は抗体は、CDR−H2が配列番号2に示される配列を有し、CDR−H3が配列番号3に示される配列を有する重鎖を含んでもよい。疑いを避けるために、あらゆる置き換えを含むことが理解される。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について図1の配列番号4に示される配列を有する少なくとも1つのCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及び/又はCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRを含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインのCDR−L1、CDR−L2、及びCDR−L3の少なくとも2つは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列から選択される、上記アンタゴニスト抗体を提供する。例えば、抗体は、CDR−L1が配列番号4に示される配列を有し、CDR−L2が配列番号5に示される配列を有する軽鎖を含んでもよい。或いは、抗体は、CDR−L1が配列番号4に示される配列を有し、CDR−L3が配列番号6に示される配列を有する軽鎖を含んでもよく、又は抗体は、CDR−L2が配列番号5に示される配列を有し、CDR−L3が配列番号6に示される配列を有する軽鎖を含んでもよい。疑いを避けるために、あらゆる置き換えを含むことが理解される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0039】
本発明の抗体分子は、適切には、それぞれ相補的軽鎖又は相補的重鎖を含む。
【0040】
したがって、一実施形態では、本発明に係る抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及び/又はCDR−H3について配列番号3に示される配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及び/又はCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む。
【0041】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供されるCDRに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、本明細書中に記載されている方法、特に実施例に示された方法を用いて、当業者によって容易に試験され、IL−13結合及びIL−13/IL−13受容体相互作用の阻害を決定することができる。
【0042】
したがって、本発明は、CDRH−1(配列番号1)、CDRH−2(配列番号2)、CDRH−3(配列番号3)、CDRL−1(配列番号4)、CDRL−2(配列番号5)、及びCDRL−3(配列番号6)から選択される1又は複数のCDRを含む、ヒトIL−13に特異性を有する抗体であって、CDRの1又は複数における1又は複数のアミノ酸が、別のアミノ酸、例えば、以下の本明細書に定義される類似のアミノ酸で置換されている、上記抗体を提供する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、CDRH−1(配列番号1)、CDRH−2(配列番号2又は配列番号20)、CDRH−3(配列番号3)、CDRL−1(配列番号4)、CDRL−2(配列番号5)、及びCDRL−3(配列番号6)を含む、ヒトIL−13に特異性を有する抗体であって、例えば、1又は複数のCDRにおける1又は複数のアミノ酸が、別のアミノ酸、例えば、以下の本明細書に定義される類似のアミノ酸で置換されている、上記抗体を提供する。
【0044】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2は配列番号2に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3は配列番号3に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する。別の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2は配列番号2に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3は配列番号3に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する。
【0045】
「同一性」とは、本明細書中で使用するとき、整列された配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを指す。「類似性」とは、本明細書中で使用するとき、整列された配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似したタイプであることを指す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンで置換されてもよい。多くの場合、互いに置換され得る他のアミノ酸には、限定されないが、
フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
が含まれる。同一性及び類似性の程度は容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,及びGriffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.及びDevereux,J.編,M Stockton Press,New York,1991,NCBIから入手可能なBLAST(商標)software(Altschul,S.F.ら,1990,J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.& States,D.J.1993,Nature Genet.3:266−272.Madden,T.L.ら,1996,Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.ら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.& Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649−656)。
【0046】
別の実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2は配列番号5に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3は配列番号6に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する。別の実施形態では、本発明の抗体は軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2は配列番号5に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3は配列番号6に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する。
【0047】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体はモノクローナル抗体である。
【0048】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体はキメラ抗体である。
【0049】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体は、配列番号1、2、3、4、5、6において提供されるCDR若しくはその改変体の1又は複数を含むCDRグラフト抗体分子である。本明細書中で使用するとき、用語「CDRグラフト抗体分子」とは、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークにグラフトされたドナー抗体(例えば、マウス又はラットモノクローナル抗体)由来の1又は複数のCDR(所望により、1又は複数の修飾されたCDRを含む)を含む抗体分子を指す。概説については、Vaughanら,Nature Biotechnology,16,535−539,1998を参照されたい。一実施形態では、移されている全CDRというよりはむしろ、本明細書において上記されたいずれか1つのCDR由来の特異性決定残基のほんの1又は複数が、ヒト抗体フレームワークに移されている(例えば、Kashmiriら,2005,Methods,36,25−34を参照されたい)。一実施形態では、本明細書において上記された1つ又は複数のCDR由来の特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移されている。別の一実施形態では、本明細書において上記された各々のCDR由来の特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移されている。
【0050】
CDR又は特異性決定残基をグラフトした場合、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列は、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/タイプを考慮して使用されてもよく、マウス、霊長類及びヒトのフレームワーク領域が含まれる。適切には、本発明に係るCDRグラフト抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域、並びに、上記される1若しくは複数のCDR又は特異性決定残基を含む可変ドメインを有する。このようにして、一実施形態では、中和CDRグラフト抗体が提供され、可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含む。
【0051】
本発明において用いることができるヒトフレームワークの例としては、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMが挙げられる(Kabatら、上述)。例えば、KOL及びNEWMは重鎖に使用することができ、REIは軽鎖に使用することができ、並びにEU、LAY及びPOMは重鎖と軽鎖の両方に使用することができる。或いは、ヒト生殖系列配列を用いてもよい;http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/で利用可能である。
【0052】
本発明に係るCDRグラフト抗体では、アクセプターの重鎖及び軽鎖は、必ずしも同じ抗体由来である必要はなく、所望により、異なる鎖由来のフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0053】
本発明のCDRグラフト抗体の重鎖について適切なフレームワーク領域は、ヒト下位集団のVH2配列3−1 2−26、並びにJH4(配列番号41)由来である。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDRグラフト抗体であって、重鎖フレームワーク領域は、ヒト下位集団のVH2配列3−1 2−26、並びにJH4由来である、上記抗体が提供される。ヒトJH4の配列は、以下の通りである:(YFDY)WGQGTLVTVS(配列番号43)。YFDYモチーフはCDR−H3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Ravetch,JV.ら,1981,Cell,27,583−591)。
【0054】
本発明のCDRグラフト抗体の軽鎖について適切なフレームワーク領域は、ヒト生殖系列下位集団のVK1配列2−1 1−02、並びにJK4(配列番号39)由来である。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDRグラフト抗体であって、軽鎖フレームワーク領域は、ヒト下位集団の配列2−1 1−02、並びにJK4由来である、上記抗体が提供される。JK4配列は、以下の通りである:(LT)FGGGTKVEIK(配列番号44)。LTモチーフはCDR−L3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Hieter,PA.ら,1982,J.Biol.Chem.,257,1516−1522)。
【0055】
一実施形態では、軽鎖及び/又は重鎖フレームワークは、配列番号39〜42に示される配列から選択される。
【0056】
また、本発明のCDRグラフト抗体では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と同じ配列を正確に有している必要はない。例えば、稀な残基は、そのアクセプター鎖のクラス又はタイプについてより出現することが多い残基に変化されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域において選択された残基は、ドナー抗体と同じ位置で見られる残基に対応するように変化されてもよい(Reichmannら,1998,Nature,332,323−324を参照されたい)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要最小限に止めておくべきである。変化が必要とされ得るアクセプターフレームワーク領域において残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に記載されている。
【0057】
適切には、本発明のCDRグラフト抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトVH2配列3−12−36、並びにJH4を有する場合、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1又は複数のドナーCDRに加えて、49位と71位の少なくとも1つにドナー残基を含む(Kabatら(上述)による)(図12を参照されたい)。
【0058】
したがって、少なくとも、重鎖の可変ドメインの49位と71位の残基がドナー残基であるCDRグラフト抗体が提供される。
【0059】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRが本来誘導されている抗体由来の残基である。好ましくは、残基は、それぞれ49位と71位のグリシンとアルギニンである。
【0060】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは配列番号31に示される配列を含む。
【0061】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供される抗体可変ドメインに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、実施例に記載されている方法を用いて、当業者によって容易に試験され、IL−13結合及び/又はリガンド/受容体ブロックを決定することができる。
【0062】
別の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは配列番号23に示される配列を含む。
【0064】
別の実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0065】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは配列番号31に示される配列を含み、軽鎖の可変ドメインは配列番号23に示される配列を含む。
【0066】
本発明の別の実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。適切には、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0067】
本発明の抗体分子は、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はその断片を含んでもよく、限定されないが、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価若しくは四価抗体、ビス−scFv、二機能性抗体、三機能性抗体、四機能性抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよい(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126−1136;Adair及びLawson,2005,Drug Design Reviews−Online 2(3),209−217を参照されたい)。これらの抗体断片を作製し、産生する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Vermaら,1998,Journal of Immunological Methods,216,165−181を参照されたい)。本発明に使用するための他の抗体断片には、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片、並びに国際特許出願WO2009/040562に記載されたFab−dAb断片が含まれる。多価抗体は、複数の特異性を含んでもよく、又は単一特異的であってもよい(例えば、WO92/22853及びWO05/113605を参照されたい)。
【0068】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案された機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択されてもよい。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、ヒトIgG定常領域ドメインが用いられてもよく、特に、抗体分子が治療用であり、抗体エフェクター機能が要求される場合、IgG1及びIgG3アイソタイプであってもよい。或いは、IgG2及びIgG4アイソタイプは、抗体分子が治療目的であり、抗体エフェクター機能が要求されない場合、例えば、単にIL−13活性をブロックするために用いられてもよい。これらの定常領域ドメインの配列改変体も使用され得ることは承認されよう。例えば、241位のセリンが、Angalら,Molecular Immunology,1993,30(1),105−108に報告されるようにプロリンに変更されているIgG4分子を用いてもよい。また、抗体が様々な翻訳後修飾を受けてもよいことは当業者に理解されよう。これらの修飾のタイプ及び範囲は、多くの場合、抗体を発現させるために使用される宿主細胞系並びに培養条件に依存する。このような修飾は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸塩異性化及びアスパラギン脱アミド化のバリエーションを含んでもよい。頻繁な修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用に起因した、カルボキシ末端の塩基性残基(例えば、リシン又はアルギニン)の喪失である(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129−134,1995に記載される通りである)。しかしながら、本発明のAb652実施形態の重鎖又は軽鎖のいずれかにはC−末端リシンが存在しない。
【0069】
一実施形態では、抗体の重鎖はCH1ドメインを含み、抗体の軽鎖はCLドメインのカッパ又はラムダのいずれかを含む。
【0070】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体は、重鎖定常領域が修飾されたヒンジ領域を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体である。したがって、本発明は、重鎖が配列番号35に示される配列を含む又はその配列からなる抗体を提供する。
【0071】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供される抗体可変ドメイン及び/又は定常ドメインに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、IL−13結合並びにIL−13/IL−13受容体相互作用のブロックを決定するために、本明細書に記載されている方法、特に実施例に示されている方法を用いることによって、当業者により容易に試験することができる。
【0072】
本発明の一実施形態では、抗体は、重鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。適切には、抗体は、重鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0073】
一実施形態では、本発明に係る抗体分子は、配列番号27に示される配列を含む軽鎖を含む。
【0074】
本発明の一実施形態では、抗体は、軽鎖を含み、軽鎖は配列番号27に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。例えば、抗体は、軽鎖を含み、軽鎖は配列番号27に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0075】
一実施形態では、本発明は、重鎖が配列番号35に示される配列を含み又はその配列からなり、軽鎖が配列番号27に示される配列を含み又はその配列からなる抗体を提供する。
【0076】
本発明の一実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号27に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一般に、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号27に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0077】
生体分子、例えば抗体又は断片は、酸性及び/又は塩基性官能基を含み、それにより、分子に正味の正電荷又は負電荷を与える。全体の「観察された」電荷量は、実在物の絶対アミノ酸配列、3D構造における荷電基の局所環境、及び分子の環境条件に依存する。等電点(pI)は、特定の分子又は表面が正味の電荷を担持しないpHである。一実施形態では、本開示に係る抗体又は断片は、等電点(pI)が少なくとも7である。一実施形態では、抗体又は断片は、等電点が少なくとも8であり、例えば、8.5、8.6、8.7、8.8又は9である。一実施形態では、抗体のpIは8である。
【0078】
本発明のIL−13抗体及び断片は、適切な等電点を有するように操作されてもよい。これは、より強固な特性、特に、適切な溶解性及び/又は安定性プロフィールを有する抗体及び/又は断片をもたらすことができる。
【0079】
このようにして、一態様では、本発明は、初めに特定された抗体の等電点とは異なる等電点を有するように操作されたヒト化IL−13抗体を提供する。例えば、抗体は、アミノ酸残基の置換、例えば、1又は複数の塩基性アミノ酸残基で酸性アミノ酸残基を置換することによって操作されてもよい。或いは、塩基性アミノ酸残基が付加されてもよく、又は酸性アミノ酸残基が除去され得る。或いは、分子が容認されない高いpI値を有する場合、酸性アミノ酸残基は、必要に応じてpHを下げるように導入されてもよい。操作された抗体又は断片のpHは、例えば、8又はそれを超えてもよく、例えば、8.5又は9であり得る。pIを操作する場合、抗体又は断片の所望の活性を保持するように注意すべきであることは重要である。このようにして、一実施形態では、操作された抗体又は断片は、「修飾されていない」抗体又は断片と同じ又は実質的に同じ活性を有する。
【0080】
**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムを用いて、抗体又は断片の等電点を予測してもよい。
【0081】
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、噴霧による吸入送達に適している。一例では、本発明の抗体の物理的特性、例えば結合親和性及び効力は、噴霧によって実質的に変更されない。一例では、本発明の抗体は非常に安定である。抗体安定性の1つの測定は融解温度(Tm)である。融解温度は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法、例えば、サーモフルオロ(Thermofluor)(Ericssonら,Analytical Biochemistry 357(2006)289−298)又はDSC(示差走査熱量測定法)を用いて決定されてもよい。好ましくは、本発明によって提供される抗体は、高い融解温度(Tm)を有し、典型的には少なくとも75℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも75℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも80℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも83℃である。
【0082】
また、本発明は、本発明によって提供される抗体、特に、重鎖配列(配列番号35)及び/又は軽鎖配列(配列番号27)を含む抗体が結合する、ヒトIL−13の特定の領域又はエピトープを提供する。
【0083】
ヒトIL−13ポリペプチドのこの特定の領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて、当該技術分野において知られている任意の適切なエピトープマッピング法によって特定され得る。このような方法の例には、抗体によって認識されるエピトープの配列を含む抗体に特異的に結合することができる最小断片を用いて、本発明の抗体に結合させるためにIL−13由来の様々な長さのペプチドをスクリーニングすることが含まれる。IL−13ペプチドは、合成的に産生されてもよく、又はIL−13ポリペプチドのタンパク質分解的消化によって産生されてもよい。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分光分析によって同定することができる。別の例では、NMR分光法又はX線結晶学を用いて、本発明の抗体によって結合されるエピトープを同定することができる。一度同定されると、本発明の抗体に結合するエピトープ断片は、必要に応じて、同エピトープに結合する追加のアンタゴニスト抗体を得るための免疫原として用いることができる。
【0084】
本発明に係る抗体、特に、重鎖配列(配列番号31)及び軽鎖配列(配列番号27)を含む抗体の結合を交差ブロックする抗体は、同様に、IL−13活性の拮抗に有用であり得る。したがって、本発明はまた、上記の抗体のいずれか1つがヒトIL−13に結合するのを交差ブロックし、及び/又はこれらの抗体のいずれか1つによってIL−13への結合が交差ブロックされる、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体を提供する。一実施形態では、このような抗体は、本明細書において上記された抗体と同じエピトープに結合する。別の実施形態では、交差ブロックする中和抗体は、本明細書において上記された抗体が結合するエピトープと接し、及び/又はそのエピトープと重なるエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のこの態様の交差ブロックする中和抗体は、本発明の抗体と同じエピトープ、或いは該エピトープと接し、及び/又は重なるエピトープには結合しない。
【0085】
交差ブロックする抗体は、当該技術分野において任意の適切な方法を用いて、例えば、競合ELISA又はBIAcoreアッセイを用いることによって同定することができ、この場合、ヒトIL−13に対する交差ブロック抗体の結合は、本発明の抗体の結合を妨げ、又はその逆もある。
【0086】
一実施形態では、重鎖が配列番号35に示される配列を含み、軽鎖が配列番号27に示される配列を含む抗体によるヒトIL−13への結合を交差ブロックする、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体が提供される。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、配列番号35に示される重鎖配列、及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体の結合を、80%を超えて、例えば85%を超えて、例えば90%を超えて、特に95%を超えて阻害する。
【0087】
選択的に又は付加して、本発明のこの態様に係るアンタゴニスト抗体は、配列番号35に示される重鎖配列及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によって、ヒトIL−13への結合が交差ブロックされてもよい。したがって、配列番号35に示される重鎖配列及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトIL−13への結合が交差ブロックされる、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体分子も提供される。一実施形態では、本発明のこの態様によって提供されるアンタゴニスト抗体は、配列番号35に示される重鎖配列、及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によって、ヒトIL−13の結合が80%を超えて、例えば85%を超えて、例えば90%を超えて、特に95%を超えて阻害される。
【0088】
一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は完全にヒトである。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体はヒト化されている。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、ヒトIL−13に対する親和性が100pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、ヒトIL−13に対する親和性が50pM又はそれよりも良好である。
【0089】
一実施形態では、交差ブロック抗体は、等電点が少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9.0である。
【0090】
本発明の抗体分子は、適切には、高い結合親和性、特にピコモル濃度の親和性を有する。親和性は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて測定されてもよく、この方法には、単離された天然の又は組換えIL−13を用いた、本明細書中の実施例に記載されているBIAcoreを含めた表面プラズモン共鳴法が挙げられる。一例としては、親和性は、本明細書中の実施例に記載されている組換えヒトIL−13を用いて測定される。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約100pM又はそれより良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約50pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約40pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約30pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約20pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、完全にヒトであるか又はヒト化され、結合親和性が約100pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、完全にヒトであるか又はヒト化され、結合親和性が30pM又はそれよりも良好である。
【0091】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて変更されてもよいことは理解されよう。したがって、本発明はまた、IL−13に対する改善された親和性を有する、本発明の抗体分子の改変体に関する。このような改変体は、多数の親和性成熟プロトコールによって得ることができ、CDRの突然変異(Yangら,J.Mol.Biol.,254,392−403,1995)、チェーンシャッフリング(Marksら,Bio/Technology,10,779−783,1992)、大腸菌(E.coli)の突然変異誘発株の使用(Lowら,J.Mol.Biol.,250,359−368,1996)、DNAシャッフリング(Pattenら,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724−733,1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら,J.Mol.Biol.,256,77−88,1996)、及びセクシャルPCR(Crameriら,Nature,391,288−291,1998)が挙げられる。Vaughanら(上述)は、親和性成熟のこれらの方法を検討している。
【0092】
一実施形態では、本発明の抗体分子は、IL−13とIL−13受容体の相互作用をブロックし、特に、本発明の抗体分子は、IL−13とIL−13Rα1の相互作用、及びIL−13とIL−13Rα2の相互作用をブロックする。この相互作用をブロックする抗体の能力を決定するのに適した多数のアッセイは、本明細書中の実施例に記載されている。一実施形態では、本発明は、ヒトIL−13に特異性を有する中和抗体を提供する。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13受容体は、天然のヒトIL−13Rα1又は天然のヒトIL−13Rα2である。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13受容体は、組換えヒトIL−13Rα1又は組換えヒトIL−13Rα2である。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13は組換えヒトIL−13である。一実施形態では、中和抗体はヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体又はその断片である。
【0093】
所望により、本発明に使用するための抗体は、1又は複数のエフェクター分子にコンジュゲートされてもよい。エフェクター分子が、単一のエフェクター分子、又は本発明の抗体に結合できる単一部分を形成するように連結された2以上のこのような分子を含んでもよいことは承認されよう。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが望まれる場合、これは、抗体断片を直接又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結する、標準的な化学的又は組換えDNAの手法によって調製されてもよい。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートさせるための技術は当該技術分野において周知である(Hellstromら,Controlled Drug Delivery,第2版Robinsonら編,1987,623−53頁;Thorpeら,1982,Immunol.Rev.,62:119−58、及びDubowchikら,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67−123を参照されたい)。具体的な化学的手法には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03031581に記載の手法が含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO86/01533及びEP0392745に記載されるような組換えDNA手法を用いて達成することができる。
【0094】
エフェクター分子なる用語は、本明細書中で使用するとき、例えば、抗腫瘍薬、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成の又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート金属、ナノ粒子、及び蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出できる化合物などのレポーター基を含む。
【0095】
エフェクター分子の例には、細胞毒素、又は細胞にとって有害(例えば致死的)である任意の薬物を含む細胞毒性剤が含まれてもよい。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又は相同体が挙げられる。
【0096】
また、エフェクター分子には、限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。
【0097】
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレートされた放射性核種;又は、限定されないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を含み得る。
【0098】
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。対象となる酵素には、限定されないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれる。対象となるタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、限定されないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤又は抗血管新生剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン、或いはリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)、又は他の増殖因子などの生物反応修飾因子、及び免疫グロブリンが挙げられる。
【0099】
他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出トモグラフィーにおける使用のため)及び非放射性常磁性金属イオンを含む。診断としての使用のための抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号全体を参照されたい。適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族はストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み、適切な蛍光物質はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンを含み、適切な発光物質はルミノールを含み、適切な生物発光物質は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、適切な放射性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0100】
別の例において、エフェクター分子は、インビボにおける抗体の半減期の増加及び/又は抗体の免疫原性の減少及び/又は上皮バリアを越える免疫系への抗体の送達を強化できる。この型のエフェクター分子の適切な例は、WO05/117984に記載されたような、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又はアルブミン結合化合物を含む。
【0101】
エフェクター分子がポリマーである場合、一般に、合成の又は天然に存在するポリマー、例えば、場合により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー、或いは分岐又は非分岐の多糖類、例えば、ホモ又はヘテロの多糖類であってよい。
【0102】
上記の合成ポリマーに存在してもよい特定の任意の置換基は、1又は複数のヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基を含む。
【0103】
合成ポリマーの具体例には、場合により置換された直鎖又は分岐鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、場合により置換されたポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)及びその誘導体が挙げられる。
【0104】
具体的な天然に存在するポリマーは、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はその誘導体を含む。
【0105】
「誘導体」は、本明細書中で使用するとき、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択的反応基を含むものとする。反応基は、ポリマーに直接又はリンカーセグメントを介して連結されてもよい。このような基の残基が、抗体断片とポリマーとの間の連結基として、時には生成物の一部を形成することは理解されよう。
【0106】
ポリマーのサイズは、所望に応じて変更可能であるが、一般には、平均分子量が500Daから50000Da、例えば5000から40000Da、例えば20000から40000Daの範囲となる。ポリマーサイズは、特に、生成物の使用目的、例えば腫瘍などのある種の組織に局在する能力又は循環半減期を延長させる能力に基づいて選択できる(総説としては、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545を参照されたい)。したがって、例えば、生成物を循環から離れて組織に浸透させようとする場合、分子量の小さいポリマー、例えば約5000Daの分子量のポリマーの使用が有利である場合がある。生成物が循環に残存する場合の適用に関しては、分子量のより大きいポリマー、例えば20000Daから40000Daの範囲の分子量を有するポリマーの使用が有利である場合がある。
【0107】
適したポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、或いは特にメトキシポリ(エチレングリコール)などの、特に約15000Daから約40000Daの範囲の分子量のポリアルキレンポリマー又はその誘導体を含む。
【0108】
一例では、本発明において使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部位に結合される。特定の一例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は抗体断片に位置する末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離のアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を介して結合されてもよい。このようなアミノ酸は、抗体断片中に自然に発生してもよく、又は組換えDNA法を用いて断片中に操作してもよい(例えば、US5,219,996、US5,667,425、WO98/25971を参照されたい)。一例において、本発明の抗体分子は修飾されたFab断片であり、修飾は抗体分子の重鎖のC末端への、エフェクター分子の結合を可能にする、1又は複数のアミノ酸の付加である。適切には、付加アミノ酸は、エフェクター分子が結合できる1又は複数のシステイン残基を含む、修飾されたヒンジ領域を形成する。2以上のPEG分子を結合するために複数の部位が使用できる。
【0109】
適切には、PEG分子は、抗体断片に位置した少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合されてもよい。修飾された抗体断片に結合した各ポリマーは、断片に位置したシステイン残基のイオウ原子に共有結合されてもよい。共有結合は、一般に、ジスルフィド結合、又は、特にイオウ−炭素の結合である。チオール基が結合点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えばマレイミドなどのチオール選択性誘導体及びシステイン誘導体が使用されてもよい。上記のように、活性化ポリマーが、ポリマーによって修飾された抗体断片の調製において、出発物質として用いることができる。活性化ポリマーは、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどの、チオール反応基を含む任意のポリマーであってもよい。このような出発物質は、市販で(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.,Huntsville,AL,USAから)得ることができる、又は市販の出発物質から、従来の化学的手法を用いて調製することができる。特定のPEG分子は、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwater,Rapp Polymere及びSunBioから入手可能)及びM−PEG−SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)を含む。
【0110】
一実施形態では、抗体は、例えば、EP0948544又はEP1090037に開示されている方法に従って、PEG化された、すなわちPEG(ポリ(エチレングリコール))が共有結合した、修飾されたFab断片又はdiFabである[(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications),1992,J.Milton Harris(編)、Plenum Press,New York,「Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications」1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC及び「Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences」,1998,M.Aslam及びA.Dent,Grove Publishers、New York;Chapman、A.2002、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531−545も参照されたい]。一例では、PEGは、ヒンジ領域においてシステインに結合する。一例では、PEG修飾されたFab断片は、修飾ヒンジ領域において単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合でき、リシン残基上の各アミン基は、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合できる。したがって、Fab断片に結合したPEGの全分子量は約40,000Daであってもよい。
【0111】
一実施形態では、本発明は、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体分子を提供し、この抗体は、配列番号35に示される配列を含む重鎖、及び配列番号27に示される配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター分子が結合した少なくとも1つのシステイン残基を含む修飾されたヒンジ領域を有する、修飾されたFab’断片である。適切には、エフェクター分子はPEGであり、(WO98/25971及びWO2004072116又はWO2007/003898)に記載されている方法を用いて結合される。エフェクター分子は、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されている方法を用いて抗体断片に結合されてもよい。
【0112】
一実施形態では、抗体又は断片はエフェクター分子と結合されない。
【0113】
また、本発明は、本発明の抗体分子の重鎖(単数又は複数)及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列を提供する。適切には、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的方法によって作製された合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0114】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者に周知の方法によって得ることができる。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の一部又は全てをコードするDNA配列は、所望に応じて決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成されてもよい。
【0115】
アクセプターのフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広く利用可能であり、それらの知られたアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
【0116】
分子生物学の標準的技術を用いて、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製しもよい。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全に又は部分的に合成され得る。部位特異的突然変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を必要に応じて使用することができる。
【0117】
適切な配列の例は本明細書中に提供される。マウスシグナルペプチドMEWSWVFLFF LSVTTGVHS(配列番号45)などの重鎖に適したシグナルペプチドが配列中にコードされていてもよい。本発明のアンタゴニスト抗体分子を提供するために開裂されるマウスシグナルペプチドMSVPTQVLGL LLLWLTDARC(配列番号46)などの軽鎖に適したシグナルペプチドが配列中にコードされていてもよい。また、本発明は、配列番号32、34又は36又は38を含む、本発明の抗体の重鎖をコードする単離されたDNA配列を提供する。また、本発明は、配列番号24、26、28又は30を含む、本発明の抗体の軽鎖をコードする単離されたDNA配列を提供する。
【0118】
ベクターを構築できる一般的な方法、トランスフェクション法及び培養方法は、当業者に周知である。この点において、Current Protocols in Molecular Biology、1999、F.M.Ausubel(編),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor Publishingにより作成されたマニアティスのマニュアル(Maniatis Manual)を参照する。
【0119】
また、本発明の抗体をコードする1又は複数のDNA配列を含む1又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を発現させるために用いられてもよい。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系を使用することができ、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマの細胞が含まれる。
【0120】
また、本発明は、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質を発現させるのに適した条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養するステップ、及びこの抗体分子を単離するステップを含む、本発明に係る抗体分子を産生するための方法を提供する。
【0121】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖のポリペプチドをコードする配列だけが宿主細胞にトランスフェクトの使用に必要とされる場合には、重鎖又は軽鎖のポリペプチドだけを含んでもよい。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の作製について、細胞系に、2つのベクターである軽鎖ポリペプチドをコードする第1ベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2ベクターをトランスフェクトしてもよい。或いは、軽鎖及び重鎖のポリペプチドをコードする配列を含むベクターである単一のベクターを用いることができる。
【0122】
本開示に係る抗体及び断片は、宿主細胞から良好なレベルで発現される。このようにして、抗体及び/又は断片の特性は、市販用加工に最適であり、貢献すると考えられる。
【0123】
本発明の抗体は病態の治療及び/又は予防に有用であるため、本発明はまた、本発明の抗体分子を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物又は診断用組成物を提供する。したがって、薬剤を製造するための本発明の抗体の使用が提供される。組成物は、薬学的に許容される担体を通常は含む、無菌の医薬組成物の一部として通常は供給されることになる。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバントをさらに含んでもよい。
【0124】
また、本発明は、本発明の抗体分子を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と共に添加又は混合すること含む、医薬組成物又は診断用組成物を調製する方法を提供する。
【0125】
この抗体分子は、医薬組成物又は診断用組成物における唯一の有効成分であってもよく、又は他の抗体成分、例えば、抗TNF抗体、抗IL−1β抗体、抗T細胞抗体、抗IFNγ抗体又は抗LPS抗体、或いはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の有効成分を伴ってもよい。他の適切な有効成分には、寛容を誘導することができる抗体、例えば、抗CD3抗体又は抗CD4抗体が含まれる。
【0126】
さらなる実施形態では、本開示に係る抗体、断片又は組成物は、さらなる医薬として活性のある作用物質、例えば、コルチコステロイド(例えばプロピオン酸フルチカゾン)及び/又はベータ−2−作動薬(例えばサルブタモール、サルメテロール若しくはフォルモテロール)又は細胞成長及び増殖の阻害剤(例えばラパマイシン、シクロホスファミド、メトトレキサート)、或いは選択的にCD28及び/又はCD40阻害剤と組み合わせて使用される。一実施形態では、阻害剤は小分子である。別の実施形態では、阻害剤は標的に特異的な抗体である。
【0127】
医薬組成物は、適切には、治療有効量の本発明の抗体を含む。用語「治療有効量」とは、本明細書中で使用するとき、標的となる疾患若しくは状態を治療、改善又は予防するために、或いは検出可能な治療効果又は予防効果を示すために必要とされる治療薬の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデルにおいて、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかにおいて、初期に推定することができる。また、動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために用いることができる。続いて、このような情報は、ヒトにおける有用な投薬量及び投与経路を決定するために用いることができる。
【0128】
ヒト対象に対する正確な治療有効量は、疾患状態の重篤度、対象の全体的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ(単数又は複数)、治療に対する反応感受性及び耐性/応答に依存する。この量は、日常の実験によって決定でき、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg〜50mg/kg、例えば0.1mg/kg〜20mg/kgである。或いは、投薬量は、1日あたり1〜500mg、例えば、1日あたり10〜100、200、300又は400mgであってもよい。好都合には、医薬組成物は、所定量の本発明の活性剤を含む単位剤形で存在してもよい。
【0129】
組成物は、患者に個別に投与してもよく、又は他の薬物、薬剤若しくはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続して又は別々に)投与されてもよい。
【0130】
本発明の抗体分子を投与する場合の投薬量は、治療される状態の性質、存在する炎症の程度、及び抗体分子が予防的に使用されるか又は現状を治療するために使用されているかどうかに依存する。
【0131】
投薬の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続期間に依存する。抗体分子の半減期が短い(例えば、2〜10時間)場合、1日に1回又は複数回の投薬が必要とされ得る。或いは、抗体分子の半減期が長い(例えば2〜15日)場合、1日に1回、1週間に1回、若しくはさらに1又は2か月に1回の投薬だけが必要とされ得る。
【0132】
薬学的に許容される担体は、それ自体は組成物を摂取する個体に対して有害な抗体の産生を誘導してはならず、毒性があってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、及び不活性ウイルス粒子などの大型の緩慢に代謝される巨大分子であってよい。
【0133】
薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用できる。
【0134】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、さらに水、食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含んでもよい。さらに、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質がこのような組成物中に存在してもよい。このような担体は、患者による摂取のために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液などに処方可能にする。
【0135】
投与の好ましい形態は、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注射用又は注入用である場合、油性又は水性のビヒクルにおいて懸濁液、溶液又は乳剤の形態を取ってよく、懸濁剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤助剤を含んでもよい。或いは、抗体分子は、使用前に適切な滅菌の液体により再構成するために、乾燥形態であってもよい。
【0136】
一度処方されると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。治療されるべき対象は動物であり得る。しかしながら、1又は複数の実施形態では、組成物はヒト対象に投与するために適合される。
【0137】
一実施形態では、本開示に係る製剤において、最終製剤のpHは、抗体又は断片の等電点の値に類似せず、これは、製剤のpHが7である場合、8〜9又はそれを超えるpIが適切であり得るためである。望ましくは理論に束縛されずに、これは、最終的には、改善された安定性を有する最終製剤を提供することができ、例えば、抗体又は断片が溶液中に留まると考えられる。
【0138】
本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、経皮的(例えば、WO98/20734を参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下、膣内又は直腸の経路を含む、任意の数の経路によって投与できる。皮下噴射器もまた本発明の医薬組成物の投与のために使用できる。典型的には、治療用組成物は、溶液又は懸濁液のどちらかとして、注射可能に調製できる。注射前の、液体媒体中における溶液用又は懸濁液用に適した固体形態にもまた調製できる。好ましくは、本発明の抗体分子は、皮下に、吸入により又は局所に投与される。
【0139】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内によって達成され、又は組織の間質腔に送達される。組成物はまた、対象とする特定の組織内に投与され得る。投薬処置は、単回投薬スケジュール又は複数回投薬スケジュールであってもよい。
【0140】
組成物中の有効成分が抗体分子であることは承認されよう。そのため、消化管における分解を受けやすい。このようにして、組成物が消化管を使用する経路によって投与されるべきである場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、消化管から一度吸収されたら抗体を放出する薬物を含む必要がある。
【0141】
薬学的に許容される担体の詳細な考察は、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing Company,N.J.1991)において利用可能である。
【0142】
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与用の製剤として提供される。
【0143】
適切な吸入可能な調製物には、吸入可能な粉末、高圧ガスを含む計量エアロゾル、又は高圧ガスを伴わない吸入可能な溶液(例えば、噴霧可能な溶液又は懸濁液)が挙げられる。活性物質を含む、本開示に係る吸入可能な粉末は、上記の活性物質だけからなっているか、又は上記の活性物質と生理学的に許容される賦形剤との混合物からなっていてもよい。
【0144】
これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれら同士の混合物を含んでもよい。単糖又は二糖が適切には使用され、それは、ラクトース又はグルコースの使用、特に、限定されないが、それらの水和物の形態である。
【0145】
肺における沈着用の粒子は、10ミクロン未満の粒径を必要とし、例えば、1〜9ミクロン、例えば0.1〜5μm、特に1〜5μmである。有効成分(例えば、抗体又は断片)の粒径は、最も重要である。
【0146】
吸入可能なエアロゾルを調製するために用いることができる噴射ガスは当該技術分野において知られている。適切な噴射ガスは、炭化水素、例えばn−プロパン、n−ブタン又はイソブタン、ハロ炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体の中から選択される。上記の噴射ガスは、単独で又はそれらの混合物で使用されてもよい。
【0147】
特に適切な噴射ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、及びそれらの混合物が特に適している。
【0148】
また、噴射ガス含有の吸入可能なエアロゾルは、他の成分、例えば共溶媒、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、潤滑剤、及びpHを調整するための手段を含んでもよい。これらの全ての成分は当該技術分野において知られている。
【0149】
本発明に係る噴射ガス含有の吸入可能なエアロゾルは、最大5重量%の活性物質を含んでもよい。本発明に係るエアロゾルは、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%、又は0.5〜1重量%の活性物質を含む。
【0150】
或いは、肺への局所投与はまた、溶液製剤又は懸濁製剤の投与によって、例えば、噴霧器などのデバイス、例えば、圧縮器に接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,Va.により製造されたPari Master(登録商標)圧縮器に接続されたPari LC−Jet Plus(登録商標)噴霧器)を用いるものであってもよい。
【0151】
一実施形態では、製剤は、噴霧による送達用に単位用量を含む個別のアンプルとして提供される。
【0152】
一実施形態では、抗体は、再構成用に、或いは懸濁製剤として凍結乾燥形態で供給される。
【0153】
本発明の抗体は、溶媒に分散されて、例えば、溶液又は懸濁液の形態で送達させることができる。適切な生理溶液、例えば、生理食塩水、薬理学的に許容される溶媒、又は緩衝液に懸濁することができる。当該技術分野において知られている緩衝液には、水1mlあたり、0.05mg〜0.15mgのエデト酸2ナトリウム、8.0mg〜9.0mgのNaCl、0.15mg〜0.25mgのポリソルベート、0.25mg〜0.30mgの無水クエン酸、及び0.45mg〜0.55mgのクエン酸ナトリウムが含まれていてもよく、それにより、約4.0〜5.0のpHを達成する。上述した通り、懸濁液は、例えば、凍結乾燥させた抗体から作製することができる。
【0154】
また、治療用の懸濁液又は溶液製剤は、1又は複数の賦形剤を含んでもよい。賦形剤は当該技術分野において周知であり、緩衝液(例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液及び重炭酸塩緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールが挙げられる。溶液又は懸濁液をリポソーム又は生分解性マイクロスフェアにカプセル化することができる。製剤は、一般に、無菌的な製造プロセスを用いて、実質的に無菌形態で提供される。
【0155】
これは、処方に使用される緩衝溶媒溶液のろ過、該無菌の緩衝溶媒溶液への抗体の無菌懸濁、及び当業者によく知られている方法による無菌容器への製剤の分注による製造及び滅菌を含んでもよい。
【0156】
本開示にかかる噴霧可能な製剤は、例えば、アルミホイルに包まれた単一投薬量単位(例えば、密封されたプラスチック容器又はバイアル)として提供されてもよい。各バイアルは、ある体積、例えば2mlの溶媒/溶液緩衝液中の単位用量を含む。
【0157】
本開示の抗体は、噴霧を介した送達に適していると考えられる。
【0158】
また、本発明の抗体は、遺伝子治療の使用により投与されてもよいことが予測される。これを達成するために、適切なDNA成分の制御下で抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入され、その結果、抗体鎖がDNA配列から発現され、インサイチュで集積される。
【0159】
また、本発明は、炎症性疾患、例えば急性又は慢性炎症性疾患の調節に使用するための抗体分子(又はそれを含む組成物)を提供する。適切には、抗体分子(又はそれを含む組成物)は、炎症過程を減少させる、又は炎症過程を妨げるために使用され得る。一実施形態では、活性化T細胞、特に、不適切な炎症性免疫応答に関与した活性化T細胞、例えば、このような応答の近辺/位置に動員される活性化T細胞のインビボでの減少がもたらされる。
【0160】
活性化T細胞の減少は、本明細書で用いられる場合、処置前又は処置なしと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90%、又はそれを超える減少であってもよい。
【0161】
好都合には、本発明に係る抗体、断片又は組成物による処置により、患者のT細胞(不活性化T細胞)の一般レベルを減少させずに、活性化T細胞のレベルを減少させることができる。これは、より少ない副作用をもたらし、おそらくは患者におけるT細胞減少を妨げることができる。
【0162】
また、本発明は、IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防において使用するための本発明の抗体分子を提供する。
【0163】
病的状態又は病的障害は、例えば、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生)、感染と関連した内毒素性ショック、関節リウマチなどの関節炎、重篤な喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、外科的癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症などの中枢神経系及び末梢神経系の免疫介在性炎症性疾患、狼瘡(例えば、全身性紅斑性狼瘡)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、サルコイドーシス、強皮症、ヴェグナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主病、移植片拒絶反応、心筋梗塞などの虚血性疾患及びアテローム性動脈硬化症を含む心臓疾患、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周炎、及び低塩酸症からなる群から選択されてもよい。
【0164】
また、本発明は、疼痛、特に炎症と関連している疼痛の治療又は予防に使用するための、本発明に係る抗体分子を提供する。
【0165】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症の治療に対する抵抗、特に炎症の治療に対する肺抵抗を減少させる。
【0166】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、気管支組織のIL−13タンパク質レベルを減少させる。この減少は、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0167】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、鼻洗浄液及び/又は気管支肺胞洗浄液におけるIL−13タンパク質レベルを減少させる。この減少は、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0168】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、好酸球流入を減少させる。この減少は、例えば、1、2、3、4、5、6週間又はそれを超えて治療した場合、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0169】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、慢性杯細胞過形成などの杯細胞過形成の治療において、杯細胞の不適切なレベルの減少に適している。この減少は、1、2、3、4、5、6週間又はそれを超えた治療後に観察されてもよい。
【0170】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、治療前のレベルと比較して、呼気の一酸化窒素(FeNO)レベルの減少に適している。呼気の一酸化窒素は、肺炎症の危険因子又はマーカーであると考えられている。
【0171】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症反応と関連している不適切なコラーゲン沈着、特に気管支周囲のコラーゲン沈着の予防に適している。
【0172】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症反応と関連した不適切な血管形成の予防に適している。
【0173】
このようにして、治療に使用するための本発明に係る抗体、及びそれを使用する治療方法が提供される。
【0174】
また、本明細書に使用される本発明に係る抗体は、本明細書に開示されている断片及び誘導体を指す。
【0175】
さらに、本発明は、IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に係る抗体分子、断片又は組成物の使用を提供し、例えば、本明細書中に記載の通り、特に、病的障害は関節リウマチ、喘息又はCOPDである。
【0176】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている1又は複数の医学的兆候の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に係る抗体分子、断片又は組成物の使用を提供する。
【0177】
本発明の抗体分子、断片又は組成物は、任意の治療に利用されてもよく、この場合、ヒト又は動物の生体におけるIL−13の効果を減少させることが望まれる。IL−13は生体に循環していてもよく、又は生体の特定部位、例えば、炎症部位に望ましくないほど高レベルで局在して存在してもよい。
【0178】
一実施形態では、本発明の抗体分子又はそれを含む組成物は、例えば、本明細書に記載される炎症性疾患を制御するために使用される。
【0179】
また、本発明は、IL−13によって媒介される障害に罹患しているか又はその危険性があるヒト又は動物対象を治療するための方法であって、有効量の本発明の抗体分子、又はそれを含む組成物を該対象に投与することを含む上記方法を提供する。一例では、抗体分子は吸入によって投与される。
【0180】
一例では、障害は、上記で示された医学的兆候のいずれかから選択される。一例では、障害は、喘息疾患、アトピー性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症に関連した状態、好酸球増加症、線維症及び過剰粘液産生、炎症状態、自己免疫状態、腫瘍又は癌、ウイルス感染及び防御性1型免疫応答の発現抑制からなる群から選択される。
【0181】
一実施形態では、抗体(特に、本発明に係る抗体又は断片)を精製するための方法が提供される。
【0182】
一実施形態では、抗体(特に、本発明に係る抗体又は断片)を精製するための方法であって、
不純物がカラムに保持され、抗体が非結合画分に維持されるように、非結合モードで陰イオン交換クロマトグラフィーを行うステップ
を含む上記方法が提供される。このステップは、例えば、pHが約6〜8で行われてもよい。
【0183】
この方法は、例えば、pHが約4〜5で実行される陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた初期捕捉ステップをさらに含んでもよい。
【0184】
この方法は、生成物を確保するための追加のクロマトグラフィーステップ(単数又は複数)をさらに含んでもよく、方法に関連した不純物が製品流から適切に除かれる。
【0185】
また、精製方法は、濃縮及び透析ろ過ステップなどの1又は複数の限外ろ過ステップをさらに含んでもよい。
【0186】
このようにして、一実施形態では、精製されたIL−13抗体又は断片、例えば、実質的に精製された形態であり、特に、内毒素及び/又は宿主細胞のタンパク質若しくはDNAを含まないか、又は実質的に含まない、ヒト化抗体又は断片、特に本発明に係る抗体又は断片が提供される。このように言及はしたが、本発明に係る抗体は、一般に、哺乳動物細胞で調製され、したがって、内毒素含量は通常問題にならない。実際には、内毒素含量はむしろ、抗体が細菌細胞で調製される場合に考慮される。
【0187】
上記で使用される精製された形態は、少なくとも90%の純度を指すものとし、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれを超えて純粋である。
【0188】
内毒素が実質的に含まないとは、一般に、抗体生成物1mgあたりの内毒素含量が1EU未満であることを指すものとし、例えば、生成物1mgあたり0.5又は0.1EUである。
【0189】
宿主細胞のタンパク質又はDNAが実質的に含まないとは、一般に、抗体生成物1mgあたり宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含量が400μg未満であるであることを指すものとし、例えば、必要に応じて、1mgあたり100μg未満、特に1mgあたり20μgである。
【0190】
また、本発明の抗体分子は診断、例えば、IL−13に関与する疾患状態のインビボでの診断及び画像化に使用されてもよい。
【0191】
本発明に係る抗体の特性を試験するための適切なインビボアッセイには、慢性イエダニモデル、メタコリンに対する過敏反応性、及び/又はアレルギー性肺炎症のオボアルブミンモデルが含まれる。
【0192】
本明細書との関連で含むこと(comprising)は、含むこと(including)を意味するものとする。
【0193】
この場合、本発明の技術的に適切な実施形態を組み合わせてもよい。
【0194】
実施形態は、本明細書において、ある種の特徴/要素を含むものとして記載されている。また、本開示は、上記特徴/要素からなるか又は本質的に上記特徴/要素からなる実施形態を区別するように広げる。
【0195】
本発明は、添付の図面について言及する以下の実施例においてのみ、例示としてさらに説明される:
【0196】
図1は、重鎖(CDR H)のCDR1、2、3、及び軽鎖(CDR L)のCDR1、2、3の各々についてのアミノ酸配列(配列番号1〜6)、
ラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号7)、
ラット抗体軽鎖の可変領域についてのDNA配列(配列番号8)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号9)
を示す。
【0197】
図2は、シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号10)、
ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号11)、
ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号12)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのアミノ酸配列(配列番号13)
を示す。
【0198】
図3は、シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのDNA配列(配列番号14)、
ラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号15)、
ラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号16)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号17)
を示す。
【0199】
図4は、シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号18)、及び
ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号19)
を示す。
【0200】
図5は、ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号20)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号21)
を示す。
【0201】
図6は、シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号22)を示す。
【0202】
図7は、ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号23)、
ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号24)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号25)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号26)、及び
ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号27)
を示す。
【0203】
図8は、ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号28)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号29)、及び
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号30)、
を示す。
【0204】
図9は、ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号31)、
ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号32)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号33)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号34)、及び
ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号35)
を示す。
【0205】
図10は、ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号36)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号37)、及び
ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号38)
を示す。
【0206】
図11は、ヒトVK 1 2−1−(1)02 JK4アクセプターフレームワーク(配列番号39及び配列番号40)及びVH2 3−1 2−26 JH4アクセプターフレームワークについてのアミノ酸配列及びDNA配列(配列番号41及び配列番号42)を示す。
【0207】
図12は、ラットに関する軽鎖、アクセプターフレームワーク、並びにヒト化軽鎖及びさらに重鎖のアラインメントを示す。CDRは、ボールド体であり、下線が付されている。ドナー残基G49及びR71は、ボールド体であり、イタリック体であり、反転表示されている。
【0208】
図13は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定されたBALエオタキシン−3に対するAb652の効果。データは、平均±SEMで表され、1群あたりn=4〜8である。
【0209】
図14は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定されたBAL好酸球数に対するAb652の効果。データは、研究のスクリーニング段階で測定されたBAL好酸球に対して標準化される。平均±SEM、n=4〜8/群。
【0210】
図15は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の15分までに測定された最大気道抵抗に対するAb652の効果。データは、平均±SEMとして表される。n=4〜8/群。
【0211】
図16は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定された気道抵抗に対するAb652の効果。データは、アレルゲンに暴露される前に測定された気道抵抗に対して標準化される。平均±SEM、n=4〜8/群。
【実施例】
【0212】
1.治療抗体の作製/選択
精製されたヒトIL−13(Peprotech)若しくはヒトIL−13を発現しているラット線維芽細胞(培養上清中に約1μg/mlで発現している)のいずれか、又はある場合にはこれらの2つの組み合わせでラットを免疫した。3〜6回の注射後、動物を屠殺し、PBMC、脾臓、骨髄及びリンパ節を回収した。血清は、ELISAにおいてヒトIL−13への結合について、さらに、HEK−293 STAT−6レポーター細胞アッセイ(HEK−Blueアッセイ、Invivogen社)においてhIL−13を中和する能力について監視された。
【0213】
SLAM培地(B細胞培地)は、Zublerら(J.Immunol.1985)に報告されているのと同じ方法によって調製された。要約すると、免疫された動物由来の500〜5000個の脾臓細胞又はPBMCは、10%FCS(PAA laboratories ltd)2%HEPES(Sigma Aldrich)、1%L−グルタミン(Gibco BRL)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco BRL)、0.1%βメルカプトエタノール(Gibco BRL)、3%活性化ウサギ脾臓細胞培養上清、及びガンマ照射されたEL−4−B5マウス胸腺腫細胞(5×104/ウェル)を補充した200μl/ウェルのRPMI1640培地(Gibco BRL)を用いて、5%CO2の雰囲気下、37℃で7日間、数百の96ウェルプレートのバッチで培養された。B細胞培養上清をスクリーニングアッセイにおいて試験し、陽性の上清をマスタープレートに集めた。培養されたB細胞は、FCS中の100μlの10%DMSOに−80℃で凍結された。
【0214】
SLAM培養上清は、FMATにおけるビーズ系アッセイにおいて、hIL−13に結合するそれらの能力について最初にスクリーニングされた。これは、ストレプトアビジンビーズ上に被覆されたビオチン化ヒトIL−13及びヤギ抗ラットFc−Cy5コンジュゲートを用いた均質アッセイであった。次に、このアッセイからの陽性は、HEK−293 IL−13R−STAT−6レポーター細胞アッセイ(HEK−Blueアッセイ、Invivogen社)に送られ、中和物を同定した。その後、Biacoreにおいて中和上清についてプロファイルされて、オフ速度を推定し、さらに中和の作用様式を特徴付けた。中和はbin1又はbin2として分類された。bin1は、ヒトIL−13に結合する抗体を示し、IL−13Rα1の結合を妨げ、さらに結果として、結合からIL−4Rをブロックする。bin2は、IL−13Rα1に結合するのを可能にするが、複合体へのIL−4Rの動員を妨げるような方法でhIL−13に結合する抗体を示す。本発明者らは、bin1によって作用する抗体を選択してきた。
【0215】
約7500個のIL−13特異的陽性が、合計27×100プレートのSLAM実験から一次FMATスクリーニングにおいて同定された。800ウェルは、HEK−blueアッセイにおいて中和を示した。170ウェルは所望のBiacoreプロファイルであり、即ち、bin1抗体は、オフ速度が<5×10−4s−1であった。これらの170ウェルからの可変領域のクローニングを試み、160が首尾よく蛍光焦点を生じさせた。100ウェルが、逆転写(RT)−PCR後に重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子対を生じさせた。これらのV領域遺伝子は、マウスIgG1全長抗体としてクローニングされ、HEK−293一過性発現系において再度発現された。配列分析により、抗ヒトIL−13抗体の27の独特なファミリーが存在することが示された。次に、これらの組換え抗体は、組換えhIL−13(大腸菌由来及び哺乳動物由来)、組換えバリアントhIL−13(R130Q)(大腸菌由来)、天然野生型及びバリアントhIL−13(ヒトドナー由来)、並びにカニクイザルIL−13(哺乳動物由来)をブロックするそれらの能力について、細胞系アッセイにおいて再試験された。また、組換え抗体は、バリアントヒトIL−13(R130Q)及びカニクイザルIL−13に結合するそれらの能力についてBiacoreにおいて試験された。この特徴付けの後、5つの抗体ファミリーが本発明者らの基準、即ち、全てのヒト及びカニクイザルIL−13調製物についての有効性及び親和性における最小の減少を有する100pMを下回る抗体を満たした。
【0216】
5つ全てのファミリーについてヒト化を行った。中和有効性、親和性及びヒト化移植片におけるドナー含有量に基づいて、ヒト化CA154_652(下記参照)をさらなる進行のために選択した。
【0217】
1.1 ヒト化
本明細書に例証されたヒト化抗体は(Ab652)、ヒト生殖系列抗体のV領域フレームワークに、ラット抗体のV領域(配列番号7及び15)由来のCDR(配列1から6において本明細書に開示されたCDR)をグラフトすることによって調製された。ラット抗体(ドナー)のV領域配列とヒト生殖系列抗体(アクセプター)のV領域配列とのアラインメントは、設計されたヒト化配列とともに、図12に示される。アクセプター配列にドナーからグラフトされたCDRは、Kabat(Kabatら,Sequence of proteins of immunological interest(1987).Bethesda MD,National Institutes of Health,US)によって定義されている通りであるが、組み合わせたChothia/Kabat定義が使用される場合にはCDR−H1は除かれる(Adairら(1991)Humanised antibodies WO91/09967参照)。ヒトV領域のVH2 3−12−26プラスJH4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)は、重鎖CDRのためのアクセプターとして選ばれた。重鎖フレームワーク残基は全て、ヒト生殖系列遺伝子由来であるが、ドナー残基グリシン(G49)及びアルギニン(R71)が保持される場合には、それぞれ残基49及び71(Kabat番号付け)を除く。これらの2つのドナー残基の保持は、ヒト化抗体の完全な活性に本質的である。ヒトV領域VK1 2−1−(1)02プラスJK4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)は、軽鎖CDRのためのアクセプターとして選ばれた。軽鎖フレームワーク残基は全て、ヒト生殖系列遺伝子由来である。
【0218】
初期V領域配列をコードする遺伝子は、Entelechon GmbHによる自動化合成アプローチによって設計され、構築された。多数の異なる重鎖改変体は、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によるVH遺伝子を改変することによって作製された。gL1遺伝子配列は、UCB−Celltechヒト軽鎖発現ベクターpKH10.1にクローニングされ、このベクターは、ヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含む−配列番号26及び配列番号30を参照されたい。8つのグラフトされたVH遺伝子(gH1からgH8)をUCB−Celltechヒトガンマ−4重鎖発現ベクターpVhγ4P FLにクローニングされ、このベクターは、ヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ−4重鎖定常領域をコードするDNAを含む(Angalら,Mol Immunol.1993,30(1):105−8)。gH2 VH遺伝子は、有効性及び生物物理学的特徴について最適な重鎖グラフトとして選ばれ(本明細書の下記に記載)、次に、UCB−Celltechヒトガンマ−1 FabベクターpVhγ1F3にサブクローニングされ、このベクターは、ヒトガンマ−1 CH1ドメイン(G1m17アロタイプ)をコードするDNA(配列番号38)を含む。CHO−L761h細胞への得られた重鎖プラスミドと軽鎖プラスミドとのコトランスフェクションは、必要とされるFabフォーマットにおけるヒト化抗体の発現をもたらした。この抗体は、本明細書においてAb652と呼ばれる(Ab652Fabとも呼ばれる)。
【0219】
抗体Ab652を発現する安定な細胞系の生成を促進するため、重鎖と軽鎖の発現カセット及びグルタミンシンセターゼ(GS)選択マーカーの両方をコードするDNAを含む単一プラスミドを生成した。GS遺伝子は、GSインヒビターであるメチオニンスルホキシイミンが補充された培地中で増殖を可能にすることによって組換えCHO細胞の選択を可能とする(Bebbingtonら,Biotechnol.1992,10(2):169−175)。
【0220】
1.2 結合親和性測定
BIAcore技術により、リアルタイムで、しかも標識を必要とせずに生体分子間の結合が監視される。相互作用物の1つは、リガンドと呼ばれ、固相化された表面上に直接固相化されるか又は捕捉され、他方は、分析物と呼ばれ、捕捉された表面全体に溶液で流れる。センサーは、分析物がリガンドに結合し、表面上で複合体を形成するため、センサー表面上での質量変化を検出する。これは、結合プロセスに対応する。リガンドからの分析物の解離は、分析物が緩衝液によって置き換わる場合に監視される。親和性BIAcoreアッセイにおいては、リガンドはAb652であり、分析物はヒトIL−13である。
【0221】
1.3 受容体交差ブロックアッセイ
Biacore受容体交差ブロッキングアッセイは、抗IL−13Fabの捕捉、次に、捕捉されたリガンド全体に流れるIL−13(第一分析物として)を必要とし、センサー表面上で安定な複合体を形成する。次に、第二分析物(組換え可溶性IL−13受容体)は、この安定な複合体全体に流される。安定な複合体への第二分析物の結合量を監視する。安定な抗体:IL−13複合体への第二分析物の結合を許容しない抗IL−13抗体は、サイト1競合物質として分類される。安定な抗体:IL−13複合体への第二分析物の結合を許容するそれらの抗IL−13抗体は、サイト2競合物質として分類される。
【0222】
材料
装置
Biacore(登録商標)3000,Biacore AB,Uppsala,Sweden
センサーチップ
CM5(リサーチ等級)カタログ番号:BR−1001−14,Biacore AB,Uppsala,Sweden
チップを4℃で保存した。
アミンカップリングキット
カタログ番号:BR−1000−50,Biacore AB,Uppsala,Sweden
エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)。蒸留水で75mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコートで保存した。
N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)。蒸留水で11.5mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコートで保存した。
1Mエタノールアミン塩酸塩−NaOH pH8.5。−70℃にて200μLアリコートで保存した。
緩衝液
泳動緩衝液:HBS−EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20である)。カタログ番号:BR−1001−88,Biacore AB,Uppsala,Sweden.緩衝液を4℃で保存した。
固相化緩衝液:酢酸塩5.0(10mM酢酸ナトリウム pH5.0である)。カタログ番号:BR−1003−51,Biacore AB,Uppsala,Sweden。緩衝液を4℃で保存した。
リガンド捕捉
Affinipure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的。
Jackson ImmunoResearch Inc(Pennsylvania,USA)カタログ番号:109−006−097。試薬を4℃で保存した。
リガンド
Ab652(2.51、21.7及び3.86mg/ml Fab)を4℃で保存した。
抗hIL−13mIgG(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号MAB−213、ロット番号RL04)。
分析物
組換えヒトIL−13(0.2mg/ml、D.Lightwoodより;R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号213−IL−050)を−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
組換えヒトIL−13受容体1 hFc(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号146−IL−100)。−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
組換えヒトIL−13受容体2 hFc(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号614−IL−100)。−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
再生溶液
11.6M保存溶液(BDH,Poole,England.カタログ番号:101254H)から蒸留水を用いた希釈によって調製された40mM HCl。
50mM保存溶液から蒸留水を用いて希釈によって調製された5mM NaOH。
カタログ番号:BR−1003−58、Biacore AB,Uppsala,Sweden。
主要装置
Biacore 3000 Biosensor,GE Healthcare Ltd,Amersham Place,Little Chalfont,Buckinghamshire,HP7 9NA。この装置は、製造業者のプロコールにしたがって維持される。
【0223】
1.4 Ab652結合親和性測定
アッセイフォーマットは、固相化された抗ヒトF(ab’)2によるAb652の捕捉、続く、捕捉された表面全体でヒトhIL−13の滴定であった。
BIA(Biamolecular Interaction Analysis)はBIAcore 3000(BIAcore AB)を用いて行われた。Affinipure F(ab’)2断片、ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson ImmunoResearch)は、約4000反応単位(RU)の捕捉レベルまでアミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に固相化された。ブランク表面は、この手法からF(ab’)2断片を除いて、同様の方法により調製された。HBS−EP緩衝液(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20、BIAcore AB)は、泳動緩衝液として使用され、流速は10μl/分であった。約0.2μg/mLでAb652 Fabの10μl注入は、固相化された抗ヒトIgG−F(ab’)2による捕捉のために用いられ、十分なIL−13結合を可能にしたが、物質移動に制限された結合効果を最小限にもした。ヒトIL13は、流速を30μL/分にして、種々の濃度(10nM〜0.31nM)の捕捉されたAb652全体で滴定された。表面は、流速を10μL/分にして、40μM HClの10μL注入、続く5mM NaOHの5μL注入によって再生された。
【0224】
バックグラウンド除去結合曲線は、標準的な手法に従って、BIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を用いて分析された。動態パラメータは適合アルゴリズムから測定された。
【表1】
【0225】
1.5 IL−13受容体交差ブロッキング研究
BIAcore受容体交差ブロッキングアッセイは、抗IL−13Fabの捕捉、続く、センサー表面に安定な複合体を形成するために捕捉リガンド全体に流されるIL−13(第一分析物として)を必要とする。次に、第二分析物(組換え可溶性IL−13受容体)をこの安定な複合体上に流す。その後、安定な複合体への第二分析物の結合量を監視する。第二分析物による安定な抗体:IL−13複合体への結合を可能にしない抗IL−13抗体は、Axis1競合物質として分類される。第二分析物による安定な抗体:IL−13複合体への結合を可能にするそれらの抗IL−13抗体は、Axis2競合物質として分類される。
【0226】
全ての実験は、Biacore 3000バイオセンサーを用いて25℃にて行われた。HBS−EP緩衝液を泳動緩衝液として用い、流速は10μl/分(min)であった。同じセンサー表面は、親和性決定のために記載したように用いられた。
【0227】
抗ヒトIL−13Fabの約0.2μg/mlの10μl注射は、ヤギF(ab’)2IgG、抗ヒトF(ab’)2−断片特異的センサー表面による捕捉のために使用された。0.2μg/mlの抗ヒトIL−13Fabは、十分な抗ヒトIL−13結合を与えた。25nMのヒトIL−13は、捕捉された抗体全体に注入され、続いて即座に可溶性ヒトIL−13受容体を100nMで注入し、流速は10μL/分であった。表面は、2回の40mM HClの30μL注入、続く、5mM NaOHの5μL注入によって再生され、流速は30μL/分であった。
【0228】
バックグラウンド除去結合曲線は、標準的な手法に従って、製造元から提供されたBIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を用いて分析された。
【表2】
【0229】
IL−13は、2つの受容体(IL−13Rα1及びIL−13Rα2)のいずれかと相互作用し、複合体を形成する。hIL−13/hIL−13α1複合体だけがシグナル伝達する。したがって、IL−13依存性シグナル伝達を阻害する抗IL−13抗体は、hIL−13α1との相互作用をブロックすることによってこの効果を媒介し得る。ヒトIL−13上のAb652の相互作用部位は、BIAcoreアッセイにおいて決定することができた。Ab652は固相化された抗ヒトF(ab’)2表面によって捕捉され、次に、順にhIL−13がAb652によって捕捉された。捕捉されたIL−13/抗体複合体への可溶性IL−13Rα1の結合を評価した。このアッセイは、hIL−13Rα1の代わりにhIL−13Rα2を用いて繰り返された。Ab652によって示されたIL−13は、IL−13受容体のいずれかと結合することができなかったが、市販の対照抗IL−13抗体(mAb213)は、可溶性IL−13受容体へのIL−13を示すことができた。結論として、Ab652は、hIL−13受容体サブユニットの両方に結合するIL−13を阻害し、それをAxis1競合物質として定義する。
【表3】
【0230】
1.6 細胞系有効性
IL−13を中和するAb652 Fabのインビトロ有効性は、HEK−BLUE(商標)STAT−6アッセイ(Invivogen社)を用いて調べられた。このアッセイは、4つのSTAT−6結合部位に融合されたIFN−β最小プロモータの調節下で、ヒトSTAT−6を安定に発現し、分泌性胚アルカリホスファターゼ(SEAP)を安定に発現するHED293細胞を含む。Ab652の中和有効性(IC50)は、250pg/mLでアッセイに使用されるヒトIL−13の異なるタイプを用いて評価された。中和有効性は、細菌(大腸菌)及び哺乳動物(ラット線維芽細胞)宿主細胞から生成された組換え野生型ヒトIL−13に対して評価された。中和有効性は、ヒトTリンパ球から生成された天然の野生型及びR130Qバリアント ヒトIL−13に対して、及び哺乳動物細胞において生成された組換えカニクイザルIL−13に対して評価された。R130Q hIL−13を精製せず、その濃縮物をhIL−13 ELISAによって決定した。カニクイザルIL−13を精製せず、250pg/mLのhIL−13と、アッセイにおいて同等の応答を与える濃度で使用した。さらに、CA154_652.g2 Fabの中和有効性は、PARI eFLOW(登録商標)メッシュ噴霧器を用いて、噴霧後に測定された。表4:HEK BlueアッセイにおけるIL−13の複数形態に対するAb652 FabのIC50値。機能性親和性の決定のため、IL−13滴定は、Ab652の固定濃度の存在下で行われた。シルドプロット分析は、組換えヒト野生型IL−13及び組換えカニクイザルIL−13の中和のためのKD値を決定するデータに適用された。表5:HEK BlueアッセイにおけるIL−13の複数形態に対するAb652 FabのIC50及びKD値。
【表4】
【表5】
【0231】
全体として、これらのデータは、Ab652 Fabが、同様に細菌及び哺乳動物供給源から生成された、組換えの天然ヒトIL−13の中和に効力のあることを示している。このアッセイにおけるカニクイザルIL−13に対するCA154_652.g2の有効性は、ラット線維芽細胞からも生じさせた抗ヒトIL−13の3分の1以下である。CA154_652.g2の有効性は、PARI eFLOW(登録商標)噴霧器を用いた噴霧後に変化しない。
【0232】
1.7 Ab652の物理的特徴付け
上記した通り、可変領域をグラフトされた8つの異なる抗体は、選択されたラット抗体由来のCDR(配列番号1〜6、図1)を用いて生じさせた。それらの8つのグラフトからのAb652(gL1gH2)の選択は、上記に記載された有効性及び生物物理学的特徴に基づいていた。試験された、グラフトされた可変領域の全てについて生じさせたデータに基づいて、抗体652は以下の理由で選ばれた:
・hIL−13及びバリアントIL−13に対する最も高い親和性を維持していた
・最も高い融解温度、Tm(より高い安定性の指標)を有していた
・最も高いpH安定性(円偏光二色性による)、即ち、低pHで少ない乱れを示した
・振とう又は噴霧時に凝集なし
【0233】
対照的に、試験された他のグラフトのいくつかは、結合親和性の減少、不良なpH安定性、及び振とう及び/又は噴霧による凝集を示した。
【0234】
1.7.1 噴霧効果
Ab652が噴霧に適しているかどうかを決定するために、PARI eFLOW(登録商標)噴霧器を用いた。50mM酢酸ナトリウム/125mM塩化ナトリウム、pH5中の体積2.5mLのAb652溶液は、周囲温度(約21℃)で噴霧され、冷却された回収チューブに噴霧物を濃縮することによって回収された。その後の分析は、明らかな分解を示さなかった。また、この研究は、PBS、pH7中の溶液を用いて繰り返された。IgG4の陽性対照を含め、噴霧中に凝集されることが見出された。噴霧された試料の分析は、存在する凝集した材料を検出するという特定の目的で、サイズ排除、SDS−PAGE、動的光散乱及びリガンド結合によってなされた。それらの技術のいずれによっても変化はみられず、これは、Ab652が噴霧中の損傷に耐性であることを示した。
【0235】
1.7.2 Ab652の物理的特徴付けの概要
pI(等電点) 8(2測定の平均)
熱安定性 Tm84℃
抗体を凝集/振とう又は噴霧に供した場合にAb652の凝集は観察されなかった。
【0236】
2.喘息の非ヒト霊長類モデルにおけるAb652の効果
目的
本研究の目的は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおけるAb652の有効性を評価することであった。主要評価項目には、気管支肺胞洗浄(BAL)細胞カウント、ケモカインレベル、並びに肺耐性によって評価される初期及び後期肺機能変化(RL)に対する効果が含まれた。
【0237】
方法
Ab652は、メッシュ噴霧器を用いて送達された。呼吸シミュレーション研究は、典型的な換気パラメータ及び研究施設で使用される管設定を用いて行われた。呼吸シミュレーション研究の結果は、噴霧器における40.4%の材料変化が気管内チューブのレベルで送達されたことを示した。
【0238】
研究動物は、過去に使用された肺機能値とBAL好酸球カウントに基づいて選択された。スクリーニングセッションでは、動物は、豚回虫(Ascaris suum)(A.suum)に対するそれらの正常な(未処置)応答を特徴付けるため、処置群への割り当て前に豚回虫抗原接種を受けた。このスクリーニングセッション後、動物は、スクリーニングセッションからのBAL細胞カウント及び肺機能データに基づいて、投薬群に割り当てられた。処置セッションでは、動物は、0.1、1、10、及び60mg/動物/日のいずれかの噴霧器の投薬レベルで、噴霧されたビヒクル(PBS)、又は噴霧されたAb652を受けた。投薬は、−2、−1、1、2、及び3日目に噴霧器を介して投与された。1及び2日目に、処置投与は、豚回虫接種の約30分前に行われた。
【0239】
接種手法は両セッションで同一であった。各動物は1及び2日目に接種され、肺機能値(RL)は、各抗原接種の少なくとも15分後、及び各アレルゲン接種の24時間後に記録された。BAL液は、肺炎症の程度を評価するために、全細胞数、形態、及び白血球百分率の評価用に1回目の接種前、及び2回目の接種の約24時間後に回収された。BAL上清の試料は、ケモカイン濃度の決定のために回収され、分析された。
【0240】
結果
噴霧されたAb652は、低mg/日投薬でBALエオタキシン−3の増加を有意に阻害した(図13)。噴霧されたAb652は、スクリーニングセッションと処置セッションとの間で測定されたBAL好酸球の増加を投薬量依存的な阻害を引き起こした(図14)。噴霧されたAb652は、処置セッションにおける回虫接種後の最大15分まで測定された2日目のピーク初期反応を有意に且つ投薬量依存的に阻害した(図15)。噴霧されたAb652は、2日目のアレルゲン接種後の24時間で測定された後期反応を有意に且つ投薬量依存的に阻害した(図16)。
【0241】
結論
カニクイザルにおける喘息の回虫モデルでの噴霧されたAb652により生じたデータは、IL−13誘導のアレルギー性肺炎症が、エアロゾルにおける気道に直接的に送達される中和抗IL−13Fab断片によって、薬理学的調節に感受性であることを示している。顕著には、Ab652は有力であり、低mg/日投薬量で有効性を示した。
【0242】
本発明は単なる例示として記載され、決して限定的にする意図はなく、詳細の変更が以下の特許請求の範囲内でなし得ることは当然理解されよう。本発明の各実施形態の好ましい特徴は、変更すべきところは変更した他の実施形態それぞれについても同様である。限定するものではないが、本明細書に引用した特許及び特許出願を含む全ての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が、具体的に且つ個別に、完全に説明されたように本明細書中に参照により援用されることを示唆したかのように、本明細書中に参照により援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−13抗体及びその断片、例えばその結合断片、それを含む組成物に関し、具体的には、喘息、アレルギー、COPD、線維症、及び/又は癌を含む種々の疾患の予防及び/又は治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL−13は、IL−4と25%の配列同一性を共有する短鎖サイトカインである。IL−13は、約132個のアミノ酸を含み、残基10〜21(ヘリックスA)、残基43〜52(ヘリックスB)、残基61〜69(ヘリックスC)、及び残基92〜110(ヘリックスD)の4つのヘリックス、並びに残基33〜36及び残基87〜90の2つのβ鎖を有する二次構造を形成する。IL−13の溶液構造は判明され、IL−4で観察されてもいる、予期されたアップ−アップ−ダウン−ダウンの4つのヘリックス束の立体構造を示す(Eisenmesser 2001)。
【0003】
ヒトIL−13は、活性化T細胞からクローニングされた17kDaの糖タンパク質であり(Zurawski及びde Vries 1994 Immunol Today 15 19−26)、Th2系統の活性化T細胞によって産生されるが、Th0及びTh1 CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、並びに肥満細胞などのいくつかの非T細胞集団もまたIL−13を産生する(Zurawski及びde Vries 1994 Immunol Today 15 19−26)。
【0004】
IL−13の機能としては以下が挙げられる:
・ヒトB細胞におけるIgEへの免疫グロブリンアイソタイプスイッチング(Punnonen,Aversaら 1993 Proc Natl Acad Sci USA 90 3730−4)、及び
・ヒトとマウスの両方における炎症性サイトカイン産生の抑制(de Waal Malefyt,Figdorら 1993 J Immunol 151 6370−81;Doherty,Kasteleinら 1993 J Immunol 151 7151−60)。
【0005】
IL−13は、その細胞表面受容体であるIL−13Rアルファ1及びIL−13Rアルファ2に結合する。IL−13Rアルファ1は、IL−13と低親和性(KD約10nM)で相互作用し、続いてIL−4Raを動員して、高親和性(KD約0.4nM)のシグナル伝達ヘテロ二量体受容体複合体を形成する(Aman,Tayebiら 1996 J Biol Chem 271 29265−70;Hilton,Zhangら 1996 Proc Natl Acad Sci USA 93 497−501)。
【0006】
IL−4R/IL−13Rアルファ1複合体は、B細胞、単球/マクロファージ、樹枝状細胞、好酸球、好塩基球、線維芽細胞、内皮細胞、気道上皮細胞、及び気道平滑筋細胞などの多数の細胞型上で発現される(Graber,Gretenerら 1998 Eur J Immunol 28 4286−98;Murata,Husainら 1998 Int Immunol 10 1103−10;Akaiwa,Yuら 2001 Cytokine 13 75−84)。
【0007】
IL−13Rアルファ1/IL−4R受容体複合体の連結は、シグナル伝達性転写活性化因子(STAT6)を含む様々なシグナル伝達経路、及びインスリン受容体基質−2(IRS−2)経路の活性化をもたらす(Wang,Michieliら 1995 Blood 864218−27;Takeda,Kamanakaら 1996 J Immunol 157 3220−2)。
【0008】
IL−13Rアルファ2鎖は単独でIL−13に対して高親和性(KD約0.25〜0.4nM)を有し、IL−13結合を負に制御するデコイ受容体(Donaldson,Whittersら 1998 J Immunol 161 2317−24)としても、マクロファージ及び場合によっては他の細胞型においてAP−I経路を介したTGF−β合成及び線維症を誘導するシグナル伝達受容体(Fichtner−Feigl,Stroberら 2006 Nat Med 12 99−106)としても機能する。
【0009】
喘息の前臨床動物モデルにおいて実施されたいくつかの研究によれば、IL−13は喘息において重要な役割を果たすことが示されている。これらのデータとしては、IL−13ノックアウトマウスにおける喘息に対する抵抗性、並びに種々のマウスモデルにおけるIL−13アンタゴニスト(可溶性IL−13受容体、抗IL−13 mAbなど)を用いた喘息表現型の阻害などが挙げられる(SeIa 1999 Harefuah 137 317−9;Wills−Karp及びChiaramonte 2003 Curr Opin Pulm Med 9 21−7;Wills−Karp 2004 Immunol Rev 202 175−90)。複数の研究によれば、マウス及びモルモットの肺に組換えIL−13を薬理学的に投与すると、気道粘液の分泌過多、好酸球増加症及びAHRが誘導されることが示されている(Grunig,Warnockら 1998 Science 282 2261−3;Wills−Karp,Luyimbaziら 1998 Science 282 2258−61;Kibe,Inoueら 2003 Am J Respir Crit Care Med 167 50−6;Vargaftig及びSinger 2003 Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 284 L260−9;Vargaftig及びSinger 2003 Am J Respir Cell Mol Biol 28 410−9)。
【0010】
IL−13のこれらの効果は、IL−13の恒常的又は誘導性発現のいずれかを有するトランスジェニックマウス系において再現される(Zhu,Homerら 1999 J Clin Invest 103 779−88;Zhu,Leeら 2001 Am J Respir Crit Care Med 164 S67−70;Lanone,Zhengら 2002 J Clin Invest 110463−74)。また、遺伝子導入によるIL−13の慢性的過剰発現は、上皮下の線維症及び気腫も誘導する。IL−13(及びIL−4)シグナル伝達分子のSTAT6を欠くマウスは、アレルゲン誘導のAHR及び粘液過剰産生を示さない(Kuperman,Huangら 2002 Nat Med 8 885−9)。可溶性IL−13受容体融合タンパク質(sDL−13Rアルファ2Fc)を用いた研究は、アレルゲン卵白アルブミン(OVA)誘導の実験的気道疾患におけるこのサイトカインの極めて重要な役割を示している(Grunig,Warnockら 1998 Science 282 2261−3;Wills−Karp,Luyimbaziら 1998 Science 282 2258−61;Taube,Duezら 2002 J Immunol 169 6482−9)。
【0011】
また、抗IL−13治療の有効性がマウス喘息の慢性モデルで示された。粘液の分泌過多及びAHRの特徴を示すことに加えて、この慢性喘息モデルは、より急性なモデルにおいては欠いている、ヒト疾患のいくつかの顕著な特徴を示す。これらには、上皮空間に位置する肺組織の好酸球増加症、及びコラーゲン沈着の増加によって測定される平滑筋線維症などが挙げられる。慢性喘息モデルは、OVAによって感作されたマウスにおいて、週1回、計4週間のOVAのエアロゾル接種を繰り返すことによって誘導される。(有効性の読み出しは試験の53日目に評価され、36日目から)OVA接種の最後の2週間に投与された抗IL−13抗体は、AHR、肺炎症、杯細胞過形成、粘液分泌過多、及び気道線維症を有意に阻害した(Yang,Liら 2005 J Pharmacol Exp Ther)。
【0012】
また、IL−13アンタゴニストの治療効果は、喘息の霊長類モデルにおいてAHRを阻害することも示された(American Thoracic Society,San Diego 2005)。
【0013】
疾患の重症度と相関する高レベルのIL−13のmRNA及びタンパク質が喘息患者の肺において検出され、IL−13はヒト喘息の病原に関係している(Huang,Xiaoら 1995 J Immunol 155 2688−94)。さらに、IL−13レベルの上昇をもたらすヒトIL−13遺伝的多型が確認され、喘息及びアトピーと関連し(Heinzmann,Maoら 2000 Hum Mol Genet 9 549−59;Hoerauf,Kruseら 2002 Microbes Infect 4 37−42;Vercelli 2002 Curr Opin Allergy Clin Immunol 2 389−93;Heinzmann,Jerkicら 2003 J Allergy Clin Immunol 112 735−9;Chen,Ericksenら 2004 J Allergy Clin Immunol 114 553−60;Vladich,Brazilleら 2005 J Clin Invest)、上昇したIL−13レベルは、喘息患者の肺において検出されている(Huang,Xiaoら 1995 J Immunol 155 2688−94;Arima,Umeshita−Suyamaら 2002 J Allergy Clin Immunol 109 980−7;Berry,Parkerら 2004 J Allergy Clin Immunol 114 1106−9)。また、より高い血漿IL−13レベルを生じるIL−13遺伝子の多形を有する個体は、アトピー及び喘息のリスクが高く、IL−13と喘息の遺伝的関連性も示されている(Wills−Karp 2000 Respir Res 1 19−23)。
【0014】
多様なヒト障害におけるヒトIL−13の役割に起因して、治療戦略はIL−13活性を阻害又は相殺するように設計される。特に、IL−13に結合して中和する抗体は、IL−13活性を阻害する手段として探し求められている。しかしながら、IL−13、特にヒトIL−13に結合できる適切な及び/又は改善された抗体が当該技術分野では必要とされる。特に、抗体はヒトIL−13を中和することができる。本発明は、ヒトIL−13に結合可能であり、高親和性で結合可能であり、ヒトIL−13に結合して中和可能である、結合タンパク質、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、及びそれらの断片の新規ファミリーを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、新規なIL−13特異的抗体及び断片、例えば、そのIL−13結合断片、特に中和抗体及び断片に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】重鎖(CDR H)のCDR1、2、3、及び軽鎖(CDR L)のCDR1、2、3の各々についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図2】シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのアミノ酸配列を示す。
【図3】シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのDNA配列、 ラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図4】シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図5】ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、及びシグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列を示す。
【図6】シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図7】ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列、及び ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、を示す。
【図8】ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、及び シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図9】ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列、及び ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、を示す。
【図10】ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列、 シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列、及び ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列を示す。
【図11】ヒトVK 1 2−1−(1)02 JK4アクセプターフレームワーク及びVH2 3−1 2−26 JH4アクセプターフレームワークについてのアミノ酸配列及びDNA配列を示す。
【図12】ラットに関する軽鎖、アクセプターフレームワーク、並びにヒト化軽鎖及びさらに重鎖のアラインメントを示す。CDRは、ボールド体であり、下線が付されている。ドナー残基G49及びR71は、ボールド体であり、イタリック体であり、反転表示されている。
【図13】アレルゲン接種後の24時間で測定されたBALエオタキシン−3に対するAb652の効果。データは、平均±SEMで表され、1群あたりn=4〜8である。
【図14】アレルゲン接種後の24時間で測定されたBAL好酸球数に対するAb652の効果。データは、研究のスクリーニング段階で測定されたBAL好酸球数に対して標準化されている。平均±SEM、n=4〜8/群。
【図15】アレルゲン接種後の15分までに測定された最大気道抵抗に対するAb652の効果。データは、平均±SEMとして表される。n=4〜8/群。
【図16】アレルゲン接種後の24時間で測定された気道抵抗に対するAb652の効果。データは、アレルゲンに暴露される前に測定された気道抵抗に対して標準化されている。平均±SEM、n=4〜8/群。
【発明を実施するための形態】
【0017】
抗体可変ドメインにおける残基は、通常、Kabatらによって考案されたシステムに従って番号付けされる。このシステムは、Kabatら、1987、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、米国保健社会福祉省(US Department of Health and Human Services)、NIH、USA(以後、「Kabatら(前述)」)に記載されている。特に明記しない場合は、この番号付けシステムが本明細書において使用される。
【0018】
Kabat残基表記法は、アミノ酸残基の線形番号付けと必ずしも直接対応しない。実際の線形アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造のフレームワークであっても相補性決定領域(CDR)であっても、構造成分の短縮又はそこへの挿入に対応して、厳密なKabat番号付けの場合よりも少ない又は多いアミノ酸を含んでもよい。残基の正しいKabat番号付けは、抗体の配列の相同性の残基を「標準的な」Kabat番号付け配列とアラインメントすることにより、所定の抗体について決定してもよい。
【0019】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って、残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)及び残基95〜102(CDR−H3)に位置している。しかしながら、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M. J.Mol.Biol.,196,901−917(1987))によると、CDR−H1に同等なループは残基26から残基32に伸びる。このようにして、「CDR−H1」は、本明細書中で使用するとき、Kabat番号付けシステムとChothiaの位相的ループ定義の組み合わせによって記載すると、残基26〜35を含む。
【0020】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従うと、残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)、及び残基89〜97(CDR−L3)に位置される。
【0021】
一実施形態では、抗体はアンタゴニスト抗体である。
【0022】
本明細書中で使用するとき、用語「アンタゴニスト抗体」とは、例えば、IL−13によるIL−13受容体への結合をブロックするか又は実質的にその結合を減少させ、したがって、この受容体の活性化を阻害することによって、IL−13の生物学的シグナル伝達活性を阻害及び/又は中和することができる抗体を表す。
【0023】
本発明に使用するための抗体は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて得られてもよい。IL−13を含有する融合ポリペプチドを含むIL−13ポリペプチド、又は該ポリペプチドを(組換え的に)発現している細胞は、IL−13を特異的に認識する抗体を産生するために用いることができる。IL−13ポリペプチドは、「成熟な」ポリペプチド又は生物学的に活性なその断片若しくは誘導体であってもよい。IL−13ポリペプチドは、発現系を含む遺伝子操作された宿主細胞から当該技術分野において周知な方法によって調製されてもよく、又は天然の生物学的供給源から回収されてもよい。本出願では、用語「ポリペプチド」には、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質が含まれる。これらは、他に明記されていなければ、相互交換して用いられる。IL−13ポリペプチドは、ある場合には、例えばアフィニティータグに融合された融合タンパク質などの巨大タンパク質の一部であってもよい。
【0024】
IL−13ポリペプチドに対して生じた抗体は、動物の免疫付与が必要な場合は、周知であり日常的なプロトコールを用いて動物に、好ましくは非ヒト動物に該ポリペプチドを投与することによって得ることができ、例えば、Handbook of Experimental Immunology,D.M.Weir(編),Vol 4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986を参照されたい。多数の温血動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタを免疫してもよい。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが、一般的には最も適切である。
【0025】
本発明に使用するための抗体は、全抗体及び機能的に活性なその断片又は誘導体を含み、限定されないが、モノクローナル、ヒト化された、完全なヒト又はキメラ抗体であってもよい。
【0026】
モノクローナル抗体は、当該技術分野において知られているいずれかの方法によって調製されてもよく、例えば、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein,1975,Nature,256:495−497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら,1983,Immunology Today,4:72)、及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,77−96頁,Alan R Liss,Inc.,1985)が挙げられる。
【0027】
また、本発明に使用するための抗体は、例えば、Babcook,J.ら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843−7848;WO92/02551;WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377によって報告されている方法によって、特異的抗体を産生するために選択される単一のリンパ球から生じさせた免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし、発現させることによる単一のリンパ球抗体法を用いて生じさせてもよい。
【0028】
抗体のスクリーニングは、IL−13への結合を測定するアッセイ、及び/又は1若しくは複数のIL−13の受容体へのIL−13の結合をブロックする能力を測定するアッセイを用いて行うことができる。結合アッセイの例としては、例えば、プレートに固相化されたIL−13の融合タンパク質を用い、IL−13に結合した抗IL−13抗体を検出するためのコンジュゲートされた二次抗体を使用するELISAが挙げられる。ブロッキングアッセイの例としては、IL−13Rに結合しているIL−13リガンドタンパク質のブロッキングを測定する、フローサイトメトリーに基づくアッセイが挙げられる。蛍光標識した二次抗体を用いて、IL−13Rに結合しているIL−13リガンドタンパク質の量を検出する。
【0029】
ヒト化抗体(CDRグラフト抗体を含む)は、非ヒト種由来の1又は複数の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する抗体分子である(例えば、US5,585,089;WO91/09967を参照されたい)。CDR全体ではなくCDRの特異性決定残基を移すことが単に必要なだけであり得ることは理解されよう(例えば、Kashmiriら,2005,Methods,36,25−34を参照されたい)。ヒト化抗体は、場合により、CDRに由来する非ヒト種由来の1又は複数のフレームワーク残基をさらに含んでもよい。
【0030】
キメラ抗体は、2つの異なる種に由来する成分から構成され、その結果、その成分は、それが由来する種の特徴を保持する。一般に、キメラ抗体は、1つの種、例えば、マウス、ラット、ウサギ又は類似物由来の可変領域、ヒトなどの別の種由来の定常領域を含む。
【0031】
また、本明細書に使用するための抗体は、当該技術分野において知られている様々なファージディスプレイ法によって生じさせることができ、Brinkmanら(J.Immunol.Methods,1995,182:41−50)、Amesら(J.Immunol.Methods,1995,184:177−186)、Kettleboroughら(Eur.J.Immunol.1994,24:952−958)、Persicら(Gene,1997 187 9−18)、Burtonら(Advances in Immunology,1994,57:191−280)、及びWO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びにUS5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727;5,733,743及び5,969,108に開示された方法が挙げられる。
【0032】
完全なヒト抗体は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が、全てヒト起源であるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一であるが、必ずしも同抗体由来でなくてもよい抗体である。完全なヒト抗体の例には、例えば、上記されるファージディスプレイ法によって産生される抗体、マウス免疫グロブリン可変領域遺伝子及び任意の定常領域の遺伝子が、それらのヒト対応物によって置換された、マウスによって産生される抗体が挙げられ、例えば、一般論として、EP0546073、US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,661,016、US5,770,429、EP0438474、及びEP0463151に報告されている。
【0033】
一実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について図1の配列番号1に示される配列を有する少なくとも1つのCDR、CDR−H2について配列番号2に示される配列を有するCDR、及び/又はCDR−H3について配列番号3に示される配列を有するCDRを含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインのCDR−H1、CDR−H2、及びCDR−H3の少なくとも2つは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列から選択される、上記アンタゴニスト抗体を提供する。例えば、抗体は、CDR−H1が配列番号1に示される配列を有し、CDR−H2が配列番号2に示される配列を有する重鎖を含んでもよい。或いは、抗体は、CDR−H1が配列番号1に示される配列を有し、CDR−H3が配列番号3に示される配列を有する重鎖を含んでもよく、又は抗体は、CDR−H2が配列番号2に示される配列を有し、CDR−H3が配列番号3に示される配列を有する重鎖を含んでもよい。疑いを避けるために、あらゆる置き換えを含むことが理解される。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、重鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について図1の配列番号4に示される配列を有する少なくとも1つのCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及び/又はCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRを含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインのCDR−L1、CDR−L2、及びCDR−L3の少なくとも2つは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列から選択される、上記アンタゴニスト抗体を提供する。例えば、抗体は、CDR−L1が配列番号4に示される配列を有し、CDR−L2が配列番号5に示される配列を有する軽鎖を含んでもよい。或いは、抗体は、CDR−L1が配列番号4に示される配列を有し、CDR−L3が配列番号6に示される配列を有する軽鎖を含んでもよく、又は抗体は、CDR−L2が配列番号5に示される配列を有し、CDR−L3が配列番号6に示される配列を有する軽鎖を含んでもよい。疑いを避けるために、あらゆる置き換えを含むことが理解される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、軽鎖を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体であって、可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む、上記アンタゴニスト抗体を提供する。
【0039】
本発明の抗体分子は、適切には、それぞれ相補的軽鎖又は相補的重鎖を含む。
【0040】
したがって、一実施形態では、本発明に係る抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及び/又はCDR−H3について配列番号3に示される配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2について配列番号5に示される配列、及び/又はCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む。
【0041】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供されるCDRに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、本明細書中に記載されている方法、特に実施例に示された方法を用いて、当業者によって容易に試験され、IL−13結合及びIL−13/IL−13受容体相互作用の阻害を決定することができる。
【0042】
したがって、本発明は、CDRH−1(配列番号1)、CDRH−2(配列番号2)、CDRH−3(配列番号3)、CDRL−1(配列番号4)、CDRL−2(配列番号5)、及びCDRL−3(配列番号6)から選択される1又は複数のCDRを含む、ヒトIL−13に特異性を有する抗体であって、CDRの1又は複数における1又は複数のアミノ酸が、別のアミノ酸、例えば、以下の本明細書に定義される類似のアミノ酸で置換されている、上記抗体を提供する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、CDRH−1(配列番号1)、CDRH−2(配列番号2又は配列番号20)、CDRH−3(配列番号3)、CDRL−1(配列番号4)、CDRL−2(配列番号5)、及びCDRL−3(配列番号6)を含む、ヒトIL−13に特異性を有する抗体であって、例えば、1又は複数のCDRにおける1又は複数のアミノ酸が、別のアミノ酸、例えば、以下の本明細書に定義される類似のアミノ酸で置換されている、上記抗体を提供する。
【0044】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2は配列番号2に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3は配列番号3に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する。別の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2は配列番号2に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRH−3は配列番号3に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する。
【0045】
「同一性」とは、本明細書中で使用するとき、整列された配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを指す。「類似性」とは、本明細書中で使用するとき、整列された配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似したタイプであることを指す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンで置換されてもよい。多くの場合、互いに置換され得る他のアミノ酸には、限定されないが、
フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
が含まれる。同一性及び類似性の程度は容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,及びGriffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.及びDevereux,J.編,M Stockton Press,New York,1991,NCBIから入手可能なBLAST(商標)software(Altschul,S.F.ら,1990,J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.& States,D.J.1993,Nature Genet.3:266−272.Madden,T.L.ら,1996,Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.ら,1997,Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.& Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649−656)。
【0046】
別の実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2は配列番号5に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3は配列番号6に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する。別の実施形態では、本発明の抗体は軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2は配列番号5に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有し、及び/又はCDRL−3は配列番号6に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する。
【0047】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体はモノクローナル抗体である。
【0048】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体はキメラ抗体である。
【0049】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体は、配列番号1、2、3、4、5、6において提供されるCDR若しくはその改変体の1又は複数を含むCDRグラフト抗体分子である。本明細書中で使用するとき、用語「CDRグラフト抗体分子」とは、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークにグラフトされたドナー抗体(例えば、マウス又はラットモノクローナル抗体)由来の1又は複数のCDR(所望により、1又は複数の修飾されたCDRを含む)を含む抗体分子を指す。概説については、Vaughanら,Nature Biotechnology,16,535−539,1998を参照されたい。一実施形態では、移されている全CDRというよりはむしろ、本明細書において上記されたいずれか1つのCDR由来の特異性決定残基のほんの1又は複数が、ヒト抗体フレームワークに移されている(例えば、Kashmiriら,2005,Methods,36,25−34を参照されたい)。一実施形態では、本明細書において上記された1つ又は複数のCDR由来の特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移されている。別の一実施形態では、本明細書において上記された各々のCDR由来の特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移されている。
【0050】
CDR又は特異性決定残基をグラフトした場合、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列は、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/タイプを考慮して使用されてもよく、マウス、霊長類及びヒトのフレームワーク領域が含まれる。適切には、本発明に係るCDRグラフト抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域、並びに、上記される1若しくは複数のCDR又は特異性決定残基を含む可変ドメインを有する。このようにして、一実施形態では、中和CDRグラフト抗体が提供され、可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含む。
【0051】
本発明において用いることができるヒトフレームワークの例としては、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOMが挙げられる(Kabatら、上述)。例えば、KOL及びNEWMは重鎖に使用することができ、REIは軽鎖に使用することができ、並びにEU、LAY及びPOMは重鎖と軽鎖の両方に使用することができる。或いは、ヒト生殖系列配列を用いてもよい;http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/で利用可能である。
【0052】
本発明に係るCDRグラフト抗体では、アクセプターの重鎖及び軽鎖は、必ずしも同じ抗体由来である必要はなく、所望により、異なる鎖由来のフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0053】
本発明のCDRグラフト抗体の重鎖について適切なフレームワーク領域は、ヒト下位集団のVH2配列3−1 2−26、並びにJH4(配列番号41)由来である。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDRグラフト抗体であって、重鎖フレームワーク領域は、ヒト下位集団のVH2配列3−1 2−26、並びにJH4由来である、上記抗体が提供される。ヒトJH4の配列は、以下の通りである:(YFDY)WGQGTLVTVS(配列番号43)。YFDYモチーフはCDR−H3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Ravetch,JV.ら,1981,Cell,27,583−591)。
【0054】
本発明のCDRグラフト抗体の軽鎖について適切なフレームワーク領域は、ヒト生殖系列下位集団のVK1配列2−1 1−02、並びにJK4(配列番号39)由来である。したがって、少なくとも1つの非ヒトドナーCDRを含む中和CDRグラフト抗体であって、軽鎖フレームワーク領域は、ヒト下位集団の配列2−1 1−02、並びにJK4由来である、上記抗体が提供される。JK4配列は、以下の通りである:(LT)FGGGTKVEIK(配列番号44)。LTモチーフはCDR−L3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Hieter,PA.ら,1982,J.Biol.Chem.,257,1516−1522)。
【0055】
一実施形態では、軽鎖及び/又は重鎖フレームワークは、配列番号39〜42に示される配列から選択される。
【0056】
また、本発明のCDRグラフト抗体では、フレームワーク領域は、アクセプター抗体のフレームワーク領域と同じ配列を正確に有している必要はない。例えば、稀な残基は、そのアクセプター鎖のクラス又はタイプについてより出現することが多い残基に変化されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域において選択された残基は、ドナー抗体と同じ位置で見られる残基に対応するように変化されてもよい(Reichmannら,1998,Nature,332,323−324を参照されたい)。このような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要最小限に止めておくべきである。変化が必要とされ得るアクセプターフレームワーク領域において残基を選択するためのプロトコールは、WO91/09967に記載されている。
【0057】
適切には、本発明のCDRグラフト抗体分子において、アクセプター重鎖がヒトVH2配列3−12−36、並びにJH4を有する場合、重鎖のアクセプターフレームワーク領域は、1又は複数のドナーCDRに加えて、49位と71位の少なくとも1つにドナー残基を含む(Kabatら(上述)による)(図12を参照されたい)。
【0058】
したがって、少なくとも、重鎖の可変ドメインの49位と71位の残基がドナー残基であるCDRグラフト抗体が提供される。
【0059】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRが本来誘導されている抗体由来の残基である。好ましくは、残基は、それぞれ49位と71位のグリシンとアルギニンである。
【0060】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは配列番号31に示される配列を含む。
【0061】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供される抗体可変ドメインに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、実施例に記載されている方法を用いて、当業者によって容易に試験され、IL−13結合及び/又はリガンド/受容体ブロックを決定することができる。
【0062】
別の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは配列番号23に示される配列を含む。
【0064】
別の実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、軽鎖を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0065】
一実施形態では、本発明の抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは配列番号31に示される配列を含み、軽鎖の可変ドメインは配列番号23に示される配列を含む。
【0066】
本発明の別の実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。適切には、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは、配列番号31に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖の可変ドメインは、配列番号23に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0067】
本発明の抗体分子は、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はその断片を含んでもよく、限定されないが、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、二価、三価若しくは四価抗体、ビス−scFv、二機能性抗体、三機能性抗体、四機能性抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよい(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126−1136;Adair及びLawson,2005,Drug Design Reviews−Online 2(3),209−217を参照されたい)。これらの抗体断片を作製し、産生する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Vermaら,1998,Journal of Immunological Methods,216,165−181を参照されたい)。本発明に使用するための他の抗体断片には、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片、並びに国際特許出願WO2009/040562に記載されたFab−dAb断片が含まれる。多価抗体は、複数の特異性を含んでもよく、又は単一特異的であってもよい(例えば、WO92/22853及びWO05/113605を参照されたい)。
【0068】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案された機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択されてもよい。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、ヒトIgG定常領域ドメインが用いられてもよく、特に、抗体分子が治療用であり、抗体エフェクター機能が要求される場合、IgG1及びIgG3アイソタイプであってもよい。或いは、IgG2及びIgG4アイソタイプは、抗体分子が治療目的であり、抗体エフェクター機能が要求されない場合、例えば、単にIL−13活性をブロックするために用いられてもよい。これらの定常領域ドメインの配列改変体も使用され得ることは承認されよう。例えば、241位のセリンが、Angalら,Molecular Immunology,1993,30(1),105−108に報告されるようにプロリンに変更されているIgG4分子を用いてもよい。また、抗体が様々な翻訳後修飾を受けてもよいことは当業者に理解されよう。これらの修飾のタイプ及び範囲は、多くの場合、抗体を発現させるために使用される宿主細胞系並びに培養条件に依存する。このような修飾は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸塩異性化及びアスパラギン脱アミド化のバリエーションを含んでもよい。頻繁な修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用に起因した、カルボキシ末端の塩基性残基(例えば、リシン又はアルギニン)の喪失である(Harris,RJ.Journal of Chromatography 705:129−134,1995に記載される通りである)。しかしながら、本発明のAb652実施形態の重鎖又は軽鎖のいずれかにはC−末端リシンが存在しない。
【0069】
一実施形態では、抗体の重鎖はCH1ドメインを含み、抗体の軽鎖はCLドメインのカッパ又はラムダのいずれかを含む。
【0070】
一実施形態では、本発明によって提供される抗体は、重鎖定常領域が修飾されたヒンジ領域を含む、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体である。したがって、本発明は、重鎖が配列番号35に示される配列を含む又はその配列からなる抗体を提供する。
【0071】
IL−13に結合し、IL−13活性を中和する抗体の能力が著しく変更されなければ、本発明によって提供される抗体可変ドメイン及び/又は定常ドメインに対して、1又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失がなされてもよいことは理解されよう。アミノ酸の置換、付加及び/又は欠失のいずれによる影響も、例えば、IL−13結合並びにIL−13/IL−13受容体相互作用のブロックを決定するために、本明細書に記載されている方法、特に実施例に示されている方法を用いることによって、当業者により容易に試験することができる。
【0072】
本発明の一実施形態では、抗体は、重鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。適切には、抗体は、重鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0073】
一実施形態では、本発明に係る抗体分子は、配列番号27に示される配列を含む軽鎖を含む。
【0074】
本発明の一実施形態では、抗体は、軽鎖を含み、軽鎖は配列番号27に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。例えば、抗体は、軽鎖を含み、軽鎖は配列番号27に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0075】
一実施形態では、本発明は、重鎖が配列番号35に示される配列を含み又はその配列からなり、軽鎖が配列番号27に示される配列を含み又はその配列からなる抗体を提供する。
【0076】
本発明の一実施形態では、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号27に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する配列を含む。一般に、抗体は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、配列番号35に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、軽鎖は、配列番号27に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0077】
生体分子、例えば抗体又は断片は、酸性及び/又は塩基性官能基を含み、それにより、分子に正味の正電荷又は負電荷を与える。全体の「観察された」電荷量は、実在物の絶対アミノ酸配列、3D構造における荷電基の局所環境、及び分子の環境条件に依存する。等電点(pI)は、特定の分子又は表面が正味の電荷を担持しないpHである。一実施形態では、本開示に係る抗体又は断片は、等電点(pI)が少なくとも7である。一実施形態では、抗体又は断片は、等電点が少なくとも8であり、例えば、8.5、8.6、8.7、8.8又は9である。一実施形態では、抗体のpIは8である。
【0078】
本発明のIL−13抗体及び断片は、適切な等電点を有するように操作されてもよい。これは、より強固な特性、特に、適切な溶解性及び/又は安定性プロフィールを有する抗体及び/又は断片をもたらすことができる。
【0079】
このようにして、一態様では、本発明は、初めに特定された抗体の等電点とは異なる等電点を有するように操作されたヒト化IL−13抗体を提供する。例えば、抗体は、アミノ酸残基の置換、例えば、1又は複数の塩基性アミノ酸残基で酸性アミノ酸残基を置換することによって操作されてもよい。或いは、塩基性アミノ酸残基が付加されてもよく、又は酸性アミノ酸残基が除去され得る。或いは、分子が容認されない高いpI値を有する場合、酸性アミノ酸残基は、必要に応じてpHを下げるように導入されてもよい。操作された抗体又は断片のpHは、例えば、8又はそれを超えてもよく、例えば、8.5又は9であり得る。pIを操作する場合、抗体又は断片の所望の活性を保持するように注意すべきであることは重要である。このようにして、一実施形態では、操作された抗体又は断片は、「修飾されていない」抗体又は断片と同じ又は実質的に同じ活性を有する。
【0080】
**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムを用いて、抗体又は断片の等電点を予測してもよい。
【0081】
一実施形態では、本発明の抗体は、例えば、噴霧による吸入送達に適している。一例では、本発明の抗体の物理的特性、例えば結合親和性及び効力は、噴霧によって実質的に変更されない。一例では、本発明の抗体は非常に安定である。抗体安定性の1つの測定は融解温度(Tm)である。融解温度は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法、例えば、サーモフルオロ(Thermofluor)(Ericssonら,Analytical Biochemistry 357(2006)289−298)又はDSC(示差走査熱量測定法)を用いて決定されてもよい。好ましくは、本発明によって提供される抗体は、高い融解温度(Tm)を有し、典型的には少なくとも75℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも75℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも80℃である。一例では、本発明の抗体は、Tmが少なくとも83℃である。
【0082】
また、本発明は、本発明によって提供される抗体、特に、重鎖配列(配列番号35)及び/又は軽鎖配列(配列番号27)を含む抗体が結合する、ヒトIL−13の特定の領域又はエピトープを提供する。
【0083】
ヒトIL−13ポリペプチドのこの特定の領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて、当該技術分野において知られている任意の適切なエピトープマッピング法によって特定され得る。このような方法の例には、抗体によって認識されるエピトープの配列を含む抗体に特異的に結合することができる最小断片を用いて、本発明の抗体に結合させるためにIL−13由来の様々な長さのペプチドをスクリーニングすることが含まれる。IL−13ペプチドは、合成的に産生されてもよく、又はIL−13ポリペプチドのタンパク質分解的消化によって産生されてもよい。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分光分析によって同定することができる。別の例では、NMR分光法又はX線結晶学を用いて、本発明の抗体によって結合されるエピトープを同定することができる。一度同定されると、本発明の抗体に結合するエピトープ断片は、必要に応じて、同エピトープに結合する追加のアンタゴニスト抗体を得るための免疫原として用いることができる。
【0084】
本発明に係る抗体、特に、重鎖配列(配列番号31)及び軽鎖配列(配列番号27)を含む抗体の結合を交差ブロックする抗体は、同様に、IL−13活性の拮抗に有用であり得る。したがって、本発明はまた、上記の抗体のいずれか1つがヒトIL−13に結合するのを交差ブロックし、及び/又はこれらの抗体のいずれか1つによってIL−13への結合が交差ブロックされる、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体を提供する。一実施形態では、このような抗体は、本明細書において上記された抗体と同じエピトープに結合する。別の実施形態では、交差ブロックする中和抗体は、本明細書において上記された抗体が結合するエピトープと接し、及び/又はそのエピトープと重なるエピトープに結合する。別の実施形態では、本発明のこの態様の交差ブロックする中和抗体は、本発明の抗体と同じエピトープ、或いは該エピトープと接し、及び/又は重なるエピトープには結合しない。
【0085】
交差ブロックする抗体は、当該技術分野において任意の適切な方法を用いて、例えば、競合ELISA又はBIAcoreアッセイを用いることによって同定することができ、この場合、ヒトIL−13に対する交差ブロック抗体の結合は、本発明の抗体の結合を妨げ、又はその逆もある。
【0086】
一実施形態では、重鎖が配列番号35に示される配列を含み、軽鎖が配列番号27に示される配列を含む抗体によるヒトIL−13への結合を交差ブロックする、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体が提供される。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、配列番号35に示される重鎖配列、及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体の結合を、80%を超えて、例えば85%を超えて、例えば90%を超えて、特に95%を超えて阻害する。
【0087】
選択的に又は付加して、本発明のこの態様に係るアンタゴニスト抗体は、配列番号35に示される重鎖配列及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によって、ヒトIL−13への結合が交差ブロックされてもよい。したがって、配列番号35に示される重鎖配列及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトIL−13への結合が交差ブロックされる、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体分子も提供される。一実施形態では、本発明のこの態様によって提供されるアンタゴニスト抗体は、配列番号35に示される重鎖配列、及び配列番号27に示される軽鎖配列を含む抗体によって、ヒトIL−13の結合が80%を超えて、例えば85%を超えて、例えば90%を超えて、特に95%を超えて阻害される。
【0088】
一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は完全にヒトである。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体はヒト化されている。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、ヒトIL−13に対する親和性が100pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明によって提供される交差ブロック抗体は、ヒトIL−13に対する親和性が50pM又はそれよりも良好である。
【0089】
一実施形態では、交差ブロック抗体は、等電点が少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば8.5、8.6、8.7、8.8、8.9又は9.0である。
【0090】
本発明の抗体分子は、適切には、高い結合親和性、特にピコモル濃度の親和性を有する。親和性は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて測定されてもよく、この方法には、単離された天然の又は組換えIL−13を用いた、本明細書中の実施例に記載されているBIAcoreを含めた表面プラズモン共鳴法が挙げられる。一例としては、親和性は、本明細書中の実施例に記載されている組換えヒトIL−13を用いて測定される。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約100pM又はそれより良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約50pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約40pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約30pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、結合親和性が約20pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、完全にヒトであるか又はヒト化され、結合親和性が約100pM又はそれよりも良好である。一実施形態では、本発明の抗体分子は、完全にヒトであるか又はヒト化され、結合親和性が30pM又はそれよりも良好である。
【0091】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当該技術分野において知られている任意の適切な方法を用いて変更されてもよいことは理解されよう。したがって、本発明はまた、IL−13に対する改善された親和性を有する、本発明の抗体分子の改変体に関する。このような改変体は、多数の親和性成熟プロトコールによって得ることができ、CDRの突然変異(Yangら,J.Mol.Biol.,254,392−403,1995)、チェーンシャッフリング(Marksら,Bio/Technology,10,779−783,1992)、大腸菌(E.coli)の突然変異誘発株の使用(Lowら,J.Mol.Biol.,250,359−368,1996)、DNAシャッフリング(Pattenら,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724−733,1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら,J.Mol.Biol.,256,77−88,1996)、及びセクシャルPCR(Crameriら,Nature,391,288−291,1998)が挙げられる。Vaughanら(上述)は、親和性成熟のこれらの方法を検討している。
【0092】
一実施形態では、本発明の抗体分子は、IL−13とIL−13受容体の相互作用をブロックし、特に、本発明の抗体分子は、IL−13とIL−13Rα1の相互作用、及びIL−13とIL−13Rα2の相互作用をブロックする。この相互作用をブロックする抗体の能力を決定するのに適した多数のアッセイは、本明細書中の実施例に記載されている。一実施形態では、本発明は、ヒトIL−13に特異性を有する中和抗体を提供する。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13受容体は、天然のヒトIL−13Rα1又は天然のヒトIL−13Rα2である。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13受容体は、組換えヒトIL−13Rα1又は組換えヒトIL−13Rα2である。一実施形態では、アッセイに使用されるヒトIL−13は組換えヒトIL−13である。一実施形態では、中和抗体はヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体又はその断片である。
【0093】
所望により、本発明に使用するための抗体は、1又は複数のエフェクター分子にコンジュゲートされてもよい。エフェクター分子が、単一のエフェクター分子、又は本発明の抗体に結合できる単一部分を形成するように連結された2以上のこのような分子を含んでもよいことは承認されよう。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが望まれる場合、これは、抗体断片を直接又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結する、標準的な化学的又は組換えDNAの手法によって調製されてもよい。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートさせるための技術は当該技術分野において周知である(Hellstromら,Controlled Drug Delivery,第2版Robinsonら編,1987,623−53頁;Thorpeら,1982,Immunol.Rev.,62:119−58、及びDubowchikら,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67−123を参照されたい)。具体的な化学的手法には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03031581に記載の手法が含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、連結は、例えば、WO86/01533及びEP0392745に記載されるような組換えDNA手法を用いて達成することができる。
【0094】
エフェクター分子なる用語は、本明細書中で使用するとき、例えば、抗腫瘍薬、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成の又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート金属、ナノ粒子、及び蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出できる化合物などのレポーター基を含む。
【0095】
エフェクター分子の例には、細胞毒素、又は細胞にとって有害(例えば致死的)である任意の薬物を含む細胞毒性剤が含まれてもよい。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又は相同体が挙げられる。
【0096】
また、エフェクター分子には、限定されないが、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、並びにシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。
【0097】
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレートされた放射性核種;又は、限定されないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を含み得る。
【0098】
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。対象となる酵素には、限定されないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれる。対象となるタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、限定されないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤又は抗血管新生剤、例えばアンギオスタチン又はエンドスタチン、或いはリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)、又は他の増殖因子などの生物反応修飾因子、及び免疫グロブリンが挙げられる。
【0099】
他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出トモグラフィーにおける使用のため)及び非放射性常磁性金属イオンを含む。診断としての使用のための抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンに関しては、米国特許第4,741,900号全体を参照されたい。適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族はストレプトアビジン、アビジン及びビオチンを含み、適切な蛍光物質はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンを含み、適切な発光物質はルミノールを含み、適切な生物発光物質は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、適切な放射性核種は、125I、131I、111In及び99Tcを含む。
【0100】
別の例において、エフェクター分子は、インビボにおける抗体の半減期の増加及び/又は抗体の免疫原性の減少及び/又は上皮バリアを越える免疫系への抗体の送達を強化できる。この型のエフェクター分子の適切な例は、WO05/117984に記載されたような、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又はアルブミン結合化合物を含む。
【0101】
エフェクター分子がポリマーである場合、一般に、合成の又は天然に存在するポリマー、例えば、場合により置換された直鎖又は分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン又はポリオキシアルキレンポリマー、或いは分岐又は非分岐の多糖類、例えば、ホモ又はヘテロの多糖類であってよい。
【0102】
上記の合成ポリマーに存在してもよい特定の任意の置換基は、1又は複数のヒドロキシ基、メチル基又はメトキシ基を含む。
【0103】
合成ポリマーの具体例には、場合により置換された直鎖又は分岐鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、場合により置換されたポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)及びその誘導体が挙げられる。
【0104】
具体的な天然に存在するポリマーは、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はその誘導体を含む。
【0105】
「誘導体」は、本明細書中で使用するとき、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択的反応基を含むものとする。反応基は、ポリマーに直接又はリンカーセグメントを介して連結されてもよい。このような基の残基が、抗体断片とポリマーとの間の連結基として、時には生成物の一部を形成することは理解されよう。
【0106】
ポリマーのサイズは、所望に応じて変更可能であるが、一般には、平均分子量が500Daから50000Da、例えば5000から40000Da、例えば20000から40000Daの範囲となる。ポリマーサイズは、特に、生成物の使用目的、例えば腫瘍などのある種の組織に局在する能力又は循環半減期を延長させる能力に基づいて選択できる(総説としては、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531−545を参照されたい)。したがって、例えば、生成物を循環から離れて組織に浸透させようとする場合、分子量の小さいポリマー、例えば約5000Daの分子量のポリマーの使用が有利である場合がある。生成物が循環に残存する場合の適用に関しては、分子量のより大きいポリマー、例えば20000Daから40000Daの範囲の分子量を有するポリマーの使用が有利である場合がある。
【0107】
適したポリマーは、ポリ(エチレングリコール)、或いは特にメトキシポリ(エチレングリコール)などの、特に約15000Daから約40000Daの範囲の分子量のポリアルキレンポリマー又はその誘導体を含む。
【0108】
一例では、本発明において使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部位に結合される。特定の一例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は抗体断片に位置する末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離のアミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を介して結合されてもよい。このようなアミノ酸は、抗体断片中に自然に発生してもよく、又は組換えDNA法を用いて断片中に操作してもよい(例えば、US5,219,996、US5,667,425、WO98/25971を参照されたい)。一例において、本発明の抗体分子は修飾されたFab断片であり、修飾は抗体分子の重鎖のC末端への、エフェクター分子の結合を可能にする、1又は複数のアミノ酸の付加である。適切には、付加アミノ酸は、エフェクター分子が結合できる1又は複数のシステイン残基を含む、修飾されたヒンジ領域を形成する。2以上のPEG分子を結合するために複数の部位が使用できる。
【0109】
適切には、PEG分子は、抗体断片に位置した少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合されてもよい。修飾された抗体断片に結合した各ポリマーは、断片に位置したシステイン残基のイオウ原子に共有結合されてもよい。共有結合は、一般に、ジスルフィド結合、又は、特にイオウ−炭素の結合である。チオール基が結合点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えばマレイミドなどのチオール選択性誘導体及びシステイン誘導体が使用されてもよい。上記のように、活性化ポリマーが、ポリマーによって修飾された抗体断片の調製において、出発物質として用いることができる。活性化ポリマーは、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどの、チオール反応基を含む任意のポリマーであってもよい。このような出発物質は、市販で(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.,Huntsville,AL,USAから)得ることができる、又は市販の出発物質から、従来の化学的手法を用いて調製することができる。特定のPEG分子は、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar、以前はShearwater,Rapp Polymere及びSunBioから入手可能)及びM−PEG−SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)を含む。
【0110】
一実施形態では、抗体は、例えば、EP0948544又はEP1090037に開示されている方法に従って、PEG化された、すなわちPEG(ポリ(エチレングリコール))が共有結合した、修飾されたFab断片又はdiFabである[(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications),1992,J.Milton Harris(編)、Plenum Press,New York,「Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications」1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(編)、American Chemical Society、Washington DC及び「Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences」,1998,M.Aslam及びA.Dent,Grove Publishers、New York;Chapman、A.2002、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531−545も参照されたい]。一例では、PEGは、ヒンジ領域においてシステインに結合する。一例では、PEG修飾されたFab断片は、修飾ヒンジ領域において単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合でき、リシン残基上の各アミン基は、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合できる。したがって、Fab断片に結合したPEGの全分子量は約40,000Daであってもよい。
【0111】
一実施形態では、本発明は、ヒトIL−13に特異性を有するアンタゴニスト抗体分子を提供し、この抗体は、配列番号35に示される配列を含む重鎖、及び配列番号27に示される配列を含む軽鎖を有し、その重鎖のC末端に、エフェクター分子が結合した少なくとも1つのシステイン残基を含む修飾されたヒンジ領域を有する、修飾されたFab’断片である。適切には、エフェクター分子はPEGであり、(WO98/25971及びWO2004072116又はWO2007/003898)に記載されている方法を用いて結合される。エフェクター分子は、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されている方法を用いて抗体断片に結合されてもよい。
【0112】
一実施形態では、抗体又は断片はエフェクター分子と結合されない。
【0113】
また、本発明は、本発明の抗体分子の重鎖(単数又は複数)及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列を提供する。適切には、DNA配列は、本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的方法によって作製された合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0114】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は、当業者に周知の方法によって得ることができる。例えば、抗体の重鎖及び軽鎖の一部又は全てをコードするDNA配列は、所望に応じて決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成されてもよい。
【0115】
アクセプターのフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広く利用可能であり、それらの知られたアミノ酸配列に基づいて容易に合成することができる。
【0116】
分子生物学の標準的技術を用いて、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製しもよい。所望のDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成技術を使用して、完全に又は部分的に合成され得る。部位特異的突然変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を必要に応じて使用することができる。
【0117】
適切な配列の例は本明細書中に提供される。マウスシグナルペプチドMEWSWVFLFF LSVTTGVHS(配列番号45)などの重鎖に適したシグナルペプチドが配列中にコードされていてもよい。本発明のアンタゴニスト抗体分子を提供するために開裂されるマウスシグナルペプチドMSVPTQVLGL LLLWLTDARC(配列番号46)などの軽鎖に適したシグナルペプチドが配列中にコードされていてもよい。また、本発明は、配列番号32、34又は36又は38を含む、本発明の抗体の重鎖をコードする単離されたDNA配列を提供する。また、本発明は、配列番号24、26、28又は30を含む、本発明の抗体の軽鎖をコードする単離されたDNA配列を提供する。
【0118】
ベクターを構築できる一般的な方法、トランスフェクション法及び培養方法は、当業者に周知である。この点において、Current Protocols in Molecular Biology、1999、F.M.Ausubel(編),Wiley Interscience,New York及びCold Spring Harbor Publishingにより作成されたマニアティスのマニュアル(Maniatis Manual)を参照する。
【0119】
また、本発明の抗体をコードする1又は複数のDNA配列を含む1又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞が提供される。任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を発現させるために用いられてもよい。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系を使用することができ、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマの細胞が含まれる。
【0120】
また、本発明は、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質を発現させるのに適した条件下で、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養するステップ、及びこの抗体分子を単離するステップを含む、本発明に係る抗体分子を産生するための方法を提供する。
【0121】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖のポリペプチドをコードする配列だけが宿主細胞にトランスフェクトの使用に必要とされる場合には、重鎖又は軽鎖のポリペプチドだけを含んでもよい。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の作製について、細胞系に、2つのベクターである軽鎖ポリペプチドをコードする第1ベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2ベクターをトランスフェクトしてもよい。或いは、軽鎖及び重鎖のポリペプチドをコードする配列を含むベクターである単一のベクターを用いることができる。
【0122】
本開示に係る抗体及び断片は、宿主細胞から良好なレベルで発現される。このようにして、抗体及び/又は断片の特性は、市販用加工に最適であり、貢献すると考えられる。
【0123】
本発明の抗体は病態の治療及び/又は予防に有用であるため、本発明はまた、本発明の抗体分子を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物又は診断用組成物を提供する。したがって、薬剤を製造するための本発明の抗体の使用が提供される。組成物は、薬学的に許容される担体を通常は含む、無菌の医薬組成物の一部として通常は供給されることになる。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバントをさらに含んでもよい。
【0124】
また、本発明は、本発明の抗体分子を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と共に添加又は混合すること含む、医薬組成物又は診断用組成物を調製する方法を提供する。
【0125】
この抗体分子は、医薬組成物又は診断用組成物における唯一の有効成分であってもよく、又は他の抗体成分、例えば、抗TNF抗体、抗IL−1β抗体、抗T細胞抗体、抗IFNγ抗体又は抗LPS抗体、或いはキサンチンなどの非抗体成分を含む他の有効成分を伴ってもよい。他の適切な有効成分には、寛容を誘導することができる抗体、例えば、抗CD3抗体又は抗CD4抗体が含まれる。
【0126】
さらなる実施形態では、本開示に係る抗体、断片又は組成物は、さらなる医薬として活性のある作用物質、例えば、コルチコステロイド(例えばプロピオン酸フルチカゾン)及び/又はベータ−2−作動薬(例えばサルブタモール、サルメテロール若しくはフォルモテロール)又は細胞成長及び増殖の阻害剤(例えばラパマイシン、シクロホスファミド、メトトレキサート)、或いは選択的にCD28及び/又はCD40阻害剤と組み合わせて使用される。一実施形態では、阻害剤は小分子である。別の実施形態では、阻害剤は標的に特異的な抗体である。
【0127】
医薬組成物は、適切には、治療有効量の本発明の抗体を含む。用語「治療有効量」とは、本明細書中で使用するとき、標的となる疾患若しくは状態を治療、改善又は予防するために、或いは検出可能な治療効果又は予防効果を示すために必要とされる治療薬の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデルにおいて、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかにおいて、初期に推定することができる。また、動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために用いることができる。続いて、このような情報は、ヒトにおける有用な投薬量及び投与経路を決定するために用いることができる。
【0128】
ヒト対象に対する正確な治療有効量は、疾患状態の重篤度、対象の全体的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ(単数又は複数)、治療に対する反応感受性及び耐性/応答に依存する。この量は、日常の実験によって決定でき、臨床医の判断の範囲内である。一般に、治療有効量は、0.01mg/kg〜50mg/kg、例えば0.1mg/kg〜20mg/kgである。或いは、投薬量は、1日あたり1〜500mg、例えば、1日あたり10〜100、200、300又は400mgであってもよい。好都合には、医薬組成物は、所定量の本発明の活性剤を含む単位剤形で存在してもよい。
【0129】
組成物は、患者に個別に投与してもよく、又は他の薬物、薬剤若しくはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続して又は別々に)投与されてもよい。
【0130】
本発明の抗体分子を投与する場合の投薬量は、治療される状態の性質、存在する炎症の程度、及び抗体分子が予防的に使用されるか又は現状を治療するために使用されているかどうかに依存する。
【0131】
投薬の頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続期間に依存する。抗体分子の半減期が短い(例えば、2〜10時間)場合、1日に1回又は複数回の投薬が必要とされ得る。或いは、抗体分子の半減期が長い(例えば2〜15日)場合、1日に1回、1週間に1回、若しくはさらに1又は2か月に1回の投薬だけが必要とされ得る。
【0132】
薬学的に許容される担体は、それ自体は組成物を摂取する個体に対して有害な抗体の産生を誘導してはならず、毒性があってはならない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸共重合体、及び不活性ウイルス粒子などの大型の緩慢に代謝される巨大分子であってよい。
【0133】
薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用できる。
【0134】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、さらに水、食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を含んでもよい。さらに、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質がこのような組成物中に存在してもよい。このような担体は、患者による摂取のために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁液などに処方可能にする。
【0135】
投与の好ましい形態は、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与に適した形態を含む。生成物が注射用又は注入用である場合、油性又は水性のビヒクルにおいて懸濁液、溶液又は乳剤の形態を取ってよく、懸濁剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤助剤を含んでもよい。或いは、抗体分子は、使用前に適切な滅菌の液体により再構成するために、乾燥形態であってもよい。
【0136】
一度処方されると、本発明の組成物は対象に直接投与することができる。治療されるべき対象は動物であり得る。しかしながら、1又は複数の実施形態では、組成物はヒト対象に投与するために適合される。
【0137】
一実施形態では、本開示に係る製剤において、最終製剤のpHは、抗体又は断片の等電点の値に類似せず、これは、製剤のpHが7である場合、8〜9又はそれを超えるpIが適切であり得るためである。望ましくは理論に束縛されずに、これは、最終的には、改善された安定性を有する最終製剤を提供することができ、例えば、抗体又は断片が溶液中に留まると考えられる。
【0138】
本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、経皮的(例えば、WO98/20734を参照されたい)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下、膣内又は直腸の経路を含む、任意の数の経路によって投与できる。皮下噴射器もまた本発明の医薬組成物の投与のために使用できる。典型的には、治療用組成物は、溶液又は懸濁液のどちらかとして、注射可能に調製できる。注射前の、液体媒体中における溶液用又は懸濁液用に適した固体形態にもまた調製できる。好ましくは、本発明の抗体分子は、皮下に、吸入により又は局所に投与される。
【0139】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内によって達成され、又は組織の間質腔に送達される。組成物はまた、対象とする特定の組織内に投与され得る。投薬処置は、単回投薬スケジュール又は複数回投薬スケジュールであってもよい。
【0140】
組成物中の有効成分が抗体分子であることは承認されよう。そのため、消化管における分解を受けやすい。このようにして、組成物が消化管を使用する経路によって投与されるべきである場合、組成物は、抗体を分解から保護するが、消化管から一度吸収されたら抗体を放出する薬物を含む必要がある。
【0141】
薬学的に許容される担体の詳細な考察は、レミントンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)(Mack Publishing Company,N.J.1991)において利用可能である。
【0142】
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与用の製剤として提供される。
【0143】
適切な吸入可能な調製物には、吸入可能な粉末、高圧ガスを含む計量エアロゾル、又は高圧ガスを伴わない吸入可能な溶液(例えば、噴霧可能な溶液又は懸濁液)が挙げられる。活性物質を含む、本開示に係る吸入可能な粉末は、上記の活性物質だけからなっているか、又は上記の活性物質と生理学的に許容される賦形剤との混合物からなっていてもよい。
【0144】
これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えば、デキストラン)、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれら同士の混合物を含んでもよい。単糖又は二糖が適切には使用され、それは、ラクトース又はグルコースの使用、特に、限定されないが、それらの水和物の形態である。
【0145】
肺における沈着用の粒子は、10ミクロン未満の粒径を必要とし、例えば、1〜9ミクロン、例えば0.1〜5μm、特に1〜5μmである。有効成分(例えば、抗体又は断片)の粒径は、最も重要である。
【0146】
吸入可能なエアロゾルを調製するために用いることができる噴射ガスは当該技術分野において知られている。適切な噴射ガスは、炭化水素、例えばn−プロパン、n−ブタン又はイソブタン、ハロ炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン又はシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体の中から選択される。上記の噴射ガスは、単独で又はそれらの混合物で使用されてもよい。
【0147】
特に適切な噴射ガスは、TG11、TG12、TG134a及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、及びそれらの混合物が特に適している。
【0148】
また、噴射ガス含有の吸入可能なエアロゾルは、他の成分、例えば共溶媒、安定剤、表面活性剤(界面活性剤)、抗酸化剤、潤滑剤、及びpHを調整するための手段を含んでもよい。これらの全ての成分は当該技術分野において知られている。
【0149】
本発明に係る噴射ガス含有の吸入可能なエアロゾルは、最大5重量%の活性物質を含んでもよい。本発明に係るエアロゾルは、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%、又は0.5〜1重量%の活性物質を含む。
【0150】
或いは、肺への局所投与はまた、溶液製剤又は懸濁製剤の投与によって、例えば、噴霧器などのデバイス、例えば、圧縮器に接続された噴霧器(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,Va.により製造されたPari Master(登録商標)圧縮器に接続されたPari LC−Jet Plus(登録商標)噴霧器)を用いるものであってもよい。
【0151】
一実施形態では、製剤は、噴霧による送達用に単位用量を含む個別のアンプルとして提供される。
【0152】
一実施形態では、抗体は、再構成用に、或いは懸濁製剤として凍結乾燥形態で供給される。
【0153】
本発明の抗体は、溶媒に分散されて、例えば、溶液又は懸濁液の形態で送達させることができる。適切な生理溶液、例えば、生理食塩水、薬理学的に許容される溶媒、又は緩衝液に懸濁することができる。当該技術分野において知られている緩衝液には、水1mlあたり、0.05mg〜0.15mgのエデト酸2ナトリウム、8.0mg〜9.0mgのNaCl、0.15mg〜0.25mgのポリソルベート、0.25mg〜0.30mgの無水クエン酸、及び0.45mg〜0.55mgのクエン酸ナトリウムが含まれていてもよく、それにより、約4.0〜5.0のpHを達成する。上述した通り、懸濁液は、例えば、凍結乾燥させた抗体から作製することができる。
【0154】
また、治療用の懸濁液又は溶液製剤は、1又は複数の賦形剤を含んでもよい。賦形剤は当該技術分野において周知であり、緩衝液(例えば、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液及び重炭酸塩緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールが挙げられる。溶液又は懸濁液をリポソーム又は生分解性マイクロスフェアにカプセル化することができる。製剤は、一般に、無菌的な製造プロセスを用いて、実質的に無菌形態で提供される。
【0155】
これは、処方に使用される緩衝溶媒溶液のろ過、該無菌の緩衝溶媒溶液への抗体の無菌懸濁、及び当業者によく知られている方法による無菌容器への製剤の分注による製造及び滅菌を含んでもよい。
【0156】
本開示にかかる噴霧可能な製剤は、例えば、アルミホイルに包まれた単一投薬量単位(例えば、密封されたプラスチック容器又はバイアル)として提供されてもよい。各バイアルは、ある体積、例えば2mlの溶媒/溶液緩衝液中の単位用量を含む。
【0157】
本開示の抗体は、噴霧を介した送達に適していると考えられる。
【0158】
また、本発明の抗体は、遺伝子治療の使用により投与されてもよいことが予測される。これを達成するために、適切なDNA成分の制御下で抗体分子の重鎖及び軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入され、その結果、抗体鎖がDNA配列から発現され、インサイチュで集積される。
【0159】
また、本発明は、炎症性疾患、例えば急性又は慢性炎症性疾患の調節に使用するための抗体分子(又はそれを含む組成物)を提供する。適切には、抗体分子(又はそれを含む組成物)は、炎症過程を減少させる、又は炎症過程を妨げるために使用され得る。一実施形態では、活性化T細胞、特に、不適切な炎症性免疫応答に関与した活性化T細胞、例えば、このような応答の近辺/位置に動員される活性化T細胞のインビボでの減少がもたらされる。
【0160】
活性化T細胞の減少は、本明細書で用いられる場合、処置前又は処置なしと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90%、又はそれを超える減少であってもよい。
【0161】
好都合には、本発明に係る抗体、断片又は組成物による処置により、患者のT細胞(不活性化T細胞)の一般レベルを減少させずに、活性化T細胞のレベルを減少させることができる。これは、より少ない副作用をもたらし、おそらくは患者におけるT細胞減少を妨げることができる。
【0162】
また、本発明は、IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防において使用するための本発明の抗体分子を提供する。
【0163】
病的状態又は病的障害は、例えば、感染(ウイルス、細菌、真菌及び寄生)、感染と関連した内毒素性ショック、関節リウマチなどの関節炎、重篤な喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣病、腹膜炎、乾癬、脈管炎、外科的癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症などの中枢神経系及び末梢神経系の免疫介在性炎症性疾患、狼瘡(例えば、全身性紅斑性狼瘡)及びギラン・バレー症候群、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維化性肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変症、サルコイドーシス、強皮症、ヴェグナー肉芽腫症、他の自己免疫疾患、膵臓炎、外傷(外科)、移植片対宿主病、移植片拒絶反応、心筋梗塞などの虚血性疾患及びアテローム性動脈硬化症を含む心臓疾患、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周炎、及び低塩酸症からなる群から選択されてもよい。
【0164】
また、本発明は、疼痛、特に炎症と関連している疼痛の治療又は予防に使用するための、本発明に係る抗体分子を提供する。
【0165】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症の治療に対する抵抗、特に炎症の治療に対する肺抵抗を減少させる。
【0166】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、気管支組織のIL−13タンパク質レベルを減少させる。この減少は、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0167】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、鼻洗浄液及び/又は気管支肺胞洗浄液におけるIL−13タンパク質レベルを減少させる。この減少は、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0168】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、治療前のレベルと比較して、好酸球流入を減少させる。この減少は、例えば、1、2、3、4、5、6週間又はそれを超えて治療した場合、5、10、20、30、40%又はそれを超えてもよい。
【0169】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、例えば、慢性杯細胞過形成などの杯細胞過形成の治療において、杯細胞の不適切なレベルの減少に適している。この減少は、1、2、3、4、5、6週間又はそれを超えた治療後に観察されてもよい。
【0170】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、治療前のレベルと比較して、呼気の一酸化窒素(FeNO)レベルの減少に適している。呼気の一酸化窒素は、肺炎症の危険因子又はマーカーであると考えられている。
【0171】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症反応と関連している不適切なコラーゲン沈着、特に気管支周囲のコラーゲン沈着の予防に適している。
【0172】
一実施形態では、本発明に係る抗体は、炎症反応と関連した不適切な血管形成の予防に適している。
【0173】
このようにして、治療に使用するための本発明に係る抗体、及びそれを使用する治療方法が提供される。
【0174】
また、本明細書に使用される本発明に係る抗体は、本明細書に開示されている断片及び誘導体を指す。
【0175】
さらに、本発明は、IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に係る抗体分子、断片又は組成物の使用を提供し、例えば、本明細書中に記載の通り、特に、病的障害は関節リウマチ、喘息又はCOPDである。
【0176】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている1又は複数の医学的兆候の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明に係る抗体分子、断片又は組成物の使用を提供する。
【0177】
本発明の抗体分子、断片又は組成物は、任意の治療に利用されてもよく、この場合、ヒト又は動物の生体におけるIL−13の効果を減少させることが望まれる。IL−13は生体に循環していてもよく、又は生体の特定部位、例えば、炎症部位に望ましくないほど高レベルで局在して存在してもよい。
【0178】
一実施形態では、本発明の抗体分子又はそれを含む組成物は、例えば、本明細書に記載される炎症性疾患を制御するために使用される。
【0179】
また、本発明は、IL−13によって媒介される障害に罹患しているか又はその危険性があるヒト又は動物対象を治療するための方法であって、有効量の本発明の抗体分子、又はそれを含む組成物を該対象に投与することを含む上記方法を提供する。一例では、抗体分子は吸入によって投与される。
【0180】
一例では、障害は、上記で示された医学的兆候のいずれかから選択される。一例では、障害は、喘息疾患、アトピー性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症に関連した状態、好酸球増加症、線維症及び過剰粘液産生、炎症状態、自己免疫状態、腫瘍又は癌、ウイルス感染及び防御性1型免疫応答の発現抑制からなる群から選択される。
【0181】
一実施形態では、抗体(特に、本発明に係る抗体又は断片)を精製するための方法が提供される。
【0182】
一実施形態では、抗体(特に、本発明に係る抗体又は断片)を精製するための方法であって、
不純物がカラムに保持され、抗体が非結合画分に維持されるように、非結合モードで陰イオン交換クロマトグラフィーを行うステップ
を含む上記方法が提供される。このステップは、例えば、pHが約6〜8で行われてもよい。
【0183】
この方法は、例えば、pHが約4〜5で実行される陽イオン交換クロマトグラフィーを用いた初期捕捉ステップをさらに含んでもよい。
【0184】
この方法は、生成物を確保するための追加のクロマトグラフィーステップ(単数又は複数)をさらに含んでもよく、方法に関連した不純物が製品流から適切に除かれる。
【0185】
また、精製方法は、濃縮及び透析ろ過ステップなどの1又は複数の限外ろ過ステップをさらに含んでもよい。
【0186】
このようにして、一実施形態では、精製されたIL−13抗体又は断片、例えば、実質的に精製された形態であり、特に、内毒素及び/又は宿主細胞のタンパク質若しくはDNAを含まないか、又は実質的に含まない、ヒト化抗体又は断片、特に本発明に係る抗体又は断片が提供される。このように言及はしたが、本発明に係る抗体は、一般に、哺乳動物細胞で調製され、したがって、内毒素含量は通常問題にならない。実際には、内毒素含量はむしろ、抗体が細菌細胞で調製される場合に考慮される。
【0187】
上記で使用される精製された形態は、少なくとも90%の純度を指すものとし、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれを超えて純粋である。
【0188】
内毒素が実質的に含まないとは、一般に、抗体生成物1mgあたりの内毒素含量が1EU未満であることを指すものとし、例えば、生成物1mgあたり0.5又は0.1EUである。
【0189】
宿主細胞のタンパク質又はDNAが実質的に含まないとは、一般に、抗体生成物1mgあたり宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含量が400μg未満であるであることを指すものとし、例えば、必要に応じて、1mgあたり100μg未満、特に1mgあたり20μgである。
【0190】
また、本発明の抗体分子は診断、例えば、IL−13に関与する疾患状態のインビボでの診断及び画像化に使用されてもよい。
【0191】
本発明に係る抗体の特性を試験するための適切なインビボアッセイには、慢性イエダニモデル、メタコリンに対する過敏反応性、及び/又はアレルギー性肺炎症のオボアルブミンモデルが含まれる。
【0192】
本明細書との関連で含むこと(comprising)は、含むこと(including)を意味するものとする。
【0193】
この場合、本発明の技術的に適切な実施形態を組み合わせてもよい。
【0194】
実施形態は、本明細書において、ある種の特徴/要素を含むものとして記載されている。また、本開示は、上記特徴/要素からなるか又は本質的に上記特徴/要素からなる実施形態を区別するように広げる。
【0195】
本発明は、添付の図面について言及する以下の実施例においてのみ、例示としてさらに説明される:
【0196】
図1は、重鎖(CDR H)のCDR1、2、3、及び軽鎖(CDR L)のCDR1、2、3の各々についてのアミノ酸配列(配列番号1〜6)、
ラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号7)、
ラット抗体軽鎖の可変領域についてのDNA配列(配列番号8)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号9)
を示す。
【0197】
図2は、シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号10)、
ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号11)、
ラット抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号12)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのアミノ酸配列(配列番号13)
を示す。
【0198】
図3は、シグナル配列を有するラット抗体の軽鎖についてのDNA配列(配列番号14)、
ラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号15)、
ラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号16)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号17)
を示す。
【0199】
図4は、シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号18)、及び
ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号19)
を示す。
【0200】
図5は、ラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号20)、及び
シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号21)
を示す。
【0201】
図6は、シグナル配列を有するラット抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号22)を示す。
【0202】
図7は、ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号23)、
ヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号24)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号25)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号26)、及び
ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号27)
を示す。
【0203】
図8は、ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号28)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号29)、及び
シグナル配列を有するヒト化抗体の軽鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号30)、
を示す。
【0204】
図9は、ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号31)、
ヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号32)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのアミノ酸配列(配列番号33)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域についてのDNA配列(配列番号34)、及び
ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号35)
を示す。
【0205】
図10は、ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号36)、
シグナル配列を有するヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのアミノ酸配列(配列番号37)、及び
ヒト化抗体の重鎖可変領域及び定常領域についてのDNA配列(配列番号38)
を示す。
【0206】
図11は、ヒトVK 1 2−1−(1)02 JK4アクセプターフレームワーク(配列番号39及び配列番号40)及びVH2 3−1 2−26 JH4アクセプターフレームワークについてのアミノ酸配列及びDNA配列(配列番号41及び配列番号42)を示す。
【0207】
図12は、ラットに関する軽鎖、アクセプターフレームワーク、並びにヒト化軽鎖及びさらに重鎖のアラインメントを示す。CDRは、ボールド体であり、下線が付されている。ドナー残基G49及びR71は、ボールド体であり、イタリック体であり、反転表示されている。
【0208】
図13は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定されたBALエオタキシン−3に対するAb652の効果。データは、平均±SEMで表され、1群あたりn=4〜8である。
【0209】
図14は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定されたBAL好酸球数に対するAb652の効果。データは、研究のスクリーニング段階で測定されたBAL好酸球に対して標準化される。平均±SEM、n=4〜8/群。
【0210】
図15は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の15分までに測定された最大気道抵抗に対するAb652の効果。データは、平均±SEMとして表される。n=4〜8/群。
【0211】
図16は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおいてアレルゲン接種後の24時間で測定された気道抵抗に対するAb652の効果。データは、アレルゲンに暴露される前に測定された気道抵抗に対して標準化される。平均±SEM、n=4〜8/群。
【実施例】
【0212】
1.治療抗体の作製/選択
精製されたヒトIL−13(Peprotech)若しくはヒトIL−13を発現しているラット線維芽細胞(培養上清中に約1μg/mlで発現している)のいずれか、又はある場合にはこれらの2つの組み合わせでラットを免疫した。3〜6回の注射後、動物を屠殺し、PBMC、脾臓、骨髄及びリンパ節を回収した。血清は、ELISAにおいてヒトIL−13への結合について、さらに、HEK−293 STAT−6レポーター細胞アッセイ(HEK−Blueアッセイ、Invivogen社)においてhIL−13を中和する能力について監視された。
【0213】
SLAM培地(B細胞培地)は、Zublerら(J.Immunol.1985)に報告されているのと同じ方法によって調製された。要約すると、免疫された動物由来の500〜5000個の脾臓細胞又はPBMCは、10%FCS(PAA laboratories ltd)2%HEPES(Sigma Aldrich)、1%L−グルタミン(Gibco BRL)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Gibco BRL)、0.1%βメルカプトエタノール(Gibco BRL)、3%活性化ウサギ脾臓細胞培養上清、及びガンマ照射されたEL−4−B5マウス胸腺腫細胞(5×104/ウェル)を補充した200μl/ウェルのRPMI1640培地(Gibco BRL)を用いて、5%CO2の雰囲気下、37℃で7日間、数百の96ウェルプレートのバッチで培養された。B細胞培養上清をスクリーニングアッセイにおいて試験し、陽性の上清をマスタープレートに集めた。培養されたB細胞は、FCS中の100μlの10%DMSOに−80℃で凍結された。
【0214】
SLAM培養上清は、FMATにおけるビーズ系アッセイにおいて、hIL−13に結合するそれらの能力について最初にスクリーニングされた。これは、ストレプトアビジンビーズ上に被覆されたビオチン化ヒトIL−13及びヤギ抗ラットFc−Cy5コンジュゲートを用いた均質アッセイであった。次に、このアッセイからの陽性は、HEK−293 IL−13R−STAT−6レポーター細胞アッセイ(HEK−Blueアッセイ、Invivogen社)に送られ、中和物を同定した。その後、Biacoreにおいて中和上清についてプロファイルされて、オフ速度を推定し、さらに中和の作用様式を特徴付けた。中和はbin1又はbin2として分類された。bin1は、ヒトIL−13に結合する抗体を示し、IL−13Rα1の結合を妨げ、さらに結果として、結合からIL−4Rをブロックする。bin2は、IL−13Rα1に結合するのを可能にするが、複合体へのIL−4Rの動員を妨げるような方法でhIL−13に結合する抗体を示す。本発明者らは、bin1によって作用する抗体を選択してきた。
【0215】
約7500個のIL−13特異的陽性が、合計27×100プレートのSLAM実験から一次FMATスクリーニングにおいて同定された。800ウェルは、HEK−blueアッセイにおいて中和を示した。170ウェルは所望のBiacoreプロファイルであり、即ち、bin1抗体は、オフ速度が<5×10−4s−1であった。これらの170ウェルからの可変領域のクローニングを試み、160が首尾よく蛍光焦点を生じさせた。100ウェルが、逆転写(RT)−PCR後に重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子対を生じさせた。これらのV領域遺伝子は、マウスIgG1全長抗体としてクローニングされ、HEK−293一過性発現系において再度発現された。配列分析により、抗ヒトIL−13抗体の27の独特なファミリーが存在することが示された。次に、これらの組換え抗体は、組換えhIL−13(大腸菌由来及び哺乳動物由来)、組換えバリアントhIL−13(R130Q)(大腸菌由来)、天然野生型及びバリアントhIL−13(ヒトドナー由来)、並びにカニクイザルIL−13(哺乳動物由来)をブロックするそれらの能力について、細胞系アッセイにおいて再試験された。また、組換え抗体は、バリアントヒトIL−13(R130Q)及びカニクイザルIL−13に結合するそれらの能力についてBiacoreにおいて試験された。この特徴付けの後、5つの抗体ファミリーが本発明者らの基準、即ち、全てのヒト及びカニクイザルIL−13調製物についての有効性及び親和性における最小の減少を有する100pMを下回る抗体を満たした。
【0216】
5つ全てのファミリーについてヒト化を行った。中和有効性、親和性及びヒト化移植片におけるドナー含有量に基づいて、ヒト化CA154_652(下記参照)をさらなる進行のために選択した。
【0217】
1.1 ヒト化
本明細書に例証されたヒト化抗体は(Ab652)、ヒト生殖系列抗体のV領域フレームワークに、ラット抗体のV領域(配列番号7及び15)由来のCDR(配列1から6において本明細書に開示されたCDR)をグラフトすることによって調製された。ラット抗体(ドナー)のV領域配列とヒト生殖系列抗体(アクセプター)のV領域配列とのアラインメントは、設計されたヒト化配列とともに、図12に示される。アクセプター配列にドナーからグラフトされたCDRは、Kabat(Kabatら,Sequence of proteins of immunological interest(1987).Bethesda MD,National Institutes of Health,US)によって定義されている通りであるが、組み合わせたChothia/Kabat定義が使用される場合にはCDR−H1は除かれる(Adairら(1991)Humanised antibodies WO91/09967参照)。ヒトV領域のVH2 3−12−26プラスJH4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)は、重鎖CDRのためのアクセプターとして選ばれた。重鎖フレームワーク残基は全て、ヒト生殖系列遺伝子由来であるが、ドナー残基グリシン(G49)及びアルギニン(R71)が保持される場合には、それぞれ残基49及び71(Kabat番号付け)を除く。これらの2つのドナー残基の保持は、ヒト化抗体の完全な活性に本質的である。ヒトV領域VK1 2−1−(1)02プラスJK4 J領域(V BASE、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)は、軽鎖CDRのためのアクセプターとして選ばれた。軽鎖フレームワーク残基は全て、ヒト生殖系列遺伝子由来である。
【0218】
初期V領域配列をコードする遺伝子は、Entelechon GmbHによる自動化合成アプローチによって設計され、構築された。多数の異なる重鎖改変体は、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によるVH遺伝子を改変することによって作製された。gL1遺伝子配列は、UCB−Celltechヒト軽鎖発現ベクターpKH10.1にクローニングされ、このベクターは、ヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含む−配列番号26及び配列番号30を参照されたい。8つのグラフトされたVH遺伝子(gH1からgH8)をUCB−Celltechヒトガンマ−4重鎖発現ベクターpVhγ4P FLにクローニングされ、このベクターは、ヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ−4重鎖定常領域をコードするDNAを含む(Angalら,Mol Immunol.1993,30(1):105−8)。gH2 VH遺伝子は、有効性及び生物物理学的特徴について最適な重鎖グラフトとして選ばれ(本明細書の下記に記載)、次に、UCB−Celltechヒトガンマ−1 FabベクターpVhγ1F3にサブクローニングされ、このベクターは、ヒトガンマ−1 CH1ドメイン(G1m17アロタイプ)をコードするDNA(配列番号38)を含む。CHO−L761h細胞への得られた重鎖プラスミドと軽鎖プラスミドとのコトランスフェクションは、必要とされるFabフォーマットにおけるヒト化抗体の発現をもたらした。この抗体は、本明細書においてAb652と呼ばれる(Ab652Fabとも呼ばれる)。
【0219】
抗体Ab652を発現する安定な細胞系の生成を促進するため、重鎖と軽鎖の発現カセット及びグルタミンシンセターゼ(GS)選択マーカーの両方をコードするDNAを含む単一プラスミドを生成した。GS遺伝子は、GSインヒビターであるメチオニンスルホキシイミンが補充された培地中で増殖を可能にすることによって組換えCHO細胞の選択を可能とする(Bebbingtonら,Biotechnol.1992,10(2):169−175)。
【0220】
1.2 結合親和性測定
BIAcore技術により、リアルタイムで、しかも標識を必要とせずに生体分子間の結合が監視される。相互作用物の1つは、リガンドと呼ばれ、固相化された表面上に直接固相化されるか又は捕捉され、他方は、分析物と呼ばれ、捕捉された表面全体に溶液で流れる。センサーは、分析物がリガンドに結合し、表面上で複合体を形成するため、センサー表面上での質量変化を検出する。これは、結合プロセスに対応する。リガンドからの分析物の解離は、分析物が緩衝液によって置き換わる場合に監視される。親和性BIAcoreアッセイにおいては、リガンドはAb652であり、分析物はヒトIL−13である。
【0221】
1.3 受容体交差ブロックアッセイ
Biacore受容体交差ブロッキングアッセイは、抗IL−13Fabの捕捉、次に、捕捉されたリガンド全体に流れるIL−13(第一分析物として)を必要とし、センサー表面上で安定な複合体を形成する。次に、第二分析物(組換え可溶性IL−13受容体)は、この安定な複合体全体に流される。安定な複合体への第二分析物の結合量を監視する。安定な抗体:IL−13複合体への第二分析物の結合を許容しない抗IL−13抗体は、サイト1競合物質として分類される。安定な抗体:IL−13複合体への第二分析物の結合を許容するそれらの抗IL−13抗体は、サイト2競合物質として分類される。
【0222】
材料
装置
Biacore(登録商標)3000,Biacore AB,Uppsala,Sweden
センサーチップ
CM5(リサーチ等級)カタログ番号:BR−1001−14,Biacore AB,Uppsala,Sweden
チップを4℃で保存した。
アミンカップリングキット
カタログ番号:BR−1000−50,Biacore AB,Uppsala,Sweden
エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)。蒸留水で75mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコートで保存した。
N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)。蒸留水で11.5mg/mLにし、−70℃にて200μLアリコートで保存した。
1Mエタノールアミン塩酸塩−NaOH pH8.5。−70℃にて200μLアリコートで保存した。
緩衝液
泳動緩衝液:HBS−EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20である)。カタログ番号:BR−1001−88,Biacore AB,Uppsala,Sweden.緩衝液を4℃で保存した。
固相化緩衝液:酢酸塩5.0(10mM酢酸ナトリウム pH5.0である)。カタログ番号:BR−1003−51,Biacore AB,Uppsala,Sweden。緩衝液を4℃で保存した。
リガンド捕捉
Affinipure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的。
Jackson ImmunoResearch Inc(Pennsylvania,USA)カタログ番号:109−006−097。試薬を4℃で保存した。
リガンド
Ab652(2.51、21.7及び3.86mg/ml Fab)を4℃で保存した。
抗hIL−13mIgG(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号MAB−213、ロット番号RL04)。
分析物
組換えヒトIL−13(0.2mg/ml、D.Lightwoodより;R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号213−IL−050)を−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
組換えヒトIL−13受容体1 hFc(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号146−IL−100)。−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
組換えヒトIL−13受容体2 hFc(R&D Systems Europe Ltd,Abingdon,Oxon.カタログ番号614−IL−100)。−70℃で保存し、各アッセイについて一度解凍した。
再生溶液
11.6M保存溶液(BDH,Poole,England.カタログ番号:101254H)から蒸留水を用いた希釈によって調製された40mM HCl。
50mM保存溶液から蒸留水を用いて希釈によって調製された5mM NaOH。
カタログ番号:BR−1003−58、Biacore AB,Uppsala,Sweden。
主要装置
Biacore 3000 Biosensor,GE Healthcare Ltd,Amersham Place,Little Chalfont,Buckinghamshire,HP7 9NA。この装置は、製造業者のプロコールにしたがって維持される。
【0223】
1.4 Ab652結合親和性測定
アッセイフォーマットは、固相化された抗ヒトF(ab’)2によるAb652の捕捉、続く、捕捉された表面全体でヒトhIL−13の滴定であった。
BIA(Biamolecular Interaction Analysis)はBIAcore 3000(BIAcore AB)を用いて行われた。Affinipure F(ab’)2断片、ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson ImmunoResearch)は、約4000反応単位(RU)の捕捉レベルまでアミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に固相化された。ブランク表面は、この手法からF(ab’)2断片を除いて、同様の方法により調製された。HBS−EP緩衝液(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%サーファクタントP20、BIAcore AB)は、泳動緩衝液として使用され、流速は10μl/分であった。約0.2μg/mLでAb652 Fabの10μl注入は、固相化された抗ヒトIgG−F(ab’)2による捕捉のために用いられ、十分なIL−13結合を可能にしたが、物質移動に制限された結合効果を最小限にもした。ヒトIL13は、流速を30μL/分にして、種々の濃度(10nM〜0.31nM)の捕捉されたAb652全体で滴定された。表面は、流速を10μL/分にして、40μM HClの10μL注入、続く5mM NaOHの5μL注入によって再生された。
【0224】
バックグラウンド除去結合曲線は、標準的な手法に従って、BIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を用いて分析された。動態パラメータは適合アルゴリズムから測定された。
【表1】
【0225】
1.5 IL−13受容体交差ブロッキング研究
BIAcore受容体交差ブロッキングアッセイは、抗IL−13Fabの捕捉、続く、センサー表面に安定な複合体を形成するために捕捉リガンド全体に流されるIL−13(第一分析物として)を必要とする。次に、第二分析物(組換え可溶性IL−13受容体)をこの安定な複合体上に流す。その後、安定な複合体への第二分析物の結合量を監視する。第二分析物による安定な抗体:IL−13複合体への結合を可能にしない抗IL−13抗体は、Axis1競合物質として分類される。第二分析物による安定な抗体:IL−13複合体への結合を可能にするそれらの抗IL−13抗体は、Axis2競合物質として分類される。
【0226】
全ての実験は、Biacore 3000バイオセンサーを用いて25℃にて行われた。HBS−EP緩衝液を泳動緩衝液として用い、流速は10μl/分(min)であった。同じセンサー表面は、親和性決定のために記載したように用いられた。
【0227】
抗ヒトIL−13Fabの約0.2μg/mlの10μl注射は、ヤギF(ab’)2IgG、抗ヒトF(ab’)2−断片特異的センサー表面による捕捉のために使用された。0.2μg/mlの抗ヒトIL−13Fabは、十分な抗ヒトIL−13結合を与えた。25nMのヒトIL−13は、捕捉された抗体全体に注入され、続いて即座に可溶性ヒトIL−13受容体を100nMで注入し、流速は10μL/分であった。表面は、2回の40mM HClの30μL注入、続く、5mM NaOHの5μL注入によって再生され、流速は30μL/分であった。
【0228】
バックグラウンド除去結合曲線は、標準的な手法に従って、製造元から提供されたBIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を用いて分析された。
【表2】
【0229】
IL−13は、2つの受容体(IL−13Rα1及びIL−13Rα2)のいずれかと相互作用し、複合体を形成する。hIL−13/hIL−13α1複合体だけがシグナル伝達する。したがって、IL−13依存性シグナル伝達を阻害する抗IL−13抗体は、hIL−13α1との相互作用をブロックすることによってこの効果を媒介し得る。ヒトIL−13上のAb652の相互作用部位は、BIAcoreアッセイにおいて決定することができた。Ab652は固相化された抗ヒトF(ab’)2表面によって捕捉され、次に、順にhIL−13がAb652によって捕捉された。捕捉されたIL−13/抗体複合体への可溶性IL−13Rα1の結合を評価した。このアッセイは、hIL−13Rα1の代わりにhIL−13Rα2を用いて繰り返された。Ab652によって示されたIL−13は、IL−13受容体のいずれかと結合することができなかったが、市販の対照抗IL−13抗体(mAb213)は、可溶性IL−13受容体へのIL−13を示すことができた。結論として、Ab652は、hIL−13受容体サブユニットの両方に結合するIL−13を阻害し、それをAxis1競合物質として定義する。
【表3】
【0230】
1.6 細胞系有効性
IL−13を中和するAb652 Fabのインビトロ有効性は、HEK−BLUE(商標)STAT−6アッセイ(Invivogen社)を用いて調べられた。このアッセイは、4つのSTAT−6結合部位に融合されたIFN−β最小プロモータの調節下で、ヒトSTAT−6を安定に発現し、分泌性胚アルカリホスファターゼ(SEAP)を安定に発現するHED293細胞を含む。Ab652の中和有効性(IC50)は、250pg/mLでアッセイに使用されるヒトIL−13の異なるタイプを用いて評価された。中和有効性は、細菌(大腸菌)及び哺乳動物(ラット線維芽細胞)宿主細胞から生成された組換え野生型ヒトIL−13に対して評価された。中和有効性は、ヒトTリンパ球から生成された天然の野生型及びR130Qバリアント ヒトIL−13に対して、及び哺乳動物細胞において生成された組換えカニクイザルIL−13に対して評価された。R130Q hIL−13を精製せず、その濃縮物をhIL−13 ELISAによって決定した。カニクイザルIL−13を精製せず、250pg/mLのhIL−13と、アッセイにおいて同等の応答を与える濃度で使用した。さらに、CA154_652.g2 Fabの中和有効性は、PARI eFLOW(登録商標)メッシュ噴霧器を用いて、噴霧後に測定された。表4:HEK BlueアッセイにおけるIL−13の複数形態に対するAb652 FabのIC50値。機能性親和性の決定のため、IL−13滴定は、Ab652の固定濃度の存在下で行われた。シルドプロット分析は、組換えヒト野生型IL−13及び組換えカニクイザルIL−13の中和のためのKD値を決定するデータに適用された。表5:HEK BlueアッセイにおけるIL−13の複数形態に対するAb652 FabのIC50及びKD値。
【表4】
【表5】
【0231】
全体として、これらのデータは、Ab652 Fabが、同様に細菌及び哺乳動物供給源から生成された、組換えの天然ヒトIL−13の中和に効力のあることを示している。このアッセイにおけるカニクイザルIL−13に対するCA154_652.g2の有効性は、ラット線維芽細胞からも生じさせた抗ヒトIL−13の3分の1以下である。CA154_652.g2の有効性は、PARI eFLOW(登録商標)噴霧器を用いた噴霧後に変化しない。
【0232】
1.7 Ab652の物理的特徴付け
上記した通り、可変領域をグラフトされた8つの異なる抗体は、選択されたラット抗体由来のCDR(配列番号1〜6、図1)を用いて生じさせた。それらの8つのグラフトからのAb652(gL1gH2)の選択は、上記に記載された有効性及び生物物理学的特徴に基づいていた。試験された、グラフトされた可変領域の全てについて生じさせたデータに基づいて、抗体652は以下の理由で選ばれた:
・hIL−13及びバリアントIL−13に対する最も高い親和性を維持していた
・最も高い融解温度、Tm(より高い安定性の指標)を有していた
・最も高いpH安定性(円偏光二色性による)、即ち、低pHで少ない乱れを示した
・振とう又は噴霧時に凝集なし
【0233】
対照的に、試験された他のグラフトのいくつかは、結合親和性の減少、不良なpH安定性、及び振とう及び/又は噴霧による凝集を示した。
【0234】
1.7.1 噴霧効果
Ab652が噴霧に適しているかどうかを決定するために、PARI eFLOW(登録商標)噴霧器を用いた。50mM酢酸ナトリウム/125mM塩化ナトリウム、pH5中の体積2.5mLのAb652溶液は、周囲温度(約21℃)で噴霧され、冷却された回収チューブに噴霧物を濃縮することによって回収された。その後の分析は、明らかな分解を示さなかった。また、この研究は、PBS、pH7中の溶液を用いて繰り返された。IgG4の陽性対照を含め、噴霧中に凝集されることが見出された。噴霧された試料の分析は、存在する凝集した材料を検出するという特定の目的で、サイズ排除、SDS−PAGE、動的光散乱及びリガンド結合によってなされた。それらの技術のいずれによっても変化はみられず、これは、Ab652が噴霧中の損傷に耐性であることを示した。
【0235】
1.7.2 Ab652の物理的特徴付けの概要
pI(等電点) 8(2測定の平均)
熱安定性 Tm84℃
抗体を凝集/振とう又は噴霧に供した場合にAb652の凝集は観察されなかった。
【0236】
2.喘息の非ヒト霊長類モデルにおけるAb652の効果
目的
本研究の目的は、喘息の非ヒト霊長類モデルにおけるAb652の有効性を評価することであった。主要評価項目には、気管支肺胞洗浄(BAL)細胞カウント、ケモカインレベル、並びに肺耐性によって評価される初期及び後期肺機能変化(RL)に対する効果が含まれた。
【0237】
方法
Ab652は、メッシュ噴霧器を用いて送達された。呼吸シミュレーション研究は、典型的な換気パラメータ及び研究施設で使用される管設定を用いて行われた。呼吸シミュレーション研究の結果は、噴霧器における40.4%の材料変化が気管内チューブのレベルで送達されたことを示した。
【0238】
研究動物は、過去に使用された肺機能値とBAL好酸球カウントに基づいて選択された。スクリーニングセッションでは、動物は、豚回虫(Ascaris suum)(A.suum)に対するそれらの正常な(未処置)応答を特徴付けるため、処置群への割り当て前に豚回虫抗原接種を受けた。このスクリーニングセッション後、動物は、スクリーニングセッションからのBAL細胞カウント及び肺機能データに基づいて、投薬群に割り当てられた。処置セッションでは、動物は、0.1、1、10、及び60mg/動物/日のいずれかの噴霧器の投薬レベルで、噴霧されたビヒクル(PBS)、又は噴霧されたAb652を受けた。投薬は、−2、−1、1、2、及び3日目に噴霧器を介して投与された。1及び2日目に、処置投与は、豚回虫接種の約30分前に行われた。
【0239】
接種手法は両セッションで同一であった。各動物は1及び2日目に接種され、肺機能値(RL)は、各抗原接種の少なくとも15分後、及び各アレルゲン接種の24時間後に記録された。BAL液は、肺炎症の程度を評価するために、全細胞数、形態、及び白血球百分率の評価用に1回目の接種前、及び2回目の接種の約24時間後に回収された。BAL上清の試料は、ケモカイン濃度の決定のために回収され、分析された。
【0240】
結果
噴霧されたAb652は、低mg/日投薬でBALエオタキシン−3の増加を有意に阻害した(図13)。噴霧されたAb652は、スクリーニングセッションと処置セッションとの間で測定されたBAL好酸球の増加を投薬量依存的な阻害を引き起こした(図14)。噴霧されたAb652は、処置セッションにおける回虫接種後の最大15分まで測定された2日目のピーク初期反応を有意に且つ投薬量依存的に阻害した(図15)。噴霧されたAb652は、2日目のアレルゲン接種後の24時間で測定された後期反応を有意に且つ投薬量依存的に阻害した(図16)。
【0241】
結論
カニクイザルにおける喘息の回虫モデルでの噴霧されたAb652により生じたデータは、IL−13誘導のアレルギー性肺炎症が、エアロゾルにおける気道に直接的に送達される中和抗IL−13Fab断片によって、薬理学的調節に感受性であることを示している。顕著には、Ab652は有力であり、低mg/日投薬量で有効性を示した。
【0242】
本発明は単なる例示として記載され、決して限定的にする意図はなく、詳細の変更が以下の特許請求の範囲内でなし得ることは当然理解されよう。本発明の各実施形態の好ましい特徴は、変更すべきところは変更した他の実施形態それぞれについても同様である。限定するものではないが、本明細書に引用した特許及び特許出願を含む全ての刊行物は、それぞれ個々の刊行物が、具体的に且つ個別に、完全に説明されたように本明細書中に参照により援用されることを示唆したかのように、本明細書中に参照により援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列を有するCDR、CDR−H2について配列番号2に示される配列を有するCDR、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、上記アンタゴニスト抗体。
【請求項2】
前記重鎖の可変ドメインが、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を含む、請求項1に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項3】
軽鎖を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列を有するCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む上記アンタゴニスト抗体。
【請求項4】
軽鎖をさらに含み、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列を有するCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項5】
前記軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2についての配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む、請求項3又は請求項4に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項6】
ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2の配列は配列番号2に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−3の配列は配列番号3に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する上記アンタゴニスト抗体。
【請求項7】
軽鎖をさらに含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2の配列は配列番号5に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−3の配列は配列番号6に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する、請求項6に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項8】
前記重鎖が配列番号31に示される配列を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
前記軽鎖が配列番号23に示される配列を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体分子が、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はその断片、例えば、Fab、修飾されたFab’、Fab’、F(ab’)2、Fv、VH、VL又はscFv断片からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項11】
配列番号31に示される配列を含む重鎖、及び配列番号23に示される配列を含む軽鎖を有する、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項12】
軽鎖の可変ドメインが請求項11に記載の抗体の軽鎖可変ドメインと少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含み、重鎖の可変ドメインが請求項11に記載の抗体の重鎖可変ドメインと少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項13】
配列番号35に示される配列を含む重鎖、及び配列番号27に示される配列を含む軽鎖を有する、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項14】
重鎖及び軽鎖が、請求項13に記載の抗体の対応する重鎖及び軽鎖と少なくとも80%の同一性又は類似性を有する、ヒトIL−13に結合する中和抗体。
【請求項15】
エフェクター分子又はレポーター分子が結合している、請求項1から14までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項16】
30pM又はそれより良好である、単離されたヒトIL−13に対する結合親和性を有するアンタゴニスト抗体。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体の重鎖(単数又は複数)及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列。
【請求項18】
請求項17に記載の1又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項19】
前記ベクターが配列番号36及び配列番号28に示される配列を含む、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項19に記載の1又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項20に記載の宿主細胞を培養すること、及び抗体を単離することを含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体を産生するための方法。
【請求項22】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の抗体を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項23】
他の有効成分をさらに含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防において使用するための、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体又は請求項22又は請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防するための薬剤の製造における、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項26】
IL−13によって媒介される病的障害に罹患しているか又はその危険性があるヒト対象を治療するための方法であって、有効量の抗IL−13抗体Fab又はFab’断片を吸入によって対象に投与することを含む上記方法。
【請求項27】
前記抗体Fab又はFab’断片が請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記病的障害が、喘息疾患、アトピー性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症に関連した状態、好酸球増加症、線維症及び過剰粘液産生、炎症状態、自己免疫状態、腫瘍又は癌、ウイルス感染及び防御性1型免疫応答の発現抑制からなる群から選択される、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
重鎖を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは、CDR−H1について配列番号1に示される配列を有するCDR、CDR−H2について配列番号2に示される配列を有するCDR、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、上記アンタゴニスト抗体。
【請求項2】
前記重鎖の可変ドメインが、CDR−H1について配列番号1に示される配列、CDR−H2について配列番号2に示される配列、及びCDR−H3について配列番号3に示される配列を含む、請求項1に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項3】
軽鎖を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列を有するCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む上記アンタゴニスト抗体。
【請求項4】
軽鎖をさらに含み、軽鎖の可変ドメインは、CDR−L1について配列番号4に示される配列を有するCDR、CDR−L2について配列番号5に示される配列を有するCDR、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を有するCDRの少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項5】
前記軽鎖の可変ドメインが、CDR−L1について配列番号4に示される配列、CDR−L2についての配列番号5に示される配列、及びCDR−L3について配列番号6に示される配列を含む、請求項3又は請求項4に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項6】
ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体であって、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRH−1の配列は配列番号1に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−2の配列は配列番号2に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRH−3の配列は配列番号3に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する上記アンタゴニスト抗体。
【請求項7】
軽鎖をさらに含み、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、CDRL−1の配列は配列番号4に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−2の配列は配列番号5に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有し、CDRL−3の配列は配列番号6に示される配列と少なくとも60%の同一性又は類似性を有する、請求項6に記載のアンタゴニスト抗体。
【請求項8】
前記重鎖が配列番号31に示される配列を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項9】
前記軽鎖が配列番号23に示される配列を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体分子が、全長の重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はその断片、例えば、Fab、修飾されたFab’、Fab’、F(ab’)2、Fv、VH、VL又はscFv断片からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項11】
配列番号31に示される配列を含む重鎖、及び配列番号23に示される配列を含む軽鎖を有する、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項12】
軽鎖の可変ドメインが請求項11に記載の抗体の軽鎖可変ドメインと少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含み、重鎖の可変ドメインが請求項11に記載の抗体の重鎖可変ドメインと少なくとも80%の同一性又は類似性を有する配列を含む、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項13】
配列番号35に示される配列を含む重鎖、及び配列番号27に示される配列を含む軽鎖を有する、ヒトIL−13に結合するアンタゴニスト抗体。
【請求項14】
重鎖及び軽鎖が、請求項13に記載の抗体の対応する重鎖及び軽鎖と少なくとも80%の同一性又は類似性を有する、ヒトIL−13に結合する中和抗体。
【請求項15】
エフェクター分子又はレポーター分子が結合している、請求項1から14までのいずれか一項に記載の中和抗体分子。
【請求項16】
30pM又はそれより良好である、単離されたヒトIL−13に対する結合親和性を有するアンタゴニスト抗体。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体の重鎖(単数又は複数)及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列。
【請求項18】
請求項17に記載の1又は複数のDNA配列を含むクローニングベクター又は発現ベクター。
【請求項19】
前記ベクターが配列番号36及び配列番号28に示される配列を含む、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
請求項19に記載の1又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
請求項20に記載の宿主細胞を培養すること、及び抗体を単離することを含む、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体を産生するための方法。
【請求項22】
請求項1から19までのいずれか一項に記載の抗体を、1又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項23】
他の有効成分をさらに含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防において使用するための、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体又は請求項22又は請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
IL−13によって媒介されるか又はIL−13レベルの増加と関連している病的障害の治療又は予防するための薬剤の製造における、請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項26】
IL−13によって媒介される病的障害に罹患しているか又はその危険性があるヒト対象を治療するための方法であって、有効量の抗IL−13抗体Fab又はFab’断片を吸入によって対象に投与することを含む上記方法。
【請求項27】
前記抗体Fab又はFab’断片が請求項1から16までのいずれか一項に記載の抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記病的障害が、喘息疾患、アトピー性疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症に関連した状態、好酸球増加症、線維症及び過剰粘液産生、炎症状態、自己免疫状態、腫瘍又は癌、ウイルス感染及び防御性1型免疫応答の発現抑制からなる群から選択される、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−520067(P2012−520067A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553509(P2011−553509)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000432
【国際公開番号】WO2010/103274
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000432
【国際公開番号】WO2010/103274
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】
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