説明

ヒトIL−4受容体に対する高親和性ヒト抗体

表面プラズモン共鳴による測定で200pM未満の親和定数(K0)でヒトインターロイキン4受容体α(hIL−4Rα)に結合する単離されたヒト抗体又はその抗体フラグメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インターロイキン4(IL−4、B細胞刺激因子又はBSF−1としてもまた公知である)は、表面免疫グロブリンに対して指向される低濃度の抗体に応じてB細胞の増殖を刺激する能力によって最初は特性決定された。IL−4は、T細胞、マスト細胞、顆粒球、巨核球及び赤血球の増殖刺激を含む広範囲の生物活性を有することが示されている。IL−4は、休止中のB細胞においてクラスII主要組織適合性複合体分子の発現を誘導しており、そして刺激されたB細胞によるIgE及びIgG1アイソタイプの分泌を増強している。
【背景技術】
【0002】
IL−4の生物活性は、IL−4に特異的な細胞表面受容体によって媒介されている。ヒトIL−4受容体α(hIL−4R)(配列番号1)は、例えば特許文献1、2及び3に記載されている。hIL−4Rに対する抗体は、特許文献4に記載されている。
【0003】
IL−4の生物活性は、IL−4に特異的な細胞表面受容体によって媒介されている。ヒトIL−4受容体α(hIL−4R)(配列番号1)は、例えば特許文献1、2及び3に記載されている。hIL−4Rに対する抗体は、特許文献4及び5に記載されている。
【0004】
ヒト治療に有用な抗体を産生する方法としては、キメラ抗体及びヒト化抗体の作製が挙げられる(例えば、特許文献6を参照のこと)。例えば、ヒト抗体を産生し得る非ヒトトランスジェニックマウスの作製方法を記載している特許文献7(Abgenix)及び特許文献8(Regeneron Pharmaceuticals)(これらの刊行物の両方は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる)を参照のこと。
【0005】
hIL−4Rに対する抗体の使用方法は、特許文献9、10及び11に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,599,905号
【特許文献2】米国特許第5,767,065号
【特許文献3】米国特許第5,840,869号
【特許文献4】米国特許第5,717,072号
【特許文献5】米国特許第7,186,809号
【特許文献6】米国特許第6,949,245号
【特許文献7】WO 94/02602
【特許文献8】米国特許第6,596,541号
【特許文献9】米国特許第5,714,146号
【特許文献10】米国特許第5,985,280号
【特許文献11】米国特許第6,716,587号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Reddy et al.(2000)J.Immunol.164:1925−1933
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の局面において、本発明は、ヒトインターロイキン4受容体(hIL−4R)に特異的に結合するヒト抗体、好ましくは組換えヒト抗体を提供する。このヒト抗体は、高親和性でhIL−4Rに結合すること、及びhIL−4活性を中和する能力によって特徴付けられるものである。具体的な実施態様において、ヒト抗体は、hIL−4Rに結合するhIL−13/hIL−13R1複合体を阻止し得るものであり、従ってhIL−13によるシグナル伝達を阻害するものである。この抗体は全長であり得るか(例えば、IgG1若しくはIgG4抗体)、又は抗原結合性部分のみ含み得るものであり(例えば、Fab、F(ab’)2若しくはscFvフラグメント)、そして機能性を生じさせるように(例えば、残留するエフェクター機能を排除するように)修飾され得るものである(非特許文献1)。
【0009】
一実施態様において、本発明は、表面プラズモン共鳴による測定でおよそ200pM以下のKDでhIL−4R(配列番号1)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントを提供する。より具体的な実施態様において、この抗体又はその抗原結合性部分は、約150pM未満又は約50pM未満又は約20pM未満のKDを示す。種々の実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、STAT6ルシフェラーゼバイオアッセイによる測定で約200pM以下のIC50でhIL−4活性を阻止する。より具体的な実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、ルシフェラーゼバイオアッセイによる測定で約150pM以下又は約100pM以下又は約50pM以下ですらあるIC50を示す。種々の実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、STAT6ルシフェラーゼバイオアッセイによる測定で約100pM以下のIC50でhIL−13活性を阻止する。より具体的な実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、約75pM以下又は約50pM以下又は約20pM以下ですらあるIC50を示す。
【0010】
第二の局面において、本発明の抗体は、配列番号3、19、35、51、67、83、99、115、131、147、163、179、195、211、227、243、259、275、291、307、323、339、355、371、387、391、395、399、403、407、411、415、419、423、427、431、435、439、443、447、451、455、459、463、467、471、475、479、483、487、491、495、499、503、507、511、515、519、523、527、531、535、539、543、547、551、555、559、563、567、571、575、579及び581からなる群より選択された重鎖可変領域(HCVR)、又はその実質的に類似の配列を含む。
【0011】
第三の局面において、本発明の抗体は、配列番号11、27、43、59、75、91、107、123、130、155、171、187、203、219、235、251、267、283、299、315、331、347、363、379、389、393、397、401、405、409、413、417、421、425、429、433、437、441、445、449、453、457、461、465、469、473、477、481、485、489、493、497、501、505、509、513、517、521、625、529、533、537、541、545、549、553、557、561、565、569、573及び577からなる群より選択された軽鎖可変領域(LCVR)、又はその実質的に類似の配列を含む。
【0012】
一実施態様において、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、配列番号3/11、19/27、35/43、51/59、67/75、83/91、99/107、115/123、131/139、147/155、163/171、179/187、195/203、211/219、227/235、243/251、259/267、275/283、291/299、307/315、323/331、339/347、355/363、371/379、387/389、391/393、395/397、399/401、403/405、407/409、411/413、415/417、419/421、423/425、427/429、431/433、435/437、439/441、443/445、447/449、451/453、455/457、459/461、463/465、467/469、471/473、475/477、479/481、483/485、487/489、491/493、495/497、499/501、503/505、507/509、511/513、515/517、519/521、523/525、527/529、531/533、535/537、539/541、543/545、547/549、551.553、555/557、559/561、563/565、567/569、571/573、575/577、579/59及び581/59からなる群より選択されたHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)を含む。好ましい実施態様において、この抗体又は抗体フラグメントは、配列番号51/59、259/267、275/283、291/299、579/59又は581/59から選択されたHCVR/LCVRを含む。
【0013】
第四の局面において、本発明は、HCVRをコードする核酸分子を提供し、この核酸分子は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、274、290、306、322、338、354、370、386、390、394、398、402、406、410、414、418、422、426、430、434、438、442、446、450、454、458、462、466、470、474、478、482、486、490、494、498、502、506、510、514、518、522、526、530、534、538、542、546、550、554、558、562、566、570、574、578及び580からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一の配列である。
【0014】
第五の局面において、本発明は、LCVRをコードする核酸分子を提供し、この核酸分子は、配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、129、154、170、186、202、218、234、250、266、282、298、314、330、346、362、378、388、392、396、400、404、408、412、416、420、424、428、432、436、440、444、448、452、456、460、464、468、472、476、480、484、488、492、496、500、504、508、512、516、520、524、528、532、536、540、544、548、552、556、560、564、568、572及び576からなる群より選択された配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一の配列である。
【0015】
一実施態様において、本発明の抗体は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/266、274/282、290/298、306/314、322/330、338/346、354/362、370/378、386/388、390/392、394/396、398/400、402/404、406/408、410/412、414/416、418/420、422/424、426/428、430/432、434/436、438/440、442/444、446/448、450/452、454/456、458/460、462/464、466/468、470/472、474/476、478/480、482/484、486/488、490/492、494/496、498/500、502/504、506/508、510/512、514/516、518/520、522/524、526/528、530/532、534/536、538/540、542/544、546/548、550/552、554/556、558/560、562/564、566/568、570/572、574/576、578/59及び580/59からなる群より選択されたヌクレオチド配列対によってコードされたHCVR及びLCVRを含む。好ましい実施態様において、この抗体又は抗体フラグメントは、配列番号50/58、258/266、274/282、290/298、578/58又は580/58から選択されたヌクレオチド配列によってコードされたHCVR/LCVRを含む。
【0016】
第六の局面において、本発明は、hIL−4Rに特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントを特徴とし、これは、3つの重鎖相補性決定領域(CDR)及び3つの軽鎖相補性決定領域を含み、
重鎖CDR1は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号582)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gly、X2=Tyr又はPhe、X3=Thr又はI、X4=Phe、X5=Asn又はArg、X6=Ser、X7=Tyr及びX8=Glyであり、
重鎖CDR2は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号583)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ile、X2=Ser又はArg、X3=Thr又はTyr、X4=Tyr又はAsp、X5=Asn又はGly、X6=Gly又はSer、X7=Lys又はAsn及びX8=Thrであり、
重鎖CDR3は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21(配列番号584)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ala又はVal、X2=Arg又はLys、X3=Asp又はGlu、X4=Gly又はGlu、X5=Ala又はArg、X6=Arg又はSer、X7=Ile又はGly、X8=Val又はSer、X9=Val又はTrp、X10=Ala又はPhe、X11=Gly又はAsp、X12=Thr又はPro、X13=Thr又は非存在、X14=Pro又は非存在、X15=Tyr又は非存在、X16=Tyr又は非存在、X17=Tyr又は非存在、X18=Gly又は非存在、X19=Met又は非存在、X20=Asp又は非存在及びX21=Val又は非存在であり、
軽鎖CDR1は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6(配列番号585)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln、X2=Asp又はAla、X3=Ile、X4=Ser又はAsn、X5=Asn又はIle及びX6=Trp又はPheであり、
軽鎖CDR2は、式X1−X2−X3(配列番号586)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Ala又はVal、X2=Ala又はThr及びX3=Serであり、そして
軽鎖CDR3は、式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号587)のアミノ酸配列を含み、式中X1=Gln、X2=Gln、X3=Ala又はTyr、X4=Asn、X5=Ser、X6=Phe又はHis、X7=Pro、X8=Ile又はTrp及びX9=Thrであることを特徴としている。
【0017】
第七の局面において、本発明は、重鎖CDR3及び軽鎖CDR3を含む抗体又は抗原結合性フラグメントを提供し、この重鎖CDR3ドメインは、配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、281、297、313、329、345、361及び377からなる群より選択され、そしてこの軽鎖CDR3ドメインは、配列番号17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、289、305、321、337、353、369及び385からなる群より選択される。好ましい実施態様において、この重鎖CDR3及び軽鎖CDR3は、配列番号57及び65、265及び273、281及び289、並びに297及び305の配列対から選択される。
【0018】
さらなる実施態様において、本発明は、配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357及び373からなる群より選択された重鎖CDR1ドメイン又はその実質的に類似の配列;配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、311、327、343、359及び375からなる群より選択された重鎖CDR2ドメイン又はその実質的に類似の配列;配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、281、297、313、329、345、361及び377からなる群より選択された重鎖CDR3ドメイン又はその実質的に類似の配列;配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365及び381からなる群より選択された軽鎖CDR1ドメイン又はその実質的に類似の配列;配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、319、335、351、367及び383からなる群より選択された軽鎖CDR2ドメイン又はその実質的に類似の配列;並びに配列番号17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、289、305、321、337、353、369及び385からなる群より選択された軽鎖CDR3ドメイン又はその実質的に類似の配列を含むヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号53、55、57の重鎖CDR及び配列番号61、63、65の軽鎖CDR;配列番号261、263、265の重鎖CDR及び配列番号269、271、273の軽鎖CDR;配列番号277、279、281の重鎖CDR及び配列番号285、287、289の軽鎖CDR;並びに配列番号293、295、297の重鎖CDR及び配列番号301、303、305の軽鎖CDRを含む。
【0019】
第八の局面において、本発明は、HCVR由来の3つのCDR及びLCVR由来の3つのCDRを含む抗体又は抗原結合性フラグメントを提供し、HCVR/LCVRは、51/59、579/59、581/59、259/267、275/283及び291/299からなる群より選択される。
【0020】
一実施態様において、本発明は、重鎖CDR3及び軽鎖CDR3を含むヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とし、この重鎖CDR3は、配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360及び376からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされ、そして軽鎖CDR3は、配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368及び384からなる群より選択されたヌクレオチド配列によってコードされる。
【0021】
さらなる実施態様において、本発明は、配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、276、292、308、324、340、356及び372からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一の配列によってコードされた重鎖CDR1ドメイン;配列番号6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、278、294、310、326、342、358及び374からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に同一の配列によってコードされた重鎖CDR2ドメイン;配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、280、296、312、328、344、360及び376からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によってコードされた重鎖CDR3ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252、268、284、300、316、332、348、364及び380からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によってコードされた軽鎖CDR1ドメイン;配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、270、286、302、318、334、350、366及び382からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によってコードされた軽鎖CDR2ドメイン;並びに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256、272、288、304、320、336、352、368及び384からなる群より選択されたヌクレオチド配列又は少なくとも95%の相同性を有するその実質的に類似の配列によってコードされた軽鎖CDR3ドメインを含むヒト抗体又は抗体フラグメントを特徴とする。好ましい実施態様において、この抗体又は抗原結合性フラグメントは、配列番号52、54、56のヌクレオチド配列によってコードされた重鎖CDR及び配列番号60、62、64のヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖CDR;配列番号260、262、264のヌクレオチド配列によってコードされた重鎖CDR及び配列番号268、270、272のヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖CDR;配列番号276、278、280のヌクレオチド配列によってコードされた重鎖CDR及び配列番号284、286、288のヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖CDR;並びに配列番号292、294、296のヌクレオチド配列によってコードされた重鎖CDR及び配列番号300、302、304のヌクレオチド配列によってコードされた軽鎖CDRを含む。
【0022】
本発明は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗hIL−4R抗体を包含する。いくつかの適用において、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、すなわち例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために、オリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失した抗体が有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)。他の適用において、補体依存性細胞傷害(CDC)を修飾するために、ガラクトシル化の修飾が行われ得る。
【0023】
第九の局面において、本発明は、本発明の宿主細胞を培養することによって得られる本発明の抗体又は抗原結合性フラグメントの作製方法のようにして、本発明の核酸分子を保有する組換え発現ベクター及びこのようなベクターが包含されている宿主細胞を提供する。この宿主細胞は、原核生物細胞かもしれないし真核生物細胞かもしれず、好ましくはこの宿主細胞は、大腸菌(E.coli)細胞又は哺乳動物細胞、例えばCHO細胞である。
【0024】
第十の局面において、本発明は、hIL−4Rに特異的に結合する組換えヒト抗体及び受容可能な担体を含む組成物を特徴とするものである。
【0025】
第十一の局面において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合性部分を用いたhIL−4活性の阻害方法を特徴としている。具体的な実施態様において、本発明の抗体はまた、hIL−4Rに結合するhIL−13/hIL−13R1複合体を阻止する。一実施態様において、この方法は、hIL−4Rを本発明の抗体又はその抗原結合性部分と接触させる工程を含み、その結果hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性が阻害される。別の実施態様において、この方法は、hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性の阻害によって寛解される障害を患うヒト被験体に、本発明の抗体又はその抗原結合性部分を投与する工程を含む。処置される障害は、hIL−4又はhIL−4/hIL−13活性の除去、阻害又は減少によって改善、寛解、阻害又は防止されるすべての疾患又は状態である。
【0026】
本発明によってさらに包含されるものは、ヒトのIL−4媒介性疾患又は障害を減弱又は阻害するために使用する薬剤の製造において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントを使用することである。
【0027】
本発明の抗体又は抗体フラグメントによって処置されるIL−4媒介性又は関連障害としては、例えば、関節炎(化膿性関節炎を含む)、ヘルペス状、慢性突発性蕁麻疹、強皮症、過形成性瘢痕、ホウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、例えば、軽度、中程度又は重篤な喘息、炎症性障害、例えば、炎症性腸疾患、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ−ストラウス症候群、グレーヴズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核及びネフローゼが挙げられる。
【0028】
他の目的及び利点は、続く詳細な説明の概説から明白になる。
【0029】
(図1A〜C)OCTETTMベースの逐次結合アッセイを用いて作製された抗体結合プロフィール評価に係る図である。図1(A)は、結合した抗原に曝露された第一の抗体がコントロール抗体であるときに得られた結果を示す棒グラフである。図1(B)は、結合した抗原に曝露された第一の抗体がVAB16F3−1であるときのものである。図1(C)は、結合した抗原に曝露された第一の抗体がVAK5H4−4であるときのものである。第二の抗体:1=コントロール;2=VX4E7−9;3=VX3F7−6;4=VAB16G−1;5=VAB16F3−1;6=VAB15C8−17;7=VAB11G8−1;8=VAB10C1−5;9=VAB10G8−19;10=VAB8G10−1;11=VAB7B9−3;12=VAB6C10−14;13=VAB5C5−11;14=VAB3B4−10;15=VAB4D5−3;16=VAB1H1−2;17=VAK5H4−4;18=VAK7G8−5;19=VAK8G11−13;20=VAK9C6−11;21=VAK10G6−7;22=VAK11D4−1;23=VAK12B11−9;及び24=VAK10G12−5。白棒は、第一の抗体の結合レベルを示し、黒棒は、第二の抗体によるさらなる結合を示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】結合した抗原に曝露された第一の抗体がコントロール抗体であるときに得られた抗体結合プロフィール評価に係る図である。
【図1B】結合した抗原に曝露された第一の抗体がVAB16F3−1であるときに得られた抗体結合プロフィール評価に係る図である。
【図1C】結合した抗原に曝露される第一の抗体がVAK5H4−4であるときに得られた抗体結合プロフィール評価に係る図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の方法を記載する前に、記載される特定の方法及び実験条件は変化し得るものであるので、本発明は、このような方法及び条件に限定されないことを理解すべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様のみを記載する目的のためだけにあり、限定されることは意図されないこともまた理解すべきである。
【0032】
別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するものである。本明細書に記載される方法及び材料と類似又は等価のすべてのものが本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料をここに記載する。
【0033】
定義
本明細書で使用される用語「ヒトIL4R」(hIL−4R)は、インターロイキン4(IL−4)に特異的に結合するヒトサイトカイン受容体、IL−4Rα(配列番号1)をいうことが意図される。用語「ヒトインターロイキン13」(hIL−13)は、IL−13受容体に特異的に結合するサイトカインをいい、そして「hIL−13/hIL−13R1複合体」は、hIL−13R1複合体に結合するhIL−13によって形成される複合体をいい、この複合体は、hIL−4受容体に結合して、生物活性を開始させる。
【0034】
本明細書で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子をいうことが意図される。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと短縮)及び重鎖定常領域を含む。この重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと短縮)及び軽鎖定常領域を含む。この軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH領域及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と名付けられた超可変性領域にさらに細分され得るものであり、これはフレームワーク領域(FR)と名付けられたより保存された領域に散在している。各々のVH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列した3つのCDR及び4つのFRで構成されている。
【0035】
本明細書で使用される用語、抗体の「抗原結合性部分」(又は単に「抗体部分」若しくは「抗体フラグメント」)は、抗原に特異的に結合する能力を保持する1つ又はそれ以上の抗体のフラグメント(例えば、hIL−4R)をいう。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体のフラグメントによって遂行され得ることが示されている。用語、抗体の「抗原結合性部分」に包含される結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CL1及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのF(ab)’フラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 241:544−546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるにもかかわらず、単一の隣接した鎖として作製し得る合成リンカーによる組換え方法を用いて連結され得るものであり、これにおいてVL及びVH領域が一対となって一価の分子を形成する(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照のこと)。このような一本鎖抗体はまた、用語、抗体の「抗原結合性部分」に包含されることが意図される。一本鎖抗体の他の形態、例えば二重特異性抗体(Diabody)がまた包含される(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad Sci.USA 90:6444−6448を参照のこと)。
【0036】
本明細書で使用される「中和」抗体又は「阻止」抗体は、hIL−4Rとの結合が、hIL−4及び/又はhIL−13の生物活性の阻害を生じさせる抗体をいうことが意図される。このhIL−4及び/又はIL−13の生物活性の阻害は、当該分野で公知のhIL−4及び/又はhIL−13生物活性の1つ又はそれ以上の指標、例えばhIL−4及び/又はIL−13誘導性の細胞活性化並びにhIL−4RとのhIL−4結合を測定することによって評価され得る(以下の実施例を参照のこと)。
【0037】
「CDR」すなわち相補性決定領域は、「フレームワーク領域」(FR)と名付けられたより保存された領域内に散在した超可変性領域である。本発明の抗hIL−4R抗体又はフラグメントの異なる実施態様において、FRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であるかもしれないし、自然に又は人工的に修飾されるかもしれない。
【0038】
本明細書で使用される用語「表面プラズモン共鳴」は、例えばBIAcoreTMシステム(Pharmacia Biosensor AB)を用いてバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより実時間相互作用解析を可能にする光学現象をいう。
【0039】
用語「エピトープ」は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域の特定の抗原結合性部位と相互作用する抗原決定基である。1つの抗原は、1を超えるエピトープを有し得る。エピトープは、立体構造的又は直線的のいずれかであり得る。立体構造的なエピトープは、直線的なポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並んだアミノ酸によって産生される。直線的なエピトープは、ポリペプチド鎖の隣接するアミノ酸残基によって産生される。ある特定の状況では、エピトープは、抗原上のサッカリド部分、ホスホリル基又はスルホニル(sufonyl)基を含み得る。
【0040】
核酸又はそのフラグメントをいうときの用語「実質的な同一性」又は「実質的に同一な」は、妥当なヌクレオチド挿入又は欠失を別の核酸(又はその相補鎖)と最適に整列させるとき、任意の周知の配列同一性アルゴリズム、例えば以下で議論されるFASTA、BLAST又はGapによって測定すると、少なくとも約95%そしてより好ましくは少なくとも約96%、97%、98%又は99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列が同一であることを示している。
【0041】
ポリペプチドに適用する用語「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」は、例えば、デフォルトギャップ量(gap weight)を用いたGAPプログラム又はBESTFITプログラムによって最適に整列されるとき、2つのペプチド配列が、少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有することを意味している。好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的なアミノ酸置換だけ異なるものである。「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置換されるものである。一般に、保存的なアミノ酸置換は、タンパク質の機能的性質を実質的に変化させない。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、パーセント配列同一性又は類似性の程度は、置換の保存的性質を補正して上方に調整され得る。この調整を行う手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307−331を参照のこと。類似の化学的性質を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;(2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン及びヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパルテート及びグルタメート、並びに(7)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存的なアミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタメート−アスパルテート及びアスパラギン−グルタミンである。あるいは保存的置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443 45に開示されるPAM250対数尤度行列の正値を有するすべての変化である。「中程度に保存的な」置換は、PAM250対数尤度行列の非負値を有するすべての変化である。
【0042】
ポリペプチドの配列類似性(これはまた配列同一性ともいわれる)は、代表的には、配列分析ソフトウェアを用いて測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、種々の置換、欠失及び他の修飾(保存的なアミノ酸置換を含む)に割り当てられた類似性の尺度を用いて、類似の配列を整合させる。例えばGCGソフトウェアは、デフォルトパラメータを使用して、密接に関連したポリペプチド間、例えば異なる生物種由来の相同ポリペプチド、又は野生型タンパク質とその突然変異タンパク質間の配列相同性又は配列同一性を決定し得るプログラム、例えばGap及びBestfitを含む。例えば、GCG Version 6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、デフォルトパラメータ又は推奨パラメータを用いたFASTA(GCG Version 6.1のプログラム)を使用して比較され得る。FASTA(例えばFASTA2及びFASTA3)は、照会配列と検索配列との間の最も重複した領域の整列化及びパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)前出)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較するときには、別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを用いたコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−402を参照のこと。
【0043】
ヒト抗体の調製
ヒト抗体の作製方法としては、例えば、VelocimmuneTM(Regeneron Pharmaceuticals)、XenoMouseTMテクノロジー(Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13−21;Abgenix)、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチ及びファージディスプレイ(そして例えば、US 5,545,807、US 6,787,637を参照のこと)が挙げられる。VelocImmuneTMテクノロジー(US 6,596,541)は、選択された抗原に対して高い特異性の完全なヒト抗体の作製方法を包含している。
【0044】
げっ歯類は、当該分野で公知の任意の方法(例えば、Harlow及びLane(1988)前出;Malik及びLillehoj(1994)Antibody techniques,Academic Press,CAを参照のこと)によって免疫され得る。好ましい実施態様において、hIL−4R抗原は、マウスに直接投与され、これは、免疫応答を刺激するためのアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント、MPL+TDMアジュバント系(Sigma)又はRIBI(ムラミルジペプチド)(O’Hagan(2000)Vaccine Adjuvant,Human Press,NJを参照のこと)とともに、ヒトIg重鎖可変領域及びκ軽鎖可変領域(VelocImmuneTM、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.;US 6,596,541)の両方をコードするDNA座を含んでいる。アジュバントは、局所デポーに抗原を隔絶することによってポリペプチドの急速な分散を防止し得、そして宿主の免疫応答を刺激し得る因子を含み得る。VelocImmuneTMテクノロジーは、内因性のマウス定常領域座に作動可能に連結されたヒト重鎖及び軽鎖の可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの作製に関与し、その結果このマウスは、抗原刺激に応じてヒト可変領域及びマウス定常領域を含む抗体を産生する。この抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重鎖及び軽鎖の定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次いでこのDNAは、完全なヒト抗体を発現し得る細胞内で発現される。具体的な実施態様において、この細胞はCHO細胞である。
【0045】
抗体は、補体の固定(補体依存性細胞傷害)(CDC)及び抗体依存性の細胞媒介性細胞傷害(ADCC)への関与を通じた細胞の死滅よりはむしろ、リガンド−受容体相互作用の阻止又は受容体成分の相互作用の阻害において治療的に有用であり得る。抗体の定常領域は、補体を固定し、そして細胞依存性細胞傷害を媒介する抗体の能力に重要である。従って、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞傷害性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択され得る。
【0046】
ヒト免疫グロブリンは、ヒンジ異成分と結合する2つの形態で存在し得る。第一の形態において、免疫グロブリン分子は、約150〜160kDaの安定な4つの鎖の構造を含み、これにおいて二量体は、鎖間重鎖ジスルフィド結合によって互いに保持されている。第二の形態において、この二量体は、鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、そして共有結合した軽鎖及び重鎖からなる約75〜80kDaの分子が形成される(半抗体(half−antibody))。これらの形態は、アフィニティー精製の後であっても分離することは極めて困難である。種々のインタクトなIgGアイソタイプにおいて第二の形態が出現する頻度は、抗体のヒンジ領域のアイソタイプに関連した構造差に起因しているが、これに限定されない。実際、ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを用いて典型的に観察されるレベルまで第二の形態の出現を有意に減少させ得るのである(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本発明は、ヒンジ、CH2又はCH3領域に1つ又はそれ以上の突然変異を有する抗体を包含しており、これは、例えば産生の際に所望の抗体形態の収量を改善することが望ましいものであり得る。
【0047】
本発明の抗体は、好ましくはVelocImmuneTMテクノロジーを用いて調製される。内因性の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域が、対応するヒト可変領域で置換されるトランスジェニックマウスは、目的の抗原で誘発され、そして抗体を発現するマウスからリンパ細胞(例えばB細胞)が回収される。このリンパ細胞は、骨髄腫細胞系と融合されて不死のハイブリドーマ細胞系が調製され得るのであり、そしてこのようなハイブリドーマ細胞系がスクリーニング及び選択され、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され得、そして望ましいアイソタイプの重鎖及び軽鎖の定常領域に連結され得る。このような抗体タンパク質は、細胞内、例えばCHO細胞内で産生され得る。あるいは、抗原特異的なキメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変領域をコードするDNAは、抗原特異的なリンパ球から直接単離され得る。
【0048】
一実施態様において、このトランスジェニックマウスは、18までの機能的なヒト可変性重鎖遺伝子及び12までの機能的なヒト可変性κ軽鎖遺伝子を含む。別の実施態様において、このトランスジェニックマウスは、39までのヒト可変性重鎖遺伝子及び30までのヒト可変性κ軽鎖遺伝子を含む。なお別の実施態様において、このトランスジェニックマウスは、80までのヒト可変性重鎖遺伝子及び40までのヒト可変性κ軽鎖遺伝子を含む。
【0049】
一般に本発明の抗体は、極めて高い親和性を有しており、固相に固定化されるか又は溶液中で測定されるかのいずれかの抗原との結合によって測定されるとき、代表的には約10-9から約10-12MのKDを有する。
【0050】
最初に、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する高親和性キメラ抗体が単離される。以下に記載されるように、この抗体は特徴付けられ、そして、望ましい特性(hIL−4Rとの結合親和性、hIL−4RへのhIL−4結合を阻止する能力及び/又はヒトタンパク質に対する選択性を含む)に対して選択される。マウスの定常領域は、所望のヒト定常領域と置換されて、本発明の完全なヒト抗体、例えば、野生型又は修飾されたIgG4若しくはIgG1(例えば、配列番号588、589、590)を作製する。選択された定常領域は、特定の用途に従って変化し得るが、高親和性の抗原結合及び標的特異性の特性は、可変領域に存在するものである。
【0051】
エピトープマッピング及び関連テクノロジー
特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、常用の交差阻止(cross−blocking)アッセイ、例えばAntibodies:A Laboratory Manual 1988 Cold Spring Harbor Laboratory,Harlow及びLane編に記載されるものが行われ得る。他の方法としては、アラニン走査突然変異体、ペプチドブロット(Reineke(2004)Methods Mol Biol 248:443−63)又はペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ除去、エピトープ抽出及び抗原の化学修飾のような方法が利用され得る(Tomer(2000)Protein Science:9:487−496)。
【0052】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としてもまた公知の修飾支援プロファイリング(MAP)は、化学的又は酵素的に修飾された抗原表面に対する各々の抗体の結合プロフィールの類似性に従って、同じ抗原に対して指向される多数のモノクローナル抗体(mAb)を分類する方法である(米国特許出願公開番号2004/0101920)。各々のカテゴリーは、別のカテゴリーによって表されるエピトープと明確に異なるか又は部分的に重複するかのいずれかの独特のエピトープを反映し得る。このテクノロジーにより、遺伝的に同一な抗体の迅速なフィルタリングが可能になり、その結果特徴付けは、遺伝的に異なる抗体に焦点を合わせられ得る。ハイブリドーマスクリーニングに適用されるとき、MAPは、所望の特性を有するまれなハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPを用いて、本発明のhIL−4R抗体を異なるエピトープに結合する抗体群に選別し得る。
【0053】
固定化された抗体の構造を変化させるのに有用な薬剤は、酵素、例えばタンパク質分解酵素及び化学薬品である。抗原タンパク質は、バイオセンサーチップ表面上又はポリスチレンビーズ上のいずれかに固定化され得る。後者は、例えば多重LuminexTM検出アッセイ(Luminex Corp.,TX)のようなアッセイを用いてプロセシングされ得る。LuminexTMの能力は、100までの異なるタイプのビーズに対して多重分析を処理するものであるので、LuminexTMは、種々の修飾を有するほとんど無制限の抗原表面を提供することになり、抗体エピトーププロファイリングの点でバイオセンサーアッセイを超えた改善された解決をもたらしている。
【0054】
治療のための投与及び処方
本発明に従った治療実体の投与は、好適な担体、賦形剤及び移送、送達、許容性などを改善するために製剤に組み込まれる他の薬剤を用いて達成され得る。多数の適切な製剤は、あらゆる薬剤師に公知の処方集:Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2003,20th ed,Lippincott Williams & Wilkins)に見出され得る。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ろう、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(例えばLIPOFECTINTM)、DNA結合体、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル並びにカーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。上述の混合物のすべてが、本発明に従った処置及び治療に適切であり得るが、但し製剤中の活性成分は、製剤によって不活性化されなく、そしてこの製剤は、投与経路と生理学的に適合性であり、かつ許容される。薬剤師に周知の賦形剤及び担体に関連したさらなる情報については、Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238−311及びその中の引用もまた参照のこと。
【0055】
本発明の治療分子は、適応症に適切な様式、例えば、非経口的、局所的又は吸入によって患者に投与され得る。注射の場合、例えば、関節内経路、静脈内経路、筋肉内経路、病巣内経路、腹腔内経路又は皮下経路を介して、ボーラス注射又は持続注入によって拮抗薬が投与され得る。移植片からの経皮送達及び徐放として、疾患又は損傷部位への局所投与が意図される。吸入による送達としては、例えば、経鼻又は経口吸入、噴霧器の使用、エーロゾル形態での拮抗薬の吸入などが挙げられる。他の選択肢としては、点眼剤;丸剤、シロップ、ロゼンジ又はチューインガムを含む経口剤;並びに局所用製剤、例えばローション、ゲル、スプレー及び軟膏が挙げられる。
【0056】
特定の投薬量及び投与の頻度は、投与経路、処置されるべき疾患の性質及び重症度、状態が急性であるか慢性であるか、そして患者のサイズ及び全身症状のような因子に従って変化し得る。適切な投薬量は、関連分野で公知の手順、例えば用量増加研究を伴い得る臨床試験によって決定され得る。本発明の治療分子は、一度又は反復性であり得る。特定の実施態様において、抗体又は抗体フラグメントは、少なくとも1カ月以上の期間にわたって、例えば1カ月、2カ月若しくは3カ月又は無期限の期間でさえ投与される。慢性状態の処置に関しては、長期間の処置が一般に最も有効である。しかし急性状態の処置に関しては、より短い期間、例えば1〜6週間の投与で十分であり得る。一般に、患者が、選択された指標に関するベースラインを超える医学的に関連した改善程度を示すまで、治療薬が投与される。本発明の治療分子を用いた処置の間及び/又は後に、IL−4のレベルがモニターされ得る。IL−4血清レベルの測定方法は、当該分野で公知であり、例えばELISAによるものなどがある。
【0057】
治療的使用及び併用療法
本発明の抗体及び抗体フラグメントは、IL−4活性を減少させることによって改善、阻害又は寛解される疾患及び障害の処置に有用である。これらの障害としては、IL−4の異常若しくは過剰な発現、又はIL−4産生に対する異常な宿主応答によって特徴付けられるものが挙げられる。抗体又は抗体フラグメントによって処置されるIL−4関連障害としては、例えば、関節炎(化膿性関節炎を含む)、ヘルペス状、慢性突発性蕁麻疹、強皮症、過形成性瘢痕、ホウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、例えば喘息(軽度、中程度又は重篤)、炎症性障害、例えば、炎症性腸疾患、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ−ストラウス症候群、グレーヴズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、線維症及びネフローゼが挙げられる(U.S.7,186,809を参照のこと)。
【0058】
本発明は、抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントが第二の治療剤と併用して投与される併用療法を包含する。同時投与及び併用療法は、同時に生じる投与に限定されないが、抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントが、少なくとも1つの他の治療剤を患者に投与することを伴う処置過程の間に少なくとも1回投与される処置レジメンを含む。第二の治療剤は、吸入又は他の適切な手段によって送達され得る別のIL−4拮抗薬、例えば別の抗体/抗体フラグメント、又は可溶性のサイトカイン受容体、IgE拮抗薬、抗喘息薬物(コルチコステロイド、非ステロイド薬、β作用薬、ロイコトリエン拮抗薬、キサンチン、フルチカゾン、サルメテロール、アルブテロール)であり得る。具体的な実施態様において、本発明の抗IL−4R抗体又は抗体フラグメントは、IL−1拮抗薬、例えばリロナセプト(rilonacept)又はIL−13拮抗薬とともに投与され得る。第二の薬剤は、アレルギー性炎症性疾患、例えば喘息及びアレルギーのような障害を処置するために、1つ又はそれ以上のロイコトリエン受容体拮抗薬を含み得る。ロイコトリエン受容体拮抗薬の例としては、モンテルカスト、プランルカスト及びザフィルルカストが挙げられるがこれらに限定されない。第二の薬剤としては、サイトカイン阻害剤、例えば1つ又はそれ以上のTNF(エタネルセプト、ENBRELTM)、IL−9、IL−5又はIL−17拮抗薬が挙げられ得る。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物をどのように作製し、そしてどのように使用するかについての完全な開示及び記述を当業者に与えるために述べられるものであり、本発明者らが本発明であるとみなしている範囲を限定することは意図されない。使用される数(例えば、量、温度など)に関する正確さを確実にする試みがなされているが、いくらかの実験誤差及び逸脱は把握されるべきである。別段の指示がない限り、部は質量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0060】
実施例1.ヒトIL−4受容体に対するヒト抗体の作製
ヒトIg重鎖可変領域及びκ軽鎖可変領域の両方をコードするDNA座を含むマウス(VelocImmuneTM、Regeneron Pharmaceuticals,Inc.;米国特許第6,596,541号)を、ヒトIL−4R(hIL−4R、配列番号1)で免疫した。アジュバント中の精製抗原を直接注射によるか、又はhIL−4RのDNA配列をDNAプラスミドに提供することによって間接的にhIL−4Rが投与され、このDNAプラスミドは、hIL−4R遺伝子を含み、そしてインビボで抗原ポリペプチドを産生するための宿主の細胞性タンパク質発現機構を用いてhIL−4Rを発現する。最適な免疫応答を得るために、引き続いて3〜4週間毎に動物をブーストし、そして抗−抗原応答の進行を評価するために、各ブーストの後に10回血液を抜き取った。
【0061】
マウスが最大の免疫応答を達成したときに、抗体発現性B細胞を収集し、そしてマウス骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを形成させた。特異性、抗原結合親和性及びhIL−4RへのhIL−4結合を阻止する効力に関して、ハイブリドーマ又はトランスフェクト細胞の馴化培地をスクリーニングすることによって、機能的に望ましいモノクローナル抗体を選択した(以下に記載)。
【0062】
望ましい抗原結合親和性、効力及び/又はhIL−4RへのhIL−4結合を阻止する能力を示す選択された抗体としては、(HCVR/LCVR):VX 4E7−9(配列番号3/11;387/389;391/393);VX 3F7−6(配列番号19/27;395/397;399/401);VAB 16G1−1(配列番号35/43;403/405;407/409);VAB 16F3−1(配列番号51/59,411/413,415/417,579/59及び581/59);VAB 15C8−17(配列番号67/75,419/421,423/425);VAB 13A1−6(配列番号83/91,427/429,431/433);VAB 11G8−1(配列番号99/107,435/437,439/441);VAB 10G8−19(配列番号115/123,443/445,447/449);VAB 10C1−5(配列番号131/139,451/453,455/457);VAB 8G10−1(配列番号147/155,459/461,463/465);VAB 7B9−3(配列番号163/171,467/469,471/473);VAB 6C10−14(配列番号179/187,475/477,479/481);VAB 5C5−11(配列番号195/203,483/485,487/489);VAB 3B4−10(配列番号211/219,491/493,495/497);VAB 4D5−3(配列番号227/235,499/501,503/505);VAB 1H1−2(配列番号243/251,507/509,511/513);VAK5H4−4(配列番号259/267,515/517,519/521);VAK7G8−5(配列番号275/283,523/525,527/529);VAK8G11−13(配列番号291/299,531/533,535/537);VAK9C6−11(配列番号307/315,539/541,543/545);VAK10G6−7(配列番号323/331,547/549,551/553);VAK11D4−1(配列番号339/347,555/557,559/561);VAK12B11−9(配列番号355/363,563/565,567/569);並びにVAK10G12−5(配列番号371/379,571/573,575/577)が挙げられる。
【0063】
実施例2.抗原結合親和性の測定
hIL−4Rに関して選択された抗体の結合親和性(KD)を、実時間バイオセンサー表面プラズモン共鳴アッセイ(BIAcoreTM2000)を用いて測定した。手短に言えば、捕獲された抗体表面を形成するためにヤギ抗マウス(GAM)IgGとBIAcoreTMチップとの直接的な化学結合を通じて作成されたGAM IgGポリクローナル抗体表面上で抗体を捕獲した。種々の濃度(12.5nM〜0.625nMの範囲)の単量体hIL−4R(R&D Systems)又は二量体hIL−4R−hFcを、捕獲された抗体表面上に注入した。抗体との抗原結合及び結合した複合体の解離を、実時間でモニターした。平衡解離定数(KD)及び解離速度定数を、BIA評価ソフトウェアを用いて動態解析を行うことにより確認した。BIA評価ソフトウェアをまた用いて、抗原/抗体複合体解離の半減期(T1/2)を計算した。結果を表1に示した。コントロール:完全なヒト抗IL−4R抗体(米国特許第7,186,809号;配列番号10及び12)。選択された抗体は、1nMより低いKDで二量体受容体に結合し得る高親和性抗体を含むことが動態解析の結果から明らかになった。マウス又はサル(Macaca fascicularis)IL−4Rのいずれかに対する抗hIL−4R抗体の結合親和性をまた試験した。選択された抗体は、(1)マウスIL−4Rと交差反応せず;そして(2)サルIL−4Rに結合できないか、又は極めて低い親和性でサルIL−4Rに結合するかのいずれかであった。
【0064】
【表1】

【0065】
ELISAベースの溶液競合アッセイを用いて、抗体−抗原結合親和性をまた評価した。手短に言えば、抗体(1又は3.3ng/mlの精製タンパク質)を、0〜10μg/mlの範囲の段階希釈の抗原タンパク質(単量体又は二量体)と前もって混合した。次いで、抗体及び抗原混合物の溶液を、室温で2〜4時間インキュベートして、結合の平衡状態に到達させた。次いで、定量サンドイッチELISAを用いて、混合物中の遊離抗体を測定した。手短に言えば、96ウェルのMaxisorpTMプレート(VWR,West
Chester,PA)を、4℃で一晩PBS中の2μg/ml hIL−4R−hFcタンパク質でコーティングし、その後BSAで非特異的結合を阻止した。次いで、この抗体−抗原混合物溶液を、コーティングされたMaxisorbTMプレートに移し、その後1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、そしてプレートに結合した抗体を、コントロール抗体に対するHRP−結合体化ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体試薬(Jackson ImmunoResearch)又はHRP−結合体化ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体試薬(Jackson ImmunoResearch)で検出し、そして発色基質、例えばBD OptEIATM(BD Biosciences Pharmingen, San Diego,CA)を用いて発色させた。1Mリン酸又は硫酸で反応を停止させた後、450nmでの吸光度を記録し、そしてGraphPadTM Prismソフトウェアを用いてデータを分析した。溶液中の抗原濃度に対するシグナルの依存性を、4つのパラメーターフィット分析で分析し、そして溶液中に抗原が存在しない抗体サンプルからのシグナルの50%減少を達成するのに必要な抗原濃度、IC50として報告した。上記のようにIC50を測定し、そして表2に要約した。好ましい実施態様において、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、ELISA溶液競合アッセイによる測定で、二量体hIL−4Rに関して約20pM以下のIC50、そして単量体hIL−4Rに関して約150pM以下又は約100pM以下のIC50を示した。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例3.hIL−4及びhIL−4R相互作用の阻害
選択された抗体がhIL−4RとのhIL−4結合を阻止する能力を、BIAcoreTM hIL−4阻害アッセイによってスクリーニングし、そして以下に記載されるように、定量hIL−4阻止イムノアッセイによって効力を測定した。結果を表3に要約した。
【0068】
抗体がhIL−4R受容体とのhIL−4結合を阻止する能力を、表面プラズモン共鳴を用いて測定した。精製hIL−4R−hFc分子を、260RUの密度でCM−5上に固定化されたヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体によって捕獲して、受容体でコーティングされた表面を調製した。次いで、ヒトIL−4(50nMで0.25ml)を、受容体でコーティングされた表面上に注入し、そして結合したhIL−4量を記録した(hIL−4の第一の注入)。次いで、結合したhIL−4を、3M MgCl2、その後調整
緩衝液のパルスで除去した。次いで、精製抗hIL4R抗体を、受容体表面上に注入し、その後同じ濃度でhIL−4の第二の注入を行った(hIL−4の第二の注入)。あらかじめ形成された抗体と受容体との複合体から生じるhIL−4結合のパーセント減少を、表3に報告した。
【0069】
hIL−4RとのhIL−4結合を阻止する能力をさらに評価するために、定量イムノアッセイを行った。手短に言えば、25pM hIL−4R−Fc溶液を、約50nM〜0nMの範囲で段階希釈した抗体タンパク質と前もって混合し、その後室温で1時間インキュベートした。hIL−4Rに特異的なサンドイッチELISAを用いて、(抗体が結合していない)遊離hIL−4R−Fc濃度を測定した。ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルプレート上にビオチン化hIL−4(0.5μg/ml)を結合させることによって、hIL−4Rの検出プレートを調製した。前もって結合した抗体−抗原サンプルを、hIL−4でコーティングされた検出プレートに移した。室温で1時間のインキュベーション後、検出プレートを洗浄し、そしてHRP結合体化ヤギ抗hFcポリクローナル抗体を用いて、プレートに結合したhIL−4R−hFcを検出し、そして発色基質、例えばBD OptEIATM(BD Biosciences Pharmingen,San Diego,CA)を用いて発色させた。1Mリン酸又は硫酸で反応を停止させた後、450nmの吸光度を記録し、そしてGraphPadTM Prismソフトウェアを用いてデータを分析した。プレートに結合したhIL−4に対して検出可能なIL−4R−hFcの50%を減少させるのに必要な抗体量として、IC50を測定した。好ましい実施態様において、本発明の抗体又は抗体フラグメントは、ELISAによる測定で、25pM hIL−4Rを阻止するIC50として約50pM未満又は約40pM未満又は約30pM未満又は約20pM未満を示した。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例4.インビトロでのhIL−4の生物学的効果の中和
IL−4媒介シグナル伝達経路は、文献(例えば、Hebenstreit et al. 2006 Cytokine Growth Factor Rev.17(3):173−88,2006の概説を参照のこと)に広範に記述されている。IL−4は、2つの受容体複合体、I型及びII型を刺激し得る。I型受容体複合体は、IL−4RへのIL−4の結合、その後共通のγ鎖のヘテロ二量体化によって形成される。あるいは、IL4/IL4R複合体は、IL−13受容体1とヘテロ二量体化して、II型受容体複合体を形成し得る。I型及びII型複合体の両方とも、主にSTAT6を通じてシグナルを伝達する。従って、以下に記載されるように、選択された抗体がSTAT6を通じたシグナル伝達を阻止する能力を評価した。
【0072】
hIL−4及びhIL−13に対して高い感受性を有する細胞系を確立した。HEK293細胞を、ヒトSTAT6及びSTAT6ルシフェラーゼレポータープラスミドで安定にトランスフェクトし、そして増殖培地(DMEM、10%FBS、L−グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン)中で維持した。STAT6でトランスフェクトされたHEK293細胞の増殖培地に10pM hIL−4を添加したときに、強いIL−4受容体媒介性応答が達成された。hIL−4応答のバイオアッセイとして、細胞をアッセイ培地(Optimem I(Gibco)+0.1%FBS)中で1回洗浄し、そしてアッセイ培地80μL中の1ウェル(96ウェルプレート)当たり1×104細胞でプレーティングした。精製抗体をアッセイ培地に段階希釈し(20nM〜0の範囲の最終濃度)、そして各々の試験抗体10μlを、hIL−4 10μl(10pMの一定の最終濃度)とともに細胞に添加した。次いで、細胞を37℃で6時間、5% CO2でインキュベートした。細胞応答の程度を、ルシフェラーゼアッセイ(Promega Biotech)で測定した。結果を表4に示した。
【0073】
インビトロでのIL−4依存性の生物活性の阻害をまた、ヒト赤芽球細胞系TF1又は修飾されたIL−13Rαを過剰発現するTF1細胞系(TF1/A12)のいずれかを用いて確認した。このバイオアッセイにおいて、20,000個の細胞を、10% FBS、2mM L−グルタミン並びにペニシリン及びストレプトマイシンを含有したRPMI 1640培地中の96ウェルプレートの各ウェルに播種した。0〜50nM(最終濃度)の範囲の精製抗体25μlを、細胞系TF1に関して50pM、細胞系TF1/A12に関して20pMのいずれかの最終濃度で、hIL−4組換えタンパク質25μlとともに添加した。次いで、細胞を37℃で3日間増殖させて、そしてCCK8キット(Dojindo,Japan)を用いて最終細胞数を測定した。抗体がTF−1細胞の増殖を阻止する能力を、細胞増殖の50%減少を達成するのに必要な抗体濃度として表4に報告した。
【0074】
【表4】

【0075】
実施例5.インビトロでのhIL−13の生物学的効果の中和
IL−4Rは、IL−13/IL−13R複合体との結合を通じたIL−13活性のモジュレーターであることが示されているので、上記のHEK293 STAT6ルシフェラーゼアッセイの改良法(10pM IL−4の代わりに40pM hIL−13)において、IL−13活性を阻止する能力に対して選択された抗体を試験した。上記のTF−1細胞系アッセイにおいて、0〜50nMの抗体の存在下で150pMのhIL−13を用いて、hIL−13活性を阻止する効力について抗体をまた評価した。結果を表5に示した。
【0076】
【表5】

【0077】
実施例6.抗体結合プロフィールの評価
(抗原に結合した)抗体が、異なる抗体の一団がその後同じ抗原に結合する能力に対して有し得る効果を測定することによって、抗体結合プロフィールを確立することができた。例えば、抗原を支持体上に固定化して、抗原でコーティングされた表面を形成させ、この抗原コーティング表面を抗体で飽和させ、次いでこの抗体で飽和された抗原コーティング表面を他の抗体の一団に曝露し得る。抗体で飽和された抗原表面に他の抗体の一団が結合する程度は、抗体結合プロフィールを与える。OCTETTMベースの逐次結合アッセイを利用して、抗体結合プロフィールを作製した。手短に言えば、24のストレプトアビジンHigh Binding FAバイオセンサー(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA)の一群を、30℃で10分間、抗原であるビオチン−hIL−4R−hFcと2μg/mlで最初にインキュベートして飽和状態を達成し、そして結合した抗原量を、結合したタンパク質に起因した生物学的層の厚さの変化(nm)として測定し、これは、波長シフトによって直接測定した。次いで、ビオチン−hIL−4R−hFcが結合したバイオセンサーを、30℃で15分間、第一の抗体(コントロール抗体)と50μg/mlでインキュベートして飽和状態を達成し、そして結合したコントロール抗体量を、生物学的層の厚さの変化(nm)として測定した。次いで、各々のコントロール抗体に結合したセンサーを、30℃で15分間、24の異なる抗hIL−4R抗体(第二の抗体)の一団のうちの1つと50μg/mlでインキュベートし、そして結合した第二の抗体量を、生物学的層の厚さの変化として測定した。第一の抗体として、VAB16F3−1又はVAK5H4−4抗hIL−4R抗体のいずれかを用いて、同じアッセイを反復した。結果を、図1A〜Cに示した。
【0078】
選択された抗hIL−4R抗体をまた、ウェスタンブロットによって評価した(データは示さず)。手短に言えば、hIL−4R単量体(1レーン当たり200ng)及びmfIL−4R Hisタグ化単量体(1レーン当たり200ng)を、還元性及び非還元性の両方のサンプル緩衝液を用いてSDS−PAGEゲル上に電気泳動させた。4つの別々のゲルを、各々PVDF膜に移し、そして各々の膜を、4つの一次抗体:抗His mAb(Qiagen)、VAB 16F3−1、VAK 5H4−4又はコントロール抗hIL−4R抗体のうちの1つに曝露して、二次抗体としてHRP−結合体化ヤギ抗mIgG又はHRP−結合体化ヤギ抗hIgG(Pierce)のいずれかを用いた。3つの抗hIL−4R抗体すべてが、非還元形態のhIL−4Rを認識した。VAB 16F3−1及びVAK 5H4−4のみが、還元形態のhIL−4Rを検出した。どの抗hIL−4R抗体も、サルIL−4Rを検出しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面プラズモン共鳴による測定で約200pMまたはそれ以下、好ましくは約150pMまたはそれ以下のKDでhIL−4R(配列番号1)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
配列番号3、19、35、51、67、83、99、115、131、147、163、179、195、211、227、243、259、275、291、307、323、339、355、371、387、391、395、399、403、407、411、415、419、423、427、431、435、439、443、447、451、455、459、463、467、471、475、479、483、487、491、495、499、503、507、511、515、519、523、527、531、535、539、543、547、551、555、559、563、567、571、575、579及び581から選択された重鎖可変領域(HCVR)、並びに
配列番号11、27、43、59、75、91、107、123、130、155、171、187、203、219、235、251、267、283、299、315、331、347、363、379、389、393、397、401、405、409、413、417、421、425、429、433、437、441、445、449、453、457、461、465、469、473、477、481、485、489、493、497、501、505、509、513、517、521、625、529、533、537、541、545、549、553、557、561、565、569、573及び577から選択された軽鎖可変領域(LCVR)
を含む請求項1に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
配列番号3/11、19/27、35/43、51/59、67/75、83/91、99/107、115/123、131/139、147/155、163/171、179/187、195/203、211/219、227/235、243/251、259/267、275/283、291/299、307/315、323/331、339/347、355/363、371/379、387/389、391/393、395/397、399/401、403/405、407/409、411/413、415/417、419/421、423/425、427/429、431/433、435/437、439/441、443/445、447/449、451/453、455/457、459/461、463/465、467/469、471/473、475/477、479/481、483/485、487/489、491/493、495/497、499/501、503/505、507/509、511/513、515/517、519/521、523/525、527/529、531/533、535/537、539/541、543/545、547/549、551.553、555/557、559/561、563/565、567/569、571/573、575/577、579/59及び581/59から選択されたHCVR/LCVR対を含む請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
好ましくは配列番号51/59、259/267、275/283、291/299、579/59又は581/59から選択されたHCVR/LCVRを含む請求項3に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号582)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1であって、式中X1=Gly、X2=Tyr又はPhe、X3=Thr又はI、X4=Phe、X5=Asn又はArg、X6=Ser、X7=Tyr及びX8=Glyであり、
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8(配列番号583)のアミノ酸配列を含む
重鎖CDR2であって、式中X1=Ile、X2=Ser又はArg、X3=Thr又はTyr、X4=Tyr又はAsp、X5=Asn又はGly、X6=Gly又はSer、X7=Lys又はAsn及びX8=Thrであり、
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21(配列番号584)のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3であって、式中X1=Ala又はVal、X2=Arg又はLys、X3=Asp又はGlu、X4=Gly又はGlu、X5=Ala又はArg、X6=Arg又はSer、X7=Ile又はGly、X8=Val又はSer、X9=Val又はTrp、X10=Ala又はPhe、X11=Gly又はAsp、X12=Thr又はPro、X13=Thr又は非存在、X14=Pro又は非存在、X15=Tyr又は非存在、X16=Tyr又は非存在、X17=Tyr又は非存在、X18=Gly又は非存在、X19=Met又は非存在、X20=Asp又は非存在及びX21=Val又は非存在であり、
式X1−X2−X3−X4−X5−X6(配列番号585)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1であって、式中X1=Gln、X2=Asp又はAla、X3=Ile、X4=Ser又はAsn、X5=Asn又はIle及びX6=Trp又はPheであり、
式X1−X2−X3(配列番号586)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2であって、式中X1=Ala又はVal、X2=Ala又はThr及びX3=Serであり、そして
式X1−X2−X3−X4−X5−X6−X7−X8−X9(配列番号587)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3であって、式中X1=Gln、X2=Gln、X3=Ala又はTyr、X4=Asn、X5=Ser、X6=Phe又はHis、X7=Pro、X8=Ile又はTrp及びX9=Thrであること、
を含む請求項1に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
重鎖CDR3及び軽鎖CDR3を含む請求項1に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントであって、
重鎖CDR3ドメインは、配列番号9、25、41、57、73、89、105、121、137、153、169、185、201、217、233、249、265、281、297、313、329、345、361及び377からなる群より選択され、そして
軽鎖CDR3ドメインは、配列番号17、33、49、65、81、97、113、129、145、161、177、193、209、225、241、257、273、289、305、321、337、353、369及び385からなる群より選択される、抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
配列番号5、21、37、53、69、85、101、117、133、149、165、181、197、213、229、245、261、277、293、309、325、341、357及び373からなる群より選択された重鎖CDR1ドメイン、
配列番号7、23、39、55、71、87、103、119、135、151、167、183、199、215、231、247、263、279、295、311、327、343、359及び375からなる群より選択された重鎖CDR2ドメイン、
配列番号13、29、45、61、77、93、109、125、141、157、173、189、205、221、237、253、269、285、301、317、333、349、365及び381からなる群より選択された軽鎖CDR1ドメイン、並びに
配列番号15、31、47、63、79、95、111、127、143、159、175、191、207、223、239、255、271、287、303、319、335、351、367及び383からなる群より選択された軽鎖CDR2ドメイン、
をさらに含む請求項6に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
HCVR配列及びLCVR配列由来のCDRを含む請求項1に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントであって、HCVR/LCVR配列が、51/59、579/59、581/59、259/267、275/283及び291/299からなる群より選択される、抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項11】
IL−4受容体に特異的に結合する抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントを産生するための宿主−ベクター系であって、好適な宿主細胞中に請求項10に記載のベクターを含む宿主−ベクター系。
【請求項12】
請求項11に記載の宿主−ベクター系であって、宿主細胞が、大腸菌(E.coli)又はCHO細胞のうちの1つから選択された原核生物細胞又は真核生物細胞である宿主−ベクター系。
【請求項13】
抗IL−4R抗体又はその抗原結合性フラグメントの産生方法であって、抗体又はそのフラグメントを生産し得る条件下で、請求項11又は12に記載の宿主−ベクター系の細胞を増殖させる工程、及びそのように発現された抗体又はフラグメントを回収する工程を含む方法。
【請求項14】
ヒトのIL−4媒介性疾患又は障害を減弱又は阻害するために使用する薬剤の製造において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体又は抗体の抗原結合性フラグメントの使用。
【請求項15】
疾患又は障害を処置する方法であって、この疾患又は障害は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントの投与によってヒトインターロイキン4(hIL−4)活性が除去、阻害又は減少されることにより改善、寛解又は阻害される、方法。
【請求項16】
疾患又は障害が、関節炎、ヘルペス状、慢性突発性蕁麻疹、強皮症、過形成性瘢痕、ホウィップル病、良性前立腺肥大、肺障害、炎症性障害、アレルギー反応、川崎病、鎌状赤血球症、チャーグ−ストラウス症候群、グレーヴズ病、子癇前症、シェーグレン症候群、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、自己免疫性溶血性貧血、バレット食道、自己免疫性ブドウ膜炎、結核及びネフローゼから選択される、請求項15に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate


【公表番号】特表2010−505418(P2010−505418A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531433(P2009−531433)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/021210
【国際公開番号】WO2008/054606
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】