説明

ヒドロキシルアミンの安定化剤、安定化方法および安定化されたヒドロキシルアミン溶液

【課題】ヒドロキシルアミンを高温、高濃度、および/またはFeなどの金属不純物が混入した条件などで安定化させる方法と安定化されたヒドロキシルアミン溶液を提供すること。
【解決手段】本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法は、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸と、必要に応じ酸化防止剤を添加することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシルアミンの安定化剤、安定化方法および安定化されたヒドロキシルアミン溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシルアミン類は、医農薬中間体の原料、還元剤、金属表面の処理剤、繊維処理、染色など、工業的に幅広い用途で使用されているが、遊離のヒドロキシルアミンは、たとえば金属イオン(特に重金属イオン)の存在下、高温または高濃度などの条件において容易に分解するなど非常に不安定な性質を有することから、一般的には比較的安定なヒドロキシルアミンの塩が製造され、使用されている。
【0003】
しかしながら、多くの用途においては、ヒドロキシルアミンの塩よりもヒドロキシルアミンが好適であり、さらに、高温または高濃度でのヒドロキシルアミン水溶液の取扱いが必要とされることが多い。そのために、高温、高濃度、さらにはFeなどの金属不純物が混入した条件などで、ヒドロキシルアミンを安定化する試みもなされてきている。
【0004】
例えば、特許文献1(特公昭52−48118号公報)には、ヒドロキシルアミンおよび/またはその塩の結晶、またはヒドロキシルアミンを含む溶液中に芳香環上の連続する2以上の炭素原子の夫々に水酸基を置換している芳香族化合物を安定剤として添加する安定化方法が記載されている。
【0005】
しかし、ピロガロール、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸を安定剤として含むヒドロキシルアミン溶液は、高温、高濃度、さらにはFeなどの金属不純物が混入した際に、ヒドロキシルアミンの分解を抑制する効果が不十分であるという問題があった。
【0006】
さらに、該特許文献1記載の安定剤を含むヒドロキシルアミン溶液は高温または高濃度の条件で着色するという問題点があった。
【特許文献1】特公昭52−48118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒドロキシルアミンの安定化剤、安定化方法および安定化されたヒドロキシルアミン溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミン溶液に添加することで、ヒドロキシルアミン溶液を安定化できることを見いだした。
【0009】
さらに、3,4−ジヒドロキシ安息香酸と酸化防止剤とをヒドロキシルアミン溶液に添加することで、ヒドロキシルアミン溶液をより安定化させることを見いだし、本発明を完成するに至った。これらの知見は本発明者らが初めて見いだしたものである。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の(1)〜(7)に関する。(1)保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミン溶液に添加
することを特徴とするヒドロキシルアミンの安定化方法。
(2)酸化防止剤をさらに添加する(1)に記載のヒドロキシルアミンの安定化方法。
(3)前記酸化防止剤が、アルコール、フェノール誘導体、エチレン性二重結合含有化合物、アセチレン性三重結合含有化合物、ニトリル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物および含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(2)に記載のヒドロキシルアミンの安定化方法。
(4)ヒドロキシルアミンと、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を含むことを特徴とする安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
(5)酸化防止剤をさらに含む(4)に記載の安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
(6)前記酸化防止剤が、アルコール、フェノール誘導体、エチレン性二重結合含有化合物、アセチレン性三重結合含有化合物、ニトリル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物および含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である(5)に記載の安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
(7)3,4−ジヒドロキシ安息香酸を有効成分とすることを特徴とするヒドロキシルアミンの安定化剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヒドロキシルアミン溶液を安定化することができ、そして、安定化されたヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るヒドロキシルアミン溶液の安定化剤、安定化方法およびその安定化されたヒドロキシルアミン溶液についてより詳細に説明する。
本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法は、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミン溶液に添加することでヒドロキシルアミンを安定化する方法である。
【0013】
また、本発明に係る安定化されたヒドロキシルアミン溶液は、ヒドロキシルアミンと、3,4−ジヒドロキシ安息香酸とを含む。
また、本発明に係るヒドロキシルアミンの安定化剤は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を有効成分とすることを特徴とする。
【0014】
本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミン溶液に添加することにより、高温、高濃度、および/またはFeなどの金属不純物が混入した条件であっても、ヒドロキシルアミンの分解を抑制することができる。また、高温または高濃度でのヒドロキシルアミン溶液の着色を防止することができる。
【0015】
本発明の方法で用いられる3,4−ジヒドロキシ安息香酸は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。また、電子工業用においては、金属不純物の少ない高純度のヒドロキシルアミンが好ましいからである。3,4−ジヒドロキシ安息香酸は水和物を用いてもよい。
【0016】
3,4−ジヒドロキシ安息香酸とヒドロキシルアミンとの質量比(3,4−ジヒドロキシ安息香酸/ヒドロキシルアミン)は、1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1が適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、ヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の3,4−ジヒドロキシ安息香酸の除去や回収が必要になることがある。
【0017】
3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミンに添加する方法は、固体のまま添
加してもよく、溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を溶解することが可能な炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、その用途に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。また、ヒドロキシルアミン溶液に溶解させて添加してもよい。また、溶媒は、ヒドロキシルアミン溶液と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。同じ種類の溶媒に溶解させて添加することが好ましい。そして、溶媒の量は適宜選択することができる。
【0018】
本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法は、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を酸化防止剤と併せてヒドロキシルアミン溶液に添加することによって、高温または高濃度などの条件で、ヒドロキシルアミンの分解をより抑制することができる。さらに、Feなどの金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解もより抑制することができる。
【0019】
これは、酸化防止剤を添加することで、3,4−ジヒドロキシ安息香酸がヒドロキシルアミンまたは空気によって酸化され、劣化することを抑制するためと考える。
本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法において用いることができる酸化防止剤としては、アルコール、フェノール誘導体、エチレン性二重結合含有化合物、アセチレン性三重結合含有化合物、ニトリル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物および含燐化合物などが挙げられる。
【0020】
本発明の安定化方法において用いられる酸化防止剤は、1種単独で添加してもよく、2種以上を組み合わせて添加してもよい。
本発明の安定化方法において用いられる酸化防止剤は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。また、電子工業用においては、金属不純物の少ない高純度のヒドロキシルアミンが好ましいからである。
【0021】
酸化防止剤とヒドロキシルアミンとの質量比(酸化防止剤/ヒドロキシルアミン)は、1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1が適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、ヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の酸化防止剤の除去や回収が必要になることがある。なお、アルコールは、たとえば保存安定剤として添加する3,4−ジヒドロキシ安息香酸を溶解することが可能な溶媒として用いることもできるので、アルコールをこのような溶媒として用いる場合には、ヒドロキシルアミンとの質量比は上記範囲に限られない。
【0022】
酸化防止剤をヒドロキシルアミンに添加する方法は、そのまま添加してもよく、溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、酸化防止剤を溶解することが可能な炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、その用途に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。また、ヒドロキシルアミン溶液に溶解させて添加してもよい。そして、溶媒は、ヒドロキシルアミン溶液と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。同じ種類の溶媒に溶解させて添加することが好ましい。さらに、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の溶媒として使用したものとと同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。同じ種類の溶媒に一緒に溶解させて添加することが好ましい。そして
、溶媒の量は使用する酸化防止剤の種類および量などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0023】
本発明のヒドロキシルアミンの安定化方法において酸化防止剤として用いることができるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロヘキシルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、グリコール酸などの一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。また、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどの単糖類、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、サッカロースなどの二糖類も多価アルコールとして挙げられる。さらに、上記単糖類、二糖類の誘導体であるエリトリトール、トレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、アルトリトール、グルシトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールなども多価アルコールとして挙げられる。
【0024】
また、同様に酸化防止剤として用いることができるフェノール誘導体としては、フェノール、4−t−ブチルフェノール、4−メトシキフェノール、2,6―ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−i−プロピル−5−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、トコフェロールなどが挙げられる。
【0025】
また、エチレン性二重結合含有化合物としては、スチレン、o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、o−シアノスチレン、m−シアノスチレン、p−シアノスチレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−5−エチルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アクリルアミド、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アリルアルコール、酢酸アリル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0026】
また、アセチレン性3重結合含有化合物としては、プロパルギルアルコール、1−ブチン−1−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、3−ブチン−2−オール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオールジアセテートなどが挙げられる。
【0027】
また、ニトリル化合物としては、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、マロノニトリル、アジポニトリル、1,6−ジシアノヘキサン、3−ジメチルアミノプロピオニトリル、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリルなどが挙げられる。
【0028】
また、含硫黄化合物としては、フェノチアジン、2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、チオ尿酸、ビスムチオール、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリ
スチル−3,3’−チオジプロピオネート、システイン、シスチン、ジメルカプトコハク酸、2−アミノエタンチオール、トルエン−3,4−ジチオール、フルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0029】
また、含窒素化合物としては、1,1−ジフェニル−2−ピクリル−ヒドラジル、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、4−ニトロソジフェニルアミン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル(t−ブチル)ニトロン、N−フェニル−N’−i−プロピルフェニレンジアミン、5,5−ジメチル−N−フェニル−N’−i−プロピルフェニレンジアミン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、ニトロソベンゼン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0030】
また、含燐化合物としては、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスルトールジホスファイト、ジフェニル−i−オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0031】
本発明の安定化方法において用いることができるヒドロキシルアミンは、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。また、電子工業用においては、金属不純物の少ない高純度のヒドロキシルアミンが好ましいからである。
【0032】
本発明の安定化方法において、ヒドロキシルアミンは、固体のまま使用してもよく、溶媒に溶解させて使用してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、その用途に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。
【0033】
ヒドロキシルアミン溶液のヒドロキシルアミンの濃度は、溶媒の量を適宜選択することで調製は可能であり、特に限定はされないが、好ましくは、0.1質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは、1.0質量%〜70質量%である。
【0034】
本発明の安定化方法において用いることができるヒドロキシルアミンは、たとえば、以下の製造方法により製造することができる。
反応工程
ヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、ヒドロキシルアミンの塩と、アルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程を含む。
【0035】
ヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミンの硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸の塩、およびギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸の塩が挙げられる。これらの中では、ヒドロキシルアミンの硫酸塩(NH2OH・1/2H2SO4)、塩酸塩(NH2OH・HCl)、硝酸塩(NH2OH・HNO3)およびリン酸塩(NH2OH・1/3H3PO4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩が好ましい。
【0036】
ヒドロキシルアミンの塩は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの塩または生成したヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。しかし、ヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解に影響がなく、精製工程などで除去できるもの、またはヒドロキシルアミンの使用に際し
て問題がないものであれば不純物を含んでいてもよい。
【0037】
ヒドロキシルアミンの塩は、固体のまま使用しても、溶媒に溶解または懸濁させて使用してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを含む溶媒が好ましい。また、反応で生じた不溶性の塩などを分離した濾液の少なくとも一部を溶媒として使用してもよい。
【0038】
上記溶媒の量は、使用するヒドロキシルアミンの塩の量、反応温度などの条件に応じて適宜選択すればよく、通常、溶媒とヒドロキシルアミンの塩との質量比(溶媒/ヒドロキシルアミンの塩)は0.1〜1000、好ましくは1〜100の範囲内である。
【0039】
アルカリ化合物としては、アルカリ金属を含む化合物、アルカリ土類金属を含む化合物、アンモニアおよびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
アルカリ金属を含む化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられ、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物もしくは炭酸塩である。
【0040】
アルカリ土類金属を含む化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられ、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの酸化物もしくは水酸化物である。
【0041】
アンモニアは、ガスとして使用してもよく、アンモニアを溶解させた溶液、たとえばアンモニア水溶液として使用してもよい。
アミンとしては、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンを用いることができる。また、アミンはモノアミンでも、分子内に2以上のアミノ基を有するジアミン、トリアミンなどのポリアミンでもよく、さらに、環式アミンでもよい。
【0042】
モノアミンとしては、たとえば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、トリ−i−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ジアミノプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、α―フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、o―トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、スルファニルアミド、モ
ノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0043】
ジアミンとしては、たとえば、1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノブタン、3−アミノプロピルジメチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ベンジジンなどが挙げられる。
【0044】
トリアミンとしては、たとえば、2,4,6−トリアミノフェノール、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが挙げられる。
【0045】
テトラアミンとしては、たとえば、β,β',β"−トリアミノトリエチルアミンなどが挙げられる。
環式アミンとしては、たとえば、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、プリン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3−ピロリン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ピペラジン、ピリダジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,5−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4−トリアゾール、モルホリンなどが挙げられる。
【0046】
アルカリ化合物として用いることができるアミンは、上記の化合物に限定されるものではなく、たとえばエチルメチルアミンのように、置換基の種類が異なる非対称の化合物であってもよい。また、アミンは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
アルカリ化合物は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、ヒドロキシルアミンの塩と同様に、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。
アルカリ化合物とヒドロキシルアミンの塩との当量比(アルカリ化合物/ヒドロキシルアミンの塩)は0.1〜100、好ましくは0.5〜10、さらに好ましくは1〜2の範囲が適している。なお当量は、ヒドロキシルアミンの塩を1とするとアルカリ金属の場合には1、アルカリ土類金属の場合は2、アンモニアは1、アミンの場合には、たとえばモノアミンは1、ジアミンは2として計算する。
【0048】
上記当量比が100より大きいと、過剰のアルカリ化合物によるヒドロキシルアミンの分解や、多くの未反応アルカリ化合物の回収が必要になるなどの問題が生じることがある。また、当量比が0.1より小さいと、大量の未反応ヒドロキシルアミンの塩の回収が必要になるなどの問題が生じることがある。
【0049】
アルカリ化合物は、溶媒に溶解または懸濁させて使用することができる。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。また、反応で生じた不溶性の塩などを分離した濾液の少なくとも一部を溶媒として使用してもよい。
【0050】
上記溶媒の量は、使用するアルカリ化合物の量、反応温度などの条件に応じて適宜選択すればよく、通常、溶媒とアルカリ化合物との質量比(溶媒/アルカリ化合物)は0.5〜1000、好ましくは0.8〜100である。
【0051】
ヒドロキシルアミンの製造方法において、ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程および後述する分離工程、精製工程、濃縮工程は、安定剤の存在下で行うことができる。安定剤は、公知のものを使用することができる。たとえば、8−ヒドロキシキノリン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N,N’−三酢酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸、シス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N’−ジ(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、N−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N’−ジヒドロキシエチルグリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸、ビスヘキサメチレントリアミン五酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリス(2−アミノエチル)アミン六酢酸、イミノ二酢酸、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、o−アミノキノリン、1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−クロル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、ヒドロキシアントラキノン、8−ヒドロキシキノリン−5−スルホン酸、8−ヒドロキシメチルキノリン、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、1−アミノ−2−メルカプト−プロピオン酸、2,2−ジピリジル、4,4−ジメチル−2,2−ジピリジル、チオ硫酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール、フラボン、モリン、クエルセチン、ゴッシペチン、ロビチネン、ルテオリン、フィセチン、アピゲニン、ガランギン、クリシン、フラボノール、ピロガロール、オキシアントラキノン、1,2−ジオキシアントラキノン、1,4−ジオキシアントラキン、1,2,4−トリオキシアントラキノン、1,5−ジオキシアントラキノン、1,8−ジオキシアントラキノン、2,3−ジオキシアントラキノン、1,2,6−トリオキシアントラキノン、1,2,7−トリオキシアントラキノン、1,2,5,8−テトラオキシアントラキノン、1,2,4,5,8−ペンタオキシアントラキノン、1,6,8−ジオキシ−3−メチル−6−メトキシアントラキノン、キナリザリン、フラバン、ラクトン、2,3−ジヒドロヘキソノ−1,4−ラクトン、8−ヒドロキシキナルジン、6−メチル−8−ヒドロキシキナルジン、5,8−ジヒドロキシキナルジン、アントシアン、ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、ペツニジン、マルビジン、カテキン、チオ硫酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオール、チアミンの塩酸塩、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリジン−4−オン、4−メチルピリジン−N−オキシド、6−メチルピリジン−N−オキシド、1−メチル−3−ヒドロキシピリジン−2−オン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトシクロヘキシルチアゾール、2−メルカプト−6−t−ブチルシクロヘキシルチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルチアゾリン、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−5−t−ブチルチアゾリン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラ−n−ブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジエチルチウラムジスルフィド、テトラフェニルチウラムジスルフィド、チウラムジスルフィド、チオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、ジ−o−トリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、チオセトアミド、2−チオウラシル、チオシアヌル酸、チオホルムアミド、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、チオベンズアミド、チオニコチンアミド、チオアセトアニリド、チオベンズアニリド、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、チオカルバジド、チオセミカルバジド、4,4−ジメチル−3−チオセミカルバジド、2−メルカプトイミダゾリン、2−チオヒダントイン、3−チオウラゾール、2−チオウラミル、4−チオウラミル、チオペンタノール、2
−チオバルビツール酸、チオシアヌル酸、2−メルカプトキノリン、チオクマゾン、チオクモチアゾン、チオサッカリン、2−メルカプトベンズイミダゾール、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。また、安定剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を用いることもできる。
【0052】
上記安定剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解を抑制することができる。
【0053】
安定剤は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、ヒドロキシルアミンの塩と同様に、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。
安定剤とヒドロキシルアミンの塩との質量比(安定剤/ヒドロキシルアミンの塩)は、1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1が適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
【0054】
安定剤は、固体のまま使用してもよく、溶媒に溶解させて使用してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。溶媒の量は使用する安定剤の種類および量、反応温度などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0055】
ヒドロキシルアミンの製造方法は、アルカリ化合物を溶媒に溶解もしくは懸濁させた反応液に、ヒドロキシルアミンの塩を添加して反応させる反応工程が好ましい。このように、アルカリ化合物を含む反応液に、ヒドロキシルアミンの塩を添加していく方法を用いることにより、生成したヒドロキシルアミンが、副生した塩と錯体を形成しにくくなり、また副生した不溶性の塩に吸着または取り込まれにくくなる。
【0056】
さらに、アルカリ化合物を含む反応液にヒドロキシルアミンの塩を添加する際に、反応液のpHを好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8以上に保ちながら、ヒドロキシルアミンの塩を添加していくことが望ましい。反応液のpHを上記範囲に保つことにより、生成したヒドロキシルアミンが、副生した塩と錯体を形成しにくくなり、また副生した不溶性の塩に吸着または取り込まれにくくなる。
【0057】
しかし、反応工程は、ヒドロキシルアミンの塩を溶解もしくは懸濁させた反応液にアルカリ化合物を添加して反応させてもよい。
さらに、ヒドロキシルアミンの製造方法における反応工程は、ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物とを、同時に供給して反応させる反応工程であってもよい。その際、反応液のpHを好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8以上に保ちながら、ヒドロキシルアミンの塩およびアルカリ化合物の添加量を調整することが望ましい。ヒドロキシルアミンの塩およびアルカリ化合物は、固体のまま添加してもよく、溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。また、アルカリ化合物がアンモニアなどの場合には、ガスで導入してもよい。
【0058】
ヒドロキシルアミンの製造方法における反応工程で、安定剤を添加する方法は特に制限されず、公知の方法で行うことができる。たとえば、予め反応器に導入して反応を開始してもよく、必要に応じて反応の途中で添加してもよい。また、安定剤を、アルカリ化合物
およびヒドロキシルアミンの塩とともに溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。
【0059】
上記反応工程は、反応温度が0℃〜80℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。反応温度が80℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり生産性の低下などの問題が生じることがある。
【0060】
ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応に伴い発生する反応熱は、水、温水または熱媒により系外に排出させることにより、反応温度を一定範囲に保つことができる。また、水、温水または熱媒により系外に排出された熱は、他の設備の熱源として利用することが好ましい。
【0061】
ヒドロキシルアミンの製造方法における反応工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
分離工程
ヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、ヒドロキシルアミンと不溶性物質を分離する工程を含んでもよい。
【0062】
この不溶性物質は、たとえば上記反応工程で反応液中に析出した不溶性物質である。
不溶性物質としては、たとえば上記反応工程でヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応により生成した塩、ヒドロキシルアミンの塩、アルカリ化合物等が挙げられる。
【0063】
つまり、上記反応工程でヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応により生成した塩、ヒドロキシルアミンの塩、アルカリ化合物等が、溶解度よりも濃度が高くなることにより不溶性物質として析出した場合には、不溶性物質を分離する分離工程を含んでもよい。
【0064】
分離の方法としては、濾過、圧搾、遠心分離、沈降分離、浮上分離などの公知の方法を用いることができる。たとえば、濾過による分離では、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法で行ってもよく、沈降分離による分離では、清澄分離、沈殿濃縮のいずれの方法で行ってもよく、浮上分離による分離では、加圧浮上、電離浮上のいずれの方法で行ってもよい。
【0065】
また、分離工程で分離した不溶性物質を溶媒で洗浄することにより、不溶性物質に付着または取り込まれたヒドロキシルアミンを回収することができる。
不溶性物質を洗浄する溶媒としては、反応工程で用いた溶媒と同じ溶媒を使用してもよく、別の溶媒を使用してもよい。このような洗浄溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、ヒドロキシルアミンの回収に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを洗浄溶媒として用いることが好ましい。また、洗浄溶媒の量は、不溶性物質の種類および量、分離などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0066】
上記分離工程で不溶性物質を分離する際の温度は、0℃〜80℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。分離する際の温度が80℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、反応液の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギーが大きくなるなどの問題が生じることがある。上記分離工程で不溶性物質を分離した濾液および/または不溶性物質を洗浄した濾液の一部もしくは全部を、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合
物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
【0067】
上記分離工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。分離工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
【0068】
上記安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの生産効率が向上する。
【0069】
安定剤の量は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように
用いることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
【0070】
ヒドロキシルアミンの製造方法における分離工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
精製工程
ヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、上記のようにして得られたヒドロキシルアミン溶液をイオン交換により精製する精製工程を含む。
【0071】
イオン交換の方法としては、陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換などの公知の方法で行うことができる。
陽イオン交換による精製は、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陽イオン交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型にして使用することが好ましい。
【0072】
陰イオン交換による精製は、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陰イオン交換樹脂は、予めアルカリ処理を行い、OH型にして使用することが好ましい。
【0073】
キレート交換による精製は、キレート交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。キレート交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型として使用することが好ましい。
【0074】
陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換を組み合わせて精製してもよい。たとえば、陽イオン交換の後に陰イオン交換を行ってもよく、陰イオン交換の後に陽イオン交換を行ってもよい。また、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合したモノベッド樹脂またはミックスベッド樹脂などを使用することも可能である。
【0075】
イオン交換の温度としては、0℃〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。イオン交換の温度が70℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、イオン交換の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギーが大きくなるなどの問題が生じることがある。
【0076】
上記精製工程で得たヒドロキシルアミン溶液の一部は、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
【0077】
上記精製工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。精製工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
【0078】
上記安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの生産効率が向上する。
【0079】
安定剤の量は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように
用いることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
【0080】
ヒドロキシルアミンの製造方法におけるイオン交換より精製する工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
濃縮工程
さらに、ヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、ヒドロキシルアミンを蒸留により塔底部で濃縮する工程を含む。
【0081】
蒸留の方法としては、単蒸留、多段蒸留、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留などの公知の方法で行うことができる。
たとえば、単蒸留または多段蒸留により、塔底部からヒドロキシルアミン濃度の高いヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。
【0082】
蒸留塔としては、一般的な段塔、たとえば泡鐘トレイ塔、編目プレート塔、あるいは一般的な充填物、たとえばラシヒリング、パールリング、サドル体等を備えていてもよい。
蒸留の温度は、塔底部の温度で0〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5〜60℃の範囲内であることが望ましい。塔底部の温度が70℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、塔底部の温度が0℃より低いと、多量の冷却エネルギーが必要になるなどの問題が生じることがある。
【0083】
蒸留の圧力は、温度との関係で決まるが、塔底部の圧力で0.5〜60kPaが好ましく、さらに好ましくは0.8〜40kPaの範囲内であることが望ましい。
上記濃縮工程で得たヒドロキシルアミン溶液の一部は、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
【0084】
また、蒸留塔の塔頂または側面から低濃度のヒドロキシルアミン溶液が得られることがあるが、その一部もしくは全部は、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
【0085】
濃縮工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。濃縮工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
【0086】
安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより
、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの生産効率が向上する。
【0087】
安定剤の量は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように
用いることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
【0088】
ヒドロキシルアミンの製造方法における蒸留により塔底部で濃縮する濃縮工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
さらにヒドロキシルアミンの製造方法は、上記濃縮工程で得たヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程を含んでもよい。
【0089】
イオン交換の方法としては、陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換などの公知の方法で行うことができる。
陽イオン交換による精製は、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陽イオン交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型にして使用することが好ましい。
【0090】
陰イオン交換による精製は、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陰イオン交換樹脂は、予めアルカリ処理を行い、OH型にして使用することが好ましい。
【0091】
キレート交換による精製は、キレート交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。キレート交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型として使用することが好ましい。
【0092】
陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換を組み合わせて精製してもよい。たとえば、陽イオン交換の後に陰イオン交換を行ってもよく、陰イオン交換の後に陽イオン交換を行ってもよい。
【0093】
また、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合したモノベッド樹脂またはミックスベッド樹脂などを使用することも可能である。
イオン交換の温度としては、0℃〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。イオン交換の温度が70℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、イオン交換の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギーが大きくなるなどの問題が生じることがある。
【0094】
上記精製工程で得たヒドロキシルアミン溶液の一部は、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
【0095】
上記精製工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。精製工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
【0096】
安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属イオンなどによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシル
アミンの生産効率が向上する。
【0097】
安定剤の量は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように
用いることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
【0098】
以上説明したように、本発明の安定化方法に用いることができるヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、
(1)ヒドロキシルアミンの塩と、アルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程。
(2)ヒドロキシルアミンと不溶性物質を分離する工程。
(3)ヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程。
(4)ヒドロキシルアミンを蒸留により塔底部で濃縮する濃縮工程。
を含み、これらの工程は、反応工程、分離工程、精製工程および濃縮工程の順に行なうことが好ましい。また、(1)〜(4)の各工程は、(1)の工程を行った後にいかなる順序で行ってもよく、また同じ工程を2回以上行ってもよい。
【0099】
例えば、上記の方法を用いることにより得られるヒドロキシルアミンの濃度は10質量%以上である。また、20質量%以上の濃度のヒドロキシルアミンを得ることができ、40質量%以上の濃度のヒドロキシルアミンを得ることもできる。
【0100】
例えば、上記の方法を用いることにより得られるヒドロキシルアミンは不純物として含まれる各金属の含有量が1質量ppm以下である。また、各金属の含有量が0.1質量ppm以下であるヒドロキシルアミンを得ることができ、各金属の含有量が0.01質量ppm以下のヒドロキシルアミンを得ることもできる。金属としては、反応工程で用いたアルカリ化合物に由来するアルカリ金属、アルカリ土類金属やヒドロキシルアミンの分解を顕著に促進するFe等が挙げられる。
【0101】
例えば、上記の方法を用いることにより得られるヒドロキシルアミンは不純物として含まれる各アニオンの含有量が100質量ppm以下である。また、各アニオンの含有量が10質量ppm以下であるヒドロキシルアミンを得ることができ、各アニオンの含有量が1質量ppm以下のヒドロキシルアミンを得ることもできる。アニオンとしては、原料であるヒドロキシルアミンの塩に由来する硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
【0102】
また、上記工程(1)〜(4)の何れかにおいて、3,4−ジヒドロキシ安息香酸を用いた場合には、これを除去、回収する必要はなく、保存安定剤として用いてもよい。この場合、保存安定剤としての3,4−ジヒドロキシ安息香酸の添加量は、既に溶液中に存在する3,4−ジヒドロキシ安息香酸の量を算入して設定される。
【0103】
<実施例>
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3)
Fe濃度が0.01質量ppm以下の50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。
【0104】
上記調製した50質量%ヒドロキシルアミン水溶液100gをPFA製の500ml蓋付き容器に充填し、蓋をして、50℃の恒温槽に設置した。
30日経過後のヒドロキシルアミン水溶液の着色を目視により確認した。そして、ヒドロキシルアミンの濃度を塩酸滴定により測定し、以下の式より、ヒドロキシルアミンの分解率を求めた。
【0105】
ヒドロキシルアミン分解率(%)=(50−A)/50 × 100
A=30日経過後のヒドロキシルアミン濃度(質量%)
結果を表1にまとめた。
(比較例1〜6)
保存安定剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに、表1の保存安定剤を添加した以外は実施例1〜3と同様に行った。
【0106】
結果を表1にまとめた。
【0107】
【表1】

【0108】
上記実施例および比較例から、保存安定剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸が、ヒドロキシルアミン水溶液の安定化に効果があり、着色もみられないことがわかる。
(実施例4〜12)
Fe濃度が0.01質量ppm以下の50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。さらに、同様に酸化防止剤を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。
【0109】
上記調製した50質量%ヒドロキシルアミン水溶液100gをPFA製の500ml蓋付き容器に充填し、蓋をして、50℃の恒温槽に設置した。
30日経過後のヒドロキシルアミン水溶液の着色を目視により確認した。そして、ヒドロキシルアミンの濃度を塩酸滴定により測定し、以下の式より、ヒドロキシルアミンの分解率を求めた。
【0110】
ヒドロキシルアミン分解率(%)=(50−A)/50 × 100
A=30日経過後のヒドロキシルアミン濃度(質量%)
結果を表2にまとめた。
【0111】
【表2】

【0112】
上記実施例から、3,4−ジヒドロキシ安息香酸に、酸化防止剤をさらに添加することで、ヒドロキシルアミン水溶液の安定化に、より効果があり、着色もみられないことがわかる。
(実施例13〜15)
Fe濃度が0.01質量ppm以下の50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。
【0113】
上記調製した50質量%ヒドロキシルアミン水溶液20gをPFA製の500ml蓋付き容器に充填した。
これにFe(III)の1,000mg/L標準液を50質量%ヒドロキシルアミン水溶
液に対して、Fe濃度が所定の濃度になるように添加した後、蓋をして、50℃の恒温槽に設置した。
【0114】
7日経過後、ヒドロキシルアミンの濃度を塩酸滴定により測定し、以下の式より、ヒドロキシルアミンの分解率を求めた。
ヒドロキシルアミン分解率(%)=(50−B)/50 × 100
B=7日経過後のヒドロキシルアミン濃度(質量%)
結果を表3にまとめた。
(比較例7〜12)
保存安定剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに、表3の保存安定剤を添加した以外は実施例13〜15と同様に行った。
【0115】
結果を表3にまとめた。
【0116】
【表3】

【0117】
上記実施例および比較例から、保存安定剤として、3,4−ジヒドロキシ安息香酸が、
Fe存在下でのヒドロキシルアミン水溶液の安定化に効果があることがわかる。
(実施例16〜24)
Fe濃度が0.01質量ppm以下の50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に、保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。さらに、同様に酸化防止剤を50質量%ヒドロキシルアミン水溶液に対して、所定の濃度になるように添加した。
【0118】
上記調製した50質量%ヒドロキシルアミン水溶液20gをPFA製の500ml蓋付き容器に充填した。
これにFe(III)の1,000mg/L標準液を50質量%ヒドロキシルアミン水溶
液に対して、Fe濃度が所定の濃度になるように添加した後、蓋をして、50℃の恒温槽に設置した。
【0119】
7日経過後、ヒドロキシルアミンの濃度を塩酸滴定により測定し、以下の式より、ヒドロキシルアミンの分解率を求めた。
ヒドロキシルアミン分解率(%)=(50−B)/50 × 100
B=7日経過後のヒドロキシルアミン濃度(質量%)
結果を表4にまとめた。
【0120】
【表4】

【0121】
上記実施例から、3,4−ジヒドロキシ安息香酸に、酸化防止剤をさらに添加することで、Fe存在下でのヒドロキシルアミン水溶液の安定化に、より効果があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、ヒドロキシルアミン溶液を安定化することができ、そして、安定化されたヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。特に本発明によれば、高温、高濃度および/または金属不純物の存在下におけるヒドロキシアミンの安定性が顕著に改善されるため、ヒドロキシアミンの各種用途への適用範囲が拡大される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保存安定剤として3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミン溶液に添加することを特徴とするヒドロキシルアミンの安定化方法。
【請求項2】
酸化防止剤をさらに添加する請求項1に記載のヒドロキシルアミンの安定化方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、アルコール、フェノール誘導体、エチレン性二重結合含有化合物、アセチレン性三重結合含有化合物、ニトリル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物および含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項2に記載のヒドロキシルアミンの安定化方法。
【請求項4】
ヒドロキシルアミンと、3,4−ジヒドロキシ安息香酸とを含むことを特徴とする安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
【請求項5】
酸化防止剤をさらに含む請求項4に記載の安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
【請求項6】
前記酸化防止剤が、アルコール、フェノール誘導体、エチレン性二重結合含有化合物、アセチレン性三重結合含有化合物、ニトリル化合物、含硫黄化合物、含窒素化合物および含燐化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項5に記載の安定化されたヒドロキシルアミン溶液。
【請求項7】
3,4−ジヒドロキシ安息香酸を有効成分とすることを特徴とするヒドロキシルアミンの安定化剤。

【公開番号】特開2006−188417(P2006−188417A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351859(P2005−351859)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】