説明

ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブ、その製造方法およびカーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマー

本発明は、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブであって、その表面が、表面に共有結合された、一般式(1)及び/又は一般式(2)[式中、(CNT)はカーボンナノチューブの表面を表し、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基又はアリール基である。]で示される基から選択されるヒドロキシアルキルエステル基を有する、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブに関する。本発明は更に、カーボンナノチューブのカルボン酸基とエポキシドとの反応によるヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの製造方法、前記カーボンナノチューブが共有結合されたポリウレタンポリマー、前記ポリマーの製造方法、及びポリマーを製造するための前記カーボンナノチューブの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブであって、その表面が表面に共有結合されたヒドロキシアルキルエステル基を有するヒドロキシル基含有カーボンナノチューブに関する。本発明は更に、そのようなヒドロキシル基を含有するカーボンナノチューブの製造方法、カーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーの製造方法、並びにカーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーであって、カーボンナノチューブの少なくとも一部がポリウレタンポリマーに共有結合されたカーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、特有の性質で知られている。例えば、強度はスチールの約100倍であり、熱伝導性はダイヤモンドの約2倍であり、熱安定性は真空中2800℃にまでおよび、電気伝導性は銅の数倍であり得る。しかしながら、これらの構造に関連する特徴は、カーボンナノチューブを均一に分布させることができ、チューブと媒体を最大限接触させることができる(すなわち、媒体と混合でき、従って、安定に分散させることができる)場合にしか、分子レベルで得ることはできない。
【0003】
カーボンナノチューブおよびカーボンファイバーの化学的官能化により、幾つかの性質の中でも、それらの分散性を改善することができる。N. Tsubokawaによる概説(Polymer Journal 2005, 37, 637-655)は、そのような官能化についての複数のオプションを記載している。複雑な化学反応に加えて、例えば、1,1’−ジカルボキシフェロセンについての配位子交換反応、ポリスチレンとのリビングラジカル重合およびアジ化物との反応、この分野で知られているHNOによるカーボンナノチューブの酸化、およびそれらに基づく対応する変性も記載されている。Tsubokawaは、カルボキシル基の酸化的導入に続く化学作用について、3つのオプションを報告している。
【0004】
この目的に対する第一の方法は、塩化チオニルによる酸基の活性化、およびそれに続く求核試薬との更なる反応である。その欠点は、塩化チオニルの使用によって放出されるSOおよびHClである。第二の方法は、カーボンナノチューブのカルボキシル基とカップリング試薬(例えばペプチド化学から知られているDCC)との反応、およびそれに続く求核試薬との反応である。しかしながら、この方法は、高価なカップリング試薬の使用を必要とし、使用するカップリング試薬によって副生成物として難溶性ウレアを生成する。
【0005】
最後に、この概説に記載されている第三の方法は、気相から得られたカーボンファイバーに基づく(気相成長炭素繊維、VGCF)。この場合、交互開環によって、エポキシドおよび酸無水物のアニオン重合が起こる。このことは既に、同じ著者によって、Polymer Journal 2004, 36, 316-322に別個に記載されている。合成経路は、KOHによるカルボキシル基の脱プロトン化によって開始する。そのため、重合は、クラウンエーテルの存在下で実施しなければならず、これによって、この化学作用は非常にコスト高になり、廃棄物問題を伴う。特定の例では、カーボンファイバーのカルボキシレート基は、スチレンオキシドおよび無水フタル酸と反応する。カルボキシレート基とスチレンオキシド単独との反応が如何なる反応ももたらさないことは、表から推論することができる。
【0006】
ポリエステルポリオール合成におけるカルボキシル基の官能化は、DE 36 13 875 A1に開示されている。1未満の酸価、約20〜約400のヒドロキシル価および約2〜3の官能価を有するポリエステルポリオールを調製するため、ポリカルボン酸および/またはそれらの無水物と多価アルコールを縮合させる。これは有利には、150℃〜250℃の温度で、常套のエステル化触媒の不存在下、任意に減圧下で実施する。20〜5の酸価に達するまで重縮合させ、次いで、得られた重縮合物を、第三級アミンの存在下、カルボキシル基1個あたり1〜5molのアルキレンオキシド(例えば、1,2−プロピレンオキシドおよび/または好ましくはエチレンオキシド)でアルコキシル化する。第三級アミンは、N−メチルイミダゾール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エンおよびペンタメチレンジエチレントリアミンからなる群から選択される。触媒は必要に応じて、重縮合物の重量に基づいて0.001〜1.0重量%の量で使用する。100℃〜170℃の温度および1〜10barの圧力下で、アルコキシル化を実施することが有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 36 13 875 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】N. Tsubokawa, Polymer Journal 2005, 37, 637-655
【非特許文献2】N. Tsubokawa, Polymer Journal 2004, 36, 316-322
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまで、表面に存在するカルボキシル基に基づき、かつエステル官能基と遊離OH基の間に炭素原子2個分の距離があるヒドロキシアルキルエステル基が存在する官能化カーボンナノチューブの記載は存在しなかった。そのようなヒドロキシル基含有カーボンナノチューブは、特定の化学的環境の故にOH基による結合を必要とする官能化に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブであって、その表面が、表面に共有結合された、一般式(1)および/または一般式(2):
【化1】

[式中、(CNT)はカーボンナノチューブの表面を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
で示される基から選択されるヒドロキシアルキルエステル基を有する、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブを提案する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
異性体である一般式(1)および(2)で示される構造は、カーボンナノチューブ表面に存在するカルボキシル基またはカルボキシレート基と、R1基およびR2基を含有するエポキシドとの反応から誘導することができる。本発明において、エポキシド開環は、エステル基から炭素原子2個分の距離にOH基を有するカルボン酸エステルをもたらす。エポキシドがどのように開環するかによって、エステル基が、R1含有炭素原子に結合して式(1)に従うか、またはR2含有炭素原子に結合して式(2)に従う。R1基およびR2基の一方が水素であり、もう一方が水素でない場合は、第一級アルコールまたは第二級アルコールが得られる。
【0012】
本発明において、用語「アルキル」は一般に、N−アルキル、分岐アルキルおよび/またはシクロアルキルからなる群からの置換基を包含する。本発明において、用語「アリール」は一般に、単環式カルボアリール置換基または単環式ヘテロアリール置換基および/または多環式カルボアリール置換基または多環式ヘテロアリール置換基からなる群からの置換基を包含する。
【0013】
その後、カーボンナノチューブ表面を更に官能化するために、得られた遊離OH基を更なる反応で使用することができる。これら遊離OH基の含量は、カーボンナノチューブ1gあたりのOH基のmmolで表して、例えば0.1mmol/g〜5mmol/g、好ましくは0.5mmol/g〜1mmol/gであってよい。
【0014】
本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの1つの態様では、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である。R1およびR2が合わさって−(CH−である場合、そのような本発明のカーボンナノチューブの構造は、カーボンナノチューブ表面に存在するカルボキシル基またはカルボキシレート基とシクロヘキセンオキシドとの反応から誘導することができる。しかしながら、R1およびR2がそれぞれ水素であるか、またはR1が水素であってR2がメチルであることが好ましい。この場合、そのような本発明のカーボンナノチューブの構造は、カーボンナノチューブ表面に存在するカルボキシル基またはカルボキシレート基とエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応によって形成される。
【0015】
本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの別の態様では、カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、円筒型多重壁カーボンナノチューブ、スクロール型多重壁カーボンナノチューブ、マルチスクロール型多重壁カーボンナノチューブ、および/またはオニオン様構造を有する多重壁カーボンナノチューブからなる群から選択される。カーボンナノチューブが、5以上、好ましくは100以上の、外径に対する長さの比を有することが好ましい。
【0016】
連続または中断グラファイト層を1つしか有さない既に記載されている既知のスクロール型カーボンナノチューブとは対照的に、重なり合い、丸まった状態で存在する複数のグラフェン層からなるカーボンナノチューブ構造体も存在する。本発明では、このマルチスクロール型について申し述べる。そのようなカーボンナノチューブは、DE 10 2007 044031 A1に記載されており、その全てを参照されたい。単純スクロール型カーボンナノチューブに対するこの構造は、単一壁円筒状カーボンナノチューブ(円筒状SWNT)構造に対する多重壁円筒状カーボンナノチューブ(円筒状MWNT)構造に相当する。
【0017】
本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブが3nm〜100nmの直径を有することが好ましい。本発明において、直径はカーボンナノチューブの平均直径に基づく。直径は、5nm〜80nm、有利には6nm〜60nmの範囲内であってよい。カーボンナノチューブの長さは基本的には制限されない。しかしながら、例えば1μm〜100μm、有利には10μm〜30μmの範囲である。
【0018】
本発明は更に、
(a)表面に共有結合されたカルボキシル基を表面が有するカーボンナノチューブを供給する工程、
(b)工程(a)からのカーボンナノチューブとエポキシド:
【化2】

[式中、R1およびR2は独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
とを反応させる工程
を含む、本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【0019】
この合成方法は、カーボンナノチューブ表面での塩化カルボニルによるエステル化と比べて少なくとも一工程少ない。比較的穏やかな反応条件下でこの合成を実施できることも特に有利である。一般に、カーボンナノチューブ表面でのカルボキシル基の直接エステル化には、著しくより高い温度が必要とされ、その結果、ナノチューブの再凝集が起こり得るか、または化学的官能化の故にナノチューブの個別化が起こらない。その後、100μm〜200μmの範囲に直径を有する比較的大きいナノチューブ凝集体を、複雑な濾過方法で除去しなければならない。そうでなければ、更なる加工(例えばポリマー成形)の後に破損しやすい部位が得られる。酸塩化物法と比べた場合の別の利点は、本発明の方法が、もっぱら少量の触媒で進行する付加反応であるという点である。一方、酸塩化物によるエステル化では、化学量論量の塩化水素が放出され、これを最終的に除去しなければならない。
【0020】
本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブは、本発明の方法から得られると記載することができる。
【0021】
表面に共有結合されたカルボキシル基を含有し、出発物質として使用されるカーボンナノチューブは、HNO法のような酸化法によって未官能化カーボンナノチューブから得ることができる。表面におけるカルボキシル基の含量は、伝導度滴定によって測定することができ、カーボンナノチューブ1gあたりのカルボキシル基のmmolで表すことができる。含量は、例えば0.1mmol/g〜5mmol/g、好ましくは0.5mmol/g〜1mmol/gであってよい。
【0022】
工程(a)において、カーボンナノチューブを、溶媒中分散体として供給することが有利である。従って、この溶媒は、溶媒が使用するエポキシドと望ましくない副反応を起こさないように選択すべきである。適当な溶媒は、芳香族炭化水素、例えばトルエンまたはキシレン、シクロアルカン、例えばシクロヘキサン、アルカン、例えばヘキサン、およびエーテル、特に環状エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはジオキサンを包含する。分散体中のカーボンナノチューブの濃度は、例えば0.1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%の範囲であり得る。分散体は、高速で、例えば20,000rpm〜25,000rpmで、ローター/ステーターシステムを有する撹拌機を用いて得られる。加えて、超音波を分散体に作用させることもできる。
【0023】
工程(b)における反応を所望の方向に促進するために、カーボンナノチューブ表面上カルボキシル基に対して大過剰のエポキシドを使用する。反応条件下でエポキシドが気体状であるならば、反応圧力(絶対圧力)は例えば2bar〜5barであり得る。
【0024】
この方法の1つの態様では、工程(b)におけるカーボンナノチューブの反応は、触媒としての第三級アミンの存在下で実施する。本発明では、第三級ジアミンが好ましい。その例は、ジアザビシクロアルカン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロアルケン、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、トリアミン、例えばペンタメチレンジエチレントリアミン、およびビス(2−ジアルキルアミノアルキル)エーテル、例えばビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルである。特に、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル触媒は、エポキシド一分子だけをカルボキシル基と反応させるので、ポリエーテル鎖は形成されない。
【0025】
この方法の別の態様では、工程(b)におけるエポキシド中のR1およびR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である。工程(b)におけるエポキシドは、好ましくは末端アルキレンオキシドである。この場合、R1基およびR2基の少なくとも一方は水素である。そのようなアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびn−ブチレンオキシドである。本発明では、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが好ましい。
【0026】
この方法の別の態様では、工程(a)におけるカーボンナノチューブを、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、円筒型多重壁カーボンナノチューブ、スクロール型多重壁カーボンナノチューブ、マルチスクロール型多重壁カーボンナノチューブ、および/またはオニオン様構造を有する多重壁カーボンナノチューブからなる群から選択する。工程(a)におけるカーボンナノチューブが3nm〜100nmの直径を有することが有利である。別の詳細並びに好ましい長さおよび直径は、本発明のカーボンナノチューブに関する先の段落で既に記載している。従って、繰り返しを回避するために、先の段落を参照されたい。
【0027】
この方法の別の態様では、工程(b)における反応は、100℃〜150℃の温度で実施する。有利には、本発明における反応温度は、120℃〜130℃である。そのような比較的低い反応温度は、カーボンナノチューブの再凝集が主流にならないようにして、カーボンナノチューブを官能化することを可能にする。製造技術の観点からは、アルコールによるカルボキシル基の直接エステル化に一般に必要とされる温度より低いそのような温度は付加的に、エネルギー節約に関係する。
【0028】
本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブは、有利なことに、ポリウレタンポリマーの合成において付加的に使用することができ、従って、ポリマーマトリックスに共有結合によって組み込むことができる。従って、本発明は更に、
(a)表面に共有結合されたカルボキシル基を表面が有するカーボンナノチューブのポリオール中分散体を供給する工程、
(b)工程(a)からの分散体とエポキシド:
【化3】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
とを反応させる工程、および
(c)工程(b)で得た分散体とポリイソシアネートとを反応させる工程
を含む、カーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーの製造方法を提供する。
【0029】
理論に縛られるわけではないが、工程(b)の後に得られる本発明のカーボンナノチューブの遊離ヒドロキシル基も同様に、ポリウレタンポリマーの生成中、イソシアネート基と少なくとも部分的に反応すると考えられる。その結果、ポリウレタンポリマー鎖は、カーボンナノチューブ表面に共有結合する。
【0030】
表面に共有結合されたカルボキシル基を含有し、出発物質として使用されるカーボンナノチューブは、HNO法のような酸化法によって未官能化カーボンナノチューブから得ることができる。表面におけるカルボキシル基の含量は、伝導度滴定によって測定することができ、カーボンナノチューブ1gあたりのカルボキシル基のmmolで表すことができる。含量は、例えば0.1mmol/g〜5mmol/g、好ましくは0.5mmol/g〜1mmol/gであってよい。
【0031】
工程(a)におけるカーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、円筒型多重壁カーボンナノチューブ、スクロール型多重壁カーボンナノチューブ、マルチスクロール型多重壁カーボンナノチューブ、および/またはオニオン様構造を有する多重壁カーボンナノチューブからなる群から選択することができる。工程(a)におけるカーボンナノチューブが3nm〜100nmの直径を有することが有利である。別の詳細並びに好ましい長さおよび直径は、本発明のカーボンナノチューブに関する先の段落で既に記載している。従って、繰り返しを回避するために、先の段落を参照されたい。
【0032】
工程(a)では、カーボンナノチューブを、溶媒中分散体として供給する。分散体中のカーボンナノチューブの濃度は、例えば0.1重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜5重量%の範囲であってよい。分散体は、高速で、例えば20,000rpm〜25,000rpmで、ローター/ステーターシステムを有する撹拌機を用いて得られる。加えて、本発明では、超音波を分散体に作用させることもできる。
【0033】
適当なポリオールは基本的に、ポリウレタン化学で常套のポリオールであり、その例は、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリウレタンポリオールおよびポリエステルポリオールである。そのようなポリオールは、"Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie", 第4版、第19巻、第304頁〜第305頁、Verlag Chemie, Weinheim、または"Polyurethane - Lacke, Kleb- und Dichtstoffe" [Polyurethanes - Coatings, Adhesives and Sealants] by Ulrich Meier-Westhues, Vincentz Network, Hanover, 2007に記載されている。
【0034】
工程(b)における反応を所望の方向に促進するために、カーボンナノチューブ表面上カルボキシル基に対して大過剰のエポキシドを使用する。反応条件下でエポキシドが気体状であるならば、反応圧力(絶対圧力)は例えば2bar〜10barであり得る。
【0035】
適当なポリイソシアネートは、2以上のNCO官能価を有する芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のポリイソシアネートである。
【0036】
そのような適当なポリイソシアネートの例は、ブチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の異性体含量を有するそれらの混合物、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートおよび/またはトリレン−2,6−ジイソシアネート(TDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネートおよび/またはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,3−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼンおよび/または1,4−ビス(2−イソシアナトプロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、およびC〜Cアルキル基を含有するアルキル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)である。
【0037】
前記したポリイソシアネートに加えて、ウレトジオン構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、アロファネート構造、ビウレット構造、イミノオキサジアジンジオン構造および/またはオキサジアジントリオン構造を有する部分的または完全変性ジイソシアネート、並びに一分子あたり3個以上のNCO基を含有する未変性ポリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートを使用することもできる。
【0038】
ポリイソシアネート成分として、前記ポリイソシアネートおよびポリオールから生成されたNCO末端プレポリマーを付加的に使用することもできる。
【0039】
ポリイソシアネートのNCO基のNCO反応性OH基に対するモル比は、例えば0.90〜1.15、好ましくは1.0〜1.1、より好ましくは1.02〜1.07であってよい。
【0040】
この方法の1つの態様では、工程(b)における分散体とアルキレンオキシドとの反応は、触媒としての第三級アミンの存在下で実施する。本発明では、第三級ジアミンが好ましい。その例は、ジアザビシクロアルカン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロアルケン、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、トリアミン、例えばペンタメチレンジエチレントリアミン、およびビス(2−ジアルキルアミノアルキル)エーテル、例えばビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルである。特に、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル触媒は、エポキシド一分子だけをカルボキシル基と反応させるので、ポリエーテル鎖は形成されない。ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル触媒を含んでなる系において、良好な分散体が得られることが付加的に見出された。
【0041】
この方法の別の態様では、工程(a)におけるポリオールは、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである。ポリエーテルポリオールは、好ましくは25mgKOH/g〜550mgKOH/g、有利には100mgKOH/g〜520mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。もっぱらまたは主にプロピレンオキシドに基づいてポリエーテルポリオールを生成する場合が好ましい。ポリエステルポリオールは、好ましくは100mgKOH/g〜550mgKOH/g、有利には200mgKOH/g〜500mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。前記ポリオールが250〜5000g/mol、好ましくは400〜3500g/molの範囲の分子量および1.8〜6、好ましくは1.95〜3.5の官能価を有することが可能である。
【0042】
この方法の別の態様では、工程(b)におけるエポキシド中のR1およびR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である。工程(b)におけるエポキシドは、好ましくは末端アルキレンオキシドである。この場合、R1基およびR2基の少なくとも一方は水素である。そのようなアルキレンオキシドの例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびn−ブチレンオキシドである。本発明では、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが好ましい。
【0043】
この方法の別の態様では、工程(c)におけるポリイソシアネートは、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(MDI)に基づくポリイソシアネートである。ポリイソシアネートがMDIに基づくという事実は、ポリイソシアネートが単量体、多環式または重合体MDIであることを意味する。例えば、ポリイソシアネートは、25重量%〜35重量%のNCO含量を有してよい。NCO含量は29重量%〜31重量%の範囲であってもよい。
【0044】
本発明は更に、カーボンナノチューブの少なくとも一部がポリウレタンポリマーに共有結合されたカーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーを提供する。ポリウレタンポリマーは、カーボンナノチューブ表面に共有結合されたヒドロキシアルキルエステル基およびポリウレタンポリマーの遊離イソシアネート基から形成されたウレタン結合が、カーボンナノチューブとポリウレタンポリマーの間に存在し、ウレタン結合が、一般式(3)および/または一般式(4):
【化4】

[式中、(CNT)はカーボンナノチューブの表面を表し、(PUR)はポリウレタンポリマーを表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
からなる群から選択されることを特徴とする。
【0045】
一般式(3)および(4)で示される構造は、一般式(1)および(2)で示される本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブから出発し、ポリウレタンポリマーへの結合をもたらす遊離OH基とイソシアネート基との反応によって誘導することができる。従って、本発明のポリウレタンポリマーもまた、本発明の前記方法から得られると記載することができる。
【0046】
本発明のポリウレタンポリマーでは、カーボンナノチューブを含有しないポリウレタンおよび本発明に従った官能化が実施されていないカーボンナノチューブを含有するポリウレタンと比べて、剛化が見られる場合がある。理論に縛られるわけではないが、カーボンナノチューブ表面へのポリウレタンの反応結合が、ポリマーマトリックス内に、より均一な分布をもたらし、同時に、ポリウレタンの安定した結合が、機械的性質に好ましく影響すると考えられる。
【0047】
カーボンナノチューブ(CNT)、R1基およびR2基、並びにポリウレタンポリマー(PUR)を得るための反応成分に関する詳細は、好ましい態様も含めて、先の段落で既に記載している。従って、繰り返しを回避するために、本発明のポリウレタンポリマーに関して、それら段落を全て参照されたい。
【0048】
本発明のポリウレタンポリマーにおけるカーボンナノチューブの割合は、例えば0.1重量%〜5重量%、好ましくは0.5重量%〜1重量%であり得る。そのような低い割合であっても、カーボンナノチューブは材料を著しく強化することができる。
【0049】
本発明のポリウレタンポリマーは、例えば1N/mm〜10000N/mmの弾性率を有し得る。1つの態様では、ポリウレタンポリマーは、10N/mm〜5000N/mm、好ましくは100N/mm〜1000N/mmの弾性率を有するエラストマーである。弾性率は、歪み0.025%〜0.05%の最小変形を伴うDIN 53504に従った引張試験からの応力−歪曲線の動作点における傾きとして測定することができる。
【0050】
本発明は更に、本発明のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの、カーボンナノチューブ含有ポリマーを製造するための使用を提供する。これは例えば、本発明のカーボンナノチューブをポリマー自体に添加するかまたはポリマーを得るための反応混合物に添加する方法であってよい。そのような反応混合物は、ポリウレタンをもたらすことができる。別の例は、エポキシ樹脂をもたらす反応混合物である。遊離ヒドロキシル基は、ポリマーマトリックス内で、本発明のカーボンナノチューブを共有結合するために使用され得る。しかしながら、ポリマーマトリックス内で共有結合せずに、本発明のカーボンナノチューブが存在することも可能である。
【0051】
以下の実施例によって、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0052】
実施例において使用した材料および略称を以下に示す。
Desmophen(登録商標) VP.PU 22HS51:112mgKOH/gのOH価を有する二官能性ポリエーテルポリオール(Bayer MaterialScience)
Desmodur(登録商標) CD-S:29.5%のNCO含量を有し、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネートに基づく変性ポリイソシアネート(Bayer MaterialScience)
DABCO 33-LV:アミン触媒;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;プロピレングリコール中33%溶液(Air Products)
Niax A1:アミン触媒;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル;ジプロピレングリコール中70%溶液(Momentive Performance Materials Inc.)
DBTL:ジラウリン酸ジブチル錫
DPG:ジプロピレングリコール
酸化CNT:カルボキシル基が既知の方法によって表面に導入されている、Baytubes(登録商標) C150P型の酸化カーボンナノチューブ(Bayer MaterialScience)
【0053】
実施例で得たエラストマーの機械的性質を、以下の標準法によって測定した。
硬度[ショアA]:DIN 53505
引張強さ[MPa]:DIN 53504
最大歪[%]:DIN 53504
弾性率[N/mm]:歪み0.025%〜0.05%の最小変形を伴うDIN 53504に従った引張試験からの応力−歪曲線の動作点における傾きとして。
【0054】
実施例に関する一般的な注釈:
HNO法によって酸化したBaytubes C150P(多重壁カーボンナノチューブ)は、0.5mmol/gのカルボキシル基濃度を有する(伝導度滴定)。これらの酸化カーボンナノチューブを、2つの異なった濃度(1重量%および3重量%)でキャリヤーポリエーテルポリオールに添加した。この目的のため、酸化カーボンナノチューブをローター/ステーターシステム(T 18 basic ULTRA-TURRAX(登録商標)、IKA Werke GmbH & Co. KG(ドイツ国シュタウフェン在))で粗く予備分散してナノチューブの媒体中一次分散体を得、酸化カーボンナノチューブを媒体で湿潤した。ナノチューブを単に撹拌するだけでは、それに続く化学反応に使用できる安定な分散体の調製に不十分であった。
【0055】
まず、この分散体を、アミン系触媒が導入された適当な反応器に添加し、プロピレンオキシドと混合した。反応の進行は、酸価の測定によって確認した。反応が完了した時点で、過剰のプロピレンオキシドを留去した。
【0056】
分散体の最高品質を確保するために、このようにして得たPO官能化カーボンナノチューブ含有ポリオール分散体を、イソシアネートとの反応直前に、ローター/ステーターシステム(UltraTURRAX)で再度剪断し、超音波で処理した(HD 3200 sonicator probe、BANDELIN electronic GmbH & Co. KG(ドイツ国ベルリン在))。
【0057】
この微細分散体を、触媒の添加前および添加後に、減圧下で短時間脱気した。イソシアネートを分散体と一緒に短時間撹拌した。この反応混合物を2つパーツからなる金型に注ぎ、70℃で加熱した。
【0058】
このようにして得たカーボンナノチューブ含有ポリウレタンエラストマーを、硬度および引張強さについて分析した。
【0059】
実施例1:(予備分散、1重量%、分散体1)
まず、150ml容のビーカーに、1gの酸化CNTを導入し、99gのDesmophen(登録商標) VP.PU 22HS51を添加した。この混合物を、氷水で冷却しながら、ローター/ステーターシステム(T 18 basic ULTRA-TURRAX(登録商標)、IKA Werke GmbH & Co. KG(ドイツ国シュタウフェン在))を用いて24,000rpmで2分間剪断した。
【0060】
実施例2:(予備分散、3重量%、分散体2)
まず、150ml容のビーカーに、3gの酸化CNTを導入し、97gのDesmophen(登録商標) VP.PU 22HS51を添加した。この混合物を、氷水で冷却しながら、ローター/ステーターシステム(T 18 basic ULTRA-TURRAX(登録商標)、IKA Werke GmbH & Co. KG(ドイツ国シュタウフェン在))を用いて24,000rpmで2分間剪断した。
【0061】
実施例3:(官能化、分散体3)
まず、500ml容のガラス製加圧反応器に、酸化CNTのDesmophen(登録商標) VP.PU 22HS51中1重量%分散体(分散体1)227gおよびビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル0.227gを保護ガス(窒素)下で導入し、次いで、125℃に加熱した。続いて、プロピレンオキシド10gを計量添加すると、その過程で反応器圧力は3.0bar(絶対圧力)に上昇した。125℃で撹拌しながら5時間反応させた後、揮発性成分を90℃(1mbar)で留去し、その後、反応混合物を室温に冷却した。反応開始時、反応混合物の酸価は0.55mgKOH/gであり、反応終了時は0.08mgKOH/gであった。
【0062】
実施例4:(官能化、分散体4)
まず、500ml容のガラス製加圧反応器に、酸化CNTのDesmophen(登録商標) VP.PU 22HS51中3重量%分散体(分散体2)227gおよびビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル0.227gを保護ガス(窒素)下で導入し、次いで、125℃に加熱した。続いて、プロピレンオキシド10gを計量添加すると、その過程で反応器圧力は3.0bar(絶対圧力)に上昇した。125℃で撹拌しながら5時間反応させた後、揮発性成分を90℃(1mbar)で留去し、その後、反応混合物を室温に冷却した。反応開始時、反応混合物の酸価は0.86mgKOH/gであり、反応終了時は0.04mgKOH/gであった。
【0063】
実施例5:(微分散、1重量%、分散体3A)
まず、150ml容のビーカーに、90gの分散体3を導入した。この混合物を、氷水で冷却しながら、ローター/ステーターシステム(T 18 basic ULTRA-TURRAX(登録商標)、IKA Werke GmbH & Co. KG(ドイツ国シュタウフェン在))を用いて24,000rpmで2分間剪断し、次いで、総エネルギー投入量が75kJになるまで、氷で同様に冷却しながら超音波(HD 3200 sonicator probe、BANDELIN electronic GmbH & Co. KG(ドイツ国ベルリン在))で処理した。このようにして得た分散体3Aを、イソシアネートとの更なる反応に直接使用した。
【0064】
実施例6:(微分散、3重量%、分散体4A)
まず、150ml容のビーカーに、90gの分散体4を導入した。この混合物を、氷水で冷却しながら、ローター/ステーターシステム(T 18 basic ULTRA-TURRAX(登録商標)、IKA Werke GmbH & Co. KG(ドイツ国シュタウフェン在))を用いて24,000rpmで2分間剪断し、次いで、総エネルギー投入量が75kJになるまで、氷で同様に冷却しながら超音波(HD 3200 sonicator probe、BANDELIN electronic GmbH & Co. KG(ドイツ国ベルリン在))で処理した。このようにして得た分散体4Aを、イソシアネートとの更なる反応に直接使用した。
【0065】
実施例7:PURエラストマーの調製
まず、1リットル容のフランジ付容器に、(Baytubes C150Pを含むまたは含まない)ポリオールまたは酸化CNT含有ポリオール分散体(3Aまたは4A)を導入し、触媒の添加前および添加後に、短時間脱気した。イソシアネートを室温で短時間撹拌し、反応混合物を2つのパーツからなる金型に注ぎ、次いで、加熱サイクルに付した。
【0066】
以下の表に、混合物PUR1〜PUR6を個々に再現する。
【表1】

【0067】
得られたエラストマーPUR1〜PUR6の機械的性質を、以下の2つの表に記載する。
【表2】

【表3】

【0068】
比較しやすくするため、カーボンナノチューブ充填エラストマーについて測定した材料特性の、対応する未充填エラストマーPUR1またはPUR4と比較したパーセント変化を以下の表に示す。
【表4】

【0069】
この結果から、本発明に従って官能化されたカーボンナノチューブのポリウレタンエラストマーに対する強化の影響が、明らかである。未充填エラストマーPUR1と比較すると、本発明のカーボンナノチューブで変性したエラストマーPUR3は、10%大きいショアA硬度、19.5%大きい引張強さ、6.7%低い最大歪、および5.9%大きい弾性率を有していた。全く官能化されていないBaytubes(登録商標) C150P型カーボンナノチューブを含んでなるエラストマーPUR2は、未充填エラストマーPUR1と比較すると、ショア硬度が全く増大せず、引張強さはほとんど増大せず、最大歪は実質的に増大し、弾性率は低下した。
【0070】
同様に、本発明のカーボンナノチューブで変性したエラストマーPUR6を、対応する未充填エラストマーPUR4と比較すると、19%大きいショアA硬度、82.9%大きい引張強さ、33%低い最大歪、および93.2%大きい弾性率を有していた。全く官能化されていないBaytubes(登録商標) C150P型カーボンナノチューブを含んでなるエラストマーPUR5は、未充填エラストマーPUR4と比較すると、ショア硬度および引張強さが僅かに増大し、最大歪が若干低下し、カーボンナノチューブで変性した本発明のエラストマーPUR6と比較するとずっと少ない程度に弾性率が増大した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブであって、その表面が、表面に共有結合された、一般式(1)および/または一般式(2):
【化1】

[式中、(CNT)はカーボンナノチューブの表面を表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
で示される基から選択されるヒドロキシアルキルエステル基を有することを特徴とする、ヒドロキシル基含有カーボンナノチューブ。
【請求項2】
R1およびR2が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である、請求項1に記載のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブ。
【請求項3】
カーボンナノチューブが、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、円筒型多重壁カーボンナノチューブ、スクロール型多重壁カーボンナノチューブ、マルチスクロール型多重壁カーボンナノチューブ、および/またはオニオン様構造を有する多重壁カーボンナノチューブからなる群から選択される、請求項1に記載のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブ。
【請求項4】
(a)表面に共有結合されたカルボキシル基を表面が有するカーボンナノチューブを供給する工程、および
(b)工程(a)からのカーボンナノチューブとエポキシド:
【化2】

[式中、R1およびR2は独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
とを反応させる工程
を含む、請求項1に記載のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項5】
工程(b)におけるカーボンナノチューブの反応を、触媒としての第三級アミンの存在下で実施する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)におけるエポキシド中のR1およびR2が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)におけるカーボンナノチューブを、単一壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ、円筒型多重壁カーボンナノチューブ、スクロール型多重壁カーボンナノチューブ、マルチスクロール型多重壁カーボンナノチューブ、および/またはオニオン様構造を有する多重壁カーボンナノチューブからなる群から選択する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程(b)における反応を100℃〜150℃の温度で実施する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(a)表面に共有結合されたカルボキシル基を表面が有するカーボンナノチューブのポリオール中分散体を供給する工程、
(b)工程(a)からの分散体とエポキシド:
【化3】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
とを反応させる工程、および
(c)工程(b)で得た分散体とポリイソシアネートとを反応させる工程
を含む、カーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーの製造方法。
【請求項10】
工程(b)における分散体とアルキレンオキシドとの反応を、触媒としての第三級アミンの存在下で実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)におけるポリオールがポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)におけるエポキシド中のR1およびR2が、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルおよび/またはフェニルであるか、或いは合わさって−(CH−である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)におけるポリイソシアネートが、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネートに基づくポリイソシアネートである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
カーボンナノチューブの少なくとも一部がポリウレタンポリマーに共有結合されたカーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマーであって、カーボンナノチューブ表面に共有結合されたヒドロキシアルキルエステル基およびポリウレタンポリマーの遊離イソシアネート基から形成されたウレタン結合が、カーボンナノチューブとポリウレタンポリマーの間に存在し、ウレタン結合が、一般式(3)および/または一般式(4):
【化4】

[式中、(CNT)はカーボンナノチューブの表面を表し、(PUR)はポリウレタンポリマーを表し、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、アルキル基またはアリール基である。]
からなる群から選択されることを特徴とする、カーボンナノチューブ含有ポリウレタンポリマー。
【請求項15】
請求項1に記載のヒドロキシル基含有カーボンナノチューブの、カーボンナノチューブ含有ポリマーを製造するための使用。

【公表番号】特表2012−523360(P2012−523360A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503894(P2012−503894)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002002
【国際公開番号】WO2010/115550
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】