説明

ヒドロキノンアンサマイシンを用いた治療方法

本発明はヒドロキノンアンサマイシン化合物を投与することにより癌などの過剰増殖性障害を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2005年7月13日に出願された米国特許出願番号11/180,314の一部継続出願であり;これはそのまま本明細書に引用される。
発明の背景
熱ショックタンパク質90(「Hsp90」)は細胞バイアビリティのために不可欠であり、二重シャペロン機能を示す、非常に豊富なタンパク質である(J. Cell Biol. (2001) 154:267-273, Trends Biochem. Sci. (1999) 24:136-141)。これは、熱ショックなどの種々の環境ストレスによりその天然コンフォメーションが変化した後に、多くのタンパク質と相互作用し、適切なタンパク質の折り畳みを確認し、非特異的な凝集を予防することにより、細胞ストレス反応に重要な役割を果たす(Pharmacological Rev. (1998) 50:493-513)。
【背景技術】
【0002】
さらに近年の結果は、Hsp90がまた、おそらく変異タンパク質の不適切な折り畳みを修正することにより、変異の効果に対する緩衝にも関与することができることを示唆する(Nature (1998) 396:336-342)。しかし、Hsp90はまた、正常な生理学的条件下、重要な調節的役割を有し、約40が知られている多くの特異的クライアントタンパク質のコンフォメーション安定性および成熟にも関与する(Expert. Opin. Biol Ther. (2002) 2: 3-24を参照のこと)。Hsp90アンタゴニストは現在、Hsp90活性の1以上の態様を阻害することにより病態または障害についての治療効果が得ることができる多数の生物学的事情で探索されている。主な焦点が癌などの増殖性障害であるにもかかわらず、他の病態を治療するためのHsp90アンタゴニストの使用が探索されている。
【0003】
ゲルダナマイシンは、天然物のベンゾキノン含有アンサマイシンファミリーのメンバーである大環状ラクタムである。腫瘍細胞を殺すためのゲルダナマイシンのナノモル有効性および明らかな選択性、ならびに哺乳動物細胞における主な標的がHsp90であるという発見は、抗癌剤としての発展における興味を刺激している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの分子の極めて低い溶解性および肝毒性とゲルダナマイシン投与との関連により、治療用途のための承認可能な薬剤の発展における困難性が引き起こされている。特に、ゲルダナマイシンは低い水溶解性を有し、治療的有効量にて送達することを困難にしている。結果的に、ベンゾキノン含有アンサマイシンのより可溶な類似体の発見の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、癌などの過剰増殖と関連する障害を治療および調節する方法を目的とする。
ある態様において、本発明は哺乳動物における異常状態の治療方法に特徴付けられ、ここに、異常状態はcKitキナーゼにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する。該方法は、治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む。異常状態は、肥満細胞症、1以上の肥満細胞腫の存在、喘息、アレルギー関連慢性鼻炎、および1以上の消化管間質腫瘍の存在からなる群から選択することができる。
【0006】
別の態様において、本発明は哺乳動物における骨髄増殖性疾患の治療方法に特徴付けられ、ここに、該方法は治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む。骨髄増殖性疾患は本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症および好酸球増加症候群からなる群から選択することができる。
別の態様において、本発明は哺乳動物における異常状態の治療方法に特徴付けられ、ここに、異常状態はPDGFRαにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱を伴い、該方法は治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0007】
別の態様において、本発明は治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法に特徴付けられ、ここに、過剰増殖性障害は変異タンパク質;または機能獲得型変異タンパク質、例えばEGFR、VEGFR、Flt-3、Her-2もしくはb-Rafにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する。障害は多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、少なくとも一つの消化管間質腫瘍の存在、乳癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、黒色腫および前立腺癌からなる群から選択することができる。
【0008】
別の態様において、本発明は治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法に特徴付けられ、ここに、過剰増殖性障害は融合タンパク質、例えばBcr-Abl、Tpr-MetまたはRunx1-Etoにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する。該障害は慢性骨髄性白血病であることができる。
【0009】
さらに別の態様において、本発明は治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法に特徴付けられ、ここに、過剰増殖性障害はHsp90のクライアントタンパク質、例えばChk1、テロメラーゼ、Hif1α、MMP2、Met、FAK、RIP、PLKまたはNPM-ALにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する。
【0010】
本発明はまた、治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物を哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法にも特徴付けられ、ここに、過剰増殖性障害はZap-70、Akt、Her2、IKKおよびNF-カッパBからなる群から選択されるタンパク質と関連する。
【0011】
本発明の態様としては、以下の1以上の特徴を挙げることができる:哺乳動物はヒトであることができ;投与方法は吸入、経口、静脈内、舌下、眼内、経皮、直腸、膣内、局所、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、口腔投与によることができ;ヒドロキノンアンサマイシン化合物は式1:
【化1】

[式中、それぞれ独立して:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
X-は医薬的に許容される酸の共役塩基であり;
Rはそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14またはハライドであり;R2は水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1およびR2は結合している炭素と一緒になって、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-または-(C=N-R)-を示し;
R3およびR4はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR3はR4と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
【0012】
R5はH、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化2】

1a
(式中、R17は独立して水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)および-CH2O-ヘテロシクリルからなる群から選択される)
で示される基からなる群から選択され;
R6およびR7はともに水素であるか;またはR6およびR7は一緒になって結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
【0013】
R10およびR11はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR10およびR11はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR13およびR14はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R16はそれぞれ、独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5または6であり;
【0014】
R18はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択されるか;またはR18はR19と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員環であり;
R20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ、独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式1の立体中心における絶対立体化学はRもしくはSまたはその混合であることができ、二重結合の立体化学はEもしくはZまたはその混合であることができる]
で示される化合物またはその遊離塩基であることができる。特に、ヒドロキノンアンサマイシン化合物は17-アリルアミノ-17-デメトキシ-18,21-ジヒドロゲルダナマイシンまたはその医薬的に許容される塩、例えば17-アリルアミノ-17-デメトキシ-18,21-ジヒドロゲルダナマイシンの塩酸塩であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の詳述
定義
本明細書において用いられる用語の定義は、化学および医学分野における各用語について認識される現在の最先端の定義を包含するものである。必要に応じて、例示を提供する。定義は、具体的な例に限定されなければ、個別にまたはより大きな基の一部として、本明細書を通して用いられる用語に適用される。
【0016】
立体化学が具体的に示されていなければ、本発明化合物のすべての立体異性体が純粋な化合物としてならびにその混合物として本発明の範囲内に包含される。特に示されていなければ、個別の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、およびその組合せおよび混合物は本発明によりすべて包含される。多形結晶体および溶媒和物もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0017】
本明細書において、用語「ベンゾキノンアンサマイシン」は、大環状ラクタムを含み、さらに環中に唯一のラクタムと該ラクタム環中にベンゾキノン部分を含む化合物を意味し、ここに、該ベンゾキノン部分は少なくとも一つの窒素置換基を有し、少なくとも一つの窒素置換基はラクタム環中の唯一のアミド部分の部分である。天然ベンゾキノンアンサマイシンの具体例としては、ゲルダナマイシンおよびハービマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ゲルダナマイシン類似体」は、例えば化学的操作によりゲルダナマイシン;例えば17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)または17-(2-ジメチルアミノエチル)アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-DMAG)に由来することができるベンゾキノンアンサマイシンを意味する。本明細書において、用語「ヒドロキノンアンサマイシン」は、ベンゾキノン部分が対応するヒドロキノン部分に還元(二電子還元)される、ベンゾキノンアンサマイシンを意味する。簡略化した系におけるそのような還元の例は、ベンゾキノンのヒドロキノンへの二電子還元である。
【0018】
本明細書において、用語「単離」は、化合物が細胞または有機体になく、典型的に本来はともに存在するいくつかまたはすべての成分から分離されていることを意味する。
【0019】
本明細書において、用語「純粋」は単離されたサンプルが少なくとも60重量%の化合物を含むことを意味する。好ましくは、単離されたサンプルは少なくとも70重量%の化合物を含む。より好ましくは、単離されたサンプルは少なくとも80重量%の化合物を含む。さらにより好ましくは、単離されたサンプルは少なくとも90重量%の化合物を含む。最も好ましくは、単離されたサンプルは少なくとも95重量%の化合物を含む。化合物の単離されたサンプルの純度は多くの方法またはその組合せにより評価することができ;例えば薄層、分取用またはフラッシュクロマトグラフィー、質量分析、HPLC、NMR分析などである。
【0020】
用語「ヘテロ原子」は当分野にて認識されており、炭素または水素以外の任意の原子を意味する。例示的なヘテロ原子としては、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびセレンが挙げられる。
【0021】
用語「アルキル」は当分野にて認識されており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基などの飽和脂肪族基が挙げられる。いくつかの具体的態様にて、直鎖または分枝鎖アルキルはその骨格中に約30以下(例えば直鎖についてC1-C30、分枝鎖についてC3-C30)、あるいは約20以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造中に約3〜約10、あるいは約5、6または7の炭素原子を有する。
【0022】
炭素数が特に明記されなければ、「低級アルキル」は上記に定義されるように、アルキル基を意味するが、その骨格構造中に1〜約10、あるいは1〜約6の炭素原子を有する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の鎖長を有する。
【0023】
用語「アラルキル」は当分野にて認識されており、アリール基(例えば芳香族またはヘテロ芳香族基)で置換されているアルキル基を意味する。
【0024】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は当分野にて認識されており、鎖中の不飽和脂肪族基類似体および上記アルキルへの可能な置換体を意味するが、少なくとも1の二重または三重結合をそれぞれ含む。
【0025】
用語「アリール」は当分野にて認識されており、0〜4のヘテロ原子を含むことができる5、6および7員単環式芳香族基、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを意味する。環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリールヘテロ環」または「ヘテロ芳香環」とも称される。芳香環は上記置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、-CF3、-CNなどで1以上の環の位置で置換することができる。用語「アリール」はまた、2以上の炭素が2の隣接する環(環は「縮合環」である)に共通である2以上の環を有する多環式環系(ここに、環の少なくとも1つは芳香環であり、例えば他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであることができる)も含む。
【0026】
用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロアリール」または「ヘテロ環基」は当分野にて認識されており、3〜約10員環構造、あるいは3〜約7員環を意味し、環構造は1〜4のヘテロ原子を含む。ヘテロ環はまた、多環式基であることもできる。ヘテロシクリル基としては、例えばチオフェン、チアンスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンなどのラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。ヘテロ環は上記置換基、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香環またはヘテロ芳香環部分、-CF3、-CNなどで1以上の位置にて置換することができる。
【0027】
用語「変異」は一般に、タンパク質の活性が野生型タンパク質よりも低いかまたは高いことを意味する。「変異」はまた、タンパク質が天然結合パートナーともはや相互作用することができなくなるように変化することも意味することができる。
【0028】
用語「適宜置換」は、アルキル、シクロアルキル アリールなどの化学基を意味し、ここに、1以上の水素は本明細書記載の置換基、例えばハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香環またはヘテロ芳香環部分、-CF3、-CNなどで置き換えることができる。
【0029】
用語「多環」または「多環式基」は当分野にて認識されており、2以上の炭素が2の隣接する環(例えば環は「縮合環」である)に共通である2以上の環(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリル)を意味する。隣接しない原子を通して結合する環は「架橋」環と称される。多環式基のそれぞれの環は上記置換基、例えばハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香環またはヘテロ芳香環部分、-CF3、-CNなどで置換することができる。
【0030】
用語「炭素環」は当分野にて認識されており、環のそれぞれの原子が炭素である、芳香環または非芳香環を意味する。
【0031】
用語「ニトロ」は当分野にて認識されており、-NO2を意味し;用語「ハロゲン」は当分野にて認識されており、-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;用語「スルフヒドリル」は当分野にて認識されており、-SHを意味し;用語「ヒドロキシル」は-OHを意味し;用語「スルホニル」は当分野にて認識されており、-SO2-を意味する。「ハライド」はハロゲンの対応するアニオンを示し、「疑似ハライド」はCottonおよびWilkinsonによる「Advanced Inorganic Chemistry」の560に記載の定義を有する。
【0032】
用語「アミン」および「アミノ」は当分野にて認識されており、非置換および置換の両方のアミン、例えば一般式:
【化3】

[式中、
R50、R51およびR52はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61であるか、またはR50およびR51はそれらが結合しているN原子と一緒になって、環構造中に4〜8原子を有するヘテロ環を完成し;R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環または多環式基であり;mは0または1〜8の範囲の整数である]
で示される部分を意味する。他の具体的態様において、R50およびR51(適宜R52)はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61である。従って、用語「アルキルアミン」は、それに結合した置換または非置換のアルキルを有する上記アミン基が挙げられ、すなわち少なくとも1のR50およびR51はアルキル基である。
【0033】
用語「アシルアミノ」は当分野にて認識されており、一般式:
【化4】

[式中、R50は上記に定義されるとおりであり、R54は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61(ここに、mおよびR61は上記に定義されるとおりである)である]
で示すことができる部分を意味する。
【0034】
用語「アミド」はアミノ置換カルボニルとして当分野に認識されており、一般式:
【化5】

[式中、R50およびR51は上記に定義されるとおりである]
で示すことができる部分を含む。本発明におけるアミドのいくつかの具体的態様は不安定であろうイミドを含まないだろう。
【0035】
用語「アルキルチオ」は、それに結合する硫黄基を有する上記に定義されるアルキル基を意味する。いくつかの具体的態様において、「アルキルチオ」部分は-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニルおよび-S-(CH2)m-R61の一つを表し、ここに、mおよびR61は上記に定義されるとおりである。代表的なアルキルチオ基としてはメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0036】
用語「カルボキシル」は当分野に認識されており、一般式:
【化6】

[式中、X50は結合であるか、または酸素もしくは硫黄であり、R55およびR56は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61または医薬的に許容される塩であり、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61であり、ここに、mおよびR61は上記に定義されるとおりである]
で示すことができる部分を含む。X50が酸素であり、R55またはR56が水素でない場合、式は「エステル」である。X50が酸素であり、R55が上記に定義されるものである場合、該部分はカルボキシル基として本明細書に示され、特にR55が水素である場合、式は「カルボン酸」である。X50が酸素であり、R56が水素である場合、式は「ギ酸塩」である。一般に、上記式の酸素原子が硫黄で置き換えられる場合、式は「チオールカルボニル」基である。X50が硫黄であり、R55またはR56が水素でない場合、式は「チオールエステル」である。X50が硫黄であり、R55が水素である場合、式は「チオールカルボン酸」である。X50が硫黄であり、R56が水素である場合、式は「チオールギ酸塩」である。一方、X50が結合であり、R55が水素でない場合、上記式は「ケトン」基である。X50が結合であり、R55が水素である場合、上記式は「アルデヒド」基である。
【0037】
用語「カルバモイル」は-O(C=O)NRR'(ここに、RおよびR'は独立してH、脂肪族基、アリール基またはヘテロアリール基である)を意味する。
用語「オキソ」はカルボニル酸素(=O)を意味する。
【0038】
用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は当分野にて認識されており、結合した酸素基を有する上記に定義されるアルキル基を意味する。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は酸素により共有結合される2の炭化水素である。従って、そのアルキルおよびエーテルを与えるアルキルの置換基は-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O--(CH2)m-R61(ここに、mおよびR61は上記のとおりである)の一つで示すことができるようなアルコキシルであるか、またはそれと同様のものである。
【0039】
用語「スルホネート」は当分野にて認識されており、一般式:
【化7】

[式中、R57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである]
で示される部分を意味する。
【0040】
用語「スルホネート」は当分野にて認識されており、一般式:
【化8】

[式中、R57は上記に定義されるとおりである]
で示される部分を含む。
【0041】
用語「スルホンアミド」は当分野にて認識されており、一般式:
【化9】

[式中、R50およびR56は上記に定義されるとおりである]
で示される部分を含む。
【0042】
用語「スルファモイル」は当分野にて認識されており、一般式:
【化10】

[式中、R50およびR51は上記に定義されるとおりである]
で示される部分を意味する。
【0043】
用語「スルホニル」は当分野にて認識されており、一般式:
【化11】

[式中、R58は以下の一つである:水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール]
で示される部分を意味する。
【0044】
用語「スルホキシド」は当分野にて認識されており、一般式:
【化12】

[式中、R58は上記に定義されるとおりである]
で示される部分を意味する。
【0045】
類似の置換がアルケニルおよびアルキニル基になされ、例えばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成することができる。
【0046】
各表現、例えばアルキル、m、nなどの定義は、いずれの構造においても2以上存在するときは、同じ構造のほかの定義と独立なものである。
【0047】
本明細書に開示されるいくつかの化合物は、特に幾何学的または立体異性体的形態にて存在することができ、これらは光学活性であることができる。本発明は、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、そのラセミ混合物、およびその他の混合物などのそのようなすべての化合物を包含する。別の不斉炭素原子はアルキル基などの置換基に存在することができる。すべてのそのような異性体ならびにその混合物は本発明に含まれるものである。
【0048】
例えば化合物の特定の鏡像異性体は、所望であるならば、不斉合成またはキラル補助剤による誘導体化により製造することができ、ここに、得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基は開裂して純粋な所望の鏡像異性体を提供する。あるいは、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含む場合、ジアステレオマー塩は適当な光学活性な酸または塩基で形成され、次いで当分野によく知られているフラクション結晶化法またはクロマトグラフィー法により形成されたジアステレオマーを分離し、次いで純粋な鏡像異性体を回収する。
【0049】
「置換」または「置換されている」は、置換が置換されている原子および置換基の許容される価数に従っており、置換が安定な化合物をもたらし、例えば転位、環化、脱離または他の反応などによる変換を自発的に受けないという暗黙の条件を含むことが理解されよう。
【0050】
用語「置換」はまた、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことも意図される。広範な態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環およびヘテロ環、芳香環および非芳香環置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば本明細書中、上記のものが挙げられる。許容される置換基は適当な有機化合物について1以上および同一または異なるものであることができる。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の価数を満足する本明細書記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。
【0051】
本明細書において、用語「保護基」は所望でない化学変換から反応性の高い官能基を保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例としては、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、それぞれアルデヒドおよびケトンのアセタールおよびケタールが挙げられる。保護基化学の分野はレビューされている(Greene, T.W.; Wuts, P.G.M. Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed.; Wiley: New York, 1991)。
【0052】
本発明の目的のために、化学元素はCAS版, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87, 内表紙の元素の周期表に従って認識される。
【0053】
用語「医薬的に許容される塩」または「塩」は1以上の化合物の塩を意味する。化合物の適切な医薬的に許容される塩としては、例えば化合物の溶液を塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸などの医薬的に許容される酸の溶液と混合することにより形成することができる酸付加塩が挙げられる。化合物が1以上の酸性部分を有する場合、医薬的に許容される塩は化合物の溶液を水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、アルキルアミンなどの医薬的に許容される塩基の溶液で処理することにより形成することができる。
【0054】
用語「医薬的に許容される酸」は十分な毒性を示さない無機酸または有機酸を意味する。医薬的に許容される酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、フェニルスルホン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
用語「共塩」または「共結晶」は、アンサマイシンの還元塩形態がアミノ酸の塩などの少なくとも1つの他の塩とともに存在する組成物を意味する。
【0056】
本明細書において用語「対象」は、処置、観察および/または実験の目的であるか、またはあった動物、典型的には哺乳動物またはヒトを意味する。用語が化合物または薬物の投与とともに用いられる場合、対象は化合物または薬物の処置、観察および/または投与の目的である。
【0057】
用語「共投与」および「共投与される」は、治療剤が患者にある程度同時に存在する限り、同時投与(同時に2以上の治療剤の投与)および時間変化投与(さらなる治療剤の投与と異なる時間における1以上の治療剤の投与)の両方を意味する。
【0058】
本明細書において、用語「治療的有効量」は研究者、獣医、臨床医または医師により模索される細胞培養、組織系、動物またはヒトにおける生物学的または医学的反応を導く活性な化合物または医薬品の量を意味し、これは処置される疾患、病態または障害の症状の緩和が挙げられる。
【0059】
用語「組成物」は、特定量の特定成分を含む生成物、ならびに特定量の特定成分、特に還元アンサマイシン塩(例えば硫酸塩)などの共塩とアミノ酸(例えばグリシン)の塩との組合せから直接的または間接的にもたらされる任意の生成物を包含するものである。
【0060】
用語「Hsp90媒介障害」または「Hsp90を発現する細胞により媒介される障害」は、Hsp90が役割を果たす病変および病態を意味する。そのような役割は直接的に病変に関連しうるか、または病態に間接的に関連しうる。このクラスの病態の一般的な特徴は、病態が活性、機能、またはHsp90の他のタンパク質との関連を阻害することにより改善することができることである。
【0061】
用語「cKitキナーゼ」は、好ましくは幹細胞因子(SCF)をその細胞外ドメインに結合する際に活性化される細胞膜レセプタータンパク質チロシンキナーゼを意味する(Yarden etal., 1987 ; Qiu etal., 1988)。レセプターチロシンキナーゼcKitキナーゼは、細胞外ドメインおよび細胞質「split」キナーゼドメインにおける5の免疫グロブリン様モチーフを含む。完全な長さのcKitキナーゼのアミノ酸配列は好ましくは、文献(Yarden, et al., 1987, EMBO J. 11: 3341-3351; and Qiu, et al., 1988, EMBO J 7: 1003-1011)に記載されており、これはそのまま(図面を含む)本明細書に引用される。cKitキナーゼの変異型は用語「cKitキナーゼ」により包含され、2のクラスに分類されるものを含む:(1)ヒトcKitキナーゼのコドン816、または他の種におけるその等価な位置における単一のアミノ酸置換基を有するもの(Ma et al., 1999, J. Invest Dermatol 112: 165-170)および(2)タンパク質の推定膜近傍z-らせんを巻き込む変異を有するもの(Ma, et al., 1999, J Biol Chem 274: 13399-13402)。これら両方の刊行物はそのまま(図面を含む)本明細書に引用される。
【0062】
用語「医薬的に許容される担体」は化合物の所望の剤形を製造するために用いられる媒体を意味する。医薬的に許容される担体としては、1以上の溶媒、希釈剤または他の液体ビヒクル;分散剤または懸濁補助剤;界面活性剤;等張剤;増粘剤または乳化剤;保存剤;固体結合剤;滑沢剤などを挙げることができる。文献(Remington's Pharmaceutical Sciences, Fifteenth Edition, E. W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1975) and Handbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, A. H. Kibbe ed. (American Pharmaceutical Assoc. 2000))は医薬組成物の製剤化に用いられる種々の担体およびその既知の製造技術を開示する。
【0063】
化合物
ヒドロキノンアンサマイシンの例としては、式1:
【化13】

[式中、それぞれ独立して:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
X-は医薬的に許容される酸の共役塩基であり;
Rはそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14またはハライドであり;R2は水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1およびR2は結合している炭素と一緒になって、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-または-(C=N-R)-を示し;
R3およびR4はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR3はR4と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
【0064】
R5はH、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化14】

1a
(式中、R17は独立して水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)および-CH2O-ヘテロシクリルからなる群から選択される)
で示される基からなる群から選択され;
R6およびR7はともに水素であるか;またはR6およびR7は一緒になって結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R10およびR11はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR10およびR11はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
【0065】
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR13およびR14はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R16はそれぞれ、独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5または6であり;
R18はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択されるか;またはR18はR19と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員環であり;
R20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ、独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18または-CH(OR18)2であり;
【0066】
R26およびR27はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
但し、R1がヒドロキシルであり、R2が水素であり、R6およびR7が一緒になって二重結合を形成し、R20がメチルであり、R21がメチルであり、R22がメチルであり、R23がメチルであり、R24がメチルであり、R25がメチルであり、R26が水素であり、R27が水素であり、Qが結合であり、Wが酸素であるとき、R3およびR4はともに水素ではなく、一緒になって非置換アゼチジンを示さず;
式1の立体中心における絶対立体化学はRもしくはSまたはその混合であることができ、二重結合の立体化学はEもしくはZまたはその混合であることができる]
で示される化合物またはその遊離塩基が挙げられる。
【0067】
他の例としては、式3:
【化15】

[式中、X-はクロリド、ブロミド、ヨーダイド、H2PO4-、HSO4-、メチルスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネート、トリフルオロメチルスルホネートおよび10-カンファースルホネート、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホネート、エタン-1-スルホン酸-2-スルホネート、シクラミン酸塩、チオシアン酸塩、ナフタレン-2-スルホネートおよびシュウ酸塩からなる群から選択される]
で示される絶対立体化学を有する化合物が挙げられる。
【0068】
いくつかの具体的態様において、本発明はX-がクロリドである、前記化合物およびそれに伴う定義に関する。
いくつかの具体的態様において、本発明はX-がブロミドである、前記化合物およびそれに伴う定義に関する。
【0069】
ある具体的態様において、本発明は式4:
【化16】

で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する:
[式中、それぞれ独立して、
Wは酸素または硫黄であり;
Zは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
nは0、1または2と等しく;
mは0、1または2と等しく;
XおよびYは独立してC(R30)2(ここに、R30はそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択される)または-[(CR2)p]-R16であり;
Rはそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、N R13R14またはハライドであり;R2は水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1およびR2はそれらが結合している炭素と一緒になって、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-または-(C=N-R)-を示し;
R3はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択され;
【0070】
R4はH、アルキル、アラルキルおよび式4a:
【化17】

4a
(式中、R17は水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)および-CH2O-ヘテロシクリルからなる群から選択される)
で示される基からなる群から選択され;
R5およびR6はともに水素であるか;またはR5およびR6は一緒になって、結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R10およびR11はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR10およびR11はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
【0071】
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR13およびR14はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R16はそれぞれ、独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5または6であり;
R18はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択されるか;またはR18はR19と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員環を示し;
【0072】
R20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ、独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式4の立体中心における絶対立体化学はRもしくはSまたはその混合であることができ、二重結合の立体化学はEもしくはZまたはその混合であることができる]。
【0073】
具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる:
【化18】

【0074】
上記および以下の項に記載される具体的態様は分子のゲルダナマイシンファミリーのヒドロキノン類似体を包含する。17-AAG(17-アリルアミノ-18,21-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン)の還元体に加えて、本明細書に開示される他の好ましい化合物は、以下を含むが、これらに限定されない18,21-ジヒドロ-ゲルダナマイシンファミリーに関する:17-アミノ-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシンの18,21-ジヒドロ類似体;17-メチルアミノ-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-シクロプロピルアミノ-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン(geldanarnycin);17-(2'-ヒドロキシエチルアミノ)-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン(gelclanamycin);17-(2-メトキシエチルアミノ)-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(2'-フルオロエチルアミノ)-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(S)-(+)-2-ヒドロキシプロピルアミノ-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アゼチジン-1-イル-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-4,5-ジヒドロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アゼチジン-1-イル-4,5-ジヒドロ-11-アルファ-フルオロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(2'-シアノエチルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(2'-フルオロエチルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-22-(2'-メトキシフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-22-(3'-メトキシフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン(geldanetmycin);17-アミノ-22-(4'-クロロフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-22-(3',4'-ジクロロフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-22-(4'-アミノ-3'-ヨードフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-22-(4'-アジド-3'-ヨードフェナシル)-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アミノ-11-アルファ-フルオロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アリルアミノ-11-アルファ-フルオロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-プロパルギルアミノ-11-アルファ-フルオロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(2'-フルオロエチルアミノ)-11-アルファ-フルオロ-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アゼチジン-1-イル-11-(4'-アジドフェニル)スルファミルカルボニル-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-(2'-フルオロエチルアミノ)-11-ケト-17-デメトキシゲルダナマイシン;17-アゼチジン-1-イル-11-ケト-17-デメトキシゲルダナマイシン;および17-(3'-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-11-ケト-17-デメトキシゲルダナマイシン。
【0075】
本明細書に開示される組成物は、還元アンサマイシンの塩、例えばHCl塩またはH2SO4塩として存在する。別の具体的態様において、化合物はアミノ酸、例えばグリシンなどの別の塩と共結晶化される。一般に、これらの具体的態様において、アミノ酸のアンサマイシンに対する比は変化しうるが、好ましくは2:1〜1:2のアミノ酸:アンサマイシンである。
【0076】
製造方法
種々の方法論を本明細書に開示される化合物を生成するために適合することができる。一般に、工程は(1)アンサマイシンを17-デメトキシ-17-アミノ類似体(例えば17-AAG)に変換し、(2)アンサマイシンのベンゾキノンを還元してヒドロキノンを得、(3)ヒドロキノンをブレンステッド酸で処理することを含む。さらなる方法論はWO 2005/063714に見ることができる。
【0077】
ベンゾキノン含有大環状分子は化合物を産生する菌株の発酵により得ることができる(例えばWO 03/072794および米国特許3,595,955を参照のこと)。あるいは、合成法または半合成法はアンサマイシンを産生するために用いることができる(米国特許5,387,584およびWO 00/03737を参照のこと)。さらに、ゲルダナマイシンなどの単離された発酵物質の供給物が市販されており;それゆえそのような物質は容易に入手可能である。
【0078】
好ましい具体的態様において、合成法は既知の方法を用いて有機体から単離される天然物の類似体を作成するために用いる。例えばゲルダナマイシンは適当な微生物の発酵培地から単離され、当分野に知られている種々の誘導体化反応を用いて誘導体化することができる。代表的な例としては、金属触媒カップリング反応、酸化、還元、求核剤との反応、求電子剤との反応、ペリ環状反応、保護基の導入、保護基の除去などが挙げられる。種々のベンゾキノンアンサマイシンの類似体を産生するための多くの方法が当分野にて知られている(例えば米国特許番号4,261,989;5,387,584および5,932,566およびJ. Med. Chem. 1995, 38, 3806-3812を参照のこと、これらは本明細書に引用される)。これらの類似体は以下に概述される方法を用いて容易に還元され、本明細書に開示される18,21-ジヒドロ誘導体を与える。
【0079】
出発物質が得られるとすぐに、ベンゾキノンは還元されてヒドロキノンを形成した後、酸、例えばHClと反応して空気安定性塩形態にてC-17アンモニウムヒドロキノンアンサマイシンを生成する。別の具体的態様において、ヒドロキノン遊離塩基はブレンステッド酸の代わりにアミノ酸の酸ハロゲン化物と反応させて、空気安定性C-17アンモニウムヒドロキノンアンサマイシン共塩誘導体を生成する。この方法は実施例3に例示される。
【0080】
種々の方法および反応条件を用いてアンサマイシンのベンゾキノン部分を還元することができる。ヒドロ亜硫酸ナトリウムを還元剤として用いることができる。他の用いることができる還元剤としては、無水酢酸または酢酸との亜鉛末、アスコルビン酸および電気化学的還元が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
アンサマイシン誘導体のベンゾキノン部分の還元は、二相反応混合物中にてヒドロ亜硫酸ナトリウムを用いて達成することができる。典型的に、ゲルダナマイシン類似体はEtOAcなどの有機溶媒に溶解する。他の用いることができる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、THF、MeTHF、ジエチルエーテル、ジグライム、1,2-ジメトキシエタン、MTBE、THP、ジオキサン、2-エトキシブタン、メチルブチルエーテル、酢酸メチル、2-ブタノン、水およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。次いで2当量以上のヒドロ亜硫酸ナトリウムを水溶液(5-30% (m/v)、好ましくは10% (m/v))として反応容器に室温で加える。ヒドロ亜硫酸ナトリウムの水溶液は不安定であり、それゆえ使用直前に新たに調製する必要がある。二相混合物を激しく混合し、合理的な反応速度を確保する。
【0082】
出発物質17-AAGが紫色であり、これは反応が進行して黄色のジヒドロ-17AAGを生成するにつれて消失するため、この工程における反応は視覚的に容易に追跡することができる。しかし、HPLC/UVまたは他の分析方法を用いて、反応をモニターすることができる。
【0083】
還元完了の際に、粗製の反応混合生成物を精製せずに次の工程に用いて、ヒドロキノンの酸化を最小限にすることができる。しかし、ベンゾキノンの還元体を維持するための条件がモニターされるならば、好ましくは再結晶による精製を行うことができる。
【0084】
ヒドロキノン含有アンサマイシンは不安定であり、少量の酸素または他の酸化剤の存在下、ヒドロキノン部分は急速に酸化されてキノン種となりうる。注目すべきことに、ヒドロキノンは酸との反応またはアミノ酸の酸ハロゲン化物との反応により空気安定性種に変換することができる。実施例において、C-17アリルアミノ基はプロトン化されて種々の空気安定性C-17アンモニウム塩ヒドロキノンゲルダナマイシン類似体を生成する。さらに、形成されるC-17アンモニウム塩ヒドロキノンは17-AAG(<100μg/mL)と異なり、水溶液への高い可溶性(>200 mg/mL)を示すという別の利点を有する。
【0085】
アンモニウム塩ヒドロキノンは、HClなどの酸のEtOAc、DCM、IPAまたはジオキサンなどの有機溶媒中の溶液を有機溶媒中のヒドロキノン含有アンサマイシンに添加することにより形成され;有機溶媒は独立して、窒素雰囲気下におけるアセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、THF、MeTHF、ジエチルエーテル、ジグライム、1,2-ジメトキシエタン、MTBE、THP、ジオキサン、2-エトキシブタン、メチルブチルエーテル、酢酸メチル、2-ブタノンであることができる。
【0086】
ヒドロキノンのアンモニウム塩は生成物が溶液から析出する場合にはろ過により集める。アンモニウム塩ヒドロキノンが析出しない場合には、反応溶液を減圧濃縮し、生成物を得る。
【0087】
種々の空気安定性アンモニウム塩ヒドロキノンアンサマイシンは有機酸または無機酸を用いることにより合成することができる。用いることができるいくつかの酸としては、HCl、HBr、H2SO4、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、シクラミン酸、チオシアン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、シュウ酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。例えばBerge et al. (1977)「Pharmaceutical Salts」J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと。用いられる酸は好ましくは、アニリン窒素をプロトン化するのに十分なpKaを有するべきである。従って、約-10〜約7、好ましくは約-10〜約4、より好ましくは約-10〜約1、さらにより好ましくは約-10〜約-3のpKaの任意の酸を用いて、アンモニウム塩ヒドロキノンを生成することができる。
【0088】
再結晶は、MeOH、EtOHまたはIPAなどの最小限の量の不活性な極性有機溶媒に化合物を溶解し、脂肪族エーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、クロロホルムまたはDCMなどの混和性有機溶媒をゆっくり加え、該溶液を濁らせることにより達成する。次いで混合物を適切な時間放置し、適宜冷却し、得られた固体をろ過により集め、洗浄し、減圧乾燥する。
【0089】
医薬組成物
式1および3の化合物およびそれらの医薬的に許容される塩が抗癌剤などの抗増殖剤として用いられる場合、それらは哺乳類対象にそれのみか、または標準的な医薬的実践に従って医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて医薬組成物にて投与することができる。
【0090】
上記のように、本発明化合物のいくつかの具体的態様はアミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含むことができ、従って、医薬的に許容される酸と医薬的に許容される塩を形成することができる。これに関して用語「医薬的に許容される塩」は、本発明化合物の相対的に無毒性な無機および有機酸付加塩を意味する。これらの塩は投与ビヒクルまたは剤形製造工程における系中にて、または遊離塩基形態にて精製された本発明化合物を適切な有機または無機酸と別々に反応させて、形成される塩を続く精製中に単離することにより製造することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート、メシレート、グルコヘプトネート、ラクトビオン酸塩およびラウリル硫酸塩などが挙げられる(例えばBerge et al. (1977)「Pharmaceutical Salts」, J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと)。
【0091】
本明細書に開示される化合物の医薬的に許容される塩としては、例えば無毒性有機酸または無機酸からの化合物の従来の無毒性塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような従来の無毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イソチオン酸などの有機酸から製造される塩が挙げられる。
【0092】
他の場合には、本明細書に開示される化合物は、1以上の酸性官能基を含むことができ、従って、医薬的に許容される塩基と医薬的に許容される塩を形成することができる。これらの例における用語「医薬的に許容される塩」は、本明細書に開示される化合物の相対的に無毒性の無機および有機塩基付加塩を意味する。これらの塩は、投与ビヒクルまたは剤形製造方法において系中にて、または医薬的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩などの適切な塩基との遊離酸形態にて精製された化合物をアンモニアまたは医薬的に許容される第一級、第二級または第三級有機アミンと別々に反応させることにより、同様に製造することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば上記Berge et al.を参照のこと)。
【0093】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および滑沢剤ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存剤、可溶化剤、緩衝剤および抗酸化剤もまた、組成物中に存在することができる。
【0094】
医薬的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオグリセロール、メルカプト酢酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどの油溶性抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
医薬的に許容される緩衝剤の例としては、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、酒石酸塩およびマレイン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
医薬的に許容される可溶化剤の例としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート80など)、ポリオキシエチレンステアレート、ベンジルアルコール、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、シクロデキストリンおよびポロキサマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
医薬的に許容される複合剤の例としては、シクロデキストリン(アルファ、ベータ、ガンマ)、特に2-ヒドロキシプロピル-ベータ、ジメチルベータ、2-ヒドロキシエチルベータ、3-ヒドロキシプロピルベータ、トリメチルベータなどの置換ベータシクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
医薬的に許容される金属キレート剤の例としては、クエン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびその塩、DTPA(ジエチレン-トリアミン-ペンタ-酢酸)およびその塩、EGTAおよびその塩、NTA(ニトリロ酢酸)およびその塩、ソルビトールおよびその塩、酒石酸およびその塩、N-ヒドロキシイミノジアセテートおよびその塩、ヒドロキシエチル-エチレンジアミン-テトラ酢酸およびその塩、1-および3-プロパンジアミンテトラ酢酸およびその塩、1-および3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンテトラ-酢酸およびその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸およびその塩、およびリン酸およびその塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
非経口投与に適切な本明細書に開示される医薬組成物は、1以上の本発明化合物を1以上の医薬的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、ディスパージョン、懸濁剤もしくは乳剤、または使用直前に滅菌注射溶液もしくは分散剤に再構成することができる滅菌散剤とともに含み、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、キレート剤、対象とする受容者の血液と等張な製剤を与える溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含むことができる。実施例において、有効成分は溶液中にて医薬的に許容される担体と一緒にされた後、凍結乾燥して乾燥粉末となる。乾燥粉末は単位剤形にパッケージ化された後、水または通常の生理食塩水などの滅菌溶液を該粉末に加えることにより非経口投与のために再構成される。
【0100】
本発明の医薬組成物に用いることができる適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング物質の使用、ディスパージョンの場合には必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0101】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含むことができる。本明細書に開示される化合物における微生物の作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの種々の抗菌剤および抗真菌剤の封入により確保することができる。組成物中に糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むこともまた所望であることができる。さらに、注射可能な医薬形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤の封入によりもたらすことができる。
【0102】
いくつかの場合には、薬物の効果を引き延ばすために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが所望である。これは低水溶性を有する結晶の液体懸濁物または非晶質物質の使用により達成することができる。次いで薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、言い換えると、結晶サイズおよび結晶形に依存することができる。あるいは、非経口投与される薬物型の遅延吸収は、油性ビヒクル中に薬物を溶解または懸濁することにより達成される。
【0103】
本明細書に開示される化合物の製剤が、溶解性およびこのヒドロキノン塩に対する酸化還元安定性を提供することは重要である。本明細書に開示される化合物はアミンがプロトン化されるときに、低pHにて有意に可溶化する。イオン化形態はより可溶であるが遊離塩基(非イオン化形態)は溶解性が低いため、種の分布は重要である。それゆえ、製剤は溶液のpHを制御することにより溶解性を最適化するだろう。好ましいpH範囲における高い緩衝能力を有するクエン酸塩などの緩衝剤はそのような好ましい製剤成分の一つである。好ましい緩衝剤は、約1.5〜約5.0、より好ましくは約1.8〜約3.5、さらにより好ましくは約3〜約3.3のpHにて製剤を緩衝するだろう。
【0104】
本明細書に開示されるヒドロキノン類似体は溶液中に長く放置されると酸化しうる。鉄および銅などの重金属は酸化反応を触媒することができ、典型的な試薬および実験機器中に微量に見ることができる。重金属の酸化する性質からの保護は、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)などの金属キレート剤により与えることができる。他の知られているキレート剤は、例えばクエン酸、DTPA(ジエチレン-トリアミン-ペンタ-酢酸)およびその塩、EGTAおよびその塩、NTA(ニトリロ酢酸)およびその塩、ソルビトールおよびその塩、酒石酸およびその塩、N-ヒドロキシイミノジアセテートおよびその塩、ヒドロキシエチル-エチレンジアミン-テトラ酢酸およびその塩、1-および3-プロパンジアミンテトラ酢酸およびその塩、1-および3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパンテトラ-酢酸およびその塩、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸およびその塩、およびリン酸およびその塩である。
【0105】
酸化を保護する重要な別法は抗酸化剤を加えることである。一つの好ましい抗酸化剤はアスコルビン酸(アスコルビン酸塩)である。この試薬は水性媒体中に溶解している酸素分子の酸化効果から化合物を保護する。いくつかの具体的態様にて、アスコルビン酸塩は本明細書に開示されるヒドロキノン類似体の製剤における成分として用いる。
【0106】
治療および処置の方法
本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンは水溶性であり、それゆえ水溶液にて対象に投与することができる。これらの化合物は、インビトロおよびインビボの生理学的pHにて17-アミノ置換ベンゾキノンゲルダナマイシン類似体(例えば17-AAG)に急速に酸化される。例えば、化合物2および17-AAGは生理学的条件にて相互変換する。そのようなものとして、ヒドロキノンアンサマイシンは17-アミノ置換ゲルダナマイシン類似体と同様の生物学的活性および治療プロファイルを示し、17-アミノ置換ゲルダナマイシン類似体が治療に有用であるという同一の治療指標について用いることができる。17-アミノ置換ゲルダナマイシン類似体、特に17-AAGはHsp90の非常に有効な選択的阻害剤である。
【0107】
本発明は、過剰増殖性障害、例えば癌ならびに他のHsp90媒介障害または病態の1以上の症状を治療し、改善し、その重篤度を軽減するための方法を提供する。本発明の方法はこれらいずれの病態にも苦しむ対象への治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシンの投与を含む。
【0108】
本明細書に記載のヒドロキノンアンサマイシンで治療することができる過剰増殖性障害の例としては、造血系、免疫系、内分泌系、肺系、胃腸管系、筋骨格系、肝胆系、生殖系、中枢神経系または泌尿器系の癌が挙げられる。
【0109】
骨髄性細胞、リンパ組織、膵臓、甲状腺、肺、小腸、結腸、直腸、肛門(anue)、肝臓、皮膚、骨、卵巣、子宮、頸部、胸部、前立腺、睾丸、脳、脳幹、髄膜、腎臓または膀胱にある癌もまた含まれる。
【0110】
さらに、乳癌、多発性骨髄腫(MM)、前立腺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、腎細胞癌、悪性黒色腫、膵臓癌、胃癌、食道癌、肺癌(例えば小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、結腸直腸癌腫、結腸癌、脳腫瘍、腎臓癌、肝細胞癌、頭部および頸部癌、膀胱癌、甲状腺癌、卵巣癌、頸部癌または骨髄異形成症候群が含まれる。
【0111】
本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症および好酸球増加症候群(HES)などの骨髄増殖性疾患もまた含まれる。
【0112】
全身性肥満細胞症、隆起性皮膚線維肉腫、滑膜癌腫、ユーイング肉腫、慢性骨髄単球性白血病、慢性骨髄性白血病、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、頭部および頸部腺様嚢胞癌、胸腺癌、胃腺癌および脊索腫がさらに含まれる。
【0113】
本発明は、融合タンパク質またはリガンド独立レセプターチロシンキナーゼにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する過剰増殖性障害を治療する方法を提供する。例えば、Gorreらは、Hsp90の阻害が変異Bcr-Abl融合タンパク質の分解を誘発することができることを示している。Blood (2002) 100:3041-44。メシル酸イマチニブ耐性患者に見られる2の変異Bcr-Abl融合タンパク質を発現する造血細胞(ハーバリング(harbouring)T315IまたはE255K変異)を得、17-AAGへの敏感性について試験した。この化合物は野生型および変異Bcr-Ablタンパク質の分解ならびに阻害された細胞増殖を誘発し、これは本発明のヒドロキノンアンサマイシンが点変異を有するものを含む融合タンパク質と関連するCMLなどの癌を治療するために用いることができることを示唆する。
【0114】
Shenらは17-AAGが肝細胞成長因子/散乱因子媒介c-Metチロシンキナーゼレセプターを遮断することを示しており(Bioorg. Med. Chem. (2005) 13: 4960-71)、これは胃癌および小細胞肺癌などの融合タンパク質Tpr-Metにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する過剰増殖性障害の治療における本明細書に記載のヒドロキノンアンサマイシンの有用性を示唆する。
【0115】
Marseeらは、17-AAGによるHsp90機能の阻害がRET/PTC1(乳頭腺 甲状腺癌腫に一般に見られるRETチロシンキナーゼの転位形態)タンパク質レベルを軽減することを示している。J. Biol. Chem. (2004) 279:43990-7。これは本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンが甲状腺癌などのRETにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する癌を治療するために用いることができることを示唆する。
【0116】
Yangらは、融合タンパク質RUNX1-ETOが造血幹/前駆細胞の膨張を促進し、他の遺伝子変化を伴う白血病を誘発することを示している。17-AAGはこのタンパク質の分解を引き起こすことが示された。Oncogene (2006) 1-11。これは、本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンがタンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する過剰増殖性障害を治療するために用いることができることを示唆する。
【0117】
本発明はまた、c-Kitなどの機能獲得型変異タンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する過剰増殖性障害を治療する方法も提供する。例えば、Fumoらは、肥満細胞系HMC-1.2、ハーバリングAsp816ValおよびVal560Gly Kit変異、および細胞系HMC-1.1、ハーバリング単一Val560Gly変異の17-AAGによる治療がKitのレベルおよび活性の下方調整をもたらし、両方の細胞系における細胞死を促進することを示している。さらに、肥満細胞症の患者から単離され、生体外で17-AAGによりインキュベーションされる腫瘍性肥満細胞は17-AAGに敏感である。Blood (2004) 103: 1078-84。これらのデータは、本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンが肥満細胞症、消化管間質腫瘍(GIST)、肥満細胞白血病、急性骨髄性白血病のサブタイプおよび睾丸癌などのc-Kit関連疾患の治療に有効であることができることを示唆する。
【0118】
Hsp90の化合物2による阻害は、二次キナーゼドメイン変異(GIST48およびGIST430)およびKit発現の欠乏(GIST62)により特徴付けられるメシル酸イマチニブ(IM)敏感(GIST882)およびIM耐性GIST(GIST430、GIST48、GIST62)細胞系にて評価した。Hsp90阻害の生物学的結果は、Kitシグナリング経路についての免疫ブロット法により、および細胞増殖およびアポトーシスアッセイにより測定した。化合物2はIM敏感性およびIM耐性KIT癌タンパクを阻害した:ホスホについてのIC50および全KitはGIST882中150nMおよび220nM、GIST48中160nMおよび200nM、およびGIST430中100nMおよび70nMであった。下流シグナリング中間体AKTおよびS6の阻害はKIT陽性GIST(GIST882、GIST430およびGIST48)にて見られたが、KIT陰性GIST62では見られず、これは化合物2の効果がKit標的に依存することを示唆する。同様に、化合物2(500 nM)による細胞成長の阻害はGIST48およびGIST430にて見られたが(それぞれ88%および34%阻害)、GIST62では見られなかった(12%阻害)。化合物2(>100nM)はKit陽性GISTにおけるアポトーシスを誘発した。これらの結果は、化合物2によるHsp90阻害が臨床的に達成可能な用量にてIM耐性GISTにおける強力な抗増殖作用およびアポトーシス促進作用を有することが示唆される。BauerらのEORTC (2005)にて提示されたポスター。
【0119】
クラスIIIレセプターチロシンキナーゼのメンバーFMS様TK-3(「FLT-3」)はHsp90の既知のクライアントタンパク質である。17-AAGによる治療はHsp90のFLT-3とのシャペロン結合を妨害し、ポリユビキチン化およびプロテアソーム分解に向けられることを示した。Blood (2005) 105:1768-76。
【0120】
膜近傍ドメインにおける活性化内部直列重複変異(ITD)またはFMS様チロシンキナーゼ-3(FLT-3)のキナーゼドメインにおける点変異の存在が急性骨髄性白血病(AML)患者のおよそ三分の一におけるリガンド独立成長および生存シグナリングを媒介することを示している。さらに、先の研究は、ヒトAML MV4 11細胞(ITD FLT 3を含む)の17-AAGによる治療がHsp90シャペロンとの結合を阻害し、FLT-3のポリユビキチン化およびプロテアソーム分解を刺激することにより、FLT-3のレベルを軽減したことを示した。
【0121】
MV4 11細胞は化合物2または17-AAGの濃度を3日間増大することにより処置した。両方の化合物はおよそ30 nMのIC50で細胞毒性であった。ホスホリル化ITD FLT-3発現レベルはまた、24時間にて50 nMの見掛けIC50でこれらの細胞にて阻害される。MV4 11細胞における17-AAGおよび化合物2の両方のFLT-3分解と細胞毒性の良い相関関係がある。一方、FLT-3レセプターの野生型を発現する別のAML細胞系KG 1は、野生型ホスホリル化FLT-3タンパク質の細胞毒性(72 h)および分解(24 h)に関して化合物2に対して低敏感性を示した。これらのデータは変異FLT-3が野生型FLT 3よりもHsp90機能により依存することを示す。これらのデータは、FLT-3により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連するAMLなどの病態を治療するための本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンについての役割を示唆する。
【0122】
本発明はさらに、表皮成長因子レセプター(「EGFR」)と関連する非小細胞肺癌(NSCLC)などの癌を治療する方法を提供する。ShimamuraらはNSCLCに見られる変異EGFRタンパク質がHsp90のクライアントタンパク質であり、Hsp90阻害に続いて分解したことを示している。変異EGFR発現はゲルダナマイシンへの曝露のわずか4時間後に失われたが、野生型EGFRの減少はずっと少なく、曝露のわずか12時間後に見られた。Cancer Research (2005) 65:6401-6408。これらのデータは、例えば本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシン化合物を用いたHsp90阻害がEGFR変異NSCLCなどの癌、およびEGFRにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する他の病態の治療に用いることができることを示唆する。
【0123】
本発明は、70 kDa(ZAP-70)のゼータ結合タンパク質と関連するCLLなどの癌を治療する方法を提供する。Castroらは、ZAP-70+ CLL細胞が17-AAGなどのHsp90阻害剤と高い結合親和性を有する活性化熱ショックタンパク質90(Hsp90)を発現したが、正常なリンパ球またはZAP-70- CLL細胞が非活性化Hsp90を発現したことを示している。Blood (2005) 106: 2506-2512。17-AAGによる治療はCLL細胞(T細胞ではない)におけるZAP-70分解およびアポトーシスを誘発し、白血球細胞におけるB細胞レセプターシグナリングも弱めた。これは、本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンなどのHsp90阻害剤が悪性CLL、およびZAP-70と関連する他の病態の患者に治療的に貴重であることができることを示唆する。
【0124】
本発明はさらに、Her2/Erb2と関連する乳癌または肺癌などの癌、ならびにHer2/Erb2により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する他の病態を治療する方法を提供する。例示的な例として、de Candiaらはマウスを17-AAGで処理し、Her2/neu依存型乳房腫瘍の治療における17-AAGの有効性を示した。PNAS (2003) 100:12337-12342。
【0125】
Jeromeらは、PDGFレセプターなどの成長因子レセプターの安定化におけるHsp90阻害剤の役割を示している。Growth Factors (1991) 4:317-27。これは、HESなどの癌、およびPDGFレセプターにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する他の病態の治療における本明細書記載のヒドロキノンアンサマイシンの有用性を示す。
【0126】
本発明は、Akt(ここに、PTENの腫瘍抑制体状態はPTEN-/-またはPTEN+/-である)と関連する前立腺癌などの癌を治療する方法を提供する。Georgakisらは、ホジキンリンパ腫細胞にて17-AAGによりHsp90機能の阻害はAktキナーゼを下方調整し、細胞外シグナル調整キナーゼを脱ホスホリル化し、細胞周期停止および細胞死を誘発することを示している。Clin. Cancer Res. (2006) 12:584-90。これは、前立腺癌およびホジキンリンパ腫、およびAktと関連する他の病態の治療における本明細書に記載のヒドロキノンアンサマイシンの有用性を示唆する。
【0127】
アンドロゲンレセプター(AR)における変異により、去勢または抗アンドロゲンによる治療後の前立腺癌進行を一部説明することができる。17-AAGは前立腺癌細胞におけるARの急速な分解を刺激することが示されている。Clin.Cancer Res. (2002) 8:986-993。
【0128】
変異ARを発現するLnCAP、PSA分泌前立腺癌細胞系は、化合物2の濃度を増大しながらインキュベーションした。ARタンパク質のレベルおよび細胞毒性反応をモニターした。アラマーブルー研究は、化合物22がLnCAP細胞について〜75 nMのEC50で細胞毒性であったことを示した。ウエスタンブロット法はARタンパク質が治療後24時間にて>30 nMの化合物2で有意に減少したことを示した。これらのデータは、ARが化合物2処置に対して有意に分解し、これが化合物2による細胞殺滅と関連することを示す。これは、本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシン化合物が前立腺細胞成長および生存の阻害に有用であることができることを示唆する。それらはまた、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプターまたはグルココルチコイドレセプターにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する病態を治療するために用いることもできる。
【0129】
本発明は、B-Rafにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する黒色腫などの癌を治療する方法を提供する。Grbovicらは、黒色腫細胞および腫瘍の17-AAGへの曝露が変異B-Rafの分解、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ活性化および細胞増殖の阻害、およびアポトーシスの誘発、および抗腫瘍活性をもたらすことを示している。PNAS (2006) 103:57-62。これは、例えば本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンを用いたHsp90の阻害が黒色腫の治療のための治療方針を示すことを示唆する。
【0130】
MitsiadesらはHsp90阻害剤がIKKおよびNF-カッパBなどの複数のレベルのシグナリングエフェクターの発現および/または機能をMM細胞において同時に抑制することを示している。Blood (2006) 107:1092-100。これは、本明細書に記載のヒドロキノンアンサマイシンがIKKまたはNF-カッパBにより媒介されるシグナル伝達経路の逸脱と関連する過剰増殖性障害を治療するために用いることができる。
【0131】
本明細書に開示されるヒドロキノンアンサマイシンは、Hsp90のいずれのクライアントタンパク質とも関連する病態を治療するために用いることができる。そのようなタンパク質の例としては、Chk1、テロメラーゼ、Hif1α、MMP2、MET、FAK、RIP、PLKおよびNPM-ALが挙げられる。
【0132】
さらに、本発明は黒色腫(Anti-Cancer Drugs (2004) 15: 377-388を参照のこと)、前立腺癌(Clin. Cancer Res. (2002) 8: 986-993を参照のこと)、乳癌(Cancer Res. (2001) 61: 2945-2952を参照のこと)、非小細胞肺癌(Ann. Thorac. Surg. (2000) 70: 1853-1860を参照のこと)、白血病(Cancer Res. (2001) 61: 1799-1804を参照のこと)および結腸癌(J. Natl. Cancer Inst. (2003) 95: 1624-1633を参照のこと)を治療する方法を提供する。
【0133】
併用療法
本明細書に開示される化合物は、癌の治療における選択的または改善された活性を達成するために、少なくとも1の他の薬剤と組み合わせて、細胞毒性または副細胞毒性レベルにて用いることができる。いくつかの具体的態様において、本明細書に開示される化合物は適切に折り畳まれたHsp90クライアントタンパク質の細胞内レベルを減少するために用いられ、次いで該タンパク質は第二薬剤により有効に阻害されるか、またはそのプロテアソームにおける分解はプロテアソーム阻害剤、例えばVelcadeTMを用いて阻害される。クライアントタンパク質のHsp90への結合は、クライアントタンパク質を安定化し、容易に刺激の活性化に反応する可溶な不活性形態にて維持される。ヒドロキノンアンサマイシンのHsp90への結合は、クライアントタンパク質のプロテアソームへの標的化、次いで分解をもたらす。プロテアソームを標的化し、阻害する薬剤の使用により、細胞アポトーシスおよび細胞死の増大を引き起こすプロテアソーム分解が遮断される。
【0134】
本発明の方法を組み合わせて用いることができる抗腫瘍剤のいくつかの例としては一般に、アルキル化剤;抗血管新生剤;代謝拮抗剤;エピポドフィロトキシン(epidophyllotoxin);抗腫瘍性酵素;トポイソメラーゼ阻害剤;プロカルバジン;ミトキサントロン;白金配位錯体;抗有糸分裂薬;生物反応修飾物質および成長阻害剤;ホルモン/抗ホルモン治療剤および造血成長因子が挙げられる。
【0135】
抗腫瘍剤の例示的なクラスとしてはさらに、薬物のアントラサイクリンファミリー、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオチド、エポチロン、ディスコデルモライド、薬物のプテリジンファミリー、ジイネン(diynenes)およびポドフィロトキシンが挙げられる。
【0136】
それらのクラスの特に有用なメンバーとしては、例えばカルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン(porfiromycin)、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはエトポシド、リン酸エトポシドもしくはテニポシドなどのポドフィロトキシン誘導体、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ベルケイド、ドキソルビシン、ビンデシン、ロイロシン、メシル酸イマチニブ、パクリタキセル、タキソールなどが挙げられる。好ましい具体的態様において、抗腫瘍剤はベルケイド、ドキソルビシン、タキソテール、ドセタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、メシル酸イマチニブまたはゲムシタビンである。好ましい具体的態様において、抗腫瘍剤はベルケイドまたはドキソルビシンである。
【0137】
他の有用な抗腫瘍剤としては、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシタビン、イフォスアミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L-アスパラギナーゼ、カンプトテシン、CPT-11、トポテカン、アラ-C、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる。
【0138】
本明細書に開示される化合物はまた、スニチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、トラスツズマブ、ベバシツマブおよびラパチニブなどのキナーゼ阻害剤と組み合わせて用いることもできる。
【0139】
化学療法剤および/または放射線療法は、当分野にてよく知られている治療プロトコールに従い投与することができる。化学療法剤および/または放射線療法の投与は治療される疾患およびその疾患における化学療法剤および/または放射線療法の既知の効果に依存して変化しうることは、当業者に明らかであろう。また、熟練した臨床医の知識に従って、治療プロトコール(例えば投与量および投与時間)は、投与される治療剤(例えば抗腫瘍剤または放射線)の患者において観察される効果および投与される治療剤に対して観察される疾患の反応を考慮して変化しうる。
【0140】
また一般に、本明細書に開示される化合物および化学療法剤は同じ医薬組成物にて投与されなければならないことはなく、異なる物理学的および化学的性質のために、異なる経路により投与される必要があることがある。例えば、本明細書に開示される化合物は静脈内投与されて良い血中濃度を生成し、維持することができるが、化学療法剤は経口投与することができる。同じ医薬組成物における投与方法および可能であれば投与の妥当性の決定は、熟練した臨床医の知識のまさに範囲内である。初期投与は当分野にて知られている確立されたプロトコールに従い行うことができ、次いで観察された効果に基づき、投与量、投与方法および投与時間は熟練した臨床医により改変することができる。
【0141】
化学療法剤または放射線の具体的な選択は、患者の病態および適当な治療プロトコールの主治医の診断および彼らの判断に依存するだろう。
【0142】
本明細書に開示される化合物および化学療法剤および/または放射線は、増殖性疾患の性質、患者の病態、および本明細書に開示される化合物と併せて(すなわち単一治療プロトコール内で)投与される化学療法剤および/または放射線の実質的な選択に依存して、併用投与(例えば同時に、実質的に同時にまたは同じ治療プロトコール中に投与)または連続投与することができる。
【0143】
本明細書に開示される化合物および化学療法剤および/または放射線が同時にまたは実質的に同時に投与されないときは、本明細書に開示される化合物および化学療法剤および/または放射線の最適な投与順序は異なる腫瘍について異なることがある。従って、いくつかの状況において、本明細書に開示される化合物は最初に投与され、次いで化学療法剤および/または放射線を投与することができ;他の状況において、化学療法剤および/または放射線は最初に投与され、次いで本明細書に開示される化合物を投与することができる。この代替的投与は単一の治療プロトコール中に繰り返すことができる。治療プロトコール中の各治療剤の投与順序の決定および投与の繰り返し数は、治療される疾患および患者の病態の評価後に熟練した医師の知識のまさに範囲内である。例えば、化学療法剤および/または放射線は、特に細胞毒性薬であるときには最初に投与することができ、次いで本明細書に開示される化合物を投与し、有利であると認められるときには化学療法剤および/または放射線などを治療プロトコールが完了するまで投与することができる。
【0144】
従って、経験および知識に従い、実践の医師は、治療が進行するにつれて、個別の患者の必要性に従う治療成分(治療剤、すなわち本明細書に開示される化合物、化学療法剤または放射線)の投与のための各プロトコールを改変することができる。
【0145】
投与量
本明細書に開示される化合物が医薬としてヒトおよび動物に投与されるとき、それらはそれ自体で、または例えば0.1〜99%(より好ましくは10〜30%)の有効成分を医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物として与えることができる。
【0146】
本明細書に開示される医薬組成物における有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴わないで特定の患者に対する所望の治療反応、組成物および投与方法を達成するのに有効な量の有効成分を得るために変化することができる。
【0147】
選択される投与量レベルは、用いられる具体的な本明細書に開示される化合物またはその塩の活性、投与経路、投与時間、用いられる具体的な化合物の排出または代謝の速度、吸収の速度および程度、治療期間、用いられる具体的な化合物とともに用いられる他の薬物、化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、一般的健康および以前の病歴、および医学分野でよく知られている同様の因子などの種々の因子に依存するだろう。
【0148】
当分野における通常の知識を有する医師または獣医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要な量よりも低レベルにて医薬組成物に用いられる本発明化合物の用量で開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を段階的に増大することができる。
【0149】
一般に、本発明化合物の適切な用量は、治療効果を産生する最も低い安全かつ有効な量の化合物の量であろう。そのような有効量は一般に、上記の因子に依存するだろう。一般に、患者のための本明細書に開示される化合物の静脈内投与量は、約10 mg〜約1000 mg/平方メートルで毎週2回投与、好ましくは約75 mg〜750 mg/平方メートルで毎週2回投与、さらにより好ましくは100 mg〜500 mg/平方メートルで毎週2回投与の範囲であろう。
【0150】
本明細書に開示される化合物はそれのみで投与することができるが、医薬製剤(組成物)として投与することが好ましい。
【0151】
この治療を受ける患者は、一般に霊長類、特にヒト、およびウマ、ウシ、ブタおよびヒツジなどの他の哺乳類;家禽および愛玩動物などの該治療を必要とする任意の動物である。
【0152】
1以上の他の活性化合物を上記の製剤に加えて、組合せ癌治療のための製剤を提供することができる。
【0153】
化合物は非経口投与することができる;すなわち腸内および局所投与以外である。化合物は注射、例えば静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内の注射および輸液により投与することができる。
【0154】
化合物はまた、患者の系に入り、従って代謝および他の同様の過程、例えば皮下投与を受けるような全身または末梢に;すなわち中枢神経系への直接投与以外で投与することもできる。
【実施例】
【0155】
例示
一般的に記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、それは本発明のいくつかの態様および具体的態様の例示の目的のためのみに含まれ、本発明を限定するものではない。さらに、アミノ酸は双性イオン型で表され、さらにプロトン化しうり、塩として存在しうる。
【0156】
実施例1
分子のゲルダナマイシンファミリーの空気安定性ヒドロキノン誘導体の製造
【化19】

酢酸エチル(200 mL)中の17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(10.0 g, 17.1 mmol)を新たに調製した10%ヒドロ亜硫酸ナトリウム水溶液200 mLで常温にて2時間激しく撹拌した。色が暗紫色から明黄色に変化し、反応完了を示した。層を分離し、有機相を硫酸マグネシウム15 gで乾燥した。乾燥剤を酢酸エチル50 mLですすいだ。集めたろ液を酢酸エチル中1.5 M塩化水素12 mLでpH 2まで20分かけて酸性化した。得られたスラリーを常温にて1.5時間撹拌した。固体をろ過により単離し、酢酸エチル50 mLですすぎ、40℃、1 mm Hgにて16時間乾燥して灰白色固体9.9 g(91%)を得た。粗製の塩酸ヒドロキノン2.5 gをメタノール5 mL中5% 0.01 N水性塩酸の撹拌した溶液に加えた。得られた溶液をろ過により分離した後、アセトン70 mLで希釈した。固体は2-3分後に出現した。得られたスラリーは常温で3時間、次いで0-5℃で1時間撹拌した。固体をろ過により単離し、アセトン15 mLですすぎ、乾燥した。
【0157】
実施例2
【化20】

ゲルダナマイシン(1.12g, 2 mmol, 1当量)を無水DCM 5 mLに加えた。MeOH中のNH3をこの溶液(9 mL, 100 mmol, 50当量)に加え、24時間撹拌した。反応溶液をDCMで希釈した時点で、水、次いで希HClで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濃縮して紫色固体を得た。この固体をアセトン/ヘプタンで2回再結晶し、17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシンの0.239を得た。
【0158】
17-アミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(0.55g, 1 mmol, 1当量)をEtOAc 100 mLに溶解した。新たに調製した10%ヒドロ亜硫酸ナトリウム水溶液10 mLを加え、常温で1時間撹拌した。色が暗紫色から明黄色に変化し、反応が完了したことを示した。層を分離し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を酢酸エチル(2×10 mL)ですすいだ。集めたろ液を酢酸エチル中の1.5 M塩化水素1 mLでpH 2まで20分かけて酸性化した。得られたスラリーを常温で1.5時間撹拌した。固体をろ過により単離し、酢酸エチル10 mLですすぎ、真空乾燥し、生成物(0.524g, 87%収率)を得た。
【0159】
実施例3
【化21】

ゲルダナマイシン(0.500g, 0.892 mmol, 1当量)をTHF 10 mL 3-アミノ-1,2-プロパンジオール(0.813g, 8.92 mmol, 10当量)に溶解した。反応物を64時間撹拌した。次いで反応を希HClで反応停止処理し、EtOAcで抽出した。有機層を集め、MgSO4で乾燥し、減圧濃縮した。カラムクロマトグラフィーを用いて粗製物を精製し、17-アミノ置換ゲルダナマイシン(geldenamycin)27 mgを得た。
【0160】
17-アミノゲルダナマイシン(.200 g, 0.323 mmol, 1当量)をEtOAc 4 mLに溶解し、新たに調製した10% Na2S2O4水溶液4 mLで処理した。この混合物を1時間激しく撹拌した。次いで有機層を集めた。水層をEtOAc 2×5 mLで抽出した。有機層を集め、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次いで有機層をEtOAc中のHCl(1.6 M, 0.6 mL)で処理し、20分間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮し、生成物0.009 gを得た。
【0161】
実施例4
【化22】

ゲルダナマイシン(0.022g, 0.04 mmol, 1.5当量)およびBODIPY-FL-EDA-HCl(0.010g, 0.026 mmol, 1当量)を無水DCM 2mLに加えた。DIPEA(30 uL, 0.16 mmol, 6当量)を加え、反応溶液を窒素雰囲気下72時間撹拌した。次いで反応物をDCMで希釈し、水で抽出し、Na2SO4で乾燥し、減圧濃縮した。組成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、17-アミノ置換ベンゾキノンを得た。この物質をEtOAc 20 mLに溶解し、新たに調製した10% Na2S2O4水溶液5 mLで処理した。この混合物を1時間激しく撹拌した。次いで有機層を集めた。水層をEtOAc 2×5 mLで抽出した。有機層を集め、水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。次いで有機層をEtOAc中HCl(1.6 M, 0.6 mL)で処理し、20分間撹拌した。次いで反応溶液を濃縮し、減圧乾燥した。組成物をEtOAc/MTBEから再スラリー化することにより精製した。固体をMTBEで洗浄し、減圧乾燥し、生成物0.04 gを得た。
【0162】
実施例5
【化23】

無水酢酸エチル170 mLをフラスコに加え、次いで17-AAG(8.41 g, 1.44 mmol, 1当量)を加えた。得られた紫色混合物を窒素雰囲気下激しく撹拌した。新たに調製した10% Na2S2O4水溶液(脱イオン水170 mL中1.682 g, 10.1 mmol, 7当量)を加え、混合物を70分間激しく撹拌した。色が紫色から橙色に変化し、反応が完了したことを示した。層を分離し、分液漏斗を用いて下の水層を除去した。有機層をMgSO4で乾燥した。乾燥剤をろ過により除去した。ろ液をロータリーエバポレーターフラスコに移した。酢酸エチル50 mLを少しずつ用い、MgSO4パッドを洗浄し、洗浄ろ液をまたロータリーエバポレーターフラスコに加えた。
【0163】
橙茶色混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、油状物とした。残存する酢酸エチルを真空下除去した。
この混合物を濃縮する間、HClの5.3 M酢酸エチル溶液を調製した。酢酸エチル16.8 mLを三角フラスコに加え、HClガスを撹拌混合物に1時間バブリングし(アセトン/湿氷で冷却しながら)、飽和させた。次いで溶液を窒素のヘッドスペース下室温まで昇温した。
【0164】
油状物をアセトン252 mLに溶解し、添加漏斗、スターラー、サーモメーターを備えた反応フラスコに窒素雰囲気下で移した。集めたろ液および洗浄物を5分かけて最終pH 2.5まで酸性化した。得られたスラリーを常温で18分間撹拌した後、固体をろ過により単離し、アセトン84 mLで2回洗浄した。次いで固体を減圧乾燥し、生成物を得た。
【0165】
実施例6
【化24】

酢酸エチル20 mL中の17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(1.0 g, 1.71 mmol)を新たに調製した10%ヒドロ亜硫酸ナトリウム水溶液(水20 mL中2g)とともに常温で30分間激しく撹拌した。色が暗紫色から明黄色に変化し、反応が完了したことを示した。層を分離し、有機相を硫酸マグネシウム1 gで乾燥した。反応溶媒を集め、乾燥剤を酢酸エチル1 mLですすいだ。集めたろ液を0℃まで冷却し、析出物が形成されるまで酢酸エチル中1.5 M臭化水素で酸性化した。得られたスラリーを常温で30分間撹拌した。固体をろ過により単離し、酢酸エチル1 mLですすぎ、40℃、1 mm Hgで16時間乾燥し、灰白色固体0.352 g(31%)を得た。
【0166】
実施例7
インビトロ分析のための物質および方法
細胞培養
ヒト癌細胞系SKBr3、MV4-11、K562、SK-MEL-28、LnCAPおよびMDA-MB-468はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Manassas, VA)から得た。多発性骨髄腫RPMI-8226およびMM1.s細胞はTeru Hideshima博士(Jerome Lipper Multiple Myeloma Center, Dana Farber Cancer Institute, Boston, MA, USA.)から得た。すべての細胞系はマイコプラズマ・フリーであることを決定した。細胞を10%熱不活性化FBS、50 units/mLストレプトマイシンおよび50 units/mLペニシリンで補充されたRPMI-1640培地にて維持し、37℃、5% CO2中にてインキュベーションした。付着細胞は実験のためプレートする前に、カルシウムおよびマグネシウム不含のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.05%トリプシンおよび0.02% EDTAで解離した。
【0167】
インビトロ分析
MM1.s細胞細胞毒性
アラマーブルーアッセイ。MM1.s細胞(50,000/ウェル)は試験化合物の濃度を増大させながら72時間インキュベーションした。アラマーブルーをウェルに加え、37℃のインキュベーションの4時間後に蛍光を測定した。
SKBr3細胞細胞毒性
SKBr3細胞は試験化合物の濃度を増大させながら72時間インキュベーションした。バイアビリティ研究について、アラマーブルーを加え、インキュベーションの6時間後にウェルを記録した。
【0168】
MDA-MB-468細胞細胞毒性
MDA-MB-468細胞は試験化合物の濃度を増大させながら72時間インキュベーションした。バイアビリティ研究について、アラマーブルーを加え、インキュベーションの6時間後にウェルを記録した。
MV4-11細胞細胞毒性
MV4-11細胞は試験化合物の濃度を増大させながら3日間インキュベーションした。細胞バイアビリティは、アラマーブルーを読み取り評価した。
【0169】
K562細胞細胞毒性
K562細胞は試験化合物の濃度を増大させながらインキュベーションした。細胞バイアビリティは試験化合物の濃度を増大させながらインキュベーションした。細胞バイアビリティはアラマーブルーを読み取り評価した。
SK-MEL-28細胞細胞毒性
試験化合物の増大する濃度は2、3または4日間の培養にてSK-MEL-28細胞に加え、細胞のバイアビリティはアラマーブルーを用いて測定した。
LnCAP細胞細胞毒性
試験化合物の増大する濃度は4日間の培養におけるLnCAP細胞に加え、細胞のバイアビリティはアラマーブルーを用いて測定した。
【0170】
実施例8
インビボ分析
多発性骨髄腫モデル
試験化合物の効果は雄SCID/NODマウスにおけるヒト多発性骨髄腫細胞系RPMI-8226にて研究した。この研究において、雄マウスはRPMI-8226細胞で皮下移植した(1×107細胞)。平均腫瘍サイズが100 mm3に達したとき、動物を処置群(N=10-15/群)に無作為に割り当て、ビヒクル(pH 3.0に調節した50 mMクエン酸塩、50 mMアスコルビン酸塩、2.4 mM EDTA)または100 mg/kg(300 mg/m2)の試験化合物のいずれかを連続3日/週与えた。被験物質またはビヒクルは約20秒(sec)かけて0.2 mLの容積にて尾静脈に静脈内投与(IV)した。動物を45日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0171】
乳癌モデル
研究はMDA-MB-468乳癌モデルにて行い、試験化合物の皮下腫瘍負荷を軽減する能力を評価した。この研究において、雌nu/nu無胸腺マウスにMDA-MB-468細胞(1×107細胞)で皮下移植した。平均腫瘍サイズが100 mm3に達したとき、動物を以下の処置群: ビヒクルまたは試験化合物(100 mg/kg(300 mg/m2)にて毎週週2回)の一つに無作為に割り当てた(N=10-15/群)。被験物質またはビヒクルは約20秒(sec)かけて0.2 mLの容積にて尾静脈に静脈内投与(IV)した。動物を120日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0172】
卵巣癌モデル
研究はSKOV-3卵巣マウス異種移植モデルにて行い、試験化合物の皮下腫瘍負荷を軽減する能力を評価した。この研究において、雌nu/nu無胸腺マウスにSKOV-3細胞(1×107細胞)で皮下移植した。平均腫瘍サイズが100 mm3に達したとき、動物を処置群(N=10-15/群)に無作為に割り当て、ビヒクル、100 mg/kg(300 mg/m2)の試験化合物のいずれかを週2回与えた。被験物質またはビヒクルは約10秒(sec)かけて0.1 mLの容積にて尾静脈に静脈内投与(IV)した。動物を88日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0173】
ネズミLewis肺モデル
研究をマウスLewis肺モデルにて行い、本明細書に開示される化合物の皮下腫瘍負荷ならびに肺転移の罹患率の両方を軽減する能力を評価した。この研究において、C57Bl/6マウスにLewis肺細胞(1×106細胞)で皮下移植した。平均腫瘍サイズが71 mm3に達したとき、動物を以下の処置群:ビヒクルおよび75 mg/m2の化合物2(3周期の間、月、水および金(MWF))に無作為に割り当てた(N=10-15/群)。各周期は週あたり5日の処置からなる。被験物質またはビヒクルは約30秒(sec)かけて0.2 mLの容積にて尾静脈に静脈内投与(IV)した。動物を25日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0174】
前立腺癌
二つの研究をマウスPC-3前立腺異種移植モデルにて行い、試験化合物の単一の薬剤として、または現在の治療基準と組み合わせて皮下腫瘍負荷を軽減する能力を評価した。両方の研究において、雄nu/nu無胸腺マウスにPC-3細胞(1×107細胞)で皮下移植した。平均腫瘍サイズが100 mm3に達したとき、動物を処置群に無作為に割り当てた(N=10-15/群)。最初の研究において、マウスにビヒクル、試験化合物100 mg/kg(300mg/m2)のいずれかを週2回与えた。被験物質またはビヒクルは約20秒(sec)かけて0.2 mLの容積にて尾静脈に投与した。動物を64日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0175】
二次研究をこのモデルにて行い、治療基準タキソテールと組み合わせた試験化合物を評価した。この研究において、各10-15のマウスの別々の群を無作為に割り当て、ビヒクル、試験化合物100mg/kg(300mg/m2)を週2回、タキソテール5 mg/kg(15 mg/m2)週1回、または試験化合物とタキソテールとの組合せを与えた。動物を64日後に犠牲にし、腫瘍容積を比較した。
【0176】
実施例9
生物学的結果
本発明のヒドロキノンの生物学的活性分析からの結果は以下を示している。すべての値は平均±標準偏差として表されている。データ分析は分散の一方向分析からなり、必要に応じ、次いでDunnets試験をしてビヒクルおよび処置群間の差異を評価した。差異はp<0.05にて有意であると考えられる。
インビトロ結果
細胞系 化合物2(EC50) 17-AAG(EC50
MM1.s 307 nM 306 nM
SKBr3 32 nM 34 nM
MDA-MB-468 335 nM 356 nM
MV4-11 25 nM 38 nM
K562 29 nM 50 nM
SK-MEL-28 200 nM ------
LnCAP 73 nM ------

インビボ結果
細胞系 ビヒクルと比較した腫瘍成長%
化合物2 化合物2+タキソテール
RPMI-8226 71% -------
MDA-MB-468 76% -------
SKOV-3 59% -------
Lewis肺細胞 60% -------
PC-3 50% 84%

化合物2および17-AAGのHsp90への結合
化合物 Ki
化合物2 28 nM
17-AAG 67 nM
【0177】
均等および参照による引用
本明細書に記載の実施例および具体的態様は例示目的のみのためであり、その観点から種々の改変または変形が当業者に示唆され、本願および特許請求の範囲の精神および視野の範囲内に含まれることが理解される。すべての本明細書に引用される米国特許および米国特許出願公報は明確にそのまま本明細書に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における異常状態の治療方法であって、該異常状態がcKitキナーゼにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項2】
異常状態が肥満細胞症、1以上の肥満細胞腫の存在、喘息およびアレルギー関連慢性鼻炎からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
異常状態が1以上の消化管間質腫瘍の存在である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における骨髄増殖性疾患の治療方法。
【請求項5】
骨髄増殖性疾患が本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症および好酸球増加症候群からなる群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物における異常状態の治療方法であって、該異常状態がPDGFRαにより媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項7】
哺乳動物がヒトである、請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
ヒドロキノンアンサマイシン化合物の投与方法が吸入、経口、静脈内、舌下、眼内、経皮、直腸、膣内、局所、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮下、口腔または鼻腔である、請求項1〜7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
ヒドロキノンアンサマイシン化合物が式1:
【化1】

[式中、それぞれ独立して:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
X-は医薬的に許容される酸の共役塩基であり;
Rはそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14またはハライドであり;R2は水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1およびR2は結合している炭素と一緒になって、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-または-(C=N-R)-を示し;
R3およびR4はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR3はR4と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R5はH、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化2】

1a
(式中、R17は独立して水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)および-CH2O-ヘテロシクリルからなる群から選択される)
で示される基からなる群から選択され;
R6およびR7はともに水素であるか;またはR6およびR7は一緒になって結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R10およびR11はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR10およびR11はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR13およびR14はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R16はそれぞれ、独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5または6であり;
R18はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択されるか;またはR18はR19と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員環であり;
R20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ、独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式1の立体中心における絶対立体化学はRもしくはSまたはその混合であることができ、二重結合の立体化学はEもしくはZまたはその混合であることができる]
で示される化合物またはその遊離塩基である、請求項1〜8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法であって、該過剰増殖性障害が変異タンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項11】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法であって、該過剰増殖性障害が機能獲得型変異タンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項12】
タンパク質がEGFR、VEGFR、Flt-3、Her-2およびb-Rafからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
障害が多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、少なくとも一つの消化管間質腫瘍の存在、乳癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、黒色腫および前立腺癌からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物がヒトである、請求項11、12または13記載の方法。
【請求項15】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法であって、該過剰増殖性障害が融合タンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項16】
融合タンパク質がBcr-Abl、Tpr-MetおよびRunx1-Etoからなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
障害が慢性骨髄性白血病である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
哺乳動物がヒトである、請求項15、16または17記載の方法。
【請求項19】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法であって、該過剰増殖性障害がHsp90のクライアントタンパク質により媒介されるシグナル伝達経路における逸脱と関連する、方法。
【請求項20】
クライアントタンパク質がChk1、テロメラーゼ、Hif1α、MMP2、Met、FAK、RIP、PLKおよびNPM-ALからなる群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
哺乳動物がヒトである、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
治療的有効量のヒドロキノンアンサマイシン化合物をそれを必要とする哺乳動物に投与する工程を含む、過剰増殖性障害の治療方法であって、該過剰増殖性障害がZap-70、Akt、Her2、IKKおよびNF-カッパBからなる群から選択されるタンパク質と関連する、方法。
【請求項23】
哺乳動物がヒトである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ヒドロキノンアンサマイシン化合物が式1:
【化3】

[式中、それぞれ独立して:
Wは酸素または硫黄であり;
Qは酸素、NR、N(アシル)または結合であり;
X-は医薬的に許容される酸の共役塩基であり;
Rはそれぞれ、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R1はヒドロキシル、アルコキシル、-OC(O)R8、-OC(O)OR9、-OC(O)NR10R11、-OSO2R12、-OC(O)NHSO2NR13R14、-NR13R14またはハライドであり;R2は水素、アルキルまたはアラルキルであるか;またはR1およびR2はそれらが結合している炭素と一緒になって、-(C=O)-、-(C=N-OR)-、-(C=N-NHR)-または-(C=N-R)-であり;
R3およびR4はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR3はR4と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環であり;
R5はH、アルキル、アラルキルおよび式1a:
【化4】

1a
(式中、R17は独立して水素、ハライド、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシ、アシルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アシルアミノ、アラルキルアミノ、ニトロ、アシルチオ、カルボキサミド、カルボキシル、ニトリル、-COR18、-CO2R18、-N(R18)CO2R19、-OC(O)N(R18)(R19)、-N(R18)SO2R19、-N(R18)C(O)N(R18)(R19)および-CH2O-ヘテロシクリルからなる群から選択される)
で示される基からなる群から選択され;
R6およびR7はともに水素であるか;またはR6およびR7は一緒になって、結合を形成し;
R8は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R9はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R10およびR11はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR10およびR11はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R12はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルまたは-[(CR2)p]-R16であり;
R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキルおよび-[(CR2)p]-R16からなる群から選択されるか;またはR13およびR14はそれらが結合している窒素と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員ヘテロ環を示し;
R16はそれぞれ、独立して水素、ヒドロキシル、アシルアミノ、-N(R18)COR19、-N(R18)C(O)OR19、-N(R18)SO2(R19)、-CON(R18)(R19)、-OC(O)N(R18)(R19)、-SO2N(R18)(R19)、-N(R18)(R19)、-OC(O)OR18、-COOR18、-C(O)N(OH)(R18)、-OS(O)2OR18、-S(O)2OR18、-OP(O)(OR18)(OR19)、-N(R18)P(O)(OR18)(OR19)および-P(O)(OR18)(OR19)からなる群から選択され;
pは1、2、3、4、5または6であり;
R18はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
R19はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択されるか;またはR18はR19と一緒になって、適宜置換されていてもよい4-8員環を示し;
R20、R21、R22、R24およびR25はそれぞれ、独立してアルキルであり;
R23はアルキル、-CH2OH、-CHO、-COOR18または-CH(OR18)2であり;
R26およびR27はそれぞれ、独立して水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアラルキルからなる群から選択され;
式1の立体異性中心における絶対立体化学はRもしくはSまたはその混合であることができ、二重結合の立体化学はEもしくはZまたはその混合であることができる]
で示される化合物またはその遊離塩基である、請求項10〜23のいずれか記載の方法。
【請求項25】
ヒドロキノンアンサマイシン化合物が17-アリルアミノ-17-デメトキシ-18,21-ジヒドロゲルダナマイシンまたはその医薬的に許容される塩である、請求項1〜8および10〜23のいずれか記載の方法。
【請求項26】
ヒドロキノンアンサマイシンが17-アリルアミノ-17-デメトキシ-18,21-ジヒドロゲルダナマイシンの塩酸塩である、請求項1〜8および10〜23のいずれか記載の方法。

【公表番号】特表2009−501234(P2009−501234A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521582(P2008−521582)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/027113
【国際公開番号】WO2007/009007
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】