説明

ヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバー、ヒュージブルリンクブロック、およびヒュージブルリンクブロックの製造方法

【課題】可溶体のくびれ部に相当する部分以外の変更がない限り、プレス金型の形状を変更する必要がなく、統一形状の金型を使用することで、生産効率を向上させることのできるヒュージブルリンクの回路構成用バスバーを提供する。
【解決手段】電流の流れ方向の上流側に位置する電源側端子板11と、電源側端子板からの分岐回路を構成するためにそれぞれ可溶体13を介して電源側端子板に繋がる複数の負荷側端子板12とを一体に有し、各可溶体の形状が統一されると共に、各可溶体の電流の流れ方向における中間部に仮連結点が設定され、隣接する可溶体の仮連結点が、後工程にて切断されるジョイントリブ15により相互連結され、後工程にて切断されるジョイントリブの切断位置を変えることにより可溶体の溶断特性が変更可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として車載バッテリと負荷側機器との間に介在されるヒュージブルリンクブロックに係り、特にヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバー、ヒュージブルリンクブロック、およびヒュージブルリンクブロックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のヒュージブルリンクブロックは、一般に、複数の負荷につながる複数の分岐回路を備えており、分岐回路ごとにヒューズで回路の保護を行っている。この場合、1つの電源側端子板(電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板に相当)から、それぞれヒューズ機能を果たす可溶体を介して複数に分岐する負荷側端子板(電流の流れ方向の下流側に位置する下流側端子板に相当)までの回路を、1枚のプレス加工されたバスバーで製作して、必要な部分だけを樹脂ハウジングで覆い、ブロック化している。
【0003】
図5〜図7はその従来の一例を示しており、図5は従来のヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーのプレス加工後の形状を示す斜視図、図6は従来のヒュージブルリンクブロックのバスバーの構成を示す正面図、図7は図6のバスバーを樹脂ハウジングに一体化して構成したヒュージブルリンクブロックの正面図である。
【0004】
このヒュージブルリンクブロックは、回路構成体であるバスバー110と、このバスバー110の外周などを部分的に覆う樹脂ハウジング120とから構成されている。バスバー110は、バッテリに接続される電源側端子板111と、それぞれ可溶体(電流の通る断面積を小さくしてジュール熱により溶けやすくした部分)113を介して電源側端子板111に連結された複数の負荷側端子板112とを有している。このような分岐回路を備えるバスバー110は、複数の可溶体113を一体的に集約して配置できるため、非常にコンパクトに形成することができ、例えば、特許文献1などにおいて開示されている。
【0005】
この種のバスバー110は、金属板をプレス加工して作製されており、樹脂ハウジング120をインサート成形することで、樹脂ハウジング120と一体化される。あるいは、予め成形した樹脂ハウジングに圧入することで、樹脂ハウジングと一体化される。
【0006】
各可溶体113には、電流の流れ方向の中央部に低融点金属の配置部114が設けられており、その配置部114に加締めや溶着により、可溶体113の溶断特性の安定化を図るために、スズ合金等の低融点金属チップが取り付けられている。このように可溶体の中央に低融点金属が配置された例は、特許文献2や特許文献3に記載されている。
【0007】
可溶体113に低融点金属を取り付けたバスバー110の場合、所定電流以上の大電流が流れた際に、低融点金属が溶けると共に当該低融点金属と可溶体113とが共晶化して抵抗値の大きな合金層を形成し、通電発熱を促進して可溶体113が溶断する。そして、可溶体113の溶断により、負荷側機器への過電流の供給を遮断する。可溶体113の溶断は、低融点金属の配置部114の上流側か下流側のいずれかの近傍で起こる。その溶断箇所を決定付けるために、低融点金属の配置部114の近傍の可溶体113上に、可溶体113の幅寸法を局部的に小さくしたくびれ部113aが、バスバー110のプレス段階で設けられている。くびれ部113aは可溶体113の溶断特性を左右する抵抗値に直接的な影響を与える部分であるが、材料幅が小さくなるために強度的に弱く、そのために外力の影響を受けた際に可溶体113が変形しやすくなる。
【0008】
そこで、単品部品としてバスバー110を取り扱う段階において可溶体113に無理な力がかからないようにするために、隣接する負荷側端子板112をジョイントリブ115で相互連結している。ジョイントリブ115は、単品部品としての取り扱いの段階では切断せずに残しておき、樹脂ハウジング120の成形前や樹脂ハウジング120へのバスバー110の圧入前に切断するようにしている。また、切断工程の他に、製品段階では確実にジョイントリブ115が切断されていなければならないので、副次的に切断確認の工程を設けている。また、確認用の製品形状を追加するなどの対応もしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−127698号公報
【特許文献2】特開2010−27545号公報
【特許文献3】特開2004−127701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したように従来では、くびれ部113aに関係のない位置(負荷側端子板112)にジョイントリブ115を設けているので、くびれ部113aのプレス加工部とジョイントリブ115のプレス加工部をバスバーのプレス金型に別々に設けている。しかし、ジョイントリブ115のプレス加工部については統一形状にすることで問題はないが、くびれ部113aのプレス加工部は、可溶体の溶断特性(定格ともいう)の変更があるたびに金型形状を変更しなくてはならず、プレス金型の負担が高じる問題があった。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可溶体のくびれ部に相当する部分以外の変更がない限り、プレス金型の形状を変更する必要がなく、統一形状の金型を使用することで、生産効率を向上させることのできるヒュージブルリンクの回路構成用バスバー、ヒュージブルリンクブロック、およびヒュージブルリンクブロックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板と、該上流側端子板より電流の流れ方向の下流側に位置し、可溶体を介して前記上流側端子板に繋がる下流側端子板と、を一体に有したヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーであって、
前記可溶体の電流の流れ方向における中間部に仮連結点が設定され、該仮連結点と前記上流側端子板または前記下流側端子板とが、後工程にて切断されるジョイントリブにより相互連結され、前記後工程にて切断されるジョイントリブの切断位置を変えることにより前記可溶体の溶断特性が変更可能とされていることを特徴とするヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバー。
【0013】
(2) 電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板と、該上流側端子板より電流の流れ方向の下流側に位置し、前記上流側端子板からの分岐回路を構成するためにそれぞれ可溶体を介して前記上流側端子板に繋がる複数の下流側端子板と、を一体に有した回路構成用バスバーを備えたヒュージブルリンクブロックであって、
前記各可溶体の形状が統一されると共に、前記各可溶体の電流の流れ方向における中間部に仮連結点が設定され、隣接する前記可溶体の仮連結点が、後工程にて切断されるジョイントリブにより相互連結され、前記後工程にて切断されるジョイントリブの切断位置を変えることにより前記可溶体の溶断特性が変更可能とされていることを特徴とするヒュージブルリンクブロック。
【0014】
(3) 前記可溶体の電流の流れ方向の中央に低融点金属が配置され、その低融点金属の配置箇所の近傍に前記仮連結点が設定され、隣接する前記可溶体の仮連結点が、前記ジョイントリブにより相互連結されていることを特徴とする上記(2)に記載のヒュージブルリンクブロック。
【0015】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載のバスバーをプレス加工により作製する工程と、
該工程で作製したバスバーに樹脂ハウジングを一体化して、該樹脂ハウジングの窓部に前記可溶体を臨ませる工程と、
該工程後に前記樹脂ハウジングの窓部を通して切断工具であるパンチを挿入することにより、前記可溶体の幅を調節しながら前記ジョイントリブを切断して、可溶体から下流側端子板までの範囲をそれぞれ電気的に独立させる工程と、
を具備することを特徴とするヒュージブルリンクブロックの製造方法。
【0016】
上記(1)の構成のバスバーによれば、次の作用を得ることができる。即ち、例えば、バスバーを単品部品として取り扱っている段階で、上流側端子板に可溶体を介して繋がっている下流側端子板が上流側端子板や下流側端子板から切り離された形で独立して存在していると、外力の影響により強度的な弱部である可溶体が変形することによって、全体の配置関係が乱れてしまうおそれがあるが、上記(1)の構成のバスバーでは、可溶体が、後工程で切断されるジョイントリブを介して上流側端子板または下流側端子板に連結されているので、外力の影響で可溶体が変形するのを極力防ぐことができ、全体の配置関係が乱れるのを防止することができる。
【0017】
また、後工程でジョイントリブを切断する際に、可溶体のくびれ部に相当する部分の幅寸法を、切断工具であるパンチの位置やパンチの寸法により自由に調整することができるので、くびれ部に相当する部分の寸法により主に決定される可溶体の溶断特性を、バスバーのプレス工程ではなく、後工程のパンチ工程にて容易に調整することができる。従って、バスバーをプレス加工する際のプレス金型を、可溶体の溶断特性の違いに応じて別々に用意する必要がなく、プレス金型の統一を図ることができる。また、プレス工程の後で行うパンチ工程で可溶体の溶断特性を調整することができるので、プレス工程において可溶体の統一形状化を図りながら、後工程において溶断特性の異なる多くの可溶体のバリエーションを作製することができる。そのため、パンチ工程前の中間在庫の大幅な圧縮が可能となる。
【0018】
また、可溶体の位置にジョイントリブがあるので、バスバーを樹脂ハウジングにインサート成形や圧入などによって組み付けた際に樹脂ハウジングの窓部にジョイントリブの切断予定部を臨ませることができ、それにより、ジョイントリブを切断する工程を、バスバーを樹脂ハウジングに組み付けた後の段階で実施するよう設定することができる。従って、ヒュージブルリンクブロックの作製工程の終盤までジョイントリブによる連結機能を残すことができ、それによって、可溶体の変形を、樹脂ハウジングでバスバーを確実に固定するまで有効に防ぐことができ、ヒュージブルリンクブロックの品質向上を図ることができる。
【0019】
上記(2)の構成のヒュージブルリンクブロックによれば、次の作用を得ることができる。即ち、例えば、バスバーを単品部品として取り扱っている段階で、上流側端子板に可溶体を介して繋がっている下流側端子板が、それぞれ互いに切り離された形で独立して存在していると、外力の影響により強度的な弱部である可溶体が変形することによって、全体の配置関係が乱れてしまうおそれがあるが、上記(2)の構成のヒュージブルリンクブロックでは、各可溶体が、後工程で切断されるジョイントリブを介して相互連結されているので、外力の影響で各可溶体が変形するのを極力防ぐことができ、全体の配置関係が乱れるのを防止することができる。
【0020】
また、後工程でジョイントリブを切断する際に、各可溶体のくびれ部に相当する部分の幅寸法を、切断工具であるパンチの位置やパンチの寸法によりそれぞれ自由に調整することができるので、くびれ部に相当する部分の寸法により主に決定される各可溶体の溶断特性を、バスバーのプレス工程ではなく、後工程のパンチ工程にて容易に調整することができる。従って、バスバーをプレス加工する際の金型の可溶体加工部の寸法を統一することができる。
【0021】
また、プレス工程の後で行うパンチ工程で可溶体の溶断特性を調整することができるので、プレス工程において可溶体の統一形状化を図りながら、後工程において溶断特性の異なる多くの可溶体のバリエーションを作製することができる。そのため、パンチ工程前の中間在庫の大幅な圧縮が可能となる。
【0022】
また、各可溶体の位置にジョイントリブがあるので、バスバーを樹脂ハウジングにインサート成形や圧入などによって組み付けた際に樹脂ハウジングの窓部にジョイントリブの切断予定部を臨ませることができ、それにより、ジョイントリブを切断する工程を、バスバーを樹脂ハウジングに組み付けた後の段階で実施するよう設定することができる。従って、ヒュージブルリンクブロックの作製工程の終盤までジョイントリブによる連結機能を残すことができ、それによって、可溶体の変形を、樹脂ハウジングでバスバーを確実に固定するまで有効に防ぐことができ、ヒュージブルリンクブロックの品質向上を図ることができる。
【0023】
上記(3)の構成のヒュージブルリンクブロックによれば、可溶体の中央に低融点金属が配置されているので、可溶体の溶断特性の安定化を図ることができる。
【0024】
また、可溶体に設けた低融点金属の配置箇所の近傍にジョイントリブを連結したので、低融点金属の配置箇所の近傍の可溶体の幅寸法で決まる抵抗値つまりは可溶体の溶断特性を、ジョイントリブによる破断位置を変えることによって容易に調整することができる。
【0025】
上記(4)の構成のヒュージブルリンクブロックの製造方法によれば、切断工具であるパンチの位置やパンチの寸法などによりジョイントリブの切断位置を変えることにより、可溶体の溶断特性を、バスバーのプレス工程ではなく、後工程のパンチ工程にて容易に調整することができる。従って、バスバーをプレス加工する際の金型寸法を統一を図ることができる。しかも、パンチによるジョイントリブの切断を、バスバーを樹脂ハウジングに組み付けた後の段階で実施するので、ヒュージブルリンクブロックの作製工程の終盤までジョイントリブによる連結機能を残すことができ、それによって、可溶体の変形を、樹脂ハウジングでバスバーを確実に固定するまで有効に防ぐことができ、ヒュージブルリンクブロックの品質向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、可溶体のくびれ部に相当する部分以外の変更がない限り、プレス金型の形状を変更する必要がなく、統一形状の金型を使用することで、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態のヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーの正面図である。
【図2】図1のバスバーにインサート成形によって樹脂ハウジングを一体化した状態を示す正面図である。
【図3】図2の状態のジョイントリブにパンチ工程を施し、各負荷側回路をそれぞれ電気的に独立させてヒュージブルリンクブロックを完成させた状態を示す正面図である。
【図4】(a)〜(c)は、前記ジョイントリブの切断位置により、可溶体のくびれ部に相当する部分の幅をHa、Hb、Hcと変化させた例を示す部分正面図である。
【図5】従来のヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーのプレス加工後の形状を示す斜視図である。
【図6】図5のバスバーの可溶体の低融点金属の配置部に低融点金属チップ(スズ合金チップ)を配置して抱きかかえさせた状態を示す正面図である。
【図7】図6のバスバーをインサート成形により樹脂ハウジングに一体化させた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態のヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーの正面図、図2は図1のバスバーにインサート成形によって樹脂ハウジングを一体化した状態を示す正面図、図3は図2の状態のジョイントリブにパンチ工程を施し各負荷側回路をそれぞれ電気的に独立させてヒュージブルリンクブロックを完成させた状態を示す正面図、図4(a)〜(c)は、ジョイントリブの切断位置により、可溶体のくびれ部に相当する部分の幅をHa、Hb、Hcと変化させた例を示す部分正面図である。
【0029】
図1〜図3に示すように、このヒュージブルリンクブロックは、1枚の金属板をプレス加工することで作製された回路構成用のバスバー10と、このバスバー10の外周などを部分的に覆うようにバスバー10を成形型にセットしてインサート成形された樹脂ハウジング20とから構成されている。
【0030】
バスバー10は、バッテリに接続される電源側端子板11と、電源側端子板11からの分岐回路を構成するためにそれぞれ可溶体(電流の通る断面積を小さくしてジュール熱により溶けやすくした部分)13を介して電源側端子板11に連結された複数の負荷側端子板12と、を有している。ここで、電源側端子板11は、電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板に相当し、負荷側端子板12は、上流側端子板より電流の流れ方向の下流側に位置する下流側端子板に相当する。
【0031】
電源側端子板11には電源側の端子に接続するための接続孔11aが設けられ、負荷側端子板12には負荷側の端子に接続するための接続孔12aが設けられている。これら接続孔11a、12aの設けられている部分や可溶体13の設けられた部分は、樹脂ハウジング20から露出するようになっており、各負荷側端子板12の接続孔12aが設けられた部分は、それぞれ樹脂ハウジング20の第1窓部22にて外部に露出し、各可溶体13が設けられた部分は、それぞれ樹脂ハウジング20の第2窓部21にて外部に露出している。
【0032】
負荷側端子板12および可溶体13は横一列に配列され、各可溶体13の形状は同一形状に統一されている。各可溶体13の電流の流れ方向における中間部には仮連結点が設定され、隣接する可溶体13の仮連結点が、後工程にて切断されるジョイントリブ15により相互連結されている。また、電源側端子板11のL字形に曲がった部分に隣接する可溶体13の仮連結点と電源側端子板11の間も、後工程にて切断されるジョイントリブ15により相互連結されている。そして、ジョイントリブ15は一直線上に配されている。
【0033】
また、各可溶体13の電流の流れ方向の中央には低融点金属の配置箇所14が設けられ、それら各配置箇所14に低融点金属チップとしてスズ合金チップ(符号省略)が加締めまたは溶着により取り付けられている。前述の可溶体13の仮連結点は、低融点金属の配置箇所14の上流側の近傍に設定されている。
【0034】
このヒュージブルリンクブロックを製造する場合は、まず、図1に示す形状のバスバー10をプレス加工により作製し、低融点金属の配置箇所14に低融点金属チップを取り付ける。次に、前工程で作製したバスバー10に樹脂ハウジング20を一体化するために、成形型にバスバー10をセットした状態で樹脂ハウジング20をインサート成形する。こうすることにより、図2に示すように、樹脂ハウジング20の第2窓部21に可溶体13を臨ませる。次いで、樹脂ハウジング20の第2窓部21を通して、切断工具であるパンチを挿入することにより、可溶体13の幅を調節しながらジョイントリブ15を切断して、可溶体13から負荷側端子板12までの範囲をそれぞれ電気的に独立させる。こうすることにより、図3に示すヒュージブルリンクブロックを作製することができる。図3において、ジョイントリブ15の切断箇所を符号16で示してある。
【0035】
このようにジョイントリブ15をパンチで切断する際、図4(a)〜(c)に示すように、パンチ17の位置や形状を調節することにより、くびれ部に相当する部分の幅寸法をHa、Hb、Hc(ただし、Hb<Ha<Hc)と変更することができ、可溶体13の溶断特性を自由に調整することができる。例えば、寸法Haは一般定格電流の場合、Hbは低定格電流の場合、Hcは高定格電流の場合である。図3に示す左から右に並ぶ3つの可溶体13において、図中左側の可溶体は一般定格電流用(寸法Ha)、中央の可溶体は低定格電流用(寸法Hb)、右側の可溶体は高定格電流用(寸法Hc)である。
【0036】
上述したバスバー10によれば、次の作用効果を得ることができる。即ち、例えば、バスバー10を単品部品として取り扱っている段階で、電源側端子板11に可溶体13を介して繋がっている負荷側端子板12が、他から切り離された形で独立して存在していると、外力の影響により強度的な弱部である可溶体13が変形することによって、全体の配置関係が乱れてしまうおそれがあるが、上記構成のバスバー10では、各可溶体13が、後工程で切断されるジョイントリブ15を介して相互連結されると共に電源側端子板11に連結されているので、外力の影響で可溶体13が変形するのを極力防ぐことができ、全体の配置関係が乱れるのを防止することができる。
【0037】
また、後工程でジョイントリブ15を切断する際に、可溶体13のくびれ部に相当する部分の幅寸法を、切断工具であるパンチ17の位置やパンチ17の寸法により自由に調整することができるので、くびれ部に相当する部分の寸法により主に決定される可溶体13の溶断特性を、バスバー10のプレス工程ではなく、後工程のパンチ工程にて容易に調整することができる。
【0038】
従って、バスバー10をプレス加工する際のプレス金型を、可溶体13の溶断特性の違いに応じて別々に用意する必要がなく、プレス金型の統一を図ることができる。あるいは、プレス金型の可溶体加工部の寸法を統一することができる。また、プレス工程の後で行うパンチ工程で可溶体13の溶断特性を調整することができるので、プレス工程において可溶体13の統一形状化を図りながら、後工程において溶断特性の異なる多くの可溶体13のバリエーションを作製することができる。そのため、パンチ工程前の中間在庫の大幅な圧縮が可能となる。
【0039】
また、可溶体13の位置にジョイントリブ15があるので、バスバー10を樹脂ハウジング20にインサート成形や圧入などによって組み付けた際に、樹脂ハウジング20の第2窓部21にジョイントリブ15の切断予定部を臨ませることができ、それにより、ジョイントリブ15を切断する工程を、バスバー10を樹脂ハウジング20に組み付けた後の段階で実施するよう設定することができる。従って、ヒュージブルリンクブロックの作製工程の終盤までジョイントリブ15による連結機能を残すことができ、それによって、可溶体13の変形を、樹脂ハウジング20でバスバー10を確実に固定するまで有効に防ぐことができ、ヒュージブルリンクブロックの品質向上を図ることができる。
【0040】
また、可溶体13の中央に低融点金属が配置されているので、可溶体13の溶断特性の安定化を図ることができる。また、可溶体13に設けた低融点金属の配置箇所14の近傍にジョイントリブ15を連結したので、低融点金属の配置箇所14の近傍の可溶体13の幅寸法で決まる抵抗値つまりは可溶体13の溶断特性を、ジョイントリブ15による破断位置を変えることによって容易に調整することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、3つあるうちの1つの可溶体13をそれに隣接する電源側端子板11にジョイントリブ15を介して連結した場合を示したが、可溶体13に隣接するものが負荷側端子板12であれば、その負荷側端子板12にジョイントリブ15を介して可溶体13を連結してもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、可溶体13およびそれに連なる負荷側端子板12が複数ある場合について説明したが、可溶体13およびそれに連なる負荷側端子板12が単数である場合にも本発明を適用することができる。その場合は、1つの可溶体13に設けた仮連結点と電源側端子板あるいは負荷側端子板をジョイントリブを介して連結すればよい。
【0044】
また、上記実施形態では、低融点金属チップが可溶体13に取り付けられている場合を示したが、必ずしも低融点チップが取り付けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 バスバー
11 電源側端子板(上流側端子板)
12 負荷側端子板(下流側端子板)
13 可溶体
14 低融点金属の配置箇所
15 ジョイントリブ
20 樹脂ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板と、該上流側端子板より電流の流れ方向の下流側に位置し、可溶体を介して前記上流側端子板に繋がる下流側端子板と、を一体に有したヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバーであって、
前記可溶体の電流の流れ方向における中間部に仮連結点が設定され、該仮連結点と前記上流側端子板または前記下流側端子板とが、後工程にて切断されるジョイントリブにより相互連結され、前記後工程にて切断されるジョイントリブの切断位置を変えることにより前記可溶体の溶断特性が変更可能とされていることを特徴とするヒュージブルリンクブロックの回路構成用バスバー。
【請求項2】
電流の流れ方向の上流側に位置する上流側端子板と、該上流側端子板より電流の流れ方向の下流側に位置し、前記上流側端子板からの分岐回路を構成するためにそれぞれ可溶体を介して前記上流側端子板に繋がる複数の下流側端子板と、を一体に有した回路構成用バスバーを備えたヒュージブルリンクブロックであって、
前記各可溶体の形状が統一されると共に、前記各可溶体の電流の流れ方向における中間部に仮連結点が設定され、隣接する前記可溶体の仮連結点が、後工程にて切断されるジョイントリブにより相互連結され、前記後工程にて切断されるジョイントリブの切断位置を変えることにより前記可溶体の溶断特性が変更可能とされていることを特徴とするヒュージブルリンクブロック。
【請求項3】
前記可溶体の電流の流れ方向の中央に低融点金属が配置され、その低融点金属の配置箇所の近傍に前記仮連結点が設定され、隣接する前記可溶体の仮連結点が、前記ジョイントリブにより相互連結されていることを特徴とする請求項2に記載のヒュージブルリンクブロック。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバスバーをプレス加工により作製する工程と、
該工程で作製したバスバーに樹脂ハウジングを一体化して、該樹脂ハウジングの窓部に前記可溶体を臨ませる工程と、
該工程後に前記樹脂ハウジングの窓部を通して切断工具であるパンチを挿入することにより、前記可溶体の幅を調節しながら前記ジョイントリブを切断して、可溶体から下流側端子板までの範囲をそれぞれ電気的に独立させる工程と、
を具備することを特徴とするヒュージブルリンクブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−216337(P2012−216337A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79573(P2011−79573)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】