説明

ヒンジキャップおよびヒンジキャップ付容器

【課題】不正な開封をより確実に防止でき得るヒンジキャップを提供する。
【解決手段】ヒンジキャップ10は、キャップ本体20と、ヒンジ体40を介してキャップ本体20に対して開閉自在の蓋体30と、介在部材50と、を有する。介在部材50は、初めて開封する初回開封前の段階では、キャップ本体20と蓋体30の両方に連結するとともに両者の間に介在して、注出口24周辺へのアクセス、および、蓋体30の開閉動作を禁止する。蓋体30を上側に押し上げる初回開封動作を受けると、介在部材50は、その一部が破断することによりキャップ本体20または蓋体30から不可逆的に分離し、蓋体30の開閉動作を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着されて、当該容器の開口部を開閉自在に栓するヒンジキャップおよび、ヒンジキャップ付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器に装着されて、当該容器の開口部を開閉自在に栓するヒンジキャップが広く知られている。かかるヒンジキャップの多くは、容器に装着されるキャップ本体と、当該本体部に対して開閉自在の蓋体と、を備えている。そして、キャップ本体には内容物を注ぐための注出口が形成されており、この注出口に蓋体の底面から突出する突起部を挿入し、嵌合させることで容器の密封性を保つようになっていた。
【0003】
しかしながら、かかる嵌合方式では、容器に外圧が付加されるなどして容器内圧が高まると、嵌合が解除され、意図しない開封が生じることがあった。こうした意図しない開封を防止する手段として、キャップ本体に、プルリングやタンパーシール、アルミタックを装着することも従来から考えられている。しかし、プルリングは、注出口が小さいキャップでは、採用困難であった。タンパーシールやアルミタックは、注出口の大きさに関わらず有効な手段と言えるが、当該タンパーシール等を装着する手間、また、初回開封時に当該タンパーシール等を取り外す手間等が必要であり、煩雑であった。
【0004】
特許文献1,2には、予め、ヒンジキャップの注ぎ口に膜体を装着しておき、初回開封時には、当該膜体を蓋体に設けられた突起部材で切り裂けるようにしたヒンジキャップが開示されている。かかるヒンジキャップによれば、密封性を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−122314号公報
【特許文献2】特開2001−72112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この特許文献1,2に記載のヒンジキャップでは、不正な開封の有無が容易に把握できるタンパーエビデンス機能が乏しいという問題があった。例えば、特許文献1開示のヒンジキャップは、容器に装着される中栓と、当該中栓に嵌着されるキャップ本体と、の二部材から構成されている。ここで、キャップ本体は中栓に嵌着されているに過ぎないため、当該キャップ本体を中栓から離脱させて不正な開封をした後に、再度、当該キャップ本体を中栓に嵌着された場合には、ユーザが当該不正な開封があったことを容易に把握することはできない。また、特許文献2開示のヒンジキャップも、容器に装着される中栓と、当該中栓に係合されるキャップ本体と、の二部材から構成されており、特許文献1と同様に、不正な開封の有無をユーザが容易に把握できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、不正な開封の有無をより確実に把握でき得るヒンジキャップ、および、ヒンジキャップ付容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒンジキャップは、容器に装着されるヒンジキャップであって、前記容器の内部に連通する注出口が形成されたキャップ本体と、ヒンジ体を介して前記キャップ本体に対して開閉自在に連結された蓋体と、当該ヒンジキャップを初めて開封する初回開封前には、前記キャップ本体および蓋体の間に介在しつつ前記キャップ本体および蓋体の両方に連結されることで前記蓋体の開閉動作を阻害し、初回開封動作を受けた場合には、蓋体およびキャップ本体の少なくとも一方から不可逆的に分離されることで前記蓋体の開閉動作を許容する介在部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記キャップ本体は、前記注出口を覆うことで前記容器の内外を遮断する膜体を備え、前記蓋体は、前記注出口に挿入されることで前記注出口を閉鎖する突起部であって、初回挿入時に前記膜体を破損する突起部を備え、前記介在部材は、前記初回開封前には、前記突起部が前記膜体に未挿入の状態が維持されるように前記キャップ本体および蓋体の間に介在する。
【0010】
他の好適な態様では、前記介在部材は、前記キャップ本体または前記蓋体に一体成形されている。この場合、前記介在部材は、当該ヒンジキャップの成形時点で前記キャップ本体または蓋体のいずれか一方にのみ接続されており、当該ヒンジキャップの成形後に前記キャップ本体または蓋体の他方に連結され、前記介在部材と他方との連結の解除に要する力は、前記不可逆的な分離に要する力より大きい、ことが望ましい。また、前記介在部材は、前記蓋体の下端から延設される壁部と、前記キャップ本体に形成された連結孔に係合されるべく前記壁部の下端に形成される連結突起部と、を備え、前記壁部と蓋体との境界、および、壁部と連結突起部との境界の少なくとも一方には、初回開封動作を受けて破断するべく、周辺部位に比して脆弱となっている破断部が形成されている、ことも望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、当該ヒンジキャップは、パウチ容器にヒートシールされるシール部を有したスパウトキャップである。
【0012】
他の本発明であるヒンジキャップ付容器は、容器本体にヒンジキャップが装着されたヒンジキャップ付容器であって、前記ヒンジキャップは、前記容器の内部に連通する注出口が形成されたキャップ本体と、ヒンジ体を介して前記キャップ本体に対して開閉自在に連結された蓋体と、当該ヒンジキャップを初めて開封する初回開封前には、前記キャップ本体および蓋体の間に介在しつつ前記キャップ本体および蓋体の両方に連結されることで前記蓋体の開閉動作を阻害し、初回開封動作を受けた場合には、蓋体およびキャップ本体の少なくとも一方から不可逆的に分離されることで前記蓋体の開閉動作を許容する介在部材と、容器に装着される装着部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザは、初回開封の有無を確実に把握することができる。その結果、不正な開封の有無をより確実に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態であるヒンジキャップ付容器の斜視図である。
【図2】ヒンジキャップ付容器に用いられるヒンジキャップの斜視図である。
【図3】初回開封前におけるヒンジキャップの部分断面図である。
【図4】初回開封後におけるヒンジキャップの部分断面図である。
【図5】注出口周辺の上面図およびC−C断面図である。
【図6】他の膜体の一例を示す図である。
【図7】他の破断部の一例を示す図である。
【図8】初回開封前における他のヒンジキャップの部分断面図である。
【図9】初回開封後における他のヒンジキャップの部分断面図である。
【図10】初回開封後における他のヒンジキャップの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態であるヒンジキャップ付容器の斜視図である。また、図2は、ヒンジキャップ付容器に用いられるヒンジキャップの斜視図である。さらに、図3,4は、初回開封前後におけるヒンジキャップの一部断面図である。なお、以下の説明において「初回開封」とは、キャップ本体および蓋体の間に介在している介在部材をキャップ本体および蓋体の両方に連結して、ヒンジキャップ付容器を閉封した後に、最初に開封(介在部材が蓋体およびキャップ本体の少なくとも一方から不可逆的に分離)することを意味する。本明細書では、初回開封後に、キャップを開閉する行為は、「開栓動作」、「閉栓動作」と呼び、初回開封動作とは区別する。
【0016】
本実施形態のヒンジキャップ付容器は、図1に示すとおり、パウチ容器100と、当該パウチ容器100の端部に固着されるヒンジキャップ10と、に大別される。パウチ容器100は、周知のとおり、合成樹脂フィルムなどのフレキシブルシートから形成される袋状容器である。ヒンジキャップ10は、このパウチ容器100の一部に形成される開口部、いわゆる口部に固着されるスパウトキャップである。このヒンジキャップ10は、公知のヒートシール技術により、このパウチ容器100の口部に固着される。なお、図1では、パウチ容器100の上端にヒンジキャップ10を固着しているが、他の部位に固着されてもよい。例えば、パウチ容器100の上端辺と側端辺とが交わる角部を斜めに切り落として形成される斜めの辺に、ヒンジキャップ10を固着するようにしてもよい。
【0017】
ヒンジキャップ10は、パウチ容器100にヒートシールされるシール部12と、キャップとして機能するキャップ部14と、に大別される。このシール部12およびキャップ部14は、合成樹脂などにより一体成形されており、両者の間には上下に二段並んだ鍔体16が配されている。鍔体16の下側に位置するシール部12は、容器の口部に装着される装着部として機能する部位である。このシール部12は、断面略楕円形(より正確には対向する二つの頂点を有する舟形)の筒状体であり、このシール部12の外側面または鍔体の上面にパウチ容器100を構成するフレキシブルシートがヒートシールされる。
【0018】
鍔体16より上側に位置するキャップ部14は、さらに、キャップ本体20、蓋体30、ヒンジ体40、および、介在部材50に大別される。このキャップ部14は、成形直後の段階では、図2に示すように、蓋体30がキャップ本体20から離れた状態であるが、製品として完成した段階(初回開封前)では、図3に示すように、介在部材50がキャップ本体20および蓋体30の両方に直接連結されることで蓋体30の開閉が禁止された閉封状態となる。そして、初回開封後は、図4に示すように、介在部材50がキャップ本体20および蓋体30から分離、除去されて蓋体30の開閉が許容される。
【0019】
キャップ本体20は、鍔体16の上面から突出する略筒状体で、その上面には、注出口24および連結穴22が形成されている。注出口24は、パウチ容器100の内外を連通する孔で、当該注出口24を経由してパウチ容器100の内部に充填された流動体が注出される。ただし、初回開封前の状態では、図3に示すとおり、注出口24の底面には、当該注出口24を完全に覆う膜体26が設けられており、当該膜体26によりパウチ容器100の内外が完全に遮断されている。ここで、この注出口24および膜体26について、図5を参照して詳説する。
【0020】
図5(a)は、注出口24周辺の上面図であり、図5(b)は図5(a)におけるC−C断面図である。この図5(b)から明らかなとおり、注出口24は、キャップ本体20の上面から突出した略円筒形となっている。この注出口24の内径は、後述する突起栓36の挿入を容易にするために、底側(下端側)に比して入口側(上端側)のほうが若干大きくなっている。また、突起栓36が完全挿入された場合に、内容物の流出を防止するために、当該注出口24の底部分の内径は、突起栓36の外径とほぼ同じとなっている。
【0021】
ただし、既述したとおり、初回開封前の段階では、注出口24の底部分には、当該注出口24などと一体的に成形された膜体26が配置されている。この膜体26が存在することにより、パウチ容器100の内外が完全に遮断され、容器内を密封状態に保つことができる。この膜体26は、初回開封時に、注出口24に挿入される突起栓36により突き破られ、破断するようになっている。そして、この膜体26が突き破られることにより、注出口24を通じての内容物の注出が許容される。したがって、当該膜体26は、突起栓36の挿入により、容易に破断できる程度の強度となっている。また、この破断を容易にする破断線28として、膜体26には、当該膜体26の肉厚より浅めの溝線(ハーフカット線)が形成されている。この破断線28の形状は、膜体26の破断を誘発できるのであれば、特に限定されないが、本実施形態では、図5(a)に図示するとおり、複数の破断線28が膜体26の略中央から放射状に広がるような形状としている。
【0022】
なお、ここで説明した膜体26の構成は一例であり、注出口24を覆うことで容器の内外を遮断し、かつ、初回開封時に注出口24に挿入される突起栓36により破断されるのであれば、他の形態の膜体26を採用してもよい。例えば、図6(a)に示すように、膜体26を注出口24の底部ではなく、中間部分や上端付近などに設けるようにしてもよい。また、図6(b)のように、膜体を一体成形するのではなく、ヒンジキャップ10を成形した後に、キャップ本体20などとは別体の膜体26*を注出口24周辺に固着するようにしてもよい。このように膜体26*を別体とした場合、一体成形する場合と異なり、膜体の材質、ひいては、強度や弾性などを自由に変更することができる。
【0023】
再び、図2〜図4を参照してヒンジキャップ10の構成を説明する。連結穴22は、後述する介在部材50に設けられた連結突起54が差し込まれる穴である。この連結穴22は、図3、図4から明らかなとおり、入口側(上端側)より底側(下端側)のほうが幅広となるべく、途中に段差が形成された略L字状となっており、略L字状断面の連結突起の抜けを防止できるようになっている。
【0024】
ヒンジ体40は、蓋体30の下端周縁をキャップ本体20の上端周縁に接続する部位で、適度な可撓性を有している。この可撓性により、蓋体30は、略円筒形の蓋体30またはキャップ本体20の接線方向に延びる回動軸Oを中心として、キャップ本体20に対して回動自在となっている。ただし、既述したとおり、閉封状態(初回開封前)においては、介在部材50の作用により、蓋体30のキャップ本体20に対する回動が規制されている。
【0025】
蓋体30は、ヒンジ体40を介してキャップ本体20に対して開閉自在(回動自在)に連結された略円筒形部位である。より具体的には、蓋体30は、略円形の天面32と、当該天面32の周縁から延びる周壁34とを有している。また、天面32の略中央からは、周壁34と同じ方向に延びる突起栓36が突出している。この突起栓36は、注出口24の内径とほぼ同じ外径の円柱形をしており、蓋体の開閉(回動)に伴い、注出口24に挿抜されるようになっている。この突起栓36が注出口24に完全挿入されると、注出口24が閉鎖され、パウチ容器100からの内容物の漏れが防止される。また、突起栓36の先端面は傾斜面となっており、先端角度が鋭角になっている。このように先端角度を鋭角にするのは、初回開封時に、膜体26を突き破りやすくするためである。
【0026】
蓋体30の周壁34の下端からは、介在部材50が延設されている。この介在部材50は、閉封状態(初回開封前)にはキャップ本体20および蓋体30の間に介在しつつキャップ本体20および蓋体30の両方に連結されることで蓋体30の開閉動作を阻害する。また、この介在部材50は、初回開封動作時には蓋体30およびキャップ本体20の少なくとも一方から不可逆的に分離されることで蓋体30の開閉動作を許容する。
【0027】
この介在部材50は、さらに、周壁34の下端から延設された介在壁52と、当該介在壁52の下端から突出する連結突起54と、に大別される。介在壁52は、周壁34を延長させたものである。蓋体30を閉栓方向に回動させようとした場合、当該介在壁52の下端がキャップ本体20の上面に当接することで、蓋体30の閉栓方向への更なる回動が阻害される。ここで、この介在壁52は、キャップ本体20の上面に当接した時点で、突起栓36が膜体26に接触しないような高さに調整されている。また、この介在壁52は、ヒンジ体40(ひいては蓋体30の回動中心)から離れるに従って高くなっている。別の言い方をすれば、介在壁52の下端は、蓋体30の天面32に対して傾斜していると言える。この介在壁52の下端の傾斜角度は、当該介在壁52がキャップ本体20の上面に当接した際に、キャップ本体20の上面と蓋体30の天面32とが成す角度とほぼ等しくなっている。また、介在壁52は、蓋体30の全周囲に渡って形成されている。そのため、介在壁52がキャップ本体20の上面に当接した際、蓋体30とキャップ本体20との間に生じる間隙は、当該介在壁52によりほぼ完全に覆われることになる。そして、これにより、閉封状態における注出口24や突起栓36周辺への異物(粉塵など)の侵入が防止される。なお、初回開封前の閉封状態において、注出口周辺への不正なアクセス(例えば膜体に孔をあけるなど)を防止できるのであれば、介在壁52は、必ずしも、全周囲を覆ってなくてもよい。
【0028】
介在壁52の下端からは、連結突起54が延設されている。連結突起54は、その先端が略L字状に屈曲した略帯状部位である。閉封時、この連結突起54は、キャップ本体20に形成された連結穴22に挿し込まれる。連結突起54の先端近傍には、この挿し込みを容易にするために先端に近づくほど肉薄となるようなテーパ54aが形成されている。連結穴22に挿入された連結突起54は、当該連結穴22に形成された段差に引っ掛かり、係合する。この係合により、連結突起54の連結穴22からの抜けが防止される。そして、これにより、初回開封前における蓋体30のバタつきなどが防止される。なお、本実施形態では、係合により介在部材50とキャップ本体20とを連結しているが、他の手段、例えば、接着や溶着などの手段で連結するようにしてもよい。
【0029】
介在壁52と周壁34(蓋体30)との境界部分、および、介在壁52と連結突起54との境界部分には、上側破断部56uおよび下側破断部56d(以下、上側、下側を区別しない場合は「破断部56」という)が形成されている。この破断部56は、初回開封動作を受けて介在部材50のキャップ本体20または蓋体30からの分離を誘発する部位で、周辺部位に比して脆弱な構成となっている。本実施形態では、介在部材50の肉厚より浅い溝線(ハーフカット線)により破断部56を構成している。なお、図3では、介在部材50の外側面および内側面の両面にハーフカット線を施しているが、図7(a)に示すように、介在部材50の外側面にのみハーフカット線を施すようにしてもよい。また、逆に、図7(b)に示すように、介在部材50の内側面にのみハーフカット線を施すようにしてもよい。内側面にのみハーフカット線を施すと、閉封時に、当該ハーフカット線が露出しないため、ヒンジキャップ10の意匠性を向上できる。また、周辺部位に比して脆弱で、初回開封動作を受けて付加逆的にキャップ本体20または蓋体30から分離できるのであれば、ハーフカット線以外のもので破断部56を構成してもよい。例えば、図7(c)に図示するように、周壁34と介在壁52、または、介在壁52と連結突起54をそれぞれ別部材とし、これらを低接着力、かつ、再接着不可の接着剤で接着することで破断部56を構成してもよい。
【0030】
再び、図2〜図4を参照して説明する。破断部56は、キャップ本体20と介在部材50との連結を解除(すなわち連結突起54と連結穴22との係合を解除)するために必要な力、すなわち、連結力より小さい力で破断が生じるような強度に設定されている。したがって、介在部材50がキャップ本体20に連結された状態で、蓋体30を開栓方向に押し上げた場合、連結突起54が連結穴22から抜け出るよりも先に、破断部56の破断が生じることになる。
【0031】
以上が本実施形態のヒンジキャップ10の構成となる。本実施形態では、かかる構成とすることで、ヒンジキャップ10の不正な開封を効果的に防止できる。また、初回開封されるまで、容器の内部を確実に密封することができる。以下、これについて説明する。
【0032】
既述したとおり、本実施形態のヒンジキャップ10は、射出成形などの公知の成形技術により成形される。成形直後の段階では、図2に示すように、介在部材50は、蓋体30とは連結されているが、キャップ本体20とは直接、連結されていない。閉封する際には、この介在部材50の連結突起54を、キャップ本体20の連結穴22に挿し込み、両者を係合状態にする。すなわち、図3に示す状態にする。この係合により、介在部材50は、キャップ本体20と蓋体30との間に介在し、かつ、キャップ本体20および蓋体30の両方に直接連結されることになる。そして、これにより、蓋体30の開閉が阻害され、蓋体30は、キャップ本体20から僅かに浮いた姿勢で固定、換言すれば、突起栓36が注出口24に未挿入の状態で固定される。かかる状態で固定されることで、突起栓36による膜体26の突き破りが防止され、容器の内部を外部から遮断した密封状態で保つことができる。また、キャップ本体20と蓋体30との間には、介在壁52が全周に渡って介在している。そのため、粉塵などの異物が突起栓や注出口24周辺に侵入することが防止され、当該注出口24周辺を衛生的に保つことができる。
【0033】
閉封状態のヒンジキャップ10を初回開封する際には、介在部材50により所定の姿勢に固定された蓋体30を、開栓方向(キャップ本体20の上面から離れる方向)に押し上げればよい。蓋体30を押し上げると、蓋体30と介在壁52との境界にある破断部56u、および、介在壁52と連結突起54との境界にある破断部56dの少なくとも一方に破断が生じる。換言すれば、蓋体30を押し上げると、介在部材50は、キャップ本体20および蓋体30の少なくとも一方と不可逆的に分離することになる。なお、既述したとおり、破断部56の破断に必要な力は、キャップ本体20と介在部材50との連結解除に必要な力より小さい。そのため、蓋体30を押し上げたとしても、破断するより先に、連結突起54が連結穴22から抜け出ることはない。
【0034】
なお、単に蓋体30を押し上げただけでは、上側破断部56uまたは下側破断部56dの一方だけが破断し、他方は破断することなく残存する恐れがある。換言すれば、介在壁52が、キャップ本体20または蓋体30の一方とのみ直接連結された状態で残存する恐れがある。かかる状態では、この後に行う膜体26の突き破り動作(突起栓36の注出口24への挿入動作)がしづらくなる。そこで、介在壁52が残存している場合には、当該介在壁52を把持して引っ張り、先の押し上げ動作では破断し切れなかった破断部56を破断し、介在壁52をヒンジキャップ10から完全に切り離し除去することが望ましい。また、本実施形態では、蓋体30の押し上げにより、介在部材50の不可逆的に分離を生じさせているが、他の動作で不可逆的分離を生じさせてもよい。例えば、介在部材50の一部に摘み部を形成しておき、当該摘み部をもって周方向に引きちぎることで介在部材の不可逆的分離を生じさせるようにしてもよい。
【0035】
介在部材50がキャップ本体20および蓋体30の少なくとも一方と分離すると、蓋体30の回動が許容される。ユーザは、この状態になれば、蓋体30を回動させて、突起栓36を注出口24に挿入する。この挿入により、注出口24を覆っていた膜体26が、突起栓36で突き破られる。膜体26が突起栓36で突き破られることにより、容器の内外が注出口24を通じて連通され、容器から充填物を注ぎ出すことが可能となる。なお、突起栓36の先端は鋭角であり、かつ、膜体26には破断を誘発する破断線28が形成されているため、膜体26は、比較的、容易に突き破られる。そして、この初回開封を行った後は、適宜、蓋体30を回動させて突起栓36を注出口から挿抜することで、容器が開閉されることになる。
【0036】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態において、ヒンジキャップ10を初回開封するためには、介在壁52をキャップ本体20および蓋体30の少なくとも一方から不可逆的に分離(破断)しなければならない。このように、初回開封動作により、ヒンジキャップ10に不可逆的な変化を生じさせることにより、不正な開封の有無を、確実、かつ、簡易に把握することができる。すなわち、本実施形態によれば、ユーザが意図するより前に、事故や第三者の悪戯などによってヒンジキャップ10が、不正に開封された場合には、その痕跡が、介在部材50の破断という形で明確に残る。この開封の痕跡(破断)を無くしたり、隠したりすることは、極めて困難であるといえる。よって、ユーザは、介在部材50の破断の有無を確認することで、不正な開封の有無を確実、かつ、容易に把握することができる。つまり、本実施形態のヒンジキャップ10を用いれば、キャップ、ひいては、容器の密封性をより確実に保障することができ、製品の信頼性をより向上することができる。
【0037】
また、本実施形態では、注出口24を覆う膜体26を初回開封時に突起栓36で突き破るようにしている。かかる構成とすることで、初回開封時におけるユーザの手間を低減しつつも、初回開封されるまでの密封性能を向上できる。すなわち、従来のヒンジキャップでは、注出口にプルリングやタンパーシール、アルミタックを設けることで容器の密封性を担保していた。しかし、こうした公知技術は、いずれも、製造工程の複雑化を招いたり、初回開封時におけるユーザの手間を増やしたりする恐れがあった。また、プルリングは、小さい注出口には適用し難いという問題もあった。
【0038】
一方、本実施形態では、既述したとおり、注出口24を容器の内外を遮断する膜体26で覆っている。そのため、容器内圧が多少、上昇したとしても、開封されることはない。また、この膜体26は、ヒンジキャップ10と一体成形されているため、製造工程を複雑にすることも殆どない。さらに、かかる膜体26は、注出口24の大きさに関わらず、確実に形成することができる。
【0039】
また、この膜体26は、突起栓36により突き破られるが、この突き破りは、初回開封時に蓋体30を閉栓方向に回動させて、突起栓36を注出口24に挿入するだけで行える。換言すれば、介在壁52を除去した後、ユーザは、蓋体30を押し下げるだけで、開封することができ、タンパーシールやアルミタックに比して、初回開封に要するユーザの手間を低減できる。
【0040】
なお、ここまで説明した形態は一例であり、初回開封時に、不可逆的な分離を生じさせ、これにより、初回開封の有無をユーザに把握させることができるのであれば、他の構成であってもよい。例えば、図8,図9に図示するように、キャップ本体20の上面から介在部材50を延設し、蓋体30の底面に連結穴22を形成するようにしてもよい。この場合であっても、初回開封時に、付加逆的な変化(破断部の破断)が生じるため、初回開封の有無を確実、かつ、容易に把握することができる。
【0041】
また、これまでの説明では、介在壁52と蓋体30との境界、および、介在壁52と連結突起54との境界の両方に破断部56を形成しているが、破断することにより、蓋体30の回動が許容されるのであれば、破断部56は一本でもよい。したがって、例えば、介在壁52と蓋体30との境界にのみ破断部56を設けるようにしてもよい。この場合、介在壁52を切り離し除去することはできないため、図10に示すように、初回開封後も、介在壁52が残存することになる。この場合でも、介在壁52を外側に撓むような強度としていれば、蓋体30の開閉は可能となる。また、介在部材50に限らず、ヒンジキャップの他の一部、例えば、キャップ本体20や蓋体30などを破断させることで、介在部材50の不可逆的な分離を生じさせてもよい。
【0042】
また、これまでの説明では、膜体26により密封性を担保していたが、充填物の性質や、注出口24の形状などの状況に応じて、タンパーシールやアルミタック、プルリングにより密封性を担保するようにしてもよい。かかる構成とした場合であっても、介在部材50を設けることにより、初回開封の有無を確実、かつ、容易に把握することができ、ひいては、不正な開封の有無を確実に把握することができる。
【0043】
また、これまでの説明では、ヒンジキャップ10の一例として自立型のスタンディングパウチ容器に固着されるスパウトキャップを例示している。しかし、パウチ容器については、スタンディングパウチ容器に限定されず、四方または三方シールのパウチ容器(いわゆる、平パウチ容器)や、サイドガゼットパウチ容器等であってもよい。さらに、ヒンジにより開閉自在の蓋体を有するのであれば、当然、別の種類のキャップに、介在部材50や膜体26を設けるようにしてもよい。例えば、螺合や接着などの手段により、ビンやプラスチックボトルに装着されるヒンジキャップに、介在部材50や膜体26を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 ヒンジキャップ、12 シール部、14 キャップ部、16 鍔体、20 キャップ本体、22 連結穴、24 注出口、26 膜体、28 破断線、30 蓋体、32 天面、34 周壁、36 突起栓、40 ヒンジ体、50 介在部材、52 介在壁、54 連結突起、56 破断部、100 パウチ容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に装着されるヒンジキャップであって、
前記容器の内部に連通する注出口が形成されたキャップ本体と、
ヒンジ体を介して前記キャップ本体に対して開閉自在に連結された蓋体と、
当該ヒンジキャップを初めて開封する初回開封前には、前記キャップ本体および蓋体の間に介在しつつ前記キャップ本体および蓋体の両方に連結されることで前記蓋体の開閉動作を阻害し、初回開封動作を受けた場合には、蓋体およびキャップ本体の少なくとも一方から不可逆的に分離されることで前記蓋体の開閉動作を許容する介在部材と、
を備えることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒンジキャップであって、
前記キャップ本体は、前記注出口を覆うことで前記容器の内外を遮断する膜体を備え、
前記蓋体は、前記注出口に挿入されることで前記注出口を閉鎖する突起部であって、初回挿入時に前記膜体を破損する突起部を備え、
前記介在部材は、前記初回開封前には、前記突起部が前記膜体に未挿入の状態が維持されるように前記キャップ本体および蓋体の間に介在する、
ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒンジキャップであって、
前記介在部材は、前記キャップ本体または前記蓋体に一体成形されている、ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のヒンジキャップであって、
前記介在部材は、当該ヒンジキャップの成形時点で前記キャップ本体または蓋体のいずれか一方にのみ接続されており、当該ヒンジキャップの成形後に前記キャップ本体または蓋体の他方に連結され、
前記介在部材と他方との連結の解除に要する力は、前記不可逆的な分離に要する力より大きい、
ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のヒンジキャップであって、
前記介在部材は、前記蓋体の下端から延設される壁部と、前記キャップ本体に形成された連結孔に係合されるべく前記壁部の下端に形成される連結突起部と、を備え、
前記壁部と蓋体との境界、および、壁部と連結突起部との境界の少なくとも一方には、初回開封動作を受けて破断するべく、周辺部位に比して脆弱となっている破断部が形成されている、
ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のヒンジキャップであって、
当該ヒンジキャップは、パウチ容器にヒートシールされるシール部を有したスパウトキャップである、ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項7】
容器本体にヒンジキャップが装着されたヒンジキャップ付容器であって、
前記ヒンジキャップは、
前記容器の内部に連通する注出口が形成されたキャップ本体と、
ヒンジ体を介して前記キャップ本体に対して開閉自在に連結された蓋体と、
当該ヒンジキャップを初めて開封する初回開封前には、前記キャップ本体および蓋体の間に介在しつつ前記キャップ本体および蓋体の両方に連結されることで前記蓋体の開閉動作を阻害し、初回開封動作を受けた場合には、蓋体およびキャップ本体の少なくとも一方から不可逆的に分離されることで前記蓋体の開閉動作を許容する介在部材と、
容器に装着される装着部と、
を備えることを特徴とするヒンジキャップ付容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−189027(P2010−189027A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34618(P2009−34618)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】