ヒンジ装置の製造方法
【課題】本発明は、従来にない画期的なヒンジ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1に回り止め状態に設ける第一摩擦部材3と、この第一摩擦部材3に重合し前記第二部材2に回り止め状態に設ける第二摩擦部材4と、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部5と、前記軸部5に設けられ前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを重合付勢する重合付勢部材6とを有するヒンジ装置の製造方法である。
【解決手段】第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1に回り止め状態に設ける第一摩擦部材3と、この第一摩擦部材3に重合し前記第二部材2に回り止め状態に設ける第二摩擦部材4と、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部5と、前記軸部5に設けられ前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを重合付勢する重合付勢部材6とを有するヒンジ装置の製造方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、操作部を設けた本体部にこの操作部の操作や受信信号などによって表示されるディスプレイ部を設けた重合部を枢着連結し、重合部を重合閉塞状態から開放回動して本体部の操作部を開放露出すると共に、重合部の伏面のディスプレイ部を開放露出する携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器において、この枢着連結部に用いられるヒンジ装置は、この開閉回動がぶらついたりせず、また例えば手で開閉回動する際に手を放した回動位置で止まるフリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置として機能させたいなどの要請がある。
【0003】
そこで、この従来から提案されるヒンジ装置(以下、従来例)としては、例えば一方の部材に回り止め状態に設ける第一の摩擦板と、この第一の摩擦板に重合し他方の部材に回り止め状態に設ける第二の摩擦板と、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部と、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを重合付勢するバネとを有し、第一の摩擦板と第二の摩擦板が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したものが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来例において生じる回動抵抗は、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを重合付勢するバネの重合付勢力により変化するが、従来から提案されるヒンジ装置はこの回動抵抗が安定しないという問題点がある。
【0005】
即ち、従来例は、第一の摩擦板30と第二の摩擦板31とバネ32とを軸部33に被嵌して重合させた重合構造体を挟持して圧縮し、この重合構造体の圧縮状態を保持せしめた構造であるが、製造の際には、軸部33の端部に予め段部33aを形成しておき、この軸部33aの端部に重合構造体の端部となる端部材34をスライド自在に被嵌し、この端部材34を軸部33の段部33aに係止するまでバネ32の付勢に抗して押し込んで重合構造体を圧縮し、この端部材34の外側方に突出する軸部33の端部をカシメて端部材34を抜け止め係止して重合構造体の圧縮状態を保持することになる(図18,19,20参照)。
【0006】
従って、この第一の摩擦板と第二の摩擦板とによる回動抵抗は、軸部33の段部33aの成形位置やこの段部33aに被嵌する端部材34の形状など各部品の成形精度やバネの性能に依存しており、よって、回動抵抗が製品毎に異なり安定しない(所望する回動抵抗が得られない)という問題点がある。
【0007】
本発明者は、前述した問題点に着目し、種々の実験研究を繰り返し行った結果、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置の製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1に回り止め状態に設ける第一摩擦部材3と、この第一摩擦部材3に重合し前記第二部材2に回り止め状態に設ける第二摩擦部材4と、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部5と、前記軸部5に設けられ前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを重合付勢する重合付勢部材6とを有し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したヒンジ装置の製造方法であって、前記軸部5を介して前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4と前記重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とするヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0010】
また、前記軸部5を介して前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4と前記重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの端部9における前記軸部5に対する移動を阻止する移動阻止部7を前記軸部5若しくは前記端部9に設けることで、前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記軸部5に対してスライド移動する前記重合構造体Tの端部9を加圧して圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの端部9における前記軸部5に対する移動を阻止する移動阻止部7を前記軸部5若しくは前記端部9に設けることで、前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0012】
また、前記重合構造体Tの端部9は、前記軸部5にスライド移動自在に被嵌する端部材9’で構成され、前記端部材9’を加圧した際に該端部材9’に対して貫通突出する前記軸部5の端部を変形せしめて前記移動阻止部7を設けることを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0013】
また、圧縮力測定装置Kで一端部を支承した前記重合構造体Tの他端部9を加圧して圧縮力を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記軸部5をカシメて前記移動阻止部7を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0015】
また、前記重合構造体Tを圧縮する際の圧縮力を測定する圧縮力測定装置Kとして、ロードセルを用いた圧縮力測定装置若しくはサーボモーターを用いた圧縮力測定装置を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、常に所望する最適な回動抵抗が安定して得られるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例で製造したヒンジ装置の使用状態説明図である。
【図2】本実施例で製造したヒンジ装置を示す斜視図である。
【図3】本実施例で製造したヒンジ装置の説明断面図である。
【図4】本実施例で製造するヒンジ装置の分解斜視図である。
【図5】本実施例に係る製造装置を示す側面図である。
【図6】本実施例に係る製造装置の説明図である。
【図7】本実施例で製造したヒンジ装置の説明図である。
【図8】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図9】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図10】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図11】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図12】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図13】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図14】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図15】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図16】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図17】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図18】従来例の製造方法の説明図である。
【図19】従来例の製造方法の説明図である。
【図20】従来例の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
ヒンジ装置の製造に際し、軸部5を介して第一摩擦部材3と第二摩擦部材4と重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で重合構造体Tの圧縮状態を保持すると、この重合構造体Tに対する圧縮力により、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗が設定される。
【0020】
具体的には、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗は、重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力によって変化し、この重合付勢力を調整することで設定することができるが、この重合付勢力は前述した重合構造体Tを圧縮する際(重合付勢部材6の付勢に抗して行われる圧縮の際)の圧縮力を調整することで調整できる。
【0021】
そこで、本発明は、予め第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗を基に計算される所定の圧縮力を決めておき、重合構造体Tを圧縮した際にこの所定の圧縮力となった時点でこの重合構造体Tの圧縮状態を保持することで、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗を最適な状態に設定できる。
【0022】
従って、前述した従来例のように例えば軸部に設ける段部の成形精度やバネの性能に依存せず、製造するに用意された部品に応じて製造されることにより、常に所望する最適な回動抵抗を生じるヒンジ装置が安定して得られることになり、しかも、簡易な方法で確実に得られることになる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、図1に示すように、ラップトップタイプのノート型パソコンに適用した場合のもので、キー操作部11を備えた本体部を第一部材1とし、ディスプレイ部12(LCD)を備えた開閉蓋部(重合部)を第二部材2とし、この第一部材1と第二部材2とが重合した閉塞状態から第二部材2を立ち上げて開放状態(使用位置)とすることができる枢着構造に本発明のヒンジ装置Hを適用している(本実施例では左右両側に設けた場合を示している。)。
【0025】
本実施例では、図2,3,4に示すように第二部材2(重合部)に連結する第二連結体14(連結金具)に回り止め状態に軸部5を設け、第一部材1(本体部)に連結する第一連結体13(連結金具)に軸部5が回動自在に挿通・係合する軸受部13aを設け、第二連結体14及び軸部5と共に回動する凸部4aを有する第二摩擦部材4(カム係合部)を第二連結体14に設けている。即ち、第二連結体14の軸部5に回り止め状態にして軸方向にスライド自在に板状の第二摩擦部材4(カム係合部)を被嵌している。
【0026】
また、第一連結体13の軸受部13aと共に回動する凹部3aを有する第一摩擦部材3(カム部)を第一連結体13の軸受部13aに設けている。即ち、軸受部13aに一体形成する手法も考えられるが、本実施例では軸部5に回動自在にして軸方向にスライド不能状態で板状の第一摩擦部材3(カム部)を被嵌し、この第一摩擦部材3の一部を軸受部13aに連結して一体化している。
【0027】
また、軸部5の端部にして後述する端部材9’を設ける位置と反対側の端部には、径大部5aが設けられており、この径大部5aは後述する重合構造体Tの一方の端部を支承する部位となる。
【0028】
また、第一摩擦部材3に対して相対回動することで凹凸係合する第二摩擦部材4を係合離反方向にスライド移動自在にして軸部5に回り止め状態に設けると共に、この第二摩擦部材4が係脱するに際して離反方向に移動した際、係合方向に付勢する重合付勢部材6を設けている。具体的には、本実施例では、軸部5に端部材9’が被嵌され、この端部材9’によって、軸部5に被嵌状態に設けられる複数の皿バネ6aによって、軸部5に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌した第二摩擦部材4を押圧付勢して第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを係合付勢し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との凹凸係合が脱して回動するときにはこの皿バネ6aに抗して回動することとなるように構成している。
【0029】
従って、本体部1に対して重合部2を回動すると、本体部1に設けた第一連結体13の軸受部13aに対して重合部2に設けた第二連結体14の軸部5が回動する。即ち、軸受部13aに回り止め状態に設けた第一摩擦部材3に対して、軸部5に回り止め状態に設けた第二摩擦部材4が回動することとなる。
【0030】
従って、本体部1に対して重合部2を相対回動して重合状態とすると、軸部5を軸として重合付勢部材6の皿バネ6aにより押圧付勢されつつ第一摩擦部材13と第二摩擦部材14とは相対回動して、第二摩擦部材4の凸部4aは第一摩擦部材3の凹部3aに凹凸係合途中となる。
【0031】
従って、重合付勢部材6による押圧付勢とこの凹凸の吸い込み力によるカム係合付勢によって重合方向へ回動付勢(閉塞付勢)が生じ、この重合付勢部材6に付勢された凹凸係合によって、重合状態が係合保持される。
【0032】
また、本実施例では、第二摩擦部材4に設けた第一の凸部4aが係合する第一の凹部3aを第一摩擦部材3に設け、第二摩擦部材4に設けた第二の凸部4aが係合する第二の凹部3aを第一摩擦部材3に設け、第一,二の凸部4a,凹部3aを夫々180度相対位置に設けることで、この第一の凸部4aと第一の凹部3aとが重合閉塞状態のとき係合途中となるように構成すると共に、開放方向に略180度弱回動した際、第二の凸部4aと第二の凹部3aは係合してその開放回動位置がクリック保持されるように構成している。
【0033】
従って、重合付勢部材6による付勢による第二摩擦部材4と第一摩擦部材3と回動摩擦を適正となるように設定することで、スムーズな回動となると共に手を放した位置でその回動位置がこの摩擦(回動抵抗)によって保持されるフリーストップが実現でき、所定の開放回動位置で係合保持される間は自由な開放角度にこのフリーストップによって自在に調整できることとなる。
【0034】
また、このフリーストップのための摩擦は回動当接面の状態や重合付勢部材6の付勢力等によって調整できるが、後述する製造方法によって回動抵抗は設定される。
【0035】
本実施例では、前述した軸部5を介して第一摩擦部材3と、第二摩擦部材4と、重合付勢部材6と、第一連結体13の軸受部13aと、端部材9’とを重合状態として重合構造体Tを構成している。
【0036】
この重合構造体Tを構成する第一摩擦部材3及び第二摩擦部材4は、前述した凸部4a及び凹部3aを有する板状体だけでなく、軸部5に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌する板部材(スペーサー)も含む意味である。つまり、第一連結体3及び第二連結体4夫々とともに回動して互いに重合して回動抵抗を生じる部材であれば第一摩擦部材3及び第二摩擦部材4とするものであり、例えば第一連結体13の軸受部13aの表裏面も第一摩擦部材3として機能している。
【0037】
端部材9’は、図2,3,4に図示したように軸部5の端部に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌する板状体であり、重合構造体Tの端部9を構成する。尚、重合構造体Tを構成する端部9は、第一摩擦部材3や第二摩擦部材4や重合付勢部材6で構成しても良い。
【0038】
また、端部材9’としては、前述した他にも図8,9に図示したタイプや、図10,11,12,13に図示したタイプのものが考えられる。
【0039】
図8,9に図示したタイプの端部材9’は、側周面に凹溝9aが囲繞状態に設けられており、この凹溝9aに後述するヒンジ支承装置15のヒンジ抑え部15Bを係止状態として端部材9’を堅固に抑えるようにした構造である。
【0040】
従って、高精度に水平状態が得られるヒンジ抑え部15Bを介して端部材9’を堅固に支承するものであるから、軸部5に被嵌した端部材9’を水平状態を維持しながら保持することができ、高精度に移動阻止部7を形成することができる。
【0041】
図10,11,12,13に図示したタイプの端部材9’は、筒状部9Aの端部に鍔状部9Bを設けた構造であり、この端部材9’が被嵌する軸部5の所定部位に螺旋凹溝5bを形成し、筒状部5Aを側方から抑えプレートを用いてカシメて、筒状部5Aの内壁が螺旋凹溝5bに入り込むことで軸部5に止着する構造である。
【0042】
従って、軸部5自体をカシメることなく高精度に移動阻止部7を形成することができる。
【0043】
また、本実施例に係るヒンジ装置Hは後述するヒンジ製造装置Sを用いて製造される。
【0044】
具体的には、このヒンジ製造装置Sは、ヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tを支承するヒンジ支承装置15に圧縮測定装置Kとカシメ装置Pを設けて構成されている。
【0045】
ヒンジ支承装置15は、図5,6に図示したように基体にヒンジ支承部15Aを昇降自在に設けたものであり、このヒンジ支承部15Aは、上部にヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tの一端部(軸部5の一端部)を載置支承するように構成されている。
【0046】
また、ヒンジ支承部15Aは昇降機構16を介して昇降自在となる。
【0047】
この昇降機構16は、基体の上下方向に設けられるガイド部16aと、このガイド部16aをスライドするスライド部16bとを有し、このスライド部16bは、基体に回動自在に設けたネジ棒体16cに螺合連結し、このネジ棒体16cの回動に伴い昇降するように構成されている。
【0048】
このネジ棒体16cの回動は、ネジ棒体16cの下部に直接設けた回動ハンドル16dの手動操作により行われる。
【0049】
また、基体の上部には、ヒンジ支承部15Aで支承されたヒンジ装置(重合構造体T)の他端部9(端部材9’)を抑え込み支承するヒンジ抑え部15B(抑えプレート)が設けられており、このヒンジ抑え部15Bでヒンジ装置(重合構造体T)の他端部9(端部材9’)を抑えた状態とし、この状態でヒンジ支承部15Aを上昇させ、ヒンジ支承部15Aとヒンジ抑え部15Bとの間隔を狭めることでヒンジ装置(重合構造体T)を圧縮するように構成されている。
【0050】
また、昇降機構16としては、前述した他にも図14,図15及び図16に図示したタイプのものが考えられる。
【0051】
図14に図示したタイプの昇降機構16は、回動ハンドル16dをネジ棒体16cに直接設けず、ベベルギア17を介して設けたものである。また、ネジ棒体16cとヒンジ支承部15Aとの間にカム機構18が設けられており、このカム機構18に設けたハンドル18bを回動操作することによってもヒンジ支承部15Aは昇降することができる。
【0052】
図15に図示したタイプの昇降機構16は、回動ハンドル16dをネジ棒体16cに直接設けず、ウォームギア19を介して設けたものである。
【0053】
図16に図示しタイプの昇降機構16は、モーター20によりネジ棒体16cを回動するように設けたものである。
【0054】
圧縮力測定装置Kは、図6に図示したように基体の下部に設けられており、本実施例ではロードセル21を用いた圧縮力測定装置Kを採用している。
【0055】
この圧縮測定装置Kは、ヒンジ装置(重合構造体T)をヒンジ支承部15Aとヒンジ抑え部15Bとの間に架設状態とし、この状態でヒンジ支承部15Aを上昇させた際(ヒンジ抑え部15Bに対して接近させた際)に生じるヒンジ抑え部15Bで抑えることで生じる反発力を圧縮力として測定し得るように構成されている。
【0056】
また、圧縮測定装置Kは、図17に図示したようにサーボモーター22を用いた圧縮力測定装置Kを採用しても良い。
【0057】
カシメ装置Pは、図5,6に図示したように基体の上部にカシメ作用部23aを有するリベッティングマシン23を設けて構成されており、カシメ作用部23aがヒンジ支承部で支承されたヒンジ装置(重合構造体T)の上部に位置するように配設されている。
【0058】
以上の構成から成る本実施例に係るヒンジ装置Hの製造方法について説明する。
【0059】
まず、ヒンジ支承装置Sにヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tをセットする。
【0060】
具合的には、軸部5に第一摩擦部材3と、第二摩擦部材4と、重合付勢部材6と、第一連結体13の軸受部13aと、端部材9’とを被嵌して重合状態として重合構造体Tを得、この重合構造体Tを立設状態としてヒンジ支承部15Aに載置支承させる。
【0061】
続いて、ヒンジ支承部15Aを上昇させて端部材9’をヒンジ抑え部15Bで抑えた状態とし、更に、上昇させてこの重合構造体Tを圧縮力を測定しながら重合付勢部材6の付勢に抗して圧縮し、所定の圧縮力となった時点で重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力が設定される。この重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力の設定により、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4が重合状態で相対回動することにより生じる回動摩擦による回動抵抗が設定される。つまり、この重合構造体Tを圧縮する所定の圧縮力とは、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間で得たい回動抵抗を設定するに重要なものである。
【0062】
続いて、重合構造体Tの圧縮状態を保持する。
【0063】
具体的には、圧縮状態の重合構造体Tの端部材9’に対して貫通し該端部材9’の外側方に突出する軸部5の端部をカシメ装置Pでカシメ、端部材9’における軸部5の長さ方向にして外側方への移動を阻止する移動阻止部7を軸部5の所定位置に設けると、重合構造体Tの圧縮状態が保持される(図7参照)。即ち、重合構造体Tにおける圧縮状態を保持するとは、重合構造体Tに対して付与された圧縮力が解除されないように保持することである。尚、移動阻止部7は端部材9’の一部をカシメるなどして設けても良い。
【0064】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来例のように例えば軸部に設ける段部の成形精度やバネの性能に依存せず、製造するに用意された部品に応じて最適な回動抵抗を生じるヒンジ装置が得られることになる。
【0065】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
T 重合構造体
K 圧縮力測定装置
1 第一部材
2 第二部材
3 第一摩擦部材
4 第二摩擦部材
5 軸部
6 重合付勢部材
7 移動阻止部
9 端部
9’ 端部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、操作部を設けた本体部にこの操作部の操作や受信信号などによって表示されるディスプレイ部を設けた重合部を枢着連結し、重合部を重合閉塞状態から開放回動して本体部の操作部を開放露出すると共に、重合部の伏面のディスプレイ部を開放露出する携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器において、この枢着連結部に用いられるヒンジ装置は、この開閉回動がぶらついたりせず、また例えば手で開閉回動する際に手を放した回動位置で止まるフリーストップを実現させたり、ゆっくりと自重によって自動回動させたり、速く回動することを防止させるために所定の回動トルクが生じるようにしたダンパ装置として機能させたいなどの要請がある。
【0003】
そこで、この従来から提案されるヒンジ装置(以下、従来例)としては、例えば一方の部材に回り止め状態に設ける第一の摩擦板と、この第一の摩擦板に重合し他方の部材に回り止め状態に設ける第二の摩擦板と、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部と、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを重合付勢するバネとを有し、第一の摩擦板と第二の摩擦板が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したものが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来例において生じる回動抵抗は、第一の摩擦板と第二の摩擦板とを重合付勢するバネの重合付勢力により変化するが、従来から提案されるヒンジ装置はこの回動抵抗が安定しないという問題点がある。
【0005】
即ち、従来例は、第一の摩擦板30と第二の摩擦板31とバネ32とを軸部33に被嵌して重合させた重合構造体を挟持して圧縮し、この重合構造体の圧縮状態を保持せしめた構造であるが、製造の際には、軸部33の端部に予め段部33aを形成しておき、この軸部33aの端部に重合構造体の端部となる端部材34をスライド自在に被嵌し、この端部材34を軸部33の段部33aに係止するまでバネ32の付勢に抗して押し込んで重合構造体を圧縮し、この端部材34の外側方に突出する軸部33の端部をカシメて端部材34を抜け止め係止して重合構造体の圧縮状態を保持することになる(図18,19,20参照)。
【0006】
従って、この第一の摩擦板と第二の摩擦板とによる回動抵抗は、軸部33の段部33aの成形位置やこの段部33aに被嵌する端部材34の形状など各部品の成形精度やバネの性能に依存しており、よって、回動抵抗が製品毎に異なり安定しない(所望する回動抵抗が得られない)という問題点がある。
【0007】
本発明者は、前述した問題点に着目し、種々の実験研究を繰り返し行った結果、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置の製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
第一部材1と第二部材2とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材1に回り止め状態に設ける第一摩擦部材3と、この第一摩擦部材3に重合し前記第二部材2に回り止め状態に設ける第二摩擦部材4と、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部5と、前記軸部5に設けられ前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4とを重合付勢する重合付勢部材6とを有し、前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したヒンジ装置の製造方法であって、前記軸部5を介して前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4と前記重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とするヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0010】
また、前記軸部5を介して前記第一摩擦部材3と前記第二摩擦部材4と前記重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの端部9における前記軸部5に対する移動を阻止する移動阻止部7を前記軸部5若しくは前記端部9に設けることで、前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0011】
また、前記軸部5に対してスライド移動する前記重合構造体Tの端部9を加圧して圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体Tの端部9における前記軸部5に対する移動を阻止する移動阻止部7を前記軸部5若しくは前記端部9に設けることで、前記重合構造体Tの圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0012】
また、前記重合構造体Tの端部9は、前記軸部5にスライド移動自在に被嵌する端部材9’で構成され、前記端部材9’を加圧した際に該端部材9’に対して貫通突出する前記軸部5の端部を変形せしめて前記移動阻止部7を設けることを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0013】
また、圧縮力測定装置Kで一端部を支承した前記重合構造体Tの他端部9を加圧して圧縮力を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記軸部5をカシメて前記移動阻止部7を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【0015】
また、前記重合構造体Tを圧縮する際の圧縮力を測定する圧縮力測定装置Kとして、ロードセルを用いた圧縮力測定装置若しくはサーボモーターを用いた圧縮力測定装置を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例と異なり、常に所望する最適な回動抵抗が安定して得られるなど、従来にない作用効果を発揮する画期的なヒンジ装置の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例で製造したヒンジ装置の使用状態説明図である。
【図2】本実施例で製造したヒンジ装置を示す斜視図である。
【図3】本実施例で製造したヒンジ装置の説明断面図である。
【図4】本実施例で製造するヒンジ装置の分解斜視図である。
【図5】本実施例に係る製造装置を示す側面図である。
【図6】本実施例に係る製造装置の説明図である。
【図7】本実施例で製造したヒンジ装置の説明図である。
【図8】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図9】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図10】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図11】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図12】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図13】本実施例で製造したヒンジ装置の別例である。
【図14】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図15】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図16】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図17】本実施例に係る製造装置の別例である。
【図18】従来例の製造方法の説明図である。
【図19】従来例の製造方法の説明図である。
【図20】従来例の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
ヒンジ装置の製造に際し、軸部5を介して第一摩擦部材3と第二摩擦部材4と重合付勢部材6とを重合状態とした重合構造体Tを圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で重合構造体Tの圧縮状態を保持すると、この重合構造体Tに対する圧縮力により、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗が設定される。
【0020】
具体的には、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗は、重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力によって変化し、この重合付勢力を調整することで設定することができるが、この重合付勢力は前述した重合構造体Tを圧縮する際(重合付勢部材6の付勢に抗して行われる圧縮の際)の圧縮力を調整することで調整できる。
【0021】
そこで、本発明は、予め第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗を基に計算される所定の圧縮力を決めておき、重合構造体Tを圧縮した際にこの所定の圧縮力となった時点でこの重合構造体Tの圧縮状態を保持することで、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とにより生じる回動抵抗を最適な状態に設定できる。
【0022】
従って、前述した従来例のように例えば軸部に設ける段部の成形精度やバネの性能に依存せず、製造するに用意された部品に応じて製造されることにより、常に所望する最適な回動抵抗を生じるヒンジ装置が安定して得られることになり、しかも、簡易な方法で確実に得られることになる。
【実施例】
【0023】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、図1に示すように、ラップトップタイプのノート型パソコンに適用した場合のもので、キー操作部11を備えた本体部を第一部材1とし、ディスプレイ部12(LCD)を備えた開閉蓋部(重合部)を第二部材2とし、この第一部材1と第二部材2とが重合した閉塞状態から第二部材2を立ち上げて開放状態(使用位置)とすることができる枢着構造に本発明のヒンジ装置Hを適用している(本実施例では左右両側に設けた場合を示している。)。
【0025】
本実施例では、図2,3,4に示すように第二部材2(重合部)に連結する第二連結体14(連結金具)に回り止め状態に軸部5を設け、第一部材1(本体部)に連結する第一連結体13(連結金具)に軸部5が回動自在に挿通・係合する軸受部13aを設け、第二連結体14及び軸部5と共に回動する凸部4aを有する第二摩擦部材4(カム係合部)を第二連結体14に設けている。即ち、第二連結体14の軸部5に回り止め状態にして軸方向にスライド自在に板状の第二摩擦部材4(カム係合部)を被嵌している。
【0026】
また、第一連結体13の軸受部13aと共に回動する凹部3aを有する第一摩擦部材3(カム部)を第一連結体13の軸受部13aに設けている。即ち、軸受部13aに一体形成する手法も考えられるが、本実施例では軸部5に回動自在にして軸方向にスライド不能状態で板状の第一摩擦部材3(カム部)を被嵌し、この第一摩擦部材3の一部を軸受部13aに連結して一体化している。
【0027】
また、軸部5の端部にして後述する端部材9’を設ける位置と反対側の端部には、径大部5aが設けられており、この径大部5aは後述する重合構造体Tの一方の端部を支承する部位となる。
【0028】
また、第一摩擦部材3に対して相対回動することで凹凸係合する第二摩擦部材4を係合離反方向にスライド移動自在にして軸部5に回り止め状態に設けると共に、この第二摩擦部材4が係脱するに際して離反方向に移動した際、係合方向に付勢する重合付勢部材6を設けている。具体的には、本実施例では、軸部5に端部材9’が被嵌され、この端部材9’によって、軸部5に被嵌状態に設けられる複数の皿バネ6aによって、軸部5に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌した第二摩擦部材4を押圧付勢して第一摩擦部材3と第二摩擦部材4とを係合付勢し、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との凹凸係合が脱して回動するときにはこの皿バネ6aに抗して回動することとなるように構成している。
【0029】
従って、本体部1に対して重合部2を回動すると、本体部1に設けた第一連結体13の軸受部13aに対して重合部2に設けた第二連結体14の軸部5が回動する。即ち、軸受部13aに回り止め状態に設けた第一摩擦部材3に対して、軸部5に回り止め状態に設けた第二摩擦部材4が回動することとなる。
【0030】
従って、本体部1に対して重合部2を相対回動して重合状態とすると、軸部5を軸として重合付勢部材6の皿バネ6aにより押圧付勢されつつ第一摩擦部材13と第二摩擦部材14とは相対回動して、第二摩擦部材4の凸部4aは第一摩擦部材3の凹部3aに凹凸係合途中となる。
【0031】
従って、重合付勢部材6による押圧付勢とこの凹凸の吸い込み力によるカム係合付勢によって重合方向へ回動付勢(閉塞付勢)が生じ、この重合付勢部材6に付勢された凹凸係合によって、重合状態が係合保持される。
【0032】
また、本実施例では、第二摩擦部材4に設けた第一の凸部4aが係合する第一の凹部3aを第一摩擦部材3に設け、第二摩擦部材4に設けた第二の凸部4aが係合する第二の凹部3aを第一摩擦部材3に設け、第一,二の凸部4a,凹部3aを夫々180度相対位置に設けることで、この第一の凸部4aと第一の凹部3aとが重合閉塞状態のとき係合途中となるように構成すると共に、開放方向に略180度弱回動した際、第二の凸部4aと第二の凹部3aは係合してその開放回動位置がクリック保持されるように構成している。
【0033】
従って、重合付勢部材6による付勢による第二摩擦部材4と第一摩擦部材3と回動摩擦を適正となるように設定することで、スムーズな回動となると共に手を放した位置でその回動位置がこの摩擦(回動抵抗)によって保持されるフリーストップが実現でき、所定の開放回動位置で係合保持される間は自由な開放角度にこのフリーストップによって自在に調整できることとなる。
【0034】
また、このフリーストップのための摩擦は回動当接面の状態や重合付勢部材6の付勢力等によって調整できるが、後述する製造方法によって回動抵抗は設定される。
【0035】
本実施例では、前述した軸部5を介して第一摩擦部材3と、第二摩擦部材4と、重合付勢部材6と、第一連結体13の軸受部13aと、端部材9’とを重合状態として重合構造体Tを構成している。
【0036】
この重合構造体Tを構成する第一摩擦部材3及び第二摩擦部材4は、前述した凸部4a及び凹部3aを有する板状体だけでなく、軸部5に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌する板部材(スペーサー)も含む意味である。つまり、第一連結体3及び第二連結体4夫々とともに回動して互いに重合して回動抵抗を生じる部材であれば第一摩擦部材3及び第二摩擦部材4とするものであり、例えば第一連結体13の軸受部13aの表裏面も第一摩擦部材3として機能している。
【0037】
端部材9’は、図2,3,4に図示したように軸部5の端部に回り止め状態にしてスライド自在に被嵌する板状体であり、重合構造体Tの端部9を構成する。尚、重合構造体Tを構成する端部9は、第一摩擦部材3や第二摩擦部材4や重合付勢部材6で構成しても良い。
【0038】
また、端部材9’としては、前述した他にも図8,9に図示したタイプや、図10,11,12,13に図示したタイプのものが考えられる。
【0039】
図8,9に図示したタイプの端部材9’は、側周面に凹溝9aが囲繞状態に設けられており、この凹溝9aに後述するヒンジ支承装置15のヒンジ抑え部15Bを係止状態として端部材9’を堅固に抑えるようにした構造である。
【0040】
従って、高精度に水平状態が得られるヒンジ抑え部15Bを介して端部材9’を堅固に支承するものであるから、軸部5に被嵌した端部材9’を水平状態を維持しながら保持することができ、高精度に移動阻止部7を形成することができる。
【0041】
図10,11,12,13に図示したタイプの端部材9’は、筒状部9Aの端部に鍔状部9Bを設けた構造であり、この端部材9’が被嵌する軸部5の所定部位に螺旋凹溝5bを形成し、筒状部5Aを側方から抑えプレートを用いてカシメて、筒状部5Aの内壁が螺旋凹溝5bに入り込むことで軸部5に止着する構造である。
【0042】
従って、軸部5自体をカシメることなく高精度に移動阻止部7を形成することができる。
【0043】
また、本実施例に係るヒンジ装置Hは後述するヒンジ製造装置Sを用いて製造される。
【0044】
具体的には、このヒンジ製造装置Sは、ヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tを支承するヒンジ支承装置15に圧縮測定装置Kとカシメ装置Pを設けて構成されている。
【0045】
ヒンジ支承装置15は、図5,6に図示したように基体にヒンジ支承部15Aを昇降自在に設けたものであり、このヒンジ支承部15Aは、上部にヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tの一端部(軸部5の一端部)を載置支承するように構成されている。
【0046】
また、ヒンジ支承部15Aは昇降機構16を介して昇降自在となる。
【0047】
この昇降機構16は、基体の上下方向に設けられるガイド部16aと、このガイド部16aをスライドするスライド部16bとを有し、このスライド部16bは、基体に回動自在に設けたネジ棒体16cに螺合連結し、このネジ棒体16cの回動に伴い昇降するように構成されている。
【0048】
このネジ棒体16cの回動は、ネジ棒体16cの下部に直接設けた回動ハンドル16dの手動操作により行われる。
【0049】
また、基体の上部には、ヒンジ支承部15Aで支承されたヒンジ装置(重合構造体T)の他端部9(端部材9’)を抑え込み支承するヒンジ抑え部15B(抑えプレート)が設けられており、このヒンジ抑え部15Bでヒンジ装置(重合構造体T)の他端部9(端部材9’)を抑えた状態とし、この状態でヒンジ支承部15Aを上昇させ、ヒンジ支承部15Aとヒンジ抑え部15Bとの間隔を狭めることでヒンジ装置(重合構造体T)を圧縮するように構成されている。
【0050】
また、昇降機構16としては、前述した他にも図14,図15及び図16に図示したタイプのものが考えられる。
【0051】
図14に図示したタイプの昇降機構16は、回動ハンドル16dをネジ棒体16cに直接設けず、ベベルギア17を介して設けたものである。また、ネジ棒体16cとヒンジ支承部15Aとの間にカム機構18が設けられており、このカム機構18に設けたハンドル18bを回動操作することによってもヒンジ支承部15Aは昇降することができる。
【0052】
図15に図示したタイプの昇降機構16は、回動ハンドル16dをネジ棒体16cに直接設けず、ウォームギア19を介して設けたものである。
【0053】
図16に図示しタイプの昇降機構16は、モーター20によりネジ棒体16cを回動するように設けたものである。
【0054】
圧縮力測定装置Kは、図6に図示したように基体の下部に設けられており、本実施例ではロードセル21を用いた圧縮力測定装置Kを採用している。
【0055】
この圧縮測定装置Kは、ヒンジ装置(重合構造体T)をヒンジ支承部15Aとヒンジ抑え部15Bとの間に架設状態とし、この状態でヒンジ支承部15Aを上昇させた際(ヒンジ抑え部15Bに対して接近させた際)に生じるヒンジ抑え部15Bで抑えることで生じる反発力を圧縮力として測定し得るように構成されている。
【0056】
また、圧縮測定装置Kは、図17に図示したようにサーボモーター22を用いた圧縮力測定装置Kを採用しても良い。
【0057】
カシメ装置Pは、図5,6に図示したように基体の上部にカシメ作用部23aを有するリベッティングマシン23を設けて構成されており、カシメ作用部23aがヒンジ支承部で支承されたヒンジ装置(重合構造体T)の上部に位置するように配設されている。
【0058】
以上の構成から成る本実施例に係るヒンジ装置Hの製造方法について説明する。
【0059】
まず、ヒンジ支承装置Sにヒンジ装置Hの組み立て前の重合構造体Tをセットする。
【0060】
具合的には、軸部5に第一摩擦部材3と、第二摩擦部材4と、重合付勢部材6と、第一連結体13の軸受部13aと、端部材9’とを被嵌して重合状態として重合構造体Tを得、この重合構造体Tを立設状態としてヒンジ支承部15Aに載置支承させる。
【0061】
続いて、ヒンジ支承部15Aを上昇させて端部材9’をヒンジ抑え部15Bで抑えた状態とし、更に、上昇させてこの重合構造体Tを圧縮力を測定しながら重合付勢部材6の付勢に抗して圧縮し、所定の圧縮力となった時点で重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力が設定される。この重合付勢部材6による第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との重合付勢力の設定により、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4が重合状態で相対回動することにより生じる回動摩擦による回動抵抗が設定される。つまり、この重合構造体Tを圧縮する所定の圧縮力とは、第一摩擦部材3と第二摩擦部材4との間で得たい回動抵抗を設定するに重要なものである。
【0062】
続いて、重合構造体Tの圧縮状態を保持する。
【0063】
具体的には、圧縮状態の重合構造体Tの端部材9’に対して貫通し該端部材9’の外側方に突出する軸部5の端部をカシメ装置Pでカシメ、端部材9’における軸部5の長さ方向にして外側方への移動を阻止する移動阻止部7を軸部5の所定位置に設けると、重合構造体Tの圧縮状態が保持される(図7参照)。即ち、重合構造体Tにおける圧縮状態を保持するとは、重合構造体Tに対して付与された圧縮力が解除されないように保持することである。尚、移動阻止部7は端部材9’の一部をカシメるなどして設けても良い。
【0064】
本実施例は上述のように構成したから、前述した従来例のように例えば軸部に設ける段部の成形精度やバネの性能に依存せず、製造するに用意された部品に応じて最適な回動抵抗を生じるヒンジ装置が得られることになる。
【0065】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0066】
T 重合構造体
K 圧縮力測定装置
1 第一部材
2 第二部材
3 第一摩擦部材
4 第二摩擦部材
5 軸部
6 重合付勢部材
7 移動阻止部
9 端部
9’ 端部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材に回り止め状態に設ける第一摩擦部材と、この第一摩擦部材に重合し前記第二部材に回り止め状態に設ける第二摩擦部材と、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部と、前記軸部に設けられ前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とを重合付勢する重合付勢部材とを有し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したヒンジ装置の製造方法であって、前記軸部を介して前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材と前記重合付勢部材とを重合状態とした重合構造体を圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とするヒンジ装置の製造方法。
【請求項2】
前記軸部を介して前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材と前記重合付勢部材とを重合状態とした重合構造体を圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の端部における前記軸部に対する移動を阻止する移動阻止部を前記軸部若しくは前記端部に設けることで、前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項3】
前記軸部に対してスライド移動する前記重合構造体の端部を加圧して圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の端部における前記軸部に対する移動を阻止する移動阻止部を前記軸部若しくは前記端部に設けることで、前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項4】
前記重合構造体の端部は、前記軸部にスライド移動自在に被嵌する端部材で構成され、前記端部材を加圧した際に該端部材に対して貫通突出する前記軸部の端部を変形せしめて前記移動阻止部を設けることを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項5】
圧縮力測定装置で一端部を支承した前記重合構造体の他端部を加圧して圧縮力を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項6】
前記軸部をカシメて前記移動阻止部を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項7】
前記重合構造体を圧縮する際の圧縮力を測定する圧縮力測定装置として、ロードセルを用いた圧縮力測定装置若しくはサーボモーターを用いた圧縮力測定装置を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項1】
第一部材と第二部材とを回動自在に連結するヒンジ装置であって、前記第一部材に回り止め状態に設ける第一摩擦部材と、この第一摩擦部材に重合し前記第二部材に回り止め状態に設ける第二摩擦部材と、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とを互いに相対回動自在にして相対スライド移動自在に設ける軸部と、前記軸部に設けられ前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材とを重合付勢する重合付勢部材とを有し、前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材が重合状態で相対回動することにより回動摩擦による回動抵抗が生じるように構成したヒンジ装置の製造方法であって、前記軸部を介して前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材と前記重合付勢部材とを重合状態とした重合構造体を圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とするヒンジ装置の製造方法。
【請求項2】
前記軸部を介して前記第一摩擦部材と前記第二摩擦部材と前記重合付勢部材とを重合状態とした重合構造体を圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の端部における前記軸部に対する移動を阻止する移動阻止部を前記軸部若しくは前記端部に設けることで、前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項3】
前記軸部に対してスライド移動する前記重合構造体の端部を加圧して圧縮力を測定しながら圧縮し、続いて、所定の圧縮力となった時点で前記重合構造体の端部における前記軸部に対する移動を阻止する移動阻止部を前記軸部若しくは前記端部に設けることで、前記重合構造体の圧縮状態を保持することを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項4】
前記重合構造体の端部は、前記軸部にスライド移動自在に被嵌する端部材で構成され、前記端部材を加圧した際に該端部材に対して貫通突出する前記軸部の端部を変形せしめて前記移動阻止部を設けることを特徴とする請求項2,3のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項5】
圧縮力測定装置で一端部を支承した前記重合構造体の他端部を加圧して圧縮力を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項6】
前記軸部をカシメて前記移動阻止部を設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【請求項7】
前記重合構造体を圧縮する際の圧縮力を測定する圧縮力測定装置として、ロードセルを用いた圧縮力測定装置若しくはサーボモーターを用いた圧縮力測定装置を採用したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒンジ装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−215217(P2012−215217A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80114(P2011−80114)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】
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