説明

ヒンジ装置

【課題】第2筐体を第1筐体に対して平面内において回動させ、かつ当該平面と直交する方向において第2筐体を第1筐体に対して重ねることができる携帯機器に用いられるヒンジ装置を提供する。
【解決手段】携帯機器の第1筐体と第2筐体とを、ヒンジ装置により互いに平行な第1、第2回動軸線を中心として回動可能に連結する。ヒンジ装置は、内歯車部41aが形成された第1ヒンジ部材41と、外歯車部43aが形成された第2ヒンジ部材43を有する。内歯車部41aの軸線を第1回動軸線と一致させた状態で、第1ヒンジ部材を第1筐体に固定する。外歯車部43aの軸線を第2回動軸線と一致させた状態で第1筐体2に固定する。外歯車部43aを内歯車部41aに噛み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯式ゲーム機や携帯電話機等の携帯機器に用いるのに好適なヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話機は、操作ボタン等が設けられる第1筐体と、液晶表示部等が設けられる第2筐体と、第1、第2筐体間に介在するヒンジ装置とを備えている。ヒンジ装置は、連結部材を有しており、連結部材の一端部は第1筐体に第1回動軸線を中心として回動可能に連結され、他端部は第2筐体に第1回動軸線と平行な第2回動軸線を中心として回動可能に連結されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−179817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の携帯電話機においては、第1筐体と第2筐体とが第1、第2回動軸線方向において互いに同一位置に配置されている。このため、第1、第2筐体を第1、第2回動軸線を中心として回動させると、側面どうしが互いに突き当たってしまい、両者を第1、第2回動軸線方向において互いに重ねることができない。
【0005】
そこで、上記携帯電話機では、連結部材を第1筐体側の一端部と第2筐体側の他端部とに二分し、両者を第1、第2回動軸線と直交する方向に延びる第3回動軸線を中心として回動可能に連結し、それによって第1、第2筐体を互いに重ねることができるようにしている。しかし、そのようにすると、連結部材が二分されるとともに、それらを連結するためのヒンジが必要になり、部品点数及び組立工数が増加する。このため、携帯電話機の製造費が嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、この発明は、第1取付部及び第1歯車部を有する第1ヒンジ部材と、第2取付部及び上記第1歯車部と噛み合う第2歯車部を有する第2ヒンジ部材と、上記第1ヒンジ部材を上記第1歯車部の軸線を中心として回動可能に支持するとともに、上記第2ヒンジ部材を上記第2歯車部の軸線を中心として回動可能に支持し、上記第1歯車部と上記第2歯車部とを噛み合った状態に維持する支持部材とを備え、上記第1歯車部の軸線と上記第2歯車部の軸線とが互いに平行に配置されていることを特徴としている。
この場合、上記第1歯車部が内歯車部であり、上記第2歯車部が外歯車部であることが望ましい。
上記支持部材には、上記第1歯車部の内周面に回動可能に嵌合する嵌合部が設けられ、この嵌合部には上記第2歯車部を回動可能に収容する収容部が設けられ、この収容部の一側部が上記嵌合部の外周面から外部に開放され、上記第2歯車部の一側部が上記収容部の開放された一側部から外部に突出させられ、その突出した一側部において上記第2歯車部が上記第1歯車部と噛み合っていることが望ましい。
上記第1ヒンジ部材が、上記第1取付部が設けられた基部と、上記第1歯車部が設けられた回動部材とを有し、上記回動部材が上記基部に上記第1歯車部の軸線と直交する方向に延びる軸線を中心として回動可能に連結されていることが望ましい。
上記第1、第2歯車部が共に外歯車部であることが望ましい。
上記第1、第2歯車部が互いに離間して配置され、上記支持部材には、上記第1、第2歯車部と噛み合うアイドル歯車が上記第1、第2歯車部に対して接近、離間する方向へ移動可能に設けられ、上記アイドル歯車が付勢手段によって上記第1、第2歯車部に対して接近する方向へ付勢され、それによって上記アイドル歯車が上記第1、第2歯車部とバックラッシュが無い状態で噛み合わされていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明のヒンジ装置によれば、第1取付部に第1筐体を取り付けるとともに、第2取付部に第2筐体を取り付けることにより、第2筐体を第1筐体に対して平面内において回動させ、かつ当該平面と直交する方向において第2筐体を第1筐体に対して重ねることができるようにした携帯機器の第1筐体と第2筐体とを回転可能に連結するためのヒンジ装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯機器の参考となる携帯機器の第1参考例を、第2筐体を重ね位置に位置させた状態で示す平面図である。
【図2】第2筐体を中間位置に位置させた状態で示す図1と同様の図である。
【図3】第2筐体を展開位置に位置させた状態で示す図1と同様の図である。
【図4】図3のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図5】同第1参考例を、第2筐体を重ね位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図6】同第1参考例を図5と異なる方向から見た斜視図である。
【図7】同第1参考例を、第2筐体を中間位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図8】同第1参考例を図7と異なる方向から見た斜視図である。
【図9】同第1参考例を、第2筐体を展開位置に位置させた状態で示す斜視図である。
【図10】同第1参考例を図9と異なる方向から見た斜視図である。
【図11】この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯機器の参考となる形態機器の第2参考例を、第2筐体を重ね位置に位置させた状態で示す平面図である。
【図12】図11のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図13】この発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態が用いられた携帯機器を、第2筐体を重ね位置に位置させた状態で示す平面図である。
【図14】図13のX矢視図である。
【図15】第2筐体を中間位置に位置させた状態で示す図1と同様の図である。
【図16】第2筐体を展開位置に位置させた状態で示す図1と同様の図である。
【図17】同携帯機器において用いられている第1筐体を示す平面図である。
【図18】図17のX−X線に沿う断面図である。
【図19】同携帯機器において用いられている第2筐体を示す平面図である。
【図20】図19のX−X線に沿う断面図である。
【図21】同携帯機器において用いられているこの発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態を示す斜視図である。
【図22】同第1実施の形態を示す分解斜視図である。
【図23】同携帯機器において用いられているこの発明に係るヒンジ装置の第2実施の形態を示す斜視図である。
【図24】同第2実施の形態の分解斜視図である。
【図25】同携帯機器において用いられているこの発明に係るヒンジ装置の第3実施の形態を示す斜視図である。
【図26】同第3実施の形態の分解斜視図である。
【図27】この発明に係るヒンジ装置の第4実施の形態が用いられた携帯機器を、第2筺体を重ね位置に位置させた状態で示す一部透視平面図である。
【図28】第2筺体を中間位置に位置させた状態で示す図27と同様の図である。
【図29】第2筐体を展開位置に位置させた状態で示す図27と同様の図である。
【図30】図29のX矢視図である。
【図31】第2筐体を傾斜位置に位置させた状態で示す図30と同様の図である。
【図32】同携帯機器の分解斜視図である。
【図33】同携帯機器において用いられているこの発明に係るヒンジ装置の第4実施の形態を示す平面図である。
【図34】図33のX矢視図である。
【図35】図33のY矢視図である。
【図36】図34のX矢視図である。
【図37】同第4実施の形態の斜視図である。
【図38】同第4実施の形態の分解斜視図である。
【図39】同第4実施の形態のクリック機構を、第2筐体が重ね位置に位置しているときの状態で示す平面図である。
【図40】第2筐体が中間位置に位置しているときの状態で示す図39と同様の図である。
【図41】第2筐体が展開位置に位置しているときの状態で示す図30と同様の図である。
【図42】この発明に係るヒンジ装置の第5実施の形態が用いられた携帯機器を、第2筺体を重ね位置に位置させた状態で示す一部透視平面図である。
【図43】第2筺体を中間位置に位置させた状態で示す図42と同様の図である。
【図44】第2筐体を展開位置に位置させた状態で示す図42と同様の図である。
【図45】同携帯機器の分解斜視図である。
【図46】同携帯機器において用いられているこの発明に係るヒンジ装置の第5実施の形態を示す斜視図である。
【図47】同第5実施の形態の平面図である。
【図48】図47のX矢視図である。
【図49】図47のY矢視図である。
【図50】図49のX矢視図である。
【図51】図49のY−Y線に沿う断面図である。
【図52】同第5実施の形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図10は、この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯機器の前に開発された携帯機器の第1参考例を示す。この参考例は、携帯機器としての携帯式ゲーム機Aを示す。勿論、この発明に係るヒンジ装置は、携帯式ゲーム機以外の携帯機器、例えば携帯電話機にも適用可能である。ゲーム機Aは、第1筐体1、第2筐体2及びヒンジ装置3を備えている。
【0010】
第1筐体1は、特に図4に示すように、厚さが薄い中空の直方体状に形成されており、その長手方向を図1〜図3の左右方向に向けて配置されている。以下、説明の便宜上、第1筐体1の厚さ方向(図4における上下方向)を上下方向と、第1筐体1の長手方向を左右方向と、第1筐体1の短手方向を前後方向とそれぞれ称するものとする。
【0011】
第1筐体1の上面(第2筐体2との対向面)1a及び下面1bは、水平な平面とされている。第1筐体1の4つの側面1c〜1fは、いずれも上面1a及び下面1bと直交する平面とされている。上面1aの左右方向(長手方向)の両端部には、凹部1g,1hがそれぞれ形成されている。一方の凹部1gの底面には、十字状をなす操作ボタン11が設けられている。操作ボタン11の高さは、凹部1gの深さより低くなっている。したがって、操作ボタン11の上面は、第1筐体1の上面1aより下方に位置している。他方の凹部1hの底面には、押しボタン12が二つ設けられている。押しボタン12の高さは、凹部1hの深さより低くなっている。したがって、押しボタン12の上面は、上面1aより下方に位置している。
【0012】
第2筐体2は、厚さが薄い中空の直方体状に形成されている。特に、この実施の形態では、第2筐体2の平面視における形状及び寸法が、第1筐体1の形状及び寸法と同一に形成されている。第2筐体2の上面2a及び下面(第1筐体1との対向面)2bは、水平な平面とされており、第1筐体1の上面1a及び下面1bと平行になっている。つまり、第2筐体2が第1筐体1と平行に配置されているのである。第2筐体2の4つの側面2c〜2fは、いずれも上面2a及び下面2bと直交する平面とされている。第2筐体2の上面2aには、ゲームの内容を表示するための液晶表示部等の表示部13が設けられている。表示部13は、平面視長方形をなしており、その長手方向を第2筐体2の長手方向と一致させた状態で上面2aの中央部に配置されている。
【0013】
ヒンジ装置3は、連結部材31を有している。連結部材31は、上下方向の厚さが比較的薄い平板として形成されている。連結部材31の上面31a及び下面31bは、水平な平面とされており、第1筐体1の上下面1a,1b及び第2筐体2の上下面2a,2bと平行になっている。つまり、連結部材31は、第1、第2筐体1,2と平行に配置されているのである。連結部材31の長手方向に沿う両側面31c,31dは、互いに平行で、上下面31a,31bと直交する平面とされている。連結部材31の長手方向の両端部に配置された両側面31e,31fは、上下面31a,31bと直交し、かつ側面31c、31dに接する半円弧面とされている。
【0014】
図4に示すように、連結部材31の一端部、つまり側面31e側の端部は、第1筐体1に軸線を上下方向に向けた軸32を介して回動可能に連結されている。軸32の軸線が第1回動軸線L1である。連結部材31の他端部、つまり側面31f側の端部は、第2筐体2に軸線を上下方向に向けた軸33を介して回動可能に連結されている。軸33の軸線が第2回動軸線L2である。第2回動軸線L2は、第1回動軸線L1と平行になっている。
【0015】
連結部材31の一端部が第1筐体1に第1回動軸線L1を中心として回動可能に連結されるとともに、連結部材31の他端部が第2筐体2に第2回動軸線L2を中心として回動可能に連結されているので、第1筐体1が位置固定されているものとすると、第2筐体2は、第2筐体1に対し第1回動軸線L1を中心として公転するとともに、第2回動軸線L2を中心として自転する。第2筐体2は、公転及び自転することにより、図1、図5及び図6に示す重ね位置から図2、図7及び図8に示す中間位置を経て図3、図9及び図10に示す展開位置に至るまでの間を回動変位可能になっている。
【0016】
第2筐体2が重ね位置に位置しているときには、図1、図5及び図6に示すように、第1、第2筐体1,2が水平方向において互いに同一位置に位置し、両者の全体が上下方向において互いに重なっている。したがって、第2筐体2が重ね位置に回動したゲーム機Aを上方から見ると、第2筐体2だけしか見えず、ゲーム機A全体が小型化された状況を呈する。よって、ゲーム機Aを鞄等に容易に収容することができる。また、ボタン11,12が第2筐体2によって覆われるので、ボタン11,12が誤って操作されることを防止することができる。なお、操作ボタン11及び押しボタン12の各上面が、第1筐体1の上面1aより下方に位置しているので、第2筐体2が回動するときに操作ボタン11及び押しボタン12が邪魔になることはない。
【0017】
図1に示すように、第1、第2回動軸線L1,L2は、第2筐体2を重ね位置に位置させた状態において第1、第2筐体1,2を上方から見たとき、第1筐体1を長手方向において二等分する二等分線HLに関して対称に配置されている。特に、この実施の形態では、第1、第2回動軸線L1,L2間の距離(以下、中心間距離という。)をCdとしたとき、第1、第2回動軸線L1,L2は、第1,第2筐体1,2の側面1c,2cから側面1d、2dに向かって距離Cd/2だけ離間するとともに、二等分線HLから左右方向へ距離Cd/2だけ離間するように配置されている。
【0018】
連結部材31は、半円弧面とされた側面31e,31fの各曲率中心が第1、第2回動軸線L1,L2上にそれぞれ位置させられている。しかも、側面31e,31fの曲率半径は、いずれもCd/2に設定されている。また、連結部材31の幅は、中心間距離Cdと同一に設定されている。したがって、図1に示すように、第2筐体2が重ね位置に位置したときには、連結部材31の側面31dが第1、第2筐体の側面1c,2cと同一平面上に位置する。
【0019】
第2筐体2が中間位置に位置しているときには、図2、図7及び図8に示すように、第1筐体1の長手方向と第2筐体2の長手方向とが互いに直交するとともに、重ね位置に位置しているときの第2筐体2の左端部が第1筐体1とその長手方向の中央部において上下に重なる。しかも、第2筐体2の左側面2eが第1筐体1の長手方向に延びる手前側の側面1dと同一平面上に位置する。この結果、第1、第2筐体1,2を上方から見たときには、第1、第2筐体1,2がローマ字「T」を上下逆にした形状を呈する。ここで、第2筐体2が中間位置に回動したときに、第1筐体1の側面1dと第2筐体2の側面2eとが同一平面(鉛直面)上に位置した状態で第1筐体1と第2筐体2とが上下に重なっているのであるから、第1、第2筐体1,2の長さ及び幅をそれぞれL、Wとすると、図1から明らかなように、次の式が成立する。
L/2−Cd/2=W−Cd/2
∴L=2W
換言すれば、第1、第2回動軸線L1,L2が上記のように配置され、しかもL=2Wが成立するように設定されているので、第2筐体2が中間位置に回動したときには、第2筐体2の側面2eが第1筐体1の側面1dと同一平面上に位置した状態で、第2筐体2の側面2e側の端部が第1筐体1に対しその長手方向の中央部において上下に重なるのである。
【0020】
第1,第2筐体1,2の長さL及び幅WがL>Wに設定されているので、第2筐体2が中間位置に位置しているときには、第1筐体1の左右の両端部が第2筐体2から左右に突出し、第1筐体1の左右の端部にそれぞれ形成された凹部1g,1hが第2筐体2から外部に露出する。したがって、凹部1g,1hに設けられた操作ボタン11及び押しボタン12が外部に露出し、それらを自由に操作することができる。よって、第2筐体2が中間位置に回動したときには、ゲーム機Aを操作することができる。しかも、表示部13を縦長にした状態で、つまり表示部13の長手方向を前後方向に向けた状態でゲーム機Aを楽しむことができる。
【0021】
第2筐体2は、展開位置に位置しているときには、図3、図9及び図10に示すように、重ね位置に位置しているときと点対称になっている。すなわち、第2筐体2の側面2cが第1筐体1の側面1cと同一平面(鉛直面)上に位置するとともに、側面2dが側面1dに対し第1筐体1及び第2筐体2の幅を合計した距離2Wだけ前後方向へ互いに離間し、さらに側面2e,2fが側面1f,1eとそれぞれ同一平面上に位置している。
【0022】
第2筐体2の上記のような回動変位を可能にするために、ゲーム機Aはさらに次の構成を備えている。すなわち、第1、第2筐体1,2は、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとが上下方向(第1、第2回動軸線L1,L2方向)においてほぼ同一位置に位置し、その結果上面1aと下面2bとが互いにほぼ接するように配置されている。換言すれば、第2筐体2は、第1筐体1に対しその厚さの分だけ上方に配置されているのである。第1、第2筐体1,2は、下面2bが上面1aに対して上方へ若干離間した状態で配置してもよい。第2筐体2の下面2bが第1筐体1の上面1aに対してほぼ接するか、若干上方へ離間しているので、第2筐体2が第1筐体1に対して上下方向に重なるように回動することができるのである。
【0023】
第1筐体1の上面1aには、第1収容凹部14が形成されている。第1収容凹部14は、側面1cに沿って形成されており、第1筐体1の長手方向の中央部に配置されている。第1収容凹部14の側面1c側の側部は、側面1cから外部に向かって開放されている。第1収容凹部14の深さは、連結部材31の厚さのほぼ半分に設定されている。したがって、第1収容凹部14は、連結部材31の厚さ方向(第1、第2回動軸線L1,L2方向)における一側部を収容可能である。
【0024】
第1収容凹部14の長手方向の一端部(側面1e側の端部)には、連結部材31の一端部が第1回動軸線L1を中心として回動可能に収容されている。連結部材31の第1回動軸線L1を中心とする回動範囲は、図1に示す第1回動位置と図2及び図3に示す第2回動位置との間に制限されている。
【0025】
連結部材31の第1回動位置は、図1に示すように、連結部材31の側面31cが側面1cと平行に延びる第1収容凹部14の側面14aに突き当たることによって定められている。連結部材31が第1回動位置に位置したときには、連結部材31の長手方向が第1筐体1の長手方向と一致し、連結部材31の側面31dが第1筐体1の側面1cと同一平面(鉛直面)上に位置する。しかも、平面視においては、連結部材31全体が第1収容凹部14内に収容される。ただし、上記のように、第1収容凹部14の深さが連結部材31の厚さの半分に設定されているので、第1収容凹部14には、連結部材31の第1、第2回動軸線L1,L2方向における一方の側部だけが収容される。
【0026】
連結部材31の第2回動位置は、図2及び図3に示すように、連結部材31の側面31dが側面1cと直交する第1収容凹部14の左側の側面14bに突き当たることによって定められている。したがって、連結部材31は、第1回動軸線L1を中心として第1回動位置から図1〜図3の反時計方向へ90°回動すると、側面14bに突き当たる。よって、連結部材31が第2位置に位置しているときには、連結部材31の長手方向が第1筐体1の長手方向と直交するようになり、連結部材31の長手方向の他端側の半分(第2回動軸線L2側の半分)が第1収容凹部14から外部に突出する。
【0027】
第2筐体2の下面2bには、第2収容凹部15が形成されている。第2収容凹部15は、側面2cに沿って形成されており、第2筐体2の長手方向の中央部に配置されている。第2収容凹部15の側面2c側の側部は、側面2cから外部に開放されている。第2収容凹部15の深さは、連結部材31の厚さのほぼ半分に設定されている。したがって、第2収容凹部15は、連結部材31の第1収容凹部14から突出した他側部を収容可能である。
【0028】
第2収容凹部15の他端部(側面2f側の端部)には、連結部材31の他端部が第2回動軸線L2を中心として回動可能に収容されている。第2筐体2の連結部材31に対する回動範囲は、図1及び図2に示す第3回動位置と図3に示す第4回動位置との間に制限されている。
【0029】
第2筐体2の第3回動位置は、図1及び図2に示すように、第2筐体2の側面2cと平行に延びる第2収容凹部15の側面15aが連結部材31の側面31cに突き当たることによって定められている。第2筐体2が第3回動位置に位置しているときには、第2筐体2と連結部材31との長手方向が互いに一致するとともに、第2筐体2の側面2cが連結部材31の側面3dと同一平面(鉛直面)上に位置する。しかも、平面視においては、連結部材31全体が第2収容凹部15内に収容される。ただし、第2収容凹部15の深さが連結部材31の厚さの半分であるから、第2収容凹部15には連結部材31の第1、第2回動軸線L1,L2方向における他方の側部だけが収容される。
【0030】
第2筐体2の第4回動位置は、図3に示すように、第2筐体2の側面2cと直交する第2収容凹部15の側面15bが連結部材31の側面31dに突き当たることによって定められており、第2筐体2は、第3回動位置から第2回動軸線L2を中心として図1〜図3の反時計方向へ90°回動すると側面31dに突き当たる。したがって、第2筐体2が第4回動位置に位置しているときには、第2筐体2の長手方向と連結部材31との長手方向が互いに直交し、連結部材31の長手方向の半分(第1回動軸線L1側の半分)が第2収容凹部15から外部に突出する。
【0031】
上記構成のゲーム機Aにおいて、いま、第2筐体2が重ね位置に位置しているものとする。このときには、連結部材31が第1筐体1に対して第1回動位置に位置し、第2筐体2が連結部材31に対して第3回動位置に位置している。換言すれば、連結部材31が、第1筐体1に対して第1回動位置に位置し、かつ第2筐体2に対して第3回動位置に位置することにより、第2筐体2が第1筐体1に対して重ね位置に位置する。
【0032】
連結部材31を第1回動位置から第1回動軸線L1を中心として図1〜図3の反時計方向へ90°だけ回動させると、連結部材31が第2回動位置に達して停止する。このとき、第2筐体2は、連結部材31に対しては停止状態を維持するが、第1筐体1に対しては連結部材31の回動に伴って第1回動軸線L1を中心として90°だけ公転する。したがって、第2筐体2を第3回動位置に停止させた状態で連結部材31を第1回動位置から第2回動位置まで回動させると、第2筐体2が中間位置に位置する。
【0033】
中間位置に位置している第2筐体2を連結部材31に対し第3回動位置から図2の反時計方向へ90°だけ回転させると、つまり第2筐体2を第2回動軸線L2を中心として90°だけ反時計方向へ自転させると、第2筐体2が第4回動位置に達して停止する。このとき、第2筐体2は、展開位置に位置している。したがって、連結部材31を第2回動位置に位置させるとともに、第2筐体2を第4回動位置に位置させることにより、第2筐体2を展開位置に位置させることができる。展開位置に位置している第2筐体2を重ね位置まで戻す場合には、上記と逆の手順で第2筐体2及び連結部材31を順次時計方向へ回動させればよい。
【0034】
上記構成のゲーム機Aにおいては、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとがほぼ接するか互いに離間するように第1、第2筐体1,2が上下方向(第1、第2回動軸線L1,L2方向)において異なる位置に配置されているので、第1、第2筐体1,2に連結部材31を第1、第2回動軸線L1,L2を中心として回動可能に連結するだけで、第1、第2筐体1,2を互いに重なるように回動させることができ、他のヒンジ装置等を全く必要としない。したがって、ゲーム機Aの構造を簡単にするとともに、部品点数を減らすことができ、それによってゲーム機Aの製造費を低減することができる。
【0035】
また、仮に第1、第2筐体1,2に第1、第2収容凹部14,15が形成されていないものとすると、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとの間に連結部材31を配置する場合には、上面1aと下面2bとを連結部材31の厚さの分だけ上下方向(第1、第2回動軸線L1,L2方向)へ離間させる必要がある。しかるに、この実施の形態では、連結部材31の厚さ方向の一側部と他側部とが第1、第2収容凹部14,15にそれぞれ収容されているので、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとを、連結部材31の厚さの分だけ離間させることなく、互いにほぼ接触させることができる。その結果、ゲーム機A全体の厚さを薄くすることができる。
【0036】
なお、上記のゲーム機Aにおいては、第1、第2筐体1,2に第1、第2収容凹部14,15をそれぞれ形成し、各収容凹部14,15に連結部材31の厚さ方向(第1、第2回動軸線L1,L2方向)の一側部と他側部とをそれぞれ収容させているが、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとのいずれか一方に連結部材31の厚さとほぼ等しい深さを有する収容凹部を形成し、この収容凹部に連結部材31を収容させるようにしてもよい。
【0037】
図11及び図12は、この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯機器の前に開発された携帯機器の第2参考例を示す。この参考例のゲーム機(携帯機器)Bにおいては、第1筐体1に収容凹部16が形成されている。この収容凹部16は、平面視したときには、上記実施の形態の第1収容凹部14と同一形状をなし、かつ水平方向において同一位置に配置されている。しかし、収容凹部16は、第1筐体1の側面1cの中央部に配置されており、一側部だけが側面1cから外部に開放されている。しかも、収容凹部16の上下方向の内部寸法は、連結部材31の外部寸法とほぼ同等に設定されている。収容凹部16の長手方向の左端部には、連結部材31の一端部が収容されており、連結部材31の一端部は、第1筐体1に軸線を第1回動軸線L1と一致させた軸17を介して回動可能に連結されている。収容凹部16の右端部には、連結部材31の他端部が出没可能に収容されている。連結部材31の他端部には、軸線を第2回動軸線L2と一致させた軸18の下端部が設けられている。この軸18の上端部は、連結部材31から上方に突出しており、第2筐体2に連結されている。軸18は、連結部材31と第2筐体2との少なくとも一方に回動可能に連結されている。この参考例では、軸18は、連結部材31に回動不能に連結され、第2筐体2に回動可能に連結されている。
【0038】
軸18の一部は、第1筐体1の収容凹部16から上側の部分と上下方向において同一位置に位置している。このため、仮に、後述するガイド溝19を形成しなかったものとすると、第2筐体2を図11に示す展開位置から中間位置側へ向かって所定の位置まで回動させると、軸18が第1筐体1の側面1cに突き当たってしまい、それ以上第2筐体2を回動させることできなくなってしまう。そこで、このゲーム機Bにおいては、第1筐体1にガイド溝19を形成している。ガイド溝19は、上下方向には上面1aから収容凹部16まで延びており、前後方向には第1回動軸線L1を中心とし、かつ曲率半径が中心間距離Cdと同一である円周上を側面1cから側面1d側へ向かって延びている。しかも、ガイド溝19は、軸18の外径とほぼ同一かそれより若干大きい幅を有している。したがって、第2筐体2を第2回動軸線L2を中心として展開位置から中間位置に向かって所定の位置まで回動させると、軸18がガイド溝19に入り込む。勿論、ガイド溝19は、第2筐体2が中間位置に回動するまで軸18を収容することができる長さを有している。したがって、第2筐体2は、展開位置から中間位置まで回動することができる。
【0039】
連結部材31の第1筐体1に対する回動限界位置である第1、第2回動位置は、連結部材31が収容凹部16の側面16a及び側面16bにそれぞれ突き当たることによって定められている。第2筐体2の連結部材31に対する回動限界位置である第3、第4回動位置は、第2筐体2と軸18との間に設けられた第1、第2ストッパ部(図示せず)によってそれぞれ定められている。その他の構成は、上記第1参考例と同様である。
【0040】
図13〜図22は、この発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態が用いられたゲーム機を示す。このゲーム機(携帯機器)Cにおいては、ヒンジ装置3に代えてこの発明に係るヒンジ装置4が用いられている。このヒンジ装置4により、第2筐体2が第1筐体1に対し図13に示す重ね位置から図15に示す中間位置を経て図16に示す展開位置までの間を回動可能に連結されている。なお、この第1例のゲーム機Cでは、押しボタン12が4つ設けられているが、上記の参考例と同様に2つだけ設けられることもある。
【0041】
ヒンジ装置3に代わるヒンジ装置4を用いるために、この第1例のゲーム機Cにおいては、図13〜図17に示すように、第1筐体1の側面1cに突出部1iが形成されている。この突出部1iは、平面視における形状が円弧状をなしている。突出部1iの外周面の曲率中心は、第1筐体1の左右方向(長手方向)の中央で、側面1cから所定距離だけ側面1d側に離間した箇所に配置されている。突出部1iの曲率中心の側面1cに対する離間距離は、同曲率中心と第1筐体1の前後方向(短手方向)の中央との間の距離より小さくなっている。つまり、突出部1iの曲率中心は、第1筐体1の前後方向の中央部より側面1cに接近した位置に配置されている。後述するように、突出部1iの曲率中心を通り、第1筐体1の上面1aと直交する軸線が第1回動軸線L1になっている。
【0042】
図17及び図18に示すように、第1筐体1の上面1aには、断面円径の収容孔1jが形成されている。収容孔1jは、上面1aに形成された大径孔部1kと、この大径孔部1kの底面に形成された小径孔部1lとを有している。大径孔部1k及び小径孔部1lは、それぞれの軸線を突出部1iの曲率中心と一致させて、つまり第1回動軸線L1と一致させて配置されている。大径孔部1kの左右の両側部には、大径孔部1kと同一深さを有する位置決め凹部1mが大径孔部1kと連通した状態でそれぞれ形成されている。小径孔部1lの内径は、大径孔部1kの内径より小径になっている。
【0043】
図19及び図20に示すように、第2筐体2の下面2bには、深さが浅い断面円形の位置決め孔2gが形成されている。この位置決め孔2gの中心は、第2筐体2の長手方向の中央で、側面2cから側面2dに向かって所定距離だけ離間した箇所に配置されている。位置決め孔2gの中心と側面2cとの間の距離は、収容孔1jと側面1cとの間の距離と同一距離に設定されている。位置決め孔2gの中心は、第2回動軸線L2と一致している。
【0044】
図21及び図22に示すように、ヒンジ装置4は、第1ヒンジ部材41、第1支持部材(支持部材)42、第2ヒンジ部材43及び第2支持部材(支持部材)44を備えている。
【0045】
第1ヒンジ部材41は、薄いリング状に形成されている。第1ヒンジ部材41の外径は、大径孔部1kの内径とほぼ同一に設定され、第1ヒンジ部材41の厚さは、大径孔部1kの深さと同等か僅かに厚くなっている。第1ヒンジ部材41の内周面には、内歯車部(第1歯車部)41aが形成されている。第1ヒンジ部材41の外周面には、一対の取付部(第1取付部)41b,41bが周方向に180°離れて形成されている。第1ヒンジ部材41は、大径孔部1kにほとんど隙間無く嵌合されるとともに、取付部41bが位置決め凹部1m・BR>ノ挿入されることによって位置決めされている。そして、取付部41b
の挿通孔41cを貫通して第1筐体1のねじ孔1n(図18参照)に螺合されたボルト(図示せず)を締め付けることにより、第1ヒンジ部材41が第1筐体1に固定されている。第1ヒンジ部材41が第1筐体1に固定された状態においては、第1ヒンジ部材41の軸線、つまり内歯車部41aの軸線が第1回動軸線L1と一致させられている。また、第1ヒンジ部材41の厚さが大径孔部1kの深さとほぼ同一か若干厚いので、第1ヒンジ部材41の上面は、第1筐体1の上面1aとほぼ同一平面上に位置するか、上面1aから僅かに上方に突出している。
【0046】
第1支持部材42は、薄い円板状をなしており、互いに同軸に形成された大径部42aと小径部(嵌合部)42bとを有している。大径部42aは、小径孔部1lにほとんど隙間無く、しかも回動可能に嵌合されている。したがって、第1支持部材42は、第1筐体1に対し第1回動軸線L1を中心として回動可能である。大径部42aの厚さは、小径孔部1lの深さとほぼ同一である。したがって、大径部42aの上下両面は、小径孔部1lの底面と第1ヒンジ部材41とにそれぞれほとんど隙間無く突き当たっており、それによって第1支持部材42が第1筐体1に第1回動軸線L1方向へ実質的に移動不能に保持されている。
【0047】
第1支持部材42の小径部42bは、第1ヒンジ部材41の内歯車部41aの内径とほぼ同一外径を有しており、内歯車部41aの内周面に回動可能に嵌合している。小径部42bの厚さは、第1ヒンジ部材41の厚さとほぼ等しいか、僅かに厚くなっている。したがって、小径部42bの上面は、第1ヒンジ部材41の上面と同一平面上に位置するか、第1ヒンジ部材41の上面から僅かに上方へ突出している。小径部42bには、円形をなす収容凹部(収容部)42cが形成されている。収容凹部42cは、その内周面が第1支持部材42の軸線に接するように配置されている。しかも、収容凹部42cの内径は、小径部42bの半径より大径に設定されている。したがって、収容凹部42cの外側の一側部は、小径部42bの一側部外周面から外部に開放されている。なお、収容凹部42cの内径は、第2ヒンジ部材43の後述する外歯車部43aの外径とほぼ同一に設定されている。
【0048】
第2ヒンジ部材43は、互いに同軸に形成された外歯車部(第2歯車部)43aと、ボス部(第2取付部)43bとを有している。外歯車部43aは、収容凹部42cの内径とほぼ同一の外径を有しており、収容凹部42cに回動可能に収容されている。外歯車部43aの外周側の一部は、収容凹部42cの開放部から外部に突出しており、当該突出した部分において内歯車部41aと噛み合っている。したがって、第2ヒンジ部材43は、第1回動軸線L1を中心として公転しながら、第2ヒンジ部材43自体の軸線(この軸線は、第2回動軸線L2である。)を中心として自転する。第2ヒンジ部材43が公転すると、第2ヒンジ部材43を収容凹部42cに収容した第1支持部材42が第2ヒンジ部材43と一緒に第1回動軸線L1を中心として回動する。外歯車部43aの歯数は、内歯車部41aの歯数の半分に設定されている。したがって、内歯車部41aの外歯車部43aとの噛み合いピッチ円径をDcとすると、外歯車部43aの軸線は、内歯車部41aの軸線、つまり第1回動軸線L1に対して距離D/2だけ離間させられている。外歯車部43aの厚さは、第1支持部材42の小径部42bの厚さとほぼ同一に設定されている。したがって、第2ヒンジ部材43が収容凹部42cの底面に直接接触するのであれば、外歯車部43aの上面が小径部42bの上面と同一平面上に位置するはずである。しかし、第2ヒンジ部材43は、後述するように、収容凹部42cの底面に後述する球体52を介して接触する。したがって、外歯車部43aの上面は、小径部42bの上面より上方に位置している。ボス部43bの外径は、外歯車部43aの歯底円径より若干小径に設定されている。ボス部43bの上面は、第1ヒンジ部材41の上面から所定の距離だけ上方に突出している。
【0049】
第2支持部材44は、厚さが薄い円板として形成されており、第1支持部材42と同芯に配置されている。第2支持部材44の径方向における一側部には、保持孔44aが形成されている。この保持孔44aには、第2ヒンジ部材43のボス部43bが回動可能に挿通されている。第2支持部材44の径方向の他側部は、第1支持部材42の小径部42bの上面に押し付けられ、リベットや鳩目等の固定部材45によって第1支持部材42に固定されている。第2支持部材44の径方向の一側部は、外歯車部43aの上面に押し付けられている。したがって、第1、第2支持部材42,44は、外歯車部43aを上下に挟持した状態で回転可能に保持している。その結果、内歯車部41aと外歯車部43aとが、第1、第2支持部材42,44により常時噛み合った状態に維持されている。
【0050】
第2ヒンジ部材43の外歯車部43aの上面が第1支持部材42の小径部42bの上面より上方に突出しているので、小径部42bの上面に固定された第2支持部材44の一側部は、外歯車部43aの上面に弾性変形した状態で押圧接触し、その弾性力によって第2ヒンジ部材43を常時下方へ付勢している。第2支持部材44の付勢力を適宜の大きさに調節するために、第2支持部材44の保持孔44aより他側部側の部分には、保持孔44aに沿って半円状に延びる長孔44bが形成されている。
【0051】
保持孔44aから上方に突出したボス部43bの上端部は、第2筐体2の位置決め孔2gに嵌合されている。これにより、第2ヒンジ部材43の軸線が第2回動軸線L2と一致させられている。しかも、ボス部43bには、第2筐体2の挿通孔2l(図19及び図20参照)を貫通してボス部43bのねじ孔43cに螺合されたボルト(図示せず)を締め付けることにより、第2筐体2が固定されている。この結果、第2筐体2が第1筐体1に対し第1回動軸線L1を中心として公転可能に、かつ第2回動軸線L2を中心として自転可能に連結されている。なお、第2筐体2が第1筐体1に対して回動するとき、その回動を第1、第2支持部材42,44が邪魔しないよう、第1、第2支持部材42,44は第1、第2筐体1,2に対して回動可能になっている。
【0052】
上記のように、第1回動軸線L1は、左右方向(第1筐体1の長手方向)に関しては第1筐体1の中央に位置し、前後方向(第1筐体1の短手方向)に関しては第1筐体1の中央より側面1cに接近した位置に配置されている。また、第2回動軸線L2は、第2筐体2の長手方向に関してはその中央に位置し、短手方向に関しては側面1cと第1回動軸線L1との間の距離に内歯車部41aと外歯車部43aとの中心間距離を加えた距離だけ側面2cから離間した位置に配置されている。しかも、第1、第2回動軸線L1,L2は、第2筐体2が図13に示す重ね位置に回動したときには、第2筐体2全体が突出部1iを除く第1筐体1全体と上下に重なり、第2筐体2が図15に示す中間位置に回動したときには、操作ボタン11及び押しボタン12が設けられた左右両端部が外部に露出するよう、第2筐体2が第1筐体1の長手方向の中央に位置し、第2筐体2が展開位置に回動したときには、第1筐体1の側面1c側の側部と、第2筐体2の側面2c側の側部とが上下に重なるように配置されている。第2筐体2が展開位置に回動したときの第1、第2筐体1,2の重なり幅(第1、第2筐体1,2の短手方向における重なり幅)は、第1回動軸線L1を側面1cに接近させること、又は第2回動軸線L2を側面2cに接近させることによって少なくすることができる。
【0053】
第2ヒンジ部材43の中央部には、第2ヒンジ部材43を上下に貫通する貫通孔43dが形成されており、第1支持部材42の貫通孔43dと対向する箇所には、貫通孔42dが形成されている。これらの貫通孔43d,42dには、第1、第2筐体1,2にそれぞれ設けられる電子部品(例えば、表示部13)を接続するためのワイヤーハーネス(図示せず)が挿通される。
【0054】
第2筐体2が重ね位置、中間位置及び展開位置の各位置に位置したときに、第2筐体2をクリック感をもって各位置に停止させるために、第1支持部材42と第2ヒンジ部材43との間には、クリック機構5が設けられている。すなわち、図22に示すように、収容凹部42cの底面には、略半球状をなす係合凹部51が4つ形成されている。各係合凹部51は、収容凹部42cの軸線(第2回動軸線L2)を中心とする円周上に周方向へ互いに90°離れて配置されている。一方、収容凹部42cの底面と対向する第2ヒンジ部材43の下面には、4つの球体52がその略半分を下方に突出させた状態で埋設されている。各球体52は、係合凹部51が配置された円周と同一の円周上に周方向へ互いに90°離れて配置されている。しかも、球体52の外径は、係合凹部51の内径より若干大径に設定されており、第2筐体2が重ね位置に位置すると、4つの球体52が4つの係合凹部51とそれぞれ周方向において同一位置に位置するように配置されている。したがって、第2筐体2が重ね位置、中間位置及び展開位置の各位置に位置すると、第2支持部材44の付勢力により4つの球体52が4つの係合凹部51のいずれかにそれぞれ嵌り込み、各係合凹部51の周縁部に突き当たる。これにより、第2ヒンジ部材43が第1支持部材42に所定の大きさの力でクリック感をもって停止させられる。この結果、第2ヒンジ部材43に固定された第2筐体2が、重ね位置、中間位置及び展開位置の各位置において第1筐体1に所定の大きさの力でクリック感をもって停止させられる。
【0055】
球体52が第2ヒンジ部材43の回動に伴って係合凹部51に出没すると、その出没量の分だけ第2ヒンジ部材43が第2回動軸線L2方向へ移動し、ひいては第2筐体2が同方向へ移動する。第2筐体2のこのような移動は、例えば第2支持部材44をほとんど弾性変形しない剛体にする一方、第1支持部材42を弾性変形可能に形成することによって無くすことができる。
【0056】
第1筐体1と第2筐体2との間には、第1、第2係止機構(いずれも図示せず)が設けられている。そして、第2筐体2が展開位置から重ね位置へ向かう方向において重ね位置を越えて所定の微小角度(球体52が係合凹部51から脱出しない程度の微小角度)だけ回動すると、それ以上の同方向への回動が第1係止機構によって阻止される。また、第2筐体2が重ね位置から展開位置へ向かう方向において展開位置を越えて所定の微小角度(球体52が係合凹部51から脱出しない程度の微小角度)だけ回動すると、それ以上の同方向への回動が第2係止機構によって阻止される。したがって、第2筐体2の回動範囲は、実質的に重ね位置と展開位置との間に制限されている。
【0057】
図23及び図24は、ヒンジ装置4の一変形例たるヒンジ装置4Aを示す。つまり、この発明に係るヒンジ装置の第2実施の形態を示す。このヒンジ装置4Aは、上記第1例のゲーム機Cの第1筐体1と第2筐体2との間に設けられた第1、第2係止機構の機能を有している。そのような機能を有する必要上、ヒンジ装置4Aにおいては、第1ヒンジ部材41の上面の外周側に係止突起41dが設けられるとともに、第2支持部材44の外周面に係合突出部44cが形成されている。この係合突出部44cは、半周弱の長さをもって周方向に延びており、第2筐体2が展開位置から重ね位置に向かう方向において重ね位置を僅かに越えて回動すると、係合突出部44cの周方向の一端面44dが係止突起41dに突き当たって第2筐体2の同方向への回動を阻止し、第2筐体2が重ね位置から展開位置へ向かう方向において展開位置を僅かに越えて回動すると、係合突出部44cの周方向の他端面44eが係止突起41dに突き当たって第2筐体2の同方向への回動を阻止する。その他の構成は、上記ヒンジ装置4と同様である。
【0058】
図25及び図26は、ヒンジ装置4の他の変形例たるヒンジ装置4Bを示す。つまり、この発明に係るヒンジ装置の第3実施の形態を示す。このヒンジ装置4Bは、第2筐体2の第1筐体1に対する回動範囲を重ね位置を両端とする360°の範囲に制限するように構成されている。すなわち、第1ヒンジ部材41の上面の外周側には、周方向ないしは接線方向に延びるガイド溝41eが形成されている。このガイド溝41eには、係止部材46の下端部がガイド溝41eの長手方向へ移動可能に収容されている。第2支持部材44の外周面には係合突起44fが設けられている。この係合突起44fは、第2筐体2が一方向へ向かって回動して重ね位置近傍に達すると係止部材46の一端面に突き当たり、係止部材46をガイド溝41eの一端部に向かって移動させる。第2筐体2が重ね位置を僅かに越えると、係止部材46がガイド溝41eの長手方向の一端面に突き当たる。これによって、第2筐体2のそれ以上の同方向への回動が阻止されている。第2筐体2が一方向への回動を阻止された位置から他方向へ向かってほぼ360°回動して重ね位置近傍に達すると、係合突起44fが係止部材46の他端面に突き当たり、係止部材46をガイド溝41eの他端部に向かって移動させる。第2筐体2が重ね位置を越えて僅かに他方向へ回動すると、係止部材46がガイド溝41eの他端面に突き当たる。これによって、第2筐体2のそれ以上の他方向への回動が阻止されている。この結果、第2筐体2の回動範囲が、重ね位置を回動範囲の両端とする360°の範囲に実質的に制限されている。
【0059】
図27〜図41は、この発明に係るヒンジ装置の第4実施の形態が用いられたゲーム機を示す。このゲーム機(携帯機器)Dにおいても、図27〜図29に示すように、第2筐体2が第1筐体1に対し重ね位置から中間位置を経由して展開位置に至るまでの間を回動可能である。この点は、前述したゲーム機A〜Cと同様である。しかし、このゲーム機Dにおいては、この発明の第4実施の形態たるヒンジ装置6が用いられることにより、第1筐体1に突出部1iを形成する必要がなくなっている。しかも、第2筐体2は、展開位置に位置したときには、第1、第2回動軸線L1,L2と直交する方向に延び、かつ第1筐体1の側面1cと平行に延びる第3回動軸線L3を中心として図30に示す平行位置と図31に示す傾斜位置との間を回動可能になっている。第2筐体2の平行位置は、第2筐体2の下面2bが第1筐体1の上面1aに突き当たることによって規制されている。第2筐体2の傾斜位置は、第2筐体2の下面2bと側面2cとの交差部に形成された傾斜面2kが第1筐体1の上面1aに突き当たることによって規制されている。第2筐体2は、展開位置以外の位置では下面2bが第1筐体1の上面1aにほぼ接しているので、第3回動軸線L3を中心として回動することはない。第2筐体2を傾斜位置に位置させると、平行位置に位置させた場合に比して表示部(図1参照)が見易くなる。
【0060】
ゲーム機Dの構成をより詳細に説明すると、図32に示すように、第1筐体1の上面1aには、収容凹部1oが形成されている。収容凹部1oは、側面1cの近傍に配置されている。第2筐体2は、下筐体部2Aと上筐体部2Bとによって構成されており、両者はボルト等の固定手段(図示せず)によって固定されている。下筐体部2Aの上面には、収容孔2hが形成されている。この収容孔2hの中心と側面2cとの間の距離は、収容孔2hの半径より小さくなっている。この結果、収容孔2hの一側部が側面2cから開放されている。収容孔2hの底面には、貫通孔2iが形成されている。この貫通孔2iは、収容孔2hと同芯に配置されており、その半径は収容孔2hと側面1cとの間の距離より若干小さく設定されている。したがって、貫通孔2iは、円径を保っている。また、下筐体部2Aの上面には、位置決め凹部2jが形成されている。位置決め凹部2jの一側部は、収容孔2hに開放されている。
【0061】
図32〜図38に示すように、ヒンジ装置6は、基枠(基部)61を有している。基枠61は、収容凹部1oに収容されており、その下面部(第1取付部)61aが収容凹部1oの底面にボルト等の固定手段(図示せず)によって押圧固定されている。基枠61には、回動部材62の一側部が軸63を介して回動可能に設けられている。軸63は、側面1cと平行に、かつ回動軸線L1,L2と直交する方向に延びている。軸63の軸線が第3回動軸線L3である。ここで、回動部材62は、後述するように、第2筐体2に連結されており、第3回動軸線L3に関しては第2筐体2と一体に回動する。したがって、回動部材62の第3回動軸線L3を中心とする回動範囲は、第2筐体2の回動範囲と同一であり、平行位置と傾斜位置との間である。
【0062】
図38に示すように、基枠61と回動部材62との一端部間及び他端部間には、基枠61に設けられた係合孔71と、回動部材62に設けられたコイルばね72、押しロッド73及び球体74とからなるクリック機構7がそれぞれ設けられている。このクリック機構7によって回動部材62及び第2筐体2が平行位置及び傾斜位置においてクリック感をもって停止させられるようになっている。
【0063】
回動部材62の上面62aの他側部には、取付孔62bが形成されている。この取付孔62bには、歯車64の下端部に形成された下軸部64aが嵌合固定されている。したがって、歯車64は、第3回動軸線L3を中心として回動部材62と一体に回動する。歯車64は、外歯車部(第1歯車部)64bを有している。この外歯車部64bは、貫通孔2iを通って収容孔2h内に入り込んでいる。外歯車部64bの軸線が第1回動軸線L1になっている。したがって、歯車64は、第1回動軸線L1に関しては基枠61に回動不能に連結されており、第3回動軸線L3に関しては基枠61に回動可能に連結されている。基枠61、回動部材62、軸63及び歯車64によって第1ヒンジ部材が構成されている。
【0064】
なお、回動部材62が第3回動軸線L3を中心として平行位置から回動すると、回動部材62に固定された歯車64も回動し、第1回動軸線L1が第1筐体1に対して傾斜する。したがって、この状態では、第1回動軸線L1が第1筐体1に位置固定されているという原則から外れる。しかし、回動部材62が第3回動軸線L3を中心として回動して平行位置以外の位置に位置しているときには、回動部材62(第2筐体2)が第1回動軸線L1を中心として回動することがない。第2筐体2が第1回動軸線L1を中心として回動するときには、第1回動軸線L1が第1筐体1に位置固定されている。
【0065】
第2筐体2の収容孔2hには、第2ヒンジ部材65が嵌合されている。第2ヒンジ部材65は、「C」字状をなしており、その開放部を収容孔2hの開放部と同一方向に向けた状態で配置されている。第2ヒンジ部材65の外周部には取付部(第2取付部)65aが形成されている。この取付部65aは、位置決め凹部2jに嵌め込まれている。そして、取付部65aを貫通して第2筐体2に螺合されたボルトによって第2ヒンジ部材65が第2筐体2に固定されている。
【0066】
第2ヒンジ部材65の内周面には、内歯車部(第2歯車部)65bが形成されている。この内歯車部65bの軸線が第2回動軸線L2であり、内歯車部65bは歯車64の外歯車部64bと噛み合っている。内歯車部65bが外歯車部64bと噛み合うことにより、第2ヒンジ部材65が第2回動軸線L2を中心として自転するとともに、第1回動軸線L1を中心として公転する。この結果、第2ヒンジ部材65に固定された第2筐体2が、第1筐体1に対し第1,第2回動軸線L1,L2を中心として図27に示す重ね位置から図28に示す中間位置を経由して図29に示す展開位置までの間を回動する。なお、内歯車部65bは、「C」字状をなしているが、第2ヒンジ部材65が重ね位置と展開位置との間を回動している限り、外歯車部64bが内歯車部65bの開放部に達することがない。この点を考慮して第2ヒンジ部材65を「C」状にしたものであり、それによって前述した実施の形態の突出部1iが不要になっている。
【0067】
第2ヒンジ部材65(内歯車部65b)の内周面には、下支持部材(支持部材)66Aの上面に形成された短筒部66aが所定の隙間をもって回動可能に挿入されている。この下支持部材66Aは、補強部材67を介して第2ヒンジ部材65の下端面に突き当たっている。第2ヒンジ部材65の内周面には、上支持部材(支持部材)66Bの下面に形成された短筒部(嵌合部)66bが回動可能に嵌合している。短筒部66bの内周面に短筒部66aが嵌合している。下支持部材66A及び上支持部材66Bは、第2ヒンジ部材65を上下方向(第1、第2回動軸線方向)にほぼ挟持した状態でボルト等の固定手段(図示せず)によって互いに固定されている。この結果、下支持部材66A及び上支持部材66Bが、第2ヒンジ部材65に第2回動軸線L2を中心として回動可能に、かつ第2回動軸線L2方向へ移動不能に連結されている。
【0068】
下支持部材66Aの上面、短筒部66a、及び上支持部材66Bの下面によって図示しない収容空間(収容部)が形成されている。この収容空間には、歯車64の外歯車部64bが回動可能に収容されている。外歯車部64bは、その外周部の一側部が収容空間から外部に突出しており、その突出した一側部において内歯車部65bと噛み合っている。
【0069】
下支持部材66Aには貫通孔66cが形成され、上支持部材66Bには貫通孔66dが形成されている。各貫通孔66c,66dには、歯車64の下軸部64a及び上軸部64cがそれぞれ回動可能に嵌合している。この結果、歯車64が上下の支持部材66A,66Bに回動可能に支持され、外歯車部64bと内歯車部65bとが常時噛み合った状態に維持されている。しかも、歯車64と第2ヒンジ部材65とが支持部材66A,66Bを介して分離不能に連結され、ヒンジ装置6全体がユニット化されている。
【0070】
下支持部材66Aと外歯車部64bとの間には、板ばね68が設けられている。この板ばね68によって下支持部材66A及び上支持部材66Bが下方へ付勢される一方、歯車64が上方へ付勢されている。外歯車部64bの上面と上支持部材66Bの下面との間には、クリック機構8が設けられている。クリック機構8は、板ばね68以外に、上支持部材66Bの下面に設けられた二つの球体81,82、外歯車部64bの上面に設けられたガイド溝83及び四つの係合凹部84,85,86,87を有している。
【0071】
板ばね68は、上支持部材66Bと外歯車部64bとの間に設けてもよい。その場合には、クリック機構8が外歯車部64bの下面と下支持部材66Aの上面との間に設けられる。また、二つの球体81,82を外歯車部64bに設け、ガイド溝83及び係合凹部84〜87を上支持部材66Bの下面に設けてもよい。
【0072】
二つの球体81,82は、上支持部材66Bの下面にその周方向へ互いに所定角度αだけ離れて配置されている。ここで、角度αは、第2筺体2が重ね位置から展開位置まで回動するときに、内歯車部65bが第1回動軸線L1を中心として回転する角度と同一に設定されている。各球体81,82は、上支持部材66Bの周方向へは移動不能に、かつ径方向へは移動可能に配置されている。一方、ガイド溝83は、図39〜図41に示すように、外歯車部64bの軸線(第1回動軸線L1)を中心として渦巻き状に延びている。このガイド溝83の一端部には、係合凹部84が配置され、ガイド溝83の中間部には係合凹部85,86が順次配置され、ガイド溝83の他端部には係合凹部87が配置されている。各係合凹部84〜87は、第2筺体2が重ね位置に位置しているときには、図39に示すように、球体81,82が係合凹部84,85にそれぞれ嵌まり込み、第2筺体2が中間位置に位置しているときには、図40に示すように、球体81,82が係合凹部85,86にそれぞれ嵌まり込み、第2筺体2が展開位置に位置しているときには、図41に示すように、球体81,82が係合凹部86,87にそれぞれ嵌まり込むように配置されている。したがって、第2筺体2は、重ね位置、中間位置及び展開位置のいずれの位置においても板ばね68の付勢力によって第1筐体1にクリック感をもって位置固定される。
【0073】
図42〜図52は、この発明に係るヒンジ装置の第5実施の形態が用いられたゲーム機を示す。このゲーム機(携帯機器)Eにおいても、図42〜図44に示すように、第2筐体2が第1筐体1に対し重ね位置から中間位置を経由して展開位置に至るまでの間を回動可能である。この点は、前述したゲーム機A〜Cと同様である。しかし、このゲーム機Eにおいては、第1筐体1が下筐体部1Aと上筐体部1Bとによって構成されており、下筐体部1Aと上筐体部1Bとは、ビスBs等の固定手段によって互いに固定されている。上筐体部1Bの上面(第1筐体1の上面)1aには、取付凹部1pが形成されている。取付凹部1pは、長円状をなしており、上面1aの長手方向の中央部に配置されている。しかも、側面1cに接近してそれと平行に配置されている。取付凹部1pには、この発明の第5実施の形態たるヒンジ装置9が取り付けられている。そして、このヒンジ装置9を介して第2筐体2が第1筐体1に重ね位置と展開位置との間を回動可能に連結されている。
【0074】
図46〜図52に示すように、ヒンジ装置9は、第1ヒンジ部材91、第2ヒンジ部材92、支持部材93、第1、第2外歯車部94,95、一対のアイドル歯車96,96、及びクリック機構100を有している。
【0075】
第1ヒンジ部材91は、平面視長円状の平板からなるものであり、その上端側の一部を除く下側の大部分が取付凹部1pに嵌合され、ビスBs等の固定手段によって第1筐体1に固定されている。これから明らかなように、取付凹部1pに嵌合された第1ヒンジ部材91の下部91aが第1取付部になっている。第1ヒンジ部材91の上面の中央部には、連結筒部91bが形成されている。この連結筒部91bの軸線が第1回動軸線L1になっている。
【0076】
支持部材93は、第1〜第4の4つの支持板93A〜93Dによって構成されている。
第1〜第4支持板93A〜93Dは、外径が互いに同一である薄い円板からなるものであり、互いの軸線を一致させて重ねられ、ビスBs等の固定手段によって互いに固定されている。支持部材93の軸線が第2回動軸線L2になっている。第2回動軸線L2は、第1回動軸線L1に対し支持部材93の径方向に所定距離だけ離間させられている。
【0077】
第1及び第2支持板93A,93Bには、連結孔93a,93bがそれぞれ形成されている。連結孔93a,93bは、その軸線を第1回動軸線L1と一致させて配置されている。連結孔93a,93bには、第1ヒンジ部材91の連結筒部91bが回動可能に嵌合されている。これにより、支持部材93が第1ヒンジ部材91に第1回動軸線L1を中心として回動可能に連結されている。
【0078】
第2支持板93Bには、長円状をなすばね収容孔93cが形成されている。このばね収容孔93cは、第1回動軸線L1と第2回動軸線L2との間に配置されている。しかも、ばね収容孔93cは、その長手方向を第1、第2回動軸線L1,L2を結ぶ線と直交する方向に向けて配置されている。ばね収容孔93cには、ばね部材98が収容されている。ばね部材98については後述する。
【0079】
第3支持板93Cには、歯車収容孔93dが形成されている。この歯車収容孔93dは、その内部を第1、第2回動軸線L1、L2が通るように配置されている。歯車収容孔93dの第1回動軸線L1側の一側部は、第3支持板93Cの外周面から外部に開放されている。これは、第3支持板93C、ひいては支持部材93の外径をできる限り小さくするためのものである。したがって、支持部材93の小径化がそれほど重要でない場合には、必ずしも歯車収容孔93dの一側部を外部に開放しなくてもよい。
【0080】
歯車収容孔93dには、第1、第2歯車部94,95及び一対のアイドル歯車96,96がそれぞれ回動可能に収容されている。
【0081】
第1外歯車部94は、その軸線を第1回動軸線L1と一致させた状態で配置されている。しかも、第1外歯車部94は、第1ヒンジ部材91に後述する固定軸101を介して回動不能に連結されている。したがって、第1外歯車部94は、支持部材93に対し第1回動軸線L1を中心として相対回動する。
【0082】
第2外歯車部95は、その軸線を第2回動軸線L2と一致させた状態で配置されている。しかも、第2外歯車部95は、第2、第4支持板93B、93Dによって回動可能に支持されている。この結果、第2外歯車部95が、第1外歯車部94に支持部材93を介して、それも第1回動軸線L1を中心として公転可能に連結されている。
【0083】
一対のアイドル歯車96,96は、その軸線を第1、第2回動軸線L1,L2と平行にした状態で配置されている。しかも、アイドル歯車96,96は、第1、第2外歯車部94,95の軸線(第1、第2回動軸線L1,L2)と直交する線を間にしてその両側に配置されており、いずれも第1、第2外歯車部94,95と噛み合っている。
【0084】
一対のアイドル歯車96,96は、第2及び第4支持板93B,93Dにより互いに接近離間する方向へ微小距離だけ移動可能に支持されている。しかも、アイドル歯車96,96は、上述したばね部材98によって互いに接近する方向に付勢されている。この結果、各アイドル歯車96は、第1、第2外歯車部94,95とバックラッシュが無い状態で噛み合っている。
【0085】
第2外歯車部95の上面の中央部には、連結突出部95aが形成されている。この連結突出部95aの上端部は、第4支持板93Dを回動可能に貫通して上方に突出しており、そこには、軸線を第2回動軸線L2と一致させた第2ヒンジ部材92の中央部が固定されている。第2ヒンジ部材92の上面部92aが第2取付部になっている。当該上面部92aは、第2筐体2の下面に固定されている。これにより、第2筐体2が第1筐体1にヒンジ装置9を介して回動可能に連結されている。
【0086】
上記クリック機構100は、固定軸101、付勢手段としての板ばね102及び一対の球体103,103及び第1外歯車部94を有している。固定軸101は、支持部材93を第1回動軸線L1方向へ移動可能に、かつ回動可能に貫通するとともに、第1外歯車部94を回動不能に、かつ第1回動軸線L1方向へ移動可能に貫通している。そして、固定軸101の下端部は、第1ヒンジ部材91の連結筒部91bの内周に嵌合固定されている。固定軸101の上端部は、支持部材93(第4支持板93D)の上面から上方に突出しており、そこには環状突出部101aが形成されている。この環状突出部101aは、支持部材93の上面に摺動可能に接触している。これにより、支持部材93が第1ヒンジ部材91に離脱不能に連結され、ひいてはヒンジ装置9全体がユニット化されている。
【0087】
第4支持板93Dには、第1回動軸線L1と平行に延びる一対の貫通孔104,104が形成されている。この一対の貫通孔104,104は、第1回動軸線L1を中心とする円周上に周方向へ180°離れて配置されている。貫通孔104の内径は、第4支持板93Dの厚さより所定の大きさだけ大きく設定されている。貫通孔104には、球体103が回動可能に、かつ貫通孔104の軸線方向へ移動可能に挿入されている。球体103の外径は、貫通孔104の内径とほぼ同一に設定されている。したがって、球体103の外周面の第1回動軸線方向における一側部と他側部とが、貫通孔104から外部に突出している。貫通孔104から第4支持板93Dの上面側に突出した球体103の一側部は、第4支持板93Dの上面に固定された板ばね102によって下方に付勢されている。貫通孔104から第4支持板93Dの下面側に突出した球体103の他側部は、第1外歯車部94の上面に板ばね102の付勢力によって押し付けられている。
【0088】
第1外歯車部94の上面には、係合凹部(図示せず)が4つ形成されている。各係合凹部は、第1回動軸線L1を中心として球体103が配置された円周と同一の円周上に互いに90°離れて配置されている。しかも、4つの係合凹部は、第2筐体2が重ね位置、中間位置、展開位置に位置すると、一対の球体103,103が二つの係合凹部にそれぞれ入り込むように配置されている。したがって、第2筐体2は、重ね位置、中間位置及び展開位置においてクリック感をもって停止させられる。
【0089】
上記構成のゲーム機Eにおいては、アイドル歯車96が第1、第2外歯車部94,95とバックラッシュが無い状態で噛み合っているので、第1、第2外歯車部94,95間にバックラッシュに起因するガタが生じることがない。したがって、第1、第2筐体1,2間にガタが生じることを防止することができる。
【0090】
第1、第2外歯車部94,95間のバックラッシュに起因するガタの発生は、第1、第2外歯車部94,95のいずれか一方を互いに接近離間する方向へ移動可能に配置するとともに、当該一方を付勢手段によって他方側へ付勢することによって防止することができる。しかし、そのようにした場合には、第1外歯車部94又は第2外歯車部95が移動する結果、第1回動軸線L1が第1筐体1に対して移動し、あるいは第2回動軸線L2が第2筐体2に対して移動するという不具合を招来してしまう。したがって、現実的ではない。
【0091】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の各実施の形態においては、第1、第2筐体1,2の平面視における形状及び寸法を互いに同一形状、同一寸法にしているが、異なる形状、異なる寸法にしてもよい。例えば、第1筐体1を台形状にしてもよい。勿論、そのようにする場合にも、第2筐体2を中間位置に位置させたときに、操作ボタン11及び押しボタン12が設けられた第1筐体1の両端部を第2筐体2から左右方向へ突出させることが望ましい。
また、上記の各実施の形態においては、第1筐体1の上面1aと第2筐体2の下面2bとを平面とし、それらがほぼ接するように第1、第2筐体1,2を配置し、それによって第1、第2筐体1,2のほぼ全体が互いに重なることができるように構成しているが、第1、第2筐体1,2の一部だけが重なることができるよう、上面1aの一部と下面2bの一部とだけをほぼ接するように配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明に係るヒンジ装置は、携帯機器の第1筐体と第2筐体とを回動可能に連結する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
A ゲーム機(携帯機器)
B ゲーム機(携帯機器)
C ゲーム機(携帯機器)
D ゲーム機(携帯機器)
E ゲーム機(携帯機器)
L1 第1回動軸線
L2 第2回動軸線
L3 第3回動軸線
1 第1筐体
2 第2筐体
3 ヒンジ装置
4 ヒンジ装置
4A ヒンジ装置
4B ヒンジ装置
6 ヒンジ装置
9 ヒンジ装置
14 第1収容凹部
15 第2収容凹部
16 収容凹部
31 連結部材
41 第1ヒンジ部材
41a 内歯車部(第1歯車部)
41b 取付部(第1取付部)
42 第1支持部材(支持部材)
42b 小径部(嵌合部)
42c 収容凹部(収容部)
43 第2ヒンジ部材
43a 外歯車部(第2歯車部)
43b ボス部(第2取付部)
44 第2支持部材(支持部材)
61 基枠(基部)
61a 下面部(第1取付部)
62 回動部材
63 軸
64 歯車
64b 外歯車部(第1歯車部)
65 第2ヒンジ部材
65a 取付部(第2取付部)
65b 内歯車部(第2歯車部)
66A 下支持部材(支持部材)
66B 上支持部材(支持部材)
66b 短筒部(嵌合部)
91 第1ヒンジ部材
91a 下部(第1取付部)
92 第2ヒンジ部材
92a 上面部(第2取付部)
93 支持部材
94 第1外歯車(第1歯車部)
95 第2外歯車(第2歯車部)
96 アイドル歯車
98 ばね部材(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1取付部及び第1歯車部を有する第1ヒンジ部材と、第2取付部及び上記第1歯車部と噛み合う第2歯車部を有する第2ヒンジ部材と、上記第1ヒンジ部材を上記第1歯車部の軸線を中心として回動可能に支持するとともに、上記第2ヒンジ部材を上記第2歯車部の軸線を中心として回動可能に支持し、上記第1歯車部と上記第2歯車部とを噛み合った状態に維持する支持部材とを備え、上記第1歯車部の軸線と上記第2歯車部の軸線とが互いに平行に配置されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記第1歯車部が内歯車部であり、上記第2歯車部が外歯車部であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記支持部材には、上記第1歯車部の内周面に回動可能に嵌合する嵌合部が設けられ、この嵌合部には上記第2歯車部を回動可能に収容する収容部が設けられ、この収容部の一側部が上記嵌合部の外周面から外部に開放され、上記第2歯車部の一側部が上記収容部の開放された一側部から外部に突出させられ、その突出した一側部において上記第2歯車部が上記第1歯車部と噛み合っていることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記第1ヒンジ部材が、上記第1取付部が設けられた基部と、上記第1歯車部が設けられた回動部材とを有し、上記回動部材が上記基部に上記第1歯車部の軸線と直交する方向に延びる軸線を中心として回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
上記第1、第2歯車部が共に外歯車部であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
上記第1、第2歯車部が互いに離間して配置され、上記支持部材には、上記第1、第2歯車部と噛み合うアイドル歯車が上記第1、第2歯車部に対して接近、離間する方向へ移動可能に設けられ、上記アイドル歯車が付勢手段によって上記第1、第2歯車部に対して接近する方向へ付勢され、それによって上記アイドル歯車が上記第1、第2歯車部とバックラッシュが無い状態で噛み合わされていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【公開番号】特開2012−17859(P2012−17859A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223784(P2011−223784)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【分割の表示】特願2010−107975(P2010−107975)の分割
【原出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】