説明

ヒンジ装置

【課題】ヒンジ装置を分解可能に構成するにあたり、ツールを用いることなく軽い操作力で簡単且つ素早く分解できるようにする。
【解決手段】ヒンジピン6A、6Bの移動を規制する規制位置と、該規制位置からヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向に移動してヒンジピン6A、6Bの移動を許容する解除位置とに移動自在な規制部材9を設け、該規制部材9を解除位置にしたときに、ピン用スプリング16A、16Bにより押圧されたヒンジピン6A、6Bが移動することで、ヒンジ装置1が分解される構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材を揺動自在に連結するヒンジ装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒンジは、二つの部材を揺動自在に連結する場合に汎用的に用いられており、例えば油圧ショベル等の建設機械においては、運転室のドアやハッチ、エンジンフード等を車体に開閉揺動自在に取付ける場合に用いられている。ところで、ヒンジにより連結される二つの部材の組立てや分解を行なう場合等に、ヒンジ自体の分解が必要になることがあり、そこで、ヒンジピンを引抜くことでヒンジを分解できるようにした分解可能なヒンジが従来から知られている。しかしながら、この様な分解可能なヒンジを前記建設機械に採用しようとする場合には、ヒンジが意図しないときに不用意に分解してしまうことを確実に防止できるようにすると共に、例えば災害時等において緊急にドアやハッチを取外したい場合に、ツールを用いることなく素早くヒンジを分解できるようにすることが要求される。
そこで、ヒンジ本体に、ヒンジピンに形成された第一、第二環状溝に係合する保持部材を設けた技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。このものでは、ヒンジが二つの部材を連結している状態では、保持部材がヒンジピンの第二環状溝に係合していることにより、ヒンジピンの軸方向の移動を阻止してヒンジピンを適所に保持する一方、ヒンジピンの端部に形成された把持部を把持してヒンジピンを軸方向に引っ張ることによって、前記保持部材とヒンジピンの第二環状溝との係合が解除されてヒンジを分解できるように構成されている。また、ヒンジが分解された状態では、保持部材がヒンジピンの第一環状溝に係合することによって、ヒンジピンのヒンジ本体からの脱落が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−328947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ヒンジピンには、ヒンジの揺動に伴い軸方向に移動しようとする力が作用する。このため、前記特許文献1のものにおいて、保持部材がヒンジピンを適所に保持する保持力としては、ヒンジピンが軸方向に移動しようとする力よりも大きな力が必要となる。この場合、もしヒンジピンが軸方向に移動しようとする力の方が保持部材の保持力よりも大きくなると、意図せずにヒンジが分解してしまうことになるから、保持力を充分に大きく設定する必要がある。特に、建設機械においては、機体振動等によりヒンジピンが軸方向に移動しようとする力が予想以上に大きくなる場合があり、このため、特許文献1のヒンジ装置を建設機械に採用しようとした場合には、保持力を更に大きく設定する必要が生じる。一方、ヒンジを分解する場合には、保持部材の保持力に抗してヒンジピンを軸方向に引っ張ることになるから、前記充分に大きく設定された保持力よりも更に大きな操作力が必要になる。しかしながら、災害時等において建設機械のドアやハッチを緊急に取外したいような場合に、ヒンジ装置の分解に大きな操作力が必要であると手間取って、素早くヒンジ装置を分解することができないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、第一部材と第二部材とを揺動自在に連結するヒンジ装置であって、該ヒンジ装置は、第一、第二部材にそれぞれ取付けられる第一、第二プレートと、第一、第二プレートにそれぞれ形成されて軸方向に隣接する第一、第二スリーブと、これら第一、第二スリーブに挿通されるヒンジピンとを備えると共に、前記第一プレートに、第一スリーブの反第二スリーブ側端部に対向して該端部から突出する方向へのヒンジピンの移動を規制する規制位置と、該規制位置からヒンジピンの軸方向と直交する方向に移動して前記端部から突出する方向へのヒンジピンの移動を許容する解除位置とに移動自在な規制部材と、該規制部材を規制位置側に付勢する付勢弾機と、規制部材を規制位置から解除位置に移動させる操作部とを設ける一方、第二スリーブにヒンジピンを前記端部から突出させる方向に押圧する押圧部材を設けて、前記規制部材が規制位置の状態では、第一及び第二の両スリーブに挿通されるヒンジピンにより第一、第二プレートが揺動自在に連結される一方、規制部材が解除位置の状態では、押圧部材により押圧されたヒンジピンが第一スリーブの反第二スリーブ側端部から突出する方向に移動することで、ヒンジピンが第二スリーブから抜脱して第一、第二プレートの連結が解除されることを特徴とするヒンジ装置である。
請求項2の発明は、請求項1において、第一スリーブ、第二スリーブ、ヒンジピンをそれぞれ一対づつ設けると共に、前記一対の第一スリーブは軸方向に間隔を存する状態で設けられ、該一対の第一スリーブ間の間隙に規制位置の規制部材が位置するように配置される一方、一対の第二スリーブは、前記一対の第一スリーブの軸方向外方にそれぞれ隣接して設けられ、該隣接する第一、第二スリーブにヒンジピンがそれぞれ挿通される構成であることを特徴とするヒンジ装置である。
請求項3の発明は、請求項1または2において、ヒンジピンの第一スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限するヒンジピン移動制限手段を設けたことを特徴とするヒンジ装置である。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、押圧部材を、第二スリーブに内装されてヒンジピンに当接する押圧ピンと、第二スリーブの反第一スリーブ側端部を覆蓋する蓋体と前記押圧ピンとの間に介装されてヒンジピンを押圧する付勢弾機とを用いて構成すると共に、押圧ピンの第二スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限する押圧ピン移動制限手段を設けたことを特徴とするヒンジ装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、ヒンジ装置を分解する場合には、規制部材を規制位置から解除位置に移動させるだけで、ヒンジピンが自動的に第二スリーブから抜脱して第一プレートと第二プレートとの連結が解除されることになり、而して、ツール等を要することなく簡単にヒンジ装置を分解できることになる。しかも、規制部材は、ヒンジピンの軸方向と直交する方向に移動して規制位置から解除位置に変位する構成であるから、ヒンジ装置の揺動に伴いヒンジピンに軸方向に移動しようとする力が作用しても、該軸方向の力が規制位置の規制部材を解除位置側に移動させる力として作用することなく、而して、規制部材を規制位置側に付勢する付勢弾機の付勢力を、ヒンジピンに作用する軸方向の力とは無関係に設定できる。この結果、規制部材を規制位置から解除位置に移動させる操作力を軽くすることができ、而して、例えば災害時等に緊急にヒンジ装置を分解したいような場合であっても、軽い操作力で簡単且つ素早くヒンジ装置を分解することができる。
請求項2の発明とすることにより、第一スリーブ、第二スリーブ、ヒンジピンをそれぞれ一対づつ設けたヒンジ装置に、本発明を実施することができる。
請求項3の発明とすることにより、規制部材を解除位置にしたときに、ヒンジピンを確実に第二スリーブから抜脱させることができる。また、第一、第二プレートの連結が解除されてもヒンジピンが第一スリーブから脱落することなく、而して、ヒンジ装置の分解時にヒンジピンが紛失してしまう不具合を防止できる。
請求項4の発明とすることにより、規制部材を解除位置にしたときに、押圧ピンが第一スリーブ内に突入してしまうことを回避できる。また、第一、第二プレートの連結が解除されても押圧ピンが第二スリーブから脱落することなく、而して、ヒンジ装置の分解時に、押圧部材を構成するヒンジピン及び付勢弾機が紛失してしまう不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ヒンジ装置の斜視図である。
【図2】分解時のヒンジ装置の斜視図である。
【図3】ヒンジ装置の構成部品を示す斜視図である。
【図4】ヒンジ装置の正面図である。
【図5】(A)、(B)は図4のX−X拡大断面図、Y−Y拡大断面図である。
【図6】分解時のヒンジ装置の正面図である。
【図7】(A)、(B)、(C)は図6のX−X拡大断面図、Y−Y拡大断面図、Z−Z拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は第一部材と第二部材(第一部材及び第二部材は図示せず)とを揺動自在に連結するためのヒンジ装置であって、該ヒンジ装置1は、第一部材に取付けられる第一プレート2と、第二部材に取付けられる第二プレート3と、第一プレート2に形成される円筒形状の一対の第一スリーブ4A、4Bと、第二プレート3に形成される円筒形状の一対の第二スリーブ5A、5Bと、一対のヒンジピン6A、6Bとを備えている。尚、図中、2aは第一プレート2を第一部材に取付けるための取付孔、3aは第二プレート3を第二部材に取付けるための取付ピンである。
【0009】
前記第一プレート2に形成される一対の第一スリーブ4A、4Bは、軸方向に間隔Sを存する状態で設けられており、また、第二プレート3に形成される一対の第二スリーブ5A、5Bは、前記一対の第一スリーブ4A、4Bの軸方向外方にそれぞれ隣接するように設けられている。そして、これら隣接する第一、第二スリーブ4Aと5A、4Bと5Bに、ヒンジピン6A、6Bがそれぞれ挿通される構成になっている。
【0010】
さらに、7は第一プレート2に設けられる連結解除部であって、該連結解除部は、ガイド部材8、規制部材9、解除用操作レバー10、規制部材用スプリング11等を用いて構成されている。
【0011】
前記ガイド部材8は、規制部材9をヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向にスライド移動自在にガイドするためのものであって、規制部材9がスライド移動自在に係合される冂形状の規制部材ガイド部8aと、第一プレート2に固着される一対の取付け片8b、8bとが一体形成されている。そして、該ガイド部材8は、規制部材ガイド部8aのガイド方向がヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向を向き、且つ、規制部材ガイド部8aの先端側が第一スリーブ4A、4B間の間隙Sを臨むように配されるが、規制部材ガイド部8aの上面部は、規制部材ガイド部8aの先端から更に延設されて間隙Sの上方を覆う覆い部8cになっている。
【0012】
一方、規制部材9は、ピン規制部9aと、該ピン規制部9aよりも幅広のガイド係合部9bとが一体形成された二段の直方体形状のものであって、ガイド係合部9bが前記ガイド部材8の規制部材ガイド部8aに係合してスライド移動自在にガイドされることで、ピン規制部9aが規制部材ガイド部8aの先端側から突出して前記第一スリーブ4A、4B間の間隙Sに位置する規制位置と、該規制位置からヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向に移動して間隙Sから退出する解除位置とに移動自在に構成されている。そして、規制部材9が規制位置に位置している状態では、ピン規制部9aの両側面が第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部に対向していて、該端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動を規制するようになっている。一方、解除位置の規制部材9は、ピン規制部9aが間隙Sから退出することにより前記端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動を許容するようになっている。さらに、ガイド係合部9bには、規制部材9を規制位置から解除位置に移動させるときに把持する解除用操作レバー(本発明の操作部に相当する)10が止着されているが、該解除用操作レバー10は、前記規制部材ガイド部8aの上面部に開設された長孔8dを貫通して上方に突出している。尚、前記長孔8dは、解除位置に移動させるときの解除用操作レバー10の操作方向が一目で分かるように、解除位置側が矢印形状に形成されている。
【0013】
さらに、前記規制部材ガイド部8aには、規制部材9を規制位置側に付勢する規制部材用スプリング(本発明の規制部材を規制位置側に付勢する付勢弾機に相当する)11が内装されている。而して、規制部材9は、規制部材用スプリング11の付勢力により規制位置に保持される一方、前記解除用操作レバー10を把持して規制部材9を解除位置側に移動させることによって、規制部材用スプリング11の付勢力に抗して解除位置に位置させることができるようになっている。ここで、前記規制部材用スプリング11の付勢力は、ヒンジ装置1の取付け方向や振動等により規制部材9が不用意に解除姿勢側に移動することなく規制位置に保持される付勢力に設定されている。また、規制位置の規制部材9は、ピン規制部9aとガイド係合部9bとの間の段差面9cが第一スリーブ4A、4Bの筒外周部に当接することで、これ以上の先端側方向への移動が規制されるようになっている。
【0014】
ここで、規制部材9が規制位置に位置している状態では、前述したように、ヒンジピン6A、6Bは第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向への移動が規制されているが、この状態ではヒンジピン6A、6Bは、第一、第二の両スリーブ4Aと5A、4Bと5Bに挿通されて、第一プレート2と第二プレート3とを揺動自在に連結するように構成されている。一方、規制部材9が解除位置に位置している状態では、第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動が許容されるが、該ヒンジピン6A、6Bの移動は、後述するように一対のヒンジピン6A、6Bの突出先端同士が当接するまで許容されると共に、該一対のヒンジピン6Aの突出先端同士が当接したときに、ヒンジピン6A、6Bの反突出側端と第一スリーブ4A、4Bの第二スリーブ側端とが面一になるように設計されており(つまり、間隙Sの軸方向中心位置から第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端までの距離と、ヒンジピン6A、6Bの軸長とが等しくなるように設計されている)、これによって、ヒンジピン6A、6Bが第二スリーブ5A、5Bから抜脱するように構成されている。そして、該ヒンジピン6A、6Bが第二スリーブ5A、5Bから抜脱することによって、第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されるようになっている。
【0015】
さらに、前記第一スリーブ4A、4Bには、ヒンジピン6A、6Bの軸方向を向くガイド孔12A、12Bが開設される一方、ヒンジピン6A、6Bには、上記ガイド孔12A、12Bに移動自在に係合するガイドピン13A、13Bが突設されている。そして、該ガイドピン13A、13Bがガイド孔12A、12Bの両端部に当接することによって、ヒンジピン6A、6Bの第一スリーブ4A、4Bに対する軸方向の移動範囲が制限されるようになっている。而して、ヒンジピン6A、6Bは、ガイドピン13A、13Bがガイド孔12A、12Bの反第二スリーブ側端部12Aa、12Baに当接することによって、第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向への移動が制限されることになるが、該移動制限された位置で、一対のヒンジピン6A、6Bの突出先端同士が当接すると共に、ヒンジピン6A、6Bの反突出側端と第一スリーブ4A、4Bの第二スリーブ側端とが面一になってヒンジピン6A、6Bが第二スリーブ5A、5Bから抜脱するようになっている。これにより、一対のヒンジピン6A、6Bが片寄ることなく、第二スリーブ5A、5Bから抜脱できるようになっている。さらに、ガイドピン13A、13Bがガイド孔12A、12Bに係合していることによって、第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されても、ヒンジピン6A、6Bは第一スリーブ4A、4Bから脱落しないようになっている。尚、前記第一スリーブ4A、4Bに開設のガイド孔12A、12Bとヒンジピン6A、6Bに突設のガイドピン13A、13Bとは、本発明のヒンジピン移動制限手段を構成する。
【0016】
一方、第二スリーブ5A、5Bの反第一スリーブ側端部は、蓋体14A、14Bによってそれぞれ覆蓋されていると共に、第二スリーブ5A、5Bの筒内部には、ヒンジピン6A、6Bを第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向に押圧する押圧部材として、ヒンジピン6A、6Bに当接する押圧ピン15A、15Bと、該押圧ピン15A、15Bと蓋体14A、14Bとの間に介装されるピン用スプリング16A、16Bとが内装されている。尚、前記押圧ピン15A、15B及びピン用スプリング16A、16Bは本発明の押圧部材を構成する。また、ピン用スプリング16A、16Bは本発明のヒンジピンを押圧する付勢弾機に相当する。
【0017】
前記押圧ピン15A、15Bは、ヒンジピン6A、6Bと同径をしており、第一プレート2と第二プレート3とが揺動自在に連結されている状態では、ヒンジピン6A、6Bと共に揺動支軸を構成する。また、前記ピン用スプリング16A、16Bは、蓋体14A、14Bと押圧ピン15A、15Bとの間に介装されて、該押圧ピン15A、15Bを介してヒンジピン6A、6Bを第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向に押圧するように構成されている。
【0018】
さらに、第二スリーブ5A、5Bには、押圧ピン15A、15Bの軸方向を向くガイド孔17A、17Bが開設される一方、押圧ピン15A、15Bには、上記ガイド孔17A、17Bに移動自在に係合するガイドピン18A、18Bが突設されている。そして、該ガイドピン18A、18Bがガイド孔17A、17Bの両端部に当接することによって、押圧ピン15A、15Bの第二スリーブ5A、5Bに対する軸方向の移動範囲が制限されるようになっている。この場合、ガイドピン18A、18Bがガイド孔17A、17Bの第一スリーブ側端部17Aa、17Baに当接した状態、つまり、押圧ピン15A、15Bが最も第一スリーブ側に位置した状態で、押圧ピン15A、15Bの第一スリーブ側端と第二スリーブ5A、5Bの第一スリーブ側端とが面一になるように設計されており、これによって、押圧ピン15A、15Bが第一スリーブ4A、4B内に突入することがないように構成されている。さらに、ガイドピン18A、18Bがガイド孔17A、17Bに係合していることによって、第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されても、押圧ピン15A、15Bは第二スリーブ5A、5Bから脱落しないようになっている。そして、押圧ピン15A、15Bが第二スリーブ5A、5Bから脱落しないことにより、該押圧ピン15A、15Bと蓋体14A、14Bとの間に介装されるピン用スプリング16A、16Bも、第二スリーブ5A、5Bから脱落しないようになっている。尚、前記第二スリーブ5A、5Bに開設のガイド孔17A、17Bと押圧ピン15A、15Bに突設のガイドピン18A、18Bは、本発明の押圧ピン移動制限手段を構成する。
【0019】
この様に構成されたヒンジ装置1において、解除用操作レバー10が操作されていない状態では、規制部材9は規制部材用スプリング11の付勢力により規制位置に保持されていて、第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部に対向している。一方、ヒンジピン6A、6Bは、ピン用スプリング16A、16Bの付勢力により第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向に押圧されているが、前記規制位置の規制部材9に当接することで前記端部から突出する方向への移動が規制されている。この状態では、前述したように、ヒンジピン6A、6Bは第一、第二の両スリーブ4Aと5A、4Bと5Bに挿通されていて、第一プレート2と第二プレート3とを揺動自在に連結している。
【0020】
一方、第一プレート2と第二プレート3との連結を解除する場合、つまり、ヒンジ装置1を分解する場合には、解除用操作レバー10を用いて、規制部材9をヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向に移動させて解除位置にする。これにより規制部材9は、第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動を許容する。而してヒンジピン6A、6Bは、ピン用スプリング16A、16Bの付勢力により前記端部から突出する方向に移動し、これによりヒンジピン6A、6Bが第二スリーブ5A、5Bから抜脱して、第一プレート2と第二プレート3との連結が解除される構成になっている。
【0021】
叙述の如く構成された本形態において、ヒンジ装置1は、第一、第二部材にそれぞれ取付けられる第一、第二プレート2、3と、軸方向に間隔Sを存する状態で第一プレート2に形成される一対の第一スリーブ4A、4Bと、該第一スリーブ4A、4Bの軸方向外方に隣接する状態で第二プレート3に形成される一対の第二スリーブ5A、5Bと、これら第一、第二スリーブ4A、5A、4B、5Bに挿通される一対のヒンジピン6A、6Bとを備えているが、さらに、前記第一プレート2には、第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部に対向して該端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動を規制する規制位置と、該規制位置からヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向に移動して前記端部から突出する方向へのヒンジピン6A、6Bの移動を許容する解除位置とに移動自在な規制部材9と、該規制部材9を規制位置側に付勢する規制部材用スプリング11と、規制部材9を規制位置から解除位置に移動させるときに用いる解除用操作レバー10とが設けられている。一方、第二スリーブ5A、5Bの筒内部には、ヒンジピン6A、6Bを第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出させる方向に押圧する押圧部材として、ヒンジピン6A、6Bに当接する押圧ピン15A、15Bと、該押圧ピン15A、15Bを介してヒンジピン6A、6Bを押圧するピン用スプリング16A、16Bとが内装されている。そして、前記規制部材9が規制位置の状態では、第一及び第二の両スリーブ4Aと5A、4Bと5Bに挿通されるヒンジピン6A、6Bにより第一プレート2と第二プレート3とが揺動自在に連結される一方、規制部材9が解除位置の状態では、ピン用スプリング16A、16Bの付勢力により押圧されたヒンジピン6A、6Bが第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出する方向に移動することで、ヒンジピン6A、6Bが第二スリーブ5A、5Bから抜脱して第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されることになる。
【0022】
而して、第一プレート2と第二プレート3との連結を解除する場合には、解除用操作レバー10を用いて規制部材9を規制位置から解除位置に移動せしめるだけで、ヒンジピン6A、6Bがピン用スプリング16A、16Bの付勢力により自動的に移動して第二スリーブ5A、5Bから抜脱し、これによりヒンジ装置1が分解して第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されることになり、よって、ツール等を要することなく簡単にヒンジ装置1を分解できることになる。しかも、前記規制部材9は、ヒンジピン6A、6Bの軸方向と直交する方向に移動して規制位置から解除位置に変位する構成であるから、ヒンジ装置1の揺動に伴いヒンジピン6A、6Bに軸方向に移動しようとする力が作用しても、該軸方向の力が規制位置の規制部材9を解除位置側に移動させる力として作用することなく、このため、規制部材9を規制位置側に付勢する規制部材用スプリング11の付勢力としては、ヒンジピン6A、6Bに作用する軸方向の力とは無関係に、ヒンジ装置1の取付け方向や振動等により規制部材9が不用意に解除姿勢側に移動しないだけの付勢力を設定すれば良いことになる。この結果、規制部材9を規制位置から解除位置に移動させる解除用操作レバー10の操作力を軽くすることができて、例えばヒンジ装置1が建設機械のドアやハッチの取付用に用いられていて、災害時等に緊急にドアやハッチを取外したいような場合であっても、軽い操作力で簡単且つ素早くヒンジ装置1を分解できることになる。
【0023】
さらにこのものでは、ヒンジピン6A、6Bの第一スリーブ4A、4Bに対する軸方向の移動範囲を制限するヒンジピン移動制限手段として、第一スリーブ4A、4Bに、ヒンジピン6A、6Bの軸方向を向くガイド孔12A、12Bが開設される一方、ヒンジピン6A、6Bには、前記ガイド孔12A、12Bに移動自在に係合するガイドピン13A、13Bが突設されている。これにより、規制部材9を解除位置にしたときに、一対のヒンジピン6A、6Bを片寄ることなく確実に第二スリーブ5A、5Bから抜脱させることができる。
【0024】
また、このものでは、ヒンジピン6A、6Bを第一スリーブ4A、4Bの反第二スリーブ側端部から突出させる方向に押圧する押圧部材として、第二スリーブ5A、5Bに内装されてヒンジピン6A、6Bに当接する押圧ピン15A、15Bと、第二スリーブ5A、5Bの反第一スリーブ側端部を覆蓋する蓋体14A、14Bと押圧ピン15A、15Bとの間に介装されてヒンジピン6A、6Bを押圧するピン用スプリング16A、16Bとが用いられていると共に、前記押圧ピン15A、15Bの第二スリーブ5A、5Bに対する軸方向の移動範囲を制限する押圧ピン移動制限手段として、第二スリーブ5A、5Bには、押圧ピン15A、15Bの軸方向を向くガイド孔17A、17Bが開設される一方、押圧ピン15A、15Bには、前記ガイド孔17A、17Bに移動自在に係合するガイドピン18A、18Bが突設されている。これにより、規制部材9を解除位置にしたときに、ピン用スプリング16A、16Bの付勢力を受けて移動する押圧ピン15A、15Bが第一スリーブ4A、4B内まで突入してしまうことを回避できる。
【0025】
さらに、前記ガイド孔12A、12Bとガイドピン13A、13Bとの係合によりヒンジピン6A、6Bの第一スリーブ4A、4Bに対する軸方向の移動範囲が制限されており、また、ガイド孔17A、17Bとガイドピン18A、18Bとの係合により押圧ピン15A、15Bの第二スリーブ5A、5Bに対する軸方向の移動範囲が制限されているため、ヒンジ装置1の分解時に第一プレート2と第二プレート3との連結が解除されても、ヒンジピン6A、6B、押圧ピン15A、15B、ピン用スプリング16A、16Bは第一、第二スリーブ4A、4B、5A、5Bから脱落することなく、第一、第二スリーブ4A、4B、5A、5Bに組み付けられたままの状態になっている。而して、ヒンジ装置1の分解時に、ヒンジピン6A、6B、押圧ピン15A、15B、ピン用スプリング16A、16Bが第一、第二スリーブ4A、4B、5A、5Bから脱落して紛失してしまうような不具合を確実に防止できると共に、ヒンジ装置1の再組付けを容易に行うことができる。
【0026】
そのうえ、規制位置の規制部材9がヒンジ装置1の取付け方向や振動等により不用意に解除姿勢側に移動することがないように、規制部材9を規制位置側に付勢する規制部材用スプリング11が設けられていると共に、前述したように、ヒンジピン6A、6B、押圧ピン15A、15B、ピン用スプリング16A、16Bが第一、第二スリーブ4A、4B、5A、5Bから脱落することのない構成であるから、ヒンジ装置1の取付け方向がどの方向であっても支障なく用いることができ、而して、汎用性の高いヒンジ装置1とすることができる。
【0027】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、ヒンジピンの第一スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限するヒンジピン移動制限手段として、ヒンジピンに軸方向を向くガイド溝を形成する一方、第一スリーブに、前記ガイド溝に移動自在に係合するガイドピンを突設する構成にすることもできる。同様に、押圧ピンの第二スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限する押圧ピン移動制限手段として、押圧ピンに軸方向を向くガイド溝を形成する一方、第二スリーブに、前記ガイド溝に移動自在に係合するガイドピンを突設する構成にすることもできる。
【0028】
また、上記実施の形態のヒンジ装置は、第一スリーブ、第二スリーブ、ヒンジピンが一対づつ設けられているが、これに限定されることなく、第一スリーブ、第二スリーブ、ヒンジピンが一つづつ設けられるヒンジ装置であっても、本発明を実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、二つの部材を揺動自在に連結する各種ヒンジ装置に利用することができるが、特に、緊急にヒンジ装置を分解する必要がある場合に有用である。
【符号の説明】
【0030】
1 ヒンジ装置
2 第一プレート
3 第二プレート
4A、4B 第一スリーブ
5A、5B 第二スリーブ
6A、6B ヒンジピン
9 規制部材
9a ピン規制部
10 解除用操作レバー
11 規制部材用スプリング
12A、12B 第一スリーブに開設のガイド孔
13A、13B ヒンジピンに突設のガイドピン
15A、15B 押圧ピン
16A、16B ピン用スプリング
17A、17B 第二スリーブに開設のガイド孔
18A、18B 押圧ピンに突設のガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを揺動自在に連結するヒンジ装置であって、該ヒンジ装置は、第一、第二部材にそれぞれ取付けられる第一、第二プレートと、第一、第二プレートにそれぞれ形成されて軸方向に隣接する第一、第二スリーブと、これら第一、第二スリーブに挿通されるヒンジピンとを備えると共に、前記第一プレートに、第一スリーブの反第二スリーブ側端部に対向して該端部から突出する方向へのヒンジピンの移動を規制する規制位置と、該規制位置からヒンジピンの軸方向と直交する方向に移動して前記端部から突出する方向へのヒンジピンの移動を許容する解除位置とに移動自在な規制部材と、該規制部材を規制位置側に付勢する付勢弾機と、規制部材を規制位置から解除位置に移動させる操作部とを設ける一方、第二スリーブにヒンジピンを前記端部から突出させる方向に押圧する押圧部材を設けて、前記規制部材が規制位置の状態では、第一及び第二の両スリーブに挿通されるヒンジピンにより第一、第二プレートが揺動自在に連結される一方、規制部材が解除位置の状態では、押圧部材により押圧されたヒンジピンが第一スリーブの反第二スリーブ側端部から突出する方向に移動することで、ヒンジピンが第二スリーブから抜脱して第一、第二プレートの連結が解除されることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1において、第一スリーブ、第二スリーブ、ヒンジピンをそれぞれ一対づつ設けると共に、前記一対の第一スリーブは軸方向に間隔を存する状態で設けられ、該一対の第一スリーブ間の間隙に規制位置の規制部材が位置するように配置される一方、一対の第二スリーブは、前記一対の第一スリーブの軸方向外方にそれぞれ隣接して設けられ、該隣接する第一、第二スリーブにヒンジピンがそれぞれ挿通される構成であることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、ヒンジピンの第一スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限するヒンジピン移動制限手段を設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、押圧部材を、第二スリーブに内装されてヒンジピンに当接する押圧ピンと、第二スリーブの反第一スリーブ側端部を覆蓋する蓋体と前記押圧ピンとの間に介装されてヒンジピンを押圧する付勢弾機とを用いて構成すると共に、押圧ピンの第二スリーブに対する軸方向の移動範囲を制限する押圧ピン移動制限手段を設けたことを特徴とするヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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