説明

ヒンジ装置

【課題】トルク可変型のヒンジ装置において、その美感を向上させる。
【解決手段】筒部21の周方向一端部と他端部とに間隙24を間にして互いに平行に延びる第1及び第2板部22,23が形成されたヒンジ装置において、第2板部23の先端部に、間隙24を越えて第1板部23側へ突出する第2突出部23bを形成する。この第2突出部23bにより、筒部21の径方向外側に位置する間隙24の先端開放部を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の大きさの回転トルクが得られるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヒンジ装置は、下記特許文献1,2に記載されているように、ヒンジ部材及び回転軸を備えている。ヒンジ部材は、筒部を有している。筒部は、全長にわたって切欠き部が形成されることにより、断面C字状に形成されている。切欠き部に隣接する筒部の周方向の一端部と他端部とには、筒部の径方向外側に向かって互いに平行に突出する第1及び第2板部がそれぞれ形成されている。第1板部と第2板部との間には、第1及び第2板部が互いに離間移動することを阻止する阻止機構が設けられている。
【0003】
筒部には、回転軸の一端部が圧入状態で回転可能に挿入されている。したがって、回転軸の回転時には、筒部の内周面と回転軸の外周面との間に摩擦抵抗が発生する。この摩擦抵抗により、回転軸の回転速度が低速に抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−294572号公報
【特許文献2】実用新案登録第3152248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のヒンジ装置においては、回転軸を筒部に容易に圧入することができるようにするために、筒部が断面C字状に形成されており、それに対応して第1及び第2板部間に間隙が形成されている。この間隙は、第1及び第2板部の突出方向の前方に向かって、つまり筒部の径方向外側に向かって開放されており、外部から目視可能である。このため、ヒンジ装置の美感が損なわれるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、断面C字状をなす筒部、並びに上記筒部の周方向における一端部及び他端部から上記筒部の径方向外側へそれぞれ突出し、間隙を間にして互いに対向する第1及び第2板部を有するヒンジ部材と、一端部が上記筒部に回転可能に挿入された回転軸と、上記第1板部と上記第2板部との間に設けられ、上記第1及び第2板部が互いに離間移動することを阻止する阻止機構とを備え、上記筒部の内周面と上記回転軸の外周面との間に摩擦抵抗が発生するよう、上記筒部の内周面が上記回転軸の外周面に押圧接触させられ、上記阻止機構が上記第1及び第2板部の離間移動を阻止することにより、上記筒部の拡径を阻止して上記筒部の内周面が上記回転軸の外周面に押圧接触した状態を維持するヒンジ装置において、上記第2板部の突出方向における先端部には、上記第1板部側に突出して、上記第1及び第2板部の突出方向における上記間隙の先端開放部を覆う遮蔽部が形成されていることを特徴としている。
この場合、上記第1板部の突出方向における先端部には、上記遮蔽部と同一方向に突出して上記遮蔽部と対向する突出部が形成されていることが望ましい。
上記突出部の突出方向の先端部が上記遮蔽部の突出方向の先端部より突出方向において前方に配置され、上記突出部の先端部及び上記突出部の突出方向を向く上記筒部の一側部に取付部がそれぞれ形成されていることが望ましい。
上記筒部が弾性的に拡縮径可能であり、上記阻止機構がねじ機構であり、上記ねじ機構は、上記第1及び第2板部を接近離間移動させて上記筒部を弾性的に拡縮径させた後、上記第1及び第2板部の離間移動を阻止して上記筒部の内径を一定に維持することが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、第1板部と第2板部との間の間隙を遮蔽部が覆うので、間隙は筒部の径方向外側から目視されることがない。したがって、ヒンジ装置の美感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明に係るヒンジ装置が用いられた収容ボックスをその扉が閉位置に位置した状態で示す斜視図である。
【図2】図2は、収容ボックスをその扉が開位置に位置した状態で示す斜視図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す収容ボックスに用いられているヒンジ装置であって、この発明の一実施の形態を示す平面図である。
【図4】図4は、同実施の形態の側面図である。
【図5】図5は、同実施の形態の正面図である。
【図6】図6は、同実施の形態の斜視図である。
【図7】図7は、図3のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図8】図8は、図3のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図9】図9は、図3のZ−Z線に沿う拡大断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態の分解斜視図である。
【図11】図11は、同実施の形態において用いられている摺動部材を示す斜視図である。
【図12】図12は、同摺動部材の正面図である。
【図13】図13は、同摺動部材の平面図である。
【図14】図14は、同摺動部材の側面図である。
【図15】図15は、同実施の形態において用いられているスリーブを示す斜視図である。
【図16】図16は、同スリーブを図15と異なる方向から見た斜視図である。
【図17】図17は、同スリーブの正面図である。
【図18】図18は、同スリーブの平面図である。
【図19】図19は、同スリーブの側面図である。
【図20】図20は、図19のX−X線に沿う断面図である。
【図21】図21は、同実施の形態において用いられている第1ヒンジ部材の製造方法を説明するための斜視図である。
【図22】図22は、同製造方法を説明するための側面図である。
【図23】図23は、この発明の第2実施の形態を示す図8と同様の断面図である。
【図24】図24は、この発明の第3実施の形態を示す図8と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明の第1実施の形態たるヒンジ装置1が用いられた収容ボックスAを示す。収容ボックスAは、上部が開口した筐体Bと、この筐体Bの開口部を開閉する扉Cとを有している。扉Cの一側部(図1及び図2において左側部)は、筐体Bの開口部に隣接する一側部にヒンジ装置1,1を介して上下方向へ回転可能に取り付けられている。扉Cは、筐体Bの開口部を閉じた図1に示す閉位置と、この閉位置から図2に示す半開位置を経てほぼ180°離間した開位置との間を回転可能である。扉Cは、開方向へはほとんど抵抗なく回動することができるが、閉方向へはヒンジ装置1において発生する摩擦抵抗に抗して回転する。
【0010】
ヒンジ装置1は、図1〜図6及び図10に示すように、第1ヒンジ部材(ヒンジ部材)2、第2ヒンジ部材3及び回転軸4を有している。第1ヒンジ部材2は、扉Cに取り付けられている。第2ヒンジ部材3は、筐体Bに取り付けられている。回転軸4は、その軸線を水平方向に向けて配置されており、第1及び第2ヒンジ部材2,3を回転可能に連結している。この結果、扉Cが筐体Bに回転軸4の水平な軸線(以下、回転軸線という。)を中心として上下方向へ回転可能に連結されている。
【0011】
第1ヒンジ部材2は、筒部21を有している。この筒部21は、その軸線を回転軸線と一致させて配置されており、その内部が軸受孔21aになっている。図8及び図10に示すように、筒部21の周方向の一側部には、その全長にわたって延びる切欠き部21bが形成されている。この切欠き部21bが形成されることにより、筒部21が断面C字状をなし、弾性的に拡縮径可能になっている。
【0012】
切欠き部21bに臨む筒部21の周方向の一端部には、筒部21の径方向外側に向かって突出する第1板部22が形成されている。切欠き部21bに臨む筒部21の周方向の他端部には、筒部21の径方向外側に向かって突出する第2板部23が形成されている。第2板部23は、切欠き部21bの幅と同一の間隔をもって第1板部22と平行に配置されている。したがって、第1板部22と第2板部23との間には、切欠き部21bから筒部21の径方向外側に向かって続く間隙24が形成されている。
【0013】
第2板部23には、調節ボルト25が挿通されている。この調節ボルト25は、第1板部22を貫通しており、第1板部22に回転不能に設けられたナット26に螺合されている。したがって、調節ボルト25を正逆方向へ回転させると、第2板部23が第1板部22に対して接近、離間移動する。その結果、筒部21が弾性的に拡縮径する。これから明らかなように、調節ボルト25及びナット26により、第1及び第2板部22,23を接近離間移動させて筒部21を拡縮径させるねじ機構(阻止機構)が構成されている。ねじ機構は、他の構造のものを用いてもよい。例えば、調節ボルト25を第2板部22に螺合させてもよい。
【0014】
図8〜図10に示すように、筒部21の外周面には、第1取付部21cが形成されている。この第1取付部21cは、第1板部22に隣接する箇所に配置されており、第2板部23から第1板部23に向かう方向へ僅かに突出している。第1取付部21cの突出方向の先端部には、第1板部と平行な第1取付面21dが形成されている。
【0015】
第1板部22の先端部、つまり筒部21からその径方向へ離れた第1板部22の先端部には、第1突出部(突出部)22aが形成されている。この第1突出部22aは、第1板部22と直交する方向へ、しかも第2板部23から離間する方向へ突出している。第1板部22の先端部には、第2取付面22bが形成されている。第2取付面22bは、第1取付面21cと同一平面上に配置されている。
【0016】
第1及び第2取付面21d,22bは、扉Cに接触させられている。そして、第1板部22を貫通して扉Cにねじ込まれた木ねじ(図示せず)を締め付けることにより、第1及び第2取付面21d,22bが扉Cに押し付けられ、それによって第1ヒンジ部材2が扉Cに固定されている。なお、木ねじは、第2板部23に形成された貫通孔23aを通って第1板部22に挿通されている。
【0017】
第2板部23に先端部、つまり筒部21からその径方向へ離れた第2板部23の先端部には、第2突出部(遮蔽部)23bが形成されている。この第2突出部23bは、第2板部23から第1板部22に向かう方向へ突出させられている。第2突出部23bの突出方向の先端部は、間隙24を通過して第1突出部22aと離間対向している。この結果、筒部21の径方向における間隙24の先端開放部が第2突出部23bによって覆われ、筒部21の径方向における第1及び第2板部22,23の前方側から間隙24を目視することができなくなっている。
【0018】
なお、第1突出部22aと第2突出部23bとの間には、隙間24に続く隙間27が形成されている。また、第2突出部23bの先端は、第1突出部22aの先端、つまり第2取付面22bより第1及び第2突出部22a,23bの突出方向において若干後方に位置している。したがって、第2突出部23bの先端部が扉Cに突き当たることはない。
【0019】
上記構成の第1ヒンジ部材2は、連続押し出し成形法を採用することによって容易に製造することができる。すなわち、押し出し成形法により図21及び図22に示す半製品Hを成形する。この半製品Hは、第1ヒンジ部材2の第1突出部22aと第2突出部23bとの互いに対向する箇所どうしが連結部(図21、22においてダブルハッチングを施した部分)Haによって連結されている点を除き、第1ヒンジ部材2と同一の断面形状を有している。押し出し成形された半製品は、所定の長さに切断される。その後、連結部Haを切除する。これによって、第1ヒンジ部材2を製造することができる。このような製造方法によれば、半製品Hが連続して成形されるので、製造効率を向上させることができる。しかも、第1突出部22aと第2突出部23bとなるべき部分どうしが連結部Haによって連結されることにより、半製品Hが周方向に不連続部の無い連続した環状体になっているので、半製品Hを精度よく製造することができ、ひいては第2ヒンジ部材2を精度よく製造することができる。このような製造方法は、次に述べる第2ヒンジ部材3を製造する場合にも採用することができる。
【0020】
図3から明らかなように、第2ヒンジ部材3は、平面視において第1ヒンジ部材2と点対称に形成されている。したがって、第2ヒンジ部材3は、第1ヒンジ部材2の筒部21、第1及び第2板部22,23に対応する筒部31、第1及び第2板部32,33を有している。筒部31の内部が軸受孔21aに対応する軸受孔31aになっている。また、筒部31には、切欠き部21bに対応する切欠き部31bが形成され、第1及び第2板部32,33間には、切欠き部31bに続く間隙34が形成されている。第1及び第2板部32,33は、調節ボルト35及びナット36によって、接近、離間移動させられ、それによって筒部31が拡縮径される。第2板部33には、調節ボルト35が挿通される貫通孔33aが形成されている。第1及び第2板部32,33の先端部には、第1及び第2突出部22a,23bに対応する第1及び第2突出部32a,33bが形成されている。第1及び第2突出部32a,33b間には、隙間37が形成されている。
【0021】
また、第2ヒンジ部材3の筒部31の外周面には、第1取付面31dを有する第1取付部31cが形成され、第1突出部32aの先端部には、第2取付面32bが形成されている。この第1及び第2取付面31d,32bは、第2板部33の貫通孔33aを貫通して第1板部32に挿通された木ねじ(図示せず)によって筐体Bに押し付けられており、それによって第2ヒンジ部材3が筐体Bに固定されている。第2ヒンジ部材3は、その筒部31の軸線を第1ヒンジ部材2の筒部21の軸線と一致させて、しかも筒部31を筒部21に対して所定の距離だけ離間させて筐体Bに固定されている。なお、第2ヒンジ部材3は、必ずしも第1ヒンジ部材2と点対称に形成する必要がなく、第1ヒンジ部材2と同一形状に形成してもよく、あるいは異なる形状に形成してもよい。また、第1ヒンジ部材2を筐体Bに取り付け、第2ヒンジ部材3を扉Cに取り付けてもよい。
【0022】
回転軸4は、第1ヒンジ部材2側の大径部41と、第2ヒンジ部材3側の小径部42とを有している。大径部41と小径部42とは、互いの軸線を一致させて形成されている。この結果、大径部41と小径部42との間には、環状の段差面43が形成されている。
【0023】
図7に示すように、大径部41の外周には、一対のスリーブ5,5が装着されている。スリーブ5は、図15〜図20に示すように、周方向の長さが半円より若干短いが、ほぼ半円筒として形成されている。スリーブ5の外周面の曲率半径は、軸受孔21a,31aの半径とほぼ同一に設定されている。すなわち、軸受孔21a,31aの通常の使用範囲でのそれらの半径の最大値と最小値との間の中間値と等しい値に設定されている。スリーブ5の内周面の曲率半径は、大径部41の半径と同一に設定されている。スリーブ5は、その内周面が大径部41の外周面に面接触した状態で大径部41に装着されている。
【0024】
大径部41及び一対のスリーブ5,5の小径部42側に位置する各端部は、第2ヒンジ部材3の軸受孔31aに挿脱可能に挿入されている。大径部41及び一対のスリーブ5,5の残りの各端部は、第1ヒンジ部材2の軸受孔21aに挿脱可能に挿入されている。具体的には、大径部41及びスリーブ5の全長のほぼ1/3〜1/4が軸受孔31aに挿入され、残りのほぼ2/3〜3/4が軸受孔31aに挿入されている。大径部41及びスリーブ5の軸受孔21a,31aへの各挿入長さは、適宜に変更可能である。軸受孔21a,31aへの挿入長さを互いに同一にしてもよく、軸受孔31aへの挿入長さを軸受孔21aへの挿入長さより長くしてもよい。いずれにしても、大径部41の一端部及び他端部が軸受孔21a,31aにスリーブ5,5を介して回転可能に挿入されることにより、第1及び第2ヒンジ部材2,3が回転軸線を中心として回転可能に連結されている。なお、スリーブ5の外周面は、軸受孔21a,31aの内周面にその長手方向へ摺動可能に面接触している。
【0025】
スリーブ5には、その一端面(図7において左端面)からスリーブ5の長手方向に突出する突出片51が形成されている。この突出片51は、その先端部が軸受孔21aの径方向へ変位するように弾性変形可能である。しかも、突出片51は、大径部41からその長手方向へ離間して配置されている。したがって、突出片51は、スリーブ5が大径部41に装着された状態でも、突出片51の先端部が軸受孔21aの径方向へ変位するように弾性変形可能である。
【0026】
突出片51の先端部は、軸受孔21aから外部に突出しており、その外部に突出した突出片51の先端部の外周面には、軸受孔21aの径方向外側に向かって突出する第1外側突出部(第1係合部)51aが形成されている。この第1外側突出部51aが筒部21の一端面(図7において左端面;第1係合面)21eに突き当たることにより、スリーブ5が第1ヒンジ部材2に対し第1ヒンジ部材2から第2ヒンジ部材3に向かう方向(大径部41から小径部42に向かう方向;第1方向)へ移動することが阻止されている。
【0027】
スリーブ5の外周面には、周方向に延びる第2外側突出部(第2係合部)52が形成されている。この第2外側突出部52の筒部21側の一端面が筒部21の他端面(第2係合面)21fに突き当たることにより、スリーブ5が第1ヒンジ部材2に対し第2ヒンジ部材3から第1ヒンジ部材2に向かう方向(小径部42から大径部41に向かう方向;第2方向)へ移動することが阻止されている。なお、第2外側突出部52の他端面は、第2ヒンジ部材3の筒部31aの第1ヒンジ部材2側の端面に突き当たっている。これにより、第2ヒンジ部材3の第1ヒンジ部材2に対する位置、つまり筒部21,31の軸線方向における第2ヒンジ部材3の第1ヒンジ部材2に対する位置が定められている。
【0028】
第1外側突出部51aと第2外側突出部52との間の距離は、筒部21の長さとほぼ同一に設定されている。したがって、第1及び第2外側突出部51a,52は、筒部21の一端面21e及び他端面21fにそれぞれ同時に接触しており、それによってスリーブ5が第1ヒンジ部材2に対して筒部21の軸線方向における位置決めがなされている。以下、このときのスリーブ5の位置を取付位置という。なお、スリーブ5が回転軸4にその軸線方向へ移動不能に設けられているので、スリーブ5が第1ヒンジ部材2に対して位置決めされると、回転軸4の第1ヒンジ部材2に対して位置決めされる。
【0029】
スリーブ5の内周面の長手方向の一端部(図7において左端部)には、第1内側突出部(第3係合部)53が形成されている。この第1内側突出部53が大径部41の一端面(第3係合面)41aに突き当たることにより、スリーブ5が回転軸4に対し大径部41から小径部42に向かう方向(第1方向)へ移動することが阻止されている。
【0030】
スリーブ5の内周面の長手方向の他端部には、第2内側突出部(第4係合部)54が形成されている。この第2内側突出部54が段差面(第4係合面)43に突き当たることにより、スリーブ5が回転軸4に対し小径部42から大径部41に向かう方向(第2方向)へ移動することが阻止されている。
【0031】
第1内側突出部53と第2内側突出部54との間の距離は、大径部41の長さとほぼ同一に設定されている。したがって、第1及び第2内側突出部53,54が大径部41の一端面41a及び段差面43にそれぞれ突き当たることにより、スリーブ5が回転軸4に対しその長手方向へ移動不能に位置決めされている。
【0032】
スリーブ5が回転軸4に対して移動不能に位置決めされているので、回転軸4は、その外周面にスリーブ5,5が装着された状態で軸受孔21aに挿入可能である。回転軸4は、端面42aを先にして軸受孔21aにその第2ヒンジ部材3側の開口部から挿入される。回転軸4を軸受孔21aに挿入するときには、最初にスリーブ5の突出片51が軸受孔21aに挿入される。挿入当初、突出片51の第1外側突出部51aが筒部21の端面に突き当たるが、突出片51が弾性変形して第1外側突出部51aが軸受孔21aの径方向内側へ変位することにより、突出片51が軸受孔21a内に挿入可能になる。そして、第1突出片51a,51aが軸受孔21aの内周面に摺接しながら大径部41及びスリーブ5,5が軸受孔21aに挿入される。スリーブ5,5が取付位置まで挿入されると、第1外側突出部51aが軸受孔21aから抜け出して筒部21の一端面21eに接触する。これと同時に、第2外側突出部52が筒部21の他端面21fに接触する。これにより、回転軸4及びスリーブ5,5が取付位置に位置決めされた状態で軸受孔21aに挿入固定される。
【0033】
なお、回転軸4及びスリーブ5,5の残りの端部(図7において右側の端部)は、第2ヒンジ部材3を第1ヒンジ部材2側へ相対移動させることによって軸受孔31aに挿入される。
【0034】
スリーブ5の周方向の一端部には、突条(突出部)55が形成されている。突条55は、スリーブ5の全長にわたって延びており、軸受孔21a,31aの径方向外側に向かって突出させられている。
【0035】
図8に示すように、二つのスリーブ5,5の突条55,55は、互いに対向しており、両者の長手方向の一端部が筒部21の切欠き部21bに挿入され、長手方向の他端部が筒部31の切欠き部31bに挿入されている。しかも、二つのスリーブ5,5のうちの一方のスリーブ5の突条55は、切欠き部21b,31bの一方の側面に突き当てられている。これにより、当該一方のスリーブ5の筒部21,31に対する一方向への回転が阻止されている。二つのスリーブ5,5のうちの他方のスリーブ5の突条55は、切欠き部21b,31bの他方の側面に突き当てられている。これにより、当該他方のスリーブ5の筒部21,31に対する他方向への回転が阻止されている。
【0036】
図7及び図8に示すように、スリーブ5の内周面のうちの第2外側突出部52と第1内側突出部との間に位置する部分には、凹部56が形成されている。この凹部56は、スリーブ5の内周面に沿ってその周方向の一端部から他端部まで延びている。凹部56の底面は、曲率中心がスリーブ5の内周面と同一で、かつスリーブ5の内周面より大きい曲率半径を有する円弧面によって構成されている。
【0037】
凹部56には、摺動部材6が収容されている。摺動部材6は、金属製の板材からなるものであり、凹部56とほぼ同一の長さを有している。したがって、摺動部材6の長手方向(軸受孔21aの軸線方向)の一端部と他端部とが、凹部56の長手方向の一端面と他端面とにそれぞれ突き当たっており、それによって摺動部材6がスリーブ5に対してその長手方向へ位置決めされている。
【0038】
摺動部材6は、周方向の長さがスリーブとほぼ同一である。つまり、周方向の長さが半円より若干短いが、ほぼ半円状をなす半円筒として形成されている。摺動部材6の内周面は、大径部41の外周面と同一の曲率中心及び曲率半径を有する円弧面によって構成されている。したがって、摺動部材6の内周面は、その全体が大径部41の外周面に接触させられている。摺動部材6の外周面は、凹部56の底面と同一の曲率中心及び曲率半径を有する円弧面によって構成されている。したがって、摺動部材6外周面は、その全体が凹部56の底面に接触させられている。
【0039】
図11〜図14に示すように、摺動部材6には、その内周面から外周面まで貫通する保持孔61が複数形成されている。この保持孔61は、グリース等の潤滑油が溜められている。そして、溜められた潤滑油が大径部41の外周面と摺動部材6の内周面との間に少しずつ供給されている。これにより、回転軸4が回転したときに、大径部41と摺動部材6との間に焼き付きが発生したり、摺動部材6が早期に摩耗したりすることが防止されている。
【0040】
摺動部材6の周方向の一端部には、突条62が形成されている。この突条62は、摺動部材6の全長にわたって延びており、軸受孔21a,31aの径方向外側に向かって突出させられている。そして、図8に示すように、切欠き部21b,31b内に挿入されている。
【0041】
二つの摺動部材6,6のうちの一方の摺動部材6の突条62は、切欠き部21b,31bの一方の側面に上記一方のスリーブ5の突条55を介して突き当てられている。他方の摺動部材6の突条62は、切欠き部21b,31bの他方の側面に上記他方のスリーブ5の突条55を介して突き当てられている。しかも、二つの突条62,62の間隔は、筒部21,31の拡縮径を許容する範囲において可及的に小さくなっている。したがって、スリーブ5,5及び摺動部材部材6,6は、軸受孔21a,31aの周方向へ回転することはほとんどない。
【0042】
図7に示すように、回転軸4の小径部42は、第2ヒンジ部材3の軸受孔31aに挿入されている。軸受孔31aには、筒状をなす一方向クラッチ7が挿入固定されている。この一方向クラッチ7に小径部42が挿入されている。一方向クラッチ7は、回転軸4が第1回転方向へ回転するときには、小径部42の自由な回転を許容する。しかし、回転軸4が第1回転方向と逆方向である第2回転方向へ回転するときには、小径部42の回転を阻止する。ここで、第1回転方向が扉Cの開回転方向と一致させられ、第2回転方向が扉Cの閉回転方向と一致させられている。したがって、扉Cが開回転するときには、回転軸4が第1ヒンジ部材2と一体に第1回転方向へ回転する。このとき、回転軸4が第1方向へは自由に回転することができるから、扉Cは比較的小さな力で開回転させることができる。扉Cが閉回転するときには、回転軸4が一方向クラッチ7によって停止させられるので、回転軸4は第1ヒンジ部材2に対して相対回転する。つまり、摺動部材6に対して回転する。したがって、扉Cは大径部41と摺動部材6との間に発生する摩擦抵抗に抗して閉回転させられる。なお、一方向クラッチ7は、周知のものであるので、その構成の詳細については説明を省略する。
【0043】
大径部41と摺動部材6との間に発生する摩擦抵抗は、第1ヒンジ部材2の筒部21を調節ボルト25及びナット26によって拡縮径させることによって適宜に調節することができる。すなわち、調節ボルト25を締め付けると、筒部21が縮径し、摺動部材6が大径部41に大きな力で押し付けられる。したがって、それらの間に発生する摩擦抵抗が増大する。逆に、調節ボルト25を緩めると、筒部21がそれ自体の弾性によって拡径し、摺動部材6を大径部41に押し付ける力が小さくなる。したがって、それらの間に発生する摩擦抵抗も小さくなる。
【0044】
なお、第2ヒンジ部材3の筒部31も調節ボルト35及びナット36によって拡縮径可能であるが、筒部31は、その内周面が一方向クラッチ7の外周面に押し付けられることにより、一定の内外径になっている。しかも、一方向クラッチ7の外周面の半径がスリーブ5の外周面の曲率半径とほぼ同一(僅かに大径)に設定されているから、クラッチ7が固定されるように筒部31が縮径された状態でも、スリーブ5の外周面と軸受孔31aの内周面との間、及び軸受孔31a内に位置するスリーブ5の内周面と大径部41との間に大きな摩擦抵抗が発生することはない。
【0045】
また、このヒンジ装置1では、スリーブ5が樹脂によって構成されているので、仮にスリーブ5を大径部41に直接接触させると、回転軸4の回転に伴ってスリーブが早期に摩耗するおそれがある。このような不都合を防止するために、金属製の摺動部材6が用いられているのである。しかし、スリーブ5を金属で構成すれば、スリーブ5の早期摩耗を防止することができる。よって、スリーブ5を金属で構成する場合には、摺動部材6が不要であり、スリーブ5を大径部41に直接接触させてもよい。その場合には、スリーブ5に潤滑油を保持するための保持孔が形成される。
【0046】
筒部21,31の互いに離間した各端部には、樹脂からなる化粧蓋8,8がそれぞれ着脱可能に設けられている。この化粧蓋8,8により、筒部21,31の端面、軸受孔21a,31aの開口部及び切欠き部21b,31bの回転軸線方向の端部が目視されないように遮蔽されている。
【0047】
また、第1ヒンジ部材2には、化粧部材9が取り付けられている。化粧部材9は、樹脂からなるものであり、本体部91及び遮蔽部92,93を有している。本体部91は、第1ヒンジ部材2の第1取付部21cと第1突出部22aとの間に形成された凹部に着脱可能に取り付けられている。一方の遮蔽部92は、本体部91の一端部に本体部91と一体に形成されている。この一方の遮蔽部92は、第1及び第2板部22,23、第1及び第2突出部22a,23bの各一端面、並びに間隙24,27の一端開放部を外部から目視されないように遮蔽している。他方の遮蔽部92は、本体部91の他端部に本体部91と一体に形成されている。この他方の遮蔽部92は、第1及び第2板部22,23、第1及び第2突出部22a,23bの各他端面、並びに間隙24,27の他端開放部を外部から目視されないように遮蔽している。なお、化粧部材9は、第2ヒンジ部材3に同様にして着脱可能に取り付けられている。
【0048】
上記構成を有するヒンジ装置1によれば、第1板部22と第2板部23との間の間隙24を第2突出部23bが覆うので、間隙24が筒部21の径方向外側から目視されることがない。したがって、ヒンジ装置1の美感を向上させることができる。
【0049】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することとし、上記実施の形態と同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図23は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態においては、第2突出部23bの突出量が、上記実施の形態の第2突出部23bの突出量より小さくなっており、間隙24を第1及び第2板部22,23の突出方向前方から見たとき、間隙24を見えないように遮蔽することができる範囲において最小に設定されている。つまり、第2突出部23bの突出量は、間隙24の距離と同一か僅かに大きい値に設定されている。したがって、第2突出部23bが第1突出部22aと対向することがなく、間隙27が形成されていない。
【0051】
図24は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態においては、調節ボルト25及びナット26に代えて固定軸(阻止機構)28が用いられている。固定軸28は、頭部28aと軸部28bとを有している。頭部28aは、第2板部23の外面(第1板部22と逆側を向く面)に突き当てられている。一方、軸部28bは、第2及び第1板部23,24を順次貫通している。第1板部23から突出した軸部28bの先端部(図24において左端部)には、当該先端部を加締めることによって加締め部28cが形成されている。この加締め部28cと頭部28aとにより、第1及び第2板部22,23が互いに離間する方向へ移動することが阻止されている。これによって、筒部21の内周面が回転軸4の大径部41の外周面にスリーブ5を介して押圧接触した状態に維持されている。勿論、筒部21への大径部41の挿入時、つまり固定軸28による第1及び第2板部22,23の移動阻止前においては、筒部21の内径が移動阻止後の内径より僅かに大径になっており、その分だけ大径部41を筒部21に挿入し易くなっている。
【0052】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例が採用可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、第1及び第2板部22,23を互いに平行に配置しているが、第1及び第2板部22,23は、筒部21の径方向外側へ向かうにしたがって漸次接近し、あるいは漸次離間するように、互いに傾斜させてもよい。
また、上記の実施の形態においては、第1板部22に第2突出部23bと平行に突出する第1突出部22aを形成しているが、この第1突出部22aについては必ずしも形成する必要がない。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒンジ装置
2 第1ヒンジ部材(ヒンジ部材)
4 回転軸
21 筒部
21c 第1取付部(取付部)
22 第1板部
22a 第1突出部(突出部)
22b 第2取付面(取付部)
23 第2板部
23b 第2突出部(遮蔽部)
24 間隙
25 調節ボルト(ねじ機構;阻止機構)
26 ナット(ねじ機構;阻止機構)
28 固定軸(阻止機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面C字状をなす筒部、並びに上記筒部の周方向における一端部及び他端部から上記筒部の径方向外側へそれぞれ突出し、間隙を間にして互いに対向する第1及び第2板部を有するヒンジ部材と、一端部が上記筒部に回転可能に挿入された回転軸と、上記第1板部と上記第2板部との間に設けられ、上記第1及び第2板部が互いに離間移動することを阻止する阻止機構とを備え、上記筒部の内周面と上記回転軸の外周面との間に摩擦抵抗が発生するよう、上記筒部の内周面が上記回転軸の外周面に押圧接触させられ、上記阻止機構が上記第1及び第2板部の離間移動を阻止することにより、上記筒部の拡径を阻止して上記筒部の内周面が上記回転軸の外周面に押圧接触した状態を維持するヒンジ装置において、
上記第2板部の突出方向における先端部には、上記第1板部側に突出して、上記第1及び第2板部の突出方向における上記間隙の先端開放部を覆う遮蔽部が形成されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記第1板部の突出方向における先端部には、上記遮蔽部と同一方向に突出して上記遮蔽部と対向する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記突出部の突出方向の先端部が上記遮蔽部の突出方向の先端部より突出方向において前方に配置され、上記突出部の先端部及び上記突出部の突出方向を向く上記筒部の一側部に取付部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記筒部が弾性的に拡縮径可能であり、上記阻止機構がねじ機構であり、上記ねじ機構は、上記第1及び第2板部を接近離間移動させて上記筒部を弾性的に拡縮径させた後、上記第1及び第2板部の離間移動を阻止して上記筒部の内径を一定に維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−2593(P2013−2593A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136287(P2011−136287)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】