説明

ヒータ制御装置

【課題】過電圧印加によりヒータが異常温度上昇するのを防止して安全性を高めることを目的とする。
【解決手段】ヒータ1と、ヒータ制御手段2と、電源電圧検出手段6とを備え、前記ヒータ制御手段2は、前記電源電圧検出手段6から得られる検出電圧が所定の電圧以上となった場合には、強制的に前記ヒータ1への通電をOFFさせる構成としたものである。これによって、過電圧印加によるヒータ電流増加によって異常な温度上昇となることを防ぐことができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用などのヒータ制御装置、特に、電源異常の場合でも安全なヒータ制御手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヒータ制御装置は、異常電圧に対する保護回路を設けて、この異常電圧を吸収していた。
【0003】
図8は従来のヒータ制御装置の過電圧を吸収する保護回路を示すもので、FET101と、このFET101を制御するトランジスタ102と、Voutの電圧を監視するトランジスタ103と、Voutが所定の電圧以上になると電流が流れるように設定されたツェナーダイオード104とを具備する。
【0004】
通常はトランジスタ103がOFFしており、これによりトランジスタ102はVin→抵抗105→ダイオード106→抵抗107→トランジスタ102の順でベース電流が流れてONするので、FET101がONする。
【0005】
過電圧がVinに印加された場合は、ツェナダイオード104に電流が流れてトランジスタ103がONし、その結果トランジスタ102のベース電流を引き込むため、トランジスタ102のコレクタ電流が減少し、FET101の出力電圧Voutを絞るように動作する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−166644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、過電圧をツェナーダイオード104で検出してFET101の出力電圧を下げる構成であるので、瞬間的なサージ電圧を防ぐには有効な手段ではあるが、継続した過電圧印加に対応するためには、大容量のFETを使用する必要があり、実装面積やコストの面で不利となっていた。
【0008】
また、制御手段の制御対象が、負荷電流の大きなヒータの場合、定常電流が大きい事から、上記同様に大容量のFETが必要となるという課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電源電圧検出手段を備えて過電圧を検出した場合にはヒータへの通電をOFFさせる構成とすることで、過電圧印加によるヒータ電流増加によって異常な温度上昇となることを防ぐことができるようにしたヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明のヒータ制御装置は、ヒータと、ヒータ制御手段と、電源電圧検出手段とを備え、前記ヒータ制御手段は、前記電源電圧検出手段から得られる検出電圧が所定の電圧以上となった場合には、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたものである。
【0011】
これによって、過電圧印加によるヒータ電流増加によって異常な温度上昇となることを防ぐことができるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒータ制御装置は、電源電圧検出手段を備えることで異常な過電圧が印加されたことを検出してヒータへの通電をOFFさせる事が出来るので、過電圧印加によりヒータ電流が増大し、異常な温度上昇となってヒータ周囲の焼損やヒータ自身の断線等の故障を未然に防ぐことが可能となり、安全性の高いヒータ制御装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるヒータ制御装置の回路ブロック図
【図2】同ヒータ制御装置の動作フローチャート
【図3】本発明の実実施の形態2におけるヒータ制御装置の回路ブロック図
【図4】同ヒータ制御装置の動作フローチャート
【図5】本発明の実施の形態3におけるヒータ制御装置の動作フローチャート
【図6】本発明の実施の形態4におけるヒータ制御装置の動作フローチャート
【図7】本発明の実施の形態5におけるヒータ制御装置の動作フローチャート
【図8】従来のヒータ制御装置における過電圧を吸収する保護回路図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、ヒータと、ヒータ制御手段と、電源電圧検出手段とを備え、電源電圧検出手段から得られる検出電圧が所定の電圧を超えた場合にはヒータへの通電をOFFさせるように動作させる構成としたものである。
【0015】
第2の発明は、前記第1の発明において、電源電圧検出手段の検出値が所定の値以上となる状態が所定の時間以上継続した場合のみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたものである。
【0016】
第3の発明は、前記第1の発明において、電源電圧検出手段の検出値が第1検出値以上第2検出値以下の範囲に入ったときのみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたものである。
【0017】
第4の発明は、ヒータと、ヒータ制御手段と、ヒータ電流検出手段とを備え、前記ヒータ制御手段は、前記ヒータ電流検出手段から得られる検出電流が所定の電流以上となった場合には、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成とした。
【0018】
第5の発明は、前記第4の発明において、ヒータ電流検出手段の検出値が所定の値以上となる状態が所定の時間以上継続した場合のみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたものである。
【0019】
第6の発明は、前記第4の発明において、ヒータ電流検出手段の検出値が第1検出値以上第2検出値以下の範囲に入ったときのみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたものである。
【0020】
第7の発明は、前記第1、第4の発明において、強制的にヒータへの通電をOFFさせた場合、その状態を保持し、所定の手段で操作しないと解除できない構成としたものである。
【0021】
これらの発明によれば、電源電圧、或いは、ヒータ電流が異常に高い場合にヒータへの
通電をOFFして異常な温度上昇となることを防止できるものであり、また第2、第5の発明によれば、一次的なノイズなどによる異常電圧は無視することができ、異常値の検出動作の信頼性を向上させることができる。
【0022】
さらに、第3、第6の発明によれば、一次的なノイズ等による異常電圧は無視することができ、さらに連続して生じた異常電圧はすぐに検出する事ができ、レスポンスを犠牲にせずにノイズ除去することで、異常値の検出動作の信頼性をさらに向上させることができる。
【0023】
第7の発明によれば、異常電圧が元に戻っても自動復帰しないようにできるので、信頼性の高いヒータ制御装置を提供することができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、車載用暖房装置の加熱手段であるヒータの制御に応用したもので、ヒータ1は暖房用加熱手段として機能し、ヒータ制御装置2で制御されるFET3によって通電のONとOFFが制御されるようになっている。
【0026】
スイッチ4をONするとヒータ制御装置2に電源5が供給され、ヒータ制御動作を開始する。
【0027】
電源電圧検出手段6は、抵抗7,8からなる電源5の分圧により入力された電圧から構成され、ヒータ制御装置2へ入力される。
【0028】
以上の構成において、以下その動作、作用について図2の動作フロー図も参照しながら説明する。
【0029】
先ず、ステップ1でスイッチ4をONすると、ヒータ制御装置2がFET3をONさせてヒータ1への通電を開始し、加熱動作を開始する(ステップ2)。
【0030】
次に、ステップ3で、電源5の電圧を電源電圧検出手段6で検出し、検出値がaを超えていればステップ4へ進んでヒータ制御装置2がFET3をOFFさせる。ステップ3で検出値がaを超えていなければヒータ1への通電は継続する。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、電源電圧検出手段6で検出された電圧が所定の電圧以上の場合にはヒータ1の通電をOFFさせる構成であるので、電源電圧が異常に高い場合にヒータ電流が増大して異常な温度上昇となることを防ぐことができるものである。
【0032】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2を示し、ヒータ1は、ヒータ制御装置2で制御されるIPD9の端子10によって通電のONとOFFが制御されるようになっている。
【0033】
なお、図1と同作用を行う構成には同一符号を付し、具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0034】
ヒータ電流検出手段11は、IPD9に内蔵されている機能を使い、端子12に流れる電流と相関のある電流が端子13から流れ、この電流を抵抗14に流すことで、その両端電圧がヒータ電流と相関のある電圧となる。
【0035】
この電圧をヒータ制御装置2で処理を行う。
【0036】
以上のように構成されたヒータ制御装置について、以下その動作、作用について図4の動作フロー図も参照しながら説明する。
【0037】
先ず、ステップ11でスイッチ4をONすると、ヒータ制御装置2がIPD10をONさせてヒータ1への通電を開始し、加熱動作を開始する(ステップ12)。
【0038】
次に、ステップ13でヒータ1の電流をヒータ電流検出手段9で検出し、検出値がbを超えていれば、ヒータ制御装置2がIPD10をOFFさせ、ヒータ1への通電を遮断する(ステップ14)。ステップ13において検出値がbを超えていなければ、ヒータ1への通電は継続される。
【0039】
以上のように、本実施の形態では、ヒータ電流検出手段9で検出された電流が所定の電流以上の場合にはヒータ1への通電をOFFさせる構成であるので、電源が異常となってヒータ電流が増大した場合に異常な温度上昇となることを防ぐことができる。
【0040】
(実施の形態3)
ヒータ制御装置の回路ブロックは図1と同じであるため、その説明は実施の形態1のものを援用するが、電源電圧検出手段6で検出された電圧が所定の電圧以上でもヒータ1への通電を所定時間許容すべくタイマを付加している。
【0041】
図5の動作フローを参照してその動作、作用を述べると、先ず、ステップ21でスイッチ4をONすると、ヒータ制御装置22がFET3をONさせてヒータ1への通電を開始し、加熱動作を開始する(ステップ22)。
【0042】
次に、ステップ23でタイマの時間Tを0にリセットし、ステップ24で電源5の電圧を電源電圧検出手段6で検出し、検出値がaを超えていればステップ25へ進む。
【0043】
ステップ24で検出値がaを超えていなければヒータ1への通電は継続する。ステップ25では、タイマTが所定の時間cを越えているかを調べ、超えていない場合はステップ24へ戻り、ヒータ1への通電は継続するが、超えている場合はステップ26へ進んでヒータ通電をOFFさせるために、ヒータ制御装置2がはFET3をOFFさせる。
【0044】
以上のように、本実施の形態では、電源電圧検出手段6で検出された電圧が所定の電圧以上の場合でも、すぐにはヒータ1への通電をOFFさせずに、所定の時間、所定の電圧以上の状態が継続した場合のみヒータ1通電をOFFする構成であるので、特に、ノイズなどによって一時的に電源電圧高くなってすぐに復帰した場合に誤検知してしまうのを防ぐことができる。
【0045】
(実施の形態4)
図6は実施の形態4を示し、ヒータ制御装置の回路ブロックは図1と同じであるため、その説明は実施の形態1のものを援用する。
【0046】
先ず、ステップ31でスイッチ4をONすると、ヒータ制御装置2がFET3をONさせてヒータ1への通電を開始し、加熱動作を開始する(ステップ32)。
【0047】
次に、ステップ33で、電源5の電圧を電源電圧検出手段6で検出し、検出値がaを超え、b以下であればステップ34へ進んでヒータ制御装置2がFET3をOFFさせる。
ステップ33で検出値が前記以外であればヒータ1への通電は継続する。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、電源電圧検出手段6で検出された電圧が所定の電圧の範囲内のみヒータ1への通電をOFFさせる構成であるので、ノイズなどによって一時的に電源電圧高くなってすぐに復帰した場合は、誤検知することはなく、しかも実施の形態3に比べると待ち時間Tもないため、レスポンスを犠牲とせずにノイズに対して誤動作を防ぐことができる。
【0049】
(実施の形態5)
図6は実施の形態4を示し、ヒータ制御装置の回路ブロックは図1と同じであるため、その説明は実施の形態1のものを援用する。
【0050】
先ず、ステップ41でスイッチ4をONすると、ヒータ制御装置2がFET3をONさせてヒータ1への通電を開始し、加熱動作を開始する(ステップ42)。
【0051】
次に、ステップ43で、電源5の電圧を電源電圧検出手段6で検出し、検出値がaを超えていればステップ44へ進んでヒータ制御装置2がFET3をOFFさせる。ステップ43で検出値がb以下であればヒータ1への通電は継続する。
【0052】
次にステップ45では、動作スイッチ4の操作を確認し、ONのままであればヒータOFF状態を保持する。動作スイッチ4がOFFになればフロー41に戻り動作スイッチ4がONされるのを待つ。
【0053】
以上のように、本実施の形態では、電源電圧検出手段6で検出された電圧が所定の電圧以上の場合にはヒータ1への通電をOFFさせて、その状態を保持し、動作スイッチ4を一旦OFFしてから再度ONしないとヒータ1への通電ONが行われない構成であるので、異常な電圧を検出してヒータ1への通電をOFFした後、異常電圧が復帰すれば、ヒータ1への通電も自動復帰してONするということを防ぐことができる。
【0054】
なお、実施の形態3〜5は、電源5の電圧を電源電圧検出手段6で検出するものに特定したが、ヒータ1の電流をヒータ電流検出手段9で検出する実施の形態2への応用も勿論考えられるものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかるヒータ制御装置は、過電圧印加時にはヒータ通電をOFFするようしたものであり、過電圧印加によりヒータが温度過上昇となることを防ぐことができ、安全で信頼性の高い車載用暖房装置などへの応用が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ヒータ
2 ヒータ制御手段
6 電源電圧検出手段
11 ヒータ電流検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータと、ヒータ制御手段と、電源電圧検出手段とを備え、前記ヒータ制御手段は、前記電源電圧検出手段から得られる検出電圧が所定の電圧以上となった場合には、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたヒータ制御装置。
【請求項2】
電源電圧検出手段の検出値が所定の値以上となる状態が所定の時間以上継続した場合のみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成とした請求項1記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
電源電圧検出手段の検出値が第1検出値以上第2検出値以下の範囲に入ったときのみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成とした請求項1記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
ヒータと、ヒータ制御手段と、ヒータ電流検出手段とを備え、前記ヒータ制御手段は、前記ヒータ電流検出手段から得られる検出電流が所定の電流以上となった場合には、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成としたヒータ制御装置。
【請求項5】
ヒータ電流検出手段の検出値が所定の値以上となる状態が所定の時間以上継続した場合のみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成とした請求項4記載のヒータ制御装置。
【請求項6】
ヒータ電流検出手段の検出値が第1検出値以上第2検出値以下の範囲に入ったときのみ、強制的に前記ヒータへの通電をOFFさせる構成とした請求項4記載のヒータ制御装置。
【請求項7】
強制的にヒータへの通電をOFFさせた場合、その状態を保持し、所定の手段で操作しないと解除できない構成とした請求項1または請求項4記載のヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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