説明

ヒータ

【課題】螺旋状に巻回された石英ガラス管の内部に、カーボンワイヤー発熱体を収容したヒータにおいて、熱分布(温度分布)のバラツキが小さく、より均一に加熱することができるヒータを提供する。
【解決手段】螺旋状に巻回された石英ガラス管11の内部に、紐状のカーボンワイヤー発熱体15を収容したヒータ10であって、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の軸線lと平行な方向(X1方向)における、前記カーボンワイヤー発熱体15の断面が、軸線lと平行な長軸を有する楕円形状(a2>b2)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータに関し、例えば、シリカガラス管の内部にカーボンワイヤー発熱体を収容したヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、加熱源としてカーボンワイヤー発熱体を用い、このカーボンワイヤー発熱体をガラス管に封入したヒータが知られている。
このヒータは、所定の形状に屈曲させた石英ガラス管の内部に、線状のカーボンワイヤー発熱体を収容、封入したものであって、クリーンで高速昇温に優れたヒータとしての特徴を備えている。
【0003】
ここで、特許文献1に記載されているヒータを図4に基づいて説明する。
図示するように、ヒータ100は、ヒータ部200と、ヒータ部200の両端に設けられた封止端子部300とを備えている。
また、ヒータ部200は、カ−ボンワイヤー発熱体と、このカ−ボンワイヤー発熱体を収容した石英ガラス管210とから構成されている。また前記石英ガラス管210は、直線部210aと屈曲部210bとによって形成されている。
そして、ヒータ100は、石英ガラス管210に収容されたカーボンワイヤー発熱体に通電して発熱させることにより、石英ガラス管210を介して輻射熱が外部に放射されるように構成されている。
【0004】
また、特許文献1に記載されたヒータ100は、ヒータ部200を構成する石英ガラス管210がツヅラ状に屈曲させて形成している。
そのため、このヒータ100にあっては、カーボンワイヤー発熱体の間のピッチ間隔を狭めることができ、より均一な加熱を行うことができる。
また、ヒータ100は、石英ガラス管210の両端部が封止端子部300aに接続された第1のヒータ100aと、石英ガラス管210の両端部が封止端子部300bに接続された第2のヒータ100bとを備え、第1のヒータ100aのヒータ部200の直線部210a1と、第2にヒータ100bのヒータ部200の直線部210a2とが交互に位置するように配置されている。
なお、第1のヒータ100aは、ヒータ部200を構成する直線部210a1と、屈曲部210b1とが同一平面に形成されている。また、第2のヒータ100bは、ヒータ部200を構成する屈曲部210b2が、直線部210a2と同一平面に形成されておらず、上下方向に屈曲している。
【特許文献1】特開2007−87721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術のヒータにあっては、前記したようにカーボンワイヤー発熱体の間のピッチ間隔を狭めることで、より均一な加熱が行える。
しかしながら、前記ヒータにあっては、同一平面に屈曲部が形成されていないガラス管では、内部に配設したカーボンワイヤー発熱体の断面位置が屈曲部の方向にずれる。一方、同一平面に屈曲部が形成されているガラス管の内部に配設されたカーボンワイヤー発熱体の断面位置は、ほぼ石英ガラス管の直径平面(石英ガラス管断面の軸芯付近)に位置する。そのため、前記ヒータは、ヒータ平面方向における輻射熱の熱分布(温度分布)にバラツキがあるという技術的課題を有していた。
【0006】
このヒータの輻射熱の熱分布(温度分布)について、図5を参照しながら、具体的に説明する。尚、図5は、図4に示した従来のヒータにおける隣接する4本の直線部210aの断面(I−I断面)を示した図であり、図中の符号fは、石英ガラス管210の直線部210aから放射される輻射熱を模式的に示した熱分布曲線(温度分布曲線)である。
【0007】
図5に示すように、隣接する2つの石英ガラス管の直線部210a間には隙間t1が形成されるため、隣接するカーボンワイヤー発熱体250間に所定の間隔が形成される。
その結果、前記ヒータ100の平面方向(X2方向)において、カーボンワイヤー発熱体250が偏って配置される石英ガラス管210a1と、カーボンワイヤー発熱体250が略石英ガラス管の直径平面(石英ガラス管210aの断面の軸芯付近)に配置されている石英ガラス管210a2とが交互に並ぶ。
【0008】
そのため、前記ヒータ100は、X2方向の輻射熱の熱分布曲線(温度分布曲線)fが波形状になり、上記したようにX2方向における輻射熱の熱分布(温度分布)にバラツキが生じ、均一な温度分布にならず、被加熱対象物を均一に加熱することができないというという技術的課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、螺旋状に巻回された石英ガラス管の内部に、カーボンワイヤー発熱体を収容したヒータにおいて、熱分布(温度分布)のバラツキが小さく、より均一に加熱することができるヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかるヒータは、螺旋状に巻回された石英ガラス管の内部に、紐状のカーボンワイヤー発熱体を収容したヒータであって、螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記カーボンワイヤー発熱体の断面が、前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状であり、螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記石英ガラス管の断面の外形状が前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状になされ、かつ、螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記石英ガラス管の断面の内形状が前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状の中空になされ、前記石英ガラス管の断面の外形状の楕円長軸をa1、該外形状の楕円短軸をb1とすると、1 < a1/b1 < 1.04を満たすことを特徴としている。
【0011】
このように、本発明にかかるヒータは、螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記カーボンワイヤー発熱体の断面が、前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状になされているため、隣接するカーボンワイヤー発熱体同士の間隔を小さくすることができる。即ち、本発明によれば、ヒータの軸線方向(巻回方向)において、カーボンワイヤー発熱体が配置されていない領域を減少させることができ、輻射熱の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
また、本発明にかかるヒータは、螺旋状に巻回された石英ガラス管の前記軸線と平行な方向における断面を、前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状になしたため、円筒状の石英ガラス管の場合に比べて、カーボンワイヤー発熱体をより楕円形状になすことができ、これにより、輻射熱の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
特に、a1/b1が、1以下である場合には、石英ガラス管の軸線と垂直な方向に潰れた形状となるため、隣接する石英ガラス管の間の距離(s1)が大きくなり熱分布が不均一になる。また、a1/b1が1より更に小さくなると、石英ガラス管の内面とカーボンワイヤー発熱体との接触抵抗が大きくなり、石英ガラス管にカーボンワイヤー発熱体を挿入するときに、カーボンワイヤー発熱体が入らなくなる虞れがある。
また、a1/b1が、1.04を超えると、石英ガラス管の内面と、カーボンワイヤー発熱体との接触抵抗が大きくなり、石英ガラス管にカーボンワイヤー発熱体を挿入するときに、カーボンワイヤー発熱体が入らなくなる虞れがあり、好ましくない。したがって、1 < a1/b1 < 1.04の関係を満たすことが望ましい。
【0012】
また、前記石英ガラス管の前記断面の内形状の楕円長軸をd1とし、該石英ガラス管の内部に収容されたカーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円長軸をa2とすると、1 ≦ d1/a2 < 1.3を満たすことが望ましい。
d1/a2が1未満となるのが好ましくないのは、d1/a2が1未満の場合、石英ガラス管内のカーボンワーヤー発熱体を収容できないためである。
また、d1/a2が1.3以上の場合には、軸線方向に隣り合うカーボンワイヤー発熱体同士の距離が長くなり熱分布が不均一になるため、好ましくない。
したがって、1 ≦ d1/a2 < 1.3の関係を満たすことが望ましい。
このように螺旋状に巻回された石英ガラス管内のカーボンワーヤー発熱体が、石英ガラス管の内径(楕円長軸)の大部分を占めるように楕円形状となっているため、軸線方向に隣り合うカーボンワイヤー発熱体同士の距離が短くなり、均熱性が向上する。
【0013】
また、前記カーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円長軸をa2とし、該カーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円短軸をb2とすると、1.5 < a2/b2 < 2.0を満たすことが望ましい。
a2/b2が1.5以下の場合には、カーボンワイヤー発熱体が円形状に近いため、軸線方向隣り合うカーボンワイヤー発熱体同士の同士の距離が長くなり熱分布が不均一となり好ましくない。また、a2/b2が2.0以上の場合には、カーボンワイヤー発熱体が扁平な楕円状となるため、軸線方向に隣り合うカーボンワイヤー発熱体同士の距離が短くなり均熱性は向上するものの、石英ガラス管の螺旋外周側との距離が長くなり螺旋外周側への熱放射率が低下する虞れがある。また、カーボンワイヤー発熱体に過度の引張り応力を負荷することになるため、カーボンワイヤー発熱体が断裂する虞れがあるため好ましくない。
したがって、1.5 < a2/b2 < 2.0を満たすことが望ましい。
このように、螺旋状に巻回された石英ガラス管内のカーボンワイヤー発熱体が適度な楕円形状となっており、軸線方向に隣り合うカーボンワイヤー発熱体同士の距離も短くなるため、均熱性が向上する。
【0014】
また、前記石英ガラス管における、前記軸線方向と直交方向した相対向する部位の肉厚において、螺旋状に巻回された石英ガラス管の外周側の肉厚が、内周側の肉厚よりも薄く形成されており、外周側の肉厚をt1とし、内周側の肉厚をt2とすると、1 < t2/t1 < 1.1を満たすことが望ましい。
このように螺旋状に巻回された石英ガラス管の外周側の肉厚が、内周側の肉厚よりも薄く形成されているため、螺旋状の外周側に熱を効率よく放射することができるため、ヒータの熱効率を高めることができる。
【0015】
また、前記螺旋状に巻回された隣接する石英ガラス管の間隔が、前記カーボンワイヤー発熱体の幅より小さく、かつ石英ガラス管の間隔が1.2mm以下であることが望ましい。この構成により、前記石英ガラス管の軸線方向(巻回方向)において、熱が放射されない領域を小さくすることができるため、輻射熱の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、旋状に巻回された石英ガラス管の内部に、カーボンワイヤー発熱体を収容したヒータにおいて、熱分布(温度分布)のバラツキが小さく、より均一に加熱することができるヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明のヒータにかかる一実施形態について図1および図2に基づいて説明する。
尚、図1は、本発明のヒータにかかる実施形態の側面図である。また、図2は、本発明の実施形態におけるカーボンワイヤー発熱体を収容した石英ガラス管の断面図であり、軸線と平行な方向の石英ガラス管の断面図であって、螺旋状に巻回して形成された石英ガラス管11の隣接する螺旋部11aの断面を示している。
【0018】
図1に示すように、本発明にかかるヒータ1は、輻射熱を放射するヒータ部10と、ヒータ部10の両端に設けられた封止端子部20とを備えている。
また、ヒータ部10は、軸線を中心としてX1方向(軸線方向)に螺旋状に巻回された石英ガラス管11と、前記石英ガラス管11内に収容されたカーボンワイヤー発熱体15(図2参照)とを備えている。また、ヒータ部10は、封止端子部20を介して、制御装置(図示しない)からの制御により電力供給装置(図示しない)から電力供給されるよう構成されている。
【0019】
そして、前記電力供給装置(図示しない)からヒータ部10に電力供給されると(カーボンワイヤー発熱体15が通電されると)、カーボンワイヤー発熱体15が発熱し、ヒータ部10が赤外線を放射するように構成されている。
尚、本実施形態にあっては、ヒータ部10を構成するカーボンワイヤー発熱体15の形状と石英ガラス管11の形状とに特徴があり、それ以外の構成(封止端子部20、制御装置(図示しない)、電力供給装置(図示しない)等)については、従来技術のものと同じである。そのため、以下では、従来技術と同様の構成についての説明は省略する。
【0020】
先ず、石英ガラス管11内に収容されるカーボンワイヤー発熱体15について説明する。
このカーボンワイヤー発熱体15は、極細いカーボン単繊維を束ねたカーボンファイバー束を、編紐形状、あるいは組紐形状に複数束編み上げて作製したものであり、従来の金属製やSiC製の発熱体に比べて、熱容量が小さく昇降温特性に優れ、また非酸化性雰囲気中では高温耐久性にも優れている。
また、このカーボンワイヤー発熱体15は、細いカーボン単繊維の繊維束を複数本編んで作製されたものであるため、ムクのカーボン材からなる発熱体に比べフレキシビリティに富み、形状変形順応性や加工性に優れている。
【0021】
具体的には、前記カーボンワイヤー発熱体15として、直径5乃至15μmのカーボンファイバー、例えば、直径7μmのカーボンファイバーを約3000乃至3500本程度束ねたファイバー束を10束程度用いて直径約2mmの編紐、あるいは組紐形状に編み込んだ等のカーボンワイヤー発熱体15が用いられる。前記の場合において、ワイヤーの編み込みスパンは2乃至5mm程度である。
【0022】
次に、ヒータ部10の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、ヒータ部10を構成する石英ガラス管11は、一方の封止端子部20に接続された第1直線部11bと、第1直線部11bから延びて複数回、軸線lを中心として、X1方向(軸線方向)に螺旋状に巻回された螺旋部11aと、螺旋部11aの端部で折り返されてX1方向(軸線方向)に延設され、他方の封止端子部20に接続される第2直線部11cとを有する。
【0023】
より具体的には、図2に示すように、ヒータ部10は、前記軸線lと平行な方向(X1方向)における断面が環状である石英ガラス管11と、前記石英ガラス管11の内部に収容されたカーボンワイヤー発熱体15とを備えている。そして、このカーボンワイヤー発熱体15の前記軸線lと平行な方向(X1方向)における断面は、前記軸線lと平行な長軸a2を有する楕円形状になされている。
【0024】
このカーボンワイヤー発熱体15を詳細に説明すると、その断面は、前記したように長軸が「a2」であり、短軸が「b2(b2<a2)」の楕円形状になされている。また、この前記楕円形状に形成されたカーボンワイヤー発熱体15は、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の内周側(螺旋部11aの内周側)に寄せられて配置されている。
また、カーボンワイヤー発熱体15の上述した楕円形状の断面は、前記長軸a2と前記短軸b2とが以下の「数1」の関係を満たすようになされていることが望ましい。
【数1】

【0025】
このように、前記石英ガラス管11の軸線方向(X1方向)における、前記カーボンワイヤー発熱体15の断面が、前記軸線lと平行な長軸a2を有する楕円形状になされているため、隣接するカーボンワイヤー発熱体15同士の間隔を小さくすることができる。
即ち、本発明によれば、ヒータの軸線方向(X1方向:巻回方向)において、カーボンワイヤー発熱体15が配置されていない領域を減少させることができ、輻射熱の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
【0026】
また、本実施形態のカーボンワイヤー発熱体15は、上述したように、細いカーボン単繊維の繊維束を複数本編んで作製されたものであるため、その両端を引っ張る(テンションをかける)ことにより、簡単に、その断面形状を変形させることができる。
そのため、カーボンワイヤー発熱体15を石英ガラス管11の内部に配置する際、例えば、カーボンワイヤー発熱体15を引っ張ることにより、石英ガラス管11の内部に、断面が楕円形状に形成されたカーボンワイヤー発熱体15を配置することができる。
【0027】
具体的には、先ず、カーボンワイヤー発熱体15の一端部を石英ガラス管11の一端(第1直線部11b)から挿入し、螺旋状に形成された石英ガラス管11の螺旋部11aの内部を通し、当該石英ガラス管11の他端(第2直線部11c)からカーボンワイヤー発熱体15の一端部を引出す。
次に、石英ガラス管11の内部に挿通したカーボンワイヤー発熱体15の両端部を引っ張ることにより、石英ガラス管11の内部において、カーボンワイヤー発熱体15の断面形状を楕円形状に形成させる。
このような方法よれば、手間のかかる製造工程を行うことなく、石英ガラス管11の内部に、断面が略楕円形状に形成されたカーボンワイヤー発熱体15を配置することができる。
【0028】
また、石英ガラス管11は、前記したように前記軸線に平行な断面が、円形(a1=b1)の環状に形成されていても良いが、より好ましくは、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の軸線lと平行な方向(X1方向)における、前記石英ガラス管11の外形状が前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状(a1>b1)になされ、かつ、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の軸線lと平行な方向における、前記石英ガラス管11の内形状が前記軸線lと平行な長軸を有する楕円形状の中空(d1>b1−t1−t2)になされていることが望ましい。
また、より好ましくは、石英ガラス管11の前記楕円形状の長軸a1と、前記楕円形状の短軸b1とが以下に示す「数2」の関係を満たしていることが望ましい。
【数2】

【0029】
このように、本実施形態にかかるヒータ1は、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の軸線lと平行な方向における断面を、いわゆる楕円形状になしたため、円筒状の石英ガラス管の場合に比べて、石英ガラス管11の内部に収容するカーボンワイヤー発熱体15をより楕円形状になすことができ、輻射熱の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
【0030】
また、前記石英ガラス管11の肉厚について特に限定されるものではないが、石英ガラス管11の螺旋部11aの肉厚が以下に示すように形成されるのが好ましい。
具体的には、前記石英ガラス管11における、前記軸線方向(X1方向)と直交方向した相対向する部位の肉厚t1、t2が、前記軸線方向に相対向する部位の肉厚t3より薄く(t3>t1、t3>t2)形成されていることが望ましい。
【0031】
このように、石英ガラス管11における、前記軸線方向と直交方向した相対向する部位の肉厚t1、t2が前記軸線方向に相対向する部位の肉厚t3より薄く形成されているため、石英ガラス管11の軸線方向(X1方向)と直交した方向に、熱を効率よく放射することができるため、ヒータの熱効率を高めることができる。
【0032】
また、前記石英ガラス管11における、前記軸線方向と直交方向した相対向する部位の肉厚t1、t2において、螺旋状に巻回された石英ガラス管11の外周側の肉厚t1が、内周側t2の肉厚よりも薄く(t2>t1)形成されていることが望ましく、より好ましくは、石英ガラス管11の肉厚(t1およびt2)が以下に示す「数3」の関係を満たすようになされていることが望ましい。
【数3】

このように螺旋状に巻回された石英ガラス管11の外周側の肉厚t1が、内周側の肉厚t2よりも薄く形成されているため、螺旋状の外周側に熱を効率よく放射することができるため、ヒータの熱効率を高めることができる。
【0033】
また、前記石英ガラス管11は、前記カーボンワイヤー発熱体15との関係において、以下の比率で構成されていることが望ましい。
具体的には、石英ガラス管11の内径断面の楕円形状の長軸(d1)と、前記カーボンワイヤー発熱体15の前記断面の楕円形状の長軸(a2)とが下記の「数4」の関係を満たすようになされていることが望ましい。
【数4】

【0034】
次に、本実施形態の石英ガラス管11の螺旋形状について図3に基づいて説明する。
図3は、図1に示したヒータの隣接する石英ガラス管同士との間隔を示した模式図である。
図示するように、石英ガラス管11は、軸線l(X1方向)と平行方向において、隣接する螺旋部11aとの間に間隔s1が形成されていると共に、軸線l(X1方向)と直交方向において、隣接する螺旋部11aとの間に間隔s2が形成されている。
【0035】
そして、石英ガラス管11は、軸線l(X1方向)と平行方向において、隣接する石英ガラス管11の螺旋部11a同士が非接触であり、かつ隣接する螺旋部11aとの間に間隔s1が極力小さいことが望ましい(0<s1≦1.2(mm))。
このように隣接する螺旋部11aの間隔s1を極力小さくすることによって、前記軸線と平行な方向(X1方向)において、熱を放射しない領域(部分)を小さくすることができ、前記軸線と平行な方向(X1方向)の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
尚、隣接する石英ガラス管11の螺旋部11a同士が接触する場合には、螺旋状に巻回したヒータの内側に熱がこもるため好ましくない。
また、隣接する螺旋部11aの間隔s1を、少なくともカーボンワイヤー発熱体の幅a2より小さくすることが、輻射熱の熱分布(温度分布)を均一になすために好ましい。
【0036】
また、石英ガラス管11は、隣接する石英ガラス管11の螺旋部11a同士の間隔s2のバラツキが少なくなるように螺旋状に巻回されていることが好ましく、例えば、s2のバラツキが「標準偏差 0.15」以内であることが望ましい。
このように、石英ガラス管11が精度良く巻回されていることにより、前記軸線と平行な方向(X1方向)の熱分布(温度分布)をより均一になすことができる。
【実施例】
【0037】
続いて、本発明の実施形態のヒータ1について、当該ヒータ1を実際に製作し、カーボンワイヤー発熱体15に通電して発熱させ、温度分布を測定した実施例に基づいて検証する。
【0038】
[実施例]
具体的には、下記の表1に示す要件を満たすヒータ1(石英ガラス管11の螺旋状に形成された部分の軸線l方向(X1方向)の長さ寸法が「140mm」のヒータ1)を製作し、その製作したヒータ1を通電して発熱させ、ヒータ1から「700mm」離れた位置において、軸線l方向(X1方向)における温度分布を測定した(表1中の符号は、図2および図3に対応している)。
尚、下記の表1に示す実施例1〜3は、いずれも、上述した「数1」〜「数4」の要件を満しており、且つ軸線l方向に隣接する螺旋部11a同士の間隔s1が「0<s1≦1.2(mm)」となっている(以下では、説明の便宜上、「0<s1≦1.2(mm)」を「数5」という)。
また、下記の表1に示す「a1」は「5.86mm」であり、「d1」は「2.8mm」であり、「t2」は「1.59mm」である。
また、下記の表1には、上記の温度分布と共に、ヒータ1を製作した際に不具合の有無を示している。
【0039】
【表1】

【0040】
[比較例]
つぎに、本実施形態のヒータ1を、上述した実施例と異なる要件で製作し、その製作したヒータ1を通電し発熱させ、ヒータ1から「700mm」離れた位置において、軸線l方向(X1方向)における温度分布を測定した(表1中の符号は、図2および図3に対応している)。
【0041】
具体的には、下記の表2に示す要件を満たすヒータ1(石英ガラス管11の螺旋状に形成された部分の軸線l方向(X1方向)の長さ寸法が「140mm」のヒータ1)を製作し、その製作したヒータ1を通電して発熱させ、ヒータ1から「700mm」離れた位置において、軸線l方向(X1方向)における温度分布を測定した。
また、下記の表2に示す「a1」は「5.83mm」であり、「d1」は「2.88mm」であり、「t2」は「1.53mm」である。
なお、下記の表2には、上記の測定した温度分布と共に、ヒータ1を製作した際に不具合の有無を示している。
【0042】
【表2】

【0043】
ここで、表2に示す比較例を説明する。
比較例1および比較例2は、上述した「数1」〜「数5」の要件のうち、「数2」の要件(1 < a1/b1 < 1.04)だけを満さないヒータ1を製作し、そのヒータ1を通電させて温度分布を測定した例である。
また、比較例3は、上述した「数1」〜「数5」の要件のうち、「数4」の要件(1 ≦ d1/a2 < 1.3)だけを満たさないヒータ1を製作して、そのヒータ1を通電させて温度分布を測定した例である。
また、比較例4および比較例5は、上述した「数1」〜「数5」の要件のうち、「数1」の要件(1.5 < a2/b2 < 2.0)だけを満たさないヒータ1を製作し、そのヒータ1を通電させて温度分布を測定した例である。
また、比較例6は、上述した「数1」〜「数5」の要件のうち、「数3」の要件(1 < t2/t1 < 1.1)だけを満たさないヒータ1を製作し、そのヒータ1を通電させて温度分布を測定した例である。
また、比較例7は、上述した「数1」〜「数5」の要件のうち、「数5」の要件(0<s1≦1.2)だけを満たさないヒータ1を製作し、そのヒータ1を通電させて温度分布を測定した例である。
【0044】
また、表2に示すように、比較例1、2、および5では、ヒータ1を製作しているときに不具合があった。
具体的には、比較例1および比較例2の要件でヒータ1を製作しているときに、石英ガラス管11の管内にカーボンワイヤー発熱体15を挿入できないことがあった。また、比較例4の要件でヒータを製作しているときに、石英ガラス管11の中に挿入したカーボンワイヤー発熱体1が断裂することがあった。
【0045】
そして、上記の表1および表2を参照して、上記実施例の測定結果と、上記比較例の測定結果とを比べると、実施例1〜3は、いずれも、温度分布の分布幅が「±5℃」以内であったのに対して、比較例1および比較例3〜7の温度分布の分布幅が「±10℃」以上であった。すなわち、実施例1〜3は、比較例1および比較例3〜7と比べて温度分布の分布幅が小さかった。
また、比較例2は、温度分布の分布幅が「±5℃」以内であったものの、製品製作上の不具合が確認された。
以下、具体的に、実施例1〜3と、比較例1〜7とを比較する。
【0046】
先ず、上記の「数1」〜「数5」の要件を全て満たす実施例1〜3と、上記の「数2」の要件(1 < a1/b1 < 1.04)を満たしていない比較例1〜2とを比べる。
具体的には、実施例1〜3と、比較例1とを比べると、上記の「数2」の要件を満たす実施例1〜3の方が、「a1/b1」が「1」である比較例1よりも、温度分布の分布幅が小さかった。
また、実施例1〜3では、ヒータ1を製作しているときに不具合が確認されなかったのに対して、比較1および比較2では、いずれも、ヒータ1を製作しているときに不具合があることが確認された。
これにより、ヒータ1は、上記の「数2」の要件(1 < a1/b1 < 1.04)を満たしていることが好ましいことが確認された。
【0047】
次に、上記の「数1」〜「数5」の要件を全て満たす実施例1〜3と、上記の「数4」の要件を満していない比較例3とを比べると、実施例1〜3の方が、比較例3よりも、温度分布の分布幅が小さかった。
これにより、ヒータ1は、上記の「数4」の要件(1 ≦ d1/a2 < 1.3)の要件を満たしていることが好ましいことが確認された。
【0048】
次に、上記の「数1」〜「数5」の要件を全て満たす実施例1〜3と、上記の「数1」の要件(1.5 < a2/b2 < 2.0)を満たしていない比較例4および比較例5とを比べると、実施例1〜3の方が、比較例4および比較例5よりも、温度分布の分布幅が小さかった。また、比較例5では、ヒータ1を製作しているときに不具合があった。
これにより、ヒータ1は、上記の「数1」の要件(1.5 < a2/b2 < 2.0)を満たしていることが好ましいことが確認された。
【0049】
次に、上記の「数1」〜「数5」の要件を全て満たす実施例1〜3と、上記の「数3」の要件(1 < t2/t1 < 1.1)を満たしていない比較例6を比べると、実施例1〜3の方が、比較例6よりも、温度分布の分布幅が小さかった。
これにより、ヒータ1は、上記の「数3」の要件(1 < t2/t1 < 1.1)を満たしていることが好ましいことが確認された。
【0050】
次に、上記の「数1」〜「数5」の要件を全て満たす実施例1〜3と、上記の「数5」の要件(0<s1≦1.2)だけ満たしていない比較例7とを比べると、実施例1〜3の方が、比較例7よりも、温度分布の分布幅が小さかった。
これにより、ヒータ1は、上記の「数5」の要件(0<s1≦1.2)を満たしていることが好ましいことが確認された。
【0051】
以上説明したように、本発明にかかるヒータによれば、熱分布(温度分布)のバラツキが小さく、被加熱対象物を均一に加熱することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本実施形態において、石英ガラス管11の形状を図3に示すもの(従来技術のヒータ部10と同様の形状)に変えても、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態にかかるヒータの側面図である。
【図2】図1に示したヒータの一部断面図である。
【図3】図1に示したヒータの隣接する石英ガラス管同士との間隔を示した模式図である。
【図4】従来のヒータを示した斜視図である。
【図5】図3に示した従来のヒータの一部断面図と、熱分布曲線(温度曲線)を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ヒータ
10 ヒータ部
11 石英ガラス管
11a 螺旋部(石英ガラス管)
11b 第1直線部(石英ガラス管)
11c 第2直線部(石英ガラス管)
15 カーボンワイヤー発熱体
20 封止端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回された石英ガラス管の内部に、紐状のカーボンワイヤー発熱体を収容したヒータであって、
螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記カーボンワイヤー発熱体の断面が、前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状であり、
螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記石英ガラス管の断面の外形状が前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状になされ、
かつ、螺旋状に巻回された石英ガラス管の軸線と平行な方向における、前記石英ガラス管の断面の内形状が前記軸線と平行な長軸を有する楕円形状の中空になされ、
前記石英ガラス管の断面の外形状の楕円長軸をa1、該外形状の楕円短軸をb1とすると、
1 < a1/b1 < 1.04
を満たすことを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記石英ガラス管の前記断面の内形状の楕円長軸をd1とし、該石英ガラス管の内部に収容されたカーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円長軸をa2とすると、
1 ≦ d1/a2 < 1.3
を満たすことを特徴とする請求項1に記載されたヒータ。
【請求項3】
前記カーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円長軸をa2とし、該カーボンワイヤー発熱体の前記断面の楕円短軸をb2とすると、
1.5 < a2/b2 < 2.0
を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたヒータ。
【請求項4】
前記石英ガラス管における、前記軸線方向と直交方向した相対向する部位の肉厚において、螺旋状に巻回された石英ガラス管の外周側の肉厚が、内周側の肉厚よりも薄く形成されており、
外周側の肉厚をt1とし、内周側の肉厚をt2とすると、
1 < t2/t1 < 1.1
を満たすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたヒータ。
【請求項5】
前記螺旋状に巻回された隣接する石英ガラス管の間隔が、前記カーボンワイヤー発熱体の幅より小さく、かつ石英ガラス管の間隔が1.2mm以下であること特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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