説明

ヒートシール性積層体

【課題】ラミネート工程や中間層を必要としないで製造でき、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有するヒートシール性積層体の提供。
【解決手段】熱融着層と基材層とからなる積層体であって、熱融着層にはメタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で成分(A)よりも6〜15重量%多いエチレン量を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%重合した、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が用いられ、基材層はΔHm(融解熱)が50〜96mJ/mgのポリプロピレン樹脂組成物が用いられていることを特徴とするヒートシール性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性積層体及びそれを用いて得られる包装体に関し、詳しくは、高いヒートシール強度と引張弾性率をもつヒートシール性積層体及びそれを用いて得られる包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装体として使用するヒートシール性積層体としては、一般的に、ポリプロピレン系樹脂に低融点のポリオレフィン系樹脂を積層した共押出し積層ポリプロピレン系樹脂フィルム、無延伸ポリエチレン系樹脂フィルムまたはポリプロピレン系樹脂フィルムと延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとをラミネートした積層ポリプロピレン系樹脂フィルムが多用されている。
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂に低融点のポリオレフィン系樹脂を積層した共押出積層ポリプロピレン系樹脂フィルムでは、ある程度のシール強度はあるものの、水物などの重量物を包装するまでのシール強度はなく、無延伸ポリエチレン系樹脂フィルムまたはポリプロピレン系樹脂フィルムと延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムとをラミネートした積層ポリプロピレン系樹脂フィルムにおいては、十分なシール強度はあるものの、有機溶剤等を使用するラミネート工程が必要であり、経済的にも地球環境に与える影響の面からも好ましくない。
【0003】
これに対して、共押出積層フィルムの基材層と熱融着層との間に接着層や中間層を設け層間強度を高めることなどにより、共押出積層フィルムに重量物包装に十分なヒートシール強度を持たせるという改良(例えば、特許文献1及び2参照。)が提案されている。また、共押出積層フィルムの熱融着層を厚くするなどして、ヒートシール強度と自動包装機適性とをバランスよく向上させることによる方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。しかしこれらの改良技術は、いずれも従来のヒートシール性積層体と比べ特殊な層構成をとるため、ダイス、押出機などへ設備改造が必要となり、経済的な負担を要するため好ましくない。
さらに、特定条件を有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を熱融着層に用いることにより、ヒートシール性、低温ヒートシール性、透明性、耐ブロッキング性などをバランスよく改善したポリプロピレン系二軸延伸複層フィルムに関する発明(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。しかし、単に、熱融着層のみにプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用いるだけでは、充分なヒートシール強度を発現させることはできず(実施例では、最大で780g/15mm)、これでは、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度とは言えないのが現状であった。
さらにまた、熱融着層に用いるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体のMFRを調節する、または熱融着層の厚みを厚くすることにより、高いヒートシール強度を持たせること(例えば、特許文献5参照。)が提案されているが、熱融着層の樹脂のMFRが高くなるため成形性が悪くなる場合があり、製品としての性能、品質が十分であるとは言えなかった。
【特許文献1】特開平10−76618号公報
【特許文献2】特開2003−225979号公報
【特許文献3】特開平7−329260号公報
【特許文献4】特開2005−305767号公報
【特許文献5】特開2005−305782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前述の問題点を鑑み、ラミネート工程や中間層を必要とせず、従来設備で簡易に製造できる上、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有するヒートシール性積層体及びそれを用いて得られる包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱融着層に、特定のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用い、基材層に、特定のポリプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有するヒートシール性積層体及びそれを用いて得られる包装体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
特に、熱融着層に、特定のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用いると、驚くべきことに、基材層に用いるポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmと、得られるヒートシール性積層体のヒートシール強度とが比例関係となることを見出し、その知見に基づき、材料設計の段階において、得られるヒートシール性積層体のヒートシール強度を設定することが可能となり、容易に所望のヒートシール強度と引張弾性率とのバランスの良いヒートシール性積層体及びそれを用いて得られる包装体が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、熱融着層と基材層とからなる積層体であって、熱融着層にはメタロセン系触媒を用いて得られた下記条件(i)〜(ii)を満たすプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が用いられ、基材層にはJIS K7122に準拠して測定したΔHm(融解熱)が50〜96mJ/mgのポリプロピレン系樹脂組成物が用いられていることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
(i)第1工程でエチレン含量1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で成分(A)よりも6〜15重量%多いエチレン量を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%逐次重合する
(ii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ヒートシール強度が900g/15mm以上であることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、熱融着層の厚みが2〜4μmであることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、JIS K7127に準じて測定した積層体の流れ方向(MD)の引張弾性率と、流れ方向に直交する方向(TD)の引張弾性率との和が、4000MPa以上であることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、基材層に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物が、2種類以上のポリプロピレン系樹脂で構成されていることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、基材層に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物に、石油樹脂が配合されていることを特徴とするヒートシール性積層体が提供される。
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明のヒートシール性積層体を用いることを特徴とする包装体が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヒートシール性積層体は、ラミネート工程や中間層を必要とせず、従来設備で簡易に製造できる上、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有する。
また、本発明においては、ヒートシール性積層体のヒートシール強度を向上させるためには、単に、熱融着層を検討するだけでは不十分であり、基材層との相乗効果を考慮に入れなければならず、本発明は、熱融着層に用いる樹脂と基材層に用いる樹脂を特定することにより、優れた相乗効果を持たせることに成功し、従来にない優れたヒートシール強度と引張弾性率とのバランスを有するヒートシール性積層体およびそれを用いた包装体を得ることができた上、樹脂の設計段階でヒートシール強度を想定できる手法をも確立した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、JIS K7122に準拠して測定したΔHm(融解熱)が50〜96mJ/mgのポリプロピレン樹脂組成物から得られる基材層とメタロセン系触媒を用いて、(i)第1工程でエチレン含量1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で成分(A)よりも6〜15重量%多いエチレン量を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%逐次重合して得られ、(ii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体から得られる熱融着層とからなるヒートシール性積層体である。
以下に、基材層、熱融着層、ヒートシール性積層体等について詳細に説明する。
【0015】
[1]基材層
(1)ポリプロピレン系樹脂組成物の構成成分
本発明のヒートシール性積層体の基材層に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とその他の成分とからなる組成物である。以下に各成分について説明する。
(i)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよく、該共重合体は、プロピレンから誘導される構成単位を主成分としたプロピレンとα−オレフィンとのランダム、ブロックもしくはグラフト共重合体のいずれであっても良い。
また、コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
中でも、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体および本発明に用いられる逐次重合によって得られるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が好ましく、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0016】
上記プロピレン・α−オレフィン共重合体中のプロピレン単位の量は、特に制限は無いが、好ましくは88〜99.5重量%、より好ましくは91〜99重量%である。
ここで、プロピレン単位及びα−オレフィン単位は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
【0017】
なお、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、本発明の特性を大きく損なわない範囲で、プロピレンと不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)等との共重合体を使用しても良い。
【0018】
また、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂は、メルトフローレート(MFR)が、フィルム形成性などの観点から、0.5〜10g/10分が好ましく、1〜5g/10分のものが特に好ましい。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠し、加熱温度230℃、荷重21.2Nで測定する値である。
【0019】
かかるポリプロピレン系樹脂は、従来公知であるマグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とするいわゆるチーグラーナッタ触媒、あるいはメタロセン触媒を用いて、公知の方法により製造することができる。
メタロセン触媒により重合されたものは、透明性、剛性、耐衝撃性のバランスが優れているので好適である。
メタロセン触媒としては、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)、メチルアルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物若しくはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物若しくはイオン交換性層状珪酸塩等のメタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要に応じ使用するトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
本発明においては、ポリプロピレン系樹脂として、市販品を用いることができ、例えば、日本ポリプロ(株)製ノバッテクPP、ウィンテック等が例示できる。
【0020】
(ii) その他の配合材
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物は、前述したポリプロピレン系樹脂の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の配合材を加えてもよい。
その他の配合材として、ポリプロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、具体的には、エチレン重合体、ブテン重合体、脂環族炭化水素樹脂、スチレン樹脂等を挙げることができ、これらは、樹脂全量中50重量%以下の範囲内で配合されることが望ましい。
脂環族炭化水素樹脂としては、例えば石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、またはそれらの水素添加誘導体が挙げられる。これらの中で極性基を有しないものや、水素を付加して95%以上の水添率にしたものが好ましく、更には石油樹脂又は石油樹脂の水素添加誘導体がより好ましい。また、この様な石油樹脂がポリプロピレン系樹脂組成物に配合されていると、得られるヒートシール性積層体は、非晶性の石油樹脂が配合されるためΔHmが低くなり、ヒートシール強度が向上し好ましい。該石油樹脂は、樹脂全量中5〜40重量%の範囲で配合されることが望ましい。
かかる石油樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製のアルコン、エクソンモービル(有)製のOpperaなどの市販品が挙げられる。
【0021】
また、その他の配合材として、ポリプロピレン系樹脂に用いられる酸化防止剤や耐候剤等の安定剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を挙げることができる。
これら添加剤の中でも、特に、帯電防止剤を含有しているものが好ましい。該帯電防止剤の中でも好ましいものとしては、グリセリンの脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、及びその脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0022】
(2)ポリプロピレン系樹脂組成物の特性
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmは、50〜96mJ/mg、好ましくは、60〜94mJ/mg、さらに好ましくは、70〜92mJ/mgである。ポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmが96mJ/mgを超えると、得られるヒートシール性積層体に、重量物を包装するのに充分なヒートシール強度が得られず、ΔHmが50mJ/mg未満であると、樹脂の結晶化度が低いため製膜が困難となる。
ΔHm(融解熱)とは、本来、樹脂の結晶化度を表わす尺度であるが、本発明のヒートシール性積層体として、熱融着層に、本発明におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用いると、基材層に用いるポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmと、得られるヒートシール性積層体のヒートシール強度とに比例関係が成り立つことが本発明で明らかになり、後述の実施例、比較例からも明白である。
ここで、ΔHmは、JIS K7122に準じて測定する値である。
【0023】
なお、本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物に用いられるポリプロピレン系樹脂として、単独でΔHmが50〜96mJ/mgの範囲にあるものを用いてもよく、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を組み合わせて、ΔHmが50〜96mJ/mgの範囲になるものを用いても良い。ΔHmの調節が容易なことから、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、これにより、希望通りのヒートシール強度を有するヒートシール性積層体を容易に得ることができる。
また、単独もしくは2種類以上のポリプロピレン系樹脂に対して、その他の配合材を加えることによっても、ポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmを調節することが可能である。
【0024】
(3)ポリプロピレン系樹脂組成物の製造
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物は、前記成分を必要量測定した後、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等公知の混合機に投入し、混合する方法、混合した後、さらに、一軸又は二軸押出機等の公知の混練機にて、温度160〜300℃、好ましくは180〜280℃で溶融混練してペレタイズすることによってペレット状にする方法を挙げることができる。この際、ポリプロピレン系樹脂組成物は、それらを構成する前記成分を一度に混合して得てもよく、あらかじめ前記成分を、2もしくはそれ以上に分割して混合もしくはペレット化しておいたものを、使用時に混合して得ても良い。
【0025】
[2]熱融着層
本発明のヒートシール性積層体に用いられる熱融着層には、メタロセン系触媒を用いて逐次重合することで得られた下記特徴を有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が用いられる。
【0026】
1.プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体
本発明で用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体とは、第1工程で、エチレン含量1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で、第1工程よりも6〜15重量%多いエチレン量を含むプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%逐次重合し、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体である。
なお、ここでいうプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体とは、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)(以下、成分(A)という。)と、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)(以下、成分(B)という。)を逐次重合することより得られる、通称でのブロック共重合体であり、必ずしも成分(A)と成分(B)とが完全にブロック状に結合されたものでなくても良い。
【0027】
以下に上記条件について説明する。
(1)成分(A)中のエチレン含量([E]A)
成分(A)中のエチレン含量の範囲は、1〜7重量%、好ましくは2〜6重量%である。エチレン含量が1重量%を下回る場合にはブロック共重合体の融点が高くなり、その結果ヒートシール温度が高くなり、好ましくない。エチレン含量が7重量%を超える場合には熱融着層の結晶性が低くなりすぎて、フィルムの耐ブロッキング性が悪化し、好ましくない。
【0028】
(2)成分(B)中のエチレン含量([E]B)
成分(B)のエチレン含量の範囲は、成分(A)のエチレン含量との差[E]B−[E]A([E]gap)によって規定される。[E]gapは、6〜15重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは7〜13重量%の範囲である。
成分(B)はプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体に柔軟性を付与し、ヒートシール強度を高めるために重要な成分であり、[E]gapが上記範囲を下回る場合には熱融着層の柔軟性が不十分で、ヒートシール強度の向上が達成されない。逆に、上記範囲を上回る場合には、成分(A)と成分(B)が相分離構造をとるために、フィルムの透明性が悪化し、または成分(A)と成分(B)の界面での破壊が容易に起こるため、ヒートシール強度の向上効果が見られなくなるため好ましくない。
【0029】
(3)成分(A)および成分(B)の割合
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の柔軟性は、成分(B)の量の増加によって向上させているため、ヒートシール強度を向上させるための柔軟性を発揮するためには、成分(B)はブロック共重合体全体に対する割合W(B)は少なくとも30重量%必要であり、好ましくは40重量%以上である。
W(B)が30重量%未満の場合には、柔軟性を十分に発揮できずにヒートシール強度の向上が得られないか、柔軟にするためには成分(A)の結晶性を極端に落とすことが必要となり、それに伴い結晶融解温度が低くなりすぎるためにフィルムの耐ブロッキング性が悪化する。
一方、W(B)が多くなりすぎると、耐ブロッキング性が顕著に悪化するという問題が生じるため、W(B)は70重量%以下でなくてはならならず、好ましくは65重量%以下である。
この結果、W(B)は30〜70重量%の範囲にあることが必要であり、より好ましくは40〜65重量%である。また、W(A)もこれに伴い70〜30重量%、より好ましくは60〜35重量%の範囲にあることが必要である。
【0030】
(4)[E]Aと[E]B及びW(A)とW(B)の測定
[E]Aと[E]B及びW(A)とW(B)の測定は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
(i)温度昇温溶離分別(TREF)によるW(A)とW(B)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,
8,1639−1654(1995)
【0031】
本発明におけるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、成分(A)と(B)の各々の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
【0032】
具体的な方法を図4のTREFによる溶出量及び溶出量積算を示す図を用いて説明する。TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(A)と(B)は結晶性の違いにより各々T(A)とT(B)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A)+T(B)}/2)においてほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(B)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(B)の濃度は検出される。)
このとき、T(B)は測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することが出来ないため、このような場合にはT(B)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(B)重量%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(A)重量%と定義すると、W(B)は結晶性が低いあるいは非晶性の成分(B)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A)は結晶性が比較的高い成分(A)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線と、そこから求められる上記の各種の温度や量の算出の方法は図4に例示するように行う。
【0033】
(ii)TREF測定方法
本発明においては、TREFの測定は具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLBHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
【0034】
(iii)各成分中のエチレン含量[E]Aと[E]Bの特定
(イ)成分(A)と成分(B)の分離
上述のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)にける可溶成分(B)とT(C)における不溶成分(A)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いる。
(ロ)分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(A)と(B)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
機種:日本電子(株)製 GSX−400または、同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔: 15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えばMacromolecules,17 1950(1984)等を参考に行えばよい。
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
【0035】
【表1】

【0036】
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} … (6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1
…(7)
である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
【0037】
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
【0038】
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
【0039】
【表2】

【0040】
正確なエチレン含有量を求めるにはこれら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明のエチレン含有量は実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXはモル%表示でのエチレン含有量である。
【0041】
また、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体全体のエチレン含量[E]Wは、上記より測定された成分(A)と(B)それぞれのエチレン含量[E]Aと[E]B及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A)とW(B)重量%から以下の式により算出される。
[E]W={[E]A×W(A)+[E]B×W(B)/100 (重量%)
【0042】
(5)tanδ曲線のピークによる規定
本発明においては、フィルムの透明性を維持するために、熱融着層に使用するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が相分離していないことが必要であるが、相分離の条件はエチレン含量のみならず、分子量や組成によっても影響を受けるため、上記のエチレン含量に関する規定に加えて、固体粘弾性測定(DMA)により得られる温度−損失正接(tanδ)曲線において、tanδ曲線のピークに関する規定が必要となる。
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が相分離構造を取る場合には、成分(A)に含まれる非晶部のガラス転移温度と成分(B)に含まれる非晶部のガラス転移温度が各々異なるため、ピークは複数となる。逆に相溶性である場合には、両成分は分子のオーダーで混合しており、両成分のガラス転移温度の中間的な温度に単一のピークを有する。すなわち、相分離構造を取っているかどうかは、固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線において判別可能であり、フィルムが透明性を高く維持するためには、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有することが必要である。例えば、後述の実施例で用いたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、図3に示すように、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する。
【0043】
固体粘弾性測定とは、具体的には、短冊状の試料片に特定周波数の正弦歪みを与え、発生する応力を検知することで行う。ここでは、周波数は1Hzを用い測定温度は−60℃から段階状に昇温し、サンプルが融解して測定不能になるまで行う。また、歪みの大きさは0.1〜0.5%程度が推奨される。得られた応力から、公知の方法によって貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を求め、これの比で定義される損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)を温度に対してプロットすると0℃以下の温度領域で鋭いピークを示す。一般に0℃以下でのtanδ曲線のピークは非晶部のガラス転移を観測するものであり、ここでは本ピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)として定義する。
【0044】
2.プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造方法
(i)メタロセン系触媒
本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。
プロピレン−エチレンランダム共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当該業者に広く知られるところであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するために、分子量及び結晶性分布が狭くなるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要である。
メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(a)、(b)、及び必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
【0045】
成分(a):下記の一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成 分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体、
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩、
成分(c):有機アルミニウム化合物。
【0046】
(a)成分
成分(a)としては、下記一般式で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C−aR)(C−bR)MeXY
[ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウムから選ばれる金属原子を示し、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を示す。a及びbは置換基の数である。]
【0047】
詳しくは、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
とRは、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したRとRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、又は、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
【0048】
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0049】
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
【0050】
(b)成分
成分(b)としては、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
【0051】
ここで、成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(B)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0052】
(c)成分
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式で示される化合物が好ましい。
AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1から20の炭化水素基、Pは水素、ハロゲン、アルコキシ基、aは0<a≦3の数)
具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0053】
(ii)触媒の形成
成分(a)と成分(b)および必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
(イ)成分(a)と成分(b)を接触させる
(ロ)成分(a)と成分(b)を接触させた後に成分(c)を添加する
(ハ)成分(a)と成分(c)を接触させた後に成分(b)を添加する
(ニ)成分(b)と成分(c)を接触させた後に成分(a)を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0054】
本発明で使用する成分(a)と(b)及び(c)の使用量は任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5μmol〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
【0055】
本発明で使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0056】
(iii)重合方法
(イ)逐次重合
本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を製造するに際しては、成分(A)と成分(B)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレン共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性と透明性が十分でなく、柔軟性と透明性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が悪化し、これらの全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明においてプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが透明性と柔軟性、耐熱性全てをバランスさせるために必要である。
また、本発明では、成分(B)として分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着等の問題を防止するために、成分(A)を重合した後で成分(B)を重合する方法を用いることが必要である。
【0057】
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(A)と成分(B)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いても良い。
連続法の場合には成分(A)と成分(B)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(A)と成分(B)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いても良い。
【0058】
(ロ)重合プロセス
重合プロセスは、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
成分(B)は炭化水素等の有機溶媒や液化プロピレンに溶けやすいため、成分(B)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
成分(A)の製造に対してはどのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A)を製造する場合には、付着等の問題を避けるために気相法を用いることが望ましい。
従って、連続法を用いて、まず成分(A)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き成分(B)を気相法にて重合することが最も望ましい。
【0059】
(ハ)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
【0060】
第1工程で成分(A)、第二工程で成分(B)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を製造する場合には、第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの公報を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
【0061】
(vi)プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の構成要素の制御方法
本発明に用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の各要素は、以下のように制御され、本発明の共重合体に必要とされる構成要件を満たすよう製造することができる。
(イ)成分(A)
成分(A)については、エチレン含量[E]AとT(A)を制御する必要がある。
本発明では、[E]Aを所定の範囲に制御するためには、第1工程における重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比を、適宜調整すればよい。供給比率と得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量の関係は、用いるメタロセン触媒の種類によって異なるが、供給比率の調整により必要とするエチレン含量[E]Aを有する成分(A)を製造することができる。
例えば、[E]Aを1〜7重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.001〜0.3の範囲、好ましくは0.005〜0.2の範囲とすればよい。
このとき、成分(A)は結晶性分布が狭く、T(A)は[E]Aの増加に伴い低下する。
そこで、T(A)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]Aとこれらの関係を把握し、目標とする範囲を取るよう調整する。
【0062】
(ロ)成分(B)
成分(B)については、エチレン含量[E]BとT(B)と[η]cxsを制御する必要がある。
本発明では、[E]Bを所定の範囲に制御するためには、[E]Aと同様に、第二工程におけるプロピレンに対するエチレンの供給量比を制御すればよい。例えば、[E]Bを7〜22重量%に制御する場合には、プロピレンに対するエチレンの供給重量比を0.01〜5の範囲、好ましくは0.05〜2の範囲とすればよい。
このとき、成分(B)もエチレン含量の増加に伴い若干結晶性分布の増加が見られるものの、成分(A)と同様に、T(B)は[E]Bの増加に伴い低下する。
そこで、T(B)が本発明の範囲を満たすようにするためには、[E]BとT(B)との関係を把握し、[E]Bを所定の範囲になるように制御すればよい。
【0063】
(ハ)W(A)とW(B)
成分(A)の量W(A)と成分(B)の量W(B)は、成分(A)を製造する第1工程の製造量と成分(B)の製造量の比を変化させることにより制御することができる。例えば、W(A)を増やしてW(B)を減らすためには、第1工程の製造量を維持したまま第二工程の製造量を減らせばよく、それは、第二工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたり、重合抑制剤の量を増やしたりすることにより容易に制御することができる。その逆も又同様である。
実際に条件を設定する際には、活性減衰を考慮する必要がある。すなわち、本発明にて実施するエチレン含有量[E]A及び[E]Bの範囲においては、一般にエチレン含有量を高くするためにプロピレンに対するエチレン供給量比を高くすると重合活性が高くなり、同時に活性減衰が大きくなる傾向にある。したがって、第二工程の活性を維持するために第1工程の重合活性を抑制する必要があり、具体的には、 第1工程にてエチレン含有量[E]Aを下げ、生産量W(A)を下げ、必要に応じて、重合温度を下げる及び/又は重合時間(滞留時間)を短くする、あるいは第二工程にてエチレン含有量[E]Bを上げ、生産量W(B)を上げ、必要に応じて、重合温度を上げる及び/又は重合時間(滞留時間)を長くするような方法で条件を設定すればよい。
【0064】
(ニ)ガラス転移温度Tg
本発明で用いられるプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において求められるtanδ曲線がピークを示す温度であるガラス転移温度Tgが、0℃以下で単一のピークを持つ必要がある。Tgが単一のピークを持つためには、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの差の[E]gap(=[E]B−[E]A)を15重量%以下、好ましくは13重量%以下にし、実際の測定においてTgが単一のピークとなる範囲まで[E]gapを小さくすればよい。
成分(A)中のエチレン含有量[E]Aに応じて、成分(B)中のエチレン含量[E]Bを適正範囲に入るよう、成分(B)の重合時のプロピレンに対するエチレンの供給重量比を設定することで、所定の[E]gapを有するプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を得ることができる。
【0065】
また、本発明に用いられるような相分離構造を取らないプロピレン−エチレンブロック共重合体のTgは、成分(A)中のエチレン含有量[E]Aと成分(B)中のエチレン含有量[E]B、及び両成分の量比の影響を受ける。本発明においては、成分(B)の量は5〜70重量%であるが、この範囲においてTgは成分(B)中のエチレン含有量[E]Bの影響をより強く受ける。
すなわち、Tgは非晶部のガラス転移を反映するものであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体において、成分(A)は結晶性を持ち比較的非晶部が少ないのに対し、成分(B)は低結晶性あるいは非晶性であり、そのほとんどが非晶部であるためである。したがって、Tgの値は、ほぼ[E]Bによって制御され、[E]Bの制御法は前述したとおりである。
【0066】
3.その他の配合剤
本発明で使用される熱融着層には、上記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の他に、より一層の性質改善を行なうために、あるいは、他の目的のために付加的成分を添加することができる。
【0067】
付加的成分としては、例えばブテン−1系重合体やプロピレン・ブテン−1共重合体等を、上記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に対して、5〜45重量部添加することによって、低温ヒートシール性をさらに改良することができる。
このようなブテン−1系重合体としては、ブテン−1の単独重合体の他に、ブテン−1と他のα−オレフィン、例えばエチレンやプロピレン等との共重合体がある。これらの共重合体のMFRが、180〜300℃の範囲での同一温度において、上記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体のMFRと等しいか、あるいは、より大であるものを使用するのが透明性の改良を行うことができることから好ましい。
【0068】
また、高速包装適性を改良する上で、各種のシリコーン油やシリコーンガム等を始めとする有機系の滑剤を添加することが好ましい。特に好ましい滑剤としては重合度が3,500〜8,000のポリジオルガノシロキサンガムあるいは、粘度が100〜100,000cstのシリコーン油等0.1〜1重量部の添加が挙げられる。
【0069】
酸化防止剤や中和剤や耐候剤等の安定剤、加工助剤、着色剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤等の添加剤を添加してもよい。特にブロッキング防止剤を含有しているものが好ましい。ブロッキング防止剤として好ましいものとして平均粒子系が0.5〜5μm 、好ましくは1〜4μm の有機系または無機系の微粒子が挙げられる。1μm 未満ではブロッキング防止効果が劣り、5μm を超えると透明性の悪化が起こる。配合量はプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体100重量部に対して、0.05重量部〜0.6重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。0.05重量部未満ではブロッキング防止効果が劣り、0.6重量部を超えると透明性の悪化が起こる。有機系微粒子としては、例えば、非溶融型のポリシロキサン微粒子、ポリアミド微粒子、アクリル系樹脂微粒子、トリアジン環を有する縮合型の微粒子等を挙げることができる。これらの中でも非溶融型のポリシロキサン微粒子や架橋ポリメタクリル酸メチル微粒子を用いることが好ましい。
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、ゼオライト、カオリン、タルク等を挙げることが出来る。この中でもシリカを用いることが好ましい。
【0070】
4.熱融着層用組成物の製造
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体は、該重合体が2種以上の場合、それらの樹脂ペレットをドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合する方法、また、該重合体がパウダーの場合、該パウダーに所定の添加剤を配合して一括でドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合した後、溶融混練機を用いて190℃〜350℃で加熱溶融混練し、粒状に裁断してペレット状態にする等公知の混合方法により得ることができる。
【0071】
また、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体と付加的成分とを必要量測定した後、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等公知の混合機に投入し、混合する方法、混合した後、さらに、一軸又は二軸押出機等の公知の混練機にて、温度160〜300℃、好ましくは180〜280℃で溶融混練してペレタイズすることによってペレット状にする方法を挙げることができる。この際、それらを構成する成分を一度に混合して得てもよく、あらかじめ、2もしくはそれ以上に分割して混合もしくはペレット化しておいたものを、使用時に混合して得ても良い。
【0072】
[3]ヒートシール性積層体
(1)積層
本発明のヒートシール性積層体は、ポリプロピレン系樹脂又はこれを主成分としてなる基材層の少なくとも片面に、上記プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体よりなる熱融着層を積層したものであればよく、必要において他の層が積層されていても良い。
基材層、熱融着層および必要において他の層を積層する方法としては、複数の押出機に複数のダイリップを備えた水冷インフレ成形機、空冷インフレ成形機、Tダイ成形機による共押出法、ドライラミネート法、押出ラミネート法等の公知の方法を用いることができるが、共押出法が特に好ましい。
【0073】
(2)延伸
また、該ヒートシール性積層体は、延伸されていることが望ましく、具体的には、基材層の片面又は両面に、熱融着層を溶融共押出することによってシート状となし、これらを二軸延伸する方法を挙げることができる。この方法は、容易に均一にかつ薄く積層できることから有効な方法と言える。インフレーション法により複層のチューブ状に成形してから、二軸延伸してヒートシール性積層体とすることもできる。
未延伸又は一軸延伸した基材層に、熱融着層を溶融押出した後、二軸延伸又は基材層の延伸方向と直角方向に一軸延伸する方法も採用することができる。
上記方法で二軸延伸を行う場合は、先ず縦延伸は、送り出しロールと巻き取りロールのロール周速差を利用して行うことができる。すなわち、90〜140℃、好ましくは105〜135℃の温度で3〜8倍、好ましくは4〜6倍に延伸し、次に、引き続いて横方向にテンターオーブン中で3〜12倍、好ましくは6〜11倍に延伸する。ヒートシール時の熱収縮防止のため、横延伸に引き続き、120〜170℃の温度で熱セットするのが望ましい。
【0074】
(3)その他の処理
本発明のヒートシール性積層体は、印刷適性、帯電防止剤のブリードを促進する等の目的で、コロナ処理等の表面処理を施すことができる。
また、本発明のヒートシール性積層体は、いずれかの層に印刷を施し、意匠性を持たせても特に問題はない。
【0075】
(4)肉厚
本発明のヒートシール性積層体の厚みは、その用途に応じて決められるが、通常5〜100μm 、好ましくは10〜60μm の範囲である。
また、本発明のヒートシール性積層体に用いられる熱融着層の厚みは、一般に、0.2〜5μm 、好ましくは2〜4μmである。熱融着層の厚みが4μmを超える場合には、製膜設備を改造しなければならない場合がある。また、該厚みが2μm未満の場合には、均一なヒートシール強度が付与されない場合がある。
【0076】
(5)ヒートシール強度
本発明のヒートシール性積層体のヒートシール強度は、その用途に応じて決められるが、通常800g/15mm以上、好ましくは900g/15mm以上の範囲である。ヒートシール強度が、800g/15mm未満であると包装時や運搬時に破袋してしまう場合があり好ましくない。
ここで、ヒートシール強度は、ヒートシールバーを120℃から5℃刻みの温度で設定し、それぞれの温度において、ヒートシール圧力0.1MPa、ヒートシール時間1秒の条件下で、フィルムの溶融押出した方向(MD方向)に垂直になるようにシールした試料から15mm幅のサンプルをとり、ショッパー型試験機を用いて引張速度500mm/分にてMD方向に引き離し、その荷重を読み取るという方法により測定する値である。
【0077】
(6)引張弾性率の和(MD+TD)
本発明のヒートシール性積層体は、該積層体の流れ方向(MD)の引張弾性率と、流れ方向に直交する方向(TD)の引張弾性率との和が、好ましくは4000MPa以上、より好ましくは4500MPa以上の範囲である。引張弾性率の和が4000MPa未満であると、フィルムの腰が弱くなり自動包装機への適正が悪くなる場合がある。
ここで、引張弾性率は、JISK7127に準拠して測定する値である。
【0078】
(7)ヒートシール性積層体の用途
本発明のヒートシール性積層体は、従来設備で簡易に製造できる上、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有しているので、様々な包装体に用いることができ、特に、食品、衣料、医薬、文具、雑貨などの包装用途に好適に用いることができる。
本発明のヒートシール性積層体を用いた包装体の具体例としては、青果物、冷凍食品、和・洋菓子、その他食品の包装体を挙げることができる。
【実施例】
【0079】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明をより明確にするために好適な実施の例などを記述するものであって、本発明はこれらの実施例によりいかなる限定も受けないことは当然のことである。
以下の実施例及び比較例において用いた諸物性の測定方法および使用した樹脂は、次の通りである。
【0080】
1.物性の測定方法
(1)TREF
TREF測定方法は、下記の装置を用い、前述した通りに行った。
(i)TREF部
TREFカラム:4.3mmφ × 150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm 表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:(株)チノー デジタルプログラム調節計KP1000(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ 4方バルブ
(ii)試料注入部
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1ml
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(iii)検出部
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC−IR用ミクロフローセル 光路長1.5mm 窓形状2φ×4mm長丸 合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(iv)ポンプ部
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3461ポンプ
(v)測定条件
溶媒:o−ジクロロベンゼン(0.5mg/mLのBHTを含む)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速 :1mL/分
(2)固体粘弾性測定
試料は下記条件により射出成形した厚さ2mmのシートから、10mm幅×18mm長×2mm厚の短冊状に切り出したものを用いた。装置はレオメトリック・サイエンティフィック社製のARESを用いた。周波数は1Hzである。測定温度は−60℃から段階状に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定を行った。歪みは0.1〜0.5%の範囲で行った。
規格番号:JIS K−7152(ISO 294−1)参考
成型機:東芝機械社製EC20P射出成型機
成型機設定温度:(ホッパ下から)80、210、210、200、200℃
金型温度:40℃
射出速度:52mm/s(スクリューの速度)
保持圧力:30MPa
保圧時間:8秒
金型形状:平板(厚さ2mm、幅40mm、長さ80mm)
(3)各成分量の算出
TREFを用いて、前述した方法によって算出した。
(4)エチレン含有量の算出
NMRを用いて、前述した方法によって算出した。
(5)tanδ曲線のピーク
固有粘弾性測定により測定した。
(6)ヒートシール強度
本発明のヒートシール性積層体のヒートシール強度は、ヒートシールバーを120℃から5℃刻みの温度で設定し、それぞれの温度において、ヒートシール圧力0.1MPa、ヒートシール時間1秒の条件下で、フィルムの溶融押出した方向(MD方向)に垂直になるようにシールした試料から15mm幅のサンプルをとり、ショッパー型試験機を用いて引張速度500mm/分にてMD方向に引き離し、その荷重を読み取るという方法により測定した。各ヒートシール温度にて測定されたヒートシール強度の中で最大値のヒートシール強度を、そのフィルムのヒートシール強度とした。
(7)引張弾性率
JIS K7127に準じて、フィルムの流れ方向(MD)およびフィルムの流れ直交方向(TD)の引張弾性率を測定した。測定はそれぞれの方向に5回行い、平均値を各方向の引張弾性率とした。
【0081】
2.使用樹脂
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体として、下記の製造例1で得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を用い、さらに各層を構成する樹脂として、市販のプロピレン系重合体(B−1)〜(B−4)、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(C−1)、石油樹脂(D−1)〜(D−2)を用いた。
【0082】
(1)プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体
(製造例1)
(i)予備重合触媒の調製
(イ)珪酸塩の化学処理
10リットルの攪拌翼のついたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μ分布m 粒度=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(ロ)珪酸塩の乾燥
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉) かき上げ翼付き回転数:2rpm 傾斜角20/520 珪酸塩の供給速度:2.5g/分 ガス流速:窒素 96リットル/時間 向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(ハ)触媒の調製
内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に乾燥珪酸塩20gを導入し、混合ヘプタン116ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを200mlに調整した。次に、先に調整した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)0.96mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、〔(r)−ジクロロ[1,1‘−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕218mg(0.3mM)と混合ヘプタン87mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)3.31mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調整した。
(ニ)予備重合/洗浄
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌指揮オートクレーブに、先に調整した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、攪拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを240mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.95ml、さらに混合ヘプタンを560ml添加し、40℃で30分間攪拌し、10分間静置した後に、上澄みを560ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加したあとに、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
(以上の触媒の調整は、特開2002−284808号公報の実施例1に記載された方法により行った。)
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の製造を行った。
【0083】
(ii)重合
(イ)第1工程(成分(A)の製造
攪拌及び温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで十分置換したあとに、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.02mmol)を加え、水素150ml、エチレン18g、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。上記の予備重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)10mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を70℃に維持して15分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーの一部(17.2g)をサンプリングして分析したところ、エチレン含有量1.75重量%、MFR9.8g/10分であった。
(ロ)第2工程(成分(B)の製造
別途、攪拌及び温度制御装置を有する内容積20Lのオートクレーブを用いて、第2工程で使用する混合ガスを調整した。調整温度は80℃、混合ガス組成はエチレン31.2vol%、プロピレン68.8vol%、水素100volppmであった。この混合ガスを3Lのオートクレーブに供給し、第2工程の重合を開始した。重合温度は80℃、圧力2.0MPaGにて60分間重合を継続した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。回収したポリマーはオーブンで十分に乾燥し、パウダー状のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を得た。
得られたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体の収量は379g、活性は40.9kg/g−触媒、エチレン含有量5.6重量%、MFR5.9g/10分であった。
また、該ブロック共重合体は、成分(A)のエチレン含量1.75重量%、組成比58重量%、成分(B)のエチレン含量10.9重量%、組成比42重量%、tanδ曲線が−9℃に単一のピークを有するものであった(図3参照。)。
(ハ)ペレット化
上記の重合を繰り返し行い、少なくとも2kgの重合パウダーを製造した。得られたパウダー状のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを500ppmとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを500ppm、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを500ppm、ブロッキング防止剤として、平均粒径2μmのポリメタクリル酸メチル微粒子を2000ppm添加し、ヘンシェルミキサーを用いて充分に撹拌混合した後、以下の条件により溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することでペレット状のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を得た。
押出機:テクノベル社製KZW−15−45−MG2軸押出機
スクリュー:口径15mm L/D45
押出機設定温度:ホッパ下から 40,80,160,200,220、220(ダイ)℃
スクリュー回転数:400rpm
吐出量:スクリューフィーダーにて1.5kg/h に調整
ダイ:口径3mmストランドダイ 穴数2個
【0084】
(2)プロピレン系重合体
(i)プロピレン系重合体(B−1):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテック「F203T」、MFR:2.3g/10分、融点:158℃
(ii)プロピレン系重合体(B−2):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテック「FL6H」、MFR:3.0g/10分、融点:160℃
(iii)プロピレン系重合体(B−3):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテック「FL1175NB」、MFR:3.2g/10分、融点:160℃
(iv)プロピレン系重合体(B−4):日本ポリプロ(株)製商品名「FY6H」、MFR:1.8g/10分、融点:165℃
(v)プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(C−1):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテック「FX4E」、MFR:5.5g/10分、融点:133℃
(3)石油樹脂
(i)石油樹脂(D−1):荒川化学工業(株)製商品名アルコン「P90」、軟化点:90℃
(ii)石油樹脂(D−2):エクソンモービル(有)製商品名Oppera「PR103J」、軟化点:125℃
【0085】
(実施例1)
プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を熱融着層に、プロピレン系重合体(B−1)を75重量%と、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(C−1)を25重量%とからなる樹脂混合物を基材層に用い、基材層/熱融着層の厚み比が9/1となる様に、2層各々独立した2台の押出機及び、これに連絡した2層Tダイス、冷却ロール、エアーナイフを具備した2層Tダイ法フィルム製造装置を用いて、押出樹脂温度230℃で熱融着層面が冷却ロールに接するように、溶融2層共押出した後、冷却ロール温度20℃のチルロールで製膜引取速度3 m/minで共押出し未延伸積層体を得、縦方向に4.5倍、横方向に10倍延伸し、基材層/熱融着層の厚みがそれぞれ18μm/2μmとなるヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0086】
(実施例2)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)を90重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を10重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0087】
(実施例3)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)を70重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を30重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0088】
(実施例4)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)を20重量%とプロピレン系重合体(B−2)を80重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0089】
(実施例5)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)を30重量%とプロピレン系重合体(B−2)を70重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0090】
(実施例6)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)を15重量%とプロピレン系重合体(B−2)を85重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0091】
(実施例7)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(D−1)を10重量%とプロピレン系重合体(B−3)を90重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0092】
(実施例8)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(D−2)を10重量%とプロピレン系重合体(B−3)を90重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0093】
(実施例9)
基材層に用いた樹脂混合物を、石油樹脂(D−2)を10重量%とプロピレン系重合体(B−3)を60重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を30重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0094】
(実施例10)
基材層に用いた樹脂混合物を、石油樹脂(D−2)を20重量%とプロピレン系重合体(B−3)を50重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を30重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0095】
(実施例11)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−3)を80重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を20重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表3に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは◆)。
【0096】
(比較例1)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−4)に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは◆)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0097】
(比較例2)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは◆)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0098】
(比較例3)
基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−3)に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは◆)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0099】
(比較例4)
熱融着層に用いたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)に、基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)に、代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは▲)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0100】
(比較例5)
熱融着層に用いたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)に、基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)を75重量%とプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)を25重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは▲)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0101】
(比較例6)
熱融着層に用いたプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(A−1)を、プロピレン−エチレンランダムブロック共重合体(C−1)に、基材層に用いた樹脂混合物を、プロピレン系重合体(B−1)を25重量%とプロピレン系重合体(B−2)を75重量%とからなる樹脂混合物に代えた以外は、実施例1に準拠してヒートシール性積層体を得た。その試験結果を表4に示す。また、図1に基材樹脂のΔHmとヒートシール強度の関係をプロットし(プロットは▲)、図2に引張弾性率とヒートシール強度の関係をプロットした(プロットは▲)。
【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
表3および4から明らかなように、実施例1〜11は、本発明の構成要件を全て満たしたヒートシール性積層体であるため、重量物を包装するために十分に強いヒートシール強度である800g/15mmを充分に上回り、引張弾性率とヒートシール強度のバランスに優れるものであることが解る。このことは、図2にプロットされた実施例1〜11(プロットは◆)から明白である。一方、図2にプロットされた比較例1〜6(プロットは▲)から明らかなように、本発明の特定を外れるヒートシール性積層体は、引張弾性率とヒートシール強度との関係が低いレベルのバランスにある。
【0105】
また、熱融着層に、本発明のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用いると、基材層に用いるポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmと、得られるヒートシール性積層体のヒートシール強度とに比例関係が成り立つことが図1にプロットされた実施例1〜11および比較例1〜3(プロットは◆)から明白である。これに対し、熱融着層に、本発明の特定のプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体を用いないと、図1にプロットされた比較例4〜6(プロットは▲)から明らかなように、基材層に用いるポリプロピレン系樹脂組成物のΔHmと、得られるヒートシール性積層体のヒートシール強度との間に比例関係は存在しておらず、ヒートシール強度も低い。比較例1〜3については、基材層のΔHmが本発明の構成要件を外れているために、熱融着層の持つヒートシール強度を充分に発現させることができていない。また、比較例4については、本発明の構成要件から外れる熱融着層からなるヒートシール性積層体であり、かつ基材層のΔHmが本発明の構成要件を外れているために、ヒートシール強度が非常に劣っている。比較例5、6については、本発明の構成要件から外れる熱融着層からなるヒートシール性積層体であるため、基材層のΔHmが本発明の構成要件を満たしてはいるものの、ヒートシール強度が非常に劣るものとなってしまった。
以上のように、ヒートシール性積層体のヒートシール強度を向上させるためには、単に、熱融着層を検討するだけでは不十分であり、基材層との相乗効果を考慮に入れなければならない。
本発明は、熱融着層に用いる樹脂と基材層に用いる樹脂を特定することにより、優れた相乗効果を持たせることに成功し、従来にない優れたヒートシール強度と引張弾性率とのバランスを有するヒートシール性積層体およびそれを用いた包装体を得ることができた上、樹脂の設計段階でヒートシール強度を想定できる手法をも確立した。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のヒートシール性積層体は、従来設備で簡易に製造できる上、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度、高い引張弾性率を有しているので、様々な包装体に用いることができ、特に、食品、衣料、医薬、文具、雑貨などの包装用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】基材層のΔHmとヒートシール強度との関係を示すグラフ図である。
【図2】引張弾性率とヒートシール強度との関係を示すグラフ図である。
【図3】固体粘弾性測定における温度−tanδ曲線などを示す図である。
【図4】温度昇温溶離分別法(TREF)による溶出量及び溶出量積算を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着層と基材層とからなる積層体であって、熱融着層にはメタロセン系触媒を用いて得られた下記条件(i)〜(ii)を満たすプロピレン−エチレンランダムブロック共重合体が用いられ、基材層にはJIS K7122に準拠して測定したΔHm(融解熱)が50〜96mJ/mgのポリプロピレン系樹脂組成物が用いられていることを特徴とするヒートシール性積層体。
(i)第1工程でエチレン含量1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)を30〜70重量%重合した後、第2工程で成分(A)よりも6〜15重量%多いエチレン量を含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(B)を70〜30重量%逐次重合する
(ii)固体粘弾性測定により得られる温度−損失正接曲線において、tanδ曲線が0℃以下に単一のピークを有する
【請求項2】
ヒートシール強度が900g/15mm以上であることを特徴とする請求項1記載のヒートシール性積層体。
【請求項3】
熱融着層の厚みが2〜4μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートシール性積層体。
【請求項4】
JISK 7127に準じて測定した積層体の流れ方向(MD)の引張弾性率と、流れ方向に直交する方向(TD)の引張弾性率との和が、4000MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシール性積層体。
【請求項5】
基材層に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物が、2種類以上のポリプロピレン系樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートシール性積層体。
【請求項6】
基材層に用いられているポリプロピレン系樹脂組成物に、石油樹脂が配合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒートシール性積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載されたヒートシール性積層体を用いることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−279600(P2008−279600A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122994(P2007−122994)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】