説明

ヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム

【課題】 連続式熱風乾燥機の熱源としてヒートポンプユニットを適用することを可能にするとともに、エネルギー効率が高く、更に安定した運転を行うことのできる、新規なヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムの開発を技術課題とした。
【解決手段】 乾燥機1と、この乾燥機1に乾燥気体Dを供給するための給気機構とを具えた乾燥システムSにおいて、前記乾燥機1は連続式熱風乾燥機であり、また前記給気機構は二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプユニット2を具えて成るものであり、更に前記給気機構には、ヒートポンプユニット2により昇温された乾燥気体Dを、更に昇温するための昇温装置5が具えられていることを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流動層乾燥機や回転ドラム式乾燥機等の連続式熱風乾燥装置に関するものであり、特に高温の乾燥気体が必要とされる乾燥機を乾燥システム全体としてエネルギー効率良く運転することのできるヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んになってきており、更にいわゆる省エネの観点から、乾燥装置において熱源としてヒートポンプユニットを適用することが試みられている。
具体的には、いわゆるバンド乾燥機に対して、フロン系の冷媒を使用したヒートポンプユニットが適用された装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで前記バンド乾燥機は、被処理物が乾燥室内に配されたネットコンベヤ等の軌道上を移動する際に、乾燥気体と接触して乾燥が行われるものであり、ネットコンベヤを多段に具えることにより、長時間での処理が可能とされたものである。
一方、比較的短時間で処理が行われる流動層乾燥機や回転ドラム式乾燥機等の連続式熱風乾燥装置においては、その熱源にヒートポンプユニットを適用することは現実的ではなかった。
【0004】
具体的には流動層乾燥機等にあっては、被処理物の乾燥機内での滞留時間(処理時間)が短く、更に乾燥初期の段階で高温の乾燥気体が必要とされるため、フロン系の冷媒を使用したヒートポンプでは得られる熱風の温度が50℃程度であり、短時間で乾燥するのに必要な温度が得られないことから、乾燥機を大型化する等して対応する必要があり、効率的な運転をすることができず、かえってコスト上昇を招いてしまうこととなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3957652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、連続式熱風乾燥装置に対して高温の乾燥気体を供給するための機器としてヒートポンプユニットを適用することを可能にするとともに、乾燥システム全体としてのエネルギー効率が高く、更に高エネルギー効率で安定した運転を行うことのできる、新規なヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムの開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、乾燥機と、この乾燥機に乾燥気体を供給するための給気機構とを具えた乾燥システムにおいて、前記乾燥機は連続式熱風乾燥機であり、また前記給気機構はヒートポンプユニットを具えて成るものであり、更に前記給気機構には、ヒートポンプユニットにより昇温された乾燥気体を、更に昇温するための昇温装置が具えられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、前記要件に加え、前記ヒートポンプユニットにおける蒸発器に供給される熱源としての作用水に、前記昇温装置において用いられた熱媒体に残存する熱を回収するための熱回収機構が具えられていることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、前記要件に加え、前記作用水を、周辺設備から排出された温排水により昇温するための構成が具えられたことを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、前記要件に加え、前記ヒートポンプユニットにおける蒸発器に供給される作用水が、ヒートポンプユニットの最適動作温度域に調整されていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項5記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、前記要件に加え、前記ヒートポンプユニットを複数基具えたことを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項6記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムは、前記要件に加え、前記ヒートポンプユニットは、二酸化炭素を冷媒とするものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
まず請求項1記載の発明によれば、ヒートポンプユニットにより昇温される乾燥気体の温度を90℃程度とすることができ、更にこの乾燥気体を昇温装置によって、連続式熱風乾燥機に求められる温度まで昇温することができる。このため、高温の乾燥気体が必要とされる乾燥機である流動層乾燥機等の連続式乾燥機を適用した乾燥システムを構成することが可能となり、エネルギー効率の高い運転を行うことができる。
【0014】
また請求項2記載の発明によれば、ヒートポンプユニットにおいて熱を放出した後の作用水に対して、昇温装置において用いられた熱媒体に残存する余剰な熱を供給することにより、乾燥システム全体のエネルギー効率がよりいっそう向上し、低ランニングコストでの運転が可能となる。
すなわち前記作用水の温度を高めることにより、ヒートポンプユニットに供給する作用水の量を低減することができ、この結果、乾燥システム全体のエネルギー効率が向上し、低ランニングコストでの運転が可能となる。
【0015】
更にまた請求項3記載の発明によれば、乾燥システムの周辺設備から排出される温排水等の余剰熱を有効利用することにより、乾燥システム全体のエネルギー効率の向上により、更なる低ランニングコストでの運転が可能となる。
【0016】
更にまた請求項4記載の発明によれば、ヒートポンプユニットを効率良く稼働させることができ、低ランニングコストでの運転が促進される。
【0017】
更にまた請求項5記載の発明によれば、乾燥気体の供給形態のバリエーションが増すため、被処理物の種類、性状、処理量や乾燥機の構成に応じて、乾燥気体の温度や風量を最適化し、良好な乾燥を行うことができる。
【0018】
更にまた請求項6記載の発明によれば、二酸化炭素を冷媒とすることにより、ヒートポンプユニットで昇温される乾燥気体の温度を高くすることができる。またこの乾燥気体を更に昇温装置によって昇温することにより、連続式熱風乾燥装置に、高いエネルギー効率を実現した運転を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の乾燥システムを、二基のヒートポンプユニットが具えられるようにして構成した実施例を示すブロック図である。
【図2】昇温装置を示す骨格図である。
【図3】本発明の乾燥システムを、一基のヒートポンプユニットが具えられるようにして構成した実施例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムの形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0021】
本発明のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システムS(以下、乾燥システムSと称す)は、乾燥機1と、この乾燥機1に乾燥気体Dを供給するための給気機構とを具えて成るものである。具体的には一例として図1に示すように、乾燥機1と、給気機構を構成するヒートポンプユニット2及び昇温装置5とが主要要素として具えて構成され、前記ヒートポンプユニット2に対して熱源としての作用水Mを供給するための作用水タンク4が接続される。
また本発明の乾燥システムSは、乾燥機1として連続式熱風乾燥機が適用されるものであり、乾燥機1内での被処理物Hの滞留時間(処理時間)が短く、更に乾燥初期の段階で高温の乾燥気体Dが必要とされる連続式の乾燥機1による乾燥処理を、ヒートポンプユニット2を用いながらもエネルギー効率が高く、更に安定した状態で行うことができるようにしたものである。
以下、これら乾燥システムSの構成要素について詳しく説明し、続いて乾燥システムSの作動態様を説明する。
【0022】
まず前記乾燥機1は連続式熱風乾燥機の一例である流動層乾燥機が適用される。この乾燥機1は、筐体10内を乾燥のための処理空間とするものであり、処理空間を上下に分割するように設けられた通気板11の下方から乾燥気体Dが供給され、通気板11上に位置する被処理物Hに流動層を形成させながら乾燥を行うものである。
このため筐体10の下部には給気口12が形成され、また前方(図1中、左側)上部には投入口13が形成され、更に後方(図1中、右側)上部には排気口14が形成され、更に後方且つ通気板11よりも上方の個所に接続されるダクト10aに対して排出口15が形成される。
また乾燥機1の周辺機器として、吹込ファン16、サイクロン17及び排気ファン18が具えられるものであり、これらの接続状態については後程、詳しく説明する。
【0023】
なおこの実施例では、前記通気板11の中程に堰板11aが設けられ、ある程度乾燥の進んだ被処理物Hがこの堰板11aを乗り越えて次の乾燥段階に移行するような構成が採られるものであり、このため通気板11の下方空間も堰板11aの下方で分割され、それぞれの空間に給気口12A、12Bが形成されるようにした。更に図示は省略するが、前記堰板11aを上方に持ち上げることができる構成とし、適宜の時間間隔で解放することにより、被処理物Hの移動を行うようにしてもよい。
またこの実施例では、乾燥機1として流動層乾燥機が採用されたが、流動層造粒乾燥機、バンド乾燥機あるいは気流乾燥機等、他の連続式熱風乾燥機を採用することもできる。
【0024】
次に前記ヒートポンプユニット2について説明すると、このものは、凝縮器21と、膨張弁22と、蒸発器23と、圧縮機24とを具えてヒートポンプサイクルを形成するものであり、一例として二酸化炭素を冷媒とするものが採用される。なお前記冷媒として二酸化炭素を採用することにより、ヒートポンプユニット2で昇温される乾燥気体Dの温度を高くすることができるものである。因みに現状では、二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプユニット2が、乾燥気体Dの温度を高くすることができるものとして実用化されているが、今後、他の冷媒を用いた同等の性能を有するヒートポンプユニット2が実用化された場合には、これを採用することもできる。
またこの実施例では、詳しくは後述するが、図1に示すようにヒートポンプユニット2が複数具えられるものであり、ヒートポンプユニット2及びその周辺機器の符号にアルファベット大文字の副番を付して区別するものとする。
【0025】
また前記昇温装置5は図1及び図2(a)に示すように、一例としてプレートフィン式の熱交換器51を主要部材として構成されるものであり、この熱交換器51の内部には、複数の放熱フィン53が側周に具えられたパイプ52が配されている。そしてパイプ52内を通過する流体(蒸気等)と、流入口54から熱交換器51内に入り、流出口55から外部に出る過程において放熱フィン53に接する流体(乾燥気体D1)との間で熱交換が行われることとなる。
【0026】
そして図1に示すように、前記乾燥機1、ヒートポンプユニット2(2A、2B)、作用水タンク4及び昇温装置5を組み合わせて乾燥システムSが構成される。
すなわちこの実施例では、乾燥機1に対して温度の異なる乾燥気体D1、D2が給気口12A、12Bに対してそれぞれ供給される構成が採られるものである。
そしてヒートポンプユニット2A、2Bにおける凝縮器21の入力側に吹込ファン16A、16Bが管路Pによって接続され、また凝縮器21の出力側と、乾燥機1の給気口12A、12Bとの間が管路Pによって接続される。
またヒートポンプユニット2A、2Bにおける蒸発器23の入力側及び出力側が、管路Pによって作用水タンク4に接続されるものであり、蒸発器23の入力側と作用水タンク4との間にポンプ41が具えられる。
なお作用水タンク4には、内部に収容される作用水Mの温度を測定するための温度センサT1が具えられる。
【0027】
また前記パイプ52には図示しない適宜の蒸気発生装置から蒸気が供給されるものであり、この蒸気量を調節するための調節弁56が具えられる。
また熱交換器51と、乾燥機1における給気口12Aとの間の管路Pには、乾燥気体D1の温度を計測するための温度センサT2が具えられ、この温度センサT2の検出値に基づいて、適宜の制御装置によって前記調節弁56の開度が調整される。
またヒートポンプユニット2Aと、熱交換器51との間の管路Pには、乾燥気体D1の温度を計測するための温度センサT4が具えられ、この温度センサT4の検出値に基づいて、適宜の制御装置により圧縮機24の動作状態が調整され、温度センサT4によって検出される乾燥気体D1の温度が所定の値(一例として90℃)となるように自動制御される。
【0028】
更にヒートポンプユニット2Bにおける凝縮器21と給気口12Bとの間の管路Pには、乾燥気体D2の温度を計測するための温度センサT3が具えられ、この温度センサT3の検出値に基づいて、適宜の制御装置により圧縮機24の動作状態が調整され、温度センサT3によって検出される乾燥気体D2の温度が所定の値(一例として60℃)となるように自動制御される。
更に乾燥機1における排気口14に接続される管路Pに対してサイクロン17及び排気ファン18が具えられる。
【0029】
またこの実施例では、ヒートポンプユニット2A、2Bにおける蒸発器23において熱を放出した後の作用水Mに対して、昇温装置5において用いられた熱媒体(蒸気、ドレン)に残存する余剰な熱を回収するための熱回収機構6が具えられる。
この熱回収機構6は、一例として前記昇温機構5と同様の構成が採られるものであり、図2(b)に示すように、パイプ62の側周に複数の放熱フィン63が具えられ、パイプ62内を通過する流体(蒸気、ドレン)と、放熱フィン63に接する流体(作用水M)との間で熱交換を行うプレートフィン式の熱交換器61により構成されるものであり、ヒートポンプユニット2A、2Bと作用水タンク4との間の管路Pに対して設けられる。
【0030】
なおこの実施例では、作用水タンク4に対しては、乾燥システムSの周辺設備から排出される温排水等から余剰熱を回収することができるように構成されるものであり、温排水がポンプ42によって作用水タンク4内に配されたパイプ43内を通過するように構成されている。
ここで前記周辺設備とは、乾燥システムSの周辺設備のみならず、例えば同じ工場内に設置された他の生産設備を構成する機器、更には他の工場内に設置された機器等をも含んだものとする。
【0031】
本発明の乾燥システムSは、一例として上述したように構成されるものであり、以下、その作動態様について説明する。
(1)乾燥気体の流れ
初めに被処理物Hの乾燥に寄与する乾燥気体Dの流れについて説明する。
まず乾燥気体D1は、外気が吹込ファン16Aにより取り込まれ、次いでヒートポンプユニット2Aにおける凝縮器21によって昇温され(一例として90℃)、更に昇温装置5によって蒸気加熱を受けて昇温され(一例として120℃)、その後、給気口12Aから乾燥機1内に送り込まれる。
このように本発明によれば、二酸化炭素等を冷媒とするヒートポンプユニット2Aにより昇温される乾燥気体D1の温度を90℃程度の高温状態とすることができ、更にこの乾燥気体D1を昇温装置5によって流動層乾燥機1に求められる温度(一例として120℃)にまで昇温することができるため、乾燥機1として流動層乾燥機等が適用された乾燥システムSを構成した場合であっても、効率的に運転することが可能となるものである。
因みにヒートポンプユニット2Aとして、フロン系の冷媒が適用されたものを用いた場合には、ヒートポンプユニット2Aにより昇温される乾燥気体D1の温度は50℃程度にまでしかならない。そのため昇温装置5によって120℃にまで昇温することが求められる乾燥運転においては、フロン系の冷媒によるヒートポンプの場合、乾燥気体D1の昇温エネルギーに占めるヒートポンプの寄与率が低くなり、効率的な運転を行うことできなくなってしまう。
【0032】
一方、乾燥気体D2は、外気が吹込ファン16Bにより取り込まれ、次いでヒートポンプユニット2Bにおける凝縮器21によって昇温され(一例として60℃)、その後、給気口12Bから乾燥機1内に送り込まれる。
そして被処理物Hに作用した乾燥気体D1、D2は、被処理物Hから水分等の揮発分を蒸発させて温度が低下した状態(一例として66℃)で排気口14から乾燥機1の外部に排気される。
【0033】
(2)ヒートポンプユニットの作用
ここでヒートポンプユニット2による乾燥気体Dの昇温プロセスについて説明する。
ヒートポンプユニット2においては、蒸発器23において外部の熱を冷媒(二酸化炭素等)に取り込み、更に圧縮機24により昇温した後、凝縮器21において熱を乾燥気体Dに供給することにより乾燥気体Dの昇温が行われる。そしてこのような蒸発器23における外部熱源としては、作用水タンク4から供給される作用水Mが供されるものであって、蒸発器23に供給された作用水Mは、冷媒(二酸化炭素等)の気化にエネルギーを奪われて温度が低下した状態で蒸発器23から排出される。
【0034】
(3)作用水への熱の取り込み
そして作用水Mは蒸発器23から作用水タンク4に戻されるため、作用水タンク4内に貯留される作用水Mの温度は低下することとなるが、この作用水Mを再度ヒートポンプユニット2における熱源として供するためには、再び昇温する必要がある。
このために本発明では、ヒートポンプユニット2A及びヒートポンプユニット2Bの蒸発器23から排出される作用水Mに、熱交換器51から排出される蒸気あるいはドレンに残存する熱量を、熱回収機構6(熱交換器61)によって回収するようにした。
更にパイプ43内に、乾燥システムSの周辺設備から排出される温排水等を通過させることにより、作用水タンク4内の作用水Mに対して温排水等から余剰熱を回収するようにした。
このようにして昇温された作用水Mは、再度ヒートポンプユニット2に送られて乾燥気体D1、D2の昇温に供されるため、作用水Mが持つ熱エネルギーを高めることにより、ヒートポンプユニット2に供給する作用水Mの量を低減することができる。この結果、乾燥システムS全体のエネルギー効率が向上し、低ランニングコストでの運転が可能となる。
【0035】
このとき、作用水タンク4内の作用水Mの温度が常時一定水温となるように(一例として12℃)、温度センサT1の検出値に応じて、図示しない適宜の制御装置によってパイプ43を通過する温排水の量が調整される。
またヒートポンプ2には効率的に運転するための最適動作温度域が存在し、作用水Mの温度がこの最適動作温度近傍(一例として12℃)となるように設定されることにより、ヒートポンプユニット2は効率良く運転されることとなる。このため乾燥システムS全体のエネルギー効率が向上するのである。
【0036】
(4)被処理物の乾燥
そして乾燥機1に対して供給された食品原料等の被処理物Hは、まず給気口12Aから吹き込まれる乾燥気体D1(120℃)によって流動層が形成されるとともに、水分等の揮発分が除去される。
やがて被処理物Hは、乾燥の進行とともに自重が軽くなり、堰板11aを乗り越えて給気口12Bから吹き込まれる乾燥気体D2(60℃)の作用域に入り込み、更に乾燥が進行し、所望の乾燥状態となって排出口15から外部に排出される(〔0021〕で説明しているため、ここでの記載は省略する)。
一方、被処理物Hに作用した後の乾燥気体D1、D2は、排気口14から乾燥機1の外部に排気され、サイクロン17によって微粉が除去された後、 外部に排気される。
【0037】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想に基づいて、以下に示すような形態を採ることもできる。
【0038】
まず上述した基本となる実施例で示した乾燥システムSは、ヒートポンプユニット2を二基具えて構成されたものであったが、図3に示すように一基のヒートポンプユニット2を具えた構成としたり、更には図示は省略するが二基以上の複数機のヒートポンプユニット2を具えるようにしてもよい。
この場合、凝縮機21において昇温された乾燥気体D(90℃)を、管路Pを分岐することにより分流し、一方の乾燥気体Dを昇温装置5によって120℃に昇温し、乾燥気体D1として給気口12Aに供給するようにした。また他方の乾燥気体Dは、温度センサT3の検出値に基づいて、吹込ファン16Cによって混入される外気の量を調整することにより60℃とし、乾燥気体D2として給気口12Bに供給するようにした。
【0039】
また上述した基本となる実施例で示した乾燥システムSは、熱回収機構6を具えて構成されたものであったが、蒸発器23から作用水タンク4に戻される作用水4を昇温するための熱源を別途確保することができる場合には、熱回収機構6を設けることなく乾燥システムSを構成することもできる。
更に前記昇温装置5に蒸気を供給する蒸気発生装置の熱源として、乾燥システムSの周辺設備から排出される温排水等から回収される余剰熱を利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
S 乾燥システム
1 乾燥機
10 筐体
10a ダクト
11 通気板
11a 堰板
12 給気口
12A 給気口
12B 給気口
13 投入口
14 排気口
15 排出口
16A 吹込ファン
16B 吹込ファン
16C 吹込ファン
17 サイクロン
18 排気ファン
2 ヒートポンプユニット
2A ヒートポンプユニット
2B ヒートポンプユニット
21 凝縮器
22 膨張弁
23 蒸発器
24 圧縮機
4 作用水タンク
41 ポンプ
42 ポンプ
43 パイプ
5 昇温装置
51 熱交換器
52 パイプ
53 放熱フィン
54 流入口
55 流出口
56 調節弁
6 熱回収機構
61 熱交換器
62 パイプ
63 放熱フィン
64 流入口
65 流出口
D 乾燥気体
D1 乾燥気体
D2 乾燥気体
H 被処理物
M 作用水
P 管路
T1 温度センサ
T2 温度センサ
T3 温度センサ
T4 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機と、この乾燥機に乾燥気体を供給するための給気機構とを具えた乾燥システムにおいて、前記乾燥機は連続式熱風乾燥機であり、また前記給気機構はヒートポンプユニットを具えて成るものであり、更に前記給気機構には、ヒートポンプユニットにより昇温された乾燥気体を、更に昇温するための昇温装置が具えられていることを特徴とするヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。
【請求項2】
前記ヒートポンプユニットにおける蒸発器に供給される熱源としての作用水に、前記昇温装置において用いられた熱媒体に残存する熱を回収するための熱回収機構が具えられていることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。
【請求項3】
前記作用水を、周辺設備から排出された温排水により昇温するための構成が具えられたことを特徴とする請求項1または2記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。
【請求項4】
前記ヒートポンプユニットにおける蒸発器に供給される作用水が、ヒートポンプユニットの最適動作温度域に調整されていることを特徴とする請求項1、2または3記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。
【請求項5】
前記ヒートポンプユニットを複数基具えたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。
【請求項6】
前記ヒートポンプユニットは、二酸化炭素を冷媒とするものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のヒートポンプユニットと昇温装置とを具えた乾燥システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−21778(P2011−21778A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165427(P2009−165427)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】