説明

ヒートポンプ式温水暖房装置

【課題】ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路を一つの筐体内に納めることができ、貯湯タンク内の温水を循環させて床暖房や給湯を行う場合の循環経路内の水の膨張を吸収することができるヒートポンプ式温水暖房装置を提供すること。
【解決手段】本発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、ヒートポンプ回路と、貯湯タンク回路で構成され、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路とを一つの筐体50に収納し、貯湯タンク7に密閉式の膨張タンク37を接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ回路を用いて生成した温水で暖房を行うヒートポンプ式温水暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では石油やガスなどの燃焼系の燃料を熱源とした暖房機器の利用が大半を占めていたが、近年ではヒートポンプ技術を利用した暖房市場が急激に拡大している。そして、従来の空気調和機においてもヒートポンプ技術を利用して、冷房と暖房の双方を利用することができるものもある。
しかしながら、従来の空気調和機だけでは、暖房時に足元が暖まりにくい等の課題があり、それを解消するためにヒートポンプ技術を利用した温水暖房装置が開発されている(特許文献1)。
特許文献1に記載の温水暖房装置では、高温冷媒と温水とを熱交換して、熱交換して昇温した温水を床暖房パネル等の暖房端末へ送り、暖房を行っている。
一方、冷媒サイクルと給湯サイクルを一つの本体ユニット内に納めた一体型のヒートポンプ給湯機が既に提案されている(特許文献2、特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−39305号公報
【特許文献1】特開2003−404907号公報
【特許文献1】特開2007−155257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヒートポンプ式温水暖房装置では、給湯熱交換器が貯湯タンク内の上下にわたって設けられており、暖房端末へ送る温水を使用して給湯熱交換器で給湯用の温水を生成しているので、貯湯タンク内の温水全体の温度が低下してしまい、その結果、暖房端末へ送る温水の温度が低下するので、暖房端末での快適性が損なわれてしまう。
一方、特許文献2や特許文献3のヒートポンプ給湯機は、貯湯タンクで暖めた温水を給湯として出湯するものである。
この種のヒートポンプ給湯器は、特に欧米や中国などのように硬水の場合には、貯湯タンクや熱交換器、その他の配管内にスケールが付着しやすい。
従って、利用する水が硬水の場合には、貯湯タンク内の温水を循環させて床暖房や給湯を行うタイプのヒートポンプ式温水暖房装置が適しているが、閉空間となる循環経路内の水の膨張を吸収する膨張タンクが必要となる。
特に、貯湯タンク内の温水を屋内での床暖房やパネルヒータに用いる場合には、閉空間となる容積も大きくなるために、膨張タンクは必然的に大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路を一つの筐体内に納めることができ、貯湯タンク内の温水を循環させて床暖房や給湯を行う場合の循環経路内の水の膨張を吸収することができるヒートポンプ式温水暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路とを一つの筐体に収納し、貯湯タンクに密閉式の膨張タンクを接続したものである。本発明は、筐体内に密閉式の膨張タンクを設けることで、貯湯タンク回路を構成する循環経路内の水の膨張を吸収でき、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路とを別のユニットとする場合と比較して放熱が少なく、更に冬季における凍結が生じにくい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路を一つの筐体内に納めることができ、貯湯タンク内の温水を循環させて床暖房や給湯を行う場合の循環経路内の水の膨張を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式温水暖房装置の構成図
【図2】同実施の形態における筐体の前面からみた内部の要部構成図
【図3】同筐体の一方の側面からみた内部の要部構成図
【図4】同筐体の他方の側面から見た内部の要部構成図
【図5】同筐体の背面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、貯湯タンクに密閉式の膨張タンクを接続したものである。本発明によれば、貯湯タンク回路を構成する循環経路内の水の膨張を吸収できる。
【0010】
第2の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第1の発明において、貯湯タンクとして、縦長の円筒形タンクを用い、蒸発器に送風を行う送風ファンを設け、貯湯タンクを、筐体内の幅方向の一方の空間に配置し、蒸発器及び送風ファンを、筐体内の幅方向の他方の空間に配置し、膨張タンクを、貯湯タンクよりも高い位置に配置したものである。本発明によれば、筐体内にヒートポンプ回路と貯湯タンク回路とを収納でき、また膨張タンクを貯湯タンクよりも高い位置とすることで、貯湯タンク回路内水量に対する膨張タンクでの適応可能水量を多くすることができる。
【0011】
第3の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第2の発明において、膨張タンクを、貯湯タンクの上方空間に配置し、膨張タンクを断熱材で覆ったものである。本発明によれば、膨張タンク内には高温水が導入されるため、送風ファンによる空気流れの影響を少なくするとともに断熱材にて放熱を防ぐことで、熱効率を高めることができる。
【0012】
第4の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第1又は第2の発明において、貯湯タンク回路は、給湯回路を有し、前記沸き上げ回路では、沸き上げポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの水を前記水冷媒熱交換器に導き、前記水冷媒熱交換器で生成された温水を前記貯湯タンクに戻し、前記給湯回路では、給湯ポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの温水を給湯熱交換器に導き、前記給湯熱交換器で給湯管を流れる給湯水と熱交換した前記温水を前記貯湯タンクに戻し、前記暖房回路では、暖房ポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの温水を暖房端末に導き、前記暖房端末で放熱した前記温水を前記貯湯タンクに戻し、前記筐体には、前記給湯熱交換器に前記給湯水を供給する取入接続口と、前記給湯熱交換器で暖められた前記給湯水を給湯端末に導く取出接続口と、前記暖房端末に前記温水を供給する温水流出口と、前記暖房端末からの前記温水を前記貯湯タンクに戻す温水流入口とを備え、蒸発器を、筐体の背面及び筐体の他方の側面に対向して配置し、筐体の幅方向の一方の前面を閉塞し、筐体の幅方向の他方の前面を送付ファンの空気吹き出し口とし、筐体の背面の下部に、取入接続口、取出接続口、温水流出口、及び温水流入口を配置したものである。本発明によれば、一つの筐体内で、空気が流れて熱交換を行わせる空間と、放熱を防止する空間とを区分でき、4つの接続口を背面の下部に配置することで、例えば建物の壁面に沿って筐体を設置でき、筐体と屋内とをつなぐ配管を短くできるため、冬季の凍結防止を図ることができる。
【0013】
第5の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第4の発明において、貯湯タンクには、貯湯タンク内を上空間と下空間に分割する仕切り板と、上空間に配置する上部ヒータと、下空間に配置する下部ヒータとを備え、沸き上げ回路では、水冷媒熱交換器で生成された温水を下空間に戻し、給湯回路では、上空間の温水を給湯熱交換器に導き、暖房回路では、下空間の温水を暖房端末に導くものである。本発明によれば、ヒートポンプ回路による沸き上げ温度よりも高温水を貯湯タンクに貯留できるとともに、高温水を給湯水に利用できる。
【0014】
第6の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第1から第5の発明において、冷媒として、R407Cを用いたものである。本発明によれば、R410Aよりも高温水を得ることができる。
【0015】
第7の発明のヒートポンプ式温水暖房装置は、特に第1から第6の発明において、筐体の背面を建物の壁面に対向させて、前記筐体を屋外に設置するものである。本発明によれば、筐体と屋内とをつなぐ配管を短くできるため、冬季の凍結防止を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式温水暖房装置の構成図である。まず、図1を用いて本実施の形態におけるヒートポンプ式温水暖房装置の構成を説明する。本実施の形態のヒートポンプ式温水暖房装置は、ヒートポンプ回路と、貯湯タンク回路で構成され、ヒートポンプ回路と貯湯タンク回路を一つの筐体50に収納して屋外に設置する。
ヒートポンプ回路は、冷媒を圧縮して高温冷媒を吐出する圧縮機1と、水と高温冷媒とを熱交換して温水を生成する水冷媒熱交換器2と、冷媒を減圧する減圧装置3と、空気と冷媒とで熱交換を行う蒸発器4aと、冷媒の流路を変更する四方弁5とを備えている。そして、圧縮機1、水冷媒熱交換器2、減圧装置3、蒸発器4a、四方弁5を冷媒配管6で環状に接続してヒートポンプサイクルを構成している。また、ヒートポンプサイクルを構成する上で、蒸発器4aに送風を行い、空気と冷媒との熱交換を促進させる送風ファン4bを設けている。なお、水冷媒熱交換器2としては、プレート式熱交換器や二重管方式の熱交換器を用いることができる。ヒートポンプサイクルには、冷媒としてR410Aを用いるが、R407Cのフロン系冷媒がより適している。
一方、貯湯タンク回路には、湯水を貯える貯湯タンク7を有している。貯湯タンク7の内部には、貯湯タンク7の高さ方向の略中間部に仕切り板8が配置されている。貯湯タンク7の内部は、仕切り板8よりも上空間が給湯用温水部7aになり、仕切り板8よりも下空間が暖房用温水部7bとなる。このように貯湯タンク7の内部を上空間と下空間に分割することによって、給湯用温水部7a内の温水は給湯時の熱交換のために使用することができ、暖房用温水部7b内の温水は暖房時に暖房端末へ循環させるために使用することができる。
【0017】
さらに、貯湯タンク7の下方部には水出口10を設けている。水出口10から水冷媒熱交換器2へ低温水を送るための水配管には沸き上げポンプ9を備えている。そして沸き上げポンプ9を駆動することによって、水出口10から低温水を水冷媒熱交換器2へ送り、水冷媒熱交換器2で冷媒から吸熱して温水が生成される。
また、水冷媒熱交換器2で生成された温水は、暖房用温水部7bの上部に設けている湯入口11へ戻される。このように、本実施の形態では、貯湯タンク7、水出口10、沸き上げポンプ9、水冷媒熱交換器2、湯入口11を水配管で接続して沸き上げ回路を構成している。なお、沸き上げポンプ9には循環流量が一定のACポンプが用いられている。
【0018】
なお、仕切り板8には複数の開口部を設けており、ヒートポンプサイクルで加熱された温水が暖房用温水部7bへ戻ってきたときに、開口部を通って給湯用温水部7aへ温水が流入する。
また、仕切り板8の周囲と貯湯タンク7の内壁とは複数箇所の溶接ポイントで溶接されており、溶接箇所以外の仕切り板8の周囲と貯湯タンク7との間には隙間を設けている。そして、湯入口11から戻された温水は、仕切り板8の周囲と貯湯タンク7との間に設けた隙間を通って、給湯用温水部7aへ温水が流入する。
【0019】
また、貯湯タンク7および仕切り板8には耐食性の観点からステンレスを用いる。
また、水冷媒熱交換器2の水側入口には入水温度を検出する温度センサ12aと、水冷媒熱交換器2の水側出口には出湯温度を検出する温度センサ12bとを設けている。また、沸き上げ回路内に湯水が流れていることを検出するためのフロースイッチ13を設けている。
水冷媒熱交換器2の前後配管には、沸き上げポンプ9、フロースイッチ13、及び過圧逃し弁14を設けている。フロースイッチ13は湯水の流れを検知する。沸き上げポンプ9よりも下流にフロースイッチ13を配置している。このように沸き上げポンプ9よりもフロースイッチ13を下流に配置することで、沸き上げポンプ9が正常に動作していないことを検出することができる。
【0020】
また、沸き上げ回路内の圧力調整を行う過圧逃し弁14が沸き上げポンプ9よりも上方に設けられており、沸き上げ回路内に異常が発生して内圧が上昇し、過圧逃し弁14の設定圧力よりも高くなると、過圧逃し弁14から膨張した湯水を排水することができる。
また、給湯用温水部7aには、上部ヒータ15aが配置され、暖房用温水部7bには下部ヒータ15bが配置されている。上部ヒータ15aは給湯用温水部7a内の温水を加熱するために使用され、下部ヒータ15bは暖房用温水部7b内の温水を加熱するために使用される。
さらに、貯湯タンク7の側壁には温度センサ16a、16b、16c、16dが配置されており、貯湯タンク7内の湯水の温度を検出している。温度センサ16aは上部ヒータ15aよりも上方に配置され、温度センサ16bは上部ヒータ15aと略同じ高さに配置されている。また、温度センサ16cは仕切り板8よりも下方で、かつ、下部ヒータ15bよりも上方に配置され、温度センサ16dは下部ヒータ15bと略同じ高さに配置されている。
【0021】
また、貯湯タンク回路には、給湯端末17へ送る温水を生成する給湯熱交換器18を設けている。そして給湯熱交換器18の1次側の流路には貯湯タンク7内の高温水が送られ、給湯熱交換器18の2次側の流路には給水源から低温水が送られる。
また、給湯熱交換器18へ貯湯タンク7内の高温水を送るための水配管には給湯ポンプ19が設けられている。貯湯タンク7には、給湯用温水部7aの上部に出湯口20が設けられ、暖房用温水部7bの下部に入水口21が設けられている。そして給湯ポンプ19を駆動することによって、出湯口20から高温水を給湯熱交換器18の1次側の流路へ送る。
そして給湯熱交換器18で熱交換した後の温水は、入水口21から貯湯タンク7へ戻される。このように、本実施の形態では、貯湯タンク7、出湯口20、給湯熱交換器18、給湯ポンプ19、入水口21を水配管で接続して給湯回路を構成している。なお、給湯ポンプ19には循環流量が一定であるACポンプが用いられている。
【0022】
また、給湯ポンプ19と入水口21との間の水配管には、沸き上げ回路内の湯水の循環流量を調整する流量調節弁22と、逆止弁23が設けられている。逆止弁23は給湯回路内の湯水の対流を防止するために備えられている。これは、給湯ポンプ19を駆動していないときに、貯湯タンク7の上部にある高温水が給湯熱交換器18を通って、貯湯タンク7の下部へ入水することを防ぐ。貯湯タンク7の下部へ高温水が流入すると、水冷媒熱交換器2へ送られる温水の温度が高くなってしまい、沸き上げ効率が落ちるためである。
そこで、本実施の形態では、逆止弁23を設けることによって、ある所定の荷重以上の流量になったときだけ給湯回路内に湯水が順方向に循環するようにしている。本実施の形態では、逆止弁23の順方向に対して20gの荷重が掛かったときのみ、順方向に湯水が流れる。なお、荷重の値は20gに限定されるものではない。
【0023】
また、給湯回路内の圧力調整を行う過圧逃し弁24が出湯口20から給湯熱交換器18までの水配管に設けられており、給湯回路内の圧力が過圧逃し弁24の設定圧力よりも高くなると、過圧逃し弁24から湯水を排水する。また、貯湯タンク7の下部には排水栓25が設けられており、貯湯タンク7内の湯水を外部に排水することができる。
また、給水源より伸びている水道管は、取入接続口51によって給水管26に接続される。給水管26は、三方弁27を介して、貯湯タンク7の底部および給湯熱交換器18の2次側流路へと接続される。
そして、貯湯タンク回路を設置する際に、三方弁27を貯湯タンク7と接続される流路に切り替えて水張りを行い、貯湯タンク7が満水になった後は、三方弁27を給湯熱交換器18と接続される流路に切り替えておく。このように、貯湯タンク7へ入水したあとは、三方弁27を給湯熱交換器18へ接続される流路に切り替えておくことで、貯湯タンク7を含む水回路は閉回路となるので、新鮮な水は入ってくることなく、ミネラル分を多く含む硬水の地域であっても、スケールの析出は最初に貯湯タンク7へ入れた水量分のみに抑えることができる。
【0024】
また、三方弁27と給湯熱交換器18との間の水配管には過圧逃し弁29が設けられている。これは給湯熱交換器18へは給水源から直接給水圧が掛かることになるので、給水圧が高い場合、給水源から給湯熱交換器18へ直接入水すると、給湯熱交換器18を破壊してしまい故障させてしまう可能性がある。そのため、過圧逃し弁29を設けることによって、ある給水圧以上の湯水が入水した場合に、過圧逃し弁29を通して外部へ排水させ、給湯熱交換器18の故障を未然に防ぐことができる。
そして給水源から供給された低温水が給湯熱交換器18で昇温すると、給湯管30を通って給湯端末17に供給される。給湯端末17は、取出接続口52によって給湯管30に接続される。給湯管30には、湯水の温度を検出する給湯温度検出手段である温度センサ31および予備温度センサ32、および流量を検出するための流量検出手段である流量センサ33を備えている。
【0025】
また、居室内を暖房する暖房端末34を備えており、暖房端末34の内部を貯湯タンク7内の温水を循環させて居室内を暖房することができる。暖房端末34は、温水流出口53と温水流入口54とによって給湯タンク7と接続される。暖房ポンプ35は、貯湯タンク7の暖房用温水部7bから温水流出口53を経由して暖房端末34に温水を送り、暖房端末34から温水流入口54を経由して貯湯タンク7の暖房用温水部7bに戻される。なお、暖房端末34へ送られる温水は、湯入口11の近傍に設けられた温水取り出し口36から取り出され、暖房端末34へ暖房用温水部7bの温水が供給される。そして暖房端末34で熱交換した後の温水は貯湯タンク7の底部へ戻される。なお、暖房ポンプ35には、循環流量が一定のACポンプが用いられている。
貯湯タンク7には、密閉式の膨張タンク37が接続される。膨張タンク37は、ダイアフラムによって内部が水室と空気室に分離されており、ダイアフラムによって水室と空気室の容積が変更されるものである。従って、膨張タンク37は、貯湯タンク回路を構成する循環経路内の水の膨張を吸収することができる。膨張タンク37は、暖房ポンプ35から温水流出口53までの配管、又は温水流入口54から貯湯タンク7までの配管に接続してもよいが、貯湯タンク7の上部に接続することが好ましい。
【0026】
以上のように構成されたヒートポンプ式温水暖房装置において、以下、ヒートポンプ式温水暖房装置の動作について説明する。
まず、沸き上げ運転について説明する。まず、水冷媒熱交換器2における湯水の沸き上げ温度Thを設定する。そして沸き上げ運転が開始されると、沸き上げポンプ9が駆動し貯湯タンク7内の温水が水冷媒熱交換器2へ供給される。そして、温度センサ12bで検出される温度が沸き上げ温度Thを超えるまでヒートポンプ回路による沸き上げ運転が継続される。なお、貯湯タンク7内の温水をヒートポンプ回路で沸き上げる時には、圧縮機1から吐出する高温冷媒が水冷媒熱交換器2へ流入する流路となるように四方弁5が切り替わっている。
その結果、圧縮機1から吐出される高温冷媒が水冷媒熱交換器2へ流入し、湯水へと放熱することによって高温水を生成することができる。なお、水冷媒熱交換器2内では、水と冷媒とは対向流にして熱交換効率を向上させている。
そして、温度センサ12bで検出する水冷媒熱交換器2から出湯する湯水の温度が、沸き上げ温度Thに近づいてくると、圧縮機1の回転数を小さくして能力を下げる。そして温度センサ12bで検出する温度が、沸き上げ温度Thよりも所定温度Ta(例えば、2℃)だけ高くなると、圧縮機1の運転を停止して沸き上げ運転を終了する。そして、貯湯タンク7へは沸き上げ温度Thの湯水で満たされることになる。
なお、水冷媒熱交換器2で生成された高温水は、暖房用温水部7bへ戻されるが、仕切り板8の周囲と貯湯タンク7との間にできた隙間を通って、給湯用温水部7aも沸き上げ温度Thの湯水で満たされる。このとき、圧縮機1の運転を停止した時に温度センサ12aで検出した入水温度Tiを記憶しておく。
【0027】
また、ヒートポンプ回路による沸き上げ運転が終了した後も、沸き上げポンプ9を駆動させて貯湯タンク7内の温水を水冷媒熱交換器2へ循環させている。これは沸き上げ運転停止中であっても、温度センサ12aおよび温度センサ12bで貯湯タンク7内の温水の温度を検出しておく必要があり、貯湯タンク7内の温水の温度が低下するとすぐにヒートポンプ回路による沸き上げ運転を再開しなければならないからである。
そして、給湯運転停止中も沸き上げポンプ9を駆動して、温度センサ12aで貯湯タンク7内の温水を常時検出しており、温度センサ12bで検出する温度が、圧縮機1の運転を停止した時に記憶した入水温度Tiよりも所定温度Tb(例えば、5℃)だけ小さくなった時に圧縮機1の運転を再開し、沸き上げ運転を開始する。
例えば、沸き上げ温度Thに55℃を設定すると、温度センサ12bで検出する温度が57℃(=55℃+2℃)を超えたときに圧縮機1の運転を停止する。そして、圧縮機1の運転を停止した時の温度センサ12aの温度が53℃であったとすると、入水温度Tiが53℃であると記憶する。そして、圧縮機1の運転が停止後も沸き上げポンプ9の駆動を行い、温度センサ12bが検出する温度が入水温度Tiよりも所定温度Tb(例えば、5℃)小さくなったときに圧縮機1の運転を再開する。また、本実施の形態に示した所定温度Ta、Tbは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0028】
また、貯湯タンク回路では、上部ヒータ15aの沸き上げ温度Tu、下部ヒータ15bの沸き上げ温度Tbo、給湯端末17への給湯温度Tkを設定することができる。
そして、本実施の形態では上部ヒータ15aの沸き上げ温度Tuを、沸き上げ温度Thよりも高い温度に設定しておくことで、給湯用温水部7a内の温水を沸き上げ温度Tuまで沸き上げることができる。例えば、沸き上げ温度Thを55℃に設定し、沸き上げ温度Tuを75℃に設定すると、水冷媒熱交換器2で沸き上げ温度Th(55℃)まで沸き上げ、さらに上部ヒータ15aで75℃まで沸き上げ運転を行う。
このように、仕切り板8の上空間と下空間とで異なる沸き上げ温度を設定することができるので、それぞれの端末に合わせて最適な温度に沸き上げることができ、使用性を向上させることができる。
【0029】
次に、上部ヒータ15aでの沸き上げ運転について説明する。上部ヒータ15aの運転を開始するときは、上部ヒータ15aよりも高い位置に設けられた温度センサ16aで検出する温度が、沸き上げ温度Tuよりも所定温度Tc(例えば、5℃)だけ低い温度を検出した時に上部ヒータ15aの出力をONする。そして上部ヒータ15aによって給湯用温水部7a内の温水を温め、上部ヒータ15aと同じ位置に設けられた温度センサ16bで検出する温度が、沸き上げ温度Tuよりも所定温度Td(例えば、2℃)だけ高い温度を検出した時に上部ヒータ15aの出力をOFFしている。
このように上部ヒータ15aがONするときに判断する温度センサと、上部ヒータ15aがOFFするときに判断する温度センサを異ならせることによって、頻繁に上部ヒータ15aのON・OFFが切り替えられることがないようにし、上部ヒータ15aの耐久性を向上させている。また、本実施の形態に示した所定温度Tc、Tdは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0030】
次に、下部ヒータ15bでの沸き上げ運転について説明する。下部ヒータ15bはヒートポンプユニットAによる沸き上げ運転が出来ないときにONさせることによって、暖房用温水部7b内の温水の温度低下を防止することができる。
例えば、暖房運転を継続すると蒸発器4aに着霜してしまい、除霜運転を行わなければならない。その時には、四方弁5で冷媒流路を切り替えることによって、圧縮機1から出た高温冷媒を蒸発器4aへ流入させ、冷媒の温度で除霜を行う。
しかしながら、除霜運転時には水冷媒熱交換器2で冷媒を放熱させることはできないため、水冷媒熱交換器2での温水生成ができなくなってしまう。その結果、暖房用温水部7b内の温水が低下してしまい、暖房端末34へ供給する湯水の温度を下げてしまう。それを防止するために、下部ヒータ15bをONさせることによって暖房用温水部7b内の温水の低下を防ぎ、暖房端末34での快適性を維持させることができる。なお、除霜運転だけではなく、ヒートポンプユニットAが故障したときであっても、下部ヒータ15bによって暖房用温水部7b内の湯水を加熱することができる。
【0031】
本実施の形態では、温度センサ16dで検出する温度が、沸き上げ温度Tboよりも所定温度Te(例えば、10℃)だけ低いことを検出した場合に限って、下部ヒータ15bがONするように制御されている。
その結果、沸き上げ温度Tbo=沸き上げ温度Thと設定されている場合は、暖房用温水部7bにはヒートポンプ回路によって沸き上げ温度Thまで沸き上げられることになり、温度センサ16dが検出する温度が、沸き上げ温度Tboよりも所定温度Teだけ低いことを検出しない限り、下部ヒータ15bがONすることはない。
また、蒸発器4aの除霜運転時や、ヒートポンプ回路の能力が出ない時において、温度センサ16dで検出する温度が、沸き上げ温度Tboよりも所定温度Teだけ低いことを検出した時に限って下部ヒータ15bをONすることができ、非常に効率の良い、沸き上げ運転を行うことができる。
また、下部ヒータ15bによる沸き上げ運転が行われた場合において、下部ヒータ15bを停止する場合には、温度センサ16dで検出する温度が、沸き上げ温度Tboよりも所定温度Tf(例えば、2℃)だけ高いことを検出すると下部ヒータ15bがOFFするように沸き上げ運転が行われる。
【0032】
以上のように、ヒートポンプ回路による沸き上げ運転と、下部ヒータ15bによる沸き上げ運転とを併用することで、蒸発器4aの除霜運転等によりヒートポンプユニットAによる沸き上げ運転が行われない状態であっても、暖房用温水部7b内の温水は沸き上げ温度Tboの状態に維持され、暖房端末34へ安定的に温水を送ることができ、快適性を損なうことがない。また、本実施の形態に示した所定温度Te、Tfは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0033】
次に、暖房運転について説明する。暖房運転を開始すると、暖房ポンプ35が駆動し、暖房用温水部7b内の温水が暖房端末34へ供給される。そして暖房端末34で放熱した温水は貯湯タンク7の下方部へ戻される。このとき、暖房ポンプ35にはACポンプを使用しているので、暖房運転時には一定流量の湯水を循環させているだけである。
【0034】
次に、給湯運転について説明する。給湯設定温度Tkを設定する。そして、給湯端末17から湯水が出湯し、流量センサ33で所定の流量以上になったことを検知すると、給湯ポンプ19が駆動し、給湯用温水部7aにある高温水を給湯熱交換器18へ送る。
そして、温度センサ31で検出する温度T1と、給湯設定温度Tkとの温度偏差に応じて流量調整弁22の開度を調節し、温度センサ31で検出する温度T1が給湯設定温度Tkとなるようにフィードバック制御される。そして、給湯熱交換器18で放熱した後の温水は暖房用温水部7bの下方部へ戻される。
一方、暖房用温水部7b内では上部ほど温度が高い温度層ができているため、給湯熱交換器18で放熱したあとの温水が暖房用温水部7bの下方部へ戻されても、暖房端末34へ送る温水の温度へは影響が少ない。
このように、給湯熱交換器18へ送る温水は給湯用温水部7a内の高温水を使用し、暖房端末34へ送る温水は暖房用温水部7b内の高温水を使用するため、暖房端末34へ送る温水が受ける給湯運転の影響を抑制することができる。
また、流量センサ33で湯水の流れを検出していない場合に、温度センサ31で検出される温水温度T1が、給湯異常温度Tj(例えば、65℃)以上を検出すると、異常が発生していると判断し、給湯ポンプ19の駆動を停止するとともに流量調整弁22の開度を全閉にして、確実に貯湯タンク7内の高温水を給湯熱交換器18へ送ることを防止している。これによって、無駄に貯湯タンク7内の高温水の使用を防ぎ、貯湯タンク7内の湯切れを防止することができる。なお、本実施の形態に示した給湯異常温度Tjは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0035】
また、本実施の形態のヒートポンプ式温水暖房装置は、予備温度センサ32を設けている。これによって給湯端末17から高温水を出湯させることがないようにしている。次に、給湯運転時における予備温度センサ32による異常検出について説明する。
まず、給湯運転を行っている最中は、予備温度センサ32において給湯端末17へ供給される温水の温度を検出しておき、温度センサ31で検出される温度T1と予備温度センサ32で検出される温度T2との温度偏差を検出している。
そして温度T1よりも温度T2が所定温度Tg(例えば、8℃)だけ高いことを検出すると、温度センサ31が誤動作している可能性があり、給湯端末17へ高温水を出湯させてしまう可能性があるので、給湯ポンプ19の駆動を停止し、さらに流量調整弁22の開度を全閉とする。その結果、給湯端末17から高温水が出湯されることはなく、安全性を確保することができる。また、本実施の形態に示した所定温度Tgは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0036】
次に、給湯運転時における流量調整弁22の制御について説明する。
まず、給湯端末17から湯水が出湯すると、流量センサ33で所定の流量以上になったことを検知する。そして、流量センサ33で所定の流量以上になったことを検知すると、給湯ポンプ19の駆動を開始させる。
そして、給湯ポンプ19の駆動を開始してから、所定時間α(例えば、8秒)が経過した後に流量調整弁22の駆動を開始し、温度センサ31で検出する温度T1が、給湯設定温度Tkとなるように流量調整弁22の開度を調整される。なお、所定時間αの間は、流量調整弁22の開度は所定の開度に保持されている。
このように、流量調整弁22の駆動を開始するタイミングを給湯ポンプ19の駆動を開始してから所定時間αだけ遅らせることによって、給湯端末17へ供給される湯水の温度がハンチングするのを防ぐことができる。
これは、前回給湯運転が終了してから給湯運転が長時間行わなければ、給湯熱交換器18が冷えてしまうので、給湯運転を開始してから給湯熱交換器18の温度が安定するまでは、貯湯タンク7から給湯熱交換器18へ送る温水の流量を一定にすることで、給湯端末17へ供給される湯水の温度のハンチングを防止している。
【0037】
次に、給湯運転中の流量調整弁22の開度について説明する。通常の給湯運転における流量調整弁22の制御は、温度センサ31で検出される温度T1に基づいて行われる。給湯設定温度Tkを設定することで、温度センサ31で検出される温度が、給湯設定温度Tkとなるように流量調整弁22の開度が調節される。
しかしながら、給湯端末17を操作することによって、給水源から給湯熱交換器18へ送られる湯水の流量が変化すると、貯湯タンク7から給湯熱交換器18へ送られている高温水と、給水源から給湯熱交換器18へ送られている低温水のバランスが崩れてしまい、給湯端末17へ供給する湯水の温度がハンチングしてしまう。
そこで、本実施の形態では、流量センサ33で検出する湯水の流量変化に応じて流量調整弁22の開度を決定している。
【0038】
まず、給湯端末17から湯水が出湯すると、温度センサ31で検出される温度T1が給湯設定温度Tkとなるように流量調整弁22の開度が調整される。そして、給湯端末17が操作されて流量センサ33で検出している流量に変化があると、給湯熱交換器18での熱バランスが崩れてしまう。
そのため、給湯端末17へ供給される湯水の流量が変化してから、温度センサ31で検出する温度T1に変化が現れるまでに数秒を要してしまい、温度センサ31で検出する温度T1に基づいて流量調整弁22の開度を制御すると、給湯端末17へ供給される湯水の温度が上下にハンチングしてしまう。
そこで、本実施の形態では、所定時間La前の流量Qaを常に記憶しておき、現在流量Qoと所定時間La前の流量Qaとを比較する。そして、流量を比較した結果、流量Qd以上の増加があった場合には、温度センサ31で検出する温度T1がどのような温度であっても、流量調整弁22の開度を目標開度Ptまで駆動する。
また、目標開度Ptは、現在流量Qoと所定時間La前の流量Qaと流量調整弁22の現在開度Pnに応じて決定される。このとき、現在流量Qoが所定時間La前の流量Qaよりも大きく増加したということは、給湯端末17へ供給される湯水の量が増加するということなので、貯湯タンク7から給湯熱交換器18へ更に高温水を供給する必要があるので、目標開度Ptは現在開度Pnよりも開く方向に動く。
【0039】
次に、現在流量Qoと所定時間La前の流量Qaとを比較して、流量Qd以上の減少があった場合には、温度センサ31で検出する温度T1がどのような温度であっても、流量調整弁22の開度を目標開度Ptまで駆動する。
また、目標開度Ptは、現在流量Qoと所定時間La前の流量Qaと流量調整弁22の現在開度Pnに応じて決定される。このとき、現在流量Qoが所定時間La前の流量Qaよりも大きく減少したということは、給湯端末17へ供給される湯水の量が減少するということなので、貯湯タンク7から給湯熱交換器18へ供給される高温水を絞る必要があるので、目標開度Ptは現在開度Pnよりも閉じる方向に動く。
以上のように、給湯端末17へ供給される湯水の流量が大きく変化した時には、温度センサ31で検出する温度T1がどのような温度であっても、流量調整弁22の開度を目標開度Ptに駆動させることで、給湯端末17へ供給する湯水の温度がハンチングすることを抑制することができる。
さらに、現在開度Pnから目標開度Ptへと変化させても、温度センサ31で検出する温度T1が大きくオーバーシュートしてしまう場合がある。そこで、本実施の形態では、温度センサ31で検出する温度T1が給湯設定温度Tkよりも所定温度Ty(例えば、3℃)以上高い場合は、さらに流量調整弁22の開度を所定開度Dだけ絞っている。
さらに、所定開度Dは、流量センサ33で検出する現在流量Qoが大流量の時と、小流量の時で異ならせている。つまり、現在流量Qoが所定流量Qb(例えば、5L/min)よりも大きいかどうかを判断し、現在流量Qoが所定流量Qbよりも大きい場合には、さらに流量調整弁22の開度を所定開度Daだけ下げ、現在流量Qoが所定流量Qbよりも小さい場合には、さらに流量調整弁22の開度を所定開度Dbだけ下げる。このとき、所定開度Da>所定開度Dbという関係を有している。
【0040】
流量調整弁22の開度が小さい時の流量の変化量と、流量調整弁22の開度が大きい時の流量の変化量では異なる。例えば、大流量である開度PaのポイントMaから流量Qxだけ下げようとすると、開度PbであるポイントMbまで下げる必要があるが、小流量である開度PcのポイントMcから流量Qxだけ下げようとすると、開度PdであるポイントMdまで下げるだけでよい。つまり、大流量ほど大きく開度を絞らないと流量が落ちないということが分かる。そこで、本実施の形態では所定開度Da>所定開度Dbとして、現在流量Qoが大流量ほど大きく開度を絞っている。
また、流量調整弁22の特性としては開度が小さいほど、流量変化が大きくなるという特性を持っているので、流量調整弁22の開度を所定開度Da下げる時の駆動速度の方が、流量調整弁22の開度を所定開度Db下げる時の駆動速度よりも速くなるように制御する。
以上のように、現在流量Qoが所定流量Qbよりも大きい流量にあるのか、小さい流量にあるのかによって、流量調整弁22の変化開度を所定開度Daと所定開度Dbの2種類に分けて制御し、さらに流量調整弁22の駆動速度を現在流量Qoが大流量の時と小流量の時で分けて制御することで、流量調整弁22の特性に応じた制御を行うことができ、さらにオーバーシュートの時間をより短縮することができる。また、本実施の形態に示した所定温度Ty、所定流量Qb、所定開度Da、Dbは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0041】
次に、給湯運転を停止している時の流量調整弁22の開度について説明する。まず、給湯運転終了後の所定時間β(例えば、10分)以内であれば、給湯熱交換器18は熱を保有しているので、流量調整弁22の開度は給湯運転終了時の開度を保持して、再度給湯端末17から湯水が出湯するときには、前回の給湯運転時と同じ温度で給湯端末17へ湯水が供給される。
しかしながら、給湯運転終了後の所定時間β以降は、給湯熱交換器18の温度が下がったり、貯湯タンク7内の温水が沸き上げられている可能性があるため、次回給湯端末17から湯水を出湯させたときに給湯熱交換器18から出湯する湯水の温度がハンチングしてしまい、高温の湯水が給湯端末17へ供給される可能性がある。
【0042】
給湯運転終了後の流量調整弁22の開度について説明する。
まず、給湯運転終了後の所定時間β以降は、給湯運転終了時の流量調整弁22の開度が所定開度Kaよりも大きいかどうかを判断する。そして、流量調整弁22の開度が所定開度Kaよりも大きければ、次回給湯運転時に給湯端末へ高温水を送ってしまう可能性があるので、流量調整弁22の開度を所定開度Kaとなるまで駆動する。
そして流量調整弁22の開度を所定開度Kaまで駆動する時には、一旦、流量調整弁22を全閉にして原点位置を確認した後、所定開度Kaまで駆動するようにしている。このように原点位置を確認することによって、正確な開度で流量調整弁22を保持することができ、次回給湯運転時に給湯端末17へ高温水が出湯することを防ぐ。
【0043】
また、給湯運転終了時の流量調整弁22の開度が所定開度Kaよりも小さければ、次回給湯運転時に給湯端末へ高温水を送ってしまう可能性がないため、流量調整弁22の開度は給湯運転終了時のままにしておき、次回の給湯運転に備えている。
以上のように、給湯運転を行っていない時の流量調整弁22の開度を調整することによって、次回の給湯運転時に給湯端末17へ高温水を送ってしまうことを防止することができる。なお、所定開度Kaは、給湯端末17からどのような流量の湯水を出したとしても、供給される湯水の温度が所定温度を超えない値としており、それぞれのシステムに応じて適宜変更することができる。また、本実施の形態に示した所定時間α、βは、一つの実施例であって、本実施の形態に限定されることはない。
【0044】
次に、本実施の形態におけるヒートポンプ式温水暖房装置における筐体について説明する。
図2は、同筐体を前面からみた内部の要部構成図、図3は、同筐体の一方の側面からみた内部の要部構成図、図4は、同筐体の他方の側面から見た内部の要部構成図、図5は、同筐体の背面図である。
貯湯タンク7には、縦長の円筒形タンクを用いる。
筐体50内の幅方向の一方の空間には、貯湯タンク7を配置する。また、筐体50内の幅方向の他方の空間には、蒸発器4a、送風ファン4b、圧縮機5、水冷媒熱交換器2、沸き上げポンプ9、給湯ポンプ19、及び暖房ポンプ35を配置する。送風ファン4bは、高さ方向に2つ設けることが好ましい。圧縮機5、水冷媒熱交換器2、沸き上げポンプ9、給湯ポンプ19、及び暖房ポンプ35は、筐体50内の幅方向の他方の空間の下部に配置し、蒸発器4a及び送風ファン4bは、筐体50内の幅方向の他方の空間の上部に配置する。
膨張タンク37は、貯湯タンク7よりも高い位置に配置する。膨張タンク37を貯湯タンク7よりも高い位置とすることで、貯湯タンク回路内水量に対する膨張タンク37での適応可能水量を多くすることができる。膨張タンク37は、貯湯タンク7の上方空間に配置することが好ましい。また膨張タンク37は断熱材38で覆っている。膨張タンク37には高温水が導入されるため、送風ファン4bによる空気流れの影響を少なくするとともに断熱材38にて放熱を防ぐことで、熱効率を高めることができる。
蒸発器4aは、筐体50の背面及び筐体50の他方の側面に対向して配置している。
筐体50の幅方向の一方の前面は閉塞し、筐体50の幅方向の他方の前面は送付ファン4bの空気吹き出し口としている。
筐体50の背面の下部には、取入接続口51、取出接続口52、温水流出口53、及び温水流入口54を配置している。
なお、本実施の形態においては、沸き上げポンプ9を駆動することで、貯湯タンク7内の水を直接水冷媒熱交換器2に導き、水冷媒熱交換器2で生成された温水を貯湯タンク7に戻すことで、貯湯タンク7内の湯水を加熱し、また、貯湯タンク7内の湯水を、暖房ポンプ35を駆動することで、直接暖房端末34に導き、暖房端末34で放熱した温水を貯湯タンク7内に戻しているが、水冷媒熱交換器2で生成された温水を直接暖房端末34に導いてもよいし、また、水冷媒熱交換器2で生成された温水にて貯湯タンク7内の水を加熱する構成としてもよい。
【0045】
本実施の形態によれば、一つの筐体50内で、空気が流れて熱交換を行わせる空間と、放熱を防止する空間とを区分でき、取入接続口51、取出接続口52、温水流出口53、及び温水流入口54を背面の下部に配置することで、例えば建物の壁面に沿って筐体50を設置でき、筐体50と屋内とをつなぐ配管を短くできるため、冬季の凍結防止を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、硬水で寒冷地に適したヒートポンプ式温水暖房装置である。
【符号の説明】
【0047】
1 圧縮機
2 水冷媒熱交換器
3 減圧装置
4a 蒸発器
4b 送風ファン
5 四方弁
6 冷媒管
7 貯湯タンク
8 仕切り板
9 沸き上げポンプ
10 水出口
11 湯入口
12a、b 温度センサ
13 フロースイッチ
14 過圧逃し弁
15a 上部ヒータ
15b 下部ヒータ
16a、16b、16c、16d 温度センサ
17 給湯端末
18 給湯熱交換器
19 給湯ポンプ
20 出湯口
21 入水口
22 流量調整弁
23 逆止弁
24 過圧逃し弁
25 排水栓
26 給水管
27 三方弁
28 過圧逃し弁
29 過圧逃し弁
30 給湯管
31 温度センサ
32 予備温度センサ
33 流量センサ
34 暖房端末
35 暖房ポンプ
36 温水取り出し口
37 膨張タンク
50 筐体
51 取入接続口
52 取出接続口
53 温水流出口
54 温水流入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ回路と、貯湯タンク回路で構成され、
前記ヒートポンプ回路が、冷媒を圧縮して高温冷媒を吐出する圧縮機と、水と高温冷媒とを熱交換して温水を生成する水冷媒熱交換器と、冷媒を減圧する減圧装置と、空気と冷媒とで熱交換を行う蒸発器とを有し、
前記貯湯タンク回路は、沸き上げ回路と、暖房回路とを有し、
前記沸き上げ回路では、前記水冷媒熱交換器にて前記貯湯タンク内の湯水を加熱し、
前記暖房回路では、前記水冷媒熱交換器で生成された前記温水を直接または前記貯湯タンクを介して暖房端末に導き、前記暖房端末で放熱させ、
前記ヒートポンプ回路と前記貯湯タンク回路とを一つの筐体に収納したヒートポンプ式温水暖房装置であって、
前記貯湯タンクに密閉式の膨張タンクを接続したことを特徴とするヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項2】
前記貯湯タンクとして、縦長の円筒形タンクを用い、
前記蒸発器に送風を行う送風ファンを設け、
前記貯湯タンクを、前記筐体内の幅方向の一方の空間に配置し、
前記蒸発器及び前記送風ファンを、前記筐体内の幅方向の他方の空間に配置し、
前記膨張タンクを、前記貯湯タンクよりも高い位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項3】
前記膨張タンクを、前記貯湯タンクの上方空間に配置し、前記膨張タンクを断熱材で覆ったことを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項4】
前記貯湯タンク回路は、給湯回路を有し、
前記沸き上げ回路では、沸き上げポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの水を前記水冷媒熱交換器に導き、前記水冷媒熱交換器で生成された温水を前記貯湯タンクに戻し、
前記給湯回路では、給湯ポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの温水を給湯熱交換器に導き、前記給湯熱交換器で給湯管を流れる給湯水と熱交換した前記温水を前記貯湯タンクに戻し、
前記暖房回路では、暖房ポンプを駆動することで、前記貯湯タンクの前記温水を前記暖房端末に導き、前記暖房端末で放熱した前記温水を前記貯湯タンクに戻し、
前記筐体には、
前記給湯熱交換器に前記給湯水を供給する取入接続口と、
前記給湯熱交換器で暖められた前記給湯水を給湯端末に導く取出接続口と、
前記暖房端末に前記温水を供給する温水流出口と、
前記暖房端末からの前記温水を前記貯湯タンクに戻す温水流入口と
を備え、
前記蒸発器を、前記筐体の背面及び前記筐体の他方の側面に対向して配置し、
前記筐体の幅方向の一方の前面を閉塞し、
前記筐体の幅方向の他方の前面を前記送付ファンの空気吹き出し口とし、
前記筐体の前記背面の下部に、前記給水取入接続口、前記取出接続口、前記温水流出口、及び前記温水流入口を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項5】
前記貯湯タンクには、
前記貯湯タンク内を上空間と下空間に分割する仕切り板と、
前記上空間に配置する上部ヒータと、
前記下空間に配置する下部ヒータと、
を備え、
前記沸き上げ回路では、前記水冷媒熱交換器で生成された前記温水を前記下空間に戻し、
前記給湯回路では、前記上空間の前記温水を前記給湯熱交換器に導き、
前記暖房回路では、前記下空間の前記温水を前記暖房端末に導く
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項6】
前記冷媒として、R407Cを用いたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のヒートポンプ式温水暖房装置。
【請求項7】
前記筐体の前記背面を建物の壁面に対向させて、前記筐体を屋外に設置することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のヒートポンプ式温水暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247175(P2012−247175A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122003(P2011−122003)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】