説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】 貯湯タンクに溜まる中温湯を優先的に使用することができ、沸上運転時に加熱源への中温湯の供給を回避できてCOPの低下を防止でき、しかも、制御の簡略化を図ることができるヒートポンプ式給湯機を提供すること。
【解決手段】 貯湯タンク1の底部から低温水を流出させて、低温水をヒートポンプ式加熱源3にて沸き上げて貯湯タンク1の上部に戻す沸上運転を行なうヒートポンプ式給湯機である。貯湯タンク1内の中温湯の温度が設定給湯温度より高い場合であって、かつ最も低い温度の中温湯から採湯する。該当するいずれかの中温湯用出湯管23a〜23cからの中温湯と、水供給管25からの給水とを混合弁21にて混合し、混合弁21にて設定給湯温度に混合した温水を給湯管26より給湯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に関し、特に浴槽や台所等への給湯が可能な貯湯タンクを備えたヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のヒートポンプ式給湯機として、従来から貯湯タンクを備えたものがある。ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンクの底部から低温水を流出させて、この低温水をヒートポンプ式加熱源にて沸き上げて貯湯タンクの上部に戻す沸上運転を行なう。そして、貯湯タンクの上部には出湯管が接続され、給湯の際にはこの出湯管を介して貯湯タンクの高温の湯(高温湯)が出湯される。また、風呂の追い焚きや保温のための熱交換器の熱源として、この貯湯タンクの湯が使用される。この場合、高温の湯が熱交換器に供給され、この熱交換器で熱交換されて温度低下して、30℃〜50℃程度の中間温度の温水(中温湯)となって貯湯タンクに戻る。このため、貯湯タンクには、その上下方向中間部に中温湯が溜まっている場合が多い。このような場合には、中温湯は、風呂の追い焚き等に利用するには低温すぎて、使用しきれない。そのため、高温湯が無くなるいわゆる湯切れ状態となれば、中温湯が残ったまま沸上運転を行なうことになる。
【0003】
しかしながら、中温湯が残ったまま沸上運転を行なうと、中温湯がヒートポンプ加熱源に供給される。このような中温湯をヒートポンプ加熱源にて加熱した場合、効率が悪く、COP(エネルギー消費効率)を低下させていた。そこで、この中温湯を優先的に使用できるようにしたヒートポンプ式給湯機が提案されている。
【0004】
すなわち、図5に示すように、貯湯タンク51に中温湯用出湯管52を接続し、この中温湯用出湯管52を、切換弁53を介して、貯湯タンク51の上部に接続される出湯管54に接続している。また、貯湯タンク51の下部に給水管55が接続され、さらにこの給水管55から分岐管56が分岐されている。そして、この分岐管56が混合弁57に接続されている。
【0005】
すなわち、上記中温湯の温度が設定給湯温度以上のときには、切換弁53を、中温湯用出湯管52からの中温湯が混合弁57に供給されるように切り換え、この中温湯と、分岐管56からの給水とを混合弁57にて混合して給湯することになる。また、上記中温湯の温度が設定給湯温度未満のときには、切換弁53を出湯管54からの高温湯が混合弁57に供給されるように切り換え、この出湯管54の高温湯と、分岐管56の給水とを混合弁57にて混合して給湯することになる。
【0006】
このため、中温湯の温度が設定給湯温度未満のときには、この中温湯を使用しないことになり、この中温湯が残ることになる。従って、湯切れ状態となっても中温湯が残ったままであり、この状態で沸上運転を行なうことになる。
【0007】
そのため、中温湯を優先的に使用して、湯切れ状態となっても中温湯が残らないようにしたものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1に記載のヒートポンプ式給湯機は、図6に示すように、貯湯タンク61の頂部に出湯管62を接続すると共に、貯湯タンク61の底部に給水管63を接続し、さらに、貯湯タンク61の上下方向中間部に中温湯用出湯管64を接続している。そして、給水管63には給水バイパス管65が接続され、この給水バイパス管65と、中温湯用出湯管64とが混合弁(第2混合弁)67を介して接続される。また、出湯管62は混合弁(第1混合弁)66を介して給湯管68が接続されている。そして、第1混合弁66と第2混合弁67とは接続管69を介して接続される。なお、給湯管68にはカラン70が接続されている。
【0008】
この場合、中温湯用出湯管64からの中温湯の温度が設定給湯温度よりも高い場合には、第2混合弁67において、中温湯用出湯管64からの中温湯が給水バイパス管65からの給水とを混合して、その混合湯を給湯管68から給湯する。また、中温湯用出湯管64からの中温湯の温度が設定給湯温度より低い場合には、第1混合弁66において、中温湯用出湯管64からの中温湯と出湯管62からの高温湯とを混合して、その混合湯を給湯管68から給湯する。
【特許文献1】特開2004−197958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図6に示すヒートポンプ式給湯機では、中温湯用出湯管64からの中温湯の温度が設定給湯温度より高い場合には、第1混合弁66において出湯管62側を全閉状態とすると共に、第2混合弁67を制御状態とする。また、中温湯用出湯管64からの中温湯の温度が設定給湯温度よりも低い場合には、第2混合弁67において給水バイパス管65側を全閉状態とすると共に、第1混合弁66を制御状態とする。
【0010】
このため、上記ヒートポンプ式給湯機においては、2つの混合弁を必要とし、しかも、中温湯用出湯管64からの中温湯の温度に応じて、この2つの混合弁の制御を行なう必要があり、その制御が複雑であり、安定した制御が困難であり、装置としてコスト高となる。また、貯湯タンク1から中温湯を取り出す位置が1カ所であり、そのため、中温湯の取り出し口より上方に設定給湯温度より高い中温湯がある場合、中温湯を有効に使用することができない。
【0011】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、貯湯タンクに貯まる中温湯を優先的に使用することができ、沸上運転時に加熱源への中温湯の供給を回避できてCOPの低下を防止でき、しかも、制御の簡略化を図り、装置の低コスト化を図ることを目的としたヒートポンプ式給湯機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク1の底部から低温水を流出させて、この低温水をヒートポンプ式加熱源3にて沸き上げて貯湯タンク1の上部に戻す沸上運転を行なうヒートポンプ式給湯機であって、上記貯湯タンク1の上部の高温湯を出湯する出湯管16と、この出湯管16と低温水を供給する水供給管25とを接続する混合弁21と、上記出湯管16に介設されている開閉弁19と、上記貯湯タンク1の上下方向に複数設けられている中温湯出湯口22a〜22cに一端側がそれぞれ接続され、他端側が上記混合弁21と開閉弁19との間の出湯管16に接続されて該混合弁21に中温湯を供給する複数の中温湯用出湯管23a〜23cと、上記各中温湯用出湯管23a〜23cにそれぞれ介設されている開閉弁20a〜20cと、上記混合弁21に接続される給湯管26とを備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載のヒートポンプ式給湯機では、上下方向のいずれかの中温湯の温度が設定給湯温度以上であって、かつ最も低い温度に対応した中温湯出湯口22に接続されている中温湯用出湯管23からの中温湯を出湯管16を介して混合弁21に供給すると共に、上記中温湯の温度が設定給湯温度未満のときには出湯管16から高温湯を混合弁21に供給するように上記各開閉弁19、20a〜20cを開閉制御する弁制御手段30を有し、給湯時においていずれかの中温湯用出湯管23a〜23cから出湯された中温湯と、上記水供給管25からの給水との混合弁21における混合比率、または上記貯湯タンク1からの高温湯と、水供給管25からの給水との混合弁21における混合比率を制御して上記設定給湯温度の湯の給湯を行なうことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機では、上記ヒートポンプ式加熱源3の冷媒回路Sの冷凍サイクルの高圧側が超臨界圧力で運転することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のヒートポンプ式給湯機によれば、上下方向のいずれかの中温湯用出湯管から出湯される中温湯と水供給管からの給水とを混合して給湯することができる。このため、貯湯タンク内の中温湯を有効に使用することができ、沸上効率の悪い中温湯を無くして、COPの向上を図ることができる。
【0016】
請求項2のヒートポンプ式給湯機によれば、いずれかの中温湯出湯口付近の中温湯の温度が設定給湯温度以上であって、且つ最も低い温度の中温湯を採湯しているので、中温湯を下部付近から略中央付近までの多量の中温湯を有効に使用することができる。このように、貯湯タンク内の中温湯を有効に使用することができて、貯湯タンク内において高温の湯が無くなって沸上運転を行なう場合、ヒートポンプ式加熱源へ中温湯を供給することなく低温水を供給することができる。すなわち、沸上効率の悪い中温湯を無くして、COPの一層の向上を図ることができる。しかも、混合弁が1つであり、制御の簡略化及びコスト低減化を図ることができて、安定した制御が可能となる。
【0017】
請求項3のヒートポンプ式給湯機によれば、冷媒として、炭酸ガス等の自然系冷媒を使用することができるので、一層効率の良い沸上運転を行なうことができる。さらに自然系冷媒を使用することによって、オゾン層の破壊、環境汚染等の問題がなく、地球環境にやさしいヒートポンプ式給湯機となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1はヒートポンプ式給湯機の要部簡略図である。このヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク1を備え、この貯湯タンク1の湯を浴槽に供給(給湯)したり、台所やシャワーに供給(給湯)したりすることができる。
【0019】
この場合、冷媒回路Sを有する熱源ユニット(ヒートポンプ式加熱源)3を使用して、貯湯タンク1に湯を溜めるものである。冷媒回路Sは、圧縮機4と、水熱交換器5と、膨張弁6と、空気熱交換器(蒸発器)7とを順に接続して構成される。そして、貯湯タンク1に循環路8が連結され、この循環路8に、水循環用ポンプ9と熱交換路10とが介設されている。この場合、熱交換路10は水熱交換器5にて構成される。この冷媒回路Sの冷媒としては、高圧側が超臨界圧力で運転することになる炭酸ガス(CO2)等を用いる。
【0020】
また、循環路8は、上記水循環用ポンプ9を有する第1循環路11aと、この第1循環路11aからの湯(加熱水)を貯湯タンク1に戻す第2循環路11bとを備える。第1循環路11aは、その一端側が貯湯タンク1の底部に開設された取水口12に接続され、その他端側が熱交換路10に接続される。また、第2循環路11bは、その一端側が熱交換路10に接続され、その他端側が貯湯タンク1の頂部に開設された上部湯入口13に接続されている。
【0021】
さらに、貯湯タンク1の上部(頂部)には出湯口15が開設され、この出湯口15に高温湯用出湯路(出湯管)16が接続されると共に、貯湯タンク1の底部に給水口17が開設され、この給水口17に給水管18が接続されている。また、高温湯用出湯管16には開閉弁19を介して混合弁21が接続されていて、この混合弁21の下流側に給湯管26が接続されている。そして、この給湯管26から温水が台所の蛇口や洗面所のシャワー等に給湯されるようになっている。
【0022】
また、貯湯タンク1の上下方向に複数の中温湯出湯口22(22a〜22c)が介設され、この中温湯出湯口22a〜22cにそれぞれ開閉弁20a〜20cを介設した中温湯用出湯管23(23a〜23c)がそれぞれ接続されている。そして、各中温湯用出湯管23a〜23cは接続管24を介して高温湯用出湯管16に接続されている。また、給水管18から分岐された分岐管(水供給管)25が上記混合弁21に接続されている。なお、貯湯タンク1に設けている中温湯出湯口22a〜22cは、図示例では3カ所としているが、2カ所あるいは4カ所以上設けてもよい。
【0023】
ところで、このヒートポンプ式給湯機には、貯湯タンク1の中温湯出湯口22a〜22cの近傍、あるいは中温湯用出湯管23a〜23cに配置されて、貯湯タンク1内の上下方向における中温湯の温度を検出する中温湯用温度検出器28a〜28cと、水供給管25の混合弁21の近傍であって水供給管25内に供給される給水管18からの給水の温度を検出する給水用温度検出器29と、混合弁21より上流側であって接続管24より下流側の高温湯用出湯管16またはその近傍に配置されて、混合弁21に供給される高温湯用出湯管16の高温湯または各中温湯用出湯管23a〜23cからの中温湯の温度を検出する高温湯/中温湯用温度検出器33とを備えている。
【0024】
そして、上記中温湯用温度検出器28a〜28cにて検出されたデータ(検出温度)は、図2に示すように、弁制御手段30に入力される。また、この弁制御手段30には、設定給湯温度入力手段31にて予め設定給湯温度が入力されている。すなわち、弁制御手段30では、中温湯用温度検出器28a〜28cにて検出された温度と、設定給湯温度とを比較して、この比較に基づいて開閉弁19、開閉弁20a〜20cのオン、オフの制御を行なう。この場合、設定給湯温度は、ユーザが希望する給湯温度に近い温度であって、任意に設定することができる。
【0025】
ところで、貯湯タンク1内は下部から上部に至っては給水の温度である例えば10℃〜20℃から90℃まで分布しており、今、例えば、上の中温湯出湯口22a付近の中温湯の温度が60℃とし、真ん中の中温湯出湯口22b付近の中温湯の温度が50℃とし、下の中温湯出湯口22c付近の中温湯の温度が30℃とする。そして、設定給湯温度が例えば、40℃あるいは42℃とした場合に、ユーザーが設定した設定給湯温度以上であって、各中温湯出湯口22a〜22cでの最も低い中温湯の場所から採湯するようにしている。したがって、この場合では、設定給湯温度以上であって、かつ最も低い温度の中温湯は中温湯出湯口22b付近の場合であり、この中温湯出湯口22bから中温湯を取り出すことになる。かかる場合、弁制御手段30は、中温湯用出湯管23bに介設している開閉弁20bのみを開制御し、他の開閉弁19及び開閉弁20a、20cを閉制御する。
【0026】
本発明では、貯湯タンク1内の中温湯の温度が設定給湯温度より高い場合であって、かつ最も低い温度の中温湯から採湯するようにしたものであり、該当するいずれかの中温湯用出湯管23a〜23cからの中温湯と、水供給管25からの給水とを混合弁21にて混合し、混合弁21にて設定給湯温度に混合した温水を給湯管26より給湯するようにしている。この時、採湯しているいずれかの中温湯用出湯管23a〜23cの開閉弁20a〜20cのみが開制御され、高温湯用出湯管16の開閉弁19と採湯していない他の中温湯用出湯管23a〜23cの開閉弁20a〜20cは閉制御される。
【0027】
また、貯湯タンク1内の中温湯の温度が設定給湯温度より低い場合には、貯湯タンク1からの高温湯用出湯管16内の高温湯と、水供給管25からの給水とを混合弁21にて混合し、混合弁21にて設定給湯温度に混合した温水を給湯管26より給湯するようにしている。この時、高温湯用出湯管16の開閉弁19のみ開制御され、各中温湯用出湯管23a〜23cの開閉弁20a〜20cは閉制御される。
【0028】
従って、貯湯タンク1内の中温湯が設定給湯温度より高い場合でも、また低い場合でも、給湯管26に供給される温水の温度を設定給湯温度に一定にすべく、給水用温度検出器29と高温湯/中温湯用温度検出器33からの温度データを取り込んで、混合弁21での混合比率を制御(調整)するようにしている。
【0029】
すなわち、図3に示すように、混合弁21には、混合比率を制御(調整)する調整手段32が接続される。この調整手段32には、上記給水用温度検出器29、高温湯/中温湯用温度検出器33にて検出されたデータ(検出温度)が入力されると共に、設定給湯温度入力手段31から設定給湯温度が入力される。なお、この設定給湯温度入力手段31での設定給湯温度設定は、図示省略の操作部(操作パネル)の設定ボタンを操作することによって行うことができる。
【0030】
このため、調整手段32では、混合弁21の上流側の高温湯用出湯管16内の高温湯の温度または中温湯の温度と、水供給管25の給水の温度と、設定給湯温度入力手段31からの設定給湯温度とに基づいて、混合弁21の混合比率を調整する。従って、給湯管26に接続された図示省略の蛇口(栓)等を開状態とすることによって、設定給湯温度(又はこの設定給湯温度に近い温度)の湯を給湯できる。
【0031】
ところで、風呂の追焚きや保温のための熱源として、この貯湯タンク1の湯が使用される。すなわち、図1に示すように、貯湯タンク1の上部に湯流出口35と、貯湯タンク1の下部に湯流入口36とを開設し、この湯流出口35と湯流入口36とを湯循環路37を介して接続する。湯循環路37には、循環用ポンプ38と、外部熱交換器39にて構成される熱交換路40とが介設されている。そして、浴槽(図示)には追い焚き用循環路42が接続されている。この追い焚き用循環路42には、上記外部熱交換器39にて構成される熱交換路43と、風呂湯循環用ポンプ(図示省略)が介設されている。
【0032】
次に、このヒートポンプ式給湯機の沸上運転を説明する。圧縮機4を駆動すると共に、水循環用ポンプ9を駆動する。すると、貯湯タンク1の底部に設けた取水口12から貯溜水(温水)が循環路8に流出して、これが循環路8の熱交換路10を流通する。また、圧縮機4からの吐出冷媒が、水熱交換器5、膨張弁6、空気熱交換器7を順次経由して圧縮機4へと返流する。そのため、循環路8の熱交換路10を流通する水が水熱交換器5によって加熱される。従って、貯湯タンク1の底部の低温水は取水口12から流出して、水熱交換器5にて加熱されて高温湯となって、上部湯入口13から返流される。このような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク1に高温湯を貯めることができる。
【0033】
また、風呂の追焚きや保温する場合、循環用ポンプ38を駆動して、貯湯タンク1の高温の湯を湯流出口35から湯循環路37に出湯させて、湯流入口36から貯湯タンク1に戻す。この際、追い焚き用循環路42の循環ポンプを駆動して、浴槽の湯を追い焚き用循環路42において循環させる。これによって、貯湯タンク1の高温の湯が熱交換路40を流れると共に、浴槽から流出した湯が熱交換路43を流れる。この際、浴槽から流出した湯は、貯湯タンク1の高温の湯と熱交換することによって暖められて浴槽に戻る。また、貯湯タンク1から流出した高温の湯は、浴槽から流出した湯と熱交換することによって冷やされて、例えば、30℃〜50℃程度の中間温度の温水(中温湯)となって貯湯タンク1に戻る。このため、貯湯タンク1の中間部には中温湯が貯まることになる。
【0034】
そこで、このヒートポンプ式給湯機では、このように貯まった中温湯を優先的に使用できるようにしている。すなわち、給湯管26から給湯する場合、図4に示すフローチャート図に従って行われることになる。そして、給湯は、給湯管26に接続された蛇口を開状態とする。これによって、給湯されることになるが、この際、以下のような制御が行われる。まず、貯湯タンク1内の各中温湯出湯口22a〜22c付近の中温湯の温度を中温湯用温度検出器28a〜28cにてそれぞれ検出する(ステップS1)。次にステップS2へ移行して、このステップS2にて各中温湯の温度が設定給湯温度以上か否かを判断する。そして、いずれかの中温湯が設定給湯温度以上であれば、ステップS3へ移行して、設定給湯温度(例えば、42℃)以上であって、且つ最も低い中温湯の場所の開閉弁、例えば、中温湯出湯口22b付近の中温湯が50℃であれば、中温湯用出湯管23bの開閉弁20bを開制御し、他の開閉弁20a、20cを閉制御すると共に、高温湯用出湯管16の開閉弁19を閉制御する。このように、各開閉弁19、20a〜20bを開閉制御してステップS5へ移行する。また、ステップS2で各中温湯の温度が設定給湯温度未満であれば、ステップS4へ移行して、高温湯用出湯管16から高温湯が混合弁21に供給されるように開閉弁19を開制御し、各中温湯用出湯管23a〜23cの開閉弁20a〜20cを閉制御する。そして、ステップS4からステップS6へ移行する。
【0035】
ステップS5では中温湯と、給水との混合比率を調整して、ステップS7へ移行して、設定給湯温度の湯を給湯する。また、ステップS6では高温湯と、給水との混合比率を調整して、ステップS7へ移行して設定給湯温度の湯を給湯する。なお、給湯を終了する場合には、給湯管26に接続されている蛇口を閉状態とすればよい。
【0036】
また、上記のようにして中温湯を使っていって、中温湯出湯口22b付近の中温湯の温度が設定給湯温度未満となった場合でも、上側の中温湯出湯口22a付近の中温湯の温度が設定給湯温度以上の場合では、中温湯用出湯管23aから中温湯を採湯していく。この場合、中温湯用出湯管23aの開閉弁20aのみを開制御し、他の開閉弁20b、20cを閉制御すると共に、高温湯用出湯管16の開閉弁19を閉制御する。
【0037】
上記ヒートポンプ式給湯機では、いずれかの中温湯出湯口22a〜22c付近の中温湯の温度が設定給湯温度以上であって、且つ最も低い温度の中温湯を採湯しているので、中温湯を下部付近から略中央付近までの多量の中温湯を有効に使用することができる。このように、貯湯タンク1内の中温湯を有効に使用することができて、貯湯タンク1内において高温の湯が無くなって沸上運転を行なう場合、ヒートポンプ式加熱源へ中温湯を供給することなく低温水を供給することができる。すなわち、沸上効率の悪い中温湯を無くして、COPの一層の向上を図ることができる。しかも、混合弁21が1つであり、制御の簡略化及びコスト低減化を図ることができて、安定した制御が可能となる。
【0038】
さらに、冷媒として、炭酸ガス等の自然系冷媒を使用することができるので、一層効率の良い沸上運転を行なうことができる。また、自然系冷媒を使用することによって、オゾン層の破壊、環境汚染等の問題がなく、地球環境にやさしいヒートポンプ式給湯機となる。
【0039】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、中温湯の温度としては上記実施形態では30℃〜50℃程度としていたが、もちろんこれに限るものではなく、このヒートポンプ式給湯機における中温湯の温度とは、沸上効率を低下させることになる範囲の温度をいう。また、設定給湯温度は給湯温度を決定するものであり、ユーザーによって任意の温度を設定することができる。しかも、この設定給湯温度が種々に設定されても、このヒートポンプ式給湯機では、中温湯(沸上効率を低下させることになる範囲の温度の湯)を優先的に使用することができる。なお、冷媒回路Sの冷媒として、炭酸ガス以外のエチレン、エタン、酸化窒素等の自然系冷媒であってもよく、さらには、ジクロロジフルオロメタン(R−12)やクロロジフルオロメタン(R−22)や、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)等のような冷媒であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明のヒートポンプ式給湯機の実施形態を示す簡略図である。
【図2】上記ヒートポンプ式給湯機の切換弁を制御するための制御部の簡略ブロック図である。
【図3】上記ヒートポンプ式給湯機の混合弁を制御するための制御部の簡略ブロック図である。
【図4】上記ヒートポンプ式給湯機の給湯時のフローチャート図である。
【図5】従来のヒートポンプ式給湯機の簡略図である。
【図6】従来の他のヒートポンプ式給湯機の簡略図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・貯湯タンク、3・・ヒートポンプ式加熱源、16・・高温湯用出湯管、19・・開閉弁、20a〜20c・・開閉弁、21・・混合弁、23a〜23c・・中温湯用出湯管、25・・水供給管、26・・給湯管、30・・弁制御手段、32・・調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンク(1)の底部から低温水を流出させて、この低温水をヒートポンプ式加熱源(3)にて沸き上げて貯湯タンク(1)の上部に戻す沸上運転を行なうヒートポンプ式給湯機であって、
上記貯湯タンク(1)の上部の高温湯を出湯する出湯管(16)と、この出湯管(16)と低温水を供給する水供給管(25)とを接続する混合弁(21)と、上記出湯管(16)に介設されている開閉弁(19)と、上記貯湯タンク(1)の上下方向に複数設けられている中温湯出湯口(22a)〜(22c)に一端側がそれぞれ接続され、他端側が上記混合弁(21)と開閉弁(19)との間の出湯管(16)に接続されて該混合弁(21)に中温湯を供給する複数の中温湯用出湯管(23a)〜(23c)と、上記各中温湯用出湯管(23a)〜(23c)にそれぞれ介設されている開閉弁(20a)〜(20c)と、上記混合弁(21)に接続される給湯管(26)とを備えていることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
上下方向のいずれかの中温湯の温度が設定給湯温度以上であって、かつ最も低い温度に対応した中温湯出湯口(22)に接続されている中温湯用出湯管(23)からの中温湯を出湯管(16)を介して混合弁(21)に供給すると共に、上記中温湯の温度が設定給湯温度未満のときには出湯管(16)から高温湯を混合弁(21)に供給するように上記各開閉弁(19)、(20a)〜(20c)を開閉制御する弁制御手段(30)を有し、
給湯時においていずれかの中温湯用出湯管(23a)〜(23c)から出湯された中温湯と、上記水供給管(25)からの給水との混合弁(21)における混合比率、または上記貯湯タンク(1)からの高温湯と、水供給管(25)からの給水との混合弁(21)における混合比率を制御して上記設定給湯温度の湯の給湯を行なうことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
上記ヒートポンプ式加熱源(3)の冷媒回路Sの冷凍サイクルの高圧側が超臨界圧力で運転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−46879(P2007−46879A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234594(P2005−234594)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】