説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】湯切れの可能性を少なくし、利便性と効率の向上を図った風呂加熱や暖房機能を有する貯湯式のヒートポンプ給湯機を提供する。
【解決手段】風呂熱交換器6を途中に設けて貯湯槽5の上部と下部とをそれぞれ接続する上部接続管22と下部接続管23とを具備し貯湯槽5上部の湯を熱源とし風呂熱交換器6を介して浴槽8の湯水を加熱する風呂加熱手段21と、風呂加熱手段21を循環する熱源流量を制御する流量制御手段30と、下部接続管23の途中から分岐したバイパス管24と、給湯管18とバイパス管24とからの湯を混合するバイパス混合弁25とを備えた構成とし、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合、風呂熱交換器6で放熱した貯湯槽5上部からの湯を直接給湯に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風呂の追い焚き機能や暖房機能を備える貯湯式のヒートポンプ給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯機として、貯湯槽の温水を利用した浴槽の追い焚き機能を持ったものがある。
【0003】
図3は、従来の給湯機を示すものである。図に示すように、この給湯機は、圧縮機51、冷媒対水熱交換器である給湯熱交換器52及び蒸発器53などを備えたヒートポンプユニット54と、貯湯槽55及び水対水熱交換器である風呂熱交換器56などを備えた給湯ユニット57とから構成している。前記貯湯槽55は給湯熱交換器52を用いて前記ヒートポンプユニット54により加熱された湯を貯湯するものである。
【0004】
また、風呂熱交換器56は、貯湯槽55内の湯を循環させて浴槽58内の湯を加熱するものである。すなわち、貯湯槽55の上部から熱源側循環ポンプ59によって汲み出された湯は、風呂熱交換器56に導かれて、利用側循環ポンプ60によって汲み出された浴槽58内の湯または水を加熱した後に、貯湯槽55に戻る。
【0005】
また、貯湯槽55の湯は浴槽注湯配管61を通して浴槽58へ注湯され、さらに、蛇口62を開くことにより給湯ができるように構成したものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−243275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、次のような課題を有していた。
【0007】
風呂の追い焚き運転をするときには、多くの場合、浴槽の温度は約40℃前後であるので、貯湯槽55の上部から熱源側循環ポンプ59によって汲み出され、風呂熱交換器56に導かれて利用側循環ポンプ60によって汲み出された浴槽58内の湯を加熱した後に貯湯槽55に戻る時の温度は50℃前後である。
【0008】
そして、この貯湯槽55に戻ってきた湯は貯湯槽内の湯と混合するが、貯湯槽55の戻り位置の湯温によって混合された湯の温度は異なる。また、一般的に、蓄熱式のヒートポンプ給湯機の場合、電気料金の安い時間帯である深夜時間帯(たとえば23時から翌朝の7時)に貯湯槽55全体を設定された温度に沸き上げる。
【0009】
この時、貯湯槽55の下部から送られてきた低温の水は、給湯熱交換器52で加熱されて高温の水となって、貯湯槽55の上から貯湯される。この貯湯される高温の水と元々あった低温水との境ははっきりした温度層として分かれているのではなく、高温から低温に変化する混合層が存在する。
【0010】
このため、貯湯槽55全体を設定された温度に沸き上げる沸き上げ運転が沸き上げ完了に近づけば、この混合層を加熱することになる。この場合、ヒートポンプの特性は、給湯熱交換器52の入口水温によって大きく異なる。つまり、入口水温が高くなるほど圧縮機51の吐出圧力が高くなるため、それに伴って、運転効率が悪くなり、消費される電力量は多くなる。
【0011】
さらに、入口水温が高温になってくると急激に吐出圧力が上昇するので、圧縮機51の信頼性確保のため、入口水温が所定の温度になれば、前記沸き上げ運転を終了する。例えば、冬季では給湯負荷が大きいため、80℃〜90℃に貯湯槽55を沸き上げるが、給湯熱交換器52の入口温度が60℃になれば全量が沸き上がったとして運転を停止する。そして、この深夜に貯湯された湯で、概ね、昼間の給湯負荷を賄うわけである。
【0012】
今、浴槽58内の湯を加熱した後に貯湯槽5に戻ってきた湯と、貯湯槽55の湯とが混合してできた湯の温度が、前記所定の温度(例えば60℃)以上であれば、その湯は再度高温に沸き上げられることはない。だから、本来、深夜時間帯に貯湯槽55のほぼ全体を設定された温度(冬であれば80℃〜90℃程度)に沸き上げるところを、浴槽58の加熱によって生じた混合層の部分は設定された温度に沸き上げられることなく、そのままで沸き上げ完了となってしまうことがあった。
【0013】
このように貯湯槽55のほぼ全体が高温に沸き上がっていないときには、昼間の給湯負荷に対応できず、湯切れして快適性と利便性に課題があった。
【0014】
他方、浴槽58内の湯を加熱した後に貯湯槽55に戻ってきた湯と、貯湯槽55の湯と混合してできた湯の温度が、前記所定の温度(例えば60℃)以下であれば、その湯は再度高温に沸き上げられる。
【0015】
ところが、浴槽58から送られてきた水を加熱して貯湯槽55に戻る水温が元々高いので、貯湯槽58の湯水と混合して貯湯槽55の温度を上昇させてしまい、60℃以下ではあるが、比較的高い温度になる場合がある。この場合、前述したように、沸き上げ運転の効率が非常に悪くなるという課題があった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するもので、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合に風呂熱交換器で放熱した貯湯槽上部からの湯の一部または全部を貯湯槽の下部に戻さず直接給湯に利用することによって、湯切れの可能性を少なくして快適性と利便性の向上を図り、かつ、運転効率向上を図ったヒートポンプ給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のヒートポンプ給湯機は、浴槽湯水を加熱する風呂熱交換器の熱源側の下流に設けたバイパス管と貯湯槽上部に接続した出湯管とをバイパス混合弁に接続した回路を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヒートポンプ給湯機は、浴槽からの水を加熱するために熱源である貯湯槽の上部と下部とをそれぞれ風呂熱交換器の入口および出口に接続し、また、風呂熱交換器の出口と貯湯槽の下部と接続する接続管の途中にバイパス管を設け、さらに、バイパス管を、混合弁を介して出湯管に接続した構成にすることにより、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合、風呂熱交換器で放熱した貯湯槽上部からの湯の一部または全部を貯湯槽の下部に戻さず直接給湯に利用できるので、湯切れの可能性を少なくして快適性と利便性の向上を図り、かつ、運転効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は各請求項に記載の形態で実施できるものであり、第1の発明は、圧縮機、給湯熱交換器を備える給湯加熱手段と、前記給湯熱交換器を介して貯湯槽の下部と上部を接続する貯湯手段と、前記貯湯槽の上部に接続された出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、風呂熱交換器を途中に設けて前記貯湯槽の上部と下部とをそれぞれ接続する上部接続管と下部接続管とを具備し前記貯湯槽上部の湯を熱源とし前記風呂熱交換器を介して浴槽湯水を加熱する風呂加熱手段と、前記風呂加熱手段を循環する熱源流量を制御する流量制御手段と、前記下部接続管の途中から分岐したバイパス管と、前記出湯管と前記バイパス管とからの湯を混合するバイパス混合弁と、バイパス混合弁で混合した湯と給水管からの水とを混合する給湯混合弁と、給湯温度を設定する給湯温度設定手段とを備え、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合、前記風呂熱交換器で放熱した前記貯湯槽上部からの湯の一部または全部を直接給湯に利用する構成としたものである。
【0020】
この構成により、本願発明は、浴槽を加熱した後の中温水で貯湯槽の湯を混合することが少なくなるので、湯切れを少なくして快適性と利便性の向上と運転効率の向上を図ることができる。
【0021】
また、本願発明は、流量制御手段として、風呂熱交換器の熱源側に設けた熱源側循環ポンプと流量制御弁とを用いた構成としたものである。
【0022】
この構成により、本願発明は、風呂熱交換器で放熱した貯湯槽上部からの湯の一部または全部を直接給湯に利用する場合に給湯流量や給湯温度が大きく変動しても安定した風呂加熱ができるので、快適性と利便性の向上を図ることができる。
【0023】
また、本願発明は、バイパス管を分岐した下部接続管の分岐位置よりも貯湯槽側の下部接続管の途中に前記貯湯槽の方向に流れる逆止弁を備えた構成としたものである。
【0024】
この構成により、本願発明は、風呂熱交換器で放熱した貯湯槽上部からの湯の一部または全部を直接給湯に利用する場合に貯湯槽下部からの湯の流入を防止し、風呂熱交換器で放熱する貯湯槽上部からの熱源流量を減少させずに安定した風呂加熱能力を確保できるので、快適性と利便性の向上を図ることができる。
【0025】
また、本願発明は、バイパス混合弁の目標混合温度は、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と風呂熱交換器の熱源側出口の温度とから決定する構成としたものである。
【0026】
この構成により、本願発明は、安定した給湯温度が得られるので、快適性と利便性の向上と運転効率の向上を図ることができる。
【0027】
また、本願発明は、バイパス混合弁の目標混合温度を、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と風呂熱交換器の熱源側出口の温度との内で高い方の温度よりも所定の温度だけ高い温度に設定する構成としたものである。
【0028】
この構成により、本願発明は、安定した給湯温度が得られるので、快適性と利便性の向上と運転効率の向上を図ることができる。
【0029】
さらに、本願発明は、風呂熱交換器で加熱されて浴槽に戻る温度が所定の温度以上になった場合、バイパス混合弁の目標混合温度を上げる構成としたものである。
【0030】
この構成により、本願発明は、風呂熱交換器の熱源側流量を減少させるため、高温の湯が浴槽に戻ることを防止できるので、快適性の向上の向上を図ることができる。
【0031】
また、本願発明は、ヒートポンプに用いられる冷媒は二酸化炭素であるため、高温高効率化と地球環境保全を図ることができる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成図である。図1において、給湯機の熱源である給湯加熱手段13は、圧縮機1、給湯熱交換器2、減圧装置14および大気熱を吸熱する蒸発器3からなるヒートポンプサイクルを構成したヒートポンプ熱源である。
【0033】
そして、高圧側の冷媒圧力が臨界圧力以上となる二酸化炭素を冷媒とする。貯湯槽5への給水は貯湯槽5下部に接続された給水管15を通ってなされ、貯湯槽5上部の高温の湯は出湯管16を通り給湯混合弁17で給水と混合することによって所定の温度の湯にしてから給湯管18を通って端末(蛇口12)から給湯される。
【0034】
また、貯湯槽5の下部から循環ポンプ19、給湯熱交換器2および貯湯槽5の上部を順次接続する沸き上げ回路を構成することによって、貯湯槽5から循環ポンプ19で送られてきた水は前記給湯熱交換器2で冷媒熱により加熱されて貯湯槽5の上から貯湯される。
【0035】
ヒートポンプ熱源で加熱した湯温を検出するため給湯熱交換器2の水側の出口には、沸き上げ温度検出手段20設けられている。
【0036】
風呂加熱手段21は、水水熱交換器である風呂熱交換器6と、それに接続された熱源側と利用側水回路と、それら水回路にそれぞれ設けられた熱源側循環ポンプ9と利用側循環ポンプ10などからなる。また風呂熱交換器6の熱源側は、貯湯槽の上部と上部接続管22で接続され、また貯湯槽の下部と下部接続管23で接続されている。
【0037】
そして、浴槽8の加熱は、熱源側循環ポンプ9で貯湯槽5から風呂熱交換器6に送られてきた高温の温水と、利用側循環ポンプ10で浴槽8から風呂熱交換器6に送られてきた水又は温水とが熱交換することによって行われる。
【0038】
また、下部接続管23の途中から分岐したバイパス管24は、出湯管16の途中に設けられたバイパス混合弁25に接続されている。
【0039】
さらに、ポンプ制御手段26は熱源側循環ポンプ9の回転数を制御するものである。また、風呂熱交換器6の熱源側出口には熱源側出口温度を検出する熱源側出口温度検出手段27を、利用側の入口と出口にはそれぞれの水温を検出するために利用側入口温度検出手段28と利用側出口温度検出手段29が設けられている。
【0040】
ここで、ポンプ制御手段26と熱源側循環ポンプ9と利用側入口温度検出手段28及び熱源側出口温度検出手段27とで流量制御手段30を形成し、この流量制御手段は風呂加熱手段21における熱源側流量を制御することによって風呂熱交換器での加熱能力を制御する。
【0041】
さらに、給湯混合弁17の出口側には混合弁で混合された湯温を検出する給湯温度検出手段31を設け、バイパス混合弁25の出口側には混合弁で混合された湯温を検出するバイパス温度検出手段32を設けられている。また、リモコン(図示せず)などで希望する給湯温度を設定する給湯温度設定手段33とバイパス混合弁25の動作を制御するバイパス混合弁制御手段34を備えている。
【0042】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。
【0043】
図1において、先ず、給湯加熱モードについて説明する。
【0044】
いま、貯湯槽5を沸き上げる要求(図示せず)があると、ヒートポンプ熱源で大気熱を利用した給湯加熱運転を行う。この場合、圧縮機1から吐出された臨界圧力以上の高温高圧の冷媒が給湯熱交換器2に流入し、ここで貯湯槽5の下部から送られてきた水と熱交換し放熱した後、減圧装置14で減圧し、さらに、蒸発器3で大気から熱を吸熱し、ガス化して圧縮機1に戻る。この時、給湯熱交換器2に流入する高温冷媒で給湯熱交換器2の出口水温が所定温度となるように循環ポンプ19の回転数を制御し、所定の温度の湯が貯湯槽5の上部から流入し貯湯される。
【0045】
次に、通常の単独給湯モードについて説明する。給湯端末である蛇口12が開かれるとバイパス混合弁制御手段34はバイパス混合弁25を貯湯槽5側に全開(通常はこの位置が初期設定位置)にする。
【0046】
そして、給湯混合弁17の出口(混合)温度が給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度になるように給湯温度検出手段31から得られた温度をもとに給湯混合弁17の開度を制御することによって、所定の給湯温度の湯を蛇口12から給湯する。
【0047】
次に、通常の単独風呂加熱モードについて説明する。
【0048】
いま、風呂の加熱要求(図示せず)があると、流量制御手段30は利用側循環ポンプ10と熱源側循環ポンプ9とを駆動する。そして、利用側循環ポンプ10によって浴槽8から送られてきた水は、熱源側循環ポンプ9によって送られてきた貯湯槽5上部の高温の湯と、風呂熱交換器6で熱交換して加熱されて浴槽8に戻る。
【0049】
また、熱源側循環ポンプ9によって貯湯槽5から送られてきた高温の湯は、前述した利用側循環ポンプ10によって送られてきた浴槽8の湯と、風呂熱交換器6で熱交換して貯湯槽5の下部に戻る。このとき、流量制御手段30は、必要な能力で効率よく風呂加熱するために、熱源側循環ポンプ9の流量を制御する。
【0050】
例えば、風呂熱交換器6の熱源側出口温度と風呂熱交換器6の利用側入口温度との温度差に応じて熱源側の温水の流量を制御する。つまり、流量制御手段30は、熱源側出口温度検出手段27と利用側入口温度検出手段28とから得られた風呂熱交換器6の熱源側出口温度と利用側入口温度を検出し、この両者の温度差が所定の温度(例えば5K)になるように熱源側循環ポンプ9の回転数を制御する。このように制御すれば、浴槽8の温度が変化しても貯湯槽5への戻り温度も比較的低くすることができ、かつ、風呂加熱能力も比較的大きくすることができる。
【0051】
次に、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合の同時給湯風呂加熱モードについて説明する。この場合、給湯混合弁17の制御は単独給湯モードの場合と同じである。また、流量制御手段30は、単独風呂加熱モードの場合と同様、熱源側循環ポンプ9の流量の制御を行う。つまり、風呂熱交換器6の熱源側出口温度と風呂熱交換器6の利用側入口温度との温度差に応じて熱源側の温水の流量を制御する。
【0052】
さらに、バイパス混合弁制御手段34は、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度よりも高い温度に設定された目標混合温度になるようにバイパス温度検出手段32から得られた温度をもとにバイパス混合弁25の開度を制御する。
【0053】
このとき、熱源側循環ポンプ9によって流量制御された貯湯槽5の上部の高温湯は、風呂熱交換器6で放熱した後、一部または全量がバイパス管24を通ってバイパス混合弁25の低温側入口に入り、バイパス混合弁25の高温側入口から供給された貯湯槽5の上部の高温湯と混合して前述した所定のバイパス混合温度になって給湯混合弁17の高温側入口に入る。さらに、給湯混合弁17の低温側入口から供給された給水管15からの給水と混合することによって給湯設定温度に制御されて、蛇口12から出て行く。
【0054】
また、バイパス管24を通らない残りの湯は貯湯槽5の下部に戻る。図3で示す従来例であれば風呂加熱に使用された貯湯槽の湯はすべて貯湯槽5に戻り、貯湯槽5の湯と混合し、最終的には再度高温に沸き上げていた。しかし、本発明の実施の形態では、風呂加熱に使用された貯湯槽の湯の一部または全部を直接給湯に使用するため、湯に与えられた熱量をすべて使い切ることになるので、効率が大幅に向上する。
【0055】
また、貯湯槽5に戻る湯が少なくなるので、貯湯槽5の湯または水と混合して湯の温度を低下させたり、水の温度を上昇させたりすることも少なくなるので、湯切れや沸き上げの効率低下などの課題も少なくなる。
【0056】
上記説明では、バイパス混合弁制御手段34は、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度よりも高い温度に設定された目標混合温度になるようにバイパス温度検出手段32から得られた温度をもとにバイパス混合弁25の開度を制御するとしたが、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度と風呂熱交換器6の熱源側出口の温度とから決定する方が、更に、風呂加熱に使用された貯湯槽の湯を有効に使用することができる。
【0057】
つまり、目標混合温度が、風呂熱交換器6の熱源側出口温度よりも低いとバイパス混合弁25の開度は低温側入口の方向に全開となる。この時、給湯流量によっては、風呂熱交換器6の熱源側流量制御ができない場合が生じる可能性があるので、バイパス混合弁25の目標混合温度は風呂熱交換器6の熱源側出口温度より高く設定する必要がある。
【0058】
さらに、バイパス混合弁25で混合された湯は、給湯混合弁17の高温側入口に入るので、バイパス混合弁25の目標混合温度は、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度よりも高くする必要がある。結局、バイパス混合弁25の目標混合温度は、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度と風呂熱交換器6の熱源側出口温度との内で高い方の温度よりも所定の温度だけ高い温度に設定すればよい。
【0059】
また、同時給湯風呂加熱モードで風呂加熱を行っていると浴槽温度が上昇してきて、浴槽に戻ってくる湯温が高くなってきて、入浴中の人が不快になることがある。これは風呂熱交換器6の熱源側流量が大きく能力が出すぎている場合である。
【0060】
この場合には、風呂熱交換器6の熱源側流量を下げる必要がある。だから、利用側出口温度検出手段29が所定の温度(例えば60℃)以上になった場合、バイパス混合弁制御手段34は、バイパス混合弁25の目標混合温度を上げるように制御する。
【0061】
このようにすれば、バイパス混合弁25の開度は高温側入口の方向に開き、逆に低温側入口は閉じる方向になるので、風呂熱交換器6の熱源側流量が減少して、浴槽に戻ってくる湯温が低くなり、高温の湯が浴槽に戻ることを防止できるので、快適性の向上を図ることができる。
【0062】
また、ヒートポンプに用いられる冷媒は二酸化炭素であるため、貯湯槽5に高温度(およそ90℃)の湯を貯湯することができるので、湯切れを防止することができ、かつ、高効率化と地球環境保全を図ることができる。
【0063】
なお、上記説明では、貯湯槽5の高温湯で風呂加熱する構成としていたが、風呂加熱に限らず、貯湯槽5の熱を利用した暖房や浴室暖房乾燥機などの用途にも適用できる。
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成図である。図2において、図1に示す実施の形態1と異なるところは、バイパス管24の途中に流量制御弁35を設け、バイパス管を分岐した下部接続管の分岐位置よりも貯湯槽側の下部接続管の途中に前記貯湯槽の方向に流れる逆止弁36を設けたことである。
【0064】
ここで、ポンプ制御手段26と熱源側循環ポンプ9と利用側入口温度検出手段28と熱源側出口温度検出手段27及び流量制御弁35とで流量制御手段30を形成し、この流量制御手段30は風呂加熱手段21における熱源側流量を制御することによって風呂熱交換器での加熱能力を制御する。
【0065】
以上のように構成されたヒートポンプ給湯機について、以下にその動作、作用を説明する。なお、給湯加熱モード、単独給湯モード、単独風呂加熱モードについては図1の実施の形態1と同じなので説明は省略し、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合の同時給湯風呂加熱モードについて説明する。この場合、給湯混合弁17の制御は単独給湯モードの場合と同じである。また、流量制御手段30は、先ず、流量制御弁35を初期開度に設定する。
【0066】
そして、熱源側循環ポンプ9の流量の制御を行う。つまり、風呂熱交換器6の熱源側出口温度と風呂熱交換器6の利用側入口温度との温度差に応じて熱源側の温水の流量を制御する。
【0067】
さらに、バイパス混合弁制御手段34は、給湯温度設定手段33で設定された給湯設定温度よりも高い温度に設定された目標混合温度になるようにバイパス温度検出手段32から得られた温度をもとにバイパス混合弁25の開度を制御する。
【0068】
しかし、給湯流量が多くなってくると熱源側循環ポンプ9だけでは風呂熱交換器6の熱源側流量を制御できなくなる場合がある。すなわち、熱源側循環ポンプ9の回転数を最小回転数または停止しても、熱源側流量が大きくなりすぎて、風呂熱交換器6の熱源側出口温度と風呂熱交換器6の利用側入口温度との温度差を目標の温度差に制御できなくなる場合である。
【0069】
このような場合には、流量制御弁35の開度を絞り、熱源側の流量を小さくする。すなわち、流量制御手段30が、風呂熱交換器6の熱源側出口温度と風呂熱交換器6の利用側入口温度との温度差を目標の温度差になるように熱源側循環ポンプ9の回転数を制御し、その結果、熱源側循環ポンプ9の回転数を最小回転数または停止しても、前記温度差が目標の温度差より大きい所定の温度差になれば、流量制御弁35の開度を制御することによって、前記温度差を目標の温度差に制御する。
【0070】
逆に、流量制御弁35の開度が全開になっても、前記温度差が目標の温度差より小さい所定の温度差になれば、熱源側循環ポンプ9の回転数で前記温度差を目標の温度差に制御する。
【0071】
なお、上記説明では、流量制御弁35をバイパス管24の途中に設けた構成であったが、バイパス管を分岐した下部接続管の分岐位置よりも上流側の熱源回路に流量制御弁35を設けても同様の効果が得られる。
【0072】
また、図1の実施の形態1の場合、給湯流量が多く、熱源側流量が少ない時には、下部接続管23からバイパス管24に流れることがある。この時には、下部接続管23を通った貯湯槽5下部からの湯と風呂熱交換器6の熱源側出口からの湯と混合した湯が、バイパス混合弁25の低温側入口に入るため、バイパス混合弁制御手段34はバイパス混合弁25のよる所定の開度制御ができなくなる。
【0073】
そこで、本第2の実施の形態では、バイパス管を分岐した下部接続管の分岐位置よりも貯湯槽側の下部接続管の途中に前記貯湯槽の方向に流れる逆止弁36を設ける。これによって、貯湯槽5からの流れ込みを防止することができる。
【0074】
このようにすれば、給湯流量が大きくなったり変動したりしても、効率よい風呂加熱を維持しつつ、風呂加熱に使用された貯湯槽の湯の一部または全部を直接給湯に使用するため、湯に与えられた熱量をすべて使い切ることになるので、効率が大幅に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明にかかるヒートポンプ給湯機は、貯湯槽の高温湯で浴槽などの放熱手段を加熱した後の温度低下した湯を直接給湯に使用する構成としているため、湯切れの防止と運転効率の向上を図ることができるので、風呂加熱に限らず、貯湯熱を利用した暖房や浴室暖房乾燥機などの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成図
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成図
【図3】従来例におけるヒートポンプ給湯機の構成図
【符号の説明】
【0077】
1 圧縮機
2 給湯熱交換器
5 貯湯槽
6 風呂熱交換器
8 浴槽
15 給水管
16 出湯管
17 給湯混合弁
21 風呂加熱手段
22 上部接続管
23 下部接続管
24 バイパス管
25 バイパス混合弁
30 流量制御手段
33 給湯温度設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、給湯熱交換器を備える給湯加熱手段と、前記給湯熱交換器を介して貯湯槽の下部と上部を接続する貯湯手段と、前記貯湯槽の上部に接続された出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、風呂熱交換器を途中に設けて前記貯湯槽の上部と下部とをそれぞれ接続する上部接続管と下部接続管とを具備するとともに前記貯湯槽上部の湯を熱源として前記風呂熱交換器を介して浴槽の湯水を加熱する風呂加熱手段と、前記風呂加熱手段を循環する熱源流量を制御する流量制御手段と、前記下部接続管の途中から分岐したバイパス管と、前記出湯管と前記バイパス管とからの湯を混合するバイパス混合弁と、そのバイパス混合弁で混合した湯と給水管からの水とを混合する給湯混合弁と、給湯温度を設定する給湯温度設定手段とを備え、給湯要求と風呂加熱要求とが同時にあった場合、前記風呂熱交換器で放熱した前記貯湯槽上部からの湯の一部または全部を直接給湯に利用することを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記流量制御手段として、前記風呂熱交換器の熱源側に設けた熱源側循環ポンプと流量制御弁とを用いた請求項1記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
前記バイパス管を分岐した前記下部接続管の分岐位置よりも前記貯湯槽側の前記下部接続管の途中に前記貯湯槽の方向に流れる逆止弁を備えた請求項1または2記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項4】
前記バイパス混合弁の目標混合温度は、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記風呂熱交換器の熱源側出口の温度とから決定する請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項5】
前記バイパス混合弁の目標混合温度は、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と風呂熱交換器の熱源側出口の温度との内で高い方の温度よりも所定の温度だけ高い温度に設定する請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項6】
前記風呂熱交換器で加熱されて前期浴槽に戻る温度が所定の温度以上になった場合、前記バイパス混合弁の目標混合温度を上げることとした請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項7】
ヒートポンプの冷媒回路は、圧力が臨界圧力以上となる超臨界冷媒回路であり、前記臨界圧力以上に昇圧された冷媒により水を加熱する請求項1〜7のいずれか1項に記載のヒートポンプ給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−224071(P2008−224071A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59435(P2007−59435)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高密度実装技術を用いたCO2ヒートポンプ給湯器の小型化開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】