説明

ビスフェノールを製造するための方法、反応器及び系(システム)

【課題】ビスフェノールを製造する方法を提供する。
【解決手段】ビスフェノールを製造する方法は、フェノールとケトンを下降流で固定持型触媒床(14)反応器(10)系(50)内に導入し、そのフェノールとケトンを反応させて反応混合物を形成し、その反応混合物からビスフェノール異性体を回収することを含んでいる。好ましいビスフェノール異性体は、フェノールとアセトンの反応で生成するビスフェノールA又はp,p′−ビスフェノールAである。フェノールとアセトンの反応によりビスフェノールAを製造するための反応器(10)は、床(14)内に配置されたイオン交換樹脂触媒と、熱伝達効率を改善すると共に触媒床の圧縮を低減するためにイオン交換樹脂触媒全体にランダムに分布した充填物とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、充填触媒床に所定の支持を与える剛性充填物を用いた化学反応器系(システム)に関する。具体的には、本発明は、ランダムに分布した実質的に不活性な充填物が混在していて該充填物で支持される架橋イオン交換樹脂触媒の床に下降流を流すビスフェノールの生産に関する。
【背景技術】
【0002】
反応化学種の最適な物理的接触を確保することは、化学反応器の設計における難題である。不適切に設計されると、多数の不都合な副生成物及び多量の未反応反応体によって系(システム)の経済性に重大な影響を生じかねない。ある反応に最適な反応器系(システム)を選択又は製作するに当たっては、反応器の種類、反応体及び生成物の拡散、圧力の影響、その他の要因を全て考慮しなければならない。
【0003】
反応器の滞留時間及び温度のような反応条件は原子又は分子の衝突の割合に影響し、収率、スループット及び選択性に影響を及ぼす。差圧によって球状触媒ビーズが圧迫・変形し、圧力降下の限界により液体スループットの低下を招く場合は、圧力が重要となる。
【0004】
充填床を有する反応器では、流体の流動特性は往々にして流れの混乱、すなわち「チャネリング」による被害を受ける。これは特に上昇流方式で顕著である。チャネリングは、流体の流れる床の高さに対して圧力差が不適切なことで起こり得る状態であり、床成分の沈降に加えて床の高さに対して加えた差圧が低すぎることに複合的に起因する。床を流れる流体のランダムな流れを可能にする触媒又は同様の粒子状処理剤を床成分が含んでいると、床部分が短絡して流体と均一かつ確実に接触しなくなるおそれがある。かかる状態は、仕込んだ反応体の不十分な処理又は不十分な化学反応を招きかねない。そのため、ひいては触媒又は処理粒子の早期処分が必要となって、触媒の価値を損ないかねない。
【0005】
チャネリングの起こる量は、反応器の幾何学的構成及び型、反応体と反応器内で生成した中間体及び生成物の流体力学、その他の要因に関連している可能性がある。幾つかのプロセスでは、こうしたパラメーターの調節による生成物の製造の最適化は簡単に理解でき、簡明である。他では、こうした関係はさほど明らかではない。注意深く選択された触媒を用いると、反応器の設計と反応の制御は複雑になる。例えば、米国特許第5395857号では、下降流反応器でのビスフェノールA(BPA)の製造に当たり、イオン交換樹脂触媒の架橋度がプロセスの物理的性能のみならず反応の反応性と選択性に直接影響すると記載されている。この特許では、一方の層が2%以下の架橋度を示す二層触媒を使用することによって、触媒粒子の形状に起因する水圧効果と圧力に起因する触媒床の圧縮を低減できるという知見が得られている。この方法は固定床反応器の体積・時間収率を増大させることを目的とする。この設計では、反応体の大半の転化が起こる頂部で2%と低架橋度の触媒の特徴を活かしながら、床全体の剛性の向上によるスループット及び生産量の向上が得られる。米国特許第5395857号に記載された複合触媒床は他のものよりも高い選択性と活性を有しており、架橋度の大きい樹脂系触媒は失活し易く、不活性になり易いので望ましい。例えば、下降流プロセスでは、低架橋度のために触媒床が高流速で崩壊する可能性とこれが触媒の物理的性質に及ぼす影響を考慮しなければならず、この問題を低減又は解消する方策があれば有益である。
【0006】
さらに、チャネリングとそれに起因する反応体と触媒の非効率的接触のため、充填床反応器の運転に多大な支障をきたすことが多々ある。特に、かなりのチャネリングが起こる運転では概して生成物収率が低下し、触媒床の早期交換が必要となり、反応体が効率的に利用されなくなる。その結果、新たな触媒のコストを要するだけでなく、運転休止中の生産損失が生じ、交換のための物流コスト、使用済触媒の処分コスト並びに反応体の回収及び再生利用が必要となる。さらに、触媒技術改善の努力に伴うコストの結果として多大な財政上の負担が生じかねない。かかるコストには代替反応器の幾何学的構成の開発が含まれるが、幾何学的特徴に劣る既存の反応器の問題に対処することにはならない。
【0007】
固定触媒床を有する反応器に反応体を下降流で流す構成では、選択する触媒によっては、触媒床内の圧力に起因する圧縮のため、プロセスの物理的性能及び反応の反応性・選択性が大きく損なわれるおそれがある。触媒粒子の圧縮を最小限に抑えるために、構造的に頑丈な触媒を利用する試みがなされている。しかし、触媒活性の低下、選択性の低下又は短寿命化を招くことが多い。
【0008】
さらに、触媒粒子の剛性とそれらの粒子の予測活性寿命との間には直接的な関係がある。架橋度の小さい触媒及び剛性の低い構造の触媒に特徴的な開放有効細孔構造を有する粒子は、活性酸性部位への接近を塞ぐタール状分子による樹脂触媒の汚損を低減又は解消することが期待できる。これに対して、開放有効細孔構造が少なく、剛性の高い粒子は圧縮に対する耐性は優れているが、汚損による触媒の早期失活を招きかねず、コストの増大をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5395857号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現存する反応器の幾何学構成及び触媒はそれらの意図する目的に適してはいるが、依然として、特に下降流反応器における反応の有効性及び触媒自体に関して改善の必要性が残されている。従って、例えば、水圧による限界を軽減することによって、所定の樹脂触媒の潜在能力を十分に発揮させることができる反応器系(システム)に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書では、離散した不活性要素で支持された充填イオン交換樹脂触媒床を利用する方法、反応器及び系(システム)について開示する。
【0012】
第一の実施形態として開示するのは、フェノールとケトンを下降流で反応器内に導入することを含むビスフェノールの製造方法である。反応器はイオン交換樹脂触媒床と該イオン交換樹脂床内にランダムに分布した充填物とを含んでいる。フェノールとケトンを反応させて反応混合物を形成し、この混合物からビスフェノールを回収する。
【0013】
第二の実施形態として開示するのは、フェノールとケトンを下降流で反応器系(反応器システム)内に導入することを含むビスフェノールの製造方法であり、反応器系(反応器システム)は下降流化学反応器と該反応器に充填された固定床イオン交換樹脂触媒とを含んでいる。樹脂触媒は、該樹脂触媒を基準にして約2重量%以下の架橋度を有するスルホン化芳香族樹脂である。反応器内でケトンとフェノールを反応させて、ビスフェノール含有反応混合物を形成し、この混合物からビスフェノールを回収する。
【0014】
第三の実施形態として開示するのは、下降流で導入されるフェノールとアセトンの反応でビスフェノールAを製造するための反応器であり、当該反応器は、反応容器と、該反応容器内のイオン交換樹脂触媒床と、該イオン交換樹脂触媒床全体にランダムに分布した充填物とを含む。
【0015】
別の実施形態として開示するのは、反応容器と、該容器内で下降流の反応体が流れ込むイオン交換樹脂触媒と、該イオン交換樹脂触媒全体にランダムに分布した充填物とを含む支持床反応器である。
【0016】
さらに別の実施形態として開示するのは、フェノールとアセトンからビスフェノールAを製造するための系(システム)であり、当該系(システム)は、アセトン供給流と、アセトン供給流と混合されて供給流混合物を形成するフェノール供給流(適宜ジャケットを備えていてもよい)と、供給流混合物が流入する冷却装置と、冷却装置と流体連通して接続された反応器とを備える。反応器は、供給流混合物が流入する入口を上端に及び出口を下端に有する反応容器と、上記出口と入口の中間に位置する支持触媒樹脂床とを備えている。触媒樹脂床はイオン交換触媒樹脂と該樹脂全体にランダムに分布した不活性充填物とを含んでいる。当該系(システム)は、さらに、上記容器と連通した温度検知手段と、上記容器と連通した圧力検知手段と、上記入口と出口の間のバイパス流と、上記出口で受入れ可能な第二のフェノール供給流と、反応器の下端と流体連通して配置された生成物取出ラインとを備える。生成物取出バルブは好ましくは上記入口と同じ高さにあり、生成物取出バルブの下流にはサイホンブレイクが配置される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、支持イオン交換樹脂触媒が内部に配置された下降流化学反応器の概略図である。
【図2】図2は、支持下降流触媒床のイオン交換樹脂触媒でのフェノールとアセトンとの反応によってビスフェノールAを製造する系(システム)の概略図である。
【図3】図3は、圧縮性樹脂の床の差圧の上昇を充填物のある場合とない場合で対比して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1及び図2を参照して、ビスフェノールの製造装置及び系(システム)並びにビスフェノールの製造に関する使用方法を開示する。ここで図面を参照するが、図面は例示的な実施形態であり、類似の要素・部分は同じ数字で示す。図1は反応器の型、方式及び構成を例示し、図2はビスフェノールA又は他の所望のフェノール異性体の製造に、反応器と共に用いられる系(システム)を例示する。
【0019】
反応器は支持触媒床を含んでおり、これに反応体を流して触媒と接触させ最終ビスフェノールを生成させる。好適に用いられる流れは支持下降流であり、高所から低所に反応体が並流して床を流れ、ビスフェノール生成物を生ずる化学反応を促進する。この方法はあらゆるビスフェノール異性体の製造に応用できるが、好ましい異性体はイオン交換樹脂触媒存在下でのフェノールとアセトン(ジメチルケトン)との反応で生成するp,p′−ビスフェノールAであり、イオン交換触媒は所望に応じて例えばメルカプタン化合物のような選択された促進剤で変性されていてもよい。反応器は図1に符号10で示してあり、イオン交換樹脂触媒とランダムに分散した充填物とを含む床14を有している。この床に反応体の並流下降流が流れ込む。イオン交換樹脂触媒は充填物の周囲に分布しており、その結果、触媒が床内で支持されてチャネリングと圧縮力を最小限に抑制するとともに反応器の水力性能を最適にする。固定触媒存在下での反応体の反応に用いられるいかなるタイプの反応容器でも一般に本発明の実施に使用できる。しかし、円筒型反応器がそのシンプルさ故に好ましい。
【0020】
入口20は管、パイプ、ジェットその他反応器の反応域に反応体を導入するための常用手段を備える。反応体は通例、多孔管、スパージャーアームその他同様又は慣用の流体分配手段によって反応域に分配される。反応器の底部42には好ましくは凝集体を充填する。かかる凝集体の量は本発明にとって重要ではない。ただし、反応器内容物を支持するのに十分な凝集体が存在すべきである。凝集体は、反応体と反応器内で生じた生成物に対して実質的に不活性な任意の物質からなるものでよい。好ましくは、凝集体は珪砂、シリカ系砂利、セラミックボール又はこれらの組合せからなる。
【0021】
反応器シェル16は上端に入口20を、下端に出口24を備える。シェルの内部はベントライン(図示してない)を介して大気圧に通気してもよいが、通常はベントラインを閉鎖して運転する。またシェル16は、所望に応じて、反応体の発熱反応で発生した熱を除去するための冷却流を収容するジャケットを備えていてもよい。冷却流として使用し得る流体としては、特に限定されないが、水、塩水及び冷媒がある。
【0022】
運転の際には、入口20から反応体を流し込み、樹脂触媒床の上面に分配する。反応体は支持床を通って下方に進みながら反応して最終生成物を形成する。出口24は床及び生成物取出ライン30と流体連通しており、生成物取出ライン30は、反応器が完全に液体で満たされたままオーバーフロー方式で運転できるように入口と実質的に同じ高さにある。圧力34及び温度36を測定するためのセンサー手段を入口と出口に配置してもよく、また、反応に伴う条件を検知し、適当な反応プロフィールを得るためシェル16の選択された位置に追加のセンサー35、37を配置してもよい。工学及び設計データを収集する際の精確さを期すため充填支持床の前後で静止液面が等しくなるように入口と出口の圧力トランスミッターを開発型反応器内の同じ高さに配置すると、触媒樹脂と床支持体によるΔPのみを示すようになる。ΔPと流れの関係は圧縮性触媒では指数関数的である。こうしたセンサー手段からの情報を、例えば供給速度(及び使用している場合にはジャケットへの冷却流の流れ)のような選択されたパラメーターを調節する制御装置(図示してない)に送る。
【0023】
シェル内の充填物のランダムな配置は樹脂触媒の支持体となり、圧縮を最小限に抑える。触媒の「沈降」は必須であり、また触媒床内の空隙を完全に埋めるためにも望ましい。充填物は、累積圧縮力(重力で生じる力と反応体の下降流による粘性抵抗との和)を、樹脂触媒による高転化率、高選択性及び長寿命が実現できる程度まで防ぐ。圧縮力の最小化は、充填要素の「壁面効果」が顕微鏡スケールで床全体に拡がるのに十分である。
【0024】
一般に、球状触媒ビーズは、隣接ビーズでできた空隙「内」(曲面内曲面)に収まって、流れが起こり得る一定の空隙率を生じる。これに対して、これらの球状ビーズがある表面、すなわち、「壁」若しくはバッフル、プローブその他の平面に隣接して位置すると、これら2つの表面(平面対曲面)の相対的な形状から生じる空隙率は大きくなり、その結果、床全体の大部分よりも幾分不均衡な量の流れが「壁」で起きる。
【0025】
床14は、シェル内に離散した複数の不活性要素を含んでいるので、下方に向かう反応体の流れに対して曲がりくねった通路を与える表面のランダムな配置を生じる。これらの離散物は、樹脂を支持しつつ、反応体が床を流れる際にそれらの最適な接触を可能にする剛性で化学的に不活性で、熱的に安定な任意の物質から製造し得る。最適な接触は一般に空隙率の大きい物体(例えば、ほとんどの体積が小さく、表面積の大きい物体)で達成される。使用するランダム充填要素の空隙率は0.6以上であればよく、例えば0.8である。特に好ましい要素は空隙率が最大0.98もしくはそれ以上である。空隙率が高いと、床を十分に支持しつつ、樹脂触媒の充填量を高めることができる。理論的には、要素の剛性と、荷重下での変形に耐える力と、リングの全体的「圧縮性」、ひいては床全体の圧縮性との間には関連がある。
【0026】
このタイプの不活性ランダム充填物は球状樹脂粒子の充填構造を中断して大きな有効空隙率を与える。樹脂床単独での空隙率は通常約0.36であり、これを少し増すと圧力降下が劇的に減少すると期待される。空隙率の増大は反応体と触媒の接触時間を短くする「チャネリング」又は「短絡」のための通路となるので、空隙率の増大によって生じる圧力降下の減少は圧縮の防止によるものほど望ましいとはいえない。触媒内の空隙率を増大することは、ビーズの変形による空隙率の低下を単に防止することほど望ましいとはいえない。
【0027】
好ましくは、充填物はKoch−Glitsch社(米国カンザス州ウィチタ)から入手可能なCASCADE MINI−RINGS(登録商標)のような金属カスケードリングからなる。このカスケードリングは約0.97の空隙率を有する。使用できる他の物体としては、典型的な塔充填要素、例えばPallリング、Telleretteリング、Raschigリング、Berlサドル、Intaloxサドル及びこれらの所望の組合せが挙げられる。これらの幾つかの具体例は、米国特許第4041113号及び同第4086307号に開示されている。優れた水力特性に加えて、好ましい金属カスケードリング充填物材料は反応器内の温度差を改善する。これによって、同じ入口温度で運転して出口温度を低くすることもできるし、高い入口温度で運転して同純度での生産量を高めることもできる。また、これらの要素を充填した反応器の入口と出口の温度差は、充填してない反応器の入口と出口の温度差よりも小さいが、各反応器での反応体の転化率は実質的に等しい。
【0028】
十分な反応器充填物が触媒床全体にランダムに分布している。ビスフェノールAを製造する好ましい実施形態では、触媒床の高さの(反応体の導入前にフェノールで濡らした樹脂触媒条件下で測定して)最低約25%、最も好ましくは約30%以上がランダムに分布した充填物で占められる。同様に、充填物の高さは、樹脂が経時的に膨潤したときの樹脂床の高さ全体に残るのに十分であるのが好ましい。この高さは触媒床の高さの約110%でよく、最も好ましくは120%でよい。充填物は樹脂の高さに近くすべきであり、樹脂が経時的に膨潤できるように多少(約20%まで)高くするのが好ましいが、累積圧縮力は床の底部の方が頂部より大きくなるので、充填物は樹脂よりも短くてもよいと考えられる。
【0029】
充填物をランダムに分配するには任意の方法が使用できる。最も容易で最も好ましい方法は、単に充填物を反応器中に入れ、触媒を反応器に入れて充填物空隙容積内に分配することである。
【0030】
いかなる公知の酸性イオン交換樹脂触媒も酸性触媒として使用でき、触媒に特に制限はないが、通常は架橋度約8%以下のスルホン酸型陽イオン交換樹脂であり、約6%以下の架橋度のものが好ましく、約4%以下の架橋度のものが最も好ましい。また、架橋度は約1%以上が好ましく、約2%以上がさらに好ましい。この樹脂触媒は少なくとも部分的に架橋したイオン交換樹脂触媒が好ましく、ある程度のジビニルベンゼン架橋とある程度のスルホン酸官能基を有するスルホン化芳香族樹脂、例えば米国特許第5233096号に開示されているものが好ましい。
【0031】
酸性イオン交換樹脂はフェノール類のアルキル化にも使用される(米国特許第4470809号)。陽イオン交換樹脂触媒の存在下で、α−メチルスチレンをフェノールと反応させるとp−クミルフェノールが生成し(米国特許第5185475号)、酸化メシチルをフェノールと反応させるとクロマンが生成する。使用の際、樹脂触媒の個々の粒子は水圧充填による圧縮力を受け、架橋度が低いと粒子は剛性が低く水圧変形を受け易い。イオン交換樹脂触媒の架橋度は最高約4%とし得るが、好ましくは触媒寿命を改善するため約2%以下である。
【0032】
本発明の反応器系(反応器システム)において、触媒剤は、複数の側鎖スルホン酸基を有する炭化水素ポリマーからなるスルホン化芳香族樹脂であるのが最も好ましい。これらは通例、2%又は4%のジビニルベンゼンで架橋されている。架橋度2%以下の触媒が最も好ましい。この点、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)コポリマー及びスルホン化フェノールホルムアルデヒド樹脂が有用である。かかる適当な触媒の例としては、Rohm and Haas Chemical社から「AMBERLITE A−32」及び「AMBERLYST A−121」というブランドの触媒として並びにBayer Chemical社から「K1131」というブランドの触媒として市販されているスルホン化樹脂触媒がある。酸性樹脂の交換能は好ましくは乾燥樹脂1グラム当たり約2.0ミリ当量H+以上である。乾燥樹脂1グラム当たり3.0〜約5.5ミリ当量H+の範囲が最も好ましい。適宜、助触媒又は触媒促進剤を使用してもよい。バルク又は結合型触媒促進剤のいずれも使用できる。これらの多くは当技術分野で周知である。
【0033】
本発明の方法と反応器はビスフェノールA(以下、BPAと略す。)の製造に特に適している。反応器をビスフェノールAの製造に使用する場合、フェノールは通常アセトンに対して過剰量で使用し、フェノールとアセトンのモル比(フェノール/アセトン)は通常アセトン1mol当たりフェノール約6mol以上、好ましくはアセトン1mol当たりフェノール約12mol以上であり、またアセトン1mol当たりフェノール約20mol以下が好ましく、アセトン1mol当たりフェノール約16mol以下がさらに好ましい。
【0034】
フェノールとアセトンの反応は通常、反応器への供給原料が液体にとどまるのに十分な温度、好ましくは約55℃以上の温度で実施される。また、110℃以下の温度が好ましく、90℃以下がさらに好ましく、約85℃が最も好ましい。入口と出口の圧力を同等な高さで測定するときの床の圧力差は約0.1psig以上が好ましく、約3psigがさらに好ましい。また、圧力差は約35psig以下が好ましく、約26psig以下がさらに好ましい。
【0035】
上記のフェノールとアセトンの反応において、ビスフェノールAを含有する液体反応混合物に加えて、通常、未反応フェノール、未反応アセトン及び水のような反応副生成物も反応混合物の一部である。
【0036】
本明細書を通して、フェノールという用語は、次式のフェノール及び以下にさらに詳細に記載する選択された置換フェノールを表す。
【0037】
【化1】

【0038】
ビスフェノールAと同様に、フェノールとケトンを反応させて得られるビスフェノールは次式で表される。
【0039】
【化2】

【0040】
式中、Ra及びRbはハロゲン又は一価炭化水素基であって、同じでも異なっていてもよく、p及びqは0〜4の整数であり、Xは次式のものである。
【0041】
【化3】

【0042】
c及びRdは水素原子若しくは一価炭化水素基であるか、又はRc及びRdが環構造を形成してもよく、Reは二価炭化水素基である。上記式のビスフェノールの具体例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン、並びに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロ(ビス)インダン、1,3−ビスヒドロキシフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシ−2,2,2−トリフェニルエタン、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−メタ−ジイソプロピルベンゼン、1,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンがある。
【0043】
また、上記式中の が−O−、−S−、−SO−、又は−SO2−であるようなビスフェノールも製造できる。製造できる化合物の例としては、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル及び4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテルのようなビス(ヒドロキシアリール)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド及び4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルフィドのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド及び4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド、並びに4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなビス(ヒドロキシジアリール)スルホンがある。これらの物質の中で、ビスフェノールAの製造が特に好ましい。
【0044】
上記のようなビスフェノールは、酸性触媒存在下での適当な置換フェノールとケトンとの縮合による公知のビスフェノール合成法で得ることができる。上記式中のXによる結合がない構造を有するフェノールを使用してもよい。また、上記ビスフェノールを得ることができるのであれば、フェノールとホルムアルデヒド、スルホン酸などとの縮合を行うこともできる。
【0045】
反応器10内の反応体は、反応してビスフェノール(反応体がアセトンとフェノールのときはBPA)を形成し、ビスフェノール、未反応反応体、適宜助触媒、及び少量の他の物質を含む生成物流として反応器を出る。
【0046】
生成物流は分離器に送ってもよく、分離器はかかる物質の任意の慣用分離法であればよい。概して蒸留が最も簡単で最も好ましい方法である。ただし、他の周知の方法を別途独立に又は蒸留と組合せて用いて分離プロセスとすることもできる。
【0047】
ビスフェノール生成物、ビスフェノール異性体、フェノール及び少量の各種不純物を底部生成物として分離器から取り出す。この底部生成物をさらに別の分離器に供給する。
【0048】
結晶化が好ましいビスフェノール分離法であるが、ビスフェノール生成物の所望の純度に応じて、母液からビスフェノールを分離するのに使用することができる任意の方法を使用することができる。分離したら、フェノールとビスフェノール異性体を含む脱水した母液を反応体として反応器10に戻す。
【0049】
分離器で母液から分離されたビスフェノールは、その後、ビスフェノール回収プロセスのさらに別の分離及び精製機に送ることができる。これは、次にポリカーボネートの製造に使用するBPAを製造するときのように非常に純粋な生成物が必要な場合には特に重要である。一般に、かかる追加の分離は、再結晶のような技術を用いて有利に行うことができる。
【0050】
イオン交換樹脂触媒の圧縮に関連した問題を軽減するため、樹脂触媒床はさらに、架橋度及び変性法の異なる触媒の層又はこれらの組合せを含んでいてもよい。特に、触媒床は、架橋度の高いイオン交換樹脂触媒を床の下端に、架橋度の低いイオン交換樹脂触媒を床の上端に含む組合せから調製し得る。床の上端に近いイオン交換樹脂触媒の架橋度は好ましくは約2%以下であり、床の下端のイオン交換触媒樹脂の架橋度は好ましくは約2%超である。
【0051】
使用に際しては、シェル又はシリンダー16に所定量の充填物と触媒を交互に装入することによって充填物と樹脂触媒を充填する。触媒は水で濡らし「予め」又は部分的に乾燥したビーズとすることができる。好ましくは、支持体及び/又はフィルターとして砂を最初にシェルの底部に装入する。好ましい実施形態において、反応器はその高さの約1/4までを水で、その高さの1/4を充填物要素で充填する。次に、そのカラムに水で濡らした樹脂を充填し、閉じ、フェノールを流して樹脂を脱水し、要素により占められている領域内に収縮させる。この手順を残りのカラム高さに対して繰り返す。反応中膨潤する追加の要素を床の頂部に加える。この手順は、触媒が予め乾燥されている場合はフェノールを用いて行う。
【0052】
フェノールとアセトンからビスフェノールAを製造する本方法は、フェノールとアセトンをイオン交換樹脂触媒床内に導入して、樹脂触媒の存在下でフェノールとアセトンを反応させ、その後反応混合物からビスフェノールAを回収することを含む。このフェノールとアセトンは、反応が所定の収率と選択率で進行できるように十分な速度で(反応体の並流下降流を促進するように)床の上端に導入する。フェノールとアセトンの反応は、通常反応器への供給原料が液体のままでいるように十分な温度で、好ましくは約55℃以上の温度で行う。また好ましくは、温度は約110℃以下、好ましくは約90℃以下である。反応体の導入は、一般に乾燥触媒1ポンド当たり毎時約0.1ポンド以上の供給原料(lb供給原料/hr/lb触媒)、好ましくは約1.0lb供給原料/hr/lb触媒以上の重量時間空間速度(WHSV)である。また、約20lb供給原料/hr/lb触媒以下、好ましくは約2.0lb供給原料/hr/lb触媒以下が好ましい。また反応体の導入は一般に床の断面1平方フィート当たり毎分約0.1ガロン(gpm/ft2)以上、好ましくは約0.5gpm/ft2以上の流束速度である。また好ましい量は約2.0gpm/ft2以下、最も好ましくは約0.5gpm/ft2以下である。反応の温度は部分的に、ジャケットを流れる冷却流で反応の熱を除去することによって制御することができる。しかし、プラグフロー充填床の場合、半径方向の熱伝達が低いので、反応器は殆ど断熱的に機能する。充填物は熱伝達を改善する役目を果たし、従って断熱性を低下させ、温度制御を改善することができる。反応の温度は約110℃までであることができるが、約85℃に制限するのが好ましい。反応器の定常状態運転中、入口と出口24間の差圧はゲージ1平方インチ当たり約0.1ポンド(psig)以上、好ましくは約3psig以上である。また、約30psig以下が好ましく、約24psig以下がさらに好ましい。
【0053】
ここで、図2を参照すると、フェノールとアセトンからビスフェノールAを製造するための系(システム)全体を符号50で示す。系(システム)50は、フェノール、アセトン及び脱水リサイクル母液を含有する予め混合した供給流54を含んでおり、最初にこれを冷却装置58に供給する。次に、この冷却された供給原料混合物を、入口ライン59を介して反応器10に導入する。次いでこの混合物を、反応器の充填触媒床14に下向きに流してビスフェノールA生成物を形成させる。所望のビスフェノールAの外に未反応物質及び若干の副生成物を含む生成物流は反応器出口ライン63を介して流れる。第二のフェノール供給流62が出口ライン63に接続されており、反応器に装入するのに使用できる。この出口ライン63は生成物取出ライン30に接続されている。図1に関して既に説明したように、反応器10は、反応器のシェルに沿って様々な位置に圧力検知手段35及び温度検知手段37を備える。冷却装置58からの戻りライン64は流れ追跡ライン72を備えているのが好ましい。(加工処理される材料は周囲温度で固体であるので、配管、反応器及び必要な場合には所望の流体温度を維持するための装置に、制御された熱を加える。これは配管及び装置に対する「追跡」又は「ジャケット付」として知られている。)。系(システム)50はさらに、生成物取出ライン30の下流に配置されたサイホンブレイク70を有していてもよい。反応器はライン65を介して通気されている。フェノール及びアセトンの供給流のいずれか又は両方が最初の反応からリサイクルされた不純物を含んでいてもよい。フェノールとアセトンの反応に由来する不純物は、リサイクル流内で異性化され得る。
【実施例1】
【0054】
実施例1
内径約21インチ、断面積2.377平方フィート、及び高さ15フィートの反応器シェルに、嵩密度15.3ポンド/立法フィート(lbs/ft3)の充填物(CASCADE MINI−RINGS(登録商標))と、Rohm and Haas製の2%架橋されている湿ったイオン交換樹脂触媒A−121とを所要量段階的に仕込んだ。装入と装入の間に、反応器を閉じ、水分含有率0.5%未満のフェノール流を樹脂触媒床に流して樹脂触媒を脱水した。この段階的な装入と脱水操作を、触媒床が10.5フィートの高さになるまで繰り返した。合計で329.6lbの充填物と3166lbの湿った樹脂触媒を入れた。水で湿った樹脂触媒の密度は45.8湿潤lbs/ft3(約8.5「乾燥」lbs/ft3)であり、フェノールで脱水した同じ樹脂触媒の密度は24.9「乾燥」lbs/ft3であった。樹脂触媒の脱水に際して、592lbの「乾燥」触媒が残った。
【0055】
様々な反応器供給速度で樹脂触媒床の垂直高さ方向(両端)の差圧を測定した。供給組成物は表IIIのA欄のものと類似していた。用いた促進剤は約800ppmのレベルの3−メルカプトプロピオン酸である。表Iに、樹脂触媒床の垂直寸法で観察された差圧に対する測定された流速を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表には平均値を示してあり、明らかに流速の増大と共に圧力が増大するが、この増大は支持体によって緩和されている。
【実施例2】
【0058】
実施例2
同じ型の樹脂を充填物なしで用いた対照実験で、実施例1の実験条件と供給組成物を用いた。表IIに、樹脂触媒床の垂直寸法で観察された差圧に対して測定された流速を示す。
【0059】
【表2】

【0060】
ランダムな充填でもたらされる支持体がないと、増大した流れの下で支持されていない触媒床の圧縮は大きく、その結果、スループット、従って生産性が厳しく制限される。表に挙げたのは平均値である。
【0061】
図3は、同じ条件下での実施例1の充填物を伴う樹脂と実施例2の充填物なしとの比較である。この図は、圧縮性樹脂の床を通しての差圧の増大が同じ樹脂系及び実験条件に対して充填物によって緩和されることを示している。
【実施例3】
【0062】
実施例3
異なる典型的なプロセス条件で幾つかの実験を行い、反応器の入口と出口の温度差及び反応体の転化率を測定した。これらの条件及び幾つかの測定の平均を表IIIに示す。
【0063】
【表3】

【0064】
上記データから明らかなように、広く変化する条件に対して転化率はほぼ等しいが、リングを充填した反応器の入口と出口の温度差は、充填物のない反応器の入口と出口の温度差よりも小さい。温度差が小さい方が等しい転化率に有利に働くということはないので、これは尋常のことではない。
【0065】
好ましい実施形態に関連して説明してきたが、当業者には明らかな通り、本発明の技術的範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、その要素を均等物で置換することができる。加えて、本発明の技術的範囲から逸脱することなく特定の状況又は材料を本明細書の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で最良と考えられる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0066】
10 反応器
14 固定支持触媒床
30 生成物取出ライン
34 圧力検知手段
36 温度検知手段
50 反応器系(反応器システム)
54 供給流混合物
58 冷却装置
62 第二フェノール供給流
70 サイホンブレイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールの製造方法であって、
フェノールとケトンを下降流で反応器(10)内に導入し、
フェノールとケトンを反応させて反応混合物を形成し、
ビスフェノールを反応混合物から回収する
ことを含んでなり、上記反応器が、イオン交換樹脂触媒床(14)内にランダムに分布した充填物を含み、適宜含イオウ化合物の触媒促進剤を含むイオン交換樹脂触媒床(14)を備える、方法。
【請求項2】
床(14)内のイオン交換樹脂触媒が架橋している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂触媒の架橋度が樹脂の約4重量%以下である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記樹脂の架橋度が2重量%を超える、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂の架橋度が2%以下である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂触媒の架橋度が約2%である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記イオン交換樹脂触媒がスルホン化芳香族樹脂である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
結合した促進剤が、含イオウ化合物での中和によって変性したスルホン化芳香族樹脂のスルホン酸基の一部からなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
バルク促進剤が、反応混合物中に自由分散した含イオウ化合物からなる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記充填物が、約0.6〜約0.98の空隙容積を有する不活性物質からなる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記充填物が、Pallリング、Berlサドル、Intaloxパッキング、Telleretteパッキング、Hyperfillパッキング、Stedmanパッキング、Sulzerパッキング、Raschigリング、Koch−Glitschカスケードミニリング(登録商標)及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記充填物の大部分がKoch−Glitschカスケードミニリング(登録商標)からなる、請求項10記載の方法。
【請求項13】
促進剤が3−メルカプトプロピオン酸として存在する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
ビスフェノールの製造方法であって、
フェノールとケトンを下降流で反応器系(50)内に導入し、
ケトンとフェノールを反応器(10)内で反応させてビスフェノール含有反応混合物を形成し、
ビスフェノールを混合物から回収する
ことを含んでなり、反応器系(50)が、下降流式化学反応器(10)と、該反応器(10)に充填した固定床(14)イオン交換樹脂触媒内にランダムに分布した充填物を有する固定床(14)イオン交換樹脂触媒を含み、上記樹脂触媒が、該樹脂触媒を基準にして約2重量%以下の架橋度を有するスルホン化芳香族樹脂である、方法。
【請求項15】
下降流方式で導入されるフェノールとアセトンの反応でビスフェノールAを製造するための反応器(10)であって、
反応容器(10)、
反応容器(10)内のイオン交換樹脂床であって、適宜促進剤を含むイオン交換樹脂触媒床(14)、及び
イオン交換樹脂触媒床(14)全体にランダムに分布した充填物
を備える反応器(10)。
【請求項16】
床(14)内のイオン交換樹脂触媒の少なくとも一部が架橋している、請求項15記載の反応器(10)。
【請求項17】
フェノールとアセトンからビスフェノールAを製造するための系(50)であって、
アセトン供給流、
アセトン供給流と混合されて供給流混合物(54)を形成するフェノール供給流、
供給流混合物(54)を受け入れる冷却装置(58)、
冷却装置(58)と流体連通して接続された反応器(10)であって、供給流混合物(54)が流入する入口を上端に及び出口を下端に有する反応容器(10)を備えていて、上記出口と入口の中間に支持触媒樹脂床(14)が配置されており、触媒樹脂床(14)がイオン交換触媒樹脂と該樹脂全体にランダムに分布した不活性充填物を含む、反応器(10)、
容器(10)と連通した温度検知手段(36)、
容器(10)と連通した圧力検知手段(34)、
上記入口と出口の間のバイパス流、
上記出口で受入れ可能な第二のフェノール供給流(62)、
反応器の下端と流体連通して配置され、反応器(10)が完全に液体で満たされたままオーバーフロー方式で運転できるように上記入口と同じ高さにある生成物取出ライン(30)、
生成物取出バルブの下流に配置されたサイホンブレイク(70)
を備える系。
【請求項18】
触媒樹脂が、入口と出口の間の床の垂直寸法全域で実質的に均一な空隙率を画成する、請求項17記載の系(50)。
【請求項19】
反応器が、ビスフェノールAの製造中約65〜約85℃の温度に維持される、請求項18記載の系(50)。
【請求項20】
請求項1記載の方法によって製造されるビスフェノールA。
【請求項21】
促進剤とイオン交換樹脂触媒床(14)内にランダムに分布した充填物とを含むイオン交換樹脂触媒床(14)を備える反応器内に、フェノールとアセトンを下降流で導入し、
フェノールとアセトンを反応させて反応混合物を形成し、
ビスフェノールを反応混合物から回収する
ことを含んでなる方法によって製造されるビスフェノールA。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229161(P2010−229161A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161873(P2010−161873)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2003−572930(P2003−572930)の分割
【原出願日】平成15年1月30日(2003.1.30)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】