説明

ビスフェノールAに特異的に結合する核酸アプタマー

本発明はビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマー及びこれを利用したビスフェノールAの検出及び除去方法に関する。本発明に係るビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーは、nMレベルの親和度を有し、極微量のビスフェノールAも検出することが可能で、ビスフェノールAとは一つのメチル基しか差がないビスフェノールB等の他のビスフェノール類に対しては親和性を示すことなく、ビスフェノールAに対してだけ特異的に検出できるため、従来検出が難しかった環境ホルモンであるビスフェノールAの検出及び除去に効果的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマー及びこれを利用したビスフェノールAの検出及び除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールAは、ポリカーボネートやエポキシ樹脂等のプラスチック製造の原料として、哺乳瓶、歯科で使うレジン、飲み物の缶のコーティング等に広く使われている。しかし、ビスフェノールAは合成エストロゲンとして作用できる内分泌系かく乱物質(endocrine disrupter)として、これが遊離して生物体に吸収されると内分泌系の正常な機能を邪魔したり混乱させ、極微量存在する場合においても生物蓄積によって生殖機能低下、成長障害、奇形または癌等を誘発する深刻な障害を起こす環境ホルモンである。従って、自然システムでこのような化学物質の検出は、公衆の健康及び環境保護のために必須である。
【0003】
しかし、環境産業及び食品産業における微量残留有害物質の検査、製薬産業における安全性評価等においてビスフェノールA等の環境ホルモンの検出が求められてきたが、微量のビスフェノールAを検出するのに多々の困難があった。従って、このようなビスフェノールAを効果的に検出及び除去できる新しい技術の開発が求められている。
【0004】
一方、アプタマーとは、単鎖DNAまたはRNA分子であり、高親和性でターゲット物質を特異的に認知できる小さい一本鎖オリゴ核酸をいう。アプタマーは、検出分析システムで分子を認識できるバイオセンサーの一要素として利用できるため、抗体の代替物質と認識されてきている。特に、アプタマーは抗体とは異なって毒素をはじめとする種々の有機物及び無機物の標的分子として利用され、一旦特定物質に特異的に結合するアプタマーを分離すると、自動化されたオリゴマー合成方法で低コストと一貫性を持って再生産可能であるため、経済的であった。そこで、1996年に初めて蛍光表示されたアプタマーを利用して標的蛋白質を測定したアプタマー基盤のバイオセンサーが開発されて以後、このようなアプタマーの長所と構造的特性を基盤として多様なアプタマーバイオセンサーが開発されており(Y.S. Kim & M.B. Kim, News & Information for Chemical Engineers, 26(6): 690, 2008)、これと共に多様な化学物質を検出できる新しいアプタマーの発掘が求められている。
【0005】
そこで、本発明者は、ビスフェノールAを効果的に検出して除去できるようにビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを分離しようと鋭意努力した結果、SELEX(Syetematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)工程を通して、ビスフェノールAにのみ特異的に結合するアプタマーを選別し、選別されたアプタマーが他の類似する構造を有するビスフェノールBを含んだ非汚染性ビスフェノールには結合することなく、ビスフェノールAにのみ特異的に結合することを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の要約】
【0006】
本発明の目的は、ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、前記アプタマーを含有するビスフェノールAの検出用組成物、検出キット及び検出センサーを提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、前記アプタマーを利用したビスフェノールAの検出及び除去方法を提供することである。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は配列番号1乃至配列番号7で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーを提供する。
【0010】
また、本発明は、配列番号8乃至配列番号34で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列と90%以上100%未満の相同性を有する核酸配列であることを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記アプタマーを利用したビスフェノールAの検出または除去方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記アプタマーを含有するビスフェノールAの検出または除去用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記アプタマーを含有するビスフェノールAの検出キット及び検出センサーを提供する。
【0014】
また、本発明は、ビスフェノールAの検出または除去のための、配列番号1乃至配列番号7で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーの用途を提供する。
【0015】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーの選別過程及びビスフェノールAの検出過程の概略図である。
【図2】リアルタイムPCR分析法によってビスフェノールA結合カラム及び非結合カラムに対する親和度を示したグラフ及び選別されたビスフェノールAに特異的に結合するアプタマー(#3及び#12−5)の2次構造を示す図である。
【図3】ビスフェノールAとアプタマー#3の結合を3次元ゾル−ゲルチップを利用して確認した結果を示した図である。
【図4】2つのビスフェノールAアプタマー#3及び#12−5を利用した3次元ゾル−ゲルチップのサンドイッチ分析結果を示した図である。
【図5】ビスフェノールAと異なるビスフェノール類の構造式(A)及び各化合物に対するビスフェノールAアプタマー#3の親和度を示したグラフである。
【図6】正しい位置をとった(trimmed)アプタマー(#3−tr1、#3−tr2、#3−tr3及び#3−tr4)の構造を示した図である。
【図7】正しい位置をとった(trimmed)アプタマー(#3−tr1、#3−tr2、#3−tr3及び#3−tr4)のビスフェノールAに対する結合力を確認した結果を示したグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0017】
本明細書において「アプタマー」とは、高い親和性でターゲット物質を特異的に認知できる小さい一本鎖オリゴ核酸をいう。この時、前記アプタマーがRNAの場合には、規定された核酸配列においてTはUであることを特徴とする。
【0018】
本明細書において「試料」とは、目的の分析物を含有すると推定されて、分析が行われる組成物を意味する。
【0019】
本明細書において「90%以上100%未満の相同性を有する核酸配列」とは、1乃至数個のヌクレオチドが挿入、欠失または置換されて90%以上100%未満の配列に共通性があるもので、類似するビスフェノールA結合能を示す核酸配列を意味する。
【0020】
本発明は一観点において、次のような配列番号1乃至配列番号7で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーに関するものである。
【0021】
配列番号1:5’−CCTGAGKWAC TGYCC−3’(K=GまたはT、W=AまたはT、Y=TまたはC)
配列番号2:5’−GCCGTTGGTG TGGTGGGCCY AGGGCCGGCG GCGCACAGCT GTTATAGACG YCTCCAGC−3’(Y=CまたはT)
配列番号3:5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGKTSGRG−3’(K=GまたはT、S=CまたはG、R=AまたはG)
配列番号4:5’−ATCGARTKCC CSCGGCCG−3’(R=AまたはG;K=GまたはT;S=CまたはG)
配列番号5:5’−GTATTGTCNT NCNNATCCTC GNNCTNGCTG TCNT−3’(N=A、T、CまたはG)
配列番号6:5’−GCGGGTACCG TGCT−3’
配列番号7:5’−CGGTGGGTGG NNAGNTGNGA NA−3’(N=A、T、CまたはG)
【0022】
この時、前記アプタマーを構成する全てのヌクレオチドの数は、14〜200ntsであってもよいが、好ましくは14〜63ntsであることを特徴とする。
【0023】
本発明において、前記配列番号1で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号8乃至配列番号18で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする。
【0024】
#31:5’−CGGCCCTAGG ATGACCTGAG TACTGTCCCT CACCCCTACT TCCGCCACTG GCCCAACAGC−3’(配列番号8)
#23:5’−TGCCTAGGAT GACCTGAGTA CTGTCCAGGC TCCGACCTTG TCCCTGCCGC CACTCTCCCA−3’(配列番号9)
#47:5’−GCGGACGGGC TCGGCTCACC TAGGATGACC TGAGTACTGT CCCCGTGGCG CTAATTCGGG−3’(配列番号10)
#50:5’−CGGCCCGCCC CTAGGATGAC CTGAGTACTG TCCGCGGGAC GGTATCGCTG AGACAGGTGC−3’(配列番号11)
#41:5’−CGGCAGCCCT AGGATGACCT GAGTACTGTC CGCGAAAGAC TCCATGGTAC CCGGTGCTTA−3’(配列番号12)
#27:5’−GGGGGCGTCG NCCTAGGATG ACCTGAGTAC TGTCCGCACN CAGGGAGGAT GCATTGAC−3’(配列番号13)
#45:5’−GTGTCCCCAC GTCCTAGGAT GACCTGAGTA CTGTCC AATG CCGCTCCTCC CGATGCAGAC−3’(配列番号14)
#11:5’−CTCTTCNCTC CAATTCGTAA GATGACCTGA GGTCTGCCCA ACGGTGTTTA GAACCCCTTG−3’(配列番号15)
#12−3:5’−CGCAGCGCGC CCCTGAGTAC TGTCCGCCCA ACGGTGTGAC GGCCCTGCGA TCAACGATTG−3’(配列番号16)
#12−4:5’−GGGCCGTCCT AGGATGACCT GAGTACTGTC CGCCCAACGG TGTGACGGCC CTGCGATCAA−3’(配列番号17)
#22:5’−CCCTCGCCCT GAGTACTGTC CCCCGTCCGT CCGGTGAGGG CCACTATCGC TAACTGATCA−3’(配列番号18)
【0025】
本発明において、前記配列番号2で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号19乃至配列番号22で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする。
【0026】
#4:5’−AGGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGTCTCCAGC−3’(配列番号19)
#12−5:5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGTCTCCAGC−3’(配列番号20)
#6:5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGCCTCCAGC−3’(配列番号21)
#12−7:5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CCAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGCCTCCAGC−3’(配列番号22)
【0027】
本発明において、前記配列番号3で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号23乃至配列番号25で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする。
【0028】
#12−2:5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGTTGGAG−3’(配列番号23)
#12−9:5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGTTGGGGG−3’(配列番号24)
#12−6:5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGGTCGGG−3’(配列番号25)
【0029】
本発明において、前記配列番号4で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号26乃至配列番号28で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする。
【0030】
#2:5’−GCCGACAGGG CATGGGACGC TATCAGCGGT GTCAATCGAA TTCCCGCGGC CGCCATGCGG−3’(配列番号26)
#14:5’−GGTCCCCGCA GCTCATACGG CGCTC CAGCG TAATCGAATT CCCGCGGCCG CCATGCGGCC−3’(配列番号27)
#46:5’−GCGAGTGGCC CATCAGCAGA GCGTAATCCC CACGCACATC GAGTGCCCCC GGCCGGTGCT−3’(配列番号28)
【0031】
本発明において、前記配列番号5で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号29または配列番号30で表される核酸配列であることを特徴とする。
【0032】
#12:5’−GTATTGTCAT TCATATCCTC GTGCTTGCTG TCCTCACCCC ACCCACCAGA ATGGAAA−3’(配列番号29)
#13:5’−CCTG GTATTG TCTTGCCAAT CCTCGCCCTG GCTGTCTTAC CCCTCCCCAC CCGCCTGAAG−3’(配列番号30)
【0033】
本発明において、前記配列番号6で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号31または配列番号32で表される核酸配列であることを特徴とする。
【0034】
#48:5’−GTCGACTCGC GGGTACCGTG CTCAATGTCC CAATCCGGGG AAGCGTTTAG ACCCGCAGCC CAC−3’(配列番号31)
#40:5’−GTCGCCACTG CGGGTACCGT GCTTGGGCNA CCGATGNACC NTGNNACCGT GTTTNGCC−3’(配列番号32)
【0035】
本発明において、前記配列番号7で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、次の配列番号33または配列番号34で表される核酸配列であることを特徴とする。
【0036】
#3:5’−CCGGTGGGTG GTCAGGTGGG ATAGCGTTCC GCGTATGGCC CAGCGCATCA CGGGTTCGCA CCA−3’(配列番号33)
#32:5’−GGGCGGTGGG TGGCGAGTTG TGAGACGCTG GAGGAGGTTG CTGCCCCCGG CACATTGGGA−3’(配列番号34)
【0037】
核酸アプタマーは、一本鎖DNAまたはRNAとして提供されて、本発明において前記核酸がRNAの場合には、前記核酸配列においてTはUと表され、このような配列が本発明の範囲に含まれることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者には自明である。
【0038】
本発明の一実施例においては図1に示したように、前記配列番号8乃至34で表される核酸配列のアプタマーをSELEX工程を通して選別した後、リアルタイムPCR方法及び平衡ろ過法を通して親和度を測定して、前記配列番号8乃至34で表される核酸配列がビスフェノールAに対し特異的に結合することを確認した。前記配列番号8乃至34で表される核酸配列のビスフェノールAアプタマーは、配列番号1乃至7のように共通の保存される領域を有し、そこで、このような共通の保存される領域を有するアプタマーは、ビスフェノールAに特異的に結合することができる。また、このような共通の保存される領域の存在は、前記配列番号8乃至配列番号34で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列と90%以上100%未満の相同性を有する核酸配列は、ビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーであることを意味する。グループ1の場合、配列番号1の共通配列を有する11個のアプタマーが取得され、これらが全てビスフェノールAに特異的に結合できることから、これらと90%以上の相同性を有する核酸配列もビスフェノールAに特異的に結合できることは自明である。
【0039】
本発明の他の実施例においては、前記配列番号8乃至34で表される核酸アプタマーのうち最も高い親和度を見せた配列番号33で表される核酸配列のアプタマー#3に対しビスフェノールA以外の他のビスフェノール類、例えばビスフェノールB(Bisphenol B,BPB)、4,4'−ビスフェノール(4,4’-Bisphsenol,BP)、6FビスフェノールA(6F Bisphenol A,6F)等に対する実施例2−2の方法で親和性(Kd)を測定した結果、BPBの場合、ビスフェノールAとは一つのメチル基しか差がないにも係わらず、アプタマー#3はBPBには親和性を示さず、ビスフェノールAに対してだけ特異的に親和性を示すことを確認した。
【0040】
本発明はまた他の観点において、アプタマーを利用したビスフェノールAの検出方法に関するものである。前記ビスフェノールAは、水、土壌、空気、食品、廃棄物、動植物器官及び動植物組織のいずれか一つ以上から採取された試料から検出されることを特徴とするが、これらに限定されない。この時、前記水は江水(river water)、海水、湖水及び雨水等を含み、廃棄物は下水、廃水等を含み、前記動植物は人体を含む。
【0041】
本発明の他の実施例においては、前記配列番号8乃至34で表される核酸アプタマーの中最も高い親和度を見せた配列番号33で表される核酸配列のアプタマー#3に対しゾル−ゲルチップを利用したサンドイッチ分析を行った結果、ビスフェノールA特異的に結合することを確認した。従って、本発明は前記ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを含有するビスフェノールAの検出センサーに関するものである。
【0042】
前記ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを含有する検出センサーシステムは、キット(kit)状で提供できる。ビスフェノールA検出用キットは、瓶、筒(tub)、小さい袋(sachet)、封筒(envelope)、チューブ、アンプル(ampoule)等のような形態を有し、これらは部分的にまたは全体的にプラスチック、ガラス、紙、ホイル、ワックス等から形成してもよい。容器は、最初は容器の一部または機械的、接着性、またはその他の手段によって容器に付着できる、完全にまたは部分的に分離可能な栓を装着してもよい。容器はまた注射針によって内容物にアクセスできる、ストッパーが装着される。前記キットは外部パッケージを含むことができ、外部パッケージは構成要素の使用に関する使用説明書を含んでもよい。
【0043】
また、本発明に係るビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーは、ビスフェノールAだけを特異的に検出するが、これを含んでビスフェノールAの検出または除去用組成物を提供できることは、本発明が属する技術分野において当業者に自明なことである。
【0044】
本発明はまた他の観点において、ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを利用したビスフェノールAの除去方法に関するものである。本発明の一様態によると、好ましくは前記アプタマーが固定されたビーズをカラムに充鎮してビスフェノールAが含まれた試料を通過させてビスフェノールAを除去することができる。
【実施例】
【0045】
[実施例1]ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーの分離
1−1:ビスフェノールAアガロース親和性カラム(Bisphenol A-Agarose Affinity Column)の準備
ビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーを分離するためにビスフェノールA−アガロース親和性カラムを次のように準備した。
【0046】
まず、20mMのビスフェノールA(4,4’-dihydroxy-2,2-diphenylpropane、Sigma-Aldrich, USA)を50%DMFに溶解した。エポキシ活性化したセファロース6Bレジン(Epoxy-activated Sepharose 6B resin;GE Healthcare Bio-Sciences Corp., USA)の分液はビスフェノールAをエーテル結合を介してヒドロキシ基で固定するのに使用された。ビスフェノールAは、カップリングバッファー(coupling buffer:50%DMF、pH13.0)で約11〜24μmoleの活性基を有する600μLエポキシ活性化レジンと38℃で、5rpmで回転させながら一晩反応させてカップリングさせた。
【0047】
ターゲット−カップリングされたレジンは、順次カップリングバッファー、1Mアセテートバッファー、蒸溜水で洗浄された後、カップリングされたレジンを1Mエタノールアミン(ethanolamine,pH8.0)と6時間42℃で回転させながらインキュベーションして、固定化過程の間、自由/非占有基(free/unoccupied group)をブロッキングした。ブロッキング後に、ビーズは洗浄バッファー(0.1Mアセテート、0.5M NaCl、pH4.0)で洗浄されて、20%エタノールに再懸濁された後、使用するまで4℃で保管された。
【0048】
流出物(flow-through)及び廃棄されるウォシングバッファー内の未結合のビスフェノールAの量は、分光光度計(Bio-Rad, USA)を用いて280nmで測定し、結合したビスフェノールAの濃度は初期濃度と未結合の濃度の差で算出した。対照区としてビスフェノールAをカップリングさせないでエタノールアミンで遮断させただけのレジンの分液を利用した。
【0049】
1−2:ssDNA poolの準備及びビスフェノールAに特異的に結合するアプタマーの選別
次の配列を有するランダムssDNAライブラリーを化学的に合成してPAGE(Genotech Inc., Korea)で分離した。
5’−GGGCCGTTCGAACACGAGCATG−N60−GGACAGTACTCAGGTCATCCTAGG−3’(配列番号35)
【0050】
Asymmetric PCR方法がssDNAの準備のために行われ、ssDNAの濃度は、Quant−iT Oligreen ssDNA試薬及びキット(Invitrogen, USA)を利用して測定された。ssDNAはNuclease S1(Sigma-Aldrich, USA)を使って確認した。初期プールは1015moleculesを含む。前記asymmetric PCRには次に示すフォワードプライマーだけを使用した。
フォワードプライマー:5’−GGGCCGTTCGAACACGAGCATG−3'(配列番号36)
【0051】
SELEXの選別と増幅過程を12回行った。ビスフェノールA結合のレジンは、SELEX過程の各ラウンド前に結合バッファー(binding buffer:25mM Tris−HCl,100mM NaCl,25mM KCl,10mM MgCl,5%DMSO,pH8)で洗浄した。ランダムssDNAライブラリープールは、95℃で5分間加熱した後、室温で1〜2時間冷却された。毎選別ラウンドで600μLのレジンにカップリングされた19μmoleのビスフェノールAは結合バッファーでランダムDNAプールと混合された。このような混合物はyellowカラム(Bio-Rad, USA)で、室温で1時間インキュベートされた。非結合のssDNAは結合バッファーで洗浄することによって除去された。
【0052】
ビスフェノールAカップリングされたレジンから結合されたssDNAを溶離させるために、溶離バッファー(50mM Bisphenol A,100mM Tris−HCl,200mM NaCl,25mM KCl,10mM MgCl,50%DMSO,pH8.0)をカラムに添加した後、流出物を取得した。溶離されたssDNAを沈殿させるために、20μgのイーストtRNAをキャリアで添加した。レジンに対する陰性選別工程(即ち、レジンから非結合の候補者を除去)は、3回目サイクル後のサイクルに含まれた。9回目及び11回目選別ラウンド後の溶離されたアプタマープールは、pGEMT easy vector system(Promega, USA)を使ってクローンされ、個々のクローンはシーケンシングされた(Solgent Inc., Korea)。11回目選別ラウンド及び12回目の最後の選別ラウンドから54個のアプタマーを選別したが、この中でいくつは重複したことが明らかになり、最終的には下記に示したように、合わせて27個のアプタマーを選別した。
【0053】
グループ1
#31 5’−CGGCCCTAGG ATGACCTGAG TACTGTCCCT CACCCCTACT TCCGCCACTG GCCCAACAGC−3’(配列番号8)
#23 5’−TGCCTAGGAT GACCTGAGTA CTGTCCAGGC TCCGACCTTG TCCCTGCCGC CACTCTCCCA−3’(配列番号9)
#47 5’−GCGGACGGGC TCGGCTCACC TAGGATGACC TGAGTACTGT CCGTGGCG CTAATTCGGG−3’(配列番号10)
#50 5’−CGGCCCGCCC CTAGGATGAC CTGAGTACTG TCCGCGGGAC GGTATCGCTG AGACAGGTGC−3’(配列番号11)
#41 5’−CGGCAGCCT AGGATGACCT GAGTACTGTC CGCGAAAGAC TCCATGGTAC CCGGTGCTTA−3’(配列番号12)
#27 5’−GGGGGCGTCG NCTAGGATG ACCTGAGTAC TGTCCGCACN CAGGGAGGAT GCATTGAC−3’(配列番号13)
#45 5’−GTGTCCCCAC GTCCTAGGAT GACCTGAGTA CTGTCCAATG CCGCTCCTCC CGATGCAGAC−3’(配列番号14)
#11 5’−CTCTTCNCTC CAATTCGTAA GATGACCTGA GGTCTGCCA ACGGTGTTTA GAACCCCTTG−3’(配列番号15)
#12−3 5’−CGCAGCGCGC CCCTGAGTAC TGTCCGCCCA ACGGTGTGAC GGCCCTGCGA TCAACGATTG−3’(配列番号16)
#12−4 5’−GGGCCGTCCT AGGATGACCT GAGTACTGTC CGCCCAACGG TGTGACGGCC CTGCGATCAA−3’(配列番号17)
#22 5’−CCCTCGCCCT GAGTACTGTC CCCCGTCCGT CCGGTGAGGG CCACTATCGC TAACTGATCA−3’(配列番号18)
【0054】
グループ2
#4 5’−AGGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGTCTCCAGC−3’(配列番号19)
#12−5 5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGTCTCCAGC−3’(配列番号20)
#6 5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CTAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGCTCCAGC−3’(配列番号21)
#12−7 5’−CCGCCGTTGG TGTGGTGGGC CAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGCTCCAGC−3(配列番号22)
【0055】
グループ3
#12−2 5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGTTGG−3’(配列番号23)
#12−9 5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGTTGGG−3’(配列番号24)
#12−6 5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCG−3’(配列番号25)
【0056】
グループ4
#2 5’−GCCGACAGGG CATGGGACGC TATCAGCGGT GTCAATCGAA TTCCCGCGGC CGCCATGCGG−3’(配列番号26)
#14 5’−GGTCCCCGCA GCTCATACGG CGCTCCAGCG TAATCGAATT CCCGCGGCCG CCATGCGGCC−3’(配列番号27)
#46 5’−GCGAGTGGCC CATCAGCAGA GCGTAATCCC CACGCACATC GAGTGCCCCC GGCCGGTGCT−3’(配列番号28)
【0057】
グループ5
#12 5’−GTATTGTCAT TCATATCCTC GTGCTTGCTG TCCTCACCCC ACCCACCAGA ATGGAAA−3’(配列番号29)
#13 5’−CCTGGTATTG TCTTGCCAAT CCTCGCCCTG GCTGTCTTAC CCCTCCCCAC CCGCCTGAAG−3’(配列番号30)
【0058】
グループ6
#48 5’−GTCGACTCGC GGGTACCGTG CTCAATGTCC CAATCCGGGG AAGCGTTTAG ACCCGCAGCC CAC−3’(配列番号31)
#40 5’−GTCGCCACTG CGGGTACCGT GCTTGGGCNA CCGATGNACC NTGNNACCGT GTTTNGCC−3’(配列番号32)
【0059】
グループ7
#3 5’−CCGGTGGGTG GTCAGGTGGG ATAGCGTTCC GCGTATGGCC CAGCGCATCA CGGGTTCGCA CCA−3’(配列番号33)
#32 5’−GGGCGGTGGG TGGCGAGTTG TGAGACGCTG GAGGAGGTTG CTGCCCCCGG CACATTGGGA−3’(配列番号34)
【0060】
前記配列から下線の部分は保存される共通配列を表す。即ち、グループ1の5’−CCTGAGKWACT GYCC−3’(K=GまたはT、W=AまたはT、Y=TまたはC;配列番号1)、グループ2の5’−GCCGTTGG TGTGGTGGGC CYAGGGCCGG CGGCGCACAG CTGTTATAGA CGYCTCCAGC(Y=CまたはT、配列番号2)、グループ3の5’−TGACGGTGGC GTGGAGGGCG CGTATCAATC GTTGATCGCA GGGCCGTCAT ACCGKTSGRT AC(K=GまたはT、S=CまたはG、R=AまたはG;配列番号3)、グループ4の5’−ATCGARTKCC CSCGGCCT AC(R=AまたはG;K=GまたはT;S=CまたはG;配列番号4)、グループ5の5’−Gで5’TCNT NCNNATTTGA GNNCTNGC5’−TGNT AC(N=A、T、CまたはG;配列番号5)、グループ6の配列番号6:5’−GCGGGTACCG TGCT AC(配列番号6)、グループ7の配列番号7:5’−CGGTGGGTGG NNAGNTGNGA NA−3’(N=A、T、CまたはG;配列番号7)が各グループのアプタマーが含む共通配列である。
【0061】
[実施例2]ビスフェノールAの検出活性測定
2−1:リアルタイムPCR方法を利用したビスフェノールAに対する結合親和度測定
リアルタイムPCR方法を利用して、SELEX方法を行う前の初期ssDNAプール(pool)、各11回目及び12回目選別ラウンドから分離して取得した湧出物(R11及びR12)、前記11回目選別ラウンド及び12回目選別ラウンドから取得したアプタマー(11回目選別ラウンドで#3(配列番号33)、#6(配列番号21);12回目選別ラウンドで#12−3(配列番号16)、#12−5(配列番号20))に対し結合親和度を測定した。この時、BPA結合されたカラムに対する対照群としてBPAが結合されていない対照群カラム(control-column)を使用した。
【0062】
即ち、先ずフォワードプライマー(forward primer)とリバースプライマー(reverse primer)を5pmol/μLの濃度で混合した後、リアルタイムPCRを次の条件で行った。即ち、50℃で2分間1回サイクル、95℃で10分間1回サイクルを行い、その次に95℃で15秒、60℃で30秒、そして72℃で、30秒で40回サイクルを行い、さらに72℃で10分間1回サイクルを行った。この時、リアルタイムPCR反応混合物としては、25mL SYBR Green Mix(2x)(Takara, Japan)、2mL primer pair mix(5pmol/mL each primer)(Bioneer, Korea)及び22.5mL HOを利用し、前記リアルタイムPCRの結果は、ABI Prism SDS 7000(Eurogentec, Belgium)で確認した。
フォワードプライマー:5’−GGGCCGTTCGAACACGAGCATG−3’(配列番号36)
リバースプライマー:5’−CCTAGGATGACCTGAGTACTGTCC−3’(配列番号37)
【0063】
その結果、図2Aに示したように、アプタマー#3(配列番号33)、#6(配列番号21)、#12−3(配列番号16)及び#12−5(配列番号20)共にビスフェノールAに対し親和度を有することが明らかになり、この中で#3(配列番号33)及び#12−5(配列番号20)は、ビスフェノールAに対して特に高い親和度を示すことが明らかになった。
【0064】
特に、アプタマー#12−5(配列番号20)は、対照群カラムに対しては非常に低い親和度を示し、ビスフェノールAに対しては非常に高い親和度を示すことが確認されて、ビスフェノールAの検出及び除去のために有効なアプタマーとして使用できることが確認された。
一方、いくつかのアプタマーに対しM.Zukerに従って、Mfoldプログラムを使用し、自由エネルギーを最小化することで2次構造の分析を行ったところ、(http://frontend.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/cgi-bin/dna-form1.cgi)、この中アプタマー#3(配列番号33)及びアプタマー#12−5(配列番号20)の2次構造は図2Bに示した通りである。
【0065】
2−2:平衡ろ過法によるビスフェノールAに対する解離常数(Kd)の測定
結合アッセイを平衡ろ過法によって行った。Kd決定のために、フォルドされたssDNAの一連の希釈液は200μL反応溶液に75μMビスフェノールAを含む結合バッファーに溶解し、室温で1時間インキュベートした。混合物はYM3 Microcon filter columns(Amicon)にロードした後、12,000gで60分間遠心分離して、約160μLのろ過液を取得した。
【0066】
前記分子量カットオフ膜に残っている溶液は、ビスフェノールAに結合するssDNAと結合しないssDNAを共に含んでいるが、ろ過液はssDNAに非結合のビスフェノールAだけを含んでいる。ろ過液サンプルを分光分析機(Spectrophotometer,Bio-rad)を用いて278nmで測定してビスフェノールAの濃度を決定した。
【0067】
解離常数を算出するために、Sigmaplot 10.0ソフトウェアを利用して、次の平衡式に結合されたビスフェノールA:ssDNA濃度のパーセントをプロット化して、データポイントを非線形回帰分析によって固定した。
y=(Bmax.ssDNA)/(K+ssDNA)
この時、yは飽和度(saturation)の程度で、Bmaxは最大結合地点の数で、Kは解離(dissociation)常数である。
【0068】
その結果、前記実施例2−1のリアルタイムPCR分析法で最も優秀な親和度を示すアプタマーとして選別された#3(配列番号33)及び#12−5(配列番号20)の解離常数を調べた結果、アプタマー#3(配列番号33)の解離常数は8.3nM、アプタマー#12−5(配列番号20)の解離常数は230nMとなった。
【0069】
即ち、図2AのリアルタイムPCR分析ではアプタマー#12−5(配列番号20)のアプタマーが強い結合力を示すことが明らかになったが、平衡ろ過方法で解離常数を調べた結果、アプタマー#3(配列番号33)が最も強い親和度を有することが明らかになった。
【0070】
一般に巨大分子に対する抗体の親和度と比較する際に、小さい分子に対する抗体の親和度は非常に低いことを考慮すると、本発明に係るアプタマーがnMレベルの親和度を示すことは非常に異例なことである。即ち、本発明に係るアプタマーはビスフェノールAに対する非常に強い親和度を示すことを確認した。
【0071】
[実施例3]ゾル−ゲルチップを利用したビスフェノールAのアプタマー結合確認
選別されたビスフェノールAアプタマーの親和度をテストするために、ゾル−ゲルチップを準備した。まず、ゾル−ゲルスポットを陰性対照群、ビスフェノールAと共に、図3に示したように陰性対照群(●)とビスフェノールA(●)をsciFLEXARRAYER(Scienion,Germany)を利用して表面改質されたシリコン表面に固定化した。
【0072】
前記で使われたゾル−ゲルスポットのためのゾル組成物は下記のように製造した。まずテトラメチルオルソシリケート(tetramethyl orthosilicate,TMOS)とメチルトリメトキシシリケート(methyltrimethoxysilicate,MTMS)を混合して、ゾル組成物を製造した。そして、溶液Iとしては、10mM HClを準備した。
【0073】
一方、10mM SP緩衝溶液(pH5.8)10μL及び2次蒸溜水(double distilled water,DDW)20μLを混合した後、前記混合物に、実験群の場合ビスフェノールAを10μLずつ添加して、5秒の間ボルテックス攪拌しスピン−ダウンして溶液IIを製造した。陰性対照群の場合、緩衝溶液(buffer)だけを使用した。
【0074】
それから、アプタマー#3をターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Terminal Deoxynucleotidyl Transferase;Fermentas, Canada)とCy3−dUTP(GeneChem, Korea)を利用してラベリングして準備した。
【0075】
ゾル−ゲルスポットを13〜15時間ゲル化した後、各ウェルを2μMのcy3−ラベルされたアプタマーでアッセイした。次に、洗浄過程を経てFLA5100蛍光スキャナー(FUJIFILM, Japan)で観察し、Multi−image分析機及びMulti−gaugeプログラムで分析した。
【0076】
その結果、図3に示したように、ビスフェノールAが固定化されたチップのみにおいてシグナルが示され、本発明に係るアプタマーがビスフェノールAを特異的に検出する可能性があることを確認した。
【0077】
[実施例4]ゾル−ゲルチップでビスフェノールAアプタマーを利用したビスフェノールA検出
選別されたビスフェノールAアプタマーの親和度をテストするため、ゾル−ゲルチップを準備した。先ず、ゾル−ゲルスポットを陰性対照群、選別された複数のアプタマー(アプタマー#3及び#12−5)、陽性対照群と共に、図4に示したような順序で陽性対照群(P)、#12−5アプタマー、#3アプタマー及び陰性対照群(N)順にOmniGrid Accent Microarrayer(DIGI LAB, USA)を利用してPMMAコーティングされた96−ウェル上に固定化した。
【0078】
前記で使用されたゾル−ゲルスポットのためのゾル組成物は、次のように製造した。先ず、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)とメチルトリメトキシシリーケイト(MTMS)を混合して、ゾル組成物を製造した。そして、溶液Iとしては100mM HClを準備した。
【0079】
一方、100mM SP緩衝溶液(pH5.8)及び2次蒸溜水(DDW)20μLを混合した後、前記混合物に、陽性対照群の場合10μLのCy3抗体(Santa Cruz, USA)を、実験群の場合、選別したアプタマー(アプタマー#3及び#12−5)を10μLずつ添加して、5秒の間ボルテックス攪拌してスピン−ダウンして、溶液IIを製造した。陰性対照群の場合、緩衝溶液だけを使用した。
【0080】
それから、アプタマー#3及び#12−5をターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Fermentas, Canada)とCy3−dUTP(GeneChem, Korea)を利用してラベリングして準備した。
【0081】
ゾル−ゲルスポットを13〜15時間ゲル化した後、各ウェルに50μMのビスフェノールAと2μMのcy3−ラベルされたアプタマーでサンドイッチアッセイした。即ち、各ウェルに図3に示したように、上段右側ウェルにはビスフェノールA(BPA)とアプタマー#12−5を、下段左側ウェルには緩衝溶液とアプタマー#3のみを、下段右側ウェルにはBPAとアプタマー#3を処理して培養した。次に、洗浄過程を経てFLA5100蛍光スキャナー(FUJIFILM, Japan)で観察し、Multi−image分析機及びMulti−gaugeプログラムで分析した。
【0082】
その結果、図4に示したように、ビスフェノールAが存在する場合にのみ#12−5アプタマー及び#3アプタマーを固定した位置にシグナルが示され(赤円で表示)、本発明に係るアプタマーがビスフェノールAを特異的に検出する可能性があることを確認した。
【0083】
[実施例5]ビスフェノールA以外のビスフェノール類に対する親和性測定
ビスフェノールA特異的に結合するかを確認するため、アプタマー#3(配列番号33)を利用して追加的にビスフェノールAと類似する構造を有する他のビスフェノール類、例えば、図5Aに提示されたビスフェノールB(BPB)、4,4’−ビスフェノール(BP)、6FビスフェノールA(6F)等に対する実施例2−2の方法で親和性(Kd)を測定した。
【0084】
その結果、図5Bに示したように、アプタマー#3の場合、ビスフェノールAに対する解離常数は0.8nM、6Fは208nM、BPBは139mM、BPは139mMを示し、アプタマー#3はビスフェノールAにのみ特異的に結合することが明らかになった。
【0085】
図5AのBPBの場合、ビスフェノールAとは一つのメチル基しか差がないにも係わらず、アプタマー#3はBPBには親和性を示すことなく、ビスフェノールAに対してだけ特異的に親和性を示した。
【0086】
[実施例6]平衡ろ過法による#3 trimmed formアプタマーのビスフェノールAに対する結合力の確認
前記#3(配列番号33)のtrimmed formアプタマーのビスフェノールAに対する結合力を確認するため、結合アッセイを平衡ろ過法によって行った。具体的には、下記配列番号38乃至配列番号41の配列と表され、図6と同じ構造を形成させた#3 trimmed formアプタマー(#3−tr1、#3−tr2、#3−tr3及び#3−tr4)を製作した。
【0087】
#3−tr1:5’−CGGTGGGTGGTCAGGTGGGATAGCGTTCCGCGTATGGCCCAGCG−3’(配列番号38)
#3−tr2:5’−TGCCGGTGGGTGGTCAGGTGGGATAGCGTTCCGCGTATGGCCCAGCGCA−3’(配列番号39)
#3−tr3:5’−AGCATGCCGGTGGGTGGTCAGGTGGGATAGCGTTCCGCGTATGGCCCAGCGCATCA−3’(配列番号40)
#3−tr4:5’−ACACGAGCATGCCGGTGGGTGGTCAGGTGGGATAGCGTTCCGCGTATGGCCCAGCGCATCACGGGT−3’(配列番号41)
【0088】
前記#3 trimmed formアプタマー(#3−tr1、#3−tr2、#3−tr3及び#3−tr4)の希釈液は、200μL反応溶液に75μMビスフェノールAを含む結合バッファーに溶解して、室温で1時間インキュベーションした。対照群としてビスフェノールAだけを結合バッファーに溶解させた溶液を使用した。混合物は、YM3 Microcon filter columns(Amicon)にローディングした後、12,000gで60分間遠心分離して、約150μLのろ過液を取得した。前記分子量カットオフ膜に残っている溶液は、ビスフェノールAに結合するssDNAと、結合しないssDNAを共に含んでいるが、ろ過液はssDNAに非結合のビスフェノールAだけを含んでいる。ろ過液サンプルを分光分析機(Spectrophotometer, Bio-rad)で276nmで測定して、ビスフェノールAの濃度を決定した。対照群と比較して、ビスフェノールAが各trimmed formアプタマーに結合する比率を計算してグラフで示す。
【0089】
その結果、表1及び図7に示したように、ビスフェノールAが各trimmed formアプタマーに結合する割合は、#3−tr1が5.8%、#3−tr2が11.1%、#3−tr3が17.9%、#3−tr4が22.3%となった。即ち、#3−tr4がビスフェノールAに最も強い親和度を有することが明らかになった。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
以上、説明したように、本発明はビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマー及びこれを利用したビスフェノールAの検出方法及び除去方法を提供する効果がある。
本発明に係るビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマーは、nMレベルの親和度を有し、極微量のビスフェノールAも検出することが可能で、ビスフェノールAとは一つのメチル基しか差がないビスフェノールB等の他のビスフェノール類に対しては親和性を示すことなく、ビスフェノールAに対してだけ特異的に検出できるため、従来検出が難しかった環境ホルモンであるビスフェノールAの検出及び除去に効果的である。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定まると言えるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜7で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマー。
【請求項2】
前記アプタマーを構成する全てのヌクレオチドの数は、14〜63ntsであることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項3】
前記配列番号1で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号8〜18で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項4】
前記配列番号2で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号19〜配列番号22で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項5】
前記配列番号3で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号23〜25で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項6】
前記配列番号4で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号26〜28で表される核酸配列から選択されたいずれか一つの核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項7】
前記配列番号5で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号29または配列番号30で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項8】
前記配列番号6で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号31または配列番号32で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項9】
前記配列番号7で表される核酸配列を含む核酸アプタマーは、配列番号33または配列番号34で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項10】
配列番号8〜34で表される核酸配列のいずれか一つの核酸配列と90%以上100%未満の相同性を有する核酸配列であることを特徴とするビスフェノールAに特異的に結合できる核酸アプタマー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを利用したビスフェノールAの検出方法。
【請求項12】
前記ビスフェノールAは、水、土壌、空気、食品、廃棄物、動植物器官及び動植物組織のいずれか一つ以上から採取された試料から検出されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを含有するビスフェノールAの検出用組成物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを含有するビスフェノールAの検出キット。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを含有するビスフェノールAの検出センサー。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを利用したビスフェノールAの除去方法。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の核酸アプタマーを含有するビスフェノールAの除去用組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517805(P2012−517805A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550064(P2011−550064)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000951
【国際公開番号】WO2010/093222
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(508290127)トングク ユニバーシティー インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション (4)
【氏名又は名称原語表記】DONGGUK UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】26,Pil−dong 3−ga,Jung−gu,Seoul 100−715,Republic of Korea
【Fターム(参考)】