説明

ビスホスホネート化合物を含む薬剤組成物

本発明は、局所投与用のビスホスホネート化合物を含む薬剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスホスホネート化合物を含む薬剤組成物に関する。いくつかの実施形態では、薬剤組成物は非フィルム形成性であり、非密封性の経皮(transdermalまたはtranscutaneous)送達に適する。
【背景技術】
【0002】
ビスホスホネート化合物は、当技術分野では知られている。例えば、アレンドロン酸はUS4705651から知られている。この化合物は骨関連疾患を治療するのに有用であり、典型的には経口の経路を用いて局所投与される(例えば、EP998292を参照されたい)。
【0003】
経口の経路は、特に患者のコンプライアンスの点で数々の不都合を伴う。経口投与は、治療から十分な利点を得るためには、厳重にコントロールされなければならない(投与時間、用いる飲料のタイプ、必要とされる立位など)。このため、一般に、患者は治療を継続しなくなり(持続の低下)、これは消化器の有害事象の発生に関連している。したがって、有効な代替の投与様式は大いに有益である。
【0004】
EP1475095 A1は、インカドロネートおよびアレンドロネートの塩の経皮用組成物を開示している。しかし、これらの化合物は、パッチ、硬膏、またはテープなどの密封性の系によって投与するために調合されており、組成物では非常に高い用量が提供され、送達は密封性の膜によって推し進められる。このような系は通常、接着剤の使用を伴い、これは皮膚を刺激することがあり、したがってやはり治療の不継続を潜在的にもたらす。さらに、パッチは美的に感じのよいものではない。
【0005】
US6962691は、アレンドロネートナトリウムを含む薬剤化合物を局所適用するためのフィルム形成性の組成物を記載している。組成物は、通気性フィルムを皮膚表面上に形成するといわれているフィルム形成性のアクリルポリマーおよび/または共重合体を含んでおり、通気性フィルムは投与後少なくとも約24時間から約5日までのある期間、擦ることによる除去に耐える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US4705651
【特許文献2】EP998292
【特許文献3】EP1475095 A1
【特許文献4】US6962691
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.H. Lin、G. Russel、B.Gertz、「Pharmacokinetics of alendronate: an overview」、Int J Clin Pract Suppl、1999年、第101巻、18〜26頁
【非特許文献2】J.H. Linら、「On the absorption of alendronate in rats」、J Pharm Sci、1994年、第83巻、第12号、1741〜46頁
【非特許文献3】「Guideline on the evaluation of medicinal products in the treatment of primary osteoporosis」、CPMP/EWF/552/95
【非特許文献4】Christenson RH、「Biochemical markers of bone metabolism: an overview」、Clin Biochem、1997年、第30巻、第8号、573〜593頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ビスホスホネートの非密封性の経皮(transdermalまたはtranscutaneous)送達に適する非フィルム形成性の薬剤組成物が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ヒトの皮膚に局所投与するための薬剤組成物であって、
(i)治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートと、
(ii)非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
(iii)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、、およびイソブタノールから選択される、0〜12%(w/w)の少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
(iv)少なくとも1つのゲル化剤と、
(v)任意選択で、少なくとも1つの界面活性剤と、
(vi)水と
を含み、
安定な、肉眼的に均一な混合物であり、
4.0と8.5の間のpHを有し、
非密封性であり、非フィルム形成性である
薬剤組成物に関する。
【0010】
本発明は、ヒトの皮膚に局所投与するための薬剤組成物であって、
(i)0.05〜7.5%の少なくとも1つのビスホスホネートと、
(ii) 0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
(iii)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択される、0〜12%の少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
(iv) 0.02〜5%の少なくとも1つのゲル化剤と、
(v) 0〜5%の界面活性剤と、
残部の水と
を含み(w/w)、
安定な、肉眼的に均一な混合物であり、
4.0と8.5の間のpHを有し、
非密封性であり、非フィルム形成性である
薬剤組成物に関する。
【0011】
前記ビスホスホネートは、アレンドロネートおよびリセドロネートから選択してよい。
【0012】
前記モイスチャライザーは、尿素、プロピレングリコール、グリセリン、またはこれらの混合物からなる群から選択してよい。
【0013】
薬剤組成物は溶液の形態であってよい。
【0014】
薬剤組成物はゲルの形態であってよい。
【0015】
薬剤組成物は0.2-1.5%(w/w)の少なくとも1つのゲル化剤を含んでよい。
【0016】
前記ゲル化剤は、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択してよい。
【0017】
本発明は、治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートを、それを必要とする患者に投与する方法であって、
上述の薬剤組成物を患者の皮膚表面に局所投与する工程を含む方法を提唱する。
【0018】
本発明は、骨関連障害を治療するための方法であって、治療有効量の上述の薬剤組成物を、それを必要とする患者の皮膚表面に局所投与する工程を含む方法を提唱する。
【0019】
前記骨関連障害は、骨粗しょう症、閉経に付随する骨粗しょう症、グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症、パジェット病、骨吸収異常、骨癌、骨減少(全身性骨減少および/または局在性骨減少)、(高カルシウム血症を伴うまたは伴わない)骨転移、多発性骨髄腫、および骨脆弱を特徴付ける他の病状からなる群から選択することができる。前記投与する工程により、静脈内投与後に対する皮膚投与後の尿中回収量の比を0.1〜5%とすることができる。
【0020】
前記方法は、骨折頻度の低減、骨(ミネラル)密度増大、アルカリホスファターゼ低下、オステオカルシン、NテロペプチドコラーゲンIの低下、骨構造の改善、例えば屈曲、捻転、および/または圧迫試験で観察できる骨の生体力学的特性(骨強度)の改善、尿中デオキシピリジノリン(D-pyr)対クレアチニン(Creat)比の低下、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらすことができる。
【0021】
本発明は、骨関連障害を治療および/または予防するための、上記で定義した組成物である薬物の製造におけるビスホスホネートの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1〜13は、in vitroでのフランツセルアッセイにおいて、本発明の組成物により得られた吸収結果を示す。
【図1】図中に定めた水/アルコール比による組成物を用い、24時間後にレセプター液および真皮中において回収されたアレンドロネートの百分率を示す図である。
【図2】図中に定めた水/アルコール比による組成物を用い、24時間後にレセプター液および真皮中において回収されたリセドロネートの百分率を示す図である。
【図3】10%エタノールを含む組成物中における、pH6のリン酸緩衝液による水の置換効果を示す図である(A =アレンドロネート、R =リセドロネート)。
【図4】エタノール/水を含む組成物の純水溶性組成物に対する比較を示す図であり、対投与量百分率の単位で結果を報告する。
【図5】エタノール/水を含む組成物の純水溶性組成物に対する比較を示す図であり、量の単位で結果を報告する。
【図6】緩衝含水アルコール溶液中におけるアレンドロネートの経皮吸収に対するメントールの効果を示す図である。
【図7】緩衝含水アルコール溶液中におけるリセドロネートの経皮吸収に対するメントールの効果を示す図である。
【図8】緩衝含水アルコール溶液中におけるアレンドロネートの経皮吸収に対する尿素の効果を示す図である。
【図9】緩衝含水アルコール溶液中におけるリセドロネートの経皮吸収に対する尿素の効果を示す図である。
【図10】緩衝液中におけるアレンドロネートの経皮吸収に対する尿素およびプロピレングリコール(PG)の効果を示す図である。
【図11】緩衝液中におけるリセドロネートの経皮吸収に対する尿素およびプロピレングリコール(PG)の効果を示す図である。
【図12】緩衝含水アルコール溶液中におけるアレンドロネートの経皮吸収に対する、Tween (登録商標) 80 (T80)およびグリセリンの存在下におけるオレイン酸(OA)の効果を示す図である。
【図13】緩衝含水アルコール溶液中におけるリセドロネートの経皮吸収に対する、Tween (登録商標) 80 (T80)およびグリセリンの存在下におけるオレイン酸(OA)の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一態様に従って、本発明は、ビスホスホネートを含む薬剤組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、非密封性の直接経皮(transdermalまたはtranscutaneous)送達など、非密封性の、経皮(transdermalまたはtranscutaneous)送達に適する。いくつかの実施形態では、組成物は、非密封性および/または非フィルム形成性である。
【0024】
一実施形態では、本発明は、治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートと、
非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択される、0〜12%の、少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
少なくとも1つのゲル化剤と、
任意選択で、少なくとも1つの界面活性剤と、
水と
を含む製薬組成物を提供する。
【0025】
本明細書で用いられる「1つの(a)」または「1つの(an)」は、たった1つを意味するよう特に指摘しなければ、1つまたは複数を意味する。
【0026】
別段の記載がなければ、パーセント値(%)は、組成物の全重量に基づいた重量による量を意味する(w/w)。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は非密封性である。本明細書で用いられる「非密封性」は、組成物が、パッチ、硬膏、包帯、テープ、または膜を含む他の形態で提供されるのではなく、皮膚中への薬剤組成物の送達を推し進めるのに膜に頼らないことを特定する。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は非フィルム形成性である。本明細書で用いられる「非フィルム形成性」は、組成物が投与後少なくとも約24時間の期間(例えば、少なくとも24時間)持続するフィルムを皮膚表面上に形成しないことを、例えば、組成物が、それほどの長期間擦ることによる除去に耐えるフィルムを形成しないことを特定する。いくつかの実施形態では、非フィルム形成性の組成物は、投与後少なくとも約24時間の期間(例えば、少なくとも24時間)持続するフィルムを皮膚表面上に形成するのに十分な量のフィルム形成性のポリマー(例えば、アクリルフィルム形成性のポリマーまたは共重合体など)を含まない。本明細書で用いられる「少なくとも約24時間」は、例えば、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、および少なくとも24時間を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物は肉眼的に均一である。本明細書で用いられる「肉眼的に均一」は、室温など、典型的な使用の条件下で目視検査したときの組成物の外観を意味し、単一の相を含むように見え、肉眼的に検出できる結晶を含むように見えない組成物を特定する。例えば、室温における肉眼的に均一な組成物の目視検査とは、組成物が1つまたは複数の成分の結晶を含まず、簡単な目視検査によって区別することができるいくつかの相を表すことがないことを示す。肉眼的に均一な組成物の例には:
全成分が可溶化されている、すなわち全成分が飽和点未満である溶液、
肉眼的に均一な泡沫、例えば、最大直径の平均が約200μm、例えば、最大直径の平均が200μmまたは平均直径が200μm+/-20μmである泡孔を含む泡沫、
簡単な目視検査によって区別されない液滴を含む肉眼的に均一な乳濁液、例えば、最大直径の平均が約200μmである(例えば、最大直径の平均が200μmまたは平均直径が200μm+/-20μmである)液滴を含む乳濁液、
肉眼的に均一なゲル、または肉眼的に均一なクリーム、または肉眼的に均一な軟膏、例えば、触れることによって検出できる塊を含まない、ゲル、クリーム、または軟膏
が含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、肉眼的に均一な組成物は、最大直径の平均が200μmを超える結晶、および/または塊、および/または固体の凝集物を含まない。
【0031】
本明細書で用いられる肉眼的に均一な組成物は、目視検査時に裸眼で検出できる結晶など、肉眼的な結晶を含む懸濁液を含まない。
【0032】
したがって、本発明の組成物は、知られているビスホスホネート組成物と物理的特性によって区別することができる。例えば、密封系用の薬剤組成物は、成分全てが可溶化されているわけではない懸濁液を含むことができる一方で、本発明は肉眼的に均一な組成物を提供するものである。
【0033】
本発明の肉眼的に均一な組成物は、標準の貯蔵条件下(例えば、室温)で貯蔵したときに、肉眼的に均一な外観が保たれるという点で、経時的に安定である。例えば、経時的に、肉眼的に均一な組成物は相分離または偏析を表さず、1つまたは複数の成分の結晶化を表さない(例えば、目に見える結晶のない特性が保持される)。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも2〜3カ月、少なくとも6カ月、および/または少なくとも12カ月、室温で貯蔵期間の安定性を有する。実際的な目的では、安定性の最小の必要条件は、組成物を包装ステップ前に貯蔵する最小の時間であり、これは数時間(例えば、1〜3時間、3〜8時間、8〜12時間など)、1日、数日(例えば、1〜3日、3〜5日、5〜7日など)、1週間、数週間(例えば、1〜3週間、3〜5週間など)、1カ月、数カ月(例えば、1〜3カ月、3〜5カ月、5〜7カ月、7〜9カ月、9〜12カ月など)、または1年、またはそれを超えていてよい。
【0034】
当業者であれば、このような安定性の必要条件が満たされているか否かを容易に決定することができる。例えば、当業者であれば、標準の溶解性試験を用いて好適な溶解性のパラメーターを決定することができる。このように、一実施形態では、本発明の肉眼的に均一な組成物は、数時間(例えば、1〜3時間、3〜8時間、8〜12時間など)、1日、数日(例えば、1〜3日、3〜5日、5〜7日など)、1週間、数週間(例えば、1〜3週間、3〜5週間など)、1カ月、数カ月(例えば、1〜3カ月、3〜5カ月、5〜7カ月、7〜9カ月、9〜12カ月など)、または1年、またはそれを超える期間にわたって安定である。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明による組成物は、投与用にいかなる接着剤も必要としない。このような実施形態は、潜在的に刺激性の成分の使用を避けるなど、接着剤を必要とする知られている組成物を凌ぐ明らかな利点を提供する。
【0036】
本発明の化合物は、皮膚に対して非刺激性であり、限られた副作用しかもたらさないなどのさらなる利点を提供する。これらおよび他の利点の結果として、組成物により患者のコンプライアンスは促される。
【0037】
組成物
上記で言及したように、本発明の薬剤組成物は、
治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートと、
非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択される、0〜12%の、少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
少なくとも1つのゲル化剤と、
任意選択で、少なくとも1つの界面活性剤と、
水と
を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、組成物は特定の成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は特定の成分からなる。他の実施形態では、組成物は特定の成分から本質的になる。本明細書で用いられる「特定の成分から本質的になる」は、組成物が少なくとも特定の線分を含み、例えば、その安定性、その肉眼的な均一性、その非密封性の性質、およびその非フィルム形成性の性質など、本発明の基本的かつ新規な特徴に著しく影響を及ぼさない他の成分も含むことができることを意味する。したがって、例えば、治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネート、非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザーおよび水から本質的になる組成物は、別のビスホスホネートを含むことができる。一方、これらの組成物は、投与後少なくとも約24時間(例えば、少なくとも24時間)の期間持続するフィルムを皮膚表面上に形成するのに十分な量のフィルム形成性のポリマー(例えば、アクリルフィルム形成性のポリマーまたは共重合体)を含まない。
【0039】
いくつかの実施形態では、成分は、上記で論じたような、安定な、肉眼的に均一な混合物の形態で提供される。いくつかの実施形態では、組成物は非フィルム形成性であり、かつ/または非密封性である。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、4.0〜8.5、4.5〜8.0、5.0〜7.5、5.5〜7.0、5.0〜6.0、6.0〜7.0、または6.5〜7.5の範囲のpHなど、約4.0と約8.5の間のpHを有する。このようなpH値には、緩衝性の化合物で容易に到達することができる。有用な緩衝性の化合物は当技術分野では知られており、クエン酸ナトリウム、またはトリスマレエートを含む、リン酸およびクエン酸のバッファーが含まれる。当業者であれば、適切な緩衝物質、および所望のpHを達成するための好適な濃度を選択することができる。
【0041】
上記で言及したように、本発明の組成物は局所投与に適する。例えば、組成物を、直接の、非密封性の、経皮(transdermal/transcutaneous)の塗布のために、皮膚表面に直接塗布することができる。本明細書で用いられる「直接」/「直接的に」、および「非密封性の」の語は、本発明の組成物が、投与をもたらすのにマトリックスまたは膜を必要とせず、したがって、パッチ、硬膏、テープ系などによって分配する必要がないことを反映するものである。さらに、本発明の組成物は、投与に接着剤を必要としない。その代わりに、本発明の組成物は、皮膚の表面上に組成物を直接塗布することによってビスホスホネートを送達するように調合されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、投与する組成物の量は、治療有効量(例えば、単一用量)のビスホスホネートを提供する、規定された有限な量である。以下により詳しく記載するように、「治療有効量」は、所与の患者(例えば、ヒトまたは他の動物)において企図される治療効果を達成するのに十分な量を特定するものである。いくつかの実施形態では、組成物を、規定された表面積にわたって皮膚の表面に投与する。規定された、有限な量の組成物を規定された表面積に投与することにより、所与の表面積に塗布する有効成分(例えば、ビスホスホネート)の量(例えば、局所濃度)のコントロールが可能になる。局所濃度をコントロールする(例えば、制限する)ことによって、組成物によって引き起こされうる皮膚刺激を低減することができ、消化管刺激などの副作用が避けられる。本発明の状況では、局所濃度をコントロールする能力は、パッチなどの膜または密封性の構造のサイズまたは寸法によって制限されない。したがって、組成物を、密封性の装置で可能であり、実現可能であり、または美的に許容できるよりも広い表面積にわたって投与することができる。
【0043】
例えば、組成物を、約1000cm2(例えば、ヒト患者である成人の前腕の約半分のおよその面積)から約4000cm2(例えば、ヒト患者である成人の、2本の腕のおよその面積、または2本の上腕プラス腹部のおよその面積)、あるいはそれを超える表面積の皮膚表面上に塗布することができる。例えば、約1000cm2の表面積は組成物最高約2gを塗布するのに適しており、約4000cm2の表面積は、組成物最高約10〜12gを塗布するのに適している。本明細書で用いられる「約1000cm2からの表面積」は、1000cm2+/-200cm2およびそれを超える表面積を含む。本明細書で用いられる「約4000cm2からの表面積」は、4000cm2+/-800cm2およびそれを超える表面積を含む。当業者であれば、所与の患者に所与の量の組成物を局所塗布するのに好適な表面積を容易に決定することができる。
【0044】
ビスホスホネート
上記で言及したように、本発明の組成物は治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートを含む。
【0045】
本明細書で用いられる「ビスホスホネート」は、遊離酸の形態のビスホスホン酸、任意のその薬学的に許容できる塩、任意のその薬学的に許容できるエステル、任意のその水和物、アミノ官能基上に1つまたは2つのメチル基を保有する任意のその誘導体、および前記の1つまたは複数の混合物を含む。ビスホスホネート塩に対する対イオンは、任意の薬学的に適切な陽イオンなど、任意の薬学的に適切な対イオンであってよい。例えば、対イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはカルシウム、小型アミン部分、例えば、リジンもしくは小型のポリリジンであってよい。ビスホスホン酸のエステルは、ビスホスホン酸の4つの酸性ヒドロキシル基の1つまたは複数がエステル化された、ビスホスホン酸のモノ-、ジ-、トリ-、またはテトラ-エステルであってよい。いくつかの実施形態では、エステルは、メチルまたはエチルエステルなどのC1〜C3エステルである。いくつかの実施形態では、各ヒドロキシル基が同じアルコールによって修飾されているが、他の実施形態は、ビスホスホン酸が2つまたはそれを超える異なるアルコールでエステル化されている、いわゆる「混合」エステルを含んでいる。
【0046】
本発明の一態様では、ビスホスホネートは式Iの構造を有する。
【化1】

【0047】
[式中、
R1は、H、OH、またはClであり、
R2は、
アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、または複素環、例えばN-複素環、もしくはN,N'-複素環で場合により置換されている、炭素原子1、2、3、4、5、または6個のアルキル、
ハロゲン(F、Cl、Br、I)、
塩素置換されているアリールチオを含む、アリールチオ、
炭素5、6、または7個を有するシクロアルキルアミノ、あるいは
ヘテロ原子1個または2個を有する飽和の5員または6員の含窒素複素環
である]。
【0048】
上記のアルキルアミノおよびジアルキルアミノ基におけるアルキル基は、炭素原子1、2、3、4、または5個を有することができる。ジアルキルアミノ基は、同じまたは異なるアルキル基を含むことができ、例えば、ジアルキルアミノ基の各アルキル基は独立に選択される。
【0049】
上記の式において「複素環」の語は、1個または2個の環、ならびにN、O、およびSから独立に選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子を有する、飽和または不飽和5、6、または7員の複素環基を意味する。
【0050】
上記の式において「アリール」の語は、置換または非置換のフェニル、フリル、チエニル、またはピリジル基、あるいはナフチルなど、これらの任意の基の融合環系を意味する。
【0051】
上記の式において「置換」の語は、1つまたは複数のアルキル(例えば、直鎖または分枝のC1〜C6アルキル)、アルコキシ(例えば、直鎖または分枝のC1〜C6アルコキシ)、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、アミノ、チオール、ニトロ、ヒドロキシ、アシル、アリール、またはシアノ基によって置換されている、上記で定義したアリール基を意味する。
【0052】
本発明で有用なビスホスホネートの例には式Iの化合物が含まれ、式中R1およびR2は以下の定義を有する。
【0053】
【表1】

【0054】
一態様では、R1は-OHであり、R2は、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、または複素環、例えば、N-複素環もしくはN,N'-複素環で場合により置換されている、炭素原子1、2、3、4、5、または6個を有するアルキル基から選択される。
【0055】
別の一態様では、ビスホスホネートは:
4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸(アレンドロネート)、
N,N-ジメチル-3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(ミルドロネート、オルパドロネート)、
1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸(イバンドロネート)、
1-ヒドロキシ-2-(3-ピリジル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(リセドロネート)、
1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ビスホスホン酸(エチドロネート)、
1-ヒドロキシ-3-(1-ピロリジニル)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸、
1-ヒドロキシ-2-(1-イミダゾリル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(ゾレドロネート)、
1-ヒドロキシ-2-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸(ミノドロネート)、
1-(4-クロロフェニルチオ)メチリデン-1,1-ビスホスホン酸(チルドロネート)、
1-(シクロヘプチルアミノ)メチリデン-1,1-ビスホスホン酸(シマドロネート、インカドロネート)、
6-アミノ-1-ヒドロキシヘキシリデン-1,1-ビスホスホン酸(ネリドロネート)
(ジクロロメチレン)-ビスホスホン酸(クロドロネート、Bonefos(登録商標)、Loron(登録商標))
(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン)-ビスホスホン酸(パミドロネート、APD、Aredia(登録商標))
[1-ヒドロキシ-2-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)エチリデン]-ビスホスホン酸(ミノドロネート)
からなる群から選択される。
【0056】
一態様では、ビスホスホネートは、アレンドロネートおよびリセドロネートからなる群から選択される。別の一態様では、ビスホスホネートはインカドロネートではない。
【0057】
本明細書で用いられる「アレンドロネート」は、その遊離酸の形態のアレンドロン酸(4-アミノ-1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ビスホスホン酸)、任意のその薬学的に許容できる塩、任意のその薬学的に許容できるエステル、任意のその水和物、アミノ官能基上に1つまたは2つのメチル基を保有する任意のその誘導体、および前記の任意の1つまたは2つの混合物を含む。アレンドロネートに対する対イオンは、任意の薬学的に適切な陽イオンなど、任意の薬学的に適切な対イオンであってよい。例えば、対イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、またはカルシウムであってよく、小型アミン部分、例えば、リジンもしくは小型のポリリジンであってよい。アレンドロネートエステルは、アレンドロネートの4つの酸性ヒドロキシル基の1つまたは複数がエステル化された、アレンドロン酸のモノ-、ジ-、トリ-、またはテトラエステルであってよい。いくつかの実施形態では、エステルは、メチルおよびエチルエステルなどのC1〜C3エステルである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基が全て同じアルコールによって修飾されているが、他の実施形態は、アレンドロネートが2つまたはそれを超える異なるアルコールでエステル化されている、いわゆる「混合」エステルを含んでいる。
【0058】
本明細書で用いられる「リセドロネート」および「レシドロネート(residronate)」は、その遊離酸の形態のリセドロン酸(レシドロン(residronic)酸、すなわち1-ヒドロキシ-2-(3-ピリジル)エチリデン-1,1-ビスホスホン酸)、任意のその薬学的に許容できる塩、任意のその薬学的に許容できるエステル、任意のその水和物、アミノ官能基上に1つまたは2つのメチル基を保有する任意のその誘導体、および前記の任意の1つまたは複数の混合物を含む。リセドロン酸塩に対する対イオンは、任意の薬学的に適切な陽イオンなど、任意の薬学的に適切な対イオンであってよい。例えば、対イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、もしくはカルシウムであってよく、または小型アミン部分、例えば、リジンもしくは小型のポリリジンであってよい。リセドロネートエステルは、リセドロン酸の4つの酸性ヒドロキシル基の1つまたは複数がエステル化された、リセドロン酸のモノ-、ジ-、トリ-、またはテトラエステルであってよい。いくつかの実施形態では、エステルは、メチルまたはエチルエステルなどのC1〜C3エステルである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル基が全て同じアルコールによって修飾されているが、他の実施形態は、リセドロン酸が2つまたはそれを超える異なるアルコールでエステル化されている、いわゆる「混合」エステルを含んでいる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の薬剤組成物は、少なくとも1つのさらなる有効成分、例えば、併用療法に望ましいことがあるものなど、別のビスホスホネート化合物を含む。
【0060】
上記で言及したように、組成物は治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートを含む。治療有効量は、一般に、ビスホスホネートの効力、その分子量、および他の因子に依存する。当業者であれば、入手可能な文献から上記に記載したビスホスホネートの量の好適な範囲を知っており、またはルーチンの方法を用いて治療有効量を容易に決定することができる。本発明に従って投与したビスホスホネートのバイオアベイラビリティに関する情報を以下に提供する。また、経口の用量に基づいた皮膚送達に好適な量を決定するための代替のモデルを以下に提供する。当業者であれば、これらまたは他の方法を用いて、本発明に従って用いるためのビスホスホネートの治療有効量を決定することができる。
【0061】
モイスチャライザー
上記で言及したように、本発明の組成物は、非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザーを含む。
【0062】
本明細書で用いられる「モイスチャライザー」は、皮膚に水分補給する物質を特定する。モイスチャライザーは当技術分野では知られている。モイスチャライザーは、単独または組み合わせて用いることができ、例えば、2つまたは3つ(またはそれを超える)の異なるモイスチャライザーの組合せを用いることができる。いくつかの実施形態では、モイスチャライザーは、皮膚軟化薬および/または湿潤薬から選択される。
【0063】
本明細書で用いられる「皮膚軟化薬」は、皮膚を柔らかくし、皮膚の加湿を改善する傾向がある物質を特定する。皮膚軟化薬は当技術分野ではよく知られており、鉱物油、ワセリン、ポリデセン、イソヘキサデカン;炭素原子10個から30個を有する脂肪酸およびアルコール;ペラルゴン酸;ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リシノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびユーリシック(euricic)酸ならびにこれらのアルコール;トリグリセリドエステル、ヒマシ油、カカオ脂、ベニバナ油、ヒマワリ油、ホホバ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、タラ肝油、ラッカセイ油、アボカド油、パーム油、ゴマ油、スクアレン、ククイナッツ油、ダイズ油、アセトグリセリドエステル、エトキシ化グリセリド、エトキシ化グリセリルモノステアレート、炭素原子10個から20個を有する脂肪酸のアルキルエステル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、アセチル乳酸;炭素原子10個から20個を有する脂肪酸のアルケニルエステル、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、エトキシ化脂肪アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールのエステル、エチレングリコールモノおよびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールのモノおよびジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ワックスエステル、ミツロウ、鯨ロウ、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、シリコーン油、ジメチコーン、シクロメチコーンが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、室温で液体である1つまたは複数の皮膚軟化薬を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の肉眼的に均一な特性を維持するのを助けることができる界面活性剤をさらに含み、この界面活性剤はある種の皮膚軟化薬によって有害な影響を受けえない。当業者であれば、適切な界面活性剤を選択することができ、肉眼的な均一性を維持するためにこれらを組成物に組み入れることができる。
【0065】
本明細書で用いられる「湿潤薬」は、空気中から水分を吸収する吸湿性の物質を特定する。本発明における使用に適する湿潤薬には、グリセリン、プロピレングリコール、三酢酸グリセリン、多価アルコール、ソルビトール、マンニトール、高分子ポリオール、ポリデキストロース、キラヤ、乳酸、および尿素が含まれる。
【0066】
本発明における使用に適する湿潤薬は、アミン、アルコール、グリコール、アミド、スルホキシド、およびピロリドンを含むことができる。一態様では、湿潤薬は、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、および尿素からなる群から選択される。一実施形態では、湿潤薬はグリセリンである。
【0067】
上記で言及したように、本発明の組成物は、当技術分野では知られている方法によって決定して、ヒトの皮膚に非刺激性であると一般にみなされている量の湿潤薬を含む。例えば、湿潤薬として尿素を用いる場合、その量は皮膚科学的に許容できる量を超えてはならない。これは、尿素の濃度は、本発明の組成物において5%(w/w)未満、または4%(w/w)未満に留めるべきであることを意味すると概ね理解される。共通の一般的な知識を用いれば、当業者であれば湿潤薬の非刺激性の量を決定することができる。ある実施形態では、非刺激性の量は、検出でき、または持続する皮膚の有害反応(例えば、掻痒、発赤、灼熱感)をもたらさず、あるいは患者および保健医療提供者によって許容できると一般的に考えられている最小の反応だけをもたらす。
【0068】
短鎖の脂肪族アルコール
上記で言及したように、本発明の組成物は、0〜12%(w/w)の少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールを含む。
【0069】
例示的な短鎖の脂肪族アルコールには、C2〜C4アルコール、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、イソブタノール、またはこれらの混合物が含まれる。このようなアルコールの存在が、皮膚上での組成物の乾燥を促進するのに寄与しうる。
【0070】
1の実施形態では、組成物は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、およびイソブタノールから選択されるいかなる短鎖の脂肪族アルコールも含まない。このような組成物は、湿潤薬としてグリセリンを含んでよい。
【0071】
本出願人らは驚くべきことに、短鎖の脂肪族アルコールの非存在下では、本発明の組成物は、このような短鎖の脂肪族アルコールを含む組成物に比べて良好な安定性を示すことを見出した。また、短鎖の脂肪族アルコールを欠く本発明の組成物は、皮膚中への良好な浸透を示した。短鎖の脂肪族アルコールは浸透増強剤とみなされており、当業者にはそのように認められているので、この結果は予想外であった。
【0072】
ゲル化剤
上記で言及したように、本発明の組成物は、少なくとも1つのゲル化剤を含む。
【0073】
本明細書で用いられる「ゲル化剤」の語は、水などの特定の溶剤と接触した場合にゲルを形成する能力を有する、場合によりポリマーの性質の化合物を特定する。ゲル化剤(例えば、増粘剤)は当技術分野では知られている。ゲル化剤は本発明の薬剤組成物の粘度を増加させるために作用してもよい。例えば、ゲル化剤は、組成物に皮膚上への容易な適用を許容するのに十分な粘度を与えてもよい。加えて、または、二者択一的に、ゲル化剤は溶解剤として作用してもよい。ゲル化剤の例には、アクリル酸ベースのポリマー(Noveon、OhioによるCARBOPOL(登録商標)などのポリアクリル酸ポリマーを含む)などの陰イオンポリマー、セルロース誘導体、ポロキサマーおよびポロキサミン、より正確には、Carbomerまたはアクリル酸ベースのポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)980もしくは940、981もしくは941、1342もしくは1382、5984、934もしくは934P(Carbopol(登録商標)は、通常、アリルスクロースもしくはアリルペンタエリスリトールと架橋したアクリル酸のポリマーである)、Ultrez、Pemulen TR1(登録商標)もしくはTR2(登録商標)、Synthalen CRなど;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、およびこれらの混合物;Lutrol(登録商標)グレード68もしくは127などのポロキサマーまたはポリエチレン-ポリプロピレン共重合体;ポロキサミン、ならびにキトサン、デキストラン、ペクチン、および天然ゴムなどの他のゲル化剤が含まれる。これらのゲル化剤のいずれか1以上を、単独で、または、組み合わせて、本発明に係る薬剤組成物において用いてもよい。1の態様においては、ゲル化剤はポリアクリル酸ポリマー、セルロース誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。1の態様においては、ゲル化剤はポリアクリル酸ポリマーである。
【0074】
界面活性剤
上記で言及したように、本発明の組成物は、少なくとも1つの界面活性剤を任意選択で含んでよい。
【0075】
選択された成分の性質に応じて、例えば、組成物の肉眼的な均一性を維持するために、界面活性剤を含むのが有利でありうる。界面活性剤は当技術分野では知られており、当業者であれば、皮膚科学的に、および/または化粧上許容できる界面活性剤など、本発明に用いるのに適する界面活性剤を選択することができる。その例には、非イオン性の界面活性剤、例えば:
モノ、ジ、およびトリグリセリドとの、ならびにポリエチレングリコールと脂肪酸とのモノおよびジエステルとの混合物であるLabrasol(登録商標)を含む、ポリエチレングリコールと脂肪酸とのエステル、
ショ糖と脂肪酸とのエステル、例えば、HLB16を有するスクロースラウレート、HLB16を有するスクロースパルミテート、
ソルビタンポリオキシエチレンのエステル、例えば、Tween(登録商標)20、60、および/または80を含むTween(登録商標)化合物
などのエステル、
アルキレンオキシド共重合体、例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、例えばPluronics(登録商標)
が含まれる。
【0076】
さらなる例には、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などの陰イオン性界面活性剤が含まれる。
【0077】

上記で言及したように、本発明の組成物は水を含む。
【0078】
さらなる任意選択の成分
本発明の薬剤組成物は、塩、安定化剤、パラベン化合物などの抗菌剤、芳香剤、および/または噴霧剤を含む、他の通常の薬剤上の添加剤を任意選択で含むことができる。一態様では、本発明の組成物はメントールを含まない。
【0079】
例示的な安定化剤および抗菌剤には、メチルパラベンナトリウムなどのパラベン、EDTA、およびイミダゾリジニル尿素などの尿素誘導体が含まれる。
【0080】
上記で言及したように、いくつかの実施形態では、本発明による非フィルム形成性の組成物は、投与後少なくとも約24時間の期間(例えば、少なくとも24時間)持続するフィルムを皮膚表面上に形成するのに十分な量のフィルム形成性ポリマー(例えば、アクリルフィルム形成性ポリマーまたは共重合体)を含まない。
【0081】
例示的な組成物
一態様では、本発明の組成物は、その遊離酸の形態の(遊離酸の同等物)、または等量の塩の0.05〜7.5%、0.1〜6%、0.2〜5%、0.5〜4.5%、0.75〜4%、1〜3%、または1.5〜2.5%の少なくとも1つのビスホスホネートを含む。当業者であれば、例えば、ビスホスホネートが対イオンとの塩として提供された場合に等量を算出することができる。
【0082】
別の一態様では、本発明の組成物は一ナトリウム塩のアレンドロネートを含む。一態様では、組成物は、0.05〜3.8%、0.1〜3.75%、0.5〜3.75%、0.75〜3.75%、1〜3.75%、1.5〜3.75%、2〜3.75%、2.5〜3.75%、2.5〜3%、3〜3.75%、または3.25〜3.75%の、一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネートを含む。
【0083】
別の一態様では、本発明の組成物は、一ナトリウム塩のリセドロネートを含む。
【0084】
一態様では、本発明の組成物は、0.05〜5.9%、0.1〜5.9%、0.5〜5.9%、0.75〜5.9%、1〜5.9%、2〜5.9%、3〜5.9%、3.5〜5.9%、4〜5.9%、4.5〜5.9%、4.75〜5.9%、5〜5.9%、または5.5〜5.9%の、一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネートを含む。
【0085】
一実施形態では、本発明の組成物は、リン酸バッファー中0.5〜3.8%の濃度の、一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネートを含む。別の一実施形態では、本発明の組成物は、リン酸バッファー中0.5〜5.9%の濃度の、一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネートを含む。
【0086】
一態様では、本発明の組成物は、0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザーを含む。上記で説明したように、非刺激性の量のモイスチャライザーが存在する。本発明の組成物は、0.05〜12%、0.1〜10%、0.25〜8%、0.5〜7%、0.75〜6%、1〜5%、または1.5〜4%の少なくとも1つのモイスチャライザーを含むことができる。
【0087】
本発明の組成物は、モイスチャライザーとして尿素を含むことができる。一般的に、非刺激性の量の尿素は、0.05〜4%、0.1〜3.9%、0.25〜3.8%、0.5〜3.75%、0.75〜3.75%、1〜3.75%、1.25〜3.75%、1.5〜3.75%、2〜3.75%、または2.5〜3.5%の尿素に相当してよい。
【0088】
本発明の組成物は、モイスチャライザーとしてグリセリンを含むことができる。一般的に、非刺激性の量のグリセリンは、0.05〜20%、2〜18%、5〜15%、7〜12%、8〜11%、9〜10%、0.05〜10%、1%〜9%、2〜8%、3〜7%、4〜6%、4.5〜5.5%、5%または10%のグリセリンに相当してよい。
【0089】
本発明の組成物は、モイスチャライザーとしてプロピレングリコールを含むことができる。一般的に、非刺激性の量のプロピレングリコールは、0.05〜12%、1〜11%、2〜10%、3〜10%、4〜10%、5〜9%、6〜9%、7〜9%、または8〜9%のプロピレングリコールに相当してよい。
【0090】
一態様では、本発明による薬剤組成物は、いかなる短鎖の脂肪族アルコールも含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はエタノールを含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はn-プロパノールを含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はイソプロパノールを含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はn-ブタノールを含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はtert-ブタノールを含まない。別の一態様では、本発明による薬剤組成物はイソブタノールを含まない。
【0091】
本発明の組成物は、ゲル化剤を含んでよい。一態様では、本発明の組成物は、0〜5%の少なくとも1つのゲル化剤を含む。別の一態様では、本発明の薬剤組成物は、0.02〜5%、0.05〜5.0%、0.15〜4.5%、0.2〜4.0%、0.25〜3.5%、0.3〜3.0%、0.4〜2.5%、0.5〜2.0%、または0.3〜1.5%の、少なくとも1つのゲル化剤を含む。
【0092】
別の一態様では、本発明による薬剤組成物は0.5〜10%の少なくとも1つの界面活性剤を含む。別の一態様では、本発明の組成物は0.02〜5%、0.05〜5.0 %、0.15〜4.5 %、0.2〜4.0 %、0.25〜3.5 %、0.3〜3.0 %、0.4〜2.5 %、0.5〜2.0 %、または0.3〜1.5 %の少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0093】
別の一態様では、本発明は、
0.05〜7.5%の少なくとも1つのビスホスホネート、
0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザー、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0094】
別の一態様では、本発明は、
0.05〜3.8%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザー、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0095】
別の一態様では、本発明は、
0.05〜3.8%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
0.05〜4%の尿素、または0.05〜20%のグリセリン、または0.05〜12%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0096】
別の一態様では、本発明は、
1〜3.75%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
1〜3.75%の尿素、または5〜15%のグリセリン、または4〜10%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0097】
別の一態様では、本発明は、
2.5〜3%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
2.5〜3.5%の尿素、または7〜12%のグリセリン、または8〜9%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0098】
別の一態様では、本発明は、
3.25〜3.75%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
2.5〜3.5%の尿素、または7〜12%のグリセリン、または8〜9%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0099】
別の一態様では、本発明は、
1〜3.75%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
2〜7%のグリセリン、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0100】
別の一態様では、本発明は、
3.25〜3.75%の一ナトリウム塩三水和物のアレンドロネート、
2〜7%のグリセリン、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0101】
別の一態様では、本発明は、
0.05〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザー、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0102】
別の一態様では、本発明は、
0.05〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
0.05〜4%の尿素、または0.05〜20%のグリセリン、または0.05〜12%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0103】
別の一態様では、本発明は、
2〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
1〜3.75%の尿素、または5〜15%のグリセリン、または4〜10%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0104】
別の一態様では、本発明は、
5.5〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
2.5〜3.5%の尿素、または7〜12%のグリセリン、または8〜9%のプロピレングリコール、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0105】
別の一態様では、本発明は、
2〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
2〜7%のグリセリン、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0106】
別の一態様では、本発明は、
5.5〜5.9%の一ナトリウム塩ヘミペンタ水和物のリセドロネート、
2〜7%のグリセリン、
0.02〜5%の、好ましくは0.5〜2%の、さらに好ましくは1〜1.5%の少なくとも1つのゲル化剤、
0〜10%の界面活性剤、
0〜2.5%のバッファー、および
十分量の水
(w/w)を含む薬剤組成物に関する。
【0107】
本発明の組成物を、ゲル剤、液剤(例えば、水溶液剤)、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、泡沫剤などの、膜なしで局所投与に適する任意の形態に調合することができる。
【0108】
例示的な投与様式
組成物は、皮膚表面に組成物を塗布するのに効果的な任意の手段によって投与することができる。例えば、組成物を、手操作で、ドロッパもしくはピペットなどのアプリケーターで、スワブ、ブラシ、クロス、パッド、もしくはスポンジなどのアプリケーターで、または紙、厚紙、もしくは積層材を含めた固体支持体など(凝集し、接着し、もしくは他の方法で固定されている繊維を含む材料を含む)任意の他のアプリケーターで塗布してもよい。あるいは、組成物を、加圧または非加圧の容器から、エアロゾルまたは非エアロゾルのスプレーとして塗布してもよい。いくつかの実施形態では、組成物を、定量で、例えば、定量アプリケーターから、または単回用量の組成物を含むアプリケーターから投与する。
【0109】
装置
本発明の一態様は、組成物を投与するための装置を提供する。一実施形態では、装置は、組成物を含んでいるレザバー、および皮膚表面に組成物を塗布するための局所アプリケーターを含んでいる。
【0110】
レザバーは、任意の形状であってよく、組成物を含むのに適する任意の材料であってよい。例えば、レザバーは硬質でも、または柔軟性でもよく、単一構造(例えば、成形物)でも、または例えば貼り合わせることによって、ヒートシールすることによって、接着することによって、溶接することによって、リベットで留めることによって合わせて固定した異なる片から形成してもよい。例えば、レザバーは、実質的に平行である2枚の壁がその周囲付近で結合した巻かれた壁(この場合、例えば、壁は柔軟性/変形可能であり、熱成形したブリスターによって形成されており、もしくは硬質であってよい)、または底部壁および円筒壁、または組成物を含むのに適する任意の他の形状を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、レザバーは、バッグ、パウチ、サシェ、ブリスター、アンプル、ピペット、バイアル、キャニスター、またはビンを含んでいる。いくつかの実施形態では、レザバーは、変形された場合に組成物の流れを作動させるように適合されている変形可能な壁を含んでいる。いくつかの実施形態では、レザバーは、組成物の単一用量を含むように適合されている。
【0111】
本明細書で用いられる「局所アプリケーター」は、組成物を皮膚表面に塗布するのに適する任意の形状および任意の材料のアプリケーターを特定する。局所アプリケーターは、レザバーおよび局所アプリケーターが単一の構造を構成するようにレザバーと一体に形成されていてよく、または局所アプリケーターはレザバーから取り外すことができ、もしくは別々に供給されうる。
【0112】
例えば、局所アプリケーターは、ドロッパ、ピペット、スワブ、ブラシ、クロス、パッド、スポンジ、または紙、厚紙、もしくは積層材を含めた支持体など(凝集し、接着し、もしくは他の方法で固定されている繊維を含む材料を含む)任意の固体支持体を含むことができる。いくつかの実施形態では、アプリケーターは組成物を予め充填しており、例えば、アプリケーターに組成物を、例えば組成物の単位用量を含侵してもよい。他の実施形態では、使用中にアプリケーターに組成物を充填する。
【0113】
あるいは、局所アプリケーターは、手押ポンプなど、エアロゾルまたは非エアロゾルスプレー装置を含むことができる。
【0114】
他の実施形態では、局所アプリケーターは、生成物がそこを通って分配されるのを可能にする開口部である。いくつかの実施形態では、開口部には、挿入することによって、回すことによって、はめることによって、装着することによって、またはその他の方法などで開口部内に、または開口部上に配置することができる、キャップ、ストッパー、またはプラグなど、開口部を閉鎖および開放するための、除去可能で交換可能な装置が備えられている。別の一実施形態では、開口部には、任意の除去可能な、または確保しうる、壊れやすい、可剥性の、または引き裂くことができる開口部上の被覆など、開口部を開放するための除去可能で使い捨て式の装置が備えられている。
【0115】
他の実施形態では、開口部には、定量バルブなどのノズルまたはバルブが備えられている。
【0116】
いくつかの実施形態では、局所アプリケーターは、治療有効量の組成物の単位用量など、定量の組成物を分配するように適合されている。いくつかの実施形態では、局所アプリケーターはシリンジではなく、装置は静脈投与用のシリンジを含まない。
【0117】
いくつかの実施形態では、装置は単一のレザバーを含んでいる。他の実施形態では、装置は2つまたはそれを超えるレザバーを含んでおり、この場合、各レザバーは単一用量の組成物を含んでいてよく、または任意の量の組成物を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、装置は、2つまたはそれを超えるレザバーから組成物を塗布するための単一のアプリケーターを含んでいる。他の実施形態では、装置は、各レザバーから組成物を塗布するためのアプリケーターを1つ含んでいる。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明は、用量包装の、単位用量包装の、または複数用量包装などにおける、用量の、単位用量の、または複数用量の薬剤組成物を提供する。いくつかの実施形態では、包装は、毎日、毎週、または週2回投与などの、投与計画または適用のスケジュールを反映するものである。有利には薬剤組成物をこのように包装することで、治療有効量などの量の組成物の正確な適用が促進される。
【0119】
一実施形態によると、組成物、装置、または小包装を、本明細書に記載する方法に従って、これらを使用するための指示書と一緒に供給する。
【0120】
組成物の作製方法
本発明は、本発明の薬剤組成物を作製するための方法にも関する。当業者であれば、共通の一般的な知識に基づいて本発明の薬剤組成物を調製することができる。例えば、ビスホスホネート化合物を、水相(例えば、水またはバッファー)に溶解し、混合し、その後モイスチャライザーを加え、さらに混合することができる。ゲル化剤が存在する場合は、撹拌しながら導入する。中和剤が存在する場合は、他の方法の最終の組成物などに、方法の終わり、または終わり近くに加える。他の任意選択の成分は、知られている手順に従って、方法の他の段階で加えることができる。例えば、保存剤が存在する場合には、好適な溶剤において加える。
【0121】
治療方法
本発明は、本発明による薬剤組成物の有効量を投与することを含む、それを必要とする対象における骨関連障害を治療するための方法にも関する。一実施形態では、本発明の組成物の有効量を、それを必要とする患者の皮膚表面上に塗布することによって投与を行う。いくつかの実施形態では、治療する患者は、ヒトなどの哺乳動物である。患者は、オスでもよく、またはメスでもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、投与は、組成物を患者の皮膚中に擦り込むことをさらに含む。この擦り込みは、例えば、組成物が患者の皮膚中に実質的に完全に浸透するように、選択された表面積上に組成物を優しく擦り込むことを含むことができる。非フィルム形成性の実施形態では、擦り込みによって皮膚表面上にフィルムの形成をもたらさない。
【0123】
投与は、当業者が決定することができる任意の適切な投与レジメンに従ってよい。例えば、一態様では、本発明の方法は、1日1回の投与を含む。別の一態様では、方法は、隔週または週1回の投与を含む。他の適切なレジメンが本発明の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態では、皮膚表面への投与を、患者の腕、大腿、臀部など、様々な部位で行ってもよい。いくつかの実施形態では、投与を身体の交互の部位に対して行ってもよい。このような投与様式により、治療の良好な有効性および耐容性が可能になる。
【0124】
本発明は、骨関連障害を治療するための薬物を製造するための上記の組成物の1つの使用にも関する。
【0125】
本明細書で用いられる「治療する」または「治療」の語は、哺乳動物の病状、障害、または疾患の任意の治療を意味し、それだけには限定されないが、病状、障害、または疾患に罹患しやすい場合があるが、病状、障害、または疾患を有するとまだ診断されていない対象において、病状、障害、または疾患が生じるのを予防すること;病状、障害、または疾患を阻害すること、例えば、病状、障害、または疾患の発症を阻止すること;病状、障害、または疾患を緩和すること、例えば、病状、障害、または疾患の緩解をもたらすこと;あるいは障害または疾患によってもたらされる病状を緩和すること、例えば障害または疾患の症状を止めることを含む。任意のこのような治療は、患者における企図された治療効果の実現を構成することがある。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、有利には、骨折頻度の低減、骨密度の増大、アルカリホスファターゼの低下、オステオカルシンの低下、NテロペプチドコラーゲンIの低下、骨構造の改善、骨の生体力学的特性(骨強度)の改善、例えば、屈曲、捻転、および/または圧迫試験で観察できるもの、尿中デオキシピリジノリン(D-pyr)対クレアチニン(Creat)比の低下、ならびに前記の治療効果の1つまたは複数の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす。
【0127】
本発明による組成物および方法は、骨粗しょう症、閉経に付随する骨粗しょう症、グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症、パジェット病、骨吸収異常、骨癌、骨減少(全身性骨減少および/または局在性骨減少)、骨転移(高カルシウム血症を伴うまたは伴わない)、多発性骨髄腫、および骨脆弱を特徴とする他の病状からなる群から選択される骨関連障害を治療するのに適している。
【0128】
バイオアベイラビリティ
本発明の組成物および方法は、0.01〜5%の範囲のビスホスホネートの相対バイオアベイラビリティを達成することができ、すなわち、0.01〜5%の範囲の皮膚投与後対静脈内(IV)投与後の尿中回収量比を達成することができる。
【0129】
以下のように、皮膚投与したビスホスホネートの相対バイオアベイラビリティは、静脈内投与後の尿中回収量に対する皮膚投与後の尿中回収量の比として決定される:
ビスホスホネート(皮膚)の相対バイオアベイラビリティ
=静脈内投与後の尿中回収量に対する皮膚投与後の尿中回収量の比
=尿中回収量(経皮)/尿中回収量(IV)
=[投与量に対する皮膚投与後に尿中で回収された投与されたビスホスホネートの相対量(%)]/[投与量に対する静脈内投与後に尿中で回収された投与されたビスホスホネートの相対量(%)]
【0130】
一態様では、本発明の組成物および方法は、約0.05%の相対バイオアベイラビリティ、例えば、0.01%から5%までのバイオアベイラビリティを達成する。別の一態様では、本発明の組成物および方法は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、3%、4%、または5%の相対バイオアベイラビリティを達成する。
【0131】
バイオアベイラビリティの別の尺度は尿中排泄である。一実施形態では、本発明の組成物および方法は、1日の皮膚治療用量の後、アレンドロネート約24μg(例えば、24μg、または24μg+/-2μg)の最大尿中排泄を達成する。別の一実施形態では、本発明の組成物および方法は、1日の皮膚治療用量の後、リセドロネート約63μg(例えば、63μg、または63μg+/-6μg)の最大尿中排泄を達成する。
【0132】
本発明のさらなる利点は、単に例示として以下に示し、非限定的である以下の実施例から明らかになるであろう。
【0133】
当業者であれば、本発明は、上記に記載した任意の数の特徴を組み入れることができることを理解するであろう。
【0134】
(実施例)
(実施例1)
比較試験
含水アルコール混合物中90%の溶解度でのアレンドロン酸ナトリウムまたはリセドロン酸ナトリウム存在下におけるメントールの溶解度を調べ、EP1475095に記載の組成物などの組成物が、非溶解メントールを含むことを確認した。調べた組成物は、
pH6.0のリン酸緩衝液中10% w/wの絶対エタノール、または
pH6.0のリン酸緩衝液中20% w/wの絶対エタノール
を含有した。
【0135】
材料と方法
pH6.0のリン酸緩衝液は、以下の通りに調製した。250mlの0.2Mオルトリン酸二水素カリウム溶液に、28.5mlの0.2M水酸化ナトリウムを添加し、水で1000.0mlに希釈した。
【0136】
アッセイは、FIDと結合させたガスクロマトグラフィーにより実施した。
【0137】
結果は、以下の通りである:
【0138】
【表2】

【0139】
これらの例は、メントールが、調べた混合物:
飽和度90%のビスホスホネート存在下において、pH6.0のリン酸緩衝液中10% w/wの絶対エタノール
飽和度90%のビスホスホネート存在下において、pH6.0のリン酸緩衝液中20% w/wの絶対エタノール
中において低溶解度を有することを示す。
【0140】
したがって、EP1475095に開示の組成物などの組成物は、撹拌停止時に結晶形成および/または相分離をもたらし、このため、肉眼的に均一または安定な組成物とならない、非溶解メントールを含む。
【0141】
(実施例2)
in vitro吸収試験
材料と方法
ビスホスホネート組成物
放射性標識(14C)されたアレンドロン酸(MW 250、無水)または放射性標識(14C)されたリセンドロン酸(MW 282、無水)を、医薬組成物の調製に用いた。
【0142】
飽和度値約90%の濃度における各ビスホスホネートを用いて、各種媒体(追加成分、水(純水溶性)を含むまたは含まない、水/エタノールまたは緩衝液/エタノール)中で組成物を調製した。例えば、「90/10」とは、水/エタノールの90/10 (v/v)混合物を指し、「90/10 pH6」とは、pH6リン酸緩衝液/エタノールの90/10 (v/v)混合物を指す。
【0143】
調べた追加成分は、Tween (登録商標) 80 (T80)、オレイン酸(OA)、メントール、尿素、およびプロピレングリコール(PG)を含む。
【0144】
pH6.0のリン酸緩衝液は、以下の通りに調製した。250mlの0.2Mオルトリン酸二水素カリウム溶液に、28.5mlの0.2M水酸化ナトリウムを添加し、水で1000.0mlに希釈した。
【0145】
ビスホスホネート濃度は、約90%の飽和度にある。
【0146】
【表3】

【0147】
in vitroでの皮膚吸収:
原理
標準的な方法により、静置型拡散セル(フランツセル)内に入れたヒト腹部の採皮刀生検試料について、in vitroでの経皮吸収を定量的に調べる。一般的に、皮膚の片側が生存液(レセプター液)と接触するように、皮膚をフランツセル内に置く。試験製剤を皮膚の他の側に塗布し、レセプター液中で検出される試験製剤に由来する有効成分量を測定することにより、経皮吸収を評価する。
【0148】
フランツセルアッセイ
皮膚生検試料は、フランツセルの2つの部分間で水平に保持され、これにより、2つのコンパートメント:
一方の表皮コンパートメントは、ガラス製シリンダーを含み、正確に定められた1.77cm2の面積を有し、皮膚の上側に置かれ、
他方の真皮コンパートメントは、下側の外皮面に適用され、側部採取ポートを有する固定容量の容器を含む、
に区切られる。
【0149】
2つのエレメントは、クランプにより集約される。
【0150】
15g/Lのウシ血清アルブミンを補充した9g/L塩化ナトリウム溶液からなるレセプター液で、下側(真皮)コンパートメントを満たす。各時点において、側部採取ポートにより生存液全体を試料採取し、新たな液で置換する。
【0151】
フランツセルの下側部分は、37℃に温度調節する。磁気撹拌機を用いて撹拌することにより、レセプター液の温度および内容の均一性を維持する。
【0152】
上側部分(表皮コンパートメント)は、外部に対して開放され、これにより、表皮面を試験室内の空気に曝露している。
【0153】
ヒト腹部皮膚の採皮刀生検試料の調製:
皮膚生検試料とは、形成外科術から得られるヒト腹部皮膚に由来する試料である。使用前において、皮膚を-20℃に保つ。外科用メスにより、付着性の皮下脂肪を除去し、採皮刀により、皮膚を約0.5mmの厚さとする。
【0154】
フランツセルは、通常、試験製剤の塗布前日に設置する。表皮コンパートメントは試験室内の雰囲気と接触させ、真皮コンパートメントは37℃に温度調節し、約17時間にわたって皮膚をアルブミン添加した生理的血清(上記)と接触させる。
【0155】
ガラス製シリンダーにより境界づけられる表皮面の全体に、マイクロピペットにより所望量の試験組成物を塗布する。in vivo状況における組成物の薄層の塗布を模倣するため、10μLの限定用量を選択し、1.77cm2にわたって塗布した。真皮コンパートメント中に含有される液体からの試料採取は、所望の時点において、側部の採取ポートを介して実施する。24時間後、5段階の洗浄手順に続き、表皮/真皮の分離を行い、質量収支を計算する。
【0156】
放射能の測定:
Packard社製Tricarb 2900 TR粒子カウンターを用いる液体シンチレーションにより、放射性標識されたビスホスホネートの検出を実施した。
【0157】
放射性試料の調製
フランツセルの下側コンパートメントから試料採取したレセプター液を、15mLの液体シンチレーションカクテル(Packard社製、Picofluor 40R)中に直接取り込み、放射線量について計測する。表皮および真皮を、それぞれ、1mlおよび3mlのPackard社製Soluene 350により、60℃で数時間にわたり消化する。消化後、15mlの液体シンチレーションカクテル(Packard社製、Hionic Fluor)を添加する。
【0158】
放射能の測定:
各試料の実際の放射能に相当する1分間当たりの壊変数(dpm)を得るため、外部較正の方法により、クエンチングに関し計数効率を補正した。バックグラウンドは、各試料について、cpm単位で推定される。各シンチレーション液について、特異的なクエンチング曲線を確定する。
【0159】
結果は、適度に希釈した較正液の計数効率から決定された、試料中に見出される放射性標識されたビスホスホネートの重量(ng当量、ng-eq)、または、投与量に対するその百分率で表される。
【0160】
結果
in vitro皮膚吸収アッセイの結果を、以下でより詳細に説明する図1〜13に示す。
【0161】
全体として、結果は、皮膚表面に直接塗布した場合、本発明の組成物が、ビスホスホネートの効果的な経皮送達を達成することを示す。したがって、結果は、本発明の実現可能性を裏付け、本発明による組成物の能力、例えば、局所(皮膚)経路を用いて有効量のビスホスホネートを投与する能力を示す。
【0162】
アレンドロネートは、典型的に、週に1回70mg (アレンドロン酸、無水)の用量を用いて経口投与してよい。70mg無水アレンドロン酸(76.5mgの無水アレンドロン酸ナトリウムと同等)の局所投与の場合、これは、本発明の一実施形態(90/10緩衝液/エタノールの緩衝含水アルコール溶液中における飽和度90%のアレンドロネート、すなわち、10.4mg/gの無水アレンドロン酸一ナトリウム)による7.35gの溶液に対応するので有利である。また、本発明によれば、76.5mgの無水アレンドロン酸ナトリウムの同じ局所投与は、本発明の別の実施形態による2.7g (純水中における飽和度90%のアレンドロネート、すなわち、28.09mg/gの無水アレンドロン酸一ナトリウム)に対応する。
【0163】
リセドロン酸ナトリウムは、一般に、週に1回無水リセドロン酸一ナトリウム35mgの用量を用いて投与される。35mgの局所投与の場合、これは、本発明の一実施形態(90/10水/緩衝液のリン酸緩衝含水アルコール溶液中における飽和度90%のリセンドロネート、すなわち、22.4mg/gの無水リセンドロン酸一ナトリウム)による1.5gの溶液に対応するので有利である。また、本発明によれば、35mgの同じ局所投与は、すなわち、本発明の別の実施形態による0.8g (純水中において飽和度90%のリセンドロネート、すなわち、45.3mg/gの無水リセンドロン酸一ナトリウム)である。
【0164】
組成物のこれらの量/容量は、実際、臨床的状況において許容される。in vitroにおける塗布条件-すなわち、10μl/l.77cm2-は、製剤が1〜2mg/cm2の薄層として塗布されるin vivoでの状況を模倣する。したがって、該有効成分(例えば、ビスホスホネート化合物)は、刺激を引き起こしうるような、小さな表面積上に濃縮されることがなく、このため、任意の局所的な忍容性の問題を潜在的に軽減する。
【0165】
図1は、アレンドロネートが皮膚を透過し、また、皮膚の最深層である真皮においても回収されることを示す。塗布された用量の百分率として表されるこの吸収量は、溶液中のアルコール含量の増大によってはそれほど変化しない。
【0166】
図2は、リセドロネートが皮膚を透過し、また、皮膚の最深層である真皮においても回収されることを示す。塗布された用量の百分率として表されるこの吸収量は、溶液中のアルコール含量の増大によってやや上昇する。
【0167】
図3は、吸収に悪影響を及ぼさずに、皮膚のpH (5.5)に近い製剤中のpH値に達するよう、リン酸緩衝液による水の置換により、pH値をやや上昇させうることを示す。
【0168】
図4に見られる通り、製剤中のアルコール含量は、アレンドロネートの吸収百分率に悪影響を及ぼさない。
【0169】
図5は、図4と同じ実験を表すが、結果は、異なる形、すなわち、図4では対用量%、および図5では量として表される。これらの図は、送達の最大量が、純水溶液により得られることを示す。
【0170】
図6は、90/10リン酸緩衝液/エタノール製剤中におけるその飽和濃度の90%にあるメントールが、純リン酸緩衝液と比較して、レセプター液および真皮中で回収されるアレンドロネート量を増加させないことを示す。
【0171】
図6と同様に、図7は、メントールが、100%リン酸緩衝液と比較して、レセプター液および真皮中で回収されるリセドロネート量を増加させないことを示す。
【0172】
図8は、尿素が、リン酸緩衝液中に取り込まれた場合、レセプター液または真皮中に回収される量に中立的効果を有することを示す。
【0173】
図8と同様に、図9は、尿素が、リン酸緩衝液中に取り込まれた場合、レセプター液および皮膚中に回収されるリセドロネート量に中立的効果を有することを示す。
【0174】
図10は、尿素が、レセプター液および皮膚中に回収されるアレンドロネート量に中立的効果を有することを確認し、プロピレングリコールが、100%リン酸緩衝液と比較して、回収されるアレンドロネート量を低減する傾向にあることを示す。
【0175】
図11は、尿素が、レセプター液および真皮中のリセドロネート量を増加させ、プロピレングリコール(PG)が、100%リン酸緩衝液と比較して、レセプター液中のリセドロネート量にそれほどの影響を及ぼさないことを示す。
【0176】
図12は、グリセリンが、レセプター液および真皮中に回収されるアレンドロネート量に中立的効果を有することを示す。図12中の他のデータは、促進剤として知られるオレイン酸が、4.5%のTween (登録商標) 80 (T80)を含有する90/10リン酸緩衝液/エタノール溶液中におけるその最大溶解度の90%で取り込まれた場合に得られる結果を反映する。これらの条件(例えば、オレイン酸を伴う)下では、100%リン酸緩衝液と比較して、レセプター液および真皮中に回収されるリセドロネート量が低下する。
【0177】
図13は、グリセリンが、レセプター液および真皮中に回収されるリセドロネート量をそれほど増加させないことを示す。図13中の他のデータは、促進剤として知られるオレイン酸が、4.5%のTween (登録商標) 80を含有する90/10リン酸緩衝液/エタノール溶液中におけるその最大溶解度の90%で取り込まれた場合に得られる結果を反映する。これらの条件(例えば、オレイン酸を伴う)下では、100%リン酸緩衝液と比較して、レセプター液および真皮中に回収されるリセドロネート量が低下する。
【0178】
(実施例2A)
さらなるin vitro吸収試験
材料と方法
ビスホスホネート化合物
実施例2に記載の方法により、実施例を実施した。
【0179】
放射性標識(14C)されたアレンドロン酸(MW 250、無水)を、各種のゲル化剤および/またはグリセリン存在下のpH6.0または7.0のリン酸緩衝液中における医薬組成物の調製に用いた。
【0180】
調べたゲル化剤は、グレードNFのカルボポール980、グレードNFのウルトレズ10、グレードNFのペムレンTR1 (3つのカルボマーポリマー)、およびグレード250のナトロソール(セルロース誘導体)を含む。
【0181】
ビスホスホネート濃度は、約90%の飽和度にある。
【0182】
本実施例の組成物は、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択される短鎖脂肪族アルコールを含まない。
【0183】
in vitroでの皮膚吸収:
フランツセルアッセイは、上記実施例2に記載の通りに実施した。
【0184】
結果
in vitro皮膚吸収アッセイの結果を、以下の表に示す。5種類の個別の実験を実施した。
【0185】
【表4】

【0186】
【表5】

【0187】
【表6】

【0188】
【表7】

【0189】
【表8】

【0190】
全体として、結果は、皮膚表面に直接塗布した場合、本発明の組成物が、ビスホスホネートの効果的な経皮送達を達成することを示す。レセプター液中に回収されたビスホスホネート量が、24時間にわたり経皮的に吸収された量に対応するのに対し、24時間後において真皮中に見出される量は、in vivoでは、24時間後において真皮中に取り置かれ、その後の吸収に用いられるビスホスホネートに相当する。
【0191】
(実施例3)
例示的な組成物
本発明に従って使用する、以下の組成物を調製することができる:
【0192】
【表9】

【0193】
本発明に従って使用する、以下の組成物を調製することができる:
【0194】
【表10】

【0195】
(実施例4)
in vivo吸収試験
概要
本実験の目的は、24時間後における48μgの静脈内ボーラス(ラット3匹)または1.9mgの皮膚塗布(ラット5匹)として投与された14C-アレンドロネートの単回投与後の骨中における14C-アレンドロネートの相対バイオアベイラビリティを決定することであった。被験皮膚領域は、送達に影響を及ぼさない非密閉ガーゼにより保護した。24時間後、ガーゼを除去し、皮膚を洗浄した。骨、治療される皮膚領域、血漿、赤血球、および肝臓中の14C-アレンドロネート濃度を決定した。排泄された14C-アレンドロネートの回収量は尿および便から決定し、試験終了時-第4日または第8日-において死骸中に残存する14C-アレンドロネート総量を決定した。
【0196】
製剤:静脈内投与用の投与製剤は、非標識アレンドロネートにより14C-アレンドロネートを希釈し、通常の生理食塩液中で0.2mg/mlの濃度(0.261μCi/μgの比活性)まで溶解させ希釈することにより調製した。皮膚投与用の投与製剤は、非標識アレンドロネートにより14C-アレンドロネートを希釈し、リン酸緩衝液中で33.8mg/mlの濃度(0.015μCi/μgの比活性)まで溶解させ希釈することにより調製した。
【0197】
動物:本試験では、20匹の雌CD [CRL:CD (SD)]ラットを用いた。投与時において、ラットは、9〜11週齢であり、体重229〜265gであった。
【0198】
実験デザイン:
第1群の動物は、1mg/体重kgの投与容量において、0.2mg/kg 14C-アレンドロネートの静脈内投与を受けた。
【0199】
第2群の動物は、0.056mlの投与容量において、1.9mg 14C-アレンドロネートの経皮投与を受けた。投与前に、第2群の動物にはエリザベサンカラーを取り付けた。周囲温度での乾燥後、非密閉ガーゼの包帯により、皮膚投与された14C-アレンドロネートを24時間にわたり保護した。24時間後、エリザベサンカラーおよびガーゼの包帯を取り外し、塗布部位を数回にわたり水ですすぎ、綿棒で拭き取り、ガーゼの包帯および綿棒中の放射能量を決定した。
【0200】
投与の30分後、1時間後、および2時間後において、静脈内投与した動物から血液試料を採取した。皮膚投与した動物からの血液試料は、投与の6、12、24、72、120、および168時間後に採取した。血漿試料は、放射能決定用に別個に採取した。尿および便は、その0〜8 時間後、8〜24時間後、およびその後24時間ごとに採取した。アレンドロネート投与の72時間後(試験第4日)または168時間後(試験8日)に、動物を安楽死させた。
【0201】
以下の表に、実験デザインを示す:
【0202】
【表11】

【0203】
皮膚の準備:背部体表面積の10% (約24cm2)以上が、試験物質の塗布に用いられるよう、経皮投与の約24時間前に、第2群の動物の胴体の体毛を、獣医用バリカンで刈り取った。皮膚の擦過を回避するよう、注意を払った。刈り取った領域のサイズは、肩甲骨(肩)領域から臀部のすぐ上に至る、背部表面積の大半に及んだ。
【0204】
罹患率/死亡率の観察:治療期間中、1日2回、死亡率または罹患率の証拠について動物を観察した。死亡率/罹患率の確認は、最低4時間の間隔を置いた。
【0205】
臨床的観察:試験期間中において、毎日、詳細な臨床的観察を実施した。初回の臨床的観察は、静脈内投与後30分間以内、および経皮投与の約2時間後に行った。
【0206】
体重:動物は、受容時(無作為試料)、隔離中に1回(無作為化)、投与直前、および所定の最終剖検前(絶食時体重)に秤量した。
【0207】
死後検査の手順:全ての試験動物は、簡略化した剖検を受けた。各群中半数の動物(第1群から3匹、および第2群から5匹)は、第4日に安楽死させた。残りの動物は、第8日に安楽死させた。安楽死を予定されたラットは、一晩にわたり絶食させ、ペントバルビタールナトリウム麻酔の導入に続く瀉血により安楽死させた。剖検時に、肝臓、大腿骨、脛骨、および皮膚(経皮投与された動物の場合は塗布領域)を採取し、秤量し、放射能の決定まで-70℃で保管した。死骸の残り、ならびに、全ての体液および排泄物もまた、放射能の決定まで-70℃で保管した。
【0208】
放射能の決定:各組織の一部または全組織を秤量または測定し、存在する放射能を決定した。放射能(DPM)は、2200A型液体シンチレーションカウンター(マサチューセッツ州、ボストン、Perkin-Elmer社製)を用いて測定した。肝臓、大腿骨、脛骨、赤血球、および便は、水によりホモジナイズし(オクラホマ州、バートルズビル、Biospec Products社製、Tissue Tearor)、OX-500型Biological Material Oxidizer (ニュージャージー州、ヒルズデール、R.J. Harvey Instrument社製)により酸化させた。ホモジナイゼーションの前に、骨試料から骨髄を除去した。試料燃焼からの14CO2をCarbon 14 Cocktail (R.J. Harvey社製)シンチレーション液中に取り込み、放射能をカウントした。皮膚試料は、約200mgずつの断片に切断し、完全に酸化させた。血漿、尿、およびケージ洗浄液は、液体シンチレーションカクテル(ニュージャージー州、フェアローン、Fisher Scientific社製、Scintisafe Plus 50%、または、マサチューセッツ州、ボストン、Perkin-Elmer社製、Optiphase Supermix)に直接添加し、放射能をカウントした。死骸は、約85℃の10M NaOH中に溶解させることによりホモジナイズした。ホモジネートのアリコートは、氷冷した酢酸の添加により中和し、H202の添加により漂白した。アリコートをシンチレーション液に添加し、または酸化させ、放射能を決定した。
【0209】
データ解析:静脈内投与された14C-アレンドロネートの実際量は、投与された容量から計算し、濃度を乗じた。静脈内用量の100%の投与を仮定した。
【0210】
皮膚投与された14C-アレンドロネートの実際量の決定では、経皮用量(1.9mg)の総量を、投与に用いるピペッターの先端から回収した放射能量について調整した。投与された用量のこの値を、回収量の全ての計算に用いた。
【0211】
肝臓、大腿骨、脛骨、および赤血球中の14C-アレンドロネートは、組織gあたりの14C-アレンドロネートμgとして報告した。排泄物からの14C-アレンドロネートの回収量は、期間あたりの14C-アレンドロネートμgとして報告した。尿およびケージ洗浄液中において回収された14C-アレンドロネート量は、単独の値として決定および報告した。死骸から回収された14C-アレンドロネート量は、回収された14C-アレンドロネート総量として報告した。バックグラウンド放射能は、適切なブランク試料を用いて、全ての試料から差し引かれた。酸化させた試料では、対照動物に由来する組織を酸化させ、放射能量を決定した。
【0212】
結果の概要
用量の投与:24時間後に除去されたガーゼの覆いが、アレンドロネートの送達された用量の約10%を含有したのに対し、洗浄媒体および綿棒は、約46%を含有した。したがって、皮膚送達されたアレンドロネートの56%は、吸収されなかった。
【0213】
骨中の14C-アレンドロネート濃度:
静脈内投与後、骨中濃度の個体間のばらつきは最小限であり、脛骨中の濃度は大腿骨中の濃度と同様であり、第8日における濃度は、第4日におけるよりもやや高かった。皮膚投与後には、骨中濃度の大きな個体間のばらつきが観察された。
【0214】
骨中の14C-アレンドロネート濃度:
【0215】
【表12】

【0216】
【表13】

【0217】
皮膚からの14C-アレンドロネートの回収量:
結果は以下に示され、皮膚中のアレンドロネート貯留は、小さな個体間のばらつきを示し、最小限であり、このため、任意の局所的な忍容性の問題を潜在的に最小化する。
【0218】
【表14】

【0219】
14C-アレンドロネートの排泄:尿試料および便試料中に排泄された14C-アレンドロネート量を以下に示す。静脈内投与の168時間後までに、用量の約7%が尿中に排泄された。この大部分(用量の約5%)は、最初の8時間において排泄された。皮膚投与後では、168時間後までに、用量の約0.4%が尿中に排泄された。静脈内投与後では、168時間後までに、用量の約6%が便中に排泄された。皮膚投与後では、168時間後までに、用量の約2%が便中に排泄された。
【0220】
【表15】

【0221】
【表16】

【0222】
【表17】

【0223】
【表18】

【0224】
(実施例5)
in vitroデータ(実施例2)に基づく実現可能性試験
実施例2に記載のヒト皮膚に対するフランツセル実験から得られたin vitroでの結果を用いて、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることを確認した。
【0225】
実施例2に示した通り、アレンドロネートは、in vitroにおいて、0.6%の吸収率を示す。in vivoにおけるヒト皮膚を介する0.7%の局所(皮膚)吸収を仮定し、ヒトにおける全身用量の約50%が尿中で回収されることを考慮すると、アレンドロネートの相対経皮バイオアベイラビリティは、0.7%×50% = 0.35%、例えば、ヒト対象におけるアレンドロネートの相対経口バイオアベイラビリティの約半分となる。
【0226】
したがって、このモデルが示すように、経口用量と同等のアレンドロネート量を皮膚送達するには、経口用量の2倍を皮膚投与することになる。したがって、例えば、アレンドロネートの毎週の経口用量である70mgと同等のアレンドロネート量を皮膚送達するには、この量の2倍、すなわち、2×70mg=140mgを、毎週1回、皮膚投与することになる。33.3mg/gのアレンドロネート濃度を有する本発明の組成物の場合、これは、約4g (4gなど)の組成物を毎週1回、または、約2g (2gなど)の組成物を毎週2回、経皮投与することに対応する。こうした量は、容易に皮膚投与され、したがって、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることが確認される。
【0227】
(実施例6)
尿中回収量(実施例4)に基づく実現可能性試験
実施例4に記載の尿中回収量に関する実験から得られたin vivoでの結果を用いて、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることを確認した。
【0228】
上記で説明した通り、相対バイオアベイラビリティは、静脈内投与後の尿中回収量を基準として用いて決定する。こうして、経口投与後における相対バイオアベイラビリティは、以下の通りに決定される:
相対バイオアベイラビリティ(経口)
=静脈内投与後における尿中回収量に対する経口投与後における尿中回収量の比率
=尿中回収量(経口)/尿中回収量(静脈内)
=[経口投与後に尿中で回収されたビスホスホネート投与量の経口投与量に対する相対量(%)]/[静脈内投与後に尿中で回収されたビスホスホネート投与量の静脈内投与量に対する相対量(%)]
【0229】
文献(例えば、J.H. Lin、G. Russel、B.Gertz、「Pharmacokinetics of alendronate: an overview」、Int J Clin Pract Suppl、1999年、第101巻、18〜26頁)によれば、アレンドロネートは、ヒト対象において0.7%の相対経口バイオアベイラビリティを示す。ラットにおける皮膚投与後の尿中回収量が0.4%であることを示す実施例4からのデータ、およびラットにおける静脈内投与後の尿中回収量が36%であることを示す公表データ(例えば、J.H. Lin、G. Russel、B.Gertz、「Pharmacokinetics of alendronate: an overview」、Int J Clin Pract Suppl、1999年、第101巻、18〜26頁) (この量は、実施例4で決定した量とは異なることに注意されたい)を用いると、ラットにおけるアレンドロネートの相対経皮バイオアベイラビリティ(静脈内に対する皮膚)は、0.4%/36%=1.1%となる。ラットにおいて、ヒトにおけるよりも10倍高い吸収を示すin vitroでの結果に基づくと、ラットにおけるin vivoでの皮膚吸収は、ヒトにおけるよりも10倍高いと妥当に推定しうる。したがって、ヒトにおけるアレンドロネートの相対皮膚バイオアベイラビリティ(静脈内に対する皮膚)は、ラットの場合の10分の1、すなわち、1.1%/10=0.1%となる。
【0230】
ヒトにおけるアレンドロネートの相対皮膚バイオアベイラビリティ(静脈内に対する皮膚で0.1%)を、ヒトにおけるアレンドロネートの相対経口バイオアベイラビリティ(静脈内に対する皮膚で0.7%)と比較すると、ヒトにおける相対皮膚バイオアベイラビリティは、相対経口バイオアベイラビリティの7分の1であることが示唆される。したがって、このモデルが示すように、経口用量と同等のアレンドロネート量を皮膚投与するには、経口用量の7倍を皮膚投与することになる。したがって、例えば、アレンドロネートの毎週の経口用量である70mgと同等のアレンドロネート量を皮膚送達するには、この量の7倍、すなわち、7×70mg=490mgを、毎週1回、皮膚投与することになる。33.3mg/gのアレンドロネート濃度を有する本発明の組成物の場合、これは、約14.5g (14.5gなど)の組成物を毎週1回、または、約7g (7gなど)の組成物を毎週2回、経皮投与することに対応する。こうした量は、容易に皮膚投与され、したがって、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることが確認される。
【0231】
(実施例7)
骨中回収量(実施例4)に基づく実現可能性試験
実施例4に記載の骨中回収量に関する実験から得られたin vivoでの結果を用いて、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることを確認した。
【0232】
ラットにおける皮膚投与後の骨中回収量が0.2%であることを示す実施例4からのデータ、およびラットにおける経口投与後の骨中回収量が0.9%であることを示す公表データ(J.H. Linら、「On the absorption of alendronate in rats」、J Pharm Sci、1994年、第83巻、第12号、1741〜46頁)を用いると、ラットにおいて、皮膚投与は、経口投与の約5分の1の骨中バイオアベイラビリティをもたらすと思われる: 皮膚投与後のラットにおける骨中回収量に対する経口投与後のラットにおける骨中回収量の比率=0.9%/0.2%=約5。
【0233】
皮膚投与後の骨中回収量に対する経口投与後の骨中回収量の比率が、ヒト対象においても同様(例えば、約5)であると仮定すると、ヒトにおけるアレンドロネートの相対皮膚骨中バイオアベイラビリティは、相対経口骨中バイオアベイラビリティの約5分の1となる。したがって、このモデルが示すように、経口用量と同等のアレンドロネート量を皮膚投与するには、経口用量の5倍を皮膚投与することになる。したがって、例えば、アレンドロネートの毎週の経口用量である70mgと同等のアレンドロネート量を皮膚送達するには、この量の5倍、すなわち、5×70mg=350mgを、毎週1回、皮膚投与することになる。33.3mg/gのアレンドロネート濃度を有する本発明の組成物の場合、これは、約10g(10gなど)の組成物を毎週1回、または、約5g(5gなど)の組成物を毎週2回、経皮投与することに対応する。こうした量は、容易に皮膚投与され、したがって、ビスホスホネートの治療的有効量を、本発明の組成物および方法を用いて送達しうることが確認される。
【0234】
ラットにおける皮膚投与後の骨中回収量が0.2%であることを示す実施例4からの同じデータに基づき、異なるシナリオもまた構築された。補正係数10を適用して、ラットとヒトとの皮膚吸収の間の差を考慮し、これにより、皮膚投与後における骨中回収量を0.02%と推定した。0.6%の経口バイオアベイラビリティ(骨中回収量からでなく、尿中回収量から計算した)を用いて、経口バイオアベイラビリティとの比較を確立した。したがって、以下の計算、0.02/0.6=30より、潜在的に、ヒトにおける皮膚バイオアベイラビリティは、経口バイオアベイラビリティの30分の1となりうることが導かれた。したがって、例えば、アレンドロネートの毎週の経口用量である70mgと同等のアレンドロネート量を皮膚送達するには、この量の30倍、すなわち、30×70mg=2100mgを、毎週1回、皮膚投与することになる。33.3mg/gのアレンドロネート濃度を有する本発明の組成物の場合、これは、約20g (20gなど)の組成物を毎週3回、皮膚投与することに対応する。
【0235】
上記で注意した通り、当業者は、前出のモデルの任意の1つ、または当技術分野で知られる他の手段を用いて、投与して意図される治療効果を達成する組成物の適切な量を決定することができる。
【0236】
(実施例8)
骨喪失動物モデルにおけるビスホスホネートの経皮投与に関するin vivo試験
本試験は、卵巣切除ラットにおいて、8週間の治療期間にわたり、骨マーカーおよび骨密度に対する効果を評価し、これらの効果を、アレンドロネートの皮下注射により治療される卵巣切除ラットにおいて認められる効果と比較することにより、アレンドロネートの皮膚投与を評価した。
【0237】
外科手術は、急速な骨喪失をもたらすエストロゲン欠損を引き起こすので、卵巣切除ラットは、骨喪失試験用に認知されたモデルである。http://www.emea.europa.eu/の欧州医薬品庁からダウンロードで入手できる「Guideline on the evaluation of medicinal products in the treatment of primary osteoporosis」、CPMP/EWF/552/95を参照されたい。
【0238】
材料と方法:
治療第1日の前日において、群あたり8匹の13週齢ラット(Sprague-Dawleyラット、未経産雌)に、擬似手術(第1群:対照)または卵巣切除(OVX) (第2〜7群)を行った。以下の通りに、8週間にわたり、ラットを、媒体の毎日の皮膚塗布(第1および2群)、アレンドロネート(第3群に、無菌の等張性生理食塩液、0.9% NaCl中のアレンドロン酸ナトリウム三水和物:2μg/kg/日)の毎日の皮下注射(sc inj)、または局所用アレンドロネート製剤(pH7のリン酸緩衝液中のアレンドロン酸ナトリウム三水和物)の皮膚塗布(topic)により治療した:
第4群:毎日4.46mg/kg、
第5群:毎週1回15.6mg/kg、
第6群:毎日3.1mg/kg、および
第7群:毎週2回10.85mg/kg。
【0239】
ベースライン時、第4週、および第8週において、尿中デオキシピリジノリン(D-pyr)およびクレアチニン(Creat)を決定した。Creatに対するD-pyrの比率は、骨吸収の認知されたマーカーである。例えば、Christenson RH、「Biochemical markers of bone metabolism: an overview」、Clin Biochem、1997年、第30巻、第8号、573〜593頁を参照されたい。
【0240】
大腿骨およびL2〜L5腰椎ブロックの骨ミネラル密度(BMD)は、Hologic社製の機器と同時点におけるin vivoでの二重エネルギーX線吸収測定(DXA)法による測定から計算した。BMDは、また、治療期間の終了時に、解剖した大腿骨およびL4腰椎において、ex vivoでも測定した。
【0241】
結果:
1.尿検査
【0242】
【表19】

【0243】
2.骨密度の測定
in vivoまたはex vivoにおけるDXA法による測定は、対照動物(第1群)におけるよりも、プラセボ治療の卵巣切除動物(第2群)における方が、統計学的に低密度であることを確認し、対照動物(第1群)と皮下注射により治療した動物(第3群)との間における同様の密度を示した。
【0244】
局所アレンドロネート(第4〜7群)により治療したラットは、皮下注射により治療したラット(第3群)または対照(第1群)と同様のBMD結果を示した。さらに、驚くべきことに、遠位骨幹端(大腿骨の一部)におけるBMDは、皮下注射群(第3群)の場合よりも、局所治療した第4および第7群の場合の方が統計学的に高いことが見出された。以下の表を参照されたい。
【0245】
腰椎BMDの測定値:
【0246】
【表20】

【0247】
総大腿骨BMDの測定値:
【0248】
【表21】

【0249】
大腿骨骨幹端BMDの測定値:
【0250】
【表22】

【0251】
皮膚忍容性の問題(疥癬の形成)のため、治療の2週間後に、第4および第7群の用量を以下の通りに軽減した:
第4群では、試験の全期間にわたるこの群の平均用量が6.8mg/kg/日(週当たり47.6 mg/kgの平均総用量と同等)となるよう、15.6mg/kg/日から4.46mg/kg/日に軽減;
第7群では、試験の全期間にわたるこの群の平均用量が12.0mg/kg/日(週当たり24.0mg/kgの平均総用量と同等)となるよう、毎週2回15.6mg/kgから毎週2回10.85mg/kgに軽減。
【0252】
結論:本試験は、アレンドロネートの皮膚投与の原理に裏付けを与える。ラットでは塗布部位のローテーションが不可能であったが、ヒトでは可能でありうるので、皮膚忍容性の問題を潜在的に予防または最小化しうる。
【0253】
本発明を、当業者がそれを作成し、使用するのに十分詳しく記載し、例示したが、様々な代替、改変、および改善が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく明らかであるはずである。本明細書に提供する実施例は、特定の実施例を代表するものであり、例示であり、本発明の範囲に対する限定を企図するものではない。これらにおける改変および他の使用が、当業者には思い浮かぶであろう。これらの改変は、本発明の精神内に包含され、特許請求の範囲によって規定される。
【0254】
当業者であれば、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに、本明細書に開示した本発明に対して様々な代替および改変を行うことができることは容易に明らかである。
【0255】
本明細書で言及した特許および出版物は全て、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。特許および出版物は全て、各々個々の出版物が特に、かつ個々に参照によって組み入れられることが示されているのと同程度に参照によって本明細書に組み入れられる。
【0256】
本明細書に例示的に記載した本発明を、本明細書に特に開示していない任意の要素または複数の要素、制限または複数の制限なしに適切に実践することができる。したがって、例えば、本明細書における各々の実例において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」のいずれかを、他の2つの語のいずれかで置き換えてもよい。使用した語および表現は、限定の語ではなく、記載の語として用いられるものであり、このような語および表現の使用において、示され、記載された特徴またはその部分の任意の同等物を排除する意図はないが、請求される本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが認められる。このように、本発明を特定の実施形態および任意選択の特徴によって特に開示したが、本明細書に開示した概念の改変および変形を当業者は行使することができること、ならびにこのような改変および変形は添付の特許請求の範囲によって規定されるように本発明の範囲内にあるとみなされることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚に局所投与するための薬剤組成物であって、
(i)治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートと、
(ii)非刺激性の量の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
(iii)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、、およびイソブタノールから選択される、0〜12%の少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
(iv)少なくとも1つのゲル化剤と、
(v)任意選択で、少なくとも1つの界面活性剤と、
(vi)水と
を含み、
安定な、肉眼的に均一な混合物であり、
4.0と8.5の間のpHを有し、
非密封性であり、非フィルム形成性である
薬剤組成物。
【請求項2】
ヒトの皮膚に局所投与するための薬剤組成物であって、
(i)0.05〜7.5%の少なくとも1つのビスホスホネートと、
(ii) 0.05〜12%の少なくとも1つのモイスチャライザー、好ましくはグリセリンと、
(iii)エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択される、0〜12%の少なくとも1つの短鎖の脂肪族アルコールと、
(iv) 0.02〜5%の少なくとも1つのゲル化剤と、
(v) 0〜5%の界面活性剤と、
残部の水と
を含み、
安定な、肉眼的に均一な混合物であり、
4.0と8.5の間のpHを有し、
非密封性であり、非フィルム形成性である
薬剤組成物。
【請求項3】
エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、およびイソブタノールから選択されるいかなる短鎖の脂肪族アルコールも含まない、請求項1または2に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記ビスホスホネートは、アレンドロネートおよびリセドロネートから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記モイスチャライザーは、尿素、プロピレングリコール、グリセリン、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
ゲルの形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
0.2-1.5%(w/w)の少なくとも1つのゲル化剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記ゲル化剤は、ポリアクリル酸ポリマー、セルロース誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記ゲル化剤は、ポリアクリル酸ポリマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
治療有効量の少なくとも1つのビスホスホネートを、それを必要とする患者に投与する方法であって、
請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤組成物を患者の皮膚表面に局所投与する工程を含む方法。
【請求項11】
骨関連障害を治療するための方法であって、治療有効量の請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤組成物を、それを必要とする患者の皮膚表面に局所投与する工程を含む方法。
【請求項12】
前記骨関連障害が、骨粗しょう症、閉経に付随する骨粗しょう症、グルココルチコイド誘発性骨粗しょう症、パジェット病、骨吸収異常、骨癌、骨減少(全身性骨減少および/または局在性骨減少)、(高カルシウム血症を伴うまたは伴わない)骨転移、多発性骨髄腫、および骨脆弱を特徴付ける他の病状からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記投与する工程により、静脈内投与後に対する皮膚投与後の尿中回収量の比が0.1〜5%となる、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
骨折頻度の低減、骨(ミネラル)密度増大、アルカリホスファターゼ低下、オステオカルシン、NテロペプチドコラーゲンIの低下、骨構造の改善、例えば屈曲、捻転、および/または圧迫試験で観察できる骨の生体力学的特性(骨強度)の改善、尿中デオキシピリジノリン(D-pyr)対クレアチニン(Creat)比の低下、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの治療効果をもたらす、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
骨関連障害を治療および/または予防するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物である薬物の製造におけるビスホスホネートの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−510194(P2010−510194A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536745(P2009−536745)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062472
【国際公開番号】WO2008/059059
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508307023)
【Fターム(参考)】