説明

ビスマス及び希土類元素を含む接種剤

【課題】本発明は溶融鋳鉄を処理するための接種混合剤に関し、長期間に渡り安定した粒子保持性を有し、鋳造品、特に薄肉品に対して有効な接種性を提供する。
【解決手段】Si/Fe>2のフェロシリコン合金を5〜75重量%含むタイプA合金は、重量%で、0.005から3%までの希土類元素(RE)、0.005から3%のビスマス、鉛及び/又は アンチモン、及び3%未満のカルシウムを含み、(Bi+Pb+Sb)/REが0.9〜2.2である。そして、シリコン又はSi/Fe>2のフェロシリコンを主体とする少なくとも1つのタイプBの合金は、25〜95%含まれ、このタイプBの合金は、混合剤中のカルシウム総量が0.3〜3%となるようにカルシウムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の中に鉄・カーバイドを含まない薄肉鋳鉄を生産するための、溶融状態の鋳鉄の処理に係り、特にフェロシリコンを主体に、ビスマス、鉛及び/又はアンチモン、それに希土類元素を含む接種剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄は炭素合金鉄として周知であり、鋳造品の生産技術として広く利用されている。その成果を大きくあげるためには、最終的に鉄/黒鉛の骨格を得、一方で製品の脆化を促すFeCタイプの鉄―カーバイドの形成を可能の限りさけることが肝要であることが知られている。
【0003】
鋳鉄の中の黒鉛は、次の内の何れかの形で構成される。即ち一つは、層状(ねずみ鋳鉄ないし、通称LGといわれている層状黒鉛鋳鉄)、もう一種は球状(球状黒鉛鋳鉄またはSG鋳鉄)を経由するものである。ねずみ鋳鉄は長期にわたり社会に浸透し、鋳造技術の中核として採用されてきた。層状の黒鉛の存在に起因して靭性が不足するので、ねずみ鋳鉄はあまり強度を必要としない用途に限られてきた。ところがこれに反し1945年、球状黒鉛が発見されて以来、かなり高い強度を受ける機械部品にも多く用いられるようになった。
【0004】
LG鋳鉄を使うかSG鋳鉄を使うか、鋳物の技術目的により、黒鉛の凝固中の外観よって決められる。且つ周知のことだが、鋳鉄の凝固スピードが速いほど、鋳鉄中のカーボンがFe3Cの形で構成されるリスクが大きかった。この事は薄肉鋳鉄の製造を意図する際、鉄―カーバイドを殆ど含まないよう仕上げる技術が如何に困難かを物語っている。
【0005】
この難問を解決するには、溶融鋳鉄は合金鉄の投入を主体とする所謂接種処理(inoculation treatment)なる技術がおこなわれる。その合金鉄とは、通常フェロシリコンであり、これが一旦溶解すると、短時間の晶析核(ephemeral crystallization nuclei)が局部的に現われ、この核が通称プライマリー黒鉛と称する物質の析出を促進する。これが液状物質の中に最初に現われる固体なのである。
【0006】
以上の異種物質の投入による溶融鋳鉄の特性の向上は、下記の二法により測定可能である。その一つは急冷硬化の深さを、既に標準化された急冷硬化のテストピースと比較する方法であり、もう一法は液状鋳鉄の中に生成した結晶核体の密度を測定する方法である。この密度は、鋳鉄に球状化処理(nodularization)を加えることにより、それが硬化している間に黒鉛が球状化(nodular form)するので、適切に作業のタイミングを決定できる。そして、得られた鋳造作業の成果をミクログラフィックテストにかけることにより核体の生成の度合いを的確に判断できるのである。
【0007】
先行して投与させる接種成分(inoculants)の中で、最も効果的で特筆さるべきは、“Spherix”なる商標名で売られている合金である。これは、この出願者の名において特許文献1:フランス特許、特許番号、FR 2 511 044(Nobel-Bozel)及び特許文献2:ヨーロッパ特許、特許番号、EP 0 816 522 に記載されている。そしてこれらの合金は、重量%で、約72%のシリコン、0.8−1.3% のビスマス、0.4−0.7% の希土類元素、約1.5%のカルシウム、約1%のアルミニウムを含み、残部鉄である。
【0008】
これらの合金は、薄厚部分を持つ鋳鉄の製造及びその処理に極めて適合している。然し、その薄い部分には黒鉛の球状密度が高い傾向が認められ、それが鋳造品の均一性を失いかねない。
【0009】
以上の事実に拘わらず、このタイプの合金鉄は機械的特性並びに安定性の上で、若干の問題をはらんでいる。即ちこの中には、固形の状態において不可避的にBiCa相を含み、それがFeSi相の結晶粒界に集中する傾向を避け得ない。即ちこの相は水分と接触すると反応する金属間化合物なので、合金が空気中の湿分に触れると、分解しやすくなる。特に多数の微細粒子が生成されたとき、特に200μm未満のときに、合金鉄の粒状破壊が観察される。ストロンチュム乃至バリウムを合金鉄に選択的に加えた場合、この傾向は一層増加する。
【0010】
特許文献2:EP 0 816 552は、この問題を解決した一例である。その骨子は、0.3〜3.0% のマグネシウムを合金鉄に付加した所、Bi−Ca−Mg合金中のビスマスに対し、第3元素としての働きに加え,単なるBiCa層の場合よりも水分に対し、より安定的な効果を発揮しているのである。つまりこの一連の実験は、“Spherix”タイプの合金が、マグネシウムの追加により、本当に粒子の安定性を強化した事実を物語っている。とは申せ、ごく僅かではあっても微小粒子の成分の挙動について、長い間、明確な説明もできないまま、ある種当然の帰結として見逃してきたのも事実である。
【特許文献1】フランス特許、特許番号、FR 2 511 044、特許請求の範囲など
【特許文献2】ヨーロッパ特許、特許番号、EP 0 816 522、特許請求の範囲など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、斯かる欠落を見直し、より効率的な添加剤を提供することにある。加えて、従来の接種剤よりも遥かに長く、粒子の安定性に優れた効果を与える接種剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主題は、溶融鋳鉄の処理に用いられる接種混合剤であり、この接種混合剤は少なくとも1つのタイプA型の合金5〜75重量%と、少なくとも1つのタイプB型の合金25〜95重量%からなり、タイプA型の合金は、Si/Fe>2.0のフェロシリコンを基本とし、重量で3〜0.5%の希土類元素(RE)、0.005〜3%のビスマス、鉛及び/又はアンチモン、更に3%未満のカルシウムを含んでおり、(Bi+Pb+Sb)/REの割合が0.9〜2.2である。又タイプB型の合金は、シリコン又はSi/Fe>2.0のフェロシリコンを基本とし、カルシウムを、混合剤中のカルシウムのトータル含有量で0.3〜3%の範囲内含んでいる。
【0013】
タイプAの合金はマグネシウムを含有することができ、その範囲は0.30〜3%である。合金Aのビスマスの濃度範囲は、望ましくは0.2〜0.6% で、カルシウム濃度は出来れば2%未満、より好ましくは0.8%未満である。更に好ましいのは、ランタンの含有量が合金Aの希土類の総量に対し70%超含有することである。又、合金Bの場合、好ましくは、ビスマス、鉛及び/又はアンチモンが0.01%未満に留まっていることである。混合剤中のカルシウムの総量は、合金Bにより、75〜95%の範囲で供給されるのが望ましく、更に厳密には80〜90%の間に収まるのがベストである。混合剤の中の総ビスマス量は、0.05〜0.3%の間にあるのが望ましく、希土類元素の総量は0.04〜0.15%の間、そして酸素の総量は0.2%未満に収まることが最も好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
その製品の粒子の安定性並びにその経時的な挙動の改善に関連し、発明者は種々のテストを試みた。その結果、“Spherix”タイプの合金を、合金の混合剤に置換することにより、驚くべき利点があることが示された。この合金の混合剤というのは、全体として、全く同一の成分を示すものであって、混合剤の一方の剤、合金Aは、前者と同じタイプであり、好ましくはカルシウム成分が少ないもの、典型的には2%未満であり、より望ましくは0.8%未満で、他方の剤は、シリコン量が好ましくは70〜80%含むフェロシリコン・タイプのB型合金であり、ビスマスを全然含まないか、0.01%未満で、逆にカルシュウムを多く含むものである。これら二つ合金の混合物は、従来の合金成分と同じ組成を示すのである。
【0015】
B型合金は又、Si−Ca合金で形成してもよく、その際Siが54〜68%、Caが25〜42%の範囲で構成される。
【0016】
混合にあたっては、粒子の大きさが7mm未満のものを集めて粒状とするか、あるいは2.2mm未満の粒子により粉状とすることができる。
【0017】
粒子の安定性について言えば、このタイプの混合剤のほうが、EP 0 816 522 に開示されているものよりも、なお一層有効なことが確認された。長期にわたり、その粒子群が有効に機能するからである。とくに、このことは、劣化指数(degradation factor)により確認することができる。劣化指数は24時間水と接触させて現われる200μmより小さい塊の断片として定義されるが、1年以上の保存期間後においても、10%未満、ないし望ましくは5%未満であり、これが従来の合金のものにおいて絶対不可能である。
【0018】
加えて、全く期待していなかったことだが、本発明による混合剤の接種性能は、同等の成分構成による合金のそれよりも、明らかにかなり高い。すなわち、鋳鉄の接種において、従来合金での接種よりも、ビスマスや他の希土類元素の活性化元素使用量が評価できる程度に少ない。且つ混合剤と均一組成の合金との間の接種性能が異なることから、ビスマス量を少なくできるということをはっきりと示すことができた。
【0019】
さて、“Spherix”タイプの合金は、いわば薄肉状の鋳鉄の製造を目的として特に設計するものなので、ビスマス含有量の少ない合金を使用するのが、有利.合目的的である。何故なら、これにより合金の接種性能の低下を招くことなく、薄肉部における黒鉛の球状化密度(nodule density)の増加を防ぎ得るからである。
【0020】
この様な訳で、0.6%未満のビスマス含有量であれば、その接種混合剤により合金よりも浅い急冷硬化とすることができる。且つその結果、鋳造後の最も薄い部分でも黒鉛球状化密度の極端な増加を防止するのである。
【実施例】
【0021】
実施例1
“Spherix”タイプの接種合金のサンプル10例につき、その組成(重量で%表示)を表1に示した。ここでは、粒のサイズ範囲0.2〜0.7mmのものを用意した。
【表1】

【0022】
これらのサンプルのなかから、下記の処方による組み合わせで、実施例を用意した。
【0023】
− 接種混合剤K:Eの500grとIの500gr を含む
− 接種混合剤L:Eの250grとHの750grを含む
− 接種混合剤M:Eの125grとHの875grを含む
− 接種混合剤N:Eの50grと950grのHを含む
− 接種混合剤O:Eの125grと875grのJを含む
− 接種混合剤P:Eの50grと950grのJを含む。
【0024】
実施例2
サンプルAからF、K及びLから取り出された試料について、20℃の水に24時間直接接触させる前と後とに粒子のサイズ測定をおこなった。
【0025】
粒の大きさが200μmより小さいものの重量割合を表2に示した。
【表2】

【0026】
実施例3
新規な鋳鉄のチャージを、誘導加熱炉でタンデッシユカバープロセスを用いて溶融し作製した。その際採用したのは、5%のMg、1%のCa、0.56%の希土類元素を含むFeSiMgタイプの合金で、1600kgの鋳鉄につき25kgの量で処理した。
【0027】
この際、用いた溶融鋳鉄の組成は、次の通りであった。
【0028】
C=3.5%; Si =1.7% ; Mn=0.08% ; P=0.02%;
S=0.003%。
【0029】
この鋳鉄を、Bタイプの接種合金を鋳鉄1トン当り試料1kgの割合で使用してジェット接種した。これは、垂直位置に厚さ6mmと2mmのフィンを有する、厚み24mmのプレートを作るために使用された。
【0030】
観測された黒鉛の球状化密度(graphite nodule density)は、24mm厚みのコア部において487/mm、6mm厚部では1076/mm、2mm厚のコア部分では1283/mmあった。
【0031】
実施例4
前実施例と同様に、接種合金Bにより鋳鉄1トンに対し1kgの割合でジェット法により接種した。
【0032】
この溶融鋳鉄は、垂直位置に6mmと2mmのフィンを有している垂直部の厚み24mmのプレートを作るのに用いられた。
【0033】
観察された黒鉛の球状化密度は、24mm厚のコア部分で304/mm、6mm厚の部分で631/mm、そして2mm厚部で742/mmであった。
【0034】
実施例5
本例は実施例3と同様の条件下で実行された。但し、鋳鉄のジェット法による接種に当っては接種合金Gを鋳鉄1トンあたり1kgの割合で使用した。
【0035】
この溶融鋳鉄は、垂直位置に6mmと2mm厚のフィンを有する24mm厚のプレートを製造するために用いた。
【0036】
ここで観察された黒鉛の球状化密度は、24mmの中心部において209/mm、6mm厚のコア部分では405/mm、そして2mm厚のコア部では470mmであった。
【0037】
これら実施例3、4及び5において、接種の効果は、ビスマスの含量に比例して急速に減少し、そして鋳鉄の構造は薄肉部分において、常に微細であることが判明した。
【0038】
実施例6
鋳鉄に接種混合剤Kを鋳鉄1トン当たり1kgの割合で添加してジェット接種したことを除き、実施例3と同じ条件で実験が繰り返された。
【0039】
この溶融鋳鉄は、垂直位置に6mmと2mmの厚みを有する24mmの厚さのプレートを製造するために用いられた。
【0040】
観察した黒鉛の球状化密度は、24mm厚部分のコアでは343/mm、6mm厚部のコアでは705/mm、そして2mm厚部では828/mmであった。
【0041】
実施例7
鋳鉄に接種混合剤Lを鋳鉄1トン当り1kgの割合で加えて、更にジェット接種したことを除き、実施例4と同じ条件で実験を繰り返し行なった。
【0042】
この溶融鋳鉄は、垂直位置に6mmと2mmのフィンを有する厚さ24mmプレート作製のために用いられた。
【0043】
黒鉛の球状化密度は、24mm厚のコア部で269/mm、6mm厚部分のコアでは518/mm、そして2mm厚の範囲では600/mmであった。
【0044】
実施例8
接種混合剤Mを鋳鉄1トン当たり1kgの割合でジェット接種したことを除き、実施例5と同じ条件で実験を繰り返した。
【0045】
この溶融鉄は、垂直位置に6mmと2mmのフィンを有する厚さ24mmのプレート製造のために用いられた。
【0046】
観測された黒鉛の球状化密度は、24mm厚の部分のコアで234/mm、6mm厚の分野のコアで425/mm、そして2mm厚の部分のコアで486/mmであった。
【0047】
実施例3、4及び5と実施例6,7及び8とを比較して第3表に掲示した。
【表3】

【0048】
この表の意味している所は、
(1)混合剤の効率は、ビスマスの含有量と共に低下してくるが、同じ成分の合金と比較するとその低下の度合いが緩やかである。
【0049】
(2)薄肉部分のmm当りの球状化物(nodules)の増加量は、合金の場合極めて高いのだが、混合剤の場合には顕著に低い。
【0050】
実施例9
接種混合剤Lにより、鋳鉄1トン当り1.5kgの単位量を用いて、実施例7のテストを繰り替えした。この場合の溶融鋳鉄は、垂直位置に、厚さ6mmと2mmのフィンを有する24mmの厚みのプレートを作るために用いた。
【0051】
観測された黒鉛の球状化密度は、コア部の厚みが24mmの部分で309/mmであった。そして6mmのコア厚の部分では536/mm、2mm厚の所では607/mmの数値を示した。
【0052】
実施例10
接種混合剤 Mを、1トン当たり1.5kgの単位量(dose)を用いて、実施例8の実験を行った。
【0053】
溶融鋳鉄は、垂直位置に厚さ6mmと2mmのフィンを有する厚さ24mmのプレートを作るために用いられた。
【0054】
観測された黒鉛の球状化密度は、コアの厚みが24mmの部分では、266/mm、コア厚が6mmの個所では440/mm、そして厚み2mmのところでは491/mmの数値を示した。
【0055】
実施例11
接種混合剤Nを鋳鉄1トン当たり1.5kg用いて、実施例9の実験を行った。
【0056】
この液状鋳鉄は、厚み24mmで、垂直位置に厚さ6mmと2mmのフィンを有するプレートを作るために用いられた。
【0057】
観測された黒鉛の球状化密度は、24mm厚のコアで247/mmであり、6mm厚部分で383/mm、2mm厚部で422/mmの夫々であった。
【0058】
実施例6〜8及び9と、実施例10〜11の比較を表4に示した。
【表4】

【0059】
この表の示す所は、
(1)使用される接種剤の量を増加し、その一方でビスマス量の少ない物を用いることにより、ビスマス成分による接種剤の効能低下を補償することができる。
【0060】
(2)ビスマス含有量の低い接種剤を多く用いることにより、鋳造物の厚さに関連する単位面積(mm)当りの球状化物(nodule)の発生数の感度もまた低下する。
【0061】
実施例12
接種混合剤Oを鋳鉄1トン当たり1.5kg用いて、実施例10の実験を繰り返した。
【0062】
この溶融鋳鉄は垂直位置に厚さ6mmと2mmのフィンを有する厚さ24mmのプレートを作るために使用された。
【0063】
観測された黒鉛の球状化密度は、コアの厚みが24mmの部位で273/mm、6mmの厚みの部分では457/mm、そして2mm厚のコア領域では517/mmを示した。
【0064】
実施例13
接種混合剤Pを鋳鉄1トン当たり1,5kgの割合で用いて、実施例11の実験を繰り返した。
【0065】
この溶融鋳鉄は,垂直位置にて厚さ6mmと2mmのフィンを有する厚さ24mmのプレートを作成するために用いられた。
【0066】
観測された黒鉛の球状化密度は、24mm厚みのコア部で260/mmであり、同じく6mm厚の所では410/mm,更に同じく2mmの部位では459/mmであった。
【0067】
実施例12及び13の結果は、次の事項を物語っている。ビスマスの比が低い接種剤をも含む、幾つかの接種剤を一つの混合剤として一緒にすることにより、厚さの大変異なる部分を有する鋳鉄鋳造物中に生じる構造物中の不均一性を相当軽減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鋳鉄処理用の接種混合剤であって、少なくとも一種のタイプA合金5〜75重量%と少なくとも一種のタイプB合金25〜95重量%とからなり、前記タイプA合金は、Si/Fe>2のフェロシリコンを主体とし、重量%で、0.005から3%までの希土類元素(RE)、0.05から3%のビスマス、鉛及び/又はアンチモン、3%未満のカルシウムを含み、(Bi+Pb+Sb)/REが0.9〜2.2%であり、前記タイプB合金はシリコン又はSi/Fe>2のフェロシリコンを主体とし、混合剤中の総カルシウム量が0.3〜3%となるようにカルシウムを含んでいる溶融鋳鉄処理用の接種混合剤。
【請求項2】
請求項1の接種混合剤であって、7mm未満のサイズの粒子形状を有するか、又は2.2mm未満の粒子サイズを有する粉末であることを特徴とする接種混合剤。
【請求項3】
請求項1又は2の接種混合剤であって、タイプA合金は、0.3から3%までのマグネシウムを含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された接種混合剤であって、タイプA合金は、0.2から0.6%のビスマスを含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された接種混合剤であって、タイプA合金は2%未満のカルシウムを含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項6】
請求項5の接種混合剤であって、タイプA合金は0.8%未満のカルシウムを含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された接種混合剤であって、ランタンがタイプA合金の希土類元素中に70%を超えていることを特徴とする接種混合剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載された接種混合剤であって、タイプB合金は、0.01%未満のビスマス、鉛、及び/又はアンチモンを含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の接種混合剤であって、総カルシウム含量のうち75〜95%は、タイプB合金から供給されることを特徴とする接種混合剤。
【請求項10】
請求項9の接種混合剤であって、総カルシウム含量のうち80〜90%はタイプB合金から供給されることを特徴とする接種混合剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の接種混合剤であって、ビスマスを総量で0.05〜0.3%含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載の接種混合剤であって、希土類元素を総量で0.04〜0.15%含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項記載の接種混合剤であって、酸素を総量で0.2%未満含むことを特徴とする接種混合剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の接種混合剤であって、20℃の水分と接触させて、24時間内に現われる0〜200μmの範囲内の塊破片として定義される粒子劣化指数が10%未満であることを特徴とする接種混合剤。
【請求項15】
請求項14の接種混合剤であって、粒子劣化指数が5%未満であることを特徴とする接種混合剤。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項記載の接種混合剤であって、ここで使用するタイプB合金又はタイプB合金の1つは、シリコンの含量が70〜80%のフェロシリコンを主体とすることを特徴とする接種混合剤。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項記載の接種混合剤であって、タイプB合金の1つは、シリコンが54%〜68%、カルシウムが25%〜42%のシリコンーカルシウムであることを特徴とする接種混合剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項の接種混合剤を厚さ6mm未満の部分を有する鋳鉄鋳造物を製造するのに用いる、接種混合剤の用途。

【公表番号】特表2007−506000(P2007−506000A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530348(P2006−530348)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001167
【国際公開番号】WO2004/104252
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505432751)プシニー・エレクトロムタルージー (2)
【Fターム(参考)】