説明

ビデオ検査システム

【課題】デジタル放送を受信するDTVボードの動画検査を可能にするビデオ検査システムを提供する。
【解決手段】動画データを含むデータストリームを送出する送出手段と、データストリームをデコードしてビデオデータを出力する検査対象のデコーダボードと、前記デコーダボードを検査するための検査装置からなる動作検査システムであって、検査装置が、ビデオデータに対して所定の演算処理を施す演算手段と、演算結果の期待値を格納する記憶手段と、前期演算結果と前記記憶手段から読み出した期待値を比較する比較手段と、比較結果に基づき良否判定を表示する判定表示手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルTV受信機のビデオデータ検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、デジタルテレビ(DTV)受信機が急速に普及しつつある。DTV受信機には、受信したTS(トランスポートストリーム)からビデオES(エレメンタリストリーム)を抽出し、抽出したビデオESをデコードするDTVデコーダボード、あるいはDTVデコーダモジュールが必ず内蔵されている。以降、DTVデコーダモジュール含め、DTVデコーダボードをDTVボードと称する。DTVボードでは、ビデオESをデコードしてベースバンドのデジタルビデオデータを出力する。このデジタルビデオデータの形式として、色差YCbCr4:4:4フォーマットや4:2:2フォーマット、RGBフォーマットなどがある。
【0003】
DTVボードの動作を検査する手法としては、デジタルビデオデータをアナログ信号に変換して画面に表示させることで、検査員の目視によりチェックすることが一般的だが、検査員が必ず立ち会うことが必要である。
【0004】
さらにDTVボードの機能としてMPEG2デコードがある。MPEG2は、DTVやDVDで採用されている動画圧縮方式であり、DTVボードの検査では、圧縮された動画が正しくデコードされているか、をテストすることが必要である。
【0005】
特許文献1では、検査の自動化を目的としてデジタルCRT信号の自動検査装置を開示している。図7に特許文献1のデジタルCRT信号の自動検査装置の構成を示す。
【特許文献1】特開平2−118689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1によれば、シグネーチャー作成回路によって、検査すべきデジタルCRT信号のシグネーチャーデータが作成され、これがあらかじめ記憶されている期待値データと比較されることにより、デジタルCRT信号の良否が判定されることで、自動検査が行われるとしている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、自動検査装置に対して与えるデジタルCRT信号の画面データの元となる信号の形式や、元となる信号の供給方法について、具体的に言及されていない。さらにDTVボードの検査では、前述したように動画検査が必要であるが、検査装置に動画データが与えられた場合の動画検査の開始方法や検査方法について不明であり、動画検査のための構成としては不十分である、という課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、DTVボードの動画検査を可能にするビデオ検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1にかかるビデオ検査システムは、動画データを含むデータストリームを送出する送出手段と、データストリームをデコードしてビデオデータを出力する検査対象のボードと、前記ボードを検査するための検査装置からなるビデオ検査システムであって、検査装置が、前記ビデオデータに対して所定の演算処理を施す演算手段と、演算結果の期待値を格納する記憶手段と、前期演算結果と前記記憶手段から読み出した期待値を比較する比較手段と、比較結果に基づき良否判定を表示する判定表示手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2にかかるビデオ検査システムでは、請求項1記載のビデオ検査システムにおいて、データストリームが動画データを所定の複数回繰り返し多重されたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3にかかるビデオ検査システムでは、請求項1記載のビデオ検査システムにおいて、送出手段から出力されるデータストリームが末尾に達した場合に、データストリームの先頭に戻って出力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビデオ検査システムは、ストリーム蓄積装置と、変調器と、検査対象となるDTVボードと、演算器、RAM、比較器、フラッシュメモリ、判定結果レジスタ、制御部より構成される検査装置と操作端末とで構成し、動画検査に使うデータストリームの構造を動画データの繰り返しにし、さらにストリーム蓄積装置から送出する際に、データストリームの末尾に達した場合に即座に先頭に戻るようにしたから、データストリームのどのポイントで検査を開始しても検査開始が可能で、かつ、ストリームの蓄積装置及び変調器1セットに対し、同時にNセット(Nは自然数)の検査システムを独立に動作させて動画検査を行うことが可能となる、という効果を有する
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1にかかるビデオ検査システムについて説明する。図1は本実施の形態1によるビデオ検査システムの構成を示す図である。
【0015】
ストリーム蓄積装置101は、動画検査に用いるデータストリームを蓄積し、送出するもので、例えばHDD(ハードディスクドライブ)であったり、メモリボードあったりする。ここでデータストリームをデジタル放送で用いられているMPEG2トランスポートストリームとし、以降、TSと記載する。
【0016】
変調器102は、前述したTSを変調するもので、例えばBS変調器であったり、地上デジタルの変調器であったりする。DTVボード103は、フロントエンド機能、MPEGデコード機能を搭載し、TSを受信し、デコードしてベースバンドのデジタルビデオデータを出力するものである。ベースバンドのデジタルビデオデータの形式としては、背景技術でも説明したように、色差YCbCr4:4:4フォーマットや4:2:2フォーマット、RGBフォーマットなどがある。
【0017】
検査装置104は、DTVボード103から出力される動画データの検査をするものである。操作端末105は、検査装置を制御するもので、例えばPC(Personal Computer)である。検査装置の制御には、例えば、シリアルインタフェースを使えばよい。
【0018】
次に、検査装置104の内部構成について説明する。演算器1001は、動画の画素データに対して所定の演算を行うものである。演算方式としては、CRC(Cyclic Redundancy Check)演算などがあるが、これに限るものではない。また、1つの演算結果を得るために演算を施す範囲として、ビデオ信号の1フレーム分あるいは1ライン分であってもよいし、ビデオ信号がインタレース形式であれば、1フィールド分であってもよい。
【0019】
RAM1002は、演算結果等を一時的に格納するものである。比較器1003は、演算結果と、後述するフラッシュメモリに格納された期待値とを比較し、一致する・しないの判定をするものである。フラッシュメモリ1004は、演算結果の期待値を格納しておくものである。いうまでもなく、期待値は前述した1フィールド、1フレーム、1ラインなどの演算範囲での演算結果である。判定結果レジスタ1005は、期待値比較の結果を反映するものである。1006は制御部で、検査装置104全体を制御するもので、例えばCPUである。
【0020】
さらに本発明における特徴的な構成を説明する。
【0021】
一般的に、検査システムにおいて、変調器102は高価であり、検査装置の1セットずつに1対1対応させて使用することは現実的ではなく、図3に示すように、ストリーム蓄積装置101と、変調器102は1セットに対して検査装置はNセット(Nは自然数)であることが普通である。
【0022】
また、DTVボードには、MPEGデコーダだけでなく、チューナが搭載されていることも多く、チューナをも含めた検査を行えることが望ましい。
【0023】
上記のような状況に対応するために、本発明ではTSのデータ構造を工夫している。図2に本発明のTSのデータ構造を示す。TSには、動画データをMPEG2符号化したビデオESが多重される。厳密にいえばTSには、ビデオESの他、オーディオESや番組情報等が多重されるが、図2では簡単のため、「動画」と記載している。
【0024】
本発明の特徴として一定時間(t秒)の動画ストリームを繰り返し多重する。図2では、例として6個多重している。TSはストリーム蓄積装置101に格納される。ストリーム蓄積装置101からTSが出力される際、TSの末尾に達すると、即座に先頭に戻り、出力される。
【0025】
以上のように構成された、ビデオ検査システムの動作を次に説明する。
【0026】
検査を始める前に、動画データ上で検査の開始位置となるトリガーデータをまず求める。図2に示すTSを一定時間DTVボードに供給し、DTVボード103でMPEGデコードされ、出力されたビデオデータに対して、演算器1001で所定の演算を施し、演算結果のデータをRAMにダンプする。
【0027】
ダンプされた演算結果のデータから動画検査開始のトリガーとするデータパタン、即ちトリガーパターンを制御部1006がRAMより抽出し、抽出したトリガーパターンを比較器にセットする。
【0028】
次に検査のフローについて説明する。図4に本発明の検査フローを示す。
【0029】
まず、期待値比較する映像のフレーム数を端末より入力し、比較器1003にセットする(S101)。次に、TSをDTVボードに入力し、MPEGデコードされたビデオデータを検査装置に供給する(S102)。そして、演算器1001でビデオデータに対し所定の演算を行い、トリガーパターンの出現を待つ(S103)。
【0030】
S103でトリガーパターンが出現したら、比較器1003で、演算結果とフラッシュメモリに格納された期待値の比較を開始する(S104)。そして、トリガーパターンの出現からの比較フレーム数が、S101で設定したフレーム数に達するまで期待値比較を行う(S105)。
【0031】
S105で期待値比較が終了すれば、判定結果を判定結果レジスタ1005にロードする。例えば、判定結果が一致であれば、「0」を、不一致であれば、「1」をロードする(S106)。そして、制御部1006が判定結果レジスタ1005をリードして、「0」であれば「OK」を、「1」であれば「NG」を操作端末画面上に表示する(S107)。
【0032】
ここで、TSのデータ構造として、図2のように同一の動画ストリームを繰り返し多重することで、トリガーパターンは繰り返し回数分だけ出現する。従って、タイミング的にTSのどの部分からDTVボードに入力されても、t秒以内に必ずトリガーパターンは出現し、期待値比較が開始されることになる。1つの動画の時間t秒は検査そのものに要する時間と、検査が開始されるまでの待ち時間として許容される時間とに応じて設定すればよい。
【0033】
また、この手法によれば、図3に示すように、ストリームの蓄積装置及び変調器の1セットに対し、同時にNセットの検査システムを独立に動作させて動画検査を行うことが可能となる。これにより、最小限の設備費用で、最小限の時間での自動動画検査が可能となる。
【0034】
以上のように、実施の形態1によるビデオ検査システムでは、ストリーム蓄積装置101と変調器102と、検査対象となるDTVボード103と演算器1001、RAM1002、比較器1003、フラッシュメモリ1004、判定結果レジスタ1005、制御部1006より構成される検査装置104と操作端末105とで構成し、動画検査に使うTSの構造を図2に示すようにt秒の動画データの繰り返しにして、どの動画データにも検査開始のトリガーとなるトリガーデータが存在するようにし、さらにストリーム蓄積装置から送出する際に、TSの末尾に達した場合に即座に先頭に戻るようにしたから、TSのどのポイントで検査を開始してもt秒以内に、検査開始が可能で、かつ、ストリームの蓄積装置及び変調器1セットに対し、同時にNセットの検査システムを独立に動作させてDTVボードのチューナからMPEGデコーダに対して動画検査を行うことが可能となる。
【0035】
(実施の形態2)
次に実施の形態2について説明する。図5に本発明の実施の形態2の構成を示す。実施の形態2では、DTVボードと検査装置の間のビデオインタフェースをLVDS(Low Voltage Differential Signaling)インタフェースとする点が実施の形態1と異なる。
【0036】
図5において、DTVボード203はLVDSの送信部を含むDTVボードであり、検査装置204はLVDSの受信部を含む検査装置である。LVDSの受信部2001は、DTVボード203より出力された、LVDS信号を受信して、LVDSデコードするものである。LVDSデコード後は、実施の形態1と同様にベースバンドのデジタルビデオデータであり、演算器1001に入力される。
【0037】
なお、検査装置204において、上述したLVDS以外の動作は実施の形態1と同一なので、説明は省略する。
【0038】
(実施の形態3)
次に実施の形態3について説明する。図6に本発明の実施の形態3の構成を示す。実施の形態3では、DTVボードと検査装置の間のビデオインタフェースをHDMI(High-Definition Multimedia Interface)インタフェースとする点が実施の形態1と異なる。
【0039】
図6において、DTVボード303はHDMIの送信部を含むDTVボードであり、検査装置304はHDMIの受信部を含む検査装置である。HDMIの受信部3001は、DTVボードより出力された、HDMI信号を受信するものである。HDMI受信後は、実施の形態1と同様にベースバンドのデジタルビデオデータであり、演算器1001に入力される。
【0040】
検査装置304において、上述したHDMI以外の動作は実施の形態1と同一なので、説明は省略する。
【0041】
なお、上記の各実施の形態の説明では、動画検査について説明したが、本発明のビデオ検査システムは、静止画を用いた検査にも使用することが可能である。
【0042】
また、実施の形態の説明では、ビデオデータに施す演算処理の範囲を1フレームあるいは、1フィールドあるいは1ラインとしたが、1画素として、画素比較してもかまわない。その場合演算器1001はスルー処理で構わない。
【0043】
また、各実施の形態の説明でDTVボードの検査について説明したが、DTVボード以外にもデジタルビデオインタフェースを有するAV機器のボードの検査も可能であり、例えば、DVDレコーダ・DVDプレーヤや、PC向けのデジタルチューナカード、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラのデジタルビデオインタフェースの検査にも用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかるビデオ検査システムはDTVボードの検査設備として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1のビデオ検査システムの構成を示すブロック図
【図2】本発明のTSのデータ構造を示す図
【図3】1台の変調器とN台の検査装置の構成を示す図
【図4】本発明の検査フローを示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2のビデオ検査システムの構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態3のビデオ検査システムの構成を示すブロック図
【図7】従来例の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0046】
101 ストリーム蓄積装置
102 変調器
103 DTVボード
104 検査装置
105 操作端末
1001 演算器
1002 RAM
1003 比較器
1004 フラッシュメモリ
1005 判定結果レジスタ
1006 制御部
201 分配器
203 LVDS送信部を有するDTVボード
204 LVDS受信部を有する検査装置
2001 LVDS受信部
303 HDMI送信部を有するDTVボード
304 HDMI受信部を有する検査装置
3001 HDMI受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画データを含むデータストリームを送出する送出手段と、データストリームをデコードしてビデオデータを出力する検査対象のボードと、前記ボードを検査するための検査装置からなるビデオ検査システムであって、
検査装置が、前記ビデオデータに対してスルー処理を含む所定の演算処理を施す演算手段と、演算結果の期待値を格納する記憶手段と、前期演算結果と前記記憶手段から読み出した期待値を比較する比較手段と、比較結果に基づき前記ボードの良否判定を表示する判定表示手段とを備えることを特徴とするビデオ検査システム。
【請求項2】
データストリームが動画データを所定の複数回繰り返し多重されたものであることを特徴とする請求項1記載のビデオ検査システム。
【請求項3】
送出手段から出力されるデータストリームが末尾に達した場合に、データストリームの先頭に戻って出力されることを特徴とする、請求項1に記載のビデオ検査システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−288634(P2007−288634A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115181(P2006−115181)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】