説明

ビル内設置型機械式駐車設備

【課題】ビル内の設置スペースを縮小でき、且つ、ビルへの悪影響を及ぼすことのないビル内設置型機械式駐車設備を提供する。
【解決手段】ビル内設置型機械式駐車設備は、ビル内の設置スペースSに構築されたフレーム構造体12と、フレーム構造体12と設置スペースSの内面との間に設けられた複数の防振器38とを備え、フレーム構造体12は複数の棚柱14と、フレーム構造体12の水平断面内に実質的に収められ、棚柱14を互いに連結する複数の水平枠組20とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビル内に設置される機械式駐車設備に係わり、特に集合住宅として供せられるビルに好適したビル内設置型機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のビル内設置型機械式駐車設備は通常、ビル内の設置スペース内に構築された鉄骨構造のアウタフレーム構造体と、このアウタフレーム構造体内に組み込まれたインナフレーム構造体とを備え、このインナフレーム構造体に対し、車両の入出庫に必要な種々の機械装置が組み付けられている。
上述したようなビル内設置型機械式駐車設備はそのフレーム構造体がアウタ及びインナの二重構造をなしているため、全体構成が大掛かりなものとなり、その設置は容易ではない。それ故、アウタ及びインナフレーム構造体を1つの機械類組付構造体とした建物組み込み型機械式駐車装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11-280288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の機械式駐車設備はそのフレーム構造体が単一の機械類組付構造体のみであるから、通常の機械式駐車設備に比べて、その設置は容易になり、設置工期もまた大幅な短縮が図られるものと考えられる。
しかしながら、特許文献1の機械類組付構造体は、複数のレール受柱の外側を複数のサポート枠が囲繞する構成であるため、機械類組付構造体の据付空間はレール受柱の外側にサポート枠の配置を許容する余裕がなければならない。このため、このような機械類組付構造体は、その据付空間の水平断面積を通常の機械式駐車設備の場合と比較しても、余り減少させることができない。
【0004】
このことは、特許文献1の機械式駐車装置が集合住宅等のビル内に設置される場合、居住スペースのための領域の拡張を阻害し、好ましいものではない。
また、特許文献1の場合、機械類組付構造体と建物躯体との間に配置される防振器がビルとしての建物躯体に取り付けられているため、建物躯体の強度や耐久性を劣化させる要因ともなり、この点でも好ましいものではない。
【0005】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは設置スペースの減少を十分に図れ、且つ、ビルの強度や耐久性を劣化させるように悪影響をも及ぼすことのないビル内設置型機械式駐車設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明はビル内の設置スペースに構築され、車両を格納するための多数の格納棚を備えるビル内設置型駐車設備において、本発明の機械式駐車設備は、設置スペース内にて自立し且つ格納棚を支持するためのフレーム構造体であって、設置スペースの内面近傍を上下に延び、フレーム構造体の水平な断面サイズを決定する複数の棚柱、及びこれら棚柱の上下方向に所定の間隔を存して配置され、棚柱を相互に連結し且つ前記断面サイズと略同等の大きさを有する複数の水平枠組からなる、フレーム構造体と、棚柱と設置スペースの内面との間に配置され、この内面に直接に押し付けられる防振パッドを有する複数の防振器と備える(請求項1)。
【0007】
上述のビル内設置型機械式駐車設備によれば、設置スペース内にはフレーム構造体の周囲に防振器の配置に必要なギャップが確保されるだけであり、防振器はフレーム構造体から設置スペースの内面への振動の伝達を遮断する。
ビルは集合住宅(請求項2)、特に、高層マンションであるの好ましく、そして、フレーム構造体は、エレベータパーキングの骨組み塔を形成し、車両を昇降させるための昇降シャフトと、この昇降シャフトの両側にそれぞれ配置され、格納棚が上下に並ぶ格納カラムとを含むことができる(請求項3)。
【0008】
この場合、格納カラムはその水平断面が矩形形状をなすとともに、その四隅にそれぞれ位置付けられた棚柱から形成されており、そして、水平枠組は、格納カラムの長辺方向に離間した棚柱間を延びる縦梁部材と、格納カラムの短辺方向に離間した棚柱間を延びる横梁部材と、両格納カラムの昇降シャフト側の棚柱間を延びる連結梁部材とを含む(請求項4)。
【0009】
好ましくは、水平枠組は、各格納カラムの前記縦梁部材間に亘って延び、これら縦梁部材を互いに連結する補強梁部材を更に含む(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜5のビル内設置型機械式駐車設備は、フレーム構造体と設置スペースの内面との間に防振器の配置を許容するだけのギャップのみを確保すればよく、水平断面でみて設置スペースの大きさを減少することができ、ビルが集合住宅である場合、ビル内の居住領域の拡大に大きく寄与する。
また、防振器の防振パッドは設置スペースの内面に直接に押し付けられているだけであるから、設置スペースの内面に対して防振器を取り付けるための施工を必要とせず、ビルの強度や耐久性にとって悪影響を与えるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、高層マンション等の集合住宅として供せられるビルBを示し、このビルB内の設置スペースに機械式駐車設備、いわゆるエレベータパーキング2が構築されている。このエレベータパーキング2はピット6から上方に向けて延び、多数の車両格納段8を有する。これら車両格納段8はエレベータパーキング2の上下方向に所定の間隔を存して配置されている。なお、ビルBの1階部分にはエレベータパーキング2に対する車両の入出口10が確保されている。
【0012】
図2は、ビルB内に確保されたエレベータパーキング2のための設置スペースSを水平断面にて示す。この設置スペースSの水平断面は矩形形状をなし、その四隅に位置付けられた4本の柱Cと、これら柱C間を繋ぐ4個の壁Wにより囲まれ、これら柱C及び壁Wは鉄筋コンクリートからなる。
設置スペースSにはエレベータパーキング2の鉄骨塔を形成するフレーム構造体12が設置されており、このフレーム構造体12は設置スペースS内にて自立している。本実施例の場合、フレーム構造体12は8本の棚柱14を備え、これら棚柱14は設置スペースSの内面近傍に配置され、フレーム構造体12の全高に亘って上下方向に延びている。
【0013】
より詳しくは、棚柱14は図2中、1点鎖線の円内に拡大して示すようにH形鋼材からなり、フレーム構造体12内の中央に昇降シャフト16を確保し且つこの昇降シャフト16の両側に格納カラム18を規定すべく、図2でみて設置スペースSの両側部に4本ずつ分けて配置されている。即ち、昇降シャフト16及び格納カラム18は何れも水平な断面形状を有し、棚柱14は格納カラム18の四隅にそれぞれに位置付けられている。なお、昇降シャフト16及び格納カラム18はフレーム構造体2の全高に亘って上下方向に延びている。
【0014】
フレーム構造体12はその上下方向に所定の間隔を存して多数の水平枠組を有し、図2は、所定レベル位置にある水平枠組20を示す。
水平枠組20は、各格納カラム18において、その一対の長辺を規定する棚柱14間に亘って延び、これら棚柱14を互いに連結する縦梁部材22と、その一対の短辺を規定する棚柱14間に亘って延び、これら棚柱14を互いに連結する横梁部材24と、そして、昇降シャフト16側となる内側の棚柱14のうち、格納カラム18の短辺方向に離間した棚柱14同士をそれぞれ連結する連結梁部材26とからなる。
【0015】
図2から明らかなように、連結梁部材26は対応する棚柱14の外面同士を接続すべく延びているものの、縦梁部材22及び横梁部材24は対応する棚柱14の中心間を結ぶ線分上にそれぞれ配置されており、それ故、水平枠組20はフレーム構造体2の水平断面内に実質的に収められている。
更に、水平枠組20は、各格納カラム18において、隣接する縦梁部材22同士を連結する補強梁部材28を更に有し、これら補強梁部材28は格納カラム18の中央に位置付けられている。なお、水平枠組20を構成する梁部材22〜28は何れもH形鋼材である。
【0016】
昇降シャフト16は車両のための昇降通路を形成し、車両の昇降は車両を矩形のパレットP上に乗せた状態でリフト装置(図示しない)により行われる。なお、リフト装置はフレーム構造体12に取り付けられており、図2中、昇降シャフト16内を昇降するパレットPは2点鎖線で示されている。
各格納カラム18には、前述した車両格納段8(図1)に対応したレベル位置に格納棚がそれぞれ配置されている。格納棚は格納カラム18の長手方向に離間した一対のガイドレール30からなり、これらガイドレール30は対応する側の横梁部材24に沿って延びている。
【0017】
より詳しくは、図3から明らかなように、ガイドレール30は棚柱14から突設したブラケット32上に支持されているか、または、前述した水平枠組20の縦梁部材22上に支持されている。なお、図3中、参照符号34は各格納棚のための仕切外板を示す。
一方、パレットPはその下面の四隅部にタイヤTを備えており、これらタイヤTは格納棚を構成する一対のガイドレール30に対応して配置されている。具体的には、車両を乗せたパレットPがリフト装置により昇降シャフト16内を昇降され、所望の車両格納段8と同一のレベルに位置付けられたとき、車両を乗せたパレットPは、受け渡し装置(図示しない)よりリフト装置上から、一方の側の格納カラム18の対応する格納棚、つまり、その一対のガイドレール30上にタイヤを介して乗り移り、これにより、車両がパレットPを介して一対のガイドレール30上に格納されることになる。
【0018】
なお、受け渡し装置はリフト装置と同様にフレーム構造体12に取り付けられており、図2中、格納状態のパレットPは1点鎖線で示されている。
より詳しくは、リフト装置にパレットPが載置されたとき、パレットPのタイヤTは図2中に2点鎖線で示したリフト装置側の一対のガイドレール36上に配置されている。それ故、パレットPがリフト装置と格納棚のガイドレール30との間にてパレットPの受け渡しがなされるとき、リフト装置のガイドレール36は格納棚のガイドレール30に対し、同一の高さレベルに位置付けられる。
【0019】
更に、図2に示されるように、フレーム構造体2と設置スペースSの内面との間には多数の防振器38が設けられている。具体的には、これら防振器38は前述した各水平枠組20の高さレベルにそれぞれ配置され、フレーム構造体2の水平断面でみて、その四隅に位置する棚柱14毎に2個ずつの組みをなして配置されている。各組みの一方の防振器38は棚柱14と設置スペースSの柱Cとの間に配置され、その他方の防振器38は棚柱14と設置スペースSの壁Wとの間に配置されている。
【0020】
図4は防振器38を具体的に示す。
防振器38は、棚柱14に取り付けられるベース40を備え、このベース40から設置スペースSの内面(柱C又は壁W)に向けてロッド42が突設されている。このロッド42の先端にはベース40と平行な支持プレート44が設けられており、この支持プレート44は一対のボルト挿通孔を有する。これらボルト挿通孔には調整ボルト46の先端部が挿通され、これら調整ボルト46には支持プレート44を挟み付けるように一対の締め付けナット48が螺合されている。
【0021】
一方、調整ボルト46の基端部はパッドリテーナ50に埋め込まれており、パッドリテーナ50は調整ボルト46とは反対側の面にて、弾性材料からなる防振パッド52を保持し、この防振パッド52が設置スペースSの内面(柱C又は壁W)に押し付けて当接されている。即ち、上述の防振器38は、ベース40から防振パッド52までの距離を調整ボルト46に対する支持プレート44の締め付け位置を調整することにより可変可能であるから、棚柱14と柱Cとの間隔と棚柱14と壁Wとの間の間隔が異なっていても、柱C及び壁Wに対し、その防振パッド52を確実に押し当てることかできる。
【0022】
本実施例の場合、図2に示されるように水平枠組20の連結梁部材26と壁Wとの間にも防振器41が2個ずつ設けられ、これら防振器41は棚柱14との間にて連結梁部材26の端部を挟み込むように配置されている。なお、防振器41には前述した防振器38と同様な構造を有する。
上述したエレベータパーキング2は単一のフレーム構造体12を備えていることから、構造的に簡単なものとなり、その構築を容易に行うことができる。また、フレーム構造体12における水平断面の大きさはその四隅に位置する棚柱14により実質的に決定されるから、フレーム構造体12の水平断面、つまり、設置スペースS内でのフレーム構造体12の占有面積を小さく抑えることができ、この結果、設置スペースSの縮小が可能となり、ビルBにおける居住スペースの拡大を図ることができる。
【0023】
また、防振器38はその防振パッド52が設置スペースSの内面に押し付けられるだけであるので、防振器38の取り付けに際し、設置スペースSの内面に孔等の施工を必要とせず、ビルBの強度や耐久性にとって悪影響を及ぼすことはなく、しかも、フレーム構造体12から設置スペースSの内面への振動の伝達を効果的に遮断することができる。
更に、フレーム構造体12を構成する棚柱14は、各格納カラム18の四隅にそれぞれ配置されているから、格納棚を上下に間隔を存して有する格納カラム18、つまり、フレーム構造体12の機械的強度を十分に確保することができる。
【0024】
本発明は、上述の一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、本発明は、エレベータパーキングに限らず、他のタイプのビル内設置型機械式駐車設備にも同様に適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】その内部にエレベータパーキングを設置したビルの概略図である。
【図2】エレベータパーキングのフレーム構造体の水平断面図である。
【図3】図2のフレーム構造体の一部側面図である。
【図4】防振器の具体的な構造を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
2 エレベータパーキング
8 車両格納段
12 フレーム構造体
14 棚柱
16 昇降シャフト
18 格納カラム
20 水平枠組
22 縦梁部材
24 横梁部材
26 連結梁部材
28 補強梁部材
30 ガイドレール(格納棚)
38 防振器
52 防振パッド
B ビル
C 柱(内面)
S 設置スペース
W 壁(内面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル内の設置スペースに構築され、車両を格納するための多数の格納棚を備えるビル内設置型駐車設備において、
前記設置スペース内にて自立し前記格納棚を支持するためのフレーム構造体であって、前記設置スペースの内面近傍を上下に延び、前記フレーム構造体の水平な断面サイズを決定する複数の棚柱、及びこれら棚柱の上下方向に所定の間隔を存して配置され、前記棚柱を相互に連結し且つ前記断面サイズと略同等の大きさを有する複数の水平枠組からなる、フレーム構造体と、
前記フレーム構造体の前記棚柱と前記設置スペースの前記内面との間に配置され、前記前記内面に直接に押し付けられる防振パッドを有する複数の防振器と
を具備したことを特徴とするビル内設置型機械式駐車設備。
【請求項2】
前記ビルは集合住宅であることを特徴とする請求項1に記載のビル内設置型機械式駐車設備。
【請求項3】
前記フレーム構造体は、エレベータパーキングの骨組み塔を形成し、前記車両を昇降させるための昇降シャフトと、この昇降シャフトの両側にそれぞれ配置され、前記格納棚が上下に並ぶ格納カラムとを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のビル内設置型機械式駐車設備。
【請求項4】
前記格納カラムはその水平断面が矩形形状をなすとともに、その四隅にそれぞれ位置付けられた前記棚柱から形成されており、
前記水平枠組は、
前記格納カラムの長辺方向に離間した前記棚柱間を延びる縦梁部材と、
前記格納カラムの短辺方向に離間した前記棚柱間を延びる横梁部材と、
両格納カラムの前記昇降シャフト側の前記棚柱間を延びる連結梁部材と
を含むことを特徴とする請求項3に記載のビル内設置型機械式駐車設備。
【請求項5】
前記水平枠組は、各格納カラムの前記縦梁部材間に亘って延び、これら縦梁部材を互いに連結する補強梁部材を更に含むことを特徴とする請求項4に記載のビル内設置型機械式駐車設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate