説明

ビル総合制御システム

【課題】居住者が特別に意識することなく自室の設備の制御を行うことのできるビル総合制御システムの提供。
【解決手段】複数の住居(1)、及び複数の階床をサービスするエレベータ2を備えた建屋に設けられるビル総合制御システムにおいて、居住者を認証する認証手段(13、15)と、この認証手段の認証結果、及び、エレベータのかご呼び釦14、16と行先釦の少なくとも一方の操作内容により居住者の入退室状況を判断する判断手段(5)と、この判断手段の判断結果に基づき居住者の自室の設備、例えば玄関鍵7、照明器具8、空調設備9の制御を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の階床をサービスするエレベータを備えた建屋に居住する居住者のセキュリティ及び利便性を向上するビル総合制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルやマンションでは、建屋内の設備の制御を自動化する手段として、居住者等のエレベータ利用時に設備を制御する方法がとられている。この種のものとして従来、指紋認証装置により共同玄関の電気錠を解除し、エレベータのかごを共同玄関まで自動的に移送させるものや(例えば、特許文献1参照)、エレベータの各所で自室のセキュリティ状況を確認可能とする機能を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−139241号公報(段落番号0024〜0027、図2)
【特許文献2】特開2006−188294号公報(段落番号0028〜0039、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した前者のものは、制御が共同玄関の電気錠の開閉、及びエレベータのかごを移送することに限定されており、住居者の利便性の向上を図る点でさらに制御の対象を広げることが望まれる。また、後者のものは、居住者がエレベータの走行中または目的階等に下りた際に自室の鍵のかけ忘れを気づいたとき、或いは鍵をかけたか気になったときに、意識的に所定の操作をして自室のセキュリティ状況を確認するものであり、居住者が意識しないとセキュリティ状況が不備のまま外出してしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、居住者が特別に意識することなく自室の設備の制御を行うことのできるビル総合制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、複数の住居、及び複数の階床をサービスするエレベータを備えた建屋に設けられるビル総合制御システムにおいて、居住者を認証する認証手段と、この認証手段の認証結果、及び、前記エレベータのかご呼び釦と行先釦の少なくとも一方の操作内容により居住者の入退室状況を判断する判断手段と、この判断手段の判断結果に基づき居住者の自室の設備の制御を行うことを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明では、認証手段により真正な居住者かを認証するとともに、判断手段は認証手段の認証結果、及び、居住者のかご呼び釦と行先釦の少なくとも一方の操作内容により居住者の入退室状況を判断し、判断結果に基づき居住者の自室の設備の制御を行う。このように、認証手段による認証が行われた状態で居住者がエレベータを利用することで自動的に、即ち居住者が特別に意識することなく自室の設備の制御が行われる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明では、誰もいない状態にある住居に最初に入室する居住者、又は住居から最後に退室する居住者がエレベータを利用したとき、前記自室の設備の制御内容を居住者に報知する報知手段を備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、誰もいない状態にある住居に最初に入室する居住者、又は住居から最後に退室する居住者がエレベータを利用したとき、報知手段により自室の設備の制御内容が報知され、居住者は自室の設備の状態を確実に把握することができる。
【0009】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記自室の設備は、玄関鍵、電気設備、及び空調設備を含んでなることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明では、認証手段による認証が行われた状態で居住者がエレベータを利用することで、自室の玄関鍵、電気設備、及び空調設備の制御が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、居住者が特別に意識することなく自室の設備の制御が行われ、セキュリティ及び利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るビル総合制御システムの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係るビル総合制御システムの一実施形態を示す概略構成図、図2はエレベータのかご内の構成図、図3はビル総合制御システムの処理手順を示すフローチャート、図4はビル総合制御システムの処理手順を示す他のフローチャートである。
【0014】
建屋には、図1に示すように、住居1と、複数の階床をサービスするエレベータ2と、住居1と同一階床に設けられるエレベータ乗場3と、建屋の共同玄関と同一階床に設けられるエレベータ乗場4と、エレベータ2を含む建屋の設備機器の制御を行う制御装置5とが備えられている。なお、図1では便宜上、住居1を1つのみ記載しているが建屋には複数の住居が設けられているとともに、ここでは1つの階床に1つの住居1が設けられた建屋を例として説明する。
【0015】
また、住居1には、玄関ドア6を施錠可能な玄関鍵7、電気設備、例えば照明器具8、及び空調設備9が備えられるとともに、同一階床のエレベータ乗場3には、照明器具10及び空調設備11が設けられ、これらの玄関鍵7、照明器具8、空調設備9、照明設備10及び空調設備11は、制御装置5と接続される各階制御装置12で制御可能となっている。
【0016】
さらに、住居1と同一階床のエレベータ乗場3には、真正な居住者かどうかを認証する認証手段、例えば静脈パターンを読み取りあらかじめ登録した静脈パターンと比較することにより認証を行う静脈認証装置13と、かご呼びを登録するかご呼び釦14とが設けられている。
【0017】
さらにまた、共同玄関と同一階床に設けられるエレベータ乗場4には、真正な居住者かどうかを認証する認証手段、例えば静脈パターンを読み取りあらかじめ登録した静脈パターンと比較することにより認証を行う静脈認証装置15と、かご呼びを登録するかご呼び釦16とが設けられている。
【0018】
また、エレベータのかご17内には、図2に示すように、行先階を登録する行先釦18と、自室の設備の制御内容を報知する報知手段、例えばスピーカ19とが備えられている。
【0019】
さらに、前述した制御装置5は、静脈認証装置13、15の認証結果、及び、エレベータのかご呼び釦13、14と行先釦17の操作内容により居住者の居住者の入退室状況を判断するとともに、この判断結果に基づき各階制御装置12を介して玄関鍵7、照明器具8、空調設備9、照明設備10及び空調設備11が制御されるようになっている。
【0020】
本実施形態にあっては、住居者が外出先から誰もいない状態にある自室、即ち住居1に戻る場合、図3に示すように、住居者は共同玄関と同一階床に設けられるエレベータ乗場4にて、手順S1に示すように静脈認証装置15を操作するとともに、手順S2に示すようにかご呼び釦16を操作する。静脈認証装置15は読み取った静脈パターンをあらかじめ登録した静脈パターンと比較することにより居住者の認証を行う。一方、制御装置5は、手順S3として静脈認証装置15からの情報及び当該住居1の住居者のこれまでのエレベータ利用状況に基づき住居1に先回の退室処理後、最初に入室する居住者かどうかを判断する。
【0021】
この後、居住者がかご17に乗込み、自室のある階床の行先釦18を操作すると、制御装置5は、当該エレベータ利用者が誰もいない状態にある住居1に最初に入室する居住者であることをふまえ、各階制御装置12に最初の入室者信号を送り、各階制御装置12は手順S4として、かご17にいる居住者が自室のある階床に到着する前に玄関鍵7の開錠、照明器具8、10の点灯、及び空調設備9、11の稼働制御を行う。一方、かご17内では手順S5に示すようにスピーカ19から自室の設備の制御内容が報知され、居住者はかご17が目的階に到着時に住居1及び住居1と同一階床のエレベータ乗場3の設備がどのような状態にあるかを把握する。
【0022】
一方、住居者が自室、即ち住居1から外出するとともに、これに応じて住居1が誰もいない状態となる場合、図4に示すように、住居者は住居1と同一階床のエレベータ乗場3にて、手順S11に示すように静脈認証装置13を操作するとともに、手順S12に示すようにかご呼び釦14を操作する。静脈認証装置13は読み取った静脈パターンをあらかじめ登録した静脈パターンと比較することにより居住者の認証を行う。一方、制御装置5は、手順S13として静脈認証装置13からの情報及び当該住居1の住居者のこれまでのエレベータ利用状況に基づき住居1から最後に出室する居住者かどうかを判断する。この後、居住者がかご17に乗込み行先釦18を操作すると、制御装置5は、当該エレベータ利用者が住居1から最後に出室する居住者であることをふまえ、各階制御装置12に最後の退室者信号を送り、各階制御装置12は手順S14として退室処理、即ち、玄関鍵7の施錠、照明器具8、10の消灯、及び空調設備9、11の消勢制御を行う。一方、かご17内では手順S15に示すようにスピーカ19から自室の設備の制御内容が報知され、居住者は住居1及び住居1と同一階床のエレベータ乗場3の設備がどのような状態にあるかを把握する。
【0023】
本実施形態によれば、静脈認証装置13、15による認証が行われた状態で居住者がエレベータを利用することで自動的に、即ち居住者が特別に意識することなく自室の設備、即ち、玄関鍵7、照明器具8、空調設備9、照明設備10及び空調設備11の制御が行われ、セキュリティ及び利便性の向上を図ることができる。
【0024】
なお、前述した実施形態では、認証手段を静脈認証装置としたが、本発明はこれに限らず、IDカード等を用いるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るビル総合制御システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】エレベータのかご内の構成図である。
【図3】ビル総合制御システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】ビル総合制御システムの処理手順を示す他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0026】
1 住居
2 エレベータ
3、4 エレベータ乗場
5 制御装置
6 玄関ドア
7 玄関鍵
8、10 照明器具
9、11 空調設備
12 各階制御装置
13、15 静脈認証装置
14、16 かご呼び釦
17 かご
18 行先釦
19 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住居、及び複数の階床をサービスするエレベータを備えた建屋に設けられるビル総合制御システムにおいて、
居住者を認証する認証手段と、この認証手段の認証結果、及び、前記エレベータのかご呼び釦と行先釦の少なくとも一方の操作内容により居住者の入退室状況を判断する判断手段と、この判断手段の判断結果に基づき居住者の自室の設備の制御を行うことを特徴とするビル総合制御システム。
【請求項2】
誰もいない状態にある住居に最初に入室する居住者、又は住居から最後に退室する居住者がエレベータを利用したとき、前記自室の設備の制御内容を居住者に報知する報知手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のビル総合制御システム。
【請求項3】
前記自室の設備は、玄関鍵、電気設備、及び空調設備を含んでなることを特徴とする請求項1記載のビル総合制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−288957(P2009−288957A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139699(P2008−139699)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】