説明

ピエゾアクチュエータの制御のための方法及び装置

本発明は、ピエゾアクチュエータの制御のための方法及び装置に関している。本発明によれば、ピエゾアクチュエータに印加される電圧が予め設定された時点で検出される。所定の特性量が存在する場合には、この電圧検出及び/又は検出された電圧値の転送が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念によるピエゾアクチュエータの制御のための方法及び装置に関している。
【背景技術】
【0002】
ピエゾアクチュエータの制御のための方法及び装置は、欧州特許出願 EP 11 38 902 明細書から公知である。そこに記載されている手法では、ピエゾアクチュエータに印加される電圧が予め定めた時点で検出され、評価される。この評価は、可能な電圧制御に目を向けて行われるか、及び/又はピエゾアクチュエータの監視のために行われる。
【0003】
ピエゾアクチュエータは、主に内燃機関の燃料調量に用いられるピエゾインジェクタに用いられる。そのようなピエゾインジェクタは、バネでプリテンションをかけられたピエゾセラミックを含んでいる。このピエゾセラミックは、実質的にはバネ−質量体−システムのような状態にある。ピエゾアクチュエータの充放電がクロック制御された電流で行われるならば、実質的に段階的な電圧経過が充放電の際に生じる。ピエゾアクチュエータにおいて電気的なチャージが変わらずに維持される場合でも、ピエゾアクチュエータの圧縮は、電圧低下につながり、伸長は電圧上昇につながる。このことは電圧のもとでの過度な振動変化に結び付く。このことはひいてはプリテンションをかけられたピエゾアクチュエータのバネ−質量体−システムの振動が電圧の過振動を生成する。これは特に充/放電過程中及びその直後に発生する。
【0004】
さらに燃圧も液圧作用によってピエゾアクチュエータに影響を及ぼす。充電過程終了時の噴射によって、あるいは噴射の終了によって燃料内で圧力波が引き起され、これは液圧作用によってピエゾアクチュエータに影響を及ぼし、これも振動や電圧振動を引き起す。
【0005】
充電ないし放電過程の終了の後では、電圧振動は減衰する。それ故に通常は、電圧は放電前ないしは充電前に測定される。測定された電圧値に対する電圧振動の影響は、短い駆動制御持続時間のもとで充電過程と測定時点の間の短い時間間隔に基づいて大きくなる。電圧振動の振幅は、レール圧の増加と共に増大する。それ故に本発明によれば、所定の特性量が存在する場合に、電圧値の検出及び/又はそのさらなる転送が遮断される。
【0006】
発明の利点
所定の特性量が存在するもとで、電圧値の検出ないし転送が阻止されると、電圧検出の精度とそこから導出される特性量の精度が著しく改善される。それによりピエゾアクチュエータの駆動制御の精度が著しく向上され、それに伴って噴射も著しく向上する。このことは、当該内燃機関の排ガス特性、騒音、静寂性の著しい改善にもつながる。
【0007】
本発明の別の有利な実施例及び改善例は従属請求項に記載される。
【0008】
図面
以下の明細書では本発明を図面に示されている実施形態に基づいて詳細に説明する。この場合
図1は、本発明による手法のブロック回路図であり、
図2は、本発明による方法のフローチャートである。
【実施例】
【0009】
図1には、本発明による手段の主要な構成要素が表わされている。出力段、例えば従来技術から公知のような出力段は符号100で表わされている。この出力段は、開ループ制御部110と閉ループ制御部120から信号を印加される。さらに電圧検出部130が設けられており、この電圧検出部130はピエゾアクチュエータにおいて降下する電圧を検出している。電圧Uは論理回路140を介して一方では閉ループ制御部120に供給され、他方では監視部150に供給されている。
【0010】
開ループ制御部110は信号を出力段100に送出し、出力段100は燃料調量の開始と終了を確定している。それらは開ループ制御部110によって図には示されていないセンサ信号と、図には示されていない別の特性量、例えばドライバ所望トルクに基づいて計算される。噴射の開始と終了に基づいて出力段100はピエゾアクチュエータが充電ないし放電される時点を算出する。
【0011】
ピエゾアクチュエータに充電する電圧は制御される。この電圧制御は、特に温度作用や経年劣化及び/又は長期的ドリフトに起因する緩慢な変化を補償制御するために設けられている。これについては、電圧に対する実際値U1が開ループ制御部110によって設定される目標値USと比較され、その後で相応の操作量が出力段100に転送される。本発明によれば、電圧検出部130が当該電圧を検出し、その後で論理回路140に依存して閉ループ制御部120ないしは監視部150に転送される。電圧の評価によって監視部150は、駆動制御の枠内若しくはピエゾアクチュエータの範囲内でエラーを識別する。このことは、検出された電圧が制御量の監視及び/又は形成のために利用されることを意味する。
【0012】
本発明によれば、論理回路140が電圧の検出を困難にするような強い振動の出現の有無を識別している。図1に示されている実施形態では、この論理回路140がさらなる評価のために検出された電圧値の転送線路を遮断する。本発明によれば、論理回路140は既に電圧検出を遮断して、選択された作動状態において何も電圧測定を行わないようにしてもよい。本発明によれば、論理回路は測定のトリガないしは測定された電圧値の利用をレール圧と電圧検出が行われる時点の間隔に依存して、充電過程及び/又は放電過程の終了時点で実施する。
【0013】
本発明による手法は、図2に詳細に示されている。第1のステップ200では、レール圧Pが検出される。ステップ210ではこの検出された圧力信号が修正され、修正されたレール圧PKが求められる。この修正は、特に圧力波を考慮しており、この圧力波は噴射開始時点と噴射終了時点に燃料を通り抜ける。さらなるステップ20では、駆動制御持続時間ADと充電時間Ldが求められる。この駆動制御持続時間ADは、充電過程の開始時点と駆動制御終了時点の間の期間に相応する。充電時間LDは、充電過程の開始時点と充電過程の終了時点の間の間隔に相応する。
【0014】
充電時間は有利には、検出される。すなわち充電過程の終了時点が測定され、開ループ制御部110及び/又は出力段100にある充電開始時点との差分が形成される。また代替的に、開ループ制御部110及び/又は出力段100にある推定充電時間を利用してもよい。駆動制御持続時間ADも開ループ制御部110及び/又は出力段100に存在している。
【0015】
後続のステップ230では、電圧検出の走査時点と充電過程終了時点の間隔(符号Aが付されている)が、駆動制御持続時間ADと充電持続時間LDの間の差分形成によって求められる。
【0016】
次のステップ240では、レール圧と時間差分Aが特性マップ及び/又はテーブルに供給される。前記特性マップないしテーブルには値Yがファイルされており、この値は有利には値1か又は値0をとる。値0は、有利には電圧測定が遮断されていること表わし、値1は、電圧測定がトリガされることを表わす。それに続く問合せステップ250では、前記値Yが値0をとっているかどうかが問合せされる。値0をとっている場合には、ステップ260において電圧測定遮断が送出される。値0をとっていない場合には、ステップ270において電圧測定がトリガされる。電圧測定が遮断されているならば、閉ループ制御部120は、開ループ制御に置換えられるか、及び/又は操作量が凍結される。このことは例えば次のようにして実現可能である。すなわちこれまでの値UIを記憶し、さらに利用することで実現可能である。また代替的に閉ループ制御部120の出力信号を記憶し引き続き利用することも可能である。
【0017】
本発明によれば、燃圧に依存して、及び/又は電圧測定の時点と、充電過程及び/又はアクチュエータの充電過程の終了時点との間隔を特徴付ける特性量に依存して遮断が行われる。遮断のもとでは、遮断されていない最後の電圧値が閉ループ制御及び/又は監視のために用いられる。つまり電圧値は凍結される。さらに遮断の際には遮断前に用いられた最後の操作量が開ループ制御に用いられてもよい。このことは、閉ループ制御の際に、アクチュエータを駆動制御する閉ループ制御部の出力信号が凍結されることを意味する。
【0018】
代替的に図示の特性量に対してはさらに別の特性量が用いられてもよい。それにより例えばトリガが、駆動制御持続時間と充電時間の比に応じて行われ得る。すなわち比の評価が行われる。
【0019】
さらにアクチュエータの駆動制御時間ADだけ、及び/又はインジェクタの吐出持続時間だけが利用されるようにしてもよい。すなわち充電過程の終了時点と放電過程の開始時点の間の間隔か、及び/又は燃料調量の開始時点と終了時点の間の間隔が評価される。それにより、駆動制御持続時間AD及び/又は吐出持続時間が閾値よりも小さい場合には、電圧測定が遮断されたり、及び/又は転送が中断される。有利にはこの閾値はレール圧に依存する。
【0020】
また代替的に駆動制御持続時間AD、吐出持続時間、及び/又は駆動制御持続時間と充電時間の間の比が、前記特性量Aの代わりに処理されるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による手法のブロック回路図
【図2】本発明による方法のフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾアクチュエータを制御するための方法であって、ピエゾアクチュエータに印加される電圧が予め定められた時点で検出される形式の方法において、
所定の特性量が存在する場合に、電圧検出を、及び/又は検出された電圧値の転送を、遮断するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項2】
電圧値が制御量の監視及び/又は制御量の形成のために用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記遮断は、燃圧に依存して行われる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記遮断は、電圧測定の時点とアクチュエータの充電過程終了時点及び/又は放電過程終了時点との間の間隔を表わす特性量に依存して行われる、請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記遮断は、ピエゾアクチュエータの駆動制御持続時間に依存して行われる、請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記遮断は、ピエゾアクチュエータの充電時間に依存して行われる、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記遮断は、ピエゾアクチュエータの駆動制御持続時間と充電時間の間の差分に依存して行われる、請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記遮断は、ピエゾアクチュエータによって操作されるアクチュエータの吐出持続時間に依存して行われる、請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
遮断の際に、遮断されていない最後の電圧値が閉ループ制御及び/又は監視のために用いられる、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
遮断の際に、遮断直前に使用されていた操作量が開ループ制御のために用いられる、請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ピエゾアクチュエータを制御するための装置であって、ピエゾアクチュエータに印加される電圧が予め定められた時点で検出される形式の装置において、
所定の特性量が存在する場合に、電圧検出を、及び/又は検出された電圧値の転送を、遮断する手段が設けられていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−503533(P2006−503533A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543949(P2004−543949)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003230
【国際公開番号】WO2004/036016
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】