説明

ピストンおよびそのピストンを使用した流動体容器

【課題】 十分な液密性を得ながら小さな力でスムースに容器内を移動することが可能であるとともに、ピストンがシリンダ部の底部に到達したときには管部材内部に空気を流入させ、管部材の中に残留する流動体を吐出ポンプから吐出することが可能なピストンと、このピストンを使用した流動体容器を提供すること。
【解決手段】 流動体容器は、その内部に流動体を貯留する流動体貯留部14を形成するシリンダ部12を備えた容器本体10と、流動体を容器本体10の外部に吐出させる吐出ポンプ100と、その中央に流動体を吐出ポンプ100に向かって導通させるための管部材30が貫通する孔部を有し、流動体容器におけるシリンダ部12内に装填され、シリンダ部12を移動するピストン40とを備え、ピストン40の孔部の内周面に、流動体貯留部側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有し、その先端が管部材30と当接する内側弾性部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流動体容器内の気密性を高めるために容器内に装填されるピストンおよびそのピストンを使用した流動体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
その内部にピストンが装填された流動体容器としては、例えば、特許文献1に記載の吐出容器が知られている。特許文献1に記載の発明によれば、吐出容器は、容器内にあらかじめ流動体を充填し、流動体との間に空気が入らないように、容器のシリンダ部の底部から流動体を容器の吐出部に向かって導通させるための管部材が貫通する孔部を備えたピストンをシリンダ部内に装填し、さらに容器の頂部に押圧により内容物を吐出させるための管部材と接続した吐出ポンプを装着している。そして、ピストンは吐出によるシリンダ部内の流動体の減少に伴って、容器の底部に向かって移動する。
【特許文献1】特開2006−124016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来の流動体容器において、シリンダ部内の流動体は、ピストンがシリンダ部の底面に到達するまで減少すると、ピストンがシリンダ部内を移動できなくなるため、吐出ポンプからほとんど吐出されなくなる。このため、吐出ポンプに接続された管部材の内部に相当量の流動体が残留することとなり、使用者はこの流動体を最後まで使いきれないという問題が生じていた。
【0004】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、十分な液密性を得ながら小さな力でスムースに容器内を移動することが可能であるとともに、ピストンがシリンダ部の底部に到達したときには管部材内部に空気を流入させて、管部材の中に残留する流動体を吐出ポンプから吐出することが可能なピストンと、このピストンを使用した流動体容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、その中央に流動体を吐出部に向かって導通させるための管部材が貫通する孔部を備え、その内部に流動体貯留部を形成するシリンダ部を備えた流動体の容器本体内に装填されるピストンであって、前記孔部の内周面に、前記流動体貯留部側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記管部材と当接する内側弾性部が形成されたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のピストンにおいて、前記内側弾性部の先端に管部材当接凸部を形成させた。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のピストンにおいて、前記管部材当接凸部はその断面が略円形である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のピストンにおいて、前記管部材当接凸部は、その断面形状が略多角形であり、当該略多角形の先端で前記管部材の外周面に当接する。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のピストンにおいて、前記シリンダ部内での移動方向と垂直な平面において中央部から外周側に向かって屈曲部が形成され、中央部から外周方向への付勢力を有するとともに、その外周面に、前記流動体貯留部とは逆側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記シリンダ部の内壁と当接する外側弾性部が形成させた。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のピストンにおいて、前記外側弾性部は、一定の距離だけ離隔した位置に一対配置された。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のピストンにおいて、前記外側弾性部の先端にシリンダ部内壁当接凸部を形成させた。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のピストンにおいて、前記シリンダ部内壁当接凸部はその断面が略円形である。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のピストンにおいて、前記シリンダ部内壁当接凸部は、その断面形状が略多角形であり、当該略多角形の先端でシリンダ部の内壁に当接する。
【0014】
請求項10に記載の発明は、その内部に流動体を貯留する流動体貯留部を形成するシリンダ部を備えた容器本体と、流動体を当該容器本体の外部に吐出させる吐出ポンプと、その中央に流動体を吐出ポンプに向かって導通させるための管部材が貫通する孔部を有し、流動体容器におけるシリンダ部内に装填され、当該シリンダ部を移動するピストンとを備えた流動体容器において、前記ピストンの前記孔部の内周面に、前記流動体貯留部側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記管部材と当接する内側弾性部が形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の流動体容器において、前記内側弾性部は、その先端に管部材当接凸部を形成させた。
【0016】
請求項12に記載の発明は、請求項10または請求項11に記載の流動体容器において、前記ピストンは、前記シリンダ部内での移動方向と垂直な平面において中央部から外周側に向かって屈曲部が形成させ、中央部から外周方向への付勢力を有するとともに、その外周面に、前記流動体貯留部とは逆側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記シリンダ部の内壁と当接する外側弾性部が形成させた。
【0017】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の流動体容器において、前記外側弾性部は、一定の距離だけ離隔した位置に一対配置されている。
【0018】
請求項14に記載の発明は、請求項12または請求項13に記載の流動体容器において、前記外側弾性部の先端にシリンダ部内壁当接凸部を形成させた。
【0019】
請求項15に記載の発明は、請求項10乃至請求項14のいずれかに記載の流動体容器において、前記容器本体と前記吐出ポンプとを接続する吐出ポンプにおける蓋部材に、容器本体内に空気を導入するための通気孔を形成させた。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至請求項15に記載の発明によれば、ピストンの孔部に流動体貯留部側に傾斜する内側弾性部を備えることから、管部材の外壁に内側弾性部が液密に当接してピストンをスムースに摺動させることができるとともに、内側弾性部が変形することにより、ピストンと管部材の外壁との間に隙間を生じさせ、管部材の内部に空気を流入させることが可能となる。
【0021】
請求項2乃至請求項9および請求項11乃至請求項15に記載の発明によれば、管部材とピストンとの摩擦を低減し、ピストンをスムースに摺動させることが可能となる。
【0022】
請求項3乃至請求項9および請求項12乃至請求項15に記載の発明によれば、ピストンにおける内側弾性部の管部材当接凸部の形状が、その断面が略円形状であることから、十分な液密性を得ながら、ピストンを流動体容器内において小さな力で移動させることが可能となる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、ピストンにおける孔部の内周面に形成させた内側弾性部の管部材当接凸部の断面形状が、その先端が尖った形状となる略多角形であることから、十分な液密性を得ながら、ピストンを流動体容器内において小さな力で移動させることが可能となる。
【0024】
請求項5乃至請求項9および請求項12乃至請求項15に記載の発明によれば、ピストンにおける屈曲部による付勢力と外側弾性部による液密性により、ピストンと流動体との間に空気を残すことなく流動体容器を組み立てることができるとともに、流動体貯留部に流動体が貯留されているときには、空気がピストンと流動体との間に流入することを防止することが可能となる。
【0025】
請求項6乃至請求項9および請求項13乃至請求項15に記載の発明によれば、ピストンの移動軸のズレを低減し、ピストンをスムースに摺動させることが可能となる。
【0026】
請求項7乃至請求項9および請求項14に記載の発明によれば、シリンダ部の内壁とピストンとの摩擦を低減し、ピストンをスムースに摺動させることが可能となる。
【0027】
請求項8に記載の発明によれば、ピストンにおける外側弾性部のシリンダ部内壁当接凸部の形状が、その断面が略円形状であることから、十分な液密性を得ながら、ピストンを流動体容器内において小さな力で移動させることが可能となる。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、ピストンにおける外側弾性部のシリンダ部内壁当接凸部の形状が、その先端が尖った形状となる略多角形であることから、十分な液密性を得ながら、ピストンを流動体容器内において小さな力で移動させることが可能となる。
【0029】
請求項15に記載の発明によれば、流動体容器本体の変形させることなく、管部材内に空気を流入させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、この発明の実施形態に係る流動体容器の縦断面図である。
【0031】
なお、これらの図のうち、図1は吐出ポンプ100に応力を付与することなく放置した状態を、また、図2はノズルヘッド110における押圧部115が押圧されることにより吐出ポンプ100における流動体貯留部14内に貯留された流動体が吐出口114から吐出される状態を、さらに、図3はノズルヘッド110への押圧が解除されることにより吐出ポンプ100における中間シリンダ部130内に流動体が流入するとともに、流動体貯留部14に貯留された流動体の減少にともなって、容器本体10におけるシリンダ部12に挿入されているピストン40が容器本体10の底面に向かって移動する状態を示している。なお、図1乃至図3における断面については、ピストン40、中間ピストン140および蓋部材120にのみハッチングを付している。
【0032】
また、この明細書においては、図1乃至図3における上下方向を流動体容器における上下方向と規定する。すなわち、この実施形態に係る流動体容器においては、図1に示すノズルヘッド110側を上方向とし、容器本体10の底部13側を下方向とする。
【0033】
この流動体容器は、美容の分野で使用されるヘアージェルやクレンジングジェル等の一般にジェルと呼称されるゲル(gel)、または、栄養クリームやマッサージクリーム等のクリーム状物、あるいは、化粧水等の液体などを貯留するための化粧品用の容器として使用されるものである。なお、この明細書においては、高粘度の液体や半流動体あるいはゾルがジェリー状に固化したゲルやクリーム状物等と通常の液体とを含めて流動体と呼称する。
【0034】
この流動体容器は、その内部に流動体を貯留し、シリンダ部12を有する有底円筒形の容器本体10と、容器本体10の開口部11に配設される吐出ポンプ100と、容器本体10の底部13から吐出ポンプ100に至る流路31を有する管部材30と、容器本体10内のシリンダ部12を摺動するピストン40とを備える。このような構成から、この流動体容器は、容器本体10の底部13とピストン40との間に形成される空間に流動体を貯留する流動体貯留部14が形成される。
【0035】
また、この流動体容器においては、後程詳細に説明する吐出ポンプ100の作用で、流動体貯留部14内に貯留された流動体が容器外に吐出され、流動体貯留部14内の流動体の減少に伴って、ピストン40は容器本体10内を容器本体10の底部13方向に移動する。なお、この容器本体10の底部13は、後に詳述するピストン40における弾性部42の傾斜面に合わせた傾斜を有する。
【0036】
吐出ポンプ100は、ノズルヘッド110と、その中央に孔部111を有し、容器本体10の上部に係合される蓋部材120と、流動体貯留部14の上部に配設された中間シリンダ部130と、中間シリンダ部130内を往復可能に移動する中間ピストン140と、その上部がノズルヘッド110に連結され、その内側に中空状の流動体流通路161が形成された連結筒160と、連結筒160および中間ピストン140の外周部に配設されたコイルバネ113と、中間シリンダ部130内に流動体を流入させる流入弁112から構成される。
【0037】
コイルバネ113は、強力な付勢を得るために、金属製のものが使用される。コイルバネ113は、連結筒160および中間ピストン140の外周部に配設されることから、連結筒160内部を通過する流動体と接触することはない。
【0038】
ノズルヘッド110は、流動体を吐出するための吐出口114と、流動体の吐出時に押圧される押圧部115とを備え、押圧部115の裏面にはバネストッパー150が接続されている。
【0039】
バネストッパー150は、その断面が正面視においてT字状の形状を有する筒状部材であり、図2に示すように、そのT字の横棒に相当するフランジ部にコイルバネ113が当接する。このバネストッパー150の筒部151の内側には、その上側にノズルヘッド110を固着させ、その中間に連結筒160を係止するための凸部152を設け、さらにその下側に連結筒160を挿入している。このため、連結筒160における流動体通路161からノズルヘッド110における吐出口114まで、バネストッパー150の内側の筒部151を介して流動体が通過可能な流路が形成される。
【0040】
中間ピストン140は、樹脂等により一体成型され、その内側に連結筒160を貫通させるための筒部141を有し、その外周には、中間シリンダ部130の内壁に当接させて液密性を維持するための先端が尖った形状を有する凸部143を離隔した位置に一対備える。また、筒部141の外径は、蓋部120における孔部111の内径より大きい径を有するため、中間ピストン140がノズルヘッド側に抜けることがない。さらに、筒部141の内壁面には、連結筒160の外周面と当接する凸部144を形成している。この凸部を形成させたことにより、液密な状態を保ちながら、連結筒160の摺動がスムースに行うことが可能となる。
【0041】
連結筒160は、その内側に中間シリンダ部130内の流動体を外部に流出させるための中空状の流動体流通路161と、流動体流通路161と連結筒160の外部とを連通する流入口166を形成させ、その下部には、流通路開閉部材162を備える。なお、中間ピストン140における筒部141の内壁面に、連結筒160の外周面と当接する凸部144を形成させない場合には、連結筒160の外周側に、中間ピストン140の筒部141の内壁に当接させる凸部を一定間隔離隔した位置に設けてもよい。
【0042】
流通路開閉部材162は、その底面が中間ピストン140の筒部141の内径より大きい直径を有する円形であり、その断面が矩形の形状を有する。流通路開閉部材162の上面平坦部には凸部163を設け、中間ピストン140の下端平坦部145に当接する構成としている。
【0043】
蓋部120の中央にはバネストッパー150における筒部151が通過可能な孔部111を設け、その孔部111から上方に向かってバネストッパー150における筒部151のガイドする筒状の第1ガイド部122と、さらにその外周にノズルヘッドをガイドするための筒状の第2ガイド部123をそれぞれ配設している。蓋部120の下方には、中間シリンダ部130を収容可能な筒部124を形成し、その下端に容器本体10の開口部11と対応する外周を有する平坦部125を形成している。平坦部125には複数の通気孔128が穿設され、平坦部125の外周側部には容器本体10と嵌め合わせ可能な凸部121を設けている。この容器本体10と蓋部120とは、容器本体10の係合凹部15と蓋部120の凸部121とにより接続される。
【0044】
管部材30は、吐出ポンプ100における中間シリンダ部130の下端部に形成された流入口119に接続され、吐出ポンプ100と容器本体10が接続された状態において、容器本体10の底部13に達する長さを有する。吐出ポンプ100の作用により流動体貯留部14における底側の流動体が管部材30内を通過してノズルヘッド110側へと移動する。
【0045】
図4はこの実施形態に係る流動体容器の中間シリンダ部130における流入口119に配設する流入弁112の説明図である。このうち、図4(a)は流入弁112の正面図、図4(b)はその断面図、図4(c)はその底面図である。
【0046】
流入弁112は、中間シリンダ部130の下端部に形成された流入口119と、中間シリンダ部130の流入口119と対応する形状に形成された弁部112aと、中間シリンダ部130と係合する支持部112bと、弁部112aと支持部112bとを連結する弾性および可撓性を有する4個の連結部112cとにより構成される。連結部112cには屈曲部112dを形成することにより、高い可撓性を実現している。このような構成により、流入弁112は、中間シリンダ部130の内部が加圧されたときには、連結部112cの弾性または可撓性により弁部112aが中間シリンダ部130の流入口119と当接して中間シリンダ部130の流入口119を閉止するとともに、中間シリンダ部130の内部が減圧されたときには、連結部112cの弾性または可撓性により弁部112aが中間シリンダ部130の流入口119と離隔して中間シリンダ部130の流入口119を開放する。
【0047】
ピストン40は容器本体10の側面に形成されるシリンダ部12に装填される。このピストン40は、流動体容器のシリンダ部12において高い液密性を得ながら滑らかに移動する構成であることが要求されとともに、流動体容器を組み立てるときには、流動体貯留部14上層の空気を排除し、流動体の液面と密着できる弾性とが要求される。このため、詳細については後述する。
【0048】
このような構成を有する流動体容器の流動体吐出動作について、再度図1乃至図3を用いて説明する。
【0049】
図1に示すように、吐出ポンプ100におけるノズルヘッド110に応力を付与することなく放置した状態において、中間ピストン140における筒部141に挿入された連結筒160の外周面は、筒部141の内壁面に形成させた凸部144と当接している。そして、連結筒160の流通路開閉部材162の上部平面に形成させた凸部163が、中間ピストン140における下部平面145に当接することにより、連結筒160における流入口166を閉止している。
【0050】
また、流通路開閉部材162の上部平面に形成させた凸部163は、中間ピストン140および連結筒160の外周部に配設されたコイルバネ13の上方向への張力により、中間ピストン140における下部平面145への密着が可能となる。
【0051】
このような状態においては、ノズルヘッド110に接続されたバネストッパー150の下端と、中間ピストン140の上端との間に隙間116が形成されている。
【0052】
図2に示すように、ノズルヘッド11に接続されたバネストッパー150の下端と中間ピストン140の上端とが当接するまで、ノズルヘッド110における押圧部115が押圧されると、連結筒160が下降し、連結筒160における流入口166が開口される。このとき、連結筒160は、その外周面が、中間ピストン140における筒部141の内壁面に形成された凸部144を介して当接することから、滑らかに摺動することが可能となる。
【0053】
なお、中間ピストン140における筒部141の凸部144は、その断面が多角形状のものでもよく、また、近接した位置に一対の凸部を形成させてもよい。
【0054】
図2に示すように、さらにノズルヘッド110における押圧部115が押圧されると、この押圧力が中間ピストン140に伝達され、中間ピストン140は、流入口166が開口された状態の連結筒160とともに下降する。これにより、中間シリンダ部130内部が加圧され、中間シリンダ部130内の流動体を、連結筒160の流動体流通路161を介して、ノズルヘッド110の吐出口114より外部へ吐出する。
【0055】
また、ノズルヘッド110における押圧部115に応力が付与される前の状態および応力が付与されている状態において、中間シリンダ部130の下部に配設された弁部材112における弁部112aの縁部分が、流入口119を閉止している。
【0056】
しかる後に、ノズルヘッド11における押圧部111への押圧が解除されると、図3に示すように、コイルバネ13の付勢力により、連結筒160および中間ピストン140が上昇する。
【0057】
このとき、中間シリンダ部130内が減圧されることにより、中間シリンダ部130の下部に配設された弁部材112の可撓性を有する連結部112cは、中間シリンダ部130内に向かう吸引力により変形し、弁部112aの縁部分が中間シリンダ部130の下部に設けられた流入口119から離隔する。このように、中間シリンダ部130における流入口119が開口されると、流動体が流動体貯留部14の内部と中間シリンダ部130の内部の圧力が同等となるまで、管部材30における流路31を介して中間シリンダ部130内に流入する。
【0058】
そして、流動体の中間シリンダ部130内への流入に伴い、流動体貯留部14の液量が減少し、ピストン40が容器本体10内におけるシリンダ12内を下降する。容器本体10内におけるピストン40より上層の空間には、蓋部120における孔部128より空気が供給され、容器本体10内が陰圧となって容器が変形することを防止する。
【0059】
中間ピストン140の上昇は、中間ピストン140の上端部がバネストッパー150の筒部151の内周面に設けた凸部152に係止されることにより制限される。
【0060】
連結筒160は、流通路開閉部材162における凸部163が、中間ピストン140における下部平面145に当接するまで上昇する。
【0061】
そして、図1に示すように、再びノズルヘッド110に接続されたバネストッパー150の下端と、中間ピストン140の上端との間に隙間116が形成され、連結筒160における流入口166が閉止された状態、すなわち、吐出ポンプ100に応力を付与することなく放置した状態に戻る。
【0062】
なお、この実施形態に係る吐出ポンプ100は、バネストッパー150を備えることにより、ノズルヘッド110における押圧部115の裏面に、直接にコイルバネ13が当接することがない。これにより、コイルバネ13の当接によってノズルヘッド110を形成させている部材に傷が入ることを防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0063】
また、この発明の実施形態に係る流動体容器に備える吐出ポンプ100は、以上のような構成を備えることから、簡易な構成でありながら、流動体の漏洩を確実に防止でき、かつ、流動体の吐出動作をスムースに行うことが可能となる。
【0064】
次に、この発明の特徴部分であるピストン40の構成について説明する。
【0065】
図5は、上述したピストン40の説明図である。なお、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図、図5(c)は断面図、図5(d)は底面図をそれぞれ示している。
【0066】
ピストン40には、管部材30を挿通する孔部41が形成される。このピストン40の外周面の上部と下部には、流動体貯留部14側に傾斜するテーパを有する外側弾性部42が環状に形成され、その先端には容器本体10のシリンダ部12の内壁と当接するシリンダ部内壁当接凸部43が形成されている。これらの外側弾性部42は、一定の距離だけ離間した位置に配置されている。
【0067】
このピストン40においては、外側弾性部42が流動体貯留部14とは逆側に傾斜するテーパを有する形状をしているため、流動体貯留部14に流動体を充填した後に容器本体10にピストン40を嵌め合わせる際に、流動体上面とピストン40との間の空気が外側弾性部42のテーパに沿って容器本体10の上部に抜けやすくなり、流動体が空気に触れることによる品質劣化を低減することが可能となる。そして、一定の距離だけ離隔した位置に配置された一対の外側弾性部42の作用により、ピストン40に対する応力の方向にかかわらず、ピストン40の軸芯と流動体容器の軸芯を常に一致させることができ、ピストン40を流動体容器におけるシリンダ部12においてスムースに移動させることが可能となる。
【0068】
この実施形態においては、ピストン40に2個備えられた外側弾性部42の先端の各々にシリンダ12の内周部と液密に当接するシリンダ部内壁当接凸部43を形成させているが、内部に貯留される流動体の性状に応じて、2個備えられた弾性部42のうちのどちらか一方の先端にのみシリンダ部内壁当接凸部43を形成させるようにしてもよい。また、ピストン40に形成される外側弾性部42は、その上部と下部とに形成されるものに限らず、中部に形成されてもよく、二以外の複数個形成されてもよい。そして、外側弾性部42におけるシリンダ部内壁当接凸部43の形成位置は先端に限定されるものではない。
【0069】
図5に示すように、このピストン40の孔部41の内側の下部には、流動体貯留部14側に傾斜するテーパを有する環状の内側弾性部44が形成され、その先端には管部材30と当接する管部材当接凸部45が形成されている。管部材当接凸部45がその先端において、管部材30の外周面に当接することによりピストン40と管部材30を液密に嵌め合わせることが可能となる。また、管部材当接凸部45を形成させたことによりピストン40における孔部41の内周面と管部材30の外周面との接触面積が小さくなるため、ピストン40が摺動するときの摩擦が低減され、ピストン40の摺動がスムースとなる。なお、ピストン40に形成される内側弾性部44は、この実施形態において形成されている位置に限定されない。
【0070】
また、このピストン40は、容器本体10のシリンダ部12内での移動方向と垂直な平面において、外周と同心円状の屈曲部46が形成される弾性部材から構成される。屈曲部46を形成させたことから、シリンダ部12内での移動方向と垂直な平面において、中央部から外周方向への付勢力を有し、シリンダ部12の内周形状の変形にあわせて伸縮可能となっている。このため、シリンダ部12における加工精度が低く、凹凸のある内壁面を有する場合であっても、シリンダ部12とピストン40との当接面において、シリンダ部12の内径の変化の影響を受けることなく十分な気密性と液密性を確保することができる。なお、このピストン40においては、屈曲部46を2個形成させているが、屈曲の数は単数または3個乃至5個程度であってもよい。
【0071】
図6は、この実施形態に係る流動体容器のピストン40における外側弾性部42のシリンダ部内壁当接凸部43付近の断面をさらに拡大して示す説明図である。
【0072】
図6に示すように、このピストン40において、シリンダ部内壁当接凸部43および管部材当接凸部45の断面形状は、略円形の形状である。このような略円形状の断面形状である場合には、シリンダ部内壁当接凸部43はシリンダ12の内壁にその円形の頂点部443で線状に当接することになる。このため、シリンダ12の内壁面に面状に当接する場合よりも摺動するときの摩擦が低減され、ピストン40の摺動がスムースに行える。また、シリンダ12の内壁面とピストン40との間の隙間もできにくくなる。
【0073】
図7(a)乃至図7(c)は、この実施形態に係る流動体容器のピストン40におけるシリンダ部内壁当接凸部43に適用可能な他の凸部断面形状を模式的に示す説明図である。
【0074】
図7(a)に示すように、シリンダ部内壁当接凸部43の形状として、シリンダ12の内壁面に対して線状に当接可能な形状である、その断面が三角形状のものを適用することもできる。この場合には、その三角形の頂点部543により線状にシリンダ12の内壁面に当接する。
【0075】
また、図7(b)および図7(c)に示すように、ピストン40における弾性部42の先端において、図6で示したその断面が略円形の凸形状、または、図7(a)に示した断面が三角形状である形状を2個隣接配置させた凸形状を適用してもよい。図7(b)および図7(c)に示すような凸形状を適用した場合には、ピストン40のシリンダ部内壁当接凸部43における液密性能を二倍にすることが可能となるが、ピストンの摺動性が損なわれることはない。
【0076】
図8は、この実施形態に係る流動体容器のピストン40における孔部41の内周面に形成させた内側弾性部44近辺の断面をさらに拡大して示す説明図である。
【0077】
この実施形態において、内側弾性部44の先端に形成させた管部材当接凸部45の形状には、その断面が略円形である凸形状を適用している。図8に示すように、管部材当接凸部45の断面形状が略円形である場合には、その円形の頂点部643により線状に管部材30の外周面に当接する。なお、この管部材当接凸部45の断面形状として、図7に示したピストン40における外側弾性部42のシリンダ部内壁当接凸部43に適用可能な形状を採用してもよい。
【0078】
図9乃至図11は、この実施形態に係る流動体容器の最終使用状態を示す説明図である。
【0079】
これらの図のうち、図9は、ピストン40が容器本体10の底部13に到達するまで流動体を吐出させて吐出ポンプ100に応力を付与することなく放置した状態を、図10は、ノズルヘッド110における押圧部115が押圧された後に押圧が解除されるとともにコイルバネ113の付勢力により、ノズルヘッド110が出ポンプ100に応力を付与することなく放置した状態の位置に戻ろうとする状態を示す流動体容器の縦断面図である。また、図11は流動体容器の最終使用状態におけるピストン40付近の拡大断面図である、図11(a)は図9と同様の状態を、図11(b)は図10と同様の状態を示す。
【0080】
図9に示すように、この実施形態に係る流動体容器において、容器本体10の底部13の形状をピストン40の下部形状と対応する形状としている。このため、使用により流動体貯留部14に貯留されていた流動体をノズルヘッド100における吐出口114から吐出させてピストン40が容器本体10の底部13に到達した状態では、ピストン40の底面と底部13とが密着し、その間には流動体は存在せず、管部材30の内部の流路31に流動体が残留している。
【0081】
上述した状態で一旦ノズルヘッド110における押圧部115を押圧すると、中間シリンダ部130内の容積の縮小に伴い流動体が吐出される。しかる後にノズルヘッド110への押圧が解除されると、コイルバネ113の付勢力によりノズルヘッド110が吐出ポンプ100に応力を付与することなく放置した状態の位置に戻ろうとする。このとき、当然に中間シリンダ部130内の容積は図9に示す状態の容積まで拡大しようとし、一時的に管部材30および中間シリンダ部130の内部が減圧される。このような圧力変化により、ピストン40における内側弾性部44がその可撓性により図11(a)の状態から図11(b)に示す状態に変形し、管部材30とピストン40との当接面に隙間が生じる。
【0082】
そして、図10に示すように、容器本体10に係合される蓋部120に穿設された通気孔128より容器本体10内に供給された空気が、管部材30とピストン40との当接面に生じた隙間から管部材30の流路31に流入し、管部材30内に残留していた流動体を吐出方向に向かって押し上げる。このため、この実施形態に係る流動体容器においては、当該流動体容器の使用の最終状態において、管部材30内に残留する流動体をノズルヘッド110における吐出口114から吐出させることができ、無駄なく最後まで流動体を使い切ることが可能となる。
【0083】
また、上述した実施形態においては、この発明を化粧品用の容器として使用される流動体容器に適用した場合について説明したが、この発明を食品や飲料等の容器に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】この発明に係る流動体容器の縦断面図である。
【図2】この発明に係る流動体容器の縦断面図である。
【図3】この発明に係る流動体容器の縦断面図である。
【図4】吐出ポンプ100における流入弁112を示す説明図である。
【図5】ピストン40を示す説明図である。
【図6】ピストン40におけるシリンダ部内壁当接凸部43付近の断面をさらに拡大して示す説明図である。
【図7】ピストン40におけるシリンダ部内壁当接凸部43に適用する凸形状の断面を模式的に示す説明図である。
【図8】ピストン40における内側弾性部44近辺の断面をさらに拡大して示す説明図である。
【図9】この発明に係る流動体容器の最終使用状態を示す説明図である。
【図10】この発明に係る流動体容器の最終使用状態を示す説明図である。
【図11】この発明に係る流動体容器の最終使用状態におけるピストン40付近の断面をさらに拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
10 容器本体
11 開口部
12 シリンダ部
13 底部
14 流動体貯留部
15 係合凹部
30 管部材
31 流路
40 ピストン
41 孔部
42 外側弾性部
43 シリンダ部内壁当接凸部
44 内側弾性部
45 管部材当接凸部
46 屈曲部
100 吐出ポンプ
110 ノズルヘッド
111 孔部
112 流入弁
113 コイルバネ
114 吐出口
115 押圧部
116 隙間
119 流入口
120 蓋部材
121 係合凸部
122 第1ガイド部
123 第2ガイド部
124 筒部
125 平坦部
128 通気孔
130 中間シリンダ部
140 中間ピストン
141 筒部
143 凸部
145 下端平坦部
150 バネストッパー
151 筒部
160 連結筒
161 流動体通路
162 流通路開閉部材
163 凸部
166 流入口
443 頂点部
543 頂点部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中央に流動体を吐出部に向かって導通させるための管部材が貫通する孔部を備え、その内部に流動体貯留部を形成するシリンダ部を備えた流動体の容器本体内に装填されるピストンであって、
前記孔部の内周面に、前記流動体貯留部側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記管部材と当接する内側弾性部が形成されたことを特徴とするピストン。
【請求項2】
請求項1に記載のピストンにおいて、
前記内側弾性部の先端に管部材当接凸部を形成させたピストン。
【請求項3】
請求項2に記載のピストンにおいて、
前記管部材当接凸部はその断面が略円形であるピストン。
【請求項4】
請求項2に記載のピストンにおいて、
前記管部材当接凸部は、その断面形状が略多角形であり、当該略多角形の先端で前記管部材の外周面に当接するピストン。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のピストンにおいて、
前記シリンダ部内での移動方向と垂直な平面において中央部から外周側に向かって屈曲部が形成され、中央部から外周方向への付勢力を有するとともに、その外周面に、前記流動体貯留部とは逆側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記シリンダ部の内壁と当接する外側弾性部が形成されたピストン。
【請求項6】
請求項5に記載のピストンにおいて、
前記外側弾性部は、一定の距離だけ離隔した位置に一対配置されたピストン。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のピストンにおいて、
前記外側弾性部の先端にシリンダ部内壁当接凸部を形成させたピストン。
【請求項8】
請求項7に記載のピストンにおいて、
前記シリンダ部内壁当接凸部はその断面が略円形であるピストン。
【請求項9】
請求項7に記載のピストンにおいて、
前記シリンダ部内壁当接凸部は、その断面形状が略多角形であり、当該略多角形の先端でシリンダ部の内壁に当接するピストン。
【請求項10】
その内部に流動体を貯留する流動体貯留部を形成するシリンダ部を備えた容器本体と、流動体を当該容器本体の外部に吐出させる吐出ポンプと、その中央に流動体を吐出ポンプに向かって導通させるための管部材が貫通する孔部を有し、流動体容器におけるシリンダ部内に装填され、当該シリンダ部を移動するピストンとを備えた流動体容器において、
前記ピストンの前記孔部の内周面に、前記流動体貯留部側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記管部材と当接する内側弾性部が形成されたことを特徴とする流動体容器。
【請求項11】
請求項10に記載の流動体容器において、
前記内側弾性部は、その先端に管部材当接凸部を形成させた流動体容器。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の流動体容器において、
前記ピストンは、前記シリンダ部内での移動方向と垂直な平面において中央部から外周側に向かって屈曲部が形成させ、中央部から外周方向への付勢力を有するとともに、その外周面に、前記流動体貯留部とは逆側に傾斜するテーパを形成した環状の形状を有するとともに、その先端が前記シリンダ部の内壁と当接する外側弾性部が形成させた流動体容器。
【請求項13】
請求項12に記載の流動体容器において、
前記外側弾性部は、一定の距離だけ離隔した位置に一対配置された流動体容器。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の流動体容器において、
前記外側弾性部の先端にシリンダ部内壁当接凸部を形成させた流動体容器。
【請求項15】
請求項10乃至請求項14のいずれかに記載の流動体容器において、
前記容器本体と前記吐出ポンプとを接続する吐出ポンプにおける蓋部材に、容器本体内に空気を導入するための通気孔を形成させた流動体容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−173319(P2009−173319A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15798(P2008−15798)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(599047550)
【Fターム(参考)】