説明

ピストンアセンブリおよびそのための輪郭成形されたリストピン穴を有する連接棒

ピストンアセンブリおよびそのための連接棒が提供される。連接棒は、ピストンへの動作可能な取付けのための端部まで延在する細長い本体を有する。端部は、本体の互いに対向する側部間に延在するリストピン穴を有する。リストピン穴は、この側部間に延在する波状の輪郭を有する。波状の輪郭は、リストピン穴の円周方向に沿って延在する谷部を備えた少なくとも1つの凹面と、リストピン穴の円周方向に沿って延在しかつ谷部に対して横方向に互いに反対の側にある頂部を有する凸面とを有する。頂部と谷部とは協働して、リストピン穴とそこを貫通するリストピンとの間の境界面領域にわたった滑らかな荷重分布と均一な潤滑剤流とを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2007年12月10日に出願されその全体がこの明細書中に引用により援用される米国仮特許出願連続番号第61/012,530号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、概して、内燃機関のためのピストンアセンブリに関し、より具体的には、アセンブリ内の連接棒に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
内燃機関において用いるための従来のピストンアセンブリは、概して、エンジンの対応するシリンダにおける燃焼のための反応面を提供するクラウンまたはヘッド部を含む。1対の横方向に間隔をおいて配置されたピンボスが、ピストンヘッドから垂下し、1対の同軸ピン穴で終端する。連接棒の小端部は、リストピンの周りでジャーナル軸受内を回転し、リストピンは、ピン穴内でジャーナル軸受内を回転する。
【0004】
現在の車両エンジン用途では、ますます高まる性能要求に応えるために、ピークシリンダ圧力需要の増加が起こっている。あいにく、ピークシリンダ圧力需要の増加は、連接棒の小端部とリストピンとの間のピボット継手接続にわたる圧力分布の増大をもたらす。連接棒の小端部およびリストピンの合わせ軸受面間の圧力の上昇は、合わせ軸受面の予想耐用年数の短縮をもたらす恐れがある。したがって、軸受面の寿命の短縮を受け容れるのではなく、ピークシリンダ圧力を低下させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピークシリンダ圧力が上昇するとき、典型的に2つの主な不良モードがある。第1に、リストピンと連接棒の小端部との間の合わせ軸受面に、過度の摩擦によりかき傷が付く。過度の摩擦は、図1において先行技術の連接棒小端部PA1に示されるものなど、その全長にわたって接触していることによって、合わせ軸受面の中心領域CRで最大圧力を生じている実質的に真っ直ぐで円筒形の軸受面を有することから悪化する。高い圧力は、潤滑剤を軸方向に外方に矢印Aの方向に追い出す傾向があることによって、中心領域CRにおける潤滑剤の欠乏を引起こす。中心領域CRにおいて潤滑剤の膜が減少されると、摩擦が増加し、これは次に熱を、最終的には軸受面の疲労を生じさせる。第2に、連接棒小端部穴内に典型的に挿入されているブッシングが、応力集中が最も高いその端部または外側端縁などで疲労する。この現象と闘おうとするいくつかの試みが、図2において別の先行技術の連接棒小端部PA2に示されるものなど、連接棒の互いに対向する端部または端縁OE間全体に延在する凸面CSを作製することによって行われている。残念ながら、こういった努力は、外側端縁OEでの圧力を低下させるものの、中心領域CRにおける圧力勾配のますますの増大による中央領域CRにわたる潤滑剤の減少を依然としてもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
この発明の1つの局面に従って構築されたピストンアセンブリは、1対のピンボスが垂下しているピストンクラウンを有し、ピンボスは、軸方向に位置合わせされたピン穴を有する。このアセンブリは、さらに、少なくとも一部がピン穴の中に収容されるような大きさに作られた端部を有するリストピンをさらに含む。なおさらに、このアセンブリは、互いに対向する側部を備えた端部を有し、かつ互いに対向する側部間に延在するリストピン穴がそこを通してリストピンを収容するために形成された連接棒を含む。リストピン穴は、側部間に延在する波状の輪郭を有する。波状の輪郭は、円周方向に延在する少なくとも1つの凹面を有し、この凹面は、隣接し、かつ円周方向に延在し、かつ凹面に対して互いに反対の側にある凸面まで横方向に移行している。
【0007】
この発明の別の局面に従って、内燃機関のための連接棒が提供される。連接棒は、ピストンへの動作可能な取付けのための端部まで延在する細長い本体を有する。端部は、本体の互いに対向する側部間に延在するリストピン穴を有する。リストピン穴は、側部間に延在する波状の輪郭を有する。波状の輪郭は、リストピン穴の円周方向に沿って延在する谷部を備えた少なくとも1つの凹面を有する。凹面は、リストピン穴の円周方向に沿って延在しかつ谷部に対して横方向に互いに反対の側にある頂部を有する凸面まで横方向に移行している。
【0008】
図面の簡単な説明
この発明に従って構築されたピストンアセンブリおよびそのための連接棒のこれらのおよび他の局面、特徴および利点は、以下の現在好ましい実施例および最良の形態の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、ならびに添付の図面に関連して考慮されるとより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】先行技術に従って構築された連接棒の小端部の断面図である。
【図2】先行技術に従って構築された連接棒の小端部の別の断面図である。
【図3】この発明の現在好ましい実施例に従って構築されたピストンアセンブリの部分断面図である。
【図4】図3のアセンブリの連接棒の部分断面図であり、その軸受面にわたる圧力勾配およびオイル流分布が示されている。
【図5】図3の連接棒の側面図である。
【図6】別の現在好ましい実施例に従って構築された連接棒の側面図である。
【図7】さらに別の現在好ましい実施例に従って構築された連接棒の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図3には、この発明の1つの局面に従ったピストンおよび連接棒アセンブリが一般的に10に示されている。ピストンおよび連接棒アセンブリ10は、リストピン15による互いへの動作可能な接続のために構成されたピストン12と連接棒14とを含む。ピストン12は、長手方向の中心軸18に沿って延在する、鋳造されたか鍛造されたかいずれかの本体16を有し、この軸に沿ってピストン12は、シリンダボア(図示せず)内で往復直線運動をする。本体16は、これに限定されないが例として、下側クラウン21に取付けられた上側クラウン20を有するものとして表わされており、1対のピンボス22が、そこから垂下している。連接棒14は、細長い本体23を有し、この本体は、ここでは軸18と一致するものとして示される中心長手方向軸に沿って、ピンボス22間で収容されるような大きさに作られた端部または小端部30まで、およびクランクシャフト(図示せず)への動作可能な取付けのために構成された他方の端部(図示せず)まで延在する。小端部30は、リストピン穴24を有し、このリストピン穴は、連接棒が動作可能にピストン12に取付けされるよう、リストピン15をそこを通して収容するために構成されている。リストピン穴24は、一般的に26に示される輪郭を有し、輪郭26は、連接棒14の互いに対向する側部28、29間に延在する。輪郭26は、少なくとも1つの凹面42を有し、この凹面42は凹面42に対して横方向に互いに反対の側にある凸面44まで移行していて、少なくとも2連の波形状を提供し、この形状は、使用中のリストピン15とリストピン穴24との間での、おおむね滑らかな荷重分布と潤滑剤の均一な流れとを容易にする。したがって、リストピン穴24の輪郭26は、現在のエンジンの高いピークシリンダ圧力に耐える能力をピストンアセンブリ10に与え、その一方でリストピン15と連接棒14との間の望ましい潤滑剤の流れを維持して、それぞれの軸受面が早期に疲労しないようにする。
【0011】
ピストン12の上側クラウン20は、ピストンヘッド構成において知られているように、上側表面32に窪んだ燃焼ボール34を備えるものとして表わされている。しかしながら、ピストン12は、所望される場合、それ以外の実質的に平坦な上側表面を有し得る。外壁またはリングベルト36は、上側表面32から下方へ延在しており、少なくとも1つの環状リング溝がリングベルト36にピストンリング(図示せず)の浮動式収容のために形成されている。一対のスカート部38が上側クラウン20から垂下しており、スカート部38は、シリンダボアにおおむね適合する外側表面を有して、シリンダボアに対して往復直線運動中のピストン12を誘導しやすくする。
【0012】
図4に最もよく示されるように、連接棒14のリストピン穴24は、ピン軸40に沿って、互いに対向する側部28、29間に延在し、ピン軸40は、長手方向中心軸18におおむね垂直である。輪郭26は、互いに対向する側部28、29間に滑らかにかつ連続的に延在、起伏し、図5においては、これに限定されないが例として、ピン穴24の周りに部分的にのみ延在するものとして示されている。たとえば、図5に示されるように、輪郭26は、リストピン穴24の下側180度の弧の周りに、長手方向軸18に対して約90度(3時)の位置41から270度(9時)の位置43までの間に延在し得、リストピン穴24の残りの上側180度の弧は、真っ直ぐな円筒形の構成を有する。当然、輪郭26は、意図される用途のために所望される通りに、図5に示されるものとは円周方向に異なる度数の増分を有するようにも形成され得る。加えて、上記で用いられたものと同じ参照番号を100ずらして用いて同様の特徴を識別する図6に示されるように、連接棒114は、特定の用途のために所望される場合、ピン穴124の円周の周り全体に延在する輪郭126を備えたリストピン穴124を有することができる。したがって、用途要件に応じて、輪郭26、126をそれぞれのリストピン穴24、124の円周の周りに部分的にか全体にかのいずれか、円周の周りの任意の相対度構成で延在するように形成することができる。
【0013】
輪郭26は、リストピン穴24の円周方向に沿って延在する少なくとも1つの凹面42を有し、凹面42は、互いに対向する側部28、29間に位置する。凹面42は、隣接し、リストピン穴24の円周方向に沿って延在し、この凹面42に対して互いに反対の側にある凸面44まで横方向に沿って移行する。凹面42と凸面44とは、リストピン穴24の幅にわたって互いに横方向に移行して形成されていて、滑らかで起伏する表面を提供し、ここでは、正弦曲線状または実質的に正弦曲線状であるものとして示されている。輪郭26の凹凸面42、44は、ここでは誇張された頂部(P)と谷部(V)とを有するものとして示されており、実際には水平面(HP)に対して約5μmから50μmミクロンまでの間で変動する頂部(P)と谷部(V)とを有して形成され、頂部(P)と谷部(V)とが実質的に等分に平面(P)の互いに反対の側に位置している。凹面42は、互いに対向する側部28、29間の中心に位置する中心領域(CR)に形成されて示されており、中心領域(CR)は、長手方向中心軸18によって二等分されている。凸面44は、凹面42から互いに対向する側部28、29に向かって横方向に外方に延在、起伏し、凸面44の各々は、連続的で滑らかな形状で互いに対向する側部28、29まで延在する。したがって、連続的で滑らかな輪郭26は、実質的に正弦曲線状の垂直な矢印45によって表わされるように、リストピン15とリストピン穴24との間の滑らかな荷重分布を生み出し、使用中のリストピン15とリストピン穴24との間での潤滑剤の均一な流れも生み出す。互いに対向する側部28、29間の中心に中心軸18に沿って凹面42が位置しているので、潤滑剤は、図4に示されるように、凸面44から外方へ側部28、29に向かって導かれるのみならず、矢印47によって示されるように、凸面44に対して内方へ中心軸18に向かっても導かれる。
【0014】
輪郭26を、機械加工および/または成型作業などにおいて、鋼鉄などの連接棒14を構築するのに用いられる材料に形成することができる。加えて、輪郭26を、連接棒14の材料に形成する場合、所望するならばたとえばリン酸塩などで輪郭をその後被覆してもよい。また他の場合として、上記で用いたものと同じ参照番号を200ずらして用いて同様の特徴を識別する図7に示されるように、輪郭226は、連接棒214とは別個の材料片として構築されたブッシング46の内径に形成され得る。ブッシング46は、連接棒214にある実質的に円筒形の貫通開口部50内に圧入されるような大きさに作られた実質的に円筒形の外側表面48を有する。ブッシング46の内側輪郭226は、輪郭26、126について上述したように形成することができ、よって、さらに述べることは不要であると思われる。
【0015】
明らかに、この発明の多くの変形例および変更例が上記の教示に鑑みて可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、この発明は、具体的に説明されたのとは異なるように実施されてもよいことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンアセンブリであって、
1対のピンボスが垂下しているピストンクラウンを備え、前記ピンボスは、軸方向に位置合わせされたピン穴を有し、
少なくとも一部が前記ピン穴の中に収容されるような大きさに作られた端部を有するリストピンと、
互いに対向する側部を備えた端部を有し、かつ前記リストピンを収容するためにリストピン穴が前記互いに対向する側部間に延在する連接棒とを備え、前記リストピン穴は、前記側部間に延在する波状の輪郭を有し、前記波状の輪郭は、円周方向に延在する少なくとも1つの凹面を有し、前記凹面は、隣接し、かつ円周方向に延在し、かつ前記凹面に対して互いに反対の側にある凸面まで横方向に移行している、ピストンアセンブリ。
【請求項2】
前記連接棒は、中心長手方向軸に沿って延在し、前記凹面は、前記中心長手方向軸によって実質的に二等分されている、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項3】
前記凸面の各々は、前記互いに対向する側部のうち別個の1つまで延在する、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項4】
前記輪郭は、前記リストピン穴の前記円周の周り全体未満に延在する、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項5】
前記輪郭は、前記リストピン穴の円周の約180度を越えて延在する、請求項4に記載のピストンアセンブリ。
【請求項6】
前記輪郭は、前記リストピン穴の円周の周り全体に延在する、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項7】
前記波状の輪郭は、前記互いに対向する側部間に延在する方向に沿って滑らかである、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項8】
前記輪郭は、前記連接棒とは別個の材料片から構築されたブッシングに形成されている、請求項1に記載のピストンアセンブリ。
【請求項9】
内燃機関のための連接棒であって、
ピストンへの動作可能な取付けのための端部まで延在する細長い本体を備え、前記端部は、前記本体の互いに対向する側部間に延在するリストピン穴を有し、前記リストピン穴は、前記側部間に延在する波状の輪郭を有し、前記波状の輪郭は、前記リストピン穴の円周方向に沿って延在する谷部を有する少なくとも1つの凹面を有し、前記凹面は、前記ピン穴の円周方向に沿って延在する頂部を有する凸面まで横方向に移行しており、前記頂部は、前記谷部に対して横方向に互いに反対の側にある、連接棒。
【請求項10】
前記連接棒は、中心長手方向軸に沿って延在し、前記凹面は、前記中心長手方向軸によって実質的に二等分されている、請求項9に記載の連接棒。
【請求項11】
前記凸面の各々は、前記互いに対向する側部のうち別個の1つに向かって起伏している、請求項9に記載の連接棒。
【請求項12】
前記輪郭は、前記リストピン穴の前記円周の周り全体未満に延在する、請求項9に記載の連接棒。
【請求項13】
前記輪郭は、前記リストピン穴の円周の約180度を越えて延在する、請求項12に記載の連接棒。
【請求項14】
前記輪郭は、前記リストピン穴の円周の周り全体に延在する、請求項9に記載の連接棒。
【請求項15】
前記波状の輪郭は、前記互いに対向する側部間に延在する方向に沿った滑らかな表面に沿って起伏している、請求項9に記載の連接棒。
【請求項16】
前記波状の輪郭は、前記連接棒とは別個の材料片から構築されたブッシングに形成される、請求項9に記載の連接棒。
【請求項17】
前記本体は、前記ブッシングの圧入のための大きさに作られた真っ直ぐで円筒形の開口部を有する、請求項16に記載の連接棒。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−506876(P2011−506876A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538100(P2010−538100)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/086122
【国際公開番号】WO2009/076380
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】