説明

ピストンリング

【課題】自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができるピストンリングを提供すること。
【解決手段】一端部に凸部23を備え、他端部に凹部24を備えるとともに、これら凸部23と凹部24とにより段付き合口22が形成されるピストンリング21であって、前記凸部23と前記凹部24との間に、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンリング、例えば、舶用大型2サイクルディーゼルエンジン等の往復動内燃機関に使用されるピストンリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
往復動内燃機関のピストン(より詳しくは、ピストンクラウン)に装着して燃焼室内の圧力を保持するピストンリングは、ピストンに装着する際、その内径を一旦ピストンの外径以上となるように押し広げる必要があり、また、ピストンに設けられたリング溝に装着された後は、半径方向に膨張することによりシリンダライナの内壁面(内周面)との密着を図るため、一か所に合口と呼ばれる切れ目が設けられている。しかし、トップリング等のいわゆる圧力リングとして、直角合口を備えたピストンリングR2(図29参照)や斜合口を備えたピストンリングR3(図30参照)を採用すると、その合口(隙間)を燃焼ガスが簡単に通り抜けてしまう(素通りしてしまう)。そのため、トップリング等のいわゆる圧力リングには、例えば、特許文献1に開示された段付き合口(ガスタイト合口)を備えたピストンリングR1(図28参照)が一般的に採用されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された段付き合口(ガスタイト合口)を備えたピストンリングR1(図28参照)をトップリングとして使用した場合、段付き合口を備えたピストンリングの合口における気密性は非常に高く、段付き合口を備えたピストンリングの受ける負荷、すなわち、燃焼ガス圧力は、第2段目以降のピストンリング(セカンドリング以降のピストンリング)に比べて(格段に)大きくなる。そのため、トップリングの摩耗が他のピストンリングに比べて(格段に)大きくなる(早くなる)とともに、トップリングと対向するシリンダライナの内壁面においても摩耗が大きくなる(早くなる)という問題点があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解決するピストンリングとして、特許文献2に開示されたピストン・トップ・リングが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−175850号公報
【特許文献2】特表平7−504739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示されたピストン・トップ・リング4では、外周面(摺動面)に設けられた平面視U字形状または平面視V字形状を呈する複数の溝15を介して燃焼ガスがブローバイされるようになっている。そのため、溝15内にクラックが発生して、ピストン・トップ・リング4が折損してしまったり、ピストン・トップ・リング4が摩耗するにつれて溝15の深さが小さくなり、燃焼ガスをブローバイさせる効果がなくなってしまうおそれがある。
また、特許文献2に開示されたピストン・トップ・リング4では、外周面(摺動面)に設けられた溝15の角でシリンダライナの内壁面に掻き傷が付いてしまったり、外周面に耐摩耗コーティングが施されている場合、その耐摩耗コーティングが溝15の角から剥離してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができるピストンリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るピストンリングは、一端部に凸部を備え、他端部に凹部を備えるとともに、これら凸部と凹部とにより段付き合口が形成されるピストンリングであって、前記凸部と前記凹部との間に、一側面に作用するガスを他側面に導くガス通路が設けられている。
【0009】
本発明に係るピストンリングによれば、一側面に作用するガスが、ガス通路を通って他側面に導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0010】
上記ピストンリングにおいて、前記ガス通路が、前記凸部および/または前記凹部に、周方向に沿って形成された切欠きおよび/または周溝および/または前記凸部と前記凹部との間に形成された隙間とされているとさらに好適である。
【0011】
このようなピストンリングによれば、一側面に作用するガスの圧力により、凸部と凹部とが密着した場合でも、一側面に作用するガスを他側面に導くガス通路が確保されることになる。
これにより、凸部と凹部との隙間に関係なく一側面に作用するガスを他側面に導くことができて、凸部と凹部との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
また、例えば、図8に示すピストンリング81等においては、上面にかかるガス圧に対する強度においても有利である。
【0012】
上記ピストンリングにおいて、前記切欠きは、前記凸部を形成する中間水平面の内周端と、前記凸部を形成する中間内周面の上端とを接続する平坦な傾斜面または湾曲面により形成されているとさらに好適である。
【0013】
このようなピストンリング(例えば、図16に示すピストンリング121)によれば、切欠きを加工する上での加工性が最もよくなるので、生産性および作業性を向上させることができ、製造コストを削減することができる。
また、ピストンリングとシリンダライナとの摺動面でないところに周溝を設けているため、溝の角でシリンダライナの内壁面に掻き傷を付けることはない。
【0014】
上記ピストンリングにおいて、前記周溝は、前記凹部を形成する中間水平面の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って前記一側面の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する第1の周溝と、前記凸部を形成する中間水平面の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って他側面の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する第2の周溝とを備えているとさらに好適である。
【0015】
このようなピストンリング(例えば、図22に示すピストンリング151)によれば、周溝を加工する上での加工性が最もよくなるので、生産性および作業性を向上させることができ、製造コストを削減することができる。
また、ピストンリングとシリンダライナとの摺動面でないところに周溝を設けているため、溝の角でシリンダライナの内壁面に掻き傷を付けることはない。
【0016】
上記ピストンリングにおいて、前記凸部と前記凹部との間に形成された隙間は、従来の段付き合口を備えたピストンリングにおける隙間の4倍〜10倍程度となるように設定されているとさらに好適である。
【0017】
このようなピストンリングによれば、一側面に作用するガスの圧力により当該ピストンリングが変形したとしても、凸部と凹部との完全な密着が防止(回避)され、一側面に作用するガスを他側面に導くガス通路が確保されることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0018】
上記ピストンリングにおいて、前記凸部と前記凹部との周方向における重なりは、当該ピストンリングの高さの2倍〜4倍程度となるように設定されているとさらに好適である。
【0019】
このようなピストンリングによれば、ピストンリングおよびリングライナが摩耗しても、前記凸部と前記凹部との周方向における重なりが確保でき、一定のガス通路面積を確保できる。
これにより、ピストンリングおよびシリンダライナ摩耗後も、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0020】
本発明に係るピストンリングセットは、上記いずれかのピストンリングと、直角合口を備えたピストンリングおよび/または斜合口を備えたピストンリングとを備えている。
【0021】
本発明に係るピストンリングセットは、上記いずれかのピストンリングのみを備えている。
【0022】
本発明に係るピストンリングセットによれば、各ピストンリングの寿命が(略)同時にきて、ピストンリングの交換時期が(略)同時にくることになるので、メンテナンス性を向上させることができ、ランニングコストを削減することができる。
【0023】
本発明に係るピストンは、上記いずれかのピストンリングが、リング溝に嵌挿されている。
【0024】
本発明に係るピストンによれば、各ピストンリングの寿命が(略)同時にきて、ピストンリングの交換時期が(略)同時にくることになるので、メンテナンス性を向上させることができ、ランニングコストを削減することができる。
【0025】
本発明に係る内燃機関は、上記ピストンリングセットまたは上記ピストンを具備している。
【0026】
本発明に係る内燃機関によれば、シリンダライナの内壁面の摩耗を低減することができ、シリンダライナの長寿命化(延命化)を図ることができて、ランニングコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るピストンリングよれば、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るピストンリングの斜視図である。
【図2】図1において二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図11】本発明の第9実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図12】本発明の第10実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図13】本発明の第11実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図14】本発明の第12実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図15】本発明の第13実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図16】本発明の第14実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図17】本発明の第15実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図18】本発明の第16実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図19】本発明の第17実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図20】本発明の第18実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図21】本発明の第19実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図22】本発明の第20実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図23】本発明の第21実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図24】本発明の第22実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図25】本発明の第23実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
【図26】舶用大型2サイクルディーゼルエンジンの燃焼室周りの概略断面図である。
【図27】ピストンリング装着部近傍の部分断面図である。
【図28】段付き合口(ガスタイト合口)を備えたピストンリングの合口を拡大して示す図である。
【図29】直角合口を備えたピストンリングの合口を拡大して示す図である。
【図30】斜合口を備えたピストンリングの合口を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るピストンリングについて、図1から図3、図26および図27を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係るピストンリングの斜視図、図2は図1において二点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図、図3は図2のA−A矢視断面図、図26は舶用大型2サイクルディーゼルエンジン(以下、「ディーゼルエンジン1」という。)の燃焼室周りの概略断面図、図27はピストンリング装着部近傍の部分断面図である。
【0030】
図26または図27において、ピストン2には、高さ方向に形成された複数(本実施形態では三つ)のリング溝3,4,5にピストンリング6,7,8がそれぞれ一本ずつ嵌挿されている。また、ピストン2は、ピストンリング6,7,8の外周面6a,7a,8aがシリンダライナ9の内壁面(内周面)9aに摺接しながら往復動するようになっている。ピストン2の上部には、ディーゼルエンジン1の燃焼室10に開口するリング側面隙間11が形成されており、このリング側面隙間11には、燃焼室10からの燃焼ガスが充満している。
【0031】
なお、図26または図27において符号12で示すシリンダヘッドは、シリンダライナ9の上面を覆い、シリンダライナ9およびピストン2とともに燃焼室10を形成している。また、このようなディーゼルエンジン1においては、燃焼室10の中央部に排気弁13が設けられている。そして、ピストン2の出力は、ピストンロッド14から、図示しないクランク軸へと伝達されるようになっている。
【0032】
さて、本実施形態に係るピストンリング21は、例えば、図26および図27において符号6で示すピストンリング(トップリング)として使用されるものであり、段付き合口(ガスタイト合口)22を備えている。
図1から図3の少なくとも一図に示すように、段付き合口22は、凸部(雄部)23と、凹部(雌部)24とを備えている。
凸部23は、ピストンリング21の一端部において、周方向に沿って延びるとともに、凹部24内に嵌り込むようにして形成された突状の部材であり、外周面(摺動面)31と、中間内周面32と、第1の端面33と、中間水平面34と、第2の端面35と、側面(下面:底面)36とを備えている。
【0033】
外周面31は、ピストンリング21の一端部以外の部分(以下、「ピストンリング本体41」という。)における外周面41aと連続して同一面を形成し、かつ、外周面41aとともに摺動面(シリンダライナ9の内壁面9aに対して摺動する面)を形成する水平面である。
中間内周面32は、ピストンリング本体41の内周面41bよりも半径方向外側に位置して、凹部24を形成する中間外周面51と対向する面を形成する水平面である。
【0034】
第1の端面33は、ピストンリング21の一端部の先端(側)において、凹部24を形成する端面53と対向する平面を形成する垂直面である。
中間水平面34は、ピストンリング本体41の高さ方向(幅方向)における中間よりも一側面(上面:頂面)41c側に位置して、凹部24を形成する中間水平面52と対向する平面を形成する水平面であり、ピストンリング本体41の両側面(上面41cおよび下面41d)と平行になるようにして形成されている。
【0035】
第2の端面35は、ピストンリング21の一端部の基端(側)において、中間水平面34の基端と、一側面(上面)41cの先端とを滑らかに接続する湾曲した面である。
側面(下面:底面)36は、ピストンリング本体41における他側面(下面:底面)41dと連続して同一面を形成する水平面である。
【0036】
なお、第1の端面33の上端と、中間水平面34の先端とは、平坦な傾斜面37により接続され、中間水平面34の内周端と、中間内周面32の上端とは、湾曲面38により接続されている。
【0037】
凹部24は、ピストンリング21の他端部において、周方向に沿って延びるとともに、凸部23を受け入れるようにして形成された凹所であり、中間外周面51と、中間水平面52と、端面53とを備えている。
【0038】
中間外周面51は、ピストンリング本体41の外周面41aよりも半径方向内側に位置して、凸部23を形成する中間内周面32と対向する面を形成する水平面である。
中間水平面52は、ピストンリング本体41の高さ方向(幅方向)における中間よりも一側面(上面:頂面)41c側に位置して、凸部23を形成する中間水平面34と対向する平面を形成する水平面であり、ピストンリング本体41の両側面(上面41cおよび下面41d)と平行になるようにして形成されている。
【0039】
端面53は、ピストンリング21の他端部の基端(側)において、凸部23を形成する第1の端面33と対向する平面を形成する垂直面である。
なお、端面53の上端と、中間水平面52の基端とは、湾曲面54により接続され、中間水平面52の内周端と、中間外周面51の上端とは、湾曲面55により接続されている。
【0040】
本実施形態において、中間水平面34と中間水平面52との間の隙間g、湾曲面38と湾曲面55との隙間g、中間内周面32と中間外周面51との間の隙間gは、図28に示す従来の段付き合口(ガスタイト合口)を備えたピストンリングR1における隙間(0.0mm〜0.05mm)の4倍〜10倍程度、すなわち、0.0mm<g≦0.5mm程度となるように設定されている。
また、中間水平面34と中間水平面52、湾曲面38と湾曲面55、および中間内周面32と中間外周面51との周方向における重なり、すなわち、中間水平面34と中間水平面52、湾曲面38と湾曲面55、および中間内周面32と中間外周面51とが周方向に重なる(オーバーラップする)長さは、ピストンリング本体41の高さ(幅)hの2倍〜4倍程度となるように設定されている。
【0041】
本実施形態に係るピストンリング21によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により当該ピストンリング21が変形したとしても、凸部23と凹部24との完全な密着が防止(回避)され、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路(隙間g)が確保されることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るピストンリングについて、図4を参照しながら説明する。図4は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング61は、隙間gの代わりにガス通路(連通路)62,63が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0043】
ガス通路62は、中間水平面52の厚さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の一側面(上面:頂面)41cの側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する(第1の)周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の上方に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0044】
ガス通路63は、中間外周面51の高さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の内周面41bの側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の半径方向内側に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0045】
本実施形態に係るピストンリング61によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路62,63を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0046】
また、本実施形態に係るピストンリング61によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路62,63が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0047】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係るピストンリングについて、図5を参照しながら説明する。図5は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング66は、ガス通路(連通路)62,63の代わりにガス通路(連通路)67,68が設けられているという点で上述した第2実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0048】
ガス通路67は、中間水平面34の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って側面(下面:底面)36の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する(第2の)周溝であり、一端(先端)は、傾斜面37に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間水平面34、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間水平面34に開口している。
【0049】
ガス通路68は、中間内周面32の高さ方向における中央部において、周方向に沿って外周面31の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、第1の端面33に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間内周面32、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間内周面32に開口している。
【0050】
本実施形態に係るピストンリング66によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路67,68を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るピストンリング66によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路67,68が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0052】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態に係るピストンリングについて、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング71は、第2実施形態のところで説明したガス通路(連通路)62,63と、第3実施形態のところで説明したガス通路(連通路)67,68とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0053】
本実施形態に係るピストンリング71によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路62,63,67,68を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るピストンリング71によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路62,63,67,68が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0055】
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態に係るピストンリングについて、図7を参照しながら説明する。図7は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング76は、中間水平面34と中間水平面52との間に隙間gが形成されるとともに、湾曲面38と湾曲面55との間に隙間gが形成されているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0056】
本実施形態に係るピストンリング76によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により当該ピストンリング76が変形したとしても、凸部23と凹部24との完全な密着が防止(回避)され、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路(隙間g)が確保されることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0057】
〔第6実施形態〕
本発明の第6実施形態に係るピストンリングについて、図8を参照しながら説明する。図8は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング81は、中間内周面32と中間外周面51との間に隙間gが形成されるとともに、湾曲面38と湾曲面55との間に隙間gが形成されているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0058】
本実施形態に係るピストンリング81によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により当該ピストンリング81が変形したとしても、凸部23と凹部24との完全な密着が防止(回避)され、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路(隙間g)が確保されることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0059】
〔第7実施形態〕
本発明の第7実施形態に係るピストンリングについて、図9を参照しながら説明する。図9は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング86は、第5実施形態のところで説明した隙間gと、第6実施形態のところで説明した隙間gとが設けられているという点で上述した第5実施形態および第6実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第5実施形態および第6実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、図9には、中間水平面34と中間水平面52との間、湾曲面38と湾曲面55との間、および中間内周面32と中間外周面51との間にそれぞれ隙間gが形成されているもの、すなわち、第1実施形態と同じ形態を有するものを示している。
【0060】
本実施形態に係るピストンリング86によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により当該ピストンリング86が変形したとしても、凸部23と凹部24との完全な密着が防止(回避)され、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路(隙間g)が確保されることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0061】
〔第8実施形態〕
本発明の第8実施形態に係るピストンリングについて、図10を参照しながら説明する。図10は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング91は、隙間gの代わりにガス通路(連通路)92,93が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0062】
ガス通路92は、中間水平面52の厚さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の一側面(上面:頂面)41cの側に彫り込まれた、断面視半円形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の上方に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0063】
ガス通路93は、中間外周面51の高さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の内周面41bの側に彫り込まれた、断面視半円形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の半径方向内側に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0064】
本実施形態に係るピストンリング91によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路92,93を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るピストンリング91によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路92,93が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0066】
〔第9実施形態〕
本発明の第9実施形態に係るピストンリングについて、図11を参照しながら説明する。図11は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング96は、ガス通路(連通路)92,93の代わりにガス通路(連通路)97,98が設けられているという点で上述した第8実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0067】
ガス通路97は、中間水平面34の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って側面(下面:底面)36の側に彫り込まれた、断面視半円形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、傾斜面37に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間水平面34、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間水平面34に開口している。
【0068】
ガス通路98は、中間内周面32の高さ方向における中央部において、周方向に沿って外周面31の側に彫り込まれた、断面視半円形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、第1の端面33に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間内周面32、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間内周面32に開口している。
【0069】
本実施形態に係るピストンリング96によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路97,98を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0070】
また、本実施形態に係るピストンリング96によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路97,98が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0071】
〔第10実施形態〕
本発明の第10実施形態に係るピストンリングについて、図12を参照しながら説明する。図12は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング101は、第8実施形態のところで説明したガス通路(連通路)92,93と、第9実施形態のところで説明したガス通路(連通路)97,98とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0072】
本実施形態に係るピストンリング101によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路92,93,97,98を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0073】
また、本実施形態に係るピストンリング101によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路92,93,97,98が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0074】
〔第11実施形態〕
本発明の第11実施形態に係るピストンリングについて、図13を参照しながら説明する。図13は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング106は、隙間gの代わりにガス通路(連通路)107,108が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0075】
ガス通路107は、中間水平面52の厚さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の一側面(上面:頂面)41cの側に彫り込まれた、断面視三角形状(本実施形態では正三角形状)を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の上方に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0076】
ガス通路108は、中間外周面51の高さ方向における中央部において、周方向に沿ってピストンリング本体41の内周面41bの側に彫り込まれた、断面視三角形状(本実施形態では正三角形状)を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の半径方向内側に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0077】
本実施形態に係るピストンリング106によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路107,108を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0078】
また、本実施形態に係るピストンリング106によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路107,108が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0079】
〔第12実施形態〕
本発明の第12実施形態に係るピストンリングについて、図14を参照しながら説明する。図14は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング111は、ガス通路(連通路)107,108の代わりにガス通路(連通路)112,113が設けられているという点で上述した第11実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0080】
ガス通路112は、中間水平面34の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って側面(下面:底面)36の側に彫り込まれた、断面視三角形状(本実施形態では正三角形状)を呈する周溝であり、一端(先端)は、傾斜面37に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間水平面34、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間水平面34に開口している。
【0081】
ガス通路98は、中間内周面32の高さ方向における中央部において、周方向に沿って外周面31の側に彫り込まれた、断面視三角形状(本実施形態では正三角形状)を呈する周溝であり、一端(先端)は、第1の端面33に開口し、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方に位置する中間内周面32、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置する中間内周面32に開口している。
【0082】
本実施形態に係るピストンリング111によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路112,113を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0083】
また、本実施形態に係るピストンリング111によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路112,113が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0084】
〔第13実施形態〕
本発明の第13実施形態に係るピストンリングについて、図15を参照しながら説明する。図15は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング116は、第11実施形態のところで説明したガス通路(連通路)107,108と、第12実施形態のところで説明したガス通路(連通路)112,113とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0085】
本実施形態に係るピストンリング116によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路107,108,112,113を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るピストンリング116によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路107,108,112,113が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0087】
〔第14実施形態〕
本発明の第14実施形態に係るピストンリングについて、図16を参照しながら説明する。図16は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング121は、隙間gの代わりに切欠き122が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0088】
切欠き122は、中間水平面34の内周端と中間内周面32の上端とを接続する平坦な傾斜面または湾曲面により形成されており、一端(先端)は、傾斜面37まで延び、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置するところまで延びている。
【0089】
本実施形態に係るピストンリング121によれば、一側面41cに作用するガスが、切欠き122を形成する傾斜面または湾曲面と、凹部24との間に形成された隙間(ガス通路)を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0090】
また、本実施形態に係るピストンリング121によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導く隙間(ガス通路)が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0091】
〔第15実施形態〕
本発明の第15実施形態に係るピストンリングについて、図17を参照しながら説明する。図17は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング126は、隙間gの代わりに切欠き127が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0092】
切欠き127は、中間内周面32の下端と側面36の内周端とを接続する平坦な傾斜面または湾曲面により形成されており、一端(先端)は、第1の端面33まで延び、他端(基端)は、(先)端面25(図2参照)の下方、または(先)端面25(図2参照)よりも湾曲面35(図2参照)の側に位置するところまで延びている。
【0093】
本実施形態に係るピストンリング126によれば、一側面41cに作用するガスが、切欠き127を形成する傾斜面と、凹部24との間に形成された隙間(ガス通路)を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0094】
また、本実施形態に係るピストンリング126によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導く隙間(ガス通路)が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0095】
〔第16実施形態〕
本発明の第16実施形態に係るピストンリングについて、図18を参照しながら説明する。図18は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング131は、第14実施形態のところで説明した切欠き122と、第15実施形態のところで説明した切欠き127とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0096】
本実施形態に係るピストンリング131によれば、一側面41cに作用するガスが、切欠き122を形成する傾斜面または湾曲面と、凹部24との間に形成された隙間(ガス通路)、および切欠き127を形成する傾斜面または湾曲面と、凹部24との間に形成された隙間(ガス通路)を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0097】
また、本実施形態に係るピストンリング131によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導く隙間(ガス通路)が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0098】
〔第17実施形態〕
本発明の第17実施形態に係るピストンリングについて、図19を参照しながら説明する。図19は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング136は、隙間gの代わりにガス通路(連通路)137が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0099】
ガス通路137は、中間水平面52の内周縁と、中間外周面51の上端とを結ぶとともに、周方向に沿ってピストンリング本体41の一側面(上面:頂面)41cおよび内周面41bの側に彫り込まれた、断面視3/4円形状を呈する周溝であり、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)に開口し、他端(基端)は、傾斜面37の上方に位置するピストンリング本体41の他端部、または傾斜面37よりも湾曲面54の側に位置するピストンリング本体41の他端部に開口している。
【0100】
本実施形態に係るピストンリング136によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路137を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0101】
また、本実施形態に係るピストンリング136によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路137が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0102】
〔第18実施形態〕
本発明の第18実施形態に係るピストンリングについて、図20を参照しながら説明する。図20は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング141は、隙間gの代わりに切欠き142が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0103】
切欠き142は、中間外周面51の下端と、ピストンリング本体41の他端部における他側面(下面:底面)41dの外周端とを接続する平坦な傾斜面または湾曲面により形成されており、一端(先端)は、他端部の(先)端面25(図2参照)の下方まで延び、他端(基端)は、第1の端面33の半径方向内側、または第1の端面33よりも端面53の側に位置するところまで延びている。
【0104】
本実施形態に係るピストンリング141によれば、一側面41cに作用するガスが、切欠き142を形成する傾斜面または湾曲面と、凹部24との間に形成された隙間(ガス通路)を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0105】
また、本実施形態に係るピストンリング141によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導く隙間(ガス通路)が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0106】
〔第19実施形態〕
本発明の第19実施形態に係るピストンリングについて、図21を参照しながら説明する。図21は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング146は、第17実施形態のところで説明したガス通路137と、第18実施形態のところで説明した切欠き142とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0107】
本実施形態に係る作用効果は、第17実施形態および第18実施形態のところで説明した作用効果と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0108】
〔第20実施形態〕
本発明の第20実施形態に係るピストンリングについて、図22を参照しながら説明する。図22は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング151は、第2実施形態のところで説明したガス通路62と、第3実施形態のところで説明したガス通路67とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0109】
本実施形態に係るピストンリング151によれば、一側面41cに作用するガスが、ガス通路62,67を通って他側面41dに導かれることになる。
これにより、自身の受ける負荷を低減させて、自身の摩耗を低減させることができる。
【0110】
また、本実施形態に係るピストンリング151によれば、一側面41cに作用するガスの圧力により、凸部23と凹部24とが密着した場合でも、一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くガス通路62,67が確保されることになる。
これにより、凸部23と凹部24との隙間に関係なく一側面41cに作用するガスを他側面41dに導くことができて、凸部23と凹部24との間に形成される隙間の管理を不要とすることができる。
【0111】
〔第21実施形態〕
本発明の第21実施形態に係るピストンリングについて、図23を参照しながら説明する。図23は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング156は、第14実施形態のところで説明した切欠き122と、第17実施形態のところで説明したガス通路137とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0112】
本実施形態に係る作用効果は、第14実施形態および第17実施形態のところで説明した作用効果と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0113】
〔第22実施形態〕
本発明の第22実施形態に係るピストンリングについて、図24を参照しながら説明する。図24は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング161は、第15実施形態のところで説明した切欠き127と、第18実施形態のところで説明した切欠き142とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0114】
本実施形態に係る作用効果は、第15実施形態および第18実施形態のところで説明した作用効果と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0115】
〔第23実施形態〕
本発明の第23実施形態に係るピストンリングについて、図25を参照しながら説明する。図25は本実施形態に係るピストンリングの要部を拡大して示す斜視図であって、図3と同様の図である。
本実施形態に係るピストンリング166は、第14実施形態のところで説明した切欠き122と、第15実施形態のところで説明した切欠き127と、第17実施形態のところで説明したガス通路137と、第18実施形態のところで説明した切欠き142とが設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
【0116】
本実施形態に係る作用効果は、第14実施形態、第15実施形態、第17実施形態、および第18実施形態のところで説明した作用効果と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0117】
なお、上述した実施形態において切欠きを加工する上での加工性が最もよいのは、図16に示す第14実施形態のものであり、周溝を加工する上での加工性が最もよいのは、図22に示す第20実施形態のものである。
【0118】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、上述した実施形態を適宜必要に応じて組み合わせて実施したり、上述した実施形態を適宜必要に応じて変形・変更実施することもできる。
【0119】
さらに、本発明に係るピストンリングは、トップリングとして使用される以外にも、第2段目以降のピストンリング(セカンドリング以降のピストンリング)にも使用することができる。
【0120】
さらにまた、上述した実施形態では、高さ方向に三つのリング溝3,4,5が形成されたピストン2を一具体例として挙げて説明したが、本発明に係るピストンはこれに限定されるものではなく、高さ方向に一つ、二つ、四つ以上のリング溝が形成されたピストンであってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)
2 ピストン
3 リング溝
4 リング溝
5 リング溝
21 ピストンリング
22 段付き合口
23 凸部
24 凹部
32 中間内周面
34 中間水平面
51 中間外周面
52 中間水平面
61 ピストンリング
62 (第1の)周溝(ガス通路)
63 周溝(ガス通路)
66 ピストンリング
67 (第2の)周溝(ガス通路)
68 周溝(ガス通路)
71 ピストンリング
76 ピストンリング
81 ピストンリング
86 ピストンリング
91 ピストンリング
92 周溝(ガス通路)
93 周溝(ガス通路)
96 ピストンリング
97 周溝(ガス通路)
98 周溝(ガス通路)
101 ピストンリング
106 ピストンリング
107 周溝(ガス通路)
108 周溝(ガス通路)
111 ピストンリング
112 周溝(ガス通路)
113 周溝(ガス通路)
116 ピストンリング
121 ピストンリング
122 切欠き
126 ピストンリング
127 切欠き
131 ピストンリング
136 ピストンリング
137 周溝(ガス通路)
141 ピストンリング
142 切欠き
146 ピストンリング
151 ピストンリング
156 ピストンリング
161 ピストンリング
166 ピストンリング
g 隙間
h ピストンリングの高さ(幅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に凸部を備え、他端部に凹部を備えるとともに、これら凸部と凹部とにより段付き合口が形成されるピストンリングであって、
前記凸部と前記凹部との間に、一側面に作用するガスを他側面に導くガス通路が設けられていることを特徴とするピストンリング。
【請求項2】
前記ガス通路は、前記凸部および/または前記凹部に、周方向に沿って形成された切欠きおよび/または周溝および/または前記凸部と前記凹部との間に形成された隙間からなることを特徴とする請求項1に記載のピストンリング。
【請求項3】
前記切欠きは、前記凸部を形成する中間水平面の内周端と、前記凸部を形成する中間内周面の上端とを接続する平坦な傾斜面により形成されていることを特徴とする請求項2に記載のピストンリング。
【請求項4】
前記周溝は、前記凹部を形成する中間水平面の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って前記一側面の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する第1の周溝と、前記凸部を形成する中間水平面の厚さ方向における中央部において、周方向に沿って他側面の側に彫り込まれた、断面視矩形状を呈する第2の周溝とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のピストンリング。
【請求項5】
前記凸部と前記凹部との間に形成された隙間は、従来の段付き合口を備えたピストンリングにおける隙間の4倍〜10倍程度となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載のピストンリング。
【請求項6】
前記凸部と前記凹部との周方向における重なりは、当該ピストンリングの高さの2倍〜4倍程度となるように設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のピストンリング。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のピストンリングと、
直角合口を備えたピストンリングおよび/または斜合口を備えたピストンリングと、を備えていることを特徴とするピストンリングセット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のピストンリングのみを備えていることを特徴とするピストンリングセット。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のピストンリングが、リング溝に嵌挿されていることを特徴とするピストン。
【請求項10】
請求項7または8に記載のピストンリングセット、もしくは請求項9に記載のピストンを具備していることを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−180878(P2012−180878A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43268(P2011−43268)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】