説明

ピストン式等方圧加圧装置

【課題】圧力容器内の圧媒の圧縮により被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンを圧力容器に挿入する際の芯調整とシール部の潤滑が容易に行われるピストン式等方圧加圧装置を提供する。
【解決手段】加圧シリンダ5内の加圧ピストン6の伸長によりピストン3を圧力容器1に挿入して、被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置において、前記加圧ピストン6とピストン3は密着分離自在とされ、前記ピストン3はピストンホルダ7を介してピストン3の軸心調整のための変位を許容する様に支持され、前記ピストン3が加圧ピストン6と非接触の状態で、ピストン3の自重を支持する反力を発生させる自重支持手段10を前記ピストンホルダ7内に備え、前記ピストン3を圧力容器1内に挿入する際に受ける抵抗によって、前記ピストン3の軸心C2が圧力容器1の軸心C1に一致する様に自動調芯されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧シリンダ内の加圧ピストンの伸長により加圧ピストンに連動するピストンを圧力容器に挿入して、この圧力容器内の圧媒の圧縮により被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置の改善に関し、より詳しくは、前記ピストンを圧力容器に挿入する際の芯調整を改善し、前記ピストンと圧力容器の焼付きを防止可能なピストン式等方圧加圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスや金属粉末の成形、食品類の殺菌や滅菌あるいは竹や木材等の天然素材の緻密化等には、加圧ピストンに連動するピストンを圧力容器に挿入し、この圧力容器内の圧媒を圧縮して、前記圧力容器内に収納された前記被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置が用いられている。
【0003】
この様なピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンを圧力容器に挿入する際、両者間の芯調整(芯合せ)が不良のため、摺動部に焼付きを生じるという問題があった。そこで先ず、この様な問題点を解決するための従来例に係るピストン式等方圧加圧装置について、以下添付図6を参照しながら説明する。図6は、従来例に係るピストン式等方圧加圧装置の一実施例を示し、図(a)は加圧処理中、図(b)は無負荷状態の各立断面図である。
【0004】
この従来例に係るピストン式等方圧加圧装置は、加圧シリンダピストン33を圧力容器30に挿入して、この圧力容器30内の流体の圧縮を介して被処理物を等方圧で加圧処理すると共に、加圧に伴う軸方向反力を担持するプレスフレーム34を備えたものである。そして、前記加圧シリンダピストン33のピストンは、圧力容器30に容器軸方向移動自在として嵌挿されている可動ピストン31と、この可動ピストン31を加圧する加圧ピストン33Aとからなり、両ピストン31,33Aは接合分離自在とされている(特許文献1参照)。
【0005】
本従来例に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストンが、可動ピストン31と加圧ピストン33Aに分割された構造であるため、両ピストン31,33Aの接合部に自由度(ガタ)があれば、可動ピストン31が圧力容器30内を摺動する際に芯調整が容易になされ、摺動部の焼付きを防止できる。
【0006】
しかしながら、上記従来例においては、可動ピストン31が圧力容器30内を摺動して加圧するため、摺動ストロークが長くなって、シール部と圧力容器30の内壁の焼付きを防止するために潤滑が不可欠になる(可動ピストンの毎往復、もしくは複数往復毎の潤滑が望ましい)。また、前記シール部の潤滑を行うには、シール部を容器30の開口から完全に抜取る必要があり、その場合、従来例による構造では、図6に示す如く、前記ピストンを圧力容器30の下側に配置した場合は、シール部の潤滑の度に容器30内部の流体を完全に排除する必要があるため非効率的である。
【0007】
仮に、前記ピストンを圧力容器30の上側に配置した場合でも、可動ピストン31と加圧シリンダピストン33を安定的に連結させる機構が必要となって、構造が複雑化する。また、両ピストン31,33Aの接触面にその様な機構を設けることにより、有効接触面積の減少となり、使用圧力が高い場合は、接触面圧が高くなり、構造上無理が生じる。この問題は、前記ピストンを圧力容器30の上側に配置した場合でも同様である。
【0008】
使用圧力が高くなると、圧媒の圧縮率が大きくなるため、ピストンの摺動ストロークが長くなる(即ち、シール部潤滑が重要になる)傾向にあり、現実的には益々採用の難しい構造となる。
【特許文献1】特開平7−164194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、加圧シリンダ内の加圧ピストンの伸長により加圧ピストンに連動するピストンを圧力容器に挿入して、この圧力容器内の圧媒の圧縮により被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンを圧力容器に挿入する際の芯調整とシール部の潤滑が容易に行われるピストン式等方圧加圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、加圧シリンダ内の加圧ピストンの伸長により加圧ピストンに連動するピストンを圧力容器に挿入して、この圧力容器内の圧媒の圧縮を介して被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置において、前記加圧ピストンとピストンはピストンホルダを介して密着分離自在とされ、前記ピストンは前記ピストンホルダを介してピストンの軸心調整のための変位を許容する様に支持され、前記ピストンが加圧ピストンと非接触の状態で、ピストンを支持するためにピストンの自重に対抗する反力を発生させる自重支持手段を前記ピストンホルダ内に備え、前記ピストンを圧力容器内に挿入する際に受ける抵抗によって前記加圧ピストンとピストンは密着され、前記ピストンの軸心が圧力容器の軸心に一致する様に自動調芯されてなることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、請求項1に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記自重支持手段がばねによる反力を発生させてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項3に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、請求項1または2に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンが前記自重支持手段と並列して軸受に支持され、前記圧力容器に非接触な状態において回転自在とされてなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項4に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、請求項3に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンが、前記軸受またはこの軸受との間に介在する支持部材と、テーパ面を有して接触されてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項5に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、前請求項3または4に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンが前記軸受に支持された状態で、回転駆動機構により自動回転されてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項6に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、請求項3乃至5のうちの何れか一つの項に記載のピストン式等方圧加圧装置において、回転中の前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、水平移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項7に係るピストン式等方圧加圧装置が採用した手段は、請求項1または2に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、シール部の周囲を回転移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、加圧ピストンとピストンはピストンホルダを介して密着分離自在とされ、前記ピストンは前記ピストンホルダを介してピストンの軸心調整のための変位を許容する様に支持され、前記ピストンが加圧ピストンと非接触の状態で、ピストンを支持するためにピストンの自重に対抗する反力を発生させる自重支持手段を前記ピストンホルダ内に備えるので、前記自重支持手段によってピストンの重量抵抗が軽減され、圧力容器の軸心方向に微動自在となる。
【0018】
そのため、
前記ピストンを圧力容器内に挿入する際に受ける抵抗(接触抵抗及び圧媒の圧縮圧)によって前記加圧ピストンとピストンは密着されると共に、前記ピストンの圧力容器内への挿入が進行するのに伴って、ピストンの軸心が圧力容器の軸心に一致する様に芯調整が自動的にかつ確実に行われる。その結果、前記ピストンと圧力容器とのスムーズな摺動がなされ、前記ピストンと圧力容器の焼付き防止による接触部品やシール部材の寿命の向上が図られる。
【0019】
また、本発明の請求項2に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記自重支持手段がばねによる反力を発生させてなるので、市販のばねやばねを応用した機器を利用して、前記ピストンの自重を支持する反力を発生させ得る手段を簡便に実現できる。
【0020】
更に、本発明の請求項3に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストンが前記自重支持手段と並列して軸受に支持され、前記圧力容器に非接触な状態において回転自在とされてなるので、シール部への潤滑剤塗布や点検が容易に行える。
【0021】
また更に、本発明の請求項4に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストンが、前記軸受またはこの軸受との間に介在する支持部材とテーパ面を有して接触されてなるので、前記ピストンが軸受に支持されている状態では回転軸が安定して回転自在となると共に、前記ピストンの圧力容器への挿入時には、接触抵抗によりピストンが浮き上がるため芯調整が自動的に行われる。
【0022】
そして、本発明の請求項5に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストンが前記軸受に支持された状態で、回転駆動機構により自動回転されてなるので、ピストンに設けられたシール部の潤滑剤塗布が容易に、かつ均等に行える。
【0023】
本発明の請求項6に係るピストン式等方圧加圧装置が採用によれば、回転中の前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、水平移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたので、前記シール部の潤滑剤塗布が自動的に実施可能となるため、全動作が自動化可能となり、高い生産性を得ることができる。
【0024】
一方、本発明の請求項7に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、請求項1または2に記載のピストン式等方圧加圧装置において、前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、シール部の周囲を回転移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたので、上記同様、前記シール部の潤滑剤塗布が自動的に実施可能となるため、全動作が自動化可能となり、高い生産性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
先ず、本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置を、以下添付図1,2を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置を説明するための立断面図、図2は図1の要部を示す要部立断面図である。
【0026】
図1,2において、本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置は、圧力容器1の下部開口には下蓋2が嵌脱自在に取り付けられ、この下蓋2が台座21に固定支持されている。圧力容器1の上部開口は、ピストン3によって後述する様に開放または密封自在に構成され、この上部開口より図示しない被処理物を収納したり取り出したりする。
【0027】
前記圧力容器1の下部開口に下蓋2が取り付けられた状態で、圧媒液体(以下、単に圧媒と称す)20が所定液面20aまで注入されており、この圧媒20に圧力を負荷して前記被処理物を高圧処理するためのピストン3が、圧力容器1の上方に吊り下げられた状態で取り付けられている。そして、加圧シリンダ5内の加圧ピストン6の伸長により、この加圧ピストン6に連動するピストン3を圧力容器1に挿入して、この圧力容器1内の圧媒20の圧縮を介して図示しない被処理物を等方圧で加圧処理する様に構成されている。符号2aは下蓋2に装着されたシール部である。
【0028】
前記ピストン3は、加圧力を発生させる加圧シリンダ5の加圧ピストン6の下端6aに固定されたピストンホルダ7を介して、分離された状態で取り付けられている。前記ピストン3は、図1,2に示す如く一体的に構成されたものである必要はなく、例えば、従来例で説明した様に、シール部材3aの装着された先端部分が分離され、高圧容器1に拘束された構造でも良い。
【0029】
そして、前記ピストン3は、その上部外径d1を下部外径d2より段差部3bを有して大きく形成され、この段差部3bに接触するリング状の支持部材8を介して、軸受9上に載置して支持されている。ここで、前記ピストン3の自重の支持は、支持部材8の上面とピストン3の段差部3bの下面とが、夫々求心(ピストン軸心C2に直交する)方向に同一傾斜角度を持って下降するテーパ面3c,8aを有して接触支持されることが肝要である。また、前記支持部材8がない場合は、前記軸受9の上面とピストン3の段差部3bの下面とが、前記同様、求心方向に同一傾斜角度を持って下降するテーパ面を有して接触支持されるのが良い。
【0030】
上記の如き構成においても、ピストン3が圧力容器1に非接触な状態では、前記ピストン3は軸受9に支持されているため回転自在な構成となっているが、ピストン3の自重による回転抵抗を更に軽減するために、ばねからなる自重支持手段10によって、浮き上がった状態で支持されている。前記自重支持手段10は、ピストン3の自重とほぼ等価な反力を有する様に構成されるのが好ましく、この様な状態で前記支持部材8を介して軸受9に支持されている。
【0031】
尚、前記自重支持手段10としては、ばねの他、液圧や空圧によるアクチュエータ、ゴムまたは磁力のうちの何れか一つ乃至は複数を備えたものを用いることができる。また、ピストン上端3dと加圧ピストン下端6aとの間には、加圧によりピストン3に負荷がかからない状態では隙間Sが確保されており、その値は、この加圧装置の規模と加圧時に設定可能な圧力容器1の軸心C1とピストン3の軸心C2の同心度により適宜設定される。
【0032】
以上の様な構成をなすことによって、前記加圧ピストン6とピストン3は密着分離自在とされ、前記ピストン3は、ピストンホルダ7を介してピストン3の軸心調整のための変位を許容する様に支持される。そして、前記自重支持手段10とテーパ面3a,8aとによって、ピストン3を圧力容器1に挿入する際に受ける抵抗(反力)によりピストン3が浮き上がって調芯される。更に、ピストン3が圧力容器1への挿入が進行するのに伴って前記ピストンは圧力容器1の内壁に沿って挿入されていくため、前記ピストン3の軸心C2が圧力容器1の軸心C1に完全に一致して自動調芯される結果、スムーズな挿入が可能となるのである。
【0033】
また、前記ピストン3の段差部3bより上部において、前記ピストンホンダ7内のピストン3の外周に嵌装して固定された第1歯車12と、この第1歯車12を外周から噛合せ駆動する第2歯車13と、この第2歯車12を回転駆動する駆動モータ14とにより回転駆動機構11が構成されている。この様な回転駆動機構11は、前記ピストン3への回転駆動力の伝達と、ピストン3の軸心C2に平行方向への摺動とが自在となる様に構成されることが肝要である。
【0034】
そして、駆動モータ14による回転力が、このモータ軸に取り付けられた第2歯車13から第1歯車12を介して、前記ピストン3へ伝達されるのである。尚、この様な回転駆動機構11としては、前記歯車12,13に代えてプーリとベルトを用いたものでも良いし、前記駆モータ13に代えて液圧や空圧を利用したアクチュエータを用いても良い。
【0035】
一方、加圧ピストン6は、加圧シリンダ5内に導入される油圧(駆動源は図示せず)により昇降自在に構成されており、前記加圧ピストン6を下降させて、ピストン3を圧力容器1に挿入した時のピストン軸心C2方向の反力は、プレスフレーム4によって担持される。プレスフレーム4の基台は図示省略しているが、強固な床面等に据付されている。そして、図示しない移動装置により圧力容器1を水平移動させて、開口上部に加圧ピストン5やピストン3のない状態で、圧力容器1内への被処理物の収納や取出しを行う。
【0036】
更に、本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置は、ピストン3のシール部3aに潤滑剤を塗布するための潤滑剤塗布手段15が備えられている。この潤滑剤塗布手段15には、潤滑ポンプ16、ノズル17及び駆動シリンダ18が設けられ、前記潤滑ポンプ16とノズル17を駆動シリンダ18によって支持台19上を摺動させて、ピストン3のシール部3a方向へ水平移動可能としている。そして、前記シール部3aへ潤滑剤の塗布が必要なときは、駆動シリンダ18を伸長して、ノズル17を前記シール部3aへ近接させる一方、前記回転駆動機構11の駆動によって、ピストン3をピストン軸心C2を中心として回転させながら前記シール部3a外周へ塗布可能となる。
【0037】
以上説明した通り、本発明に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、加圧ピストン6とピストン3は密着分離自在とされ、前記ピストン3はピストンホルダ7を介してピストン3の軸心調整のための変位を許容する様に支持され、前記ピストン3が加圧ピストン6と非接触の状態で、ピストン3の自重を支持する反力を発生させる自重支持手段11を前記ピストンホルダ7内に備えるので、前記自重支持手段11によってピストン3の重量抵抗が軽減され、圧力容器1の軸心C1方向に微動自在となる。
【0038】
そのため、前記ピストン3が圧力容器1内に挿入される際の抵抗によって、ピストン3の圧力容器1に対する芯調整が自動的にかつ確実に行われる。その結果、前記ピストン3と圧力容器1とのスムーズな摺動がなされ、前記ピストン3と圧力容器1の焼付き防止による接触部品やシール部材3の寿命の向上が図られる。
【0039】
次に、上述した本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置における動作手順につき、以下添付図3,4を参照しながら工程を追って説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置における動作手順の前半を説明するための要部立断面図であり、図(a)は潤滑剤塗布手段の前進工程、図(b)は潤滑剤塗布工程、図(c)は潤滑剤塗布手段の退避工程を夫々示す。また、図4は、本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置における動作手順の後半を説明するための要部立断面図であり、図(d)はピストン下降工程、図(e)はピストンの圧力容器への挿入開始工程、図(f)は所定の加圧力に至った加圧処理工程を夫々示す。
【0040】
先ず、圧力容器1の上部開口から被処理物を収容した後、圧力容器1をピストン3の下方に水平移動させる。その後、潤滑剤塗布手段15をピストン3のシール部3a方向へ前進させる(図3(a))。尚、圧力容器1への被処理物の収容工程から、後述する取出し工程の間に潤滑剤塗布工程を同時に行うこともできる。この場合、等方圧加圧処理工程のサイクルタイムを短縮することができる点で好ましい。
【0041】
そして、潤滑剤塗布手段15のノズル17先端が、ピストン3のシール部3aに僅かな隙間を有して接近した状態で停止させる。次いで、回転駆動機構11を始動して、このピストン3を軸心C2周りに回転させると同時に、潤滑ポンプ16を始動して潤滑剤がノズル17から塗布開始される(図3(b))。このとき、前記ピストン3は、支持部材8とテーパ面3a,8aを有してその自重を支持され、軸心C2及び水平方向共に拘束された状態であるため、潤滑剤塗布による横ブレは発生せず、均等な潤滑被膜をシール部3a上に形成することができる。尚、超高圧用のピストン式等方圧加圧装置においては、通常ペースト状の固体潤滑剤が使用される。
【0042】
潤滑剤の塗布を完了した後、潤滑剤塗布手段15のノズル17をピストン3のシール部3aから退避させる(図3(c))。次いで、加圧のためにピストン3の下降を開始させる(図4(d))。
【0043】
ピストン3が更に下降して圧力容器1へ接触して挿入開始すると、このときの抵抗が、ピストン3の(自重支持手段11による反力を差し引いた)自重を上回った時点で、前記ピストン3が持ち上げられて支持部材8の接触面から離れ、軸心C2方向及び水平方向共に可動自在となる(図4(e))。これと同時或いはこの後、ピストン上端3dが加圧ピストン下端6aと密着(隙間Sが無くなる状態)し、密着部の面圧は加圧が進行するに従って増大していく。
【0044】
更に、ピストン3が、加圧ピストン6の加圧力により下降して圧力容器1内に挿入されるに従って、ピストン軸心C2が容器軸心C1に一致して行き、両者の調芯が自動的に行われる。そして、所定の加圧力に至ると、圧力容器1内に発生する(超)高圧の反力は、ピストン上端3dから加圧ピストンを介して、プレスフレーム4に担持された状態となる(図4(f))。
【0045】
所定の加圧力を一定時間保持して、被処理物の高圧処理が完了すると、ピストン3を上昇させて減圧する。減圧完了後、ピストン3を圧力容器1から上昇させて抜取り、図3(a)に示した初期状態に戻る。その後、圧力容器1を水平移動(図示せず)させて、上部開口から被処理物を取り出す。
【0046】
この様に、本発明に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストン3を回転させる回転駆動機構11が備えられると共に、前記ピストン3のシール部3aに潤滑剤を塗布するため、水平移動自在な潤滑剤塗布手段15が備えられたので、前記シール部3aの潤滑剤塗布が自動的に実施可能となり、高圧処理に伴う全工程が自動化可能となり、高い生産性を得ることができる。
【0047】
次に、本発明の実施の形態2に係るピストン式等方圧加圧装置を、以下添付図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係るピストン式等方圧加圧装置を説明するための立断面図である。但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、加圧ピストンと加圧シリンダの配置に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0048】
即ち、上記実施の形態1のピストン式等方圧加圧装置が、圧力容器1の上方に配置されたプレスフレーム4に加圧シリンダ5が固定され、この加圧シリンダ5内に加圧ピストン6が下方に向かって昇降可能な様に配置されていたのに対し、本実施の形態2のピストン式等方圧加圧装置は、加圧シリンダ5が台座21上に固定されると共に、この加圧シリンダ5の加圧ピストン6が上方に向かって昇降可能な様に配置されている。そして、圧力容器1の下蓋2が、前記加圧ピストン6の上端に固定されている。一方、ピストン3は、圧力容器1の上部開口と対向して、プレスフレーム4の下端にピストンホルダ7を介して支持されている。
【0049】
前記ピストン3とピストンホルダ7の取付構造は、前記実施の形態1における加圧ピストン3をプレスフレーム4に読み換えれば、全く同一の構成を有している。即ち、ピストン上端3dとプレスフレーム下端4aとの間は、隙間Sが確保されると共に密着分離自在とされ、前記ピストン3はピストンホルダ7を介してピストン3の軸心調整のための変位を許容する様に支持されている。
【0050】
同時に、前記ピストン3がプレスフレーム4と非接触の状態で、ピストン3の自重を支持する反力を発生させる自重支持手段(ばね)10が前記ピストンホルダ7内に備えられている。そして、前記ピストン3が、前記自重支持手段10と平行して軸受9に支持された状態で、回転駆動機構11により自動的に回転される様に構成されている。
【0051】
一方、加圧ピストン6は、実施の形態1と同様、油圧により下蓋2を介して圧力容器1を上昇させて、この圧力容器1の上部開口がピストン3に嵌合される。このとき、前記ピストン3が圧力容器1内に挿入される抵抗によって、ピストン3が支持部材8から浮き上がり、軸心C2方向及び水平方向に可動自在となって、前記ピストン3の軸心C2が圧力容器1の軸心C1に一致する様に自動的に調芯されるのである。
【0052】
また、前記ピストン3は、軸受9に支持された状態で、回転駆動機構11により自動的に回転可能とされ、潤滑剤塗布手段15によりピストン3のシール部3aを均等に潤滑剤塗布できる。
【0053】
従って、本発明の形態2に係るピストン式等方圧加圧装置は、ピストン3を圧力容器1に挿入する際の自動調芯と、ピストン3のシール部3aへの潤滑剤塗布の自動化、更には、本加圧装置を用いた加圧処理の全工程の自動化が可能となる点において、本発明の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置と同効である。
【0054】
次に、本発明の実施の形態3に係るピストン式等方圧加圧装置を、以下図を用いずに説明する。本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、ピストンホルダ内の構成と潤滑剤塗布手段の構成に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0055】
即ち、上記実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置においては、ピストン3が軸受9に支持され回転自在な支持機構と、ピストン3を自動的に回転可能な回転駆動機構11とをピストンホルダ7内に構成する一方、水平方向に移動自在な潤滑剤塗布手段15を備えていたのに対し、本実施の形態2に係るピストン式等方圧加圧装置は、ピストン3が支持され自動回転するための軸受9と回転駆動機構11のない、自重支持手段10とテーパ面8aのみを有する支持部材8とによりピストン3を支持する支持機構をピストンホルダ7内に構成する一方、前記ピストン3のシール部3aに周囲から潤滑剤を塗布するため、水平面上を回転自在な潤滑剤塗布手段を備えている。
【0056】
従って、本発明の形態3に係るピストン式等方圧加圧装置は、ピストン3を圧力容器1に挿入する際の自動調芯と、ピストン3のシール部3aへの潤滑剤塗布の自動化、更には、本加圧装置を用いた加圧処理の全工程の自動化が可能となる点において、本発明の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置と同効である。また、ピストン3を自動的に回転可能な回転駆動機構11を設けないことにより、ピストンホルダ7内の構造を簡素化でき、ピストン3が大型化した場合には製造コストの低減を図り得る。
【0057】
以上述べた通り、本発明に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、加圧ピストンとピストンは密着分離自在とされ、前記ピストンはピストンホルダを介してピストンの軸心調整のための変位を許容する様に支持され、前記ピストンが加圧ピストンと非接触の状態で、ピストンの自重を支持する反力を発生させる自重支持手段を前記ピストンホルダ内に備えるので、前記自重支持手段によってピストンの重量抵抗が軽減され、圧力容器の軸心方向に微動自在となる。
【0058】
そのため、前記ピストンを圧力容器内に挿入する際に受ける反力(接触抵抗及び圧媒の圧縮圧)によって前記ピストンが浮き上がり、その軸心が圧力容器の軸心に一致する様に、芯調整が自動的にかつ確実に行われる。その結果、前記ピストンと圧力容器とのスムーズな摺動がなされ、前記ピストンと圧力容器の焼付き防止による接触部品やシール部材の寿命の向上が図られる。
【0059】
また、本発明に係るピストン式等方圧加圧装置によれば、前記ピストンが軸受に支持された状態で、回転駆動機構により自動的に回転されてなるので、ピストンに設けられたシール部の潤滑剤塗布が容易に、かつ均等に行える。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置を説明するための立断面図である。
【図2】図1の要部を示す要部立断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置における動作手順の前半を説明するための要部立断面図であり、図(a)は潤滑剤塗布手段の前進工程、図(b)は潤滑剤塗布工程、図(c)は潤滑剤塗布手段の退避工程を夫々示す。
【図4】本発明の実施の形態1に係るピストン式等方圧加圧装置における動作手順の後半を説明するための要部立断面図であり、図(d)はピストン下降工程、図(e)はピストンの圧力容器への挿入開始工程、図(f)は所定の加圧力に至った加圧処理工程を夫々示す。
【図5】本発明の実施の形態2に係るピストン式等方圧加圧装置を説明するための立断面図である。
【図6】従来例に係るピストン式等方圧加圧装置の一実施例を示し、図(a)は加圧処理中、図(b)は無負荷状態の各立断面図である。
【符号の説明】
【0061】
C1:圧力容器軸心, C2:ピストン軸心,
d1:ピストンの上部外径, d2:ピストンの下部外径, S:隙間,
1:圧力容器, 2:下蓋, 2a:シール部,
3:ピストン, 3a:シール部, 3b:段差部,
3c:テーパ面, 3d:ピストン上端,
4:プレスフレーム, 4a:プレスフレーム下端,
5:加圧シリンダ, 6:加圧ピストン, 6a:加圧ピストン下端,
7:ピストンホルダ,
8:支持部材, 8a:テーパ面,
9:軸受, 10:自重支持手段(ばね),
11:回転駆動機構, 12:第1歯車, 13:第2歯車, 14:駆動モータ,
15:潤滑剤塗布手段, 16:潤滑ポンプ, 17:ノズル,
18:駆動シリンダ, 19:支持台,
20:圧媒(液体), 20a:所定液面,
21:台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧シリンダ内の加圧ピストンの伸長により加圧ピストンに連動するピストンを圧力容器に挿入して、この圧力容器内の圧媒の圧縮を介して被処理物を等方圧で加圧処理するピストン式等方圧加圧装置において、
前記加圧ピストンとピストンはピストンホルダを介して密着分離自在とされ、前記ピストンは前記ピストンホルダを介してピストンの軸心調整のための変位を許容する様に支持され、
前記ピストンが加圧ピストンと非接触の状態で、ピストンを支持するためにピストンの自重に対抗する反力を発生させる自重支持手段を前記ピストンホルダ内に備え、
前記ピストンを圧力容器内に挿入する際に受ける抵抗によって前記加圧ピストンとピストンは密着され、前記ピストンの軸心が圧力容器の軸心に一致する様に自動調芯されてなることを特徴とするピストン式等方圧加圧装置。
【請求項2】
前記自重支持手段がばねによる反力を発生させてなることを特徴とする請求項1に記載のピストン式等方圧加圧装置。
【請求項3】
前記ピストンが前記自重支持手段と並列して軸受に支持され、前記圧力容器に非接触な状態において回転自在とされてなることを特徴とする請求項1または2に記載のピストン式等方圧加圧装置。
【請求項4】
前記ピストンが、前記軸受またはこの軸受との間に介在する支持部材と、テーパ面を有して接触されてなることを特徴とする請求項3に記載のピストン式等方圧加圧装置。
【請求項5】
前記ピストンが前記軸受に支持された状態で、回転駆動機構により自動回転されてなることを特徴とする請求項3または4に記載のピストン式等方圧加圧装置。
【請求項6】
回転中の前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、水平移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたことを特徴とする請求項3乃至5のうちの何れか一つの項に記載のピストン式等方圧加圧装置。
【請求項7】
前記ピストンのシール部に潤滑剤を塗布するため、シール部の周囲を回転移動自在な潤滑剤塗布手段が備えられたことを特徴とする請求項1または2に記載のピストン式等方圧加圧装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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