説明

ピペット洗浄部材、ピペット洗浄装置及び試料分析装置

【課題】ピペットとピペット貫通孔との間隙が広い場合でも、ピペットの洗浄時に、上記間隙から流入する空気を大気吸引路から吸引排出することができるので、洗浄後の廃液を十分に洗浄液吸引路から排出できずに廃液が下方に垂れる、という問題を解消したピペット洗浄部材を提供する。
【解決手段】本発明に係るピペット洗浄部材27は、ピペット1を移動自在に受け入れ可能であり、入口、貫通路および出口を有する貫通孔と、前記貫通孔の前記出口近傍に設けられた第1開口を介して前記貫通路に洗浄液を供給するための洗浄液供給路と、前記第1開口より入口側に設けられた第2開口を介して前記貫通路に接続され、前記洗浄液供給路から第1開口を介して前記貫通路に供給された洗浄液を吸引排出するための洗浄液吸引路と、前記第2開口より入口側に設けられた第3開口を介して前記貫通路に接続され、前記入口から流入する大気を吸引排出するための大気吸引路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットを洗浄するためのピペット洗浄部材、これを備えたピペット洗浄装置及びこれを備えた試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料が収容された容器から試料を採取するピペットに付着した試料を洗浄するピペット洗浄装置として、ピペットを受け入れるように適合された貫通孔と、この貫通孔へピペットを洗浄するための洗浄液を供給するための洗浄液供給路と、貫通孔内の洗浄後の廃液を排出するための排出路とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6-222065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなピペット洗浄装置の貫通孔は、ピペットを挿入可能で、かつ挿入されたピペットとの間隙が狭くなるように、洗浄するピペットに合わせてその入口の内径が決められている。これは貫通孔入口の内径とピペットの外径との間隙が広いと、洗浄の際に間隙から空気が流入してしまい、排出路から十分に廃液を排出できず、廃液がピペット洗浄装置の下方に垂れてしまうという問題が生じるためである。このため、洗浄孔の内径や形状は、洗浄するピペットの外径や形状に合わせて作製する必要があるため、例えば、試料分析装置に太さや形状の異なる複数のピペットを設置する場合には、それぞれのピペットの太さや形状に合わせた異なるピペット洗浄装置をそれぞれ設ける必要があり、製造コストが嵩むという問題点があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、太さや形状が異なるピペットを洗浄する場合であっても、洗浄後の廃液が下方に垂れるという問題を解消したピペット洗浄部材、それを備えたピペット洗浄装置及びそれを備えた試料分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るピペット洗浄部材は、ピペットを移動自在に受け入れ可能であり、入口、貫通路および出口を有する貫通孔と、前記貫通孔の前記出口近傍に設けられた第1開口を介して前記貫通路に洗浄液を供給するための洗浄液供給路と、
前記第1開口より入口側に設けられた第2開口を介して前記貫通路に接続され、前記洗浄液供給路から第1開口を介して前記貫通路に供給された洗浄液を吸引排出するための洗浄液吸引路と、前記第2開口より入口側に設けられた第3開口を介して前記貫通路に接続され、前記入口から流入する大気を吸引排出するための大気吸引路と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成により、ピペットとピペット貫通孔との間隙が広い場合でも、ピペットの洗浄時に、上記間隙から流入する空気を大気吸引路から吸引排出することができるので、上記間隙から流入する空気が洗浄液吸引路に多量に流入して洗浄後の廃液を十分に洗浄液吸引路から排出することが困難になり、廃液が下方に垂れる、という問題を解消することができる。
【0008】
上記ピペット洗浄部材においては、前記ピペット貫通路は、円形断面を有し、内径の異なる第1の部分及び第2の部分ならなり、前記第2開口及び前記第3開口が前記第1の部分に、前記第1開口部が前記第2の部分にそれぞれ設けられ、前記第1の部分の内径は、前記第2の部分の内径よりも小さいことが好ましい。
【0009】
一般に、ピペットの外側に付着した試料は、自重で下方へ移動しピペットの先端部分に集まる。例えば、血液などの粘度の高い試料の場合には、特に大量の試料がピペットの外壁に付着した状態になる。ピペット洗浄部材の貫通孔の入口がピペットの根元近傍に存在する位置をピペットの洗浄開始位置とし、このような洗浄開始位置からピペットの先端に向かって、ピペット洗浄部材を移動させながら洗浄を行うと、ピペットの外壁に付着した試料は、内径の大きい第2部分には付着せずに内径の小さい第1部分の下端の内壁面に付着する。洗浄液供給路から供給された洗浄液が、第1部分の下端近傍を通って洗浄液吸引路に吸引されるため、この第1部分の下端近傍に付着した試料は、洗浄液によって効率よく洗浄排出される。
【0010】
本発明に係るピペット洗浄装置は、上述したピペット洗浄部材と、ピペットと前記ピペット洗浄部材とを相対的に移動させるための駆動部と、前記洗浄液供給路に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記洗浄液吸引路を介して洗浄液を吸引し、排出する洗浄液排出部と、前記大気吸引路を介して大気を吸引する大気吸引部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記ピペット洗浄装置において、前記ピペット貫通路は、円形断面を有し、内径の異なる第1の部分及び第2の部分ならなり、前記第2開口及び前記第3開口が前記第1の部分に、前記第1開口部が前記第2の部分にそれぞれ設けられ、前記第1の部分の内径は、前記第2の部分の内径よりも小さいことが好ましい。
【0012】
また、貫通孔をピペットが貫通した状態で、且つ大気吸引部により大気吸引路を介して吸引が行われた状態で、洗浄液供給部から洗浄液供給路を介して貫通路に洗浄液の供給が行われるとともに、洗浄液排出部による洗浄液の吸引排出が行われてピペットの外部の洗浄が行われることが好ましい。
【0013】
また、ピペットの外部の洗浄が、ピペットの根元側から先端側に向かってピペット洗浄部材を移動させながら行われることが好ましい。
【0014】
また、上記ピペット洗浄装置において、前記洗浄液供給部が前記ピペット内部に洗浄液を供給可能に連結されており、前記ピペットの先端が前記第2開口と前記第3開口との間に位置した状態で、且つ前記大気吸引部により前記大気吸引路を介して吸引が行われた状態で、前記洗浄液供給部からピペット内部に洗浄液を供給することにより、前記ピペットの内部の洗浄が行われることが好ましい。
【0015】
本発明に係る試料分析装置は、試料の分注を行った後のピペットを上記ピペット洗浄装置によって洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るピペット洗浄部材によれば、ピペットとピペット貫通孔との間隙が広い場合でも、ピペットの洗浄時に、上記間隙から流入する空気を大気吸引路から吸引排出することができるので、上記間隙から流入する空気が洗浄液吸引路に多量に流入して洗浄後の廃液を十分に洗浄液吸引路から排出することが困難になり、廃液が下方に垂れる、という問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係るピペットを洗浄するためのピペット洗浄部材及びそれを備えたピペット洗浄装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
図1は、ピペット洗浄装置2の概略構成を示す図である。図1に示すように、ピペット洗浄装置2には、試料を吸引するためのピペット1と、2つのシリンジポンプ21,22が設けられている。シリンジポンプ21、22には、ステッピングモータ21a、22aが各別に取り付けられており、ステッピングモータ21a,22aが動作することにより、その回転運動が直線運動に変換されてシリンジポンプ21、22のピストン21b,22bに各別に伝達され、これらのピストン21b,22bが夫々シリンダに挿入され、又はシリンダから引き出されるようになっている。
【0019】
ピペット1は、シリンジポンプ21に流体通流用のチューブを介して接続されており、シリンジポンプ21が動作することにより試料を吸引し、試料を吐出することができるようになっている。また、ピペット洗浄装置2には、洗浄液貯留用のチャンバ23が設けられており、このチャンバ23からは洗浄液を送出するためのチューブが接続されている。このチューブは途中で分岐しており、一方が電磁弁24aの接続ポートに接続され、他方が電磁弁24bの接続ポートに接続されている。電磁弁24a,24bは、夫々3方口式の電磁弁である。電磁弁24aの他の2つの接続ポートには、チューブを介して、シリンジポンプ21と、ピペット1とが接続される。同様に、電磁弁24bの他の2つの接続ポートは、チューブを介して、シリンジポンプ22と、洗浄を行うための洗浄液供給路204とに接続される。このように、チャンバ23とシリンジポンプ21とは、途中に電磁弁24aが設けられた流路25aを介して接続されており、同様に、チャンバ23とシリンジポンプ22とは、途中に電磁弁24bが設けられた流路25bを介して接続されている。なお、以下の説明においては、流路は流体通流用のチューブによって構成される。
【0020】
このピペット洗浄装置2には、ピペット1を洗浄するためのピペット洗浄部材27が設けられている。図2は、ピペット洗浄部材27の構成を示す断面図である。図2に示すように、ピペット洗浄部材27は、ピペット1を収容するための貫通路201と、ピペット洗浄部材27の上部に設けられ、貫通路201にピペット1を受け入れるための入口である開口部202と、開口部202とは逆側の開口部203と、ピペット1を洗浄する洗浄液を供給するための洗浄液供給路204と、洗浄後の洗浄液を排出するための洗浄液吸引路205と、ピペット1と開口部202との間隙から流入する空気を排出するための大気吸気路206とを備える。貫通路201は、開口部202に連通する小径部201aと、小径部201aよりも径が大きく開口部203に連通する大径部201bとで構成されており、小径部201aと大径部201bとの間には、末広がり状のテーパー部201cが設けられている。小径部201aは、その長さがピペット洗浄部材27の高さの約70%であり、大径部201bの長さは、ピペット洗浄部材27の高さの約25%であり、テーパー部201cの高さは、ピペット洗浄部材27の高さの約5%である。
【0021】
図1に示されるように、洗浄液供給路204の一端は、吐出口204aを介して、大径部201bに連通しており、洗浄液供給路204の他端は、流路25dに接続される。洗浄液吸引路205の一端は、排出口205aを介して、小径部201aに連通しており、洗浄液吸引路205の他端は、流路25fを介して、廃液を貯留するチャンバ28に接続される。この流路25fの途中には、電磁弁24cが設けられており、チャンバ28には、洗浄液排出用負圧源として、陰圧ポンプ30が接続される。また、大気吸気路206の一端は、吸気口206aを介して、小径部201aに連通しており、大気吸気路206の他端は、流路25eを介して、空気を吸引するための陰圧ポンプ29に接続されている。
【0022】
このピペット洗浄部材27は、貫通路201内にピペット1が挿入された状態で、吐出口204aおよびピペット1の先端から洗浄液を吐出することにより、ピペット1の外側および内側を洗浄し、洗浄後の廃液を排出口205aから排出することができる。洗浄を行っている間、開口部202とピペット1との間隙から流入する空気を吸気口206aから排出することができるので、ピペット1の外径と貫通路201の内径とが大きく異なる場合であっても、間隙から流入する空気が洗浄液吸引路205に多量に流入して洗浄後の廃液を十分に洗浄液吸引路205から排出することが困難になり、廃液が下方に垂れる、という問題を解消することができる。
【0023】
また、図1に示すように、ピペット洗浄部材27は、保持部材31a、31b、31cにより保持されている。このため正逆回転可能なステッピングモータ32によって保持部材31a、31b、31cを上下移動させることにより、固定されたピペット1に対してピペット洗浄部材27を上下移動させることができる。このモータ32の回転軸32aの端部には、主動プーリ32bが同軸的に固着されている。この主動プーリ32bから下方に所定の距離離れて、従動プーリ32cが設けられている。主動プーリ32b及び従動プーリ32cには、環状のタイミングベルト32dが張架され、モータ32の回転運動を直線運動に変換する。
【0024】
保持部材31aは、2枚の長方形板が合わされて略水平に設けられており、ベルト32dを挟んだ状態でネジ部材によりベルト32dに固定されている。保持部材31bは、鉛直に配された棒状部材であり、上端部に保持部材31aが取り付けられており、下端部にネジ部材により保持部材31cが取り付けられている。この保持部材31bは、ガイドレール31dに摺動可能なように嵌め込まれている。また、保持部材31cは、ピペット洗浄部材27の上部でピペット洗浄部材27と一体化されている。図2に示すように、ピペット洗浄部材27の側壁上部には、リング状の溝31eが水平に設けられている。そして、この溝31eに、保持部材31cの水平板状部31fが嵌め込まれている。
【0025】
上述したステッピングモータ21a、22a、32、電磁弁24a、24b、24c、陰圧ポンプ29、30等は、制御部5によって動作制御される。
【0026】
図3は、ピペット洗浄装置2の制御部5と各ユニットとの接続関係を示すブロック図である。図3に示すように、制御部5は、CPU51と、ROM52と、メモリ53と、ドライバ回路54とを備えている。CPU51と、ROM52と、メモリ53と、ドライバ回路54とは、相互にデータ伝送が可能であるようにデータ伝送線を介して接続されている。これにより、CPU51は、ROM52と、メモリ53に対するデータの読み出し及び書込み、並びにドライバ回路54に対するデータの送受信が可能となっている。
【0027】
CPU51は、ROM52に記憶されているコンピュータプログラムおよびメモリ53にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。
【0028】
ROM52は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU51に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
【0029】
メモリ53は、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。メモリ53は、ROM52に記録されているコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51の作業領域として利用される。
【0030】
ドライバ回路54は、モータドライバ54a、電磁弁ドライバ54b、ポンプ制御回路54dを備えている。モータ、電磁弁等のデバイスを駆動するためのドライバ回路であり、ステッピングモータ21a、22a、32、電磁弁24a,24b、24c、及び陰圧ポンプ29の動作制御を行うようになっている。
【0031】
モータドライバ54aは、ステッピングモータを駆動することが可能な回路であり、ピペット洗浄装置2のステッピングモータ21a、22a、32に電気信号線を通じて接続されている。かかるモータドライバ54aは、CPU51が実行するプログラムに基づいて、ステッピングモータ21a、22a、32を各別に駆動することができるようになっている。
【0032】
電磁弁ドライバ54bは、電磁弁を駆動することが可能な回路であり、ピペット洗浄装置2の電磁弁24a,24b、24cに電気信号線を通じて接続されている。かかるモータドライバ54bは、CPU51が実行するプログラムに基づいて、電磁弁24a,24b、24cを個別に駆動することができるようになっている。
【0033】
ポンプ制御回路54dは、陰圧ポンプ29、30の動作を制御するための回路である。ポンプ制御回路54dは、陰圧ポンプ29、30と電気信号線を通じて接続されており、陰圧ポンプ29、30に制御信号を送信するようになっている。このようなポンプ制御回路54dは、かかるポンプ制御回路54d、CPU51が実行するプログラムに基づいて、陰圧ポンプ29、30を個別に駆動することができるようになっている。
【0034】
次に、ピペット洗浄装置2のピペット洗浄動作について説明する。前述したように制御部5に設けられたROM52には、本発明の実施の形態に係るピペット洗浄動作のコンピュータプログラムが記憶されている。このコンピュータプログラムは、ピペット洗浄装置2の起動時に、ROM52から読み出され、メモリ53にロードされて、CPU51が実行するようになっている。
【0035】
ピペット1は、試料の吸引あるいは吐出を行うことにより、ピペット1の外側並びに内部に試料が付着する。このように試料が付着したピペット1は、次のようにして洗浄される。図1に示されるように、本実施形態の洗浄装置においては、ピペット1の最上部(根元)の位置からピペット洗浄部材27によるピペット1の洗浄が開始される。
【0036】
図4は、ピペット洗浄部材27の洗浄動作を示すフローチャートである。図4に示すように、陰圧ポンプ29によって、流路25e、大気吸気路206および吸気口206aを介して空気が吸引される(S1)。
【0037】
次に、洗浄液供給路204から洗浄液が吐出され、洗浄液吸引路205から洗浄液が吸引されると共に、ピペット洗浄部材27がピペット1に対して下降を開始することにより、ピペット1の外側の洗浄が開始する(S2)。
【0038】
具体的には、CPU51が電磁弁24a及び電磁弁24bを制御し、電磁弁24bの流路25b側の弁を開放し、電磁弁24aの流路25a側及び電磁弁24bの流路25d側の弁を閉塞した状態で、シリンジポンプ22のピストン22bを引いて、チャンバ23から洗浄液を吸引する。次に、CPU51は、電磁弁24aの流路25a側の弁を閉塞したままで、電磁弁24bの流路25b側の弁を閉塞させ、流路25d側の弁を開放させる。この状態で、シリンジポンプ22のピストン22bがシリンダの奥まで進行し、洗浄液が、流路25d、洗浄液供給路204および供給口204aを介して大径部201b内に所定量吐出される。同時に、CPU51は、陰圧ポンプ30を駆動し、洗浄によって生じた廃液を排出口205a、洗浄液吸引路205および流路25fを介してチャンバ28へと排出する。CPU51は、このような洗浄液の吐出および排出動作を開始すると共に、ステッピングモータ32を駆動し、タイミングベルト32dを回転させて、ピペット洗浄部材27をピペット1の根元から徐々に下降させる。このようにして、洗浄液の吐出および排出が行われた状態で、ピペット洗浄部材27をピペット1の根元から先端に向かって下降させることによりピペット1の外壁の洗浄が行われる。この後、CPU51は、ピペット洗浄部材27がピペット1の先端位置まで下降した時点でピペット洗浄部材27の下降を停止させる(S3)。すなわち、図2に示されるように、ピペット1の先端が排出口205aのやや上方且つ吸気口206aの下方に位置した状態でピペット洗浄部材27は停止する。
【0039】
次に、シリンジポンプ21からピペット1の内部に洗浄液を供給すると共に、洗浄液供給路204からも洗浄液を吐出させてピペット1の内部の洗浄を行う(S4)。CPU51は、電磁弁24a及び電磁弁24bを制御し、電磁弁24aの流路25a側の弁を開放し、流路25c側及び電磁弁24bの流路25b側の弁を閉塞した状態で、シリンジポンプ21のピストン21bを引いて、チャンバ23から洗浄液を吸引する。その後、CPU51は、電磁弁24bの流路25b側の弁を閉塞したままで、電磁弁24aの流路25a側の弁を閉塞させ、流路25c側の弁を開放させる。この状態で、ステッピングモータ21aにより、シリンジポンプ21のピストン21bをシリンダの奥まで進行させる。これにより、シリンジポンプ21から洗浄液が流路25cを通じて、ピペット1の内部に所定量供給される。シリンジポンプ21から流路25cを介して供給された洗浄液は、ピペット1の先端から吐出される。また、ピペット洗浄部材27の洗浄液供給路204からの洗浄液の吐出については、ステップS2と同様なので、ここではその説明を省略する。ピペット1の先端から吐出された洗浄液および洗浄液供給路204から供給された洗浄液は、排出口205a、洗浄液吸引路205および流路25fを介して、チャンバ28に排出される。
【0040】
上述したように、ピペット1の外壁洗浄時並びに内壁洗浄時に、開口部202から流入する空気は、吸気口206aから排出されているので、洗浄液吸引路205に多量の空気が流入して洗浄後の廃液を十分に排出することが困難になって廃液が下方に垂れるという問題が解消される。
【0041】
次に、CPU51は、ステッピングモータ32を駆動し、タイミングベルト32dを回転させて、保持部材31a、31b、31cを徐々に上昇させる(S5)。その上昇中も、陰圧ポンプ29および30を駆動し、ピペット1の外壁に付着した液体の除去を行う。そして、ピペット洗浄部材27がピペット1の根元の洗浄開始位置に戻ると、陰圧ポンプ29および30を停止させ(S6)、処理を終了する。
【0042】
なお、ピペット洗浄部材27の洗浄液供給路204への洗浄液の供給量は、流路25fに作用している陰圧の大きさに応じて変化させてもよい。また、このようなピペット洗浄装置2で洗浄することが可能なピペット1の太さは、小径部201aの太さの2/3〜10/11となっており、小径部201aの内径とピペット1の外径とが大きく異なる場合であっても、このピペット洗浄部材27で洗浄することが可能である。具体的には、小径部201aの内径が3mmの場合に、2mmの外径のピペット1を洗浄することが可能である。なお、開口部201におけるピペット1との間隙が大きくなるにつれて、陰圧ポンプ29による陰圧を大きくすることが好ましい。
【0043】
次に、上述のようなピペット洗浄装置2を使用した試料分析装置100の一例について説明する。図5は、試料分析装置100の概略構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る試料分析装置100は、血液試料の凝固反応の検査に供される血液凝固測定装置である。図5に示すように、試料分析装置100は、血液試料の分注に使用され、ピペット1が設けられた試料用分注アームユニット20と、試薬の分注に使用される試薬用分注アームユニット30と、試料用分注アームユニット20を洗浄するためのピペット洗浄部材271と、試薬用試料用分注アームユニット30を洗浄するためのピペット洗浄部材272と、キュベット及び試薬容器を保持するテーブルユニット50と、測定試料の凝固の程度を検出する光学式の検出ユニット60と、血液試料を搬送する搬送ユニット70とを備えている。
【0044】
図6は、図5で示した試料用分注アームユニット20の構成を示す断面図である。図6に示すように、試料用分注アームユニット20は、機構部1aと、軸1bと、アーム1cと、保持具1dと、ピペット1とを備えている。機構部1aには、上方向に向かって円柱状に延びた軸1bが支持されている。この軸1bは、機構部1aによってその中心軸回りに回動し、また、上下方向に往復直線運動することが可能である。この軸1bの上端には、アーム1cがこの軸1bに直交して取り付けられている。このアーム1cの先端には、保持具1dが取り付けられており、この保持具15dに、ピペット1が下方向に延びるように保持されている。これにより、ピペット1は、軸1b、アーム1c、保持具1dと一体的に軸1bを中心とした円周方向に回転し、上下方向に往復直線運動することができる。また、ピペット1には、液の吸引、吐出を行うためのシリンジポンプ(図示せず)が接続されている。当該シリンジポンプによって、ピペット1は、試料を吸引し、吸引した試料を吐出することが可能となっている。これにより、試料用分注アームユニット20は、試料容器3に収容された試料を所定の量だけ吸引し、キュベットに吐出することができる。また、ピペット1に付着した血液試料を洗浄するために、ピペット洗浄部材27までピペット1を移動させることができる。
【0045】
試薬用分注アームユニット30については、ピペット1の代わりに加温ピペット10が、アーム1cに取り付けられ、キュベットに収容された試薬を吸引した後、加温し、加温した試薬をキュベットに吐出することが可能である。加温ピペット10以外の構成は、試料用分注アームユニット20と略同一であるのでその説明を省略する。図7は、加温ピペット10の構成を示す断面図である。図7に示すように、加温ピペット10は、試薬を加温するためのヒータ10aを備えているので、その幅が通常のピペット1よりも広い。
【0046】
試料分析装置100は、ユーザが手作業で、又は外部に設けられた自動搬送装置が自動的に、血液試料が収容された複数の試料容器を保持するラック(図示せず)を搬送ユニット70に載置することにより血液試料が供給されるようになっている。ラックが搬送ユニット70に載置されたときには、載置されたラックが搬送ユニット70により所定の試料吸引位置へと搬送される。搬送ユニット70によりラックが試料吸引位置に搬送された場合には、このラックに保持された試料容器から試料用分注アームユニット20に設けられたピペット1が血液試料を所定量吸引し、テーブルユニット5に着脱可能にセットされたキュベット内に血液試料を吐出する。このとき、ピペット1の外壁に血液試料が付着する。
【0047】
血液試料が付着したピペット1は、試料用分注アームユニット20が回転することにより、ピペット洗浄部材27の貫通孔の上方位置まで移動する。その後、試料用分注アームユニット20が上下に移動することにより、ピペット洗浄部材271内にピペット1が収容され、ピペット洗浄部材27によって洗浄される。このように、ピペット洗浄部材271は、試料分析装置100に固定されているので、これら一連のピペット1の洗浄動作は、ピペット洗浄部材271の貫通孔内を試料用分注アームユニット20のピペット1が上下に移動することによって行われる。
【0048】
また、テーブルユニット5には試薬が収容された複数の試薬容器が着脱可能にセットされており、試薬容器から試薬用分注アームユニット30に設けられた試薬を加温するための加温ピペット10が、試薬を所定量吸引し、キュベットへと試薬を吐出する。このようにして、血液試料と試薬とが混合された測定試料が作成される。このとき、加温ピペット10の外壁に試薬が付着する。試薬が付着した加温ピペット10は、ピペット1の場合と同様に、試薬用分注アームユニット30が回転することにより、ピペット洗浄部材272の貫通孔の上方位置まで移動する。その後、試薬用分注アームユニット30が上下に移動することにより、ピペット洗浄部材272内に加温ピペット10が収容され、ピペット洗浄部材272によって洗浄される。
【0049】
ピペット洗浄部材271と272とは、同一の形状をしており、共通の部品を使用している。しかしながら、このような太さの異なるピペット1と加温ピペット10との洗浄を行うことができるので、ピペットの形状毎に、ピペット洗浄部材を設ける必要がないので、部品の共通化を行うことにより、試料分析装置100の製造コストを削減することができる。
【0050】
なお、本発明の実施の形態においては、試料分析装置100として血液凝固測定装置を使用した場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば、血球分析装置、免疫分析装置、尿中有形成分分析装置、尿定性分析装置、便分析装置、粒子分析装置等、他の測定装置であってもよい。
【0051】
なお、本発明の実施の形態においては、ピペット洗浄部材27に設けられた洗浄液供給路204、洗浄液吸引路205及び大気吸気路206とが同一断面上にある例について述べたが、これに限定されるものではなく、貫通路201の側面に洗浄液供給路204と洗浄液吸引路205と大気吸気路206とが下方からこの順番に連通されていれば、これらが同一断面上に配置されていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るピペット洗浄部材及びピペット洗浄装置によれば、ピペットとピペット貫通孔との間隙が広い場合でも、ピペットの洗浄時に、上記間隙から流入する空気を大気吸引路から吸引排出することができるので、上記間隙から流入する空気が洗浄液吸引路に多量に流入して洗浄後の廃液を十分に洗浄液吸引路から排出することが困難になり、廃液が下方に垂れる、という問題を解消することができ、ピペット洗浄部材、ピペット洗浄装置及び試料分析装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ピペット洗浄装置2の概略構成を示す図である。
【図2】ピペット洗浄部材27の構成を示す断面図である。
【図3】ピペット洗浄装置2の制御部5と各ユニットとの接続関係を示すブロック図である。
【図4】ピペット洗浄部材27の洗浄動作を示すフローチャートである。
【図5】試料分析装置100の概略構成を示す斜視図である。
【図6】図5で示した試料用分注アームユニット20の構成を示す断面図である。
【図7】加温ピペット10の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ピペット
1a 機構部
1b 軸
1c アーム
1d 保持具
1e ピペット
10 加温ピペット
10a ヒータ
2 ピペット洗浄装置
21,22 シリンジポンプ
21a、22a ステッピングモータ
21b,22b ピストン
23 チャンバ
24a、24b、24c 電磁弁
25a、25b、25c、25d、25e、25f 流路
27 ピペット洗浄部材
201 貫通路
202、203開口部
204a 吐出口
205a 排出口
206a 吸気口
204 洗浄液供給路
205 洗浄液吸引路
206 大気吸気路
201a 小径部
201b 大径部
201c テーパー部
28 チャンバ
29、30 陰圧ポンプ
31a、31b、31c 保持部材
31d ガイドレール
31e 溝
31f 水平板状部
32 ステッピングモータ
32a 回転軸
32b 主動プーリ
32c 従動プーリ
32d タイミングベルト
3 試料容器
5 制御部
51 CPU
52 ROM
53 メモリ
54 ドライバ回路
54a モータドライバ
54b 電磁弁ドライバ
54c 温度制御回路
54d ポンプ制御回路
100 測定装置
20 試料分注アームユニット
30,40 試薬用分注アームユニット
50 テーブルユニット
60 検出ユニット
70 搬送ユニット


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットを洗浄するためのピペット洗浄部材であって、
ピペットを移動自在に受け入れ可能であり、入口、貫通路および出口を有する貫通孔と、
前記貫通孔の前記出口近傍に設けられた第1開口を介して前記貫通路に洗浄液を供給するための洗浄液供給路と、
前記第1開口より入口側に設けられた第2開口を介して前記貫通路に接続され、前記洗浄液供給路から第1開口を介して前記貫通路に供給された洗浄液を吸引排出するための洗浄液吸引路と、
前記第2開口より入口側に設けられた第3開口を介して前記貫通路に接続され、前記入口から流入する大気を吸引排出するための大気吸引路と、を備えるピペット洗浄部材。
【請求項2】
前記ピペット貫通路は、円形断面を有し、内径の異なる第1の部分及び第2の部分ならなり、前記第2開口及び前記第3開口が前記第1の部分に、前記第1開口部が前記第2の部分にそれぞれ設けられ、前記第1の部分の内径は、前記第2の部分の内径よりも小さい請求項1に記載のピペット洗浄部材。
【請求項3】
ピペットを移動自在に受け入れ可能であり、入口、貫通路および出口を有する貫通孔と、前記貫通孔の前記出口近傍に設けられた第1開口を介して前記貫通路に洗浄液を供給するための洗浄液供給路と、前記第1開口より入口側に設けられた第2開口を介して前記貫通路に接続され、前記洗浄液供給路から第1開口を介して前記貫通路に供給された洗浄液を吸引排出するための洗浄液吸引路と、前記第2開口より入口側に設けられた第3開口を介して前記貫通路に接続され、前記入口から流入する大気を吸引排出するための大気吸引路と、を備えたピペット洗浄部材と、
ピペットと前記ピペット洗浄部材とを相対的に移動させるための駆動部と、
前記洗浄液供給路に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記洗浄液吸引路を介して洗浄液を吸引し、排出する洗浄液排出部と、
前記大気吸引路を介して大気を吸引する大気吸引部と、を備えたピペット洗浄装置。
【請求項4】
前記ピペット貫通路は、円形断面を有し、内径の異なる第1の部分及び第2の部分ならなり、前記第2開口及び前記第3開口が前記第1の部分に、前記第1開口部が前記第2の部分にそれぞれ設けられ、前記第1の部分の内径は、前記第2の部分の内径よりも小さい請求項3に記載のピペット洗浄装置。
【請求項5】
前記貫通孔をピペットが貫通した状態で、且つ前記大気吸引部により前記大気吸引路を介して吸引が行われた状態で、前記洗浄液供給部から前記洗浄液供給路を介して貫通路に洗浄液の供給が行われるとともに、前記洗浄液排出部による洗浄液の吸引排出が行われてピペットの外部の洗浄が行われる請求項3または4に記載のピペット洗浄装置。
【請求項6】
前記ピペットの外部の洗浄が、ピペットの根元側から先端側に向かってピペット洗浄部材を移動させながら行われる請求項5に記載のピペット洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給部が前記ピペット内部に洗浄液を供給可能に連結されており、
前記ピペットの先端が前記第2開口と前記第3開口との間に位置した状態で、且つ前記大気吸引部により前記大気吸引路を介して吸引が行われた状態で、前記洗浄液供給部からピペット内部に洗浄液を供給することにより、前記ピペットの内部の洗浄が行われる請求項3〜6の何れか1項に記載のピペット洗浄装置。
【請求項8】
ピペットにより分注された試料を分析する試料分析装置において、試料の分注を行った後のピペットを請求項3〜7の何れか1項に記載されたピペット洗浄装置によって洗浄する試料分析装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−93521(P2007−93521A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286260(P2005−286260)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】