説明

ピペラシリンおよびタゾバクタムを含みガラクトマンナンを実質的には含まない組成物

本発明は、ガラクトマンナンを実質的には含まないかまたは低いレベルのガラクトマンナンを含む、Zosyn(登録商標)の薬学的組成物に関する。本発明は、上記薬学的組成物を調製するためのプロセスに関する。本発明は、予め混合されたピペラシリンまたはピペラシリン−タゾバクタムの新規な薬学的組成物を当該分野に提供する。この薬学的組成物は、ガラクトマンナンの存在を回避し、非経口投与による細菌感染の処置または制御のために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ガラクトマンナンを実質的には含まない、Zosyn(登録商標)の薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
Zosyn(登録商標)は、米国における抗生物質市販製品であり、多くの外国においてはTazocin商標であり、ピペラシリンナトリウムおよびタゾバクタムナトリウムを含む。この製品は、特許文献1に開示される。特許文献2および特許文献3は、凍結乾燥形態のピペラシリンを開示する。
【0003】
Zosyn(登録商標)は、中程度の感染症〜重篤な感染症の処置において使用される抗生物質である。特に、Zosyn(登録商標)は、Staphylococcus aureusに起因する院内肺炎のような状態においてピペラシリン耐性、ピペラシリン/タゾバクタム感受性β−ラクタマーゼ産生微生物株によって引き起こされる中程度の感染症〜重篤な感染症の処置において;Escherichia coliに起因する腹腔内感染(特に、虫垂炎(破裂または膿瘍と併発する)および腹膜炎、Staphylococcus aureusに起因する皮膚感染症および皮膚構造感染症(蜂巣炎、皮膚膿瘍、および虚血性脚感染症/糖尿病性脚感染症を含む)の処置において;ならびに婦人科感染症(特に、Escherichia coliに起因する分娩後子宮内膜炎または骨盤炎症疾患)の処置において、使用される。これらの感染症の深刻さは、容易に利用可能で信頼に足る処置についての必要性を強調する。
【0004】
医薬は、乳濁物、懸濁物、または溶液へと処方されるだけではなく、使用前に再構成されるべき凍結乾燥形態へも処方される。有利なことには、凍結乾燥調製物は、安定であり、保存され得、そして容易に再構成される。さらに、凍結乾燥調製物は、滅菌状態でかつ不溶性物質を本質的に含まない状態にて維持され得る。
【0005】
Zosyn(登録商標)は、静脈内投与前に適合性再構成希釈剤を添加することにより再構成される粉末(凍結乾燥製品)として入手可能である。Zosyn(登録商標)は、真菌細胞壁に由来する炭化水素ポリマーでありかつ発酵プロセスにおいて形成される、微量のガラクトマンナンを含むことが見出されている。ガラクトマンナンの存在は、侵襲性アスペルギルス症(IA)についての特定の診断試験を妨害して擬陽性を与えることが示されている。存在はするが、ガラクトマンナンは、患者に対して健康上のリスクを増加することはない。
【特許文献1】米国特許第4,562,073号明細書
【特許文献2】米国特許第4,477,452号明細書
【特許文献3】米国特許第4,534,977号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Zosyn(登録商標)の薬学的組成物中にガラクトマンナンが存在することの不利点が、本発明によって克服される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
Zosyn(登録商標)は、微量のガラクトマンナン(真菌細胞壁由来の炭水化物ポリマーである)を含むことが見出されている。しかし、存在はするが、ガラクトマンナンは、患者に対して健康上のリスクを増加することはない。
【0008】
侵襲性アスペルギルス症(IA)は、免疫無防備状態の患者において最も頻繁に観察される致死性真菌感染である。血清中に循環アスペルギルスガラクトマンナン抗原が存在することは、侵襲性アスペルギルス症(IA)(致死性真菌感染である)の指標である。免疫無防備状態の患者は、頻繁に、細菌感染を防止するための予防的Zosyn(登録商標)処置に供される。患者における侵襲性アスペルギルス症の診断は、しばしば、アスペルギルスガラクトマンナンの存在を検出することによって血清学的方法に基づいてなされる。しかし、Zosyn(登録商標)中に微量のガラクトマンナンが存在することは、特定の診断キットを使用した場合には、IAについて擬陽性試験結果をもたらす。Zosyn(登録商標)からガラクトマンナンを除去することは、そのキットを使用する場合にIAについての擬陽性診断試験結果をもたらす可能性を排除または減少するという利点を有する。
【0009】
本発明は、予め混合されたピペラシリンまたはピペラシリン−タゾバクタムの新規な薬学的組成物を当該分野に提供する。この薬学的組成物は、ガラクトマンナンの存在を回避し、非経口投与による細菌感染の処置または制御のために有用である。この組成物は、(a)有効量のピペラシリンもしくはその薬学的に受容可能な塩(通常は、ピペラシリンナトリウムとして)、および(b)有効量のタゾバクタムもしくはその薬学的に受容可能な塩(通常は、タゾバクタムナトリウムとして)を含む。本発明の薬学的組成物は、(A)非経口投与前に適合性再構成希釈剤を添加することによって再構成され得る粉末形態であっても、(B)非経口投与に使用する準備ができている形態であっても、(C)融解され得、かつ非経口投与に使用する準備ができている、凍結形態であってもよい。本発明の組成物は、ガラクトマンナンを実質的には含まない状態で提供される。
【0010】
本発明は、さらに、ガラクトマンナンを実質的には含まない凍結乾燥薬学的組成物を調製するためのプロセスを包含する。このプロセスは、
a)ピペラシリンおよびタゾバクタムを水性溶媒中に溶解して溶液を形成し、そのpHを約6.5に調整する工程;
b)上記溶液をカットオフフィルタに通して濾過する工程;
c)濾液を収集する工程;
d)上記濾液を、凍結乾燥機中にて−35℃未満の温度まで冷却する工程;
e)上記凍結乾燥機を圧力約300μM Hg(水銀μm)(40パスカル)まで排気し、上記凍結乾燥機を約+5℃まで加熱する工程;
f)上記温度および圧力を、上記水性溶媒から水を除去するために充分な時間維持して、凍結乾燥固体を形成する工程;
g)上記凍結乾燥固体を、約+45℃にて乾燥する工程;
を包含する。
【0011】
本発明はまた、哺乳動物に投与する前に適合性再構成希釈剤を添加することによって再構成され得る粉末形態の薬学的組成物、または融解された場合に哺乳動物に投与する前に適合性希釈剤で希釈され得る凍結組成物の形態の薬学的組成物を製造するためのプロセスを包含し、このプロセスは、ガラクトマンナンを実質的には含まない溶液を凍結または凍結乾燥する工程であって、上記溶液は、(a)有効量のピペラシリンもしくはその薬学的に受容可能な塩、(b)有効量のタゾバクタムもしくはその薬学的に受容可能な塩を水性ビヒクル中に含む、工程;を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(好ましい実施形態の説明)
本発明の組成物は、他の形態の投与用ピペラシリンおよび投与用ピペラシリン−タゾバクタムを超える利点を提供する。特に、本発明は、ガラクトマンナンを実質的には含まない組成物を提供する。Zosyn(登録商標)の組成物中にガラクトマンナンが存在しない場合、侵襲性アスペルギルス症の決定のために使用される抗体試験の妨害および擬陽性試験結果が存在しない。このガラクトマンナンを除去または減少することにとって重要なのは、約3kD分子量(mw)〜約10kD分子量(mw)の適切なカットオフフィルタを使用することである。このガラクトマンナンは、そのフィルタ上に収集される。ピペラシリンまたはピペラシリン−タゾバクタムは、このフィルタを通過し、そして収集された濾液中に存在する。好ましいのは、約3kDの分子量カットオフフィルタである。より好ましいのは、約5kDのカットオフフィルタである。
【0013】
ガラクトマンナンの除去または減少は、以下の様式で進行する:約10mg/mlのZosyn(登録商標)水溶液が、調製される。この溶液は、一連の微量遠心分離機フィルタデバイス(Pall Life Sciences)に適用され、それらのフィルタは、10,000×gにて遠心分離される。この手順により、この溶液が限外濾過膜に通される。溶質が、分子量に基づいてこの膜によって分離される。低分子量物質(例えば、ピペラシリンおよびタゾバクタム)は、限外濾過膜を通過し(濾液)、一方、その膜のカットオフよりも大きい分子量を有する物質は、そのフィルタによって効率的に保持される(保持液)。ガラクトマンナンは、25,000〜75,000という高い分子量を有すると報告されている;ピペラシリンおよびタゾバクタムは、<1000という低分子量を有する。ガラクトマンナンを含むZosyn(登録商標)の溶液が3000mwカットオフフィルタに適用されて遠心分離された場合、そのガラクトマンナンは、保持液(R)中に見出される。その濾液(F)は、ピペラシリン成分およびタゾバクタム成分を含み、その濾液は、ガラクトマンナンについて試験して陰性である。同様の結果が、5kD膜を用いて見出される。10kDカットオフフィルタを使用して見出される結果は、少量のガラクトマンナンがその濾液中にて見出されることを示す。重要なことは、出発物質と比較した場合に、濾液中のピペラシリンおよびタゾバクタムの強度喪失がないことである。代表的な実験において、このプロセスの後に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った場合、以下の結果が限外濾過後に得られる:
1. Zosyn(登録商標)
タゾバクタム回収−100.3%
ピペラシリン一水和物−99.0%
2. ピペラシリン−100.1%
3. アンピシリン−99.8%。
【0014】
このプロセスは、市販の限外濾過(UF)デバイスおよび限外濾過膜を使用して、商業的操作のための生産規模に容易に適合される。
【0015】
ガラクトマンナンは、限外濾過によってZosyn(登録商標)溶液から効率的に除去され得る。研究によって、適切な分子量カットオフ膜フィルタを通して濾過すると、高分子量ガラクトマンナンが、低分子量Zosyn(登録商標)成分から分離することが示されている。ガラクトマンナンのさらなる除去、ならびにピペラシリンおよびタゾバクタムの回収増加は、カットオフ限外濾過の一部として膜フィルタを用いるダイアフィルトレーションを使用して、商業的操作においてさらに達成され得る。ダイアフィルトレーションにおける膜フィルタは、ガラクトマンナンを保持し、Zosyn(登録商標)成分が通過して濾液中にて収集されるのを可能にする。ガラクトマンナンはまた、6−アミノペニシラン酸(6−APA)から除去され得、アンピシリンが、適切な膜フィルタによって除去され得る。
【0016】
(実験プロトコル)
(表題:BIO−RAD Platelia(登録商標)Aspergillus EIA法を使用する、ガラクトマンナンの存在についてのZosyn(登録商標)、活性薬剤成分(API)および他の抗生物質の評価)
(1.目的)
このプロトコルの目的は、種々のロットのZosyn(登録商標)、APIおよび他の抗生物質を、BIO−RAD Platelia(登録商標)Aspergillus EIAキットを使用してガラクトマンナン抗原の存在について評価するための、実験設計を記載することである。
【0017】
(2.材料および装置)
(2.1.サンプルおよび試薬)
(1.サンプル)
Zosyn(登録商標) 2.250g/バイアル
Zosyn(登録商標) 4.5g/バイアル
Tazoxil 4.5g(ジェネリックZosyn(登録商標))(ブラジル製)
Tazac 4.5g(ジェネリックZosyn(登録商標))(インド製)
Piperacilina Tazobactam 4.5g(ジェネリックZosyn(登録商標))Richet(アルゼンチン製)
他の製品が、BIO−RAD Platelia(登録商標)Aspergilus EIA診断キットにおけるその応答を評価するためにこのプロトコル中に含まれる。
【0018】
2.Platelia(登録商標)Aspergilus EIA(BiO−RAD,Redmond,WA)、No.62793(96 Test Kit)またはNo.62794(480 Test Kit)。
【0019】
(2.2.装置)
1. マイクロプレートリーダー:Dynex MRX ELISAプレートリーダー
2. Ultrawash II Automatic washer/Aspirator(Dynex)
3. バイオセーフティキャビネット
4. 沸騰水浴
5. インキュベーター
6. ボルテックス攪拌機
7. 滅菌チューブ、滅菌グローブ、および滅菌ピペットチップ
8. マイクロピペット。
【0020】
(3.環境コントロール)
試薬、サンプル、およびサンプル希釈物の調製は、バイオセーフティキャビネット中にて無菌条件下で行う。
【0021】
(4.試験部位)
Zosyn(登録商標)
実験は、Chemical Process Development Biochemistry Laboratory,Wyeth Research,Pearl River,NYにて行った。
【0022】
(5.アッセイの原理および手順)
(5.1.アッセイ原理)
Platelia(登録商標)Aspergilus EIAは、ヒト血清中のガラクトマンナン検出のために使用される一段階免疫酵素的サンドイッチマイクロプレートアッセイである。ラットモノクローナル抗体EBA−2が、その抗原を捕捉するために使用され、その後、ペルオキシダーゼ結合体化抗体を使用して検出される。そのサンプルの吸光度値が、「カットオフ」コントロールの吸光度値と比較され、それによってガラクトマンナンの指標/相対濃度が決定される。
【0023】
(5.2.手順)
BIO−RAD Platelia(登録商標)Aspergilus EIAキットのユーザーマニュアルを、試薬調製、ステップバイステップアッセイ手順、ならびに試薬およびサンプルの取り扱いに関する安全性指示について参照する。
サンプル調製:注射用水(WFI)(USP(米国薬局方)グレード)または他の任意の適切な希釈剤中にて再構成し、望ましい濃度にて希釈物を生成する。
そのサンプルの希釈物は、進行中の実験の結果に基づいて変更され得る。
【0024】
(6.実験設計)
(6.1.製品評価)
(1.Zosyn(登録商標)の評価)
注射用水(WFI)/リン酸緩衝化生理食塩水または他の適切なマトリックス中にて望ましい濃度のZosyn(登録商標)バイアルを、分析する。
【0025】
(2.活性薬剤成分(API)の評価)
ピペラシリンおよびタゾバクタム、ならびに任意の他の利用可能な成分のバイアルを、注射用水(WFI)/リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で分析する。
【0026】
(3.ジェネリックZosyn(登録商標)および他の抗生物質)
他の利用可能なジェネリックZosyn(登録商標)/抗生物質を、WFI/PBS中にて望ましい濃度で分析する。
【0027】
(6.2.濾過研究)
(Zosyn(登録商標))
1. 再構成されたサンプルを、適切な分子量のカットオフスピンフィルタを使用して濾過し、その濾液を望ましい濃度で試験する。適切な場合、濾過能力に関して他の研究を評価する。
【0028】
(3.合格基準)
(カットオフコントロール) 各(2)カットオフコントロール血清ウェルの光学密度(OD)450は、0.3と0.8との間になければならない。個々の値各々は、本明細書に従うべきである。
【0029】
(平均カットオフ)
コントロールは、2つのウェルの読み取り値の平均である(BIO−RADキットの指示書を参照のこと)。
【0030】
(ポジティブコントロール):ポジティブコントロール血清の指標は、2よりも大きくなければならない。
【0031】
(ネガティブコントロール):ネガティブコントロールの指標は、4未満でなければならない。これらのコントロールのうちのいずれかがこの基準を満たさない場合、そのアッセイは、無効となる。実験サンプルの指標を決定するために、試験サンプルの吸光度(OD450)を、平均カットオフコントロールで除算する。0.5よりも大きな指標は、陽性の結果と見なされる。0.5未満の指標は、陰性の結果と見なされる。
【0032】
(4.基準)
Platelia(登録商標)Aspergilus EIAマニュアル(BIO−RAD,Redmond,WA)
I=ODポジティブコントロール(R5)>2
平均カットオフコントロールOD
I=ODネガティブコントロール(R3)<0.4
平均カットオフコントロールOD 。
【0033】
(高速液体クロマトグラフィーによる水性サンプル中のZosyn(登録商標)(ピペラシリン/タゾバクタム)の強度および識別)
(1.方法の概要)
Zosyn(登録商標)のサンプルの一部を溶解させ、希釈溶媒で希釈し、次いで、逆相カラムでクロマトグラフする(USP 23 NF18、Vol.25、p.7497、Supp.6、p.3722)。ピペラシリンおよびタゾバクタムの強度を、サンプル調製物のクロマトグラムにおける相対ピーク応答と、同時に得られる標準物質のクロマトグラムの相対ピーク応答とを比較することによって決定する。ペピラシリンおよびタゾバクタムを、サンプル調製物のクロマトグラムにおけるそれぞれのピークの保持時間を、標準調製物のクロマトグラムにおけるそれぞれのピークの保持時間と比較することによって同定する。ピペラシリンについてこの方法の報告限界値(reporting limit)は、注入される溶液1mLに対して0.16μgである。タゾバクタムについてこの方法の報告限界値は、注入される溶液1mLに対して0.077μgである。
【0034】
(2.専用の装置)
クロマトグラフィーカラム − 長さ約25cm、内径約4.6mm、Phenomenex Luna C18(2)(5μmサイズの粒子)が充填される。
注:長さ150mm〜300mmのカラムは、システムの適合性要件を満たすという条件で使用され得る。
ポンプ − 5000psiまでの圧力で作動し得る一定流量ポンプ。
検出器 − 220nmにて約1.0の吸光度単位フルスケール(Absorbance unit full scale)の感度で作動し得る紫外分光光度検出器。
注入器 − 再現性のある注入および5℃のサンプルトレイ温度を維持し得る任意の手動注入器または自動注入器。
積分器 − 電子積分器が好ましい。
記録器 − 必要に応じて。検出器の作動出力電圧に適合する記録デバイス。
メンブランフィルタ − 孔径0.45μm、Nylon−66メンブランフィルタ。
カラム温度制御器 − 30℃のカラム温度を維持し得るもの。
【0035】
(3.試薬および材料)
メタノール − HPLCグレード。
リン酸ナトリウム、一塩基性 − (NaHPO)試薬グレード。
テトラブチル水酸化アンモニウム 0.4M − 試薬グレード。
リン酸 − 85%、試薬グレード。
水 − HPLCに適切なもの。
0.2M リン酸一ナトリウム緩衝溶液 − 27.6gのリン酸一ナトリウムを秤量し、水で1Lに希釈する。
20%リン酸溶液 − 23.5mLの85%リン酸を水で100mLに希釈し、混合する。
2%リン酸溶液 − 2.4mLの85%リン酸を水で100mLに希釈し、混合する。
希釈溶媒 − 移動相。
移動相 − 447mLの水を量り、100mLの0.2Mリン酸一ナトリウム緩衝溶液を添加し、3.0mLのテトラブチル水酸化アンモニウムをピペットで取り、450mLのメタノールを添加する。混合する。室温まで冷却する。20%リン酸溶液を用いてその溶液のpHを約5.6に調整し、次いで、2%リン酸溶液を用いて5.50±0.02に調整する。必要に応じて、0.45μmの孔径のメンブランフィルタで濾過する。必要に応じて脱気する。
ピペラシリン基準標準物質(reference standard) − 既知の強度を有するもの(S)。
タゾバクタム基準標準物質 − 既知の強度を有するもの(S)。
【0036】
(4.機器の準備)
1. 検出器の波長を220nmに、そして感度を約1.0の吸光度単位フルスケールに設定する。(感度の設定は、使用される装置に依存して変動し得る)。
2. 流速を1分あたり0.8mLに設定する(1分あたり0.5mL〜1.2mLが許容される)。
3. カラム温度制御器を30℃に設定する。
4. 注入器/自動サンプル採取器温度制御器を5℃に設定する。
5. 安定なベースラインが得られるまで、移動相をカラムにポンピングする(通常は、約15×カラム容積)。
【0037】
(5.標準物質の調製)
1. 約24mgのタゾバクタム基準標準物質および20mgのピペラシリン基準標準物質を、2つの別々の50mlメスフラスコに正確に秤量する。
2. この標準物質を数滴のメタノールで溶解させ(必要に応じて超音波処理する)、タゾバクタムを希釈溶媒で容量まで希釈する。これは、タゾバクタム標準物質のストック溶液である。
3. 5.0mLのタゾバクタム標準物質のストック溶液をピペットでピペラシリンフラスコに取る。希釈溶媒で容量まで希釈し、混合する。これは、ピペラシリン/タゾバクタム標準調製物である。(それぞれ、約400μg/mLおよび約48μg/mL)。これらは、一点標準計算(single point standard calculation)用である。
4. (この工程は、ビヒクル/コントロールサンプルがアッセイされる場合のみ必要とされる)。2.0mLのピペラシリン/タゾバクタム(400/48μg/mL)標準調製物をピペットで100mLメスフラスコに取り、希釈溶媒で容量まで希釈する。2.0mLのこの溶液をピペットで各々100mLおよび25mLのメスフラスコに取り、希釈溶媒で容量まで希釈する。これらは、それぞれ、ピペラシリンおよびタゾバクタムについての報告限界標準調製物である(1番目の溶液について約0.16μg/mLのピペラシリン、および2番目の溶液について約0.077μg/mLのタゾバクタム)。これらの調製物の各々について、適切な濃度(relevant concentration)のみが使用される。
注1:ピペラシリンについての線形性は、100μg/mL〜500μg/mLで確立されている。タゾバクタムについての線形性は、10μg/mL〜100μg/mLで確立されている。任意の連続希釈物が調整され、それゆえ線形領域内に標準調製物濃度が得られるという条件で、比例してより少ないかまたはより多い標準重量が取られ得る。このことがなされる場合、計算のために適切な調整がなされなければならない。
注2:最終希釈物および注入された濃縮物が線形領域内にあるという条件で、他の希釈スキームが可能である。このことがなされる場合、計算のために適切な調整がなされなければならない。
【0038】
(6.サンプルの調製)
要求されるサンプル濃度に基づいて、希釈溶媒中で必要な希釈を行って、ピペラシリンおよびタゾバクタムについて単一標準濃度(それぞれ、約400μg/mLおよび48μg/mL)付近のサンプル溶液濃度を得る。予め量った典型的な±2mLのサンプルについて、全サンプルを定量的に移す。バイアル、バイアルのキャップ、およびバイアルの首の外側をリンスし、そのリンス液を希釈フラスコに加える。
【0039】
必要な場合、リンスしている間サンプルバイアルをボルテックスして、サンプルのすべてを取り出す。希釈溶媒で容量まで希釈し、十分に混合する。任意の連続希釈もまた、希釈溶媒中でなされるべきである。サンプルは、注入される前の時間を最小限にするために一度に処理されるべきである。
注1:典型的でないサンプルは、代替的な調製手順を必要とし得る。例えば、サンプル容積またはサンプル濃度は、アリコートが取られることを必要とし得る。
注2:ピペラシリンについて、ビヒクル/コントロールサンプルを典型的な2mLサンプルに対して2:10に希釈する。タゾバクタムについて、そのサンプルをさらに2:10に希釈する。
【0040】
サンプルが予め秤量される場合、最初のサンプル容量は、以下のとおりに濃度を用いて計算されるべきである:
サンプル容積(mL)=サンプル質量(g)/密度(g/mL)

【0041】
(7.システムの適合)
1. 安定なベースラインが得られた後、10μLのピペラシリン/タゾバクタム標準調製物を3回注入し、ピペラシリン/タゾバクタム基準標準物質のクロマトグラムを得る。これらの注入は、システムの適合および計算のために使用される。
2. ピペラシリンの利用率(k’)を計算する。利用率は3.5以上でなければならない。そうでない場合、新しい移動相を調製するかまたはカラムを交換する。
注:ta値(保持されないピークの保持時間)は、カラム容積の60パーセントをmL/分単位の流速で除算することによって見積もられ得る。指定のPhenomenexカラムについて、taの見積りは、2.5mL/(mL/分単位の流速)である。
3. USPで指示されるように、カラムテーリング係数(T)を計算する。カラムテーリング係数は、1.5未満でなければならない。1.5より大きい場合、クロマトグラフィーシステムを修復し、そして/またはカラムを交換する。
4. USPで指示されるように、理論段(N)を計算する。Nの値は、3000以上でなければならない。3000より小さい場合、流速を許容範囲内に小さくし、カラムを交換し、そして/またはクロマトグラフィーシステムを修復する。
5.ピペラシリンの3回の反復注入についてRSDを計算する。RSDは2.0%未満でなければならない。
【0042】
(8.手順)
(A.強度)
1. (この工程は、ビヒクル/コントロールサンプルがアッセイされる場合にのみ必要とされる)。アッセイ中のある時点で、10μLの希釈溶媒を注入して、ブランクのクロマトグラムを得る。
10μLのサンプル調製物および報告限界標準調製物を注入し、目的のピークの保持時間において応答を得る。
2. 10μLのサンプル調製物を注入し、目的のピークの応答を得る。
【0043】
(B.同定)
1. 各々10μLのピペラシリン/タゾバクタムを注入し、それぞれのピークの保持時間を得る。
2. 10μLのサンプル調製物を注入し、それぞれのピークの保持時間を得る。
【0044】
(9.計算)
(A.強度)
1. 以下の等式から標準調製物のピペラシリン/タゾバクタム濃度を計算する:
ピペラシリンのmg/ml=(Wr)(S)/(50)
タゾバクタムのmg/ml=(Wr)(S)(V1)/(50)(V2)
ここで、
Wr=それぞれの基準標準物質の重量、mg
S=それぞれの基準標準物質の強度、小数
V1=標準調製物を生成するために使用される標準物質ストック溶液の容積、mL
50=標準物質ストック溶液または標準調製物の容積、mL
V2=標準調製物の容積、mL
である。
2. ピペラシリンおよびタゾバクタムについて:
以下の等式から強度を計算する:
ピペラシリンまたはタゾバクタムのmg/mL=(Cs)(RspI)(DspI)/(Rstd)
ここで、
Cs=上の1からのそれぞれの標準物質の濃度、mg/mL
RspI=サンプル調製物に対する応答
DspI=サンプル調製物に対する希釈係数
Rstd=それぞれの標準調製物に対する平均応答
である。
【0045】
(B.同定)
1. サンプル調製物のクロマトグラムにおけるそれぞれのピークの相対保持値(Rr)を、以下の式(expression)を用いて計算する:
Rr=サンプルのクロマトグラムからのそれぞれのピークのRt/標準物質のクロマトグラムからのそれぞれのピークのRt
ここで、
Rt=保持時間、分
である。
2. Rrが1.0±0.05である場合、陽性としての同定を報告し、他の場合は、陰性としての同定を報告する。
【0046】
(10.報告限界値)
本発明の方法について、ピペラシリンに対する報告限界値は、注入される溶液1mLに対して0.16μgである。これは、2mLから10mLに希釈された2mLのビヒクル/コントロールサンプル1mLに対して0.8μgである。本発明の方法について、タゾバクタムに対する報告限界値は、注入される溶液1mLに対して0.077μgである。これは、2mL〜10mLに希釈され、再度2mLから10mLに希釈された2mLのビヒクル/コントロールサンプル1mLに対して1.92μgである。
【0047】
(濾過研究)
Zosyn(登録商標)(代表的な市販のサンプル)を水に100mg/mlで溶解させる。ピペラシリンを飽和炭酸水素ナトリウムに100mg/mlで溶解させる。Zosyn(登録商標)およびピペラシリンをUSP水を用いて10mg/mlおよび1mg/mlに希釈する。10mg/mlおよび1mg/mlのZosyn(登録商標)(300μl)ならびにピペラシリンを、10kDまたは3kDの分子量のカットオフフィルタを備えるナノセップ(nanosep)スピンデバイスに移す。サンプルをエッペンドルフ遠心分離機に置き、10,000rpmで10分間遠心分離する。遠心分離の最後に、サンプルをパススルーしたものに回収した。ナノセップスピンデバイスの上部に残ったガラクトマンナンを、アッセイのために200μl水で再懸濁させる。代表的な結果を以下の実施例1〜4に示す。ガラクトマンナンについての光学密度(OD)を各々の実施例に対して示し、同様に実験サンプルの決定された指標を示す。
結果:
Neg.CTL:0.078、指標=0.14
C−O TL:0.534、0.554、平均光学密度(OD)=0.544
Pos CTL:2.009、指標3.69。
【0048】
(実施例1 10K(10kD)フィルタ)
【0049】
【表1】

(実施例2 3K(3kD)フィルタ)
【0050】
【表2】

(実施例3 10K(10kD)フィルタ)
【0051】
【表3】

(実施例4 3K(3kD)フィルタ)
【0052】
【表4】

(実施例5)
実験の活動(activity)は、以下から構成された:(1)10Lのバッチサイズを使用して、ZOSYN(登録商標)バルク生成物を処方すること、(2)少なくとも5μmの空隙サイズを有するフィルタを通して、バルク溶液を濾過すること、および(3)限外濾過/ダイアフィルトレーション技術により、このバルク溶液からガラクトマンナン内容物を取り除くこと。サンプリング手順は、10倍(10X)までの濃度のバルク溶液の限外濾過処理および6つのダイアフィルトレーション(6DV)手順の間に行なった。
【0053】
(バルク処方)
Zosyn(登録商標)バルク生成物の開発中のバッチのバルク溶液を、250mg/mL ピペラシリンおよび31.25mg/mL タゾバクタムの濃度(ピペラシリンの2%過剰)にて処方して、反応を完了させた。ピペラシリン一水和物(PMH)原材料(ロット番号2000084742、ガラクトマンナン(GM)に対して陽性であると(Bio−Rad PlateliaTM EIAキットを用いて)試験済み)を、この研究に使用した。炭酸水素ナトリウム(制限試薬)を、化学量論ベースで添加した。総バッチサイズは、10Lであった。重量データを、原材料表にまとめる。バルク処方を、予想通りに十分に実施した。プロトコルの目的のために、生成物であるバルク溶液は、最終容量(Qs)までにしなかった。溶液が、6.0のpHに達したので、反応が完了したものとみなした(許容可能なpH限界は、6.8以下である)。約8リットル(8L)のバルク生成物の容量を、qsまでに得た。この研究の目的のために、生成物であるバルク溶液は、最終容量までにしなかった。原材料表は、実験バッチの製造のために使用した異なる処方物の成分をまとめる。
【0054】
【表5】

(濾過)
一旦反応が完了し、そして、10Lの最終容量に到達する前に、バルク生成物を、0.2μmの空隙サイズのナイロンメンブレンフィルタ(CUNO(登録商標)LifeASSURETMカプセル)を通して濾過した。
【0055】
(限外濾過/ダイアフィルトレーション手順)
限外濾過(UF)による濾過手順を、5kDのOmega(登録商標)膜(品番OS005G02)を使用することによって行なった。GMの除去効率が、1kD、3kDおよび10kDの膜よりも大きいので、上記の膜サイズを選択した。
【0056】
総容量6LのZOSYN(登録商標)バルク溶液を使用して、濾過システムの作動効率(operational efficiency)を評価した。UFシステムを、37psiの供給圧(42psi、最大圧)および、35psiの保持圧(39psi、最大圧)で作動した。限外濾過の間、透過プールのサンプルを、2×、4×、8×および10×の濃度で採取した。一旦10×濃度が達成されると、表Aに示すように、ピペラシリンについて96%、そしてタゾバクタムについて86%の回収率が達成された。
【0057】
その後、ダイアフィルトレーションによる濾過手順を、6つのダイアフィルトレーション容量(2DV、4DV、5DVおよび6DV)を完了することにより、実行した。回収したデータは、表Bに示されるように、4つのダイアフィルトレーション容量(4DV)の後、ピペラシリンおよびタゾバクタムの両方について、100%の収率が得られることを実証した。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

同時に、GM検出試験を、表Aおよび表Bに含まれる各サンプルについて行なった。GM検出試験について得られた結果を、表Cに示す。
【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

透過プールのサンプルは、ガラクトマンナンについて陰性の結果を与えた。全ての試験結果は、十分に確立された規格の範囲内であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的組成物であって、
(a)有効量のピペラシリンもしくはその薬学的に受容可能な塩、
(b)有効量のタゾバクタムもしくはその薬学的に受容可能な塩
を含み、
ガラクトマンナンもその薬学的に受容可能な塩も実質的には含まない、
薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、前記ピペラシリンは、ピペラシリンナトリウムである、薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薬学的組成物であって、前記タゾバクタムは、タゾバクタムナトリウムである、薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の薬学的組成物であって、該組成物は、凍結乾燥粉末である、薬学的組成物。
【請求項5】
哺乳動物における細菌感染の処置または制御のための方法であって、該方法は、
該哺乳動物に対して、治療上有効な量の請求項1に記載の薬学的組成物を投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
ガラクトマンナンを実質的には含まない凍結乾燥薬学的組成物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、
a)ピペラシリンおよびタゾバクタムを水性溶媒中に溶解して溶液を形成し、そのpHを約6.5に調整する工程;
b)該溶液をカットオフフィルタに通して濾過する工程;
c)濾液を収集する工程;
d)該濾液を、凍結乾燥機中にて−35℃未満の温度まで冷却する工程;
e)該凍結乾燥機を圧力約300μM Hg(水銀μm)(40パスカル)まで排気し、該凍結乾燥機を約+5℃まで加熱する工程;
f)該温度および圧力を、該水性溶媒から水を除去するために充分な時間維持して、凍結乾燥固体を形成する工程;
g)該凍結乾燥固体を、約+45℃にて乾燥する工程;
を包含する、プロセス。
【請求項7】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、前記カットオフフィルタは、約3kD分子量〜約10kD分子量である、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、前記カットオフフィルタは、約3kD分子量である、薬学的組成物。
【請求項9】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、前記カットオフフィルタは、約5kD分子量である、薬学的組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の薬学的組成物であって、前記収集された濾液の実験サンプルの指標は0.5未満である、薬学的組成物。
【請求項11】
哺乳動物に投与する前に適合性再構成希釈剤を添加することによって再構成され得る粉末形態の薬学的組成物、または融解された場合に哺乳動物に投与する前に適合性希釈剤で希釈され得る凍結組成物の形態の薬学的組成物を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、
ガラクトマンナンを実質的には含まない溶液を凍結または凍結乾燥する工程であって、該溶液は、(a)有効量のピペラシリンもしくはその薬学的に受容可能な塩、(b)有効量のタゾバクタムもしくはその薬学的に受容可能な塩を水性ビヒクル中に含む、工程;
を包含する、プロセス。
【請求項12】
薬学的組成物であって、
有効量のピペラシリンもしくはその薬学的に受容可能な塩、
を含み、
ガラクトマンナンもその薬学的に受容可能な塩も実質的には含まない、
薬学的組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の薬学的組成物であって、前記ピペラシリンは、ピペラシリンナトリウムである、薬学的組成物。

【公表番号】特表2007−519747(P2007−519747A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551554(P2006−551554)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/003048
【国際公開番号】WO2005/074925
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【Fターム(参考)】