説明

ピリジンアミン類の調製方法及びこれらの新規多形体

本発明は、3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)及び別のピリジンアミン類を調製及び精製するための改善された方法に関し、ここで、該方法は、反応溶媒としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)を提供する。本発明の方法は、加水分解などの副反応を低減させることにより、及び、困難で労力を要する精製方法の必要性を排除することにより、及び、これまでよりも高い収率で純粋な生成物を提供することにより、従来技術の方法の欠点を克服する。本発明は、フルアジナムの新規結晶多形体形態及びそのような多形体の混合物に関する。本発明は、さらにまた、上記新規多形体の調製方法も提供し、さらに、その多形体を含んでいる医薬組成物並びに農作物及び園芸作物上に存在している有害生物と闘うための殺有害生物剤としてのその多形体の使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジンアミン類の合成に関し、より特定的には、N−フェニルピリジンアミン類(例えば、殺有害生物剤である−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)など)を合成するための改善された方法に関する。本発明は、フルアジナムの新規結晶多形体、これらの調製方法、その多形体を含んでいる組成物及びその殺有害生物剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のピリジンアミン類は、有害な生物(ここで、該有害生物は、例えば、昆虫類、ダニ類、菌類、細菌類及び齧歯類動物などである)と闘うための殺有害生物活性を有している。例えば、米国特許第4,140,778号には殺鼠活性を有する化合物が開示されており、また、米国特許第3,965,109号及び米国特許第3,926,611号には殺有害生物活性を有する化合物が開示されている。
【0003】
米国特許第4,331,670号には、ピリジル環上に特定の置換基を有するN−ピリジンアミン類が開示され、特許請求されている。これらの化合物は、貯蔵されている生産物(industrial product)、種子及び果実上に存在している有害な昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類Tと闘うのに有効であり、また、農作物及び園芸作物並びに畑地(up-land)で生育している有害な生物を防除するのにも有効である。これらの化合物のうちの1種類であるフルアジナムは、現在、2種類の土壌伝染性菌類(スクレロチニア・ミノル(S. minor)及びスクレロチニア・スクレロチオルム(S. sclerotiorum))に起因するレタスの主要な病害である菌核病(sclerotinia drop)を処理するため市販されている。フルアジナム、並びに、ボスカリド、フェンヘキサミド及びフルジオキソニルなどの別の殺菌剤は、レタス以外の作物上のスクレロチニア・ミノル(S. minor)及びスクレロチニア・スクレロチオルム(S. sclerotiorum)に起因する病害に対しても効力を示すことが実証されている。
【0004】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)は、苗床及び地表のいずれにおいても高外気温下で多種多様の花木及び鑑賞草(herbaceous ornamental)に被害を及ぼす病害である白絹病から容器で育てたアオキを保護するうえでも有用であることが知られている。
【0005】
フルアジナムは、広い抗菌スペクトルを有し、植物病害に対して優れた予防効果を示す。フルアジナムは、ボトリチス・シネレア(B. cinerea)のベンゾイミダゾール系及び/又はジカルボキシイミド系に対する耐性菌に対して良好な活性を示した。圃場試験によって、ジャガイモのフィトフトラ・インフェスタンス(Phycophthora infestans)に対するフルアジナムの優れた活性が実証された。フルアジナムは、さらにまた、圃場において繰り返し処理することによってダニ類の個体数を有意に低減させるということも示された(ACS Symposium Series 1995 584, 443-8)。
【0006】
米国特許第4,331,670号(この内容は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる。)には、フルアジナムなどのピリジンアミン類を調製するための以下のスキームに従うカップリングプロセスが開示されている。
【0007】
【化13】

【0008】
上記反応は、THF又はDMFのいずれかを溶媒として使用しており、それによる収率は、それぞれ、75%及び22%であると報告されている。上記溶媒は、当該反応が有する多くの欠点の原因となる。例えば、THFは、低い引火点を有する可燃性の危険な溶媒であり、また、過酸化物形成のもとである。従って、大規模製造におけるTHFの使用は、著しく制限される。さらに、THF及びDMFなどの非プロトン性極性溶媒は、水混和性であり、多量の水を含んでいる共沸混合物として再循環する。水が存在していると、一方では試薬の消費が不完全なものとなり、また、他方では加水分解による副生物が生成されることとなり、その結果、当該反応の収率が低下する。例えば、競合的な副反応により、水の存在下で化合物(1A)が加水分解されて式(4)で表される副生物を生じる。この反応は、最終生成物の収率を著しく低下させる。
【0009】
【化14】

【0010】
さらに、従来技術による方法では、第3の溶媒(酢酸エチル)中への抽出及びシリカゲルでの精製(これは、大規模製造には適さない)を含んでいる非常に時間のかかる後処理段階が必要である。これらの複雑な精製手順は、当該反応中に形成される大量の不純物(例えば、上記で記載した加水分解生成物)を除去するために必要であり、また、40℃を超える温度で促進されるタールの形成及び試薬1Aと試薬2Aの不完全な消費(これは、主として、当該反応を実施する条件が希薄条件(試薬と溶媒の比率 8.2%(w/v)未満)であることに起因する)を排除するために必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今日まで、高純度の生成物を製造するために大規模で使用可能な、フルアジナムの簡便な精製方法は存在していない。さらにまた、フルアジナムの結晶多形体形態も知られていない。従って、当技術分野においては、従来技術による方法の欠点及び不完全さを克服する、フルアジナム及び別のピリジンアミン類を調製及び精製するための効率的な方法が至急求められており、それはまだ満たされていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)及び別のピリジンアミン類を合成するための改善された方法に関し、ここで、該方法は、反応溶媒としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)を提供する。本発明の調製方法は、加水分解などの副反応を低減させることにより、及び、困難で労力を要する精製方法の必要性を排除することにより、及び、これまでよりも高い収率で純粋な生成物を提供することにより、従来技術の方法の欠点を克服する。別の態様においては、本発明は、フルアジナムの新規結晶多形体形態及びそのような多形体の混合物に関する。本発明は、さらにまた、上記新規多形体の調製方法も提供し、さらに、その多形体を含んでいる殺有害生物性組成物並びに農作物及び園芸作物上に存在している有害生物と闘うための殺有害生物剤としてのその多形体の使用方法も提供する。
【0013】
本発明において意図されているように、本発明の出願人らは、フルアジナム及び別のピリジンアミン類を調製するための反応溶媒としてMIBKを使用することによって、大きな労力を要することがなく且つ当該ピリジンアミン生成物の収率と純度の両方を劇的に向上させる、より効率的な調製方法が提供されるということを、予想外に見いだした。これにより、溶媒としてTHF又はDMFを使用する従来技術の方法と比較して著しい改善がもたらされる。第一に、化学収率が、DMFを使用した場合の22%及びTHFを使用した場合の75%から、約98%に向上する。さらに、本発明の方法では、長い時間を要するカラムクロマトグラフィーを単純な結晶化手順に替えることによって、容易な後処理手順が可能である。
【0014】
どのような特定の機序又は理論にも拘束されることを望むものではないが、上記有利点は、MIBKが有するいくつかの有益な特性の結果であると考えられ、ここで、そのような有益な特性としては、以下のものを挙げることができる:(1)再利用が容易であり且つ安全性が向上していること;(2)THF(5%)の場合と比較して再循環された溶媒中の含水量が低いこと(1.6%);(3)水溶解度が低いこと;及び、(4)温度変動に対する感度が低いこと。MIBKの水溶解度が低いことにより、当該反応中に存在する水の量が少なくなり、その結果、加水分解による副生物の量が低減し、収率が増大する。特に、当該反応は非常に発熱性であり且つ高温では大量のタールが生成されるので、温度変動に対する感度が低いことは重要である。
【0015】
さらに、従来技術による方法の欠点は、反応物(1A)と反応物(2A)が両方とも完全には消費されないことであるが、これは、主として、当該反応が実施される希薄条件(溶媒に対する試薬 8.2重量/容積(w/v)未満)に主に起因している。特に、THF、DMF及び別の水混和性溶媒などの溶媒を使用する場合、当該反応は、濃厚条件下では実施することができない。それは、当該反応において生成される高濃度の水及びその試薬自体に中に存在している高濃度の水が、加水分解による副生物の量を増大させ、収率を低減させるからである。このような現象は、MIBKを用いた場合には観察されないが、それは、主に、MIBKの水溶解度が低いことによる。実際、本出願人らは、予想外に、当該反応物の濃度を高くすればするほど観察される加水分解が低減されるということを見いだした。かくして、MIBKを使用することにより、当該反応をより濃厚な条件下で実施することが可能となり、当該反応の効率が著しく増大する。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「試薬と溶媒の比率(reagents to solvent ratio)」は、「重量/容積(w/v)」の百分率比で表した、当該反応混合物中の溶媒の単位容積当たりの式(A)及び式(B)(又は、式(1)及び式(2)、又は、式(1A)及び式(2A))で表される試薬の総重量を意味する。一実施形態では、試薬と溶媒の比率は、少なくとも約10%である。好ましくは、試薬と溶媒の比率は、少なくとも約25%(重量/容積(w/v))であり、さらに好ましくは、少なくとも約40%(重量/容積(w/v))である。
【0017】
従って、本発明の目的は、構造式(I)
【0018】
【化15】

[式中、
Xは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、C−Cアルキル基又はC−Cアルコキシ基であり;
nは、0〜4の整数であり;
Rは、水素原子又はアセチル基であり;
Yは、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルコキシ基、C−Cチオアルキル基、アルキルチオ基、ヒドロキシ基、アジド基又はフェノキシ基であり、又は、フェニルがヒドロキシで置換されているフェノキシ基であり;
並びに、
、Z及びZは、独立して、トリフルオロメチル基又はニトロ基である。]
で表されるピリジンアミン化合物を調製するための新規方法を提供することである。
【0019】
本発明の調製方法では、上記ピリジンアミン類は、反応溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用して、式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物[ここで、式(A)及び式(B)におけるX、Y、Z、Z、Z及びnは、上記で定義されているとおりであり;U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、脱離基、例えば、ハロゲン、アルキルスルホニル、アリールスルホニルである。]を塩基の存在下で反応させることにより合成する。
【0020】
【化16】

【0021】
一実施形態では、MIBKは純粋な溶媒として使用する。用語「純粋な溶媒」は、本明細書で使用される場合、純度が少なくとも約98%であることを意味する。別の実施形態では、MIBKは、少なくとも約99%純粋である。さらに別の実施形態では、MIBKは、少なくとも約99.5%純粋である。さらに別の実施形態では、MIBKは、少なくとも約99.8%純粋である。別の実施形態では、約2%未満の水を含んでいる再循環されたMIBKを使用する。一般に好ましい実施形態では、1.6%の水を含んでいるMIBKの再循環された共沸混合物を使用する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、式(3)で表され、フルアジナムとして知られているピリジンアミンを調製する方法を提供し、ここで、該方法は、反応溶媒としてMIBKを使用して、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物[ここで、U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、ハロゲン、アルキルスルホニル及びアリールスルホニルからなる群から選択される脱離基である。]を塩基の存在下で反応させることによる。
【0023】
【化17】

【0024】
上記調製方法は、塩基中で、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される塩基中で実施する。
【0025】
一般に好ましい実施形態では、前記塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、式(3)で表されるフルアジナムを調製する方法を提供し、ここで、該方法は、反応溶媒としてMIBKを使用して、式(1A)で表される化合物と式(2A)で表される化合物を反応させることによる。
【0027】
【化18】

【0028】
上記調製方法は、塩基中で、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される塩基中で実施する。
【0029】
一般に好ましい実施形態では、前記塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
【0030】
本発明の別の目的は、式(I)で表される化合物を精製する方法を提供することであり、ここで、該方法は、単一の溶媒又は溶媒混合物から該化合物を結晶化させる段階を含んでいる。当該結晶化のためには、有機溶媒又は有機溶媒の混合物が好ましい。当該結晶化段階における一般に好ましい有機溶媒は、エタノールである。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、フルアジナムを精製する方法を提供することであり、ここで、該方法は、単一の溶媒又は溶媒混合物から該化合物を結晶化させる段階を含んでいる。一般に好ましい有機溶媒は、エタノールである。本発明において意図されているように、本明細書において記載されている結晶化方法により、フルアジナムの新規多形体形態又はその混合物が形成され得る。そのような多形体形態又はその混合物も、本発明の一部を構成する。
【0032】
かくして、別の態様において、本発明は、フルアジナムの新規多形体形態及びそれらの調製方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、「形態(I)」と称されるフルアジナムの新規結晶多形体形態を提供する。形態(I)は、実質的に図1に示されているX線粉末回折パターンを示し、これは、以下の位置の1つ以上において特徴的なピーク(度2θ(+/−0.20°θ)で表される)を有する:8.7、10、12.0、13.7、14.5、17.4、18.5、19.7、21.8、22.9及び30.2。形態(I)は、さらにまた、実質的に図2に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示し、これは、約3390cm−1において特徴的なピークを有する。形態(I)は、さらにまた、実質的に図3に示されている示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示し、これは、1分間当たり10℃の走査速度で示差走査熱量計で測定して約115.5℃における顕著な吸熱ピークを特徴とする。形態(I)は、一般に、柱晶の形態で結晶化し、典型的には、本明細書において記載されているように、大きな黄色の柱晶として結晶化する。
【0033】
別の実施形態では、「形態(II)」と称されるフルアジナムの新規結晶多形体形態を提供する。形態(II)は、実質的に図4に示されているX線粉末回折パターンを示し、これは、以下の位置の1つ以上において特徴的なピーク(度2θ(+/−0.20°θ)で表される)を有する:7.4、10.4、13.4、15.1、18.95、20、20.4、21.05、21.3、22.2、24.9、27.15、28.6及び30.5。形態(II)は、さらにまた、実質的に図5に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示し、これは、約3375cm−1において特徴的なピークを有する。形態(II)は、さらにまた、実質的に図6に示されているDSCサーモグラムを示し、これは、1分間当たり10℃の走査速度で示差走査熱量計で測定して約109℃における顕著な吸熱を特徴とする。形態(II)は、一般に、針晶の形態で結晶化し、典型的には、山吹色の針晶として結晶化する。
【0034】
さらに別の実施形態では、本発明は、フルアジナムの多形体形態(I)及び多形体形態(II)の混合物を提供する。この混合物は、実質的に図7に示されているX線粉末回折パターンを示し、及び、実質的に図8に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示し、また、1分間当たり10℃の走査速度で示差走査熱量計で測定した場合に、実質的に図9に示されている示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す。
【0035】
別の態様において、本発明は、フルアジナムの新規多形体形態(I)及び形態(II)の調製方法、並びに、これら多形体の混合物の調製方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、形態(I)フルアジナムは、エタノール、アセトニトリル、塩化メチレン及びn−ヘキサンからなる群から選択される溶媒からフルアジナムを結晶化させ、生じた結晶を単離することにより調製することができる。一般に好ましい実施形態では、上記調製方法は、該化合物を上記溶媒のうちの1種類以上に溶解させた溶液を調製すること(好ましくは、完全に溶解するまで加熱して溶液を調製すること)、得られた溶液を結晶が生じるまで冷却すること、及び、生じた結晶を単離することを含んでいる。
【0037】
別の実施形態では、フルアジナムの形態(I)及び形態(II)は、種々の結晶化条件を用いて、ジエチルエーテルからフルアジナムを結晶化させることにより調製することができる。形態(I)を調製するために、フルアジナムを、好ましくは室温で、ジエチルエーテルに溶解させ、そして、そのフラスコを環境中にさらして、当該溶媒が徐々に蒸発するようにする。次第に、結晶が(典型的には、大きな黄色の柱晶の形態で)生じ始め、次いで、その結晶を単離する。形態(II)を調製するために、該化合物を上記と同様にジエチルエーテルに溶解させるが、その溶媒は、フラスコから急速に蒸発させる。これにより、結晶が(典型的には、山吹色の針晶の形態で)形成され、次いで、その結晶を単離する。
【0038】
別の実施形態では、形態(II)は、形態(I)に関連して上記で記載したようにエタノール中のフルアジナムの溶液を調製することにより調製することができる。しかしながら、冷却して生成物を沈澱させる変わりに、該溶液を静置して環境中にさらして、当該溶媒の一部が徐々に蒸発するようにする。次第に、結晶が(典型的には、山吹色の針晶の形態で)生じ始め、次いで、その結晶を単離する。
【0039】
別の実施形態では、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン及びトルエンからなる群から選択される溶媒からフルアジナムを結晶化させ、生じた結晶を単離することにより、形態(I)と形態(II)の混合物を調製することができる。一般に好ましい実施形態では、上記調製方法は、フルアジナムを上記溶媒のうちの1種類以上に溶解させた溶液を調製すること(好ましくは、完全に溶解するまで加熱して溶液を調製すること)、得られた溶液を結晶が生じるまで冷却すること、及び、生じた結晶を単離することを含んでいる。
【0040】
形態(I)と形態(II)の混合物は、さらにまた、フルアジナムが可溶性である溶媒にフルアジナムを溶解させ、アンチソルベントを添加し、生じた結晶を単離することによって調製することもできる。一般に好ましい実施形態では、上記溶媒は、アセトンである。一般に好ましい別の実施形態では、上記アンチソルベントは、水である。
【0041】
別の態様において、本発明は、農作物及び園芸作物並びに畑地(up-land)で生育している有害な生物(例えば、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類)と闘い、それらを防除するのに有用な、上記新規結晶多形体を含んでいる殺有害生物剤組成物を提供する。一実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(I)及び許容される補助剤を含んでいる。別の実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(II)及び許容される補助剤を含んでいる。さらに別の実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(I)と結晶多形体形態(II)の混合物及び許容される補助剤を含んでいる。
【0042】
本発明は、さらにまた、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘う方法にも関し、ここで、該方法は、その昆虫類、ダニ類、菌類又は細菌類を、有効量の本発明組成物に接触させるか又は有効量の本発明組成物にさらすことによる。
【0043】
本発明は、さらにまた、作物及び畑地(これは、その生産物(industrial product)、例えば、種子及び果実などを包含する)を保護する方法にも関し、ここで、該方法は、該作物又はその生産物に有効量の本発明組成物を施用することによる。
【0044】
本発明のさらなる実施形態及び本発明が適用される全範囲は、以下に記載されている詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、以下の詳細な説明及び特定の実施例は本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の精神及び範囲内におけるさまざまな変更及び部分的な修正はその詳細な説明から当業者には明らかになるので、そのような詳細な説明及び特定の実施例は例証することのみを目的として与えられているということは、理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
一態様において、本発明は、3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)及び別のピリジンアミン類を合成するための改善された方法に関し、ここで、該方法は、反応溶媒としてのメチルイソブチルケトン(MIBK)を提供する。本発明の調製方法は、加水分解などの副反応を低減させることにより、及び、困難で労力を要する精製方法の必要性を排除することにより、及び、これまでよりも高い収率で純粋な生成物を提供することにより、従来技術の方法の欠点を克服する。
【0046】
どのような特定の機序又は理論にも拘束されることを望むものではないが、当該反応の後処理のためには(特に、酸性化することにより生成物を単離するためには)水が必要とされるものの、これは、化合物Aと化合物Bの間のカップリング反応においては負の役割を有していると考えられる。特に、水は、加水分解によって副生物を生成させることにより、当該試薬が完全に消費されないことの原因となっていると考えられる。水は、3種類の異なった源から導入される:(1)それは、放出された塩酸の中和によって化学量論的に生成される;(2)当該反応において使用される固体無機塩基(例えば、KOH及びNaOH)が10〜15%の水を含んでいる;及び、(3)水混和性溶媒(例えば、THF、DMF及びDEMSOなど)は水との共沸混合物として循環させるので、そのような水混和性溶媒を使用することによって水が導入される。
【0047】
これらの問題を回避するために、THF又はDMF中での従来技術の反応は、水の局所濃度ができる限り低くなるように、非常に希薄な条件下で実施されてきた。しかしながら、これによって、当該反応の収率及び効率が著しく低下する結果となった。、
本発明において意図されているように、本出願人らは、上記スキームに従うフルアジナム及び別のピリジンアミン類の合成方法における反応溶媒として、水への溶解度が異なっている数種類の溶媒を選抜した。表1は、試験に供した溶媒のうちの数種類についての物理データを示している。
【0048】
【表1】

【0049】
本出願人らは、驚くべきことに、MIBKが当該カップリング反応に関して優れた溶媒であるということを見いだした。MIBKは、76%溶媒の共沸混合物として蒸留される。しかしながら、MIBKの水への溶解度が低いことにより、放置すると2つの層が形成されて、約98.4%のMIBKはその有機物に富んだ層に含まれており、水に富んだ層には約1.6%のMIBKが含まれている。MIBKは、その共沸混合物の含水量(24%)がその再循環された当該溶媒の含水量(1.6%)と有意に異なっている、試験に供したものの中から選択された唯一の溶媒である。
【0050】
どのような特定の機序又は理論にも拘束されることを望むものではないが、MIBKの反応溶媒としての有利な点は、少なくとも部分的には、水への溶解度が低いこと及び再循環された当該溶媒の含水量が少ないことなどを包含するMIBKの特有の性質によると考えられる。
【0051】
MIBKは、当該反応と調和する最小限の「有効水量」を可能とすることによって水が過剰に形成されるという問題を克服する最適の溶媒であるということが分かった。MIBKの水への低い溶解度は当該反応を過剰の水から保護するが、そのようなMIBKの水への低い溶解度によって、より濃厚な系における作業が可能となる。このことは、化学収率と容積収率(volume yield)の両方を向上させる大規模な製造にとって最も望ましい。実際、その化学収率は、75%から98%に改善され、容積収率(即ち、試薬と溶媒の比率)は、8.2%から少なくとも約40%(w/v)まで改善される。
【0052】
MIBKの使用における別な有利点は、MIBKが他の溶媒と比較して温度変動に対する感度が低いということが知られていることである。このことは、当該反応が非常に発熱性であり、高温では大量のタールが生成されるので、重要である。溶媒としてMIBKを使用することにより、カラムを用いた精製が単純な結晶化で置き換えられ、それによって容易な後処理が可能となる。
【0053】
従って、本発明の目的は、構造式(I)
【0054】
【化19】

[式中、
Xは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、C−Cアルキル基又はC−Cアルコキシ基であり;
nは、0、1、2、3又は4の整数であり;
Rは、水素原子又はアセチル基であり;
Yは、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルコキシ基、C−Cチオアルキル基、ヒドロキシ基、アジド基又はフェノキシ基であり、又は、フェニルがヒドロキシで置換されているフェノキシ基であり;
並びに、
、Z及びZは、独立して、トリフルオロメチル基又はニトロ基である。]
で表されるピリジンアミン化合物の調製において有効な溶媒を使用する新規調製方法を提供することである。
【0055】
本発明の調製方法では、上記ピリジンアミン類は、反応溶媒としてMIBKを使用して、式(A)で表される化合物と式(B)で表される化合物[ここで、式(A)及び式(B)におけるX、Y、Z、Z、Z及びnは、上記で定義されているとおりである;U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、ハロゲン、アルキルスルホニル及びアリールスルホニルからなる群から選択される脱離基である。]を塩基の存在下で反応させることにより合成する。一実施形態では、MIBKは純粋な溶媒として使用する。別の実施形態では、約1.6%の水を含んでいるMIBKの再循環された共沸混合物を使用する。
【0056】
【化20】

【0057】
本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「C−Cアルキル」は、直鎖、分枝鎖又は環状(例えば、シクロアルキル)の飽和又は不飽和(例えば、アルケニル、アルキニル)の基を意味し(ここで、後者は、当該アルキル鎖内の炭素原子の数が2以上である場合に限る。)、また、混合された構造を含み得る。飽和アルキル基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アミル、t−アミル及びヘキシルなどを挙げることができる。アルケニル基の例としては、ビニル、アリル及びブテニルなどを挙げることができる。アルキニル基の例としては、エチニル及びプロピニルなどを挙げることができる。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどを挙げることができる。
【0058】
上記C−Cアルキル基は、置換されていなくてもよい、又は、以下のものからなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい:ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ナフチル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、カルバモイル、カルボキサミド、シアノ、スルホニル、スルホニルアミノ、スルフィニル、スルフィニルアミノ、チオール、C−Cチオアルキルアリールチオ又はC−Cアルキルスルホニル基。いずれの置換基も、置換されていなくてもよい、又は、上記置換基のうちのいずれか1つでさらに置換されていてもよい。
【0059】
本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「アリール」は、6〜14個の環炭素原子を含んでいる芳香族環系を意味する。該アリール環は、単環式、二環式及び三環式などであることができる。アリール基の非限定的な例は、フェニル及びナフチル(これは、1−ナフチル及び2−ナフチルを包含する。)である。該アリール基は、置換されていなくてもよい、又は、利用可能な炭素原子を介して、アルキルに関して上記で定義した1以上の基で置換されていてもよい。
【0060】
本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「C−Cアルコキシ」は、酸素原子に結合している上記で定義したC−Cアルキルを意味する。アルコキシ基の例としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びt−ブトキシなどを挙げることができる。本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「フェノキシ」は、酸素原子に結合しているフェニル基を意味する。上記C−Cアルコキシ基又はフェノキシ基は、置換されていなくてもよい、又は、利用可能な原子を介して、アルキルに関して上記で定義した1以上の基で置換されていてもよい。
【0061】
本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「C−Cチオアルキル」は、硫黄原子に結合している上記で定義したC−Cアルキルを意味する。チオアルキル基の非限定的な例は、チオメチル、チオエチル、チオ−n−プロピル、チオ−イソプロピル、チオ−n−ブチル及びチオ−t−ブチルなどである。上記C−Cチオアルキル基は、置換されていなくてもよい、又は、利用可能な原子を介して、アルキルに関して上記で定義した1以上の基で置換されていてもよい。
【0062】
本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「トリフルオロメチル」は、CF基を意味する。本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「ヒドロキシ」は、OH基を意味する。本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素を意味する。本明細書において単独で使用されているか又は別の基の一部として使用されている用語「アジド」は、N基を意味する。本明細書において単独で使用されている又は別の基の一部として使用されている用語「アセチル」は、COCH基を意味する。本明細書において単独で使用されている又は別の基の一部として使用されている用語「ニトロ」は、NO基を意味する。本明細書において単独で使用されている又は別の基の一部として使用されている用語「アミノ」は、NH基を意味する。本明細書において単独で使用されている又は別の基の一部として使用されている用語「スルホニル」は、−S(O)−を意味する。アルキルスルホニルは、上記で定義したアルキル基に結合しているスルホニル基を意味する。アリールスルホニルは、上記で定義したアリール基に結合しているスルホニル基を意味する。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、式(3)で表されるフルアジナムを調製する方法を提供し、ここで、該方法は、反応溶媒としてMIBKを使用して、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物[ここで、U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、ハロゲン、アルキルスルホニル及びアリールスルホニルからなる群から選択される脱離基である。]を塩基の存在下で反応させることによる。
【0064】
【化21】

【0065】
本発明の上記調製方法は、塩基中で実施する。好ましくは、該塩基は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)からなる群から選択される。一般に好ましい塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
【0066】
好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約10%(w/v)よりも大きい。さらに好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約25%(w/v)よりも大きく、最も好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約40%(w/v)よりも大きい。これにより、従来技術の方法(ここで、従来技術の方法では、希薄な反応条件(試薬と溶媒の比率 8.2%(w/v)未満)に起因して試薬(A)と試薬(B)が両方とも完全には消費されず、その結果収率が低い。)に比較して、有利点がもたらされる。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、式(3)で表され、フルアジナムとして知られているピリジンアミンを調製する方法を提供し、ここで、該方法は、反応溶媒としてMIBKを使用して、式(1A)で表される化合物と式(2A)で表される化合物を反応させることによる。
【0068】
【化22】

【0069】
本発明の上記調製方法は、塩基中で実施する。好ましくは、該塩基は、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、水素化物(例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム)及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム)からなる群から選択される。一般に好ましい塩基は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである。
【0070】
好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約10%(w/v)よりも大きい。さらに好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約25%(w/v)よりも大きく、最も好ましくは、上記試薬と溶媒の比率は、約40%(w/v)よりも大きい。これにより、従来技術の方法(ここで、従来技術の方法では、希薄な反応条件(試薬と溶媒の比率 8.2%(w/v)未満)に起因して試薬(A)と試薬(B)が両方とも完全には消費されず、その結果収率が低い)に比較して、有利点がもたらされる。
【0071】
上記新規調製方法における好ましい溶媒は、純粋なMIBK(例えば、純度少なくとも約98%)であり、又は、2%未満の水(好ましくは、約1.9%未満の水、さらに好ましくは、約1.75%未満の水、最も好ましくは、約1.6%未満の水)を含んでいるその再循環された形態にあるMIBKである。一般に好ましい一実施形態では、該MIBKは、約1.6%の水を含んでいるその再循環された共沸混合物の形態にある。MIBKが水への溶解度が低いという特性を有していることによって当該反応をより濃厚な条件下で実施することが可能となり、その結果、当該反応の効率が著しく増大する。
【0072】
一般に、当該カップリング反応が発熱性の性質を有していることにより、反応物の温度を、おおよそ最初の1時間は約0〜20℃又はそれ未満に維持する。その後、反応物を室温(約25〜30℃)まで昇温させ、その温度で、当該反応が完結するまで(典型的には、約2〜3時間から約24時間まで)、撹拌する。後処理は、酸性化、例えば、HCl又はHSOなどの酸を添加することによる酸性化を含み得る。二相性混合物が形成される。次いで、有機層を分離させ、溶媒を蒸発させることにより生成物を単離する。
【0073】
式(I)で表される化合物を精製は、単一の溶媒又は溶媒の混合物(好ましくは、単一の有機溶媒又は有機溶媒の混合物)から該化合物を結晶化させることにより行う。かくして、一実施形態では、本発明は、式(I)で表される化合物を精製する方法を提供し、ここで、該方法は、単一の溶媒又は溶媒混合物から該化合物を結晶化させることによる。一実施形態では、式(I)で表される化合物は、フルアジナムであり、これは、式(3)の構造で表される。当該結晶化段階における一般に好ましい有機溶媒は、エタノールである。エタノールの適切なグレードは、80〜100%のエタノールを含んでいる。該エタノールは、含水エタノール又は乾燥エタノールであることができる。
【0074】
結晶化は、当技術分野で知られているように、例えば、所望の化合物を適切な量の溶媒又は溶媒混合物と混合させ、加熱して溶解させ及び冷却して当該生成物を沈澱させることにより実施する。あるいは、該化合物を単一の溶媒に溶解させ、該化合物が不溶性であるか又は僅かしか溶解しない第2の溶媒を沈澱が生じるまでを添加する。さらにまた、当技術分野で知られているように、結晶化を惹起するために、当該反応物に適切な化合物を用いて結晶種を入れることも可能である。
【0075】
本発明において意図されているように、本明細書に記載されている結晶化方法によって、フルアジナムの1種類以上の新規多形体形態又はそれらの混合物が形成され得る。かくして、別の態様において、本発明は、概して、「多形体形態(I)」及び「多形体形態(II)」と称されるフルアジナムの新規結晶多形体形態及びそのような多形体の混合物に関する。本発明は、該新規多形体の調製方法も提供し、さらに、該多形体を含んでいる医薬組成物並びに農作物及び園芸作物上に存在する有害な生物(noxious living)と闘うためにそれを使用する方法も提供する。
【0076】
固体は、非晶質形態又は結晶形態のいずれかで存在する。結晶形態の場合、分子は、三次元格子サイト内に位置している。ある化合物が溶液又はスラリーから再結晶する場合、それは種々の空間的格子配置で結晶化し得る。これは、それぞれが「多形体」と称される種々の結晶形態を有する「多形性」と称される特性である。所与の物質の種々の多形体形態は、1以上の物理的特性(例えば、溶解度及び解離、真密度、結晶の形状、圧密挙動(compaction behavior)、流動性及び/又は固体状態安定性など)に関して互いに異なり得る。2種類(又は、それ以上)の多形体形態で存在する化学物質の場合、不安定な形態は、所与の温度で充分な時間が経過した後、一般に、熱力学的により安定な形態に変わる。この変換が急速には起こらない場合、当該熱力学的に不安定な形態は、「準安定な」形態と称される。一般に、安定な形態は、最も高い融点、最も低い溶解性及び最大の化学的安定性を示す。しかしながら、準安定な形態は、通常の貯蔵条件下では充分な化学的及び物理的安定性を示すことができ、それによって、商業的形態で使用することが可能となる。さらに、準安定な形態は、安定性は劣るものの、安定な形態の特性よりも望ましい特性、例えば、良好な製剤性(formulative ability)及び向上した水中での分散性(dispersability)などを示し得る。
【0077】
フルアジナムの場合、既知結晶形態は知られていない。本出願の発明者らは、広範囲にわたる実験を行った後、形態(I)及び形態(II)と称されるフルアジナムの2種類の新規結晶形態を見いだした。これらの2種類の結晶形態は、それらの独特な示差走査熱量計(DSC)サーモグラム、X線回折パターン及び赤外(IR)スペクトルによって表した場合、異なったスペクトル特性を示す。
【0078】
形態(I)
一実施形態では、本発明は、「形態(I)」と称される3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の新規結晶多形体形態を提供する。この新規で驚くべき多形体は、例えば、DSC、X線粉末回折スペクトロメトリー及び/又はIRスペクトロメトリーなどによって、特徴付けることができる。
【0079】
例えば、図1に示されているように、形態(I)は、以下の位置の1つ以上において特徴的なピーク(度2θ(+/−0.20°θ)で表される)を有するX線粉末回折パターン示す:8.7、10、12.0、13.7、14.5、17.4、18.5、19.7、21.8、22.9及び30.2。X線粉末回折は、CuKα放射(1.54178Åに等しい波長)及び回折ビームグラファイトモノクロメーターを使用して、40kV及び30mAで運転するPhilips粉末回折系PW 1050/70で収集した。典型的なθ−2θ走査範囲は、0.05°のステップサイズ及び1ステップ当たり0.5秒の計数時間で、3−35°2シータである。
【0080】
瑪瑙乳鉢及び乳棒を用いて試料を磨砕した。得られた粉末を、次に、20mm×15mmで深さ0.5mmの長方形キャビティを有するアルミニウム製試料保持器の中に圧入した。
【0081】
さらに、図2(3000cm−1の範囲のみを示している)に示されているように、形態(I)は、DuraSamplIRTMサンプリング装置内のMettler Toledo Autochem(ATR法、MCT検出器)(ダイヤモンドウィンドウ)のフーリエ変換赤外(FT−IR)分光光度計ReactIRTM1000で測定した場合、約3390cm−1において特徴的なピークを有する赤外(IR)スペクトルも示す。そのダイヤモンドセンサーは、ZnSe製の集束レンズを有している。粉末状の試料をサンプリング装置に詰め込み、分解能4cm−1及び256走査で測定した。
【0082】
さらに、図3に示されているように、形態(I)は、821eモジュールを有するMettler ToledoのDSCで測定した場合、約115.5℃における顕著な吸熱ピークを特徴とする示差走査熱量計(DSC)サーモグラムも示す。秤量した(weighted)試料(2〜4mg)に、1分間当たり2℃及び/又は10℃の走査速度で測定している間、窒素ガス流でパージした。40μLの標準的なアルミニウム製穴あきるつぼを使用した。評価は、STARソフトウェアを用いて行う。本明細書において使用される場合、用語「約115.5℃」は、114℃〜117℃の範囲を意味する。これに関連して、特定の示差走査熱量計によって測定される吸熱は、加熱速度(即ち、走査速度)、用いられる校正標準、計器の校正及び相対湿度などの多くの因子に左右され、また、被験試料の化学的純度にも左右されるということは理解されるべきである。かくして、上記計器上でのDSCによって測定される吸熱は、±1.5℃もの変動を示し得る。
【0083】
形態(I)は、一般に、柱晶の形態で結晶化し、典型的には、本明細書において記載されているように、大きな黄色の柱晶として結晶化する。
【0084】
別の態様において、本発明は、フルアジナムの新規多形体形態(I)を調製する方法を提供する。形態(I)は、フルアジナムを適切な量の溶媒又は溶媒混合物に溶解させ、加熱して完全に溶解させ及び冷却して当該生成物を沈澱させることにより、調製することができる。あるいは、フルアジナムをそれが可溶性である単一の溶媒に溶解させ、該化合物が不溶性であるか又は僅かしか溶解しない第2の溶媒(アンチソルベント)を沈澱が生じるまでを添加する。さらにまた、当技術分野で知られているように、結晶化を惹起するために、当該反応物に形態(I)の結晶種を入れることも可能である。
【0085】
形態(I)を調製するために使用するフルアジナム出発物質は、US 4,331,670に準じて調製されたフルアジナム、非晶質フルアジナム、フルアジナム形態(II)、フルアジナムの形態(I)と形態(II)の混合物又は当技術分野で知られている別の任意のフルアジナムなどを包含するフルアジナムの任意の形態であることが可能である。
【0086】
例えば、一実施形態では、形態(I)は、エタノール、アセトニトリル、塩化メチレン及びn−ヘキサンからなる群から選択される溶媒からフルアジナムを結晶化させ、生じた結晶を単離することにより調製することができる。一般に好ましい実施形態では、上記調製方法は、フルアジナムを上記溶媒のうちの1種類以上に溶解させ、好ましくは、完全に溶解するまで加熱して溶解させ、得られた溶液を結晶が生じるまで冷却することを含んでいる。一般に、該溶液は、室温(室温は、本発明においては、約20℃〜約25℃であると定義される)まで冷却すれば充分である。しかしながら、該溶液は、さらに低い温度(例えば、0℃、5℃、10℃及び15℃など)まで冷却することも可能である。次いで、得られた結晶は、当技術分野で知られている慣習的ないずれかの方法で、例えば、濾過、遠心分離などによって、単離する。
【0087】
形態(I)は、フルアジナムを、好ましくは室温で、ジエチルエーテルに溶解させ、そして、当該溶媒が徐々に蒸発するようにそのフラスコを部分的に開口して放置することにより、ジエチルエーテルからフルアジナムを結晶化させて調製することも可能である。次第に、結晶が(典型的には、大きな黄色の柱晶の形態で)生じ始め、次いで、その結晶を慣習的な方法で単離する。一般に、当該結晶が生じ始める前に溶媒の一部分のみを蒸発させる(例えば、当該溶媒の約10〜90%を空気中に蒸発させる)が、それによって、形態(I)の結晶が生じる。
【0088】
形態(II)
一実施形態では、本発明は、「形態(II)」と称される3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の新規結晶多形体形態を提供する。この新規で驚くべき多形体は、例えば、DSC、X線粉末回折スペクトロメトリー及び/又はIRスペクトロメトリーなどによって、特徴付けることができる。
【0089】
例えば、図4に示されているように、形態(II)は、以下の位置の1つ以上において特徴的なピーク(度2θ(+/−0.20°θ)で表される)を有するX線粉末回折パターン示す:7.4、10.4、13.4、15.1、18.95、20、20.4、21.05、21.3、22.2、24.9、27.15、28.6及び30.5。X線粉末回折は、上記で記載したように測定した。
【0090】
さらに、図5(3000cm−1の範囲のみを示している)に示されているように、形態(II)は、上記で記載したフーリエ変換赤外(FT−IR)分光光度計で測定した場合、約3375cm−1において特徴的なピークを有する赤外(IR)スペクトルも示す。
【0091】
さらに、図6に示されているように、形態(II)は、約109℃(形態(II)から液体へ)における顕著な吸熱ピークを示す単変系を特徴とするDSCサーモグラムも示す。そのサーモグラムは、さらに、約115.5℃においても吸熱を示すが、これは、形態(I)の結晶化に起因するものである。該サーモグラムは、上記で記載したように示差走査熱量計で測定した。本明細書において使用される場合、用語「約109℃」は、約107.50℃〜約110.5℃を意味する。
【0092】
形態(II)は、一般に、針晶の形態で結晶化し、典型的には、山吹色の針晶として結晶化する。
【0093】
別の態様において、本発明は、新規多形体形態(II)を調製する方法を提供する。形態(II)は、フルアジナムを適切な量の溶媒又は溶媒混合物に溶解させ、加熱して完全に溶解させ及び冷却して当該生成物を沈澱させることにより、調製することができる。あるいは、フルアジナムをそれが可溶性である単一の溶媒に溶解させ、該化合物が不溶性であるか又は僅かしか溶解しない第2の溶媒(アンチソルベント)を沈澱が生じるまでを添加する。さらにまた、当技術分野で知られているように、結晶化を惹起するために、当該反応物に形態(II)の結晶種を入れることも可能である。
【0094】
形態(II)を調製するために使用するフルアジナム出発物質は、US 4,331,670に準じて調製されたフルアジナム、非晶質フルアジナム、フルアジナム形態(I)、フルアジナムの形態(I)と形態(II)の混合物又は当技術分野で知られている別の任意のフルアジナムなどを包含するフルアジナムの任意の形態であることが可能である。
【0095】
例えば、形態(II)は、フルアジナムを、好ましくは室温で、ジエチルエーテルから結晶化させ、溶媒を急速に蒸発させることにより、調製することができる。これにより、結晶が(典型的には、山吹色の針晶の形態で)形成され、次いで、その結晶を慣習的な方法で単離する。
【0096】
形態(II)は、さらにまた、エタノール中のフルアジナムの溶液を調製することにより;形態(I)に関連して上記で記載したようにエタノール中のフルアジナムの溶液を調製することにより、調製することができる。しかしながら、冷却して生成物を沈澱させる変わりに、該溶液を環境中にさらして、当該溶媒の一部が徐々に蒸発するようにする。次第に、結晶が(典型的には、山吹色の針晶の形態で)生じ始め、次いで、その結晶を単離する。一般に、当該結晶が生じ始める前に溶媒の一部分のみを蒸発させる(例えば、当該溶媒の約10〜90%を空気中に蒸発させる)が、それによって、形態(II)の結晶が生じる。
【0097】
形態(I)と形態(II)の混合物
さらに別の実施形態では、本発明は、3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の多形体形態(I)と多形体形態(II)の混合物を提供する。
【0098】
この混合物は、実質的に図7に示されているX線粉末回折パターンを示す。さらに、この混合物は、実質的に図8(3000cm−1の範囲のみを示している)に示されている赤外(IR)スペクトルを示す。さらに、この混合物は、上記で記載したように示差走査熱量計で測定した場合に、実質的に図9に示されているDSCサーモグラムを示す。
【0099】
形態(I)と形態(II)の混合物を調製するために使用するフルアジナム出発物質は、US 4,331,670に準じて調製されたフルアジナム、非晶質フルアジナム、フルアジナム形態(II)、フルアジナム形態(I)、フルアジナム形態(II)又は当技術分野で知られている別の任意のフルアジナムなどを包含するフルアジナムの任意の形態であることが可能である。
【0100】
形態(I)と形態(II)の混合物は、多形体形態(I)及び多形体形態(II)を混合して混合物を得るこにより容易に調製することができる。しかしながら、該混合物は、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン及びトルエンからなる群から選択される溶媒からフルアジナムを結晶化させ、生じた結晶を単離することにより調製することも可能である。一般に好ましい実施形態では、上記調製方法は、フルアジナムを上記溶媒のうちの1種類以上に溶解させた溶液を調製し(好ましくは、完全に溶解するまで加熱することにより溶液を調製し)、得られた溶液を結晶が生じるまで冷却し、生じた結晶を単離することを含んでいる。一般に、該溶液は、室温まで冷却すれば充分である。しかしながら、該溶液は、さらに低い温度(例えば、0℃、5℃、10℃及び15℃など)まで冷却することも可能である。
【0101】
形態(I)と形態(II)の混合物は、さらにまた、フルアジナムが可溶性である溶媒にフルアジナムを溶解させ、アンチソルベントを添加し、生じた結晶を単離することによって調製することもできる。一般に好ましい実施形態では、上記溶媒は、アセトンである。一般に好ましい別の実施形態では、上記アンチソルベントは、水である。
【0102】
組成物及び用途
フルアジナムは、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類などの有害な生物と闘うための優れた効力、例えば、貯蔵されている生産物(industrial product)、種子及び果実上で増殖している(multiplicating)有害な菌類及び細菌類(例えば、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)、ジベレラ属種(Gibberella sp.)及びペニシリウム属種(Penicillium sp.)など)を防除するのに有効な優れた抗菌効果及び抗細菌効果を提供することが知られている。
【0103】
フルアジナムは、農作物及び園芸作物並びに畑地(up-land)で生育している有害な生物、例えば、昆虫類、例えば、チョウ目(Lepidoptera)、例えば、コナガ(Plutella xylostella)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)及びハスモンヨトウ(Spodoptera litura);カメムシ目(Hemiptera)、例えば、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)及びデルファコデス・ストリアテラ(Delphacodes striatella);コウチュウ目(Coleoptera)、例えば、カロソブルクス・キメンシス(Callosobruchus chimensis)及びニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintioctopunctata);及び、ハエ目(Diptera)、例えば、イエバエ(Musca domestica)及びクレクソピピエンス・パレンス(Culexopipiens pallens);並びに、ダニ類例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、テトラニクス・テラリウス(Tetranychus telarius)及びミカンハダニ(Panonychus citri);並びに、植物に対する菌類及び細菌類、例えば、ピリキュラリア・オリザエ(Pyricularia oryzae)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、コレクトトリクム・ラゲナリウム(Collectotrichum lagenarium)、プセウドペルノスポラ・クベンシス(Pseudopernospora cubensis)、スファエロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、ジアポルテ・シトリ(Diaporthe citri)、アルテルナリア・ソラニ(Alternaria solani)、ベンツリア・イナエクアリス(Venturia inaequalis)、プラスモパラ・ビチコラ(Plasmopara viticola)、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、プッシニア・レコンジタ(Puccinia recondita)及びスクレロチニア・スクレロチオルム(Sclerotinia sclerotiorum)などを防除するのにも有効である。
【0104】
フルアジナムは、さらにまた、農業及び園芸における植物に対するさまざまな有害な生物(特に、有害な菌類)を防除するための優れた効果も提供する。かくして、一実施形態では、本発明は、農作物及び園芸作物並びに畑地(up-land)で生育している有害な生物(例えば、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類)と闘い、それらを防除するのに有用な、上記新規結晶多形体を含んでいる殺有害生物剤組成物も提供する。一実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(I)及び許容される補助剤を含んでいる。一実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(II)及び許容される補助剤を含んでいる。さらに別の実施形態では、該組成物は、フルアジナムの結晶多形体形態(I)と結晶多形体形態(II)の混合物及び許容される補助剤を含んでいる。
【0105】
本発明は、さらにまた、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘う方法にも関し、ここで、該方法は、その昆虫類、ダニ類、菌類又は細菌類に、有効量の本発明組成物を施用することを含む。
【0106】
本発明は、さらにまた、作物及び畑地(これは、その生産物(industrial product)、例えば、種子及び果実などを包含する)を保護する方法にも関し、ここで、該方法は、該作物又はその生産物に有効量の本発明組成物を施用することによる。
【0107】
本発明の組成物中で使用するためのフルアジナム多形体の濃度は、対象となる有害な生物、施用方法、並びに、組成物の形態及び活性成分の薬量に左右される。その濃度は、決定的ではなく、それは、通常、約1〜10,000ppmの範囲内、好ましくは、約20〜2,000ppmの範囲内である。
【0108】
該組成物は、農業用組成物の場合のように、補助剤を用いて、粉剤、水和剤、乳剤、不活性エマルション剤(inert emulsion)、油剤(oil solution)、エーロゾル剤(aerosol preparation)などのさまざまな形態に調製することができる。該組成物は、希釈せずに施用することが可能であるか、又は、適切な濃度に希釈して施用することができる。
【0109】
適切な補助剤としては、以下のものを挙げることができる:粉状担体(powdery carries)、例えば、タルク、カオリン、ベントナイト、ケイ藻土、二酸化ケイ素、粘度及びデンプン;液体希釈剤、例えば、水、キシレン、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル及びアルコール;乳化剤、分散剤、界面活性剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルムアルデヒド縮合物、カルシウムエーテルスルフェート、ポリオキシエチレングリコールドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル及びスルホコハク酸ジ−アルキルなど。
【0110】
殺虫剤組成物、殺ダニ剤組成物、殺菌剤組成物又は殺細菌剤組成物中の活性成分の濃度は、通常、油性濃厚製剤(oily concentrate)の場合は5〜80重量%であり;粉剤の場合は0.5〜30重量%であり;水和剤の場合は5〜60重量%である。別の農業用成分(例えば、別の殺虫剤、殺ダニ剤及び/又は植物生長調節剤)と組み合わせることも可能である。場合により、相乗効果が認められることもある。上記別の農業用成分としては、有機リン酸エステル系化合物、カーバメート系化合物、ジチオ(又は、チオール)カーバメート系化合物、有機塩素系化合物、ジニトロ系化合物、有機硫黄又は有機金属系化合物、抗生物質、置換ジフェニルエーテル系化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾイルウレア系化合物、ピレスロイド系化合物、イミド系化合物及びベンゾイミダゾール系化合物などがあり、より詳細には、以下のものを挙げることができる:ベンゾイルウレア系殺虫剤、例えば、N−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−N’−(p−クロロフェニル)尿素;ピレスロイド系殺虫剤、例えば、α−シアノ−3−フェノキシベンジル−2−(4−クロロフェニル)イソバレレート;イミド系殺菌剤、例えば、N−(3,5−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシイミド;ベンゾイミダゾール系殺菌剤、例えば、メチル−1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンゾイミダゾールカルバメート;チオカーバメート系殺菌剤、例えば、S−エチルN−(3−ジメチルアミノプロピル)チオカルバメート塩酸塩;ジチオカーバメート系殺菌剤、例えば、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン;及び、尿素系殺菌剤、例えば、2−シアノ−N−(エチルアミノカルボニル)−2−(メトキシイミノ)アセトアミド。
【0111】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態についてさらに充分に説明するために供されている。しかしながら、これらは、決して本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されている原理についての多くの変形態様及び修正を容易に案出することができる。
【実施例】
【0112】
実験の項
本明細書においては、以下の略語を使用する:
【0113】
【表2】

【0114】
実施例1 − 溶媒の効果
以下のスキームに示されているように、数種類の有機溶媒中で化合物(1A)と化合物(2A)をカップリングさせることにより、フルアジナムを調製した。10mLの溶媒中の1.5gの(1)、2.5gの(2)−5%過剰及び1.5gのKOH(s)−3当量を磁気撹拌機を備えた25mL容丸底フラスコの中に入れた。この混合物を30℃で撹拌し、反応が終了するまで逐次試料を採取した。
【0115】
【化23】

【0116】
表2は、純粋な形態及び共沸混合物の形態にある様々な溶媒のフルアジナムの合成に対する効果を示している。
【0117】
【表3】

【0118】
上記結果は、以下のことを示している:
1. MIBKは、その純粋な形態及び含水形態(wet form)の両方において、収率と純度のいずれについても、他の溶媒よりも勝っている。
2. MIBKは、共沸混合物形態の性能がその純粋な形態と比較して低減していない唯一の溶媒である。
3. MIBK以外の溶媒は、全て、その共沸混合物形態が加水分解生成物4を形成する傾向が高い。
4. DMF及びDMSOは、例外的に多量の不純物を示し、従って、本発明の調製方法には適していない。
【0119】
実施例2 − 合成手順(0.3モルスケール)
原料1A(CNB)及び原料2A(ACP)は、以下の方法で合成する:
【0120】
【化24】

【0121】
フルアジナムの合成
温度計と凝縮器を備えた三つ口のオイルループ反応器(oil loop reactor)に、以下の試薬:60gのACP(=0.3モル)、95gのCNB粉末(3%モル過剰)及び340gのMIBK共沸混合物(1.6%の水を含有)を順次添加し、20〜25℃に冷却した。
【0122】
まだ温度が低いうちに、70gのKOH(s)(=3.5モル当量)を、20分ごとに10gずつ連続して添加した。その際、30℃を超えて上昇しないようにした。上記添加(室温25〜30℃での添加)後、(HPLCで測定して)試薬がそれ以上消費されなくなるまで、その混合物をさらに撹拌する。
【0123】
その混合物を、400gのHCl−5%を添加することにより酸性化し、400gのNaCl−5%溶液で洗浄する。この二相混合物の水層の酸性化後、すぐに、漏斗を用いて有機相を分離させ、減圧下に溶媒を蒸発させて、乾燥させる。
【0124】
得られた粗製物質は、約150gの黄色のフルアジナム生成物(純度約95%;化学的純度約98%)である。
【0125】
その粗製生成物を熱エタノール中で結晶化させて、約140gの黄色の粉末状生成物(純度98%超;全収率90%)を得る。
【0126】
実施例3 − フルアジナム形態(I)の調製
2gのフルアジナムを10gのエタノール中で完全に溶解するまで加熱した。次いで、その溶液を室温まで冷却した。黄色の結晶を濾過し、オーブン中で40℃で乾燥させた。その結晶は、フルアジナム形態(I)として特徴付けられた。
【0127】
実施例4 − フルアジナム形態(I)の調製
15gのフルアジナムと10gのアセトニトリルを完全に溶解するまで加熱し、次いで、室温まで冷却した。その黄色の結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)として特徴付けられた。
【0128】
実施例5 − フルアジナム形態(I)の調製
加熱板上で低温加熱しながら、2gのフルアジナムを10gの塩化メチレンに溶解させた。次いで、その加熱された溶液を前記加熱板上で、結晶が得られるまで撹拌した。その黄色の結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)として特徴付けられた。
【0129】
実施例6 − フルアジナム形態(I)の調製
2gのフルアジナムと30gのn−ヘキサンを完全に溶解するまで加熱した。次いで、その溶液を室温まで冷却した。その結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)として特徴付けられた。
【0130】
実施例7 − フルアジナム形態(I)の調製
2gのフルアジナムを室温で10gのジエチルエーテルに溶解させた。この溶媒を徐々に蒸発させる(フラスコを部分的に開口して室温で放置する)ことにより、大きな黄色の柱晶を生じさせることができた。この結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)として特徴付けられた。
【0131】
実施例8 − フルアジナム形態(II)の調製
実施例5で記載したようにして、2gのフルアジナムを10gのジエチルエーテルに溶解させた。その溶媒をフラスコから急速に蒸発させて、山吹色の針晶が生じた。この結晶をフラスコから採取し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(II)として特徴付けられた。
【0132】
実施例9 − フルアジナム形態(II)の調製
実施例1で記載したようにして、2gのフルアジナムを10gのエタノール中で加熱したが、但し、フラスコを開口しておいてエタノールの一部を溶液から蒸発させた。結晶化は比較的速く、フラスコの底部に山吹色の針晶が生じた。この結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(II)として特徴付けられた。
【0133】
実施例10 − フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物の調製
3gのフルアジナムと10gのイソプロピルアルコールを完全に溶解するまで加熱した。その溶液を、室温まで徐々に冷却した。黄色の結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物として特徴付けられた。
【0134】
実施例11 − フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物の調製
6gのフルアジナムと6gのトルエンを完全に溶解するまで加熱した。この溶液を、水氷浴を用いて0℃まで冷却した。その結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物として特徴付けられた。
【0135】
実施例12 − フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物の調製
10gのフルアジナムを室温で10gのアセトンに溶解させた。アンチソルベントとして数滴の水を添加した。即座に結晶が生じた。この結晶を濾過し、40℃で乾燥させた。この結晶は、フルアジナム形態(I)とフルアジナム形態(II)の混合物として特徴付けられた。
【0136】
本発明の特定の実施形態について例証し、説明してきたが、本発明が本明細書中で記載した実施形態に限定されないということは明らかであろう。「特許請求の範囲」に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱することのない多くの修正、変更、変形、置換及び等価物は、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】フルアジナム形態(I)のX線粉末回折スペクトルである。
【図2】フルアジナム形態(I)のFT赤外スペクトル(3000cm−1の範囲)である。
【図3】フルアジナム形態(I)の示差走査熱量計(DSC)サーモグラムである。
【図4】フルアジナム形態(II)のX線粉末回折スペクトルである。
【図5】フルアジナム形態(II)のFT赤外スペクトル(3000cm−1の範囲)である。
【図6】フルアジナム形態(II)の示差走査熱量計(DSC)サーモグラムである。
【図7】フルアジナムの形態(I)と形態(II)の混合物のX線粉末回折スペクトルである。
【図8】フルアジナムの形態(I)と形態(II)の混合物のFT赤外スペクトル(3000cm−1の範囲)である。
【図9】フルアジナムの形態(I)と形態(II)の混合物の示差走査熱量計(DSC)サーモグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(I)。
【請求項2】
前記多形体が、約8.7、10、12.0、13.7、14.5、17.4、18.5、19.7、21.8、22.9及び30.2に度2θ(+/−0.20°θ)で表される特徴的なピークを有しているX線粉末回折パターン示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項3】
前記多形体が、実質的に図1に示されているX線粉末回折パターンを示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項4】
前記多形体が、約3390cm−1に特徴的なピークを有している赤外(IR)スペクトルを示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項5】
前記多形体が、実質的に図2に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項6】
前記多形体が、1分間当たり10℃の走査速度で示差走査熱量計(DSC)で測定して約115.5℃に単一の顕著な吸熱を示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項7】
前記多形体が、実質的に図3に示されている示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項8】
柱晶の形態にある、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項9】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(II)。
【請求項10】
前記多形体が、約7.4、10.4、13.4、15.1、18.95、20、20.4、21.05、21.3、22.2、24.9、27.15、28.6及び30.5に度2θ(+/−0.20°θ)で表される特徴的なピークを有しているX線粉末回折パターン示す、請求項9に記載の結晶多形体。
【請求項11】
前記多形体が、実質的に図4に示されているX線粉末回折パターンを示す、請求項9に記載の結晶多形体。
【請求項12】
前記多形体が、約3375cm−1に特徴的なピークを有している赤外(IR)スペクトルを示す、請求項9に記載の結晶多形体。
【請求項13】
前記多形体が、実質的に図5に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示す、請求項9に記載の結晶多形体。
【請求項14】
前記多形体が、1分間当たり10℃の走査速度で示差走査熱量計(DSC)で測定して約109℃に顕著な吸熱を示す、請求項9に記載の結晶多形体。
【請求項15】
前記多形体が、実質的に図6に示されている示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す、請求項9に記載の結晶多形体
【請求項16】
針晶の形態にある、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項17】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の多形体形態(I)と多形体形態(II)の混合物。
【請求項18】
実質的に図7に示されているX線粉末回折パターンを示す、請求項17に記載の混合物。
【請求項19】
実質的に図8に示されている3000cm−1の範囲に赤外(IR)スペクトルを示す、請求項17に記載の混合物。
【請求項20】
実質的に図9に示されている示差走査熱量計(DSC)サーモグラムを示す、請求項17に記載の混合物。
【請求項21】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(I)を調製する方法であって、エタノール、アセトニトリル、塩化メチレン及びn−ヘキサンからなる群から選択される溶媒から前記化合物を結晶化させる段階;及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項22】
(i)エタノール、アセトニトリル、塩化メチレン及びn−ヘキサンからなる群から選択される溶媒中の3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの溶液を調製する段階;
(ii)前記化合物の結晶が形成されるように前記溶液を冷却する段階;
及び、
(iii)その結晶を単離する段階;
を含んでいる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
段階(a)を加熱しながら実施し、段階(a)の後で得られた溶液を室温まで冷却する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(I)を調製する方法であって、ジエチルエーテル中の前記化合物の溶液を調製する段階;前記溶媒を徐々に蒸発させる段階;及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項25】
前記溶液をその環境中にさらすことにより前記溶媒を蒸発させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの結晶多形体形態(II)を調製する方法であって、ジエチルエーテル中の前記化合物の溶液を調製する段階;前記溶媒を急速に蒸発させる段階;及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項27】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(II)を調製する方法であって、エタノール中の前記化合物の溶液を調製する段階;、前記エタノールの一部を蒸発させる段階、及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項28】
前記溶液をその環境中にさらすことにより前記エタノールを蒸発させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(I)と結晶多形体形態(II)の混合物を調製する方法であって、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン及びトルエンからなる群から選択される溶媒から前記化合物を結晶化させる段階;及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項30】
(i)イソプロピルアルコール、n−ヘキサン及びトルエンからなる群から選択される溶媒中の3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの溶液を調製する段階;
(ii)前記化合物の結晶が形成されるように前記溶液を冷却する段階;
及び、
(iii)その結晶を単離する段階;
を含んでいる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
段階(a)を加熱しながら実施し、段階(a)の後で得られた溶液を室温まで冷却する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)の結晶多形体形態(I)と結晶多形体形態(II)の混合物を調製する方法であって、前記化合物が可溶性である溶媒に前記化合物を溶解させる段階、アンチソルベントを添加する段階、及び、生じた結晶を単離する段階を含んでいる、前記方法。
【請求項33】
前記溶媒がアセトンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記アンチソルベントが水である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
請求項1から8のいずれか1項に記載の3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの結晶多形体形態(I)及び許容される補助剤を含んでいる、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘うための組成物。
【請求項36】
請求項9から16のいずれか1項に記載の3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの結晶多形体形態(II)及び許容される補助剤を含んでいる、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘うための組成物。
【請求項37】
請求項17から20のいずれか1項に記載の3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジンの結晶多形体形態(I)と結晶多形体形態(II)の混合物及び許容される補助剤を含んでいる、昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘うための組成物。
【請求項38】
昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類と闘う方法であって、該昆虫類、ダニ類、菌類又は細菌類に有効量の請求項35から37のいずれか記載の組成物を施用することを含む、前記方法。
【請求項39】
昆虫類、ダニ類、菌類及び細菌類から選択される有害な生物から作物を保護する方法であって、該作物に有効量の請求項35から37のいずれか記載の組成物を施用することを含む、前記方法。
【請求項40】
式(I)
【化1】

[式中、
Xは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、C−Cアルキル基又はC−Cアルコキシ基であり;
nは、0から4の整数であり;
Rは、水素原子又はアセチル基であり;
Yは、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルコキシ基、C−Cチオアルキル基、ヒドロキシ基、アジド基又はフェノキシ基であり、又は、フェニルがヒドロキシで置換されているフェノキシ基であり;
並びに、
、Z及びZは、独立して、トリフルオロメチル基又はニトロ基である。]
の構造で表されるピリジンアミン化合物を調製する方法であって、
式(A)
【化2】

で表される化合物を、式(B)
【化3】

で表される化合物[ここで、式(A)及び式(B)におけるX、Y、Z、Z、Z及びnは、上記で定義されているとおりであり;U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、ハロゲン、アルキルスルホニル及びアリールスルホニルからなる群から選択される脱離基である。]と塩基の存在下で反応させることを含み、ここで、反応溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用する、前記方法。
【請求項41】
前記式(I)で表される化合物が、式(3)
【化4】

の構造で表される3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記塩基が、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記溶媒が、純粋なMIBKである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記溶媒が、約1.6%の水を含んでいるMIBKの再循環された共沸混合物である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
水性酸を添加して有機層と水層を含んでいる混合物を形成させること及びその有機層から式(I)で表される化合物を単離することにより式(I)で表される化合物を単離する段階をさらに含んでいる、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
単一の溶媒又は溶媒混合物から結晶化させることにより式(I)で表される化合物を精製する段階をさらに含んでいる、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記結晶化溶媒がエタノールである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記試薬と溶媒の比率が約10%(w/v)よりも大きい、請求項40に記載の方法。
【請求項50】
式(I)
【化5】

[式中、
Xは、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子、C−Cアルキル基又はC−Cアルコキシ基であり;
nは、0〜4の整数であり;
Rは、水素原子又はアセチル基であり;
Yは、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルコキシ基、C−Cチオアルキル基、 ヒドロキシ基、アジド基又はフェノキシ基であり、又は、フェニルがヒドロキシで置換されているフェノキシ基であり;
並びに、
、Z及びZは、独立して、トリフルオロメチル基又はニトロ基である。]
の構造で表される化合物を精製する方法であって、単一の溶媒又は溶媒混合物から該化合物を結晶化させる段階を含んでいる、前記方法。
【請求項51】
前記結晶化溶媒がエタノールである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
式(3)
【化6】

の構造で表される3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)を調製する方法であって、
式(1)
【化7】

で表される化合物を、式(2)
【化8】

で表される化合物[式中、U及びWのうちの一方はアミノであり、もう一方は、ハロゲン、アルキルスルホニル及びアリールスルホニルからなる群から選択される脱離基である。]と塩基の存在下で反応させることを含み、ここで、反応溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用する、前記方法。
【請求項53】
式(1)の化合物が式(1A)の構造で表され、及び、式(2)の化合物が式(2A)の構造で表される、請求項52に記載の方法。
【化9】

【請求項54】
前記塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、水素化物、アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ土類金属炭酸塩からなる群から選択される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記塩基が、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記溶媒が、純粋なMIBKである、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記溶媒が、約1.6%の水を含んでいるMIBKの再循環された共沸混合物である、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
水性酸を添加して有機層と水層を含んでいる混合物を形成させること及びその有機層からフルアジナムを単離することによりフルアジナムを単離する段階をさらに含んでいる、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
単一の溶媒又は溶媒混合物から結晶化させることによりフルアジナムを精製する段階をさらに提供する、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
前記結晶化溶媒がエタノールである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記試薬と溶媒の比率が約10%(w/v)よりも大きい、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
3−クロロ−N−(3−クロロ−5−トリフルオロメチル−2−ピリジル)−α,α,α−トリフルオロ−2,6−ジニトロ−p−トルイジン(フルアジナム)を精製する方法であって、単一の溶媒又は溶媒混合物から該化合物を結晶化させる段階を含んでいる、前記方法。
【請求項63】
前記結晶化溶媒がエタノールである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
式(3)
【化10】


の構造で表されるフルアジナムを調製する方法であって、
式(1)
【化11】

で表される化合物を、式(2)
【化12】

で表される化合物と塩基の存在下で反応させることを含み、ここで、反応溶媒としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を使用する、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−520687(P2009−520687A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541911(P2008−541911)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001351
【国際公開番号】WO2007/060662
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(593091979)マクテシム・ケミカル・ワークス・リミテツド (12)
【Fターム(参考)】