説明

ピリチオン金属塩および亜酸化銅を含む塗料

本発明は、塗料または塗料基材組成物を、製造および貯蔵中の粘度変化、ゲル化および凝集に対して安定化させるための組成物を説明する。例えば、加水分解性のアクリラート樹脂、例えば銅アクリラート、亜鉛アクリラートまたはシリルアクリラート、ピリチオン金属塩、亜酸化銅、ならびに、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩およびヒドロキシピリジンからなる群より選択される主要な安定化物質を含む防汚塗料または塗料基材組成物(ただし、前記組成物は、2−ヒドロキシピリジンN−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない)が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、改善された貯蔵安定性を有する防汚塗料および塗料基材に関する。より具体的には、本発明は、安定なゲル非含有の防汚塗料、および、塗料基材、ならびに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ピリチオン金属塩と亜酸化銅との組み合わせは、防汚塗料調合物における優れた殺生組成物として知られている。しかしながら、市販グレードのピリチオン金属塩、例えば亜鉛ピリチオンおよび亜酸化銅を含む塗料は、塗料の製造および貯蔵中に、それらを増粘したり、凝集させたり、または、ゲル化したりすることが知られている。このような凝集またはゲル化により、缶入りの塗料または塗料基材調合物において、不良な貯蔵安定性および貯蔵寿命の減少が起こる。
【0003】
具体的に言えば、塗料調合物中に、亜鉛ピリチオンおよび亜酸化銅と共に、所定の加水分解性のアクリラート樹脂(アクリレート樹脂)が存在すると、粘度の増加、ならびに凝集およびゲル化により、塗料の製造および貯蔵中に問題が生じることが指摘されている。防汚塗料および塗料基材調合物においては、銅、亜鉛およびシリルアクリラート樹脂のような加水分解性のアクリラート樹脂が使用されることが一般的である。
【0004】
加水分解性のアクリラート樹脂は、水中で徐々に加水分解を受けて、表面上に被膜を形成することがわかっており、これは、例えば、米国特許第5,080,892号;6,458,878号;5,332,431号、および、4,898,895号で説明されている。
【0005】
加水分解性のアクリラート樹脂、および、亜鉛ピリチオンと亜酸化銅との組み合わせを含む防汚塗料に関連する不安定性の問題の原因およびメカニズムは、未だに解明されていない。考察されている原因としては、亜鉛ピリチオンの低い品質、すなわち亜鉛ピリチオンに不純物および凝集粒子が高含量で含まれること;亜酸化銅の低い品質、すなわち金属としての銅および銅イオンがより高含量で含まれること;または、亜鉛ピリチオンと亜酸化銅との化学反応が挙げられる。
【0006】
数々の特許において、亜鉛ピリチオンを亜酸化銅と組み合わせて含む塗料中に存在するゲル化問題を処理するための様々なアプローチが開示されている。例えば、米国特許第5,112,397号は、ゲル化を抑制した塗料を提供する方法を開示しており、この方法は、塗料に望ましいゲル化抑制性を付与するために、有機アミンまたはエステル化したウッドロジンを用いている。しかしながら、このプロセスは、ポリマー樹脂のような成分に依存する。加えて上記有機アミンは、環境面からみると有害である。
【0007】
国際特許出願WO1992/015647は、高純度の亜鉛ピリチオン、および、アミン化合物またはエステル化したウッドロジンを用いた塗料中での亜鉛ピリチオンおよび亜酸化銅の安定化方法を説明している。EP610251は、1〜20%のロジン金属塩を用いた塗料の安定化方法を説明している。しかしながら、いずれの方法においても、達成される安定化は限定的である。加えて、加水分解性のアクリラート樹脂は、これらの参考文献で開示された塗料において簡単に使用することができない。
【0008】
米国特許第5,098,473号および5,137,569号は、ゲル化抑制性を有する安定な組成物を開示している。例えば、米国特許第5,098,473号は、塗料にゲル化抑制を付与するために精製した亜鉛ピリチオンを利用している。米国特許第5,137,569号では、塗料にゲル化抑制性を付与するために、ウッドロジン金属塩が添加されおり、ここでこのような金属塩は、カルシウム、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、マグネシウム塩、および、それらの組み合わせから選択される。しかしながら、これらの参考文献で開示された塗膜の貯蔵安定性は、比較的低い温度または中程度の温度で最もよく作用するため、より高い高温の気候では十分に作用しないか、または、まったく作用しないと予想される。
【0009】
近年公開された米国特許出願2005/123503は、加水分解性のアクリラート樹脂、亜酸化銅、それに加えて2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド安定剤、または、それらのナトリウム、亜鉛もしくは銅塩を含む、貯蔵安定性を有する組成物を開示している。しかしながら、加水分解性のアクリラート樹脂ベースの塗料中におけるこれらのピリジン−N−オキシドを含む安定化剤の貯蔵安定性は、望ましいと予想されるレベルより低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、ピリチオン金属塩、亜酸化銅、および、加水分解性のアクリラート樹脂を含む塗料組成物の貯蔵の際の不安定性は、当業界において問題となっている。本発明は、それに対する一つの解決法を提供すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要約
一形態は、加水分解性のアクリラート樹脂を含む塗料または塗料基材に関し、本塗料または塗料基材は、その製造および貯蔵中に塗料または塗料基材中でゲル化を引き起こすのに十分な程度の粘度増加に対して安定化されている。本塗料または塗料基材は、銅アクリラート、亜鉛アクリラート、シリルアクリラート、および、それらの組み合わせからなる群より選択される加水分解性のアクリラート樹脂を含む。それに加えて、本塗料または塗料基材は、ピリチオン金属塩、亜酸化銅、ならびに、主要な安定化物質を含み、ここでこのような安定化物質は、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択され、ただし、この組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。
【0012】
その他の形態は、加水分解性のアクリラート樹脂、ピリチオン金属塩、および、亜酸化銅を含む耐ゲル化性を有する塗料または塗料基材組成物の製造方法に関し本方法は、塗料または塗料基材中でのゲルの形成を予防または抑制するために、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質の有効量を塗料または塗料基材に包含させることを含み、ただし、本組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。
【0013】
さらなる形態は、加水分解性の樹脂を含む塗料または塗料基材に包含させることによって、ゲル化に対する安定性を提供するのに適した安定剤組成物に関する。このような安定剤は、亜酸化銅と、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質とを含み、ただし、本安定剤組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。
【0014】
さらにその他の形態は、液体溶媒中の固体粒子の分散体に関し、ここで上記固体粒子は、亜酸化銅と、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質からなり、上記液体溶媒は、水または有機溶媒であり、ただし、本分散体は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。
【0015】
その他の形態は、銅アクリラート樹脂、亜鉛アクリラート樹脂、および、シリルアクリラート樹脂からなる群より選択される加水分解性のアクリラート樹脂;亜鉛ピリチオン、および、銅ピリチオンからなる群より選択されるピリチオン金属塩;亜酸化銅;ならびに、安息香酸、および、安息香酸の金属塩からなる群より選択される安定化物質を含む、塗料または塗料基材組成物に関する。
【0016】
さらにその他の形態は、液体溶媒中の固体粒子の分散体に関し、ここで上記固体粒子は、ピリチオン金属塩、亜酸化銅、ならびに、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質であり、上記液体溶媒は、水または有機溶媒であり、ただし、本分散体は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。
【0017】
以下の本発明の説明を読めば、これらの形態およびその他の形態が明らかになると思われる。
発明の詳細な説明
ここで驚くべきことに、本発明に係る安定化物質の使用は、本発明に係る安定化物質を含み、さらに加水分解性のアクリラート樹脂、亜酸化銅、および、ピリチオン金属塩をさらに含む塗料または塗料基材組成物にゲル化に対する安定性を提供することが見出された。このような安定化物質を含む塗料および塗料基材は、従来技術の安定化物質を含む塗料と比較して、ゲル形成に対する強化された抑制性を示す。
【0018】
典型的には、「塗料」組成物は、樹脂、顔料、および、当業界周知の増粘剤などの様々な任意の添加剤を含むと予想される。「塗料基材」は、塗料調合物の一種であり、例えば、塗料を形成するために顔料が混合されるポリマー樹脂である。亜酸化銅およびピリチオン金属塩と組み合わせて、銅アクリラート樹脂、亜鉛アクリラート樹脂、または、シリルアクリラート樹脂のような加水分解性のアクリラート樹脂を含む防汚塗料または塗料基材は、貯蔵安定性が低いことが示されており、商業的に許容できない貯蔵寿命しか有さないことが実証されている。特定の理論に縛られることは望まないが、発明者等は、ゲル化の増加、および、貯蔵安定性の低下は、加水分解性のアクリラート樹脂が塗料または塗料基材中に存在すると、加水分解性のアクリラート樹脂の分子中に架橋が形成された結果であると考えている。本発明に係る安定化物質が添加されると、このような架橋が予防され、従って改善された貯蔵安定性および減少したゲル化を示す塗料または塗料基材組成物が得られると考えられる。
【0019】
本発明の本塗料または塗料基材組成物で用いられる加水分解性の樹脂は、通常、2つの原則的な方法のうちどちらかで製造される。第一の方法は、不飽和単量体の直接の共重合を含む方法である。具体的に言えば、シリル樹脂は、トリアルキルシリルを含む単量体と、その他の単量体(例えばアルキルアクリラートまたはメタクリラート)との共重合によって合成することができる。トリアルキルシリルを含む単量体の例としては、トリメチルシリルアクリラート、トリエチルシリルアクリラート、トリプロピルシリルアクリラート、トリプロピルシリルアクリラート、トリブチルシリルアクリラート、トリイソブチルシリルアクリラート、トリヘキシルシリルアクリラート、トリオクチルシリルアクリラート、トリドデシルシリルアクリラート、エチルジメチルシリルアクリラート、ブチルジメチルシリルアクリラート、オクチルジブチルシリルアクリラート等、および、これら全てのトリアルキル化メタクリラート等が挙げられる。
【0020】
加水分解性の樹脂の製造で主として用いられる第二の方法は、不飽和単量体(これらの単量体のうち一種は保護的な基を有する)を共重合し、続いて、他の化合物を用いて樹脂の保護的な基を熱変換することを含む。この方法によって、銅および亜鉛アクリラート樹脂を合成することができる。具体的に言えば、銅および亜鉛アクリラート樹脂は、アクリラートまたはメタクリル酸と、その他の不飽和単量体(例えばアルキルアクリラートまたはメタクリル酸単量体)とを共重合し、続いて、酸官能基をその亜鉛または銅ナフテン酸塩に変換することによって合成することができる。アクリラートの例は、アクリル酸、および、メタクリル酸である。その他のアルキルアクリラートは、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、および、これら全ての対応するアルキル化メタクリラートなどである。
【0021】
また加水分解性の樹脂製造の例は、米国特許第5,080,892号;6,458,878号;5,332,431号;および、4,898,895号でも開示されている。
本発明の加水分解性のアクリラート樹脂は、典型的には、塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約10%〜約80重量%で存在する。好ましくは、加水分解性のアクリラート樹脂は、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約20%〜70重量%で存在する。
【0022】
加えて、本発明の塗料および塗料基材組成物はまた、亜酸化銅、および、ピリチオン金属塩も含む。この組み合わせは、本塗料または塗料基材に殺菌効力を提供する。
亜酸化銅は、典型的には、本塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約20%〜約75重量%の量で存在する。より好ましくは、亜酸化銅は、本塗料または塗料基材中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約25%〜50重量%の量で存在する。
【0023】
ピリチオン金属塩は、塗料または塗料基材において殺菌効力を示すことが当業界周知である。好ましい金属塩としては、亜鉛および銅の塩が挙げられる。亜酸化銅および銅ピリチオンと組み合わせて銅アクリラート樹脂を含む塗料または塗料基材組成物は、典型的には、貯蔵安定性を有する。しかしながら、亜酸化銅および亜鉛ピリチオンと組み合わせて銅アクリラート樹脂を含む塗料組成物は、低い貯蔵安定性、および、高いゲル化を示す。このような観察から、発明者等は、類似のイオンを含む塗料または塗料基材組成物は、高い貯蔵安定性を有し、ゲル化の増加は示さないと結論付けることができた。
【0024】
銅ピリチオンは、乾燥粉末の形態の市販品(アーチ・ケミカルズ社(Arch Chemicals, Inc.,ノーウォーク,コネチカット州)製)を入手することができる。本発明の方法において、この形態の銅ピリチオンを出発原料として用いてもよい。あるいは、銅ピリチオンは当業界既知の方法によって製造してもよく、このような方法としては、米国特許第5,650,095号;5,540,860号;5,238,490号で開示された方法が挙げられる。
【0025】
亜鉛ピリチオンは、米国特許第2,809,971号の開示によって説明されている通り1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(すなわちピリチオン酸)、または、それらの亜鉛塩(例えば、ZnSO)との可溶性の塩を反応させ、亜鉛ピリチオンの沈殿を形成することによって製造してもよい。
【0026】
ピリチオン金属塩は、本塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.5%〜約20重量%の量で存在する。より好ましくは、ピリチオン金属塩は、本塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.5%〜約10重量%の量で存在する。最も好ましくは、ピリチオン金属塩は、本塗料または塗料基材中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.5%〜約5%の量で存在する。
【0027】
驚くべきことに、亜酸化銅およびピリチオン金属塩と組み合わせて加水分解性のアクリラート樹脂を含む塗料または塗料基材組成物の改善された貯蔵安定性および減少したゲル化は、安定化物質の添加によって生じる。
【0028】
特定の理論に縛られることは望まないが、発明者等は、本発明の安定化物質は、加水分解性のアクリラート樹脂の活性な架橋部位をブロックすると考えている。
本発明に従って使用するのに適した安定化物質は、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の亜鉛および銅塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩、ならびにそれらの混合物である。好ましい安定化物質としては、2−ヒドロキシピリジン、ヒドロキシピリジンの亜鉛塩、および、安息香酸亜鉛、ならびにそれらの混合物が挙げられる。本塗料または塗料基材組成物は、典型的には、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、典型的には、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。本明細書で用いられる用語「実質的に〜を含まない」は、本塗料または塗料基材組成物中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、100ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が、100ppm未満であることを意味する。有利には、本塗料または塗料基材組成物中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、70ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が70ppm未満である。より有利には、本塗料または塗料基材組成物中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、50ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が、50ppm未満である。本分散体は、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約20%〜約70重量%の固体粒子を含む。
【0029】
好ましくは、上記安定化物質は、本発明の本塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の重量に基づき約0.05%〜約0.8重量%の量で存在する。その他の実施態様において、上記安定化物質は、本塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の重量に基づき約0.15%〜約0.8重量%の量で存在する。
【0030】
好ましくは、上記安定化物質は、防汚塗料調合物で用いられる溶媒または溶媒の混合物に可溶性である。溶媒としては、これらに限定されないが、水、トルエン、キシレン、ブタノール、イソブタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、および、それらの混合物が挙げられる。
【0031】
本発明の本塗料または塗料基材組成物は、任意に、補助安定剤をさらに含んでいてもよい。本発明の補助安定剤としては、乾燥剤、例えばアルカリ土類金属酸化物、例えば酸化バリウム、および、酸化マグネシウム、硫酸ナトリウム、活性アルミナ、シリカゲル、および、吸水性を有するクレイ、例えば天然および合成粘土が挙げられる。また、その他の有機性乾燥剤、例えばジクロロヘキシルジカルボジイミドも、本発明に係る補助安定剤として適切に用いられる。好ましい補助安定剤としては、分子篩、活性アルミナ、硫酸ナトリウム、および、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。
【0032】
補助安定剤は、本発明の塗料または塗料基材中に、塗料または塗料基材の重量に基づき約0.25%〜約20重量%で存在する。より好ましくは、補助安定剤は、塗料または塗料基材の重量に基づき約0.25%〜約10重量%の量で存在する。その他の実施態様において、補助安定剤は、塗料または塗料基材の重量に基づき約0.5%〜約5重量%の量で存在する。
【0033】
本発明の本塗料または塗料基材組成物は、任意に、粘度、湿潤力および分散性、加えて凍結および電解質に対する安定性、および、発泡特性に対して好都合な作用を有する任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。海洋用の塗料が製造される場合、本塗料は膨張剤を含むことが好ましく、膨張剤を含ませることによって、海洋環境において塗料が次第に「はがれ落ち」、それにより、海洋環境の水系媒体と接触する塗料の表面に殺生剤(すなわち、ピリチオン塩、それに加えてその銅塩)が新たに露出するすることによって殺菌効力を回復させることができる。膨張剤の例としては、天然に存在する、または、合成粘土、例えばカオリン、モンモリロナイト(ベントナイト)、雲母粘土(白雲母)、および、亜塩素酸塩(ヘクトナイト)、などが挙げられる。粘土に加えて、その他の膨張剤としては、天然または合成ポリマーが挙げられ、例えばPOLYMERGELとして市販されている合成ポリマーが、望ましい「はがれ落ちる」作用を提供するために本発明の組成物において有用であることが見出された。膨張剤は、単独で用いてもよいし、または、組み合わせて用いてもよい。任意の添加剤の総量は、好ましくは、塗料組成物の総重量に基づき20重量%以下であり、より好ましくは約1%〜約5重量%である。
【0034】
増粘剤の例としては、セルロース誘導体、例えばメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびカルボキシメチルセルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレン−グリコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ならびに、アクリル酸/アクリルアミドコポリマーの塩が挙げられる。
【0035】
適切な湿潤剤および分散剤としては、ポリリン酸ナトリウム、低分子量のポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(エタン−スルホン酸)の塩、ポリ(ビニル−ホスホン酸)の塩、ポリ(マレイン酸)の塩、および、マレイン酸とエチレンとのコポリマーの塩、3〜18個の炭素原子を有する1−オレフィン、および/または、スチレンが挙げられる。
【0036】
本発明の塗料は、天然または合成材料、例えば木材、紙、金属、布地およびプラスチックのための塗料として用いてもよい。本発明の塗料は、野外用の塗料として特に適切であり、海洋用の塗料としての使用に優れている。
【0037】
亜酸化銅およびピリチオン金属塩、ならびに安定化物質と組み合わせて加水分解性のアクリラート樹脂を含む本塗料または塗料基材組成物は、関連分野の当業者にとって既知の工程および方法によって製造することができる。
【0038】
塗料または塗料基材組成物の貯蔵安定性の増加は、亜酸化銅および安定化物質を含む安定剤組成物の添加によって達成することもできる。一般的には、この組成物は粉末の形態であり、本塗料または塗料基材組成物に直接添加することができる。好ましくは、このような安定化物質は、安定剤組成物中に、亜酸化銅の重量に基づき約0.01%〜約5重量%の量で存在する。その他の実施態様において、このような安定化物質は、安定剤組成物中に、亜酸化銅の重量に基づき約0.03%〜約4重量%の量で存在する。その他の実施態様において、このような安定化物質は、安定剤組成物中に、亜酸化銅の重量に基づき約0.02%〜約3重量%の量で存在する。
【0039】
あるいは、本発明の安定剤組成物は、溶媒と共に分散体に投入してもよい。溶媒は、水、キシレン、トルエン、ブタノール、または、本発明の分散体に適したあらゆる有機溶媒であり得る。本分散体は、塗料または塗料基材組成物と直接混合してもよい。
【0040】
あるいは、本発明の安定化物質は、ピリチオン金属塩を含み、溶媒中に安定化物質が分散された組成物を介して塗料または塗料基材に導入してもよい。あるいは、ピリチオン金属塩の固体粒子、および、上記安定化物質を含む分散体を塗料または塗料基材組成物に導入して、安定性を高め、ゲル化を減少させることもできる。本分散体は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない。本明細書で用いられる用語「実質的に〜を含まない」は、本分散体中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、100ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が、100ppm未満であることを意味する。有利には、本分散体中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、70ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が、70ppm未満である。より有利には、本分散体中に存在する2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドが、50ppm未満であり、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩が、50ppm未満である。本分散体は、分散体の総重量に基づき約20%〜約70重量%の固体粒子を含む。
【0041】
以下の本発明の実施例で好ましい実施態様をさらに説明し、それらが本発明の範囲内であることを示す。実施例は単に説明のために示され、本発明を限定するものとして認識されないこととし、従って、上記範囲内で多くの改変型が可能である。加えて、特に定義されない限り、「部」および「%」は、重量を基準とする。
【実施例】
【0042】
実施例1
パートA−銅アクリラート樹脂(樹脂A)の製造
本発明の実施態様に使用するための加水分解性の銅アクリラート樹脂を製造するために、1100部のキシレン、および、250部のn−ブタノールを、4つ首フラスコに入れた。この4つ首フラスコに、機械式の撹拌器、還流冷却器、滴下漏斗、および、制御器を備えた温度プローブを備え付けた。この混合物を撹拌し、110〜120℃に加熱し、その温度で維持した。
【0043】
この4つ首フラスコ中の混合物に、600部のアクリル酸エチル、250部の2−エチルヘキシルアクリラート、72部のアクリル酸、および、25部のアゾビスイソブチロニトリルの混合物を一滴ずつ一定速度で3時間かけて添加した。添加が完了した後、この混合物を同じ温度で2時間撹拌し続けた。得られたワニスは、39.8%の固体含量、および、許容できる粘度を有していた。
【0044】
このワニスに、259部のナフテン酸(酸性度216KOHmg/g)、および、98部の水酸化銅を添加した。この混合物を撹拌し、120℃に加熱し、同じ温度で2時間維持した。この期間の間に、生成した水を、水が生成されなくなるまでデカンターでこの混合物から除去した。生成した樹脂は、緑色、51%の固体含量、および、2.2ポイズの粘度を有していた。(以下、この樹脂と樹脂A称する)。
【0045】
樹脂Aの銅含量を測定するために、樹脂サンプルを揮発性溶媒を用いて沈殿させた。この樹脂の銅含量は、6.8重量%であった。
パートB−銅アクリラート樹脂(樹脂B)の製造
銅アクリラート樹脂を製造するために、500部のキシレン、および、100部のブタノールを4つ首フラスコに添加した。この4つ首フラスコに、コンデンサー、撹拌器、窒素パージ装置、および、滴下漏斗を備え付けた。この混合物を撹拌し、100〜110℃に加熱し、その温度で維持した。この4つ首フラスコ中の混合物に、38.5部のメタクリル酸、322部のメタクリル酸メチル、140部の2−エチルヘキシルメタクリラート、および、10部のアゾイソブチロニトリルを一定速度で一滴ずつ4時間かけて添加した。この混合物に一滴ずつ添加し終わった後、この混合物を110℃で30分間撹拌した。
【0046】
この4つ首フラスコ中の混合物に、100部のキシレン、および、50部のブタノール、および、5部のアゾビス−イソブチロニトリルの混合された溶液を、1時間かけて一滴ずつ添加した。一滴ずつ添加し終わった後、得られた混合物を同じ温度で2時間撹拌した。得られた樹脂溶液の固体部分(ワニスA)は9.8重量%であり、その固体部分の酸性度は50mgKOH/gであった。
【0047】
800部のこのようにして製造されたワニス、93.8部のプロピオン酸銅、116部のナフテン酸(酸性度216KOHmg/g)、および、80部の脱イオン水を、コンデンサー、撹拌器、窒素パージ装置、および、デカンターを備えた4つ首フラスコに添加した。この混合物を撹拌し、100℃に加熱し、反応が進行するにつれて水と共に生成したプロピオン酸を除去した。
【0048】
反応の終点を、流出溶媒中の固定量のプロピオン酸(41部)によって決定し(プロピオン酸の定量分析)、続いて系中の水を完全に除去し、反応を終了させ、流出したキシレンを添加した。樹脂(B)に含まれる固体の量は52.3重量%であった。
【0049】
パートC−安定剤を含む塗料、および、安定化剤を含まない塗料の製造および試験
以下の表4に記載の塗料調合物は、本発明に係る安定化物質を塗料3〜6に包含させて用いた防汚塗料の配合を説明する。これらの塗料を以下のように製造した:
0.5パイントの塗料缶に、以下の量の銅アクリラート樹脂A(表1)を、0.5gのワックスと共に添加した。この塗料に、下記の安定化物質、亜酸化銅、および、亜鉛ピリチオンを添加しながら低速で混合した。高速攪拌機を用いて混合速度を3000rpmに高めて20分間撹拌した。これらの塗料が完成したら、ヘグマン(Hegman)ゲージ試験を用いて、顔料の粒度を測定し、塗料の厚さをチェックした。上記全ての塗料をオーブン中で40℃で保存し、これらの塗料を、ヘグマンゲージ試験に従って定期的に試験した(以下でより詳細に説明する)。
【0050】
塗料7の塗料調合物は、安定化物質として、公開された米国特許出願第2005/123503号で開示された安定化物質である2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドの亜鉛塩を含む。その使用レベルは、この公開された特許出願の実施例で用いられるレベルと同じである。
【0051】
塗料8は、安定化物質を含まないコントロール実施例である。表4は、塗料調合物に本発明の安定化物質を添加した場合に達成される塗料の安定化の改善を説明する。
【0052】
【表1】

【0053】
これら防汚塗料の安定性およびゲル化を測定するために、ASTM法D1210−79、顔料−基剤系の分散体の細末度の標準試験法(Standard Test Methodfor Fineness of Dispersion of Pigment−Vehicle Systems)(以下、「ヘグマン試験」または「ヘグマンゲージ」と称する)を用いた。ヘグマン試験は、塗料、塗料基材、または、その他の液状コーティング剤のような顔料−基剤系中での顔料の分散の程度を測定するものである。またこの試験は、試験される塗料中に粒子の凝集がわずかでも生じた場合に、その凝集を評価するためにも用いられる。最も重要なことには、この試験は、40℃の「促進老化」条件下で缶に入れて貯蔵されている間のゲル化に対する塗料、塗料基材または液状コーティング剤の安定性を見積もるためにも用いられる。
【0054】
この実施例の塗料調合物は、亜鉛ピリチオン、亜酸化銅および銅アクリラート樹脂を含む塗料調合物を安定化させるために、2−ヒドロキシピリジン、ヒドロキシピリジンの亜鉛塩、および、安息香酸の亜鉛塩からなる群より選択される本発明に係る安定化物質を用いることの有効性を説明する。本発明の調合物、すなわち塗料3〜6のヘグマンゲージの測定値は、6週間の貯蔵期間中、変化しなかったことを特記する。それに対して、比較例、すなわち塗料7のヘグマンゲージの測定値は、ちょうど2週間で3から0に減少した。コントロール実施例、すなわち塗料8のヘグマンゲージの測定値は、ちょうど4日目に0に減少した。従って、本発明の塗料調合物は、コントロールおよび比較例の塗料と比較して貯蔵安定性が高かった。
【0055】
比較例A
加水分解性の亜鉛アクリラート樹脂の実施例
亜鉛アクリラートタイプの樹脂は、樹脂Bの合成に類似した合成方法を用いて生産された。溶媒中のこの樹脂の固体含量は、約50%であった。
【0056】
【表2】

【0057】
塗料8の調合物は、調製直後にブラシまたはローラーで塗布したところ、適切な粘度を有していたが、約24時間後に流し込みが困難な程のペーストに増粘した。
実施例2
【0058】
【表3】

【0059】
塗料9を、比較例Bで説明したように亜鉛アクリラート樹脂と共に配合した。塗料9は、少なくとも6週間安定であり、23℃で、さらには40℃でも安定性が継続することが観察された。この塗料は、ブラシまたはローラーでの塗布に適する粘度を有していた。
【0060】
この実施例は、亜鉛ピリチオン、亜酸化銅および亜鉛アクリラート樹脂を含む塗料調合物を安定化させるために、本発明に従って安定化物質を用いることの有効性を説明する。粒度に関するヘグマンゲージの測定値は、6週間の貯蔵期間中変化しなかった。従って、本発明の実施例の塗料調合物は、貯蔵安定性を高め、ゲル化を示さなかった。
【0061】
実施例3
【0062】
【表4】

【0063】
AF塗料11は、23℃で、さらには60℃でも、少なくとも3ヶ月安定であることが観察された。この塗料は、ブラシまたはローラーでの塗布に適する粘度を有していた。
上記の実施例は、銅ピリチオン、亜酸化銅および亜鉛アクリラート樹脂を含む塗料調合物を安定化させるために、本発明に従って分子篩のような安定剤(添加剤)を用いることの有効性を説明する。粒度に関するヘグマンゲージの測定値は、3ヶ月の貯蔵期間中変化しなかった。従って、本発明の実施例の塗料調合物は、貯蔵安定性を高め、ゲル化を示さない。
【0064】
それらの特定の実施態様を参照しながら本発明を説明したが、本明細書において開示された発明概念から逸脱することなく多くの変化、改変および変動が可能であることは明白である。従って、このような添付の請求項の本質および広範な範囲に含まれる全ての変化、改変および変動を包含することを目的とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性のアクリラート樹脂、ピリチオンの金属塩、亜酸化銅、及び安定化物質を含む塗料または塗料基材組成物であって、
加水分解性のアクリラート樹脂が、銅アクリラート樹脂、亜鉛アクリラート樹脂、シリルアクリラート樹脂、および、それらの組み合わせからなる群より選択され、
ピリチオンの金属塩が、亜鉛ピリチオンおよび銅ピリチオンからなる群より選択され、そして
安定化物質が、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩およびヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択され、
ただし、該組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム塩、亜鉛塩および銅塩も実質的に含まない、上記組成物。
【請求項2】
アルカリ土類金属酸化物、硫酸ナトリウム、活性アルミナ、シリカゲル、吸水性を有するクレイ、ジクロロヘキシルジカルボジイミド、および、分子篩からなる群より選択される補助安定剤をさらに含む、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項3】
前記補助安定剤が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき0.25%〜20重量%の量で存在する、請求項2に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項4】
前記加水分解性のアクリラート樹脂が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約10%〜約80重量%の量で存在する、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項5】
前記加水分解性のアクリラート樹脂が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約20%〜約70重量%の量で存在する、請求項4に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項6】
前記ピリチオン金属塩が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.5%〜約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項7】
前記ピリチオン金属塩が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.5%〜約10重量%の量で存在する、請求項6に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項8】
前記亜酸化銅が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約20%〜約75重量%の量で存在する、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項9】
前記安定化物質が、前記塗料または塗料基材組成物中に、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.05%〜約0.8重量%の量で存在する、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項10】
前記安定化物質が、前記塗料基材組成物中に、塗料基材組成物の総重量に基づき約0.15%〜約0.8重量%の量で存在する、請求項9に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項11】
前記安定化物質が、ヒドロキシピリジンの亜鉛塩、安息香酸亜鉛、2−ヒドロキシピリジン、または、それらの混合物である、請求項1に記載の塗料または塗料基材組成物。
【請求項12】
加水分解性のアクリラート樹脂、ピリチオンの金属塩、および、亜酸化銅を含む耐ゲル化性を有する塗料または塗料基材組成物の製造方法であって、該方法は、塗料または塗料基材中でのゲルの形成を予防または抑制するために、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質、もしくは安定化物質の混合物の有効量を塗料または塗料基材に包含させることを含み、ただし、該塗料または塗料基材組成物は、2−ヒドロキシピリジンN−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム塩、亜鉛塩および銅塩も実質的に含まない、上記方法。
【請求項13】
前記安定化物質が、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩、または、それらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記安定化物質が、2−ヒドロキシピリジンの亜鉛塩、安息香酸亜鉛、2−ヒドロキシピリジン、または、それらの混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記安定化物質または安定化物質の混合物の有効量が、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.05%〜約0.8重量%である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記安定化物質の有効量が、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.15%〜約0.8重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記塗料または塗料基材組成物に、有効量の補助安定剤を添加することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記補助安定剤の有効量が、塗料または塗料基材組成物の総重量に基づき約0.25%〜20重量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
安定剤組成物であって、該安定剤組成物は、亜酸化銅;ならびに、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質、もしくはそれらの混合物を含み、ただし、該安定剤組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない、上記安定剤組成物。
【請求項20】
前記安定化物質が、ヒドロキシピリジンの亜鉛塩、安息香酸亜鉛、2−ヒドロキシピリジン、または、それらの混合物である、請求項19に記載の安定剤組成物。
【請求項21】
前記安定化物質の有効量が、組成物中の亜酸化銅の重量に基づき約0.02%〜約3重量%である、請求項19に記載の安定剤組成物。
【請求項22】
前記安定化物質の混合物の有効量が、組成物中の亜酸化銅の重量に基づき約0.03%〜約4重量%である、請求項19に記載の安定剤組成物。
【請求項23】
銅アクリラート樹脂、亜鉛アクリラート樹脂、および、シリルアクリラート樹脂からなる群より選択される加水分解性のアクリラート樹脂;亜鉛ピリチオン、および、銅ピリチオンからなる群より選択されるピリチオン金属塩;亜酸化銅;ならびに、安息香酸、および、安息香酸の金属塩からなる群より選択される安定化物質を含む、塗料または塗料基材組成物。
【請求項24】
液体溶媒中の固体粒子の分散体であって、前記固体粒子は、亜酸化銅と、安息香酸、ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質とを含み、さらに該液体溶媒は、水または有機溶媒であり、ただし、該分散体は、2−ヒドロキシピリジンN−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない、上記分散体。
【請求項25】
前記固体粒子が、前記分散体中に、分散体の総重量に基づき約20%〜約70重量%で存在する、請求項24に記載の分散体。
【請求項26】
液体溶媒中の固体粒子の分散体であって、該固体粒子は、ピリチオン金属塩と、安息香酸、2−ヒドロキシピリジン、安息香酸の金属塩、および、ヒドロキシピリジンの金属塩からなる群より選択される安定化物質とを含み、さらに該液体溶媒は、水または有機溶媒であり、ただし、該組成物は、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドを実質的に含まず、さらに、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシドのナトリウム、亜鉛および銅塩も実質的に含まない、上記分散体。

【公表番号】特表2009−517496(P2009−517496A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542315(P2008−542315)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/040961
【国際公開番号】WO2007/061546
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(508154379)アーチ・ケミカルズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】