説明

ピレン誘導体及びそれらを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】 発光効率が高く、長寿命な青色発光が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子及びそれを実現する新規なピレン誘導体を提供する。
【解決手段】 特定構造のピレン誘導体、並びに、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が、前記ピレン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下ELと略すことがある)素子に関し、特に、ピレン誘導体を発光材料として用いることで、長寿命で、高発光効率であり、さらに製造コストが安価な有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下エレクトロルミネッセンスをELと略記することがある)は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。イーストマン・コダック社のC.W.Tang等による積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(C.W.Tang,S.A.Vanslyke,アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letters),51巻、913頁、1987年等)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。Tang等は、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いている。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めること、陰極より注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めること、発光層内で生成した励起子を閉じ込めること等が挙げられる。この例のように有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送性発光層の二層型、または正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるため、素子構造や形成方法の工夫がなされている。
【0003】
また、発光材料としてはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等の発光材料が知られており、それからは青色から赤色までの可視領域の発光が得られることが報告されており、カラー表示素子の実現が期待されている(例えば、特許文献1〜3等)。
近年、燐光性化合物を発光材料として用い、三重項状態のエネルギーをEL発光に用いる検討が多くなされている。プリンストン大学のグループにより、イリジウム錯体を発光材料として用いた有機発光素子が、高い発光効率を示すことが報告されている(非特許文献1)。さらに、上記のような低分子材料を用いた有機発光素子の他にも、共役系高分子を用いた有機発光素子が、ケンブリッジ大学のグループ(非特許文献2)により報告されている。この報告ではポリフェニレンビニレン(PPV)を塗工系で成膜することにより、単層で発光を確認している。
【0004】
このように有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0005】
有機発光素子における著しい進歩に伴い、発光材料に対する要求性能も高まっており、特許文献4や特許文献5には、フルオレンを連結器としたピレン化合物が開示されている。また、特許文献6には、フェニレンやビフェニレンを連結器としたピレン化合物が開示され、特許文献7には、トリピレニルベンゼンが比較例として開示されているが、いずれの化合物も、半減寿命が不十分であったり、色純度が悪いなどの問題点があり、更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が得られる発光材料が求められていた。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化等の耐久性の面や、フルカラーディスプレイ等への応用を考えた色純度の高い青、緑、赤を示す発光材料が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−239655号公報
【特許文献2】特開平7−183561号公報
【特許文献3】特開平3−200289号公報
【特許文献4】特開2004−83481
【特許文献5】特開2004−43349
【特許文献6】特開2004−139957
【特許文献7】特開2003−347056
【非特許文献1】Nature,395,151(1998)
【非特許文献2】Nature,347,539(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前記の従来技術の問題点を解決するためなされたもので、ピレン誘導体を発光材料として用いることで、発光効率が高く、長寿命な青色発光が得られる有機EL素子を提供することである。そして、このような有機EL素子を容易でかつ比較的安価に製造可能とすることをも本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)又は(2)で表されるピレン誘導体を発光材料として用いると、発光効率が高く、長寿命の有機EL素子を製造できることを見出し本発明を完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるピレン誘導体を提供するものである。
(A)k−(X)m−(Ar)n −(Y)p−(B)q (1)
[式中、Xは置換あるいは無置換のピレン残基である。A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基である。Ar及びAr1〜Ar3は置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基及び/又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基である。Yは置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の縮合環基及び/又は縮合複素環基である。mは1〜3の整数、k及びqは0〜4の整数、pは0〜3の整数及びnは0〜5の整数である。]
また、本発明は、陰極と陽極間に少なくとも発光層を有する一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機EL素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が、前記ピレン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する有機EL素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
上記一般式(1)で表わされるピレン誘導体を発光材料とし用いると、発光効率が高く、長寿命な青色発光が得られる有機EL素子を作製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のピレン誘導体は、下記一般式(1)で表されるものである。
(A)k−(X)m−(Ar)n −(Y)p−(B)q (1)
[式中、Xは置換あるいは無置換のピレン残基である。A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基である。Ar及びAr1〜Ar3は置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基及び/又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基である。Yは置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の縮合環基及び/又は縮合複素環基である。mは1〜3の整数、k及びqは0〜4の整数、pは0〜3の整数及びnは0〜5の整数である。]
本発明の上記一般式(1)で表されるピレン誘導体は、下記一般式(2)で表される構造であると好ましい。
(A)k−X−Ar1−Ar2−Ar3 −Y−(B)q (2)
[式中、X、A、B、Y、k及びqは前記と同じである。Ar1〜Ar3は一般式(1)におけるArと同じである。]
【0012】
一般式(1)おいて、X−Ar、Ar−Y及びAr間の結合の内、少なくとも1つ以上がメタ結合又はオルト結合であることが好ましい。また、一般式(2)において、X−Ar1、Ar1−Ar2、Ar2−Ar3及びAr3−Yの間の結合の内、少なくとも1つ以上がメタ結合あるいはオルト結合であることが好ましい。
一般式(1)におけるAr基及び/又は一般式(2)におけるAr1〜Ar3基が、無置換のフェニレン基であることが好ましい。
上記一般式(1)又は(2)において、Xで表される置換あるいは無置換のピレン基の例として、ピレン化合物から水素原子を除いた下記のような残基が挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
上記一般式(1)又は(2)において、A、B、Ar及びAr1〜Ar3で表される置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−テルフェニル4−イル基、p−テルフェニル3−イル基、p−テルフェニル2−イル基、m−テルフェニル4−イル基、m−テルフェニル3−イル基、m−テルフェニル2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4'−メチルビフェニルイル基、4"−t−ブチル−p−テルフェニル4−イル基及びこれらを2価の基としたもの等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(1)又は(2)において、A、B、Ar及びAr1〜Ar3で表される置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基としては、例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基及びこれらを2価の基としたもの等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)又は(2)において、Ar及びAr1〜Ar3で表される構造式の好ましい例を下記するが、これらに限定されない。
【0019】
【化4】

【化5】

【0020】
上記一般式(1)又は(2)において、A及びBで表される置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基及びこれらを2価の基としたもの等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)又は(2)において、A及びBで表される置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基及びこれらを2価の基としたもの等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)又は(2)において、Yで表される置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の縮合環基及び/又は縮合複素環基としては、ピレン、アントラセン、ベンツアントラセン、ナフタレン、フルオランテン、フルオレン、ベンツフルオレン、ジアザフルオレン、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体及び蛍光色素等の残基が挙げられ、ピレン、アントラセン、フルオランテンの残基が好ましい。
【0023】
上記一般式(1)又は(2)ので表されるピレン誘導体のX、A、B、Ar、Y、Ar1、Ar2及びAr3の置換基としては、アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基であり、特に好ましくはイソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基である
【0024】
一般式(1)又は(2)で表される化合物を以下に例示するが、本発明の化合物はこれらの例示に限定するものではない。

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
【化12】

【0032】
【化13】

【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

【0035】
【化16】

【0036】
【化17】

【0037】
【化18】

【0038】
【化19】

【0039】
【化20】

【0040】
【化21】

【0041】
【化22】

【0042】
【化23】

【0043】
【化24】

【0044】
【化25】

【0045】
【化26】

【0046】
本発明のピレン誘導体は、有機EL素子用発光材料であると好ましく、また有機EL素子用ホスト材料であると好ましい。
本発明のEL素子は、一対の電極間に発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなり、該有機化合物薄膜の少なくとも一層が、前記一般式(1)又は(2)で表わされるピレン誘導体を発光材料として含有するものである。
前記発光層は、一般式(1)又は(2)で表わされるピレン誘導体を10〜100%含有していることが好ましく、さらに好ましくは50〜99%含有していることが好ましい。
【0047】
本発明の有機EL素子は、前記発光層が、さらにアリールアミン化合物及び/又はスチリルアミン化合物を含有すると好ましい。
スチリルアミン化合物としては、下記一般式(A)で表されるものが好ましい。
【化27】

(式中、Ar3'は、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベン基、ジスチリルアリール基から選ばれる基であり、Ar4'及びAr5'は、それぞれ水素原子又は炭素数が6〜20の芳香族炭化水素基であり、Ar3'、Ar4'及びAr5'は置換されていてもよい。p’は1〜4の整数である。さらに好ましくはAr4'又はAr5'の少なくとも一方はスチリル基で置換されている。)
【0048】
アリールアミン化合物としては、下記一般式(B)で表されるものが好ましい。
【化28】

(式中、Ar6'〜Ar8'は、置換もしくは無置換の核炭素数5〜40のアリール基である。q’は1〜4の整数である。)
【0049】
ここで、核炭素数が5〜40のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基、コロニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ピローリル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、オキサジアゾリル基、ジフェニルアントラニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ベンゾキノリル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基、スチルベン基、ペリレニル基、クリセニル基、ピセニル基、トリフェニレニル基、ルビセニル基、ベンゾアントラセニル基、フェニルアントラニル基、ビスアントラセニル基、又は下記一般式(C),(D)で示されるアリール基等が挙げられ、ナフチル基、アントラニル基、クリセニル基、ピレニル基、又は一般式(D)で示されるアリール基が好ましい。
【0050】
【化29】

(一般式(C)において、rは1〜3の整数である。)
【0051】
なお、前記アリール基の好ましい置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基(エチル基、メチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(エトキシ基、メトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、核炭素数5〜40のアリール基、核炭素数5〜40のアリール基で置換されたアミノ基、核炭素数5〜40のアリール基を有するエステル基、炭素数1〜6のアルキル基を有するエステル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0052】
前記発光層は、一般式(1)又は(2)で表されるピレン誘導体と蛍光性あるいはりん光性のドーパントとを混合物として含有していてもよい。
前記蛍光性のドーパントは、アミン系化合物、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等から、要求される発光色に合わせて選ばれる化合物であることが好ましい。
前記りん光性のドーパントは、Ir、Ru、Pd、Pt、Os、およびReからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体であることが好ましく、配位子は、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格およびフェナントロリン骨格からなる群から選択される少なくとも一つの骨格を有することが好ましい。このような金属錯体の具体例は、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクテルフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクテルフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、要求される発光色、素子性能、ホスト化合物との関係から適切な錯体が選ばれることが好ましい。
【0053】
以下、本発明の有機EL素子の素子構成について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極間に一層又は多層からなる有機薄膜層を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層を設けている。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔注入材料もしくは電子注入材料を含有しても良い。発光材料は、極めて高い蛍光量子効率、高い正孔輸送能力及び電子輸送能力を併せ持ち、均一な薄膜を形成することが好ましい。
多層型の有機EL素子の素子構成としては、(陽極/正孔注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極)、(陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極)等の多層構成で積層したもの等が挙げられる。
【0054】
発光層には、必要に応じて、本発明の一般式(1)又は(2)で表されるピレン誘導体に加えてさらなる公知の発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を使用することもできる。
ドーピング材料としては、従来の蛍光発光性材料に加えて、りん光発光性のイリジウムに代表される重金属錯体のいずれも使用することができる。有機EL素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、他のドーピング材料、正孔注入材料や電子注入材料を組み合わせて使用することができる。また、他のドーピング材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や白色の発光を得ることもできる。
また、正孔注入層、発光層、電子注入層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。その際には、正孔注入層の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入層の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0055】
一般式(1)又は(2)のピレン誘導体と共に有機層に使用できる発光材料またはホスト材料としては、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン、スチルベン系誘導体及び蛍光色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
正孔注入材料としては、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の有機EL素子において使用できる正孔注入材料の中で、さらに効果的な正孔注入材料は、芳香族三級アミン誘導体もしくはフタロシアニン誘導体である。
芳香族三級アミン誘導体の具体例は、トリフェニルアミン、トリトリルアミン、トリルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン等、もしくはこれらの芳香族三級アミン骨格を有したオリゴマーもしくはポリマーであるが、これらに限定されるものではない。
フタロシアニン(Pc)誘導体の具体例は、H2Pc、CuPc、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、CllnPc、ClSnPc、Cl2SiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc−O−GaPc等のフタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体であるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
電子注入材料としては、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入層への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、正孔注入材料に電子受容物質を、電子注入材料に電子供与性物質を添加することにより電荷注入性を向上させることもできる。
【0059】
本発明の有機EL素子において、さらに効果的な電子注入材料は、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体である。
金属錯体化合物の具体例は、トリス(8−キノリノール)アルミニウム,ビス(8−キノリノール)マグネシウム,ビス〔ベンゾ(f)−8−キノリノール〕亜鉛,ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド,トリス(8−キノリノール)インジウム,トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム,8−キノリノールリチウム,トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム,ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム,ポリ(亜鉛(II) −ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン)などの8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
また、含窒素五員誘導体は、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、ジメチルPOPOP、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−t−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス「2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−t−ブチルベンゼン]、2−(4’−tertブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4’−t−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の有機EL素子においては、有機層中に、一般式(1)又は(2)のピレン誘導体の他に、発光材料、ドーピング材料、正孔注入材料および電子注入材料の少なくとも1種が同一層に含有されてもよい。また、本発明により得られた有機EL素子の、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、シリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護することも可能である。
【0062】
有機EL素子の陽極に使用される導電性材料としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが適しており、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が用いられる。
本発明の有機EL素子の陰極に使用される導電性物質としては、4eVより小さな仕事関数を持つものが適しており、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等およびそれらの合金が用いられるが、これらに限定されるものではない。合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、適切な比率に選択される。
前記陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。有機EL素子では、効率良く発光させるために、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において充分透明にすることが望ましい。
【0063】
また、本発明の有機EL素子で用いる基板も透明であることが望ましい。透明電極は、上記の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定する。発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば限定されるものではないが、ガラス基板および透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0064】
本発明に係わる有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれの方法を適用することができる。膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nmから10μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の適切な溶媒に溶解または分散させて薄膜を形成するが、その溶媒はいずれであっても良い。また、いずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用しても良い。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂およびそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等を挙げられる。
【0065】
以上のように、有機EL素子の有機層に本発明の一般式(1)又は(2)で表わされるピレン誘導体を発光材料として用いることにより、発光効率が高く、耐熱性に優れ、寿命が長く、色純度が良い有機EL素子を得ることができる。
【0066】
本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例にてさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、各例で得られた有機EL素子の評価方法は下記の通りである。
(1)初期性能:所定の電圧を印可し、その時の電流値を測定すると同時に、輝度計(ミノルタ社製分光輝度放射計CS−1000)で発光輝度値とCIE1931色度座標を測定し評価した。
(2)寿命:初期輝度1000cd/m2 で定電流駆動し、輝度の半減期、及び色度の変化で評価した。
【0068】
実施例1 (化合物(H−1)の合成)
下記の反応式によって化合物(H−1)を合成した。
【0069】
【化30】

【0070】
300ml三つ口フラスコに、ピレン1−ボロン酸 4.92g(20mmol)、3−ブロモヨードベンゼン 5.94g(21mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.46g(0.4mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 10ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 30ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、トルエン/イオン交換水で抽出しカラムクロマトグラフィーで精製し3−ピレニルブロモベンゼン 5.61g(収率79%)を得た。
【0071】
次に、得られた3−ピレニルブロモベンゼン 5.36g(15.0mmol)をトルエン 50ml/ジエチルエーテル50ml混合溶媒に溶解し、アルゴン雰囲気下−70℃でノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M) 11.3ml(18.0mmol)を加え、−70℃から0℃で1時間撹拌した。次に反応溶液を−70℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル 10.3ml(45mmol)を滴下し、−70℃で1時間撹拌した後、室温まで昇温して6時間攪拌した。更に反応溶液に5%塩酸 100mlを滴下した後、室温で45分間攪拌した。反応溶液を二層分離した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を5分の1程度まで減圧留去後、析出した結晶を濾過し、トルエン−ノルマルヘキサン混合溶媒、ノルマルヘキサンで順次洗浄し、3−ピレニルフェニルボロン酸 3.87g(収率80%)を得た。
【0072】
次に、100ml三つ口フラスコに、3−ピレニルフェニルボロン酸 3.38g(10.5mmol)、1,3−ジブロモベンゼン 1.18g(5.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.23g(0.2mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 30ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 7.5ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別しトルエン、メタノール、イオン交換水で洗浄し、目的物であるH−1を2.65g(収率84%)得た。
FD−MS calcd for C6346=631,found m/z=631(M+,100)
【0073】
(有機EL素子の作成)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして膜厚60nmのN,N’−ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル膜(以下「TPD232膜」と略記する。)を成膜した。このTPD232膜は、正孔注入層として機能する。TPD232膜の成膜に続けて、このTPD232膜上に膜厚20nmのN,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニル)−ジアミノビフェニレン層 以下「TBDB層」を成膜した。この膜は正孔輸送層として機能する。さらに膜厚40nmのH−1をホスト材料として蒸着し成膜した。同時に発光分子として、下記のスチリル基を有するアミン化合物D1をH−1に対し重量比D1:(H−1)=3:40で蒸着した。この膜は、発光層として機能する。この膜上に膜厚10nmのAlq膜を成膜した。これは、電子注入層として機能する。この後還元性ト゛ーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL発光素子を形成した。
【0074】
【化31】

得られた有機EL素子について、下記(1)及び(2)の評価を行った結果を表1に示す。
(1)初期性能:所定の電圧を印可し、その時の電流値を測定すると同時に、輝度計(ミノルタ社製分光輝度放射計CS−1000)で発光輝度値とCIE1931色度座標を測定し、発光効率を算出し評価した。
(2)寿命:初期輝度1000cd/m2で定電流駆動し、発光輝度の半減時間で評価した。
【0075】
実施例2
下記の反応式によって化合物(H−2)を合成した。
【化32】

【0076】
300ml三つ口フラスコに、3−ブロモフェニルボロン酸8.03g (40.0mmol)、1,4−ジヨードベンゼン 6.93g(21.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.92g(0.8mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にジメトキシエタン 60ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 30ml(3eq)を加え、90℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、トルエン/イオン交換水で抽出しカラムクロマトグラフィーで精製し中間体a 6.33g(収率78%)を得た。
次に、300ml三つ口フラスコに、1,6−ジブロモピレン 18.0g(50.0mmol)、フェニルボロン酸 6.10g(50.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 1.16g(1.0mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 150ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 75ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別し、ろ液(トルエン溶液)を、カラムクロマトグラフィーで精製し1−フェニル−6−ブロモピレン 11.6g(収率64.6%)を得た。
【0077】
次に、得られた1−フェニル6−ブロモピレン 10.7g(30.0mmol)をトルエン100ml/ジエチルエーテル 50ml混合溶媒に溶解し、アルゴン雰囲気下−70℃でノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.67M) 13.5ml(36.0mmol)を加え、−70℃から0℃で1時間撹拌した。 次に反応溶液を−70℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル 20.6ml(90mmol)を滴下し、−70℃で1時間撹拌した後、室温まで昇温して6時間攪拌した。更に反応溶液に5%塩酸 100mlを滴下した後、室温で45分間攪拌した。反応溶液を二層分離した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を5分の1程度まで減圧留去後、析出した結晶を濾過し、トルエン−ノルマルヘキサン混合溶媒、ノルマルヘキサンで順次洗浄し、1−フェニルピレン−6−ボロン酸 6.94g(収率72%)を得た。
【0078】
次に、100ml三つ口フラスコに、中間体a 1.94g(5.0mmol)、1−フェニル,ピレン−6−ボロン酸 3.38g(10.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.23g(0.01mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 30ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 7.5ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別しトルエン、メタノール、イオン交換水で洗浄し、目的物であるH−2を2.62g(収率67%)を得た。
引き続きH−1の代わりにH−2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、素子作成を行い性能評価した。結果を表1に示す。
FD−MS calcd for C6346=783,found m/z=783(M+,100)
【0079】
実施例3〜7
フェニルボロン酸の代わりに2−ナフチルボロン酸、1−ナフチルボロン酸、4−ビフェニルボロン酸、4−(1−ナフチル)フェニルボロン酸及び3−(2−ナフチル)フェニルボロン酸をそれぞれ用いた以外は実施例2と同様にして、下記の構造式の化合物H−3〜H−5を合成した。H−1の代わりにH−3〜H−5のそれぞれを用いて実施例1と同様に素子作成を行い、性能評価した。結果を表1に示す。
【化33】

【0080】
実施例8
先ず、下記の反応式によって中間体cを合成した。
【化34】

【0081】
300ml三つ口フラスコに、実施例1と同様に合成した3−ピレニルフェニルボロン酸 6.44g(20.0mmol)、4−ブロモヨードベンゼン 5.94g(21.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.46g(0.4mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 60ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 30.0ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別しトルエン、メタノール、イオン交換水で洗浄し、目的物である中間体b 7.62g(収率88%)を得た。
【0082】
次に、得られた中間体b 7.37g(17.0mmol)をトルエン 50ml/ジエチルエーテル 50ml混合溶媒に溶解し、アルゴン雰囲気下−70℃でノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.67M) 7.6ml(20.4mmol)を加え、−70℃から0℃で1時間撹拌した。 次に反応溶液を−70℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル 11.7ml(51mmol)を滴下し、−70℃で1時間撹拌した後、室温まで昇温して6時間攪拌した。更に反応溶液に5%塩酸 100mlを滴下した後、室温で45分間攪拌した。反応溶液を二層分離した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機溶媒を5分の1程度まで減圧留去後、析出した結晶を濾過し、トルエン−ノルマルヘキサン混合溶媒、ノルマルヘキサンで順次洗浄し、中間体c 5.31g(収率78%)を得た。
【0083】
次に、下記の反応式によって中間体dを合成した。
【化35】

【0084】
次に、300ml三つ口フラスコに、実施例2と同様にして合成した1−フェニルピレン−6−ボロン酸 3.22g(10.0mmol)、3−ブロモヨードベンゼン 2.97g(10.5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.23g(0.2mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 30ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 15.0ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別しトルエン、メタノール、イオン交換水で洗浄し、目的物である中間体d 3.55g(収率82%)を得た。
【0085】
最後に、中間体cと中間体dを次の様に反応させ化合物(H−8)を合成した。
100ml三つ口フラスコに、中間体c 2.09g(5.3mmol)、中間体d 2.17g(5.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 0.12g(0.1mmol,2mol%)を入れ容器内をアルゴン置換した。更にトルエン 15ml、及び2M 炭酸ナトリウム水溶液 7.5ml(3eq)を加え、100℃のオイルバスで8時間加熱還流した。一晩後、析出物をろ別しトルエン、メタノール、イオン交換水で洗浄し、目的物であるH−8を2.79g(収率79%)を得た。引き続きH−1の代わりにH−8を用いた以外は実施例1と同様に素子作成を行い性能評価した。結果を表1に示す。
FD−MS calcd for C6346=708,found m/z=707(M+,100)
【化36】

【0086】
実施例9〜14
実施例8においてフェニルボロン酸の代わりにビフェニル、2−ナフチル、1−ナフチル、4−(1−ナフチル)フェニル、4−(2−ナフチル)フェニル及び3−(2−ナフチル)の各ボロン酸を用いて、中間体dのフェニル基の代わりにそれぞれのアリール基を有する化合物を合成してから、中間体cと反応させることによって同様にH−9〜H−14を合成した。それぞれ実施例1と同様に素子作成を行い、性能評価を実施した。結果を表1に示す。
【0087】
【化37】

【0088】
実施例15〜34
実施例1〜15の合成方法を応用し、各種原料を検討することによって下記構造の化合物H−15〜H−34を合成した。それぞれ実施例1と同様にして素子作成を行い、素子性能を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
【化38】

【化39】

【0090】
比較例1〜4
下記の反応で比較化合物1〜4をそれぞれ合成し、それぞれH−1に代えて用いた以外実施例1と同様にして、有機EL素子を作成した。評価結果を表1に示す。
【0091】
【化40】

【0092】
【表1】

【0093】
このように本発明は、特定構造の置換あるいは無置換のフェニレン基を連結器としたビスピレニル化合物を含む材料から発光層が形成されたことにより、従来のフルオレンリンカー化合物より長寿命化した。また、従来開示されているフェニレン、ビフェニレンによるビスピレン誘導体やトリピレニルベンゼンでは、比較例2、3及び4のように色純度が著しく悪化してしまうが、本発明の特定構造のフェニレン基によるビスピレン誘導体を用いることで、色純度の悪化が防止され、高効率かつ長寿命となる著しい効果があることが判った。以上の結果より、本発明の特定構造のフェニレン基を連結器としたビスピレニル誘導体は非常に優れた発光材料であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上詳細に説明したように、本発明のピレン誘導体を用いた有機EL素子は、発光効率が高く、長寿命な青色発光が得られる。このため、実用性の高い有機EL素子として極めて有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるピレン誘導体。
(A)k−(X)m−(Ar)n −(Y)p−(B)q (1)
[式中、Xは置換あるいは無置換のピレン残基である。
A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基である。
Arは置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基及び/又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基である。
Yは置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の縮合環基及び/又は縮合複素環基である。
mは1〜3の整数、
k及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数、
pは0〜3の整数、
nは3〜5の整数である。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される請求項1に記載のピレン誘導体。
(A)k−X−Ar1−Ar2−Ar3 −Y−(B)q (2)
[式中、X、A、B、Y、k及びqは前記と同じである。
Ar1〜Ar3は一般式(1)におけるArと同じである。]
【請求項3】
一般式(1)おいて、X−Ar、Ar−Y及びAr間の結合の内、少なくとも1つ以上がメタ結合又はオルト結合である請求項1に記載のピレン誘導体。
【請求項4】
一般式(2)において、X−Ar1、Ar1−Ar2、Ar2−Ar3及びAr3−Yの間の結合の内、少なくとも1つ以上がメタ結合あるいはオルト結合である請求項2に記載のピレン誘導体。
【請求項5】
一般式(1)におけるAr基及び/又は一般式(2)におけるAr1〜Ar3基が、無置換のフェニレン基である請求項1〜4のいずれかに記載のピレン誘導体。
【請求項6】
一般式(1)におけるAr基及び/又は一般式(2)におけるAr1〜Ar3基が、下記の構造を含む請求項1〜5のいずれかに記載のピレン誘導体。
【化1】

【化2】

【請求項7】
一般式(1)及び/又は一般式(2)において、k+q≧1である請求項1〜6のいずれかに記載のピレン誘導体。
【請求項8】
有機エレクトロルミネッセンス素子用発光材料である請求項1〜7のいずれかに記載のピレン誘導体。
【請求項9】
有機エレクトロルミネッセンス素子用ホスト材料である請求項1〜7のいずれかに記載のピレン誘導体
【請求項10】
陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層が挟持されている有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機薄膜層の少なくとも一層が、請求項1〜7のいずれかに記載のピレン誘導体を単独もしくは混合物の成分として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記ピレン誘導体を含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記発光層が、さらにアリールアミン化合物を含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記発光層が、さらにスチリルアミン化合物を含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記発光層が、さらに金属錯体化合物を含有する請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2007−15961(P2007−15961A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197765(P2005−197765)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】