説明

ピログルタミン酸修飾MCP−1を決定することにより炎症性疾患を診断する方法及びグルタミニルシクラーゼの阻害剤のスクリーニング方法

本発明は、生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1(MCP-1 N1pE):MCP-1の総濃度の比をバイオマーカーとして用いて、炎症性疾患又は炎症関連疾患の処置をモニタリングする方法に関し、さらに、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する新規な方法にも関する。本発明はまた、グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤のスクリーニング又はグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性の測定のための診断キット及び方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1(MCP-1 N1pE):MCP-1の総濃度の比をバイオマーカーとして使用して、炎症性疾患又は炎症関連疾患の処置をモニタリングする方法に関し、かつ生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する新規な方法にも関する。本発明はまた、グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤のスクリーニング又はグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性の測定のための診断キット及び方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
走化性サイトカイン(ケモカイン)は、白血球を誘引しかつ活性化するタンパク質であり、炎症において基本的な役割を果たすと考えられている。ケモカインは、N末端システイン残基の出現により4つのファミリー(Cケモカイン;CCケモカイン;CXCケモカイン;及びCX3Cケモカイン)に分類される。CCケモカイン(別名:β-ケモカイン)は、炎症部位に優先的に単球を誘引する。単球浸潤は、多数の病態において重要な事象であると考えられる(Gerard, C.及びRollins, B. J.の論文、Nat.Immunol 2, 108-115 (2001);Bhatia, M.らの論文、Pancreatology. 5, 132-144 (2005);Kitamoto, S.、Egashira, K.、及びTakeshita, A.の論文、J Pharmacol Sci. 91, 192-196 (2003))。
【0003】
MCP-1(単球走化性タンパク質-1、CCL2)は、ケモカインのCCファミリーのメンバーである。このファミリーでは、そのアミノ末端に最も近い2個のシステインが互いに隣接している(従って、C-Cタンパク質)。多くの他のC-Cケモカインと同様に、MCP-1遺伝子は、ヒト第17番染色体上に位置している。MCP-1に結合する細胞表面受容体は、CCR2及びCCR5である。
【0004】
4種類のヒトMCP:MCP-1(CCL2)、MCP-2(CCL8)、MCP-3(CCL7)、及びMCP-4(CCL13)が見出された。MCPは、CCケモカインのサブファミリーと見なすことができる。全てのMCPは、単球の誘引を優先することを示すが、それらの発現レベル及び走化性能には差があることを示す(Luini, W.らの論文、Cytokine 6, 28-31 (1994); Uguccioni, M. らの論文、Eur J Immunol 25, 64-68 (1995); Berkhoutらの論文、JBC (1997))。
【0005】
以下に、ヒトMCP-1のアミノ酸配列を示す:
ヒトMCP-1(CCL2)(UniProtKB/Swiss-Prot P13500)
タンパク質(シグナル配列(太字):23個のアミノ酸;成熟MCP-1:76個のアミノ酸)
配列番号1
【化1】

【0006】
MCP-1がケモカインβファミリーのメンバーであることと合致して、MCP-1は、ナノモルを下回る濃度で、in vitroにおいて単球を化学誘引し、かつ活性化することが示されている。MCP-1発現の増大が、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、喘息、肥満、及び遅延型過敏反応のような多数の炎症性疾患及び非炎症性疾患の状態を含む、単球の蓄積及び活性化に関与している様々な病態において検出されている。
【0007】
多数の研究が、特に、アテローム性動脈硬化症(Gu, L.らの論文、Mol. Cell 2, 275-281 (1998);Gosling, J.らの論文、J Clin. Invest 103, 773-778 (1999));関節リウマチ(Gong, J. H.らの論文、J Exp. Med 186, 131-137 (1997);Ogata, H.らの論文、J Pathol. 182, 106-114 (1997));膵炎(Bhatia, M.らの論文、Am.J Physiol Gastrointest. Liver Physiol 288, G1259-G1265 (2005));アルツハイマー病(Yamamoto, M.らの論文、Am. J Pathol. 166, 1475-1485 (2005));肺線維症(Inoshima, I.らの論文、Am. J Physiol Lung Cell Mol. Physiol 286, L1038-L1044 (2004));腎線維症(Wada, T.らの論文、J Am. Soc. Nephrol. 15, 940-948 (2004))、及び移植片拒絶反応(Saiura, A.らの論文、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 24, 1886-1890 (2004))の発症におけるMCP-1の重要な役割を強調している。さらにMCP-1は、妊娠中毒症(Katabuchi, H.らの論文、Med Electron Microsc. 36, 253-262 (2003))においても役割を果たし得、II型糖尿病(Sartipy, P.及びLoskutoff, P. J.の論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 100, 7265-70 (2003))を含む高インスリン血症及び肥満に関連した症状、腫瘍発生におけるパラクリン因子として(Ohta, M.らの論文、Int. J Oncol. 22, 773-778 (2003);Li, S.らの論文、J Exp. Med 202, 617-624 (2005))、神経因性疼痛(White, F. A.らの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 102, 14092-7 (2005)、Jungらの論文、J Neurochem. 104, 254-63)、及びAIDS(Park, I. W.、Wang, J. F.、及びGroopman, J. E.の論文、Blood 97, 352-358 (2001);Coll, B.らの論文、Cytokine 34, 51-55 (2006))に関与している。
【0008】
MCP-1の成熟型は、グルタミニルシクラーゼ(QC)により翻訳後修飾されて、N末端ピログルタミル(pGlu)残基を有する(Proost, P.らの論文、J Leukocyte Biol. 59, 67-74 (1996))。
【0009】
グルタミニルシクラーゼ(QC, EC 2.3.2.5)は、アンモニアの遊離下での、N末端グルタミニル残基のピログルタミン酸(5-オキソ-プロリン、pGlu、pE)への分子内環化、並びに水の遊離下での、N末端グルタミル残基のピログルタミン酸への分子内環化を触媒する(Fischer, W.H.及びSpiess, J.の論文、Proc Natl Acad Sci U S A 84: 3628-32 (1987)、Golololov, M.Y.らの論文、Arch. Biochem. Biophys. 309, 300-7 (1994))。
【0010】
このN末端pGlu修飾は、アミノペプチダーゼによるN末端分解に耐性のあるタンパク質をもたらし、これは、MCP-1の走化性能がそのN末端により媒介されるため、非常に重要である(Van Damme, J.らの論文、Chem Immunol 72, 42-56 (1999))。MCP-1 N末端(残基1〜9)の人工的な伸長又は分解は、機能の劇的な低下又は喪失をもたらすが、MCP-1は、その受容体(CCR2)になお結合する(Proost, P.らの論文、J Immunol 160, 4034-4041 (1998);Zhang, Y. J.らの論文、J Biol.Chem 269, 15918-15924 (1994);Masure, S.らの論文、J Interferon Cytokine Res. 15, 955-963 (1995);Hemmerich, S.らの論文、Biochemistry, 38, 13013-13025 (1999)、Gong及びClark-Lewisの論文、J. Exp. Med. 181, 631-40 (1995))。
【0011】
多数の疾患状態におけるMCP-1の顕著な役割のために、抗MCP-1戦略の開発及び使用には、診断、予防、及び標的調節バイオマーカー使用のための強力なツールが必要であった。
【0012】
前述のように、有力な証拠が、アルツハイマー病(AD)におけるMCP-1の役割を指摘している(Xia, M. Q.及びHyman, B. T.の論文、J Neurovirol. 5, 32-41 (1999))。老人斑中及びCNSの常在型マクロファージである反応性ミクログリア中のMCP-1の存在が、ADに罹患した患者の脳において認められた(Ishizuka, K.らの論文、Psychiatry Clin. Neurosci. 51, 135-138 (1997))。アミロイド-βタンパク質(Aβ)による単球及びミクログリアの刺激は、in vitroにおいてケモカイン分泌を誘導し(Meda, L.らの論文、J Immunol 157, 1213-1218 (1996);Szczepanik, A. M.らの論文、J Neuroimmunol. 113, 49-62 (2001))、かつマウス海馬へのAβ(1-42)の脳室内注入は、in vivoにおいてMCP-1を有意に増加させる。さらに、Aβ沈着物は、ミクログリア細胞を誘引し、かつ活性化して、ミクログリア細胞にMCP-1などの炎症メディエーターを産生させ、これが、さらなる走化性、活性化、及び組織損傷を誘導するフィードバックをもたらす。Aβ沈着部位において、活性化されたミクログリアはまた、Aβペプチドを貪食し、活性化の増幅をもたらす(Rogers, J.及びLue, L. F.の論文、Neurochem. Int. 39, 333-340 (2001))。
【0013】
3xTgマウスADモデルにおけるケモカイン発現の検査により、神経炎症が斑形成の前であること、及びMCP-1が11倍上方制御されることが明らかにされた。さらに、MCP-1のこの上方制御は、最初の細胞内Aβ沈着物の出現と相関するようである(Janelsins, M. C.らの論文、J Neuroinflammation. 2, 23 (2005))。Tg2575マウスADモデルと、MCP-1を過剰発現するマウスモデルとの交雑は、Aβ沈着物の周りのミクログリア蓄積の増加を示し、この蓄積は、シングル-トランスジェニックTg2576同腹仔と比べ、びまん性老人斑の量の増加を伴っていた(Yamamoto, M.らの論文、Am. J Pathol. 166, 1475-1485 (2005))。
【0014】
MCP-1レベルは、AD患者及び軽度認知障害(MCI)を示す患者のCSF中で増加する(Galimberti, D.らの論文、Arch. Neurol. 63, 538-543 (2006))。さらに、MCP-1は、MCI患者及び初期AD患者の血清中でレベルの上昇を示している(Clerici, F.らの論文、Neurobiol. Aging 27, 1763-1768 (2006))。
【0015】
冠動脈の血流を制限する、又は閉塞させるアテローム性動脈硬化症病巣は、虚血性心疾患に関連した死亡の主因であり、年間500,000〜600,000人が死亡している。閉塞した動脈を開存させるための経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)は、1996年には、米国内では550,000人を超える患者に対して行われ、世界中で945,000人を超える患者に対して行われた(Lemaitreらの論文、1996)。この技術の大きな制限は、PTCA直後(急性閉塞)にも長期間(再狭窄)にわたっても起きる、PTCA後の血管の閉鎖の問題であり:亜完全閉塞病変を伴う患者の30%及び慢性的完全閉塞病変を伴う患者の50%は、血管形成術後に再狭窄に進行する。加えて、再狭窄は、伏在静脈バイパス移植術を受ける患者にとって重大な問題である。急性閉塞の機序には、いくつかの要因が関与するようであり、この機序は、結果として生じる動脈の閉鎖を伴う血管反跳、及び/又は新たに開存された血管の損傷長さに沿った血小板の沈着に続いて生じるフィブリン/赤血球血栓の形成に起因し得る。
【0016】
血管形成術後の再狭窄は、より緩徐なプロセスであり、かつ付着血小板からの細胞由来増殖因子の放出を伴う重症化前(subcritical)の血栓の初期形成を伴い、これに続く内膜平滑筋細胞の増殖及び炎症細胞の局所的浸潤が、血管過形成の一因となる。これらの血栓症、細胞増殖、細胞遊走、及び炎症における複数のプロセスがそれぞれ、再狭窄プロセスに関与するようであることに留意すべきである。
【0017】
米国において、30〜50%の再狭窄率は、米国の120,000〜200,000人の患者に再狭窄のリスクがあると言い換えられる。そのような患者の80%のみが再度の血管形成術を選択して(残りの20%は冠動脈バイパス移植術を選択する)、これを、残りの20%の冠動脈バイパス移植術のコストに加えるとすると、再狭窄の総コストは、容易に数十億ドルに達する。従って、再狭窄の予防の成功は、著しい治療的恩恵をもたらすだけではなく、著しい医療費の節約ももたらし得る。
【0018】
MCP-1発現の増加が、上記疾患の原因又は結果であるか否かは明らかでないが、治療的恩恵が、多数の動物モデルにおけるMCP-1中和抗体又はMCP-1受容体(CCR2)拮抗薬の適用により得られた。
【0019】
この文脈において、N末端領域からのアミノ酸1-8の欠失は、MCP-1アゴニスト受容体活性を完全に無効にし、このアミノ末端領域が、受容体の活性化に必須であることを示していることに留意すべきである。(Gong, J.-H.及びClark-Lewis, I.の論文、J Exp. Med. 161 631-40 (1995)、Van Damme, J.らの論文、Chem Immunol 72, 42-56 (1999))。
【0020】
さらに、残基9までのどのN末端MCP-1切断も、MCP-1受容体アンタゴニスト活性を有する分子を生成する。
【0021】
MCP-1レベルをモニタリングする全ての既存のアッセイは、N1pE MCP-1、N1Q MCP-1、及び連続的にN末端が切断された分子を区別することができない。従って、既存のアッセイは、拮抗作用のあるN末端切断MCP-1分子もしくは完全に不活性なMCP-1分子レベルに対して、完全長MCP-1による適切な受容体(CCL2、CCL5)の実際のアゴニスト刺激の程度を反映しない。
【0022】
体液中では、完全長MCP-1のN末端ピログルタミル修飾種のみが検出可能である。その理由は、N末端ジペプチドGln-Pro又はアミノ酸グルタミンをそれぞれ遊離させる常在性の遍在性アミノペプチダーゼジペプチジルアミノペプチダーゼ4(DP4、DPP4、DPPIV、CD26)及びアミノペプチダーゼP(APP、X-プロピルアミノペプチダーゼ)による、N末端非修飾分子のN末端急速分解である。
【0023】
続いて、活性なCCR2受容体アゴニストMCP-1分子の実際のレベルを示すアッセイの確立により、MCP-1が関与し得る疾患又は障害に関連した、診断への適用の改善、治療アプローチのモニタリング、及びQC阻害剤の開発に恩恵をもたらす。
【0024】
グルタミニルシクラーゼ(QC, EC 2.3.2.5)は、アンモニアを遊離させるピログルタミン酸(ピログルタミン酸、pGlu、pE)へのN末端グルタミン残基の分子内環化を触媒する。QCは、1963年にMesserによって熱帯植物カリーカパパイヤのラテックスから最初に単離された(Messer, M.の論文、Nature 4874, 1299 (1963))。24年後に、対応する酵素活性が、動物の下垂体で見出された(Busby, W. H. J.らの論文、J Biol Chem 262, 8532-8536(1987); Fischer, W. H.及びSpiess, J.の論文、Proc Natl Acad Sci U S A 84, 3628-3632(1987))。哺乳動物QCでは、QCによるGlnのpGluへの変換を、TRH及びGnRHの前駆体について示すことができる(Busby, W. H. J.らの論文、J Biol Chem 262, 8532-8536(1987); Fischer, W. H.及びSpiess, J.の論文、Proc Natl Acad Sci USA 84, 3628-3632(1987))。加えて、QCの最初の局在化実験により、ウシ下垂体におけるその推定上の触媒産物との共局在化が明らかとなり、これは、ペプチドホルモン合成における示唆された機能をさらに改善する(Bockers, T. M.らの論文、J Neuroendocrinol 7, 445-453(1995))。対照的に、植物QCの生理学的機能は、それほど明確ではない。カリーカパパイヤ由来の酵素の場合において、病原微生物に対する植物防御における役割が示唆された(El Moussaoui, A.らの論文、Cell Mol Life Sci 58, 556-570(2001))。他の植物由来の推定上のQCが、最近、配列の比較によって同定された(Dahl, S. W.らの論文、Protein Expr Purif 20, 27-36(2000))。しかしながら、これらの酵素の生理学的能は、今なお不明確である。
【0025】
植物及び動物由来の既知のQCは、基質のN末端位置にあるL-グルタミンに対して厳格な特異性を示し、それらの動力学的挙動が、ミカエリス‐メンテンの式に従うことが分かった(Pohl, T.らの論文、Proc Natl Acad Sci U S A 88, 10059-10063(1991); Consalvo, A. P.らの論文、Anal Biochem 175, 131-138(1988); Gololobov, M. Y.らの論文、Biol Chem Hoppe Seyler 377, 395-398(1996))。しかしながら、カリーカパパイヤ由来のQCの一次構造と哺乳動物由来の高度に保存されたQCの一次構造との比較では、いかなる配列相同性も明らかにならなかった(Dahl, S. W.らの論文、Protein Expr Purif 20, 27-36(2000))。植物QCは、新規な酵素ファミリーに属するようであるが(Dahl, S. W.らの論文、Protein Expr Purif 20, 27-36(2000))、哺乳動物QCは、細菌アミノペプチダーゼに対して顕著な配列相同性を有することが見出され(Bateman, R. C.らの論文、Biochemistry 40, 11246-11250(2001))、植物由来QCと動物由来QCが異なる進化上の起源を有するという結論に至った。
【0026】
最近、脳抽出物由来の組換えヒトQC及びQC活性が、N末端グルタミニル及びグルタミン酸の環化の両方を触媒することが示された。最も目立つ点は、シクラーゼ触媒Glu1変換は、約pH 6.0が望ましいが、Gln1のpGlu誘導体への変換は、約8.0の最適なpHで起こるという発見である。pGlu-Aβ関連ペプチドの形成を、ブタ下垂体抽出物由来の組換えヒトQC及びQC活性の阻害によって抑制できるため、酵素QCは、アルツハイマー病の治療用の薬剤開発における標的である。
【0027】
QCの阻害剤は、QCアイソザイムの阻害剤としても有用であり得、特に該阻害剤の構造、使用、及び生産に関する、引用により全容が本明細書中に組み込まれている国際公開第2004/098625号、同第2004/098591号、同第2005/039548号、及び同第2005/075436号に記載されている。N末端ピログルタミン酸修飾ケモカインの検出及び定量に有用であるMCP-1 N1pE特異的抗体は、国際特許出願PCT/EP2009/060757に記載されている。
【0028】
本発明者らは、ここで、試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合の測定が、炎症性疾患又は炎症関連疾患の診断又はモニタリングの有効な方法となることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の第1の態様に従って、炎症性疾患又は炎症関連疾患を診断又はモニタリングする方法であって、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0030】
本発明の第2の態様に従って、生体試料中のグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性、並びにグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の適用による治療におけるQC阻害剤の代理マーカーとしての有効性を決定する方法を提供する。
【0031】
本発明の第3の態様に従って、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する方法であって:
(a)生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の第1の濃度(Ca)を決定する工程;
(b)上記生体試料中の全MCP-1の第2の濃度(Cd)を決定する工程;及び
(c)該第1の濃度(Ca)の値を該第2の濃度(Cd)の値で除して、Ca/Cdの比を決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】異なる種由来の成熟MCP-1(CCL2)タンパク質の配列アラインメント。アラインメントは、http://www.ch.embnet.org/software/ClustalW.htmlで提供されるCLUSTAL W (1.83)多重配列アラインメントアルゴリズムを用いて行った。配列は、ヒト:ヒトMCP-1配列番号1、チンパンジー:チンパンジーMCP-1配列番号2、オランウータン:スマトラオランウータンMCP-1配列番号3、マカク属:マカカ・ファシキュラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザル)MCP-1配列番号4、イヌ:ケイネス・ファミリアス(Canis familiaris)MCP-1配列番号5、ブタ:スース・スクローファ(Sus scrofa)MCP-1、配列番号6、ウシ:ボース・タウルス(Bos taurus)MCP-1、配列番号7、ウマ:エクウス・カバッルス(Equus caballus)MCP-1、配列番号8、マウス:ムス・ムスクスル(Mus musculus)MCP-1、配列番号9、ラット:ラタス・ノルベギガス(Rattus norvegicus)MCP-1、配列番号10である。
【図2】4つのヒトMCPのアラインメント。アラインメントは、http://www.ch.embnet.org/software/ClustalW.htmlで提供されるCLUSTAL W (1.83)多重配列アラインメントアルゴリズムを用いて行った。配列は、MCP-1:ヒトMCP-1(CCL2, SCYA2, MCAF, SMC-CF, GDCF-2, HC11)、配列番号1; MCP-2:ヒトMCP-2 (CCL8, SCYA8, HC14)、配列番号11; MCP-3: ヒトMCP-3 (CCL7, SCYA7, NC28, FIC, MARC)、配列番号12; MCP-4:ヒトMCP-4 (CCL13, SCYA13, NCC-1, CKb10)、配列番号13である。太字で印字されたN末端残基は、成熟ケモカインで除去されたシグナル配列を示している。矢印は、グルタミニルシクラーゼによって触媒されるピログルタミル誘導体を形成するN末端グルタミン残基の出現を示している。
【図3】図3は、N末端グルタミニル残基を有するMCP-1(1-76)の組換えヒトDP4との24時間のインキュベーションを示す。DP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図4】図4は、N末端ピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するMCP-1(1-76)の組換えヒトDP4との24時間のインキュベーションを示す。N末端グルタミンのピログルタミン酸への環化のために、MCP-1を、アッセイの開始前に組換えヒトQCと共に3時間インキュベートした。この分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図5】図5は、N末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-1(1-76)の組換えヒトアミノペプチダーゼPによる24時間の切断を例示する。このAPP分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図6】図6は、N末端ピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するヒトMCP-1(1-76)の組換えヒトアミノペプチダーゼPによる24時間の切断を例示する。N末端におけるピログルタミン酸形成を、アッセイ開始前のMCP-1の組換えヒトQCとの3時間のインキュベーションによって達成した。APP分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図7】図7は、ヒト血清中でのN末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-1(1-76)の7時間の分解(A)又はピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するヒトMCP-1(1-76)の24時間の分解(B)を示す。N末端グルタミン残基のピログルタミン酸への環化のために、MCP-1を、アッセイ開始前に組換えヒトQCと共に3時間インキュベートした。加えて、Gln1-MCP-1を、9.6μM DP4阻害剤イソロイシル-チアゾリジド(P32/98)の存在下で、ヒト血清中で24時間インキュベートした(C)。この分解産物を、Maldi-TOF質量分析を用いて、Gln1-MCP-1については0分後、10分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、及び7時間後に分析し、pGlu1-MCP-1については0分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、7時間後、及び24時間後に分析し、Gln1-MCP-1とイソロイシル-チアゾリジドの組み合わせについては0分後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、7時間後、及び24時間後に分析した。
【図8】図8は、N末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-2(1-76)(A)又はピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するヒトMCP-2(1-76)(B)の組換えヒトDP4による24時間の分解を示す。N末端グルタミンのピログルタミン酸への環化のために、MCP-2を、アッセイ開始前に組換えヒトQCと共に3時間インキュベートした。このDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図9】図9は、N末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-3(1-76)(A)又はピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するヒトMCP-3(1-76)(B)の組換えヒトDP4による24時間の分解を示す。N末端グルタミンのピログルタミン酸への環化のために、MCP-3を、アッセイ開始前に組換えヒトQCと共に3時間インキュベートした。このDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図10】図10は、N末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-4(1-75)(A)又はピログルタミル(5-オキソ-L-プロリル)残基を有するヒトMCP-4(1-75)(B)の組換えヒトDP4による24時間の切断を例示する。N末端グルタミンのピログルタミン酸への環化のために、MCP-4を、アッセイ開始前に組換えヒトQCと共に3時間インキュベートした。このDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、及び4時間後にMaldi-TOF質量分析を用いて分析した。
【図11】図11は、N末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-1(pGlu1-MCP-1)と比較したN末端グルタミンで始まるヒトN末端MCP-1(Gln1-MCP-1)(A)、N末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-2(pGlu1-MCP-2)と比較したN末端グルタミンで始まるヒトN末端MCP-2(Gln1-MCP-2)(B)、N末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-3(pGlu1-MCP-3)と比較したN末端グルタミンで始まるヒトN末端MCP-3(Gln1-MCP-3)(C)、及びN末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-4(pGlu1-MCP-4)と比較したN末端グルタミンで始まるヒトN末端MCP-4(Gln1-MCP-4)(D)のヒトTHP-1単球に向かう走化性能を示す。
【図12】図12は、QC媒介pGlu形成の存在下(Gln1-MCP-1+QC+DP4)及び非存在下(Gln1-MCP-1+DP4)で、ヒト組換えDP4と共にインキュベートしたヒトMCP-1のヒトTHP-1単球へ向かう走化性能の分析を示す。加えて、QC阻害剤1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)チオ尿素塩酸塩(QCI)(10μM)の、N末端pGlu残基の形成、これに続くDP4切断(Gln1-MCP-1+QC+QCI+DP4)に対する影響が示されている。
【図13】図13は、N末端グルタミンで始まる完全長ヒトMCP-1(A)、MCP-2(B)、MCP-3(C)、及びMCP-4(D)の、それぞれのDP4分解産物と比較した、ヒトTHP-1単球へ向かう走化性能を示す。
【図14】450nm/540nmで測定された吸光度の値に基づいた、A:全hMCP-1濃度及びB:hMCP-1 N1pE濃度の決定のための標準曲線。両方の標準曲線のために、大腸菌(E.coli)で産生された組換えhMCP-1 N1pEを使用した。標準曲線は、4パラメータロジスティックフィット:y=(A2+(A1-A2)/(1+(x/x0)^p)によって、測定された吸光度データから算出した。
【図15】全hMCP-1サンドイッチELISAにおけるhMCP-1 N1pEとhMCP-1の検出の比較。
【図16】OSM及びIL1βでの刺激後のNHDFによる全hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの時間依存性発現。
【図17】OSM+IL1βでの刺激及びQCI適用後のNHDFによるA:全hMCP-1及びB:hMCP-1 N1pEの時間依存性発現。C:hMCP-1 N1pE/hMCP-1の比。
【図18】TNFα+IL1βでの刺激及び異なる濃度のQCIの適用後のA549細胞による全hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの発現。B:hMCP-1 N1pE/hMCP-1の比。
【図19】450nm/540nmで測定された吸光度の値に基づいた、マウスMCP-1;A:全mMCP-1濃度及びB:mMCP-1 N1pE濃度の決定のための標準曲線。両方の標準曲線のために、大腸菌で産生された組換えマウスMCP-1 N1pEを使用した。標準曲線は、4パラメータロジスティックフィット:y=(A2+(A1-A2)/(1+(x/x0)^p)によって、測定された吸光度データから算出した。
【図20】全mMCP-1サンドイッチELISAにおけるmMCP-1 N1pEとmMCP-1の検出の比較。
【図21】A:10ng/ml LPSでの刺激及び異なる濃度のQCIの適用後のRAW264.7による全mMCP-1及びmMCP-1 N1pEの発現。B:mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比。
【図22】10ng/ml LPSでの刺激及び異なる濃度のQCIの適用後のRAW264.7の細胞培養上清におけるA:mMCP-1 N1pE及びB:全mMCP-1のウエスタンブロットシグナル。C:ELISAによって決定されたmMCP-1 N1pEの濃度。
【図23】A:チオグリコール酸での刺激及び異なる濃度のQCIの適用後のマウス腹膜洗浄液における全MCP-1及びmMCP-1 N1pEの量。B:FACS分析:抗7/4及びLy6G抗体による腹膜洗浄液中での単球二重染色後の蛍光事象。
【図24】マウスMCP-1 N1pEの決定のための標準曲線;A:MCP-1 N1pE抗体クローン348/2C9によるmMCP-1 N1pEの検出及びB:ビオチン化MCP-1 N1pE抗体クローン348/2C9によるmMCP-1 N1pEの検出。両方の標準曲線のために、大腸菌で産生された組換えマウスMCP-1 N1pEを使用した。標準曲線は、4パラメータロジスティックフィット:y=(A2+(A1-A2)/(1+(x/x0)^p)によって、測定された吸光度データから算出した。
【図25】抗MCP-1 N1pE抗体(A:MCP-1 N1pE抗体348/2C9及びB:ビオチン化MCP-1 N1pE抗体348/2C9)の抗原hMCP-1(1-38)に対する等温滴定熱量計測定。
【図26】10人の健常ボランティア由来のCSF及び血清試料中のヒトMCP-1及びヒトMCP-1 N1pEのELISAによる測定
【発明を実施するための形態】
【0033】
(配列表の簡単な説明)
【表1】

【0034】
(定義)
本願で意味する「検出用抗体」は、MCP-1又はN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1ペプチドに結合する抗体を包含するものとする。
【0035】
好ましくは、検出用抗体は、MCP-1又はN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1ペプチドに高親和性で結合する。本発明の文脈では、高親和性は、10-7M以下のKD値、例えば、10-8M以下のKD値、さらに具体的には10-9M〜10-12MのKD値の親和性を意味する。
【0036】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的には、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び望ましい生物活性を示すのであれば抗体断片も包含する。抗体は、例えば、IgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgA、又はIgEであり得る。しかしながら、好ましくは、抗体は、IgM抗体ではない。「望ましい生物活性」は、MCP-1又はN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1ペプチドに結合することである。
【0037】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、一般的には無傷の抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片:ダイアボディ;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指す、すなわちその集団を構成している個々の抗体は、極僅かに存在することがある自然発生し得る突然変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は、単一抗原性部位に対して高度に特異的である。さらに、典型的には様々な抗原決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を含む「ポリクローナル抗体」標本とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが混入していないハイブリドーマ培養により合成されるという点で、多くの場合、有利であり得る。「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、いずれかの特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈するべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Khlerらの論文、Nature, 256:495 (1975)で最初に説明されたハイブリドーマ法により作製しても良いし、又は一般に周知の組換えDNA法により作製しても良い。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonらの論文、Nature, 352:624-628 (1991)及びMarksらの論文、J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)で説明された技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離しても良い。
【0039】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体又は特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である一方、この鎖(複数可)の残りの部分が、別の種に由来する抗体又は別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である、キメラ抗体(免疫グロブリン)を含み、望ましい生物活性を示すのであれば、そのような抗体の断片も含む。
【0040】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、又は抗体の他の抗原結合部分配列(antigen-binding subsequence))である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、望ましい特異性、親和性、及び能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRの残基により置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基により置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含んでも良い。
【0041】
これらの修飾は、抗体性能をさらに純化して最適化するために行われる。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、該ヒト化抗体では、全て又は実質的に全てのCDR領域は、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、かつ全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。さらなる詳細に関しては、Jonesらの論文、Nature, 321:522-525 (1986)、Reichmannらの論文、Nature. 332:323-329 (1988):及びPrestaの論文、Curr. Op. Struct. Biel., 2:593-596 (1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、Primatized(商標)抗体を含み、この抗体の抗原結合領域は、対象となる抗原によるマカクザルの免疫化により産生された抗体、又は「ラクダ化」抗体に由来する。
【0042】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、1本のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、該ポリペプチドリンカーにより、sFvが、抗原結合に望ましい構造を形成することができる。sFvの総説については、Pluckthunの論文、「モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」、第113巻、Rosenburg及びMoore編集、Springer-Verlag社、ニューヨーク、269-315頁(1994)を参照されたい。
【0043】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原-結合部位を有する小さい抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VD)内で軽鎖可変ドメイン(VD)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメインを対合させるには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補ドメインと対合せざるを得なくなり、2つの抗原結合部位を形成する。ダイアボディは、Hollingerらの論文、Proc. Natl. Acad. Sol. USA, 90:6444-6448 (1993)により詳細に説明されている。
【0044】
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から同定され、分離され、及び/又は回収された抗体である。その天然の環境の汚染成分は、この抗体の診断又は治療での使用を妨げ得る物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性溶質もしくは非タンパク質性溶質を含み得る。適切な実施態様では、この抗体は、(1)Lowry法により決定して、抗体が95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニング・カップ・シークエネーターの使用により、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマーシーブルーもしくは適切な銀染色を用いて、還元又は非還元条件下で、SDS-PAGEにより均質になるまで精製する。単離された抗体は、その抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかしながら、普通に単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0045】
本明細書で使用される表現「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、同義的に使用され、このような呼称は全て、子孫を含む。従って、語「形質転換体」及び「形質転換細胞」は、継代数にかかわらず、初代対象細胞(primary subject cell)及び該初代対象細胞由来の培養物を含む。また、意図的な変異又は偶発的な変異のために、全ての子孫が、DNA含量が正確に同一でない場合もあることも理解されたい。最初に形質転換された細胞でスクリーニングされた同じ機能又は生物活性を有する変異子孫が含まれる。明確な指定が意図される場合、これは文脈から明らかである。
【0046】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、同義であり、ペプチド結合により連結されたアミノ酸で構成された生体分子を意味すると定義される。
【0047】
2つの配列間の「相同性」は、配列同一性により決定される。互いに比較されるべき2つの配列が、長さが異なる場合、配列同一性は、好ましくは、長い方の配列のヌクレオチド残基と同一である短い方の配列のヌクレオチド残基の割合に関連する。配列同一性は、コンピュータプログラム、例えば、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、ユニックス用バージョン8、Genetics Computer Group、University Research Park, 575 Science Drive Madison, WI 53711)を使用して従来通り決定することができる。Bestfitは、2つの配列間の最も高い配列同一性を有するセグメントを見つけるために、Smith及びWatermanの論文、Advances in Applied Mathematics 2, 482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムを利用する。特定の配列が本発明の参照配列と、例えば、95%の同一性を有するか否かを決定するために、Bestfit又は別の配列アラインメントプログラムを使用する場合は、パラメータは、好ましくは、同一性のパーセンテージが、参照配列の全長にわたって計算されるように、かつ参照配列におけるヌクレオチドの総数の最大5%の相同性ギャップが許容されるように調節される。Bestfitを使用する場合、いわゆる任意のパラメータは、好ましくは、それらの予め設定された(「デフォルト」)値のままにする。所与の配列と本発明の上記の配列との間の比較で出現する偏差は、例えば、付加、欠失、置換、挿入、又は組換えにより引き起こされ得る。このような配列の比較はまた、好ましくは、プログラム「fasta20u66」(バージョン2.0u66、1998年9月、William R. Pearson及びバージニア大学;また、W.R. Pearsonの論文、Methods in Enzymology 183, 63-98 (1990)、添付の例、並びにhttp://workbench.sdsc.edu/も参照されたい)で実行することができる。この目的のために、「デフォルト」パラメータ設定を使用しても良い。
【0048】
本明細書で使用される「保存的変化」は、実質的に高次構造的又は抗原的に中立である変化を指し、未変性のタンパク質と比較して、変異ポリペプチドの三次構造に最小限の変化をもたらす、又は変異ポリペプチドの抗原決定基に最小限の変化をもたらす。本発明の抗体及び抗体断片に言及する場合、保存的変化は、抗体を対象受容体に結合不能にしないアミノ酸置換を意味する。当業者であれば、高次構造的又は抗原的に中立であるという高い可能性を維持したまま、どのアミノ酸を置換できるかを予測することができるであろう。このような指針は、例えば、Berzofskyの論文、Science 229:932-940 (1985)及びBowieらの論文、Science 247: 1306-1310 (1990)に記載されている。高次構造及び抗原性の中立性を維持する可能性に影響を及ぼすと考えられる要因には、以下が含まれるが、これらに限定されるものではない:(a)疎水性アミノ酸の置換は、疎水性残基がタンパク質の内部に位置する可能性が高いため、抗原性に影響を与える可能性が低い;(b)物理化学的に類似したアミノ酸の置換は、置換されたアミノ酸が未変性のアミノ酸を構造的に模倣するため、高次構造に影響を与える可能性が低い;並びに(c)進化的に保存された配列の変化は、このような保存が、そのアミノ酸配列が機能的に重要であり得ることを示唆しているため、高次構造に悪影響を及ぼす可能性が高い。当業者であれば、周知のアッセイ、例えば、限定されるものではないが、ミクロ補体結合法(例えば、Wassermanらの論文、J. Immunol. 87:290-295 (1961);Levineらの論文、Meth. Enzymol. 11:928-936 (1967)を参照されたい)を用いて、高次構造-依存性モノクローナル抗体を使用する結合試験により(例えば、Lewisらの論文、Biochem. 22:948-954 (1983)を参照されたい)、タンパク質高次構造の変化を評価することができるであろう。
【0049】
本明細書で使用される用語「ある(a、an)及びその(the)」は、「1つ以上」を意味すると定義され、文脈が不適切でない限りは複数を含む。
【0050】
(炎症性疾患)
本明細書で使用される用語「炎症性疾患」及び「炎症関連疾患」は、以下を含む:
(a)神経変性疾患、例えば、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病、ダウン症における神経変性、家族性イギリス型認知症、家族性デンマーク型認知症、多発性硬化症;
(b)慢性及び急性炎症、例えば、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、膵炎;
(c)線維症、例えば、肺線維症、肝線維症、腎線維症;
(d)癌、例えば、癌/血管内皮腫増殖、胃癌;
(e)代謝病、例えば、高血圧症;
(f)他の炎症性疾患、例えば、神経因性疼痛、移植片拒絶反応/生着不全/移植片血管障害、HIV感染/AIDS、妊娠中毒症、結節硬化症;及び
(g)高インスリン血症及び肥満に関連した病状。
【0051】
(QC)
本明細書で使用される用語「QC」は、グルタミニルシクラーゼ(QC)及びQC様酵素を含む。QC及びQC様酵素は、同一又は同様の酵素活性を有し、この活性は、QC活性としてさらに定義される。これに関連して、QC様酵素は、その分子構造がQCとは根本的に異なり得る。
【0052】
本明細書で使用される用語「QC活性」は、アンモニアの遊離下での、N末端グルタミニル残基のピログルタミン酸(pGlu)への分子内環化、又はN末端L-ホモグルタミニルもしくはL-β-ホモグルタミニルの環状ピロ-ホモグルタミン誘導体への分子内環化と定義される。これに関連して、スキーム1及びスキーム2を参照されたい。
【0053】
スキーム1:QCによるグルタミンの環化
【化2】

【0054】
スキーム2:QCによるL-ホモグルタミンの環化
【化3】

【0055】
本明細書で使用される用語「EC」は、グルタミン酸シクラーゼ(EC)としてのQC及びQC様酵素の副活性を含み、この副活性は、さらにEC活性として定義される。
【0056】
本明細書で使用される用語「EC活性」は、QCによるN末端グルタミル残基のピログルタミン酸(pGlu)への分子内環化として定義される。これに関連して、スキーム3を参照されたい。
【0057】
スキーム3:QC(EC)による非荷電グルタミルペプチドのN末端環化
【化4】

【0058】
用語「QC阻害剤」及び「グルタミニルシクラーゼ阻害剤」は、一般的には当業者に公知であり、上で一般的に定義されているような酵素阻害剤を意味し、グルタミニルシクラーゼ(QC)の触媒活性又はそのグルタミルシクラーゼ(EC)活性を阻害する。
【0059】
(QC阻害の効力)
QC阻害との相関を考慮して、好ましい実施態様では、本方法及び医学的使用では、QC阻害のKiが10μM以下、より好ましくは1μM以下、さらに好ましくは0.1μM以下又は0.01μM以下、最も好ましくは0.001μM以下である薬剤を使用する。実際、Ki値が低めのマイクロモル、好ましくはナノモル、さらに好ましくはピコモル範囲である阻害剤が考えられる。従って、活性薬剤を、便宜上、本明細書では「QC阻害剤」として記載するが、このような命名は、いかなる場合も本発明の主題を制限することを意図するものではないことを理解されたい。
【0060】
グルタミニルシクラーゼ阻害剤の例は、国際公開第2005/075436号、特に31〜41頁に示されている例1〜141に記載されている。例1〜141の合成は、国際公開第2005/075436号の40〜48頁に示されている。例1〜141、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2005/075436号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0061】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/055945号、特に46〜155頁に示されている例1〜473に記載されている。例1〜473の合成は、国際公開第2008/055945号の156〜192頁に示されている。例1〜473、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/055945号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0062】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/055947号、特に53〜118頁に示されている例1〜345に記載されている。例1〜345の合成は、国際公開第2008/055947号の119〜133頁に示されている。例1〜345、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/055947号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0063】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/055950号、特に57〜120頁に示されている例1〜212に記載されている。例1〜212の合成は、国際公開第2008/055950号の121〜128頁に示されている。例1〜212、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/055950号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0064】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/065141号、特に56〜59頁に示されている例1〜25に記載されている。例1〜25の合成は、国際公開第2008/065141号の60〜67頁に示されている。例1〜25、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/065141号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0065】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/110523号、特に55〜59頁に示されている例1〜27に記載されている。例1〜27の合成は、国際公開第2008/110523号の59〜71頁に示されている。例1〜27、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/110523号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0066】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128981号、特に62〜65頁に示されている例1〜18に記載されている。例1〜18の合成は、国際公開第2008/128981号の65〜74頁に示されている。例1〜18、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128981号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0067】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128982号、特に61〜67頁に示されている例1〜44に記載されている。例1〜44の合成は、国際公開第2008/128982号の68〜83頁に示されている。例1〜44、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128982号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0068】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128983号、特に64〜68頁に示されている例1〜30に記載されている。例1〜30の合成は、国際公開第2008/128983号の68〜80頁に示されている。例1〜30、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128983号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0069】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128984号、特に63〜69頁に示されている例1〜36に記載されている。例1〜36の合成は、国際公開第2008/128984号の69〜81頁に示されている。例1〜36、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128984号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0070】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128985号、特に66〜76頁に示されている例1〜71に記載されている。例1〜71の合成は、国際公開第2008/128985号の76〜98頁に示されている。例1〜71、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128985号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0071】
グルタミニルシクラーゼの阻害剤のさらなる例は、国際公開第2008/128986号、特に65〜66頁に示されている例1〜7に記載されている。例1〜7の合成は、国際公開第2008/128986号の66〜73頁に示されている。例1〜7、それらの合成、及びグルタミニルシクラーゼ阻害剤としてのそれらの使用についての国際公開第2008/128986号の開示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0072】
(ウエスタンブロット)
ウエスタンブロット分析は、免疫ブロッティング又はタンパク質ブロッティングとしても知られており、不均一試料から特定のタンパク質を検出するために使用される。このプロトコルは、ニトロセルロース膜を使用してHarry Towbinら(1979)によって最初に開発された。
この方法は、4つの主工程からなる、
第1:タンパク質試料のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)。
第2:膜への電気泳動転写(ブロッティング)。転写のために、最近の研究者が、単離されたタンパク質の配列決定を可能にする、様々な膜、特にPVDFナイロン様膜を導入した。
第3:標的タンパク質(複数可)の特異的な一次抗体及び二次抗体による標識。非特異的抗体の結合は、膜をブロッキング溶液中で、室温で1時間、又は振盪しながら4℃で一晩インキュベートすることによって防止される。該ブロッキング溶液は、通常は、TBS-T中の5%脱脂乳からなるが、一部の抗体は、乳の代わりにBSAを必要とする。このことは、通常は、試験用抗体の製造業者の取扱説明書に明記されている。一次抗体を一晩、又は室温で2時間インキュベートする。膜を適切な二次抗体(例えば、ペルオキシダーゼが結合した)と共に室温で1時間インキュベートする。
第4:標的タンパク質(複数可)の検出及びイメージング。多数の化学発光試薬が販売されており(Amersham, Pierce, Invitrogen)、各製造業者は、様々な検出感度の試薬を販売している。これらは、典型的には、混合したら即座に膜上で1〜5分間インキュベートされる2つの溶液の形態である。タンパク質シグナル及び化学発光法に応じて、1分〜1時間、膜をX線フィルムに曝露する。二次抗体は、他の酵素(アルカリホスファターゼ)に結合させることができるため、代替のプロトコルを使用して対応する基質により視覚化することができる。
【0073】
(ELISA)
ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)は、最も広く使用されている、高感度かつ再現可能な検体アッセイ用の定量手段である。この技術は、抗体と抗原の相互作用の高い特異性と酵素結合シグナル検出システムとを組み合わせている。
【0074】
(間接ELISA)
間接ELISAでは、抗原を表面に固定し、続いて特定の抗体と酵素の共役複合体の染色により検出を行う。
【0075】
第1の工程では、検査抗原を、多数の既知の濃度で表面に固定して標準曲線を得る。同じ条件で、抗原の量が未知の試料を固定する。抗原特異的抗体が、抗原を認識する。この抗体が酵素に結合した場合(又は酵素結合二次抗体が一次抗体を認識した場合)、発色基質又は蛍光発生基質を使用した適切な酵素反応のシグナルは、抗原の量に相関し、標準曲線によって算出することができる。
【0076】
(「サンドイッチ」ELISA)
「サンドイッチ」ELISAは、抗原を2つの異なる抗体間にサンドイッチする技術である。このELISA技術が機能する原理は、以下の通りである:
・捕捉用抗体を適切な基板に固定する。
・抗原を固定された抗体に結合させる。
・酵素に結合した二次抗体を、結合した抗原に結合させる(免疫複合体の形成)。
・適切な酵素基質を用いて免疫複合体を検出する。
【0077】
(競合ELISA)
このELISAの工程は以下の通りである:
・非標識抗体を、その抗原の存在下でインキュベートする。
・次いで、これらの抗体/抗原複合体を、抗原が被覆されたウェルに添加する。
・プレートを洗浄して、非結合抗体を除去する。(試料中に抗原が多ければ多いほど、ウェルの該抗原に結合できる抗体が少ない、従って「競合」である。)
・一次抗体に特異的な二次抗体を添加する。この二次抗体が、酵素に結合する。
・基質が添加され、残った酵素が、発色又は蛍光シグナルを生じさせる。
競合ELISAでは、最初の抗原濃度が高ければ高いほど、結果として生じるシグナルが弱い。競合ELISAの主な利点は、粗試料又は不純物が混じった試料を使用でき、存在し得るどの抗原にも選択的になお結合できることである。
一部の競合ELISAキットは、酵素結合抗体ではなく酵素結合抗原を含む。標識抗原は、一次抗体が結合する部位について試料の抗原(非標識)と競合する。試料中に抗原が多ければ多いほど、ウェルに保持される標識抗原が少なく、シグナルが弱い。
【0078】
(逆ELISA)
この技術は、4〜12の突出オジーブ(ogive)を備えた免疫吸着ポリスチレンロッドからなる固相を使用する。装置全体を、採取試料を含む試験管中に沈め、次の工程(洗浄、複合体でのインキュベーション、及び発色物質(chromogenous)でのインキュベーション)を、予め試薬が満たされた標準的なマクロプレートのマイクロウェルにオジーブを浸漬することによって行う。
【0079】
(酵素結合免疫吸着スポットアッセイ)
酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)アッセイは、ヒト及び動物における免疫応答をモニタリングする一般的な方法である。このアッセイは、個々の活性化細胞又は応答細胞の分泌産物の視覚化を可能にする。
捕捉用抗体を、PVDFが設けられたマイクロプレートに無菌状態で被覆する。プレートを、通常は、アッセイのどの抗体とも反応しない血清タンパク質でブロックする。この後、対象となる細胞を、抗原又はマイトジェンと共に、様々な密度でプレーティングし、次いで、加湿された37℃のCO2インキュベータに一定時間入れておく。
【0080】
活性化細胞によって分泌されるサイトカイン(又は対象となる他の細胞産物)は、高表面積PVDF膜に被覆された抗体によって局所的に捕捉される。ウェルを洗浄して細胞、デブリ、及び培地成分を除去してから、選択された検体に特異的なビオチン化ポリクローナル抗体をウェルに添加する。この抗体は、標的サイトカインの独特なエピトープと反応性であるため、捕捉されたサイトカインの検出に利用する。非結合ビオチン化抗体を除去する洗浄の後に、検出されたサイトカインを、アビジン-HRP及び沈殿基質(例えば、AEC、BCIP/NBT)を用いて可視化する。着色最終産物(スポット、通常は青黒い)は、典型的には、個々のサイトカイン産生細胞を表す。該スポットを、手動(例えば、解剖顕微鏡により)でカウントするか、又は自動リーダーを使用してマイクロウェルの画像を取り込んでスポットの数及びサイズを解析する。
【0081】
FluoroSpotアッセイは、ELISPOTアッセイの改良型であり、多数の蛍光抗サイトカインを使用することに基づいており、同じアッセイでの2つのサイトカインのスポットを可能にする。
【0082】
(フローサイトメトリー)
(細胞内フローサイトメトリー(ICFC))
ELISAによる分泌サイトカインの検出とは対照的に、細胞内サイトカインの検出では、刺激の最後の2、3時間にわたって、タンパク質輸送阻害剤、例えば、モネンジン又はブレフェルジンAによりサイトカインの分泌をブロックする必要がある。研究者は、様々なタンパク質輸送阻害剤の使用及び効力をそれらに特異的なアッセイシステムで評価することが勧められている。
基本的な免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー分析のプロトコルの改良型を、単一細胞レベルにおける表面分子と細胞内抗原の同時分析に使用することができる。このプロトコルでは、細胞を最初にin vitroで活性化させ、表面抗原プロトコルと同様に表面抗原を染色し、次いでパラホルムアルデヒドで固定して細胞膜を安定化させ、かつ界面活性剤サポニンで透過化処理して抗サイトカイン抗体の細胞内染色を可能にする。細胞のin vitro刺激は、サイトカインレベルが、典型的には静止細胞では低すぎるため、通常はフローサイトメトリーによるサイトカインの検出を必要とする。適切な試薬を用いる細胞の刺激は、細胞型及び実験条件による。
【0083】
(多重アッセイ技術を用いたフローサイトメトリー)
(ルミネックス社のxMAP技術)
xMAP技術は、赤色及び赤外フルオロフォアにより内部が染色された直径5.6μmのポリスチレンマイクロスフィアを使用する。様々なバッチのマイクロスフィアに対して様々な量の2種類の色素を使用して、最大100種類のマクロスフィアのセットを作製することができる。各ビーズは、赤色色素と赤外色素の混合物によって決定される分光的特徴を伴い固有である。ビーズは、2種類の色素が特定の既知の比で満たされている。各マイクロスフィアは、固有の特徴を有するため、xMAP検出システムは、各マイクロスフィアがどのセットに属するかを特定することができる。従って、1つの反応体積で最大100の試験を多重化することが可能である。
【0084】
(ルミネックスアッセイ(Luminex Assay))
ルミネックスシステム(Luminex System)は、フローサイトメトリーの原理に基づいた柔軟な分析器(flexible analyzer)である。該システムでは、極少量の試料を使用して、1つのマイクロプレートのウェルで最大100の検体の多重化(同時に測定)が可能である。1つのウェルでの最大40の異なる検体の多重解の分析が可能である。該システムは、遺伝子発現、転写因子プロファイリング、サイトカインプロファイリングなどを含むバイオアッセイを提供する。
【0085】
(Bio-Plexアッセイ)
Bio-Plexサイトカインアッセイは、組織培養上清又は血清中のサイトカインの定量に液体懸濁液アレイを利用する。この96ウェルマイクロタイタープレート形式のアッセイを使用すると、1つのウェル内の多数のサイトカインのレベルをプロファイリングすることが可能である。Bio-Plexサイトカインアッセイの原理は、捕捉サンドイッチ免疫測定法に類似している。それぞれの望ましいサイトカインに対する抗体は、異なる色コードのポリスチレンビーズに共有結合する。結合されたビーズは、既知(標準)又は未知の量のサイトカインを含む試料と反応する。非結合サイトカインが除去されたら、それぞれのサイトカイン上の異なるエピトープに対するビオチン化検出用抗体を反応に添加する。この結果、それぞれのサイトカインの周りに抗体のサンドイッチが形成される。これらの複合体は、ビーズとは異なる蛍光特性を有するストレプトアビジン-フィコエリトリン(ストレプトアビジン-PE)の添加により検出される。1つのマイクロタイターウェルでの多重化ビーズ-捕捉免疫測定法の分析を可能にする専用マイクロプレートリーダーにより定量を行う。混合物中のビーズを個々に読み込むことにより、該システムは、それぞれのサイトカインを個別に検出することができる。Bio-Plexソフトウエアは、既知の量のサイトカインの標準混合物から得た標準曲線からサイトカインの濃度を自動的に算出する。
【0086】
(免疫組織化学(IHC))
免疫組織化学又はIHCは、組織切片の細胞に抗原(例えば、タンパク質)を局在化させるプロセスを指す。IHCはまた、生体組織の異なる部分におけるバイオマーカー及び差次的に発現されるタンパク質の分布及び局在化を理解するために基礎研究で広く使用されている。抗体-抗原相互作用の可視化は、様々な方法で達成することができる。最も一般的な例では、抗体は、発色反応を触媒できる酵素、例えば、ペルオキシダーゼに結合する。あるいは、抗体に、フルオロフォア、例えば、フルオレセイン、ローダミン、DyLight Fluor、又はAlexa Fluorを標識することもできる。
【0087】
抗体は、一次試薬又は二次試薬として分類することができる。一次抗体は、対象となる抗原に対して産生され、典型的には結合していないが(非標識)、二次抗体は、一次抗体に対して産生される。従って、二次抗体は、特定の種の免疫グロブリンを認識し、ビオチン又はレポーター酵素、例えば、アルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)のいずれかに結合する。一部の二次抗体は、蛍光剤に結合する。この手順では、実験試料の目的及び厚さによって、対象となる組織から薄い(約4〜40μm)切片を切り取るか、又は該組織がそれほど厚くなくて透過可能である場合は該組織全体を使用する。このスライスは、通常は、ミクロトームの使用によって行われ、切片がスライドガラスに載せられる。「浮遊式IHC("Free-floating IHC)」は、スライドガラスに載せられていない切片を使用し、これらの切片は、通常は、振動するミクロトームを使用して作製される。
【0088】
直接法は、1工程染色法であり、組織切片中の抗原と直接反応する標識抗体を必要とする。
間接法は、組織抗原と反応する非標識一次抗体(第1の層)、及び該一次抗体と反応する標識二次抗体(第2の層)を必要とする。
【0089】
(免疫沈降(IP))
免疫沈降では、既知のタンパク質に特異的な抗体を使用して、該タンパク質を様々なタンパク質を含む溶液から単離する。これらの溶液は、植物組織又は動物組織の粗溶解物の形態である場合が多い。他の試料のタイプには、体液又は生物起源の他の試料が考えられる。
【0090】
(発明の詳細な説明)
本発明の第1の態様に従って、炎症性疾患又は炎症関連疾患を診断又はモニタリングする方法であって、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0091】
本発明の第2の態様に従って、生体試料中のグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性、並びにグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の適用による治療におけるQC阻害剤の代理マーカーとしての有効性を決定する方法を提供する。
【0092】
本明細書に示されるデータは、驚くべきことに、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1(MCP-1 N1pE):MCP-1の総濃度の比の低下により、腹膜に浸潤する単球の数が減少することを実証している。このような単球の動員は、いくつかの炎症性疾患の一般的な特徴である。従って、このデータは、MCP-1の単球動員能をモニタリングすることによって、炎症性疾患又は炎症関連疾患のバイオマーカーとしてのMCP-1 N1pE/MCP-1の比の適用性を立証している。
【0093】
本明細書で言及する「MCP-1」には、配列番号1〜10のいずれかに対して50%を超える配列同一性(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のいずれか)を有するMCP-1ペプチドが該当する。一実施態様では、MCP-1は、MCP-1(1-76)である。さらなる実施態様では、MCP-1は、ヒトMCP-1又はマウスMCP-1である。なおさらなる実施態様では、MCP-1は、ヒトMCP-1である。
【0094】
言及する「N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1(MCP-1 N1pE)」は、Proost, Pらの論文、J Leukocyte Biol. 59, 67-74 (1996)に記載されているように、N末端グルタミン残基が、グルタミニルシクラーゼ(QC)によってN末端ピログルタミニル(pGlu; pE又は5-オキソ-プロリン)残基によって修飾された、先に定義されたMCP-1ペプチドを指す。
【0095】
一実施態様では、前記の決定する工程は、以下の工程を含む:
(a)生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の第1の濃度(Ca)を決定する工程;
(b)該生体試料中の全MCP-1の第2の濃度(Cd)を決定する工程;及び
(c)該第1の濃度(Ca)の値を該第2の濃度(Cd)の値で除して、Ca/Cdの比を決定する工程。
【0096】
好ましくは、Ca/Cdの比は、パーセント(%)で表される。
【0097】
炎症性疾患又は炎症関連疾患の治療を診断又はモニタリングする場合、一実施態様では、Ca/Cdの比の適切な範囲は、50%、70%、85%(すなわち、50%、30%、15%の減少)である。
【0098】
炎症性疾患又は炎症関連疾患の治療におけるQC阻害剤の有効性を決定する場合、一実施態様では、Ca/Cdの比の適切な範囲は、30%、50%、70%(すなわち、70%、50%、30%の減少)である。
【0099】
哺乳動物細胞株におけるQC阻害剤のプロファイルを評価する場合、一実施態様では、Ca/Cdの比の適切な範囲は、10%、30%、及び50%(すなわち、90%、70%、50%の減少)である。
【0100】
本発明のさらなる態様は、MCP-1 N1pEバイオマーカー及びMCP-1に特異的に結合できるリガンド、例えば、天然又は化学合成化合物を提供する。本発明によるリガンドは、MCP-1 N1pEバイオマーカー及びMCP-1に特異的に結合できるペプチド、抗体もしくはその断片、又はアプタマーもしくはオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0101】
一実施態様では、工程(a)は、以下の工程を含む:
(i)生体試料をMCP-1に特異的な捕捉用抗体に接触させる工程、
(ii)N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な検出用抗体を適用する工程、
(iii)得られた免疫複合体を検出する工程、及び
(iii)検出されたN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1複合体を定量する工程。
【0102】
一実施態様では、捕捉用抗体は、MCP-1に特異的に結合できるモノクローナル抗体又はその断片である。一実施態様では、検出用抗体は、MCP-1 N1pEバイオマーカーに特異的に結合できるモノクローナル抗体又はその断片である。さらなる実施態様では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な検出用抗体は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている抗体を含み、このMCP-1 N1pE検出用抗体は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0103】
より好ましくは、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な検出用抗体は、モノクローナル抗体であり、該抗体の軽鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号33、37、及び41から選択されるヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号34、38、及び42から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0104】
本発明による別の好ましい抗体は、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体の重鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号35、39、及び43から選択されるヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号36、40、及び44から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0105】
本発明によるさらに好ましい抗体は、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体の軽鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号33のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号34のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号35のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号36のアミノ酸配列を有する。
【0106】
本発明による同様に好ましい抗体は、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体の軽鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号37のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号38のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号39のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号40のアミノ酸配列を有する。
【0107】
本発明による一層好ましい抗体は、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体の軽鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号41のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号42のアミノ酸配列を有し、かつ該抗体の重鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号43のヌクレオチド配列、又は国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号44のアミノ酸配列を有する。
【0108】
ある特定の好ましい実施態様では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体は、以下の群から選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される:
348/1D4 (寄託番号:DSM ACC 2905);
348/2C9 (寄託番号:DSM ACC 2906);
332/4B8 (寄託番号:DSM ACC 2907);及び
332/4F8 (寄託番号:DSM ACC 2908)。
【0109】
特に好ましい実施態様では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体は、348/2C9 (寄託番号:DSM ACC 2906)から選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生される。
【0110】
さらに好ましい実施態様によると、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、ヒト化しても良いし、又はキメラ抗体もしくはヒト抗体である。
【0111】
さらに、上記の群から選択されるN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、上記の群の機能性変異体であっても良い。
【0112】
本発明の文脈では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体の「機能性変異体」は、MCP-1 N1pE-38又はその機能性変異体に対する結合能、特に高親和性の結合能を維持した抗体である。このような機能性変異体の提供は、当分野で周知であり、上記の可能性を包含し、該可能性は、抗体及びその断片の定義で示されている。
【0113】
好ましい実施態様では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、先に定義した抗体断片である。
【0114】
さらに好ましい実施態様では、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、先に定義した抗体の相補性決定領域(CDR)を有する抗体である。好ましくは、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、標識することができる;可能な標識は、上記の標識、及び特に抗体の診断用途の分野の技術者に周知の全ての標識である。
【0115】
本発明によるさらに好ましい抗体は、任意の機能的に等価な抗体又はその機能性部分を含むN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号34、38、又は42から選択される配列に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0116】
本発明によるなお好ましい抗体は、任意の機能的に等価な抗体又はその機能性部分を含むN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号36、40、又は44から選択される配列に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0117】
さらに、任意の機能的に等価な抗体又はその機能性部分を含むN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的なモノクローナル抗体であり、該抗体の軽鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号34、38、及び42から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/又は該抗体の重鎖の可変部分は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号36、40、及び44から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ該抗体は、国際特許出願PCT/EP2009/60757に記載されている配列番号34、36、38、40、42、及び44の少なくとも1つの配列に、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つ以上の保存的置換が導入されることにより変更され、かつ該抗体は、その十分な機能を本質的に維持している。
【0118】
好ましくは、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な抗体は、固相に固定されている。
【0119】
一実施態様では、工程(b)は、以下の工程を含む:
(i)生体試料をMCP-1に特異的な捕捉用抗体に接触させる工程、
(ii)MCP-1に特異的な検出用抗体を適用する工程、
(iii)得られた免疫複合体を検出する工程、及び
(iv)捕捉されたMCP-1複合体を定量する工程。
【0120】
一実施態様では、工程(i)で使用される捕捉用抗体は、MCP-1に特異的に結合できるモノクローナル抗体又はその断片である。さらなる実施態様では、工程(i)で使用されるMCP-1に特異的な捕捉用抗体は、以下から選択される:
ポリクローナル抗血清ヤギ抗hMCP1-AF (R&D Systems, Minneapolis, USA);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab18072 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab9669 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab18072 (Abcam, Cambridge, UK);
ヤギMCP-1抗体(C-17): sc-1304 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA);
ポリクローナル抗血清ウサギ抗mJE (Peprotech, Hamburg, Germany);
抗mMCP-1ウサギポリクローナル抗体ab9899 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab7202 (Abcam, Cambridge, UK);及び
ラットモノクローナルMCP-1抗体(JJ5): sc-74215 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA)。
【0121】
なおさらなる実施態様では、工程(i)で使用されるMCP-1に特異的な捕捉用抗体は、ポリクローナル抗血清ヤギ抗hMCP1-AF(R&D Systems, Minneapolis, USA)から選択される。
【0122】
一実施態様では、工程(ii)で使用されるMCP-1に特異的な検出用抗体は、以下を含む:
マウス抗hMCP-1 (Peprotech, Hamburg, Germany);
抗MCP-1マウスモノクローナル抗体ab17715 (Abcam, Cambridge, UK);
マウスモノクローナルMCP-1抗体sc-32819 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA);
抗マウスMCP-1 (R&D Systems, Minneapolis, MN USA);
ハムスターモノクローナルMCP-1抗体ab21397 (Abcam, Cambridge, UK);
ラットモノクローナルMCP-1抗体ab8101 (Abcam, Cambridge, UK);及び
ラットモノクローナルMCP-1抗体(JJ5): sc-74215 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA)。
【0123】
一実施態様では、複合体の検出工程は、特に各検出用抗体と反応する二次抗体を使用することによって行われる。
【0124】
一実施態様では、二次抗体は、抗マウス抗体又は抗ウサギ抗体、例えば、抗マウス抗体である。
【0125】
一実施態様では、二次抗体を標識する。診断用途の場合、二次抗体は、典型的には、検出可能な部分を標識する。一般に以下のカテゴリーに分類され得る多数の標識が、利用可能である:
(a)放射性同位元素、例えば、35S、14C、125I、3H、及び131I。抗体は、例えば、Current Protocols in Immunology、第1巻及び第2巻、Gutigenら編集、Wiley-Interscience社、New York、New York. Pubs.,(1991)に記載された技術を用いて放射性同位元素により標識することができ、かつ放射能は、シンチレーションカウンティングを用いて測定することができる。
(b)蛍光標識、例えば、希土類キレート(ユーロピウムキレート)又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、及びテキサスレッドが利用可能である。これらの蛍光標識は、例えば、Current Protocols in Immunology(前出)に開示された技術を用いて抗体に結合させることができる。蛍光は、蛍光光度計を用いて定量することができる。
(c)様々な酵素-基質標識が利用可能である。酵素は、一般に、様々な技術を用いて測定することができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、酵素は、基質内の色の変化を触媒することができ、この変化を、分光光度計により測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量する技術は、上記されている。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起されるようになり、次いで、(例えば、ケミルミノメーターを用いて)測定され得る光を放出し得る、又は蛍光アクセプターにエネルギーを供与し得る。酵素標識の例として、ルシフェラーゼ(例えば、蛍ルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、アルカリホスファターゼ、O-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、及びミクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。酵素を抗体に結合する技術は、O'Sullivanらの論文、「酵素免疫測定法に使用される酵素-抗体複合体の調製方法(Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay)」、Methods in Enzym (編集Langone及びH. Van Vunakis)、Academic Press社、New York, 73: 147-166 (1981)に説明されている。
【0126】
酵素と基質の組合せの例として、例えば、以下が挙げられる:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と基質としての過酸化水素(hydrogen peroxidase)であり、過酸化水素(hydrogen peroxidase)は、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と発色基質としてのp-ニトロフェニルリン酸;及び
(iii)β-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は発蛍光基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ。
【0127】
多数の他の酵素と基質の組合せも、当業者は利用可能である。
【0128】
(d)検出用抗体の別の可能な標識は、短いヌクレオチド配列である。次いで、RT-PCRシステム(Imperacer(商標), Chimera Biotech)によって濃度を決定する。
【0129】
場合によって、標識を、検出用抗体と間接的に結合させる。当業者は、これを達成する様々な技術を認識している。例えば、該抗体を、ビオチンと結合させることができ、かつ上記の標識の3つの大きいカテゴリーのいずれかを、アビジンと結合させることができ、その逆も同様である。ビオチンがアビジンに選択的に結合するため、標識は、このように間接的に抗体に結合することができる。あるいは、標識の抗体との間接的結合を達成するために、該抗体を、小型ハプテン(例えば、ジゴキシン)に結合させて、上記の異なる種類の標識の1つを、抗-ハプテン抗体(例えば、抗-ジゴキシン抗体)に結合させる。従って、標識の抗体との間接的な結合を達成することができる。
【0130】
本発明に使用される抗体は、任意の公知のアッセイ方法、例えば、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドイッチアッセイ、並びに免疫沈降アッセイに利用することができる。Zolaの文献、「モノクローナル抗体:技術マニュアル(Monoclonal Antibodies A Manual of Techniques)」、147-158頁(CRC Press社、1987)。
【0131】
競合結合アッセイは、限定された量の抗体との結合について試験試料検体と競合する、標識された標準の能力に依存する。試験試料中の標的ペプチドの量は、抗体に結合する標準の量に反比例する。結合する標準の量の決定を容易にするために、通常は、抗体を、競合の前又は後で不溶化するため、該抗体に結合した標準及び検体を、結合していない標準及び検体から好都合に分離することができる。
【0132】
さらなる実施態様では、二次抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識する。
【0133】
一実施態様では、検出された免疫複合体を定量する。
【0134】
一実施態様では、捕捉された複合体は、以下の群から選択される定量手段によって定量する:ELISA、例えば、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、逆ELISA、酵素結合免疫吸着スポットアッセイ;フローサイトメトリー;マルチプレックスアッセイシステム(Multiplex Assay Systems);免疫組織化学;免疫沈降;及びウエスタンブロット分析。さらなる実施態様では、捕捉された複合体は、定量手段としてサンドイッチELISAによって定量する。本発明に使用できるサンドイッチELISA法の適切な例は、実施例5及び11に記載される。
【0135】
一実施態様では、生体試料は、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、血漿、リンパ液、唾液、汗、胸膜液、滑液、涙液、胆汁、及び膵臓分泌液からなる群から選択される。さらなる実施態様では、生体試料は血清である。別の好ましい実施態様によると、該試料は、リカー、脳脊髄液(CSF)、または滑液試料である。生体試料は、当業者に周知の方法で患者から得ることができる。具体的には、血液試料は、対象から採取することができ、該血液試料を、従来の方法により血清と血漿に分離することができる。生体試料が採取される対象は、炎症性疾患又は炎症関連疾患に罹患していると疑われている、かつ/又は炎症性疾患又は炎症関連疾患を発症するリスクがある。
【0136】
本発明のさらなる態様は、MCP-1 N1pEバイオマーカーに対する抗体に特異的に結合できる該MCP-1 N1pEバイオマーカー又はその構造/形状模倣体を含むバイオセンサを含む。また、本明細書に記載されるリガンド又は模倣体を含むアレイも提供する。用語「バイオセンサ」は、MCP-1 N1pEバイオマーカーの存在を検出できるあらゆるものを指す。
【0137】
本発明によるバイオセンサは、MCP-1 N1pEバイオマーカーに特異的に結合できる、本明細書に記載される1つ又は複数のリガンドを含み得る。このようなバイオセンサは、本発明のMCP-1 N1pEバイオマーカーの検出及び/又は定量に有用である。
【0138】
本発明の第3の態様に従って、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する方法であって:
(a)生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の第1の濃度(Ca)を決定する工程;
(b)該生体試料中の全MCP-1の第2の濃度(Cd)を決定する工程;及び
(c)該第1の濃度(Ca)の値を該第2の濃度(Cd)の値で除して、Ca/Cdの比を決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0139】
本発明は、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を測定する有効かつ高感度の方法を提供することを理解されたい。グルタミニルシクラーゼ(QC)が、N末端ピログルタミニル残基を有するMCP-1を翻訳後に修飾するという事実を考慮すると、本発明の方法は、試験薬剤のQC活性に影響を与える能力を評価するための有効なスクリーニング法としての有用性もあることが分かる。従って、本発明のさらなる態様に従って、グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤をスクリーニングする方法であって:
(a)MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む対照試料をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程;
(b)MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む混合物並びにグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤と共に対照試料をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程;を含み、
該工程(a)に対する該工程(b)におけるN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1:全MCP-1の比の低下が、グルタミニルシクラーゼの阻害を示す、前記方法を提供する。
【0140】
本発明のさらなる態様に従って、上記のクリーニング方法によって得ることができるグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤を提供する。
【0141】
本発明のさらなる態様に従って、グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性を測定する方法であって、MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む混合物と共にグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法を提供する。本発明のこの態様は、既に同定されているQC阻害剤の有効性を評価するという利点を提供し、例えば、MCP-1のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1への変換率の低下を所与の期間にわたって評価することができる。
【0142】
(診断キット)
便宜上、本発明の方法に使用される抗体は、キットとして、すなわち所定量の試薬と診断アッセイを行うための取扱説明書とを組み合わせたパッケージとして提供することができる。
【0143】
本発明のさらなる態様に従って、炎症性疾患又は炎症関連疾患を診断するキットであって、MCP-1に特異的な捕捉用抗体、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な捕捉用抗体、MCP-1に特異的な検出用抗体、及び上記の方法に従って該キットを使用するための任意の取扱説明書を含む、前記キットを提供する。
【0144】
抗体が酵素で標識されている場合、該キットは、該酵素が必要とする基質及び補助因子(例えば、検出可能な発色団又はフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含む。加えて、他の添加剤、例えば、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液又は溶解緩衝液)などを含み得る。様々な試薬の相対量を様々に変更して、試薬の溶液を、アッセイの感度を実質的に最適化する濃度にすることができる。具体的には、これらの試薬は、溶解時に試薬溶液を適切な濃度にする賦形剤を含む、通常は凍結乾燥された乾燥粉末として提供することができる。
【0145】
本発明の方法はまた、炎症性疾患もしくは炎症関連疾患の所与の治療の効果をモニタリングする産業への適用性も有する。本発明のさらなる態様に従って、炎症性疾患もしくは炎症関連疾患を有する、該疾患の疑いがある、又は該疾患に罹りやすい対象における治療効果をモニタリングする方法であって、被験者由来の生体試料において、上記の、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0146】
本発明のさらなる態様に従って、上記の診断又はモニタリング方法であって、被験者から2回以上にわたって採取された生体試料において、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記診断又はモニタリング方法を提供する。
【0147】
本発明のさらなる態様に従って、上記の診断又はモニタリング方法であって、2回以上にわたって採取された生体試料において、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を比較する工程を含む、前記診断又はモニタリング方法を提供する。
【0148】
一実施態様では、炎症性疾患又は炎症関連疾患は、MCP-1関連疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、喘息、遅延型過敏反応、膵炎、アルツハイマー病、高インスリン血症、及び肥満であり、II型糖尿病、糖尿病性ネフロパシー、大腸炎、肺線維症、腎線維症、妊娠中毒症、移植片拒絶反応、神経因性疼痛、脳卒中、AIDS、及び腫瘍を含む。
【0149】
最も好ましくは、炎症性疾患又は炎症関連疾患は、アルツハイマー病であり、同様に最も好ましくは、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄、及び膵炎、糖尿病性ネフロパシーから選択される疾患であり、特にアルツハイマー病又は関節リウマチである。
【0150】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、該実施例は、いかなる場合も本発明を限定すると解釈されるべきものではない;本発明は、その範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0151】
(本発明の実施例)
(実施例1:MALDI-TOF質量分析)
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析を、飛行線形時間分析計を備えたVoyager De-Pro (Applied Biosystems, Darmstadt)を用いて行った。該機器は、337nm窒素レーザー、電位加速源、及び1.4mの飛行管を備えていた。検出操作は、正イオンモードであった。サンプル(5μl)を、等量のマトリックス溶液と混合した。マトリックス溶液として、1mlのアセトニトリル/0.1%TFAを含む水(1/1, v/v)に20mgのシナピン酸(Sigma-Aldrich)を溶解することによって調製されたシナピン酸を使用した。少量(≒1μl)のマトリックス-検体-混合物をプローブチップに移した。
【0152】
Glu1-環化の長期試験のために、MCP-1ペプチドを、100μlの0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.2)又は0.1Mビス-トリス緩衝液(pH 6.5)に溶解し、30℃でインキュベートした。ペプチドを、0.15mM〜0.5mMの濃度になるように適用し、0.2UのQCを加えた。異なる時点において、サンプルを分析管から取り出し、ペプチドを製造業者の推奨に従ってZipTips(Millipore)を用いて抽出し、マトリックス溶液(1:1 v/v)と混合し、続いて質量スペクトルを記録した。負の対照は、QCも熱不活化酵素も含んでいなかった。阻害剤の研究では、試料組成物は、添加される阻害性化合物を除き、上記のものと同様とした。
【0153】
(実施例2:ジペプチジル-ペプチダーゼ4(DP4)、アミノペプチダーゼP、及びヒト血清中に存在するプロテアーゼによるヒトMCP-1(1-76)のタンパク分解)
(QC特異的阻害剤の非存在下及び存在下での組換えヒトDP4によるMCP-1のN末端分解)
N末端グルタミンで始まる組換えヒトMCP-1(1-76)(配列番号1)(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して10μg/mlの濃度にした。該MCP-1溶液を、組換えヒトQC(0.0006mg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートしてから組換えヒトDP4(0.0012mg/ml)と共に30℃でインキュベートするか、又は事前のQC適用なしでDP4と共にインキュベートした。加えて、GlN1-MCP-1の組換えヒトQCとのインキュベーションを、10μMの1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)チオ尿素塩酸塩の存在下で行った。得られたDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、及び4時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0154】
(組換えヒトアミノペプチダーゼPによるN末端分解)
ピログルタミル残基の代わりにN末端グルタミニル残基を有するヒト組換えMCP-1(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して10μg/mlの濃度にした。
【0155】
MCP-1を、30μg/ml アミノペプチダーゼP(R&D Systems)と共に30℃でインキュベートした。Gln1-MCP-1を、pGlu修飾なしで使用するか、又はpGluを生成するために組換えヒトQC(6μg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートした。得られたアミノペプチダーゼP分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0156】
(ヒト血清中のヒトMCP-1のN末端分解)
N末端グルタミニル残基を有するヒト組換えMCP-1(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して100μg/mlの濃度にした。MCP-1を、組換えヒトQC(0.006mg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートしてからヒト血清と共に30℃でインキュベートするか、又はQCを添加しないでヒト血清と共にインキュベートした。分解産物を、Gln1-MCP-1については、0分後、10分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、及び7時間後に、pGlu1-MCP-1については、0分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、7時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0157】
(実施例3:ヒトMCP-2、MCP-3、及びMCP-4の分解)
(DP4によるヒトMCP-2のN末端分解)
ピログルタミル残基の代わりにN末端グルタミニル残基を有するヒト組換えMCP-2(配列番号11)(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して10μg/mlの濃度にした。MCP-2を、組換えヒトQC(0.0006mg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートしてから組換えヒトDP4(0.0012mg/ml)と共に30℃でインキュベートするか、又はQCとのプレインキュベーションなしで組換えヒトDP4(0.0012mg/ml)と共にインキュベートした。得られたDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0158】
(DP4によるヒトMCP-3のN末端分解)
ピログルタミル残基の代わりにN末端グルタミニル残基を有するヒト組換えMCP-3(配列番号12)(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して10μg/mlの濃度にした。MCP-3を、組換えヒトQC(0.0006mg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートしてから組換えヒトDP4(0.00012mg/ml)と共に30℃でインキュベートするか、又は事前のQC適用なしで組換えヒトDP4(0.00012mg/ml)と共にインキュベートした。得られたDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0159】
(DP4によるヒトMCP-4のN末端分解)
ピログルタミル残基の代わりにN末端グルタミニル残基を有するヒト組換えMCP-4(配列番号13)(Peprotech)を、25mM トリス/HCl pH 7.6に溶解して10μg/mlの濃度にした。MCP-4を、組換えヒトQC(0.0006mg/ml)と共に30℃で3時間プレインキュベートしてから組換えヒトDP4(0.00006mg/ml)と共に30℃でインキュベートするか、又は事前のQC適用なしで組換えヒトDP4(0.00006mg/ml)と共にインキュベートした。得られたDP4分解産物を、0分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、及び24時間後にMaldi-TOF質量分析法を用いて分析した。
【0160】
(実施例4:ヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4の様々なN末端変異体の走化性能)
(TransWell走化性アッセイ)
走化性アッセイを、細孔径が5μmの24ウェルTransWellプレート(Corning)を用いて行った。THP-1細胞を、1×106細胞/100μlの濃度でRPMI1640に懸濁し、上部チャンバに100μlのアリコートを適用した。細胞を、37℃で2時間、化学誘引物質に向けて遊走させた。続いて、上部チャンバの細胞を廃棄し、下部チャンバを、PBS中50μlの70mM EDTAで混合し、15分間37℃でインキュベートして膜に付着した細胞を遊離させた。その後、下部チャンバに遊走した細胞を、細胞カウンターシステム(Scharfe System)を用いてカウントした。走化性指数を、刺激へ遊走した細胞を負の対照へ遊走した細胞で除することによって算出した。
【0161】
(ヒトMCP-1のN末端変異体の走化性能)
グルタミン1で始まるMCP-1(Gln1-MCP-1)(Peprotech)を、pGlu1-MCP-1を生成するために組換えヒトQCと共にインキュベートするか、又はAsp3-MCP-1を生成するためにヒト組換えDP4と共にインキュベートした。1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、及び1000ng/mlの濃度の生成されたMCP-1変異体を、THP-1走化性アッセイ(n=3)を用いて試験した。
【0162】
(QC阻害剤の非存在下又は存在下でのヒトMCP-1の走化性能)
N末端グルタミンを有するMCP-1(Gln1-MCP-1)(Peprotech)を、組換えヒトQC及びDP4(Gln1-MCP-1+QC+DP4)、ヒト組換えDP4のみ(Gln1-MCP+DP4)、並びに10μMのQC阻害剤1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)チオ尿素塩酸塩及びDP4と組み合わせた組換えヒトQC(Gln1-MCP-1+QC+QCI+DP4)と共にインキュベートした。1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、及び1000ng/mlの濃度の生成されたMCP-1変異体を、走化性アッセイ(n=3)を用いて試験した。
【0163】
(N末端グルタミニル残基又はピログルタミル残基を有するヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4の変異体の走化性能の比較)
N末端グルタミン(Peprotech)又はピログルタミル残基を有するヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4(Gln1-MCPとヒト組換えQCとの1:100の希釈での30℃で2時間のインキュベーション)を、走化性能について試験した。1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、及び1000ng/mlの濃度の特定のMCPを、走化性アッセイ(n=3)を用いて試験した。
【0164】
(N末端グルタミニル残基を有するヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4の変異体とそれぞれのDP4分解産物の走化性能の比較)
N末端グルタミンで始まるヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4(Peprotech)を、走化性アッセイに直接適用して、MCP-1、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4のDP4分解産物の走化性能と比較した。DP4分解産物の生成のために、それぞれのMCPを、アッセイの前に、ヒト組換えDP4と共に1:100の希釈で、30℃で2時間インキュベートした。1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、500ng/ml、及び1000ng/mlの濃度の特定のMCPを、走化性アッセイ(n=3)を用いて試験した。
【0165】
(実施例5:全ヒトMCP-1(hMCP-1)及びN末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-1(hMCP-1 N1pE)の定量的検出のための間接サンドイッチELISAの確立)
ヒトMCP-1を捕捉するために、ヒトMCP-1に特異的に結合する捕捉用抗体として、商業的に入手可能なポリクローナル抗血清ヤギ抗hMCP1-AF(R&D Systems, Minneapolis, USA)を、PBSで250ng/mlに希釈し、4℃で一晩、ポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレートに固定した。次いで、ELISAブロッカー(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)により室温で2時間ブロッキングした。標準曲線の作成のために、hMCP-1 N1pEを得るべく、組換えhMCP-1を組換えヒトグルタミニルシクラーゼ(QC)と共にインキュベートした。組換えhMCP-1 N1pE標準ペプチドを、ELISAブロッカーにより1000pg/ml〜15.63pg/mlまで段階希釈し、二連でウェルに加えた。ELISAブロッカーで満たされた2つのウェルは、標準曲線値0pg/mlを表す。室温での2時間のインキュベーション後、プレートを、TBS-Tで少なくとも3回洗浄した。hMCP-1 N1pEの検出のために、MCP-1 N1pE抗体クローン348-2C9とHRP結合抗マウス抗体の両方を、ブロッキング緩衝液で希釈して500ng/mlの最終濃度にした。hMCP-1の検出のために、抗体マウス抗hMCP-1(Peprotech, Hamburg, Germany)とHRP結合抗マウス抗体の両方を、ブロッキング緩衝液で希釈して500ng/mlの最終濃度にした。検出用抗体/共役溶液を、室温で2時間インキュベートした。TBS-Tによる数回の洗浄後、市販のHRP基質TMB(SureBlue Reserve TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(1成分), KPL, Gaithersburg, USA)による呈色反応を行い(暗所において室温で30分間インキュベート)、続いて1.2N H2SO4の添加により該反応を停止させた。450/540nmにおける吸光度を、Tecan Sunriseプレートリーダーにより決定した。
【0166】
(実施例6:標準ペプチド環化状態の全hMCP-1 ELISAに対する影響の評価)
標準ペプチドの環化状態の全hMCP-1 ELISAに対する影響を排除するために、環化組換えヒトMCP-1と非環化組換えヒトMCP-1の検出を比較した。
【0167】
ELISAプロトコルは、実施例5に対応し、標準曲線の作成のために、hMCP-1をQCと共に、又はQCを用いずにインキュベートした。
【0168】
(実施例7:刺激されたNHDF細胞の細胞培養上清におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比のELISAによる決定)
炎症性刺激の後、hMCP-1の発現が、ヒト正常皮膚線維芽細胞(NHDF)において亢進される。従って、hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの量が、オンコスタチンM(OSM)及びインターロイキン1β(IL1β)のNHDFへの適用後に増加するはずである。これを立証するために、OSM及びIL1β刺激NHDF細胞培養上清を、2つのELISAで分析した。hMCP-1の量及びhMCP-1 N1pEの部分を分析した。
【0169】
実施例5のプロトコルに従ってhMCP-1及びhMCP-1 N1pEの定量的分析を行った。NHDF細胞培養上清を、ウェルに加える前にブロッキング緩衝液で希釈した。NHDFを、10ng/ml OSM及びIL1βで14日間にわたって刺激し、7日後にサイトカインを再度適用した。該細胞培養上清を、hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの分泌の時間依存性を調べるために異なる時点で分析した。
【0170】
(実施例8:グルタミニルシクラーゼ阻害剤(QCI)で処置した正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比の決定)
実施例7は、hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの発現が、炎症性刺激の後にNHDFにおいて亢進されることを示している。グルタミニルシクラーゼ(QC)が、N末端ピログルタミン酸残基の形成を触媒するため、QCの阻害は、hMCP-1 N1pEレベルの減少をもたらすはずである。これを立証するために、NHDFを、OSM及びIL1βで刺激し、同時にQCIを用いて、又は用いずに処置した。
【0171】
NHDFを10ng/ml OSM、IL1βで刺激し、同時に10μM QCIを用いて、又は用いずに6日間処置した。0日目に、サイトカイン及び阻害剤を1回適用した。QCIのhMCP-1及びhMCP-1 N1pEレベルに対する影響を調べるために、細胞培養上清を、実施例7のELISAプロトコルに従って異なる時点で分析した。
【0172】
(実施例9:異なる濃度のQCIで処置したヒト肺癌細胞株(A549)におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比の決定)
実施例8は、QCIの適用が、NHDFにおけるhMCP-1 N1pEレベルを低下させることを示している。QCI濃度依存性のhMCP-1 N1pEの低下を分析するために、癌ヒト肺胞基底上皮細胞株A549を異なる濃度のQCIで処置した。
【0173】
A549細胞を、10ng/mlのTNFα及びIL1βで24時間刺激した。さらに、QCIを、異なる濃度で該細胞に適用した。24時間後に、細胞培養上清を、実施例7のプロトコルに従って分析した。
【0174】
(実施例10:ヒト血清におけるhMCP-1及びhMCP-1 N1pEのスパイク及び回収率)
ヒト血清におけるhMCP-1及びhMCP-1 N1pEの定量的検出を評価するために、スパイク及び回収率の実験を行った。
ELISAプロトコルは、FBS、0.05%Tween、ブロッキングのための10%FBS、及び希釈工程の使用法を除き、実施例5と一致している。スパイク及び回収率の確認のために、様々なレベルの組換えhMCP-1及びhMCP-1 N1pEを、ヒト血清中でスパイクした。回収率を、スパイクされた血清試料において測定された値からスパイクされていない血清試料において測定された値を減じることによって算出した。
【0175】
(実施例11:全マウスMCP-1(mMCP-1)及びN末端ピログルタミン酸を有するマウスMCP-1(mMCP-1 N1pE)の定量的検出のための間接サンドイッチELISAの確立)
実施例5〜10は、組換えヒトMCP-1/MCP-1 N1pE及び未変性ヒトMCP-1/MCP-1 N1pEの定量的検出を説明している。マウス試料中のmMCP-1及びmMCP-1 N1pEレベルを分析するために、マウスMCP-1/MCP-1 N1pEの定量的検出のためにアッセイを開発する必要があった。MCP-1 N1pE抗体クローン348-2C9は、マウスMCP-1 N1pEと交差反応するため、この抗体を、mMCP-1 N1pEの検出のための間接サンドイッチELISAの確立に使用した。サイトカインの両方の型を区別するために、全mMCP-1の検出のための同等の間接サンドイッチELISAを開発した。
【0176】
マウスMCP-1を捕捉するために、マウスMCP-1に特異的に結合する捕捉用抗体として、商業的に入手可能なポリクローナル抗血清ウサギ抗mJE(Peprotech, Hamburg, Germany)を、PBSで500ng/mlに希釈し、4℃で4〜7晩にわたってポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレートに固定した。次いで、ELISAブロッカー(Thermo Fisher Scientific, Waltham, USA)により室温で2時間ブロッキングした。標準曲線の作成のために、mMCP-1 N1pEを得るべく、組換えmMCP-1をマウスグルタミニルシクラーゼ(QC)と共にインキュベートした。組換えmMCP-1 N1pE標準ペプチドを、ELISAブロッカーにより1950pg/ml〜19.5pg/mlまで段階希釈し、二連でウェルに加えた。ELISAブロッカーで満たされた2つのウェルは、標準曲線値0pg/mlを表す。室温での2時間のインキュベーション後、プレートを、TBS-Tで少なくとも3回洗浄した。mMCP-1 N1pEの検出のために、MCP-1 N1pE抗体クローン348-2C9とHRP結合抗マウス抗体の両方を、ELISAブロッカーで希釈して500ng/mlの最終濃度にした。mMCP-1の検出のために、同様に、抗体ラット抗マウスMCP-1(R&D Systems, Minneapolis, MN USA)抗MCP-1ヤギポリクローナル(MCP-1 (M-18):sc-1784 (Santa Cruz)とHRP結合抗ラット抗体抗ヤギIgGペルオキシダーゼ複合体(R&D Systems, Minneapolis, MN USA)の両方を、ブロッキング緩衝液で希釈して250ng/ml(それぞれ、200ng/mlと1μg/ml)の最終濃度にした。検出用抗体/共役溶液を、室温で2時間インキュベートした。TBS-Tでの数回の洗浄後、市販のHRP基質TMB(SureBlue Reserve TMBマイクロウェルペルオキシダーゼ基質(1成分), KPL, Gaithersburg, USA)による呈色反応を行い(暗所において室温で30分間インキュベート)、続いて1.2N H2SO4の添加により該反応を停止させた。450/540nmにおける吸光度を、Tecan Sunriseプレートリーダーにより決定した。
【0177】
(実施例12:標準ペプチド環化状態の全mMCP-1 ELISAに対する影響の評価)
実施例6は、ヒト標準ペプチドhMCP-1の環化状態が全hMCP-1 ELISAに対して全く影響がないことを実証している。これをマウス全MCP-1 ELISAについても立証するために、全mMCP-1 ELISAにおける環化組換えマウスMCP-1と非環化組換えマウスMCP-1の定量の比較を行った。
ELISAプロトコルは、実施例6に対応し、標準曲線の作成のために、mMCP-1をQCと共に、又はQCを用いずにインキュベートした。
【0178】
(実施例13:異なる濃度のQCIで処置したLPS刺激マウスマクロファージ細胞株RAW264.7におけるmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
実施例9は、QCIの適用が、刺激されたA549におけるヒトMCP-1 N1pE/ヒトMCP-1の比を濃度依存的に低下させることを示している。マウスMCP-1 N1pE/マウスMCP-1の比に対するQCIの影響を分析するために、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を、QC阻害剤QCIの非存在下、又は濃度が増加するQCIの存在下でLPSで刺激した。
RAW264.7を、10ng/mlのLPSにより24時間刺激し、異なるQCI濃度で処置した。24時間後に、細胞培養上清を、実施例9のプロトコルに従って分析した。細胞培養上清を、ウェルへの添加の前に、ブロッキング緩衝液で1:1000に希釈した。
【0179】
(実施例14:ウエスタンブロット分析によるRAW264.7細胞培養上清におけるmMCP-1 N1pEレベルの相互検証)
RAW246.7の刺激及び阻害剤の適用を、実施例9に従って行った。ウエスタンブロット分析のために、細胞培養上清のタンパク質を、SDSゲル電気泳動法に適用して分離した。分離されたタンパク質を、ニトロセルロース膜に電気的に移動させた。膜を、軽く振盪させながら室温で1時間、TBST-M(=TBST+5%スキムミルク)でブロックした。抗体を、等量のTBST-Mで1μg/mlに希釈した全mMCP-1(ラット抗マウスMCP-1、R&D Systems)用の検出用抗体又はmMCP-1 N1pE(クローン332-4B8)用の検出用抗体と共に、振盪台(rocking platform)で、4℃で一晩インキュベートした。西洋ワサビペルオキシダーゼに結合した二次抗マウス及び抗ラット抗体を、以下の標準手順に従ってシグナルの検出に使用した。
【0180】
(実施例15:チオグリコール酸及び異なる濃度のQCIで処置したマウスにおけるmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
実施例13は、QCIの適用が、マウス細胞培養モデルにおけるmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比を低下させることを示した。in vivoでこの結果を立証するために、mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比を、QCIの適用後に急性炎症性マウスモデルで測定した。mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の測定の他に、単球浸潤に対するmMCP-1 N1pE濃度の低下の影響を調べた。
【0181】
チオグルコール酸を、マウスに腹腔内注射した。異なる濃度のQCIを、チオグルコール酸適用の30分前に腹腔内投与した。4時間後に、8mlのPBS緩衝液で腹腔を洗浄することによって、腹腔洗浄を行った。腹腔洗浄液を、実施例11のプロトコルに従ってELISA分析し、腹腔におけるmMCP-1及びmMCP-1 N1pEレベルを決定した。ウェルへの添加前に、試料をブロッキング緩衝液で1:5に希釈した。7/4及びLy6G抗原の二重染色法によるFACS分析によって、浸潤した単球をカウントした。
【0182】
(実施例16:マウス液体試料中のmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
実施例11は、組換えmMCP-1/mMCP-1 N1pE及び未変性mMCP-1/mMCP-1 N1pEの定量的検出を説明している。抗マウスIgG-HRP複合体の潜在的な交差反応を起こさずに、マウス液体試料中のmMCP-1 N1pEレベルを分析するために、MCP-1 N1pE抗体クローン348-2C9のビオチン化を行った。
【0183】
(実施例17:抗MCP-1 N1pE抗体の結合親和性の等温滴定熱量計測定)
抗MCP-1 N1pE抗体(MCP-1 N1pE抗体2C9及びビオチン化MCP-1 N1pE抗体348/2C9)の抗原hMCP-1(1-38)に対する結合親和性を、VP-ITCマイクロ熱量計(MicroCal)を用いて決定した。両方の抗体クローン及びMCP-1(1-38)ペプチドを、同じ緩衝液条件を保ち、かつプロトン化事象によるバックグラウンド熱を回避するために、2リットルの150mM NaCl、25mM Na2HPO4、25mM KH2PO4、2mM EDTA、pH 7.4に対して4℃で一晩、透析した。この後、抗体及びペプチドの濃度並びにそれぞれの吸光係数を、280nmにおける吸光度から算出した。滴定実験のために、MCP-1 N1pE抗体2C9及びMCP-1(1-38)をそれぞれ、1.87μM及び29.19μMの濃度で使用した。10μlのMCP-1(1-38)の抗MCP-1 N1pE抗体溶液への29回の注入による滴定によって、結合熱を20℃で記録した。MCP-1(1-38)ペプチドの希釈による熱発生を、条件及び機器の設定を用いる透析緩衝液への滴定によって決定した。次いで、このデータを、MicroCal ORIGINソフトウエアによって分析した。算出した結合熱を、ペプチド希釈の熱によって補正した。得られた曲線を「1組の部位(One Set of Sites)」結合モデルに当てはめて、化学量、解離定数、反応エンタルピー、反応エントロピーを算出した。
【0184】
(実施例18:CSF及び血清試料中のヒトMCP-1及びヒトMCP-1 N1pEの測定)
CSF及び血清試料中のhMCP-1及びhMCP-1 N1pEの測定のために、以下のプロトコルを使用した:
・ヤギ抗hMCP-1抗体(R&D Systems)をPBSで250ng/mlに希釈
・Maxisorp96ウェルプレート(Nunc)上の1ウェルに付き希釈抗体100μlの添加
・プレートのシーリング及び4℃で一晩のインキュベーション
・抗体溶液の除去
・1ウェルに付き200μlのPBS/10%(v/v)FBS/0.05%(v/v)Tween-20の添加による表面のブロッキング、プレートのシーリング、及び室温で2時間のインキュベーション
・標準ペプチドの環化:
16.5μl PBS
2μl hCCL2(100mg/ml)
1μl 22%BSA
0.5μl hQC
37℃で1時間のインキュベーション
・環化標準ペプチド(10μg/ml)をPBS/10%(v/v)FBS/0.05%(v/v)Tween-20で10ng/ml、最終的に1000pg/ml、500pg/ml、250pg/ml...15.6pg/mlに希釈
・血清又はCSF試料をPBS/10%(v/v)FBS/0.05%(v/v)Tween-20で1:4に希釈し、深いウェルプレートに移す
・プレートをTBS/0.5%(v/v)Tween-20で3回洗浄して洗浄緩衝液を除去
・試料及び標準ペプチド溶液を深いウェルプレートからELISAプレートに移す、100μl/ウェル
・プレートのシーリング及び室温で2時間のインキュベーション
・抗体348/2C9の抗マウスIgG-HRP(KPL)との室温で15分間のプレインキュベーション、その後、プレミックスをPBS/10%(v/v)FBS/0.05%(v/v)Tween-20で500ng/ml 348/2C9及び1μg/ml 抗マウスIgG-HRPに希釈
・全hMCP-1抗体(Biolegends)の抗マウスIgG-HRP(KPL)との室温で15分間のプレインキュベーション、その後、プレミックスをPBS/10%(v/v)FBS/0.05%(v/v)Tween-20で500ng/ml 2C9及び1μg/ml 抗マウスIgG-HRPに希釈
・プレートをTBS/0.5%(v/v)Tween-20で3回洗浄して洗浄緩衝液を除去
・抗体溶液をプレートに添加、100μl/ウェル
・プレートのシーリング及び室温で2時間のインキュベーション
・プレートをTBS/0.5%(v/v)Tween-20で3回洗浄して洗浄緩衝液を除去
・発色溶液(SureBlue)をプレートに添加、100μl/ウェル
・暗所において室温で30分間のプレートのインキュベーション
・1ウェルに付き50μlの1.2N H2SO4の添加による反応の停止
・TECAN Sunriseでの450nm/540nmにおける吸光度の測定
【0185】
(結果と考察)
これまで、MCP-1レベルの測定は、主にELISAアッセイに基づいた様々な方法によって行われてきた。
【0186】
従って、生体源から全MCP-1を検出するために、様々なMCP-1抗体が開発されてきた。該抗体は、ウエスタンブロットにおいて、ELISAでの捕捉及び検出用途として、細胞内フローサイトメトリー(ICFC)、酵素結合免疫吸着スポットアッセイ(ELISPOT)、Bio-Plexサイトカインアッセイ(xMAP technology)において、免疫組織化学(IHC)において、免疫沈降(IP)、受容体結合の中和、及び他のアプローチにおいて機能することが立証されている。結果として、抗体及びELISAキットは、様々な製造業者、例えば:Abcam、RnD systems、Bio-Rad Laboratories、Bio Source Int.、IBL America、santa cruz biotechnology inc,、LINCO Research Inc.、Upstate、RayBiotech Inc.、Enzo Biochem Inc.、PeproTech、及びLifespan Biosciencesなどから入手可能である。
【0187】
これらの全ての抗体及び方法には、大きな不都合がある:
これらは、MCP-1ケモカインの完全性、従ってMCP-1ケモカインの受容体活性化機能を検出することができない。
【0188】
第1のN末端アミノ酸残基又はN末端Gln-Proジペプチドの切断は、MCP-1ケモカインの受容体活性(CCR2)を少なくとも2桁低下させる。
【0189】
プロリン特異的エキソペプチダーゼジペプチジルペプチダーゼ4(DP4、DPP4、CD26)の濃度が増加すると、循環中のN末端未修飾CCL2のレベルが急速に低下する。DP4媒介N末端切断によるこのサイトカインの不活化は、グルタミニル残基が翻訳後にピログルタミン酸に変換されると、完全に無効となる。
【0190】
さらに、既存のMCP-1アッセイでは通常はモニタリングされないN末端の分解は、反対の特性を有するMCP-1種をもたらす:
残基7-10は、受容体の脱感作に必須であるが、機能には十分ではなく、機能の活性には残基1-6の完全性が必要であった。MCP-1、1-10に対応するペプチドは、検出可能な受容体結合活性を欠いており、残基1-10がMCP-1の機能に必須であるが、他の残基も関与していることを示唆している。8-76、9-76、及び10-76を含むいくつかの切断類似体は、MCP-1誘導Ca2+誘導を脱感作したが、著しく活性ではなかった。これらの類似体は、MCP-1活性のアンタゴニストであり、最も強力なのは、9-76類似体である(ICs0=20nM)。該9-76は、8.3μMのKaでMCP-1受容体に特異的に結合し、これは、MCP-1(Kd 2.8nM)よりも3倍高かった。9-76類似体は、MCP-1及びMCP-3に対するCa2+応答を脱感作したが、他のCCケモカインに対してはそうではなく、MCP受容体特異的であることを示唆している(Gong, J.-H.及びClark-Lewis, I.の論文、J Exp. Med. 161 631-40 (1995))。
【0191】
(MCP配列アラインメント)
8種の哺乳動物種由来の成熟MCP-1の配列アラインメント(図1)は、最初の76のアミノ酸残基の範囲内で46%の全体の同一性及び79%の類似性を実証している。特に、最初の4個のN末端アミノ酸残基は、完全に保存されて、受容体のアゴニスト/アンタゴニスト作用が確保されている。異なるヒトMCPタンパク質の比較(図2)により、どの成熟タンパク質の場合でも、N末端グルタミンの出現が明らかである。異なる受容体の特異性により、隣接するアミノ酸残基は保存されていない。しかしながら、QCアクセス可能N末端グルタミン残基及びDP4切断可能グルタミン-プロリンモチーフの基本原理は、保存されたままである。
【0192】
(ヒトMCP-1(1-76)のタンパク分解についての研究)
循環内で、MCP-1は、N末端pGlu残基によって保護され、該N末端pGlu残基は、アミノペプチダーゼ、例えば、DP4によるN末端の切断に対する抵抗性を付与する(図3〜図6)。QC阻害剤の投与の結果として、非保護N末端が、DP4によって容易に切断される(図7)。N末端切断は、ヒトMCP-1の不活化をもたらす(図12及び図13)。総合すると、これらの結果は、N末端のpGlu形成が、保護の機構を果たし、ポストプロリン切断酵素、例えば、DP4及びアミノペプチダーゼPによるN末端分解に対する抵抗性を付与することを示唆している(図5)。
【0193】
(ヒト血清とDP4特異的阻害剤との併用によるヒトMCP-1(1-76)のタンパク分解)
ヒトMCP-1のタンパク分解安定性についてのさらなる研究のために、MCP-1の精製プロテアーゼとのインキュベーションにより得られたデータを、ヒトMCP-1のヒト血清とのインキュベーションによって実証した。ヒトGln1-MCP-1のヒト血清とのインキュベーションは、基質のN末端切断及び最初の2個のアミノ酸(Gln1Pro2)の遊離を示している。加えて、血漿中のQC活性は、N末端タンパク分解と競合してMCP-1を安定させ、約60%の切断Asp3-MCP-1と40%の完全長pGlu1-MCP-1の最終比となる(図7A)。さらに、ヒトMCP-1のヒトQCとのプレインキュベーションは、N末端pGlu残基の形成をもたらし、従ってヒトMCP-1が安定化する。少なくとも選択された時間枠及び血清の希釈では、pGlu1-MCP-1の分解は全く観察されなかった(図7B)。加えて、9.6μMのDP4阻害剤イソロイシル-チアゾリジド(Isoleucyl-Thiyzolidide)の存在下での血清中のMCP-1のインキュベーションもまた、N末端の分解を防止し、MCP-1が、ヒト血清中のDP4又はDP4様活性によって分解されることを立証している(図7C)。
【0194】
(ヒトMCP-2、MCP-3、及びMCP-4のタンパク分解)
ヒトMCP-1のN末端分解と同様に、DP4によるN末端切断に対する他のヒトMCP、すなわちMCP-2、MCP-3、及びMCP-4の感受性を調べた(図8〜図10)。既にMCP-1で観察されたように、N末端pGlu残基が、DP4によるタンパク分解に対してMCP-2(図8B)、MCP-3(図9B)、及びMCP-4(図10B)を保護する。しかしながら、N末端グルタミンで始まる非環化変異体は、Gln1-MCP-2(図8A)、Gln1-MCP-3(図9A)、及びGln1-MCP-4(図10A)で示されているように、DP4によって容易に切断される。従って、N末端pGlu残基は、アミノペプチダーゼ、例えば、DP4による切断に対して全てのMCPを安定化させる。従って、代謝回転の促進並びに走化性及び受容体活性化の低下を誘発するためにin vivoでのQC活性を低下させるという提示された概念は、MCPファミリーの全てのメンバーに当てはまる。
【0195】
(ヒトMCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4の異なるN末端変異体の走化性能)
MCP-1の異なるN末端変異体のヒトTHP-1単球を誘引する能力に対する影響を調べるために、Gln1-MCP-1、pGlu1-MCP-1、及びDP4分解産物Asp3-MCP-1を、in vitroでの走化性アッセイで試験した。N末端グルタミニル残基又はピログルタミル残基を有する完全長MCP-1は、THP-1単球の誘引において同等に能力があり、最大応答が50ng/ml〜100ng/mlであることが見出された(図11A)。加えて、N末端グルタミン又はピログルタミン酸を有するMCP-2、MCP-3、及びMCP-4のヒトTHP-1単球を誘引する能力も調べた。MCP-1と同様に、MCP-2及びMCP-3のN末端におけるpGlu形成は、それぞれのグルタミン前駆体と比較して、走化性能に対する影響が全くない(図11B及び図11C)。しかしながら、MCP-4では、pGLU形成は、該ペプチドの走化性能を僅かに高める(図11D)。
【0196】
MCP-1の安定化におけるQCの役割、及びTHP-1単球の遊走に対するQCの影響をさらに調べるために、Gln1-MCP-1をヒトDP4と共にインキュベートした。平行試料では、MCP-1を、DP4の適用の前にヒトQCと共にプレインキュベートした。予想通り、得られた用量反応曲線は、50〜100ng/mlでの最大応答によって反映されるpGln1-MCP-1のタンパク分解安定性を暗示している。対照的に、QCの非存在下では、Gln1-MCP-1は、DP4によって切断され、これにより、最大応答を引き出すために必要なより高いMCP-1濃度(500〜1000ng/ml)に用量反応曲線がシフトする。加えて、Gln1-MCP-1のQC及びQC阻害剤1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)チオ尿素塩酸塩とのプレインキュベーションは、pGlu形成を防止し、従って、pGlu1-MCP-1と比較して高いMCP-1濃度への用量反応曲線のシフトによって観察されるように、該ペプチドがDP切断に対して弱くなる(図12)。このため、QCの阻害は、DP4の分解によるMCP-1のN末端の不安定化、従って、MCP-1の単球走化活性の不活化が起こる。
【0197】
しかしながら、グルタミニル前駆体は、DP4によって切断されるため(図8A、図9A、図10A)、MCP-2、MCP-3、及びMCP-4のN切断DP4分解産物の走化性能も、走化性アッセイを用いて調べた。3個全ての変異体では、2個のアミノ酸が切断されると、ケモカインが部分的に不活化される(図13)。従って、全ての既知のMCPのN末端におけるpGlu形成は、N末端の切断を防止するだけではなく、走化性能の消失も防止する。従って、N末端成熟の抑制によりMCP-1の活性を緩和する提示されたアプローチは、ヒトにおけるMCPファミリーの全てのメンバーに適用される。
【0198】
(全ヒトMCP-1(hMCP-1)及びN末端ピログルタミン酸を有するヒトMCP-1(hMCP-1 N1pE)の定量的検出のための間接サンドイッチELISA)
生体試料中の両方の型を区別して、全hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの定量的な量を決定するために、2つの間接サンドイッチELISAを確立する必要があった。図14は、全hMCP-1(図14A)及びhMCP-1 N1pE(図14B)の検出のための2つの特徴的な標準曲線を示している。
【0199】
(標準ペプチド環化状態の全hMCP-1 ELISAに対する影響の評価)
標準ペプチドの環化状態の全hMCP-1 ELISAに対する影響を排除するために、同じアッセイにおいて、環化組換えヒトMCP-1と非環化組換えヒトMCP-1の検出を比較した(図15)。実験により、全hMCP-1 ELISAにおけるhMCP-1ペプチドの検出に対するhMCP-1ペプチド環化状態の影響がゼロ又は最小限であることが明らかである。これは、両方のELISAの捕捉用抗体及び全hMCP-1 ELISAの検出用抗体が、hMCP-1のN末端アミノ酸と相互作用しないことを実証している。この発見は、hMCP-1 N1pEレベルが様々な試料における両方のペプチドの比を決定する能力を調べるhMCP-1及びhMCP-1 N1pE ELISAの検証にとって重要である。
【0200】
(刺激されたNHDF細胞の細胞培養上清におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比のELISAによる決定)
炎症性刺激の後、hMCP-1の発現が、ヒト正常皮膚線維芽細胞(NHDF)において亢進される。従って、hMCP-1及びMCP-1 N1pEの量は、オンコスタチンM(OSM)及びインターロイキン1β(IL1β)のNHDFへの適用後に増加するはずである。これを立証するために、OSM及びIL1β刺激NHDF細胞培養上清を、2つのELISAで分析した。まずhMCP-1の量、次いでhMCP-1 N1pEの部分を分析した。得られたデータは、OSM及びIL1βの適用による炎症性刺激の後に、hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの量が、NHDF細胞培養上清中で時間依存的に増加することを示している(図16)。全hMCP-1レベルに対するhMCP-1 N1pEの割合は、70%〜95%の範囲であり、成熟MCP-1のほぼ完全なN末端ピログルタミン酸修飾を示唆している。
【0201】
(グルタミニルシクラーゼ阻害剤(QCI)で処置した正常ヒト皮膚線維芽細胞におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比の決定)
グルタミニルシクラーゼ(QC)は、N末端ピログルタミン酸残基の形成を触媒するため、QCの阻害は、hMCP-1 N1pEレベルの低下をもたらすはずである。これを立証するために、NHDFを、OSM及びIL1βで刺激し、同時にQCIを用いて、又は用いずに処置した。
【0202】
実施例7(図16)に示されているように、全hMCP-1及びhMCP-1 N1pEの量は、炎症性サイトカインの適用後に時間依存的に増加する。QCIの添加により、hMCP-1 N1pEレベルが低下した。hMCP-1 N1pE/hMCP-1の比は、未処置NHDFでは約1であるが、QCI処置細胞は、約0.35の比を示している。OSM+IL1β刺激の1〜2日後に、hMCP-1 N1pEレベルは、hMCP-1 N1pE ELISAの定量限界(LOQ)よりも低かった(図17を参照されたい)。
【0203】
(異なる濃度のQCIで処置したヒト肺癌細胞株(A549)におけるhMCP-1 N1pE/hMCP-1の比の決定)
hMCP-1 N1pEのQCI濃度依存性の減少を分析するために、癌ヒト肺胞基底上皮細胞株A549を異なる濃度のQCIで処置した。hMCP-1 N1pEの量は、QCIによって濃度依存的に減少するが、全hMCP-1の量は、ほぼ影響を受けない(図18)。結果として、hMCP-1 N1pE/hMCP-1の比は、阻害剤の濃度の増加と共に減少する(図18B)。
【0204】
ヒト血清におけるhMCP-1及びhMCP-1 N1pEのスパイク及び回収率
表2は、ヒト血清に添加されたhMCP-1で得られたスパイク及び回収率を示している。スパイクされた組換えhMCP-1ペプチドの回収率は66%〜81%であった。
【0205】
【表2】

表2は、観察されたhMCP-1濃度と比較した予想されたスパイクレベルを示している。
【0206】
表3は、hMCP-1 N1pEのヒト血清への添加で得られたスパイク及び回収率のデータを示している。スパイクされたhMCP-1 N1pEペプチドの回収率は66%〜79.4%であった。
【0207】
【表3】

表3は、観察されたhMCP-1 N1pE濃度と比較した予想されたスパイクレベルを示している。
【0208】
これらのデータは、実施例5(図14)で説明されているELISAを、ヒト血清におけるhMCP-1及びhMCP-1 N1pEの定量的検出に使用できることを裏付けている。スパイクされたペプチドの回収率は、両方のELISAで同等であり、許容可能な範囲である。
【0209】
(全マウスMCP-1(mMCP-1)及びN末端ピログルタミン酸を有するマウスMCP-1(mMCP-1 N1pE)の定量検出のための間接サンドイッチELISAの確立)
マウス試料中のmMCP-1及びmMCP-1 N1pEレベルを分析するために、マウスMCP-1及びマウスMCP-1 N1pEの定量分析のためのアッセイを開発する必要があった。MCP-1 N1pE抗体クローン348-2C9は、マウスMCP-1 N1pEと交差反応するため、この抗体を、mMCP-1 N1pEの検出のための間接サンドイッチELISAの確立に使用した。加えて、全mMCP-1を検出して、サイトカインの両方の型を区別するために同等の間接サンドイッチELISAを開発した。図19は、mMCP-1 N1pE及び全mMCP-1の検出のための2つの特徴的な標準曲線を示している。
【0210】
(標準ペプチド環化状態の全mMCP-1 ELISAに対する影響の評価)
図20は、mMCP-1ペプチド環化状態が、全mMCP-1のELISA検出を妨げなかったことを実証している。このことは、全マウスMCP-1及びマウスMCP-1 N-1pE ELISA測定の両方の独立性を裏付け、かつ決定されたmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の正確さを立証している。
【0211】
(異なる濃度のQCIで処置したLPS刺激マウスマクロファージ細胞株RAW264.7におけるmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
マウスMCP-1 N1pE/マウスMCP-1の比に対するQCIの影響を分析するために、マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を、QC阻害剤QCIの非存在下、又は濃度が増加するQCIの存在下でLPAにより刺激した。mMCP-1 N1pEの量は、QCIによって濃度依存的に減少するが、全mMCP-1の量は、影響を受けないままである。結果として、実施例9の結果と同様に、mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比は、阻害剤の濃度の増加と共に増加する(図21を参照されたい)。
【0212】
(ウエスタンブロット分析によるRAW264.7細胞培養上清中のmMCP-1 N1pEレベルの相互検証)
QCIの適用後にmMCP-1 N1pEレベルの低下がELISA実験で確認されたことを立証するためにウエスタンブロット分析を行った。この実験は、異なるQCIで処置したRAW264.7細胞培養上清を使用して行った。全mMCP-1を検出する抗体ラット抗マウスMCP-1によって生成されるウエスタンブロットシグナルの強度に変化がない(図22B)。しかしながら、mMCP-1 N1pEのウエスタンブロットシグナルは、濃度依存性であり(図22A)、対応するELISAデータに相関し(図22C)、異なる量のmMCP-1 N1pEを示している。この実験は、代替のアッセイを使用したELISAデータの正確さを実証している。
【0213】
(ビオチン化MCP-1 N1pEクローン抗体348/2C9と比較した抗MCP-1 N1pE抗体348/2C9の結合親和性の測定)
MCP-1 N1pE抗体348/2C9の抗原hMCP-1(1-38)に対する結合は以下の通りである:
化学量:1.83
解離定数:151nM
反応エンタルピー:-7.679kcal/mol
反応エントロピー:5.01cal/mol・K
ビオチン化反応後、誘導抗体(derivated antibody)の特性は以下のようにシフトした:
化学量:1.41
解離定数:444nM
反応エンタルピー:-11.44kcal/mol
反応エントロピー:-9.96cal/mol・K
活性な抗体タンパク質の消失及び親和性の低下が、ELISA実験(実施例16)に使用された抗体濃度の増加によって補償された。
【0214】
(マウス液体試料中のmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
ビオチン化MCP-1-N1pE抗体の適用により、マウス液体試料中の未知の抗原に対する抗マウスIgG-HRP複合体の潜在的な交差反応性が低下する。ビオチン化MCP-1 N1pE抗体は、活性が30%低下した(図25)。これは、標準ペプチド濃度を3000pg/mlに増加させることによって補償することができる(図24)。
【0215】
(チオグリコール酸及び異なる濃度のQCIで処置したマウスにおけるmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定)
in vivoでのmMCP-1 N1pE/mMCP-1の比に対するQC阻害剤投与の影響をさらに調べるために、QCIを、チオグリコール酸誘発腹膜炎に適用した。
mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の決定の他、腹腔洗浄液の細胞成分を、浸潤する単球(Moma2陽性単球/マクロファージ)を特に重点を置いて決定した。
この実験では、QCIの適用後に、mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比が用量依存的に低下した(図23に示されている)。さらに、mMCP-1 N1pEレベルと単球の腹膜への侵入との関係を実証した(図23B)。mMCP-1 N1pE/mMCP-1の比の低下により、腹膜に浸潤する単球の数が減少した。
【0216】
このような単球の動員は、例えば、限定されるものではないが、膵炎、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、及び再狭窄などのいくつかの炎症性疾患の一般的な特徴である。
【0217】
この実験は、バイオマーカーとしてのMCP-1 N1pE/MCP-1の比の適用性を立証し、MCP-1の単球動員能力をモニタリングする。さらに、MCP-1 N1pE/MCP-1の比の測定は、様々な炎症性疾患へのQC阻害剤の適用におけるQC阻害剤の能力の特徴付けの方法も提供する。
【0218】
(10人の健常ボランティア由来のヒトCSF及び血清試料中のMCP-1及びMCP-1 N1pEのELISA測定)
MCP-1及びMCP-1 N1pEの濃度を、アッセイ内変動が1.8%の1枚のプレート及びアッセイ内変動が2.8%の2枚のプレートで決定した。これは、ヒトCSF及び血清試料の分析についてロバスト性が高いことを示している。得られたELISAシグナルは、全hMCP-1 ELISAのLOQよりも12倍高く、かつhMCP-1 N1pE ELISAのLOQよりも6倍高く、処置又は疾患関連効果を観察する際の、QC阻害剤の存在下又は非存在下での基準MCP-1レベルの尺度を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性疾患もしくは炎症関連疾患の診断もしくはモニタリング、又はそれらの治療に対する応答の方法であって、生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記決定する工程が:
(a)生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の第1の濃度(Ca)を決定する工程;
(b)該生体試料中の全MCP-1の第2の濃度(Cd)を決定する工程;及び
(a)該第1の濃度(Ca)の値を該第2の濃度(Cd)の値で除して、Ca/Cdの比を決定する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記Ca/Cdの比が、50%、70%、又は85%である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)が:
(i)生体試料をMCP-1に特異的な捕捉用抗体に接触させる工程、
(i)N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な検出用抗体を適用する工程、
(iii)得られた免疫複合体を検出する工程、及び
(ii)捕捉されたN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1複合体を定量する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な前記検出用抗体が:
348/1D4 (寄託番号:DSM ACC 2905);
348/2C9 (寄託番号:DSM ACC 2906);
332/4B8 (寄託番号:DSM ACC 2907);及び
332/4F8 (寄託番号:DSM ACC 2908)からなる群から選択されるハイブリドーマ細胞株によって産生されるモノクローナル抗体を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な前記検出用抗体が、348/2C9 (寄託番号:DSM ACC 2906)から選択されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるモノクローナル抗体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)が:
(i)生体試料をMCP-1に特異的な捕捉用抗体に接触させる工程、
(ii)MCP-1に特異的な検出用抗体を適用する工程、
(iii)得られた免疫複合体を検出する工程、及び
(iv)捕捉されたMCP-1複合体を定量する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
MCP-1に特異的な前記捕捉用抗体が:
ポリクローナル抗血清ヤギ抗hMCP1-AF (R&D Systems, Minneapolis, USA);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab18072 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab9669 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab18072 (Abcam, Cambridge, UK);
ヤギMCP-1抗体(C-17): sc-1304 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA);
ポリクローナル抗血清ウサギ抗mJE (Peprotech, Hamburg, Germany);
抗mMCP-1ウサギポリクローナル抗体ab9899 (Abcam, Cambridge, UK);
抗MCP-1ウサギポリクローナル抗体ab7202 (Abcam, Cambridge, UK);及び
ラットモノクローナルMCP-1抗体(JJ5): sc-74215 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
MCP-1に特異的な前記捕捉用抗体が、ポリクローナル抗血清ヤギ抗hMCP1-AFを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
MCP-1に特異的な前記検出用抗体が:
マウス抗hMCP-1 (Peprotech, Hamburg, Germany);
抗MCP-1マウスモノクローナル抗体ab17715 (Abcam, Cambridge, UK);
マウスモノクローナルMCP-1抗体sc-32819 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA);
抗マウスMCP-1 (R&D Systems, Minneapolis, MN USA);
ハムスターモノクローナルMCP-1抗体ab21397 (Abcam, Cambridge, UK);
ラットモノクローナルMCP-1抗体ab8101 (Abcam, Cambridge, UK);及び
ラットモノクローナルMCP-1抗体(JJ5): sc-74215 (Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz, USA)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記複合体の前記検出工程が、特に各検出用抗体と反応する二次抗体を使用して行われる、請求項4〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記二次抗体が、抗マウス抗体又は抗ウサギ抗体である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記二次抗体が抗マウス抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記二次抗体が標識されている、請求項11〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記二次抗体が、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記検出された免疫複合体が定量される、請求項4〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記捕捉された複合体が:ELISA、例えば、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、逆ELISA、酵素結合免疫吸着スポットアッセイ;フローサイトメトリー;Multiplex Assay Systems;免疫組織化学;免疫沈降;及びウエスタンブロット分析からなる群から選択される定量手段によって定量される、請求項4〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記捕捉された複合体が、定量手段としてサンドイッチELISAによって定量される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料が、血液、血清、尿、脳脊髄液(CSF)、血漿、リンパ液、唾液、汗、胸膜液、滑液、涙液、胆汁、及び膵臓分泌液からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項記載の使用又は方法。
【請求項20】
前記生体試料が血清である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
生体試料中のグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性、並びにQC阻害剤の適用による治療におけるグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の代理マーカーとしての有効性を決定する方法。
【請求項22】
生体試料中のMCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する方法であって:
(a)生体試料中のN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の第1の濃度(Ca)を決定する工程;
(b)該生体試料中の全MCP-1の第2の濃度(Cd)を決定する工程;及び
(c)該第1の濃度(Ca)の値を該第2の濃度(Cd)の値で除して、Ca/Cdの比を決定する工程を含む、前記方法。
【請求項23】
グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤をスクリーニングする方法であって:
(a)MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む対照試料をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程;
(b)MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む混合物並びにグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤と共に対照試料をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含み;
該工程(a)に対する該工程(b)におけるN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1:全MCP-1の比の低下が、グルタミニルシクラーゼの阻害を示す、前記方法。
【請求項24】
グルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤の有効性を測定する方法であって、MCP-1及びグルタミニルシクラーゼ(QC)を含む混合物と共にグルタミニルシクラーゼ(QC)阻害剤をインキュベートして、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法。
【請求項25】
炎症性疾患又は炎症関連疾患を診断するキットであって、N末端ピログルタミン酸修飾MCP-1に特異的な捕捉用抗体、MCP-1に特異的な捕捉用抗体、及び請求項1〜20のいずれか1項記載の方法に従って該キットを使用するための取扱説明書を含む、前記キット。
【請求項26】
炎症性疾患もしくは炎症関連疾患を有する、該疾患の疑いがある、又は該疾患に罹りやすい対象における治療効果をモニタリングする方法であって、被験者由来の生体試料において、請求項1〜20のいずれか1項記載の、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、前記方法。
【請求項27】
被験者から2回以上にわたって採取された生体試料において、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を決定する工程を含む、請求項1〜20又は26のいずれか1項記載の診断又はモニタリング方法。
【請求項28】
2回以上にわたって採取された前記生体試料において、MCP-1の総濃度に対するN末端ピログルタミン酸修飾MCP-1の割合を比較する工程を含む、請求項27記載の診断又はモニタリング方法。
【請求項29】
前記炎症性疾患又は前記炎症関連疾患が、神経変性疾患、慢性及び急性炎症、線維症、癌、代謝病、他の炎症性疾患、又は高血圧症及び肥満に関連した病状から選択される、請求項1〜28のいずれか1項記載の使用、方法、又はキット。
【請求項30】
アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、喘息、遅延型過敏反応、膵炎、アルツハイマー病、肺線維症、腎線維症、妊娠中毒症、移植片拒絶反応、神経因性疼痛、糖尿病性ネフロパシー、大腸炎、脳卒中、AIDS、及び腫瘍の検出並びに診断のための請求項29記載の使用、方法、又はキット。
【請求項31】
アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄、及び膵炎の検出並びに診断のための請求項29又は30記載の使用、方法、又はキット。
【請求項32】
アルツハイマー病又は関節リウマチの検出及び診断のための請求項29〜31のいずれか1項記載の使用、方法、又はキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【公表番号】特表2013−519891(P2013−519891A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553327(P2012−553327)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052398
【国際公開番号】WO2011/101433
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(505403119)プロビオドルグ エージー (39)
【Fターム(参考)】