説明

ピロメテン誘導体の製造方法

【課題】リン配位体の生成がなく、安全性に優れたピロメテン誘導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】メタンスルホン酸無水物の存在下で、特定のピロール誘導体と酸ハロゲン化物を反応させることにより、ピロメテン誘導体を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光材料、レーザー用色素、顔料などの電子情報材料の中間体として有用なピロメテン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピロメテン誘導体は有機電界発光素子の発光材料として有用である。中でも、ピロメテン金属錯体は高輝度、高発光効率の発光を得ることができるため(例えば、特許文献1〜4参照)、その中間原料となるピロメテン誘導体を高純度でかつ安全に製造されることが望まれている。
【0003】
ピロメテン誘導体の合成方法としては、ホルミルピロール誘導体とピロール誘導体を脱水縮合剤の存在下で縮合して製造する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。中でも、脱水縮合剤としてオキシ塩化リンを用いる方法が広く用いられている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Recl.Trav.Chim.Pays−Bas 104,288,(1985)
【非特許文献2】“ジャーナル オブ オルガニック ケミストリー”,2007年,第72巻,第1号,p.269-272
【特許文献1】特開平9−289081号公報
【特許文献2】特開2000−208265号公報
【特許文献3】特開2003−12676号公報
【特許文献4】特開2005−53900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オキシ塩化リンを用いた従来の製造方法によれば、目的物であるピロメテン誘導体に加えてリン配位体が副生成物として得られる。このリン配位体とピロメテン誘導体は分離が困難である。そのため、目的物であるピロメテン誘導体を高純度で得られないという課題があった。また、オキシ塩化リンは強い毒性を有しているため、安全性に課題があった。
【0006】
本発明は前述の課題を解決し、リン配位体の生成がなく、安全性に優れたピロメテン誘導体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(4)で表わされるピロメテン誘導体の製造方法であって、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(1)及び(2)で表されるピロール誘導体と一般式(3)で表わされる酸ハロゲン化物を反応させることを特徴とするピロメテン誘導体の製造方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)、(2)及び(4)中のR〜R は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(3)及び(4)中のRは水素、アルキル基、アリール基並びにアラルキル基の中から選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(3)中のXはハロゲンである。)
また本発明の別の態様は、一般式(7)で表わされるピロメテン誘導体の製造方法であって、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(5)で表されるピロール誘導体と一般式(6)で表されるピロール誘導体を反応させることを特徴とするピロメテン誘導体の製造方法である。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(5)及び(7)中のR〜R10、一般式(6)及び(7)中のR12〜R14 は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(5)及び(7)中のR11は水素、アルキル基、アリール基並びにアラルキル基の中から選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、毒性の強いオキシ塩化リンを使用することなく、有機電界発光素子の発光材料として有用であるピロメテン誘導体を製造することができる。また、リン配位体の生成がないため、従来法に比べ収率よくピロメテン誘導体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について詳細に説明する。本発明の第1の態様においては、前記一般式(1)、(2)で表されるピロール誘導体と一般式(3)で表わされる酸ハロゲン化物を反応させることにより、一般式(4)で表わされるピロメテン誘導体を製造する。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(1)、(2)及び(4)中のR〜R は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0016】
これらの置換基のうち、アルキル基とはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、炭素数1〜16のものが好ましい。
【0017】
アラルキル基とは、ベンジル基、フェニルエチル基などの脂肪族炭化水素を介した芳香族炭化水素基を示す。
【0018】
アリール基とは、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基、ブチルフェニル基、メトキシフェニル基などの芳香族炭化水素基を示し、これは無置換でも置換されていても構わない。置換基としては、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基、またはシアノ基などが挙げられる。アルコシキ基とは、例えばメトキシ基などのエーテル結合を介した脂肪族炭化水素基を示す。
【0019】
隣接置換基との間に形成される縮合環とは、任意の隣接する2置換基(例えば一般式(1)のRとR)が互いに結合して、共役または非共役の縮合環を形成したものを示す。また、ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0020】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アシル基とは、例えばホルミル基、アセチル基などを示す。エステル結合を有する基とは、例えばアセチル基が置換したメチル基などを示す。
【0021】
上記の中でも、R〜R はアリール基または隣接置換基との間に形成される縮合環であることが好ましい。
【0022】
また、一般式(1)で表わされる化合物と一般式(2)で表わされる化合物が異なる場合には、得られる一般式(4)で表されるピロメテン誘導体には、(1)同士が反応したもの、(2)同士が反応したもの及び(1)と(2)の交差で反応したものの混合物が得られる可能性がある。これに対し、一般式(1)で表わされる化合物と一般式(2)で表わされる化合物が同じ化合物の場合は、単一のピロメテン誘導体が得られるので、より好ましい。
【0023】
一般式(1)または(2)で表されるピロール誘導体としては、次のようなものが挙げられる。
【0024】
【化4】

【0025】
これらの化合物は、例えば特開2006−298902号公報に記載のように、ヒドラジニウム誘導体をターシャリーブトキシカリウムなどの金属アルコキシドで処理することにより製造される。
【0026】
また、一般式(3)及び(4)中のRは水素、アルキル基、アリール基並びにアラルキル基の中から選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲン、またはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基、またはシアノ基で置換されていてもよい。これらの置換基の説明は前記と同じである。中でも、Rはアリール基であることが好ましい。また、一般式(3)においてXはハロゲンであるが、反応性および試薬の入手の容易さの観点から、Xは塩素であることが好ましい。
【0027】
一般式(1)及び(2)で表されるピロール誘導体と一般式(3)で表わされる酸ハロゲン化物を反応させる方法の具体例としては、[1]最初からピロール誘導体(1)、ピロール誘導体(2)、酸ハロゲン化物(3)とメタンスルホン酸無水物を溶媒に加え反応させる方法、[2]まずピロール誘導体(1)、酸ハロゲン化物(3)、メタンスルホン酸無水物を溶媒に加えて反応させてから、単離せずにピロール誘導体(2)を加えてさらに反応させる方法、[3]まずピロール誘導体(1)、ピロール誘導体(2)、メタンスルホン酸無水物を溶媒に加え、酸ハロゲン化物(3)を徐々に添加しながら反応させる方法などが利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明では、メタンスルホン酸無水物を酸触媒として用いることが特徴である。酸触媒としてトリクロロ酢酸クロライドおよびトリクロロ酢酸無水物を用いると副生物が約40%生成する。また、トリフルオロメタンスルホン酸を用いると反応の進行が途中で止まる。メタンスルホン酸クロライドおよびトシルクロライドを用いた場合、反応は全く進行しない。以上のようにメタンスルホン酸無水物以外では良好な結果が得られず、メタンスルホン酸無水物を用いたときのみ本発明の効果が得られる。
【0029】
本発明のピロメテン誘導体の製造方法を詳述する。例えば、前述したピロール誘導体(1)、(2)、酸ハロゲン化物(3)及びメタンスルホン酸無水物を溶媒に溶解もしくは分散し、加熱攪拌するなどの方法により反応させる。
【0030】
各成分の混合比は、1当量のピロール誘導体(1)に対して、1〜5当量のピロール誘導体(2)、0.9〜1.5当量の酸ハロゲン化物(3)、1〜10当量のメタンスルホン酸無水物を反応させることが好ましい。さらには、1当量のピロール誘導体(1)に対して、1当量のピロール誘導体(2)、1〜1.2当量の酸ハロゲン化物(3)、1〜4当量のメタンスルホン酸無水物を反応させることがより好ましい。
【0031】
使用する溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限がないが、通常、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランなどのエーテル系溶媒もしくはベンゼン、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒が好ましく用いられる。上記溶媒の使用量としては、ピロール誘導体総重量に対して0.5〜20倍が好ましく、より好ましくは1.0〜10倍、さらに好ましくは2〜5倍である。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
反応温度は、反応が進行する限り制限は無いが、通常室温から150℃で実施される。より好ましくは50℃から130℃である。反応時間については、反応が進行する限り制限はないが、通常2時間以上実施される。より好ましくは4時間以上である。
【0033】
反応の雰囲気、圧力は特に限定されないが、通常1気圧の不活性ガス雰囲気で行う。反応は水を添加することにより停止させることができ、その後は抽出などの方法を用いてピロメテン誘導体を単離することができる。
【0034】
次に、本発明の第2の態様においては、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(5)で表されるピロール誘導体と一般式(6)で表されるピロール誘導体を反応させることにより、一般式(7)で表されるピロメテン誘導体を製造する。
【0035】
【化5】

【0036】
一般式(5)及び(7)中のR〜R10、一般式(6)及び(7)中のR12〜R14 は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲン、またはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基、またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0037】
また、一般式(5)及び(7)中のR11は水素、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲン、またはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基、またはシアノ基で置換されていてもよい。
【0038】
これらの置換基の説明は前記と同じである。中でも、R〜R10及びR12〜R14はアリール基または隣接置換基との間に形成される縮合環であることが好ましく、炭素及び水素のみを含んでいることが好ましい。また、R11はアリール基であることが好ましく、置換または無置換のフェニル基であることが特に好ましい。
【0039】
このように、ピロール誘導体の一方に一般式(5)で示されるようなケトン体を使用した場合は、改めて酸ハロゲン化物を添加する必要はなく、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(6)で表わされるピロール誘導体とケトン体(5)を反応させることにより一般式(7)で表わされるピロメテン誘導体を製造することができる。ケトン体(5)は、例えば前記非特許文献1に記載のように、一般式(1)で表されるピロール誘導体をカルボン酸の酸ハロゲン化物で処理するなどして製造される。必要であれば、本発明の第1の態様において中間生成物として得られる化合物を単離することにより、ケトン体(5)を得ることができる。一般式 (5)で表されるケトン体としては、次のようなものが挙げられる。
【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
合成法としては、[4]最初からケトン体(5)、ピロール誘導体(6)とメタンスルホン酸無水物を溶媒に加え反応させる方法、[5]まずケトン体(5)とメタンスルホン酸無水物を溶媒に加え、ピロール誘導体(6)を徐々に添加しながら反応させる方法などが利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明のピロメテン誘導体の製造方法を詳述する。例えば、前述したピロール誘導体(6)、ケトン体(5)及びメタンスルホン酸無水物を溶媒に溶解もしくは分散し、加熱攪拌するなどの方法により反応させる。
【0044】
各成分の混合比は、1当量のケトン体(5)に対して、0.5〜5当量のピロール誘導体(6)、1〜10当量のメタンスルホン酸無水物を反応させることが好ましい。さらには、1当量のケトン体(5)に対して、1〜1.5当量のピロール誘導体(6)、1〜4当量のメタンスルホン酸無水物を反応させることがより好ましい。使用する溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば特に制限がないが、通常、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソランなどのエーテル系溶媒もしくはベンゼン、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶媒が好ましく用いられる。
【0045】
上記溶媒の使用量としては、ピロール誘導体総重量に対して0.5〜20倍が好ましく、より好ましくは1.0〜10倍、さらに好ましくは2〜5倍である。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
反応温度は、反応が進行する限り制限は無いが、通常室温から150℃で実施される。より好ましくは50℃から130℃である。反応時間については、反応が進行する限り制限はないが、通常2時間以上実施される。より好ましくは4時間以上である。
【0047】
反応の雰囲気、圧力は特に限定されないが、通常1気圧の不活性ガス雰囲気で行う。反応は水を添加することにより停止させることができ、その後は抽出などの方法を用いてピロメテン誘導体を単離することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において用いた装置や分析条件は以下の通りである。
HPLC分析
機器:(株)島津製作所製 SHIMADZU SCL-10Avp(制御器)、SIL-10Avp(オートサンプラー)、LC-10Avp(ポンプ)×2、CTO-10Avp(カラムオーブン)、SPD-M10Avp(Diode Array Ditector)
カラム:(株)ワイエムシー製 YMC-Pack ODS-A A-303, S-5μm, 12nm, 250×4.6mmI.D.
カラム温度:45℃
移動相A:水
移動相B:アセトニトリル
流量:1ml/min.
B グラジエント:80%(0min.)→100%(15min.)→100%(30min.)
検出器:UV at 254nm
注入量:5μL
サンプル:適量の試料をTHFに溶解
UV測定
機器:(株)島津製作所製 SHIMADZU SPD-M10Avp(Diode Array Ditector)(上記HPLC機器に内蔵)
Scan Range:200-800nm
実施例1
2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)ピロール277mg(1mmol)、4-メトキシベンゾイルクロライド171mg(1mmoL)および1,2-ジクロロエタン10mLを反応容器に仕込み、室温で5分攪拌した。そこにメタンスルホン酸無水物174mg(1mmol)を加えた。80℃、6時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロール466mg(1mmoL) 、2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)およびトルエン5mLを反応容器に仕込み、室温で5分攪拌した。そこにメタンスルホン酸無水物384mg(2mmol)を加えた。80℃、10時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メトキシベンゾイル)-ピロール 461mg(1mmol)、2,4-ビス(4-メトキシフェニル)ピロール 277mg(1mmol)及びトルエン 5mlを反応容器に仕込み、メタンスルホン酸無水物190mg(1.1mmol)を加えた。還流攪拌を5時間行った後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-t-ブチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-メチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0054】
実施例7
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(ナフタレン-1-イル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0055】
実施例8
ピロール体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロールに、ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(4-フルオロベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0056】
実施例9
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2,4-ジフルオロベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例8と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0057】
実施例10
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(3-メトキシベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例8 と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例11
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(3,5-ジメトキシベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例8と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0059】
実施例12
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(3-メチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例8と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0060】
実施例13
ケトン体を2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(3,5-ジメチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例8と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0061】
実施例14
ケトン体を2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(4-メトキシベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例15
ケトン体を2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0063】
実施例16
ケトン体を2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(4-t-ブチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例17
ケトン体を2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(4-メチルベンゾイル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例18
ケトン体を2,4-ビス(4-メトキシフェニル)-5-(ナフタレン-1-イル)-ピロールに変更した他は、実施例3と同様に操作した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例19
2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール664mg(2mmoL)、2-メトキシベンゾイルクロライド171mg(1mmoL)および1,2-ジクロロエタン10mLを反応容器に仕込み、室温で5分攪拌した。そこにメタンスルホン酸無水物174mg(1mmol)を加えた。80℃、6時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例20
2-(4-メトキシフェニル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル) -ピロール 440mg(1mmol)、2-(4-メトキシフェニル)-4-(4-t-ブチルフェニル)ピロール 305mg(1mmol)及びトルエン 5mlを反応容器に仕込み、メタンスルホン酸無水物190mg(1.1mmol)を加えた。還流攪拌を6時間行った後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール 4.96g(15mmol)、1,2-ジクロロエタン 25mL及びベンゾイルクロリド 2.11g(15mmol)を反応容器に仕込み、16時間還流攪拌した。一旦室温まで冷却した後、2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール 4.96g及びオキシ塩化リン 1.4mL(15mmol)を反応液に添加し、23時間還流攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。本反応においては、ピロメテン誘導体以外にリン配位体が副生成物として得られた。
【0069】
反応液を重曹水で洗浄後、溶媒を留去して粗製物を得た。カラムクロマトグラフィーで成分を分離した。分離した成分についてMSスペクトルおよびUVスペクトルを測定した。なお、MSスペクトルの測定条件は以下の通りである。
【0070】
機器:JEOL製 JMS-700 MStation
Inert Source:Direct
Ionization Mode:EI+
Probe Temp.:50--->500(64℃/min.)
Scan Range:m/z 10.000-1000.000
Scan Speed:3.0 sec.
Cycle Time:3.0 sec.
Ion. Voltage:70eV
Ion. Current:300uA
Accel. Voltage:5.0kV
Mass Resolution:1000
Magnetic Field:HS
Maltiplier Voltage:1.0kV
Preamp Gain:F/16
得られたピロメテンのMSスペクトルは、calc.m/z=748、 obs m/z=748であり、UVスペクトルは、λmax=240,300,420,635 nmであった。また、リン配位体のMSスペクトルは、calc.m/z=810, obs m/z=81であり、UVスペクトルは、λmax 270,315,400,570 nmであった。
【0071】
比較例2
2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール 55.0g(166mmol) 、1,2-ジクロロエタン 117mL及び4-メトキシベンゾイルクロリド14.4g(84.4mmol)を反応容器に仕込み、85℃で4時間攪拌した。一旦室温まで冷却後オキシ塩化リン 12.5g(81.5mmol)を添加した。80℃に再加熱し4時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0072】
比較例3
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロール466mg、(1mmoL)及び2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)、ジクロロエタン(10mL)を反応容器に仕込み、室温で攪拌した。そこにオキシ塩化リン153mg(1mmol)を加えた。80℃、3時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0073】
比較例4
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロール466mg、(1mmoL)及び2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)、ジクロロエタン(10mL)を反応容器に仕込み、室温で攪拌した。そこにトリフルオロメタンスルホン酸無水物282mg(1mmol)を加えた。80℃、4時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
比較例5
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロール466mg、(1mmoL)及び2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)、ジクロロエタン(10mL)を反応容器に仕込み、室温で攪拌した。そこにトリクロロ酢酸無水物308mg(1mmol)を加えた。80℃、4時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0075】
比較例6
2,4-ビス(4-t-ブチルフェニル)-5-(2-メトキシベンゾイル)-ピロール466mg、(1mmoL)及び2,4−ビス(4-t-ブチルフェニル)ピロール332mg(1mmoL)、ジクロロエタン(10mL)を反応容器に仕込み、室温で攪拌した。そこにメタンスルホン酸クロライド115mg(1mmol)を加えた。80℃、4時間攪拌した後、反応液約5mgを採取してTHF1mlに溶解し、HPLC分析により生成物の同定と収率測定を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(4)で表わされるピロメテン誘導体の製造方法であって、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(1)及び(2)で表されるピロール誘導体と一般式(3)で表わされる酸ハロゲン化物を反応させることを特徴とするピロメテン誘導体の製造方法。
【化1】

(一般式(1)、(2)及び(4)中のR〜R は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(3)及び(4)中のRは水素、アルキル基、アリール基並びにアラルキル基の中から選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(3)中のXはハロゲンである。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるピロール誘導体と一般式(2)で表されるピロール誘導体が同じ化合物である請求項1記載のピロメテン誘導体の製造方法。
【請求項3】
一般式(3)及び(4)中のRがアリール基であることを特徴とする請求項1または2に記載のピロメテン誘導体の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)、(2)及び(4)中のR〜Rがアリール基もしくは隣接置換基との間に形成される縮合環であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載のピロメテン誘導体の製造方法。
【請求項5】
一般式(3)中のXが塩素である請求項1〜4のいずれか記載のピロメテン誘導体の製造方法。
【請求項6】
一般式(7)で表わされるピロメテン誘導体の製造方法であって、メタンスルホン酸無水物の存在下で、一般式(5)で表されるピロール誘導体と一般式(6)で表されるピロール誘導体を反応させることを特徴とするピロメテン誘導体の製造方法。
【化2】

(一般式(5)及び(7)中のR〜R10、一般式(6)及び(7)中のR12〜R14 は同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び隣接置換基との間に形成される縮合環からなる群より選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。
一般式(5)及び(7)中のR11は水素、アルキル基、アリール基並びにアラルキル基の中から選ばれる。ここで、アルキル基上の水素はハロゲンまたはアルコキシ基で置換されていてもよく、アリール基上の水素はハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル結合を有する基またはシアノ基で置換されていてもよい。)
【請求項7】
一般式(5)及び(7)中のR11がアリール基であることを特徴とする請求項6記載のピロメテン誘導体の製造方法。
【請求項8】
一般式(5)及び(7)中のR〜R10及び一般式(6)及び(7)中のR12〜R14がアリール基もしくは隣接置換基との間に形成される縮合環であることを特徴とする、請求項6または7記載のピロメテン誘導体の製造方法。