ピロールアミド4量体を含む2’ーデオキシグアノシンハイブリッド化合物を組み込んだ修飾一本鎖DNAオリゴマー
【課題】優れた配列選択性を有する遺伝子治療等に有効な修飾ssDNAの提供。
【解決手段】修飾ssDNAはピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンで表されるMBGポリアミドハイブリッド化合物を組み込んだものからなる。MBGポリアミドハイブリッド化合物と結合した修飾DNAオリゴマーは、円偏光二色性(CD)スペクトルおよび融解温度(Tm)分析から、該ハイブリッド結合オリゴマーが、ピロールポリアミド適合部位を含む相補性DNAに対して非常に高い認識能を有することからなる。
【解決手段】修飾ssDNAはピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンで表されるMBGポリアミドハイブリッド化合物を組み込んだものからなる。MBGポリアミドハイブリッド化合物と結合した修飾DNAオリゴマーは、円偏光二色性(CD)スペクトルおよび融解温度(Tm)分析から、該ハイブリッド結合オリゴマーが、ピロールポリアミド適合部位を含む相補性DNAに対して非常に高い認識能を有することからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドとMGBポリアミド(配列選択的副溝結合型(Minor Groove Binders : MGBs)ポリアミド)からなるハイブリッド化合物を組み込んでなる修飾一本鎖DNAオリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の分子生物学、遺伝子技術の最近の発展は目覚しいものがある。特に、ゲノム科学発達に伴い、ヒトゲノムが解析され、さらにポストゲノムとして悪性新生物や病因ウイルスの遺伝子の解析が進んでいる。これまで原因がわからなかつた多くの疾患の原因遺伝子が次々に同定され、それらの発症機構が分子レベルで解明されるようになった。このような遺伝子治療の考えは、遺伝子病の存在が知られるようになった1950年代からあったが、その後の組み換えDNA技術や遺伝子導入技術の発達により、徐々に実現可能な治療手段として現実的なものになりつつある。
【0003】
遺伝子治療の方法としては、下記3つの方法が知られている。
(1)遺伝子そのものを直接操作する方法;
これは、異常遺伝子はそのままにして、正常な遺伝子を新たに細胞に加える方法であり、早い時期から具体化され、現在も実用化が急速に進められている。過去に行われた「ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症」の遺伝子治療がこの方法に該当する。その他、家族性高コレステロール血症、嚢胞性線維症、Fanconi貧血等の遺伝子治療に対しても、それぞれの正常遺伝子を細胞に付加する手段の検討がなされている。
遺伝子治療のなかでは、比較的単純な方法であるといえるが、異常遺伝子が有害タンパク質を作らないこと、あるいは遺伝子が必要な働きをしないために起こる病気等、適用のための条件には制限がある。
(2)異常遺伝子の働きを止める方法;
所謂「アンチセンスDNA」療法と呼ばれる、特定の標的遺伝子配列に対して結合する人工的な遺伝子配列を該異常遺伝子に結合させて、該異常遺伝子の転写を阻止して該異常遺伝子の機能を失活させるものである。
(3)遺伝子の異常な部分を切り取る方法;
「制限酵素」を用いて異常遺伝子を切り取る方法である。ただし、現在の技術では、制限酵素は標的部位を自在に切り取れるわけではなく、切取り位置には制限がある。したがって、現在のレベルでは実際の治療への応用は困難である。
上記(2)の方法は、アンチセンス法、アンチジーン法と呼ばれるものであり、各種癌疾患やウイルス性疾患の遺伝子治療方法として期待されている。
このことから、疾患原因である特定の標的遺伝子配列を特異的に認識し、かつ、その発現を阻害できる化合物の開発が望まれている。
【0004】
このような化合物に求められる特性は、下記のとおりである。
1.各々の細胞内の標的遺伝子を特定するために十分な長さの塩基配列を厳密に識別できること。
2.標的塩基配列に対してのみ高い親和性を有すること。
3.化学的合成が容易であること。
4.生体内の各種酵素存在下において安定であること。
5.細胞毒性が低いこと。
6.細胞膜、核膜を容易に透過できること。
7.一度の作用で失活せず、繰り返し多数の細胞に作用(ターンオーバー)すること。
また、標的となる塩基配列を持つ遺伝子としては、
A.二重鎖DNA(複製および転写の開始を阻害:アンチジーン法)、
B.一本鎖DNA(転写の阻害:アンチセンス法)、
C.mRNA(翻訳の阻害:アンチセンス法、RNAi法)
などを挙げることができる。
【0005】
上記アンチセンス法やアンチジーン法は、標的mRNA、一本鎖や二重鎖DNAに対して何らかの修飾を施したDNAを結合させることで、複製、転写、翻訳を阻害、あるいはRNase Hによる分解を促すことにより、標的mRNAを持つ細胞や細菌、さらにはウィルスに対しても増殖抑制効果を発揮する方法である。
アンチセンス法に用いられる化合物としては、リン酸基の酸素原子1つを同族原子である硫黄に置き換えたホスホロチオエート型のオリゴヌクレオチドが特に広く研究されている。これは(1)RNase Hによる分解活性、(2)ヌクレアーゼ耐性、(3)細胞膜透過性、(4)水溶性において優れており、その他の糖部や塩基部の修飾と組み合わせて用いることも可能であり、利便性が高い。
FDA(米国食品医薬品局)により初のアンチセンスドラッグとして,サイトメガロウィルスによる網膜炎に対する適用で認可されたものもホスホロチオエート型オリゴヌクレオチド((21-mer)21量体)(Vitravene(登録商標))であり、最近では筋ジストロフィーに対する効果も報告されている。しかしながら、治療薬のホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドには、天然型のDNAと比較して二重鎖の熱力学的安定性が低い、塩基配列の認識能力が十分ではない、生体内のたんぱく質との相互作用が強く、アンチセンスとしての活性に基づかない生理活性を示すことがある等の問題点がある。他にも糖部フラノース環のパッカリングを3’-endo型(N型)に固定しmRNAとの親和性を高めたBNA (Bridged ring Nucleic Acid)や、塩基部位にスタッキング効果を増強させるような置換基を導入したもの、主鎖を糖ではなくアミド結合の高分子に置き換えたPNAなどが治療薬の候補として挙げられているが,現段階ではまだ研究段階である。
DNAを用いる治療法は、遺伝子以外に転写調節因子と呼ばれるタンパク質の配列認識部位を標的とし、その作用を阻害するデコイ(おとり)型DNAを用いる遺伝子治療にも関心が集まっている。
【0006】
ところで、近年非常に注目を集めている遺伝子を用いた技術が、RNA干渉 (RNA interference;RNAi)法である。これは生体内において長鎖の二重鎖RNA(dsRNA) が、Dicerと呼ばれる酵素により21~23塩基対からなる短い二重鎖RNA(small interfering RNAs(RNA誘導性サイレンシング複合体);siRNAs)に切断されることから始まり、RISC (RNA-induced silencing complex)と呼ばれる複合体の形成、取り込まれた二重鎖siRNAsのRNAへリカーゼによる一本鎖siRNAへの変換、一本鎖siRNAをガイド分子とする標的mRNAへの配列選択的なRISCの結合、RISCが結合したmRNAのRNase Hによる切断に伴う遺伝子発現の抑制という一連の流れを利用したものである。実際の応用には、細胞内に任意の配列を持つdsRNAを直接導入するか、ベクターを用いてin vivoで発現させればよく、簡便に利用できるものと思われるが、RNAの安定性に多少の問題は残る。
このように、核酸あるいはその誘導体は元来から有する塩基配列選択性的遺伝子への親和性を生かし、医薬品へと応用していくことが可能である.
【0007】
一方,上記のような核酸誘導体ではないものの、塩基配列選択的に遺伝子に作用する化合物もいくつか知られている。細菌から単離された抗生物質である下記式で示されるディスタマイシンAは、配列にアデニン(A)もしくはチミン(T)が3個以上連続した二重鎖DNAの熱的安定性を向上させる。
【0008】
【化2】
【0009】
ディスタマイシンAは、その弓なりの分子構造がB型DNAの副溝(minor groove)の湾曲にマッチし、内側を向いたわずかに酸性度を有するNH基がアデニンのN3位、あるいはチミンのC2位のカルボニル酸素との水素結合を介することで分子間の結合を安定化させている。配列にグアニン(G)−シチジン(C)塩基対が存在すると、副溝側に突き出したグアニンのC2位のアミノ基と1-メチルピロール(Py)のC3位の水素の間に立体的な障害があり、副溝に対する親和性が低下することから塩基配列選択性が現れている。
【0010】
その後の研究からディスタマイシンAは、1つの特異的に認識するサイトに対して逆平行に2分子配位していることが明らかにされ、さらに逆平行に配向したディスタマイシンA誘導体の1-メチルピロールを1-メチルイミダゾール(Im)や3-ヒドロキシ-1-メチルピロール(Hp)に置き換えることによって、4つの塩基対の組み合わせ (A-T, T-A, G-C, C-G)全てを認識することが可能になった(例えば、非特許文献1)。
また、Dervanらは、逆平行に配向するPy-Imポリアミド化合物をリンカーで結合し二重鎖DNAへの配列選択性と親和性を向上することに成功している(例えば、非特許文献2)。
【0011】
【化3】
【0012】
更に、最近は、任意の塩基配列を認識するポリアミド化合物は固相法による自動合成法が確立されたことにより合成が容易に行えるようになり、標的とする塩基配列に適合する化合物を容易に合成できる利便性の高さ、さらに核酸誘導体で問題となるヌクレアーゼに対する安定性、細胞膜や核膜に対する透過性も優れていることから、新たな塩基配列認識分子として関心が高まっている。
このポリアミド化合物を用いた研究としては、配列選択的副溝結合型(Minor Groove Binders;MGBs)ポリアミドにDNAへ影響を与える機能性分子を結合させ、その機能を塩基配列選択的に発現させようとする試みが数多くなされている。代表的な例はブレオマイシン、ナイトロジェンマスタード、シクロプロピルインドール、DNAインターカレーター、デュオカルマイシンを機能性分子として用いたものである。その中でも、Sugiyamaらはデュオカルマイシンおよびその誘導体とMGBポリアミドのハイブリッド化合物を、任意の標的塩基配列に選択的に作用させることに成功している(非特許文献3)。このようにMGBポリアミドは機能性分子の持つ薬理活性を保持したまま、ユニークな塩基配列認識能を付加できることが明らかにされている。
本発明者らも、上記背景のもとにゲノム化学に基づく遺伝情報制御分子の創製を目的として、AAATT配列に対して高い親和性を有する、下記に示すような、2’-デオキシグアノシンのN2位にアミド結合を有するリンカーを介しピロールポリアミド3量体を導入したハイブリッド化合物(1)や、N-アルキル化によるリンカーを介しピロールアミド3量体を導入したハイブリッド化合物(20)を合成し、報告した。(非特許文献4、非特許文献5)
【0013】
【化4】
、
【0014】
【化5】
【0015】
また、本発明者らは、先に下記式(38)で示されるピロールアミド4量体構造を有するMGBポリアミドハイブリッド化合物の合成にも成功した。(非特許文献6参照)
【0016】
【化6】
【0017】
このようなヌクレオシドとMGBポリアミドとのハイブリッド化合物は、通常の核酸や抗癌剤などに用いられる修飾ヌクレオシドと同様に生合成経路でDNA内に取り込まれた場合、その近辺の配列にMGBポリアミドが特異的に認識するサイトが存在すると非常にタイトで安定した副溝への結合を形成することで二重鎖DNAの安定化を示し、そのDNAの複製や転写を阻害するものと考えられる。
一方、近辺にMGBポリアミドにとって特に認識しないサイトが存在した際には二重鎖の安定化作用を示さないことから複製や転写を阻害しないことが期待できる。また、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物が単体で二重鎖DNAに作用する場合には、ハイブリッド中のヌクレオシドがHoogsteen型の水素結合を形成し、さらにMGBポリアミドによる親和性、塩基選択性を発揮するようなアンチジーン的な作用を持つことが考えられる。
このようにMGBポリアミドのハイブリッド化合物ないしはこのようなMGBポリアミドのハイブリッド化合物を組み込んだDNAオリゴマーは、高い塩基配列認識能とMGBポリアミドの有する生体内酵素に対する高い安定性、優れた膜透過性といった特徴を併せ持ち、遺伝情報制御分子としての候補として期待できる。
なお、二重鎖の相対的安定性については、その二重鎖が解離するまで、デュプレックスを溶液中で加熱することによって、実験的に、判定される。二重鎖の量的安定性は、一般的に「融解温度」又はTmとして知られている、その塩基対の半分が融解した温度によって表わされる。実際には、これは、通常、温度を上昇させながら、核酸の溶液の紫外線吸収をモニタし、前記Tmを、260nmでの最大吸収量の半分での温度として示すことによって行われる。
【0018】
ハイブリッド化合物の安定性の増大、即ち、ハイブリダイゼーション度の増加は、同一の長さと配列の非共役結合オリゴヌクレオチドによって形成されるものとの比較に於ける、そのようなMGB−オリゴヌクレオチド共役物により形成されたハイブリッド二重鎖の融解温度(Tm;その塩基対の半分が分離した温度)の上昇によって示すことができる。
二つの核酸間のハイブリダイゼーションの強度又はハイブリッド安定性は、核酸二重鎖を、徐々に上昇する温度よって測定することが可能である。紫外線吸収度の測定量は、温度の関数として測定される。吸収度は、塩基対が解離しスタッキング相互作用(base stacking interaction)が失われた時に増加し、吸収度は、二重鎖が完全に解離した時に横ばい状態に達する。この種の分析から、複数のハイブリダイゼーション強度測定値を得ることができる。融解温度(Tm)は、二重鎖中の塩基対の半分が解離する温度として一般に定義される。
【非特許文献1】White, S.; Baird, E. E.; Dervan, P. B. Chem. Biol., 1997,4, 569
【非特許文献2】Trauger, J. W.; Baird, E. E.; Dervan, P. B. J. Am. Chem. Soc.,1996,118, 6160
【非特許文献3】Tao, Z.; Fujiwara, T.; Sugiyama, H. J. Am. Chem .Soc., 1999,121,4961
【非特許文献4】Y.; Ohba, Y.; Terui,K.; Kamaike, T.; Oshima, E.; Kawashima, NucleicAcids Symposium SeriesNo.48, 2004, p.55-56.
【非特許文献5】「第14回 アンチセンスシンポジウム講演要旨集」アンチセンスDNA/RNA研究会、平成16年12月2日、p55
【非特許文献6】日本薬学会第125年会要旨集 2005,p.66
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
MGBポリアミドは様々な機能性分子とハイブリッドさせることでそれらの持つ薬理活性を保持したままユニークな塩基配列認識能を付加することが可能である。さらに、MGBポリアミドはその高い塩基配列認識能に加え生体内酵素に対する高い安定性、優れた膜透過性を有するため、MGBポリアミドとのハイブリッド化合物ないしはこれを組み込んだ修飾DNAオリゴマーはこれら全ての特徴を併せ持つことが期待できる。
このようなハイブリッド化合物を組み込んだ修飾DNAオリゴマーは、標的遺伝子(ssDNA)およびmRNAに結合して安定な二重鎖を形成し、該異常遺伝子やmRNAの転写の阻止や昨機能を失活する作用(アンチセンス型アプローチ)および標的塩基配列を含むdsDNAを選択的に安定化させる作用(アンチジーン型アプローチ)が期待できる。
【0020】
ところで、本発明者らが前記ハイブリッド化合物(20)をオリゴマー合成する際に必要となるアンモニア処理に対する安定性の評価を行ったところ、TLC、1H-NMRによる検討において、アミド結合によるリンカーを介するハイブリッド化合物(1)のアンモニア処理で検出された2’-デオキシグアノシンは検出されなかった。このことから、N−アルキル化によるリンカーの結合へと結合様式を変換したことによりによりハイブリッド化合物のN2位でのアンモニア処理に対する安定化を高めることが可能であることが明らかになった。しかしながら、TLC上で(20)よりもRf値の低いスポットがわずかながら生じた。これは1H-NMRからN-末端のホルミル基が脱落したと思われる化合物と推測された。即ち、先の化合物20は、アンモニア処理において、2’-デオキシグアノシンは検出されないものの、N-末端のホルミル基の脱落が観察され、必ずしもその安定性が満足し得るものではないことが分かった。
このように、従来公知の修飾一本鎖DNAオリゴマーは、必ずしもその塩基配列選択能や安定性の点で満足し得るものではなかった。
したがって、本発明の目的は、MGBポリアミドハイブリッド化合物の性能を維持しつつ、オリゴマー合成時におけるアンモニア処理に対してより安定性の優れたMGBポリアミドハイブリッド化合物を組み込んだ修飾一本鎖DNAオリゴマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、先に見出したピロールアミド4量体構造を有するMGBポリアミドハイブリッド化合物(化合物38)と結合した修飾DNAオリゴマーを合成し、円偏光二色性(CD)スペクトルおよび融解温度(Tm値)分析から、該ハイブリッド結合オリゴマーが、ピロールポリアミド適合部位を含む相補DNAに対して非常に高い結合能と高い認識能を有していることを見出して本発明を完成した。
【0022】
本発明は、以下のとおりである。
【0023】
1.標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAの一部がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする修飾ssDNAオリゴマー。
2.ssDNAオリゴマーが8乃至23塩基である上記1に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
3.標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAが、その配列中に少なくとも1つのグアニン(G)と、アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むことを特徴とする上記1又は2に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
4.アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むssDNAが、3’ -TTTAA- 5’(該3’ -TTTAA- 5’中の1個又は2個のアデニン(A)又はチミン(T)はシトシン(C)で置換されてもよい)である上記3に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
5.ssDNA中のグアニン(G)がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする上記1乃至4のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
6.ピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物が下記式(38)で示される化合物である上記1乃至5のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【0024】
【化7】
【0025】
7.修飾ssDNAオリゴマーが、下記のいずれかの配列を含む上記1乃至6に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
(ここで、Mは上記6に記載の式(38)で示される化合物での置換を意味する。)
(1)3’-CGGTTTAAMGC-5’
(2)3’-CGGTTTACMGC-5’
(3)3’-CGGTTTCAMGC-5’
(4)3’-CGGTTCAAMGC-5’
(5)3’-CGGTCTAAMGC-5’
(6)3’-CGGCTTAAMGC-5’
又は
(7)3’-CGGTCTGAMGC-5’
8.上記1乃至7のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマーを有効成分とする医薬。
9.抗癌剤又は抗ウイルス剤である上記8に記載の医薬。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るオリゴマーは、ピロールアミド4量体−2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物を組み込むことによって極めて安定に合成することができ、また、後述の試験結果から明らかなとおり、MGBポリアミドの特異的に認識するサイトとの2塩基の違いを厳密に識別する能力を有し、かつ優れた結合能を備えている。したがって、本発明の修飾一本鎖DNAオリゴマーは、新規遺伝情報制御分子、遺伝子治療剤として、具体的には、各種の癌や白血病、エイズや肝炎などのウイルス性疾患、乾癬、クローン病、喘息、リウマチなどの治療剤としての有用性が大いに期待される。また、本発明は、新規の一連のアンチセンス剤またはアンチジーン剤を開発する基礎を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明者らは、ハイブリッド化合物をDNAに組み込む際の安定性を考慮し、N2位での結合様式をアミド結合からN-アルキル化による結合に変えることでDNA合成時の脱保護条件下で安定なハイブリッド化合物を設計し合成を行った。リンカーとして用いるジアミノプロパンの片側のアミノ基を選択的に保護するために、mono-Fmoc化試薬としてFmocフェニルカルボネートを合成し、これをジアミノアルカンに1当量だけ作用させた。その結果、一方のアミノ基を塩酸塩にすることで収率よくmono-Fmoc化することに成功した。本合成法はポリアミン化合物などの合成研究にも酸に安定な保護基の導入法として広く活用でき、その有用性は高いものと考えられる。続いてmono-Fmoc-ジアミノプロパンに対してMGBポリアミドを縮合し、Fmoc基の除去後、2-フルオロイノシン誘導体と反応させることで目的とするN-アルキル化により結合するハイブリッド化合物(N末端1-メチルピロール2-カルボニル体/ピロールアミド4量体)の合成を達成した。N-アルキル化により結合するハイブリッド化合物(ピロールアミド4量体)はDNA合成条件下で安定であったことから、ホスホロアミダイトに誘導してDNA合成(Phosphoramidite method)に組み込んだ。
本発明において使用する化合物(38)の製造方法は、以下のとおりである。詳細は参考例を参照されたい。
【0028】
先のハイブリッド化合物(1)や(20)では、アンモニア処理に対してピロール間のアミド結合それ自体は安定であった。これはアミドのπ結合がピロール環との共鳴により安定化しているものと考えられる。そこでハイブリッド化合物のその後のオリゴマー合成におけるアンモニア処理に対する安定性改善のために、ホルミル基にかわるN末端基として1−メチルピロールー2−カルボニル基をアミド結合により結合させることでアンモニア処理に対する安定化を図ろうと試みた。
【0029】
まず、化合物3を水酸化ナトリウム水溶液によりカルボン酸32へと変換し、これとピロールアミド3量体8からBoc基を除去した化合物と縮合させることにより化合物33を得る。次にエステル33を加水分解することにより化合物34へと変換した後、mono-Fmocジアミノプロパン26と縮合させることによって化合物35を得る。
【0030】
【化8】
【0031】
なお、Boc基で保護したピロールアミド3量体8は、化合物5のニトロ基を接触還元によりアミノ基とし、4−(tert−(ブトキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸6との縮合させることによりメチル 4{[4−(tert−ブチロキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル7とした。続いて、ピロールアミド2量体7のBoc基を酸性条件下で除去し、再びカルボン酸化合物6との縮合を行うことによりピロールアミド3量体8とした。
【0032】
【化9】
【0033】
上記合成法は、縮合試薬に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (EDCI) を用いたことにより、反応生成物の精製を酸−塩基による分液操作のみで行うことができるため、カラムクロマトグラフィーによる精製なしに目的とするピロールポリアミド3量体8を高収率で合成できる。
【0034】
続いて、化合物35のFmoc基をトリエチルアミンにて除去し2’-デオキシイノシン誘導体23のフッ素との置換反応を行うことにより化合物36を得る。最後に、化合物36のO6位2-(4-ニトロフェニル)エチル基および3’位ならびに5’位アセチル基を除去することでピロールアミド4量体を含む2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物38を得る。
【0035】
【化10】
【0036】
次に,このハイブリッド化合物38のオリゴマー合成におけるアンモニア処理の条件下での安定性の評価を行い、これが安定に存在することを確認する。そこでさらにこのハイブリッド化合物38をオリゴマーに導入するためにアミダイト化を行う。
【0037】
まず、化合物38に対して塩化ジメトキシトリチル(DMTr-Cl)を作用させ5'位水酸基を選択的に保護して39を得る。続いて2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトをテトラゾール存在下で反応させることで目的とする3’-ホスホロアミダイト40を得る。得られたアミダイト40は、周知のDNA自動合成法により、各種のDNAに導入することができる。
【0038】
【化11】
【0039】
ホスホルアミダイト法によって、標的DNAと相補的な配列を有する8-mer乃至23-mer、好ましくは11-merの一本鎖DNA(ssDNA11-mer)にハイブリッド化合物38を組み込むことが可能である。
【0040】
本発明の修飾一本鎖DNAオリゴマーは,安定剤,緩衝液等を用いてまたは用いずに医薬組成物を形成することにより,任意の標準的な手段により,投与(例えば,RNA,DNAまたは蛋白質)し,被験者に導入することができる。リポソームデリバリーメカニズムを利用することが望ましい場合には,リポソームを形成する標準的なプロトコルにしたがうことができる。本発明の組成物はまた,経口投与用には錠剤,カプセルまたはエリキシルとして;直腸投与用には座剤として;滅菌溶液として;注入投与の用には懸濁液として,および当該技術分野において知られる他の組成物として,処方し使用することができる。
【0041】
薬学的に有効な用量は,疾患状態の予防,発症の阻害,または治療(症状をある程度緩和し,好ましくはすべての症状を緩和する)に必要な用量である。薬学的に有効な用量は,疾患の種類,用いる組成物,投与の経路,治療する哺乳動物の種類,考慮中の特定の哺乳動物の物理学的特性,同時に投与される薬剤,および医薬の分野の当業者が認識するであろう他の因子によって異なる。一般に,負に荷電したポリマーの効力に依存して,0.1mg/kg−100mg/kg体重/日の活性成分を投与する。
【0042】
以下、実施例をもって具体的に説明する。
なお、本実験で用いた分析機器およびオリゴヌクレオチドは以下の通りである.
(1)1H核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド、重メタノール。
(2)13C核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド、重メタノール。
(3)31P核磁気共鳴スペクトル(31P-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド。
(4)質量スペクトル(MS);
・VG Auto
SpecE (Micro Mass)
・TSQ-700
(Thermoquest)
(5)元素分析;
・Elemental
Vavio EL
(6)薄層クロマトグラフィー(TLC);
・Merck
Kieselgel 60 F254 (上昇法によって展開)
・検出法:UV吸収(5% 硫酸−メタノール溶液を噴霧し、100〜150℃で加熱。アニスアルデヒド、エタノール、硫酸、水および酢酸の混合液に浸した後、100〜150℃で加熱。)
(7)カラムクロマトグラフィー;
・和光純薬工業 Wakogel
C-300
・関東化学シリカゲル 60N
(8)融点測定;
・柳本製作所のミクロ融点測定装置(未補正値を記載)
(9)HPLC;
・システム:Waters
600E
・UV検出器:Waters 490E
・記録計:Waters
741
・カラム:Waters
BONDASPHERE 5μC18 100Å
・検出波;260nm
・展開溶媒:0.1
M 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA pH 7)水溶液を用いて、5〜50%までアセトニトリルの濃度勾配をかけた。
(10)UV吸収スペクトル;
・島津製作所 UV-1600
(11)Tm解析システム;
・島津製作所製TMSPC-8
・円二色性分散計
JASCO J-720 spectropolarimeter
(12)緩衝液組成物(Beffer composition);
・10 mM sodium phosphate
・10 mM sodium chloride
・0.1 mM ethylenediaminetetraacetic acid,
disodium salt
・pH 7.0
(13)DNA;
・SIGMA Genosys Japanより購入
・スケール1μmole、脱塩処理
・Modified DNA(北海道システムサイエンス株式会社による委託合成。スケール1μmole、簡易カラム精製)
【0043】
[参考例1];N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(38)の合成;
[前工程1].2−トリクロロアセチル−1−メチルピロール(3)の合成;
【0044】
【化12】
塩化トリクロロアセチル(130mL、1.16mol)をアルゴン雰囲気下エーテル(250mL)に溶解し、0℃に冷却した。発熱に注意しながら、予めエーテル(250mL)に溶解した1−メチルピロール(100 mL、 1.12 mol)を滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、徐々に室温まで昇温させながら1時間攪拌した。2 M炭酸カリウム水溶液(300mL)を加え反応を停止し、有機層を分液操作により分離した。水層からエーテル(300mL×2)を用いて抽出を行い、全ての有機層をまとめた後、飽和塩化ナトリウム水溶液(300mL)により洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮することで、3を244 g (96%)得た。
【0045】
[前工程2].2−トリクロロアセチル−1−メチル−4−ニトロピロール(4)の合成;
【0046】
【化13】
上記化合物3 (2.14 g, 9.46 mmol)を無水酢酸(12 mL)に溶解、- 40 ℃に冷却した。温度を- 40 ℃に保ったまま、この溶液に発煙硝酸(0.83 mL)を滴下した。反応溶液を徐々に室温まで昇温し、さらに1時間撹拌した。反応溶液を再び- 20 ℃に冷却し、イソプロパノール(12 mL)を加え15分間撹拌した。その後- 20 ℃を保ったまま15分間静置し、生じた溶液中の結晶を吸引ろ過により採取した。結晶をイソプロパノールで洗浄後、減圧下乾燥し、白色の結晶を得た。さらに、ろ液を減圧下濃縮後、再びイソプロパノールを加え− 20 ℃で10分間攪拌し、生じた結晶を吸引ろ過により採取した。結晶をイソプロパノールで洗浄後、減圧下乾燥し、先に得られた結晶と合わせて、化合物4を2.01
g (78%)得た。
m.p.: 134-136 oC
【0047】
[前工程3].メチル 1−メチル−4−ニトロピロール−2−カルボン酸エステル(5)の合成;
【0048】
【化14】
前記化合物4 (15.0 g, 55.3 mmol)をアルゴン雰囲気下メタノール(20 mL)に溶解し、予めメタノール(5.0 mL)に溶解した水素化ナトリウム(60%) (0.2 g、 5.5 mmol)を滴下した。反応溶液を室温にて1時間撹拌した後、濃硫酸(0.3 mL、 5.5 mmol)を加えて反応を停止した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)により中和後、残渣を酢酸エチル(200 mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×2)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)にて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで再結晶し、結晶を吸引ろ過により採取することで、化合物5を6.02
g (61%)得た。さらに、ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製し、化合物5を合計で9.78 g (96%)得た。
【0049】
[前工程4].4−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸(6)の合成;
【0050】
【化15】
前記化合物5 (6.00 g、 32.6 mmol)を酢酸エチル(200 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(2.00 g)を加えた。懸濁液を水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌し、その後セライトを用いてパラジウム炭素をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、直ちにアルゴン雰囲気下エーテル(30 mL)に溶解し、予めエーテル(20 mL)に溶解したジ-tert-ブチルジカルボネート(7.46 g、 34.2 mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮後、メタノール(100 mL)に溶解し、2 M水酸化ナトリウム水溶液(100 mL)を加え60 ℃で2時間攪拌した。減圧下濃縮によりメタノールを除去した後、残った水層をエーテル(50 mL×2)で洗浄した。水層を10%塩酸を用いてpH 3へと調整した後、酢酸エチル(200 mL×3)により抽出操作を行った。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(200 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去した後、有機層を減圧下濃縮し、残渣から酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行うことで、化合物6を6.97
g (89%)得た。
【0051】
[前工程5].メチル 4−{[4−(tert−ブチロキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル(7)の合成;
【0052】
【化16】
前記化合物5 (3.00 g、 16.3 mmol)を酢酸エチル(100 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(1.00 g)を加えた。懸濁液を水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌し、その後セライトを用いてパラジウム炭素をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、直ちにカルボン酸6 (3.92 g、 16.3 mmol)、 EDCI (6.25 g、 32.6 mmol)、 DMAP (3.98 g、 32.6 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (100 mL)に溶解し室温で3時間攪拌した。反応溶液を約三分の一まで減圧下濃縮し、酢酸エチル(200 mL)、メタノール(20 mL)の混合溶媒で希釈した。有機層を10%塩酸(100 mL×3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×3)、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、有機層を減圧下濃縮することで、化合物7を6.07
g (99%)得た。
【0053】
[前工程6].メチル 4−[(4−{[4−(tert-ブチルオキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル(8)の合成;
【0054】
【化17】
化合物7 (3.00 g, 7.97 mmol)をアルゴン雰囲気下酢酸エチル(20 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した。メタノール(4.1 mL, 100 mmol)を加え、続いて塩化アセチル(5.7 mL, 80 mmol)を発熱に注意しながら滴下した。0 ℃で30分間攪拌後、減圧下濃縮することで溶媒および反応試薬を除去した。残渣にカルボン酸6(2.11
g, 8.77 mmol), EDCI (3.06 g, 15.94 mmol) 、 DMAP (2.92
g, 23.91 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (50 mL)に溶解し、室温で3時間攪拌した。反応溶液を約三分の一まで減圧下濃縮し、酢酸エチル(200 mL),メタノール(20 mL)の混合溶媒で希釈した。有機層を10%塩酸(100 mL×3) 、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×3) 、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した.無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、有機層を減圧下濃縮することで,化合物8を3.90 g (98%)得た。
【0055】
[前工程7].3’,5’−ジ−O−アセチル−2−フルオロ−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(23)の合成;
【0056】
[前工程7−1].3’,5’−ジ−O−アセチル−2’−デオキシグアノシン(21)の合成;
【0057】
【化18】
2’-デオキシグアノシン(8.02 g, 30 mmol)をピリジンで3回共沸脱水し、アルゴン雰囲気下でDMF(24 mL)に溶解した。続いて4-ジメチルアミノピリジン(0.37 g, 3.0 mmol)、 ピリジン(24 mL) 、無水酢酸(22.1 mL , 240 mmol)を加えて、室温で3時間攪拌した。その後、反応溶液に水(10 mL)を加えて反応を止め、エタノール(200 mL)を加えて30分間攪拌した後、室温で放置した。生じた結晶を吸引ろ過し、結晶をエタノール(10 mL×3)で洗浄し、さらに2-プロパノール(100mL)で洗浄した後減圧下乾燥し、化合物21を8.92 g (85%)得た。
【0058】
[前工程7−2].3’,5’−ジ−O−アセチル−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(22)の合成;
【0059】
【化19】
化合物21(1.75 g, 5.0 mmol)を1,4-ジオキサンにより3回共沸脱水し、トリフェニルホスフィン(2.62 g, 10.0 mmol)、2-(4-ニトロフェニル)エタノール(1.67g,
10.0mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で1,4-ジオキサン(50mL)
に溶解し、室温で15分間攪拌した.その後、反応溶液にアゾジカルボン酸ジフェニルエステル 40%トルエン溶液(4.5 mL, 10.0 mmol)を滴下し、室温で30分間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(50 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム(50 mL)で2回、さらに水(50 mL)、飽和食塩水(50 mL)で1回ずつ洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=1:3)で精製し、化合物22を2.30 g (92%)得た。
【0060】
[前工程7−3].3’,5’−ジ−O−アセチル−2−フルオロ−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(23)の合成;
【0061】
【化20】
化合物22(0.50 g, 1.00 mmol)をピリジンにより3回共沸脱水し、- 30℃において45% フッ化水素/ピリジン溶液(4.8 mL)を加え、アルゴン雰囲気下で亜硝酸t-ブチル(0.36 mL, 3.00 mmol)を加え、室温に戻した後30分攪拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)で中和し、クロロホルム(30 mL)で3回抽出した後、水(50 mL)で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮した.残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=1:3)で精製し、化合物23を0.44 g (87%)得た。
【0062】
[前工程8].9−フルオレニルメチル 3−アミノプロピル−1−カルバメート塩酸塩(26)の合成;
【0063】
【化21】
化合物25(3.80 g, 12.0 mmol)をメタノール(50 mL)に懸濁させた。直ちに1,3-ジアミノプロパン(1.00 mL, 12.0 mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。やや透明になった反応溶液に、ピリジン塩酸塩(3.00 g,
26.0mmol)を加え、10分間攪拌した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒(クロロホルム:メタノール=4:1)に懸濁し、シリカゲルを短く積んだカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)にて精製し、化合物26を3.25 g (82%)得た。ジアミンの片方を保護基で保護することは通常困難なことであるが、上記化合物によりこの目的を達成し得た。
m.p.: 129-130 oC
【0064】
[前工程9].1−メチルピロール−2−カルボン酸(32)の合成;
【0065】
【化22】
前記前工程1で合成した化合物3(5.00 g, 22.0 mmol)をメタノール(50 mL)に溶解し、2.0 M 水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加えた。反応溶液を60 ℃に加温し、1時間攪拌した。減圧下メタノールを除去し、残った溶液を水(50 mL)で希釈し、エーテル(50 mL)で洗浄した。水層を10%塩酸によりpH 3程度に調整し、酢酸エチル(100 mL×3)により抽出した。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(150 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別除去した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を減圧下乾燥することで、化合物32を2.45 g (89%)得た。
m.p.:127-130 oC
【0066】
[前工程10].メチル 1−メチル−4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノピロール−2−カルボン酸エステル(33)の合成;
【0067】
【化23】
前工程6で合成した化合物8(100 mg, 0.20 mmol)をアルゴン雰囲気下メタノール(5.0 mL)に溶解し、0℃に冷却した。続いて塩化アセチル(1.7 mL, 23.9 mmol)を発熱に注意しながら滴下し、0℃で30分攪拌後、減圧下濃縮することで溶媒および反応試薬を除去した。残渣に化合物32 (27.7 mg, 0.22 mmol)、 EDCI(84.5 mg,
0.44mmol)、 DMAP (53.4 mg, 0.44 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (2.0 mL)に溶解し80 ℃で1時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)によって精製し、化合物33を71.4 mg (73%)得た。
m.p.: 229-231 oC
【0068】
[前工程11].1−メチル−4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノピロール−2−カルボン酸(34)の合成;
【0069】
【化24】
化合物33(127 mg, 0.25 mmol)をメタノール(2.0 mL)に溶解し、2.0 M 水酸化ナトリウム水溶液(2 mL)を加えた。反応溶液を60 ℃に加温し、2時間攪拌した。減圧下メタノールを除去し、残った溶液を水(5 mL)で希釈し、エーテル(3 mL)で洗浄した。水層を10%塩酸によりpH 3程度に調整し、酢酸エチル(10 mL×3)により抽出した。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(15 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別除去した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を減圧下乾燥することで、化合物34を123 mg (quant.)得た。
m.p.: 180-182 oC
【0070】
[前工程12].9−フルオロレンニルメチル 3[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール2−イル)カルボニル]アミノピロピル−1−カルバメート(35)の合成;
【0071】
【化25】
化合物34(1.00 g, 2.04 mmol)と前記前工程8で合成した化合物26 (0.74
g, 2.24 mmol)を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.63 g, 3.06 mmol)および1-ヒドロキシベンズトリアゾール(0.41 g, 3.06 mmol)と共にアルゴン雰囲気下DMF (10 mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.39 mL,
2.24mmol)を加えた後、室温で12時間攪拌した。その後、反応溶液を酢酸エチル(200 mL)で希釈し、10%塩酸(50mL×3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL×3)、および飽和塩化ナトリウム水溶液(50 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムによって乾燥させた。無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)によって精製することで化合物35を1.35 g
(86%)得た。
【0072】
[前工程13].3’,5’−ジ−O−アセチル−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノプロピル}−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル−2’−デオキシグアノシン(36)の合成;
【0073】
【化26】
化合物35(1.00 g, 1.30 mmol)と前記前工程7−3で合成した化合物23
(0.69 g, 1.36 mmol)をアルゴン雰囲気下DMF (5.0 mL)に溶解した.続いて、トリエチルアミン(1.0 mL)を加え60 ℃で12時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=29:1)によって精製することで化合物36を1.07 g (79%)得た。
【0074】
[前工程14].3’,5’−ジ−O−アセチル−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(37)の合成;
【0075】
【化27】
化合物36(22.8 mg, 22μmol)を、アルゴン雰囲気下0.5 M DBU/ピリジン溶液(1.0 mL)に溶解した。室温で12時間攪拌した後、塩化アンモニウム(50.0 mg, 0.94 mmol)で反応を止めた。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)によって精製し、化合物37を15.6 mg (80%)得た。
【0076】
[前工程15].N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(38)の合成;
【0077】
【化28】
化合物37(60.0 mg, 76μmol)をアルゴン雰囲気下ピリジン(0.2 mL)に溶解した。続いて0.05Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(0.8 mL)を加え、室温で2時間攪拌した。Dowex-50(H+ form)を用いて反応溶液をpH 6とし、樹脂をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、残渣にメタノールを加え再結晶を行った。生じた結晶を吸引ろ過により採取し、化合物38を51.6 mg (97%)得た。
【実施例1】
【0078】
工程1.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(39)の合成;
【0079】
【化29】
化合物38(0.79 g, 0.99 mmol)をピリジンで2回共沸脱水し、塩化4,4’-ジメトキシトリチル(0.37
g, 1.09 mmol)を加えアルゴン雰囲気下ピリジン(5 mL)に溶解した。
室温で2時間攪拌した後、水(50 mL)によって反応を停止し、クロロホルム(100 mL)により3回抽出操作を行った。全ての有機層をまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去後、ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)にて精製し、化合物39を0.90 g (83%)得た。
1H-NMR (DMSO-d6):δ10.66 (br, 1H, H-1), 9.93 (s,1H,
Py-NH), 9.89 (s, 1H, Py-NH), 9.82 (s, 1H, Py-NH), 8.06(s,
1H, H-8), 7.79 (t, 1H, J = 5.49 Hz, -CH2NH-), 7.34(d,
2H, J = 1.66 Hz, DMTr-H), 7.33-7.18 (m, 10H, DMTr-H), 7.06 (d, 2H,
J = 1.89 Hz, Py-H), 6.95-6.89 (m, 2H, Py-H), 6.84 (s,1H, Py-H),
6.81 (s,1H, Py-H), 6.80 (s,1H, Py-H), 6.78(s,1H, Py-H),6.43 (br, 1H, N2-H),6.20
(t, 1H, J = 6.42, H-1’), 6.06 (d, 1H, J = 2.54 Hz, Py-H), 5.32
(br, 1H, 3’-OH), 4.41 (t, 1H, J = 4.63 Hz, H-3’), 3.89 (s, 3H,
Py-CH3), 3.86 (s, 3H, Py-CH3’), 3.85(s, 3H,
Py-CH3’), 3.81 (s, 3H, Py-CH3’),3.72 (s,
6H, O-CH3), 3.24-3.22 (m, 5H, H-5’,-NHCH3×2), 3.10 (m, H1, H-5“), 2.72 (m, 1H,
H-2’), 2.29 (m, 1H, H-2”), 1.66 (m, 2H, -CH2CH2CH2-)
13C-NMR (DMSO-d6):δ161.45, 158.47, 158.01,
157.96,156.76,152.41, 150,42, 144,90, 135.91, 135.52, 29.68, 129.60, 128.10,
127.65, 126.56, 126.45, 122.89, 122.76, 122.17, 122.08, 118.41, 117.83,
117.212, 113.03, 112.62, 106.63, 104.71, 104.25, 85.66, 85.37, 82.81, 79.15,
70.73, 64.37,54.94, 38.07, 36.20, 36.06, 35.91, 29.32, 29.13
HRESIMS m/z :
1100.4739 (Calcd for C58H62N13O10 :
1100.4743)
Anal. Calcd for
C58H61N13O8 + 2H2O +
MeOH: C, 60.66; H, 5.95; N, 15.59
Found. C,
60.89; H, 5.89; N, 15.12
【0080】
工程9.5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン−3’−O−イル−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(40)の合成;
【0081】
【化30】
化合物39(0.178 g, 0.162 mmol)をアセトニトリルにより2回共沸脱水し、加熱減圧下で活性化させたモレキュラーシーブス(4Å, 100 mg)と共にアルゴン雰囲気下ジクロロメタン(0.5 mL)に溶解した。1-H-テトラゾールの0.5 M アセトニトリル溶液(0.356 ml)を加え室温で1時間攪拌し、系内の水をモレキュラーシーブスに吸着させた。その後2-シアノエチル-
N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.103 ml)を加え室温で3時間攪拌した。トリエチルアミン(0.045 ml)で反応を停止し、反応溶液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=99:0:1〜90:9:1)にて精製することで、化合物40を0.169 g (85%)得た。(DNA合成は北海道システムサイエンス株式会社に委託)
1H-NMR (DMSO-d6):δ10.67 (br, 1H, H-1), 9.89 (s,1H,
Py-NH), 9.85 (s, 1H, Py-NH), 9.82 (s, 1H, Py-NH), 8.04(s,
1H, H-8), 7.79 (t, 1H, J = 5.49 Hz, -CH2NH-), 7.32(d,
2H, J = 1.66 Hz, DMTr-H), 7.24-7.18 (m, 10H, DMTr-H), 7.05 (d, 2H,
J = 1.89 Hz, Py-H), 6.94 (m, 1H, DMTr-H), 6.93-6.76 (m,6H, Py-H),
6.58 (m,1H, N2-H), 6.24 (m,1H, H-1), 6.06 (dd,1H, J = 3.62 Hz,
J = 2.88 Hz, Py-H), 5.01 (m, 1H, H-3’), 3.88 (s, 3H, Py-CH3),
3.86 (s, 3H, Py-CH3’), 3.85 (s, 3H, Py-CH3’),
3.81 (s, 3H, Py-CH3’), 3.72 (s, 6H, O-CH3), 3.68
(m, 1H, H-5’), 3.60 (m, 1H, H-5“), 3.51 (m, 2H, -NHCH3)
3.26-3.14 (m, 6H, H-5’,-NHCH3×2), 2.87 (m,
1H, H-2’), 2.44 (m, 1H, H-2”), 1.63 (m, 2H, -CH2CH2CH2-),
1.09-0.95 (m, 14H, diisopropylamine group)
13C-NMR (DMSO-d6):δ161.45, 158.49, 158.05, 156.75,
152.44, 150,31, 144,79, 144.75, 135.89, 135.43, 135.36, 129.62, 128.09, 127.66,
127.58, 126.57, 125.45, 122.89, 122.77, 122.20, 122.09, 118.89, 118.68, 118.41,
117.78, 117.29, 117.17, 113.05, 118.41, 117.78, 117.29, 117.17, 113.05, 112.63,
106.62, 104.71, 104.24, 85.24, 85.49, 82.97, 73.35, 63.82, 63.66, 58.40, 58.28,
58.22, 58.10, 54.95, 45.66, 42.57, 37.97, 37.74, 45.66, 42.09, 42.57, 37.97,
37.74, 36.20, 36.06, 35.90, 29.07, 24.15, 24.08, 19.81, 19.74, 11.16
31P-NMR (DMSO- d6) : 149.50,
149.07
【実施例2】
【0082】
試験例;ピロールポリアミド4量体−2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物を組み込んだssDNAの相補鎖ssDNAに対する選択的相互作用の評価
【0083】
本発明のMGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物は生合成によりDNA内に組み込まれた際に、その近辺の配列にMGBポリアミドが特異的に認識するサイトを含む副溝に対してより優位に安定な水素結合を形成でき、一方でMGBポリアミドにとって特に認識しないサイトに対しては立体反発が強く起こることが予測され、これにより二重鎖安定化作用の優れた配列選択能を発揮することが期待できる。
ここでは、本発明に係るハイブリッド化合物38を組み込んだ下記7種の修飾一本鎖DNA(ssDNA。11-mer) をホスホルアミダイト法によって調製し、相補的な一本鎖DNAとのアニーリングによりdsDNA (修飾dsDNA (1)−修飾dsDNA (7))を形成させた。その熱力学的安定性および塩基配列選択能の評価を融解曲線の測定およびそのTm値を比較することで行った。比較対象としては未修飾dsDNA(未修飾dsDNA(1)−未修飾dsDNA(7))および未修飾dsDNAにディスタマイシン(Dst)Aを1当量添加した複合体(コンフ゜レックス(1) –コンフ゜レックス(7))を用いた。
【0084】
【表1】
【0085】
dsDNA (1)はピロールポリアミドの特異的に認識するサイト (5’
-AAATT- 3’ )を含む。またdsDNA(2)からdsDNA(6)に関してはセンス鎖の3’末端より特異的に認識するサイトのA-T塩基対を1組だけ順次G-C塩基対に置換しており、dsDNA(7)には特異的に認識するサイトに対してG-C塩基対を2組置換した。これら7種のdsDNAを用いハイブリッド化合物の塩基配列認識能の評価を行った。
その一部の具体的結果を書き表に数値をもって示す。
【0086】
【表2】
【0087】
修飾dsDNA(1)は、天然型dsDNAに特徴的な融解曲線を示したことからハイブリッド化合物を置換したことによる二重鎖形成への影響は生じていないことが判明した。親和性に関しては、Tm値の上昇(未修飾dsDNA(1);Tm = 32.4 oC、修飾dsDNA(1);Tm = 55.4 oC)からディスタマイシンAの添加と匹敵する(dsDNA(1) + Dst;Tm = 56.1 oC)二重鎖安定化作用を示すことが明らかになった。また、修飾dsDNA(3)のTm値と修飾dsDNA(5)のTm値はそれぞれ17.4°Cおよび16.7°Cであった。
しかし、修飾dsDNA(7)は、AATTTの2つのヌクレオチドがCおよびGで置換されており、二重鎖の安定性が低下していることが示された。
【0088】
一方、二本鎖DNA[5’-d(CGCAAATTGGC)-3', 3'-d(GCGTTTAACCG)-5']とハイブリッド2モノマー(3−アミノプロピニルをリンカーとしたピロールポリアミドーアデノシン;Ohba, Y., Kamaike, K., Terui, Y., Oshima, T., and Kawashima, E.,
(2003) Nucleic Acids Res. Supplement, 29~30)との複合体のDTm値および上記化合物(20)とのハイブリッド3モノマーとの複合体のDTm値は、それぞれ2.7°Cおよび5.5°Cであった。したがって、修飾一本鎖DNA(1)は、ハイブリッド2モノマーやハイブリッド3モノマーに比べ非常に高い結合能を有していることが明らかとなった。さらに、ピロールポリアミドの誘導CDスペクトルが観察されたことから、修飾二本鎖DNA(1)のピロールポリアミドは二本鎖DNAのマイナーグルーブに結合していることが確定した。
【0089】
続いて,ピロールポリアミドの特異的に認識するサイトトにG-C塩基対を1組導入した際の塩基配列選択能を評価するためにdsDNA(2)からdsDNA(6)に関してTm値を測定した。
その結果、修飾dsDNA(2)から修飾dsDNA(6)において全ての配列においてディスタマイシンAの添加と同等に安定な二重鎖を形成していることが読み取れ、本発明のハイブリッド化合物38を組み込んだ修飾dsDNAでは、dsDNA(2)からdsDNA(6)の配列においてG-C塩基対1組を識別することはできなかった。
そこで,ピロールポリアミドの特異的に認識するサイトを2組のG-C塩基対で置換したdsDNA(7)についてTm値の測定を行った。
また、修飾dsDNA(7) のDNA融解曲線はdsDNA (1)からdsDNA(6)に比べ明確なものではなく、熱的安定性 (修飾dsDNA(7) : Tm = 35.4 oC)はディスタマイシンAを添加したdsDNA(7) (Tm = 46.0 oC)と比較して大きく低下した。これはハイブリッド化合物38が、MGBポリアミドの特異的に認識するサイトとの2塩基対の違いを厳密に識別する能力を有していることを示しており、MGBポリアミドとヌクレオシドを結合することでMGBポリアミドの有する塩基配列選択能をさらに向上できることが見出された。
興味深いことに、修飾dsDNA(7)は未修飾体である未修飾dsDNA(7) (Tm = 38.6 oC)よりも低いTm値を示した。これは、ハイブリッド化合物の組み込まれた二重鎖に特異的に認識するサイトが存在しない場合、MGBポリアミドの強い立体反発により二重鎖の不安定化を引き起こしているものと推測される。
【0090】
次に、修飾dsDNA(1)および修飾dsDNA(7)に対してCDスペクトルの測定を行い、ハイブリッド化合物を組み込んだことによるdsDNAの示すスペクトルの相違を解析した。
B型DNAに特徴的な280 nm付近のCDバンドの強度はdsDNAの緩衝液中での塩基部のスタッキングの度合いを求める指標となる。修飾dsDNA(1)では未修飾dsDNA(1)と比較し、このCDバンドの強度にほとんど変化がなかった。これは緩衝液中で修飾dsDNA(1)が未修飾dsDNA(1)と同様な二重鎖を形成していることを示している。一方、修飾dsDNA (7)は280nm 付近のCDバンド強度は未修飾dsDNA(7)のCDバンド強度と比較し低下している。これは,MGBポリアミドの特異的に認識するサイトが存在しない配列においては修飾によるコンフォメーションの変化が生じ、修飾dsDNA(7)の塩基部のスタッキングが減少したことに起因すると考えられ、MGBポリアミドの存在により二重鎖構造の形成を不利にしていると推測することができる。この結果、ハイブリッド化合物を組み込んだdsDNAの塩基配列選択的な熱的安定化作用は緩衝液中での二重鎖形成の優位さに起因しているものであると考えられる。この作用は、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物をアンチセンスドラッグに応用することでさらに厳密な塩基配列選択能を発現することができる可能性を示している。
【0091】
ピロール四量体ハイブリッド化合物を組み込んだssDNAと相補鎖ssDNAとの二重鎖は特異的に認識するサイトを含むDNAおよび特異的に認識するサイトに対して1つのみG-C塩基対で置換したDNAにおいては、それぞれディスタマイシンAと同程度の親和性を示し、1塩基対の相違による配列選択性は見られなかった。一方、特異的に認識するサイトに対して2塩基対G-Cで置換したDNAに関しては大幅にTm値が低下しディスタマイシンAと比較して高い配列選択能を有することが明らかになった。さらに、ハイブリッドを組み込んだ特異的に認識するサイトを含むdsDNAと特異的に認識するサイトに2塩基対G-Cで置換したdsDNAのCDスペクトルからは、配列の違いにより二重鎖形成へ影響が出ていることが推測された。この作用はアンチセンスドラッグとして応用する際に、塩基配列の選択性を改善するにあたり非常に好ましい特徴であり、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物を用いた新規アンチセンスドラッグへの創製の可能性を見出した。
以上の検討から、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物がDNAに組み込まれた際にMGBポリアミドの特異的に認識するサイトに対する親和性を損なわず、DNAに対して高い配列特異性を有することを明らかにした。
本発明では,MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物の合成を達成し、このハイブリッド化合物が新規遺伝情報制御分子としての優れた機能を有することを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るピロール四量体ハイブリッド化合物を組み込んだ修飾ssDNAは、安定性及び配列選択性に優れ、この作用はアンチセンスドラッグとして応用する際に、塩基配列の選択性を改善するにあたり非常に好ましい特徴であり、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物を用いた新規アンチセンスドラッグへ有効性が大いに期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドとMGBポリアミド(配列選択的副溝結合型(Minor Groove Binders : MGBs)ポリアミド)からなるハイブリッド化合物を組み込んでなる修飾一本鎖DNAオリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の分子生物学、遺伝子技術の最近の発展は目覚しいものがある。特に、ゲノム科学発達に伴い、ヒトゲノムが解析され、さらにポストゲノムとして悪性新生物や病因ウイルスの遺伝子の解析が進んでいる。これまで原因がわからなかつた多くの疾患の原因遺伝子が次々に同定され、それらの発症機構が分子レベルで解明されるようになった。このような遺伝子治療の考えは、遺伝子病の存在が知られるようになった1950年代からあったが、その後の組み換えDNA技術や遺伝子導入技術の発達により、徐々に実現可能な治療手段として現実的なものになりつつある。
【0003】
遺伝子治療の方法としては、下記3つの方法が知られている。
(1)遺伝子そのものを直接操作する方法;
これは、異常遺伝子はそのままにして、正常な遺伝子を新たに細胞に加える方法であり、早い時期から具体化され、現在も実用化が急速に進められている。過去に行われた「ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症」の遺伝子治療がこの方法に該当する。その他、家族性高コレステロール血症、嚢胞性線維症、Fanconi貧血等の遺伝子治療に対しても、それぞれの正常遺伝子を細胞に付加する手段の検討がなされている。
遺伝子治療のなかでは、比較的単純な方法であるといえるが、異常遺伝子が有害タンパク質を作らないこと、あるいは遺伝子が必要な働きをしないために起こる病気等、適用のための条件には制限がある。
(2)異常遺伝子の働きを止める方法;
所謂「アンチセンスDNA」療法と呼ばれる、特定の標的遺伝子配列に対して結合する人工的な遺伝子配列を該異常遺伝子に結合させて、該異常遺伝子の転写を阻止して該異常遺伝子の機能を失活させるものである。
(3)遺伝子の異常な部分を切り取る方法;
「制限酵素」を用いて異常遺伝子を切り取る方法である。ただし、現在の技術では、制限酵素は標的部位を自在に切り取れるわけではなく、切取り位置には制限がある。したがって、現在のレベルでは実際の治療への応用は困難である。
上記(2)の方法は、アンチセンス法、アンチジーン法と呼ばれるものであり、各種癌疾患やウイルス性疾患の遺伝子治療方法として期待されている。
このことから、疾患原因である特定の標的遺伝子配列を特異的に認識し、かつ、その発現を阻害できる化合物の開発が望まれている。
【0004】
このような化合物に求められる特性は、下記のとおりである。
1.各々の細胞内の標的遺伝子を特定するために十分な長さの塩基配列を厳密に識別できること。
2.標的塩基配列に対してのみ高い親和性を有すること。
3.化学的合成が容易であること。
4.生体内の各種酵素存在下において安定であること。
5.細胞毒性が低いこと。
6.細胞膜、核膜を容易に透過できること。
7.一度の作用で失活せず、繰り返し多数の細胞に作用(ターンオーバー)すること。
また、標的となる塩基配列を持つ遺伝子としては、
A.二重鎖DNA(複製および転写の開始を阻害:アンチジーン法)、
B.一本鎖DNA(転写の阻害:アンチセンス法)、
C.mRNA(翻訳の阻害:アンチセンス法、RNAi法)
などを挙げることができる。
【0005】
上記アンチセンス法やアンチジーン法は、標的mRNA、一本鎖や二重鎖DNAに対して何らかの修飾を施したDNAを結合させることで、複製、転写、翻訳を阻害、あるいはRNase Hによる分解を促すことにより、標的mRNAを持つ細胞や細菌、さらにはウィルスに対しても増殖抑制効果を発揮する方法である。
アンチセンス法に用いられる化合物としては、リン酸基の酸素原子1つを同族原子である硫黄に置き換えたホスホロチオエート型のオリゴヌクレオチドが特に広く研究されている。これは(1)RNase Hによる分解活性、(2)ヌクレアーゼ耐性、(3)細胞膜透過性、(4)水溶性において優れており、その他の糖部や塩基部の修飾と組み合わせて用いることも可能であり、利便性が高い。
FDA(米国食品医薬品局)により初のアンチセンスドラッグとして,サイトメガロウィルスによる網膜炎に対する適用で認可されたものもホスホロチオエート型オリゴヌクレオチド((21-mer)21量体)(Vitravene(登録商標))であり、最近では筋ジストロフィーに対する効果も報告されている。しかしながら、治療薬のホスホロチオエート型オリゴヌクレオチドには、天然型のDNAと比較して二重鎖の熱力学的安定性が低い、塩基配列の認識能力が十分ではない、生体内のたんぱく質との相互作用が強く、アンチセンスとしての活性に基づかない生理活性を示すことがある等の問題点がある。他にも糖部フラノース環のパッカリングを3’-endo型(N型)に固定しmRNAとの親和性を高めたBNA (Bridged ring Nucleic Acid)や、塩基部位にスタッキング効果を増強させるような置換基を導入したもの、主鎖を糖ではなくアミド結合の高分子に置き換えたPNAなどが治療薬の候補として挙げられているが,現段階ではまだ研究段階である。
DNAを用いる治療法は、遺伝子以外に転写調節因子と呼ばれるタンパク質の配列認識部位を標的とし、その作用を阻害するデコイ(おとり)型DNAを用いる遺伝子治療にも関心が集まっている。
【0006】
ところで、近年非常に注目を集めている遺伝子を用いた技術が、RNA干渉 (RNA interference;RNAi)法である。これは生体内において長鎖の二重鎖RNA(dsRNA) が、Dicerと呼ばれる酵素により21~23塩基対からなる短い二重鎖RNA(small interfering RNAs(RNA誘導性サイレンシング複合体);siRNAs)に切断されることから始まり、RISC (RNA-induced silencing complex)と呼ばれる複合体の形成、取り込まれた二重鎖siRNAsのRNAへリカーゼによる一本鎖siRNAへの変換、一本鎖siRNAをガイド分子とする標的mRNAへの配列選択的なRISCの結合、RISCが結合したmRNAのRNase Hによる切断に伴う遺伝子発現の抑制という一連の流れを利用したものである。実際の応用には、細胞内に任意の配列を持つdsRNAを直接導入するか、ベクターを用いてin vivoで発現させればよく、簡便に利用できるものと思われるが、RNAの安定性に多少の問題は残る。
このように、核酸あるいはその誘導体は元来から有する塩基配列選択性的遺伝子への親和性を生かし、医薬品へと応用していくことが可能である.
【0007】
一方,上記のような核酸誘導体ではないものの、塩基配列選択的に遺伝子に作用する化合物もいくつか知られている。細菌から単離された抗生物質である下記式で示されるディスタマイシンAは、配列にアデニン(A)もしくはチミン(T)が3個以上連続した二重鎖DNAの熱的安定性を向上させる。
【0008】
【化2】
【0009】
ディスタマイシンAは、その弓なりの分子構造がB型DNAの副溝(minor groove)の湾曲にマッチし、内側を向いたわずかに酸性度を有するNH基がアデニンのN3位、あるいはチミンのC2位のカルボニル酸素との水素結合を介することで分子間の結合を安定化させている。配列にグアニン(G)−シチジン(C)塩基対が存在すると、副溝側に突き出したグアニンのC2位のアミノ基と1-メチルピロール(Py)のC3位の水素の間に立体的な障害があり、副溝に対する親和性が低下することから塩基配列選択性が現れている。
【0010】
その後の研究からディスタマイシンAは、1つの特異的に認識するサイトに対して逆平行に2分子配位していることが明らかにされ、さらに逆平行に配向したディスタマイシンA誘導体の1-メチルピロールを1-メチルイミダゾール(Im)や3-ヒドロキシ-1-メチルピロール(Hp)に置き換えることによって、4つの塩基対の組み合わせ (A-T, T-A, G-C, C-G)全てを認識することが可能になった(例えば、非特許文献1)。
また、Dervanらは、逆平行に配向するPy-Imポリアミド化合物をリンカーで結合し二重鎖DNAへの配列選択性と親和性を向上することに成功している(例えば、非特許文献2)。
【0011】
【化3】
【0012】
更に、最近は、任意の塩基配列を認識するポリアミド化合物は固相法による自動合成法が確立されたことにより合成が容易に行えるようになり、標的とする塩基配列に適合する化合物を容易に合成できる利便性の高さ、さらに核酸誘導体で問題となるヌクレアーゼに対する安定性、細胞膜や核膜に対する透過性も優れていることから、新たな塩基配列認識分子として関心が高まっている。
このポリアミド化合物を用いた研究としては、配列選択的副溝結合型(Minor Groove Binders;MGBs)ポリアミドにDNAへ影響を与える機能性分子を結合させ、その機能を塩基配列選択的に発現させようとする試みが数多くなされている。代表的な例はブレオマイシン、ナイトロジェンマスタード、シクロプロピルインドール、DNAインターカレーター、デュオカルマイシンを機能性分子として用いたものである。その中でも、Sugiyamaらはデュオカルマイシンおよびその誘導体とMGBポリアミドのハイブリッド化合物を、任意の標的塩基配列に選択的に作用させることに成功している(非特許文献3)。このようにMGBポリアミドは機能性分子の持つ薬理活性を保持したまま、ユニークな塩基配列認識能を付加できることが明らかにされている。
本発明者らも、上記背景のもとにゲノム化学に基づく遺伝情報制御分子の創製を目的として、AAATT配列に対して高い親和性を有する、下記に示すような、2’-デオキシグアノシンのN2位にアミド結合を有するリンカーを介しピロールポリアミド3量体を導入したハイブリッド化合物(1)や、N-アルキル化によるリンカーを介しピロールアミド3量体を導入したハイブリッド化合物(20)を合成し、報告した。(非特許文献4、非特許文献5)
【0013】
【化4】
、
【0014】
【化5】
【0015】
また、本発明者らは、先に下記式(38)で示されるピロールアミド4量体構造を有するMGBポリアミドハイブリッド化合物の合成にも成功した。(非特許文献6参照)
【0016】
【化6】
【0017】
このようなヌクレオシドとMGBポリアミドとのハイブリッド化合物は、通常の核酸や抗癌剤などに用いられる修飾ヌクレオシドと同様に生合成経路でDNA内に取り込まれた場合、その近辺の配列にMGBポリアミドが特異的に認識するサイトが存在すると非常にタイトで安定した副溝への結合を形成することで二重鎖DNAの安定化を示し、そのDNAの複製や転写を阻害するものと考えられる。
一方、近辺にMGBポリアミドにとって特に認識しないサイトが存在した際には二重鎖の安定化作用を示さないことから複製や転写を阻害しないことが期待できる。また、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物が単体で二重鎖DNAに作用する場合には、ハイブリッド中のヌクレオシドがHoogsteen型の水素結合を形成し、さらにMGBポリアミドによる親和性、塩基選択性を発揮するようなアンチジーン的な作用を持つことが考えられる。
このようにMGBポリアミドのハイブリッド化合物ないしはこのようなMGBポリアミドのハイブリッド化合物を組み込んだDNAオリゴマーは、高い塩基配列認識能とMGBポリアミドの有する生体内酵素に対する高い安定性、優れた膜透過性といった特徴を併せ持ち、遺伝情報制御分子としての候補として期待できる。
なお、二重鎖の相対的安定性については、その二重鎖が解離するまで、デュプレックスを溶液中で加熱することによって、実験的に、判定される。二重鎖の量的安定性は、一般的に「融解温度」又はTmとして知られている、その塩基対の半分が融解した温度によって表わされる。実際には、これは、通常、温度を上昇させながら、核酸の溶液の紫外線吸収をモニタし、前記Tmを、260nmでの最大吸収量の半分での温度として示すことによって行われる。
【0018】
ハイブリッド化合物の安定性の増大、即ち、ハイブリダイゼーション度の増加は、同一の長さと配列の非共役結合オリゴヌクレオチドによって形成されるものとの比較に於ける、そのようなMGB−オリゴヌクレオチド共役物により形成されたハイブリッド二重鎖の融解温度(Tm;その塩基対の半分が分離した温度)の上昇によって示すことができる。
二つの核酸間のハイブリダイゼーションの強度又はハイブリッド安定性は、核酸二重鎖を、徐々に上昇する温度よって測定することが可能である。紫外線吸収度の測定量は、温度の関数として測定される。吸収度は、塩基対が解離しスタッキング相互作用(base stacking interaction)が失われた時に増加し、吸収度は、二重鎖が完全に解離した時に横ばい状態に達する。この種の分析から、複数のハイブリダイゼーション強度測定値を得ることができる。融解温度(Tm)は、二重鎖中の塩基対の半分が解離する温度として一般に定義される。
【非特許文献1】White, S.; Baird, E. E.; Dervan, P. B. Chem. Biol., 1997,4, 569
【非特許文献2】Trauger, J. W.; Baird, E. E.; Dervan, P. B. J. Am. Chem. Soc.,1996,118, 6160
【非特許文献3】Tao, Z.; Fujiwara, T.; Sugiyama, H. J. Am. Chem .Soc., 1999,121,4961
【非特許文献4】Y.; Ohba, Y.; Terui,K.; Kamaike, T.; Oshima, E.; Kawashima, NucleicAcids Symposium SeriesNo.48, 2004, p.55-56.
【非特許文献5】「第14回 アンチセンスシンポジウム講演要旨集」アンチセンスDNA/RNA研究会、平成16年12月2日、p55
【非特許文献6】日本薬学会第125年会要旨集 2005,p.66
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
MGBポリアミドは様々な機能性分子とハイブリッドさせることでそれらの持つ薬理活性を保持したままユニークな塩基配列認識能を付加することが可能である。さらに、MGBポリアミドはその高い塩基配列認識能に加え生体内酵素に対する高い安定性、優れた膜透過性を有するため、MGBポリアミドとのハイブリッド化合物ないしはこれを組み込んだ修飾DNAオリゴマーはこれら全ての特徴を併せ持つことが期待できる。
このようなハイブリッド化合物を組み込んだ修飾DNAオリゴマーは、標的遺伝子(ssDNA)およびmRNAに結合して安定な二重鎖を形成し、該異常遺伝子やmRNAの転写の阻止や昨機能を失活する作用(アンチセンス型アプローチ)および標的塩基配列を含むdsDNAを選択的に安定化させる作用(アンチジーン型アプローチ)が期待できる。
【0020】
ところで、本発明者らが前記ハイブリッド化合物(20)をオリゴマー合成する際に必要となるアンモニア処理に対する安定性の評価を行ったところ、TLC、1H-NMRによる検討において、アミド結合によるリンカーを介するハイブリッド化合物(1)のアンモニア処理で検出された2’-デオキシグアノシンは検出されなかった。このことから、N−アルキル化によるリンカーの結合へと結合様式を変換したことによりによりハイブリッド化合物のN2位でのアンモニア処理に対する安定化を高めることが可能であることが明らかになった。しかしながら、TLC上で(20)よりもRf値の低いスポットがわずかながら生じた。これは1H-NMRからN-末端のホルミル基が脱落したと思われる化合物と推測された。即ち、先の化合物20は、アンモニア処理において、2’-デオキシグアノシンは検出されないものの、N-末端のホルミル基の脱落が観察され、必ずしもその安定性が満足し得るものではないことが分かった。
このように、従来公知の修飾一本鎖DNAオリゴマーは、必ずしもその塩基配列選択能や安定性の点で満足し得るものではなかった。
したがって、本発明の目的は、MGBポリアミドハイブリッド化合物の性能を維持しつつ、オリゴマー合成時におけるアンモニア処理に対してより安定性の優れたMGBポリアミドハイブリッド化合物を組み込んだ修飾一本鎖DNAオリゴマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、先に見出したピロールアミド4量体構造を有するMGBポリアミドハイブリッド化合物(化合物38)と結合した修飾DNAオリゴマーを合成し、円偏光二色性(CD)スペクトルおよび融解温度(Tm値)分析から、該ハイブリッド結合オリゴマーが、ピロールポリアミド適合部位を含む相補DNAに対して非常に高い結合能と高い認識能を有していることを見出して本発明を完成した。
【0022】
本発明は、以下のとおりである。
【0023】
1.標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAの一部がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする修飾ssDNAオリゴマー。
2.ssDNAオリゴマーが8乃至23塩基である上記1に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
3.標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAが、その配列中に少なくとも1つのグアニン(G)と、アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むことを特徴とする上記1又は2に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
4.アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むssDNAが、3’ -TTTAA- 5’(該3’ -TTTAA- 5’中の1個又は2個のアデニン(A)又はチミン(T)はシトシン(C)で置換されてもよい)である上記3に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
5.ssDNA中のグアニン(G)がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする上記1乃至4のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
6.ピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物が下記式(38)で示される化合物である上記1乃至5のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【0024】
【化7】
【0025】
7.修飾ssDNAオリゴマーが、下記のいずれかの配列を含む上記1乃至6に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
(ここで、Mは上記6に記載の式(38)で示される化合物での置換を意味する。)
(1)3’-CGGTTTAAMGC-5’
(2)3’-CGGTTTACMGC-5’
(3)3’-CGGTTTCAMGC-5’
(4)3’-CGGTTCAAMGC-5’
(5)3’-CGGTCTAAMGC-5’
(6)3’-CGGCTTAAMGC-5’
又は
(7)3’-CGGTCTGAMGC-5’
8.上記1乃至7のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマーを有効成分とする医薬。
9.抗癌剤又は抗ウイルス剤である上記8に記載の医薬。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るオリゴマーは、ピロールアミド4量体−2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物を組み込むことによって極めて安定に合成することができ、また、後述の試験結果から明らかなとおり、MGBポリアミドの特異的に認識するサイトとの2塩基の違いを厳密に識別する能力を有し、かつ優れた結合能を備えている。したがって、本発明の修飾一本鎖DNAオリゴマーは、新規遺伝情報制御分子、遺伝子治療剤として、具体的には、各種の癌や白血病、エイズや肝炎などのウイルス性疾患、乾癬、クローン病、喘息、リウマチなどの治療剤としての有用性が大いに期待される。また、本発明は、新規の一連のアンチセンス剤またはアンチジーン剤を開発する基礎を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明者らは、ハイブリッド化合物をDNAに組み込む際の安定性を考慮し、N2位での結合様式をアミド結合からN-アルキル化による結合に変えることでDNA合成時の脱保護条件下で安定なハイブリッド化合物を設計し合成を行った。リンカーとして用いるジアミノプロパンの片側のアミノ基を選択的に保護するために、mono-Fmoc化試薬としてFmocフェニルカルボネートを合成し、これをジアミノアルカンに1当量だけ作用させた。その結果、一方のアミノ基を塩酸塩にすることで収率よくmono-Fmoc化することに成功した。本合成法はポリアミン化合物などの合成研究にも酸に安定な保護基の導入法として広く活用でき、その有用性は高いものと考えられる。続いてmono-Fmoc-ジアミノプロパンに対してMGBポリアミドを縮合し、Fmoc基の除去後、2-フルオロイノシン誘導体と反応させることで目的とするN-アルキル化により結合するハイブリッド化合物(N末端1-メチルピロール2-カルボニル体/ピロールアミド4量体)の合成を達成した。N-アルキル化により結合するハイブリッド化合物(ピロールアミド4量体)はDNA合成条件下で安定であったことから、ホスホロアミダイトに誘導してDNA合成(Phosphoramidite method)に組み込んだ。
本発明において使用する化合物(38)の製造方法は、以下のとおりである。詳細は参考例を参照されたい。
【0028】
先のハイブリッド化合物(1)や(20)では、アンモニア処理に対してピロール間のアミド結合それ自体は安定であった。これはアミドのπ結合がピロール環との共鳴により安定化しているものと考えられる。そこでハイブリッド化合物のその後のオリゴマー合成におけるアンモニア処理に対する安定性改善のために、ホルミル基にかわるN末端基として1−メチルピロールー2−カルボニル基をアミド結合により結合させることでアンモニア処理に対する安定化を図ろうと試みた。
【0029】
まず、化合物3を水酸化ナトリウム水溶液によりカルボン酸32へと変換し、これとピロールアミド3量体8からBoc基を除去した化合物と縮合させることにより化合物33を得る。次にエステル33を加水分解することにより化合物34へと変換した後、mono-Fmocジアミノプロパン26と縮合させることによって化合物35を得る。
【0030】
【化8】
【0031】
なお、Boc基で保護したピロールアミド3量体8は、化合物5のニトロ基を接触還元によりアミノ基とし、4−(tert−(ブトキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸6との縮合させることによりメチル 4{[4−(tert−ブチロキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル7とした。続いて、ピロールアミド2量体7のBoc基を酸性条件下で除去し、再びカルボン酸化合物6との縮合を行うことによりピロールアミド3量体8とした。
【0032】
【化9】
【0033】
上記合成法は、縮合試薬に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (EDCI) を用いたことにより、反応生成物の精製を酸−塩基による分液操作のみで行うことができるため、カラムクロマトグラフィーによる精製なしに目的とするピロールポリアミド3量体8を高収率で合成できる。
【0034】
続いて、化合物35のFmoc基をトリエチルアミンにて除去し2’-デオキシイノシン誘導体23のフッ素との置換反応を行うことにより化合物36を得る。最後に、化合物36のO6位2-(4-ニトロフェニル)エチル基および3’位ならびに5’位アセチル基を除去することでピロールアミド4量体を含む2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物38を得る。
【0035】
【化10】
【0036】
次に,このハイブリッド化合物38のオリゴマー合成におけるアンモニア処理の条件下での安定性の評価を行い、これが安定に存在することを確認する。そこでさらにこのハイブリッド化合物38をオリゴマーに導入するためにアミダイト化を行う。
【0037】
まず、化合物38に対して塩化ジメトキシトリチル(DMTr-Cl)を作用させ5'位水酸基を選択的に保護して39を得る。続いて2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトをテトラゾール存在下で反応させることで目的とする3’-ホスホロアミダイト40を得る。得られたアミダイト40は、周知のDNA自動合成法により、各種のDNAに導入することができる。
【0038】
【化11】
【0039】
ホスホルアミダイト法によって、標的DNAと相補的な配列を有する8-mer乃至23-mer、好ましくは11-merの一本鎖DNA(ssDNA11-mer)にハイブリッド化合物38を組み込むことが可能である。
【0040】
本発明の修飾一本鎖DNAオリゴマーは,安定剤,緩衝液等を用いてまたは用いずに医薬組成物を形成することにより,任意の標準的な手段により,投与(例えば,RNA,DNAまたは蛋白質)し,被験者に導入することができる。リポソームデリバリーメカニズムを利用することが望ましい場合には,リポソームを形成する標準的なプロトコルにしたがうことができる。本発明の組成物はまた,経口投与用には錠剤,カプセルまたはエリキシルとして;直腸投与用には座剤として;滅菌溶液として;注入投与の用には懸濁液として,および当該技術分野において知られる他の組成物として,処方し使用することができる。
【0041】
薬学的に有効な用量は,疾患状態の予防,発症の阻害,または治療(症状をある程度緩和し,好ましくはすべての症状を緩和する)に必要な用量である。薬学的に有効な用量は,疾患の種類,用いる組成物,投与の経路,治療する哺乳動物の種類,考慮中の特定の哺乳動物の物理学的特性,同時に投与される薬剤,および医薬の分野の当業者が認識するであろう他の因子によって異なる。一般に,負に荷電したポリマーの効力に依存して,0.1mg/kg−100mg/kg体重/日の活性成分を投与する。
【0042】
以下、実施例をもって具体的に説明する。
なお、本実験で用いた分析機器およびオリゴヌクレオチドは以下の通りである.
(1)1H核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド、重メタノール。
(2)13C核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド、重メタノール。
(3)31P核磁気共鳴スペクトル(31P-NMR);
・Bruker DPX
400 NMR spectrometer
・測定溶媒;重クロロホルム、重ジメチルスルホキシド。
(4)質量スペクトル(MS);
・VG Auto
SpecE (Micro Mass)
・TSQ-700
(Thermoquest)
(5)元素分析;
・Elemental
Vavio EL
(6)薄層クロマトグラフィー(TLC);
・Merck
Kieselgel 60 F254 (上昇法によって展開)
・検出法:UV吸収(5% 硫酸−メタノール溶液を噴霧し、100〜150℃で加熱。アニスアルデヒド、エタノール、硫酸、水および酢酸の混合液に浸した後、100〜150℃で加熱。)
(7)カラムクロマトグラフィー;
・和光純薬工業 Wakogel
C-300
・関東化学シリカゲル 60N
(8)融点測定;
・柳本製作所のミクロ融点測定装置(未補正値を記載)
(9)HPLC;
・システム:Waters
600E
・UV検出器:Waters 490E
・記録計:Waters
741
・カラム:Waters
BONDASPHERE 5μC18 100Å
・検出波;260nm
・展開溶媒:0.1
M 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA pH 7)水溶液を用いて、5〜50%までアセトニトリルの濃度勾配をかけた。
(10)UV吸収スペクトル;
・島津製作所 UV-1600
(11)Tm解析システム;
・島津製作所製TMSPC-8
・円二色性分散計
JASCO J-720 spectropolarimeter
(12)緩衝液組成物(Beffer composition);
・10 mM sodium phosphate
・10 mM sodium chloride
・0.1 mM ethylenediaminetetraacetic acid,
disodium salt
・pH 7.0
(13)DNA;
・SIGMA Genosys Japanより購入
・スケール1μmole、脱塩処理
・Modified DNA(北海道システムサイエンス株式会社による委託合成。スケール1μmole、簡易カラム精製)
【0043】
[参考例1];N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(38)の合成;
[前工程1].2−トリクロロアセチル−1−メチルピロール(3)の合成;
【0044】
【化12】
塩化トリクロロアセチル(130mL、1.16mol)をアルゴン雰囲気下エーテル(250mL)に溶解し、0℃に冷却した。発熱に注意しながら、予めエーテル(250mL)に溶解した1−メチルピロール(100 mL、 1.12 mol)を滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、徐々に室温まで昇温させながら1時間攪拌した。2 M炭酸カリウム水溶液(300mL)を加え反応を停止し、有機層を分液操作により分離した。水層からエーテル(300mL×2)を用いて抽出を行い、全ての有機層をまとめた後、飽和塩化ナトリウム水溶液(300mL)により洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮することで、3を244 g (96%)得た。
【0045】
[前工程2].2−トリクロロアセチル−1−メチル−4−ニトロピロール(4)の合成;
【0046】
【化13】
上記化合物3 (2.14 g, 9.46 mmol)を無水酢酸(12 mL)に溶解、- 40 ℃に冷却した。温度を- 40 ℃に保ったまま、この溶液に発煙硝酸(0.83 mL)を滴下した。反応溶液を徐々に室温まで昇温し、さらに1時間撹拌した。反応溶液を再び- 20 ℃に冷却し、イソプロパノール(12 mL)を加え15分間撹拌した。その後- 20 ℃を保ったまま15分間静置し、生じた溶液中の結晶を吸引ろ過により採取した。結晶をイソプロパノールで洗浄後、減圧下乾燥し、白色の結晶を得た。さらに、ろ液を減圧下濃縮後、再びイソプロパノールを加え− 20 ℃で10分間攪拌し、生じた結晶を吸引ろ過により採取した。結晶をイソプロパノールで洗浄後、減圧下乾燥し、先に得られた結晶と合わせて、化合物4を2.01
g (78%)得た。
m.p.: 134-136 oC
【0047】
[前工程3].メチル 1−メチル−4−ニトロピロール−2−カルボン酸エステル(5)の合成;
【0048】
【化14】
前記化合物4 (15.0 g, 55.3 mmol)をアルゴン雰囲気下メタノール(20 mL)に溶解し、予めメタノール(5.0 mL)に溶解した水素化ナトリウム(60%) (0.2 g、 5.5 mmol)を滴下した。反応溶液を室温にて1時間撹拌した後、濃硫酸(0.3 mL、 5.5 mmol)を加えて反応を停止した。反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 mL)により中和後、残渣を酢酸エチル(200 mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×2)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)にて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、減圧下濃縮した。残渣を酢酸エチルで再結晶し、結晶を吸引ろ過により採取することで、化合物5を6.02
g (61%)得た。さらに、ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製し、化合物5を合計で9.78 g (96%)得た。
【0049】
[前工程4].4−(tert−ブトキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸(6)の合成;
【0050】
【化15】
前記化合物5 (6.00 g、 32.6 mmol)を酢酸エチル(200 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(2.00 g)を加えた。懸濁液を水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌し、その後セライトを用いてパラジウム炭素をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、直ちにアルゴン雰囲気下エーテル(30 mL)に溶解し、予めエーテル(20 mL)に溶解したジ-tert-ブチルジカルボネート(7.46 g、 34.2 mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮後、メタノール(100 mL)に溶解し、2 M水酸化ナトリウム水溶液(100 mL)を加え60 ℃で2時間攪拌した。減圧下濃縮によりメタノールを除去した後、残った水層をエーテル(50 mL×2)で洗浄した。水層を10%塩酸を用いてpH 3へと調整した後、酢酸エチル(200 mL×3)により抽出操作を行った。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(200 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去した後、有機層を減圧下濃縮し、残渣から酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行うことで、化合物6を6.97
g (89%)得た。
【0051】
[前工程5].メチル 4−{[4−(tert−ブチロキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル(7)の合成;
【0052】
【化16】
前記化合物5 (3.00 g、 16.3 mmol)を酢酸エチル(100 mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(1.00 g)を加えた。懸濁液を水素雰囲気下、室温で12時間激しく攪拌し、その後セライトを用いてパラジウム炭素をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、直ちにカルボン酸6 (3.92 g、 16.3 mmol)、 EDCI (6.25 g、 32.6 mmol)、 DMAP (3.98 g、 32.6 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (100 mL)に溶解し室温で3時間攪拌した。反応溶液を約三分の一まで減圧下濃縮し、酢酸エチル(200 mL)、メタノール(20 mL)の混合溶媒で希釈した。有機層を10%塩酸(100 mL×3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×3)、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、有機層を減圧下濃縮することで、化合物7を6.07
g (99%)得た。
【0053】
[前工程6].メチル 4−[(4−{[4−(tert-ブチルオキシカルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−カルボン酸エステル(8)の合成;
【0054】
【化17】
化合物7 (3.00 g, 7.97 mmol)をアルゴン雰囲気下酢酸エチル(20 mL)に溶解し、0 ℃に冷却した。メタノール(4.1 mL, 100 mmol)を加え、続いて塩化アセチル(5.7 mL, 80 mmol)を発熱に注意しながら滴下した。0 ℃で30分間攪拌後、減圧下濃縮することで溶媒および反応試薬を除去した。残渣にカルボン酸6(2.11
g, 8.77 mmol), EDCI (3.06 g, 15.94 mmol) 、 DMAP (2.92
g, 23.91 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (50 mL)に溶解し、室温で3時間攪拌した。反応溶液を約三分の一まで減圧下濃縮し、酢酸エチル(200 mL),メタノール(20 mL)の混合溶媒で希釈した。有機層を10%塩酸(100 mL×3) 、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL×3) 、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した.無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、有機層を減圧下濃縮することで,化合物8を3.90 g (98%)得た。
【0055】
[前工程7].3’,5’−ジ−O−アセチル−2−フルオロ−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(23)の合成;
【0056】
[前工程7−1].3’,5’−ジ−O−アセチル−2’−デオキシグアノシン(21)の合成;
【0057】
【化18】
2’-デオキシグアノシン(8.02 g, 30 mmol)をピリジンで3回共沸脱水し、アルゴン雰囲気下でDMF(24 mL)に溶解した。続いて4-ジメチルアミノピリジン(0.37 g, 3.0 mmol)、 ピリジン(24 mL) 、無水酢酸(22.1 mL , 240 mmol)を加えて、室温で3時間攪拌した。その後、反応溶液に水(10 mL)を加えて反応を止め、エタノール(200 mL)を加えて30分間攪拌した後、室温で放置した。生じた結晶を吸引ろ過し、結晶をエタノール(10 mL×3)で洗浄し、さらに2-プロパノール(100mL)で洗浄した後減圧下乾燥し、化合物21を8.92 g (85%)得た。
【0058】
[前工程7−2].3’,5’−ジ−O−アセチル−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(22)の合成;
【0059】
【化19】
化合物21(1.75 g, 5.0 mmol)を1,4-ジオキサンにより3回共沸脱水し、トリフェニルホスフィン(2.62 g, 10.0 mmol)、2-(4-ニトロフェニル)エタノール(1.67g,
10.0mmol)を加え、アルゴン雰囲気下で1,4-ジオキサン(50mL)
に溶解し、室温で15分間攪拌した.その後、反応溶液にアゾジカルボン酸ジフェニルエステル 40%トルエン溶液(4.5 mL, 10.0 mmol)を滴下し、室温で30分間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮した後、酢酸エチル(50 mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム(50 mL)で2回、さらに水(50 mL)、飽和食塩水(50 mL)で1回ずつ洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=1:3)で精製し、化合物22を2.30 g (92%)得た。
【0060】
[前工程7−3].3’,5’−ジ−O−アセチル−2−フルオロ−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル]−2’−デオキシグアノシン(23)の合成;
【0061】
【化20】
化合物22(0.50 g, 1.00 mmol)をピリジンにより3回共沸脱水し、- 30℃において45% フッ化水素/ピリジン溶液(4.8 mL)を加え、アルゴン雰囲気下で亜硝酸t-ブチル(0.36 mL, 3.00 mmol)を加え、室温に戻した後30分攪拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15 mL)で中和し、クロロホルム(30 mL)で3回抽出した後、水(50 mL)で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮した.残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:酢酸エチル=1:3)で精製し、化合物23を0.44 g (87%)得た。
【0062】
[前工程8].9−フルオレニルメチル 3−アミノプロピル−1−カルバメート塩酸塩(26)の合成;
【0063】
【化21】
化合物25(3.80 g, 12.0 mmol)をメタノール(50 mL)に懸濁させた。直ちに1,3-ジアミノプロパン(1.00 mL, 12.0 mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。やや透明になった反応溶液に、ピリジン塩酸塩(3.00 g,
26.0mmol)を加え、10分間攪拌した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーの展開溶媒(クロロホルム:メタノール=4:1)に懸濁し、シリカゲルを短く積んだカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)にて精製し、化合物26を3.25 g (82%)得た。ジアミンの片方を保護基で保護することは通常困難なことであるが、上記化合物によりこの目的を達成し得た。
m.p.: 129-130 oC
【0064】
[前工程9].1−メチルピロール−2−カルボン酸(32)の合成;
【0065】
【化22】
前記前工程1で合成した化合物3(5.00 g, 22.0 mmol)をメタノール(50 mL)に溶解し、2.0 M 水酸化ナトリウム水溶液(50 mL)を加えた。反応溶液を60 ℃に加温し、1時間攪拌した。減圧下メタノールを除去し、残った溶液を水(50 mL)で希釈し、エーテル(50 mL)で洗浄した。水層を10%塩酸によりpH 3程度に調整し、酢酸エチル(100 mL×3)により抽出した。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(150 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別除去した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を減圧下乾燥することで、化合物32を2.45 g (89%)得た。
m.p.:127-130 oC
【0066】
[前工程10].メチル 1−メチル−4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノピロール−2−カルボン酸エステル(33)の合成;
【0067】
【化23】
前工程6で合成した化合物8(100 mg, 0.20 mmol)をアルゴン雰囲気下メタノール(5.0 mL)に溶解し、0℃に冷却した。続いて塩化アセチル(1.7 mL, 23.9 mmol)を発熱に注意しながら滴下し、0℃で30分攪拌後、減圧下濃縮することで溶媒および反応試薬を除去した。残渣に化合物32 (27.7 mg, 0.22 mmol)、 EDCI(84.5 mg,
0.44mmol)、 DMAP (53.4 mg, 0.44 mmol)を加え、アルゴン雰囲気下DMF (2.0 mL)に溶解し80 ℃で1時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)によって精製し、化合物33を71.4 mg (73%)得た。
m.p.: 229-231 oC
【0068】
[前工程11].1−メチル−4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノピロール−2−カルボン酸(34)の合成;
【0069】
【化24】
化合物33(127 mg, 0.25 mmol)をメタノール(2.0 mL)に溶解し、2.0 M 水酸化ナトリウム水溶液(2 mL)を加えた。反応溶液を60 ℃に加温し、2時間攪拌した。減圧下メタノールを除去し、残った溶液を水(5 mL)で希釈し、エーテル(3 mL)で洗浄した。水層を10%塩酸によりpH 3程度に調整し、酢酸エチル(10 mL×3)により抽出した。有機層をひとつにまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(15 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、無水硫酸マグネシウムをろ別除去した。ろ液を減圧濃縮し、残渣を減圧下乾燥することで、化合物34を123 mg (quant.)得た。
m.p.: 180-182 oC
【0070】
[前工程12].9−フルオロレンニルメチル 3[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール2−イル)カルボニル]アミノピロピル−1−カルバメート(35)の合成;
【0071】
【化25】
化合物34(1.00 g, 2.04 mmol)と前記前工程8で合成した化合物26 (0.74
g, 2.24 mmol)を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.63 g, 3.06 mmol)および1-ヒドロキシベンズトリアゾール(0.41 g, 3.06 mmol)と共にアルゴン雰囲気下DMF (10 mL)に溶解し、ジイソプロピルエチルアミン(0.39 mL,
2.24mmol)を加えた後、室温で12時間攪拌した。その後、反応溶液を酢酸エチル(200 mL)で希釈し、10%塩酸(50mL×3)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL×3)、および飽和塩化ナトリウム水溶液(50 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムによって乾燥させた。無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、ろ液を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)によって精製することで化合物35を1.35 g
(86%)得た。
【0072】
[前工程13].3’,5’−ジ−O−アセチル−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノプロピル}−O6−[2−(4−ニトロフェニル)エチル−2’−デオキシグアノシン(36)の合成;
【0073】
【化26】
化合物35(1.00 g, 1.30 mmol)と前記前工程7−3で合成した化合物23
(0.69 g, 1.36 mmol)をアルゴン雰囲気下DMF (5.0 mL)に溶解した.続いて、トリエチルアミン(1.0 mL)を加え60 ℃で12時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=29:1)によって精製することで化合物36を1.07 g (79%)得た。
【0074】
[前工程14].3’,5’−ジ−O−アセチル−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(37)の合成;
【0075】
【化27】
化合物36(22.8 mg, 22μmol)を、アルゴン雰囲気下0.5 M DBU/ピリジン溶液(1.0 mL)に溶解した。室温で12時間攪拌した後、塩化アンモニウム(50.0 mg, 0.94 mmol)で反応を止めた。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=4:1)によって精製し、化合物37を15.6 mg (80%)得た。
【0076】
[前工程15].N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(38)の合成;
【0077】
【化28】
化合物37(60.0 mg, 76μmol)をアルゴン雰囲気下ピリジン(0.2 mL)に溶解した。続いて0.05Mナトリウムメトキシド/メタノール溶液(0.8 mL)を加え、室温で2時間攪拌した。Dowex-50(H+ form)を用いて反応溶液をpH 6とし、樹脂をろ別除去した。ろ液を減圧下濃縮後、残渣にメタノールを加え再結晶を行った。生じた結晶を吸引ろ過により採取し、化合物38を51.6 mg (97%)得た。
【実施例1】
【0078】
工程1.5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン(39)の合成;
【0079】
【化29】
化合物38(0.79 g, 0.99 mmol)をピリジンで2回共沸脱水し、塩化4,4’-ジメトキシトリチル(0.37
g, 1.09 mmol)を加えアルゴン雰囲気下ピリジン(5 mL)に溶解した。
室温で2時間攪拌した後、水(50 mL)によって反応を停止し、クロロホルム(100 mL)により3回抽出操作を行った。全ての有機層をまとめ、飽和塩化ナトリウム水溶液(100 mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去後、ろ液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=19:1)にて精製し、化合物39を0.90 g (83%)得た。
1H-NMR (DMSO-d6):δ10.66 (br, 1H, H-1), 9.93 (s,1H,
Py-NH), 9.89 (s, 1H, Py-NH), 9.82 (s, 1H, Py-NH), 8.06(s,
1H, H-8), 7.79 (t, 1H, J = 5.49 Hz, -CH2NH-), 7.34(d,
2H, J = 1.66 Hz, DMTr-H), 7.33-7.18 (m, 10H, DMTr-H), 7.06 (d, 2H,
J = 1.89 Hz, Py-H), 6.95-6.89 (m, 2H, Py-H), 6.84 (s,1H, Py-H),
6.81 (s,1H, Py-H), 6.80 (s,1H, Py-H), 6.78(s,1H, Py-H),6.43 (br, 1H, N2-H),6.20
(t, 1H, J = 6.42, H-1’), 6.06 (d, 1H, J = 2.54 Hz, Py-H), 5.32
(br, 1H, 3’-OH), 4.41 (t, 1H, J = 4.63 Hz, H-3’), 3.89 (s, 3H,
Py-CH3), 3.86 (s, 3H, Py-CH3’), 3.85(s, 3H,
Py-CH3’), 3.81 (s, 3H, Py-CH3’),3.72 (s,
6H, O-CH3), 3.24-3.22 (m, 5H, H-5’,-NHCH3×2), 3.10 (m, H1, H-5“), 2.72 (m, 1H,
H-2’), 2.29 (m, 1H, H-2”), 1.66 (m, 2H, -CH2CH2CH2-)
13C-NMR (DMSO-d6):δ161.45, 158.47, 158.01,
157.96,156.76,152.41, 150,42, 144,90, 135.91, 135.52, 29.68, 129.60, 128.10,
127.65, 126.56, 126.45, 122.89, 122.76, 122.17, 122.08, 118.41, 117.83,
117.212, 113.03, 112.62, 106.63, 104.71, 104.25, 85.66, 85.37, 82.81, 79.15,
70.73, 64.37,54.94, 38.07, 36.20, 36.06, 35.91, 29.32, 29.13
HRESIMS m/z :
1100.4739 (Calcd for C58H62N13O10 :
1100.4743)
Anal. Calcd for
C58H61N13O8 + 2H2O +
MeOH: C, 60.66; H, 5.95; N, 15.59
Found. C,
60.89; H, 5.89; N, 15.12
【0080】
工程9.5’−O−(4,4−ジメトキシトリチル)−N2−{3−[(4−{[4−({4−[(1−メチルピロール−2−イル)−カルボニル]アミノ−1−メチルピロール−2−イル}カルボニル)アミノ−1−メチルピロール−2−イル]カルボニル}アミノ−1−メチルピロール−2−イル)カルボニル]アミノプロピル}−2’−デオキシグアノシン−3’−O−イル−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト(40)の合成;
【0081】
【化30】
化合物39(0.178 g, 0.162 mmol)をアセトニトリルにより2回共沸脱水し、加熱減圧下で活性化させたモレキュラーシーブス(4Å, 100 mg)と共にアルゴン雰囲気下ジクロロメタン(0.5 mL)に溶解した。1-H-テトラゾールの0.5 M アセトニトリル溶液(0.356 ml)を加え室温で1時間攪拌し、系内の水をモレキュラーシーブスに吸着させた。その後2-シアノエチル-
N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(0.103 ml)を加え室温で3時間攪拌した。トリエチルアミン(0.045 ml)で反応を停止し、反応溶液を減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール:トリエチルアミン=99:0:1〜90:9:1)にて精製することで、化合物40を0.169 g (85%)得た。(DNA合成は北海道システムサイエンス株式会社に委託)
1H-NMR (DMSO-d6):δ10.67 (br, 1H, H-1), 9.89 (s,1H,
Py-NH), 9.85 (s, 1H, Py-NH), 9.82 (s, 1H, Py-NH), 8.04(s,
1H, H-8), 7.79 (t, 1H, J = 5.49 Hz, -CH2NH-), 7.32(d,
2H, J = 1.66 Hz, DMTr-H), 7.24-7.18 (m, 10H, DMTr-H), 7.05 (d, 2H,
J = 1.89 Hz, Py-H), 6.94 (m, 1H, DMTr-H), 6.93-6.76 (m,6H, Py-H),
6.58 (m,1H, N2-H), 6.24 (m,1H, H-1), 6.06 (dd,1H, J = 3.62 Hz,
J = 2.88 Hz, Py-H), 5.01 (m, 1H, H-3’), 3.88 (s, 3H, Py-CH3),
3.86 (s, 3H, Py-CH3’), 3.85 (s, 3H, Py-CH3’),
3.81 (s, 3H, Py-CH3’), 3.72 (s, 6H, O-CH3), 3.68
(m, 1H, H-5’), 3.60 (m, 1H, H-5“), 3.51 (m, 2H, -NHCH3)
3.26-3.14 (m, 6H, H-5’,-NHCH3×2), 2.87 (m,
1H, H-2’), 2.44 (m, 1H, H-2”), 1.63 (m, 2H, -CH2CH2CH2-),
1.09-0.95 (m, 14H, diisopropylamine group)
13C-NMR (DMSO-d6):δ161.45, 158.49, 158.05, 156.75,
152.44, 150,31, 144,79, 144.75, 135.89, 135.43, 135.36, 129.62, 128.09, 127.66,
127.58, 126.57, 125.45, 122.89, 122.77, 122.20, 122.09, 118.89, 118.68, 118.41,
117.78, 117.29, 117.17, 113.05, 118.41, 117.78, 117.29, 117.17, 113.05, 112.63,
106.62, 104.71, 104.24, 85.24, 85.49, 82.97, 73.35, 63.82, 63.66, 58.40, 58.28,
58.22, 58.10, 54.95, 45.66, 42.57, 37.97, 37.74, 45.66, 42.09, 42.57, 37.97,
37.74, 36.20, 36.06, 35.90, 29.07, 24.15, 24.08, 19.81, 19.74, 11.16
31P-NMR (DMSO- d6) : 149.50,
149.07
【実施例2】
【0082】
試験例;ピロールポリアミド4量体−2’-デオキシグアノシンハイブリッド化合物を組み込んだssDNAの相補鎖ssDNAに対する選択的相互作用の評価
【0083】
本発明のMGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物は生合成によりDNA内に組み込まれた際に、その近辺の配列にMGBポリアミドが特異的に認識するサイトを含む副溝に対してより優位に安定な水素結合を形成でき、一方でMGBポリアミドにとって特に認識しないサイトに対しては立体反発が強く起こることが予測され、これにより二重鎖安定化作用の優れた配列選択能を発揮することが期待できる。
ここでは、本発明に係るハイブリッド化合物38を組み込んだ下記7種の修飾一本鎖DNA(ssDNA。11-mer) をホスホルアミダイト法によって調製し、相補的な一本鎖DNAとのアニーリングによりdsDNA (修飾dsDNA (1)−修飾dsDNA (7))を形成させた。その熱力学的安定性および塩基配列選択能の評価を融解曲線の測定およびそのTm値を比較することで行った。比較対象としては未修飾dsDNA(未修飾dsDNA(1)−未修飾dsDNA(7))および未修飾dsDNAにディスタマイシン(Dst)Aを1当量添加した複合体(コンフ゜レックス(1) –コンフ゜レックス(7))を用いた。
【0084】
【表1】
【0085】
dsDNA (1)はピロールポリアミドの特異的に認識するサイト (5’
-AAATT- 3’ )を含む。またdsDNA(2)からdsDNA(6)に関してはセンス鎖の3’末端より特異的に認識するサイトのA-T塩基対を1組だけ順次G-C塩基対に置換しており、dsDNA(7)には特異的に認識するサイトに対してG-C塩基対を2組置換した。これら7種のdsDNAを用いハイブリッド化合物の塩基配列認識能の評価を行った。
その一部の具体的結果を書き表に数値をもって示す。
【0086】
【表2】
【0087】
修飾dsDNA(1)は、天然型dsDNAに特徴的な融解曲線を示したことからハイブリッド化合物を置換したことによる二重鎖形成への影響は生じていないことが判明した。親和性に関しては、Tm値の上昇(未修飾dsDNA(1);Tm = 32.4 oC、修飾dsDNA(1);Tm = 55.4 oC)からディスタマイシンAの添加と匹敵する(dsDNA(1) + Dst;Tm = 56.1 oC)二重鎖安定化作用を示すことが明らかになった。また、修飾dsDNA(3)のTm値と修飾dsDNA(5)のTm値はそれぞれ17.4°Cおよび16.7°Cであった。
しかし、修飾dsDNA(7)は、AATTTの2つのヌクレオチドがCおよびGで置換されており、二重鎖の安定性が低下していることが示された。
【0088】
一方、二本鎖DNA[5’-d(CGCAAATTGGC)-3', 3'-d(GCGTTTAACCG)-5']とハイブリッド2モノマー(3−アミノプロピニルをリンカーとしたピロールポリアミドーアデノシン;Ohba, Y., Kamaike, K., Terui, Y., Oshima, T., and Kawashima, E.,
(2003) Nucleic Acids Res. Supplement, 29~30)との複合体のDTm値および上記化合物(20)とのハイブリッド3モノマーとの複合体のDTm値は、それぞれ2.7°Cおよび5.5°Cであった。したがって、修飾一本鎖DNA(1)は、ハイブリッド2モノマーやハイブリッド3モノマーに比べ非常に高い結合能を有していることが明らかとなった。さらに、ピロールポリアミドの誘導CDスペクトルが観察されたことから、修飾二本鎖DNA(1)のピロールポリアミドは二本鎖DNAのマイナーグルーブに結合していることが確定した。
【0089】
続いて,ピロールポリアミドの特異的に認識するサイトトにG-C塩基対を1組導入した際の塩基配列選択能を評価するためにdsDNA(2)からdsDNA(6)に関してTm値を測定した。
その結果、修飾dsDNA(2)から修飾dsDNA(6)において全ての配列においてディスタマイシンAの添加と同等に安定な二重鎖を形成していることが読み取れ、本発明のハイブリッド化合物38を組み込んだ修飾dsDNAでは、dsDNA(2)からdsDNA(6)の配列においてG-C塩基対1組を識別することはできなかった。
そこで,ピロールポリアミドの特異的に認識するサイトを2組のG-C塩基対で置換したdsDNA(7)についてTm値の測定を行った。
また、修飾dsDNA(7) のDNA融解曲線はdsDNA (1)からdsDNA(6)に比べ明確なものではなく、熱的安定性 (修飾dsDNA(7) : Tm = 35.4 oC)はディスタマイシンAを添加したdsDNA(7) (Tm = 46.0 oC)と比較して大きく低下した。これはハイブリッド化合物38が、MGBポリアミドの特異的に認識するサイトとの2塩基対の違いを厳密に識別する能力を有していることを示しており、MGBポリアミドとヌクレオシドを結合することでMGBポリアミドの有する塩基配列選択能をさらに向上できることが見出された。
興味深いことに、修飾dsDNA(7)は未修飾体である未修飾dsDNA(7) (Tm = 38.6 oC)よりも低いTm値を示した。これは、ハイブリッド化合物の組み込まれた二重鎖に特異的に認識するサイトが存在しない場合、MGBポリアミドの強い立体反発により二重鎖の不安定化を引き起こしているものと推測される。
【0090】
次に、修飾dsDNA(1)および修飾dsDNA(7)に対してCDスペクトルの測定を行い、ハイブリッド化合物を組み込んだことによるdsDNAの示すスペクトルの相違を解析した。
B型DNAに特徴的な280 nm付近のCDバンドの強度はdsDNAの緩衝液中での塩基部のスタッキングの度合いを求める指標となる。修飾dsDNA(1)では未修飾dsDNA(1)と比較し、このCDバンドの強度にほとんど変化がなかった。これは緩衝液中で修飾dsDNA(1)が未修飾dsDNA(1)と同様な二重鎖を形成していることを示している。一方、修飾dsDNA (7)は280nm 付近のCDバンド強度は未修飾dsDNA(7)のCDバンド強度と比較し低下している。これは,MGBポリアミドの特異的に認識するサイトが存在しない配列においては修飾によるコンフォメーションの変化が生じ、修飾dsDNA(7)の塩基部のスタッキングが減少したことに起因すると考えられ、MGBポリアミドの存在により二重鎖構造の形成を不利にしていると推測することができる。この結果、ハイブリッド化合物を組み込んだdsDNAの塩基配列選択的な熱的安定化作用は緩衝液中での二重鎖形成の優位さに起因しているものであると考えられる。この作用は、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物をアンチセンスドラッグに応用することでさらに厳密な塩基配列選択能を発現することができる可能性を示している。
【0091】
ピロール四量体ハイブリッド化合物を組み込んだssDNAと相補鎖ssDNAとの二重鎖は特異的に認識するサイトを含むDNAおよび特異的に認識するサイトに対して1つのみG-C塩基対で置換したDNAにおいては、それぞれディスタマイシンAと同程度の親和性を示し、1塩基対の相違による配列選択性は見られなかった。一方、特異的に認識するサイトに対して2塩基対G-Cで置換したDNAに関しては大幅にTm値が低下しディスタマイシンAと比較して高い配列選択能を有することが明らかになった。さらに、ハイブリッドを組み込んだ特異的に認識するサイトを含むdsDNAと特異的に認識するサイトに2塩基対G-Cで置換したdsDNAのCDスペクトルからは、配列の違いにより二重鎖形成へ影響が出ていることが推測された。この作用はアンチセンスドラッグとして応用する際に、塩基配列の選択性を改善するにあたり非常に好ましい特徴であり、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物を用いた新規アンチセンスドラッグへの創製の可能性を見出した。
以上の検討から、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物がDNAに組み込まれた際にMGBポリアミドの特異的に認識するサイトに対する親和性を損なわず、DNAに対して高い配列特異性を有することを明らかにした。
本発明では,MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物の合成を達成し、このハイブリッド化合物が新規遺伝情報制御分子としての優れた機能を有することを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るピロール四量体ハイブリッド化合物を組み込んだ修飾ssDNAは、安定性及び配列選択性に優れ、この作用はアンチセンスドラッグとして応用する際に、塩基配列の選択性を改善するにあたり非常に好ましい特徴であり、MGBポリアミド−ヌクレオシド ハイブリッド化合物を用いた新規アンチセンスドラッグへ有効性が大いに期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAの一部がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項2】
ssDNAオリゴマーが8乃至23塩基である請求項1に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項3】
標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAが、その配列中に少なくとも1つのグアニン(G)と、アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項4】
アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むssDNAが、3’ -TTTAA- 5’(該3’ -TTTAA- 5’中の1個又は2個のアデニン(A)又はチミン(T)はシトシン(C)で置換されてもよい)である請求項3に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項5】
ssDNA中のグアニン(G)がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項6】
ピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物が下記式(38)で示される化合物である請求項1乃至5のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【化1】
【請求項7】
修飾ssDNAオリゴマーが、下記のいずれかの配列を含む請求項1乃至6に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
(ここで、Mは請求項6に記載の式(38)で示される化合物での置換を意味する。)
(1)3’-CGGTTTAAMGC-5’
(2)3’-CGGTTTACMGC-5’
(3)3’-CGGTTTCAMGC-5’
(4)3’-CGGTTCAAMGC-5’
(5)3’-CGGTCTAAMGC-5’
(6)3’-CGGCTTAAMGC-5’
又は
(7)3’-CGGTCTGAMGC-5’
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマーを有効成分とする医薬。
【請求項9】
抗癌剤又は抗ウイルス剤である請求項8に記載の医薬。
【請求項1】
標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAの一部がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項2】
ssDNAオリゴマーが8乃至23塩基である請求項1に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項3】
標的DNAに対応するヌクレオチド配列を含むssDNAが、その配列中に少なくとも1つのグアニン(G)と、アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項4】
アデニン(A)もしくはチミン(T)を3個以上連続して有する配列を含むssDNAが、3’ -TTTAA- 5’(該3’ -TTTAA- 5’中の1個又は2個のアデニン(A)又はチミン(T)はシトシン(C)で置換されてもよい)である請求項3に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項5】
ssDNA中のグアニン(G)がピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物で置換されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【請求項6】
ピロールアミド4量体を含む2’−デオキシグアノシンハイブリッド化合物が下記式(38)で示される化合物である請求項1乃至5のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマー。
【化1】
【請求項7】
修飾ssDNAオリゴマーが、下記のいずれかの配列を含む請求項1乃至6に記載の修飾ssDNAオリゴマー。
(ここで、Mは請求項6に記載の式(38)で示される化合物での置換を意味する。)
(1)3’-CGGTTTAAMGC-5’
(2)3’-CGGTTTACMGC-5’
(3)3’-CGGTTTCAMGC-5’
(4)3’-CGGTTCAAMGC-5’
(5)3’-CGGTCTAAMGC-5’
(6)3’-CGGCTTAAMGC-5’
又は
(7)3’-CGGTCTGAMGC-5’
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の修飾ssDNAオリゴマーを有効成分とする医薬。
【請求項9】
抗癌剤又は抗ウイルス剤である請求項8に記載の医薬。
【公開番号】特開2007−252229(P2007−252229A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77845(P2006−77845)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 主催者名 日本化学会、日本薬学会 刊行物名 ポスター 発行年月日 平成17年9月20日 研究集会名 第4回国際核酸化学シンポジウム 発表者 川島悦子外3名 開催日 平成17年9月20日〜22日
【出願人】(592068200)学校法人東京薬科大学 (32)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 主催者名 日本化学会、日本薬学会 刊行物名 ポスター 発行年月日 平成17年9月20日 研究集会名 第4回国際核酸化学シンポジウム 発表者 川島悦子外3名 開催日 平成17年9月20日〜22日
【出願人】(592068200)学校法人東京薬科大学 (32)
【Fターム(参考)】
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