説明

ピン配置決定プログラム、ピン配置決定装置及びピン配置決定方法

【課題】信号の損失や信号への雑音を考慮しつつ、コネクタのピン配置を容易に決定できるピン配置決定プログラム、ピン配置決定装置及びピン配置決定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンピュータを、プリント板のコネクタに接続された各配線における配線損失及び雑音量から各配線の波形劣化量を算出する波形劣化量算出手段25と、各配線の波形劣化量と判定基準とを比較し、該波形劣化量が該判定基準を上回る配線を判定する判定手段26と、判定した配線が接続されたコネクタの該当ピンを、波形劣化量が判定基準を下回ると判定されるように、雑音量が少ないコネクタの入れ替え対象ピンと入れ替えるピン配置入替手段22として機能させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコネクタのピン配置を決定するピン配置決定プログラム、ピン配置決定装置及びピン配置決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル電子機器に求められる情報処理量は増加の一途を辿っている。これにともない、デジタル電子機器は機器内の信号速度が速くなっている。また、デジタル電子機器は機器内の配線数も増大している。このため、デジタル電子機器のプリント板設計の分野においては、信号端子の配置を自動的に決定する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−245129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
信号端子の配置を自動的に決定する従来の手法は、基板上に仮配置された隣接する信号端子間の信号強度差の総和値を算出し、最小となる総和値を得た仮配置を本配置として決定するものであり、信号の損失や信号への雑音を考慮しつつ、信号端子の配置を自動的に決定するものではない。
【0005】
したがって、信号の損失や信号への雑音を考慮しつつ、コネクタのピン配置を決定するためには、設計者がコネクタの仮ピン配置を決め、波形シミュレータなどで検証を行う必要があった。そして、検証の結果が許容できないものであった場合、設計者はコネクタの仮ピン配置を見直し、再度、検証を行わなければならず、非常に手間が掛かっていた。
【0006】
本発明の一実施形態は、信号の損失や信号への雑音を考慮しつつ、コネクタのピン配置を容易に決定できるピン配置決定プログラム、ピン配置決定装置及びピン配置決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、コンピュータを、プリント板のコネクタに接続された各配線における配線損失及び各配線における雑音量から各配線の波形劣化量を算出する波形劣化量算出手段と、算出した各配線の波形劣化量と判定基準とを比較し、該波形劣化量が該判定基準を上回る配線を判定する判定手段と、前記判定基準を上回ると判定した配線が接続された前記コネクタの該当ピンを、前記波形劣化量が前記判定基準を下回ると判定されるように、雑音量が少ない前記コネクタの入れ替え対象ピンと入れ替えるピン配置入替手段として機能させるためのピン配置決定プログラムである。
【0008】
なお、本発明の一実施形態の構成要素、表現又は構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、信号の損失や信号への雑音を考慮しつつ、コネクタのピン配置を容易に決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例のピン配置決定装置の一例のハードウェア構成図である。
【図2】本実施例のピン配置決定装置の一例のブロック構成図である。
【図3】本実施例のピン配置決定装置の処理手順を表した一例のフローチャートである。
【図4】接続情報により表されるPIU間の配線の一例のイメージ図である。
【図5】接続情報としてのネットリストを表した一例の構成図である。
【図6】PIU配置により表されるコネクタの配置の一例のイメージ図である。
【図7】PIU配置としての座標情報を表した一例の構成図である。
【図8】基本ピン配置ルールを入力させる画面の一例のイメージ図である。
【図9】基本ピン配置ルールとして「異なる配線グループの隣接あり/なし」を選択したときの一例のピン配置である。
【図10】判定基準を入力させる画面の一例のイメージ図である。
【図11】判定基準を自動算出する方法の一例を示す説明図である。
【図12】プリント板配線の損失係数を入力させる画面の一例のイメージ図である。
【図13】ステップS2の処理手順を表した一例のフローチャートである。
【図14】接続先PIUの認識を行う処理の一例のイメージ図である。
【図15】コネクタ間距離の認識を行う処理の一例のイメージ図である。
【図16】出力ピンの配置を行う処理の一例のイメージ図である。
【図17】入力ピンの配置を行う処理の一例のイメージ図である。
【図18】各配線の配線長を算出する処理の一例のイメージ図である。
【図19】雑音量を計算する処理の一例のイメージ図である。
【図20】波形劣化量を算出する処理の一例のイメージ図である。
【図21】ステップS7の処理前の一例のイメージ図である。
【図22】ステップS7の処理後の一例のイメージ図である。
【図23】ステップS8の処理を説明する為の一例の説明図である。
【図24】ステップS6〜S9の判定を波形シミュレーションで行う処理の一例の説明図である。
【図25】波形劣化量が判定基準を上回った全てのピンについて、雑音量が少ない同数のピンと入れ替える処理の一例の説明図である。
【図26】本実施例のピン配置決定装置の処理手順を表した他の例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明していく。なお、本実施例のピン配置決定装置は設計CAD装置など、コネクタのピン配置を決定する他の装置への適用も可能である。
【0012】
(ハードウェア構成)
図1は本実施例のピン配置決定装置の一例のハードウェア構成図である。ピン配置決定装置1はスタンドアローンの形態でも、インターネットやLAN等のネットワーク経由でユーザ端末にデータ通信可能に接続された形態でもよい。
【0013】
図1のピン配置決定装置1は、バス19で相互に接続されている入力装置11、出力装置12、記録媒体読取装置13、補助記憶装置14、主記憶装置15、演算処理装置16及びインターフェース装置17を有する。
【0014】
入力装置11はキーボードやマウス等である。入力装置11は、各種信号を入力するために用いられる。出力装置12はディスプレイ装置等である。出力装置12は、各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。インターフェース装置17は、モデム又はLANカード等である。インターフェース装置17は、ネットワークに接続する為に用いられる。
【0015】
本実施例のピン配置決定プログラムは、ピン配置決定装置1を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。ピン配置決定プログラムは例えば記録媒体18の配布やネットワークからのダウンロードなどによって提供される。ピン配置決定プログラムを記録した記録媒体18は、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0016】
ピン配置決定プログラムを記録した記録媒体18が記録媒体読取装置13にセットされると、ピン配置決定プログラムは、記録媒体18から記録媒体読取装置13を介して補助記憶装置14にインストールされる。なお、ネットワークからダウンロードされたピン配置決定プログラムはインターフェース装置17を介して補助記憶装置14にインストールされる。補助記憶装置14は、インストールされたピン配置決定プログラムの他、必要なファイル、データ等を格納する。
【0017】
主記憶装置15は、ピン配置決定装置1の起動時に補助記憶装置14からピン配置決定プログラムを読み出して格納する。演算処理装置16は主記憶装置15に格納されたピン配置決定プログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0018】
(ブロック構成)
図2は本実施例のピン配置決定装置の一例のブロック構成図である。ピン配置決定装置1は、条件入力部21、ピン配置作成部22、配線損失計算部23、雑音計算部24、波形劣化量算出部25、判定部26、条件DB27を有する。
【0019】
条件入力部21は、ユーザから接続情報、PIU(プラグインユニット)配置、基本ピン配置ルール、判定基準、プリント板配線の損失係数などの条件の入力を受け付ける。なお、PIUとはマザーボードに配置されたコネクタに差し込むプリント板である。ピン配置作成部22は、コネクタのピンについて仮ピン配置の決定、仮ピン配置におけるピンの入れ替えを行う。
【0020】
配線損失計算部23は、コネクタの仮ピン配置、PIU配置、接続情報から配線長を算出し、配線長を配線による信号の損失(以下、配線損失という)に換算する。雑音計算部24は、コネクタの仮ピン配置、配線損失から各配線における雑音量を計算する。波形劣化量算出部25は、各配線について波形品質を判断する指標として後述の波形劣化量を算出する。
【0021】
判定部26は、判定基準に対する波形劣化量の判定、仮ピン配置におけるピンの入れ替え効果の判定を行う。条件DB27はユーザから入力された接続情報、PIU配置、基本ピン配置ルール、判定基準などの条件を格納する。
【0022】
(処理内容)
図2に示した本実施例のピン配置決定装置1は、例えば図3に示すフローチャートの手順に従って処理を行う。図3は本実施例のピン配置決定装置の処理手順を表した一例のフローチャートである。
【0023】
ステップS1に進み、条件入力部21はユーザから接続情報、PIU配置、基本ピン配置ルール、判定基準、プリント板配線の損失係数などの条件の入力を受け付け、入力された条件を条件DB27に格納させる。
【0024】
ステップS2に進み、ピン配置作成部22はコネクタのピンについて仮ピン配置の決定を行う。ステップS3に進み、配線損失計算部23は、コネクタの仮ピン配置、PIU配置、接続情報から配線長を算出し、配線長から配線損失を計算する。
【0025】
ステップS4に進み、雑音計算部24は、コネクタの仮ピン配置、配線損失から各配線における雑音量を計算する。ステップS5に進み、波形劣化量算出部25は、各配線について波形品質を判断する指標としての波形劣化量を、配線損失及び雑音量から後述のように算出する。
【0026】
ステップS6に進み、判定部26は波形劣化量と判定基準とを比較して判定を行う。波形劣化量が判定基準を下回った(基準判定OK)場合、判定部26は波形劣化量が許容できると判定し、現在の仮ピン配置を本ピン配置に決定する。
【0027】
また、波形劣化量が判定基準を上回った(基準判定NG)場合、判定部26は波形劣化量が許容できないと判定する。波形劣化量が判定基準を上回ると、ピン配置作成部22はステップS7に進み、雑音量が最も少ないピンを入れ替え対象ピンとして抽出し、波形劣化量が判定基準を上回ったピンと入れ替える。ステップS8に進み、判定部26は仮ピン配置におけるピンの入れ替え効果の判定を行う。
【0028】
ピン入れ替え効果ありと判定されると、判定部26はステップS6に戻る。ピン入れ替え効果なしと判定されると、ピン配置作成部22はステップS9に進み、入れ替え対象ピンの変更を行ったあと、ステップS8に戻る。
【0029】
(ステップS1の詳細)
ステップS1において、条件入力部21はユーザから接続情報、PIU配置、基本ピン配置ルール、判定基準、プリント板配線の損失係数などの各種条件を入力される。例えば条件入力部21は接続情報としてPIU間の配線の接続情報を入力される。PIU間の配線の接続情報としては一般的なネットリストが考えられる。
【0030】
ネットリストを作成するツールとしては、一般的な設計CADなどが考えられる。図4は接続情報により表されるPIU間の配線の一例のイメージ図である。図5は接続情報としてのネットリストを表した一例の構成図である。図5に示すネットリストは、ネット番号と、二つの接続端子情報とを含む。ネットリストに含まれる接続端子情報は、部品、端子及び入出力種別を含む。入出力種別は、各配線の伝送方向を特定するものである。
【0031】
また、条件入力部21はPIU配置としてマザーボードにおけるコネクタの配置を入力される。図6はPIU配置により表されるコネクタの配置の一例のイメージ図である。図7はPIU配置としての座標情報を表した一例の構成図である。図7に示すように、PIU配置は例えばコネクタに設定した基準点の座標で表される。
【0032】
また、条件入力部21は、基本ピン配置ルールとして雑音を少なくするための基本的なルールを入力される。図8は、基本ピン配置ルールを入力させる画面の一例のイメージ図である。図8では基本ピン配置ルールとして「異なる配線グループの隣接あり/なし」をチェックボックスで選択させる。なお、配線グループを決定する項目は配線(信号)の伝送方向、接続素子(送受信素子)の品種、接続先PIUなどとする。
【0033】
図9は基本ピン配置ルールとして「異なる配線グループの隣接あり/なし」を選択したときの一例のピン配置である。図9(A)は「異なる配線グループの隣接あり」を選択したときのピン配置を表している。図9(B)は「異なる配線グループの隣接なし」を選択したときのピン配置を表している。例えば図9(A)は異なる配線グループ同士が隣接している。また、図9(B)は異なる配線グループ同士が隣接していない。
【0034】
また、条件入力部21は、判定基準としてピン配置に対する合否の判定基準を図10のように入力される。図10は判定基準を入力させる画面の一例のイメージ図である。図10では判定基準として配線損失及び雑音量の双方を考慮した波形劣化量に対する判定基準をダイアログボックスから入力させる。
【0035】
なお、判定基準は送信素子の出力振幅(定格)及び受信素子の入力振幅(定格)から図11に示すように自動算出することもできる。図11は判定基準を自動算出する方法の一例を示す説明図である。図11では、送信素子の出力振幅と受信素子の入力振幅との差分をデシベル(dB)計算で求め、波形劣化に許容できる量である判定基準とする。図11に示した判定基準を自動算出する方法は、例えば以下の式(1)で表すことができる。
【0036】
【数1】

【0037】
また、条件入力部21は、プリント板配線の損失係数を図12のように入力される。図12はプリント板配線の損失係数を入力させる画面の一例のイメージ図である。プリント板配線の損失係数は、プリント板配線の配線長を配線による信号の損失に換算するためのものである。図12のプリント板配線の損失係数は単位をdB/mとしている。
【0038】
(ステップS2の詳細)
ステップS2において、ピン配置作成部22は入力された基本ピン配置ルールに従って仮ピン配置を決定する。このとき、ピン配置作成部22は物理的な距離の大きいPIU同士の接続から順に、直線距離が短くなるように仮ピン配置を決定する。例えばピン配置作成部22はコネクタのピンについて仮ピン配置を例えば図13のフローチャートに示すように決定する。
【0039】
図13はステップS2の処理手順を表した一例のフローチャートである。ステップS11に進み、ピン配置作成部22は接続先PIUの認識を行う。ステップS12に進み、ピン配置作成部22はコネクタ間距離の認識を行う。ステップS13に進み、ピン配置作成部22は基本ピン配置ルールに従って出力ピンの配置を行う。また、ピン配置作成部22はステップS14に進み、基本ピン配置ルールに従って入力ピンの配置を行う。
【0040】
図14は接続先PIUの認識を行う処理の一例のイメージ図である。ピン配置作成部22は入力された接続情報から該当コネクタが接続されるPIUを認識する。例えば図14の例では該当コネクタ(2)が接続される接続先コネクタ(3)から接続先PIUの認識を行う。
【0041】
図15はコネクタ間距離の認識を行う処理の一例のイメージ図である。ピン配置作成部22は、入力された接続情報(例えばネットリスト)から認識した全ての接続先コネクタについて、図7の座標情報から該当コネクタ及び接続先コネクタに設定した基準点の座標を認識し、該当コネクタ及び接続先コネクタの基準点間の直線距離をコネクタ間距離として認識する。
【0042】
図16は出力ピンの配置を行う処理の一例のイメージ図である。ピン配置作成部22はステップS12で認識したコネクタ間距離の長いものから順に、出力ピンの仮ピン配置を行う。このとき、ピン配置作成部22は接続先PIUのコネクタ(接続先コネクタ)の基準点に、最も直線距離が短い(最短距離)の該当コネクタの該当ピン(図16中に示した◎のピン)に、該当する信号を割り当てる。
【0043】
このとき、基本ピン配置ルールで異なる配線グループ(例えば信号の伝送方向)の隣接なしが選択されていた場合、ピン配置作成部22は決定された仮ピン配置について隣接ピンの入出力種別の判定を実施する。ピン配置作成部22は、該当ピン及び隣接ピンの入出力種別が異なる場合、該当ピンを候補から除外し、次の候補を同様の手法で検索する。
【0044】
図17は入力ピンの配置を行う処理の一例のイメージ図である。ピン配置作成部22は出力ピンと同様、ステップS12で認識したコネクタ間距離の長いものから順に、入力ピンの仮ピン配置を行う。図17では出力ピン、入力ピンの他、異なる配線グループ(例えば信号の伝送方向)の隣接なしが選択されていた場合の配置禁止ピンを表している。
【0045】
(ステップS3の詳細)
ステップS3において、配線損失計算部23は仮ピン配置における各配線の配線長を算出し、配線長から配線損失を計算する。図18は各配線の配線長を算出する処理の一例のイメージ図である。配線損失計算部23は配線の折り曲げを直角かつ最小回数として配線長を算出する。配線損失計算部23は算出した配線長と、条件として入力されたプリント板配線の損失係数とに基づき、以下の式(2)から配線の配線損失を計算する。なお、配線長の算出は、一般的に市販されている自動配線ツール等の機能を利用して行うこともできる。
【0046】
配線損失(dB)=配線長(m)×プリント板配線の損失係数(dB/m)…(2)
【0047】
(ステップS4の詳細)
ステップS4において、雑音計算部24は各配線の仮ピン配置、配線損失から該当コネクタで発生する雑音を計算する。なお、雑音計算部24は該当コネクタで発生する雑音を既存の方法で計算すればよい。ここでは、該当コネクタで発生する雑音を計算する処理の一例を図19に示す。
【0048】
図19は、雑音量を計算する処理の一例のイメージ図である。雑音計算部24はコネクタ単体における雑音発生、配線損失による雑音源、雑音の減衰を表現するDBから該当条件における雑音を計算できる。例えば図19に示す雑音量を計算する処理では、雑音源振幅の違い、配線長の違い、入出力種別の違いに基づき、雑音量を計算する。
【0049】
表51は各コネクタのピン位置におけるクロストーク量を表している。表51において対象ネットとは雑音量を計算する該当ピンを表す。例えば「種別A:1%」とは該当ピンに対して1%の雑音を与える入出力種別Aのピンを表す。
【0050】
雑音計算部24は表51について種別ごとに集計し、種別A合計5%、種別B合計7%を得る。また、雑音計算部24は種別A合計5%及び種別B合計7%を、総クロストーク量を100%としたときの占有率に換算し、種別A占有率42%、種別B占有率58%を得る。
【0051】
雑音計算部24は雑音源振幅及び配線長について、占有率をもとに平均化を行い、それぞれを統合化する。そして、雑音計算部24は統合化により簡略化したモデルによる波形シミュレーションで最終的な雑音量を求めることができる。
【0052】
(ステップS5の詳細)
ステップS5において、波形劣化量算出部25は各配線について波形品質を判断する指標として、配線損失及び雑音量の双方による波形劣化量を算出する。波形劣化量は配線損失に、雑音による劣化量を一般的な手法でdB換算した数値を加算する式(3)により得ることができる。
【0053】
波形劣化量(dB)=配線損失(dB)+雑音による劣化量(dB)…(3)
【0054】
なお、雑音による劣化量を一般的な手法でdB換算した数値は式(4)により得ることができる。式(4)は雑音があったときと無かったときの許容される波形劣化量の差分を求めることで実現している。式(4)における入力振幅及び出力振幅は、それぞれ受信素子の入力振幅及び送信素子の出力振幅である。
【0055】
【数2】

【0056】
入力振幅(v)は式(5)により得ることができる。
【0057】
【数3】

【0058】
図20は波形劣化量を算出する処理の一例のイメージ図である。波形劣化量算出部25は図20に示すように、配線損失及び雑音量の双方による波形劣化量を加算することで算出する。
【0059】
(ステップS6の詳細)
ステップS6において、判定部26は算出した各配線の波形劣化量から最も波形劣化量が大きい配線を抽出し、条件DB27に格納された判定基準と比較して判定を行う。算出した各配線の波形劣化量から最も波形劣化量が大きい配線を抽出する処理は例えば一般的なプログラムに用意されているMAX関数を用いることが考えられる。
【0060】
判定部26は波形劣化量が判定基準を下回った(基準判定OK)場合、波形劣化量が許容できると判定し、現在の仮ピン配置を本ピン配置に決定する。また、判定部26は波形劣化量が判定基準を上回った(基準判定NG)場合、波形劣化量が許容できないと判定してステップS7に進む。
【0061】
(ステップS7の詳細)
ステップS7において、ピン配置作成部22はステップS6で判定基準を上回る波形劣化量であると判定された配線が含まれるPIUについて、雑音量が最も少ないピンを入れ替え対象ピンとして抽出する。ピン配置作成部22は抽出した入れ替え対象ピンを、波形劣化量が判定基準を上回ったピンと入れ替える。なお、ピン配置作成部22はステップS6で判定基準を上回る波形劣化量であると判定された配線について、収容しているコネクタが複数あれば、それぞれのコネクタについてステップS7の処理を行う。
【0062】
図21はステップS7の処理前の一例のイメージ図である。図22はステップS7の処理後の一例のイメージ図である。図21では該当コネクタ61のピン66が配線64により接続先コネクタ62に接続されている。また、図21では該当コネクタ61のピン67が配線65により接続先コネクタ63に接続されている。
【0063】
ここでは配線64が判定基準を上回る波形劣化量であると判定されたとする。ピン配置作成部22は判定基準を上回る波形劣化量であると判定された配線64が接続される該当コネクタ61について、例えば雑音量が最も少ないピン67を入れ替え対象ピンとして抽出する。そして、ピン配置作成部22は抽出した入れ替え対象ピン67を、波形劣化量が判定基準を上回ったピン66と入れ替える。
【0064】
ステップS7の処理後を示す図22では、該当コネクタ61のピン66が配線65により接続先コネクタ63に接続されている。また、図22では該当コネクタ61のピン67が配線64により接続先コネクタ62に接続されている。このように、ピン配置作成部22は雑音量が最も少ないピンを、波形劣化量が判定基準を上回ったピンと入れ替える。
【0065】
(ステップS8の詳細)
ステップS8において、判定部26はコネクタのピンを入れ替えた双方の配線について波形劣化量を再度計算する。判定部は、ステップS6において抽出した最も波形劣化量が大きい配線の波形劣化量を、双方の波形劣化量が下回っていれば、入れ替え効果ありと判定し、ステップS6の処理に戻る。また、判定部は、ステップS6において抽出した最も波形劣化量が大きい配線の波形劣化量を、少なくとも一方の波形劣化量が上回っていれば入れ替え効果なしと判定し、ステップS9の処理に進む。
【0066】
図23はステップS8の処理を説明する為の一例の説明図である。図23(A)はピン配置作成部22によるピンの入れ替え前の条件及び波形劣化量の計算結果を表す。ピンの入れ替え前、最も波形劣化量が大きい配線の波形劣化量は12.9dBであり、判定基準である12.0dBを上回っている。
【0067】
図23(B)はピン配置作成部22によるピンの入れ替え後の条件及び波形劣化量の計算結果を表す。ピンの入れ替え後、最も波形劣化量が大きい配線の波形劣化量は11.6dBである。判定部26はピンの入れ替え後の最も大きい波形劣化量11.6dBがピンの入れ替え前の最も大きい波形劣化量12.9dBを下回っているため、入れ替え効果ありと判定する。
【0068】
(ステップS9の詳細)
ステップS9において、ピン配置作成部22は現在の入れ替え対象ピンの次に雑音量が少ないピンを新たな入れ替え対象ピンとして抽出し、ステップS8の処理に戻る。
【0069】
(シミュレーションによる判定)
上記した実施例において、ステップS6〜S9の判定は配線損失及び雑音量の双方を考慮した総合的な指標により行っている。これに対し、ステップS6〜S9の判定は、波形シミュレーションで行うことにより判定の精度を向上させることができる。また、波形シミュレーションで行う場合は、プリエンファシス、イコライザなど送受信素子の損失補償機能の効果も盛り込むことができるので、改善施策の自由度が向上する。
【0070】
図24はステップS6〜S9の判定を波形シミュレーションで行う処理の一例の説明図である。図24の例では、モデル出力プログラム71、雑音算出プログラム72、ライブラリ73を用いて波形シミュレーションに必要なデータ74を作成して波形シミュレータ75へ入力することで、入力ピンにおけるアイパターン76を得ることができる。
【0071】
アイパターン76はマスク77及び雑音78により表される。マスク77に雑音78が重なっていないアイパターン76は波形劣化量が許容できることを表している。また、マスク77に雑音78が重なっているアイパターン76は波形劣化量が許容できないことを表している。
【0072】
(仮ピン配置における複数ピンの入れ替え)
上記した実施例では、雑音量が最も少ないピンと、波形劣化量が判定基準を上回ったピンのうち波形劣化量が最大のピンとを入れ替え、仮ピン配置におけるピンの入れ替え効果の判定を行っている。これに対し、ステップS7の処理では、波形劣化量が判定基準を上回った全てのピンについて、雑音量が少ない同数のピンと入れ替えることにより、計算手続を削減し、時間を短縮することができる。
【0073】
図25は、波形劣化量が判定基準を上回った全てのピンについて、雑音量が少ない同数のピンと入れ替える処理の一例の説明図である。図25は、順位が3位までのピンが判定基準を上回った例を表している。図25の場合は、順位が3位までのピンについて、波形劣化量が判定基準を下回った同数のピン(例えば順位が下位3位までのピン)と入れ替えられる。
【0074】
(他の処理内容)
図26は、本実施例のピン配置決定装置の処理手順を表した他の例のフローチャートである。なお、図26のフローチャートは図3のフローチャートと一部を除いて同様であるため、適宜説明を省略する。
【0075】
図26のフローチャートは、ユーザが決めた仮ピン配置を初期値とし、仮ピン配置の入れ替えによる波形劣化量の改善を実施できるようにしている。図26のフローチャートは例えば類似のプリント板のピン配置を流用する場合に、時間短縮を可能とする。
【0076】
ステップS21に進み、条件入力部21はユーザから接続情報、PIU配置、基本ピン配置ルール、判定基準、プリント板配線の損失係数などの条件の他、仮ピン配置の入力を受け付け、入力された条件を条件DB27に格納させる。なお、ステップS22以降の処理は、図3のステップS3〜S9と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
(まとめ)
本実施例のピン配置決定装置1によれば、配線損失及び雑音量の双方を考慮した波形劣化量に対する判定基準を用いてコネクタのピン配置を決定することにより、ユーザの手戻りの発生を抑制できる。
【0078】
本実施例によるピン配置決定方法はWEBサービス等によっても実現可能である。本実施例によるピン配置決定プログラムはパッケージソフト,ダウンロード等によって提供可能である。本実施例によるピン配置決定プログラムはバッチファイル等によって実現されるものであってもよい。
【0079】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 ピン配置決定装置
11 入力装置
12 出力装置
13 記録媒体読取装置
14 補助記憶装置
15 主記憶装置
16 演算処理装置
17 インターフェース装置
18 記録媒体
19 バス
21 条件入力部
22 ピン配置作成部
23 配線損失計算部
24 雑音計算部
25 波形劣化量算出部
26 判定部
27 条件DB
51 表
61 該当コネクタ
62、63 接続先コネクタ
64、65 配線
66 ピン
67 入れ替え対象ピン
71 モデル出力プログラム
72 雑音算出プログラム
73、74 ライブラリ
75 波形シミュレータ
76 アイパターン
77 マスク
78 雑音

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
プリント板のコネクタに接続された各配線における配線損失及び各配線における雑音量から各配線の波形劣化量を算出する波形劣化量算出手段と、
算出した各配線の波形劣化量と判定基準とを比較し、該波形劣化量が該判定基準を上回る配線を判定する判定手段と、
前記判定基準を上回ると判定した配線が接続された前記コネクタの該当ピンを、前記波形劣化量が前記判定基準を下回ると判定されるように、雑音量が少ない前記コネクタの入れ替え対象ピンと入れ替えるピン配置入替手段と
して機能させるためのピン配置決定プログラム。
【請求項2】
前記波形劣化量算出手段は、前記配線損失に、前記雑音量をデシベル(dB)換算した数値を加算することで前記波形劣化量を算出する
請求項1に記載のピン配置決定プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータを、更に、接続情報から各配線の配線長を算出し、該配線長と、前記プリント板の配線の損失係数とに基づき、各配線における配線損失を計算する配線損失計算手段と
して機能させるための請求項2に記載のピン配置決定プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを、更に、各配線が接続された前記コネクタで発生する雑音量を、前記コネクタのピン配置及び前記配線損失から計算する雑音計算部と
して機能させるための請求項3に記載のピン配置決定プログラム。
【請求項5】
前記ピン配置入替手段は、前記判定基準を上回ると判定した配線が接続された前記コネクタの該当ピンを、前記波形劣化量が前記判定基準を下回ると判定されるまで、雑音量が少ない順に、前記コネクタの入れ替え対象ピンを変更する
請求項2乃至4何れか一項記載のピン配置決定プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、更に、異なる配線グループの隣接あり/なしを選択した基本ピン配置ルールに従って前記コネクタの仮ピン配置を決定するピン配置作成手段と
して機能させるための請求項2乃至5何れか一項記載のピン配置決定プログラム。
【請求項7】
前記配線グループは、配線(信号)の伝送方向、接続素子(送受信素子)の品種、接続先PIUの少なくとも一つにより決定される
請求項6記載のピン配置決定プログラム。
【請求項8】
前記判定手段は、前記波形劣化量が前記判定基準を上回る配線を波形シミュレーションにより判定する請求項2乃至7何れか一項記載のピン配置決定プログラム。
【請求項9】
コネクタのピン配置を決定するピン配置決定装置であって、
プリント板のコネクタに接続された各配線における配線損失及び各配線における雑音量から各配線の波形劣化量を算出する波形劣化量算出手段と、
算出した各配線の波形劣化量と判定基準とを比較し、該波形劣化量が該判定基準を上回る配線を判定する判定手段と、
前記判定基準を上回ると判定した配線が接続された前記コネクタの該当ピンを、前記波形劣化量が前記判定基準を下回ると判定されるように、雑音量が少ない前記コネクタの入れ替え対象ピンと入れ替えるピン配置入替手段と
を有するピン配置決定装置。
【請求項10】
コンピュータによって実行されるピン配置決定方法であって、
前記コンピュータが、
プリント板のコネクタに接続された各配線における配線損失及び各配線における雑音量から各配線の波形劣化量を算出する波形劣化量算出ステップと、
算出した各配線の波形劣化量と判定基準とを比較し、該波形劣化量が該判定基準を上回る配線を判定する判定ステップと、
前記判定基準を上回ると判定した配線が接続された前記コネクタの該当ピンを、前記波形劣化量が前記判定基準を下回ると判定されるように、雑音量が少ない前記コネクタの入れ替え対象ピンと入れ替えるピン配置入替ステップと
を実行するピン配置決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−210175(P2011−210175A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79628(P2010−79628)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】