説明

ピークカットシステム及び節電アダプタ

【課題】地域単位の電力需要のピークを抑制することのできるピークカットシステムを提供する。
【解決手段】電力需要監視装置は、所定地域における電力需要を監視し、当該地域の需要電力量が所定の条件を満たす場合、各制御対象機器の運転能力の制御を要求するための能力制御要求データを生成し、所定の広域通信方式により、各節電アダプタ2に一斉送信する。各節電アダプタ2では、広域通信インタフェース部20が電力需要監視装置からの能力制御要求データを受信する。制御部21は、能力制御要求データが受信されると、機器インタフェース部23を介して、対応する制御対象機器の運転能力を低下させるための所定の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要を抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般家庭におけるデマンド制御に関する技術が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この特許文献1で開示されるデマンド制御装置は、消費電力量が所定の電力量を超えないように、当該家庭内に設置されている家電機器に対して、自動的に、運転を停止させたり、あるいは、より低消費電力での運転モードに切り替える制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−74591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、年間の電力需要の推移には、一般的に大きな特徴があり、季節や時間帯に応じて大きく変動する傾向が見られる。特に、夏期の午後3時頃に電力需要が最も集中することはよく知られている。
【0006】
このような電力需要のピーク時に電力供給が追いつかなくなると、停電が発生してしまい、深刻な事態に陥ることになる。通常、上記のような時期に電力需要が集中する最も大きな要因として、エアコンの使用が挙げられる。したがって、電力会社等は、上記の時期において、エアコンの設定温度を高くしてもらうように、需要家に対して呼びかける等の広報活動を毎年恒例的に行っている。
【0007】
これに対し、オフィスビルや公共施設等に設置される空調機については、ビル等の管理者等や、あるいは、各空調機を集中管理するシステムコントローラ等により適切な温度に設定されるケースも少なくない。しかし、一般家庭においては、こまめに設定温度を調整するのが煩わしいこともあり、電力需要の抑制に対する効果的な対策が講じられていないのが実情である。
【0008】
なお、上記特許文献1に提案される技術では、当該家庭内おいて設定した所定の電力量を超えないように、当該家庭内の消費電力を抑えることはできるものの、電力を供給する地域単位の電力需要のピークを抑えるための、抜本的な解決策にはなり得ない。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、一般家庭等に設置された特定の電機機器の能力を制御することにより、地域単位の電力需要のピークを抑制することのできるピークカットシステム及び節電アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るピークカットシステムは、
所定の地域における需要電力量を監視する電力需要監視装置と、当該地域における複数の需要家の需要地にそれぞれ設置される制御対象機器と、該制御対象機器に対応して、前記各需要地に設置される節電アダプタと、から構成されるピークカットシステムであって、
前記電力需要監視装置は、前記需要電力量が所定の条件を満たす場合、前記各制御対象機器の運転能力の制御を要求するための能力制御要求データを生成し、所定の広域通信方式により、前記各節電アダプタに一斉送信し、
前記各節電アダプタは、
前記電力需要監視装置と前記所定の広域通信方式により通信を行う広域通信インタフェース部と、
前記制御対象機器と所定の通信方式により通信を行う機器インタフェース部と、
前記能力制御要求データを受信すると、前記制御対象機器に対して、運転能力を低下させるための所定の制御を行う制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力需要が集中し、需要電力量が予め設定した所定の電力量を超えた場合等に、各家庭等に設置された特定の家電機器について、その能力を低下させるための制御が一斉に行われるため、電力需要を確実且つ即座に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るピークカットシステムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る節電アダプタの構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態1の節電アダプタが備える広域通信インタフェース部の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態1の節電アダプタの動作手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態2において、節電アダプタに設定された受諾レベルと、受諾可能な逼迫度レベルとの関係を示す図である。
【図6】実施形態2の節電アダプタの動作手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態3に係る節電アダプタの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るピークカットシステムの全体構成を示す図である。このピークカットシステムは、電力需要監視装置1と、節電アダプタ2と、エアコン3と、から構成される。
【0015】
電力需要監視装置1は、電力供給会社や、電力需要のピークカットを推進する第三者機関等に設置され、所定地域の電力需要を監視し、所定条件の下、当該地域の各家庭(各需要家)の住居4(需要地)における特定の電気機器(ここでは、エアコン3)の消費電力を低下させるための処理を行う。電力需要監視装置1は、図示はしないが、制御装置、外部記憶装置、広域通信を行うための通信装置等を備える。
【0016】
制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成される。外部記憶装置は、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリやハードディスクドライブ等から構成される。通信装置は、本実施形態では、制御装置から供給されたデータを所定周波数のFM放送波に変換して送信する機能を有する。
【0017】
エアコン(エア・コンディショナ)3は、本ピークカットシステムにおける制御対象(節電対象)となる電気機器である。なお、エアコン3は、一般の家庭に設置される通常の空調設備を想定し、本発明の実現にあたって、特別な機能は要求されない。
【0018】
節電アダプタ2は、エアコン3の近傍に設置され、図2に示すように、広域通信インタフェース部20と、制御部21と、入力部22と、機器インタフェース部23と、を備える。
【0019】
広域通信インタフェース部20は、図3に示すように、アンテナ200と、FM受信部201と、から構成される。FM受信部201は、アンテナ200で受信された電力需要監視装置1からのFM放送波を増幅して復調し、復調により得られたデータを制御部21に供給する。
【0020】
制御部21は、CPU、RAM、ROM等から構成され、広域通信インタフェース部20から供給されたデータを解析し、その解析結果に基づいて、機器インタフェース部23を制御する。入力部22は、例えば、ディップスイッチ、押しボタン、ダイヤル等から構成され、ユーザによる動作条件等の入力を受け付ける。入力部22は、受け付けた入力結果に応じた信号(操作信号)を制御部21に送出する。
【0021】
機器インタフェース部23は、制御部21の制御の下、エアコン3と所定の通信規格に則ったデータ通信を行う。本実施形態では、機器インタフェース部23は、エアコン3との間で、赤外線によるシリアル通信を行う。
【0022】
なお、節電アダプタ2への給電方法に限定はない。例えば、節電アダプタ2は、電池等を備える構成であってもよいし、外部電源端子あるいは非接触給電部を備え、エアコン3から有線あるいは非接触で給電されるようにしてもよい。
【0023】
以上のように構成されるピークカットシステムにおいて、電力需要監視装置1は、所定地域の電力需要を監視する。なお、当該ピークカットシステムの運営・管理が、電力供給会社以外の第三者機関等で行われる場合には、電力需要監視装置1は、当該地域の各需要家に電力を供給する電力供給会社から、現在の電力需要についての情報を入手するものとする。
【0024】
電力需要監視装置1は、当該地域の需要電力量を監視し、これが、予め設定した所定の電力量を超えると、各住居4の節電アダプタ2に対して、エアコン3の能力制御を要求するためのデータ(能力制御要求データ)を生成する。この場合の能力制御とは、エアコン3の現行の運転能力を低下させる、即ち、エアコン3の消費電力を低下させるための制御を意味する。そして、電力需要監視装置1は、生成した能力制御要求データを所定周波数のFM放送波に変換して送信する。
【0025】
図4は、各住居4に設置された節電アダプタ2の動作手順を示すフローチャートである。節電アダプタ2は、給電が開始されると、直ちに以下の処理の実行を開始する。但し、当該家庭のユーザにより入力部22を介して所定の操作がなされている場合には、節電アダプタ2は、以下の処理を行わない。つまり、ユーザは、電力需要監視装置1によるエアコン3の能力制御を受諾するか否かを適宜選択することが可能である。
【0026】
例えば、当該家庭に高齢者や病人が居て、エアコン3の現行の運転能力を強制的に低下させられることで不都合が生じる場合には、ユーザは、入力部22を介した操作により、節電アダプタ2の機能を停止させることができる。
【0027】
給電が開始され、且つ、エアコン3の能力制御が受諾されている場合、節電アダプタ2は、以下の処理の実行を開始する。なお、以下の処理では、エアコン3が冷房運転を行っていることを前提に説明する。先ず、広域通信インタフェース部20は、電力需要監視装置1からのFM放送波を受信し、その結果得られたデータを制御部21に供給する(ステップS101)。
【0028】
制御部21は、広域通信インタフェース部20から供給されたデータを解析し、当該データが能力制御要求データであるか否かを判定する(ステップS102)。
【0029】
その結果、当該データが能力制御要求データである場合(ステップS102;YES)、制御部21は、機器インタフェース部23を介して、設定温度を1℃上げる制御信号をエアコン3に送信する(ステップS103)。これにより、エアコン3の設定温度が1℃上げられる。上記の制御信号の送信後、節電アダプタ2は、所定時間(例えば、10分)、処理の実行を待機(ウエイト)し(ステップS104)、その後、ステップS101の処理を再度実行する。一方、当該データが能力制御要求データでない場合(ステップS102;NO)、節電アダプタ2は、直ちに(あるいは、ステップS104の待機時間より短い時間待機した後)、ステップS101の処理を再度実行する。
【0030】
節電アダプタ2は、給電が停止されるか、あるいは、ユーザにより能力制御を禁止する操作が行われるまで、上記の処理を繰り返し実行する。
【0031】
一般に、冷房時において、エアコンの設定温度が1℃上げられると、消費電力が10%程度下がることが知られている。したがって、本実施形態のピークカットシステムによれば、当該地域において、電力需要が集中し、現状のままでは、やがて電力供給が追いつかなくなることが予測される場合であっても、電力需要監視装置1から能力制御要求データを各節電アダプタ2に一斉送信し、各エアコン3の設定温度を1℃上げることで、当該地域の電力需要を即座に低下させることが可能になる。
【0032】
また、上述したように、一般家庭におけるエアコン3の設定温度を調整することで、電力需要のピーク抑制を行うため、通常の産業活動や経済状況に大きな影響を及ぼすことがない。
【0033】
また、電力需要監視装置1は、FM放送波(即ち、ラジオ放送)を用いて、ブロードキャストで能力制御要求データを各家庭の節電アダプタ2に送信する(即ち、同報配信する)ため、効率的に各節電アダプタ2に通知することができる。また、一方の節電アダプタ2側では、広域通信インタフェース部20を簡易な構成で実現できるため、結果として、節電アダプタ2を低コストで製造することが可能となる。
【0034】
また、各家庭においては、節電アダプタ2を設置するだけで、簡単に当該ピークカットシステムに加入することができる。したがって、本システムを運用するために、特別なインフラの構築・整備が必要なく、実現性に優れる。また、ユーザは、節電アダプタ2に対して、能力制御の許可又は禁止を適宜設定することができる。即ち、各家庭の状況を加味した電力需要の抑制が実現できるため、ユーザが多大な迷惑を被ることがない。これにより、当該ピークカットシステムへの加入者(換言すれば、協力者)の増加が見込め、加入者が増えることで、電力需要の抑制の速効性が一層高まる。
【0035】
なお、本実施形態では、エアコン3の能力制御を、設定温度を変更することで実現していたが、例えば、設定風量の変更で実現してもよい。この場合、節電アダプタ2は、電力需要監視装置1から能力制御要求データを受信すると、エアコン3の設定風量を1段階下げる。具体的には、“強”を“中”に、“中”を“弱”等に変更する。但し、現在の設定風量が、“弱”等、既に最も低い段階である場合は、設定風量の変更を行わず、現状のままにしておく。
【0036】
また、ユーザが、節電アダプタ2に対して、能力制御の禁止設定を行った場合、節電アダプタ2は、完全に機能を停止するのではなく、エアコン3に対する制御以外については、上述した処理を実行するようにしてもよい。この場合、電力需要監視装置1から能力制御要求データを受信すると、節電アダプタ2は、ユーザに対して、所定態様の報知を行うようにしてもよい。例えば、節電アダプタ2の構成に、図示しないブザー音発生装置や、LED表示器等を追加し、ブザー音や、LEDの点灯・点滅等により、能力制御要求データを受信したことをユーザに報知できるようにしてもよい。
【0037】
このようにすれば、何らかの事情で能力制御の禁止設定を行ったユーザに対しても、当該地域で電力需要が集中し、能力制御が望まれていることを認識させることができ、節電に対する注意を喚起させることができる。これにより、当該ユーザによる、エアコン3以外の電気機器、例えば、照明やテレビ等の電源を落としたり等の節電行為が期待でき、結果として、電力需要の低下が期待できる。
【0038】
また、電力需要装置1から各節電アダプタ2への能力制御要求データの送信方法は、様々であり、例えば、テレビ電波を用いて送信してもよいし、携帯電話網やインタネット網を介して送信する仕様にしてもよい。
【0039】
また、節電アダプタ2とエアコン3との通信仕様も様々である。例えば、機器インタフェース部23を、日本電機工業会(JEMA)の規格に則った制御ができるように構成してもよい。そして、エアコン3がJEMA端子を備えている場合には、節電アダプタ2は、かかるJEMA端子を介してエアコン3を制御してもよい。
【0040】
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2に係るピークカットシステムについて説明する。本実施形態のピークカットシステムの全体構成は、実施形態1と同様(図1参照)である。また、節電アダプタ2の構成も実施形態1と同様(図2、図3参照)である。本実施形態のピークカットシステムでは、電力需要監視装置1は、能力制御要求データに、能力制御を要求するレベル、換言すれば、電力需要ピークの逼迫度を示すレベルを格納する。例えば、電力需要監視装置1は、逼迫度が低い順に、レベル1からレベル5までのレベル(逼迫度レベル)を能力制御要求データに格納する。
【0041】
一方の節電アダプタ2では、ユーザは、能力制御を受諾するか否かを逼迫度レベルに応じて設定する。具体的には、ユーザは、入力部22が備える図示しないダイヤルを回して、例えば、0〜5までの目盛に合わせることで、0〜5の値(受諾レベル)を設定する。図5に、設定された受諾レベルと、受諾可能な逼迫度レベルとの関係を示す。
【0042】
図6は、本実施形態の節電アダプタ2の動作手順を示すフローチャートである。この節電アダプタ2も、実施形態1と同様、給電が開始されると、直ちに以下の処理の実行を開始する。但し、当該家庭のユーザにより入力部22を介して、受諾レベルが0に設定されている場合には、節電アダプタ2は、以下の処理を行わない。
【0043】
給電が開始され、且つ、受諾レベルが1〜5の何れかに設定されている場合、節電アダプタ2は、以下の処理の実行を開始する。なお、実施形態1と同様、以下の処理では、エアコン3が冷房運転を行っていることを前提に説明する。先ず、広域通信インタフェース部20は、電力需要監視装置1からのFM放送波を受信し、その結果得られたデータを制御部21に供給する(ステップS201)。
【0044】
制御部21は、広域通信インタフェース部20から供給されたデータを解析し、当該データが能力制御要求データであるか否かを判定する(ステップS202)。
【0045】
その結果、当該データが能力制御要求データである場合(ステップS202;YES)、制御部21は、当該能力制御要求データから、逼迫度レベルを取得する(ステップS203)。そして、制御部21は、取得した逼迫度レベルが、ユーザにより設定された受諾レベル以上であるか否かを判定する(ステップS204)。具体例を示すと、取得した(即ち、電力需要監視装置1が設定した)逼迫度レベルが2で、当該家庭のユーザにより設定された受諾レベルが1の場合、この判定結果はYESとなる。また、例えば、逼迫度レベルが2で、受諾レベルが3の場合、この判定結果はNOとなる。
【0046】
その結果、取得した逼迫度レベルが受諾レベル以上である場合(ステップS204;YES)、制御部21は、機器インタフェース部23を介して、設定温度を1℃上げる制御信号をエアコン3に送信する(ステップS205)。これにより、エアコン3の設定温度が1℃上げられる。エアコン3に対する制御信号の送信後、節電アダプタ2は、所定時間(例えば、10分)、処理の実行を待機(ウエイト)し(ステップS206)、その後、ステップS201の処理を再度実行する。
【0047】
一方、広域通信インタフェース部20から供給されたデータが、能力制御要求データでない場合(ステップS202;NO)、又は、取得した逼迫度レベルが、ユーザにより設定された受諾レベル未満である場合(ステップS204;NO)、節電アダプタ2は、直ちに(あるいは、ステップS206の待機時間より短い時間待機した後)、ステップS201の処理を再度実行する。即ち、この場合は、エアコン3の設定温度は変更されない。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のピークカットシステムによれば、ユーザは、当該家庭の事情と、電力需要におけるピークカットの緊急性の度合いとを比較衡量して、能力制御の受諾可否を決定することができる。したがって、より実際の状況に即した電力需要の抑制を実現することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、電力需要監視装置1から能力制御要求データを受信すると、節電アダプタ2は、エアコン3の設定温度を1℃上げる制御を行っていたが、節電アダプタ2は、能力制御要求データに格納されている逼迫度レベルに応じて、上昇させる度数を調整するようにしてもよい。例えば、節電アダプタ2は、エアコン3の設定温度を、逼迫度レベル1〜2の場合は、1℃、逼迫度レベル3〜4の場合は、2℃、そして、逼迫度レベル5に場合は、3℃上げる制御を行う。
【0050】
また、最も高い逼迫度レベルにおいては、節電アダプタ2に、エアコン3の運転を停止させる制御を行わせる仕様にしてもよい。
【0051】
その他、本実施形態の変形例として、上記の実施形態1と同様の変形例を採用することが可能である。
【0052】
(実施形態3)
続いて、本発明の実施形態3に係るピークカットシステムについて説明する。本実施形態のピークカットシステムの全体構成は、実施形態1と同様(図1参照)である。また、節電アダプタ2の構成も実施形態1と同様(図2、図3参照)である。上記実施形態1及び2のピークカットシステムでは、各節電アダプタ2は、電力需要監視装置1からの能力制御要求データを受け取ると、対応するエアコン3の設定温度を1℃上げる制御を行った。本実施形態のピークカットシステムでは、電力需要監視装置1は、能力制御要求データに、理想の運転状態を示す理想運転状態を格納し、各節電アダプタ2は、その理想運転状態になるようにエアコン3を制御する点に特徴を有する。以下、この理想運転状態が、設定温度(理想設定温度)で示される場合を例にして説明する。
【0053】
図7は、本実施形態の節電アダプタ2の動作手順を示すフローチャートである。この節電アダプタ2も、実施形態1と同様、給電が開始されると、直ちに以下の処理の実行を開始する。但し、当該家庭のユーザにより、入力部22を介して、能力制御を禁止する操作がなされている場合には、節電アダプタ2は、以下の処理を行わない。
【0054】
給電が開始され、且つ、能力制御が受諾されている場合、節電アダプタ2は、以下の処理の実行を開始する。なお、実施形態1と同様、以下の処理では、エアコン3が冷房運転を行っていることを前提に説明する。先ず、広域通信インタフェース部20は、電力需要監視装置1からのFM放送波を受信し、その結果得られたデータを制御部21に供給する(ステップS301)。
【0055】
制御部21は、広域通信インタフェース部20から供給されたデータを解析し、当該データが能力制御要求データであるか否かを判定する(ステップS302)。
【0056】
その結果、当該データが能力制御要求データである場合(ステップS302;YES)、制御部21は、当該能力制御要求データから、理想設定温度を取得する(ステップS303)。次に、制御部21は、機器インタフェース部23を介してエアコン3を通信を行い、エアコン3から現在の設定温度を取得する(ステップS304)。
【0057】
そして、制御部21は、理想設定温度が、現在の設定温度より高いか否かを判定する(ステップS305)。その結果、理想設定温度が、現在の設定温度より高い場合(ステップS305;YES)、制御部21は、機器インタフェース部23を介して、設定温度を理想設定温度に変更するための制御信号をエアコン3に送信する(ステップS306)。これにより、エアコン3の設定温度が、現在の設定温度(例えば、25℃)から理想設定温度(例えば、28℃)まで上げられる。
【0058】
エアコン3に対する制御信号の送信後、節電アダプタ2は、所定時間(例えば、10分)、処理の実行を待機(ウエイト)し(ステップS307)、その後、ステップS301の処理を再度実行する。
【0059】
一方、広域通信インタフェース部20から供給されたデータが、能力制御要求データでない場合(ステップS302;NO)、又は、理想設定温度が、現在の設定温度以下の場合(ステップS305;NO)、節電アダプタ2は、直ちに(あるいは、ステップS307の待機時間より短い時間待機した後)、ステップS301の処理を再度実行する。即ち、この場合は、エアコン3の設定温度は変更されない。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のピークカットシステムによれば、各家庭の節電アダプタ2は、電力需要監視装置1が指定した理想設定温度(理想運転状態)になるようにエアコン3を制御する。したがって、各家庭のエアコン3の設定温度(運転状態)のばらつきを防止でき、電力需要の抑制に対する各家庭の協力度が均一化され、公平性が保たれる。
【0061】
なお、本実施形態の変形例として、上記の実施形態1と同様の変形例を採用することが可能である。
【0062】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0063】
1 電力需要監視装置
2 節電アダプタ
20 広域通信インタフェース部
200 アンテナ
201 FM受信部
21 制御部
22 入力部
23 機器インタフェース部
3 エアコン
4 住居

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地域における需要電力量を監視する電力需要監視装置と、当該地域における複数の需要家の需要地にそれぞれ設置される制御対象機器と、該制御対象機器に対応して、前記各需要地に設置される節電アダプタと、から構成されるピークカットシステムであって、
前記電力需要監視装置は、前記需要電力量が所定の条件を満たす場合、前記各制御対象機器の運転能力の制御を要求するための能力制御要求データを生成し、所定の広域通信方式により、前記各節電アダプタに一斉送信し、
前記各節電アダプタは、
前記電力需要監視装置と前記所定の広域通信方式により通信を行う広域通信インタフェース部と、
前記制御対象機器と所定の通信方式により通信を行う機器インタフェース部と、
前記能力制御要求データを受信すると、前記制御対象機器に対して、運転能力を低下させるための所定の制御を行う制御部と、を備える、
ことを特徴とするピークカットシステム。
【請求項2】
前記制御対象機器は、エア・コンディショナであり、
前記制御部は、前記能力制御要求データを受信すると、前記制御対象機器の設定温度を所定度数変更する制御を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のピークカットシステム。
【請求項3】
前記電力需要監視装置は、前記能力制御要求データをFM放送波を使用して、前記各節電アダプタに一斉送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のピークカットシステム。
【請求項4】
前記節電アダプタは、ユーザからの動作条件に関する所定の設定を受け付ける入力部をさらに備え、
前記制御部は、ユーザにより、前記制御対象機器に対する制御を禁止する旨の設定がされている場合、前記能力制御要求データを受信しても、前記制御対象機器に対する制御を行わない、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のピークカットシステム。
【請求項5】
前記電力需要監視装置は、前記能力制御要求データに、前記各制御対象機器の運転能力の制御を要求する度合いを示す逼迫度レベルを格納し、
前記制御部は、前記能力制御要求データを受信すると、該能力制御要求データに格納されている前記逼迫度レベルと、ユーザにより、前記入力部を介して設定された受諾レベルとを比較することで、当該制御対象機器に対する制御を行うか否かを決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載のピークカットシステム。
【請求項6】
前記電力需要監視装置は、前記能力制御要求データに、前記各制御対象機器の運転状態の理想を示す理想運転状態を格納し、
前記制御部は、前記能力制御要求データを受信すると、該能力制御要求データに格納されている前記理想運転状態となるように当該制御対象機器を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のピークカットシステム。
【請求項7】
所定の地域における需要電力量を監視する電力需要監視装置と所定の広域通信方式により通信を行う広域通信インタフェース部と、
特定の電機機器と所定の通信方式により通信を行う機器インタフェース部と、
前記電力需要監視装置から、前記電機機器の運転能力の制御を要求するための能力制御要求データを受信すると、当該電機機器に対して、運転能力を低下させるための所定の制御を行う制御部と、を備える、
ことを特徴とする節電アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228039(P2012−228039A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92332(P2011−92332)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】