説明

ピークホールド回路

【課題】一定期間内のピーク振幅を安定して保持することができるピークホールド回路を提供する。
【解決手段】変調された入力信号と該入力信号のDC電位とを入力して比較する第1の比較器2と、入力信号と所定の参照電圧とを入力して比較する第2の比較器2と、第1の比較器1からの出力と第2の比較器2からの出力とを入力し、AND出力結果に基づいて第2のスイッチ素子7をオン・オフ制御して、保持用コンデンサ5に入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させる第2の論理回路(AND回路)4とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、無線機等の通信受信機などにおいて、AGC(オート ゲイン コントロール)回路で利得制御を行うときに、入力信号(変調信号)のピーク振幅を一定時間保持するピークホールド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機等の通信受信機などにおいては、出力信号の振幅を一定に保つよう入力信号(変調信号)の振幅に応じて可変利得増幅回路の利得を制御して、入力信号の変動を抑制するためのAGC(オート ゲイン コントロール)回路を有している(例えば、特許文献1参照)。このようなAGC回路には、入力信号(変調信号)のピーク振幅を検出するためのピークホールド回路が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記ピークホールド回路でピーク振幅を検出するときに、AM(振幅)変調された入力信号の変調指数が大きくなるにつれて振幅検出レベルが変動するため、検出値がAM(振幅)検波出力値となる。このため、AGC回路による利得制御において、ゲインが変動する可能性が大きくなり、安定した制御が困難になる。
【0004】
また、特許文献1のAGC回路(AGCアンプ)に設けられているような一般的なピークホールド回路は、入力信号(変調信号)を整流回路で整流(半波もしくは全波整流)した後に、コンデンサにピーク振幅値を保持して振幅検出を行う構成なので、整流回路が必要となり、回路構成が煩雑化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、整流回路を用いることなく簡略化された回路構成にて、一定期間内のピーク振幅を安定して保持することができるピークホールド回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために請求項1に記載のピークホールド回路は、変調された入力信号と該入力信号のDC電位とを入力して比較する第1の比較器と、前記入力信号と所定の参照電位とを入力して比較する第2の比較器と、前記第1の比較器からの出力と前記第2の比較器からの出力とを入力し、AND出力結果に基づいてスイッチ素子をオン・オフ制御して、保持用コンデンサに前記入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させる論理回路とを有することを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載のピークホールド回路は、前記論理回路は、リセット信号が入力されるまで前記保持用コンデンサに前記入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るピークホールド回路によれば、論理回路に第1の比較器からの出力と第2の比較器からの出力とを入力して、該論理回路のAND出力結果に基づいてスイッチ素子をオン・オフ制御して、保持用コンデンサに入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させることにより、一定期間内のピーク振幅を安定して保持することができる。また、入力信号(変調信号)を第1の比較器と第2の比較器に直接入力する構成によって、整流回路が不要となり回路構成を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るピークホールド回路の構成を示す図。
【図2】入力信号の波形とピーク振幅のDC電位を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係るピークホールド回路でピーク振幅のDC電位を保持するときの、第1、第2の比較器の出力信号と第2の論理回路の出力信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るピークホールド回路の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るピークホールド回路は、第1、第2の比較器1,2と、第1、第2の論理回路(AND回路)3,4と、保持用コンデンサ5と、第1、第2のスイッチ素子6,7を有している。
【0012】
第1の比較器1の−入力端子には、バッファ8を介して入力信号aが入力され、第1の比較器1の+入力端子には、基準電圧Vref1が入力され、両者を比較する。前記入力信号aは、例えば、図2に示すように、DC電位が0.5Vで、300kHzのキャリアに0.7kHzのAM変調が変調度30%の入力波形である。なお、前記基準電圧Vref1は、前記入力信号aのDC電位(0.5V)である。
【0013】
第2の比較器2の+入力端子には、バッファ8を介して前記入力信号aが入力され、第2の比較器2の−入力端子には、リセット信号が入力された直後では参照電圧Vref2が閉じた第1のスイッチ素子6を介して入力され、両者を比較する。
【0014】
第1の論理回路(AND回路)3は、リセット信号と第1の比較器1からの出力とを入力し、AND出力結果に基づいて第1のスイッチ素子6のオン・オフを制御する。
【0015】
第2の論理回路(AND回路)4は、第1の比較器1からの出力と第2の比較器2からの出力を入力し、AND出力結果に基づいて第2のスイッチ素子7のオン・オフを制御する。
【0016】
次に、上記したピークホールド回路の動作を、図2、図3を参照して説明する。なお、図3に示した入力信号aの領域は、図2に示した入力信号aの波形領域Aに対応している。また、図2において、矢印Cはリセット信号S1が入力されるタイミングを示している。
【0017】
図3の時刻t0でリセット信号S1が入力されると、ピーク振幅のDC電位(出力波形)bが入力信号aのDC電位となる。
【0018】
そして、第1の比較器1の−入力端子には、バッファ8を介して入力信号aが入力され、第1の比較器1の+入力端子には、基準電圧Vref1(入力信号aのDC電位)が入力され、その比較結果に基づいて、図3に示したS2のような波形信号が出力される。第1の比較器1には、入力信号aと基準電圧Vref1が常に入力されている。
【0019】
また、リセット信号S1の入力直後(時刻t0〜t1)においては、第1の論理回路3は、リセット信号S1と第1の比較器1からの出力とを入力し、AND出力結果に基づいて第1のスイッチ素子6をオン・オフ制御する。
【0020】
一方、リセット信号S1の入力直後(時刻t0〜t1)においては、第2の比較器2の+入力端子には、バッファ8を介して入力信号aが入力され、第2の比較器2の−入力端子には、参照電圧Vref2(リセット信号S1の入力直後では入力信号aのDC電位)が入力され、その比較結果に基づいて、図3に示したS3のような波形信号が出力される。
【0021】
また、リセット信号S1の入力直後(時刻t0〜t1)においては、第2の論理回路4は、第1、第2の比較器1,2からの出力を入力し、AND出力結果に基づいて、図3に示したS4のようなスイッチ信号に基づいて第2のスイッチ素子7をオン・オフ制御する。これにより、保持用コンデンサ5には、入力信号aのピーク振幅のDC電位が保持される。
【0022】
なお、時刻t1〜t2の間では、入力信号aのピーク振幅が一定なので、第2の比較器2からの出力(S3)と第2の論理回路4のAND出力結果(S4)は0である。
【0023】
そして、時刻t2が経過後に入力信号aのピーク振幅が変化して大きくなると、第2の比較器2の+入力端子には、バッファ8を介してこの入力信号aが入力され、第2の比較器2の−入力端子には、保持用コンデンサ5に保持されているDC電位が入力され、その比較結果に基づいて、図3に示したS3のような波形信号が出力される。
【0024】
そして、時刻t2が経過後においても、所定時間後にリセット信号S1が入力されるまで同様の動作を行なうことより、第2の論理回路4は、第1、第2の比較器1,2からの出力を入力し、AND出力結果に基づいて、図3に示したS4のようなスイッチ信号に基づいて第2のスイッチ素子7をオン・オフ制御する。これにより、次のリセット信号S1が入力されるまでの間、保持用コンデンサ5には入力信号aのピーク振幅のDC電位bが保持される。
【0025】
そして、保持用コンデンサ5に保持された入力信号aのピーク振幅のDC電位bは、バッファ9を介してADC(アナログ デジタル コンバータ)10によりデジタル信号に変換された後に出力信号(ピーク振幅信号)として出力される。
【0026】
このように、本実施形態のピークホールド回路によれば、第2の論理回路4に第1の比較器1からの出力と第2の比較器2からの出力とを入力して、該第2の論理回路4のAND出力結果に基づいて第2のスイッチ素子7をオン・オフ制御して、保持用コンデンサ5に入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させることにより、一定期間内のピーク振幅を安定して保持することができる。
【0027】
また、本実施形態のピークホールド回路は、入力信号(変調信号)aを第1の比較器1と第2の比較器2に直接入力する構成により、整流回路が不要となり回路構成を簡略化することができる。更に、整流回路を用いていないので、入力信号(変調信号)aのピーク振幅が小振幅の場合でもピーク振幅を精度よく検出することができる。
【0028】
なお、前記実施形態のピークホールド回路のように、リセット信号が入力されるタイミング(リセット時間)の制御を行うことで、FM変調、デジタル変調によってより高速な伝送レートの場合でも、リセット信号が入力されるタイミング(リセット時間)を制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 第1の比較器
2 第2の比較器
3 第1の論理回路(AND回路)
4 第2の論理回路(AND回路)
5 保持用コンデンサ
6 第1のスイッチ素子
7 第2のスイッチ素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開平8−116225号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調された入力信号と該入力信号のDC電位とを入力して比較する第1の比較器と、
前記入力信号と所定の参照電位とを入力して比較する第2の比較器と、
前記第1の比較器からの出力と前記第2の比較器からの出力とを入力し、AND出力結果に基づいてスイッチ素子をオン・オフ制御して、保持用コンデンサに前記入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させる論理回路とを有することを特徴とするピークホールド回路。
【請求項2】
前記論理回路は、リセット信号が入力されるまで前記保持用コンデンサに前記入力信号のピーク振幅のDC電位を保持させることを特徴とする請求項1に記載のピークホールド回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−65065(P2012−65065A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206310(P2010−206310)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】