説明

ファイバブラッググレーティングの消去方法、ファイバブラッググレーティングの調整方法、ファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造方法及び同光部品の製造装置

【課題】製造精度の高いファイバブラッググレーティング(FBG)を備えた光部品の製造方法及び同光部品の製造装置、並びにFBGの調整方法、FBGの消去方法を提供する。
【解決手段】ゲルマニウム原子がドーピングされたコアを有する光ファイバに、フェーズマスク越しに波長248nmの紫外線レーザ光を照射して形成したFBGに対し、FBGが形成された光ファイバを収容した容器内を窒素置換し、FBG部分に波長146nmの紫外光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバブラッググレーティングの消去方法、ファイバブラッググレーティングの調整方法、ファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造方法及び同光部品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、ひずみセンサの一種として、ファイバブラッググレーティング(以下、単に「FBG」と呼ぶ。)が形成された光ファイバで構成された光部品が用いられている。
【0003】
FBGとは、光ファイバのコアの一部に屈折率の高い部分と、屈折率の低い部分とを長手方向に一定間隔で交互に配置して回折格子(グレーティング)を形成したものであって、FBGが形成された光ファイバに光を入射させると、回折格子における回折条件に基づく反射光が生じることとなっている。
【0004】
ここで、FBGにおける交互に連続する屈折率の高い部分と屈折率の低い部分のピッチをΛ、FBG部分の実効屈折率をneffとした場合では、FBGはλ=2×neff×Λの波長の反射光を生じさせるものであり、このようなFBGが形成された光ファイバからなる光部品をひずみセンサとして用いた場合には、FBG部分に生じたひずみによって屈折率の高い部分と屈折率の低い部分のピッチが変動して反射光の波長が変動し、この波長の変動量からひずみ量を計測している。
【0005】
光ファイバにFBGを形成する場合には、通常、光ファイバに沿ってフェーズマスクを配置して、フェーズマスク越しに光ファイバに対して紫外線レーザ光を照射することにより光ファイバのコアに屈折率を異ならせた領域を所定間隔で形成している。
【0006】
ここで、光ファイバは、紫外光の照射によってコアの屈折率が変化するいわゆるフォトリフラクティブ効果(光励起屈折率変化)、あるいはフォトセンシティブ効果などを有する光ファイバであり、一般的にはコア部分にゲルマニウム原子がドーピングされた光ファイバが用いられることが多い。
【0007】
また、フェーズマスクは、光ファイバに対向させた面に、FBGに形成する屈折率の高い部分と屈折率の低い部分のピッチΛの2倍のピッチで光ファイバの長手方向に複数のスリットを設けたフィルタである。
【0008】
フェーズマスクでは、紫外線レーザ光が入射されると、この紫外線レーザ光を回折させて光ファイバに照射し、光ファイバにピッチをΛとする干渉縞を生じさせてFBGを形成している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−127744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、光ファイバに形成したFBGは、製造バラツキによって所望の特性からのズレが大きくなりやすく、たとえばひずみセンサとして用いる場合に、十分な検出精度が得られないおそれがあった。
【0010】
本発明者らはこのような現状に鑑み、製造精度の高いFBGを備えた光部品を提供すべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のFBGの消去方法では、ゲルマニウム原子がドーピングされたコアを有する光ファイバに、波長248nmの紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したFBGの消去方法であって、FBGが形成された光ファイバを収容した容器内を窒素置換し、FBG部分に波長146nmの紫外光を照射してFBGを消去することとした。
【0012】
また、本発明のFBGの調整方法では、紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングの調整方法であって、ファイバブラッググレーティングが形成された光ファイバを収容した容器内を窒素置換する窒素置換ステップと、光ファイバに検査光を入射してファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測しながら、容器内でファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射してファイバブラッググレーティング部分の屈折率を調整する調整テップを有することとした。
【0013】
さらに、容器内は調整テップにおいて大気圧以下に減圧し、減圧状態で紫外光を照射することにも特徴を有し、そのうえ、光ファイバはコアにゲルマニウム原子をドーピングした光ファイバであって、波長248nmの紫外線レーザ光を照射してFBGを形成しており、調整テップでは、FBG部分に波長146nmの紫外光を照射することにも特徴を有するものである。
【0014】
また、本発明のFBGを備えた光部品の製造方法では、紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造方法であって、ファイバブラッググレーティングが形成された光部品を収容した容器内を窒素置換する窒素置換ステップと、光部品に検査光を入射してファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測しながら、容器内でファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射してファイバブラッググレーティング部分の屈折率を調整する調整テップを有することとした。
【0015】
また、本発明のFBGを備えた光部品の製造装置では、紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングを備えた光部品を収容する容器と、この容器内に窒素を導入する窒素ボンベと、容器内の光部品に検査光を入射してファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測する計測器と、ファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射する光源とを備え、窒素雰囲気下でファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射してファイバブラッググレーティングにおける屈折率を調整することとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、光ファイバで構成した光部品において、光ファイバの所定位置に形成したFBGに紫外光を照射してFBG部分の屈折率を調整しているものであり、FBGにおける屈折率をFBGの形成後に調整することにより、特性バラツキの抑制されたFBGを備えた光部品を製造することができる。
【0017】
特に、FBG部分に照射する紫外光の照射量を調整することによって、FBG部分の屈折率を均一化させてFBGを消去することもでき、FBGの消去後に、FBGを再度形成することもできる。
【0018】
また、FBG部分の屈折率を調整すべく紫外光を照射する際に、FBGを備えた光ファイバを収容した容器内を大気圧以下に減圧し、減圧状態で紫外光を照射することにより、温度変化時のFBGの透過減衰率の変動を抑制でき、温度変化に耐性のあるFBGを製造可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では、ファイバブラッググレーティング(以下、単に「FBG」と呼ぶ。)が形成された光ファイバに紫外光を照射した際に、FBGにおける屈折率の高い部分と屈折率の低い部分では、屈折率の低い部分の方が屈折率の高い部分よりも屈折率の変動率が大きいことを利用して、屈折率の低い部分の屈折率を屈折率の高い部分の屈折率よりも大きく変化させてFBG部分の実効屈折率を調整しているものである。
【0020】
このように、FBGが形成された光ファイバで構成された光部品は、紫外光の照射によってFBGにおける特性を調整することができ、製造バラツキが抑制された光部品を提供可能とすることができる。
【0021】
特に、光ファイバがコアにゲルマニウム原子がドーピングされた光ファイバであって、フェーズマスク越しに波長248nmの紫外線レーザ光を光ファイバに照射してFBGを形成した場合には、FBG部分に例えば波長146nmの紫外光を照射することにより高精度で屈折率を調整でき、照射時間を調整することによりFBG部分の屈折率を均一化させてFBGを消去することもできる。
【0022】
光ファイバのFBG部分に紫外光を照射してFBG部分の屈折率を調整する際には、FBG部分は窒素置換された容器内に収容して紫外光を照射することにより、FBG部分の屈折率を安定的に調整できる。
【0023】
しかも、容器内は、大気圧以下に減圧し、減圧状態で紫外光を照射することにより、温度変化時の減衰率の変動を抑制でき、温度変化に耐性のあるFBGを形成できる。
【0024】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態のFBGを備えた光部品の製造装置の概略模式図である。
【0025】
光部品の製造装置では、FBGを備えた光部品Aを収容する容器11と、容器11内の光部品Aに検査光を入射してFBGにより反射される光の波長を計測する計測器13と、FBG部分に紫外光を照射する光源14とを備えている。図1中、15は容器11内を窒素置換するために容器11内に導入する窒素を貯蔵した窒素ボンベ、16は容器11に収容された光部品Aに検査光を入射させるための検査光用光源である。
【0026】
光部品Aは、コアにゲルマニウム原子がドーピングされた光ファイバであって、所定位置にフェーズマスク越しに波長248nmの紫外線レーザ光を照射してFBGを形成している。
【0027】
容器11は、本実施形態では、光部品Aが収容される筒状の収容部11aと、この収容部11aに収容された光部品Aに照射する紫外光の照射光路に沿った筒状の光路部11bとで構成している。容器11はステンレス製としている。
【0028】
収容部11aの両端は、それぞれ光ファイバが接続されるコネクタCを備えた閉塞板11a-1で閉塞しており、この閉塞板11a-1は収容部11aに着脱自在としている。光部品Aは、コネクタCを介して閉塞板11a-1間に架設され、光部品Aの閉塞板11a-1間への架設後に閉塞板11a-1を収容部11aに装着して、光部品Aを収容部11a内に収容可能としている。
【0029】
光部品Aを閉塞板11a-1間に架設する場合には、光部品AのFBG部分を紫外光の照射光路上に位置させて架設している。
【0030】
なお、収容部11aは、収容した光部品Aを窒素雰囲気下に維持できれば上記の形態に限定するものではなく、適宜の形態で光部品Aを収容部11a内に配置してもよい。
【0031】
一方の閉塞板11a-1には接続用の光ファイバf1を介して査光用光源16と接続し、他方の閉塞板11a-1には接続用の光ファイバf2を介して計測器13と接続している。なお、収容部11a内の光部品Aからそれぞれ光ファイバの両端を引き出して、査光用光源16及び計測器13にそれぞれ直接接続してもよい。
【0032】
査光用光源16は、本実施形態ではASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を用いて所定の光を光部品Aに入射している。
【0033】
計測器13は、本実施形態では光スペクトラムアナライザを用い、光部品AにおけるFBGでの反射によって反射光部分の強度の低下を計測器13で検出することにより、反射光の波長を計測している。
【0034】
収容部11aから突出させた光路部11bの端部は、容器11内の雰囲気を調整するために設けている雰囲気調整管17を介して光源14に接続している。
【0035】
光源14は、本実施形態では、波長146nmの紫外光を照射可能なクリプトンエキシマランプを用いており、容器11の光部品AのFBG部分に波長146nmの紫外光を照射可能としている。
【0036】
雰囲気調整管17は、上端側に第1連結管17aを設けるとともに、下端側に第2連結管17bを設け、第2連結管17bに窒素ボンベ15に接続して、この窒素ボンベ15によって容器11内に窒素を導入して容器11内を窒素雰囲気としている。第1連結管17aからは、窒素ボンベ15による容器11内への窒素導入にともなって自然に窒素を放出しているが、適宜の吸気ポンプを設けて容器11内の窒素置換を円滑に行えるようにしてもよいし、さらには、容器11内を減圧状態としてもよく、可能であれば後述するように大気圧以下に減圧することが望ましい。なお、図示していないが、第2連結管17bには適宜の流量調整弁を設け、窒素の供給量を調整している。
【0037】
このように構成した光部品の製造装置では、次のようにして光部品AにおけるFBGの調整を行っている。
【0038】
まず、FBGが形成されている光部品Aを閉塞板11a-1間に架設して、閉塞板11a-1を収容部11aに装着し、光部品Aを容器11に収容している。
【0039】
次いで、接続用の光ファイバf1,f2を用いて査光用光源16及び計測器13を光部品Aに接続するとともに、窒素ボンベ15から容器11内に窒素を送給して容器11内を窒素置換している。
【0040】
容器11内が窒素置換されたところで、査光用光源16から光部品Aに検査光を入射して、計測器13で光部品AのFBGによる反射光の波長を計測しながら、光源14から波長146nmの紫外光の照射を開始する。
【0041】
光部品AのFBGでは、紫外光の照射にともなってFBG部分の実効屈折率が、たとえば紫外光の照射前の実効屈折率n1から照射後の実効屈折率n2(>n1)に変化することにより、FBGでの反射波の波長が、紫外光の照射前のλ1=2×n1×Λから、紫外光の照射前のλ2=2×n2×Λとなって、図2に示すように、計測器13で計測される等価損失のボトムとなる波長がシフトすることとなる。
【0042】
図3は、波長146nmの紫外光の照射時間と、FBGによる反射波の中心波長との関係を示したグラフである。
【0043】
図4は、光源としてキセノンエキシマランプを用いて波長172nmの紫外光の照射を行った場合の照射時間と、FBGによる反射波の中心波長との関係を示したグラフである。
【0044】
図3及び図4に示すように、紫外光の照射によってFBGによる反射波の波長を調整することができ、特に、照射時間によって調整可能であることがわかる。光部品の製造装置では、計測器13での検出値があらかじめ設定した値となったところで紫外光の照射を停止してFBGの調整を終了し、光部品Aを容器11から取り出している。
【0045】
図3及び図4に示すように、各反射波のシフト量は、波長172nmの場合が約1.6pm/minであり、波長146nmの場合が約0.8pm/minであって、波長172nmの方が効率よく反射波の波長をシフトさせることができるように見えるが、波長172nmの紫外光の照射するキセノンエキシマランプは15mW/cmであるのに対し、波長146nmの紫外光の照射するクリプトンエキシマランプは1.8mW/cmであるので、1.0mW/cmの光強度での1分当たりのシフト量は、波長172nmの場合が約0.1pm/minであり、波長146nmの場合が約0.4pm/minとなり、波長146nmの紫外光を用いた方が高効率であることがわかる。
【0046】
さらに、図5に示す波長146nmの紫外光の照射終了後におけるFBGによる反射波の波長の時間変動を示したグラフ、及び図6に示す波長172nmの紫外光の照射終了後におけるFBGによる反射波の波長の時間変動を示したグラフのように、波長172nmを用いた場合には、紫外光の照射終了後に大きな変動が生じるのに対して、波長146nmを用いた場合には、紫外光の照射終了後に大きな変動が生じることがなく、FBGを確実に調整可能であることがわかる。
【0047】
このように、FBGが形成された光ファイバでは、紫外光を照射することによってFBGにおける反射波の波長を調整することができ、特に、光ファイバのコアに屈折率の高い部分と屈折率の低い部分とを所定ピッチΛで交互に連続させて形成したFBGでは、紫外光の照射にともなって、屈折率の低い部分では屈折率の高い部分よりも屈折率が大きく変動するため、紫外光を長時間照射することによって、屈折率の差を小さくすることができ、FBGを消去することができる。
【0048】
したがって、たとえば、図7に示すように、光ファイバで構成される光部品A'を収容した収容部11a'では、収容部11a'内の光部品A'にFBGの調整用の紫外光を照射するための照射光路に沿った第1光路部11b'を設けるとともに、収容部11a'内の光部品A'にFBGを形成するための紫外線レーザ光を照射するための照射光路に沿った第2光路部11c'を設けて、所定の紫外光を収容部11a'内の光部品A'のFBG部分に照射してFBGを一旦消去した後、第2光路部11c'から光部品A'にフェーズマスクD越しに波長248nmの紫外線レーザ光を照射してFBGを再形成してもよい。さらに、再形成されたFBGに紫外光を照射して、反射波の波長調整を行ってもよい。
【0049】
なお、FBGの形成時に、フェーズマスクDは光部品A'を構成する光ファイバにできるだけ近接させて配置することが望ましいが、フェーズマスクDを光ファイバに常に近接させて配置していた場合には、FBGの調整用に照射した紫外光がフェーズマスクDに反射して光ファイバのコアの屈折率にムラが生じるおそれがある。
【0050】
そこで、FBGの調整用の紫外光を照射する場合には、フェーズマスクDを光ファイバから離隔させておくことが望ましく、図7に示すように、FBGの調整に用いる紫外光の照射方向L1と、FBGの形成に用いる紫外線レーザ光の照射方向L2とを交差状態に配置することにより、フェーズマスクDを、FBGの調整に用いる紫外光の照射方向L1における光ファイバの後方側に平行移動させて待避させることにより、フェーズマスクDでの反射波が光ファイバに当たることを防止でき、光ファイバのコアの屈折率にムラが生じることを防止できる。
【0051】
そして、FBGを形成する場合には、フェーズマスクD越しに紫外線レーザ光を照射できるようにフェーズマスクDを移動させてFBGを形成することができる。この場合、フェーズマスクDの待避前と、フェーズマスクDの復帰後とで光ファイバに対するフェーズマスクDの距離に変動がなく、フェーズマスクDを適正位置に配置できる。
【0052】
なお、FBGの形成は、フェーズマスクDを用いて行う場合に限定するものではなく、例えば二光束干渉法で行ってもよい。
【0053】
上述した実施形態では、容器11内を窒素置換しているだけであるが、容器11内を窒素置換した後に容器11内を大気圧以下に減圧しながら調整用の紫外光を照射することにより、温度変化時におけるFBGの透過減衰率の変動が小さいFBGを形成できる。
【0054】
すなわち、図8に示すように、波長248nmの紫外線レーザ光を光ファイバに照射してFBGを形成した場合には、温度が高くなるにつれてFBGの反射波長が長波長側へシフトするだけでなく、FBGの透過減衰量が減少することとなっている。
【0055】
これに対して、波長248nmの紫外線レーザ光を光ファイバに照射してFBGを形成した後、この光ファイバに大気圧以下の窒素雰囲気下でキセノンエキシマランプを用いて波長172nmの紫外光の照射を行った場合には、図9に示すように、温度が高くなるにつれてFBGの反射波長は長波長側へシフトするが、FBGの透過減衰量の減少を抑制することができた。
【0056】
図10は、温度に対する透過減衰量の変化を減圧状態での紫外光照射の有無で比較したものであり、減圧状態で紫外光を照射した場合には、130℃まで透過減衰量の現象が見られず、温度変化に耐性を有していることが確認された。したがって、紫外線レーザ光の照射のみで作製したFBGに、減圧状態で紫外光を照射することにより過酷な温度環境で使用できるFBGを形成することができる。
【0057】
なお、減圧状態は大気圧以下の状態であればよく、可能であればできるだけ減圧することが望ましく、好適には100Pa以下が望ましい。光ファイバを収容した容器内を減圧することによって、照射した紫外光のロスを少なくすることができるとともに、紫外光の照射にともなう発熱が発生すること抑制でき、品質の安定化を図ることができる。
【0058】
紫外光の照射時間は、照射する紫外光の強度との兼ね合いで決定されるものであり、少なくとも、紫外光の照射によるFBGの反射波長の長波長側へのシフトが生じる程度以上であって、長ければ長いほどよい。したがって、FBGを形成する際には、紫外光の照射によってFBGの屈折率を調整することを考慮してFBGを形成することが望ましく、紫外光の照射によりFBGの屈折率を調整することにより、合わせてFBGの温度変化に対する耐性の向上を図ることができる。
【0059】
なお、FBGの温度変化に対する耐性の向上を目的として照射する紫外光と、FBGの屈折率の調整を目的として照射する紫外光とは同一である必要はなく、たとえば、BGの温度変化に対する耐性の向上を目的とした紫外光の照射処理を行った後に、FBGの屈折率の調整を目的とする紫外光の照射処理を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態にかかる光部品の製造装置の説明図である。
【図2】紫外光の照射によるファイバブラッググレーティングの調整の説明図である。
【図3】波長146nmの紫外光の照射時間と、FBGによる反射波の中心波長との関係を示したグラフである。
【図4】波長172nmの紫外光の照射を行った場合の照射時間と、FBGによる反射波の中心波長との関係を示したグラフである。
【図5】波長146nmの紫外光の照射終了後におけるFBGによる反射波の波長の時間変動を示したグラフである。
【図6】波長172nmの紫外光の照射終了後におけるFBGによる反射波の波長の時間変動を示したグラフである。
【図7】他の実施形態の光部品の製造装置の説明図である。
【図8】温度変化によるFBGの透過減衰量の変化を示すグラフである。
【図9】温度変化によるFBGの透過減衰量の変化を示すグラフである。
【図10】温度変化によるFBGの透過減衰量の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
A 光部品
C コネクタ
11 容器
11a 収容部
11a-1 閉塞板
11b 光路部
13 計測器
14 光源
15 窒素ボンベ
16 検査光用光源
17 雰囲気調整管
17a 第1連結管
17b 第2連結管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム原子がドーピングされたコアを有する光ファイバに、波長248nmの紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングの消去方法であって、
前記ファイバブラッググレーティングが形成された前記光ファイバを収容した容器内を窒素置換し、前記ファイバブラッググレーティング部分に波長146nmの紫外光を照射して前記ファイバブラッググレーティングを消去するファイバブラッググレーティングの消去方法。
【請求項2】
紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングの調整方法であって、
前記ファイバブラッググレーティングが形成された前記光ファイバを収容した容器内を窒素置換する窒素置換ステップと、
前記光ファイバに検査光を入射して前記ファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測しながら、前記容器内で前記ファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射して前記ファイバブラッググレーティング部分の屈折率を調整する調整テップと
を有するファイバブラッググレーティングの調整方法。
【請求項3】
前記容器内は、前記調整テップにおいて大気圧以下に減圧し、減圧状態で前記紫外光を照射することを特徴とする請求項2に記載のファイバブラッググレーティングの調整方法。
【請求項4】
前記光ファイバはコアにゲルマニウム原子をドーピングした光ファイバであって、波長248nmの紫外線レーザ光を照射して前記ファイバブラッググレーティングを形成しており、
前記調整テップでは、前記ファイバブラッググレーティング部分に波長146nmの紫外光を照射することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のファイバブラッググレーティングの調整方法。
【請求項5】
紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造方法であって、
前記ファイバブラッググレーティングが形成された前記光部品を収容した容器内を窒素置換する窒素置換ステップと、
前記光部品に検査光を入射して前記ファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測しながら、前記容器内で前記ファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射して前記ファイバブラッググレーティング部分の屈折率を調整する調整テップと
を有するファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造方法。
【請求項6】
紫外光の照射によってコアの屈折率を調整可能な光ファイバに、紫外線レーザ光の干渉光を照射して形成したファイバブラッググレーティングを備えた光部品を収容する容器と、
この容器内に窒素を導入する窒素ボンベと、
前記容器内の光部品に検査光を入射して前記ファイバブラッググレーティングにより反射される光の波長を計測する計測器と、
前記ファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射する光源と
を備え、
窒素雰囲気下で前記ファイバブラッググレーティング部分に紫外光を照射して前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率を調整するファイバブラッググレーティングを備えた光部品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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