説明

ファイバー・ブラッグ・グレーティングを用いたベアリングモニタリング

軸受は、軸受けの1つまたは複数のパラメータを測定するブラッグ・グレーティング光ファイバーを備える。光ファイバーは、ブラッグ回折格子を備える光ファイバーの少なくとも一部が湾曲するように、軸受けに連結される。湾曲した回折格子は、周波数応答が明確に定義され、広がらないように湾曲に適合される。これは、ファイバーが湾曲しても、湾曲に影響を受けずに回折格子が実質的に平行に現れるように回折格子を配置することにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に荷重検出と組み合わせた、軸受けの状態監視に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受けは、回転機械において非常に重要な構成要素である。軸受けが故障すると、通常機械の完全な機能性もまた失われる。いくつかの運用において、故障した軸受けの定期整備以外での交換は、非常に難しい、またはきわめて高価である。このような運用は、深い海中での運用、クルーズ船または他の連続的な製造ラインの可能性がある。故障する前にいつ軸受けの交換が必要となるかを予測するために、および従来の定期的な方法に適するために、状態監視が行われる。機械および軸受けは、物理的にアクセスが容易な場所にある場合、軸受けの状態は、例えば振動測定によって評価することができる。深い海での運用などアクセスが可能でない装置は、いつ整備が必要なのかを評価できるように軸受けの状態を評価するための他の手段が必要である。遠隔で軸受けの状態を評価する多くの方法があるが、なおも改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、軸受けの状態および荷重を監視するための方法および手段を規定することである。軸受けが受ける荷重は、軸受けの寿命に影響を及ぼす。
【0004】
本発明の別の目的は、軸受けにおいて電力を使わずに、状態を監視し、かつ軸受けの荷重を測定するための装置を規定することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、光ファイバーの歪みを測定することにより状態の監視および軸受け荷重の測定に適したブラッグ・グレーティング光ファイバーを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的は、軸受けの状態および軸受け荷重を検出するブラッグ・グレーティング光ファイバーを使用する本発明により達成され、軸受けは、軸受けの荷重変化および振動の両方のファイバーの感度を増すために溝を備える。
【0007】
前述の目的は、軸受けが複数のグレーティング部分を有するブラッグ・グレーティング光ファイバーを備える本発明によってさらに達成され、物理的に隣接する回折格子部分(grated areas)は、周波数平面内において離間している。適当に隣接する周波数帯は、軸受けの反対側の回折格子部分に対応する。
【0008】
前述の目的は、また軸受けの円形の外周に取り付けるためのブラッグ・グレーティング光ファイバーによる本発明により達成され、回折格子は、光ファイバーが軸受けに取り付けられた場合に平行となるように作られる。
【0009】
前述の目的はまた、軸受けの1つまたは複数のパラメータを測定するためのブラッグ・グレーティング光ファイバーを備える本発明による軸受けにより達成される。ブラッグ・グレーティング光ファイバーは、光ファイバーの少なくとも1つの回折格子が湾曲するように軸受けに取り付けられる。本発明によるブラッグ・グレーティング光ファイバーの回折格子は、湾曲による周波数応答への影響が最小になるように湾曲に適合される。
【0010】
好ましくは、光ファイバーグレーティングが湾曲する場合に、グレーティングの回折格子が、実質的に平行になる。回折格子は、光ファイバーが軸受けに取り付けられる前に形成されることができる。そして回折格子は、光ファイバーの予期される湾曲が行われる場合に回折格子が実質的に平行となるように形成される。回折格子はまた、光ファイバーが軸受けに取り付けられる際に形成されることができる。そして回折格子は、光ファイバーが取り付けられた場合に実質的に平行になるように形成される。いくつかの実施形態において、光ファイバーは、非円形断面の平らな面を少なくとも1つ有する。これにより光ファイバーの向きを規定することができ、それにより所定の向きで軸受けにファイバーを取り付けることができる。
【0011】
前述の目的はまた、軸受けの1つまたは複数のパラメータを測定するブラッグ・グレーティング光ファイバーを備える本発明による軸受けによって達成される。光ファイバーは、ブラッグ回折格子を備える光ファイバーの少なくとも一部が湾曲するように、軸受けに連結される。湾曲した回折格子は、周波数応答が明確に定義され、広がらないように湾曲に適合される。これは、ファイバーが湾曲しても、湾曲に影響を受けずに回折格子が実質的に平行に現れるように回折格子を配置することにより達成される。
【0012】
光学的手段により歪みを検出する方法および装置を提供することから、光学的手段によって歪みデータを送信することにより軸受けから数キロ離れたところから状態監視および荷重測定を行うことが可能となる。したがって、任意の電力を軸受けに提供する必要がない。海面から数キロの深海ポンプの軸受け監視などの運用は、軸受けの局所で電力が不要な信頼性の高い方法で実現される。
【0013】
本発明の他の利点は、下記の詳細な説明から明らかになるだろう。
【0014】
本発明は、説明的な、かつ非限定的な以下の図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の典型的な実施方法の、ハウジング内の軸受けの側面図を示す。
【図2】本発明による1つの実施形態による軸受けの一部の断面図を示す。
【図3】本発明による他の実施形態による軸受けの一部の断面図を示す。
【図4】測定溝への光ファイバーのアクセスを示した本発明による軸受けの上面図を示す。
【図5A】本発明による軸受け周囲のセンサ分布の例を示した本発明による軸受けの側断面図を示す。
【図5B】図5Aのセンサ配置によるセンサの周波数分布を示す。
【図6A】ブラッグ・グレーティングを有する従来の光ファイバーを示す。
【図6B】図6Aの光ファイバーの周波数応答を示す。
【図7A】円形軸受けの周囲などに湾曲したブラッグ・グレーティングを有する従来の光ファイバーを示す。
【図7B】図7Aの湾曲した光ファイバーの周波数応答を示す。
【図8A】本発明によるブラッグ・グレーティングを有する湾曲した光ファイバーを示す。
【図8B】図8Aの本発明による光ファイバーの周波数応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を明確にするために、いくつかの使用例を図1〜図8Bに関連して説明する。
【0017】
図1は、ハウジング120に取り付けられた軸受け110の側面図を示す。軸受け110は、非回転外輪112と、回転内輪114と、その間の転動体116と、を備える。これは、本発明の典型的な実施例である。本発明による光学的歪み計、通常ブラッグ・グレーティング光ファイバー歪み検出装置は、非回転外輪112の溝に配置される。溝は、光ファイバーを収容するために十分な大きさでなければならず、そうでなければ、軸受けがハウジング120に適合しない。溝はまた十分な大きさでなければならず、かつ歪みセンサの感度が増すように配置されなければならない。これは、軸受けに対する同じ力に対して、より大きい歪みが歪みセンサに加わるように軸受けが変形するよう外輪112を弱体化させることによる。溝が大きすぎる場合、軸受けは規定の能力を維持することが不可能になるため、溝は同時に軸受けの完全性が保てるように十分小さくなければならない。したがってこれら2つの条件を満たす妥協点があり、これにはまた溝の巧妙な配置が役立つ。
【0018】
図2は、本発明の1つの実施形態による軸受けの一部の断面図を示す。軸受けは、2つの外輪212,213を備える2列SRBであり、各外輪は、対応する1組の転動体216,217を有する。この実施形態において、各列は、対応する溝230,231を備える。各溝は、幅235および高さ/深さ234を有する。適切な各溝は、光ファイバー配置のためのスリット238,239を有する。溝230,231および特に対応するスリット238,239の配置は、好ましくは対応する各列の荷重ライン237に沿っている。光ファイバーは、適当に配置された回折格子部分による歪み検出部を配置しながら完全に軸受けの周囲を回ることができる。これは、1つの光ファイバーが所望の全ての回折格子部分を備えるということである。あるいは、異なる場所に配置された対応する回折格子部分を伴ういくつかの光ファイバーを配置することができる。
【0019】
図3は、本発明による他の実施形態によるCARB軸受けの一部の断面図を示す。この実施形態は、1列の転動体316を有する1つの外輪312のみを備えるが、多数の溝330,331,332を備える。
【0020】
図4は、本発明による軸受けの上面図を示し、外輪412の測定溝430,431への光ファイバーアクセス手段440を示している。
【0021】
図5Aは、非回転外輪512と、回転内輪514と、その間の転動体516とを有する軸受け500の側断面図を示し、本発明による軸受けの周囲の本発明によるセンサ分布551,552,553,554,555,556,557,558の一例を示している。ブラッグ・グレーティング光ファイバー550は、1つまたは複数の歪みセンサ551,552,553,554,555,556,557,558を備え、各センサは、回折格子部分によって形成される。各回折格子部分は、図5B関して下記に詳しく説明されるように、対応する回折格子部分の歪みに応じて変化する周波数571,572,573,574,575,576,577,578によって周波数平面に表される。
【0022】
センサが荷重ゾーン562にある場合、大きい変動580が生じ、任意の荷重および荷重変動の場合に、非荷重ゾーンのセンサは、小さい変動584による小さい周波数変動を示す。もちろん中くらいの変動582を有するセンサがそれらの間にある。最適な方法でファイバーを使用する本発明によると、周波数変動が互いにぶつからないように可能な限り多くのセンサを使用するために、周波数スペクトルにおいて隣接するセンサ周波数が大きい範囲580まで変化しないように、センサは物理的に離されている。軸受けは、常に荷重ゾーンおよび反対側に非荷重ゾーンを有するため、周波数が隣接するセンサは、軸受けの反対側に物理的に配置される。
【0023】
図6Aは、平らに配置されたブラッグ・グレーティングを有する従来の光ファイバー690を示す。これは、第1歪みセンサ格子間距離DA692を有する第1歪みセンサ651と、第2歪みセンサ格子間距離DB696を有する第2歪みセンサ652とを備える。回折格子は、光ファイバーの断面を通り均等に離れているため、図6Bに明らかなように、各センサからの良好なピーク周波数応答671,672が作られる。
【0024】
図7Aは、円形軸受けの周囲などに湾曲したブラッグ・グレーティングを有する従来の光ファイバー790を示す。これは、また第1歪みンサ751および第2歪みセンサ752を備える。しかし明らかなように、ファイバーが湾曲している場合、内側は圧縮され、第1歪みセンサの内側格子間距離DA−δ791および第2歪みセンサの格子間距離DB−δ795は、両方以前より小さくなる。より大きい距離DA+δ793,DB+δ797を生じる引き伸ばされた外側との組み合わせにより、ファイバーを横切る距離の変化が生じる。これは図7Bに明らかなように、中心周波数771,772におけるピークの代わりに幅広い周波数応答779が作られる。
【0025】
図8Aは、本発明による第1851および第2852歪みセンサが配置されたブラッグ・グレーティングを有する湾曲した光ファイバー890を示す。本発明によるブラッグ・グレーティングを有する光ファイバーは、円形軸受けの周囲などにファイバーが湾曲している場合でも、ファイバーを通して等しい格子間距離DA892,DB896を有する。図8Bに明らかなように、ファイバーが湾曲している場合に所望のピーク周波数応答871,872が達成される。回折格子は、軸受けにファイバーを取り付けた後に追加することができる。
【0026】
本発明は、上述の実施形態に限定されないが、以下の特許請求の範囲内で変形させることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
110 軸受け,112 軸受けの非回転外輪,114 軸受けの回転内輪
116 外輪および内輪の間に配置された軸受けの転動体,120 ハウジング
212 第1列に属する第1外輪,213 第2列に属する第2外輪
216 第1列の転動体,217 第2列の転動体
230 第1列の第1溝,231 第2列の第2溝
234 溝の高さ/深さ,235 溝の幅,237 第1列の荷重ライン
238 第1溝に位置する第1光ファイバースリット
239 第2溝に位置する第2光ファイバースリット
312 外輪,316 転動体
330 第1溝,331 第2溝,332 第3溝
412 外輪,430 第1溝,431 第2溝
440 入る/出るための光ファイバー通路
500 光ファイバー歪みセンサ装置を有する本発明による軸受け
512 軸受けの非回転外輪,514 軸受けの回転内輪
516 外輪および内輪の間に配置された軸受けの転動体
550 光ファイバー歪みセンサ装置
551 SA−歪みセンサ,552 SB−歪みセンサ
553 SC−歪みセンサ,554 SD−歪みセンサ
555 SE−歪みセンサ,556 SF−歪みセンサ
557 SG−歪みセンサ,558 SH−歪みセンサ
560 軸受けの非荷重ゾーン,562 軸受けの荷重ゾーン
571 SA−歪みセンサのfA中心周波数
572 SB−歪みセンサのfB中心周波数
573 SC−歪みセンサのfC中心周波数
574 SD−歪みセンサのfD中心周波数
575 SE−歪みセンサのfE中心周波数
576 SF−歪みセンサのfF中心周波数
577 SG−歪みセンサのfG中心周波数
578 SH−歪みセンサのfH中心周波数
580 大きい荷重変動による大きい周波数変動
582 中位の荷重変動による中位の周波数変動
584 小さい荷重変動による小さい周波数変動
651 第1歪みセンサ,652 第2歪みセンサ
690 ブラッグ・グレーティングを有する光ファイバーセンサ装置
692 第1歪みセンサグレーティング分離DA
696 第2歪みセンサグレーティング分離DB
671 第1歪みセンサの周波数応答,672 第2歪みセンサの周波数応答
751 第1歪みセンサ,752 第2歪みセンサ
790 ブラッグ・グレーティングを有する光ファイバーセンサ装置
791 第1歪みセンサ内側グレーティング分離DA−δ
793 第1歪みセンサ外側グレーティング分離DA+δ
795 第2歪みセンサグレーティング分離DB−δ
797 第2歪みセンサグレーティング分離DB+δ
771 第1歪みセンサの中心周波数応答,772 第2歪みセンサの中心周波数応答
779 周波数幅
851 第1歪みセンサ,852 第2歪みセンサ
890 ブラッグ・グレーティングを有する光ファイバーセンサ装置
892 第1歪みセンサ外側および内側グレーティング分離DA
896 第2歪みセンサ外側および内側グレーティング分離DB
871 第1歪みセンサの中心周波数応答,872 第2歪みセンサの中心周波数応答

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受けの1つまたは複数のパラメータを測定するためのブラッグ・グレーティング光ファイバーを備える軸受けであって、前記光ファイバーの回折格子が湾曲するように、前記ブラッグ・グレーティング光ファイバーが前記軸受けに取り付けられ、前記ブラッグ・グレーティング光ファイバーの前記回折格子は、前記湾曲による周波数応答への影響が最小になるように前記湾曲に適合されることを特徴とする、軸受け。
【請求項2】
前記光ファイバーグレーティングが湾曲する場合に、グレーティングの前記回折格子が実質的に平行であることを特徴とする、請求項1に記載の軸受け。
【請求項3】
前記光ファイバーが前記軸受けに取り付けられる前に前記回折格子が形成され、かつ前記光ファイバーの予期された湾曲が行われる場合に前記回折格子が実質的に平行になるように前記回折格子が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の軸受け。
【請求項4】
前記光ファイバーが前記軸受けに取り付けられた場合に前記回折格子が形成され、前記光ファイバーが取り付けられた場合に、前記回折格子が実質的に平行になるように、前記回折格子が形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の軸受け。
【請求項5】
前記光ファイバーの向きを規定し、かつそれにより所定の向きで前記軸受けに前記ファイバーを取り付けるために、前記光ファイバーが非円形断面の少なくとも1つの平らな面を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軸受け。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate


【公表番号】特表2013−513091(P2013−513091A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541340(P2012−541340)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007190
【国際公開番号】WO2011/066928
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(508282993)アクティエボラゲット・エスコーエッフ (42)
【Fターム(参考)】